X線診断装置
【課題】カテーテル術の効率向上を実現するX線診断装置の提供。
【解決手段】相対位置データ記憶部32は、被検体の複数の過去画像に関する過去基準点から過去注目点への複数のベクトルと、複数の過去画像に関する複数の過去心電位相とを関連付けて記憶する。撮影部10は、被検体の現在画像を撮影するためにX線管12とX線検出器13とを備える。基準点特定部26は、現在画像上の現在基準点を画像処理により特定する。心電計18は、現在画像に関する現在心電位相を検出する。ベクトル特定部34は、相対位置データ記憶部32に記憶されている複数のベクトルの中から、現在心電位相に対応する過去心電位相に関連付けられた特定のベクトルを特定する。注目点算出部30は、特定のベクトルと現在基準点の位置とに基づいて現在画像上の現在注目点の位置を算出する。表示部40は、現在注目点の位置を明示して現在画像を表示する。
【解決手段】相対位置データ記憶部32は、被検体の複数の過去画像に関する過去基準点から過去注目点への複数のベクトルと、複数の過去画像に関する複数の過去心電位相とを関連付けて記憶する。撮影部10は、被検体の現在画像を撮影するためにX線管12とX線検出器13とを備える。基準点特定部26は、現在画像上の現在基準点を画像処理により特定する。心電計18は、現在画像に関する現在心電位相を検出する。ベクトル特定部34は、相対位置データ記憶部32に記憶されている複数のベクトルの中から、現在心電位相に対応する過去心電位相に関連付けられた特定のベクトルを特定する。注目点算出部30は、特定のベクトルと現在基準点の位置とに基づいて現在画像上の現在注目点の位置を算出する。表示部40は、現在注目点の位置を明示して現在画像を表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル術を支援するためのX線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル術を支援するためのX線診断装置がある。カテーテル術の1つに心臓冠状動脈インターベンションがある。心臓冠状動脈インターベンションでは、術者は、造影画像(過去画像)上で狭窄部位や血管形状を確認しながら透視下でカテーテル等のデバイスを操作する。通常は造影画像と透視画像(現在画像)とは、別々のモニタに表示される。術者は、これら造影画像と透視画像とを交互に参照しながら、拍動や呼吸による心臓の動きを頭の中で補正して、造影画像上で狭窄部位や血管形状を、透視画像上でデバイス位置等を把握している。そのため、狭窄部位や血管形状、デバイス位置等の注目部位の位置が把握しづらい。
【0003】
例えば特許文献1に記載のように、心臓冠状動脈インターベンションを支援するための技術として、1心拍分の造影画像を心電同期法を用いて透視画像に重ね合わせて表示する技術がある。しかし、呼吸による位置ずれが大きいいため、重ね合わせの精度は良くない。また、心臓は、同じ心電位相であっても同位置にあるとは限らない。従って、息止めをして呼吸位相、同じ心電位相であったとしても、重ね合わせの精度は良くない。そのため、この技術を用いたとしても、注目部位は把握しづらいままであり、造影撮影の回数は、減少しない。また、被検体の負担も大きいままである。このような現状であるため、カテーテル術の効率向上を可能とする技術の登場が切望されている。
【特許文献1】特公平04―48452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、カテーテル術の効率向上を実現するX線診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある局面に係るX線診断装置は、被検体の複数の過去画像に関する過去基準点から過去注目点への複数のベクトルと、前記複数の過去画像に関する複数の過去心電位相とを関連付けて記憶する記憶部と、前記被検体の現在画像を撮影するためにX線管と検出器とを備える撮影部と、前記現在画像上の現在基準点を画像処理により特定する第1特定部と、前記現在画像に関する現在心電位相を検出する検出部と、前記複数のベクトルの中から、前記検出された現在心電位相に対応する過去心電位相に関連付けられた特定のベクトルを特定する第2特定部と、前記特定された特定のベクトルと前記現在基準点の位置とに基づいて前記現在画像上の現在注目点の位置を算出する第1算出部と、前記算出された現在注目点の位置を明示して前記現在画像を表示する表示部と、を具備する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、カテーテル術の効率向上を実現するX線診断装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係わるX線診断装置を説明する。まず本実施形態の概略について説明する。
【0008】
本実施形態に係わるX線診断装置は、心臓冠状動脈インターベンション等のカテーテル術において用いられる。心臓冠状動脈インターベンションでは、予め造影剤により血管が強調されたX線画像(以下、過去画像と呼ぶことにする)を収集しておく。過去画像は、例えば、毎秒7.5〜30フレーム/秒の撮影フレームレートで収集される。この撮影フレームレートで少なくとも1心拍分の複数の過去画像が収集される。造影剤は、被検体内に挿入されたカテーテルを介して注入される。従って、過去画像には、カテーテルやワイヤ等の治療のためのデバイスが描出されている。また、造影剤により狭窄部位等の治療部位が強調されて描出されている。過去画像収集後の治療段階においては、造影剤なしのX線画像(以下、現在画像と呼ぶことにする)がリアルタイムに収集される。術者は、別々のモニタに表示される過去画像と現在画像とを参照しながら、カテーテルを治療部位まで進めている。現在画像には、カテーテル等が描出されている。しかしながら、現在画像収集中には造影剤が注入されないため、現在画像には狭窄部位等の治療部位が描出されていない。
【0009】
本実施形態に係わるX線診断装置は、過去画像上に描出されたカテーテル上の基準点から治療部位等の注目点へのベクトルに基づいて現在画像上の注目点の位置を算出し、算出された注目点の位置を明示して現在画像を表示するものである。
【0010】
図1は、本実施形態に係わるX線診断装置の構成を示す図である。図1に示すようにX線診断装置1は、撮影部10と画像処理装置20とを有する。
【0011】
図1に示すように、撮影部10は、Cアーム11を有する。Cアーム11は、X線管12とX線検出器13とを搭載する。X線管12は、高電圧発生器14から高電圧が印加されることによりX線を発生する。また、X線管12には、X線絞り器15が取り付けられている。X線絞り器15は、X線管12から発生されたX線の照射野を限定する。
【0012】
X線検出器13は、X線管12から発生され被検体Pを透過するX線を検出して、画像信号を出力する。X線検出器13は、マトリクス状に配置された複数の半導体検出素子を有するフラットパネルディテクタ(FPD)で構成される。なおFPDに代えて、X線検出器13は、イメージインテンシファイアとTVカメラとの組み合わせから構成されてもよい。
【0013】
Cアーム11は、被検体Pに対する撮影角度を自由に変更できるように、XYZ直交3軸各々に関して回転可能に設けられている。典型的には、撮影角度は、XYZ直交3軸に対する撮影軸SAの交差角として定義される。慣習的には、第1斜位(RAO)、第2斜位(LAO)、第3斜位(LPO)、第4斜位(RPO)それぞれの角度として定義される。撮影軸SAは、X線管12のX線焦点からX線検出器13の検出面中心を通る直線として定義される。典型的には、Z軸は、被検体Pの体軸に略一致するものとして定義される。そして、Z軸に対して撮影軸SAに一致するY軸とX軸とは、アイソセンタ(撮影不動点)で交差する。Cアーム11は、Cアーム駆動部16からの駆動信号に応じた撮影角度に移動する。
【0014】
撮影制御部17は、後述するシステム制御部44からの制御に応じて高電圧発生器14とCアーム駆動部16とを制御することにより、被検体Pの撮影領域をX線撮影する。具体的には、撮影制御部17は、所定の線量のX線をX線管12が発生するように高電圧発生器14を制御する。また、撮影制御部17は、所定の撮影角度にCアーム11が位置するようにCアーム駆動部16を制御する。
【0015】
また撮影部10は、心電計18を有している。心電計18は、カテーテル術中において、被検体に関する心電位相を検出する。ここで心電位相とは、心電図波形の特徴波発生時刻からの経過時間に対応する。特徴波としては、心電図波形上で最も検出しやすいR波が好適である。検出された心電位相のデータは、心電計18により画像処理装置20に供給される。以下、過去画像収集中における心電位相を過去心電位相、現在画像収集中における心電位相を現在心電位相と呼ぶことにする。
【0016】
画像処理装置20は、A/D変換部22、画像データ記憶部24、基準点特定部26、注目点指定部28、ベクトル算出部30、相対位置データ記憶部32、ベクトル特定部34、注目点算出部36、D/A変換部38、表示部40、操作部42、及びシステム制御部44を有する。
【0017】
A/D変換部22は、X線検出器13に電気的に接続されている。A/D変換部22は、X線検出器13から出力される画像信号をデジタル化し、X線画像のデータを発生する。上述のように、X線画像のデータとして、治療中においては現在画像のデータが発生され、治療前における造影撮影時には過去画像のデータが発生される。現在画像と過去画像とは、撮影画像であっても、透視画像であってもよい。
【0018】
画像データ記憶部24は、A/D変換部22により発生された過去画像のデータと心電計18からの過去心電位相のデータとを関連付けて記憶する。また、画像データ記憶部24は、A/D変換部22により発生された現在画像のデータと心電計18からの現在心電位相のデータとを関連付けて記憶する。なお、本実施形態においては、必ずしも現在画像のデータを記憶する必要はない。
【0019】
基準点特定部26は、過去画像や現在画像を画像処理して基準点を特定する。基準点とは、画像処理により抽出可能な画像上の部位である。例えば、基準点は、画像上のカテーテル領域やワイヤ領域の先端である。以下、過去画像上の基準点を過去基準点、現在画像上の基準点を現在基準点と呼ぶことにする。
【0020】
注目点指定部28は、操作部42を介して手動的に過去画像上の注目点を指定する。ここで、注目点とは、画像処理では抽出できない又は抽出しづらい部位である。注目点は、画像上におけるカテーテルやワイヤの到達目的地である。なお、注目点が画像処理で抽出可能であれば、注目点指定部28は、画像処理により自動的に注目点を特定して指定してもよい。以下、過去画像に関する注目点を過去注目点と呼ぶことにする。
【0021】
ベクトル算出部30は、過去基準点から過去注目点へのベクトルを算出する。算出されるベクトルは、基準点から注目点への距離と方向、すなわち相対的な位置を表している。
【0022】
相対位置データ記憶部32は、ベクトル算出部30により算出されたベクトルのデータと、このベクトルの算出対象である過去画像に関連付けられた過去心電位相のデータとを関連付けて記憶する。このベクトルのデータと過去心電位相のデータとの組み合わせを相対位置データと呼ぶことにする。相対位置データ記憶部32は、少なくとも1心拍分の複数の相対位置データを記憶する。
【0023】
ベクトル特定部34は、相対位置データ記憶部32に記憶されている複数のベクトルの中から、心電計18からの現在心電位相に対応する過去心電位相に関連付けられた特定のベクトルを特定する。
【0024】
注目点算出部36は、ベクトル特定部34により特定された特定のベクトルと、基準点特定部26により特定された現在基準点の位置とに基づいて、現在画像上の注目点の位置を算出する。以下、現在画像上の注目点の位置を現在注目点と呼ぶことにする。
【0025】
D/A変換部38は、現在画像のデータをアナログ化して、表示部40を駆動させるための画像信号を得る。表示部40は、D/A変換部38に接続される。表示部40は、D/A変換部38から出力される画像信号が表す現在画像をモニタに表示する。この際、表示部40は、注目点算出部36により算出された現在注目点の位置を明示して表示する。また、表示部40は、複数のモニタを有しており、現在画像表示用のモニタとは、異なるモニタに過去画像を表示してもよい。
【0026】
操作部42は、術者等からの各種指令や情報入力を受け付ける。操作部42としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが適宜利用可能である。
【0027】
システム制御部44は、X線診断装置1の中枢として機能し、X線診断装置1の各部を制御する。例えば、システム制御部44は、操作部42から現在注目点の表示処理の開始信号が供給されることを契機として、各部を制御することにより現在注目点の表示処理を行なう。また、システム制御部44は、操作部42から相対位置データの保存処理の開始信号が供給されることを契機として、画像処理装置20内の各部を制御して相対位置データの保存処理をさせる。
【0028】
次にシステム制御部44の制御のもとに行なわれるX線診断装置1の処理の流れを説明する。本実施形態に係わる処理は、治療前に行なわれる相対位置データの保存処理と、治療中に行なわれる現在注目点の表示処理とに分けられる。まず、相対位置データの保存処理の臨床例について説明する。
【0029】
図2は、システム制御部44の制御のもとに行なわれる相対位置データの保存処理の典型的な流れを示す図である。
【0030】
<ステップSA1> まずは、術者は、操作部42に設けられた撮影開始ボタンを押す。操作部42からの撮影開始信号が供給されることを契機としてシステム制御部44は、撮影制御部17を制御して造影剤が注入された被検体を繰り返しX線撮影する。これにより治療前に関する過去画像のデータが繰り返し発生される。造影剤は、術者により被検体内に挿入されたカテーテルから注入される。従って発生される過去画像には、図3に示すように、造影剤により造影された血管に関する血管領域52とともに、カテーテルに関するカテーテル領域54やワイヤに関するワイヤ領域56が描出されている。撮影フレームレートは、予め定められており、典型的には、15フレーム/秒である。X線撮影は、少なくとも被検体の心臓が1心拍する時間以上行なわれる。発生された少なくとも1心拍分の複数の過去画像のデータは、画像データ記憶部24に記憶される。また、撮影中、心電計18は、被検体に関する複数の過去心電位相のデータを繰り返し検出している。画像データ記憶部24は、複数の過去心電位相のそれぞれのデータを、対応する過去画像に関連付けて記憶する。つまり、記憶される1心拍分の過去心電位相の数は、撮影フレームレートに応じて決定される。換言すれば、過去心電位相は、離散的なデータである。1心拍分の過去画像のデータが収集されると、自動的又は術者により操作部42を介して供給される撮影停止信号を受けてシステム制御部44は、撮影制御部17を制御してX線撮影を終了する。
【0031】
<ステップSA2> X線撮影が終了されるとシステム制御部44は、相対位置データの保存処理の開始指示を待機している。術者により操作部42を介して開始指示がなされると(ステップSA2:YES)システム制御部44は、相対位置データの保存処理を開始する。
【0032】
<ステップSA3> 相対位置データの保存処理においてシステム制御部44は、まず、画像データ記憶部24に記憶されている複数の過去画像の中から、処理対象の過去画像のデータを読み出す。処理対象の過去画像は、例えば、予め設定された過去心電位相に関する過去画像である。読み出された過去画像のデータは、システム制御部44により基準点特定部26に供給される。
【0033】
<ステップSA4> 過去画像が読み出されるとシステム制御部44は、基準点特定部26に過去基準点の特定処理を行なわせる。基準点特定部26は、処理対象の過去画像を画像処理して、過去画像上の基準点の位置を特定する。典型的には、過去画像に描出されているカテーテル領域の先端が過去基準点として特定される。
【0034】
画像処理としては、まず、処理対象の過去画像にサブトラクトバックグラウンド処理(Subtract Background)をし、サブトラクトバックグラウンド処理された過去画像にヒストグラムストレッチング処理(Histogram Stretching)をし、ヒストグラムストレッチング処理された過去画像に閾値処理(Threshold)をし、閾値処理された過去画像に侵食処理(erosion)をし、侵食処理された過去画像に膨張処理(dilation)をする。
【0035】
なお、サブトラクトバックグラウンド処理は、背景領域を滑らかにする画像処理である。サブトラクトバックグラウンド処理後の画像のヒストグラムは、処理前のヒストグラムに比して明るい領域(高画素値)に偏る。ヒストグラムストレッチング処理は、明るい領域に偏ったヒストグラムを修正するためにヒストグラムを広げる画像処理である。カテーテル領域は、ヒストグラム上において暗い領域(低画素値)にある。このことを利用し、閾値処理は、ヒストグラムストレッチング処理後の過去画像を構成する全画素のうちのカテーテル領域の画素値を有する画素を残し、それ以外の画素を除去する。閾値処理後の過去画像には、カテーテル領域だけでなく、複数の孤立点(ノイズ)を含む。侵食処理は、ミンコフスキー差を利用することにより、閾値処理後の過去画像から孤立点を消去する。この侵食処理により、孤立点とともに、カテーテル領域の縁(エッジ)も消去され、カテーテル領域が細くなる。膨張処理は、ミンコフスキー和を利用することにより、侵食処理後の過去画像上のカテーテル領域の太さを侵食処理前のカテーテル領域の太さに復元する。
【0036】
これら一連の画像処理により、図4に示すように、過去画像からカテーテル領域54が抽出される。抽出されたカテーテル領域54の先端部分58が過去基準点として特定される。特定された過去基準点58の座標データは、基準点特定部26によりベクトル算出部30に供給される。
【0037】
なお、これら一連の画像処理をしても過去画像上にカテーテル領域54ではない、孤立点60が含まれる場合がある。これは、血管領域52もカテーテル領域54と同程度の太さや画素値を有することに起因する。この場合、画像処理後の過去画像を表示部40に表示させて、表示されている過去画像上で術者により操作部42を介して基準点を指定させてもよい。また、画像処理前の過去画像上で指定させてもよい。
【0038】
なお、上述の一連の画像処理は、カテーテル領域の抽出方法の一例として説明した。従って、上述の全ての画像処理を行なわなくともカテーテル領域が抽出できるのであれば、必ずしも全ての画像処理を行なう必要はない。例えば、閾値処理のみでカテーテル領域を抽出してもよい。
【0039】
<ステップSA5> 過去基準点が特定されるとシステム制御部44は、注目点指定部28に過去注目点の指定処理を行なわせる。注目点指定部28は、図5に示すように、術者により操作部42を介して指定された点62を過去注目点に指定する。指定された注目点62の座標データは、注目点指定部28によりベクトル算出部30に供給される。
【0040】
注目点は、例えば、図5に示すように、CTO(chronic total occlusion:慢性完全閉塞病変)の狭窄部位の出口である。CTOの狭窄部位とは、慢性的に完全に閉塞された狭窄部位である。CTOの狭窄部位の出口付近は、造影しないと描出されない。
【0041】
また、他の注目点としては、ステントを留置する狭窄部位がある。狭窄部位は、造影しないと描出されない。
【0042】
さらに他の注目点としては、生体吸収ステントの端部がある。通常、ステントは、カテーテルの先端部に取り外し可能に取り付けられている。また、カテーテル上のステントの両端に相当する部分には、ステントをX線画像上で視認可能にするためのマーカが取り付けられている。ステントはカテーテルにより留置部位まで誘導され、留置部位において拡張される。拡張後、カテーテルはマーカとともに引き抜かれる。狭窄部位が大きい場合、ステントを2本挿入する場合がある。2本目のステントは、1本目の近傍に誘導される。しかし、1本目のステントの位置は、マーカがないので造影されていないと確認できない。そこで、2本目のステントの目標到達点として、1本目のステントの端に注目点が指定される。
【0043】
なお、指定方法は、特に限定しない。例えば、術者によりマウスを介して、表示部40に表示された過去画像上で所望の点を指定してもよい。また、テンキーを介して座標指定してもよい。また、矢印キーを介して、過去画像上でマーカを所望の点に移動させ、特定のキーを押すことにより指定してもよい。さらには、タッチパネルを介して、所望の点を直接触れることにより指定してもよい。
【0044】
<ステップSA6> 過去注目点が指定されるとシステム制御部44は、ベクトル算出部30にベクトルの算出処理を行なわせる。ベクトル算出部30は、図6に示すように、過去画像上における過去基準点58から過去注目点62へのベクトルを算出する。算出されたベクトルのデータは、ベクトル算出部30により相対位置データ記憶部32に供給される。
【0045】
<ステップSA7> ベクトルが算出されるとシステム制御部44は、相対位置データ記憶部32に記憶処理を行なわせる。相対位置データ記憶部32は、図7に示すように、ベクトルのデータと、処理対象の過去画像に関連付けられた過去心電位相とを関連付けて記憶する。すなわち、1心電位相分の相対位置データが記憶される。
【0046】
<ステップSA8> 相対位置データが記憶されるとシステム制御部44は、1心拍分の相対位置データが相対位置データ記憶部32に記憶されたか否かを判定する。
【0047】
<ステップSA9> ステップSA8において1心拍分の相対位置データが記憶されていないと判定されると(ステップSA8:NO)、システム制御部44は、処理対象の過去画像を、次の過去心電位相に関する過去画像に変更する。
【0048】
変更された処理対象についても、同様にステップSA3〜ステップS7が繰り返される。このようにして、1心拍分の相対位置データが相対位置データ32に記憶される。1心拍分の相対位置データの数は、過去心電位相の数、及び過去画像の数に一致する。換言すれば、相対位置データは、離散的なデータである。そしてステップSA8において1心拍分の相対位置データが記憶されたと判定されると(ステップSA8:YES)、システム制御部44は、相対位置データの保存処理を終了する。
【0049】
次に、治療中に行なわれる現在注目点の表示処理の臨床例について説明する。図8は、システム制御部44の制御のもとに行なわれる現在注目点の表示処理の典型的な流れを示す図である。
【0050】
<ステップSB1> まずは、術者等から操作部42を介した撮影の開始信号が供給されることを契機としてシステム制御部44は、撮影制御部17を制御して造影剤が注入されていない被検体を繰り返しX線撮影する。これにより治療中に関する現在画像のデータが繰り返し発生される。X線撮影中、術者は、被検体内の治療部位にカテーテルを進める。従って発生される現在画像には、図9に示すように、カテーテル領域54やワイヤ領域56が描出されている。しかし、被検体に造影剤が注入されていないので現在画像には、狭窄部位等の治療部位は描出されない。撮影フレームレートは、予め定められており、典型的には、15フレーム/秒である。発生された現在画像のデータは、画像データ記憶部24に記憶される。なお、現在画像の撮影中における被検体の位置及び撮影角度は、過去画像の撮影中における被検体の位置及び撮影角度に一致する。従って、現在画像と過去画像とは、すでに位置合わせされているものとする。また、X線撮影中、心電計18は、被検体に関する現在心電位相のデータを繰り返し検出している。画像データ記憶部24は、現在心電位相のデータを現在画像に関連付けて記憶する。
【0051】
<ステップSB2> 現在画像と現在心電位相とのデータが収集されるとシステム制御部44は、基準点特定部26に現在基準点の特定処理をリアルタイムに行なわせる。基準点特定部26は、画像データ記憶部24に記憶されている現在画像を読み出して、読み出された現在画像を画像処理して、現在画像上の現在基準点の位置を特定する。典型的には、現在画像に描出されているカテーテル領域の先端が現在基準点として特定される。なお、画像処理の内容は、ステップSA4における過去基準点の特定のための画像処理と同様なので説明を省略する。
【0052】
<ステップSB3> ステップSB2と並行してシステム制御部44は、ベクトル特定部34に過去心電位相の決定処理を行なわせる。まず、ベクトル特定部34は、画像データ記憶部24に記憶されている現在画像を読み出して、読み出された現在画像に関連付けられた現在心電位相を特定する。そしてベクトル特定部34は、相対位置データ記憶部32に記憶されている複数の過去心電位相の中から、特定された現在心電位相に対応する過去心電位相を決定する。現在心電位相に一致する過去心電位相がある場合、この一致する過去心電位相が現在心電位相に対応する過去心電位相に決定される。現在心電位相に一致する過去心電位相がない場合、現在心電位相に最も近い心電位相を有する過去心電位相が現在心電位相に対応する過去心電位相に決定される。
【0053】
<ステップSB4> 過去心電位相が決定されるとベクトル特定部34は、決定された過去心電位相に相対位置データ記憶部32上で関連付けられたベクトルを特定する。特定されたベクトルのデータは、ベクトル特定部34により注目点算出部36に供給される。
【0054】
<ステップSB5> 現在基準点とベクトルとが特定されるとシステム制御部44は、注目点算出部36に現在注目点の位置の算出処理を行なわせる。注目点算出部36は、現在基準点の座標と特定されたベクトルとに基づいて現在注目点の位置を算出する。具体的には、図10に示すように、特定されたベクトル66の始点を現在基準点68に一致させ、そのベクトル66が指し示す位置を現在注目点70とする。このように、ベクトル66を利用することにより、現在基準点68からの相対位置として現在注目点70の位置を算出することができる。現在注目点68の位置は、注目点算出部36によりD/A変換部38に供給される。
【0055】
<ステップSB6> 現在注目点の位置が算出されるとシステム制御部44は、表示部40に現在注目点の表示処理を行なわせる。D/A変換部38は、画像データ記憶部24から現在画像のデータを読み出して、読み出された現在画像のデータをアナログ化し、アナログ化された現在画像のデータを表示部40に供給する。表示部40は、図11に示すように、供給された現在画像を表示するとともに、算出された現在注目点の位置を明示して表示する。明示方法としては、他の部分とは異なる輝度や明度、色で現在注目点の位置を表示させたり、矢印等のマークを表示したりする方法がある。
【0056】
なお、現在画像上で現在注目点を明示して表示することで、カテーテル等のデバイス操作の邪魔になる場合が想定される。このため、現在注目点の明示表示の有無を選択するためのユーザインターフェースが例えば操作部42に用意されていてもよい。例えば、明示表示の有無を選択するためのスイッチが操作部42に装備されているとよい。
【0057】
これらステップSB1〜ステップSB7は、現在画像が発生される度に繰り返しリアルタイムに行なわれる。従って術者は、現在画像のみを観察することで、現在のカテーテル位置と、カテーテルの目標到達地点である現在注目点とを動画上で視認することができる。
【0058】
次に現在注目点の位置の表示精度を検証する。本発明者は、本実施形態による現在注目点の表示精度と従来技術による表示精度とを比較するためにシミュレーションを行なった。シミュレーションには、現在画像A、現在画像B、現在画像C、現在画像Dの4つの現在画像を用いた。これら4つの現在画像は、A→B→C→Dの順番に発生され、互いに同一心電位相である。また、現在画像Aと現在画像Cとは、同一呼吸位相(すなわち、被検体の横隔膜の位置が一致している位相)である。現在基準点をカテーテル先端とし、現在注目点を、臨床における主な使用用途であるCTOの狭窄部位出口とした。なお従来技術としては、一般的な従来の心電同期手法を採用した。従来の心電同期手法は、1心拍分の過去画像(造影血管画像)を使い、心電同期により現在画像(透視画像)と同じ又は近い心電位相の過去画像を現在画像上に表示する手法である。この場合、血管等の注目点は、ユーザ自身で判断する必要がある。
【0059】
まずは、互いに同一心電位相且つ同一呼吸位相である現在画像Aと現在画像Cとを用いた現在注目点の表示精度の比較結果について説明する。図12に示すように現在画像Aのカテーテル先端(現在基準点)の座標は(x,y)=(173,162)、CTOの狭窄部位出口(現在注目点)の座標は(x,y)=(376,137)であった。同様に現在画像Cのカテーテル先端の座標は(x,y)=(171,148)、CTOの狭窄部位出口の座標は(x,y)=(370,124)であった。従って、現在画像Aのカテーテル先端の座標と現在画像Cのカテーテル先端の座標との差は(x,y)=(−2,−14)、現在画像Aの狭窄部位出口の座標と現在画像Cの狭窄部位出口の座標との差は(x,y)=(−6,−13)となる。また、現在画像Aのカテーテル先端から狭窄部位出口へのベクトルAは(x,y)=(203,−25)、現在画像Cのカテーテル先端から狭窄部位出口へのベクトルCは(x,y)=(199,−24)であった。従って、現在画像Aのベクトルと現在画像Cのベクトルとの差は(x,y)=(−4,1)となる。
【0060】
上記のデータから、図13に示すように、現在画像Aの狭窄部位出口の座標と現在画像Cの狭窄部位出口の座標との差の距離(ずれ)は、14.32ピクセルとなる。一方、現在画像AのベクトルAと現在画像CのベクトルCとの差の距離(ずれ)は、4.12ピクセルである。各距離は、0ピクセルが理想である。この結果から、座標間の差の距離(ずれ)に比して、ベクトル間の差の距離(ずれ)の方が小さいことがわかる。すなわち、CTOの手技における狭窄部位出口に関しては、距離(ずれ)を71%低減できていることが分かる。この結果は、単純に画像を重ね合わせる従来技術よりも、現在基準点からのベクトルを用いて現在注目点を表示する本実施形態の技術の方が、注目点の表示精度が高いことを示している。
【0061】
次に、互いに同一心電位相であり、異なる呼吸位相である現在画像Aと現在画像Bを用いた現在注目点の表示精度の比較結果について説明する。図14に示すように、現在画像Aのカテーテル先端の座標と現在画像Bのカテーテル先端の座標との差は(x,y)=(0,17)、現在画像Aの狭窄部位出口の座標と現在画像Bの狭窄部位出口の座標との差は(x,y)=(2,18)であった。従って、現在画像Aの狭窄部位出口の座標と現在画像Bの狭窄部位出口の座標との差の距離(ずれ)は、18.11ピクセルとなる。また、現在画像Aの現在基準点から現在注目点へのベクトルと現在画像Bの現在基準点から現在注目点へのベクトルとの差は(x,y)=(2,1)であった。従って現在画像Aのベクトルと現在画像Bのベクトルとの差の距離(ずれ)は、2.24ピクセルである。すなわち、現在画像Aと現在画像Bの場合、CTOの手技における狭窄部位出口に関しては、距離(ずれ)を88%低減できていることが分かる。
【0062】
図15に示すように、互いに同一心電位相であり、異なる呼吸位相である現在画像Aと現在画像Dの現在注目点の検出精度の比較結果についても図14と同様の傾向が見られた。すなわち、現在画像Aと現在画像Dの場合、CTOの手技における狭窄部位出口に関しては、距離(ずれ)を84%低減できていることが分かる。
【0063】
これら図14と図15との両方の結果から、互いに同一心電位相であり、異なる呼吸位相であっても、従来技術(従来の心電同期手法)よりも本実施形態の技術の方が、注目点の表示精度が高いことを示している。
【0064】
次に、図16を参照しながら、本実施形態の技術による現在注目点の実寸のずれ量が臨床上の許容範囲内に収まっていることについて具体例を挙げて説明する。なお、図16に使用している画像は、現在画像A〜Dの術後(ステント留置後)に関する画像である。この画像と現在画像A〜DとのFOV(視野サイズ)は、同一である。
【0065】
ステント留置は、非常に細かい作業となる。従って術者からは、非常に厳しいステント位置の表示精度が要請される。具体的には、1mm以上のずれがあっては、臨床上あまり役に立たないといえる。従って、臨床上における現在注目点の実寸のずれ量の許容範囲は、1mm以下が適当である。
【0066】
図16に示すように、現在画像上におけるステントの厚さ方向の両端部の座標は、それぞれ(x,y)=(188,80)、(x,y)=(192,97)であった。従って、ステント径は、17.46ピクセルである。ここで、例えば、ステント径が3.5mmであるとする。この場合、3.5mm=17.46ピクセルという対応関係が成り立つ。この対応関係に従えば、1mm=4.99ピクセルとなる。
【0067】
上述のように現在画像Aと現在画像Cとに関する現在注目点間の座標差は14.32ピクセル、ベクトル差は4.12ピクセルであった。同様に、上述のように現在画像Aと現在画像Bとに関する現在注目点間の座標差は18.11ピクセル、ベクトル差は2.24ピクセルであり、現在画像Aと現在画像Dとに関する現在注目点間の座標差は13.93ピクセル、ベクトル差は2.24ピクセルであった。
【0068】
従って上記の対応関係に従えば、現在注目点間の座標差とベクトル差との実寸距離は、以下の通りである。現在画像Aと現在画像Cとに関する現在注目点間の座標差は2.87mm、ベクトル差は0.83mm。現在画像Aと現在画像Bとに関する現在注目点間の座標差は3.63mm、ベクトル差は0.45mm。現在画像Aと現在画像Dとに関する現在注目点間の座標差は2.79mm、ベクトル差は0.45mm。この結果を見れば明らかなように、いずれの場合もベクトル差が許容範囲、すなわち1mm以内に収まっている。従って、本実施形態の技術は、臨床上の要請に耐えうる精度を有し、実用可能性が十分にある。
【0069】
上記構成によりX線診断装置1は、現在画像(透視画像)上で狭窄部位等の注目点を高精度に表示する。これにより術者は、別々のモニタに表示される過去画像(造影画像)と現在画像とを交互に見て注目点の位置を把握する必要がなくなる。また、従来技術に比して造影撮影の回数が減少することにより、患者の負担も軽減される。かくして、本実施形態に係わるX線診断装置1は、カテーテル術の効率向上を実現することが可能となる。
【0070】
(変形例)
上記本実施形態のステップSB4においてベクトルは、現在心電位相に一致する又は隣接する過去心電位相に関連付けられたものに決定された。これから説明する変形例においてベクトルは、現在心電位相と過去心電位相が一致しない場合、現在心電位相を挟んで隣合う2つの過去心電位相に関連付けられた2つのベクトルに基づいて補間される。
【0071】
図17は、本実施形態の変形例に係わるX線診断装置2の構成を示す図である。図17に示すように、変形例に係わるX線診断装置2は、さらにベクトル補間部46を備える。ベクトル補間部46は、現在心電位相を挟んで隣合う2つの過去心電位相に関連付けられた2つのベクトルに基づいて、現在心電位相に対応するベクトルを補間する。
【0072】
次にシステム制御部44の制御のもとに行なわれる変形例に係わる現在注目点の表示処理の臨床例を説明する。図18は、変形例に係わる現在注目点の表示処理の典型的な流れを示す図である。
【0073】
<ステップSC1> ステップSB3においてベクトル算出部30により、相対位置データ記憶部32に記憶されている複数の過去心電位相の中に、現在心電位相に一致する過去心電位相がないと判定されると、システム制御部44は、ベクトル補間部46に2つの過去心電位相の特定処理を行なわせる。ベクトル補間部46は、相対位置データ記憶部32に記憶されている複数の過去心電位相の中から、現在心電位相を挟んで隣合う2つの過去心電位相を特定する。
【0074】
<ステップSC2> 2つの過去心電位相が特定されるとシステム制御部44は、ベクトル補間部46にベクトルの特定処理を行なわせる。ベクトル補間部46は、特定された2つの過去心電位相に相対位置データ記憶部32内で関連付けられた2つのベクトルを特定する。
【0075】
<ステップSC3> 2つのベクトルが特定されるとシステム制御部44は、ベクトルの補間処理を行なわせる。ベクトル補間部46は、特定された2つのベクトルに基づいて、現在心電位相に一致する過去心電位相に関するベクトルを補間する。補間処理としては、例えば、2つのベクトルの平均値や中間値に設定される。より高精度な補間が求められる場合、2つのベクトルとそれに対応する2つの過去心電位相とに基づいてベクトルを補間してもよい。補間法としては、線形補間法や、スプライン補間法、ラグランジュ補間法、最小2乗法等の既存のあらゆる方法が可能である。補間されたベクトルのデータは、ベクトル補間部46により注目点算出部36に供給される。
【0076】
ベクトルが補間されると、図8のステップSB5とステップSB6とが順番に行なわれる。
【0077】
なおベクトル補間部46によりベクトルを補間可能なことにより、予め相対位置データ記憶部32に保存させておく相対位置データ(ベクトル)の数を上記実施形態に比して削減できる。例えば、操作部42を介して相対位置データの算出対象の過去画像を選択可能にするとよい。より具体的には、操作部42を介して相対位置データの算出対象となる過去心電位相を選択可能にするとよい。選択数は、操作部42を介して任意に設定可能である。具体的には、図19に示すように、1心拍のうちの5箇所(例えば、P波の開始時θ1、QRS波の終了時θ2、T波の開始時θ3、T波の終了時θ4、U波の終了時θ5)程度心電位相が選択されればよい。これにより、相対位置データの算出対象を減少させることで、注目点を指定する手間を省ける。
【0078】
かくして、本実施形態の変形例に係わるX線診断装置2は、カテーテル術の効率向上を実現することが可能となる。
【0079】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施形態に係わるX線診断装置の構成を示す図。
【図2】図1のシステム制御部の制御のもとに行なわれる相対位置データの保存処理の典型的な流れを示す図。
【図3】図2のステップSA1において収集される過去画像の一例を示す図。
【図4】図2のステップSA4において行なわる過去基準点の特定処理を説明するための図。
【図5】図2のステップSA5において行なわれる過去注目点の指定処理を説明するための図。
【図6】図2のステップSA6において行なわれるベクトルの算出処理を説明するための図。
【図7】図2のステップSA7において行なわれる相対位置データの記憶処理を説明するための図。
【図8】図1のシステム制御部の制御のもとに行なわれる現在注目点の表示処理の典型的な流れを示す図。
【図9】図8のステップSB1において収集される現在画像の一例を示す図。
【図10】図8のステップSB5における現在注目点の位置の算出処理を説明するための図。
【図11】図8のステップSB6における現在注目点の明示表示処理を説明するための図。
【図12】本実施形態の技術と従来技術との注目点の表示精度の比較結果を示す図。
【図13】本実施形態の技術と従来技術との注目点の表示精度の比較結果を示す図。
【図14】本実施形態の技術と従来技術との注目点の表示精度の比較結果を示す図。
【図15】本実施形態の技術と従来技術との注目点の表示精度の比較結果を示す図。
【図16】本実施形態の技術による現在注目点の実寸のずれ量が臨床上の許容範囲内に収まっていることについて具体例を示す図。
【図17】本実施形態の変形例に係わるX線診断装置の構成を示す図。
【図18】図17のシステム制御部の制御のもとに行なわれる現在注目点の表示処理の典型的な流れを示す図。
【図19】変形例において選択される心電位相の一例を示す図。
【符号の説明】
【0081】
1…X線診断装置、10…撮影部、11…Cアーム、12…X線管、13…X線検出器、14…高電圧発生器、15…X線絞り器、16…Cアーム駆動部、17…撮影制御部、18…心電計、20…画像処理装置、22…A/D変換部、24…画像データ記憶部、26…基準点特定部、28…注目点指定部、30…ベクトル算出部、32…相対位置データ記憶部、34…ベクトル特定部、36…注目点算出部、38…D/A変換部、40…表示部、42…操作部、44…システム制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル術を支援するためのX線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル術を支援するためのX線診断装置がある。カテーテル術の1つに心臓冠状動脈インターベンションがある。心臓冠状動脈インターベンションでは、術者は、造影画像(過去画像)上で狭窄部位や血管形状を確認しながら透視下でカテーテル等のデバイスを操作する。通常は造影画像と透視画像(現在画像)とは、別々のモニタに表示される。術者は、これら造影画像と透視画像とを交互に参照しながら、拍動や呼吸による心臓の動きを頭の中で補正して、造影画像上で狭窄部位や血管形状を、透視画像上でデバイス位置等を把握している。そのため、狭窄部位や血管形状、デバイス位置等の注目部位の位置が把握しづらい。
【0003】
例えば特許文献1に記載のように、心臓冠状動脈インターベンションを支援するための技術として、1心拍分の造影画像を心電同期法を用いて透視画像に重ね合わせて表示する技術がある。しかし、呼吸による位置ずれが大きいいため、重ね合わせの精度は良くない。また、心臓は、同じ心電位相であっても同位置にあるとは限らない。従って、息止めをして呼吸位相、同じ心電位相であったとしても、重ね合わせの精度は良くない。そのため、この技術を用いたとしても、注目部位は把握しづらいままであり、造影撮影の回数は、減少しない。また、被検体の負担も大きいままである。このような現状であるため、カテーテル術の効率向上を可能とする技術の登場が切望されている。
【特許文献1】特公平04―48452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、カテーテル術の効率向上を実現するX線診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある局面に係るX線診断装置は、被検体の複数の過去画像に関する過去基準点から過去注目点への複数のベクトルと、前記複数の過去画像に関する複数の過去心電位相とを関連付けて記憶する記憶部と、前記被検体の現在画像を撮影するためにX線管と検出器とを備える撮影部と、前記現在画像上の現在基準点を画像処理により特定する第1特定部と、前記現在画像に関する現在心電位相を検出する検出部と、前記複数のベクトルの中から、前記検出された現在心電位相に対応する過去心電位相に関連付けられた特定のベクトルを特定する第2特定部と、前記特定された特定のベクトルと前記現在基準点の位置とに基づいて前記現在画像上の現在注目点の位置を算出する第1算出部と、前記算出された現在注目点の位置を明示して前記現在画像を表示する表示部と、を具備する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、カテーテル術の効率向上を実現するX線診断装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係わるX線診断装置を説明する。まず本実施形態の概略について説明する。
【0008】
本実施形態に係わるX線診断装置は、心臓冠状動脈インターベンション等のカテーテル術において用いられる。心臓冠状動脈インターベンションでは、予め造影剤により血管が強調されたX線画像(以下、過去画像と呼ぶことにする)を収集しておく。過去画像は、例えば、毎秒7.5〜30フレーム/秒の撮影フレームレートで収集される。この撮影フレームレートで少なくとも1心拍分の複数の過去画像が収集される。造影剤は、被検体内に挿入されたカテーテルを介して注入される。従って、過去画像には、カテーテルやワイヤ等の治療のためのデバイスが描出されている。また、造影剤により狭窄部位等の治療部位が強調されて描出されている。過去画像収集後の治療段階においては、造影剤なしのX線画像(以下、現在画像と呼ぶことにする)がリアルタイムに収集される。術者は、別々のモニタに表示される過去画像と現在画像とを参照しながら、カテーテルを治療部位まで進めている。現在画像には、カテーテル等が描出されている。しかしながら、現在画像収集中には造影剤が注入されないため、現在画像には狭窄部位等の治療部位が描出されていない。
【0009】
本実施形態に係わるX線診断装置は、過去画像上に描出されたカテーテル上の基準点から治療部位等の注目点へのベクトルに基づいて現在画像上の注目点の位置を算出し、算出された注目点の位置を明示して現在画像を表示するものである。
【0010】
図1は、本実施形態に係わるX線診断装置の構成を示す図である。図1に示すようにX線診断装置1は、撮影部10と画像処理装置20とを有する。
【0011】
図1に示すように、撮影部10は、Cアーム11を有する。Cアーム11は、X線管12とX線検出器13とを搭載する。X線管12は、高電圧発生器14から高電圧が印加されることによりX線を発生する。また、X線管12には、X線絞り器15が取り付けられている。X線絞り器15は、X線管12から発生されたX線の照射野を限定する。
【0012】
X線検出器13は、X線管12から発生され被検体Pを透過するX線を検出して、画像信号を出力する。X線検出器13は、マトリクス状に配置された複数の半導体検出素子を有するフラットパネルディテクタ(FPD)で構成される。なおFPDに代えて、X線検出器13は、イメージインテンシファイアとTVカメラとの組み合わせから構成されてもよい。
【0013】
Cアーム11は、被検体Pに対する撮影角度を自由に変更できるように、XYZ直交3軸各々に関して回転可能に設けられている。典型的には、撮影角度は、XYZ直交3軸に対する撮影軸SAの交差角として定義される。慣習的には、第1斜位(RAO)、第2斜位(LAO)、第3斜位(LPO)、第4斜位(RPO)それぞれの角度として定義される。撮影軸SAは、X線管12のX線焦点からX線検出器13の検出面中心を通る直線として定義される。典型的には、Z軸は、被検体Pの体軸に略一致するものとして定義される。そして、Z軸に対して撮影軸SAに一致するY軸とX軸とは、アイソセンタ(撮影不動点)で交差する。Cアーム11は、Cアーム駆動部16からの駆動信号に応じた撮影角度に移動する。
【0014】
撮影制御部17は、後述するシステム制御部44からの制御に応じて高電圧発生器14とCアーム駆動部16とを制御することにより、被検体Pの撮影領域をX線撮影する。具体的には、撮影制御部17は、所定の線量のX線をX線管12が発生するように高電圧発生器14を制御する。また、撮影制御部17は、所定の撮影角度にCアーム11が位置するようにCアーム駆動部16を制御する。
【0015】
また撮影部10は、心電計18を有している。心電計18は、カテーテル術中において、被検体に関する心電位相を検出する。ここで心電位相とは、心電図波形の特徴波発生時刻からの経過時間に対応する。特徴波としては、心電図波形上で最も検出しやすいR波が好適である。検出された心電位相のデータは、心電計18により画像処理装置20に供給される。以下、過去画像収集中における心電位相を過去心電位相、現在画像収集中における心電位相を現在心電位相と呼ぶことにする。
【0016】
画像処理装置20は、A/D変換部22、画像データ記憶部24、基準点特定部26、注目点指定部28、ベクトル算出部30、相対位置データ記憶部32、ベクトル特定部34、注目点算出部36、D/A変換部38、表示部40、操作部42、及びシステム制御部44を有する。
【0017】
A/D変換部22は、X線検出器13に電気的に接続されている。A/D変換部22は、X線検出器13から出力される画像信号をデジタル化し、X線画像のデータを発生する。上述のように、X線画像のデータとして、治療中においては現在画像のデータが発生され、治療前における造影撮影時には過去画像のデータが発生される。現在画像と過去画像とは、撮影画像であっても、透視画像であってもよい。
【0018】
画像データ記憶部24は、A/D変換部22により発生された過去画像のデータと心電計18からの過去心電位相のデータとを関連付けて記憶する。また、画像データ記憶部24は、A/D変換部22により発生された現在画像のデータと心電計18からの現在心電位相のデータとを関連付けて記憶する。なお、本実施形態においては、必ずしも現在画像のデータを記憶する必要はない。
【0019】
基準点特定部26は、過去画像や現在画像を画像処理して基準点を特定する。基準点とは、画像処理により抽出可能な画像上の部位である。例えば、基準点は、画像上のカテーテル領域やワイヤ領域の先端である。以下、過去画像上の基準点を過去基準点、現在画像上の基準点を現在基準点と呼ぶことにする。
【0020】
注目点指定部28は、操作部42を介して手動的に過去画像上の注目点を指定する。ここで、注目点とは、画像処理では抽出できない又は抽出しづらい部位である。注目点は、画像上におけるカテーテルやワイヤの到達目的地である。なお、注目点が画像処理で抽出可能であれば、注目点指定部28は、画像処理により自動的に注目点を特定して指定してもよい。以下、過去画像に関する注目点を過去注目点と呼ぶことにする。
【0021】
ベクトル算出部30は、過去基準点から過去注目点へのベクトルを算出する。算出されるベクトルは、基準点から注目点への距離と方向、すなわち相対的な位置を表している。
【0022】
相対位置データ記憶部32は、ベクトル算出部30により算出されたベクトルのデータと、このベクトルの算出対象である過去画像に関連付けられた過去心電位相のデータとを関連付けて記憶する。このベクトルのデータと過去心電位相のデータとの組み合わせを相対位置データと呼ぶことにする。相対位置データ記憶部32は、少なくとも1心拍分の複数の相対位置データを記憶する。
【0023】
ベクトル特定部34は、相対位置データ記憶部32に記憶されている複数のベクトルの中から、心電計18からの現在心電位相に対応する過去心電位相に関連付けられた特定のベクトルを特定する。
【0024】
注目点算出部36は、ベクトル特定部34により特定された特定のベクトルと、基準点特定部26により特定された現在基準点の位置とに基づいて、現在画像上の注目点の位置を算出する。以下、現在画像上の注目点の位置を現在注目点と呼ぶことにする。
【0025】
D/A変換部38は、現在画像のデータをアナログ化して、表示部40を駆動させるための画像信号を得る。表示部40は、D/A変換部38に接続される。表示部40は、D/A変換部38から出力される画像信号が表す現在画像をモニタに表示する。この際、表示部40は、注目点算出部36により算出された現在注目点の位置を明示して表示する。また、表示部40は、複数のモニタを有しており、現在画像表示用のモニタとは、異なるモニタに過去画像を表示してもよい。
【0026】
操作部42は、術者等からの各種指令や情報入力を受け付ける。操作部42としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが適宜利用可能である。
【0027】
システム制御部44は、X線診断装置1の中枢として機能し、X線診断装置1の各部を制御する。例えば、システム制御部44は、操作部42から現在注目点の表示処理の開始信号が供給されることを契機として、各部を制御することにより現在注目点の表示処理を行なう。また、システム制御部44は、操作部42から相対位置データの保存処理の開始信号が供給されることを契機として、画像処理装置20内の各部を制御して相対位置データの保存処理をさせる。
【0028】
次にシステム制御部44の制御のもとに行なわれるX線診断装置1の処理の流れを説明する。本実施形態に係わる処理は、治療前に行なわれる相対位置データの保存処理と、治療中に行なわれる現在注目点の表示処理とに分けられる。まず、相対位置データの保存処理の臨床例について説明する。
【0029】
図2は、システム制御部44の制御のもとに行なわれる相対位置データの保存処理の典型的な流れを示す図である。
【0030】
<ステップSA1> まずは、術者は、操作部42に設けられた撮影開始ボタンを押す。操作部42からの撮影開始信号が供給されることを契機としてシステム制御部44は、撮影制御部17を制御して造影剤が注入された被検体を繰り返しX線撮影する。これにより治療前に関する過去画像のデータが繰り返し発生される。造影剤は、術者により被検体内に挿入されたカテーテルから注入される。従って発生される過去画像には、図3に示すように、造影剤により造影された血管に関する血管領域52とともに、カテーテルに関するカテーテル領域54やワイヤに関するワイヤ領域56が描出されている。撮影フレームレートは、予め定められており、典型的には、15フレーム/秒である。X線撮影は、少なくとも被検体の心臓が1心拍する時間以上行なわれる。発生された少なくとも1心拍分の複数の過去画像のデータは、画像データ記憶部24に記憶される。また、撮影中、心電計18は、被検体に関する複数の過去心電位相のデータを繰り返し検出している。画像データ記憶部24は、複数の過去心電位相のそれぞれのデータを、対応する過去画像に関連付けて記憶する。つまり、記憶される1心拍分の過去心電位相の数は、撮影フレームレートに応じて決定される。換言すれば、過去心電位相は、離散的なデータである。1心拍分の過去画像のデータが収集されると、自動的又は術者により操作部42を介して供給される撮影停止信号を受けてシステム制御部44は、撮影制御部17を制御してX線撮影を終了する。
【0031】
<ステップSA2> X線撮影が終了されるとシステム制御部44は、相対位置データの保存処理の開始指示を待機している。術者により操作部42を介して開始指示がなされると(ステップSA2:YES)システム制御部44は、相対位置データの保存処理を開始する。
【0032】
<ステップSA3> 相対位置データの保存処理においてシステム制御部44は、まず、画像データ記憶部24に記憶されている複数の過去画像の中から、処理対象の過去画像のデータを読み出す。処理対象の過去画像は、例えば、予め設定された過去心電位相に関する過去画像である。読み出された過去画像のデータは、システム制御部44により基準点特定部26に供給される。
【0033】
<ステップSA4> 過去画像が読み出されるとシステム制御部44は、基準点特定部26に過去基準点の特定処理を行なわせる。基準点特定部26は、処理対象の過去画像を画像処理して、過去画像上の基準点の位置を特定する。典型的には、過去画像に描出されているカテーテル領域の先端が過去基準点として特定される。
【0034】
画像処理としては、まず、処理対象の過去画像にサブトラクトバックグラウンド処理(Subtract Background)をし、サブトラクトバックグラウンド処理された過去画像にヒストグラムストレッチング処理(Histogram Stretching)をし、ヒストグラムストレッチング処理された過去画像に閾値処理(Threshold)をし、閾値処理された過去画像に侵食処理(erosion)をし、侵食処理された過去画像に膨張処理(dilation)をする。
【0035】
なお、サブトラクトバックグラウンド処理は、背景領域を滑らかにする画像処理である。サブトラクトバックグラウンド処理後の画像のヒストグラムは、処理前のヒストグラムに比して明るい領域(高画素値)に偏る。ヒストグラムストレッチング処理は、明るい領域に偏ったヒストグラムを修正するためにヒストグラムを広げる画像処理である。カテーテル領域は、ヒストグラム上において暗い領域(低画素値)にある。このことを利用し、閾値処理は、ヒストグラムストレッチング処理後の過去画像を構成する全画素のうちのカテーテル領域の画素値を有する画素を残し、それ以外の画素を除去する。閾値処理後の過去画像には、カテーテル領域だけでなく、複数の孤立点(ノイズ)を含む。侵食処理は、ミンコフスキー差を利用することにより、閾値処理後の過去画像から孤立点を消去する。この侵食処理により、孤立点とともに、カテーテル領域の縁(エッジ)も消去され、カテーテル領域が細くなる。膨張処理は、ミンコフスキー和を利用することにより、侵食処理後の過去画像上のカテーテル領域の太さを侵食処理前のカテーテル領域の太さに復元する。
【0036】
これら一連の画像処理により、図4に示すように、過去画像からカテーテル領域54が抽出される。抽出されたカテーテル領域54の先端部分58が過去基準点として特定される。特定された過去基準点58の座標データは、基準点特定部26によりベクトル算出部30に供給される。
【0037】
なお、これら一連の画像処理をしても過去画像上にカテーテル領域54ではない、孤立点60が含まれる場合がある。これは、血管領域52もカテーテル領域54と同程度の太さや画素値を有することに起因する。この場合、画像処理後の過去画像を表示部40に表示させて、表示されている過去画像上で術者により操作部42を介して基準点を指定させてもよい。また、画像処理前の過去画像上で指定させてもよい。
【0038】
なお、上述の一連の画像処理は、カテーテル領域の抽出方法の一例として説明した。従って、上述の全ての画像処理を行なわなくともカテーテル領域が抽出できるのであれば、必ずしも全ての画像処理を行なう必要はない。例えば、閾値処理のみでカテーテル領域を抽出してもよい。
【0039】
<ステップSA5> 過去基準点が特定されるとシステム制御部44は、注目点指定部28に過去注目点の指定処理を行なわせる。注目点指定部28は、図5に示すように、術者により操作部42を介して指定された点62を過去注目点に指定する。指定された注目点62の座標データは、注目点指定部28によりベクトル算出部30に供給される。
【0040】
注目点は、例えば、図5に示すように、CTO(chronic total occlusion:慢性完全閉塞病変)の狭窄部位の出口である。CTOの狭窄部位とは、慢性的に完全に閉塞された狭窄部位である。CTOの狭窄部位の出口付近は、造影しないと描出されない。
【0041】
また、他の注目点としては、ステントを留置する狭窄部位がある。狭窄部位は、造影しないと描出されない。
【0042】
さらに他の注目点としては、生体吸収ステントの端部がある。通常、ステントは、カテーテルの先端部に取り外し可能に取り付けられている。また、カテーテル上のステントの両端に相当する部分には、ステントをX線画像上で視認可能にするためのマーカが取り付けられている。ステントはカテーテルにより留置部位まで誘導され、留置部位において拡張される。拡張後、カテーテルはマーカとともに引き抜かれる。狭窄部位が大きい場合、ステントを2本挿入する場合がある。2本目のステントは、1本目の近傍に誘導される。しかし、1本目のステントの位置は、マーカがないので造影されていないと確認できない。そこで、2本目のステントの目標到達点として、1本目のステントの端に注目点が指定される。
【0043】
なお、指定方法は、特に限定しない。例えば、術者によりマウスを介して、表示部40に表示された過去画像上で所望の点を指定してもよい。また、テンキーを介して座標指定してもよい。また、矢印キーを介して、過去画像上でマーカを所望の点に移動させ、特定のキーを押すことにより指定してもよい。さらには、タッチパネルを介して、所望の点を直接触れることにより指定してもよい。
【0044】
<ステップSA6> 過去注目点が指定されるとシステム制御部44は、ベクトル算出部30にベクトルの算出処理を行なわせる。ベクトル算出部30は、図6に示すように、過去画像上における過去基準点58から過去注目点62へのベクトルを算出する。算出されたベクトルのデータは、ベクトル算出部30により相対位置データ記憶部32に供給される。
【0045】
<ステップSA7> ベクトルが算出されるとシステム制御部44は、相対位置データ記憶部32に記憶処理を行なわせる。相対位置データ記憶部32は、図7に示すように、ベクトルのデータと、処理対象の過去画像に関連付けられた過去心電位相とを関連付けて記憶する。すなわち、1心電位相分の相対位置データが記憶される。
【0046】
<ステップSA8> 相対位置データが記憶されるとシステム制御部44は、1心拍分の相対位置データが相対位置データ記憶部32に記憶されたか否かを判定する。
【0047】
<ステップSA9> ステップSA8において1心拍分の相対位置データが記憶されていないと判定されると(ステップSA8:NO)、システム制御部44は、処理対象の過去画像を、次の過去心電位相に関する過去画像に変更する。
【0048】
変更された処理対象についても、同様にステップSA3〜ステップS7が繰り返される。このようにして、1心拍分の相対位置データが相対位置データ32に記憶される。1心拍分の相対位置データの数は、過去心電位相の数、及び過去画像の数に一致する。換言すれば、相対位置データは、離散的なデータである。そしてステップSA8において1心拍分の相対位置データが記憶されたと判定されると(ステップSA8:YES)、システム制御部44は、相対位置データの保存処理を終了する。
【0049】
次に、治療中に行なわれる現在注目点の表示処理の臨床例について説明する。図8は、システム制御部44の制御のもとに行なわれる現在注目点の表示処理の典型的な流れを示す図である。
【0050】
<ステップSB1> まずは、術者等から操作部42を介した撮影の開始信号が供給されることを契機としてシステム制御部44は、撮影制御部17を制御して造影剤が注入されていない被検体を繰り返しX線撮影する。これにより治療中に関する現在画像のデータが繰り返し発生される。X線撮影中、術者は、被検体内の治療部位にカテーテルを進める。従って発生される現在画像には、図9に示すように、カテーテル領域54やワイヤ領域56が描出されている。しかし、被検体に造影剤が注入されていないので現在画像には、狭窄部位等の治療部位は描出されない。撮影フレームレートは、予め定められており、典型的には、15フレーム/秒である。発生された現在画像のデータは、画像データ記憶部24に記憶される。なお、現在画像の撮影中における被検体の位置及び撮影角度は、過去画像の撮影中における被検体の位置及び撮影角度に一致する。従って、現在画像と過去画像とは、すでに位置合わせされているものとする。また、X線撮影中、心電計18は、被検体に関する現在心電位相のデータを繰り返し検出している。画像データ記憶部24は、現在心電位相のデータを現在画像に関連付けて記憶する。
【0051】
<ステップSB2> 現在画像と現在心電位相とのデータが収集されるとシステム制御部44は、基準点特定部26に現在基準点の特定処理をリアルタイムに行なわせる。基準点特定部26は、画像データ記憶部24に記憶されている現在画像を読み出して、読み出された現在画像を画像処理して、現在画像上の現在基準点の位置を特定する。典型的には、現在画像に描出されているカテーテル領域の先端が現在基準点として特定される。なお、画像処理の内容は、ステップSA4における過去基準点の特定のための画像処理と同様なので説明を省略する。
【0052】
<ステップSB3> ステップSB2と並行してシステム制御部44は、ベクトル特定部34に過去心電位相の決定処理を行なわせる。まず、ベクトル特定部34は、画像データ記憶部24に記憶されている現在画像を読み出して、読み出された現在画像に関連付けられた現在心電位相を特定する。そしてベクトル特定部34は、相対位置データ記憶部32に記憶されている複数の過去心電位相の中から、特定された現在心電位相に対応する過去心電位相を決定する。現在心電位相に一致する過去心電位相がある場合、この一致する過去心電位相が現在心電位相に対応する過去心電位相に決定される。現在心電位相に一致する過去心電位相がない場合、現在心電位相に最も近い心電位相を有する過去心電位相が現在心電位相に対応する過去心電位相に決定される。
【0053】
<ステップSB4> 過去心電位相が決定されるとベクトル特定部34は、決定された過去心電位相に相対位置データ記憶部32上で関連付けられたベクトルを特定する。特定されたベクトルのデータは、ベクトル特定部34により注目点算出部36に供給される。
【0054】
<ステップSB5> 現在基準点とベクトルとが特定されるとシステム制御部44は、注目点算出部36に現在注目点の位置の算出処理を行なわせる。注目点算出部36は、現在基準点の座標と特定されたベクトルとに基づいて現在注目点の位置を算出する。具体的には、図10に示すように、特定されたベクトル66の始点を現在基準点68に一致させ、そのベクトル66が指し示す位置を現在注目点70とする。このように、ベクトル66を利用することにより、現在基準点68からの相対位置として現在注目点70の位置を算出することができる。現在注目点68の位置は、注目点算出部36によりD/A変換部38に供給される。
【0055】
<ステップSB6> 現在注目点の位置が算出されるとシステム制御部44は、表示部40に現在注目点の表示処理を行なわせる。D/A変換部38は、画像データ記憶部24から現在画像のデータを読み出して、読み出された現在画像のデータをアナログ化し、アナログ化された現在画像のデータを表示部40に供給する。表示部40は、図11に示すように、供給された現在画像を表示するとともに、算出された現在注目点の位置を明示して表示する。明示方法としては、他の部分とは異なる輝度や明度、色で現在注目点の位置を表示させたり、矢印等のマークを表示したりする方法がある。
【0056】
なお、現在画像上で現在注目点を明示して表示することで、カテーテル等のデバイス操作の邪魔になる場合が想定される。このため、現在注目点の明示表示の有無を選択するためのユーザインターフェースが例えば操作部42に用意されていてもよい。例えば、明示表示の有無を選択するためのスイッチが操作部42に装備されているとよい。
【0057】
これらステップSB1〜ステップSB7は、現在画像が発生される度に繰り返しリアルタイムに行なわれる。従って術者は、現在画像のみを観察することで、現在のカテーテル位置と、カテーテルの目標到達地点である現在注目点とを動画上で視認することができる。
【0058】
次に現在注目点の位置の表示精度を検証する。本発明者は、本実施形態による現在注目点の表示精度と従来技術による表示精度とを比較するためにシミュレーションを行なった。シミュレーションには、現在画像A、現在画像B、現在画像C、現在画像Dの4つの現在画像を用いた。これら4つの現在画像は、A→B→C→Dの順番に発生され、互いに同一心電位相である。また、現在画像Aと現在画像Cとは、同一呼吸位相(すなわち、被検体の横隔膜の位置が一致している位相)である。現在基準点をカテーテル先端とし、現在注目点を、臨床における主な使用用途であるCTOの狭窄部位出口とした。なお従来技術としては、一般的な従来の心電同期手法を採用した。従来の心電同期手法は、1心拍分の過去画像(造影血管画像)を使い、心電同期により現在画像(透視画像)と同じ又は近い心電位相の過去画像を現在画像上に表示する手法である。この場合、血管等の注目点は、ユーザ自身で判断する必要がある。
【0059】
まずは、互いに同一心電位相且つ同一呼吸位相である現在画像Aと現在画像Cとを用いた現在注目点の表示精度の比較結果について説明する。図12に示すように現在画像Aのカテーテル先端(現在基準点)の座標は(x,y)=(173,162)、CTOの狭窄部位出口(現在注目点)の座標は(x,y)=(376,137)であった。同様に現在画像Cのカテーテル先端の座標は(x,y)=(171,148)、CTOの狭窄部位出口の座標は(x,y)=(370,124)であった。従って、現在画像Aのカテーテル先端の座標と現在画像Cのカテーテル先端の座標との差は(x,y)=(−2,−14)、現在画像Aの狭窄部位出口の座標と現在画像Cの狭窄部位出口の座標との差は(x,y)=(−6,−13)となる。また、現在画像Aのカテーテル先端から狭窄部位出口へのベクトルAは(x,y)=(203,−25)、現在画像Cのカテーテル先端から狭窄部位出口へのベクトルCは(x,y)=(199,−24)であった。従って、現在画像Aのベクトルと現在画像Cのベクトルとの差は(x,y)=(−4,1)となる。
【0060】
上記のデータから、図13に示すように、現在画像Aの狭窄部位出口の座標と現在画像Cの狭窄部位出口の座標との差の距離(ずれ)は、14.32ピクセルとなる。一方、現在画像AのベクトルAと現在画像CのベクトルCとの差の距離(ずれ)は、4.12ピクセルである。各距離は、0ピクセルが理想である。この結果から、座標間の差の距離(ずれ)に比して、ベクトル間の差の距離(ずれ)の方が小さいことがわかる。すなわち、CTOの手技における狭窄部位出口に関しては、距離(ずれ)を71%低減できていることが分かる。この結果は、単純に画像を重ね合わせる従来技術よりも、現在基準点からのベクトルを用いて現在注目点を表示する本実施形態の技術の方が、注目点の表示精度が高いことを示している。
【0061】
次に、互いに同一心電位相であり、異なる呼吸位相である現在画像Aと現在画像Bを用いた現在注目点の表示精度の比較結果について説明する。図14に示すように、現在画像Aのカテーテル先端の座標と現在画像Bのカテーテル先端の座標との差は(x,y)=(0,17)、現在画像Aの狭窄部位出口の座標と現在画像Bの狭窄部位出口の座標との差は(x,y)=(2,18)であった。従って、現在画像Aの狭窄部位出口の座標と現在画像Bの狭窄部位出口の座標との差の距離(ずれ)は、18.11ピクセルとなる。また、現在画像Aの現在基準点から現在注目点へのベクトルと現在画像Bの現在基準点から現在注目点へのベクトルとの差は(x,y)=(2,1)であった。従って現在画像Aのベクトルと現在画像Bのベクトルとの差の距離(ずれ)は、2.24ピクセルである。すなわち、現在画像Aと現在画像Bの場合、CTOの手技における狭窄部位出口に関しては、距離(ずれ)を88%低減できていることが分かる。
【0062】
図15に示すように、互いに同一心電位相であり、異なる呼吸位相である現在画像Aと現在画像Dの現在注目点の検出精度の比較結果についても図14と同様の傾向が見られた。すなわち、現在画像Aと現在画像Dの場合、CTOの手技における狭窄部位出口に関しては、距離(ずれ)を84%低減できていることが分かる。
【0063】
これら図14と図15との両方の結果から、互いに同一心電位相であり、異なる呼吸位相であっても、従来技術(従来の心電同期手法)よりも本実施形態の技術の方が、注目点の表示精度が高いことを示している。
【0064】
次に、図16を参照しながら、本実施形態の技術による現在注目点の実寸のずれ量が臨床上の許容範囲内に収まっていることについて具体例を挙げて説明する。なお、図16に使用している画像は、現在画像A〜Dの術後(ステント留置後)に関する画像である。この画像と現在画像A〜DとのFOV(視野サイズ)は、同一である。
【0065】
ステント留置は、非常に細かい作業となる。従って術者からは、非常に厳しいステント位置の表示精度が要請される。具体的には、1mm以上のずれがあっては、臨床上あまり役に立たないといえる。従って、臨床上における現在注目点の実寸のずれ量の許容範囲は、1mm以下が適当である。
【0066】
図16に示すように、現在画像上におけるステントの厚さ方向の両端部の座標は、それぞれ(x,y)=(188,80)、(x,y)=(192,97)であった。従って、ステント径は、17.46ピクセルである。ここで、例えば、ステント径が3.5mmであるとする。この場合、3.5mm=17.46ピクセルという対応関係が成り立つ。この対応関係に従えば、1mm=4.99ピクセルとなる。
【0067】
上述のように現在画像Aと現在画像Cとに関する現在注目点間の座標差は14.32ピクセル、ベクトル差は4.12ピクセルであった。同様に、上述のように現在画像Aと現在画像Bとに関する現在注目点間の座標差は18.11ピクセル、ベクトル差は2.24ピクセルであり、現在画像Aと現在画像Dとに関する現在注目点間の座標差は13.93ピクセル、ベクトル差は2.24ピクセルであった。
【0068】
従って上記の対応関係に従えば、現在注目点間の座標差とベクトル差との実寸距離は、以下の通りである。現在画像Aと現在画像Cとに関する現在注目点間の座標差は2.87mm、ベクトル差は0.83mm。現在画像Aと現在画像Bとに関する現在注目点間の座標差は3.63mm、ベクトル差は0.45mm。現在画像Aと現在画像Dとに関する現在注目点間の座標差は2.79mm、ベクトル差は0.45mm。この結果を見れば明らかなように、いずれの場合もベクトル差が許容範囲、すなわち1mm以内に収まっている。従って、本実施形態の技術は、臨床上の要請に耐えうる精度を有し、実用可能性が十分にある。
【0069】
上記構成によりX線診断装置1は、現在画像(透視画像)上で狭窄部位等の注目点を高精度に表示する。これにより術者は、別々のモニタに表示される過去画像(造影画像)と現在画像とを交互に見て注目点の位置を把握する必要がなくなる。また、従来技術に比して造影撮影の回数が減少することにより、患者の負担も軽減される。かくして、本実施形態に係わるX線診断装置1は、カテーテル術の効率向上を実現することが可能となる。
【0070】
(変形例)
上記本実施形態のステップSB4においてベクトルは、現在心電位相に一致する又は隣接する過去心電位相に関連付けられたものに決定された。これから説明する変形例においてベクトルは、現在心電位相と過去心電位相が一致しない場合、現在心電位相を挟んで隣合う2つの過去心電位相に関連付けられた2つのベクトルに基づいて補間される。
【0071】
図17は、本実施形態の変形例に係わるX線診断装置2の構成を示す図である。図17に示すように、変形例に係わるX線診断装置2は、さらにベクトル補間部46を備える。ベクトル補間部46は、現在心電位相を挟んで隣合う2つの過去心電位相に関連付けられた2つのベクトルに基づいて、現在心電位相に対応するベクトルを補間する。
【0072】
次にシステム制御部44の制御のもとに行なわれる変形例に係わる現在注目点の表示処理の臨床例を説明する。図18は、変形例に係わる現在注目点の表示処理の典型的な流れを示す図である。
【0073】
<ステップSC1> ステップSB3においてベクトル算出部30により、相対位置データ記憶部32に記憶されている複数の過去心電位相の中に、現在心電位相に一致する過去心電位相がないと判定されると、システム制御部44は、ベクトル補間部46に2つの過去心電位相の特定処理を行なわせる。ベクトル補間部46は、相対位置データ記憶部32に記憶されている複数の過去心電位相の中から、現在心電位相を挟んで隣合う2つの過去心電位相を特定する。
【0074】
<ステップSC2> 2つの過去心電位相が特定されるとシステム制御部44は、ベクトル補間部46にベクトルの特定処理を行なわせる。ベクトル補間部46は、特定された2つの過去心電位相に相対位置データ記憶部32内で関連付けられた2つのベクトルを特定する。
【0075】
<ステップSC3> 2つのベクトルが特定されるとシステム制御部44は、ベクトルの補間処理を行なわせる。ベクトル補間部46は、特定された2つのベクトルに基づいて、現在心電位相に一致する過去心電位相に関するベクトルを補間する。補間処理としては、例えば、2つのベクトルの平均値や中間値に設定される。より高精度な補間が求められる場合、2つのベクトルとそれに対応する2つの過去心電位相とに基づいてベクトルを補間してもよい。補間法としては、線形補間法や、スプライン補間法、ラグランジュ補間法、最小2乗法等の既存のあらゆる方法が可能である。補間されたベクトルのデータは、ベクトル補間部46により注目点算出部36に供給される。
【0076】
ベクトルが補間されると、図8のステップSB5とステップSB6とが順番に行なわれる。
【0077】
なおベクトル補間部46によりベクトルを補間可能なことにより、予め相対位置データ記憶部32に保存させておく相対位置データ(ベクトル)の数を上記実施形態に比して削減できる。例えば、操作部42を介して相対位置データの算出対象の過去画像を選択可能にするとよい。より具体的には、操作部42を介して相対位置データの算出対象となる過去心電位相を選択可能にするとよい。選択数は、操作部42を介して任意に設定可能である。具体的には、図19に示すように、1心拍のうちの5箇所(例えば、P波の開始時θ1、QRS波の終了時θ2、T波の開始時θ3、T波の終了時θ4、U波の終了時θ5)程度心電位相が選択されればよい。これにより、相対位置データの算出対象を減少させることで、注目点を指定する手間を省ける。
【0078】
かくして、本実施形態の変形例に係わるX線診断装置2は、カテーテル術の効率向上を実現することが可能となる。
【0079】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施形態に係わるX線診断装置の構成を示す図。
【図2】図1のシステム制御部の制御のもとに行なわれる相対位置データの保存処理の典型的な流れを示す図。
【図3】図2のステップSA1において収集される過去画像の一例を示す図。
【図4】図2のステップSA4において行なわる過去基準点の特定処理を説明するための図。
【図5】図2のステップSA5において行なわれる過去注目点の指定処理を説明するための図。
【図6】図2のステップSA6において行なわれるベクトルの算出処理を説明するための図。
【図7】図2のステップSA7において行なわれる相対位置データの記憶処理を説明するための図。
【図8】図1のシステム制御部の制御のもとに行なわれる現在注目点の表示処理の典型的な流れを示す図。
【図9】図8のステップSB1において収集される現在画像の一例を示す図。
【図10】図8のステップSB5における現在注目点の位置の算出処理を説明するための図。
【図11】図8のステップSB6における現在注目点の明示表示処理を説明するための図。
【図12】本実施形態の技術と従来技術との注目点の表示精度の比較結果を示す図。
【図13】本実施形態の技術と従来技術との注目点の表示精度の比較結果を示す図。
【図14】本実施形態の技術と従来技術との注目点の表示精度の比較結果を示す図。
【図15】本実施形態の技術と従来技術との注目点の表示精度の比較結果を示す図。
【図16】本実施形態の技術による現在注目点の実寸のずれ量が臨床上の許容範囲内に収まっていることについて具体例を示す図。
【図17】本実施形態の変形例に係わるX線診断装置の構成を示す図。
【図18】図17のシステム制御部の制御のもとに行なわれる現在注目点の表示処理の典型的な流れを示す図。
【図19】変形例において選択される心電位相の一例を示す図。
【符号の説明】
【0081】
1…X線診断装置、10…撮影部、11…Cアーム、12…X線管、13…X線検出器、14…高電圧発生器、15…X線絞り器、16…Cアーム駆動部、17…撮影制御部、18…心電計、20…画像処理装置、22…A/D変換部、24…画像データ記憶部、26…基準点特定部、28…注目点指定部、30…ベクトル算出部、32…相対位置データ記憶部、34…ベクトル特定部、36…注目点算出部、38…D/A変換部、40…表示部、42…操作部、44…システム制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の複数の過去画像に関する過去基準点から過去注目点への複数のベクトルと、前記複数の過去画像に関する複数の過去心電位相とを関連付けて記憶する記憶部と、
前記被検体の現在画像を撮影するためにX線管と検出器とを備える撮影部と、
前記現在画像上の現在基準点を画像処理により特定する第1特定部と、
前記現在画像に関する現在心電位相を検出する検出部と、
前記複数のベクトルの中から、前記検出された現在心電位相に対応する過去心電位相に関連付けられた特定のベクトルを特定する第2特定部と、
前記特定された特定のベクトルと前記現在基準点の位置とに基づいて前記現在画像上の現在注目点の位置を算出する第1算出部と、
前記算出された現在注目点の位置を明示して前記現在画像を表示する表示部と、
を具備するX線診断装置。
【請求項2】
前記複数の過去画像をそれぞれ画像処理して複数の前記過去基準点を特定する第3特定部と、
前記複数の過去画像上で複数の前記過去注目点を画像処理又は手動でそれぞれ指定する指定部と、
前記複数の過去画像のそれぞれについて、前記過去基準点から前記過去注目点への前記ベクトルを算出する第2算出部と、をさらに備える、
請求項1記載のX線診断装置。
【請求項3】
2つの前記過去心電位相に関する2つの前記ベクトルに基づいて前記2つの過去心電位相の間の過去心電位相に関するベクトルを補間する補間部をさらに備える、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記複数の過去心電位相のうちの所定の過去心電位相と前記所定の過去心電位相に関するベクトルとのみを記憶する、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項1】
被検体の複数の過去画像に関する過去基準点から過去注目点への複数のベクトルと、前記複数の過去画像に関する複数の過去心電位相とを関連付けて記憶する記憶部と、
前記被検体の現在画像を撮影するためにX線管と検出器とを備える撮影部と、
前記現在画像上の現在基準点を画像処理により特定する第1特定部と、
前記現在画像に関する現在心電位相を検出する検出部と、
前記複数のベクトルの中から、前記検出された現在心電位相に対応する過去心電位相に関連付けられた特定のベクトルを特定する第2特定部と、
前記特定された特定のベクトルと前記現在基準点の位置とに基づいて前記現在画像上の現在注目点の位置を算出する第1算出部と、
前記算出された現在注目点の位置を明示して前記現在画像を表示する表示部と、
を具備するX線診断装置。
【請求項2】
前記複数の過去画像をそれぞれ画像処理して複数の前記過去基準点を特定する第3特定部と、
前記複数の過去画像上で複数の前記過去注目点を画像処理又は手動でそれぞれ指定する指定部と、
前記複数の過去画像のそれぞれについて、前記過去基準点から前記過去注目点への前記ベクトルを算出する第2算出部と、をさらに備える、
請求項1記載のX線診断装置。
【請求項3】
2つの前記過去心電位相に関する2つの前記ベクトルに基づいて前記2つの過去心電位相の間の過去心電位相に関するベクトルを補間する補間部をさらに備える、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記複数の過去心電位相のうちの所定の過去心電位相と前記所定の過去心電位相に関するベクトルとのみを記憶する、請求項1記載のX線診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−172504(P2010−172504A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18603(P2009−18603)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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