説明

ZnAlターゲットの作製方法およびそれにより作製されたZnAlターゲット

本発明は、亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を提供し、放電プラズマ焼結処理を用いてその亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を焼結させてZnAl合金を得ることによりZnAl合金ターゲット材料を作製するための方法を提供する。本発明はまた、上記の方法によって作製されたZnAl合金ターゲット材料を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性酸化物薄膜を作製するために使用されるZnAlターゲット材料を作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電性酸化物(TCO)薄膜は、可視光線スペクトル域での高い透過率および優れた導電性を有し、フラット液晶ディスプレイパネル、電界放出ディスプレイユニット、エレクトロルミネセンスディスプレイユニット、太陽光制御フィルム、および薄膜太陽電池等用透明電極などの分野において広範な用途を有している。TCO薄膜としては、In、Sn、ZnおよびCdの酸化物ならびにそれらのドープまたは複合多成分酸化物(multinary oxide)(例えば、In、SnO、ZnO、ITO(In:Sn)、FTO(SnO:F)、InSnO、ZnSnO、CdIn、GaInO、CdSbなど)を含む薄膜材料が主として挙げられる。しかしながら、その性能および費用を考慮すると、現在最も広範な用途を有するものは、ITOおよびFTOの透明導電膜である。通常、ITO薄膜は、マグネトロンスパッタリング処理により作製される。しかしながら、インジウムは希少元素であり、インジウムの天然埋蔵量は非常に限られている。したがって、ITOターゲット材料は高価であり、これがITO薄膜の高い費用に繋がり、ITO薄膜が広く使用されるのを妨げている。FTO薄膜に関しては、その透過率が水素プラズマ雰囲気中で減ぜられる場合があり、このことが一部の分野における(特に、薄膜太陽電池における)その利用を制限している。また、FTO薄膜は、通常、化学的蒸着技術によって作製される。必要とされる原料のうち、Snの前駆体としての金属有機化合物(例えば、テトラメチルスズ)は高価である。そのため、FTO薄膜の価格は依然として高いままとなっている。したがって、優れた幅広い特性を有するだけでなく、費用面でも有利なTCO薄膜を開発する緊急の必要性がある。現在のところ、多くのTCO薄膜組成物のうち、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)薄膜が、最も多くの発展の可能性を有している。
【0003】
スパッタリング処理によってAZO透明導電膜を作製するためには、対応するターゲット材料を得る必要がある。AZO薄膜を作製するためのターゲット材料は、異なる原料により、(1)ZnOおよびAlからなるセラミックターゲット材料と、(2)ZnおよびAlからなる金属ターゲット材料との2種類に分類され得る。比較して言えば、ZnAl金属ターゲット材料の方が、より低い焼結温度、より速いAZO薄膜蒸着速度、薄膜コーティングの間の酸素含有量のより優れた制御性、およびより低い費用を有しており、したがって、より好都合である。しかしながら、既存のZnAlターゲット材料作製技術で得られたターゲット材料は、高品質のAZO薄膜により要求される、高い密度、極めて小さい結晶粒度、ならびに微細構造および化学組成の分布均一性という要件を同時に満たし得ない。現在のところ、ZnAlターゲット材料の作製技術は、次の(1)〜(4)に分類され得る。
【0004】
(1)鋳込み法:この方法では、ZnおよびAl原料を溶融させ、鋳型中で鋳造する。Zn溶融物(6.57g/cm)とAl溶融物(2.38g/cm)の間で密度が大きく異なるため、ターゲット材料内の化学組成の分布は均一ではなく、得られるZnおよびAl粒子の結晶粒度は相対的に大きい(100μmと2000μmの間)。
【0005】
(2)スプレー蒸着法:この方法では、溶融されたZnおよびAl金属を噴霧し、次いで急速に凝固させながら堆積させる。この方法によって作製されるターゲット材料の密度は高くなく、90%を超えるのは困難である。
【0006】
(3)常圧焼結またはホットプレス焼結法:この方法では、Zn粉末およびAl粉末を出発原料として使用し、これを成型し、次いで、空気、窒素または酸素雰囲気中で、常圧焼結またはホットプレス焼結法で焼結させる。この方法は不均一性の問題をある程度まで回避したが、ターゲット材料に不純物を導入する可能性があり、また、この方法は長い焼結時間および高いエネルギー消費を必要とする。得られる結晶粒度は、通常、数十ミクロン〜数百ミクロンである。例えば、Han Binらは、非特許文献1において、Zn粉末およびAl粉末を出発原料として使用し、常温圧縮または熱間圧縮により成型した後、電気抵抗炉で焼結させたことを報告した。全焼結過程は、緻密化が開始され得るまでに40〜140時間を要した。その焼結圧縮粉の結晶粒度は、数十ミクロンより大きい。
【0007】
(4)複合材料法:特許文献1は、ZnAl合金を作製するための方法に関し、この方法では、溶融後に得られるZnAl合金インゴットを単ロール急冷凝固で平たくして合金帯を得る。次いで、この合金帯を粉砕し、最後にホットプレス焼結法によって焼結させる。この方法は、鋳込み法の不均一性の問題を解決したが、この作製方法の方がより複雑であり、より長いプロセスフローを有する。同時にこの方法は、ホットプレス法に存在する不都合を回避することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許第1238543(C)号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Investigation on the Pseudo−eutectic Structure Formed by Solid Diffusion of Zn Powder and Al Powder(JOURNAL OF AERONAUTICAL MATERIALS、第21巻、第2号、2001年6月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、ZnAlターゲット材料の作製方法を見出す緊急の必要性が当該技術分野において存在する。その方法は、大きい面積、高い品質および優れた分布均一性を有するAZO透明導電膜を得るのに有益であるような、高い密度、極めて小さい結晶粒度、ならびに化学組成および微細構造の分布均一性の組み合わせをターゲット材料に付与すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下の2つの工程:
(1)亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を提供する工程;および
(2)その亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を放電プラズマ焼結させる工程であって、ZnAl合金ターゲット材料が作製される工程
を含む、ZnAl合金ターゲット材料を作製するための方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1において得られたZnAl合金のX線回折スペクトルを図示している。
【図2】実施例2において得られたZnAl合金の走査電子顕微鏡写真を図示している。
【図3】実施例3において使用された温度曲線を図示している。
【図4】実施例3において得られた実際のZnAl合金の写真を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、具体的に規定されていない場合、百分率(%)または「部」は、重量百分率または重量部をいう。
【0014】
本発明において、具体的に規定されていない場合、組成物中の個々の成分または好ましい成分を互いに組み合わせて、新しい調合物を生成し得る。
【0015】
本発明において、そうでないことが規定されていない場合、組成物中の個々の成分の含有量の合計は、100%である。
【0016】
本発明において、そうでないことが規定されていない場合、組成物中の個々の成分の部数の合計は、100重量部であり得る。
【0017】
本発明において、別段の規定のない限り、数値範囲「a〜b」は、aとbとの範囲内にある実数の任意の組み合わせの省略表現であり、aおよびbはともに実数である。例えば、数値範囲「0〜5」は、「0〜5」の範囲内にある全ての実数が本明細書に列記されていることを意味する。「0〜5」は、これらの数の任意の組み合わせの省略表現に過ぎず、両端点の数字および「0〜5」の間に見出される全ての実数を含む。
【0018】
本発明において、別段の規定のない限り、整数「a〜b」という数値範囲は、整数aおよびbならびにaとbの間の全ての整数の任意の組み合わせの省略表現であり、aおよびbはともに整数である。例えば、整数「1〜N」という数値範囲は、1、2・・・Nを意味し、Nは整数である。
【0019】
本発明において、別段の規定のない限り、「それらの組み合わせ」とは、個々の成分の多成分混合物(例えば、2種、3種、または4種の成分(可能な限りの多くの種類までの成分)の多成分混合物)を意味する。
【0020】
本明細書に開示される場合、用語「範囲」は、下限および上限の形で規定される。範囲は、1つまたはいくつかの下限および1つまたはいくつかの上限をそれぞれ有し得る。所与の範囲は、1つの下限および1つの上限を選択することにより規定される。その選択された下限および上限は、特定の範囲の境界を規定する。このようにして規定され得る範囲は全て、包含的であり、かつ組み合わされ得る。すなわち、任意の下限が任意の上限と組み合わされて、1つの範囲を形成し得る。例えば、特定のパラメータについて、60〜120の範囲および80〜110の範囲が与えられる場合、60〜110の範囲および80〜120の範囲もまた予想され得ると解釈されるべきである。さらに、最小範囲値が1および2と規定され、最大範囲値が3、4および5と規定される場合、以下の範囲:1〜3、1〜4、1〜5、2〜3、2〜4および2〜5の全てが予想され得る。
【0021】
本発明において、用語「合金」および「ターゲット材料」は、同じ意味を有し、ともに、一般的な金属特性を有し、ある種類の金属と別の種類(またはいくつかの種類)の金属または非金属とからなる物質を表す。
【0022】
本発明において、用語「化学組成および微細構造が均一に分布している」とは、Al相がターゲット材料内の至る所でZn相中の結晶粒の間に均一に分布していることを意味する。大きなAl相集中域または非占有域部分は存在しない。Al相中の結晶粒の大きさは実質的に一定であり、Zn相中の結晶粒の大きさもまた、実質的に一定である。
【0023】
本発明は、ZnAlターゲット材料を作製するための方法を提供する。本方法によって作製されるこのターゲット材料は、その高い密度、極めて小さい結晶粒度、ならびに化学組成および微細構造の分布均一性により特徴づけられる。このターゲット材料から作製されるAZO薄膜は、ITOおよびFTOの優れた代替物である。特に、このAZO薄膜は、太陽エネルギー変換用透明電極の分野における利用の有望な可能性を有している。
【0024】
本発明の別の目的は、高い密度、極めて小さい結晶粒度、ならびに化学組成および微細構造の分布均一性により特徴づけられる、ZnAlターゲット材料を提供することである。ターゲット材料から作製されるAZO薄膜は、ITOおよびFTOの優れた代替物である。特に、このAZO薄膜は、太陽エネルギー変換用透明電極の分野における利用の有望な可能性を有している。
【0025】
本発明の1つの態様は、以下の2つの工程:
(1)亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を提供する工程;および
(2)その亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を放電プラズマ焼結処理により焼結させることによってZnAl合金を得る工程
を含む、ZnAl合金ターゲット材料を作製するための方法を提供する。
【0026】
本発明に従う好ましい実施形態において、亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を提供する工程は、以下の通りである:
−ボールミル粉砕のためのボールミルポットに金属Zn粉末およびAl粉末を入れ;そして
−ボールミル粉砕が完了した後、20〜90℃の範囲の温度にて、真空中で、0.5〜24時間にわたってそれらの粉末を乾燥させる。
【0027】
本発明に従う好ましい実施形態において、ボールミル粉砕は、低温ボールミル粉砕および湿式ボールミル粉砕などを含む。
【0028】
本発明に従う好ましい実施形態において、ボールミル粉砕の作業条件は、200rpm〜1500rpmの回転速度、および1〜48時間にわたるボールミル粉砕を含む。
【0029】
本発明に従う好ましい実施形態において、Zn粉末およびAl粉末の総重量に基づき、Zn粉末の含量は80%〜100%未満であり、Al粉末の含量は20%〜0%より多く;好ましくは、Zn粉末の含量は90%〜99.99%であり、Al粉末の含量は10%〜0.01%であり;より好ましくは、Zn粉末の含量は95%〜99%であり、Al粉末の含量は5%〜1%である。
【0030】
本発明に従う好ましい実施形態において、Zn粉末および/またはAl粉末の粒度は、100〜1000メッシュであり、好ましくは、100〜500メッシュであり、より好ましくは、300〜500メッシュである。
【0031】
本発明に従う好ましい実施形態において、放電プラズマ焼結処理は、以下のように行われる:亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を黒鉛または金属の型に入れ、次いでこの型を放電プラズマ焼結炉に入れて、真空中で放電プラズマ焼結させる。
【0032】
本発明はまた、透明導電性酸化物薄膜を作製するためのZnAlターゲット材料であって、本発明に従う方法によって作製されるZnAlターゲット材料を提供する。
【0033】
本発明はまた、透明導電性酸化物薄膜を作製するためのZnAlターゲット材料であって、ZnAlターゲット材料の相対密度が96%以上であり、かつ/またはその結晶粒度が10ミクロン以下である、ZnAlターゲット材料を提供する。
【0034】
本発明に従う好ましい実施形態において、相対密度は、96%〜99.5%、より好ましくは97%〜98.5%、最も好ましくは98%〜98.5%であり、かつ/または結晶粒度は、0.1〜10ミクロン、好ましくは1〜8ミクロン、より好ましくは1〜5ミクロン、最も好ましくは1〜4ミクロンである。
【0035】
本発明に従う好ましい実施形態において、ZnAlターゲット材料は、そのZnAlターゲット材料の総重量に基づき、80%〜100%未満のZnおよび20%〜0%超のAlを含有し;好ましくは、ZnAlターゲット材料は、90%〜99.99%のZnおよび10%〜0.01%のAlを含有し;より好ましくは、ZnAlターゲット材料は、95%〜99%のZnおよび5%〜1%のAlを含有する。
【0036】
本発明に従う好ましい実施形態において、ZnAlターゲット材料の化学組成および微細構造は均一に分布している。
【0037】
本発明の利点は、作製されたターゲット材料が、高い密度(Alfa Mirage SD−200L比重計を用いて排水法(drainage method)により測定される場合に96%より高い相対密度)、極めて小さい結晶粒度(FEI NOVA 200 NanoLab Dualbeam(商標)SEM/FIBシステムを用いて観察される場合に10ミクロン未満の平均結晶粒度)、ならびに化学組成および微細構造の分布均一性という特性の組み合わせを有する点である。したがって、本ターゲット材料は、先行技術に存在する問題を克服した。さらに、本発明において記載される作製技術は、短縮された焼結時間および低くなった焼結温度を有し、このことは、能率の向上およびエネルギーの節約において重要な意義を有する。
【0038】
本発明は、主として放電プラズマ焼結技術の使用を特徴とし、これにより、ターゲット材料は、高い密度、極めて小さい結晶粒度、ならびに化学組成および微細構造の分布均一性を有することが可能となる。このターゲット材料から作製されたAZO薄膜は、ITOおよびFTOの優れた代替物である。特に、このAZO薄膜は、太陽エネルギー変換用透明電極の分野における利用の有望な可能性を有している。
【0039】
本発明のZnAlターゲット材料の放電プラズマ焼結作製技術とは、型および試料にDCパルス電流を直接印加し、ZnおよびAl金属粉末の粒子間または空隙において熱運動および電界作用により瞬間的な高温プラズマを生じさせることである。そうした非常に活性なイオン化ガスは、ZnおよびAl粒子の高速な拡散および移動を誘発し、焼結緻密化の迅速な完了を促進し得る。この技術は、低い焼結温度、短い焼結時間、焼結された材料の高い密度などのいくつもの特徴を有しており、極めて小さい結晶粒ならびに緻密な組織および均一な微細構造を有する材料を生じ得る。
【0040】
さらに詳細に、以下の2つの工程:
(1)亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を提供する工程;および
(2)亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を放電プラズマ焼結させる工程であって、その焼結処理によりZnAl合金が得られる工程
を含む、ZnAl合金ターゲット材料を作製するための方法が記載される。
【0041】
本発明のZnAlターゲット材料を作製するための方法において、亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を提供する工程は、従来のものである。当業者は、本発明の記載に従う方法を、先行技術と組み合わせて直ちに得ることができる。例えば、その粉末混合物を作製するための方法は、Chen Hanbinら,Microstructure of Nano−crystalline Al−Zn−Mg−Cu Alloy Prepared by Spark Plasma Sintering(Journal of Beijing University of Science and Technology.第29巻,第3号,2007年3月)により開示されている。
【0042】
本発明に従う好ましい実施形態において、亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を提供する工程は、以下の通りである:
−ボールミル粉砕のためのボールミルポットに金属Zn粉末およびAl粉末を入れ;−それらの粉末をボールミル粉砕し;
−ボールミル粉砕が完了した後、20〜90℃の範囲の温度にて、真空中で、0.5〜24時間にわたってそれらの粉末を乾燥させる。
【0043】
本発明において、ボールミル粉砕方法は、従来のものである。当業者は、本発明の記載に従うボールミル粉砕作業を、先行技術と組み合わせて直ちに行い得る。通常、ボールミル粉砕は、低温ボールミル粉砕および/または湿式ボールミル粉砕などを含む。
【0044】
一般的に使用されるボールミル粉砕処理において、粉砕ボールとしては、通常、アルミナ、ジルコニア、ステンレス鋼、メノウの粉砕ボールまたはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されず;ボールミル粉砕媒体としては、メタノール、エタノール、アセトンもしくはエチレングリコールなど(湿式ボールミル粉砕の場合)または液体窒素など(低温ボールミル粉砕の場合)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本発明において、粉砕ボール/粉末/媒体の重量比は、従来のものである。当業者は、特定の用途に応じたそれらの重量比を、先行技術に基づき直ちに得ることができる。通常、粉砕ボール/粉末/媒体の重量比は、20:(2〜20):(1〜2.5)である。
【0046】
本発明において、ボールミル粉砕の作業条件は、従来のものである。当業者は、実際の状況に応じてボールミル粉砕の作業条件を選択し得る。本発明に従う好ましい実施形態において、ボールミル粉砕の作業条件は、200rpm〜1500rpmの回転速度、および1〜48時間にわたるボールミル粉砕を含む。
【0047】
本発明において、Zn粉末の含量は80%〜100%未満であるがこれらに限定されず、Al粉末の含量は20%〜0%超である。本発明に従う好ましい実施形態において、Zn粉末の含量は90%〜99.99%であり、Al粉末の含量は10%〜0.01%である。本発明に従う別の好ましい実施形態において、Zn粉末およびAl粉末の総重量に基づき、Zn粉末の含量は95%〜99%であり、Al粉末の含量は5%〜1%である。
【0048】
本発明において、Zn粉末またはAl粉末の粒度は、従来のものである。これは、当該技術分野において一般的に使用されるいずれの粒度でもよい。本発明に従う好ましい実施形態において、Zn粉末および/またはAl粉末の粒度は、100〜1000メッシュであり、好ましくは100〜500メッシュであり、より好ましくは300〜500メッシュである。したがって、好ましくは、この粒度は13〜150ミクロンの範囲内にあり、この範囲内に見出される任意の大きさであり得る。
【0049】
本発明に従う好ましい実施形態において、亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を提供する工程は、選別をさらに包含し得る。この選別は、当該技術分野において一般的に使用されている方法を用いて(例えば、選別用の篩を使用して)行われる。
【0050】
本発明において、亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を放電プラズマ焼結処理で焼結させることによりZnAl合金を得る工程は、従来のものである。当業者は、本発明の記載に従う方法を、先行技術と組み合わせて直ちに得ることができる。例えば、放電プラズマ焼結処理は、Chen Hanbinら,Microstructure of Nano−crystalline Al−Zn−Mg−Cu Alloy Prepared by Spark Plasma Sintering(Journal of Beijing University of Science and Technology.第29巻,第3号,2007年3月)により開示されている。
【0051】
本発明に従う好ましい実施形態において、放電プラズマ焼結処理は、以下のように行われる:亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を黒鉛または金属の型に入れ、次いでこの型を放電プラズマ焼結炉に入れて、その混合物を真空中で放電プラズマ焼結させる。本発明において、この放電プラズマ焼結処理の作業条件は、従来のものである。当業者は、実際の状況に応じてその作業条件を直ちに決定し得る。本発明に従う好ましい実施形態において、この放電プラズマ焼結処理の作業条件は、以下の通りである:真空圧が1〜10Paであり;軸圧力が10MPaより高く;焼結温度が280〜400℃であり;加熱速度が20℃/分〜300℃/分(パルス電流を調節することにより制御される)であり;等温時間が1〜30分である。
【0052】
本発明の方法において、後処理工程がさらに包含され得る。例えば、焼結圧縮粉が切断され、実際の必要に応じて研磨されて、ZnAlターゲット材料を提供する。
【0053】
本発明はまた、透明導電性酸化物薄膜を作製するためのZnAlターゲット材料であって、本発明に従う方法によって作製されるZnAlターゲット材料を提供する。
【0054】
本発明はまた、透明導電性酸化物薄膜を作製するためのZnAlターゲット材料であって、ZnAlターゲット材料の相対密度が96%以上であり、かつ/またはその結晶粒度が10ミクロン以下であるZnAlターゲット材料を提供する。
【0055】
本発明に従う好ましい実施形態において、相対密度は、96%〜99.5%であり、より好ましくは97%〜98.5%であり、最も好ましくは98%〜98.5%である。
【0056】
本発明に従う好ましい実施形態において、結晶粒度は、0.1〜10ミクロンであり、好ましくは1〜8ミクロンであり、より好ましくは1〜5ミクロンであり、最も好ましくは1〜4ミクロンである。
【0057】
本発明に従う好ましい実施形態において、ZnAlターゲット材料の化学組成および微細構造は均一に分布している。
【0058】
本発明のZnAlターゲット材料において、ZnおよびAlの量は、従来のものである。当業者は、本明細書の記載に従うZnおよびAlの量を、当業者の専門知識と組み合わせて直ちに得ることができる。
【0059】
本発明に従う好ましい実施形態において、ZnAlターゲット材料は、80%〜100%未満のZnおよび20%〜0%超のAlを含有する。本発明に従う別の好ましい実施形態において、ZnAlターゲット材料は、90%〜99.99%のZnおよび10%〜0.01%のAlを含有する。本発明に従う別の好ましい実施形態において、ZnAlターゲット材料は、そのZnAlターゲット材料の総重量に基づき、95%〜99%のZnおよび5%〜1%のAlを含有する。
【0060】
以下の実施例を用いて本発明をさらに説明する。しかしながら、当業者は、本発明がこれらに限定されないことを理解すべきである。
【実施例】
【0061】
本発明において、相対密度とは、百分率で表される場合の、ターゲット材料の実際の密度と理論密度の比率をいう。それらのうち、ターゲット材料の実際の密度は、Alfa Mirage SD−200L比重計を用いて排水法により測定され、ターゲット材料の理論密度は、ターゲット材料の出発原料の重量比ならびにZn粉末およびAl粉末の密度により算出され得る。
【0062】
本発明において、結晶粒度は、走査電子顕微鏡(FEI NOVA 200 NanoLab SEM/FIB)で試料の断面が観察されているときに直接読み取られる。試料は、明確な結晶境界および結晶粒の完全性を確保するために、イオンビームを用いて切断される。300個の結晶粒が統計的分析のために調べられて、ターゲット材料の平均結晶粒度を得る。
【0063】
本発明において、用語「均一な」は、Al相がターゲット材料内の至る所でZn相中の結晶粒の間に均一に分布していること;大きなAl相集中域または非占有域部分は存在しないこと;ならびにAl相中の結晶粒の大きさが実質的に一定であり、Zn相中の結晶粒の大きさもまた、実質的に一定であることを意味する。
【0064】
実施例1
99.9%の純度および200メッシュ(篩のメッシュの目の大きさは約75ミクロンである)の粒度を有する亜鉛粉末30.63g、ならびに99.9%の純度および300メッシュ(メッシュの目の大きさ約48ミクロン)の粒度を有するアルミニウム粉末0.61gをそれぞれ量り、70gのアルミナ粉砕ボールを含んだボールミルポット(Nanjing University Instrument Plantにより提供されるポリウレタンボールミルポット)に入れ、次いで、6mLの無水エタノール(分析的に純粋)を加え、ボールミルポットを密閉した後、この混合物を250rpmで3時間にわたり粉砕した。
【0065】
結果として生じたスラリーを取り出し、70℃で20時間にわたり風乾させ、次いで200メッシュの篩により選別して、焼結に必要な粉末混合物を提供した。
【0066】
上記粉末混合物3gを量り、直径12mmの黒鉛型に入れ、次いで焼結のための放電プラズマ焼結システム(Model SPS−1050,SPS SYNTEX INC.)に入れた。真空度が5Paに達すると、このシステムを温度が350℃に達するまで100℃/分の速度で加熱し、次いで温度をそのレベルで90秒間維持した。この焼結処理の間、軸圧力は50MPaであった。一定温度の期間が終わると電流を断ち、炉を100℃より低く冷却した後、黒鉛型を取り出した。離型後、後処理としてその焼結圧縮粉を研磨して、ZnAlターゲット材料を得た。
【0067】
相対密度を、比重計(Model SD−200L,ALFA MIRAGE)を用いて排水法により97.9%と測定した。ターゲット材料のX線回折スペクトル(XRD;Model RINT 2000,Rigaku)を図1に示す。この図から、この焼結ターゲット材料が高い純度を有しており、不純物(例えば、酸化物)が全作製過程で導入されなかったことが見て取れる。このターゲット材料の平均結晶粒度は2.3ミクロンである。
【0068】
実施例2
99.9%の純度および300メッシュの粒度を有する亜鉛粉末173.4g、ならびに99.9%の純度および200メッシュの粒度を有するアルミニウム粉末3.6gをそれぞれ量り、354gのアルミナ粉砕ボールを含んだボールミルポットに入れ、次いで、50mLの無水エタノール(分析的に純粋)を加え、ボールミルポットを密閉した後、この混合物を370rpmで20時間にわたり粉砕した。
【0069】
結果として生じたスラリーを取り出し、80℃で4時間にわたり真空乾燥させ、次いで500メッシュの篩により選別して、焼結に必要な粉末混合物を提供した。
【0070】
上記粉末混合物29.6gを量り、直径36mmの黒鉛型に入れ、次いで焼結のための放電プラズマ焼結システムに入れた。真空圧が5Paに達すると、このシステムを温度が375℃に達するまで50℃/分の速度で加熱し、次いで温度をそのレベルで10分間維持した。この焼結処理の間、軸圧力は40MPaであった。一定温度の期間が終わると電流を断ち、炉を100℃より低く冷却した後、黒鉛型を取り出した。離型後、後処理としてその焼結圧縮粉を研磨して、ZnAlターゲット材料を得た。
【0071】
相対密度を、SD−200L比重計を用いて排水法により98.5%と測定した。ターゲット材料の内部構造の走査電子顕微鏡写真(FEI NOVA200 NanoLab SEM FIB)を図2に示す。ターゲット材料のリアルで鮮明な微細構造の写真を得るために、この場合もまた、ターゲット材料をイオンビームで切断した後に、その断面を観察した。この図から、この焼結ターゲット材料が高い密度を有しており、空隙を有さないことが見て取れる。このターゲット材料の平均結晶粒度は3ミクロンである。Al相がZn相中に均一に分布している。
【0072】
実施例3
99.9%の純度および300メッシュの粒度を有する亜鉛粉末400g、ならびに99.9%の純度および300メッシュの粒度を有するアルミニウム粉末3gをそれぞれ量り、850gのアルミナ粉砕ボールを含んだボールミルポットに入れ、次いで、95mLの無水エタノール(分析的に純粋)を加え、ボールミルポットを密閉した後、この混合物を700rpmで24時間にわたり粉砕した。
【0073】
結果として生じたスラリーを取り出し、25℃で24時間にわたり真空乾燥させ、次いで500メッシュの篩により選別して、焼結に必要な粉末混合物を提供した。
【0074】
上記粉末混合物5.3gを量り、直径12mmの黒鉛型に入れ、次いで焼結のための放電プラズマ焼結システムに入れた。真空圧が2Paに達すると、このシステムを温度が384℃に達するまで30℃/分の速度で加熱し、次いで温度をそのレベルで5分間維持した。焼結温度曲線を図3に示す。この焼結処理の間、軸圧力は30MPaであった。一定温度の期間が終わると電流を断ち、炉を100℃より低く冷却した後、黒鉛型を取り出した。離型後、後処理としてその焼結圧縮粉を研磨して、ZnAlターゲット材料を得た。図4は、実際のターゲット材料の写真である。相対密度を、SD−200L比重計を用いて排水法により99.1%と測定した。このターゲット材料の平均結晶粒度は3.9ミクロンである。
【0075】
実施例4
99.9%の純度および500メッシュ(目の大きさ約18ミクロン)の粒度を有する亜鉛粉末200g、ならびに99.9%の純度および300メッシュの粒度を有するアルミニウム粉末3.1gをそれぞれ量り、390gのアルミナ粉砕ボールを含んだボールミルポットに入れ、次いで、25mLの無水エタノール(分析的に純粋)を加え、ボールミルポットを密閉した後、この混合物を900rpmで18時間にわたり粉砕した。
【0076】
結果として生じたスラリーを取り出し、70℃で6時間にわたり真空乾燥させ、次いで500メッシュの篩により選別して、焼結に必要な粉末混合物を提供した。
【0077】
上記粉末混合物57.2gを量り、直径50mmの黒鉛型に入れ、次いで焼結のための放電プラズマ焼結システムに入れた。真空度が5Paに達すると、このシステムを温度が340℃に達するまで50℃/分の速度で加熱し、次いで温度をそのレベルで15分間維持した。この焼結処理の間、軸圧力は60MPaであった。一定温度の期間が終わると電流を断ち、炉を100℃より低く冷却した後、黒鉛型を取り出した。離型後、後処理としてその焼結圧縮粉を研磨して、ZnAlターゲット材料を得た。相対密度を、SD−200L比重計を用いて排水法により97.1%と測定した。このターゲット材料の平均結晶粒度は4.6ミクロンである。
【0078】
実施例5
99.9%の純度および800メッシュの粒度を有する亜鉛粉末400g、ならびに99.9%の純度および500メッシュの粒度を有するアルミニウム粉末20gをそれぞれ量り、850gのアルミナ粉砕ボールを含んだボールミルポットに入れ、次いで、85mLの無水エタノール(分析的に純粋)を加え、ボールミルポットを密閉した後、この混合物を1100rpmで24時間にわたり粉砕した。
【0079】
結果として生じたスラリーを取り出し、25℃で24時間にわたり真空乾燥させ、次いで500メッシュの篩により選別して、焼結に必要な粉末混合物を提供した。
【0080】
上記粉末混合物29.6gを量り、直径36mmの黒鉛型に入れ、次いで焼結のための放電プラズマ焼結システムに入れた。真空圧が2Paに達すると、このシステムを温度が388℃、391℃または394℃に達するまで30℃/分の速度で加熱し、次いで温度をそのレベルで10分間維持した。この焼結処理の間、軸圧力は30MPaであった。一定温度の期間が終わると電流を断ち、炉を100℃より低く冷却した後、黒鉛型を取り出した。離型後、後処理としてその焼結圧縮粉を研磨して、ZnAlターゲット材料を得た。このターゲット材料の相対密度および平均結晶粒度は、表1に示される通りである。
【0081】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の2つの工程:
(1)亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を備える工程;および
(2)亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を放電プラズマ焼結させる工程であって、ZnAl合金ターゲット材料が作製される工程;
を含む、ZnAl合金ターゲット材料を作製するための方法。
【請求項2】
亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を備える工程が、
−ボールミル粉砕のためのボールミルポットに金属Zn粉末およびAl粉末を入れること;
−粉末をボールミル粉砕すること;および
−ボールミル粉砕が完了した後、20〜90℃の範囲の温度にて、真空中、0.5〜24時間粉末を乾燥させること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ボールミル粉砕が、低温ボールミル粉砕または湿式ボールミル粉砕を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ボールミル粉砕が、200rpm〜1500rpmの回転速度で1〜48時間行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
Zn粉末の含量が80%〜100%未満であり、Al粉末の含有量が20%〜0%より大である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
Zn粉末および/またはAl粉末の粒度が100〜1000メッシュである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
放電プラズマ焼結処理が以下のように行われる、請求項1に記載の方法:
亜鉛粉末とアルミニウム粉末との混合物を黒鉛または金属の型に入れ;混合物を入れた型を放電プラズマ焼結炉に入れ;そして混合物を真空中放電プラズマ焼結させる。
【請求項8】
透明導電性酸化物薄膜を作製するためのZnAlターゲット材料であって、請求項1に記載の方法によって作製される、上記ZnAlターゲット材料。
【請求項9】
透明導電性酸化物薄膜を作製するためのZnAlターゲット材料であって、ZnAlターゲット材料の相対密度が96%以上であるか、もしくはその結晶粒径が10ミクロン以下である;またはZnAlターゲット材料の相対密度が96%以上であり、かつその結晶粒径が10ミクロン以下である、上記ZnAlターゲット材料。
【請求項10】
相対密度が96〜99.5%であるか、または結晶粒径が0.1〜10ミクロンである、請求項9に記載のZnAlターゲット材料。
【請求項11】
ZnAlターゲット材料が、80%〜100%未満のZnおよび20%〜0%より大のAlを含有する、請求項9に記載のZnAlターゲット材料。
【請求項12】
ZnAlターゲット材料の化学組成および微細構造が均一に分布している、請求項9に記載のZnAlターゲット材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−515260(P2012−515260A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545482(P2011−545482)
【出願日】平成22年1月11日(2010.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/020598
【国際公開番号】WO2010/081064
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】