説明

α−アミノ酸誘導体及びその医薬用途

本発明のα-アミノ酸誘導体又はその医薬上許容される塩に代表される化合物はDPP-IV阻害作用による治療効果を有し、DPP-IV阻害薬が関与する疾患の治療及び/又は予防のための医薬として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DPP-IV阻害作用を有するα-アミノ酸誘導体、その医薬用途及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DPP-IVはN末端から2番目にプロリン(アラニン、ヒドロキシプロリンでもよい)を有するアミノ酸配列を認識し、ジペプチドXaa-Proを産生するセリンプロテアーゼである(Xaaは任意のアミノ酸、ProはL-プロリンを示す)。DPP-IVは、哺乳動物組織中に広く分布し、特に血液、腎臓、腸管上皮及び胎盤に存在することが知られている。
【0003】
哺乳動物におけるDPP-IVの生理学的役割は完全には解明されていないが、神経ペプチドの分解(非特許文献1参照)、T細胞の活性化(非特許文献2参照)、転移性腫瘍細胞の内皮への接着(非特許文献3参照)、HIVウイルスのリンパ球への侵入(非特許文献4参照)等の広範囲にわたる生体機能に関与することが明らかにされつつある。なかでも、強力なインスリン分泌能を有し食後の血糖値調節を担う生体内物質グルカゴン様ペプチド(GLP-1)を不活性化する酵素としてのDPP-IVの役割が注目されている(非特許文献5参照)。
【0004】
GLP-1は生体内において数分で代謝されることが知られている。その中でも特にDPP-IVによる代謝は重要であり、GLP-1を速やかに切断して不活性型GLP-1を産生する(非特許文献6参照)。加えて、この不活性型GLP-1がGLP-1レセプターに対し拮抗作用することから、GLP-1の生理的作用がさらに減弱化すると考えられている(非特許文献7参照)。したがって、DPP-IV阻害によりGLP-1の分解を抑制する方法はGLP-1作用増強のアプローチとして最良と考えられる。すなわち、DPP-IV阻害薬はインスリン非依存型糖尿病(2型糖尿病)患者にとって、遷延性低血糖などの副作用を伴わずに食後高血糖を是正するための優れた治療方法になり得るものと期待されている。
【0005】
DPP-IV阻害薬に関する特許出願も既になされている。
天然アミノ酸とチアゾリジン又はピロリジンからなる化合物がDPP-IV阻害作用を示すことが知られている(特許文献1参照)。また、この他にもシクロヘキシルグリシン体とチアゾリジンからなる化合物も開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】国際公開第99/61431号パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/76450号パンフレット
【非特許文献1】Heymann et al., FEBS Letters, vol.91,360-364(1978).
【非特許文献2】Schon et al., Biomedica Biochimica Acta., vol.44, K9-K15(1985).
【非特許文献3】Johnson et al., Journal of Cell Biology,vol.121,1423-1432(1993).
【非特許文献4】Callebaut et al., Science,vol.262, 2045-2050(1993).
【非特許文献5】Deacon et al., Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism, vol.80, 952-957(1995).
【非特許文献6】Deacon et al., American Journal of Physiology, vol.271, E458−E464(1996).
【非特許文献7】Knudsen et al., European Journal of Pharmacology, vol.318, 429-435(1996).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在までに、DPP-IV阻害薬に関する多くの報告がある[Wiedeman et al., Current Opinion in Investigational Drugs, vol.4, 412-420(2003)等]。これらは創薬技術の進展に影響を与えたが、未だ十分な臨床上の効果を示す化合物については報告されておらず、更に有効な阻害薬の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の点に鑑み新規DPP-IV阻害薬の開発を目的とし鋭意検討を行った。その結果、本発明者らは、α-アミノ酸誘導体が強力なDPP-IV阻害作用を有する事を見出し、さらに安定性を高めて本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は以下の(1)ないし(12)に存する。
(1)一般式(I)
【0009】
【化1】

【0010】
〔式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル又はアルコキシを示し、R2は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル又はアルコキシを示すか、又はR1及びR2が一緒になってオキソ、ヒドロキシイミノ、アルコキシイミノ又はアルキリデンを形成し、
XはCH-R3又はN-R4を示し、
YはCR5R6(R5及びR6はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル又はアルコキシを示すか、又はR5及びR6が一緒になってオキソ、ヒドロキシイミノ、アルコキシイミノ又はアルキリデンを形成していてもよい。)、S、S=O又はSO2を示し、
Zは水素原子又はシアノを示し、
m及びnはそれぞれ0、1又2を示し、このときのmとnの和は1、2又は3であり、
pは0、1、2又は3を示し、
R3は-NR7R8(R7、R8は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルを示すか、又は互いに結合して、少なくとも1個の窒素原子、若しくはさらに他のヘテロ原子を有していてもよいヘテロサイクルを形成してもよく、このヘテロサイクルには置換基を有していてもよい芳香環が置換又は縮合していてもよい。)、-NR9COR10(R9、R10は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はヘテロサイクルを示す。)、-NR11CONR12R13(R11、R12、R13は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルを示すか、又はR12、R13は互いに結合して、少なくとも1個の窒素原子、若しくはさらに他のヘテロ原子を有していてもよいヘテロサイクルを形成してもよく、このヘテロサイクルには置換基を有していてもよい芳香環が置換又は縮合していてもよい。)、-NR14SO2R15(R14、R15は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はヘテロサイクルを示す。)、-OR16又は-OCOR17(R16、R17は水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はヘテロサイクルを示す。)を示し、R4は水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロサイクル、-COR18(R18は水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はヘテロサイクルを示す。)、-CONR19R20(R19、R20は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルを示すか、又はR19、R20は互いに結合して、少なくとも1個の窒素原子、若しくはさらに他のヘテロ原子を有していてもよいヘテロサイクルを形成してもよく、このヘテロサイクルには置換基を有していてもよい芳香環が置換又は縮合していてもよい。)又は-SO2R21(R21はアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はヘテロサイクルを示す。)を示す。
ただし、pが0の場合、XはCH-R3を示し、さらにR3は一般式(II)を示す。
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、
【0013】
【化3】

【0014】
は、単結合又は二重結合を示し、
R22はアリール又はヘテロアリールを示し、
qは1又は2を示し、
Aは炭素原子又は窒素原子を示す。
ただし、i)Aが炭素原子を示す場合、Aは水酸基、カルボキシル又はアルコキシカルボニルで置換されていてもよい。また、ii)Aが窒素原子を示す場合、
【0015】
【化4】

【0016】
は、単結合を示す。)
なお、上記基のうち、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル及びヘテロサイクルは、それぞれ置換基を有していてもよい。〕で示されるα-アミノ酸誘導体又はその医薬上許容される塩。
(2)前記(1)の一般式(I)においてm = 2、n = 0及びX = CH-R3である前記(1)に記載のα-アミノ酸誘導体又はその医薬上許容される塩。
(3)前記(1)の一般式(I)においてR3が前記(1)の一般式(II)である前記(2)に記載のα-アミノ酸誘導体又はその医薬上許容される塩。
(4)前記(1)の一般式(I)においてY = S、R1 = R2 = Z = H、及び前記(1)の一般式(II)においてq = 1、A = Nである前記(3)に記載のα-アミノ酸誘導体又はその医薬上許容される塩。
(5)一般式(III)
【0017】
【化5】

【0018】
〔式中、X’はCH-R3、N-R4又はC=Oを示し、
R23は-COR24(R24は水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はヘテロサイクルを示す。)又は-COOR25(R25はアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はヘテロサイクルを示す。)を示し、その他の各記号は前記(1)記載のものと同義である。〕で示される化合物。
(6)一般式(III)においてX’= C=Oである前記(5)に記載の化合物。
【0019】
また本発明は以下の医薬組成物、阻害薬、及び治療剤に関する。
(7)前記(1)から(4)のいずれかに記載のα-アミノ酸誘導体又はその医薬上許容される塩と薬理学上許容しうる担体とを含有する医薬組成物。
(8)前記(1)から(4)のいずれかに記載のα-アミノ酸誘導体又はその医薬上許容される塩を含有するDPP-IV阻害薬。
(9)前記(1)から(4)のいずれかに記載のα-アミノ酸誘導体又はその医薬上許容される塩を有効成分とするDPP-IV阻害薬が関与する疾患の予防又は/及び治療剤。
(10)前記(1)から(4)のいずれかに記載のα-アミノ酸誘導体又はその医薬上許容される塩を有効成分とする糖尿病又は肥満の予防又は/及び治療剤。
【0020】
(11)前記(6)の化合物を中間体として使用することを特徴とする前記(5)のX’がCH-R3で示される化合物の製造方法。
(12)前記(11)の製造方法を含む前記(1)から(4)のいずれかに記載の化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明化合物は、強力なDPP-IV阻害活性を示し、糖尿病の予防及び/又は治療、又は、肥満の予防及び/又は治療に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
アルキルとは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、オクチル、ノニル、デシル等の炭素数1ないし10で直鎖状又は分岐鎖状のアルキルを意味し、好ましく炭素数1ないし6の低級アルキル等が挙げられる。
【0024】
シクロアルキルとは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等の炭素数3ないし7のシクロアルキル等が挙げられる。また該シクロアルキルは、ベンゼン環と縮合し、インダン(例えば、インダン-1-イル、インダン-2-イル等)、テトラヒドロナフタレン(例えば、テトラヒドロナフタレン-5-イル、テトラヒドロナフタレン-6-イル等)等(好ましくは、インダン等)を形成してもよく、さらに、該シクロアルキルは、炭素数1又は2の直鎖状の原子鎖を介して架橋し、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.2.2]ノニル等(好ましくは、炭素数1又は2の直鎖状の原子鎖を介して架橋を有するシクロヘキシル等、さらに好ましくは、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル等)の架橋環式炭化水素残基を形成していてもよい。
【0025】
シクロアルキルアルキルとは、そのシクロアルキル部は上記と同等であり、そのアルキル部は、好ましくは炭素数1ないし3で直鎖状又は分岐鎖状のシクロアルキルアルキルを意味し、例えばシクロプロピルメチル、2-シクロブチルエチル、3-シクロペンチルプロピル、シクロヘキシルメチル、2-シクロヘキシルエチル、シクロヘプチルメチル等が挙げられる。
【0026】
アリールとは、好ましくは炭素数6ないし14のアリールを意味し、例えばフェニル、ナフチル、又はオルト融合した二環式の基で8ないし10個の環原子を有し少なくとも一つの環が芳香環であるもの(例えばインデニル等)等が挙げられる。
【0027】
アリールアルキルとは、そのアリール部は上記と同等であり、そのアルキル部は、好ましくは炭素数1ないし3で直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えばベンジル、ベンズヒドリル、フェネチル、3-フェニルプロピル、1-ナフチルメチル、2-(1-ナフチル)エチル、2-(2-ナフチル)エチル、3-(2-ナフチル)プロピル等が挙げられる。
【0028】
ヘテロアリールとは、好ましくは炭素及び1ないし4個のヘテロ原子(酸素、硫黄又は窒素)を有する5又は6員環基、又はそれから誘導される8ないし10個の環原子を有するオルト融合した二環式ヘテロアリール、特にベンズ誘導体、若しくはプロペニレン、トリメチレン若しくはテトラメチレン基をそれに融合して導かれるもの、並びにその安定なN-オキシド等が挙げられる。例えば、ピロリル、フリル、チエニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、1,3,5-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、ピリジル(2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル)、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、1,2,4-トリアジニル、1,2,3-トリアジニル、1,3,5-トリアジニル、ベンズオキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリル、オキサゾロピリジル、イミダゾピリダジニル、チアナフテニル、イソチアナフテニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、クロメニル、イソインドリル、インドリル、インドリニル、インダゾリル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、2,1,3-ベンズオキサジアゾリル、ベンズオキサジニル等が挙げられる。
【0029】
ヘテロアリールアルキルとは、そのヘテロアリール部は上記と同等であり、そのアルキル部は、好ましくは炭素数1ないし3で直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば2-ピロリルメチル、2-ピリジルメチル、3-ピリジルメチル、4-ピリジルメチル、2-チエニルメチル、2-(2-ピリジル)エチル、2-(3-ピリジル)エチル、2-(4-ピリジル)エチル、3-(2-ピロリル)プロピル、4-イミダゾリルメチル等が挙げられる。
【0030】
ヘテロサイクルとは、少なくとも1個の窒素原子、若しくはさらに他のヘテロ原子(酸素又は硫黄)を有していてもよく、飽和又は不飽和である。単環だけでなく、スピロ環も含有され、好もしくは単環の4ないし7員環基又はスピロ環である10又は11員環基である。ヘテロサイクルとしては、例えばアゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、モルホリノ、1,4-ジアゼパニル、1,2,5,6-テトラヒドロピリジル、チオモルホリノ、オキソチオモルホリノ、ジオキソチオモルホリノ、3-アザスピロ[5.5]ウンデシル、1,3,8-トリアザスピロ[4.5]デシル等が挙げられる。
【0031】
さらに、上記ヘテロサイクルには置換基を有していてもよい芳香環が置換又は縮合していてもよい。置換基を有していてもよい芳香環における芳香環としては、例えば、ベンゼン環又はピリジン環等が挙げられる。縮合環としては、例えば、インドリニル、イソインドリニル、1,2,3,4-テトラヒドロキノリル、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリル、フタルイミド、インドリル、ベンズ-3-アゼピン等が挙げられる。
【0032】
アルコキシとは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンジルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ等の炭素数1ないし10で直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシを意味し、好ましくは炭素数1ないし6の低級アルコキシ等が挙げられる。
【0033】
ハロゲンとは、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素が挙げられる。
【0034】
ハロアルキルとは、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル等が挙げられる。
【0035】
なお、上記置換基のうち、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロサイクルは、以下に示す1個以上の置換基によってそれぞれ置換されていてもよい。
【0036】
これらの置換基としては、例えば、ハロゲン、水酸基、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロサイクル、ホルミル、アシルオキシ、オキソ、-COORa、-CH2COORa、-OCH2COORa、-CONRbRc、-CH2CQNRbRc(Qは=O又は=Sを示す。)、-OCH2CONRbRc、-COO(CH2)2NReRf、-SO2T1、-CONRdSO2T1、-NReRf、-NRgCHO、-NRgCOT2、-NRgCOOT2、-NRgCONRiRj、-NRkSO2T3、-SO2NRlRm、-SO2NRnOCT4、メチレンジオキシ、エチレンオキシ等が挙げられる。
【0037】
これらの置換基は、さらに置換基を有していてもよく、例えば、置換基を有するアリール、置換基を有するヘテロアリール又は置換基を有するヘテロサイクルとしては、4-シアノフェニル、4-クロロフェニル、4-メトキシフェニル、4-ヒドロキシフェニル、4-フルオロフェニル、2,4-ジクロロフェニル、2-クロロ-4-メトキシフェニル、2,4-ジフルオロフェニル、5-シアノ-2-ピリジル、5-クロロ-2-ピリジル、1-エトキシカルボニル-4-ピペリジニル等が挙げられる。
【0038】
ここで、上記置換基の置換基において、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロサイクルは前述と同様のものが挙げられる。
【0039】
アルキルチオとは、例えばメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、オクチルチオ等の炭素数1ないし10で直鎖状でも分岐鎖状のアルキルチオを意味し、好ましくは炭素数1ないし6で低級アルキルチオ等が挙げられる。
【0040】
アシルオキシとは、例えばホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、バレリルオキシ、ピバロイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ベンゾイルオキシ等の炭素数1ないし10で直鎖状でも分岐鎖状のアシルオキシを意味し、好ましくは炭素数1ないし6で低級アシルオキシ等が挙げられる。
【0041】
また、Ra〜Rnは、水素、アルキル(前述と同様)、アリールアルキル(前述と同様)を示す。
【0042】
なお、-NRbRc、-NReRf、-NRiRj、-NRlRmにおけるRbとRc、ReとRf、RiとRj、RlとRmは、それぞれ互いに結合して、少なくとも1個の窒素原子、若しくはさらに他のヘテロ原子を有していてもよいヘテロサイクルを形成してもよく、このヘテロサイクルには置換基を有していてもよい芳香環が置換又は縮合していてもよい(前述と同様であり、これは上述の置換基により置換されていてもよい。)。
さらに-NReRfは=Oを有するヘテロアリール(例えば2-ピロリジノン-1-イル、スクシンイミド、オキサゾリジン-2-オン-3-イル、2-ベンズオキサゾリノン-3-イル、フタルイミド、シス−ヘキサヒドロフタルイミド等)を示すこともできる。
【0043】
T1〜T4は、水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はハロアルキルを示し、これは上述の置換基により置換されていてもよい。Qは=O又は=Sを示す。
【0044】
DPP-IV阻害薬が関与する疾患とはDPP-IV作用が原因となって発症する疾患、DPP-IV作用が症状を悪化させる疾患、又はDPP-IV作用が治癒を遅らせる疾患等、DPP-IV阻害薬が予防又は/及び治療効果を示すと期待される疾患である。好ましい具体例としては糖尿病又は肥満等が挙げられる。
【0045】
化合物(I)は多形 (polymorphism)を示すことができ、又、一より多くの互変異性体として存在することができる。
【0046】
従って、本発明は、上記のようないかなる立体異性体、光学異性体、多形体、互変異性体、及びそれらの任意の混合物等を含有するものである。
【0047】
化合物(I)の医薬上許容される塩としては、無機酸付加塩(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等との塩)、有機酸付加塩(例えば、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、クエン酸、マロン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、マンデル酸、リンゴ酸、パントテン酸、メチル硫酸等との塩)、アミノ酸との塩(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸等との塩)等が挙げられる。
【0048】
本発明のα-アミノ酸誘導体は、以下の方法により製造することができる。
【0049】
スキーム1に、化合物(I)においてm = 2、n = 0及びX = CH-OH又はCH-NH2の化合物の製造方法を示す。
スキーム1
【0050】
【化6】

【0051】
〔式中、R26はアミノ酸の保護基(例えば、tert-ブトキシカルボニル(以下、Bocと記す。)、ベンジルオキシカルボニル(以下、Cbzと記す。)を示し、R27は水酸基又はアミノ基を示し、R28はメチル、エチル等のアルキル又はベンジル等を示す。他の各記号は前記と同義である。)
工程a:式(IV)で表される化合物又はその塩を還元して式(V)で表される化合物又はその塩を、式(VII)で表される化合物又はその塩を還元して式(VIII)で表される化合物又はその塩を、又は式(IX)で表される化合物又はその塩を還元して式(X)で表される化合物又はその塩を製造する工程である。
【0052】
この反応は金属触媒を用いた接触水素化反応によって行われる。金属触媒としてはパラジウム又はその酸化物、白金又はその酸化物、ロジウム又はその酸化物、ルテニウム、ラネーニッケル等が用いられ、これらの金属を組み合わせて用いることもできる。また、その金属は活性炭、アルミナ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の不活性担体に保持された状態で使用される。
【0053】
この反応に用いる溶媒としては、例えばアルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール等)、炭化水素系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等)、酢酸エチル、酢酸又は水等が挙げられ、又は必要に応じてこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0054】
このときの反応は常圧又は高圧の水素雰囲気下で行われ、反応温度は約0ないし150℃、好ましくは0ないし120℃で行われる。
【0055】
工程b:式(V)で表される化合物又はその塩のアミノ基を保護して式(VI)で表される化合物又はその塩を、又は式(X)で表される化合物又はその塩のアミノ基を保護して式(VIII)で表される化合物又はその塩を製造する工程である。
【0056】
26がBocの場合、Boc化剤として、二炭酸ジ-tert-ブチル、2-tert-ブトキシカルボニルオキシイミノ-2-フェニルアセトニトリル(Boc-ON)、tert-ブトキシカルボニル-4,6-ジメチル-2-チオピリミジン等を用いることができる。この反応に用いる塩基としては、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(以下、DIPEAと記す。)等の有機塩基あるいはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等が挙げられる。この反応に用いる溶媒としては、例えば水、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール等)又はエーテル系溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(以下、THFと記す。)、ジオキサン等)等、又は必要に応じてこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0057】
26がCbzの場合、Cbz化剤としては、塩化ベンジルオキシカルボニル等が用いることができるが、二炭酸ジベンジル、O-ベンジルオキシカルボニル-N-ヒドロキシこはく酸イミド等の活性エステルを用いる導入法もある。この反応に用いる塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)あるいはアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)等が挙げられる。この反応に用いる溶媒としては、例えば水、エーテル系溶媒(例えば、THF、ジオキサン等)、酢酸エチル、アセトニトリルあるいはN,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記す。)等が挙げられ、又は必要に応じてこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0058】
工程c:式(VIII)で表される化合物又はその塩のエステル保護されたカルボキシル基を脱保護させて式(VI)で表される化合物又はその塩を製造する工程である。
【0059】
反応は通常のカルボキシル基への脱保護反応が使用できる。用いる塩基としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)あるいはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等が挙げられる。R28がベンジル基の場合は、白金、パラジウム等の金属触媒を用いた接触水素化反応で脱保護することもできる。この反応に用いる溶媒としては、例えばアルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール等)又はエーテル系溶媒(例えば、THF、ジオキサン等)等が挙げられ、又は必要に応じて水との混合溶媒が挙げられる。このときの反応温度は、約0ないし100℃で行われる。
【0060】
工程d:式(VI)で表される化合物又はその塩と式(XI)で表される化合物又はその塩を反応させて式(XII)で表される化合物を製造する工程である。
【0061】
式(XI)で表される化合物又はその塩は、式(VI)で表される酸性化合物もしくはその反応性誘導体、又はこれらの塩とを溶媒中、必要であれば塩基の存在下、脱水縮合剤を用いることにより製造することができる。酸性化合物の反応性誘導体としては、酸無水物、活性エステル(例えば、p-ニトロフェニルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル等)、酸ハライド(例えば、酸クロリド、酸ブロミド等)、イミダゾリドあるいは混合酸無水物(例えば、メチル炭酸との無水物、エチル炭酸との無水物等)等が挙げられる。用いる溶媒としては、例えばエーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、THF、ジオキサン等)、炭化水素系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等)、アセトニトリル、DMF等が挙げられる。用いる塩基としては、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン(以下、DMAPと記す。)、DIPEA、トリエチレンジアミン、4-メチルモルホリンなどの有機塩基、アルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)あるいはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等が挙げられる。
【0062】
脱水縮合剤として、例えばペプチド合成に用いる縮合剤等が挙げられる。具体的には、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(以下、DCCと記す。)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド(以下、EDCと記す。)又はその塩酸塩、2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキシキノリン、カルボジイミダゾール、ジエチルホスホリルシアニド、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルホスホリルアジド(以下、DPPAと記す。)、プロパンホスフィン酸無水物、クロロギ酸イソブチル、塩化ジエチルアセチル、塩化トリメチルアセチル等が挙げられる。これらの縮合剤を単独で、あるいはN-ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシベンゾトリアゾール(以下、HOBTと記す。)、3-ヒドロキシ-4-オキソ-3,4-ジヒドロ-1,2,3-ベンゾトリアジン、又はDMAP等の活性化剤、好ましくはHOBTと組み合わせて用いる。このとき式(VI)で表される化合物又はその塩1モルに対して、式(XI)で表される化合物又はその塩は約0.5ないし10モル当量、好ましくは約1ないし6モル当量用いられ、縮合剤は約0.5ないし10モル当量、好ましくは約1ないし5モル当量用いられる。このとき反応温度は、約-30ないし100℃、好ましくは-10ないし80℃であり、反応時間は約30分ないし96時間、好ましくは30分ないし48時間である。
【0063】
スキーム2に、化合物(I)においてX = CH-R3及びR3= -NR7R8の化合物の製造方法を示す。
スキーム2
【0064】
【化7】

【0065】
〔式中、OSO2R29は脱離基(例えば、p-トルエンスルホニルオキシ(OTs)、メタンスルホニルオキシ(OMs)、トリフルオロメタンスルホニルオキシ(OTf))を示し、Halはハロゲン原子を示し、R30、R31は同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルを示すか、又は互いに結合して、少なくとも1個の窒素原子、若しくはさらに他のヘテロ原子を有していてもよいヘテロサイクルを形成してもよく、このヘテロサイクルに置換基を有していてもよい芳香環が置換又は縮合していてもよい。他の各記号は前記と同義である。〕
工程e:式(XII’)で表される化合物の水酸基をスルホニル化して式(XIII)で表される化合物を製造する工程である。
【0066】
この反応は、メタンスルホニルクロリド、p-トルエンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリド等のスルホニル化剤を用いて行うことができる。この際、適当な塩基を共存させてもよい。この塩基としては、トリエチルアミン、DMAP、DIPEA、トリエチレンジアミン、4-メチルモルホリン等の有機塩基、あるいはアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)等が挙げられる。この反応に用いる溶媒としては、例えばエーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、THF、ジオキサン等)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等)あるいはDMF等が挙げられる。このときの反応温度は、約-50ないし100℃、好ましくは-10ないし80℃であり、反応時間は約0.1ないし96時間、好ましくは0.1ないし24時間である。
【0067】
工程f:式(XIII)で表される化合物をアジド化して式(XIV)で表される化合物を製造する工程である。
【0068】
反応は金属アジ化物(例えば、アジ化ナトリウム、アジ化リチウム等)を用いて行われる。用いる溶媒としては、例えばDMF、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと記す。)、アセトニトリル、ジクロロメタンあるいは水等が挙げられ、又は必要に応じてこれらの混合溶媒が挙げられる。添加物として18-クラウン-6を用いることもできる。このときの反応温度は約0ないし120℃であり、反応時間は約30分ないし24時間である。
【0069】
工程g:式(XII’)で表される化合物から直接、式(XIV)で表される化合物を製造する工程である。
【0070】
反応は、トリフェニルホスフィン又はトリブチルホスフィン等のホスフィン類及びアゾジカルボン酸ジエステルの存在下、アジ化水素、DPPA、アジ化亜鉛ビスピリジン錯塩等のアジド化試薬を作用させて行われる。また、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(以下、DBUと記す。)等の有機塩基の存在下でDPPAを作用させてもよい。用いる溶媒としては、例えばエーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、THF、ジオキサン等)、炭化水素系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等)等が挙げられる。このとき反応温度は約-30ないし100℃であり、反応時間は約30分ないし72時間である。
【0071】
工程h:式(XIV)で表される化合物を還元して式(XII”)で表される化合物又はその塩を製造する工程である。
【0072】
この反応としてパラジウム、白金、ニッケル等の金属触媒を用いた接触水素化反応、水素化アルミニウムリチウム等の金属水素化物による還元、トリフェニルホスフィン、チオール、スルフィド、ジボラン、あるいは遷移金属を用いる還元等が挙げられ、好ましくは金属触媒を用いた接触水素化反応あるいはトリフェニルホスフィンを用いる反応が挙げられる。
【0073】
工程i:式(XII’)で表される化合物又はその塩の水酸基をフタルイミド化した後に加水分解して式(XII”)で表される化合物又はその塩を製造する工程である。
【0074】
この反応は、アゾジカルボン酸ジエステル類(例えばアゾジカルボン酸ジエチル、アゾジカルボン酸ジイソプロピル等)及びホスフィン類(例えばトリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等)の存在下、フタルイミドまたはその塩(例えばカリウム塩等)と反応させる。化合物の使用量は式(XII’)で表される化合物又はその塩に対し、フタルイミドまたはその塩を約1ないし10モル当量、好ましくは約3ないし5モル当量である。このアゾジカルボキシラート類およびホスフィン類の使用量は、それぞれ式(XII’)で表される化合物又はその塩に対し、約1ないし10モル当量、好ましくは約3ないし5モル当量である。本反応は反応に不活性な溶媒を用いることが有利である。このような溶媒としては、反応が進行する限り特に限定されないが、例えばエーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、THF、ジオキサン等)、炭化水素系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等)、アセトニトリルあるいはDMF等が挙げられ、又は必要に応じてこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0075】
このようにして製造したフタルイミド体はヒドラジンを用いて加水分解することにより式(XII’’)で表される化合物又はその塩へ導くことができる。この反応に用いる溶媒としては、例えば水、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール等)又はエーテル系溶媒(例えば、THF、ジオキサン等)等が挙げられ、又は必要に応じてこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0076】
工程j:式(XII”)で表される化合物又はその塩に式(XV)で表される化合物又は(XV’)で表される化合物を反応させて(XVII)で表される化合物又はその塩を製造する工程である。
【0077】
反応はトリエチルアミン、DIPEA等の有機塩基、好ましくはDIPEAの存在下、N-メチル-2-ピロリドン、DMF、THF等の当該反応に不活性な溶媒中、0℃ないし溶媒の沸点付近の温度で、好ましくは0ないし80℃で行われる。
【0078】
工程k:式(XII”)で表される化合物又はその塩に式(XVI)で表される化合物を反応させた後に還元して式(XVII)で表される化合物又はその塩を製造する工程である。
【0079】
この還元的アミノ化反応は、例えばエーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、THF、ジオキサン等)、炭化水素系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等)、アセトニトリルあるいはDMF等の溶媒中、又は必要に応じてこれらの混合溶媒中、式(XII”)で表される化合物又はその塩と、式(XVI)で表される化合物とを、金属水素錯化合物(例えば、水素化ほう素ナトリウム、シアノ水素化ほう素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム等の複合水素化合物やジボラン等)の存在下、必要に応じて酸性触媒(例えば、酢酸、p-トルエンスルホン酸、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体等)を用いて反応させることにより製造することができる。この式(XII”)で表される化合物又はその塩に対して、式(XVI)で表される化合物は約0.5ないし10モル当量、好ましくは約1ないし5モル当量用いられ、金属水素錯化合物は約0.5ないし10モル当量、好ましくは約1ないし5モル当量用いられる。このとき反応温度は-20ないし200℃、好ましくは0ないし100℃であり、反応時間は約0.5ないし96時間、好ましくは0.5ないし24時間である。
【0080】
工程j又はkは必要に応じて繰り返すことにより、R7とR8が同一又は異なる式(XVII)で表される化合物又はその塩を製造することができる。
【0081】
工程l:式(XII’)で表される化合物を活性化させた後に式(XVIII)で表されるアミン又はその塩を反応させて式(XVII)で表される化合物又はその塩を製造する工程である。
【0082】
式(XII’)で表される化合物又はその塩の活性化は、溶媒中、塩化チオニル、三塩化りん、五塩化りん、三臭化りん、五臭化りん、四臭化炭素-トリフェニルホスフィン等のハロゲン化試薬を約1ないし10モル当量、好ましくは約1ないし5モル当量作用させるか、塩基[トリエチルアミン、DMAP、DIPEA、トリエチレンジアミン、4-メチルモルホリン等の有機塩基、アルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)あるいはアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)等]の存在下、p-トルエンスルホニルクロリド、メタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホン酸無水物等を約1ないし10モル当量、好ましくは約1ないし5モル当量作用させることで行うことができる。この時用いられる溶媒は、例えばアセトニトリル、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等)、エーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、THF、ジオキサン等)あるいは炭化水素系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等)等であり、反応温度は約-20ないし100℃、好ましくは約0ないし60℃である。さらに、活性化された化合物又はその塩をアセトニトリル、DMF等の溶媒中でヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等を反応させてヨウ化物にしてもよい。こうして活性化された化合物を又はその塩を溶媒中、式(XVIII)で表されるアミン又はその塩約1ないし10モル当量、好ましくは約1ないし5モル当量作用させることで式(XVII)で表される化合物又はその塩を得ることができる。この時用いられる溶媒は、例えばアセトニトリル、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等)、エーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、THF、ジオキサン等)、炭化水素系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等)、DMFあるいはN,N-ジメチルアセトアミド等であり、反応温度は約-20ないし150℃、好ましくは約0ないし100℃である。この時、必要に応じて塩基[トリエチルアミン、DMAP、DIPEA、トリエチレンジアミン、4-メチルモルホリン等の有機塩基、アルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)あるいはアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)等]を用いてもよい。
【0083】
また、式(XII’)で表される化合物と式(XVIII)で表されるアミン又はその塩を用いて光延反応又はその変法を行うことにより(XVII)で表される化合物又はその塩を得ることができる。この反応は、アゾジカルボン酸ジエステル類(例えばアゾジカルボン酸ジエチル、1,1’-(アゾジカルボニル)ジピペリジン類)及びホスフィン類(例えばトリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等)の存在下反応させる。化合物の使用量は式(XII’)で表される化合物又はその塩に対し、式(XVIII)で表されるアミン又はその塩を約1ないし5モル当量、好ましくは約1ないし2モル当量である。このアゾジカルボン酸ジエステル類およびホスフィン類の使用量は、それぞれ式(XII’)で表される化合物又はその塩に対し、約1ないし5モル当量、好ましくは約1ないし2モル当量である。本反応は反応に不活性な溶媒を用いることが有利である。このような溶媒としては反応が進行する限り特に限定されないが、例えばエーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、THF、ジオキサン等)、炭化水素系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等)、アセトニトリルあるいはDMF等が挙げられる。
【0084】
工程m:式(XII’)で表される化合物を酸化して式(XIX)で表される化合物を製造する工程である。
【0085】
この酸化反応の例としては、クロロクロム酸ピリジニウム、二クロム酸ピリジニウム、二酸化マンガン等の酸化剤を用いる方法や、DMSO -オキサリルクロリド、DMSO -無水酢酸、DMSO -無水トリフルオロ酢酸、DMSO -ピリジン三酸化硫黄錯体、ジクロロ酢酸を触媒とするDMSO-DCC又は-EDC等のDMSO酸化が挙げられる。溶媒としては、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等)、エーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、THF、ジオキサン等)あるいはDMF等が挙げられる。他にも2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルを触媒として、臭化ナトリウムの存在下、酢酸エチルやトルエン中で次亜塩素酸ナトリウム水溶液を作用する方法等が挙げられる。酸化剤等は1ないし10モル当量、好ましくは1ないし3モル当量作用させることで式(XIX)で表される化合物又はその塩を得ることができる。この時の反応温度は約-78ないし100℃、好ましくは-40ないし60℃であり、反応時間は約30分ないし24時間、好ましくは約1ないし15時間である。
【0086】
工程nは工程kと同様の方法で行われる。
【0087】
工程o:式(XVII)で表される化合物又はその塩を脱保護して式(XX)で表される化合物又はその塩を製造する工程である。
【0088】
この反応において、保護基R26がBoc基の場合は、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の酸を用い、脱保護することができる。この際、これらの酸を有機溶媒又は水で溶解し、約-50ないし50℃で行うことができる。この反応は、例えばエーテル系溶媒(例えば、THF、ジオキサン等)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール等)、アセトニトリルあるいは酢酸エチル等の溶媒中で行うことができる。また、保護基R26がCbz基の場合は、パラジウム等の金属触媒を用いた接触水素化反応又は酸により脱保護することができる。接触水素化反応は、エーテル系溶媒(例えば、THF、ジオキサン等)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール等)あるいは酢酸エチル等の溶媒中で行うことができる。また、このとき反応温度は約0ないし100℃であり、水素ガスを常圧又は加圧下で用いることもできるし、ぎ酸-ぎ酸アンモニウムを例とする試薬の組み合わせで行うこともできる。酸を用いる反応は、臭化水素酸-酢酸と反応させるか、あるいは例えば、必要に応じてハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等)等の当該脱保護反応に不活性な溶媒中、チオアニソール又はアニソールの存在下でトリフルオロ酢酸又はトリフルオロメタンスルホン酸、好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸を用いることにより行うことができる。
【0089】
ここで得られた化合物(XX)は、塩基として又は適当な酸との塩として取り出すことができる。適当な酸とは、例えば、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、酢酸等である。
【0090】
スキーム3に、化合物(I)においてX = CH-R3、及びR3 = -NR9COR10の化合物の製造方法を示す。
スキーム3
【0091】
【化8】

【0092】
〔式中の各記号は前記と同義である。〕
式(XXI)で表される化合物又はその塩はスキーム2で得られた式(XII’’)で表される化合物又はその塩と同一又は式(XVII)で表される化合物又はその塩のR7、R8の一方が水素原子の化合物である。
【0093】
工程p:式(XXI)で表される化合物又はその塩をアシル化して式(XXII)で表されるアミド化合物又はその塩を製造する工程である。
【0094】
反応はR10COClを用いるか又はR10CO2Hをチオニルクロリド、チオニルブロミド等を用いて酸ハライドにするか、ピバロイルクロリド、クロロギ酸イソブチル等を用いて混合酸無水物として行われる。反応に用いる塩基としては、トリエチルアミン、DMAP、DIPEA、トリエチレンジアミン、4-メチルモルホリン等の有機塩基が挙げられ、用いる溶媒としては、例えばエーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、THF、ジオキサン等)、炭化水素系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン等)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等)、酢酸エチル、クロロホルム、DMF、DMSO、ヘキサメチルホスホルアミド等が挙げられる。この反応は通常約0ないし120℃で約10分ないし10時間で行われる。
【0095】
また、R10CO2Hとの反応は、スキーム1の工程dで示した条件で行うことができる。
【0096】
工程qはスキーム2の工程oと同様の方法で行われる。
【0097】
スキーム4に、化合物(I)においてX = CH-R3及びR3= -NR11CONR12R13の化合物の製造方法を示す。
スキーム4
【0098】
【化9】

【0099】
〔式中の各記号は前記と同義である。〕
式(XXIV)で表される化合物はスキーム2で得られた式(XII’’)で表される化合物又はその塩と同一又は式(XVII)で表される化合物又はその塩のR7、R8の一方が水素原子の化合物である。
【0100】
工程s:式(XXIV)で表される化合物又はその塩を反応させて式(XXV)で表されるウレア化合物を製造する工程である。
【0101】
反応はR12-NCO等のイソシアナートを用いて行うことができる。トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、THF等の当該反応に不活性な溶媒中で通常-20ないし80℃の温度で行われ、好ましくは0ないし25℃で行われる。
【0102】
また、例えばカルボジイミダゾール、ホスゲン、ジホスゲン(トリクロロメチルクロロホルメート)又はトリホスゲン〔ビス(トリクロロメチル)カーボネート〕等をR12R13NHで表されるアミンと、トリエチルアミン等の三級有機塩基とともに使用する方法もある。
【0103】
工程sはスキーム2の工程oと同様の方法で行われる。
【0104】
スキーム5に、化合物(I)においてX = CH-R3及びR3= -NR14SO2R15の化合物の製造方法を示す。
スキーム5
【0105】
【化10】

【0106】
〔式中の各記号は前記と同義である。〕
式(XXVII)で表される化合物又はその塩はスキーム2で得られた式(XII’’)で表される化合物又はその塩と同一又は式(XVII)で表される化合物又はその塩のR7、R8の一方が水素原子の化合物である。
【0107】
工程t:式(XXVII)で表される化合物又はその塩をスルホニル化して式(XXVIII)で表されるスルホンアミド化合物を製造する工程である。
【0108】
反応はR15-SO2Cl等のスルホニルクロリドを用い、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基、アルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)あるいはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等の無機塩基の存在下、水、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、THF等の当該反応に不活性な溶媒中で通常約-20ないし80℃の温度で行われる。
【0109】
または、式(XXVII)で表される化合物とスルフリルクロリドをトリエチルアミン等の三級有機塩基の存在下、クロロホルム、ジクロロメタン、THF等の当該反応に不活性な溶媒中で反応させてスルファミルクロリドを得、そこに塩化アルミニウム等のルイス酸の存在下でアリール化合物を反応させる方法もある。
【0110】
工程uはスキーム2の工程oと同様の方法で行われる。
【0111】
スキーム6に、式(XVII)で表される化合物又はその塩の別の製造方法を示す。本製造法は、R7、R8が共に水素原子ではない化合物の場合に有用である。
スキーム6
【0112】
【化11】

【0113】
〔式中の各記号は前記と同義である。〕
工程vはスキーム2で示した式(XII’)で表される化合物から式(XVII)で表される化合物又はその塩への変換方法と同様である。
【0114】
工程wはスキーム1の工程cと同様の方法で行われる。
【0115】
工程xはスキーム1の工程dと同様の方法で行われる。
【0116】
スキーム3の式(XXIII) で表される化合物、スキーム4の式(XXVI) で表される化合物、又はスキーム5のに式(XXIX) で表される化合物もスキーム6で示した経路を用いて製造することができる。
【0117】
スキーム7に、化合物(I)においてX = N-R4の化合物の製造方法を示す。
スキーム7
【0118】
【化12】

【0119】
〔式中の各記号は前記と同義である。〕
工程y:式(XXXIII)で表される化合物と式(XXXIV)で表される化合物を反応させた後、還元させて式(XXXV)で表される化合物又はその塩を製造する工程である。
【0120】
式(XXXIII)で表される化合物と式(XXXIV)で表される化合物のカップリング反応はDBU、DIPEA、カリウムtert-ブトキシド等の嵩高い有機塩基の存在下、クロロホルム、ジクロロメタン、THF、アセトニトリル等の当該反応に不活性な溶媒中で行われる。添加物としてリチウムクロリド又は18-クラウン-6を用いることもできる。このときの反応温度は約-80ないし80℃、好ましくは-80ないし25℃であり、反応時間は約1ないし72時間、好ましくは1ないし24時間である。
【0121】
このようにして得た不飽和化合物は遷移金属接触を用いた接触水素化反応により炭素-炭素二重結合を還元することができる。用いる遷移金属接触としては、例えばパラジウム触媒[例えば、パラジウムカーボン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、酸化パラジウム等]が挙げられる。本接触水素化反応は、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール等)あるいは酢酸等の溶媒中で行われ、塩酸等の触媒量の無機酸を添加することもできる。この反応は常圧又は加圧下の水素ガスを用い、約0ないし100℃の反応温度で行われる。また、この不飽和化合物のエナンチオ選択的な接触水素化反応は、Burkらの手法[Burk et al., J.Am. Chem. Soc., vol.117, 9375-9376 (1995)]により行うことができる。
【0122】
工程zはスキーム1の工程cと同様の方法で行われる。
【0123】
工程aaはスキーム1の工程dと同様の方法で行われる。
【0124】
工程abはスキーム2の工程oと同様の方法で行われる。
【0125】
スキーム8に、式(XXXVI)で表される化合物又はその塩の別の製造方法を示す。
スキーム8
【0126】
【化13】

【0127】
〔式中の各記号は前記と同義である。〕
工程acはスキーム7の工程yおよびスキーム1の工程cと同様の方法で行われる。
【0128】
工程ad:式(XXXX)で表される化合物又はその塩と式(XXXXI)で表されるキラル補助基を縮合反応させて式(XXXXII)で表される化合物又はその塩を製造する工程である。
【0129】
式(XXXX)で表される化合物又はその塩のカルボキシル基を活性化させた後、式(XXXXI)で表されるキラル補助基を反応させる手法である。カルボキシル基の活性化は、例えばトリエチルアミン等の有機塩基の存在下、塩化チオニル又はピバロイルクロリド等の酸クロリドと反応させることで活性化することができる。このとき、THF等の当該反応に不活性な溶媒中で行われる。このようにして活性化させた カルボキシル基にリチウムクロリドを添加した後、式(XXXXI)で表されるキラル補助基を反応させることができる。このときの反応温度は約-80ないし80℃、好ましくは-80ないし30℃であり、反応時間は約1ないし72時間、好ましくは1ないし24時間である。
【0130】
工程ae:式(XXXXII)で表される化合物又はその塩をアジド化反応させて式(XXXXIII)で表される化合物又はその塩を製造する工程である。
【0131】
この立体選択的なアジド化反応は、Evansらの手法[Evans et al., J. Am. Chem. Soc.,vol.112, 4011-4030 (1990)]により行うことができる。例えば、式(XXXXII)で表される化合物又はその塩をTHF等の当該反応に不活性な溶媒中、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド等のアルカリ金属塩基によりエノレート塩とした後に2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルアジドを作用させ、酢酸で処置することによりアジド化合物を得ることがことができる。このときの反応温度は約-80ないし80℃、好ましくは-80ないし30℃であり、反応時間は約1ないし72時間、好ましくはで1ないし24時間である。
【0132】
工程afはスキーム2の工程hおよびスキーム1の工程bと同様の方法で行われる。
【0133】
工程ag:式(XXXXIV)で表される化合物又はその塩を加水分解させて式(XXXVI)で表される化合物又はその塩を製造する工程である。
【0134】
オキサゾリジノンの加水分解反応は、水酸化リチウム水溶液等の塩基を用いることにより行うことができる。用いる溶媒としては、例えばアルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール等)、エーテル系溶媒(例えば、THF、ジオキサン等)、又は必要に応じてそれらの混合溶媒が挙げられる。このときの反応温度は約0ないし100℃である。
【0135】
ここでは式(XXXXI)で表されるキラル補助基を用いる手法を示したが、Hoらの手法[J. Org. Chem., vol.60, 2271-2273 (1995)]により他のキラル補助基を用いることもできる。
【0136】
式(XXXXIII)で表される化合物又はその塩のオキサゾリジノンを加水分解させ、式(XI)で表される化合物又はその塩と縮合反応させた後に、アジド基をアミノ基に変換することで、式(XXXVIII)で表される化合物を製造することもできる。
【0137】
このようにして製造される本発明の式(I)のα-アミノ酸誘導体は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、抽出、クロマトグラフィー、再沈殿、再結晶等の手段を適宜施すことによって、任意の純度のものとして採取できる。
【0138】
また、当該式(I)のα-アミノ酸誘導体は、必要により塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等の無機酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、クエン酸、マロン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、マンデル酸、リンゴ酸、パントテン酸、メチル硫酸等の有機酸及びグルタミン酸、アスパラギン酸等とのアミノ酸との酸付加塩とすることができる。また、水和物等の溶媒和物としても存在する。
【0139】
本発明の式 (I)で示される化合物又はその薬理学的に許容される塩は、哺乳動物(例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ラット等)に対して、優れたDPP-IVの阻害作用を有する。
【0140】
したがって、本発明の式 (I) で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩は、DPP-IVの阻害薬として有用であり、GLP-1が関与していると考えられる疾患(例えば、糖尿病、肥満等)等の予防・治療をはじめとするDPP-IV阻害薬が関与する各種疾患等の予防・治療に有用である。
【0141】
また、本発明の式(I)で表される化合物は、他の糖尿病治療薬、糖尿病性合併症治療薬、抗高脂血症剤又は降圧剤等と同時に、または時間差をおいて同一対象に投与することができる。ここにおいて糖尿病治療薬としては、インスリン感受性増強剤、α-グルコシダーゼ阻害剤あるいはビグアナイド剤等が挙げられる。糖尿病性合併症治療薬としては、アルドース還元酵素治療剤が挙げられる。抗高脂血症剤としては、コレステロール合成酵素阻害剤であるスタチン系化合物、スクアレン合成酵素阻害剤あるいはトリグリセリド低下作用を有するフィブラート系化合物等が挙げられる。降圧剤としては、カルシウム拮抗剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤あるいはアンジオテンシンII拮抗剤等が挙げられる。
【0142】
本発明化合物を多剤と組み合わせて用いる場合、その配合比は、投与対象、投与対象の年齢及び体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、組み合わせ等により適宜選択することができる。
【0143】
本発明の式 (I) で表される化合物及びその酸付加塩を前述の医薬として用いる場合、それ自体あるいは適宜の薬理学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤などと混合し、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、注射剤等の形態で、経口的又は非経口的に投与することができる。上記製剤中には式 (I) で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効量配合する。
【0144】
当該式 (I) で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩の投与量は、投与ルート、対象疾患、患者の症状、体重あるいは年齢、用いる化合物によっても異なり、投与目的に応じて適宜設定することができる。通常、成人に経口投与する場合、0.01ないし1000 mg/kg体重/日、好ましくは0.05ないし500 mg/kg体重/日を、一日1ないし数回に分けて投与するのが好ましい。
【0145】
以下に参考例及び実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0146】
なお、1H-NMRは300 MHzで測定した。1H-NMRのケミカルシフトは、内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)を用い、相対的なデルタ(δ)値をパーツパーミリオン(ppm)で表した。カップリング定数は自明な多重度をヘルツ(Hz)で示し、s(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、m(マルチプレット)、dd(ダブレット オブ ダブレッツ)、brs(ブロードシングレット)等と表した。薄層クロマトグラフィーはメルク社製、カラムクロマトグラフィーは富士シリシア化学社製のシリカゲルを用いて行った。
【0147】
また、抽出における有機溶液の乾燥には、特に明記しない限り、無水硫酸ナトリウム又は無水硫酸マグネシウムを使用した。
【0148】
実施例中に示した原料のピペラジン体あるいはピペリジン体はWO02/14271に記載されている手法を用いて合成した。
【実施例1】
【0149】
3-((S)-2-アミノ-2-{trans-4-[4-(5-シアノ-2-ピリジニル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジン
【0150】
【化14】

【0151】
(1) 4-ヒドロキシ-L-フェニルグリシン21.56 gを水250 mLと3 mol/L水酸化ナトリウム水溶液43 mLに溶解し、ラネーニッケル130 gを加え、80℃の加熱下、7.0 kgf/cm2で水素添加反応を行った。3時間後、反応液を濾過し、固形物を水にて洗浄し、濾液を200 mLまで減圧下濃縮した。濃縮液に1,4-ジオキサン150 mL及びトリエチルアミン32 mLを加え、氷冷下において二炭酸ジ-tert-ブチル33.8 gを加え、室温下で20時間攪拌した。反応液の有機溶媒を留去し、氷冷下で2 mol/L塩酸155 mLを注ぎ、その混合液のpHを2にし、食塩を飽和するまで加えた後に酢酸エチルで4回抽出した。抽出液を乾燥後、減圧下で濃縮し、残渣にTHF 350 mLおよび1,3-チアゾリジン13.8 gを加え、氷冷下HOBT 30.40 g、およびEDCの塩酸塩29.7 gを順次加え、室温下12時間攪拌した。反応液を濃縮後、濃縮物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。抽出液を乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより3-[(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(4-ヒドロキシ-1-シクロヘキシル)アセチル]-1,3-チアゾリジン41.66 g (収率93.8%)を白色固体として得た。
【0152】
(2) 上記化合物32.98 gをDIPEA 70 mL、ジクロロメタン70 mLおよびDMSO 270 mLに溶解し、これに液温を20℃に保ちながらピリジン三酸化硫黄錯体25.93 gを加えて3時間攪拌した。氷冷下で反応液に10%クエン酸水溶液を加え、トルエンで抽出した。抽出液を水および飽和食塩水で洗浄し、乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより3-[(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-(4-オキソ-1-シクロヘキシル)アセチル]-1,3-チアゾリジン22.10 g (収率67.4%)を無色の高粘度油状物として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ1.43 (9H, s), 1.48-1.68 (2H, m), 1.95-2.18 (3H, m), 2.25-2.50 (4H, m), 3.04 (1H, t, J = 6.3 Hz), 3.12 (1H, t, J = 6.3 Hz), 3.70-4.12 (2H, m), 4.38-4.78 (3H, m), 5.29 (1H, d, J = 9.2 Hz).
【0153】
(3) 上記化合物630 mgおよびおよび1-(5-シアノ-2-ピリジル)ピペラジン381 mgをクロロホルム8 mLに溶解し、トリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム780 mgを加え、室温にて22時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄、乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより3-((S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-{trans-4-[4-(5-シアノ-2-ピリジル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジンのtrans体604 mg (収率63.8%)を淡黄色非晶体として、およびcis体344 mg (収率36.2%)を白色非晶体として得た。
【0154】
(4) 上記のtrans体596 mgをジクロロメタン5 mLに溶解し、氷冷下トリフルオロ酢酸10 mLを加え、3時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄、乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、酢酸エチルから結晶化することにより表題化合物270 mg (収率56.1 %)を白色粉末として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ1.38-1.95 (9H, m), 2.18-2.25 (1H, m), 2.50-2.62 (4H, m), 3.02 (1H, t, J = 6.5 Hz), 3.11 (1H, t, J = 6.2 Hz), 3.38-3.48 (1H, m), 3.62-3.98 (6H, m), 4.51-4.68 (2H, m), 6.59 (1H, d, J = 9.0 Hz), 7.60 (1H, dd, J = 2.2, 9.0 Hz), 8.40 (1H, d, J = 2.2 Hz).
【実施例2】
【0155】
3-((S)-2-アミノ-2-{cis-4-[4-(5-シアノ-2-ピリジル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジン
【0156】
【化15】

【0157】
実施例1(3)のcis体384 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により表題化合物83 mg (収率26%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ1.02-1.37 (4H, m), 1.42-1.75 (2H, m), 1.88-2.02 (3H, m), 2.23-2.36 (1H, m), 2.58-2.68 (4H, m), 3.02 (1H, t, J = 6.3 Hz), 3.10 (1H, t, J = 6.1 Hz), 3.34 (1H, dd, J = 6.1, 10.8 Hz), 3.62-3.98 (6H, m), 4.46-4.70 (2H, m), 6.58 (1H, d, J = 8.9 Hz), 7.59 (1H, dd, J = 2.3, 8.9 Hz), 8.40 (1H, d, J = 2.3 Hz).
【実施例3】
【0158】
3-((S)-2-アミノ-2-{trans-4-[4-(3-クロロ-5-トリフルオロメチル-2-ピリジル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジン
【0159】
【化16】

【0160】
(1) 実施例1(2)の生成物514 mgおよび1-(3-クロロ-5-トリフルオロメチル-2-ピリジル)ピペラジン438 mgを用い、実施例1(3)と同様の手法により3-((S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-{4-[4-(3-クロロ-5-トリフルオロメチル-2-ピリジニル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジンのtrans体490 mg (収率55.2%)を白色非晶体として、およびcis体254 mg (収率28.6%)を白色非晶体として得た。
【0161】
(2) 上記のtrans体484 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により表題化合物80 mg (収率20%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ1.22-1.86 (9H, m), 2.05-2.27 (2H, brs), 2.57 (4H, s), 2.98 (1H, t, J = 6.4 Hz), 3.04-3.13 (1H, m), 3.2-4.0 (8H, m), 4.36-4.82 (2H, m), 8.18 (1H, d, J = 2.0 Hz), 8.55 (1H, s).
【実施例4】
【0162】
3-((S)-2-アミノ-2-{cis-4-[4-(3-クロロ-5-トリフルオロメチル-2-ピリジル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジン
【0163】
【化17】

【0164】
実施例3(1)のcis体249 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により表題化合物25 mg (収率12%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ0.97-1.30 (4H, m), 1.40-1.92 (5H, m), 2.17-2.28 (1H, m), 2.69 (4H, s), 3.01 (1H, t, J = 6.4 Hz), 3.07-3.13 (1H, m), 3.20-3.95 (8H, m), 4.37-4.77 (2H, m), 5.06 (brs, 2H), 8.18 (1H, d, J = 2.0Hz), 8.54 (1H, s).
【実施例5】
【0165】
3-[(S)-2-アミノ-2-(trans-4-{4-[4-(4-シアノフェニル)-2-チアゾリル]-1-ピペラジニル}-1-シクロヘキシル)アセチル]-1,3-チアゾリジン
【0166】
【化18】

【0167】
(1) 実施例1(2)の生成物342 mgおよび1-[4-(4-シアノフェニル)-2-チアゾリル]ピペラジン270 mgを用い、実施例1(3)と同様の手法により3-[(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-(4-{4-[4-(4-シアノフェニル)-2-チアゾリル]-1-ピペラジニル}-1-シクロヘキシル)アセチル]-1,3-チアゾリジンのtrans体378 mg (収率63.4%)を黄色非晶体として、およびcis体195 mg (収率32.7%)を黄色非晶体として得た。
【0168】
(2) 上記のtrans体372 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により表題化合物175 mg (収率55.2%)を淡黄色粉末として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ1.25-1.85 (9H, m), 2.17-2.25 (1H, m), 2.52-2.61 (4H, s), 3.00 (1H, t, J = 6.4 Hz), 3.04-3.15 (1H, m), 3.25-4.05 (8H, m), 4.18-4.83 (3H, m), 7.59 (1H, s), 7.85 (2H, d, J = 8.4 Hz), 8.04 (2H, d, J = 8.4 Hz).
【実施例6】
【0169】
3-[(S)-2-アミノ-2-(cis-4-{4-[4-(4-シアノフェニル)-2-チアゾリル]-1-ピペラジニル}-1-シクロヘキシル)アセチル]-1,3-チアゾリジン
【0170】
【化19】

【0171】
実施例5(1)のcis体195 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により表題化合物43 mg (収率27%)を淡黄色粉末として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ0.97-1.30 (4H, m), 1.40-1.88 (5H, m), 2.18-2.32 (1H, m), 2.55-2.65 (4H, m), 3.01 (1H, t, J = 6.4 Hz), 3.06-3.12 (1H, m), 3.25-3.95 (8H, m), 4.30-4.75 (4H, m), 7.58 (1H, s), 7.85 (2H, d, J = 8.4Hz), 8.04 (2H, d, J = 8.4 Hz)。
【実施例7】
【0172】
3-((S)-2-アミノ-2-{trans-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジン・3塩酸塩
【0173】
【化20】

【0174】
(1) 実施例1(2)の生成物514 mgおよび1-(3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾリル)ピペラジン400 mgを用い、実施例1(3)と同様の手法により3-((S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-{4-[4-(3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジンのtrans体313 mgを白色非晶体として、およびtrans体とcis体の混合物398 mgを白色非晶体として得た。
【0175】
(2) 上記のtrans体306 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により3-((S)-2-アミノ-2-{trans-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジン173 mg (収率68.6%)を白色非晶体として得た。
【0176】
(3) 上記化合物232 mgを酢酸エチル4 mLに溶解し、氷冷下4 mol/L塩酸-酢酸エチル0.40mLを加え、2時間攪拌した。析出物を濾取し、酢酸エチルで洗うことにより表題化合物246 mg (収率85.2%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ1.42-1.58 (2H, m), 1.68-2.10 (7H, m), 2.17 (3H, s), 2.97-4.27 (14H, s), 4.39-4.92 (2H, m), 5.92 (1H, s), 7.32 (1H, t, J = 7.5 Hz), 7.48 (2H, t, J = 7.5 Hz), 7.77 (1H, d, J = 7.5 Hz), 8.41 (1H, brs), 10.63 (1H, brs).
【実施例8】
【0177】
3-((S)-2-アミノ-2-{cis-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジン
【0178】
【化21】

【0179】
実施例7(1)のtrans体とcis体の混合物390 mg用い、実施例1(4)と同様の手法により表題化合物60 mg (収率19%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ1.00-1.33 (4H, m), 1.40-1.75 (2H, m), 1.86-2.00 (3H, m), 2.15-2.30 (3H, m), 2.54-2.63 (4H, m), 2.83-2.92 (4H, m), 3.01 (1H, t, J = 6.2 Hz), 3.09(1H, t, J = 6.2 Hz), 3.28-3.37 (1H, m), 3.66-3.98 (2H, m), 4.45-4.71 (2H, m), 5.66 (1H, s), 7.23 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.40 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.76 (1H, d, J = 8.0 Hz).
【実施例9】
【0180】
3-((S)-2-アミノ-2-{trans-4-[4-(3-ブロモ-1-イソキノリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジン・3塩酸塩
【0181】
【化22】

【0182】
(1) 実施例1(2)の生成物514 mgおよび1-(3-ブロモ-1-イソキノリル)ピペラジン482mgを用い、実施例1(3)と同様の手法により3-[(S)-2-{4-[4-(3-ブロモ-1-イソキノリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)アセチル]-1,3-チアゾリジンのtrans体426 mgを白色非晶体として、およびtrans体とcis体の混合物375 mgを白色非晶体として得た。
【0183】
(2) 上記のtrans体419 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により3-((S)-2-アミノ-2-{trans-4-[4-(3-ブロモ-1-イソキノリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジン293 mg (収率84.0%)を白色非晶体として得た。
【0184】
(3) 上記化合物293 mgを用い、実施例7(3)と同様の手法により表題化合物312 mg (収率86.9%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ1.45-2.20 (9H, m), 3.06 (1H, t, J = 6.3 Hz), 3.13 (1H, t, J = 6.2 Hz), 3.27-4.33 (12H, m), 4.42-4.94 (2H, m), 7.76 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.93 (1H, d, J = 7.8 Hz), 8.08 (1H, d, J = 7.8 Hz), 8.19 (1H, d, J = 7.8 Hz), 8.38 (1H, s), 8.48 (3H, brs), 10.90 (1H, brs).
【実施例10】
【0185】
3-((S)-2-アミノ-2-{cis-4-[4-(3-ブロモ-1-イソキノリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジン
【0186】
【化23】

【0187】
実施例9(1)のtrans体とcis体の混合物368 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により表題化合物70 mg (収率23%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ0.90-1.42 (4H, m), 1.52-1.62 (1H, m), 1.73-1.98 (4H, m), 2.18-2.32 (1H, m), 2.69-2.79 (4H, m), 2.99 (1H, t, J = 6.4 Hz), 3.08 (1H, t, J = 6.3 Hz), 3.26-3.92 (7H, m), 4.36-4.71 (2H, m), 7.71 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.85 (1H, d, J = 8.0 Hz), 8.02 (1H, d, J = 8.0 Hz), 8.12 (1H, d, J = 8.0 Hz), 8.32 (1H, s).
【実施例11】
【0188】
3-((S)-2-アミノ-2-{trans-4-[4-(2-トリフルオロメチル-4-キノリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジン・2塩酸塩
【0189】
【化24】

【0190】
(1) 実施例1(2)の生成物514 mgおよび1-(2-トリフルオロメチル-4-キノリル)ピペラジン464 mgを用い、実施例1(3)と同様の手法により3-((S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-{4-[4-(2-トリフルオロメチル-4-キノリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジンのtrans体578 mg (収率63.4%)を淡黄色非晶体として、およびcis体127 mg (収率13.9%)を無色油状物として得た。
【0191】
(2) 上記のtrans体572 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により3-((S)-2-アミノ-2-{trans-4-[4-(2-トリフルオロメチル-4-キノリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジン325 mg (収率68.0%)を黄色油状物として得た。
【0192】
(3) 上記化合物325 mgを用い、実施例7(3)と同様の手法により表題化合物381 mg (収率96.6%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ1.45-1.63 (2H, m), 1.75-2.22 (7H, m), 3.06 (1H, t, J = 6.3 Hz), 3.14 (1H, t, J = 6.1 Hz), 3.31-3.53 (3H, m), 3.60-4.95 (11H, m), 7.37 (1H, s),7.48 (1H, t, J = 7.2 Hz), 7.89 (1H, t, J = 7.2 Hz), 8.05-8.18 (2H, m), 8.50 (3H, brs).
【実施例12】
【0193】
3-((S)-2-アミノ-2-{cis-4-[4-(2-トリフルオロメチル-4-キノリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジン・2塩酸塩
【0194】
【化25】

【0195】
(1) 実施例11(1)のcis体127 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により3-((S)-2-アミノ-2-{cis-4-[4-(2-トリフルオロメチル-4-キノリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジン81 mg (収率76%)を無色油状物として得た。
【0196】
(2) 上記化合物81 mgを用い、実施例7(3)と同様の手法により表題化合物82 mg (収率83%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ1.13-1.98 (7H, m), 2.23-2.38 (2H, m), 3.02-3.29 (3H, m), 3.38-4.23 (11H, m), 4.39-4.87 (2H, m), 7.36 (1H, s), 7.74 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.89 (1H, t, J = 7.8 Hz), 8.13 (1H, d, J = 7.8 Hz), 8.17 (1H, d, J = 7.8 Hz), 8.42 (3H, brs).
【実施例13】
【0197】
3-((S)-2-アミノ-2-{trans-4-[4-(2-ベンゾチアゾリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジン
【0198】
【化26】

【0199】
(1) 実施例1(2)の生成物514 mgおよび1-(2-ベンゾチアゾリル)ピペラジン362 mgを用い、実施例1(3)と同様の手法により3-[(S)-2-{4-[4-(2-ベンゾチアゾリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)アセチル]-1,3-チアゾリジンのtrans体488 mg (収率59.6%)を白色非晶体として、およびcis体279 mg (収率34.1 %)を白色固体として得た。
【0200】
(2) 上記のtrans体481 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により表題化合物247 mg (収率62.9%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ1.20-1.83 (9H, m), 2.20 (1H, brs), 2.52-2.67 (4H, m), 2.98 (1H, t, J = 6.4 Hz), 3.09 (1H, t, J = 6.4 Hz), 3.24-4.00 (9H, m), 4.36-4.82 (2H, m), 7.07 (1H, t, J = 7.7 Hz), 7.27 (1H, t, J = 7.7 Hz), 7.45 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.76 (1H, d, J = 7.7 Hz).
【実施例14】
【0201】
3-((S)-2-アミノ-2-{cis-4-[4-(2-ベンゾチアゾリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジン
【0202】
【化27】

【0203】
実施例13(1)のcis体273 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により表題化合物98 mg (収率44%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ0.88-1.98 (9H, m), 2.17-2.33 (1H, m), 2.53-2.68 (4H, m), 2.98 (1H, t, J = 6.5 Hz), 3.07 (1H, t, J = 6.2 Hz), 3.20-3.92 (9H, m), 4.35-4.71 (2H,m), 7.06 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.27 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.44 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.75 (1H, d, J = 8.0 Hz).
【実施例15】
【0204】
3-((S)-2-アミノ-2-{4-[4-(2-ベンゾイミダゾリル)ピペリジノ]-1-シクロヘキシル}アセチル)-1,3-チアゾリジン・3塩酸塩
【0205】
【化28】

【0206】
(1) 実施例1(2)の生成物688 mg、1-(2-ベンゾイミダゾリル)ピペリジン445 mgおよび酢酸0.12 mLをメタノール12 mLに溶解し、シアノ水素化ほう素ナトリウム140 mgを加え、室温にて28時間攪拌した。反応液を濃縮後、残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄、乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより3- [(S)-2-{4-[4-(2-ベンゾイミダゾリル)ピペリジノ]-1-シクロヘキシル}-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)アセチル]-1,3-チアゾリジン445 mg (収率42.0%)を淡黄色非晶体として得た。
【0207】
(2) 上記化合物404 mgをエタノール3 mLに溶解し、4 mol/L塩酸-1,4-ジオキサン3 mLを加え、6時間攪拌した。反応液を減圧下で濃縮し、残渣に酢酸エチル10 mLを加え、固形物を濾取し、酢酸エチルで洗うことにより、表題化合物322 mg (収率78.3%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ1.15-2.13 (8H, m), 2.18-2.32 (1H, m), 3.0-5.0 (17H, m), 7.49-7.59 (2H, m), 7.75-7.86 (2H, m), 8.40, 8.48 (3H, brs), 10.7, 11.1 (1H, brs).
【実施例16】
【0208】
3-{(S)-2-アミノ-2-[trans-4-(4-フェニル-1-ピペラジニル)-1-シクロヘキシル]アセチル}-1,3-チアゾリジン
【0209】
【化29】

【0210】
(1) 実施例1(2)の生成物630 mgおよび1-フェニルピペラジン381 mgを用い、実施例1(3)と同様の手法により3-{(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-[trans-4-(4-フェニル-1-ピペラジニル)-1-シクロヘキシル]アセチル}-1,3-チアゾリジンのtrans体495 mgを白色非晶体として、およびtrans体とcis体の混合物409 mgを白色非晶体として得た。
【0211】
(2)上記のtrans体487 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により表題化合物156 mg (収率39.0%)を白色針状結晶として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ1.35-1.97 (9H, m), 2.18-2.27 (1H, m), 2.58-2.70 (4H, m), 3.01 (1H, t, J = 6.5 Hz), 3.10 (1H, t, J = 6.2 Hz), 3.16-3.26 (4H, m), 3.39-3.51 (1H, m), 3.72-3.98 (2H, m), 4.52-4.70 (2H, m), 6.85 (1H, t, J = 7.8 Hz), 6.93 (2H, d, J = 7.8 Hz), 7.26 (2H, t, J = 7.8 Hz).
【実施例17】
【0212】
3-{(S)-2-アミノ-2-[cis-4-(4-フェニル-1-ピペラジニル)-1-シクロヘキシル]アセチル}-1,3-チアゾリジン
【0213】
【化30】

【0214】
実施例16(1)のtrans体とcis体の混合物403 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により表題化合物25 mg(収率9.5%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ1.04-1.78 (6H, m), 1.92-2.10 (3H, m), 2.23-2.37 (1H, m), 2.70-2.78 (4H, m), 3.01 (1H, t, J = 6.4 Hz), 3.10 (1H, t, J = 6.2 Hz), 3.17-3.26 (4H, m), 3.31-3.39 (1H, m), 3.78-3.98 (2H, m), 4.47-4.71 (2H, m), 6.85 (1H, t, J = 7.8Hz), 6.93 (2H, d, J = 7.8 Hz), 7.26 (2H, t, J = 7.8 Hz).
【実施例18】
【0215】
3-{(S)-2-アミノ-3-[trans-4-(4-フェニル-1-ピペラジニル)-1-シクロヘキシル]プロピオニル}-1,3-チアゾリジン
【0216】
【化31】

【0217】
(1) L-チロシン25.4 gを用い、実施例1(1)と同様の手法により3-[(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(4-ヒドロキシ-1-シクロヘキシル)プロピオニル]-1,3-チアゾリジン44.6 g (収率88.9%)を白色非晶体として得た。
【0218】
(2) 上記化合物42.0 gを用い、実施例1(2)と同様の手法により3-[(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(4-オキソ-1-シクロヘキシル)プロピオニル]-1,3-チアゾリジン30.0g (収率71.9%)を無色の高粘度油状物として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ1.43 (9H, s), 1.32-1.70 (4H, m), 1.82-2.08 (2H, m), 2.28-2.45 (5H, m), 3.02 (1H, t, J = 6.3 Hz), 3.08-3.17 (1H, m), 4.43-4.73 (3H, m), 5.29 (1H,d, J = 8.9 Hz).
【0219】
(3) 上記化合物740 mgおよび1-フェニルピペラジン0.35 mLを用い、実施例1(3)と同様の手法により3-[(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(4-オキソ-1-シクロヘキシル)プロピオニル]-1,3-チアゾリジンのtrans体496 mgを白色非晶体として、およびtrans体とcis体の混合物379 mgを白色非晶体として得た。
【0220】
(4) 上記のtrans体487 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により表題化合物216 mg (収率54.4%)を微黄色粉末として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ1.32-1.44 (1H, m), 1.48-1.92 (10H, m), 2.21-2.29 (1H, m), 2.64-2.73 (4H, m), 3.01 (1H, t, J = 6.3 Hz), 3.11 (1H, t, J = 6.1 Hz), 3.15-3.26 (4H, m), 3.52-3.96 (3H, m), 4.43-4.68 (2H, m), 6.85 (1H, t, J = 7.5 Hz), 6.93 (2H, d,J = 7.5Hz), 7.26 (2H, t, J = 7.5 Hz).
【実施例19】
【0221】
3-{(S)-2-アミノ-3-[cis-4-(4-フェニル-1-ピペラジニル)-1-シクロヘキシル]プロピオニル}-1,3-チアゾリジン・3塩酸塩
【0222】
【化32】

【0223】
(1) 実施例18(3)のtrans体とcis体の混合物379 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により3-{(S)-2-アミノ-3-[cis-4-(4-フェニル-1-ピペラジニル)-1-シクロヘキシル]プロピオニル}-1,3-チアゾリジン252 mg (収率86.0%)を黄色油状物として得た。
【0224】
(2) 上記化合物150 mgを用い、実施例7(3)と同様の手法により表題化合物166 mg (収率83.7%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ0.88-1.14 (1H, m), 1.43-2.28 (10H, m), 3.02-4.08 (13H, m), 4.20-4.94 (3H, m), 6.87 (1H, t, J = 7.5Hz), 7.00 (2H, d, J = 7.5Hz), 7.27 (2H, t, J= 7.5 Hz), 8.33 (3H, brs), 11.0 (1H, brs).
【実施例20】
【0225】
3-((S)-2-アミノ-3-{trans-4-[4-(5-シアノ-2-ピリジル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}プロピオニル)-1,3-チアゾリジン
【0226】
【化33】

【0227】
(1) 実施例18 (2)の生成物798 mgおよび1-(5-シアノ-2-ピリジル)ピペラジン463 mgを用い、実施例1(3)と同様の手法により3-((S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-{trans-4-[4-(5-シアノ-2-ピリジル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}プロピオニル)-1,3-チアゾリジンのtrans体607 mg (収率51.3%)を白色非晶体として、およびcis体393 mg (収率33.2%)を褐色油状物として得た。
【0228】
(2) 上記のtrans体598 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により表題化合物201 mg(収率41.3%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ1.32-1.92 (11H, m), 2.20-2.29 (1H, m), 2.53-2.66 (4H, m), 3.01 (1H, t, J = 6.3 Hz), 3.12 (1H, t, J = 6.2 Hz), 3.51-3.96 (7H, m), 4.43-4.68 (2H, m), 6.59 (1H, d, J = 9.1 Hz), 7.60 (1H, dd, J = 2.3, 9.1 Hz), 8.40 (1H, d, J = 2.3 Hz).
【実施例21】
【0229】
3-((S)-2-アミノ-3-{cis-4-[4-(5-シアノ-2-ピリジル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}プロピオニル)-1,3-チアゾリジン
【0230】
【化34】

【0231】
実施例20(1)のcis体393 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により表題化合物42 mg (収率13%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ0.87-1.12 (2H, m), 1.23-2.04 (9H,m), 2.26-2.35 (1H, m), 2.63-2.69 (4H, m), 3.01 (1H, t, J = 6.4 Hz), 3.10 (1H, t, J = 6.1 Hz), 3.53-3.94 (7H, m), 4.38-4.67 (2H, m), 6.58 (1H, d, J = 9.1 Hz), 7.59 (1H, dd, J = 2.4, 9.1 Hz), 8.40 (1H, d, J = 2.4 Hz).
【実施例22】
【0232】
3-((S)-2-アミノ-3-{trans-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}プロピオニル)-1,3-チアゾリジン・3塩酸塩
【0233】
【化35】

【0234】
(1) 実施例18(2)の生成物702 mgおよび1-(3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾリル)ピペラジン525 mgを用い、実施例1(3)と同様の手法により3-((S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-{4-[4-(3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}プロピオニル)-1,3-チアゾリジンのtrans体477 mgを白色非晶体として、およびtrans体とcis体の混合物431 mgを白色非晶体として得た。
【0235】
(2) 上記のtrans体470 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により3-((S)-2-アミノ-3-{trans-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}プロピオニル)-1,3-チアゾリジン286 mg (収率73.5%)を黄色油状物として得た。
【0236】
(3) 上記化合物286 mgを用い、実施例7(3)と同様の手法により表題化合物257 mg (収率71.0%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ1.38-1.97 (11H, m), 2.17 (3H, s), 2.95-3.32 (9H, m), 3.42-3.53(2H, m), 3.68-3.98 (2H, m), 4.13-4.90 (3H, m), 5.91 (1H, s), 7.31 (1H, t, J = 7.5 Hz), 7.47 (2H, t, J = 7.5 Hz), 7.79 (2H, d, J = 7.5 Hz), 8.34 (3H, brs), 11.2(1H, brs).
【実施例23】
【0237】
3-((S)-2-アミノ-3-{cis-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}プロピオニル)-1,3-チアゾリジン・3塩酸塩
【0238】
【化36】

【0239】
(1) 実施例22(1)のtrans体とcis体の混合物427 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により3-((S)-2-アミノ-3-{cis-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾリル)-1-ピペラジニル]-1-シクロヘキシル}プロピオニル)-1,3-チアゾリジン135 mg (収率38.2%)を無色油状物として得た。
【0240】
(2)上記化合物135 mgを用い、実施例7(3)と同様の手法により表題化合物122 mg (収率72.1%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ0.85-1.10 (2H, m), 1.38-2.24 (13H, m), 2.97-3.28 (9H, m), 3.42-4.03 (3H, m), 4.15-4.88 (3H, m), 5.91 (1H, s), 7.31 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.48 (2H, t, J = 7.8 Hz), 7.77 (2H, d, J = 7.8 Hz), 8.35 (3H, brs), 11.3 (1H, brs).
【実施例24】
【0241】
3-{(S)-2-アミノ-3-[trans-4-(4-ニトロベンジルアミノ)-1-シクロヘキシル]プロピオニル}-1,3-チアゾリジン・2塩酸塩
【0242】
【化37】

【0243】
(1) 実施例18(2)の生成物535 mg、トリエチルアミン0.28 mL、および4-ニトロベンジルアミノ塩酸塩311 mgをクロロホルム7 mLに溶解し、トリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム636 mgを加え、室温にて5時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄、乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより3-{(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-[4-(4-ニトロベンジルアミノ)-1-シクロヘキシル]プロピオニル}-1,3-チアゾリジンのtrans体412 mgを白色非晶体として、およびtrans体とcis体の混合物345 mgを白色非晶体として得た。
【0244】
(2) 上記のtrans体408 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により3-{(S)-2-アミノ-3-[trans-4-(4-ニトロベンジルアミノ)-1-シクロヘキシル]プロピオニル}-1,3-チアゾリジン312 mg (収率96.0%)を黄色油状物として得た。
【0245】
(3)上記化合物312 mgを用い、実施例7(3)と同様の手法により表題化合物314 mg (収率81.7%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ1.42-1.93 (11H, m), 3.02-4.05 (6H, m), 4.12-4.93 (4H, m), 7.94 (2H, d, J = 8.6 Hz), 8.28 (2H, d, J = 8.6 Hz), 8.40 (brs, 2H).
【実施例25】
【0246】
3-{(S)-2-アミノ-3-[cis-4-(4-ニトロベンジルアミノ)-1-シクロヘキシル]プロピオニル}-1,3-チアゾリジン・2塩酸塩
【0247】
【化38】

【0248】
(1) 実施例24(1)のtrans体とcis体の混合物338 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により3-{(S)-2-アミノ-3-[cis-4-(4-ニトロベンジルアミノ)-1-シクロヘキシル]プロピオニル}-1,3-チアゾリジン115 mg (収率42.7%)を無色油状物として得た。
【0249】
(2) 上記化合物115 mgを用い、実施例7(3)と同様の手法により表題化合物132 mg (収率93.2%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ0.82-1.08 (2H, m), 1.37-1.72 (6H, m), 1.90-2.19 (3H, m), 2.77-3.96 (5H, m), 4.15-4.83 (5H, m), 7.89 (2H, d, J = 8.6 Hz), 8.28 (2H, d, J = 8.6 Hz), 8.55 (brs, 2H).
【実施例26】
【0250】
3-[(S)-2-アミノ-3-(4-アニリノ-1-シクロヘキシル)プロピオニル]-1,3-チアゾリジン・2塩酸塩
【0251】
【化39】

【0252】
(1) 実施例18(2)の生成物713 mgおよびアニリン0.20 mLを用い、実施例1(3)と同様の手法により3-[(S)-3-(4-アニリノ-1-シクロヘキシル)-2-tert-(ブトキシカルボニルアミノ)プロピオニル]-1,3-チアゾリジン584 mg (収率67.3%)を白色非晶体として得た。
【0253】
(2) 上記化合物542 mgを用い、実施例1(4)と同様の手法により3-[(S)-2-アミノ-3-(4-アニリノ-1-シクロヘキシル)プロピオニル]-1,3-チアゾリジン391 mg (収率93.8%)を無色油状物として得た。
【0254】
(3) 上記化合物391 mgを用い、実施例7(3)と同様の手法により表題化合物427 mg (収率88.6%)を白色粉末として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ0.88-1.11 (1H, m), 1.34-2.00 (10H, m), 2.98-4.08 (4H, m), 4.15-4.93 (4H, m), 7.00-7.48 (5H, m), 8.30 (brs, 3H).
【0255】
本発明の化合物は以下に示す実験例1により、強力なDPP-IV阻害活性を示した。
【実験例1】
【0256】
(血漿DPP-IV阻害活性)
蛍光アッセイ法により、ヒト及びラットの血漿DPP-IV阻害活性を測定した。DPP-IV特異的な蛍光基質としてGly-Pro-MCA(ペプチド研)を用い、種々濃度の被験物質を含む下記組成の反応液を室温で60分間インキュベーションし、計測(SPECRA FLUOR、TECAN社)される蛍光強度(Exitation 360 nm / Emission 465 nm)をDPP-IV活性とした。
【0257】
緩衝液は0.003% Brij-35含有リン酸緩衝液(PBS、シグマアルドリッチ社)を使用した。
被験物質を含まない反応液をコントロールとした。
【表1】

【0258】
コントロールの反応に対する被検物質の阻害率を算出し、その50%抑制率(IC50値)をロジスティック解析により求めた。 以上の方法により求めた本発明の血漿DPP-IV阻害活性のIC50値を下表に示す。
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0259】
以上の実験例の結果から、本発明に係るα-アミノ酸誘導体は、強力なDPP-IV阻害活性を示し、糖尿病の予防及び/又は治療、又は、肥満の予防及び/又は治療に有用である。

なお、本出願は、日本で出願された特願2003−413846号の優先権主張して出願されたものでり、その内容は本明細書にすべて包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】


〔式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル又はアルコキシを示し、R2は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル又はアルコキシを示すか、又はR1及びR2が一緒になってオキソ、ヒドロキシイミノ、アルコキシイミノ又はアルキリデンを形成し、
XはCH-R3又はN-R4を示し、
YはCR5R6(R5及びR6はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル又はアルコキシを示すか、又はR5及びR6が一緒になってオキソ、ヒドロキシイミノ、アルコキシイミノ又はアルキリデンを形成していてもよい。)、S、S=O又はSO2を示し、
Zは水素原子又はシアノを示し、
m及びnはそれぞれ0、1又2を示し、このときのmとnの和は1、2又は3であり、
pは0、1、2又は3を示し、
R3は-NR7R8(R7、R8は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルを示すか、又は互いに結合して、少なくとも1個の窒素原子、若しくはさらに他のヘテロ原子を有していてもよいヘテロサイクルを形成してもよく、このヘテロサイクルには置換基を有していてもよい芳香環が置換又は縮合していてもよい。)、-NR9COR10(R9、R10は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はヘテロサイクルを示す。)、-NR11CONR12R13(R11、R12、R13は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルを示すか、又はR12、R13は互いに結合して、少なくとも1個の窒素原子、若しくはさらに他のヘテロ原子を有していてもよいヘテロサイクルを形成してもよく、このヘテロサイクルには置換基を有していてもよい芳香環が置換又は縮合していてもよい。)、-NR14SO2R15(R14、R15は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はヘテロサイクルを示す。)、-OR16又は-OCOR17(R16、R17は水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はヘテロサイクルを示す。)を示し、
R4は水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロサイクル、-COR18(R18は水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はヘテロサイクルを示す。)、-CONR19R20(R19、R20は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルを示すか、又はR19、R20は互いに結合して、少なくとも1個の窒素原子、若しくはさらに他のヘテロ原子を有していてもよいヘテロサイクルを形成してもよく、このヘテロサイクルには置換基を有していてもよい芳香環が置換又は縮合していてもよい。)又は-SO2R21(R21はアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はヘテロサイクルを示す。)を示す。
ただし、pが0の場合、XはCH-R3を示し、さらにR3は一般式(II)を示す。
【化2】


(式中、
【化3】


は、単結合又は二重結合を示し、
R22はアリール又はヘテロアリールを示し、
qは1又は2を示し、
Aは炭素原子又は窒素原子を示す。
ただし、i)Aが炭素原子を示す場合、Aは水酸基、カルボキシル又はアルコキシカルボニルで置換されていてもよい。また、ii)Aが窒素原子を示す場合、
【化4】


は、単結合を示す。)
なお、上記基のうち、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル及びヘテロサイクルは、それぞれ置換基を有していてもよい。〕で示されるα-アミノ酸誘導体又はその医薬上許容される塩。
【請求項2】
請求項1の一般式(I)においてm = 2、n = 0及びX = CH-R3である請求項1に記載のα-アミノ酸誘導体又はその医薬上許容される塩。
【請求項3】
請求項1の一般式(I)においてR3が請求項1の一般式(II)である請求項2に記載のα-アミノ酸誘導体又はその医薬上許容される塩。
【請求項4】
請求項1の一般式(I)においてY = S、R1 = R2 = Z = H、及び請求項1の一般式(II)においてq = 1、A = Nである請求項3に記載のα-アミノ酸誘導体又はその医薬上許容される塩。
【請求項5】
一般式(III)
【化5】


〔式中、X’はCH-R3、N-R4又はC=Oを示し、
R23は-COR24(R24は水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はヘテロサイクルを示す。)又は-COOR25(R25はアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はヘテロサイクルを示す。)を示し、その他の各記号は請求項1記載のものと同義である。〕で示される化合物。
【請求項6】
一般式(III)においてX’= C=Oである請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載のα-アミノ酸誘導体又はその医薬上許容される塩と薬理学上許容しうる担体とを含有する医薬組成物。
【請求項8】
請求項1から4のいずれかに記載のα-アミノ酸誘導体又はその医薬上許容される塩を含有するDPP-IV阻害薬。
【請求項9】
請求項1から4のいずれかに記載のα-アミノ酸誘導体又はその医薬上許容される塩を有効成分とするDPP-IV阻害薬が関与する疾患の予防又は/治療剤。
【請求項10】
請求項1から4のいずれかに記載のα-アミノ酸誘導体又はその医薬上許容される塩を有効成分とする糖尿病又は肥満の予防又は/及び治療剤。
【請求項11】
請求項6の化合物を中間体として使用することを特徴とする請求項5のX’がCH-R3で示される化合物の製造方法。
【請求項12】
請求項11の製造方法を含む請求項1から4のいずれかに記載の化合物の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/056541
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516187(P2005−516187)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018479
【国際出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000006725)三菱ウェルファーマ株式会社 (92)
【Fターム(参考)】