説明

β−イソインジゴ着色剤

本発明は、一般式(I)
【化21】


[式中、CはC2v対称を有している脂環基または複素環基を表し、Bはオルト−C−C18アリーレンを表す]の化合物に関する。本発明はまた、この化合物の製造方法、有機または無機の高分子量または低分子量の材料、特に高分子量有機材料を着色または彩色するための着色剤としてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な有機顔料及び染料に関する。
【0002】
着色剤の分野では、高い耐移染性及び耐光堅牢度を有しており、良好な熱安定性及び高い着色力を有しており、また、顔料の場合には高い耐溶剤性を有している新規な色彩に対する市場需要が絶えず存在している。
【背景技術】
【0003】
米国特許第2,254,354号は、少なくとも1つの=CH−CO−基を含有している環状ラジカルによって置換されているβ−イソインジゴ化合物を記載している。しかしながら該特許に特定されている化合物は鮮やかな色にならない。
【0004】
現下の目的は、上述の顔料特性に加えて、従来技術の顔料よりも高い彩度及び明度を有している改良されたβ−インジゴ顔料を提供することであった。
【0005】
この目的は意外にも、式(I)の化合物によって達成されることが知見された。
【発明の開示】
【0006】
従って、本発明は、式(I)
【0007】
【化7】

[式中、CはC2v対称を有している脂環基または複素環基であり、Bはオルト−C−C18アリーレンである]
の化合物を提供する。
【0008】
好ましくは、式(I)の化合物が対称である。即ち、基Bの各々が等しく、また、基Cの各々が等しい。
【0009】
また、Bがオルトフェニレンまたは2,3−ナフチレンである式(I)の化合物が好ましい。
【0010】
更に、式中の環Cが式(a)−(d)
【0011】
【化8】

[式中、R及びRは互いに独立に、水素、C−C25アルキル、C−C12シクロアルキル、C−C24アリール、C−C25アルキル−(C−C10)−アリール、N、O及びSのグループから選択された1、2または3個のヘテロ原子を有しているヘテロ芳香族ラジカル、−(CH−CORまたは−(CH−ORであり、
ここに、Rは、ヒドロキシル、未置換またはモノ−もしくはポリ−ヒドロキシル−もしくはアミノ−置換C−C25アルコキシ、C−C25アルキルアミノ、ジ−(C−C25アルキル)アミノ、C−C25アルキル−C−C24アリールアミノ、(C−C24アリール)アミノ、ジ−(C−C24アリール)アミノまたはC−C24アルケニルオキシであり、
は、水素または−CO−(C−C25アルキル)であり、n及びmは互いに独立に0−6の整数、好ましくは1−4の整数であり、R、R、R及びR中のC−C単位がエーテル単位C−O−Cによって置換されていてもよく、
Xは、=O、=Sまたは=NRであり、
及びRは互いに独立に、水素、ハロゲン、CN、R、OR、SR、NR、NO、SO(OR)、SO、SONRまたはPO(OR)である]のC2v対称を有している環系によって示される式(I)の化合物が好ましい。C2v対称の概念は技術文献に記載されている。
【0012】
2v対称分子である式(I)の化合物中の置換基Cは、等しい対称要素、即ち、1つのC軸と2つの鏡面とを有しており、該2つの鏡面が互いに直交し、その交線がC軸を与える。
【0013】
及びRはより好ましくは、水素、C−C18アルキル、C−Cシクロアルキル、C−C10アリール、ベンジル、ピリジル、ピリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリミジル、ヒドロキシカルボニル−C−C18アルキル、C−C18アルコキシカルボニル−C−C18アルキル、アミノカルボニル−C−C18アルキル、C−C18アルキルアミノカルボニル−C−C18アルキル、C−C10アリールアミノカルボニル−C−C18アルキル、ジ(C−C18アルキル)−アミノカルボニル−C−C18アルキル、C−C18アルキル−C−C10−アリールアミノカルボニル−C−C18アルキルまたはジ(C−C10−アリール)アミノカルボニル−C−C18アルキルである。
【0014】
はより好ましくは、ヒドロキシル、C−C18アルコキシ、C−C18アルキルアミノ、ジ(C−C18アルキル)アミノ、ベンジルアミノ、C−C10アリールアミノ、ジ(C−C10−アリール)−アミノ、または、(C−C18)アルケニルオキシである。
【0015】
及びRはより好ましくは、水素、Cl、Br、C−C18アルキル、C−Cシクロアルキル、ベンジル、C−C10アリール、ピリジル、ピリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリミジル、C−C18アルコキシ、C−C10アリールオキシ、C−C18アルキルチオ、C−C10アリールチオ、C−C18アルキルアミノ、C−C10アリールアミノ、ジ(C−C18アルキル)−アミノ、C−C18アルキル−C−C10−アリールアミノ、ジ(C−C10−アリール)アミノ、SOH、C−C18アルコキシスルホニル、C−C18アルキルスルホニルまたはジ(C−C18アルキル)アミノ−スルホニルである。
【0016】
式(2)及び(3)
【0017】
【化9】


[式中、R、R及びRは上記の定義と同義である]
の化合物が特に重要である。
【0018】
本発明は更に、式(III)
【0019】
【化10】

の化合物と、少なくとも2モル当量の式(IV)
【0020】
【化11】

の環式化合物とを縮合させる式(I)の化合物の製造方法を提供する。
【0021】
反応は、10−250℃、好ましくは100−200℃の温度で、好ましくはN−メチルピロリドン、プロピレングリコール、2−フェノキシエタノール、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1−クロロナフタレン、N,N−ジメチルアニリンのような高沸点溶媒中、更に所望の場合には、例えばギ酸、酢酸及びプロピオン酸のような有機酸の存在下、または、例えば硫酸、塩酸及びリン酸のような無機酸の存在下で適宜行う。
【0022】
式(III)の化合物は、公知の方法(R.P.Smirnovら,Izv.Vysshikh,Uchebn,Zavednii,Khim,i Khim.Tekhnol.1963,6,1022−4)に従って、式(V)
【0023】
【化12】

の[1,1′]ビイソインドリリデン−3,3′−ジチオンと濃いアンモニア水溶液とをオートクレーブ中で亜硝酸ナトリウムの存在下、110℃で反応させることによって製造できる。
【0024】
本発明の式(I)の化合物は高分子量または低分子量の有機または無機の材料、特に高分子量有機材料を着色または彩色するために使用される。
【0025】
化合物の置換基の種類及び着色される高分子量有機材料の種類次第で、本発明の化合物をポリマー可溶性染料としてまたは顔料として使用し得る。顔料として使用する場合には、合成した物質(未精製顔料)を微細分散形態に変換して顔料特性を改良するのが有利である。このような変換は、顔料自体を溶解させない有機溶媒中で、例えば60−200℃、特に70−150℃、好ましくは75−100℃の高温で後処理することによって行う。後処理には磨砕処理または混練処理を組合せるのが好ましい。
【0026】
本発明の着色剤は、有機または無機の種類の高分子量材料、並びに、プラスチック及び/または天然材料の着色に極めて適している。着色対象材料は例えば、天然樹脂、乾性油、ゴムまたはカゼインである。あるいは、これらの材料が、塩素化ゴム、油改質アルキド樹脂、ビスコース、セルロース誘導体例えばセルロースエステルもしくはセルロースエーテルのような改質天然材料でもよく、そして、特に、付加重合、重縮合または重付加によって得られるような合成有機ポリマー(プラスチック)でもよい。付加重合によって製造されたプラスチックのクラスとしては特に以下の材料を挙げることができる:ポリオレフィン類、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、及び、置換ポリオレフィン類、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセタール、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル及びポリメタクリル酸エステル、または、ポリブタジエン、及び、それらのコポリマー。
【0027】
重付加及び重縮合によって製造されるプラスチックのクラスとしては以下の材料が挙げられる:ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリアセタール、及び、ホルムアルデヒドとフェノールとの縮合物(フェノール樹脂)、ホルムアルデヒドと尿素、チオウレア、及び、メラミンとの縮合物(アミノ樹脂)。着色対象材料はまたシリコーンまたはシリコーン樹脂でもよい。
【0028】
この種の高分子量材料は単独でまたは混合物としてプラスチック生地もしくは融液の形態または紡糸溶液の形態で存在し得る。これらはまた、そのモノマー形態、溶解ポリマー形態で、ペイントもしくは印刷インキの膜形成剤または結合剤として、例えば、アマニ油ワニス、ニトロセルロース、アルキド樹脂、メラミン樹脂及びホルムアルデヒド樹脂またはアクリル樹脂のように存在し得る。
【0029】
従って本発明の化合物は、プラスチックを内部着色もしくは彩色するための、油基剤もしくは水基剤のペイント中の、様々な種類の塗料材料、紡糸着色、迷彩ペイント中の色素として適当であり、また、グラフィック産業用印刷インキ中の色素として、例えば、紙、布または装飾プリント及び紙の内部着色用の色素として適当であり、また、水基剤もしくは非水基剤のインクジェットインキ、マイクロエマルジョンインキ及びホットメルト法で作用するインキのようなインキ類の調製に使用する色素として適当である。
【0030】
本発明の化合物はまた、電子写真用のトナー及び発色剤の色素として、例えば、1成分型もしくは2成分型の粉末トナー(1成分型もしくは2成分型の発色剤とも呼ばれる)、磁気トナー、液体トナー、重合トナー及び特殊トナーの色素として使用するのに適している。
【0031】
典型的なトナー結合剤は、単独で使用されるかまたは組合せ使用される付加重合樹脂、重付加樹脂及び重縮合樹脂、例えば、スチレン、スチレン−アクリレート、スチレン−ブタジエン、アクリレート、ポリエステル、フェノール−エポキシ樹脂、ポリスルホン、ポリウレタンであり、更に、ポリエチレン及びポリプロピレンであり、これらは、電荷調整剤、ワックスまたは流動助剤のような別の成分を含有してもよく、または、後でこれらを添加することによって改質してもよい。
【0032】
本発明の化合物は更に、粉末及び粉末塗料材料の色素として、特に、例えば、金属、木材、プラスチック、ガラス、セラミック、コンクリート、繊維材料、紙またはゴムから成る表面または加工品を塗装するために使用される摩擦電気的または電気力学的に噴霧可能な粉末塗料材料の色素として適当である。
【0033】
使用される典型的な粉末塗料樹脂は、エポキシ樹脂、カルボキシル−及びヒドロキシル−含有ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及びアクリル樹脂であり、常用の硬化剤と共に使用される。樹脂の組合せも可能である。即ち、例えばエポキシ樹脂はカルボキシル−及びヒドロキシル−含有ポリエステル樹脂と組合せて使用されることが多い。典型的な硬化剤成分は(樹脂系次第で)、例えば、酸無水物、イミダゾール及びジシアンジアミド及びその誘導体、ブロックイソシアナート、ビスアシルウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、オキサゾリン及びジカルボン酸である。
【0034】
更に、本発明の化合物は、水基剤及び非水基剤のインクジェットインキの色素として、また、ホットメルト法で使用されるインキの色素として使用するために適当である。
【0035】
インクジェットインキは合計で一般には0.5−15重量%、好ましくは1.5−8重量%(乾量基準で計算)の量の1種または複数の本発明の化合物を含有している。
【0036】
マイクロエマルジョンインキは、有機溶媒、水を基剤としており、所望の場合には、追加のヒドロトロピック物質(界面媒介剤)を含む。
マイクロエマルジョンインキは一般に、0.5−15重量%、好ましくは1.5−8重量%の1種または複数の本発明の化合物と、5−99重量%の水と、0.5−94.5重量%の有機溶媒及び/またはヒドロトロピック化合物とを含有している。
溶媒基剤のインクジェットインキは好ましくは0.5−15重量%の1種または複数の本発明の化合物と85−99.5重量%の有機溶媒及び/またはヒドロトロピック化合物とを含有している。
大抵のホットメルトインキは、室温で固体であり加熱すると液化するワックス、脂肪酸、脂肪アルコールまたはスルホンアミドを基剤としており、好ましい溶融範囲は約60℃−約140℃である。ホットメルトインクジェットインキは例えば、本質的に、20−90重量%のワックスと1−10重量%の1種または複数の本発明の化合物とから成る。更に、0−20重量%の追加のポリマー(“染料溶解剤”として)、0−5重量%の分散助剤、0−20重量%の粘度調整剤、0−20重量%の可塑剤、0−10重量%の粘着付与剤、0−10重量%の透明性安定剤(これは例えばワックスが結晶化することを防止する)及び0−2重量%の酸化防止剤が存在し得る。
【0037】
本発明の着色剤はまた更に、加色法及び減色法で発色させるカラーフィルターとして、並びに、電子インキ(“e−インキ”)または電子ペーパー(“e−ペーパー”)用色素として使用するために適当である。
【0038】
いわゆるカラーフィルター、反射型及び透過型のカラーフィルターを製造するためには、ペースト形態の顔料または適当な結合剤(アクリレート、アクリルエステル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エポキシド、ポリエステル、メラミン、ゼラチン、カゼイン)中の顔料添加ホトレジストをそれぞれのLCD素子(例えば、TFT−LCD=薄膜トランジスター液晶ディスプレイ、または例えば(S)TN−LCD=(スーパー)ツイストネマチック−LCD)に塗布する。安定なペースト及びまたは顔料添加ホトレジストの必須要件は、高い熱安定性に加えて、高い顔料彩度である。
【0039】
更に、顔料添加カラーフィルターをインクジェットプリントプロセスまたは他の適当なプリントプロセスによって塗布してもよい。
【0040】
本発明は更に、本発明の着色剤を光学層、光学式データ記憶装置、好ましくはデータの書込みにレーザーを使用する光学式データ記憶装置に使用することを提案する。この用途に必要な塗布媒体中の着色剤の溶解度は置換基の種類及び数によって調整できる。
【0041】
本発明の化合物は更に、化粧品の色素として、また、種子の着色、鉱油、潤滑グリース及びワックスの着色に使用するために適当である。
【0042】
本発明の化合物の置換基の種類次第では、得られた色彩が、優れた耐熱堅牢度、耐光堅牢度及び耐候堅牢度、耐薬品性を有しており、また、極めて優れた塗布性例えば結晶化抵抗性及び分散抵抗性、特に、耐移染性、耐ブリード性、上塗り堅牢度、耐溶剤性を有している。ポリマー可溶性染料として使用される化合物は本来は耐溶剤性が殆どないかまたは極めて小さい。
本発明は更に、高分子量または低分子量の有機または無機の材料、特に高分子量の有機材料と、彩色有効量、有機または無機の材料を基準として一般には0.005−70重量%、特定的には0.01−10重量%の範囲、の少なくとも1種類の本発明の化合物とを含む組成物を提供する。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
3,3′−ビス(1,3−ジエチル−2−チオ−4,6−ジオキソテトラヒドロピリミジン−5−イリデン)−[1,1′]ビイソインドリリデン
10gの[1,1′]ビイソインドリリデン−3,3′−ジイミンと23.1gの1,3−ジエチル−2−チオ−バルビツル酸とを100mlのNMPと100mlの氷酢酸との混合物中、155℃で4時間撹拌する。室温に冷却後、懸濁液を濾過し、濾過物をエタノール次いで水で洗浄し、60℃で乾燥する。この結果として、21.3g(88%)の以下の式
【0044】
【化13】

の化合物の金属性緑色粉末が得られる。
融点:>300℃
H−NMR(DSO):8.05(d,2H),7.80(d,2H),7.54(t,2H),7.33(t,2H),3.95(s,broad,8H),0.95(t,12H)。
【0045】
(実施例2)
3,3′−ビス(1,3−ジメチル−2,4,6−トリオキソテトラヒドロピリミジン−5−イリデン)−[1,1′]ビイソインドリリデン
10gの[1,1′]ビイソインドリリデン−3,3′−ジイミンと18.1gの1,3−ジメチル−バルビツル酸とを160mlのNMPと40mlの氷酢酸との混合物中、還流下で5時間撹拌する。室温に冷却後、懸濁液を濾過し、濾過物をエタノール次いで水で洗浄し、60℃で乾燥する。この結果として、14.5g(70%)の以下の式
【0046】
【化14】

の化合物のほぼ黒色の粉末が得られる。
融点:>300℃
MS(m/e):539[M+H],561[M+Na]
【0047】
(実施例3)
3,3′−ビス(1,3−ビス(2−エチルヘキシル)−2,4,6−トリオキソテトラヒドロピリミジン−5−イリデン)−[1,1′]ビイソインドリリデン
10gの[1,1′]ビイソインドリリデン−3,3′−ジイミンと40.9gの1,3−ビス(2−エチル−ヘキシル)バルビツル酸とを100mlのNMPと100mlの氷酢酸との混合物中、155℃で4時間撹拌する。室温に冷却後、懸濁液を濾過し、濾過物をエタノール次いで水で洗浄し、60℃で乾燥する。この結果として、28.8g(80%)の以下の式
【0048】
【化15】

の化合物の紫色の粉末が得られる。
融点範囲:198−206℃
MALDI(m/e,ネガティブモード):930[M−H]
H−NMR(CDCl):15.14(s,2H),9.62(d,2H),8.43(d,2H),7.88(t,2H),7.71(t,2H),4.04(m,8H),1.94(m,4H),1.35(m,32H),1.14(m,24H)。
【0049】
(実施例4)
3,3′−ビス(1,3−ジフェニル−2,4,6−トリオキソテトラヒドロピリミジン−5−イリデン)−[1,1]ビイソインドリリデン
19.4gの[1,1′]ビイソインドリリデン−3,3′−ジイミンと50.0gの1,3−ジフェニル−バルビツル酸とを230mlのNMPと350mlの氷酢酸との混合物中、還流下で6時間撹拌する。室温に冷却後、懸濁液を濾過し、濾過物をエタノール次いで水で洗浄し、60℃で乾燥する。この結果として、48.1g(82%)の以下の式
【0050】
【化16】

の化合物の紫色の粉末が得られる。
融点:>300℃
MS(m/e):787[M+H],809[M+Na]
H−NMR(DSO):7.63(d,2H),7.27(d,2H),7.14(t,2H),6.97(t,2H),6.82(m,12H),6.65(d,8H)。
【0051】
(実施例5)
3,3′−ビス(1,3−ジオキソインダン−2−イリデン)−[1,1′]ビイソインドリリデン
10.0gの[1,1′]ビイソインドリリデン−3,3′−ジイミンと16.9gの1,3−ジオキソインダンとを100mlのNMPと100mlの氷酢酸との混合物中、還流下で6時間撹拌する。室温に冷却後、懸濁液を濾過し、濾過物をNMPと氷酢酸との混合物(1:1)で洗浄し、引き続いてエタノール次いで水で洗浄し、60℃で乾燥する。この結果として、10.8g(54%)の以下の式
【0052】
【化17】

の化合物の黒色の粉末が得られる。
融点:>300℃
MS(m/e):519[M+H]
【0053】
(比較例1)
3,3′−ビス(2,4−ジオキソ−1,4−ジヒドロ−2H−キノリン−3−イリデン)−[1,1′]ビイソインドリリデン
5.0gの[1,1′]ビイソインドリリデン−3,3′−ジイミンと14.9gの1H−キノリン−2,4−ジオンとを90mlのNMPと10mlの氷酢酸との混合物中、還流下で6時間撹拌する。室温に冷却後、懸濁液を濾過し、濾過物をエタノール次いで水で洗浄し、60℃で乾燥する。この結果として、6.2g(59%)の以下の式
【0054】
【化18】

の化合物のほぼ黒色の粉末が得られる。
融点:>300℃
MALDI(m/e):547[M−H]
【0055】
(比較例2)
3,3′−ビス(3−メチル−5−オキソ−1−(3−カルボキシフェニル)−1,5−ジヒドロピラゾール−4−イリデン)−[1,1′]ビイソインドリリデン
10.0gの[1,1′]ビイソインドリリデン−3,3′−ジイミンと25.3gの3−メチル−1−(3−カルボキシフェニル)−2−ピラゾリン−5−オンとを160mlのNMPと40mlの氷酢酸との混合物中、還流下で5時間撹拌する。室温に冷却後、懸濁液を濾過し、濾過物をエタノール次いで水で洗浄し、60℃で乾燥する。この結果として、21.7g(85%)の以下の式
【0056】
【化19】

の化合物の黒褐色粉末が得られる。
融点:>300℃
MS(m/e):661[M−H]
【0057】
(比較例3)
3,3′−ビス(3−メチル−5−オキソ−1−(3−スルファモイルフェニル)−1,5−ジヒドロピラゾール−4−イリデン)−[1,1′]ビイソインドリリデン
10.0gの[1,1′]ビイソインドリリデン−3,3′−ジイミンと29.4gの3−メチル−1−(3−スルファモイル)−2−ピラゾリン−5−オンとを240mlのNMPと60mlの氷酢酸との混合物中、還流下で3時間撹拌する。室温に冷却後、懸濁液を濾過し、濾過物をエタノール次いで水で洗浄し、60℃で乾燥する。この結果として、26.7g(95%)の以下の式
【0058】
【化20】

の化合物の黒褐色粉末が得られる。
融点:>300℃
MALDI(m/e):731[M−H]
【0059】
(使用例)
本発明に従って調製した顔料の特性を塗料分野で評価するために、多数の公知のワニスから、中油アルキド樹脂及びブタノールエーテル化メラミン樹脂を基剤とするアロマティックス含有のアルキル−メラミン樹脂ワニス(AM)と、長油ダイズアルキド樹脂を基剤とするアロマティックス非含有の自然乾燥アルキド樹脂ワニス(LA)とを選択した。
【0060】
本発明のポリマー可溶性染料の特性を評価するために、ガラス透明ポリスチレン、ポリカーボネートまたはポリエステルを着色対象プラスチックとして選択した。試験標本を射出成形によって製造した。
【0061】
(使用例1)
実施例1の顔料をLAワニスに使用すると、上色が隠蔽力のある黒、ホワイトレダクションが赤みを帯びた青を示す濃い色の塗料が得られる。
【0062】
(使用例2)
実施例2の顔料をLAワニスに使用すると、上色が隠蔽力のある黒、ホワイトレダクションが赤紫になる濃い色の塗料が得られる。
【0063】
(使用例3)
実施例3の顔料をポリスチレンに使用すると、上色及びホワイトレダクションの双方が鮮やかな濃い紫色を示す試験標本が得られる。
【0064】
(使用例4)
実施例3の顔料をポリエチレンテレフタレートに使用すると、上色及びホワイトレダクションの双方が鮮やかな濃い紫色を示す試験標本が得られる。
【0065】
(使用例5)
実施例5の顔料をAMワニスに使用すると、上色が暗い紫、ホワイトレダクションが赤紫になる鮮やかな濃い色の塗料が得られる。
【0066】
(使用例6)
実施例4の顔料をポリカーボネートに使用すると、上色及びホワイトレダクションの双方が濃い赤紫色を示す試験標本が得られる。上色は赤い蛍光を帯びる。
【0067】
(比較使用例1)
比較例1の顔料をAMワニスに使用すると、上色が隠蔽力のある黒、ホワイトレダクションが青紫になる塗料が得られる。これらの塗料は実施例1−5の化合物によって得られるよりもかなりくすんだ色になる。
【0068】
(比較使用例2)
比較例2の顔料をAMワニスに使用すると、上色が隠蔽力のある黒、ホワイトレダクションが紫色になる塗料が得られる。これらの塗料は実施例1−5の化合物によって得られるよりもかなりくすんだ色になる。
【0069】
(比較使用例3)
比較例3の顔料をAMワニスに使用すると、上色が隠蔽力のある黒、ホワイトレダクションが青色になる濃い色の塗料が得られる。これらの塗料は実施例1−5の化合物によって得られるよりもかなりくすんだ色になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、CはC2v対称を有している脂環基または複素環基であり、Bはオルト−C−C18アリーレンである]
の化合物。
【請求項2】
Bがオルトフェニレンまたは2,3−ナフチレンである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
環Cが式(a)−(d)
【化2】

[式中、R及びRは互いに独立に、水素、C−C25アルキル、C−C12シクロアルキル、C−C24アリール、C−C25アルキル−(C−C10)−アリール、N、O及びSのグループから選択された1、2または3個のヘテロ原子を有しているヘテロ芳香族ラジカル、−(CH−CORまたは−(CH−ORであり、
ここに、Rは、ヒドロキシル、未置換またはモノ−もしくはポリ−ヒドロキシル−もしくはアミノ−置換C−C25アルコキシ、C−C25アルキルアミノ、ジ−(C−C25アルキル)アミノ、C−C25アルキル−C−C24アリールアミノ、(C−C24アリール)アミノ、ジ−(C−C24アリール)アミノまたはC−C24アルケニルオキシであり、
は、水素または−CO−(C−C25アルキル)であり、n及びmは互いに独立に0−6の整数、好ましくは1−4の整数であり、R、R、R及びR中のC−C単位がエーテル単位C−O−Cによって置換されていてもよく、
Xは、=O、=Sまたは=NRであり、
及びRは互いに独立に、水素、ハロゲン、CN、R、OR、SR、NR、NO、SO(OR)、SO、SONRまたはPO(OR)である]の環系で示される請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
とRが同じかまたは異なっており、水素、C−C18アルキル、ベンジル、C−Cシクロアルキル、C−C10アリール、ピリジル、ピリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリミジル、ヒドロキシカルボニル−C−C18アルキル、C−C18アルコキカルボニル−C−C18アルキル、アミノカルボニル−C−C18アルキル、C−C18アルキルアミノカルボニル−C−C18アルキル、C−C10アリールアミノカルボニル−C−C18アルキル、ジ(C−C18アルキル)−アミノカルボニル−C−C18アルキル、C−C18アルキル−C−C10−アリールアミノカルボニル−C−C18アルキルまたはジ(C−C10−アリール)−アミノカルボニル−C−C18アルキルである請求項1から3のいずれか一項または複数の項に記載の化合物。
【請求項5】
及びRが同じかまたは異なっており、水素、Cl、Br、C−C18アルキル、C−Cシクロアルキル、C−C10アリール、ベンジル、ピリジル、ピリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリミジル、C−C18アルコキシ、C−C10アリールオキシ、C−C18アルキルチオ、C−C10アリールチオ、C−C18アルキルアミノ、C−C10アリールアミノ、ジ(C−C18アルキル)−アミノ、C−C18アルキル−C−C10−アリールアミノ、ジ(C−C10−)アリールアミノ、SOH、C−C18アルコキシスルホニル、C−C18アルキルスルホニルまたはジ(C−C18アルキル)−アミノ−スルホニルである請求項1から4のいずれか一項または複数の項に記載の化合物。
【請求項6】
式(2)または(3)
【化3】

【化4】

で示される請求項3から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
式(III)
【化5】

の化合物と、少なくとも2モル当量の式(IV)
【化6】

の環式化合物とを縮合させる請求項1から6のいずれか一項または複数の項に記載の化合物の製造方法。
【請求項8】
高分子量または低分子量の有機または無機の材料、特に高分子量有機材料を着色または彩色するための請求項1から6のいずれか一項または複数の項に記載の化合物の使用。
【請求項9】
油基剤もしくは水基剤のペイント中、ワニス、迷彩ペイント中、紡糸着色、プラスチックの内部着色もしくは彩色用の、印刷インキ中、紙の内部着色用、種子用、粉末コーティング材料の色素、水基剤もしくは非水基剤のインクジェットインキ、マイクロエマルジョンインキ及びホットメルト法で作用するインキのようなインキ類を調製する色素としての請求項8に記載の使用。
【請求項10】
電子写真用のトナー及び発色剤、カラーフィルター、電子インキ並びに光学データ記憶装置の光学層の色素としての請求項8に記載の使用。
【請求項11】
高分子量または低分子量の有機または無機の材料と、前記有機または無機の材料を基準として0.005−70重量%の量の請求項1から6のいずれか一項または複数の項に記載の化合物とを含む組成物。

【公表番号】特表2006−513295(P2006−513295A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566777(P2004−566777)
【出願日】平成15年12月13日(2003.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014201
【国際公開番号】WO2004/065490
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(598109501)クラリアント・ゲーエムベーハー (45)
【Fターム(参考)】