説明

κ選択的オピオイド受容体アンタゴニスト

エタノール使用障害の禁断症状、ならびに独立して併発する状態としての不安および/または抑うつ、あるいは統合失調症を処置するために有用な、式(I)を有する選択的κオピオイド受容体アンタゴニスト。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はκ選択的オピオイド受容体アンタゴニストに関する。
【背景技術】
【0002】
エタノール使用障害は、重大かつ一般的な世界的健康問題であり、そして、肝硬変、肝臓癌、冠動脈性心疾患、虚血性脳卒中、胎児アルコール症候群、交通事故および交通事故死、ならびに家庭内暴力のような、深刻な医学的状態および行動における原因因子である。
【0003】
エタノール依存症は、慢性の再発性障害であり、再発は、治療努力に対する大きな課題を示す。現在まで、再発の予防および禁断の持続において十分であることが証明された治療的介入は無い。患者がより良好に彼らのエタノール摂取を制御し、ならびに再発の危険と戦うことを可能にする、新規かつより効果的な薬物療法の必要性が存在する。
【0004】
アメリカ合衆国において、ヒトにおけるエタノール依存症の処置に対する現在の薬理学的標準は、ナルトレキソン(オピオイドアンタゴニスト)、アカンプロサート(機能的グルタミン酸アンタゴニスト)、およびジスルフィラム(アルデヒドデヒドロゲナーゼ阻害剤)である。行動管理と組み合わせて、これらの薬剤は、禁断を維持するために承認される。適度な有効性がこれらの処置で観察されるが、それらは全て、少なくとも部分的に、臨床的に満たされていない必要性に寄与するコンプライアンスの問題に苦しむ。例えば、エタノール依存症と診断された多くの患者は、不安および/または抑うつ、あるいは統合失調症の同時に起こる症状を有する。上記に記載される現在の処置は、その後のエタノール使用障害の再発において役割を果たし得るこれらの併発する症状について利益をもたらさない。本発明は、患者が過度のエタノール飲酒を絶つかまたは減らすことを可能にし、そして不安および/または抑うつ、あるいは統合失調症の随伴症状を軽減することを可能にする薬剤を提供する。
【0005】
ナルトレキソンは、μ、κ、およびδの3つのオピオイド受容体の各々にアンタゴニスト活性を有するμ受容体選択的オピオイド受容体である。臨床的に、ナルトレキソンは、エタノール禁断を維持することおよびエタノール欲求を低減させることに有効であることが実証されている。しかしながら、ナルトレキソンは、1日あたり50mgを超える投与量で肝毒性を引き起こし得、適切なモニタリングが必要とされる。この肝毒性は、特に、エタノール使用のために肝障害に対する感受性が高まった患者母集団に関する。
【0006】
実験条件に依存して、κオピオイド受容体の選択的活性化は、エタノールの摂取の増大または減少のいずれかを示し;文献中の矛盾は、κアゴニストのさらなる薬理学的効果(例えば、不快気分および認知の混乱)に関連し得る。他方、選択的薬理学的κ受容体拮抗作用またはκ受容体の遺伝的欠失は、アルコール中毒症の動物モデルにおけるエタノール自己投与を減少させることが示されている。これは、κ 対 μおよびδオピオイド受容体に対する選択的アンタゴニストである医薬品が、エタノール使用障害治療における重大な要求を満たし得ることを示唆する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
κオピオイド受容体アンタゴニスト選択性を証明する、エタノール使用障害治療における医薬品の必要性が存在する。以下の1つ以上について予後を改良する医薬品についての必要性もまた存在する:1カ月ベースあたりの禁断の日数:1カ月ベースあたりの過度の飲酒の日数:および、1カ月ベースにわたる飲酒日あたりの飲酒の回数。エタノール使用障害治療における、エタノール使用障害の患者においてしばしば独立して併発している状態である、不安および抑うつまたは統合失調症のうちの1つまたは両方について有効性を実証する薬剤のさらなる必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
WO 2004/026305の化合物のような、オピオイド受容体アンタゴニストが開示される。
【0009】
本明細書中に開示される化合物は、κオピオイド受容体アンタゴニストである。この化合物の性質は、その化合物を、エタノール使用障害の中止を促進するための治療剤として好適にする(例えば、規定の期間にわたって各飲酒セッションに使用されるエタノールの量を低減する;規定の期間にわたってエタノール使用日の頻度を低減する;規定の期間にわたって減少した量および/または使用頻度を維持する;または、規定の期間にわたるエタノール摂取の禁断)。小動物モデルにおいて示される化合物の性質は、その化合物を、不安および/または抑うつ、あるいは統合失調症の障害を有する患者における不安および/または抑うつ、あるいは統合失調症を処置する、またはエタノール使用障害も有する患者における独立して併発している障害として処置するのに好適にする。
【0010】
本発明の1つの態様は:
【化1】

3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0011】
本発明の第2の態様は:
【化2】

(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0012】
本発明の第3の態様は、3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩を、薬学的に許容され得るキャリア、希釈剤、および/または賦形剤と併せて含む医薬処方物を提供する。
【0013】
本発明の第4の態様は、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩を、薬学的に許容され得るキャリア、希釈剤、および/または賦形剤と併せて含む医薬処方物を提供する。
【0014】
本発明の第5の態様は、必要とする患者においてκオピオイド受容体を選択的に拮抗する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0015】
本発明の第6の態様は、必要とする患者においてエタノール使用障害を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0016】
本発明の第7の態様は、必要とする患者において、恐慌性障害、強迫性障害、社会恐怖、全般的不安障害、特定の恐怖、および心的外傷後ストレス障害から選択される不安障害を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0017】
本発明の第8の態様は、必要とする患者において、恐慌性障害、強迫性障害、社会恐怖、全般的不安障害、特定の恐怖、および心的外傷後ストレス障害から選択される不安障害、ならびにエタノール使用障害を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0018】
本発明の第9の態様は、必要とする患者において、大うつ病、気分変調、および双極性障害から選択される抑うつ病を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0019】
本発明の第10の態様は、必要とする患者において、大うつ病、気分変調、および双極性障害から選択される抑うつ病、ならびにエタノール使用障害を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0020】
本発明の第11の態様は、必要とする患者において、恐慌性障害、強迫性障害、社会恐怖、全般的不安障害、特定の恐怖、および心的外傷後ストレス障害から選択される不安障害、ならびに大うつ病、気分変調、および双極性障害から選択される抑うつ病を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0021】
本発明の第12の態様は、必要とする患者において、恐慌性障害、強迫性障害、社会恐怖、全般的不安障害、特定の恐怖、および心的外傷後ストレス障害から選択される不安障害、ならびに大うつ病、気分変調、および双極性障害から選択される抑うつ病、ならびにエタノール使用障害を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0022】
本発明の第13の態様は、必要とする患者において、統合失調症を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0023】
本発明の第14の態様は、必要とする患者において、統合失調症およびエタノール使用障害を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0024】
本発明の第15の態様は、治療における使用のための、化合物3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミドまたは(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、あるいはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0025】
本発明の第16の態様は、エタノール使用障害の処置における使用のための、化合物3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミドまたは(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、あるいはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0026】
本発明の第17の態様は:
a)恐慌性障害、強迫性障害、社会恐怖、全般的不安障害、特定の恐怖、および心的外傷後ストレス障害から選択される不安障害;または
b)大うつ病、気分変調、および双極性障害から選択される抑うつ病;または
c)a)から選択される不安障害およびb)から選択される抑うつ病;または
d)エタノール使用障害およびa)から選択される不安障害;または
e)エタノール使用障害およびb)から選択される抑うつ病;または
f)エタノール使用障害、ならびにa)から選択される不安障害およびb)から選択される抑うつ病;または
g)統合失調症;または
h)エタノール使用障害および統合失調症
の処置における使用のための、化合物3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミドまたは(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、あるいはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0027】
本発明の第18の態様は、エタノール使用障害の処置のための薬剤の製造のための、化合物3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミドまたは(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、あるいはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0028】
本発明の第19の態様は:
a)恐慌性障害、強迫性障害、社会恐怖、全般的不安障害、特定の恐怖、および心的外傷後ストレス障害から選択される不安障害;または
b)大うつ病、気分変調、および双極性障害から選択される抑うつ病;または
c)a)から選択される不安障害およびb)から選択される抑うつ病;または
d)エタノール使用障害およびa)から選択される不安障害;または
e)エタノール使用障害およびb)から選択される抑うつ病;または
f)エタノール使用障害、ならびにa)から選択される不安障害およびb)から選択される抑うつ病;または
g)統合失調症;または
h)エタノール使用障害および統合失調症
の処置のための薬剤の製造のための、化合物3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミドまたは(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、あるいはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0029】
本発明の第20の態様は、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量、および、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミン、および(+)−トリミプラミンから選択される第3級アミン三環式ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を、薬学的に許容され得るキャリア、希釈剤、および/または賦形剤と併せて含む医薬組成物を提供する。この組成物の好ましい実施形態は、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩、およびイミプラミン、またはその薬学的に許容され得る塩を含む。
【0030】
本発明の第21の態様は:
a)エタノール使用障害;または
b)大うつ病、気分変調、および双極性障害から選択される抑うつ病;または
c)エタノール使用障害およびb)から選択される抑うつ病
の処置のための薬剤の製造における、化合物(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩、および、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミン、および(+)−トリミプラミンから選択される第3級アミン三環式ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、またはその薬学的に許容され得る塩の使用を提供する。本発明のこの態様の好ましい実施形態は、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩、およびイミプラミン、またはその薬学的に許容され得る塩を含む。
【発明を実施するための形態】
【0031】
選択的κオピオイド受容体拮抗作用は、エタノール依存症のWistarラットにおいて依存症誘導性のエタノール自己投与を減少させ、一方、非依存症の動物は影響されなかったことが示されてきた(WalkerおよびKoob,Neuropsychopharmacology,advance online publication,2 May 2007,pgs.1−10)。同様に、κオピオイド受容体または内因性リガンド前駆体であるプレプロダイノルフィンを生成する遺伝子を欠くマウスは、野生型マウスよりも有意に少ないアルコールを飲む(Kovacsら、Alcohol:Clin & Exp.Res.2005,29:730−739;Blednovら、Alcohol 2006,40:73−86)。
【0032】
エタノール使用障害と不安障害および/または抑うつ障害との間に、同じ患者において独立して併発する状態として、関係が存在することは認められてきた。Arch.Gen.Psychiatry,61,807−816(2004)。この関連は、患者においてエタノール使用障害と独立して併発する不安障害および/または抑うつ障害の両方を単一の活性な医薬品で処置することの望ましさを指摘する。また、エタノール使用障害と統合失調症との間に、同じ患者において独立して併発する状態として、関係が存在することも認められてきた。Greggら、Clinical Psychology Review,27,494−510(2007)。この関連は、患者においてエタノール使用障害と独立して併発する統合失調症の両方を単一の活性な医薬品で処置することの望ましさを指摘する。
【0033】
エタノール使用障害は、著しい使用に関連する困難な状況にも関わらず、物質の継続的使用があることを示す、認知の症状、行動の症状、および生理学的な症状のクラスターである。耐性、禁断症状、および強迫的な物質摂取行動をもたらす繰り返される自己投与のパターンが存在する。エタノール使用障害に関連する問題は多様である。主要な役割義務を果たすことに繰り返し失敗すること、身体的に有害な状況での繰り返される使用、多くの法的問題、および反復される社会的問題および対人関係での問題が存在し得る。これらの問題は、同じ12カ月の期間に繰返し現れる。
【0034】
耐性は、所望の効果を達成するための増加された量のエタノールの必要性、または同じ量のエタノールの継続的な使用での減少された効果である。
【0035】
一般的に、禁断症状は、生理学的成分および認知成分を有する行動の変化であり、エタノールの長期にわたる過度の使用を維持していた個体において、エタノールの血中または組織の濃度が下降するときに現れる。禁断症状が発症した後は、個体は、それらの症状を緩和または避けるためにエタノールを摂取する可能性がある。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語「患者」は、哺乳動物を意味し;「哺乳動物」は、高等脊椎動物の哺乳綱を意味し;そして、用語「哺乳動物」は、限定されないが、ヒトを含む。
【0037】
エタノール使用障害は、エタノール乱用およびエタノール依存症を含み;用語「依存症」は、エタノールに対する依存の心理的および/または生理的な発現を示す。特に、用語「エタノール使用障害」は、知覚障害およびエタノール離脱性せん妄の有無にかかわらず禁断症状障害を含む。DSM−IV−TR.,Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders.改訂第4版,Text Revision(2000)を参照のこと。また、国際疾病分類、改訂第10版(ICD−10)および最新情報は、本明細書中に記載される障害の多くについての分類を提供する。当業者は、本明細書中に記載される障害ならびにDMS−IV−TRおよびICD−10に記載される障害についての代替的命名および分類の系が存在すること、および用語および分類の系が医学科学の進歩とともに進化することを認識するだろう。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「治療有効量」は、「治療有効用量」と同義であり、上記に記載されるようなエタノール使用障害、不安障害、上記に記載されるような抑うつ病、エタノール使用障害と不安障害および抑うつ病の片方または両方との組み合わせ、統合失調症、またはエタノール使用障害と統合失調症の組み合わせを処置するための1回以上の投与において十分な、化合物または薬学的に許容され得る塩の量を意味する。
【0039】
本明細書中で使用される用語「処置」および「処置する」は、エタノールの自己投与および使用を減少または中断する目的のための、患者の管理およびケアを意味する。用語は、患者が悩まされるエタノール使用障害に対する介入の全範囲、例えば、症状または合併症を軽減するため、エタノール使用障害の進行を遅らせるため、および1カ月ベースでの飲酒日あたりの摂取されるエタノールの量または1カ月ベースあたりの過度の使用日、あるいはその両方を減らすための活性化合物の投与を含むことが意図される。エタノール使用障害と闘う目的のための患者の管理およびケアは、使用の再開のための症状の生理的または心理的開始、継続的な使用、または増強された使用を阻害するための活性化合物の投与を含む。処置される患者は、好ましくは哺乳動物、特にヒトである。本明細書中で使用される用語「処置」および「処置する」はまた、恐慌性障害、強迫性障害、社会恐怖、全般的不安障害、特定の恐怖、および心的外傷後ストレス障害から選択される不安障害;大うつ病、気分変調、および双極性障害から選択される抑うつ病;またはその両方;統合失調症についての患者の管理およびケアを意味し、そして前記患者におけるエタノール使用障害の管理およびケアをさらに含み得る。
【0040】
用語は、患者が悩まされる障害に対する介入の全範囲、例えば、症状または合併症を軽減するため、および障害の進行を遅らせるための活性化合物の投与を含むことが意図される。処置される患者は、好ましくは哺乳動物、特にヒトである。
【0041】
エタノール使用の範囲は、無し(禁断)から低リスク使用;次いで、危険な使用および問題のある使用を包含する不健康使用(過剰);エタノール乱用およびエタノール依存症を含むエタノール使用障害までにおよぶ。エタノールの摂取は、それがエタノール関連問題についての危険を引き起こすか、または上昇させる場合、あるいは他の健康問題の管理を困難にする場合に過剰である。次第に過度になる飲酒(月あたりの過度の飲酒日、1カ月にわたる飲酒日あたりの摂取量、またはその両方)が、患者に対する悪影響の増大およびそのパターンがエタノール疾患状態(エタノール乱用およびエタノール依存症)の決定的な段階に到達するまで、エタノール使用の範囲に沿ったより高い閾値と相関することは理解されるべきである。アメリカ合衆国において、1日に5以上の基準(または、1週あたり15以上)の飲酒をする男性、および1日に4以上(または、1週あたり8以上)の飲酒をする女性は、エタノール関連問題(すなわち、危険な使用)の危険性がある。欧州において、1日あたり4単位(32g)の飲酒をする男性、および1日あたり3単位(24g)の飲酒をする女性は、エタノール関連問題(危険な使用)の危険性がある。しかしながら、エタノールに対する個々の反応は異なり、危険な使用レベルでのエタノール摂取も、年齢、随伴する条件、および薬剤使用のような多くの因子に依存する処置を必要とする問題であり得る。
【0042】
アメリカ合衆国における標準的飲酒は、約14グラムの純粋エタノール(約0.6液量オンスまたは大さじ1.2杯)を含有する任意の飲酒である。標準的な飲酒の等価物は:12オンスのビールまたはアルコール飲料;8〜9オンスの麦芽酒;5オンスのテーブルワイン;3〜4オンスの強化ワイン(例えば、シェリー酒またはポートワイン);2〜3オンスのコーディアル、リキュール、またはアペリチフ;1.5オンスのブランディー(シングルジガー);および1.5オンスのスピリッツ酒(80度のジン、ウォッカ、ウイスキーなどのシングルジガー)である。異なる銘柄および種類の飲料は、実際のエタノール含有量が異なるので、これらは概算である。ヨーロッパにおいて、1単位が標準的な飲酒であり、通常の強度のビールの2分の1パイント;スピリッツ酒の1測定単位;および標準的なグラスのワインを含む。アメリカ合衆国の基準と同様に、異なる銘柄および種類の飲料は、実際のエタノール含有量が異なるので、これらは概算である。
【0043】
本発明の化合物の薬学的に許容され得る塩およびそれらを調製するための一般的方法は、当該分野において周知である。例えば、P.Stahlら、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use,(VCHA/Wiley−VCH,2002);S.M.Bergeら、「Pharmaceutical Salts,」Journal of Pharmaceutical Sciences,Vol.66,No.1,January 1977を参照のこと。
【0044】
医薬処方物におけるような用語「処方物」または「医薬組成物」は、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩、あるいはその鏡像異性体、またはその薬学的に許容され得る塩を混合して、およびキャリアを構成する不活性成分を含む生成物を包含することが意図される。したがって、医薬処方物は、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩を、単独あるいはその鏡像異性体またはその薬学的に許容され得る塩と混合して、薬学的キャリア、希釈剤、および/または賦形剤と混合することによって作製されたいかなる組成物も包含する。
【0045】
(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量、およびアミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミン 、および(+)−トリミプラミンから選択される第3級アミン三環式ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を含む本発明の組成物は、活性成分を好適な(薬学的に許容され得る)キャリア、希釈剤、および/または賦形剤と組み合わせて含有する医薬組成物において都合よく投与されることができる。そのような医薬組成物は、当該分野において周知の方法によって調製され、当該分野において周知のキャリア、希釈剤、および/または賦形剤を含有することができる。そのような方法および成分の一般的に認められる概論はRemington:The Science and Practice of Pharmacy Mack Publishing Co.,第19版(1995)である。組成物は、非経口的に(例えば、静脈内投与によって)または経口的に投与され得る。そのような治療的に有用な組成物における活性化合物の量は、各活性成分について提供されるであろう有効投薬レベルの通りである。
【0046】
本発明の化合物が立体異性体として存在することは理解されるだろう。本明細書中で使用される場合、本発明の化合物への言及は、そのラセミ混合物もまた含むことが意味される。本明細書中において、(R)−および(S)−のCahn−Ingold−Prelog記号表示が、特定の異性体を示すために使用される。特定の立体異性体は、鏡像異性的に純粋または鏡像異性的に富化された出発物質を用いる立体特異的な合成によって調製されることができる。出発物質または化合物のいずれかの特定の立体異性体は、キラル固定相上でのクロマトグラフィー、酵素的分割、あるいはジアステレオマー塩のようなその目的のために形成されたジアステレオマーの分別結晶化またはクロマトグラフィーを含む、Stereochemistry of Organic Compounds,E.I.ElielおよびS.H.Wilen(Wiley 1994)、およびEnantiomers,Racemates,and Resolutions,J.,Jacques,A.Collet,およびS.H.Wilen(Wiley 1991)において見出される技術のような、当該分野において周知の技術によって分離されることができる。キラル化合物がその異性体に分解されるが、絶対配置または旋光度が決定されていない場合、その異性体は、異性体1、異性体2、などのように任意に指定される。本発明の化合物を含有する全ての混合物が、本発明の範囲内に企図されるが、好ましい実施形態は、単一の鏡像異性体である。
【0047】
本発明の化合物の合成における最初の出発物質として利用される化合物は、周知であり、市販されていない範囲については、当業者によって一般的に利用される標準的手順または一般的な参考文献中に見出される標準的手順によって、提供される具体的な参考文献を使用して容易に合成される。
【0048】
公知の手順および方法の例は、Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers Inc,1989;Compendium of Organic Synthetic Methods,第1〜10巻,1974−2002,Wiley Interscience;Advanced Organic Chemistry,Reactions Mechanisms,and Structure,第5版,Michael B.SmithおよびJerry March,Wiley Interscience,2001;Advanced Organic Chemistry,第4版,Part B,Reactions and Synthesis, Francis A.Carey and Richard J.Sundberg,Kluwer Academic/Plenum Publishers,2000,などのような一般的な参考文献およびそれらの文献中に引用される参考文献に記載されるものを含む。
【0049】
第3級アミン三環式ノルエピネフリン再取り込み阻害剤であるアミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、およびイミプラミンは、塩酸塩として商業的に入手可能である。化合物(+)−トリミプラミンは、マレイン酸塩として商業的に入手可能である。商業的に入手可能な塩形態からの代替的な薬学的に許容され得る塩の調製は、当業者によって一般的に利用される標準的手順による。
【0050】
本明細書中で使用される場合「equiv」は当量を示し、「mg」はミリグラムを示し;「g」はグラムを示し;「kg」はキログラムを示し;「mmol」はミリモルを示し;「mL」はミリリットルを示し;「μm」はマイクロメートルを示し;「cm」はセンチメートルを示し;「L」はリットルを示し;「℃」は摂氏温度を示し;「M」はモルを示し;「Å」はアングストロームを示し;「h」は時間を示し;「v/v」は混合物または溶液中の物質の濃度を記載するための用語「容量で」を示し;「DMA」ジメチルアセトアミドを示し;「DCE」はジクロロエタンを示し;「AcOH」は酢酸を示し;「DCM」はジクロロメタンを示し;「EtOH」はエタノールを示し;「MS」は質量スペクトルを示し;「APCI」は大気圧化学イオン化を示し;「API」は大気圧イオン化を示し;「EIC」は抽出イオンクロマトグラフィーを示し;「t」は保持時間を示し;用語「鏡像体過剰率」または「ee」は、ある鏡像異性体E1が2つの鏡像異性体E1+E2の混合物において超過している割合を示し、つまり{(E1−E2)/(E1+E2)}×100=%eeであり;「DTT」はジチオスレイトールまたはCleland試薬を示し;「HEPES」はN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)を示し;「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を示し;「GTP」はグアノシン5’−三リン酸を示し;「GDP」はグアノシン5’−二リン酸を示し;「MTEP」は3−[(2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)エチニル]ピリジンを示し;「sc」は皮下を示し;「ip」は腹腔内を示し;「po」は経口的(oral)を示し;「i.v.」は静脈内を示す。
【実施例】
【0051】
中間体1の調製
3−フルオロ−4−(4−ホルミル−フェノキシ)−ベンゾニトリル
【化3】

DMA(750mL)中の4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド(50g、1.00当量、409.4mmol)と3,4−ジフルオロ−ベンゾニトリル(56.96g、1.00当量)の混合物を、23℃で完全に溶解するまで撹拌する。炭酸カリウム(1.5当量、84.88g)を加え、混合物を100℃で3時間加熱する。室温まで冷却する。反応混合物を水−氷(1.5L)上に注ぐ。濾紙を通して固体を濾過し、固体を水で2回洗浄し、減圧下で乾燥させて、中間体1を得る(82.40g、83%収率)。MS(APCI):(M−1)240.0
【0052】
中間体2の調製
3−フルオロ−4−(4−ホルミル−フェノキシ)−ベンズアミド
【化4】

ジメチルスルホキシド(75mL)中の3−フルオロ−4−(4−ホルミル−フェノキシ)−ベンゾニトリル(17.72g、1.00当量;73.460mmol)の撹拌した溶液に、炭酸カリウム(0.5当量、5.08g)を加える。混合物を10℃まで冷却し、過酸化水素(水中35%、7.4mL、1.05当量)を滴下して加え、内部温度を40℃未満に保つ。添加の後、反応混合物を3時間撹拌する。混合物を水−氷(300mL)上に注ぐ。濾紙を通して固体を濾過し、固体を水で2回洗浄し、減圧下で乾燥させて、中間体2を得る(17.30g、91%収率)。MS(APCI):(M+1)260.1
【0053】
実施例1
4−{4−[2−(3,5−ジメチル−フェニル)−ピロリジン−1−イルメチル]−フェノキシ}−3−フルオロ−ベンズアミド
【化5】

パート1−ラセミ4−{4−[2−(3,5−ジメチル−フェニル)−ピロリジン−1−イルメチル]−フェノキシ}−3−フルオロ−ベンズアミド
DCE:AcOH、25:2(100mg、6.7mL中1当量、0.06M)中の3−フルオロ−4−(4−ホルミル−フェノキシ)−ベンズアミドの溶液を、密閉管において2−(3,5−ジメチル−フェニル)−ピロリジン(70mg、0.4mmol、1当量)に加える。混合物を、室温で16時間軌道撹拌する。トリアセトキシホウ化水素ナトリウム(1.5当量;127mg)を2つに分けて加える。混合物を室温で10時間撹拌する。溶媒を、Nガスの気流化で、40℃で一晩除去する。粗反応混合物をDCM中に溶解させ、Stratta−NH(登録商標)(55ミクロン、70Å)(Phenomenex,Inc.,411 Madrid Avenue,Torrance,California,90501−1430,U.S.A)上に吸着させる。CHCl:EtOH:NHOH(97:3:0.3〜88:12:1.2)の勾配を使用するSiOカートリッジ上でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標題の化合物をラセミ混合物として得る(100mg、60%)。MS(EIC):(M+1)419
【0054】
パート2
4−{4−[2−(3,5−ジメチル−フェニル)−ピロリジン−1−イルメチル]−フェノキシ}−3−フルオロ−ベンズアミド 異性体1および2
【化6】

実施例1のパート1からの鏡像異性体のラセミ混合物(40mg)を、Hex−0.2%DMEA/EtOH 90/10;流速1ml/分;t=6.7分で溶出するChiralpak AD(250mm×4.6mm、10μm)を使用するキラルクロマトグラフィーによって精製して、異性体1化合物を得る(9.6mg)。LC/MSによる精製(%):99%、ee(%)98%;MS(EIC):(M+1)419(本明細書中で実施例1Aと呼ばれる)。第2の溶出する鏡像異性体(9.7mg)、t=12.9分は、異性体2化合物と指定される(本明細書中で実施例1Bと呼ばれる)。LC/MSによる精製(%):99%、ee(%)98%;MS(EIC):(M+1)419.
【0055】
異性体1(実施例1A)および異性体2(実施例1B)の絶対配置を、周知のMosher法を使用して、それぞれ、(S)および(R)として決定する。一般的に、この方法は、キラル試薬α−メトキシ−α(トリフルオロメチル)フェニル酢酸(MTPA)の2つの鏡像異性体でのキラル基板の誘導体化、その後の、生じたジアステレオマーのH NMRスペクトルの比較分析を含む。2−フェニルピロリジンの絶対配置を、H2シグナルの多重度によって決定することもまた可能である。もし、MosherのアミドにおけるMTPA部分の配置が(R)であり、かつH2シグナルが二重項のうちの二重項である(結合のうちの片方が、他方のおよそ2倍である)なら、実験下のアミンの絶対配置は(S)である。もし、このシグナルが見かけ上三重項である(両方の結合が同様である)なら、絶対配置は(R)である。逆に、もし、MTPA補助基の配置が(S)ならば、H2は(S)−2−フェニルピロリジンにおける三重項として、および(R)−2−フェニルピロリジンの二重項の二重項として出現する。さらに、詳細は、P.Vidalら、Organic Letters,9(21),4123−4126(2007)において入手可能である。
【0056】
上記に記載されるように、鏡像異性体のラセミ混合物は、キラルクロマトグラフィーによって実施例1Aおよび1Bへと調製および分離される。実施例1Aを調製する好ましい方法は、鏡像異性的に純粋な2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジンを使用し、実施例1のパート1において上記される手順に実質的に従うエナンチオ選択的合成である。
【0057】
上記で記されるように、実施例1Aの化合物、またはその薬学的に許容され得る塩は、κオピオイド受容体における選択的アンタゴニスト、またはアゴニストの効果を選択的にブロックするアンタゴニストである。実施例1Aの化合物の特徴は、κ受容体選択性(結合親和性)、κ受容体活性(アンタゴニスト効力)、小動物モデルにおいてエタノール摂取を低減することにおける有効性、小動物モデルにおける生物学的利用能、および小動物モデルにおける望ましくない副作用に関する忍容性を含むそれらの特徴によって提供される構造的性質および生物学的性質のうちの1つ以上である。さらに、実施例1Aの化合物は、小動物モデルアッセイにおいて、抗不安活性、抗うつ活性、および抗精神病活性を明示する。
【0058】
本明細書中で使用される場合、κオピオイド受容体選択性は、1nM未満の、より具体的には0.6nM未満かまたはそれに等しい、κ受容体におけるインビトロでの結合親和性を意味する。
【0059】
対照的に、μオピオイド受容体およびδオピオイド受容体におけるインビトロでの結合親和性は、5nMより大きく、一般的には8nMより大きい。
【0060】
また、本明細書中で使用される場合、選択的κオピオイド受容体アンタゴニスト効力は、6nM未満での、より具体的には3nM未満での既知のアゴニストのインビトロでの競合的結合置換を意味する。
【0061】
対照的に、既知のμ受容体アゴニストおよびδ受容体アゴニストのインビトロでの競合的結合置換は、15nMより大きく、一般的には20nMより大きい。
【0062】
本発明の化合物は、選択的κオピオイド受容体アンタゴニストとして記載される。この記載は、その範囲内に「中性アンタゴニスト」および「逆アゴニスト」の両方を含むことが意図される。「中性アンタゴニスト」は、内活性を有さない可逆的受容体リガンドである。それは、受容体自身の基礎活性(構成的受容体活性)に影響せず、競合的な様式で、受容体へのアゴニスト(内因性または非内因性)の結合を妨げる。「逆アゴニスト」は、負の内活性を備えるリガンドである。それは、受容体の配置の平衡状態を、その不活性状態にシフトすることによって受容体自身の活性(構成的受容体活性)を阻害し、そして受容体へのアゴニストの結合を阻害する。高度に構成的な受容体活性環境において、逆アゴニストは、それ自身を中性アンタゴニストから分化させるだろう。
【0063】
実施例1Aの化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、エタノール使用障害の処置および存在し得る独立して併発する不安および/または抑うつ、あるいは統合失調症を処置することにおける広い投与量範囲に対して効果的である。例えば、1日あたりの投与量は、通常、約0.05mg/kg体重〜約50mg/kg体重の範囲内にあるだろう。成人の処置において、単一または分割された投薬において、約0.5mg/kg〜約50mg/kgの範囲が典型的である。しかしながら、実際に投与される化合物の量は、個々の患者の処置される状態または併発状態、年齢、体重、および反応性、その患者の症状の重篤度、および選択された投与経路を含む、関連状況に照らして医師によって決定され、したがって、上記の投与量範囲はその範囲を制限することが意図されないことが理解されるだろう。投与された化合物の量は、選択的中心のκ受容体の占有を提供し、μオピオイド受容体またはδオピオイド受容体、または他の受容体を目に見えてブロックしない投与量範囲内であるべきであることもまた理解されるべきである。化合物は、経口経路、経皮経路、皮下経路、舌下経路、鼻内経路、筋肉内経路、または静脈内経路のような種々の経路によって投与され得る。
【0064】
よく知られているように、2成分薬剤における各成分の投与量は、選択された特定の化合物の効力、投与の様式、患者の年齢および体重、処置される状態の重篤度などのようないくつかの要因に依存する。これは当業者の範囲内であると考えられ、第3級アミン三環式ノルエピネフリン再取り込み阻害剤成分についての最適な投薬を決定するために、既存の文献を概観することができる。
【0065】
ノルエピネフリン再取り込み阻害剤の平均的な1日の成人投与量は、以下の通りである。
【表1】

【0066】
2種の活性成分を含有するそれらの組成物は、同じ物理的形態で、または上記に記載される投与量に従って併用して投与され得る。各活性成分についての投与量は、別個に測定され得、そして単一の合わせられた投薬として与えられるか、または別個に与えられることができる。それらは、両方が患者において、同時に24時間の期間にわたって活性である限り、同時または異なる時間に与えられ得る。同時投与または併用投与は、患者が1つの薬物を他方の薬物の摂取の約5分以内に摂取することを意味する。患者に急速な症状軽減を提供することが目的なので、処置が開始される大半の場合において、2種の薬物が近い時間で、典型的には同時に患者に投与され得、その後、各薬物の投与のタイミングは、両方の薬剤が患者において同時に24時間の期間にわたって活性であるように調整され得る。
【0067】
DSM−IV−TRに記載されるエタノール依存症に対する基準は、同じ12カ月間の期間内のどの時点でも起こる、以下の群から選択される少なくとも3つに見られるような臨床的に著しい障害または困難に至るエタノール使用のパターンである:(1)(a)酔いまたは所望の効果を得るための実質的に増大された量のエタノールの必要性;または(b)同じ量のエタノールの継続した使用による実質的に減少した効果、のいずれかによって定義される耐性;(2)(a)エタノールに対する特徴的な離脱症候群;または(b)禁断症状を軽減または避けるために同一または近似する物質が摂取されること、のいずれかによって実証される禁断症状;(3)エタノールが、しばしば、意図されていたよりも大量にまたは長期間にわたって摂取される;(4)エタノール使用を低減または制御するための永続的な欲求または不成功な努力が存在する;(5)エタノールを得るために、エタノールを使用するため、またはその効果から回復するまでに必要な活動にかなり多くの時間が費やされる;(6)重要な社会的活動、職業的活動、またはレクリエーション活動が、エタノール使用のためにあきらめられるか、または減らされている;ならびに(7)エタノールによって引き起こされるか悪化されているであろう、永続性または再発性の物理的または心理的問題を有することを知っているにもかかわらずエタノール使用が続けられる。
【0068】
エタノール依存症は、生理的な依存症を伴う;すなわち、耐性または禁断症状の証拠が存在する、あるいは、耐性または禁断症状の証拠が存在しない、生理的依存症を伴わないこともあり得る。しかしながら、いわゆる「心理的依存症」は、物理的症状が容易に検出されず、しばしば、不快気分または快感消失症のような心理的病訴により明らかになる持続的な禁断症状の結果であり得ることが理解されるべきである。
【0069】
エタノール乱用の本質的な特徴は、エタノールの反復する使用に関連する再発性および顕著な悪影響によって明らかになるエタノール使用の不適応パターンである。乱用の基準があてはまるためには、エタノール関連問題は、同じ12カ月間に繰返し現れるか、または持続していなければならない。主要な役割義務を果たせない繰り返される失敗、物理的に有害である状況での繰り返えされる使用、多数の法的問題、および再発する社会的問題および対人問題が存在し得る。エタノール依存症についての基準と違って、エタノール乱用についての基準は、耐性、禁断症状、または強迫的な使用を含まず、その代わりに、繰り返される使用の有害な結果のみを有する。エタノール乱用の診断は、個体のエタノール使用のパターンが依存症についての基準にあてはまった場合に、エタノール依存症の診断によって取って代わられる。
【0070】
本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩によって処置されるエタノール使用障害に関するさらなる情報および詳細は、DSM−IV−TRに見出される。
【0071】
本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩によって処置される、独立して併発する不安障害は、恐慌性障害、強迫性障害、社会恐怖、全般的不安障害、特定の恐怖、および心的外傷後ストレス障害から選択される。これらの障害は、患者において、単独またはエタノール使用障害と同時に処置され得る。処置可能な併発状態として企図される特定の不安障害は、DSM IV TRに規定され、United States Department of Health and Human Services,National Institute of Mental Health,NIH Publication No.06−3879に記載される。
【0072】
上記に記載され、かつ本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩によって処置される不安障害に関するさらなる情報および詳細は、DSM−IV−TRに見出される。
【0073】
本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩によって処置される、独立して併発する抑うつ病は、大うつ病、気分変調、および双極性障害から選択される。これらの障害は、患者において、単独またはエタノール使用障害と同時に処置され得る。処置可能な併発状態として企図される特定の抑うつ病は、DSM IV TRに規定され、United States Department of Health and Human Services,National Institute of Mental Health,NIH Publication No.02−3561に記載される。
【0074】
上記に記載され、かつ本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩によって処置される抑うつ障害に関するさらなる情報および詳細は、DSM−IV−TRに見出される。
【0075】
本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩によって処置される、独立して併発する統合失調症は、妄想性、解体性、緊張性、未分化、および残存性のサブタイプを含む。この障害は、患者において、単独またはエタノール使用障害と同時に処置され得る。本発明によって処置可能な併発状態として企図される統合失調症は、DSM IV TRに規定される通りである。
【0076】
本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩によって処置される統合失調症に関するさらなる情報および詳細は、DSM−IV−TRに見出される。
【0077】
既に述べたように、上記に記載されるような不安障害、上記に記載されるような抑うつ病、およびエタノール使用障害は、本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩によって同時に処置され得;あるいは、上記に記載されるような統合失調症およびエタノール使用障害は、本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩によって同時に処置され得る。
【0078】
実施例1Aの化合物は、好ましくは、教育的プログラムおよび/または行動修正プログラムと関連しておよび/または教育的プログラムおよび/または行動修正プログラムの後で投与されて、使用の頻度および/または量の減少またはエタノールの禁断を高める。プログラムは、教育的かつ行動修正目標に焦点を合わせることによってより効果的になり、完了しないプログラムの発生率を減らす。
【0079】
上で述べたように、実施例1Aの化合物は、κオピオイド受容体選択的アンタゴニストである。その選択性を、インビトロアッセイおよびインビボアッセイの両方で実証する。全ての生体外およびインビボ実験を、American Association for the Accreditation of Laboratory Animal Careによって承認されたガイドラインに従って、Eli Lilly and CompanyのAnimal Care and Use Committeeのポリシーに従って実施する。
【0080】
インビトロでのκ親和性
GTP−γ−S結合アッセイ
GTP−γ−S35アッセイ形式ベースのシンチレーション近接アッセイ(SPA)を、実質的に、Emmersonら、J. Pharm Exp Ther.278,1121(1996);Horngら、Society for Neuroscience Abstracts,434.6(2000)、およびDeLappら、JPET 289,946(1999)アッセイ形式に従って実行する。メンブレンを、20mM HEPES、100mM NaCl、5mM MgCl、1mM DTT、および1mM EDTA中に再懸濁する。50μLのGTP−γ−[35S]、化合物、メンブレン懸濁液(20μg/ウェル)、およびコムギ胚芽凝集素で被覆されたSPAビーズ(WGA PVT SPA,GE Healthcare,800 Centennial Avenue,Piscataway,NJ 08854)(1mg/ウェル)を、透明な下部96ウェルアッセイプレートに加える。アッセイプレートへの添加の前に、メンブレン溶液に、GDP(ウェルあたり50μMの最終濃度を達成するための200μM)を加える。プレートを密封し、室温で4時間インキュベートし、次いで、冷蔵庫中に一晩置いて、ビーズを定着させる。4℃でのシグナル安定性を、>60時間であると決定する。プレートを室温まで温め、Wallac MicroBeta(登録商標)シンチレーションカウンター(Perkin Elmer Life and Analytical Sciences,549 Albany Street,Boston,MA 02118 USA)において計数する。アンタゴニストアッセイについて、特定のアゴニストを以下の濃度で加える:μ−オピオイド受容体(MOR)DAMGO([D−Ala,N−Me−Phe,Gly−オール]−エンケファリン、Sigma−Aldrichカタログ番号E7384)1μM;δ−オピオイド受容体(DOR)DPDPE((D−Pen,D−Pen)−エンケファリン、Bachemカタログ番号H−2905)30nM;およびκ−オピオイド受容体(KOR)U69593((+)−(5α,7α,8β)−N−メチル−N−[7−(1−ピロリジニル)−1−オキサスピロ[4.5]デカ−8−イル]−ベンゼンアセトアミド、Sigma−Aldrichカタログ番号U103)300nM。Kb値を、既に報告されたように(DeLappら、1999)、Cheng−Prusoff方程式の改良したもの(ChengおよびPrusoff,Biochem.Pharmacol.22,3099(1973)を参照のこと)を使用して決定する。n>1評価について、要約された平均値は、平均対数Kb=平均(Kb1+Kb2+Kb3);SE=STDEV(Kb1+Kb2+Kb3)/SQRT n(n=2または3);幾何平均Kb(nM)=10^平均対数Kb;SEM=SE×幾何平均Kb(nM)×LN(10)として計算される、述べられた実験の数(n=2または3)の幾何平均である。
【0081】
【表2】

【0082】
Ki値を、ChengおよびPrusoff(上記参照)方程式Ki=EC50/(1+[リガンド]/Kdx)を用いて決定し、下記の表2に報告する。n>1評価について、要約された平均値は、平均対数Ki=平均(Ki1+Ki2+Ki3);SE=STDEV(Ki1+Ki2+Ki3)/SQRT n(n=2または3);幾何平均Ki(nM)=10^平均対数Ki;SEM=SE×幾何平均Ki(nM)×LN(10)として計算される、述べられた実験の数(n=2または3)の幾何平均である。これらのデータは、実施例1の化合物(ラセミ化合物)、および特に実施例1Aの化合物(異性体1)が、μ受容体およびδ受容体に比べてκ受容体に対して選択的な、強力なオピオイド受容体アンタゴニストであることを示す。
【0083】
【表3】

【0084】
これらのデータは、実施例1の化合物(ラセミ化合物)、および特に実施例1Aの化合物(異性体1)が、μ受容体およびδ受容体に比べてκオピオイド受容体に選択的に結合することを示す。
【0085】
ラットの脳におけるオピオイド受容体占有
インビトロの効力をインビボの有効性に橋渡しをし、そして本発明の化合物のオピオイド受容体での占有を評価するために、オピオイドROをモニタリングするためのインビボラットモデルを利用する。このアッセイにおいて、微量のナルトレキソン(10μg/kg)((5α)−17−(シクロプロピルメチル)−4,5−エポキシ−3,14−ジヒドロモルフィナン−6−オン)、ナルトリベン(10μg/kg)(17−(シクロプロピルメチル)−6,7−ジデヒドロ−3,14b−ジヒドロキシ−4,5α−エポキシ−5,7−2’,3’−ベンゾ[b]フラノモルフィナン)、およびGR103545 ([(−)−(R)−メチル 4−[(3,4−ジクロロフェニル)アセチル]−3−1[(1−ピロリジニル)メチル]−1−ピペラジンカルボン酸)(1.5μg/kg)を、単一の注射で静脈内に同時に投与し、それぞれ、μ受容体、δ受容体、およびκ受容体のROトレーサとして使用する。3つのトレーサの投与は、占有されるオピオイド受容体サブタイプの相対的選択性および有効ないずれかの特定のサブタイプにおける受容体占有の度合いを理解することを可能にする。ROにおいて、種々の脳領域におけるトレーサの分布を、高感度で脳内のトレーサ量を検出するための非放射性法を提供するLC/MS/MS(API 4000,MDS Sciex)によって測定する。受容体占有を、次いで、本発明の化合物で処置した動物 対 賦形剤のみで処置した動物におけるトレーサの特異的蓄積の差として計算する。この方法において、線条体(高いμ、δ、およびκオピオイド受容体密度の領域)を、特異的トレーサ蓄積のために採取し、一方、小脳(オピオイド受容体を欠く脳領域)は、非特異的トレーサ蓄積を示す。受容体占有を、本発明の化合物の単一の経口投与の後に、または投薬反応評価のための投与の5.5時間後に決定する。データは、各ラットがおよそ230gの重さである、投薬群あたり3〜6匹のラットで受容体占有の平均±SEMを表す。
【0086】
雄性Harlan Sprague Dawleyラットを、0.03mg/kg、0.01mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg、および30mg/kgの投与量で、3%乳酸/水の経口処方物を使用して、本発明の実施例1Aの化合物で処置する。試験動物は、経口投与の5.5時間後に線条体において投与量依存的なレベルのκ受容体占有を示した。本発明の実施例1Aの化合物の、κ受容体占有についての計算されたED50は、0.45mg/kgであった。インビトロでの結合データと一致して、本発明の実施例1Aの化合物は、インビボでのκオピオイド受容体に対する高い選択性を示し、30mg/kgまでの投与量では(線条体において測定された)μまたはδ受容体のいずれの有意な占有も生じず、それは、これらの受容体のED50が30mg/kgより大きいことを意味する。κ受容体占有の増大するレベルは、30mg/kgの投与量までの本発明の実施例1Aの化合物の血漿または脳における曝露のおおよその比例増加に由来する。これらのデータは、経口投与の後に、実施例1Aの化合物が高い効力でラットの脳においてκオピオイド受容体に選択的に結合することを裏付ける。
【0087】
投与後のラット線条体における実施例1Aの化合物の曝露レベルを、オピオイド受容体占有のレベルを定量化するために使用した同じサンプルにおいて決定した。実施例1Aのレベルを、LC/MS/MS(API 4000,MDS Sciex)によって検出し、ラット脳ホモジネートにおいて調製した実施例1Aの標準曲線から定量化する。
【0088】
【表4】

【0089】
投与後のラットにおける本発明の実施例1Aの血漿曝露を、受容体占有のための組織採取と同時に採取した体幹から単離した血漿から決定する。実施例1Aの化合物のレベルを、LC/MS/MS(API 4000,MDS Sciex)によって検出し、賦形剤処置したラット血漿において調製した実施例1Aの標準曲線から定量化する。
【0090】
【表5】

【0091】
P−ラットプロトコル
12時間エタノールを飲酒するPラット
試験動物は、選択的に繁殖されたアルコール選択性(P)ラットである。これらのラットは、1日あたり5g/kgより多いエタノールを自発的に摂取し、アルコール中毒症の動物モデルについての認識される基準の全てを満たす。彼らは、50〜200mg%の血中アルコール含有量を達成し;彼らはエタノールを得るためにオペラント反応をし;彼らは味、匂い、またはカロリー特性のためではなく、薬理学的効果のためにエタノールを摂取し;そして、彼らは、代謝的および生理的耐性、ついには慢性的エタノールアクセスに対する依存症を発症する。
【0092】
動物
雌性Pラットを、Indiana University Medical Center(Indianapolis,IN,USA)の繁殖用施設から入手する。ラットを、環境的に制御された施設において個々に飼育し、12時間 明/暗サイクル(1500時に照明を消す)で維持する。
【0093】
化合物
全ての薬物を、使用の直前に混合し、1mL/kgの容量で投与する。化合物を、85%乳酸の滴下添加によって滅菌水中に可溶化させる。他のように記載されない限り、化合物を平衡させた被験体内設計(実験ごとに、n=8〜11)を使用して、暗サイクルの開始前に経口投与する。
【0094】
実験手順
コロニーへの4日間の順化後、ラットに、標準的な水のボトルに加えて、EtOH(10%v/v;Ancare,Bellmore,NY)のボトルへのホームケージアクセスを受けさせる。水および10% EtOH、ならびに標準的な実験用飼料へのアクセスは、自由に利用可能である。いったん、ラットが1日の摂取の安定したレベルに達すると、EtOH溶液を15% v/vに増大させる。EtOHおよび水の摂取を、薬物試験の前におよそ6〜9カ月間モニタリングする。飼料および液体の摂取を、PCで制御されたDrinking & Feeding Monitoring System(TSE Systems,Bad Homburg,Germany)で力変換を介して測定する。飼料、水、および15%(v/v)EtOHの摂取を、薬物または賦形剤の投与後12時間にわたって継続的にモニタリングする。一部の実験について、24時間の継続的モニタリングを実行する。
【0095】
1mg/kgおよび3mg/kgの経口投与で、実施例1Aの化合物は、摂取されるエタノールの量を減少させた(賦形剤に対してp<0.05)。
【0096】
エタノールに対して反応するPラットの累進比率
この試験は、エタノールの禁断後の、Pラットにおけるエタノールへのアクセスのための作業に対する動機づけを評価する。この動物モデルは、エタノール欲求をシミュレートする。
【0097】
雌性Pラット(Indiana University Medical Center,Indianapolis,IN,USA)を、環境的に制御された施設において対で飼育し、12時間 明/暗サイクル(0600時に照明がつく)で維持する。
【0098】
化合物を、85%乳酸の滴下添加によって滅菌水中に可溶化させ、使用の直前に混合し、1mL/kgの容量で投与する。他のように記載されない限り、化合物を、実験セッションの60分前に経口投与する。投薬を、平衡させた被験体内設計(実験ごとに、n=8〜11)を使用して割り当てる。
【0099】
エタノール(EtOH)の新しく誘導される回避を低減するために、ホームケージ上の水ボトルを、オペラント訓練の2日前に15% EtOH(v/v;Ancare,Bellmore,NY)を含有するボトルと置き換えた。実験の残りの期間の間を通して、ラットは、ホームケージにおいて水および標準的実験用飼料に自由にアクセスすることができる。
【0100】
毎日60分間のセッションを、音を減衰させるチャンバ(MED Associates,Inc.,St.Albans,VT,USA)内で飼育された標準のラットオペラントチャンバにおいて行う。オペラントチャンバの床の格子の0.5cm直径のステンレス鋼のバーを、およそ1.5cm離して配置する。各オペラントチャンバに2つの格納式オペラントレバーを、格子床のおよそ15cm上かつ13cm離して位置決めする。埋め込み型の餌入れを、レバーの間の空間に位置決めし、それを通して、ディッパーカップ(dipper cup)(0.1mL容量)を、反応条件付きエタノール(15% EtOH,v/v)を送達するために上げる。強化反応に際して、4秒間のディッパーカップアクセスの間、刺激光を当てる。刺激の操作および行動反応を、オフライン分析のためのパーソナルコンピュータによって制御および記録する。各セッションの終わりに、全ての刺激を消し、レバーを格納する。
【0101】
ラットを、EtOH強化物のためにレバーを押すように訓練する。初めに、いずれのレバーに対する反応も正しい反応とみなし、強化物を与えた。強化物へのアクセスを、反応がなされたレバー上を刺激光で照らすことによって合図する。いったん、ラットがEtOH報酬を得るためにレバーを押すことを学習すると、強化の定率(FR)−1スケジュールを使用して、反応の偶然性を変化させ、その結果、片方のレバー(有効レバー)に対する反応が強化され、一方、他方の(非有効)レバーに対する反応は強化されない。3〜4週間の期間にわたって、反応の偶発性をFR−3まで増大し、その結果、各強化物について3回レバーを押すことが必要とされる。いったん、安定したレベルの反応に到達すると、反応の偶発性を強化の累進比率スケジュールに変更する。この手順のために、反応要求を、実験セッションを通してゆっくりと増大させ、その結果、ラットはEtOH報酬を受け取るために徐々に今までよりも努力する。具体的には、反応要求を以下のように増大する:全てのラットは、強化のFR−1スケジュールで開始する;3回の強化の後、スケジュールをFR−2に増大する;そのレベルでの3回の強化の後、スケジュールをFR−4に増大する;FR−4での3回の強化の後、スケジュールをFR−6に増大する;など。各セッションを、合計60分間続くように予定を決める。摂取されるEtOHの量(mLおよびg/kg)を記録し、同様に、有効レバーおよび非有効レバーに対する反応の数、およびセッションの間に到達する最も高いFR値と定義されるブレイクポイントを記録する。
【0102】
実施例1Aの化合物を、1mg/kg、3mg/kg、および10mg/kgで試験する60分前に経口投与する。有効レバー反応の数は、10mg/kgの投与後に減少される(賦形剤に対してp<0.05)。摂取されたエタノールの量およびブレイクポイントもまた、10mg/kg投与量で低減される(賦形剤に対してp<0.05)。彼らのエタノールに対する長いオペラント経歴にもかかわらず、データは、エタノールへのアクセスのために作業する動機づけの減少を証明する。
【0103】
ストレス誘導性過温症(ラット)
過温症は、ストレスに反応して多くの種において確実に実証されてきた一般的な現象であり、よく特徴づけられた闘争・逃避反応の構成要素である。この試験は、試験化合物を、その抗不安効果の指標として評価する。ストレス誘導性過温症を分析するための従来のかつ最小侵襲の方法は、体温、およびストレス誘導性の体温の上昇を、直腸用体温計を介して測定することによる。この手順は、基線体温測定値(基線温度、T1)を測定する前に動物に投薬することを必要とする。実験者による扱いおよび直腸用プローブの挿入は、10〜15分以内にピークに達する体温の穏やかな上昇を生じる。2度目の体温測定(T2)を、1度目の測定の10分後に記録する。体温の変化(T2−T1)を、ストレス誘導性体温上昇反応と定義する。
【0104】
体重275g〜350gの雄性Fischer F−344ラット(Harlan,Indianapolis,IN,USA)を試験する。全ての動物を、飼料および自動化された水を自由に得られるようにして個々に飼育し、12時間 明/暗サイクルで維持する(06:00に照明がつく)。各実験の前日に、試験のために指定されたラットのホームケージから飼料を除去し、その結果、動物を、実験前のおよそ12〜18時間の間飢餓状態にする。ラットを、n=10のコロニールームから投薬のための処置ルームに移す。85%乳酸の滴下添加により滅菌水中に溶解させた、1mg/kg、3mg/kg、および10mg/kgの範囲の試験化合物の、1mL/kgの投与容量で経口投与する。水中に溶解させた代謝生成物産生グルタミン酸サブタイプ5(mGlu5)アンタゴニストである3−[(2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)チニル]ピリジン(MTEP)(10mg/kg)の溶液を、陽性コントロールとして使用する。投薬の直後に、ラットを彼らのホームケージに戻し、実験者は照明を消して部屋を去る。投薬ルーム(ルームA)は60分の前処置期間の残りは暗くする。
【0105】
前処置期間の後、ラットを個別に明るく照らされた隣接ルーム(ルームB)に連れて行き、そこで、鉱油で潤滑にされた直腸用プローブの挿入によって基線体温を決定する。体温を、Physitemp(登録商標)RET−2(登録商標)ラット直腸用プローブを備えるPhysitemp(登録商標)BAT−12(登録商標)Microprobe Thermometer(Physitemp Instruments Inc.,154 Huron Ave.Clifton,NJ 07013)を使用して評価する。プローブを、直腸の中におよそ2cm挿入する。中心部体温を測定する(これは、基線体温T1(摂氏)である)。次いで、ラットをホームケージに戻し、ルームBのままにする。10分後、二度目の体温測定を記録する(T2)。1度目と2度目の体温測定の差(T2−T1)を、ストレス誘導性過温症の指標として使用する。
【0106】
クロルジアゼポキシド(CDP)の閾値以下の投与と共に投与された実施例1Aの化合物の組み合わせを評価する、第2の研究を実行する。
【0107】
薬物の組み合わせ研究のために、実施例1A(1mg/kg、3mg/kg、および10mg/kg、経口、60分間の前処置)を、クロルジアゼポキシド(1mg/kg、経口、水賦形剤)と共に投薬し、そして1mg/kgのクロルジアゼポキシド単独を陽性コントロールとして使用する。
【0108】
研究1. 実施例1Aの化合物を、1mg/kg、3mg/kg、および10mg/kgでの基線中心部体温の測定の60分前に経口投与する。化合物は、用量依存性であるが、有意ではない、ストレス誘導性過温症の減少(T2−T1)を生じる。重要なことには、基線中心部体温は影響されない。陽性コントロール化合物は、基線体温に影響することなく、ストレス誘導性過温症を有意に低減する(p<0.05)。
【0109】
研究2. 実施例1Aの化合物を、1mg/kg、3mg/kg、および10mg/kgで、1mg/kgのクロルジアゼポキシドと共に、基線中心部体温の測定の60分前に経口投与する。別の群に、10mg/kgの実施例1A単独または1mg/kgのクロルジアゼポキシド単独のいずれかを受けさせる(経口、基線体温の60分前)。実施例1Aの化合物は、クロルジアゼポキシドの閾値以下の投与の有効性を増大して、ストレス誘導性過温症の有意な低減をもたらす(p<0.05)。重要なことには、基線中心部体温は影響されない。
【0110】
研究1. 実施例1Aの化合物単独:賦形剤=0.98±0.10;1mg/kg 実施例1A=0.84±0.07、3mg/kg 実施例1A=0.80±0.10;10mg/kg 実施例1A=0.75±0.11;MTEPコントロール=0.42±0.09。
【0111】
研究2. 実施例1Aの化合物およびクロルジアゼポキシド:賦形剤=0.86±0.06;1mg/kg CDP単独=0.75±0.06、10mg/kg 実施例1A単独=0.74±0.04;1mg/kg 実施例1AおよびCDP=0.68±0.06;3mg/kg 実施例1AおよびCDP=0.70±0.07;10mg/kg 実施例1AおよびCDP=0.57±0.07。
【0112】
研究1および2からのデータは、実施例1Aの化合物が、単独で適度の抗不安効果を有することを証明する。しかしながら、ベンゾジアゼピンと組み合わせると、より強い抗不安効果が、より少ない投与量の実施例1Aの化合物で見られる。これらのデータは、実施例1Aの化合物単独での使用、または不安障害のためのベンゾジアゼピン抗不安薬との補助療法としての使用を示唆する。
【0113】
マウス強制水泳試験
この試験は、抗うつ効果の指標としての、マウスの運動性に対する試験化合物の効果を評価する。賦形剤に比べて不動性が少なくなればなるほど、抗うつ様効果がより明らかになる。
【0114】
雄性のNIH−Swissマウス(25〜30g)(Harlan Sprague−Dawley,Indianapolis,IN,USA)を、使用前の少なくとも1週間の間、この順化期間の間水およびげっ歯類用飼料を自由に得られるようにして、動物施設において飼育する。動物を、動物施設からそれらのホームケージ内の試験領域に移動させ、試験前の少なくとも1時間の間、新しい環境に適応させる。
【0115】
マウスを、6cmの水(22〜25℃)を満たした透明のプラスチック製円筒(直径:10cm;高さ:25cm)に6分間入れる。6分間の試験期間のうちの最後の4分間の間の不動性の継続時間を採点する。マウスを、浮かぶために動かないとき、またはその頭部を水の上に保つために必要な動きしかしない場合に不動であると記録する。
【0116】
試験化合物を、5mlの滅菌水および30mlの希釈された(10倍)乳酸の賦形剤において、1群あたりn=8で、1.0mg/kg、3.0mg/kg、および10.0mg/kgで試験する1時間前に経口投与する。イミプラミンを、15mg/kg:p、試験の30分前、n=4の陽性コントロールとして評価する。10.0mg/kgで、実施例1Aの化合物は、抗うつ様活性を実証する(賦形剤に対してp<0.05、ダネット検定)。
【0117】
第2の研究を実行して、実施例1Aの化合物の1mg/kgおよび3mg/kgの投与量単独、ならびに5mg/kgのイミプラミンと組み合わせて評価する。イミプラミン単独を、5mg/kgおよび15mg/kgの投与量で評価し、賦形剤コントロールを研究に含む。組み合わせ研究のために、実施例1Aの化合物を、イミプラミンの静脈内投与の30分前に経口投与し、試験を、イミプラミン投与の30分後に開始する。1群あたりn=8を、全ての群について評価する。実施例1Aの化合物単独の評価のために、試験を投与の60分後に開始し、そしてイミプラミンのみで処置された動物の試験を投与の30分後に開始する。実施例1Aの化合物の3mg/kgの投与量、および5mg/kgのイミプラミンは、15mg/kgの投与量のイミプラミン単独と実質的に同様に有効であり、賦形剤コントロール、イミプラミン5mg/kg単独、および3mg/kgの実施例1A単独の各々に対して統計学的に有意であった。1mg/kg投与量の実施例1Aの化合物および5mg/kgイミプラミンはまた、賦形剤コントロール、イミプラミン5mg/kg単独、および1mg/kgの実施例1A単独の各々に対して統計学的に有意な抗うつ効果を証明した。最初の研究におけるのと同様に、イミプラミン15mg/kgは、賦形剤コントロールに対して統計学的に有意な抗うつ効果を実証した(p<0.05、全ての統計学的評価についてのダネット検定)。
【0118】
【表6】

【0119】
第2の研究からのデータは、実施例1Aおよびイミプラミンの組み合わせ投与量が、各々の化合物が単独で投与された場合に統計学的に有意な活性を証明しない投与量で投与される場合の、抗うつ様活性の相乗効果を証明する。
【0120】
プレパルス阻害
音響驚愕反射のプレパルス阻害(PPI)を使用して、多くの神経学的および精神病理学的条件において観察される感覚情報処理欠損を評価する。統合失調症の患者は、低減された感覚−運動ゲーティングを示し、それは、驚愕反射の低減されたプレパルス阻害(PPI)に反映される。この低減された阻害を、医薬抗精神病薬によって改善(逆転)させることができる。精神病様状態を誘導するか、またはPPIを妨害(抑制)する特定の医薬化合物(例えば、ドーパミンアゴニスト、NMDAアンタゴニスト)および抗精神病医薬品は、これらの欠損を逆転することができる。PPIは、ゲーティングまたは無関係または気をそらす刺激を取り除くための機構を表し、高強度の驚愕を誘導する刺激の前に表わされる低強度の刺激によって生成される驚愕反応の低減と操作的に定義される。
【0121】
方法
実験1:PPIの(+)−(5α,7α,8β)−N−メチル−N−[7−(1−ピロリジニル)−1−オキサスピロ[4,5]デカ−8−イル]−ベンゼンアセトアミド(U69593、選択的κオピオイド受容体アゴニスト)誘導性妨害の逆転:
【0122】
Sprague Dawleyラット、雄40匹、(Harlan,Indianapolis,IN)、体重およそ250g、かつホームケージにおいて飼料および水を自由に摂らせて維持したラットを、8匹ずつの5群に分けて、賦形剤、0.1mg/kg、0.3mg/kg、または1.0mg/kgの実施例1Aの化合物を試験の1時間前に(経口で)投薬する。各ラットを、(皮下注射による)3mg/kgのU−69593または賦形剤のいずれかで、試験の15分前に投薬する。
【0123】
プレパルス阻害手順:5分間の順化期間の後、40回の試行セッションの最初の試行を開始する。最初の5回の試行は、115dBの驚愕爆発で構成され、残りの35回の試行は、プレパルス試行および驚愕試行の疑似ランダム組み合わせであった。プレパルス試行は、65dBの音のプレパルスが先行する、115dBの音爆発から構成された。驚愕試行は、115dBの音爆発から構成された。加えて、60dBのバクグラウンドノイズに対する基線反応を評価する、5回のコントロール試行が存在する。
【0124】
試行間の間隔(ITI)は、15秒から45秒まで変化し、60dBのバックグラウンドノイズから構成された。各試行についての驚愕の大きさを、加速度計(Hamilton Kinder,モデルSM100RP)を介して測定し、そこで、ニュートン単位の平均力を、各試行について115dBの驚愕刺激で、40ミリ秒の提示に際して120ミリ秒の期間にわたって記録する。
【0125】
驚愕反応性に対する阻害を、各ラットの、平均プレパルス驚愕反応性から平均基線驚愕反応性への変化の割合として測定する。[(平均基線驚愕−平均プレパルス驚愕)/平均基線驚愕]×100。
【0126】
実施例1Aを、85%乳酸を解けるまで滴下した滅菌水の賦形剤中の溶液として調製し、1ml/kg投与容量で、0.1mg/kg、0.3mg/kg、および1.0mg/kgで経口投与する。
【0127】
U−69593を、滅菌水の賦形剤中の溶液として調製し、1ml/kg投与容量で、3.0mg/kgで皮下投与する。
【0128】
データを、事後有意を評価するためにダネット多重比較検定により、One−Way ANOVA(処置)を使用して分析する。統計学的分析を、GraphPad Prism v.4.03において実行した。
【0129】
実験2:PPIのモルフィン誘導性妨害の逆転:
Sprague Dawleyラット、雄56匹、(Harlan,Indianapolis,IN)、体重およそ250g、かつホームケージにおいて飼料および水を自由に摂らせて維持したラットを、14匹ずつの4群に分けて、10mg/kgまたは30mg/kgの実施例1Aまたは賦形剤のいずれかを、試験の1時間前に(経口で)投薬し、次いで、(皮下注射による)20mg/kgのモルフィンまたは賦形剤のいずれかで、試験の15分前に投薬する。
【0130】
プレパルス阻害手順および実施例1Aの調製は、上記に記載される通りである。
【0131】
モルフィンを、滅菌水の賦形剤中の溶液として調製し、1ml/kg投与容量で、20.0mg/kgで皮下投与する。
【0132】
データを、事後有意を評価するためにダネット多重比較検定により、One−Way ANOVA(処置)を使用して分析する。統計学的分析を、GraphPad Prism v.4.03において実行した。
【0133】
【表7】

【0134】
【表8】

【0135】
表6および7のデータは、実施例1Aの化合物が、ラットにおいてκアゴニスト(U−69593;表6)およびμアゴニスト(モルフィン;表7)によって誘導される感覚運動ゲーティング欠損を逆転させることができることを証明する。これらのデータは、患者において統合失調症を処置することにおける実施例1Aの化合物の使用を裏付ける。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項2】
(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミドである請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩を、薬学的に許容され得るキャリア、希釈剤、および/または賦形剤と併せて含む医薬組成物。
【請求項4】
必要とする患者においてκオピオイド受容体を選択的に拮抗する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項5】
必要とする患者においてエタノール使用障害を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項6】
必要とする患者において、恐慌性障害、強迫性障害、社会恐怖、全般的不安障害、特定の恐怖、および心的外傷後ストレス障害から選択される不安障害を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項7】
必要とする患者において、恐慌性障害、強迫性障害、社会恐怖、全般的不安障害、特定の恐怖、および心的外傷後ストレス障害から選択される不安障害、ならびにエタノール使用障害を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項8】
必要とする患者において、大うつ病、気分変調、および双極性障害から選択される抑うつ病を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項9】
必要とする患者において、大うつ病、気分変調、および双極性障害から選択される抑うつ病、ならびにエタノール使用障害を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項10】
必要とする患者において、恐慌性障害、強迫性障害、社会恐怖、全般的不安障害、特定の恐怖、および心的外傷後ストレス障害から選択される不安障害、ならびに大うつ病、気分変調、および双極性障害から選択される抑うつ病を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項11】
必要とする患者において、恐慌性障害、強迫性障害、社会恐怖、全般的不安障害、特定の恐怖、および心的外傷後ストレス障害から選択される不安障害、ならびに大うつ病、気分変調、および双極性障害から選択される抑うつ病、ならびにエタノール使用障害を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項12】
必要とする患者において、統合失調症を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項13】
必要とする患者において、統合失調症およびエタノール使用障害を処置する方法であって、前記患者に、(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項14】
治療における使用のための、請求項1または2に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項15】
エタノール使用障害の処置における使用のための、請求項1または2に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項16】
a)恐慌性障害、強迫性障害、社会恐怖、全般的不安障害、特定の恐怖、および心的外傷後ストレス障害から選択される不安障害;または
b)大うつ病、気分変調、および双極性障害から選択される抑うつ病;または
c)a)から選択される不安障害およびb)から選択される抑うつ病;または
d)エタノール使用障害およびa)から選択される不安障害;または
e)エタノール使用障害およびb)から選択される抑うつ病;または
f)エタノール使用障害、ならびにa)から選択される不安障害およびb)から選択される抑うつ病;または
g)統合失調症;または
h)エタノール使用障害および統合失調症
の処置における使用のための、請求項1または2に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項17】
(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量、および、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミン、および(+)−トリミプラミンから選択される第3級アミン三環式ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、またはその薬学的に許容され得る塩の治療有効量を、薬学的に許容され得るキャリア、希釈剤、および/または賦形剤と併せて含む医薬組成物。
【請求項18】
a)エタノール使用障害;または
b)大うつ病、気分変調、および双極性障害から選択される抑うつ病;または
c)エタノール使用障害およびb)から選択される抑うつ病
の処置のための薬剤の製造における、化合物(S)−3−フルオロ−4−[4−[2−(3,5−ジメチルフェニル)ピロリジン−1−イル−メチル]フェノキシ]ベンズアミド、またはその薬学的に許容され得る塩、および、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミン、および(+)−トリミプラミンから選択される第3級アミン三環式ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、またはその薬学的に許容され得る塩の使用。

【公表番号】特表2011−524850(P2011−524850A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543182(P2010−543182)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/030811
【国際公開番号】WO2009/094260
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】