説明

おにぎりの包装体

【課題】包装材の使用量を抑えたもとで、包装体の製造から販売までの流通過程を経ておにぎりを食するまでにおける取り扱い時の外圧や、おにぎりを食する際における袋の開封動作等の外的要因からシート状の海苔とおにぎりを保護する。
【解決手段】袋20におけるおにぎり22の上方で重合するシート状袋体18の各端縁部を熱溶着して形成された横方向シール部24が、袋20の左右両端縁間に亘って延在する。袋20におけるおにぎり22を挟む左右両側で重合するシート状袋体18を熱溶着して形成された縦方向シール部26,26は、横方向シール部24と交差するよう縦方向に延在する。袋20の底面となる左右両端部に、上方に向けて折り込まれた折込み部34が形成される。シート状袋体18の内部に画成され、シート状の海苔16が密封状態で収容される第1密封室に気体が封入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おにぎりの包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海苔を直巻きせずにシート状の海苔とおにぎりを、密封した袋内に分離された状態で収容するようにしたおにぎりの包装形態として、表側フィルムに裏側フィルムを重ね合わせ、内部にシート状の海苔を収容するための袋部を構成するように表側フィルムと裏側フィルムの一部を接合して製袋されたシート体によって三角形状のおにぎりを包み込み、その包装体の左右および上部の三方をヒートシールしておにぎり包装体としたもの(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【0003】
また、シート状の海苔を収容した第1袋状体を巻き付けたおにぎりを、第2袋状体に収容して密封するのに加えて、該第2袋状体に不活性ガス等の気体を封入して、おにぎりの外圧からの保護と鮮度の保持とが期待できるようにした提案もなされている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−145507号公報
【特許文献2】特開2005−247374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示のおにぎりの包装体によれば、単にシート体でおにぎりを包み込む特許文献1のものに比べて、おにぎりの保護と鮮度の保持との効果が期待できる。しかるに、特許文献2に関する包装体を得るには、シート状の海苔を収容した第1袋状体でおにぎりをくるむ工程を経て、その第1袋状体でくるまれた中間包装品を第2袋状体に収容するための工程が必要となるばかりでなく、2重袋形態とするための包装材の使用量が多くなる等の難点が指摘される。
【0006】
すなわち本発明は、従来の技術に係るおにぎりの包装体に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、包装材の使用量を抑えたもとで、包装体の製造から販売までの流通過程を経ておにぎりを食するまでにおける取り扱い時の外圧や、おにぎりを食する際における袋の開封動作等の外的要因からシート状の海苔とおにぎりを保護可能なおにぎりの包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係るおにぎりの包装体は、
重ね合わされた内外2枚の包装材間にシート状の海苔を収容したシート状袋体からなる袋内におにぎりを収容した包装体であって、
前記シート状袋体に載置したおにぎりの上方で該シート状袋体の各端縁部を重合して熱溶着され、袋の左右両端縁間に亘って延在する横方向シール部と、
前記おにぎりを挟む左右両側で重合するシート状袋体を熱溶着して形成され、前記袋の底部から上端に亘って縦方向に延在すると共に前記横方向シール部と交差する縦方向シール部と、
前記袋の底面となる左右両端部において上方に向けて折り込まれた折込み部と、
前記シート状袋体の両包装材間に気体が封入されて前記シート状の海苔を密封状態で収容した第1密封室と、
前記シート状袋体の第1密封室で覆われて前記おにぎりを密封状態で収容した第2密封室とから構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記シート状袋体には、中央位置に収容したシート状の海苔を囲むように形成した部分シール部と、前記袋を左右に分割可能な開封手段とを設けたことを要旨とする。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記開封手段は、前記袋の前側または後側の何れか一方側においておにぎりの上方に臨むよう前記シート状袋体における外側の包装材の左右方向の中央に形成した摘み部と、始端が該摘み部に接続され、おにぎりを上下方向に囲み横方向シール部を縦断して終端が前記袋の他方側の上端に至るよう外側の包装材を非貫通状態で脆弱化した左右一対の第1の開封誘導線と、おにぎりを上下方向に囲むように内側の包装材を非貫通状態で脆弱化して前記一対の第1の開封誘導線の間に臨み、前記横方向シール部を縦断して袋上端部に至るよう形成された第2の開封誘導線と、前記摘み部を囲繞し、内外2枚の包装材を熱溶着した環状弱シール部と、該環状弱シール部の上部に接続され、前記横方向シール部を縦断して袋上端部に至るよう外側の包装材を非貫通状態で脆弱化した補助開封誘導線とを有することを要旨とする。
【0010】
請求項4に係る発明では、前記第2密封室に気体を封入したことを要旨とする。
【0011】
請求項5に係る発明では、前記密封室に封入された気体は不活性ガスであることを要旨とする。
【0012】
請求項6に係る発明では、前記縦方向シール部は、袋の底部となる折込み部において包装材が折り込まれて重合した該包装材の表面同士が面する部位が溶着されたことを要旨とする。
【0013】
請求項7に係る発明では、前記内側の包装材は表裏両面熱溶着性フィルムとしたことを要旨とする。
【0014】
請求項8に係る発明では、前記外側の包装材は表裏両面熱溶着性フィルムとしたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、気体を封入した第1密封室にシート状の海苔を収容したシート状袋体によっておにぎりを収容する袋を構成したので、包装材の使用量を抑えたもとで、封入気体の緩衝性によって海苔およびおにぎりを外圧から良好に保護することができる。また、海苔が収容される第1密封室内の気体層によって、乾燥状態の海苔が、外気またはおにぎりからの湿気を帯びてしまうのを防止し得る。更に、包装材と海苔との間には気体層が形成されているので、袋を開封する際に包装材に海苔の一部が付着した状態となって裂けたり欠損してしまうといった事態が生ずるのを抑制し得る。
請求項2に係る発明によれば、シート状袋体に海苔を位置規制状態で収容しているから、おにぎり包装品を製造してから開封されるまでにおいて海苔が位置ずれするのを規制し、販売時の見栄えを良好とし得ると共に、袋の開封に際して左右に包装材を分割した際に海苔をおにぎりに合致した添付状態とすることができる。
請求項3に係る発明によれば、内外2枚の包装材を開封誘導線に沿って確実に引き裂いて左右に分割することができる。また、外側の包装材の引き裂き始端となる摘まみ部を環状弱シール部で囲繞しているから、袋の密封性を損なうこともない。
請求項4に係る発明によれば、第1密封室に加えて第2密封室にも気体を封入することで、包装体に一層ボリューム感を与え、自立性を高めることができると共に、2重の緩衝効果を得ることができる。
請求項5に係る発明によれば、封入気体として不活性ガスを用いることで、雑菌やカビ等の発生の防止、酸化および変退色防止効果が高まり、製造から消費期限までの期間を延長でき、それによって製造拠点から販売地区までの流通区域を拡大することが可能となる。
請求項6に係る発明によれば、包装体の縦方向シール部が袋底部から袋上部に亘って柱状の支えとなって自立性を高めたり、見栄えを良好なものとすることができる。
請求項7に係る発明によれば、海苔を収容したシート状袋体でおにぎりを包んで横方向シールおよび縦方向シールを施す位置に対応して包装材に、例えばパートコート処理等の熱溶着可能な処理を施すことなく熱溶着による密封性を得ることができる。
請求項8に係る発明によれば、包装体の縦方向シール部に対応して袋底部に形成される折込みにより形成される包装材の重なり部にパートコート等の易接着処理を別途施すことなく溶着されるので、左右の縦方向シール部によって袋底部に保形性を与えて自立性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は、実施例に係るおにぎりの包装体を示す概略斜視図であり、(b)は、包装体の概略縦断面図である。
【図2】(a)は、実施例に係るおにぎりの包装体を摘み部が形成された側から視た図であり、(b)は、外側のフィルムを一部破断して包装体を反対側から視た図である。
【図3】実施例に係るシート状袋体を外側のフィルム側から視た展開図である。
【図4】実施例に係るシート状袋体を内側のフィルム側から視た展開図である。
【図5】縦方向シール部の折込み部が熱溶着されていない変更例に係る包装体の要部を示す概略斜視図である。
【図6】開封手段の変更例を示す包装体の部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係るおにぎりの包装体につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例】
【0018】
図1(a)は、実施例に係るおにぎりの包装体を示す概略斜視図であって、該包装体10は、透明フィルム等の内外2枚のフィルム(包装材)12,14を重ね合わせて構成されて両フィルム12,14間にシート状の海苔16を収容したシート状袋体18からなる袋20に、三角のおにぎり22を収容した袋詰め包装品であって、該おにぎり22は、シート状袋体18を筒状に形成した際の折返し部に載置された状態で1つの頂部を上向きにした姿勢で収容される(図2参照)。
【0019】
前記袋20の上端部には、おにぎり22が載置されたシート状袋体18の両端縁を上方に持ち上げて合掌状に重合した重合部を所定幅で熱溶着することで得た横方向シール部24が横方向(袋の左右方向)に延在するように形成されている。前記袋20の左右両端部には、フィルムの左右同士が重合されて所定幅で熱溶着された縦方向シール部26が袋底部から袋上端に亘って夫々縦方向に延在するように形成されており、両縦方向シール部26,26は、前記横方向シール部24と交差している(図2参照)。前記シート状袋体18を構成する内外のフィルム12,14の夫々は、両面熱溶着性フィルムが採用されており、乾燥した海苔16を収容したシート状袋体18によって得られた袋内に収容されたおにぎり22と海苔16とを横方向シール部24および縦方向シール部26,26により、内外のフィルム12,14の相互に重合した面同士が熱溶着されて密封されている。なお、シート状袋体18を構成する包装材は、ポリプロピレン等を基材とするプラスチックフィルムの熱溶着性のものや、和紙、あるいは擬似和紙等の基材にポリエチレン等の熱可塑性合成樹脂層が積層された熱溶着性シート材等を用いることができる。
【0020】
前記シート状袋体18は、袋20の表面に位置する外側のフィルム12と、該袋20に収容されたおにぎり22に面する内側のフィルム14とを重ね合わせて構成される。そして、海苔16を収容した両フィルム12,14によっておにぎり22を包んで両フィルム12,14をおにぎり22の上方および左右で重合した各端縁部の重合部を熱溶着して得られた横方向シール部24および縦方向シール部26,26によって、該海苔16の収容部が密封されて第1密封室28が形成され、また該シート状袋体18で包まれたおにぎり22の収容部分も、前記横方向シール部24および縦方向シール部26,26によって密封されて第2密封室30が形成される。すなわち、海苔16およびおにぎり22は、図1(b)に示す如く、内側のフィルム14を挟んで画成される密封された各室28,30に隔離された状態で収容されると共に、おにぎり22が収容される第2密封室30は、海苔16が収容される第1密封室28で覆われている。
【0021】
前記第1密封室28および第2密封室30の夫々に、窒素あるいは窒素と二酸化炭素の混合ガス等からなる不活性ガス(気体)が封入されている。すなわち、両密封室28,30に封入されている不活性ガスによって、海苔16およびおにぎり22に加わる外圧を緩和して、該海苔16およびおにぎり22を製造から販売に至る間において保護することができる。特におにぎり22については、第1密封室28に封入されている不活性ガスの緩衝作用と、第2密封室30に封入されている不活性ガスの緩衝作用により2重に保護することができ、おにぎり22の型崩れや変形等を有効に防止し得る。また、乾燥した海苔16は、おにぎり22が収容される第2密封室30から隔離されて密封され、かつ不活性ガス雰囲気中に存在していることにより、外気またはおにぎり22からの湿気を帯びてしまうのを好適に防止し得る。更に、内外のフィルム12,14と海苔16との間には不活性ガスの気体層が形成されているので、おにぎり22を食するにあたり袋20を開封する際に、内外のフィルム12,14に海苔16の一部が付着した状態となって裂けたり欠損したりしてしまうといった事態が生じ難く、開封後においておにぎり22に海苔16が良好な状態で巻かれた形態とし得る。更にまた、海苔16およびおにぎり22を何れも不活性ガス雰囲気中に収容することで、雑菌やカビの発生の防止等、その他酸化および変退色防止効果が高まり、製造から消費期限までの期間を延長できる。これにより、製造拠点から販売地区までの流通区域を従来より拡大でき、製造拠点を集約して生産効率を高めることが可能となる。また、不活性ガスを封入した第1密封室28に海苔16を収容したシート状袋体18でおにぎり22を包んで密封したので、従来の如く海苔16とおにぎり22とを別々に包装することなくそれら両物品の保護と鮮度維持とを図ることができ、フィルム等の包装材の使用量を抑えることができる。なお、前記密封室28,30に封入される不活性ガスの量は、少なくとも収容される海苔16またはおにぎり22に対してフィルム12,14の全体が密着することなく、少なくとも緩衝効果を得ることが可能な値に設定されるようにすればよい。
【0022】
前記シート状袋体18には、図3または図4に示す如く、第1密封室28に収容されている海苔16の長手方向に延在する各長辺の外側に近接して長手方向に向けて所定間隔で内外のフィルム12,14の対向面同士を部分的に熱溶着して形成された複数の縦部分シール部32aと、各短辺の外側に近接して海苔16の幅方向の一側から他側にかけて所定間隔毎に内外のフィルム12,14の対向面同士を部分的に熱溶着して形成された複数の横部分シール部32bからなる部分シール部32が形成され、該部分シール部32によって外周が囲われた海苔16が袋体中央位置から移動するのを規制するよう構成してある。すなわち、包装体10の製造後における流通時から消費者がおにぎり22を食するために袋20を開封するまでの間において、海苔16が位置ずれするのを規制することができ、販売時の見栄えを良好とし得ると共に、位置ずれによる海苔16の欠損等が防止できる。また、開封した際に海苔16をおにぎり22に合致した添付状態とすることができる。
【0023】
前記袋20の底面には、図1(a),(b)に示す如く、その左右両側に袋底面から袋上方に向けてフィルムが折込み形成された折込み部34が夫々形成されている。前記シート状袋体18における外側のフィルム12は表裏両面熱溶着性フィルムが採用されており、各折込み部34は、フィルムが袋底面から袋上方に折り込まれて前記縦方向シール部26が形成される際に折り込まれた外側のフィルム12の表面同士が面して重合し熱溶着されるので、前記縦方向シール部26は、袋20の底面部においても折込み重合面のフィルム同士が夫々溶着して図1に示した如く重合状態が保持されて離間することはない。これにより、袋底部の保形性を高め、また縦方向シール部26,26が袋底部における左右両端から袋上方に向けた支柱となることで、自立性を高めた包装体10とすることができる。すなわち、包装体10を立てて陳列販売する際に転倒しておにぎり22が型崩れするのを防止し得る。両面熱溶着性フィルムを採用すれば、フィルムの加熱溶着予定部位にパートコート等の易接着処理を別途施す必要はない。なお、折込み部34のフィルム重合面同士の熱溶着については必要に応じて採用されるものであればよく、比較的腰があって保形性を有するフィルムを採用する場合は、外側のフィルム12の海苔16に面する裏面のみを熱溶着可能なフィルムとすることで、例えば図5に示すように折込み部34のフィルム重合面同士が離間したままの形態としてもよい。
【0024】
前記袋20における左右方向の中央部には、該袋20を左右に分割するための開封手段36が形成されている。この開封手段36は、図3または図4に示す如く、シート状袋体18における外側のフィルム12に形成されて引き裂き始端となる摘み部38と、該摘み部38に接続され、外側のフィルム12に左右方向に離間して形成された一対の第1の開封誘導線40,40と、両第1の開封誘導線40,40の間に臨むように内側のフィルム14に形成された第2の開封誘導線42と、後述の補助開封誘導線48とから基本的に構成される。前記第1および第2の開封誘導線40,42は、何れもフィルム12,14を貫通することなく連続または断続的な線状に溝(脆弱部)を形成する、所謂ハーフカット処理が施されており、該開封誘導線40,42によって前記第1および第2密封室28,30の密封性が損なわれることがないよう構成される。なお、フィルム12,14を開封するための脆弱化処理としては、ハーフカット処理に限らず、フィルム12,14を線状に押圧して厚みを部分的に薄くするものや、フィルムに非貫通の微細傷を付与する等の公知の各種処理を採用することができる。
【0025】
前記袋20における横方向シール部24の下方に近接した位置には、袋20の前側または後側の一方側に臨む外側のフィルム12と内側のフィルム14との重合面が環状に熱溶着された環状弱シール部44が左右方向の中央に形成されている。そして、外側のフィルム12における環状弱シール部44で囲繞される部位には、図2(a)および図3に示す如く、上下に離間する直線部を左右両端の曲線部で接続した略トラック形状の切込み46が外側のフィルム12を貫通して形成され、該切込み46によって横長方形状の前記摘み部38が形成される。切込み46は、下側の直線部が左右方向中央で非接続状態となっている。また、前記一対の第1の開封誘導線40,40は、その始端部が摘み部38の切込み46における下側の直線部に交差するよう接続され、袋20に収容されているおにぎり22を上下方向に囲むように延在すると共に、終端が切込み46が形成された袋20の前側または裏側とは反対側の外側のフィルム12における横方向シール部24を縦断して袋上端まで至るよう形成される(図2(b)参照)。更に、内側のフィルム14における左右方向中央位置には、図2(b)および図4に示す如く、一対の第1の開封誘導線40,40の間に臨み前記横方向シール部24を縦断して袋上端部に至る前記第2の開封誘導線42が、該内側のフィルム14の上下方向全長に亘って形成される。また、前記外側のフィルム12の左右方向中央で第2の開封誘導線42に整列する位置に、袋上端部から前記横方向シール部24を縦断して環状弱シール部44の内方における切欠み46と交差する位置に至る補助開封誘導線48が、前述したハーフカット処理により形成されている。
【0026】
すなわち、前記包装体10のおにぎり22を食するに際しては、前記摘み部38を指で引っ張ることで、前記一対の第1の開封誘導線40,40に沿って外側のフィルム12が帯状に切り離される。次いで、袋20を左右に引っ張ることで、前記内側のフィルム14が第2の開封誘導線42に沿って左右に切り離されて該袋20が左右に分割され、前記第1密封室28に収容されていた海苔16が、第2密封室30に収容されていたおにぎり22の外周に添付される。なお、内側のフィルム14が第2の開封誘導線42に沿って切り離される際には、前記外側のフィルム12における補助開封誘導線48に沿って外側のフィルム12における横方向シール部24に対応する位置も容易に分離される。また、前記摘み部38を形成する切込み46は、環状弱シール部44によって囲繞されているから、該切込み46によって開封前の第1密封室28の密封性を損なうことはなく、袋20を開封するまで海苔16の前記不活性ガスによる湿気防止や品質保持ならびに緩衝作用による海苔16の欠損やおにぎり22の型崩れ等に対する保護効果を維持し得る。
【0027】
前記開封手段としては、例えば図6に示すように、内外のフィルム12,14の左右方向の中央に、フィルム12,14の全長に亘って開封誘導線50をハーフカット処理により形成し、その開封誘導線50の終端部となる袋20の上端縁部に、開封誘導線50に接続するV字形の切欠き部からなる開封用ノッチ52を形成するようにしてもよい。この形態の開封手段54によれば、袋20を開封する際には、開封用ノッチ52を基点として該袋20を左右に引っ張ることで、内外2枚のフィルム12,14が一度に分割されて簡単に開封することができる。また、開封用ノッチ52は、横方向シール部24の形成位置である内外のフィルム12,14の溶着部位の範囲内で形成され、第1および第2密封室28,30の密封性を損ねることがない。なお、開封用ノッチ52としては、その他、U字形,半円形,台形、その他適宜形状の切欠きや内外のフィルム12,14の重合部を貫通する直線状あるいはミシン目状の切込みであってもよい。
【0028】
そして、前述のように構成された包装体10は、内外のフィルム12,14に部分シール部32によって位置規制された海苔16を所定間隔毎に収容した連続シート状袋体からなる帯状フィルムをU字状に折り曲げて、その帯状フィルムにおける長手方向の重合端縁に連続的シールを施して横方向シール部24を形成すると共に、該フィルム中に所定間隔毎に収容した海苔16の収容位置に合わせて供給した各おにぎり22間においてフィルムの搬送方向と交差する方向にシールを施して縦方向シール部26,26を形成することで連続的に得ることができる。すなわち、実施例の包装体10は横形製袋充填機により効率的に製造が可能であり、海苔16を一定間隔で収容した連続する包装材を使用することで、包材コストが低減できると共に包装能力も向上し得る。
【0029】
(変更例)
本発明は実施例の構成に限定されず、以下のようにも変更可能である。
(1) 包装体10の開封手段としては、袋20の上下方向に引き裂き性を備えたフィルムを採用し、その袋上端部に開封用ノッチを形成したり、カットテープをフィルム裏面側に上下に周回するよう貼り付けること等、その他の密封性を損ねることなく形成できる各種の開封手段を採用することができる。
(2) 密封室28,30に封入する気体として空気を用いることができ、この場合においても、第1密封室28に封入された空気によって海苔16の防湿効果および開封時における海苔16の裂けや欠損を防止できる。また、第1密封室28と第2密封室30とに異なる種類の気体を封入する構成を採用し得る。
(3) 第1および第2密封室28,30の夫々に不活性ガスを封入するようにしたが、少なくとも海苔16が収容された第1密封室28にのみ不活性ガスを封入する構成とすればよい。このように、第1密封室28のみに不活性ガスを封入した場合であっても、海苔16とおにぎり22との双方に対して充分な緩衝効果を得ることができる。しかも、おにぎり22が収容される第2密封室30にも不活性ガスを封入して緩衝効果を得る場合に対して、ガスの使用量を節減でき、生産コストを抑制し得る。
(4) 環状弱シール部44の形状は、四角形、三角形等、必要に応じて各種形状を選択でき、また、該環状弱シール部44の内側に形成される切込み46の形状も、横長方形状に限定されることなく各種形状を選択できる。実施例では環状弱シール部44を横方向シール部24の下方の近接位置に形成したが、環状弱シール部44の上部が横方向シール部24に重なっているものでもよく、また上方に開放するコ字状のシール部の上部を横方向シール部24に重なるよう形成することで、該シール部と横方向シール部24とで環状弱シール部44を形成する構成を採用することができる。
(5) 不活性ガスを袋内に封入するものにおいては、袋20の包装材についてガスバリア性のフィルムの使用が推奨されるが、おにぎり22の如く製造から消費までの消費期限が限られたものでは、ガスバリア性のフィルムを採用するまでもなく、おにぎり22を製造後食するまでのガス封入効果を維持することができる。しかも、ガスバリア性フィルムを使用した場合に対して、包材コストも抑えることができる。
【符号の説明】
【0030】
12 外側のフィルム(包装材),14 内側のフィルム(包装材)
16 海苔,18 シート状袋体,20 袋,22 おにぎり,24 横方向シール部
26 縦方向シール部,28 第1密封室,30 第2密封室,32 部分シール部
34 折込み部,36 開封手段,38 摘み部,40 第1の開封誘導線
42 第2の開封誘導線,44 環状弱シール部,48 補助開封誘導線
54 開封手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わされた内外2枚の包装材(12,14)間にシート状の海苔(16)を収容したシート状袋体(18)からなる袋(20)内におにぎり(22)を収容した包装体であって、
前記シート状袋体(18)に載置したおにぎり(22)の上方で該シート状袋体(18)の各端縁部を重合して熱溶着され、袋(20)の左右両端縁間に亘って延在する横方向シール部(24)と、
前記おにぎり(22)を挟む左右両側で重合するシート状袋体(18)を熱溶着して形成され、前記袋(20)の底部から上端に亘って縦方向に延在すると共に前記横方向シール部(24)と交差する縦方向シール部(26,26)と、
前記袋(20)の底面となる左右両端部において上方に向けて折り込まれた折込み部(34,34)と、
前記シート状袋体(18)の両包装材(12、14)間に気体が封入されて前記シート状の海苔(16)を密封状態で収容した第1密封室(28)と、
前記シート状袋体(18)の第1密封室(28)で覆われて前記おにぎり(22)を密封状態で収容した第2密封室(30)とから構成した
ことを特徴とするおにぎりの包装体。
【請求項2】
前記シート状袋体(18)には、中央位置に収容したシート状の海苔(16)を囲むように形成した部分シール部(32)と、前記袋(20)を左右に分割可能な開封手段(36,54)とを設けた請求項1記載のおにぎりの包装体。
【請求項3】
前記開封手段(36)は、前記袋(20)の前側または後側の何れか一方側においておにぎり(22)の上方に臨むよう前記シート状袋体(18)における外側の包装材(12)の左右方向の中央に形成した摘み部(38)と、始端が該摘み部(38)に接続され、おにぎり(22)を上下方向に囲み横方向シール部(24)を縦断して終端が前記袋(20)の他方側の上端に至るよう外側の包装材(12)を非貫通状態で脆弱化した左右一対の第1の開封誘導線(40、40)と、おにぎり(22)を上下方向に囲むように内側の包装材(14)を非貫通状態で脆弱化して前記一対の第1の開封誘導線(40,40)の間に臨み、前記横方向シール部(24)を縦断して袋上端部に至るよう形成された第2の開封誘導線(42)と、前記摘み部(38)を囲繞し、内外2枚の包装材(12,14)を熱溶着した環状弱シール部(44)と、該環状弱シール部(44)の上部に接続され、前記横方向シール部(24)を縦断して袋上端部に至るよう外側の包装材(12)を非貫通状態で脆弱化した補助開封誘導線(48)とを有する請求項2記載のおにぎりの包装体。
【請求項4】
前記第2密封室(30)に気体を封入した請求項1〜3の何れか一項に記載のおにぎりの包装体。
【請求項5】
前記密封室(28,30)に封入された気体は不活性ガスである請求項1〜4の何れか一項に記載のおにぎりの包装体。
【請求項6】
前記縦方向シール部(26)は、袋(20)の底部となる折込み部(34)において包装材(12,14)が折り込まれて重合した該包装材(12,14)の表面同士が面する部位が溶着された請求項1〜5の何れか一項に記載のおにぎりの包装体。
【請求項7】
前記内側の包装材(14)は表裏両面熱溶着性フィルムとした請求項1〜6の何れか一項に記載のおにぎりの包装体。
【請求項8】
前記外側の包装材(12)は表裏両面熱溶着性フィルムとした請求項1〜7の何れか一項に記載のおにぎりの包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−264989(P2010−264989A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115899(P2009−115899)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000136387)株式会社フジキカイ (129)
【Fターム(参考)】