説明

ころ軸受

【課題】 保持器を削減することでコスト削減を実現したころ軸受を提供する。
【解決手段】 保持器がなく、内輪3に、各円錐ころ4が自転できるようにその一部を収容する凹部5が周方向に所定間隔で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円錐ころまたは円筒ころを備えたころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
円錐ころまたは円筒ころを備えたころ軸受は、周知のものであり、通常、ころを保持する保持器を有している。
【特許文献1】特開平2001−221236号公報
【特許文献2】特開平2001−254734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
保持器は、軸受回転時にころ同士の接触を防止しているが、保持器を使用することは、コスト削減という点からは好ましくないものとなっている。
【0004】
この発明の目的は、保持器を削減することでコスト削減を実現したころ軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明によるころ軸受は、外輪、内輪および両輪の間に配置された複数のころを備えているころ軸受において、保持器がなく、外輪および内輪のいずれか一方に、各ころが自転できるようにその一部を収容する凹部が周方向に所定間隔で形成されていることを特徴とするものである。
【0006】
外輪、内輪およびころは、JIS規格SUJ−2やSUS440C、SUS630あるいはSAE規格5120材などで適宜作成される。
【0007】
凹部の形状は、円錐ころまたは円筒ころを従来の外輪軌道面または内輪軌道面に沿って切断したような形状とされる。凹部は、鍛造または切削によって形成することができる。
【0008】
ころ軸受は、円錐ころ軸受とされることがあり、この場合、凹部は、内輪または外輪軌道面に、円錐ころの一部を収容可能なように横断面円弧状でかつ軸方向にテーパ状に形成される。また、ころ軸受は、円筒ころ軸受とされることがあり、この場合、凹部は、内輪または外輪軌道面に、円筒ころの一部を収容可能なように横断面円弧状に形成される。
【0009】
ころ軸受は、単列であってもよく、複列であってもよい。また、外輪および内輪のいずれか一方または両方の各端部には、ころの軸方向の移動を規制する鍔部が適宜設けられる。
【0010】
隣り合う凹部間の間隔は、できるだけ小さくすることが好ましい。保持器を使用する場合、隣り合うポケット間にある柱部の強度を確保する必要があるため、柱部の寸法に相当する分だけころの数を少なくする必要があるが、保持器をなくすことで、ころ間のすきまを小さくしてころの数を増やすことができ、このようにすることで寿命の向上が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
この発明のころ軸受によると、外輪および内輪のいずれか一方に、各ころが自転できるようにその一部を収容する凹部が周方向に所定間隔で形成されていることにより、保持器の機能であるころ同士の接触防止機能が得られるので、特に軸受低速回転用途において、保持器をなくしても軸受機能が損なわれることはなく、部品数の減少によって、コストおよび軸受重量を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。以下の説明において、左右は、図1および図3の左右をいうものとする。
【0013】
図1および図2は、この発明によるころ軸受の第1実施形態を示しており、ころ軸受(1)は、外輪(2)、内輪(3)および両輪(2)(3)の間に配置された複数の円錐ころ(4)からなり、円錐ころ(4)を保持する保持器は使用されていない。
【0014】
内輪(3)は、円錐状の外周面(11)と、右端部に設けられた大鍔部(12)と、左端部に設けられた小鍔部(13)とを有しており、さらに、図2に示すように、円錐状の外周面(11)上に所定間隔で形成された凹部(5)を有している。円錐状の外周面(11)は、従来の軌道面に相当するもので、図1に示すように、この発明においては、軌道面ではなく、凹部(5)の底面をつなぐ面(14)が内輪(3)の実質的な軌道面となっている。
【0015】
外輪(2)は、従来と同じ形状とされ、円錐状の軌道面(15)を有しており、その右端面は、内輪(3)の右端面よりも内方にあり、その左端面は、内輪(3)の左端面と面一とされている。
【0016】
凹部(5)は、円錐ころ(4)のちょうど半分である半円錐台よりも小さい円錐台状(半円錐台の一部からなる形状)とされており、横断面円弧状でかつ軸方向左方に行くにしたがって断面積が小さくなるテーパ状に形成されている。
【0017】
このころ軸受(1)によると、外輪(2)および内輪(3)のいずれか一方が他方に対して回転すると、円錐ころ(4)は、公転することはなく、凹部(5)内において自転する。この結果、外輪(2)は、この自転する円錐ころ(4)の回転方向に送られることで、内輪(3)に対して回転することができ、保持器なしで、軸受機能を発揮することができる。
【0018】
図3および図4は、この発明によるころ軸受の第2実施形態を示しており、ころ軸受(21)は、外輪(22)、内輪(23)および両輪(22)(23)の間に配置された複数の円筒ころ(24)からなり、円筒ころ(24)を保持する保持器は使用されていない。
【0019】
内輪(23)は、従来と同じ形状とされ、円筒状の外周面(31)を有している。
【0020】
外輪(22)は、円筒状内周面(32)と、その両端部に設けられた鍔部(33)とを有しており、さらに、図4に示すように、円筒状内周面(32)上に所定間隔で形成された凹部(25)を有している。円筒状の内周面(32)は、従来の軌道面に相当するもので、円筒ころ(24)の直径Dは、円筒状の内周面(32)と外輪(22)の外周面との距離dよりも大きくなっており、円筒ころ(24)は、周方向に移動(公転)できないようになっている。したがって、円筒状の内周面(32)は軌道面ではなく、凹部(25)の底面をつなぐ面(34)が外輪(22)の実質的な軌道面となっている。
【0021】
凹部(25)は、円筒ころ(24)のちょうど半分である半円柱よりも小さい円柱状(半円柱の一部からなる形状)とされており、横断面円弧状に形成されている。
【0022】
このころ軸受(21)によると、外輪(22)および内輪(23)のいずれか一方が他方に対して回転すると、円筒ころ(24)は、公転することはなく、凹部(25)内において自転する。この結果、内輪(23)は、この自転する円錐ころ(24)の回転方向に送られることで、外輪(22)に対して回転することができ、保持器なしで、軸受機能を発揮することができる。
【0023】
なお、上記において、第1実施形態では、単列の軸受(1)において内輪(3)に凹部(5)を形成する例を示し、第2実施形態では、単列の軸受(21)において外輪(22)に凹部(25)を形成する例を示したが、いずれの場合でも、外輪(2)(22)と内輪(3)(23)とを逆にすることができ、また、複列の軸受の場合であっても上記と同様にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、この発明のころ軸受の第1実施形態を示す上半部の縦断面図である。
【図2】図2は、内輪の部分斜視図である。
【図3】図3は、この発明のころ軸受の第2実施形態を示す上半部の縦断面図である。
【図4】図4は、同部分横断面図である。
【符号の説明】
【0025】
(1) ころ軸受(円錐ころ軸受)
(2) 外輪
(3) 内輪
(4) 円錐ころ
(5) 凹部
(21) ころ軸受(円筒ころ軸受)
(22) 外輪
(23) 内輪
(24) 円筒ころ
(25) 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪、内輪および両輪の間に配置された複数のころを備えているころ軸受において、保持器がなく、外輪および内輪のいずれか一方に、各ころが自転できるようにその一部を収容する凹部が周方向に所定間隔で形成されていることを特徴とするころ軸受。
【請求項2】
ころは、円錐ころであり、凹部は、円錐ころの一部を収容可能なように横断面円弧状でかつ軸方向にテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1のころ軸受。
【請求項3】
ころは、円筒ころであり、凹部は、円筒ころの一部を収容可能なように横断面円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1のころ軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−223923(P2008−223923A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64416(P2007−64416)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】