説明

ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多の治療におけるイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼの調節剤

本発明は、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害を予防的または治癒的に治療するための候補化合物をin vitroまたはin vivoでスクリーニングする方法であって、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼの発現または活性を調節する化合物の能力を決定するステップを含む方法に関し、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害を治療するための、これらの酵素のいずれかの発現または活性に対する調節剤の使用にも関する。本発明は、これらの病変をin vitroで診断またはin vitroで予後診断する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、さらには皮脂分泌過多に関連する皮膚障害を治療するための、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ(IVD)を調節する化合物の同定および使用に関する。本発明は、これらの病変をin vitroで診断またはin vitroで予後診断する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
脂漏性の脂性皮膚は、皮脂の過度の分泌および排出を特徴とする。従来、額で測定される皮脂レベルが200μg/cm2を超えると、脂性皮膚の特徴であるとみなされる。脂性皮膚は、多くの場合、落屑欠陥、ギラギラ光る顔色および厚い皮膚のきめを伴う。これらの美的障害に加えて、過剰な皮脂により、腐生細菌叢(特に、ざ瘡菌(P.acnes))の無秩序な発育が補助され、面皰および/またはざ瘡性損傷の出現が引き起こされる可能性がある。
【0003】
この皮脂腺の産生への刺激は、アンドロゲンによって誘発される。
【0004】
ざ瘡は、実際には、ホルモンによる制御下にある毛嚢脂腺濾胞の慢性疾患である。ざ瘡に対するホルモン療法は、女性に対する治療の1つの可能性であり、その目的は、皮脂腺に対するアンドロゲンの影響を予防することになっている。このような状況において、エストロゲン、抗アンドロゲン、または卵巣もしくは副腎からのアンドロゲンの産生を低減させる作用剤が一般に用いられる。ざ瘡の治療に用いられる抗アンドロゲンとしては、特に、スピロノラクトン、酢酸シプロテロンおよびフルタミドが挙げられる。しかし、これらの作用剤は、重篤化する可能性がある副作用を有する。したがって、特に、男の胎児に対して女性化の危険性があるため、どんな妊娠も絶対的に予防しなければならない。これらの作用剤は、男性患者には禁止されている。
【0005】
脂漏性皮膚炎は、脂ぎった、黄色がかった鱗屑で覆われた赤色プラークの形で存在する一般的な炎症性皮膚病であり、大体痒疹性で、脂漏性領域において顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2007/093747
【特許文献2】米国特許第4,921,844号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Yeら、1997年、Skin Pharmacol、10(5-6)、288〜97頁
【非特許文献2】Boutら、1991年、Biochim Biophys Acta、1090(1)、43〜51頁
【非特許文献3】Antonenkov、1997年、272(41)、26023〜26031頁
【非特許文献4】Schramら、PNAS、1987年、84(8)、2494〜6頁
【非特許文献5】Goldfingerら、1986年、J Pediatr.、108(1)、25〜32頁
【非特許文献6】Ferdinandusseら、2002年、Am.J.Hum Genet.70、1589〜1593頁
【非特許文献7】Lopaschukら、2003年、Circ Res. 8月8日、93(3)、e33〜7頁
【非特許文献8】Onay-Besikci Aら、2007年、Can J Physiol. Pharmacol.、85(5)、527〜35頁
【非特許文献9】Aoyamaら、1998年、The Journal of Biological Chemistry、276巻、5678〜84頁
【非特許文献10】KohlerおよびMilstein、Nature (London)、256、495〜497頁(1975)
【非特許文献11】Shindo Yら、Biochem Pharmacol.、1978年、27(23)、2683〜8頁
【非特許文献12】Venizelosら、Pediatr. Res.、1994年、36、111〜114頁
【非特許文献13】Jayasena、1999年、Clinical Chemistry 45(9)、1628〜1650頁
【非特許文献14】Xiaら、J Invest Dermatol.、1989年9月、93(3)、315〜21頁
【非特許文献15】Rosenfieldら、J. Invest. Dermatol.、1999年、112、226〜32頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、これらの疾患に対して、副作用は低減させるが、治療プロファイルは同様のものを得るために、ステロイドホルモンの作用の下流のメディエーターを同定し、調節する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本出願人は、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ(IVD)をコードする遺伝子は、表皮と比べてヒト皮脂腺において優先的に発現しており、それらの発現は、in vitroにおいて、ヒト皮脂腺細胞の初代培養物中、アンドロゲン(R1881、メチルトリエノロンとしても公知、1nM)およびPPARγリガンド(ロシグリタゾン、6-(2-メトキシエトキシメトキシ)ナフタレン-2-カルボン酸[4'-(2,4-ジオキソチアゾリジン-5-イルメチル)ビフェニル-3-イルメチル]メチルアミド、100nM)を含有する、皮脂腺細胞前駆体の分化を促進するカクテルによって調節されることを発見した。
【0010】
本出願人は、この同じ標的は、動物の薬理学モデル、ラット脂腺に存在していることも実証している。
【0011】
その結果として、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害、特に、脂性皮膚外観を予防および/または改善するために、IVD遺伝子またはそれらの発現産物を標的とすることを提案する。
【0012】
さらに、PPARアゴニストを用いた治療により、皮脂腺のサイズの大幅な減少およびアンドロゲン誘発皮脂分泌過多の低減が誘発されることも公知である(WO2007/093747)。
【0013】
提案した標的は、PPAR受容体の下流であるので、皮脂腺および皮脂排出に対して観察される影響に関与している前記標的である。
【0014】
したがって、同定された遺伝子は、PPAR調節剤として最も有効な化合物を同定、分類、および選択するために使用することができる。これに基づいて、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害を治療するためのPPARの候補調節剤をスクリーニングするためのマーカーとしての、IVD遺伝子、またはそのIVDタンパク質の使用も提案している。より詳細には、IVDの発現もしくは活性、またはそれらの遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性に対する、PPAR調節剤の能力を決定することができる。
【0015】
「ざ瘡」という用語は、ざ瘡の全ての形、すなわち、特に、尋常性ざ瘡、面皰性ざ瘡、多形ざ瘡、結節性嚢胞性ざ瘡、集簇性ざ瘡、あるいは日光性ざ瘡、薬物性ざ瘡または職業性ざ瘡などの二次ざ瘡を意味することを意図している。本出願人は、IVDの発現または活性のレベルを検出することに基づいた、in vitro、in vivoおよび臨床における診断または予後診断の方法も提案している。
【0016】
IVD
用語「IVD」は、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼを表す。
【0017】
イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼは、脂肪組織における脂質生合成経路の前駆体の一つであるロイシンの代謝の第三工程(イソバレリルCoAからメチルクロトニルCoAへの変換)を触媒するミトコンドリアマトリックスの酵素である。IVDは、アシルCoAデヒドロゲナーゼファミリーに属するフラボプロテインである(Nagaoら, 1993, J. Biol. Chem, 268(32): 24114-24)。3T3-L1線維芽細胞の脂肪細胞への変換の間で、ロイシンを使用する脂質生合成が非常に誘導され、IVD発現の増大を伴う。これらの観察は、脂肪細胞生成の分化におけるこの酵素の潜在的な役割を示唆する(Frermanら, 1983, J. Biol Chem., 258(11): 7087-93)。本明細書の文脈では、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、IVD遺伝子と称される。IVD遺伝子の欠失は、劣性常染色体疾患:イソ吉草酸血症の出現によって反映される(Tanakaら, 1966, PNAS USA. 56: 236-242)。これは、中枢神経系に毒性であるイソ吉草酸の蓄積に関与する。
【0018】
本発明の文脈では、用語「IVD遺伝子」または「IVD核酸」は、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子または核酸配列を表す。目的とされる標的は好ましくはヒト遺伝子またはその発現産物であるが、本発明は、前記酵素をコードする外因性の核酸のゲノム挿入または一過的な発現による、異種イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼを発現する細胞にも所望し得る。
【0019】
IVDのヒトcDNA配列を添付書類において再現する(配列番号1)。それは配列NM_002225(Genbank)であり、その読み取り枠は、2216塩基対を含む(Matsubaraら, 1990, J Clin Invest; 85(4): 1058-64)。
【0020】
診断への適用
本発明の対象は、個体における、ざ瘡損傷、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害の発生をin vitroで診断またはモニタリングする方法であって、個体から得た生体試料における、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ1(タンパク質の発現もしくは活性、それらの遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性を、対照個体から得た生体試料と比較するステップを含む方法に関する。
【0021】
タンパク質の発現は、ウェスタンブロット、免疫組織化学、質量分析(Maldi-TOFおよびLC/MS分析)、ラジオイムノアッセイ(RIA)またはELISAまたは当業者に公知の任意の他の方法などの方法の1つに従って、IVDタンパク質をアッセイすることにより決定することができる。別の方法、特に、IVD遺伝子の発現を測定する方法は、対応するmRNA量を測定することである。IVDタンパク質の活性をアッセイすることも想定可能である。
【0022】
診断において、「対照」個体は「健康な」個体である。
【0023】
ざ瘡損傷、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害の発生のモニタリングにおいて、「対照個体」は、異なる時間における同一個体を示し、治療の始め(T0)に相当することが好ましい。このIVDの発現もしくは活性、またはそれらの遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性の差異を測定することにより、特に、治療、特に、上記で想定したIVD調節剤を用いた治療、またはざ瘡、脂漏性皮膚炎、もしくは皮脂分泌過多に関連する皮膚障害に対する別の治療の有効性をモニタリングすることが可能になる。そのようなモニタリングにより、患者は、治療を続ける根拠が十分か、または治療を続ける必要があるかどうかについて再保証され得る。
【0024】
本発明の別の態様は、ざ瘡損傷、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害の発生に対する個体の感受性をin vitroで決定する方法であって、個体から得た生体試料における、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ1タンパク質(IVDタンパク質)の発現もしくは活性、それらの遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性を、対照個体から得た生体試料と比較するステップを含む方法に関する。
【0025】
繰り返して述べるが、IVDタンパク質の発現は、イムノアッセイ、例えばELISAアッセイ、または上記の任意の他の方法によってこのタンパク質をアッセイすることにより決定することができる。別の方法、特に、IVD遺伝子の発現を測定する方法は、上記の任意の方法によって対応するmRNA量を測定することである。IVD活性をアッセイすることも想定可能である。
【0026】
試験された個体は、この場合、皮脂分泌過多に関連する皮膚状態、脂漏性皮膚炎またはざ瘡を示していない無症候の個体である。この方法における「対照」個体は、「健康な」参照集団または個体を指す。この感受性を検出することにより、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害に伴う徴候の予防的治療および/またはモニタリングの増加を計画することが可能になる。
【0027】
これらのin vitroにおける診断方法または予後診断方法において、試験される生体試料は、任意の生体液試料または生検試料であってよい。この試料は、例えば、落屑または生検によって得られた皮膚細胞の調製物であり得ることが好ましい。この試料は皮脂であってもよい。
【0028】
スクリーニング方法
本発明の対象は、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する任意の皮膚障害を予防的かつ/または治癒的に治療するための候補化合物をin vitroまたはin vivoでスクリーニングする方法であって、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼの発現もしくは活性、またはそれらの遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性を調節する化合物の能力を決定するステップを含み、前記調節が、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する任意の皮膚障害を予防的または治癒的に治療するための化合物の有用性を示す方法である。したがって、この方法により、IVDの発現もしくは活性、またはそれらの遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性を調節できる化合物を選択することが可能になる。
【0029】
さらに特定すると、本発明の対象は、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害を予防的かつ/または治癒的に治療するための候補化合物をin vitroでスクリーニングする方法であって、
a.少なくとも2種の生体試料または反応混合物を調製するステップと、
b.試料または反応混合物の1つを、試験化合物の1つまたは複数と接触させるステップと、
c.生体試料または反応混合物において、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼタンパク質の発現もしくは活性、それらの遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性を測定するステップと、
d.b)において処理された試料または混合物において、未処理試料または未処理混合物と比較して、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼタンパク質の発現もしくは活性、それらの遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性の調節が測定される化合物を選択するステップと
を含む方法である。
【0030】
in vivoスクリーニング法は、任意の実験動物、例えばげっ歯類において行うことができる。好ましい一実施形態によると、スクリーニング法は、試験化合物を、好ましくは局所的適用によって動物に投与し、次いで場合によって安楽死によって動物を犠牲にし、表皮剥離試料を取得した後、その表皮剥離における遺伝子発現を、本明細書に記載の任意の方法によって評価することを含む。
【0031】
「調節」という用語は、酵素の発現もしくは活性、遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性に対する任意の影響、すなわち、場合によっては刺激、しかし好ましくは部分的または完全な阻害を意味することを意図している。したがって、上記のステップd)において試験される化合物は、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼタンパク質の発現もしくは活性、それらの遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性を阻害することが好ましい。試験される化合物において得られる発現の、この化合物の非存在下で行われる対照と比較した差は、25%以上から有意である。
【0032】
本明細書を通して、他に特に指定がなければ、「遺伝子の発現」という用語は、mRNAの発現量を意味するものとし、
「タンパク質の発現」という用語は、そのタンパク質の量を意味するものとし、
「タンパク質の活性」という用語は、そのタンパク質の生物活性を意味するものとし、
「プロモーターの活性」という用語は、そのプロモーターの下流にコードされるDNA配列の転写を開始させる(したがって、対応するタンパク質の合成を間接的に開始させる)そのプロモーターの能力を意味するものとする。
【0033】
試験化合物はどんな種類であってもよい。試験化合物は、天然由来であってよく、または化学合成によって作製されてもよい。これには、構造的に定義済みの化合物のライブラリー、特徴づけられていない化合物または物質、または化合物の混合物が含まれ得る。
【0034】
特に、本発明は、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害を治療するための、PPARまたはAR(アンドロゲン受容体)の候補調節剤のマーカーとしての、IVD遺伝子、またはそのタンパク質の使用を対象とする。より詳細には、IVDの発現もしくは活性、またはそれらの遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性を調節するためのPPAR調節剤またはAR調節剤の能力を決定する。この調節剤はPPARγ調節剤であることが好ましい。
【0035】
PPAR調節剤はPPARのアゴニストまたはアンタゴニストであり、アゴニストであることが好ましい。
【0036】
AR調節剤は、ARのアゴニストまたはアンタゴニストであり、アゴニストであることが好ましい。
【0037】
これらの化合物を試験し、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼの発現または活性を調節する治療的に興味深い化合物を同定するために、種々の技法を使用することができる。
【0038】
第1の実施形態によると、生体試料は、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のプロモーターの全てまたは一部に機能的に連結しているレポーター遺伝子を用いてトランスフェクトした細胞であり、上記のステップc)は、前記レポーター遺伝子の発現を測定するステップを含む。
【0039】
レポーター遺伝子は、特に、所与の基質の存在下で、CAT(クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ)、GAL(ベータガラクトシダーゼ)またはGUS(ベータグルクロニダーゼ)などの着色産物の形成をもたらす酵素をコードし得る。レポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ遺伝子またはGFP(緑色蛍光タンパク質)遺伝子であってもよい。このレポーター遺伝子によってコードされるタンパク質、またはそのタンパク質の活性のアッセイを、比色定量法、蛍光定量法または化学発光法などによって、従来の通り行う。
【0040】
第2の実施形態によると、生体試料は、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を発現している細胞であり、上記のステップc)は、前記遺伝子の発現を測定するステップを含む。
【0041】
本発明で使用される細胞はどんな種類のものであってもよい。本発明で使用される細胞は、IVD遺伝子を内因的に発現している細胞、例えば肝細胞、卵巣細胞、または、さらに良いのは皮脂腺細胞であり得る。ヒトまたは動物由来の器官、例えば包皮腺、陰核腺、あるいは皮膚の皮脂腺も使用することができる。
【0042】
本発明で使用される細胞は、好ましくはヒト、または哺乳動物のイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼをコードする異種核酸で形質転換された細胞であってもよい。
【0043】
例えば、Cos-7細胞、CHO細胞、BHK細胞、3T3細胞またはHEK293細胞などの多種多様な宿主細胞系を使用することができる。核酸は、当業者に公知の任意の方法、例えば、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、リポソーム、ウイルス、電気穿孔または微量注入によって、安定にまたは一過性にトランスフェクトすることができる。
【0044】
これらの方法において、IVD遺伝子またはレポーター遺伝子の発現は、前記遺伝子の転写レベルまたは前記遺伝子の翻訳レベルを評価することにより決定可能である。
【0045】
「遺伝子の転写レベル」という表現は、対応するmRNAの産生量を意味することを意図している。「遺伝子の翻訳レベル」という表現は、タンパク質の産生量を意味することを意図している。当業者は、対象の遺伝子のmRNAを定量的または半定量的に検出するための技法に詳しい。mRNAと、特異的なヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションに基づいた技法が最も一般的である(ノーザンブロット、RT-PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)、定量的RT-PCR(qRT-PCR)、リボヌクレアーゼ保護)。蛍光性作用剤、放射性作用剤または酵素作用剤または他のリガンド(例えばアビジン/ビオチン)などの検出標識を用いることが有利であり得る。
【0046】
特に、遺伝子の発現は、リアルタイムPCRまたはリボヌクレアーゼ保護によって測定することができる。「リボヌクレアーゼ保護」という用語は、標識プローブによる特異的ハイブリダイゼーションを用いて行うことができる、組織のポリ(A)-RNAの中での既知mRNAの検出を意味することを意図している。プローブは、探索されるメッセンジャーに相補的な、標識した(放射性)RNAである。プローブは、既知のmRNA、それをRT-PCR後にファージにクローニングしたcDNAから構築することができる。配列を探索する組織由来のポリ(A)-RNAを、液体培地中、緩やかなハイブリダイゼーション条件下で、このプローブと一緒にインキュベートする。探索されたmRNAとアンチセンスプローブとの間でRNA:RNAハイブリッドが形成される。次いで、ハイブリダイズした培地を、一本鎖RNAに特異的なリボヌクレアーゼの混合物と一緒にインキュベートし、その結果、プローブとハイブリッド形成されたもののみがこの消化に耐えられる。次いで消化産物を、除タンパクおよび再精製した後、電気泳動によって分析する。標識されたハイブリッドRNAをオートラジオグラフィーによって検出する。
【0047】
遺伝子の翻訳レベルは、例えば、前記遺伝子の産物を免疫学的にアッセイすることにより評価する。この目的で使用される抗体は、ポリクローナル型またはモノクローナル型であってよい。抗体の産生には従来の技法を必要とする。抗IVDポリクローナル抗体は、とりわけ、ウサギまたはマウスなどの動物を、酵素全体を用いて免疫することによって得られる。抗血清を取得し、次いで当業者に本来公知の方法に従って除去する。モノクローナル抗体は、とりわけ、KohlerおよびMilsteinの従来法によって得られる(Nature (London)、256、495〜497頁(1975))。モノクローナル抗体を調製するための他の方法も公知である。モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマからクローニングした核酸を発現させることによって作製される。抗体は、ファージ提示法によって、ファージの表面にV遺伝子ライブラリーを提示している典型的な繊維状ファージであるベクターに抗体cDNAを導入することによって作製することもできる(例えば、大腸菌(E.coli)に対するFUSE5)。
【0048】
免疫学的アッセイは、固相または均一相において、非限定的な例として、サンドイッチ法または競合法で、1ステップまたは2ステップで行うことができる。好ましい一実施形態によると、捕捉抗体は固相上に固定される。固相の非限定的な例として、マイクロプレート、特にポリスチレンマイクロプレート、または固体粒子もしくは固体ビーズ、または常磁性ビーズを使用することができる。
【0049】
形成された抗原/抗体複合体の存在を明らかにするために、ELISAアッセイ、ラジオイムノアッセイまたは任意の他の検出法を使用することができる。
【0050】
抗原/抗体複合体、より一般的には単離または精製された、また組換えのタンパク質(in vitroおよびin vivoで得られる)の特徴づけを、質量分析によって行うことができる。この同定は、タンパク質の酵素加水分解(一般にトリプシン)によって生成するペプチドを分析すること(質量の決定)によって可能になる。一般に、タンパク質は、酵素消化する前に、当業者に公知の方法に従って単離される。ペプチド(加水分解物の形)の分析は、そのペプチドの物理化学的性質に基づいてHPLC(ナノHPLC)によってペプチドを分離することにより行う(逆相)。このようにして分離されたペプチドの質量の決定は、ペプチドをイオン化し、質量分析を用いて(エレクトロスプレーESIモード)直接カップリングさせるか、当業者に公知のマトリックスの存在下で沈殿および結晶化した後カップリングさせるか(MALDIモードでの分析)のいずれかで行う。続いて適切なソフトウェア(例えばMascot)を使用することによってタンパク質を同定する。
【0051】
第3の実施形態によると、上記のステップa)は、各々がIVD酵素、およびその酵素の基質を含む反応混合物を調製するステップを含み、上記のステップc)は、酵素活性を測定するステップを含む。
【0052】
IVD酵素は、Cos-7細胞、CHO細胞、BHK細胞、3T3細胞またはHEK293細胞を用いて、通例の技法に従って作製することができる。IVD酵素は、細菌(例えば大腸菌(E.coli)もしくは枯草菌(B.subtilis))、酵母(例えばサッカロミセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia))などの微生物、またはSf9もしくはSf21などの昆虫細胞を用いて作製することもできる。
【0053】
酵素活性の決定は、例えば消失した基質の量を測定することによってデヒドロゲナーゼ活性を決定するステップを含むことが好ましい。
【0054】
IVDの酵素活性のアッセイについては、文献に記載されている(例えば、Beckmannら, 1981, Biochem Biophys Res Commun, 102(4): 1290-4, Hallら, 1978, Methods Enzymol, 53: 502-18またはRheadら, 1981, J Biol Chem, 256(4): 1616-24の方法を参照されたい)。
【0055】
かくして、上記Beckmannら、1981は、以下の態様でのイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼの活性の評価を記載する。
【0056】
事前に培養した脂肪細胞を、第一にPBSリン酸バッファー(10nM NaPO4, pH7.4)no
4mlで初めにすすぎ、培養プレートから回収し、ついで1000gで5分間遠心分離する。ペレットを凍結/溶解サイクルに供し、細胞と細胞下のオルガネラの膜を破壊し、酵素のデヒドロゲナーゼ活性を保存する。調製物を、0.1mMのEDTAと0.1mMのチアミンを含むKP O4バッファー(10mM, pH7.4)中に2から5mgのタンパク質/mlの濃度で懸濁し、ついで4度で45秒間ソニケーションに供し、50000gで30分間遠心分離する。次いで上清をイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼの活性のために試験する。
【0057】
イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼの活性のアッセイの原理は、それ自体ETF(Electron Transfer Flavoporotein)フラビンの還元と関連する、蛍光の減少の測定に基づく。1.5mlのインキュベーション混合物は、20mMのTris-HCl, pH8、18mMのグルコース、0.1mMのイソバレリルCoA、及び1μMのETFフラビンを含む。反応は15の嫌気的サイクルの放出で生じる;30ユニットのグルコースオキシダーゼと5ユニットのカタラーゼを加え、混合物を30度で平衡化する。5から90μgの酵素調製物を添加することにより反応を開始する。ETFフラビンは340nmで励起し、蛍光を496nmで測定する。これらの実験条件化で、蛍光の減少の速度は、時間と酵素濃度とに比例する。
【0058】
Rheadら, 1981は、その一部として、トリチウム化基質(イソ吉草酸)に対する酵素の作用に基づくイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ活性のアッセイ方法を記載する。かくして酵素の活性を、培地内に放出されるトリチウムの量の関数として測定できる。この測定は、例えば肝臓ホモジェネートといった粗細胞ホモジェネートを使用して実施できる。
【0059】
使用される反応混合物は以下のものである:トリチウム標識気質([2,3-3H]イソ吉草酸)を、0.1mlのイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ、0.2mlの蒸留水、及び0.2mlの12.5mM KPi, pH7.5と混合する。0.5mlの最終反応混合物を37℃で5分間プレインキュベートし、10μlの水中の0.05μモルの[2,3-3H]イソ吉草酸, pH4~5を添加することにより反応を開始する。(基質の最終濃度:100μM)。37℃で30分間反応を進め、40μlの0.5N塩化水素酸(HCl)によって反応を停止する。次いで混合物を0度に冷却し、アニオン交換樹脂に通す。樹脂を蒸留水ですすぎ、トリチウムを測定する。
【0060】
本明細書で定義したスクリーニング方法によって選択された化合物は、続いて他のin vitroモデルおよび/またはin vivoモデル(動物またはヒトにおける)において、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害に対するその効果について試験され得る。
【0061】
酵素の調節剤
ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害の予防的かつ/または治癒的な治療に使用する医薬品を調製するための、上記の方法の1つによって得ることができるヒトイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ酵素の調節剤の使用も、本発明の対象である。
【0062】
ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害を予防的かつ/または治癒的に治療するための方法は、このように本明細書に記載されており、前記方法は、そのような治療を必要としている患者に、治療有効量の、ヒトイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ酵素の調節剤を投与するステップを含む。
【0063】
最終的に、本発明は、脂性皮膚を美的治療するための、ヒトイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ酵素の調節剤の化粧品としての使用を対象とする。
【0064】
調節剤は酵素の阻害剤であることが好ましい。「阻害剤」という用語は、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼの酵素活性を除去または実質的に低減させる化合物または化学物質を指す。「実質的に」という用語は、少なくとも25%、好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも70%または90%の低減を示す。さらに特定すると、阻害剤は、拮抗阻害型または非拮抗阻害型の化合物などの、酵素の触媒部位と相互作用し、それを遮断する化合物であってよい。
【0065】
好ましい阻害剤は、阻害剤濃度が1μM未満、好ましくは0.1μM未満、より好ましくは0.01μM未満の溶液中で酵素と相互作用する。
【0066】
調節剤化合物は、抗イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ阻害性抗体であってよく、モノクローナル抗体であることが好ましい。そのような阻害性抗体は、およそ0.01μg/ml〜およそ100μg/ml、好ましくはおよそ1μg/ml〜およそ5μg/mlの血漿濃度を得るのに十分な量を投与することが有利である。
【0067】
調節剤化合物は、ポリペプチド、アンチセンスDNAポリヌクレオチドもしくはアンチセンスRNAポリヌクレオチド、siRNAまたはPNA(ペプチド核酸、プリン塩基およびピリミジン塩基で置換されたポリペプチド鎖、その空間的構造はDNAの空間的構造によく似ており、DNAにハイブリダイズさせることができる)であってもよい。
【0068】
調節化合物は、アプタマーであってもよい。アプタマーは、分子認識の点で、抗体の代替物となる分子のクラスである。それらは、事実上全クラスの標的分子を高い親和性および特異性で認識する能力を有するオリゴヌクレオチドである。そのようなリガンドは、TuerkおよびGold、1990年による説明の通り、ランダム配列ライブラリーにおいて行う指数関数的濃縮によるリガンドの系統的進化(systematic evolution of ligand by exponential enrichment)(SELEX)によって単離することができる。ランダム配列ライブラリーは、DNAの組合せ化学合成によって得ることができる。このライブラリーにおいて、各メンバーは直鎖状の、場合によって化学修飾された、独自配列のオリゴマーである。このクラスの分子の可能な修飾、使用および利点については、Jayasena、1999年、Clinical Chemistry 45(9)、1628〜1650頁に総説されている。
【0069】
イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼの既知の阻害剤はハイポグリシンAである。もう一つはα-ケト-メチレンシクロプロピルプロピオン酸である(Tanakaら, 1971, PNAS, 68(1): 20-24)。本発明は、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害を予防的かつ/または治癒的に治療するための、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼを阻害するそのような化合物の使用を含む。
【0070】
上記のスクリーニング方法によって同定される他の調節化合物も有用である。
【0071】
調節化合物は、薬学的に許容される担体と組み合わせて、医薬組成物中に配合される。これらの組成物は、例えば、経口的、経腸的、非経口的、または局所的に投与することができる。医薬組成物は局所的に適用することが好ましい。経口投与に関しては、医薬組成物は、放出制御するための、錠剤、ゲルカプセル、糖衣錠、シロップ、懸濁液、溶液、粉末、顆粒、エマルション、ミクロスフェアもしくはナノスフェアの懸濁液または脂質または高分子ベシクルの形であってよい。非経口投与に関しては、医薬組成物は、点滴または注射するための溶液または懸濁液の形であってよい。
【0072】
局所投与に関しては、医薬組成物は、さらに特定すると、皮膚および粘膜の治療に使用するためのものであり、軟膏、クリーム、ミルク、軟膏剤、粉末、含浸パッド、溶液、ゲル、噴霧剤、ローションまたは懸濁液の形であってよい。医薬組成物は、放出制御するための、ミクロスフェアもしくはナノスフェアの懸濁液または脂質または高分子ベシクルまたは高分子パッチまたはヒドロゲルの形であってもよい。この局所適用するための組成物は、無水の形、水性の形、またはエマルションの形であってよい。好ましい変異型において、医薬組成物は、ゲル、クリームまたはローションの形である。
【0073】
組成物は、IVD調節剤を、その組成物の全重量に対して0.001重量%〜10重量%、特に0.01重量%〜5重量%の範囲の含有量で含んでよい。
【0074】
医薬組成物は、下記のような不活性添加物またはそれら添加物の組合せも含有してよい。
湿潤剤
調味料
パラヒドロキシ安息香酸エステルなどの保存料
安定剤
水分調整剤
pH調整剤
浸透圧調節剤
乳化剤
UV-A遮断剤およびUV-B遮断剤
アルファトコフェロール、ブチルヒドロキシアニソールまたはブチルヒドロキシトルエン、スーパーオキシドジスムターゼ、ユビキノールまたはある種の金属キレート剤などの抗酸化剤
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく本発明を例示している。
【0076】
(実施例):実験データ
(実施例1)
ヒト皮脂腺およびヒト表皮におけるイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼの発現
表皮およびヒト皮脂腺の試料を、健康なヒト皮膚(女性ドナー)のリフト(lift)3つからレーザー顕微解剖によって調製した。
【0077】
IVDタンパク質をコードするメッセンジャーRNAの発現を、Applied Biosystemsによって開発されたマイクロ流体カード技術を用いた定量的RT-PCR(qRT-PCR)によって分析した。
【0078】
CtはPCRサイクルの数に相当し、それにより全ての試料に対して同じ蛍光レベルを選ぶことが可能になる。発現レベルは、各組織において、Ctおよび3人のドナーから得られた標準偏差によって表される。
【0079】
3種のハウスキーピング遺伝子(リボソーム18S RNA、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素GAPDH、ベータアクチン)の発現量によってCtを標準化した後、表皮に対する皮脂腺の平均誘発係数(I.F)によって、2つの組織間の発現差異を測定する。
【0080】
【表1】

【0081】
(実施例2)
初代培養物中のヒト皮脂腺細胞におけるイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼの発現
a.ヒト皮脂腺細胞の単離および培養
ディスパーゼの作用および双眼拡大鏡の下での皮脂腺の顕微解剖によって真皮から表皮を分離した後、健康なヒトドナー由来のリフト(lift)を用いて、Xiaら(J Invest Dermatol.、1989年9月、93(3)、315〜21頁)によって説明されている方法に従ってヒト皮脂腺細胞を培養した。
【0082】
皮脂腺を、10%のウシ胎児血清(FCS)、10ng/mlの上皮細胞増殖因子(EGF)、10-10Mのコレラ毒素(CT)、0.5μg/mlのヒドロコルチゾン(HC)、5μg/mlのインスリン(INS)、2mMのL-グルタミン(Gln)、100IU/mlのペニシリン-ストレプトマイシン(PS)を補充したDMEM-Ham's F12(3:1)培地中、マイトマイシン処理した3T3線維芽細胞からなる支持細胞層上の6ウェルプレートに播種する。
【0083】
ヒト皮脂腺細胞の最初の増殖巣は、皮脂腺を播種した3日後に現れる。
【0084】
次いで、その細胞を、PPARγアゴニストのロシグリタゾン(1μM)およびアンドロゲンR1881(10nM)の組合せに相当する皮脂生成カクテルを用いて、または担体として使用するジメチル・スルホキシド(DMSO)を用いて6日間処理する。
【0085】
b.PCR発現データ
ドナー1人に相当するヒト皮脂腺細胞の培養物において、上記の通り(実施例1)、Applied Biosystemsによって開発されたマイクロ流体カード技術を用いたqRT-PCRによって、IVDタンパク質をコードするメッセンジャーRNAの発現を分析した。
【0086】
発現レベル(Ct)を、各処理条件に対して表した。
【0087】
皮脂生成カクテルによるIVD発現の誘発を、3種のハウスキーピング遺伝子(リボソーム18S RNA、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素GAPDH、ベータアクチン)の発現量によってCtを標準化した後、DMSO対照に対する誘発係数(I.F)によって測定する。
【0088】
【表2】

【0089】
(実施例3)
ラット包皮腺におけるイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼの発現
ラット包皮腺の皮脂腺細胞の初代培養物(Rosenfieldら、J. Invest. Dermatol.、1999年、112、226〜32頁)を用いて、PPARγアゴニストとアンドロゲン受容体アゴニストの組合せなどの分化カクテルを評価した。包皮細胞を、24ウェルプレートに播種した後、10%のウシ胎児血清(FCS)、10-10Mのコレラ毒素(CT)、10-10Mのコルチゾール、5μg/mlのインスリンおよび抗生物質を含有するDMEM培地中で3日間培養する。次いでこの細胞を、血清を含まない培地(Cellgro完全培地)中で培養し、PPARγアゴニスト(ロシグリタゾン、100nM)およびアンドロゲン受容体アゴニスト(R1181、1nM)を用いて3〜9日間、2日ごとに培地を変えながら処理する。9日目にこの細胞を回収し、Affymetrix RAE230Aチップによって遺伝子発現の大規模分析を行う。
【0090】
【表3】

【0091】
(実施例4)
PPARγレセプターアゴニストで治療した後のラット皮脂腺における発現データ
材料と方法
動物:種:ラット
株:Ico:Hsd:FUZZY-fz
性:メス
齢:10週
バッチあたりの数:40(各群8匹)
処理:投与経路:局所的
化合物/バッチ:PPARγアゴニスト(ロシグリタゾン)
用量:1%
担体:アセトン(001)
継続時間:96時間
評価の方法:研究の開始時と終結時に動物を計量する。皮膚生検を採取し(ラットあたり採取される6の皮膚サンプル)、遺伝子の発現を分析する(RNA抽出、逆転写、及びリアルタイムPCR)。サンプルを4度で一晩貯蔵し、その後1Mの臭化ナトリウム(NaBr)で37℃で2時間インキュベートする。インキュベーション後、サンプルを表皮または真皮に分類する。表皮サンプルを20度で貯蔵する。これらの条件下で、皮脂腺は表皮の破片に存在する。PCRを実施し、コントロールラットまたはPPARγアゴニストで処理されたラットから由来する皮脂腺を含む表皮破片から由来するcDNAで始める:mRNAをカラムを使用して抽出し、定性分析する。mRNAの量を測定し、18S/28S比によって表す。その結果を、非処理動物(担体群)に対する相対的な誘導として表される18Sに関して標準化する。修飾Monte Carlo統計分析に基づく内部ソフトウェアを使用して統計分析が得られる。
結果
【0092】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害を予防的かつ/または治癒的に治療するための候補化合物をin vitroまたはin vivoでスクリーニングする方法であって、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ(IVD)の発現もしくは活性、またはそれらの遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性を調節する化合物の能力を決定するステップを含む方法。
【請求項2】
a.少なくとも2種の生体試料または反応混合物を調製するステップと、
b.前記試料または反応混合物の1つを、試験化合物の1つまたは複数と接触させるステップと、
c.生体試料または反応混合物において、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼタンパク質の発現もしくは活性、それらの遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性を測定するステップと、
d.b)において処理された試料または混合物において、未処理試料または未処理混合物と比較して、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼタンパク質の発現もしくは活性の調節、またはそれらの遺伝子の発現の調節、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性の調節が測定される化合物を選択するステップと
を含む、請求項1に記載の、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害を予防的かつ/または治癒的に治療するための候補化合物をin vitroでスクリーニングする方法。
【請求項3】
ステップd)において選択される化合物が、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼタンパク質の発現もしくは活性、それらの遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性を阻害することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
生体試料が、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のプロモーターの全てまたは一部に機能的に連結しているレポーター遺伝子がトランスフェクトされた細胞であること、およびステップc)が、前記レポーター遺伝子の発現を測定するステップを含むことを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
生体試料が、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を発現している細胞であること、およびステップc)が、前記遺伝子の発現を測定するステップを含むことを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
細胞が皮脂腺細胞である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
細胞が、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼをコードする異種核酸で形質転換された細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
遺伝子の発現が、前記遺伝子の転写レベルを測定することによって決定される、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
遺伝子の発現が、前記遺伝子の翻訳レベルを測定することによって決定される、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップa)が、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ酵素およびその酵素の基質をそれぞれが含む反応混合物を調製するステップを含む、ステップc)が、その酵素活性を測定するステップを含むことを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項11】
酵素活性を決定するステップが、生成した脂肪酸を抽出することによってデヒドロゲナーゼ活性を決定するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害の予防的かつ/または治癒的な治療に使用する医薬品を調製するための、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるヒトのイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ酵素の調節剤の使用。
【請求項13】
調節剤が、酵素の阻害剤である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
調節剤が、酵素の触媒部位と相互作用し、それを遮断する化合物である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
脂性皮膚を美的治療するための、ヒトのイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ酵素の調節剤の化粧品としての使用。
【請求項16】
個体におけるざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害の発生をin vitroで診断またはモニタリングする方法であって、個体から得た生体試料における、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼタンパク質の発現もしくは活性、それらの遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性を、対照個体から得た生体試料と比較するステップを含む方法。
【請求項17】
タンパク質の発現が、イムノアッセイによってそのタンパク質をアッセイすることによって決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
イムノアッセイがELISAアッセイである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
遺伝子の発現が、対応するmRNA量を測定することによって決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害の発生に対する個体の感受性をin vitroで決定する方法であって、個体から得た生体試料における、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼタンパク質の発現もしくは活性、それらの遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性を、対照個体から得た生体試料と比較するステップを含む方法。
【請求項21】
タンパク質の発現が、イムノアッセイによってそのタンパク質をアッセイすることによって決定される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
イムノアッセイがELISAアッセイまたはラジオイムノアッセイである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
遺伝子の発現が、対応するmRNA量を測定することによって決定される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害を治療するためのPPARの候補調節剤をスクリーニングするためのマーカーとしての、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ遺伝子またはイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼタンパク質の使用。
【請求項25】
イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼの発現もしくは活性、またはそれらの遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性を調節するPPAR調節剤の能力を決定するステップを含む、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
PPAR調節剤がPPARγ調節剤である、請求項24または25に記載の使用。
【請求項27】
調節剤がPPAR受容体アゴニストである、請求項24から26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
ざ瘡、脂漏性皮膚炎、または皮脂分泌過多に関連する皮膚障害を治療するためのAR(アンドロゲン受容体)の候補調節剤をスクリーニングするためのマーカーとしての、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ遺伝子、またはイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼタンパク質の使用。
【請求項29】
イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼの発現もしくは活性、またはそれらの遺伝子の発現、またはそれらのプロモーターの少なくとも1つの活性を調節するAR調節剤の能力を決定するステップを含む、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
調節剤がアンドロゲン受容体アゴニストである、請求項28および29のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2011−523039(P2011−523039A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507927(P2011−507927)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055553
【国際公開番号】WO2009/135908
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】