説明

ねじ状クラウニングドラム形状測定方法

【課題】 ねじ状クラウニングドラムの形状測定を正確かつ容易に行うことができるねじ状クラウニングドラム形状測定方法を提供する。
【解決手段】 測定対象となるねじ状クラウニングドラム2は、螺旋状に続くねじ溝2aの各周の底面が円錐形状部2a−1…を成し、かつ各周の円錐形状部を連ねた包絡線Rが円弧状となるクラウニング形状を有する。このドラム2の前記円錐形状部の傾斜角度δdを、測定治具3を用いて測定する。測定治具3は、基準面4aを有する治具本体4及び基準面4aに対する垂直方向の距離を測定する接触式の測定ゲージ5を有する。この測定治具3の基準面4aを、ドラム2の任意の円錐形状部に当て、他の任意の円錐形状部に測定ゲージ5の接触子5aを当てる。これにより、基準面4aを当てた円錐形状部と測定ゲージ5を当てた円錐形状部との平行段差Hdcを測定する。この平行段差Hdcの測定値を用いて、ねじ溝2aの円錐形状部の前記包絡線Rに対する接線からの円錐形状部の傾斜角度δdを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、テーパころ軸受のクラウニング付テーパころ等の外径面を、センタレス研削加工や超仕上げ加工する際等に用いられるねじ状クラウニングタイプドラムについて、その円錐形状部の傾斜角度及び包絡線曲率等を測定する形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9(A)(B)に示すようなテーパころ軸受用クラウニング付テーパころ1,1’は、図10及び図11に示すセンタレス研削装置30や、図12及び図13に示すような超仕上げ加工装置40によって研削加工や仕上げ加工がなされる。図9(A)(B)のテーパころ1,1’は、そのクラウニング量x,x’が互いに異なる。
センタレス研削装置30は、ねじ状回転軸ドラム31と回転砥石32との間に、クラウニング付テーパころ用ワークwをブレード33によって支持した状態で配し、ねじ状回転軸ドラム31及び砥石32を図10及び図11のように回転させ、クラウニングタイプドラム31の表面に形成された円錐形状部31aの回転作用により、図11の白抜矢示a方向にワークwを推進させながら回転する砥石32によって研削加工するものである。ドラム31はドラム軸軸受サポート部31bによって支持されている。
【0003】
図12,図13の超仕上げ加工装置40は、2本の平行なねじ状回転軸ドラム41,42の間にクラウニング付テーパころ用ワークwを配し、ワークwに固定の砥石43を当接させ、ドラム41,42を図12及び図13のように回転させ、クラウニングタイプドラム41,42の表面に形成された円錐形状部41a,42aの回転作用により、図13の白抜矢示b方向にワークwを推進させながら、砥石43によって仕上げ加工するものである。ドラム41,42はドラム軸軸受サポート部41b,42bによって支持されている。
【0004】
これらの研削加工及び仕上げ加工装置30,40においては、ワークwを支持するねじ状回転軸ドラム31,41,42が用いられる。これらドラム31,41,42の円錐形状部31a,41a,42aは、加工時にころ用ワークwの外径面に接しており、その円錐形状部の角度や包絡線曲率はワークwの外径面の頂角や加工条件によって決まる。そのため、円錐形状部31a,41a,42aの角度及び包絡線曲率を正確に作る必要がある。
【0005】
このようなドラム31,41,42は、図14及び図15に示すねじ研削盤50によって研削加工される。すなわち、このねじ研削盤50は、テーブル51上のドラム軸軸受サポート部52にドラム31(41,42)用ワークWを支持させ、このワークWの表面に研削作用面が所定角度に形成された回転砥石53を当接させ、ワークW及び回転砥石53を図14及び図15のように回転させ、かつワークWを図15の白抜矢示c方向にトラバースさせながら回転砥石53、あるいはワークWを太線矢示dのように傾動させることによって、ワークWの表面に包絡線Rに沿ってその接線に対し角度δdの円錐形状部Waを研削加工形成するものである。
【0006】
上記のように研削加工して得たねじ状クラウニング回転軸ドラム用ワークWの円錐形状部Waの包絡線Rの接線に対する円錐形状部Waの傾斜角度δdは、図16に示すように、ねじ研削盤50上で、円錐形状部Waの包絡線Rの曲率の頂点付近で、砥石53側よりゲージ60を円錐形状部Waに当て、ワークWは回転させないで、軸方向(白抜矢示e方向)に真直ぐに移動させ、その移動距離Lmとゲージ振れ量Hmとにより、ドラム円錐形状部の傾斜角度δdが、次式により求められる。
δd=tan-1(Hm/Lm)
円錐形状部Waの包絡線Rの曲率については、加工されたドラムを用いたテーパころの加工精度結果からその良否を判定する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような測定方法においては、ゲージ振れ量及び移動距離の両方を正確に測定する必要があり、測定に時間が掛かっていた。また、移動開始時や終了時にゲージ60の指示値が変化し易く、精度の良い測定ができなかった。また、測定箇所は円錐形状部の包絡線の曲率の頂点付近とする必要があるが、その頂点を見つけることは難しく、概略の頂点での測定となるため測定精度が悪かった。そしてこのように研削加工して得たドラム31(41,42)を用いて、テーパころ用ワークwをセンタレス研削した場合、ワークwの角度(頂角)が狙い角度とずれ、あるいは超仕上げ加工した場合、ワークwと砥石43との悪い接触状態により、ワークwの表面の所定の仕上精度が得られず、ねじ研削盤50にて再度ドラム31(41,42)の円錐形状部角度δdの修正加工をする必要があり、多くの工数と時間を要していた。さらに、円錐形状部Waの包絡線Rの曲率については、そのドラムを用いたテーパころの加工精度(クラウニング量)が悪い場合、ねじ研削盤にて再度ドラムの円錐形状部の包絡線曲率の修正加工をする必要があり、多くの工数と時間が掛かっていた。
【0008】
この発明の目的は、ねじ状クラウニングドラムの形状測定を正確かつ容易に行うことができるねじ状クラウニングドラム形状測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明における第1の発明に係るねじ状クラウニングドラム形状測定方法は、螺旋状に続くねじ溝の各周の底面が円錐形状部を成し、かつ各周の円錐形状部を連ねた包絡線が円弧状であるクラウニング形状のねじ状クラウニングドラムにおける、前記円錐形状部の傾斜角度を測定する形状測定方法であって、任意の円錐形状部から他の任意の円錐形状部の一点までの平行段差を測定し、この平行段差の測定値を用いて、ねじ溝の円錐形状部の前記包絡線に対する接線からの円錐形状部の傾斜角度を求めることを特徴とする。
この形状測定方法によれば、一つの円錐形状部から他の円錐形状部の一点までの平行段差の測定値を用いて、ねじ溝の円錐形状部の傾斜角度を求めるから、正確にかつ容易に、円錐形状部の傾斜角度を測定することができる。
【0010】
この発明における第2の発明に係るねじ状クラウニングドラム形状測定方法は、螺旋状に続くねじ溝の各周の底面が円錐形状部を成し、円錐形状部間に鍔部を有し、かつ各周の円錐形状部を連ねた包絡線が円弧状であるクラウニング形状のねじ状クラウニングドラムにおける、前記円錐形状部の傾斜角度を測定する形状測定方法であって、基準面を有する治具本体及び前記基準面に対する垂直方向の距離を測定する接触式の測定ゲージを備えた測定治具を用いる。前記ねじ状ドラムの任意の円錐形状部に前記測定治具の前記基準面を当てかつ鍔部に側端面を当て、他の任意の円錐形状部に前記測定ゲージの接触子を当てることにより、前記基準面を当てた円錐形状部と測定ゲージを当てた円錐形状部の一点との平行段差を測定し、この平行段差の測定値を用いて、ねじ溝の円錐形状部の前記包絡線に対する接線からの円錐形状部の傾斜角度を求めることを特徴とする。
この形状測定方法によれば、測定ゲージを有する測定治具を用い、測定治具の基準面を一つの円錐形状部に当て、他の円錐形状部に測定ゲージを当て、一つの円錐形状部から他の円錐形状部の測定点までの平行段差を測定するため、正確かつ容易に、円錐形状部の円錐形状部の傾斜角度を求めることができる。上記ドラムはクラウニングを有するため、測定ゲージの位置によって平行段差が変化するが、測定ゲージを有する測定治具をドラムの鍔部に当てるため、測定ゲージの位置が常に一定となる。そのため、測定位置の違いによる平行段差の変化が生じず、正確に平行段差を測定することができる。したがって、平行段差から求める円錐形状部の傾斜角度が正確に求まる。
【0011】
前記測定治具の前記基準面及び測定ゲージを各円錐形状部に当てて測定ゲージの測定値を読み取るときに、治具本体または測定ゲージを、これら治具本体または測定ゲージが接触する箇所におけるねじ状ドラムの円周方向に移動させて得られる測定値の最大値を、求める平行段差の測定値とするようにしても良い。
測定ゲージの当て方が不正確な場合、測定値は低い値となるため、上記のように最大値を測定値とすることで、平行段差を正確に読み取ることができる。
【0012】
前記測定治具は、治具本体における前記鍔部と接する部分を、前記基準面と平行な断面において、尖り形状、または円弧状断面形状としても良い。
前記ドラムの鍔部は、ねじのリードによってドラム軸心に対して傾いているため、治具本体の鍔部と接する部分がドラム軸心に垂直な平面であると、治具本体の幅方向の中心が鍔部に当たらない。上記のように尖り形状または円弧状断面形状とすることで、鍔部のリードによる傾きに係わらず、治具本体の幅方向の中心を鍔部に当てることができ、正確な測定ゲージ位置を確保することができる。
【0013】
第2の発明において、前記ねじ状クラウニングドラムの前記円錐形状部の包絡線における曲率の最大値付近と最小値付近の円錐形状部平行段差が等しくなる、ねじ状ドラムの各周の円錐形状部を連ねた円弧状包絡線を成す、前記円錐形状部の一点からの寸法位置を測定点としても良い。
このように、曲率の最大値付近と最小値付近の円錐形状部平行段差が等しくなる位置で測定することにより、円錐形状部の包絡線の曲率半径に影響されずに、円錐形状部の傾斜角度を測定することができる。
【0014】
第2の発明において、前記測定ゲージの測定子を接触させる測定点位置の、各周の円錐形状部を連ねた円弧状包絡線を成す、前記円錐形状部の一点からの距離を、ねじ溝のリードの略1/2としても良い。
このように、測定ゲージによる測定位置、つまり測定ゲージ位置寸法をねじ溝のリードの略1/2とすることにより、上記と同様に、円錐形状部の包絡線曲率に影響されずに、円錐形状部の包絡線の接線に対する傾斜角度を測定することができる。
このように測定ゲージ位置寸法をねじ溝のリードの略1/2とする場合、前記円錐形状部の平行段差の設定値として、(ねじ溝のリード)×sin(円錐形状部設定角度)の値を用いても良い。これによれば、より円錐形状部の包絡線の曲率半径に影響されずに、円錐形状部の包絡線の接線に対する傾斜角度に相当する前記円錐形状部の平行段差の設定値を簡単に設定することができる。
【0015】
この発明における第3の発明に係るねじ状クラウニングドラム形状測定方法は、螺旋状に続くねじ溝の各周の底面が円錐形状部を成し、円錐形状部間に鍔部があり、かつ各周の円錐形状部を連ねた包絡線が円弧状であるクラウニング形状のねじ状クラウニングドラムにおける、前記包絡線の曲率または曲率半径を求めるねじ状クラウニングドラム形状測定方法であって、各周の円錐形状部を連ねた円弧状包絡線を成す、前記円錐形状部の一点からの距離が異なる2箇所の測定点につき、一つの円錐形状部から他の円錐形状部の測定点までの前記平行段差を測定し、前記2箇所の測定点間の距離と、これら2箇所の前記平行段差の測定値の差から前記包絡線の曲率または曲率半径を求めることを特徴とする。
この方法によれば、前記円錐形状部の一点からの距離が異なる2箇所の測定点間の距離と、これら2箇所の前記平行段差の測定値の差から包絡線の曲率を求めるようにしているから、簡単かつ正確に、包絡線の曲率や曲率半径が求められる。
【0016】
第3の発明において、前記鍔部に当てる鍔部接触面及び基準面を有する治具本体と、前記基準面に対する垂直方向の距離を測定する接触式の測定ゲージとを備えた測定治具を用い、前記円錐形状部に治具本体の前記基準面を当てかつ鍔部に前記鍔部接触面を当て、他の円錐形状部に測定ゲージの接触子を当てることにより、前記一つの円錐形状部から測定点までの平行段差を測定するようにしても良い。
この方法によれば、上記測定ゲージによって、一つの円錐形状部から測定点までの平行段差を簡易かつ正確に測定することができるから、前記2箇所の前記平行段差の測定値の差も簡易かつ正確に求められ、これによって、包絡線の曲率がより簡単かつ正確に求められる。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明に係るねじ状クラウニングドラム形状測定方法は、螺旋状に続くねじ溝の各周の底面が円錐形状部を成し、かつ各周の円錐形状部を連ねた包絡線が円弧状であるクラウニング形状のねじ状クラウニングドラムにおける、前記円錐形状部の傾斜角度を測定する形状測定方法であって、任意の円錐形状部から他の任意の円錐形状部までの平行段差を測定し、この平行段差の測定値を用いて、ねじ溝の円錐形状部の前記包絡線に対する接線からの円錐形状部の傾斜角度を求めるようにしたため、円錐形状部の平行段差を正確かつ容易に測定することができ、その結果、所定の演算式等によって、ねじ状ドラムの円錐形状部の傾斜角度を正確かつ容易に求めることができ、ねじ状ドラムを精度良く、効率的に加工することができる。したがって、このねじ状ドラムを用いてテーパころ軸受用のテーパころ等を生産する場合、精度良く効率的な生産が可能とされ、テーパころ軸受等の信頼性が向上する。
【0018】
第2の発明に係るねじ状クラウニングドラム形状測定方法は、螺旋状に続くねじ溝の各周の底面が円錐形状部を成し、円錐形状部間に鍔部を有し、かつ各周の円錐形状部を連ねた包絡線が円弧状であるクラウニング形状のねじ状クラウニングドラムにおける、前記円錐形状部の傾斜角度を測定する形状測定方法であって、基準面を有する治具本体及び前記基準面に対する垂直方向の距離を測定する接触式の測定ゲージを備えた測定治具を用い、前記ねじ状ドラムの任意の円錐形状部に前記測定治具の前記基準面を当てかつ鍔部に側端面を当て、他の任意の円錐形状部に前記測定ゲージの接触子を当てることにより、前記基準面を当てた円錐形状部と測定ゲージを当てた円錐形状部との平行段差を測定し、この平行段差の測定値を用いて、ねじ溝の円錐形状部の前記包絡線に対する接線からの円錐形状部の傾斜角度を求めるようにしたため、円錐形状部の平行段差をより簡単かつ正確に測定することができ、これによって円錐形状部の傾斜角度をより一層正確に求めることができる。
【0019】
第3の発明に係るねじ状クラウニングドラム形状測定方法は、螺旋状に続くねじ溝の各周の底面が円錐形状部を成し、円錐形状部間に鍔部があり、かつ各周の円錐形状部を連ねた包絡線が円弧状であるクラウニング形状のねじ状クラウニングドラムにおける、前記包絡線の曲率または曲率半径を求めるねじ状クラウニングドラム形状測定方法であって、各周の円錐形状部を連ねた円弧状包絡線を成す、前記円錐形状部の一点からの距離が異なる2箇所の測定点につき、一つの円錐形状部から他の円錐形状部の測定点までの前記平行段差を測定し、前記2箇所の測定点間の距離と、これら2箇所の前記平行段差の測定値の差から前記包絡線の曲率または曲率半径を求めるようにしたため、円錐形状部の前記2箇所の平行段差を正確かつ容易に測定することができ、その結果、所定の演算式等によって、ねじ状ドラムの円錐形状部傾斜角度、及び包絡線曲率を正確かつ容易に求めることができて、ねじ状ドラムを精度良く、効率的に加工することができる。したがって、このねじ状ドラムを用いてテーパころ軸受用のテーパころ等を生産する場合、精度良く効率的な生産が可能とされ、テーパころ軸受等の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の一実施形態を図1ないし図4と共に説明する。測定対象となるねじ状クラウニングドラム2は、螺旋状に続くねじ溝2aの各周の底面が円錐形状部2a−1,2,3…を成し、かつ各周の円錐形状部2a−1,2,3…を連ねた包絡線Rが円弧状とされたものであり、各円錐形状部2a−1,2,3…間には鍔部2bが設けられている。ねじ溝2aのリードLdcは、包絡線Rに沿う円弧上の寸法で示す。
各円錐形状部の2a−1…の包絡線Rに対する接線からの傾斜角度δd(図2)は、図1に示す測定治具3を用いて求める。なお、図1では、便宜上、傾斜角度δdはドラム軸心Lに対する角度として示している。
この測定治具3は、底面となる基準面4aを有する治具本体4、及びこの治具本体4に取付けられて前記基準面4aに対する垂直方向の距離を測定する接触式の測定ゲージ5を備える。治具本体3は、上記基準面4aの他に、この基準面4aに沿う方向の位置決め基準となる側端面4bを有している。
測定ゲージ5は電気マイクロメータ等からなる。測定ゲージ5は、ロッド状のケースの一端から接触子5aが突没自在に突出し、この接触子5aの変位を内蔵の差動トランス等で測定するものである。測定ゲージ5は、その検出出力を表示部5bの揺動指針の振れ量として表示する。
【0021】
測定に当たっては、測定治具3を平坦面に置き、治具本体4の基準面4a及び測定ゲージ5の接触子5aを平坦面に当て、測定ゲージ5のゼロ点を出した後、図1に示すように、治具本体4の側端面4bを鍔部2bに当てると共に、基準面4aを円錐形状部2a−3の表面に当て、隣接する円錐形状部2a−2に接触子5aを当てる。このときの、接触子5aの基準面4aに対する変位量を測定ゲージ5の表示部5bから読み取り、これを円錐形状部2a−2,2a−3間の平行段差Hdcとする。
【0022】
なお、この測定に際しては、治具本体4または測定ゲージ5を、ねじ状ドラム2の円周方向に振りながら測定し、測定ゲージ5の読み値の最大値を平行段差Hdcとすることが好ましい。測定ゲージ5の当て方が不正確な場合、測定値は低い値となるため、上記のように最大値を測定値とすることで、平行段差Hdcを正確に求めることができる。
【0023】
このように平行段差Hdcを測定することにより、円錐形状部2a−3の傾斜角度δdを、次のように所定の計算式による計算で求めることができる。
すなわち、治具本体4の側端面4bから接触子5aの接触点(測定位置)Pまでの、基準面4aに沿う方向の距離(以下「測定ゲージ位置寸法」と称す)Asと、円錐形状部2a−2,2a−3間の平行段差Hdcとにより、円錐形状部2a−3の傾斜角度δdは、次式(1−1)により求められる。
【0024】
δd= sin -1 〔{A・C−B・√(A2 +B2 −C2 )}/(A2 +B2 )〕
……(1−1)
ここで、A=cos (αLc/2)+sin (αLc/2)・tan αLc
……(1−1−1) B=sin (αLc/2)−cos (αLc/2)・tan αLc
……(1−1−2) C=(Hdc+Ap・tan αLc)/〔Rc・√{2・(1−cos αLc
)}〕 ……(1−1−3) αLc(radian)=Ldc/Rc ……(1−1−4) Ap=As−Ab ……(1−1−5) Ab=Hts/cos θts・sin (δd−θts) ……(1−1−6) Ldc:ねじ溝のリード
Rc:包絡線の曲率半径
As:測定ゲージ位置寸法
Hts:鍔部の高さ
θts:包絡線の法線と鍔部の成す角度
なお、ねじ溝のリードLdcは、設計値として定められた値であり、包絡線Rに沿った円弧上の寸法を用いる。
【0025】
また、円錐形状部の傾斜角度δdが与えられた場合の平行段差Hdcは、次式(1−2)で求めることができる。
Hdc=Rc・ √{2・(1−cos αLc) }・ 〔sin {δd −( αLc/2) }
+cos {θd−( Hdc/2) }・ tan Hdc〕−Ap・tan αLc
……(1−2)
【0026】
図1において、円錐形状部を連ねた円弧状包絡線の基準点を円錐形状部と鍔部の交点Sとしたが、図17に示すように、鍔部の先端(点T)から円錐形状部への法線と円錐形状部との交点Sb等の、円錐形状部の決められた任意の一点を前記包絡線の基準点としてもよい。
今、図17に示す、鍔部の先端(点T)から円錐形状部への法線と円錐形状部との交点Sbを前記包絡線の基準点とする場合、点Sbにおける包絡線との接線eと円錐形状部の成す傾斜角度δd2(基準点Sb)は、図1における傾斜角度δd(基準点S)に対し、次式に示すように、角度βだけ補正した角度となる。
δd2(基準点Sb)=δd(基準点S)+β
ここで、βは、円錐形状部を連ねた円弧状包絡線の点Sにおける法線と点Sbにおける法線との成す角度で、次式で求められる。
β=sin-1〔{(Hts/cosθts)・sin(δd−θts)・cosδd}/Rc〕
【0027】
詳細については後に説明するが、要点を先に列挙すると、この測定方法において、次のように測定することができる。
【0028】
図4(A),(B)に示すように、測定治具3の端面4bにおけるドラム鍔部2bとの接触箇所4baを、同図(A)の尖り形状、または同図(B)の円弧状断面形状とすることで、測定治具3の中央が鍔部2bと接触し、測定ゲージ5の正確な位置を確保することができる。
なお、ドラム径が大きく、ドラム鍔部2bの傾き角(リード角)が小さい場合は、図4(C)に示すように、測定治具3の真っ直ぐな端面4bをドラム鍔部2bと接触させ、測定治具3をドラム鍔部2bの傾き角(リード角)だけ傾けて測定してもよい。
【0029】
図1のドラム2において、包絡線Rの曲率半径Rcの影響を無視できる測定ゲージ位置寸法Apがあり、それぞれの基準円錐形状部の傾斜角度において、包絡線Rの曲率範囲の最大付近と最小付近の平行段差Hdcが等しくなる測定ゲージ位置寸法Apを求め、その寸法Apの位置で測定することにより、包絡線Rの曲率半径Rcに影響されずに傾斜角度δdを求めることができる。
【0030】
測定ゲージ位置寸法ApをリードLdcの1/2にすることにより、包絡線Rの曲率半径Rcに影響されずに傾斜角度δd を求めることができる。
【0031】
測定ゲージ位置寸法ApをリードLdcの1/2にすることにより、円錐形状部傾斜角度設定用の平行段差Hdcとして、リード×sin δd とすることができる。
【0032】
隣り合った円錐形状部ではなく、図5のように、離れた円錐形状部を測定することによっても、後に段落〔0051〕に示す式(1−3)及び式(1−4)にて、傾斜角度δd 及び平行段差Hdcを求めることができる。
【0033】
図7、図8のように、測定治具3のゲージ側とは反対側の面を鍔2bに当てて測定する方法の場合、後に段落〔0052〕に示す式(1−5)及び式(1−6)にて、傾斜角度δd 及び平行段差Hdcを求めることができる。
【0034】
図1に示す測定を、測定ゲージ位置寸法Apが異なる2箇所で行い、得られた平行段差Hdc1,Hdc2と、測定ゲージ位置寸法Ap1,Ap2より、後に段落〔0059〕に示す式(4−3)にて、包絡線Rの曲率半径Rcを、また与えられた曲率半径Rcより、後に段落〔0060〕に示す式(4−4)にて、設定平行段差Hdcの差Hdc1−Hdc2を求めることができる。
【0035】
以下、詳細な解析例を説明する。クラウニングドラム2は、クラウニングを有しないドラムであるストレートドラムと異なり、測定ゲージ5の位置により、この測定ゲージ5が当たる位置のドラム2の傾斜角度が異なるため、正確な傾斜角度が得られないことが分かる。
【0036】
このクラウニングドラム2は、ねじ溝2aの円錐形状部2a−1,…の包絡線Rが円弧形状であり、測定ゲージ5の位置よって平行段差Hdcは変化する。そのため、測定ゲージ5の位置を一定にする必要がある。そこで、図1に示すように、測定治具3の治具本体4の側端面4bを鍔部2bに当て、測定ゲージ5の位置を一定にした場合の平行段差Hdcを求める。
【0037】
この場合に、各点を次のように定める。
点P:測定点
点S:治具本体側の基準点。すなわち、治具本体4側のねじ溝2a(傾斜角度:δd)において、鍔部2bの側面とねじ溝底面である円錐形状部(図1では2a−3)の表面とが交わる点。この点Sは、包絡線R(曲率半径Rc)上の点である。
点Sa:測定ゲージ側の基準点。すなわち、測定ゲージ5側の溝ねじ溝2a(傾斜角度:δd +αLc)において、鍔部2bの側面とねじ溝底面である円錐形状部(図1では2a−2)の表面とが交わる点。この点Saも、包絡線R(曲率半径Rc)上の点である。 点C:基準の傾斜角度δdと平行な、点Saを通る直線と、それに垂直な点Sを通る直線との交点。
【0038】
上記傾斜角度δdは、点Sでの包絡線Rの接線に対して円錐形状部がなす角度(ドラム軸心Lを含む平面上における角度)である。
角度αLcは、円弧1リード分のドラム角変化角度、つまり1リードずれたねじ溝2aの円錐形状部間の、ドラム軸心Lに対する傾斜角度δdの変化分角度である。
【0039】
この変化角度αLcは、包絡線R(曲率半径Rc)の曲率中心と点Sを結んだ直線と、その中心と点Saを結んだ直線とのなす角度であり、
αLc(radian)=Ldc/Rc …(2−1)
【0040】
△SSaCにおいて、線分SSa、SC及びSaCの長さは、それぞれ次式で表される。
SSa=√{(Rc・sin αLc)2 +(Rc−Rc・cos αLc)2
=Rc・√{2・(1−cos αLc)} …(2−2)
SC=Hdc0=SSa・sin ∠SSaC=SSa・sin (δd −αLc/2)
…(2−3)
SaC=SSa・cos (δd −αLc/2) …(2−4)
【0041】
基準点Sから角度δd方向に寸法Apだけずれた測定点Pの平行段差Hdcは、
Hdc=Hdc0+(SaC−Ap)・tan αLc …(2−5)
=Rc・√{2・(1−cos αLc)}・sin {δd −(αLc/2)}
+Rc・√{2・(1−cos αLc)}・cos {δd −(αLc/2)
}・tan αLc−Ap・tan αLc
=Rc・√{2・(1−cos αLc)}・〔sin {δd −(αLc/2)}
+cos {δd −(αLc/2)}・tan αLc〕−Ap・tan αLc
…(2−6)
【0042】
Hdc0は、式(2−3)より、傾斜角度δd、リードLdc、包絡線R(曲率半径Rc)により決まるが、Hdcは、式(2−6)より、測定ゲージ位置寸法Apの値により変化する。すなわち、ねじ溝2aのどの位置に測定ゲージ5の接触子5aを当てるかにより、Hdcの値は変化することが分かる。
【0043】
また、測定値Hdcから傾斜角度δdは、次のように求められる。
式(2−6)より、
sin {δd −(αLc/2)}+cos {δd −(αLc/2)}・tan αLc
=(Hdc+Ap・tan αLc)/〔Rc・√{2・(1−cos αLc)}〕
sin δd ・cos (αLc/2)−cos δd ・sin (αLc/2)
+{cos δd ・cos (αLc/2)+sin δd ・sin (αLc/2)}
・tan αLc
=(Hdc+Ap・tan αLc)/〔Rc・√{2・(1−cos αLc)}〕
sin δd ・{cos (αLc/2)+sin (αLc/2)・tan αLc}
−cos δd ・{sin (αLc/2)−cos (αLc/2)・tan αLc}
=(Hdc+Ap・tan αLc)/〔Rc・√{2・(1−cos αLc}〕
A・sin δd −B・cos δd =C
【0044】
ここで、A=cos (αLc/2)+sin (αLc/2)・tan αLc
…(2−7a)
B=sin (αLc/2)−cos (αLc/2)・tan αLc
…(2−7b)
C=(Hdc+Ap・tan αLc)/〔Rc・√{2・(1−cos α
Lc)}〕 …(2−7c)
A・sin δd −B・cos δd =B・√(1−sin2δd)
【0045】
両辺を2乗し、
2 ・sin2δd−2・A・C・sin δd +C2 =B2 ・(1−sin2δd )
(A2 +B2 )・sin 2δd −2・A・C・sin δd +C2 −B2 =0
sin δd =〔A・C±√{A2 ・C2 −(A2 +B2 )・(C2 −B2 )}〕
/(A2 +B2
=〔A・C±B・√{A2 +B2 −C2 }〕/(A2 +B2
…(2−8)
複号は、計算結果より、(−)を採用し
sin δd ={A・C−B・√(A2 +B2 −c2 )}/(A2 +B2
…(2−9)
ここで、A、B、Cは、それぞれ式(2−7a)、(2−7b)、(2−7c)に示された値である。
式(2−9)から、平行段差Hdcの測定値により、傾斜角度δdを求めることができる。
すなわち、
δd =sin-1〔{A・C−B・√(A2 +B2 −C2 )}/(A2 +B2 )〕
である。
【0046】
上記方法による平行段差Hdcの測定は、基準面4aを円錐形状部2a−3の表面に当てた上で隣接する円錐形状部2a−2に接触子5aを当てるだけでなされるから、その操作は容易である。この平行段差Hdcの測定に際しては、治具本体4または測定ゲージ5を、ねじ状ドラム2の円周方向に振りながら測定し、その測定値の最大値を平行段差Hdcとするようにすれば、この最大値はねじ溝2aの表面の接線位置での測定値に相当することになるから、得られた平行段差値Hdはより一層正確なものとなる。
【0047】
図3(A)〜(D)に、式(2−6)による各条件における測定ゲージ位置寸法Apと平行段差Hdcとの関係の計算例を示す。比較のために、ストレートドラムの場合の平行段差Hd=Ld・sin δd(数式1)の計算値(一定値)も図示した。図3(A)〜(D)より 、ある傾斜角度δdにおいて、測定ゲージ位置寸法ApをリードLdcのほぼ半分にすることにより、包絡線Rの曲率半径Rcに関係なく、平行段差Hdcが一定になることが分かる。
【0048】
それぞれの条件(Ldc、δd)において、式(2−6)より、Hdc(Rc40000 )=Hdc(Rc5000)となる測定ゲージ位置寸法Apを求めた結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

表1に示すように、測定ゲージ位置寸法Apは、ほぼリードLdcの半分である。したがって、測定ゲージ位置寸法ApをリードLdcの半分とすることにより、包絡線Rの曲率半径Rcに影響されない平行段差Hdcを測定できる。
【0050】
傾斜角度δdと平行段差Hdc(Ap=Ldc/2)の関係の計算例を表2に示す。
【0051】
【表2】

これにより、測定ゲージ位置寸法ApをリードLdcの半分とした時の平行段差Hdc(Ap=Ldc/2)とHd(=Ld・sin δd)の差は小さく、Hdc(Ap=Ldc/2)の設定値としてHd(=Ld・sin δd)の値を用いてもよい。
【0052】
図4に示すように、上記測定において、測定治具3の治具本体4の側端面4bにおける鍔部2bに接する部分4baは、基準面4aと平行な断面において、同図(A)のように尖り形状とするか、または同図(B)のように円弧状断面形状としてもよい。
これによって、測定治具3の中央部が鍔部2bの立上り面と接触し、正確な測定ゲージ5の位置を確保することができる。
すなわち、平行段差の測定では、治具本体4が当る鍔部2bはリード角分だけ傾いているため、治具本体4の当り面が紙面に直角の場合、治具本体4の端が鍔部2bと当り、治具本体4の中央が鍔部2bに当らず、図1における寸法Asが正確な値とならない。そのため、図4(A)に示すように接触部分4baの先端を尖り形状とし、治具本体4の中央で鍔部2bと当るようにし、測定ゲージ5を振りながら最大値を測定する方法がよい。実際には、先端を尖らせると、摩耗やキズの点で支障が生じることがあり、そのため、図4(B)に示すように円弧状断面形状4baとするのがよい。
【0053】
図5及び図6は、n個離れた円錐形状部(図では、円錐形状部2a−1と円錐形状部2a−3)間で測定する場合の測定方法を示す。この場合、測定結果に基づき、式(1−3)、及び式(1−4)にて、円錐形状部傾斜角度δd及び平行段差Hdcを求めることができる。
δd=sin -1〔{A・C−B・√(A2 +B2 −C2 )}/(A2 +B2 )〕
……(1−3)
ここで、A=cos (n・αLc/2)+sin (n・αLc/2)・tan(n・αLc) ……(1−3−1) B=sin (n・αLc/2)−cos (n・αLc/2)・tan(n・αLc) ……(1−3−2) C=(Hdc+Ap・tan(n・αLc) )
/〔Rc・√{2・(1−cos(n・αLc) )}〕
……(1−3−3) n:基準円錐形状部から測定ゲージ5の当たる円錐形状部2aが何個目かを表す。
Hdc=Rc・√{2・(1−cos(n・αLc))}
・〔sin {δd−(n・αLc/2)}+cos {δd−(n・αLc/2)} ・tan (n・αLc)〕−Ap・tan (n・αLc) ……(1−4)
【0054】
図7及び図8は、測定治具3の測定ゲージ5側とは反対の端面4cを鍔部2bに当てて測定する方法を示す。この場合、測定結果に基づき、式(1−5)、及び式(1−6)にて、円錐形状部傾斜角度δd及び平行段差Hdcを求めることができる。
δd=sin -1〔{A・C+B・√(A2 +B2 −C2 )}/(A2 +B2 )〕
……(1−5)
ここで、A=cos (αLc/2)+sin (αLc/2)・tan(αLc)
……(1−5−1) B=sin (αLc/2)−cos (αLc/2)・tan(αLc)
……(1−5−2) C=(Hdc−Ap・tan(n・αLc) )/〔Rc・√{2
・(1−cos(αLc) )}〕 ……(1−5−3) Hdc=Rc・√{2・(1−cos(αLc))}
・〔sin {δd+(αLc/2)}−cos {δd+(αLc/2)}
・tan (αLc)〕+Ap・tan (αLc) ……(1−6)
【0055】
この場合の円錐形状部δdと平行段差Hdcとの関係を解析する。
△SSaCにおいて、線分SSa,SaC,及びSCは、次式(7−1)、(7−2)、(7−3)で表される。
SSa=√{(Rc・sin αLc)2 +(Rc−Rc・cos αLc)2
=Rc・√{2・(1−cos αLc)} ……(7−1)
SaC=Hdc0=SSa・sin ∠CSSa=SSa・sin (δd+αLc/2)
……(7−2)
SC=SSa・cos (δd+αLc/2) ……(7−3)
【0056】
基準点Sから傾斜角度δd方向にApだけずれた測定位置の平行段差Hdcは、次式(7−4)で表される。
Hdc=Hdc0+(Ap−SC)・tan αLc
=Rc・√{2・(1−cos αLc)}・sin {δd+(αLc/2)}
−Rc・√{2・(1−cos αLc)}・cos {δd+(αLc/2)}
・tan αLc+Ap・tan αLc
=Rc・√{2・(1−cos αLc)}・〔 sin {δd+(αLc/2)}
−cos {δd+(αLc/2)}・tan αLc〕+Ap・tan αLc
……(7−5)
【0057】
また、測定値Hdcから傾斜角度δd は、上記の式(7−5)より、次のように展開して求められる。
sin {δd+(αLc/2)}−cos {δd+(αLc/2)}・tan αLc
=(Hdc−Ap・tan αLc)/〔Rc・√{2・(1−cos αLc)}〕
sin δd・cos (αLc/2)+cos δd・sin (αLc/2)
−{cos δd・cos (αLc/2)−sin δd・sin (αLc/2)}
・tan αLc
=(Hdc−Ap・tan αLc)/〔Rc・√{2・(1−cos αLc)}〕
sin δd・{cos (αLc/2)+sin (αLc/2)・tan αLc}
+cos δd・{sin (αLc/2)−cos (αLc/2)・tan αLc}
=(Hdc−Ap・tan αLc)/〔Rc・√{2・(1−cos αLc)}〕
A・sin δd+B・cos δd=C
ここで、A=cos (αLc/2)+sin (αLc/2)・tan αLc
……(7−6a) B=sin (αLc/2)−cos (αLc/2)・tan αLc
……(7−6b) C=(Hdc−Ap・tan αLc)/〔Rc・√{2・(1−cos αLc )}〕 ……(7−6c) A・sin δd−C=−B・cos δd=−B・√(1−sin 2δd)
【0058】
両辺を2乗し、
2 ・sin 2 δd−2・A・C・sin δd+C2 =B2 ・(1−sin 2 δd)
(A2 +B2 )・sin 2 δd−2・A・C・sin δd+C2 −B2 =0
sin δd=〔A・C±√{A2 ・C2 −(A2 +B2 )・(C2 −B2 )}〕
/(A2 +B2
=〔A・C±B・√{A2 +B2 −C2 }〕/(A2 +B2
……(7−7)
【0059】
複号は、計算結果より、(+)を採用し、
sin δd={A・C+B・√(A2 +B2 −C2 )}/(A2 +B2
……(7−8)
ここで、A,B,Cは、それぞれ式(7−6a),(7−6b),(7−6c)により示される値である。
上記の式(7−8)から、平行段差Hdcの測定値により、傾斜角度δd を次のように求めることができる。
δd=sin -1〔{A・C+B・√(A2 +B2 −C2 )}/(A2 +B2 )〕
【0060】
図14及び図15に示すねじ研削盤50によってねじ状ドラム2を研削加工するに際して、上記のような測定方法によってその円錐形状部の傾斜角度を随時測定しながら研削加工を行うことにより、所定の円錐形状部の傾斜角度を高精度に備えたねじ状ドラム2が得られる。このように製作されたねじ状ドラム2は、図10及び図11に示すセンタレス研削装置30のねじ状回転軸ドラム31や、図12及び図13に示す超仕上げ加工装置40のねじ状回転軸ドラム41,42としてこれらの装置に組み込まれ、図9に示すクラウニング付テーパころ軸受用テーパころ1,1’の研削加工や仕上げ加工に供される。したがって、これらセンタレス研削装置30や超仕上げ加工装置40によって得られるテーパころ1,1’は、極めて精度の高いものであり、クラウニング付テーパころ軸受の信頼性の向上に大きく寄与する。
【0061】
上記の円錐形状部の傾斜角度測定法から、包絡線Rの曲率半径Rcを求めることができる。いま、測定治具3により2箇所の位置(第1位置;Ap=Ap1と、第2位置;Ap=Ap2とする)で円錐形状部の平行段差Hdcを測定し、それぞれHdc1及びHdc2とすると、式(2−5)より、
Hdc1=Hdc0+(SaC−Ap1)・tan αLc ……(4−1)
Hdc2=Hdc0+(SaC−Ap2)・tan αLc ……(4−2)
式(4−1)、(4−2)より、
Hdc1−Hdc2=(Ap2−Ap1)・tan αLc
tan αLc=(Hdc1−Hdc2)/(Ap2−Ap1)
αLc(radian)=tan -1{(Hdc1−Hdc2)/(Ap2−Ap1)}
式(2−1)を代入し、
Ldc/Rc=tan -1{(Hdc1−Hdc2)/(Ap2−Ap1)}(radian ) ∴Rc=Ldc/tan -1{(Hdc1−Hdc2)/(Ap2−Ap1)}(radian ) ……(4−3)
よって、式(4−3)により、円錐形状部の傾斜角度δdに無関係に、測定ゲージ5の位置差と測定した平行段差Hdcの差から、包絡線Rの曲率半径Rcを求めることができる。
【0062】
また、逆に、包絡線Rの曲率半径Rcから、Hdc差(Hdc1−Hdc2)は、次式により求めることができる。
Hdc1−Hdc2=(Ap2−Ap1)・tan (Ldc/Rc) ……(4−4)
【0063】
なお、上記実施形態では、クラウニング付テーパころ軸受用テーパころの外径面をセンタレス研削加工や超仕上げ加工する際に用いられるねじ状クラウニングドラムの形状を測定する方法について述べたが、この発明は、その他の加工装置に用いられる上記と同様のねじ状クラウニングドラムの形状測定にも適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明のねじ状クラウニングドラム形状測定方法の一例を示す概念図である。
【図2】同各要素の関係を示す説明図である。
【図3】(A)(B)(C)(D)は各種条件における測定ゲージ位置と円錐形状部の平行段差との関係を示す図である。
【図4】(A)(B)は測定治具における治具本体の鍔部に接する面の形状を示す図である。
【図5】この発明のねじ状クラウニングドラム形状測定方法の別の例を示す概念図である。
【図6】同各要素の関係を示す説明図である。
【図7】この発明のねじ状クラウニングドラム形状測定方法のさらに別の例を示す概念図である。
【図8】同各要素の関係を示す説明図である。
【図9】(A)(B)はこの発明のねじ状クラウニングドラム形状測定方法が対象とするねじ状クラウニングドラムを用いて加工されるクラウニング付テーパころ軸受用テーパころの例を示す平面図である。
【図10】同テーパころを研削加工するためのセンタレス研削装置の概略的側面図である。
【図11】同センタレス研削装置の概略的平面図である。
【図12】同テーパころを超仕上げ加工するための超仕上げ加工装置の概略的側面図である。
【図13】同超仕上げ加工装置の概略的平面図である。
【図14】ねじ状クラウニングドラムを研削加工するためのねじ研削盤の概略的平面図である。
【図15】同ねじ研削盤の概略的側面図である。
【図16】従来のねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法の一例を示す概念図である。
【図17】円錐形状部の包絡線の基準点を図1と異なる点とした、ねじ状クラウニングドラム形状測定方法の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0065】
2…ねじ状クラウニングドラム
2a…ねじ溝
2a−1〜n…円錐形状部(ねじ溝の各周の底面)
2b…鍔部
3…測定治具
4…治具本体
4a…基準面
4b…側端面
4c…側端面
5…測定ゲージ
5a…接触子
Ap…測定ゲージ位置寸法
Hdc…平行段差
Ldc…ねじ溝のリード
δd…円錐形状部の傾斜角度
R…クラウニングドラムの包絡線
Rc…包絡線の曲率半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に続くねじ溝の各周の底面が円錐形状部を成し、かつ各周の円錐形状部を連ねた包絡線が円弧状であるクラウニング形状のねじ状クラウニングドラムにおける、前記円錐形状部の傾斜角度を測定する形状測定方法であって、
任意の円錐形状部から他の任意の円錐形状部の一点までの平行段差を測定し、この平行段差の測定値を用いて、ねじ溝の円錐形状部の前記包絡線に対する接線からの円錐形状部の傾斜角度を求めることを特徴とするねじ状クラウニングドラム形状測定方法。
【請求項2】
螺旋状に続くねじ溝の各周の底面が円錐形状部を成し、円錐形状部間に鍔部を有し、かつ各周の円錐形状部を連ねた包絡線が円弧状であるクラウニング形状のねじ状クラウニングドラムにおける、前記円錐形状部の傾斜角度を測定する形状測定方法であって、
基準面を有する治具本体及び前記基準面に対する垂直方向の距離を測定する接触式の測定ゲージを備えた測定治具を用い、前記ねじ状ドラムの任意の円錐形状部に前記測定治具の前記基準面を当てかつ鍔部に側端面を当て、他の任意の円錐形状部に前記測定ゲージの接触子を当てることにより、前記基準面を当てた円錐形状部と測定ゲージを当てた円錐形状部の一点との平行段差を測定し、この平行段差の測定値を用いて、ねじ溝の円錐形状部の前記包絡線に対する接線からの円錐形状部の傾斜角度を求めることを特徴とするねじ状クラウニングドラム形状測定方法。
【請求項3】
請求項2において、前記測定治具の前記基準面及び測定ゲージを各円錐形状部に当てて測定ゲージの測定値を読み取るときに、治具本体または測定ゲージを、これら治具本体または測定ゲージが接触する箇所におけるねじ状ドラムの円周方向に移動させて得られる測定値の最大値を、求める平行段差の測定値とするねじ状クラウニングドラム形状測定方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、前記測定治具の治具本体における前記鍔部と接する部分を、前記基準面と平行な断面において、尖り形状、または円弧状断面形状としたねじ状クラウニングドラム形状測定方法。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれか1項において、前記ねじ状クラウニングドラムの前記円錐形状部の包絡線における曲率の最大値付近と最小値付近の円錐形状部平行段差が等しくなる、ねじ状ドラムの各周の円錐形状部を連ねた円弧状包絡線を成す、前記円錐形状部の一点からの寸法位置を測定点とするねじ状クラウニングドラム形状測定方法。
【請求項6】
請求項2ないし請求項4のいずれか1項において、前記測定ゲージの測定子を接触させる測定点位置の、各周の円錐形状部を連ねた円弧状包絡線を成す、前記円錐形状部の一点からの距離を、ねじ溝のリードの略1/2とするねじ状クラウニングドラム形状測定方法。
【請求項7】
請求項6において、前記円錐形状部の平行段差の設定値として、(ねじ溝のリード)×sin(円錐形状部設定角度)の値を用いるねじ状クラウニングドラム形状測定方法。
【請求項8】
螺旋状に続くねじ溝の各周の底面が円錐形状部を成し、円錐形状部間に鍔部があり、かつ各周の円錐形状部を連ねた包絡線が円弧状であるクラウニング形状のねじ状クラウニングドラムにおける、前記包絡線の曲率または曲率半径を求めるねじ状クラウニングドラム形状測定方法であって、
各周の円錐形状部を連ねた円弧状包絡線を成す、前記円錐形状部の任意の一点からの距離が異なる2箇所の測定点につき、一つの円錐形状部から他の円錐形状部の測定点までの前記平行段差を測定し、前記2箇所の測定点間の距離と、これら2箇所の前記平行段差の測定値の差から前記包絡線の曲率または曲率半径を求めることを特徴とするねじ状クラウニングドラム形状測定方法。
【請求項9】
請求項8において、前記鍔部に当てる鍔部接触面及び基準面を有する治具本体と、前記基準面に対する垂直方向の距離を測定する接触式の測定ゲージとを備えた測定治具を用い、前記円錐形状部に治具本体の前記基準面を当てかつ鍔部に前記鍔部接触面を当て、他の円錐形状部に測定ゲージの接触子を当てることにより、前記一つの円錐形状部から測定点までの平行段差を測定するねじ状クラウニングドラム形状測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−76146(P2008−76146A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254110(P2006−254110)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】