ねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法
【課題】 ねじ状ドラムの円錐形状部傾斜角度を正確かつ容易に測定することができるねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法を提供する。
【解決手段】 螺旋状に続くねじ溝2aの各周の底面が、円錐形状部2a−1,2…を成すねじ状ドラム2における、前記円錐形状部2a−1,2…の傾斜角度を測定する方法である。基準面4aを有する治具本体4および前記基準面4aに対する垂直方向の距離を測定する測定ゲージ5を備えた測定治具3を用いる。この測定治具3の前記基準面4aを前記ねじ状ドラム2の任意の円錐形状部2a−2に当て、他の任意の円錐形状部2a−1に前記測定ゲージ5の測定子5aを当てる。前記基準面4aを当てた円錐形状部2a−2と測定ゲージ5を当てた円錐形状部2a−1との平行段差Hdを測定することにより、この平行段差Hdの測定値とねじ溝2aのリードLdとから円錐形状部の傾斜角度δdを求める。
【解決手段】 螺旋状に続くねじ溝2aの各周の底面が、円錐形状部2a−1,2…を成すねじ状ドラム2における、前記円錐形状部2a−1,2…の傾斜角度を測定する方法である。基準面4aを有する治具本体4および前記基準面4aに対する垂直方向の距離を測定する測定ゲージ5を備えた測定治具3を用いる。この測定治具3の前記基準面4aを前記ねじ状ドラム2の任意の円錐形状部2a−2に当て、他の任意の円錐形状部2a−1に前記測定ゲージ5の測定子5aを当てる。前記基準面4aを当てた円錐形状部2a−2と測定ゲージ5を当てた円錐形状部2a−1との平行段差Hdを測定することにより、この平行段差Hdの測定値とねじ溝2aのリードLdとから円錐形状部の傾斜角度δdを求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、テーパころ軸受のテーパころ等の外径面を、センタレス研削加工や超仕上げ加工する際等に用いられるねじ状ドラムの円錐形状部の傾斜角度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示すようなテーパころ軸受用のテーパころ1は、図5および図6に示すセンタレス研削装置30や、図7および図8に示すような超仕上げ加工装置40によって研削加工や仕上げ加工がなされる。センタレス研削装置30は、ねじ状回転軸ドラム31と回転砥石32との間に、テーパころワークwをブレード33によって支持した状態で配する。この状態で、ねじ状回転軸ドラム31および砥石32を図5および図6のように回転させ、ドラム31の表面に形成された円錐形状部31aの回転作用により、図6の白抜矢示a方向にワークwを推進させながら、回転する砥石32によって研削加工する。ドラム31は、ドラム軸軸受サポート部31bによって支持されている。
【0003】
超仕上げ加工装置40では、2本の平行なねじ状回転軸ドラム41,42の間にテーパころ用ワークwを配し、ワークwに固定の砥石43を当接させる。ドラム41,42を図7および図8のように回転させ、ドラム41,42の表面に形成された円錐形状部41a,42aの回転作用により、図8の白抜矢示b方向にワークwを推進させながら砥石43によって仕上げ加工する。ドラム41,42はドラム軸軸受サポート部41b,42bによって支持されている。
【0004】
これらの研削加工および仕上げ加工装置30,40においては、ワークwを支持するねじ状回転軸ドラム31,41,42が用いられる。これらドラム31,41,42の円錐形状部31a,41a,42aは、加工時にワークwの外径面に接しており、その角度はワークwの外径面の頂角や加工条件によって決まる。そのため、円錐形状部31a,41a,42aの角度を正確に作る必要がある。このようなドラム31,41,42は、図9および図10に示すねじ研削盤50によって研削加工される。
【0005】
このねじ研削盤50は、テーブル51上のドラム軸軸受サポート部52にドラム31(41,42)用ワークWを支持させ、このワークWの表面に研削作用面が所定角度に形成された回転砥石53を当接させる。ワークWおよび回転砥石53を、図9,図10のように回転させ、かつワークWを図9の白抜矢示c方向にトラバースさせることによって、ワークWの表面に角度δdの円錐形状部Waを研削加工形成する。
【0006】
上記のように研削加工して得たねじ状回転軸ドラム用ワークWの円錐形状部Waの角度δdは、図11に示すように求める。すなわち、ねじ研削盤50上で、砥石53側よりゲージ60を円錐形状部Waに当て、ワークWは回転させないで、軸方向(白抜矢示d方向)に移動させ、その移動距離Lmとゲージ振れ量Hmとにより、ドラム円錐形状部の傾斜角度δdが次式(1)により求められる。
δd=tan-1(Hm/Lm) ……(1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような測定方法においては、ゲージ振れ量および移動距離の両方を正確に測定する必要があり、測定に時間が掛かっていた。また、移動開始時や終了時にゲージ60の指示値が変化し易く、精度の良い測定ができなかった。そしてこのように研削加工して得たドラム31(41,42)を用いて、テーパころ用ワークwをセンタレス研削した場合、ワークwの角度(頂角)が狙い角度とずれ、あるいは超仕上げ加工した場合、ワークwと砥石43との悪い接触状態により、ワークwの表面の所定の仕上精度が得られず、ねじ研削盤50にて再度ドラム31(41,42)の円錐形状部角度δdの修正加工をする必要があり、多くの工数と時間を要していた。
【0008】
この発明の目的は、ねじ状ドラムの円錐形状部傾斜角度を正確かつ容易に測定することができるねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法は、螺旋状に続くねじ溝の各周の底面が、円錐形状部を成すねじ状ドラムにおける、前記円錐形状部の傾斜角度を測定する方法であって、任意の円錐形状部から他の任意の円錐形状部までの平行段差を測定し、この平行段差の測定値とねじ溝のリードとから円錐形状部の傾斜角度を求めることを特徴とする。
この測定方法によれば、任意の円錐形状部から他の任意の円錐形状部までの平行段差の測定値と、設計的に予め定められたねじ溝のリードとから円錐形状部の傾斜角度を求めるから、ゲージをドラム円錐形状部に当て、ドラムを移動させて測定する前記従来方法と異なり、円錐形状部の長さに影響を受けずに正確に円錐形状部の傾斜角度を測定することができる。また、ドラムを移動させるような操作を要しないから、操作も容易でかつ測定時間の短縮も図ることができる。
【0010】
この発明に係るねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法は、より具体的には、基準面を有する治具本体および前記基準面に対する垂直方向の距離を測定する測定ゲージを備えた測定治具を用いる。この測定治具の前記基準面を前記ねじ状ドラムの任意の円錐形状部に当て、他の任意の円錐形状部に前記測定ゲージの測定子を当て、前記基準面を当てた円錐形状部と測定ゲージを当てた円錐形状部との平行段差を測定することにより、この平行段差の測定値とねじ溝のリードとから円錐形状部の傾斜角度を求める。
この測定方法によれば、前記基準面を任意の円錐形状部に当てた上で、他の任意の円錐形状部に前記測定ゲージの測定子を当てることにより、前記基準面を当てた円錐形状部と測定ゲージを当てた円錐形状部との平行段差を測定するようにしている。このため、測定ゲージの測定子を円錐形状部に当てる際、その長さの影響を受けず、また前記従来方法と異なり、ドラムを移動させるような操作を要さず、正確かつ容易に傾斜角度の測定が可能で測定時間の短縮も図ることができる。
【0011】
この発明において、前記測定治具の前記基準面および測定ゲージを各円錐形状部に当てて測定ゲージの測定値を読み取るときに、治具本体または測定ゲージを、これら治具本体または測定ゲージが当たる箇所におけるねじ状ドラムの円周方向に移動させて得られる測定値の最大値を、求める平行段差の測定値とするようにしても良い。
この方法によれば、治具本体または測定ゲージを、ねじ状ドラムの円周方向に移動させて得られる測定値の最大値は、上記測定箇所における接線方向での測定値に相当することになるから、これによって得られる平行段差の測定値は、より正確なものとなる。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係るねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法は、螺旋状に続くねじ溝の各周の底面が、円錐形状部を成すねじ状ドラムにおける、前記円錐形状部の傾斜角度を測定する方法であって、任意の円錐形状部から他の任意の円錐形状部までの平行段差を測定し、この平行段差の測定値とねじ溝のリードとから円錐形状部の傾斜角度を求めるようにしたため、円錐形状部の平行段差を正確かつ容易に測定することができ、その結果ねじ状ドラムの円錐形状部傾斜角度を正確かつ容易に求めることができ、ねじ状ドラムを精度良く、効率的に加工することができる。したがって、このねじ状ドラムを用いてテーパころ軸受用のテーパころ等を生産する場合、精度良く効率的な生産が可能とされ、テーパころ軸受等の信頼性が向上する。
【0013】
この発明方法において、基準面を有する治具本体および前記基準面に対する垂直方向の距離を測定する測定ゲージを備えた測定治具を用い、この測定治具の前記基準面を前記ねじ状ドラムの任意の円錐形状部に当て、他の任意の円錐形状部に前記測定ゲージの測定子を当て、前記基準面を当てた円錐形状部と測定ゲージを当てた円錐形状部との平行段差を測定することにより、この平行段差の測定値とねじ溝のリードとから円錐形状部の傾斜角度を求めるようにした場合は、基準面および測定ゲージの円錐形状部に対する押し当て操作だけで、正確かつ容易に平行段差を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の一実施形態を図1と共に説明する。ねじ状ドラム2は、螺旋状に続くねじ溝2aの各周の底面が円錐形状部2a−1,2,3・・・を成し、ねじ溝2aのリードがLdとされたものである。測定治具3は、底面が基準面4aとなる治具本体4、および前記基準面4aに対する垂直方向の距離を測定する測定ゲージ5を備える。測定ゲージ5は、治具本体4に上記基準面4aに対する垂直方向の移動が可能な状態で保持された針状測定子5aと、この測定子5aの移動距離を示すメータ5bとよりなる。
【0015】
同図に示すように、基準面4aを円錐形状部2a−2の表面に当て、隣接する円錐形状部2a−1に測定子5aを当て、このときの測定子5aを円錐形状部2a−1に当てるに要する基準面4aに対する距離をメータ5bから読み取り、これを円錐形状部2a−1,2a−2間の平行段差Hdとする。ねじリードLdは、設計値として予め定められているから、円錐形状部の傾斜角度δdは次式(2)により求められる。
δd=sin-1(Hd/Ld) ……(2)
【0016】
上記平行段差Hdの測定は、基準面4aを円錐形状部2a−2の表面に当てた上で隣接する円錐形状部2a−1に測定子5aを当てるだけでなされるから、その操作は極めて容易であり、円錐形状部に基準面4aを当てることができれば、その長さに影響を受けずに正確に測定することができる。この平行段差Hdの測定に際しては、治具本体4または測定ゲージ5を、ねじ状ドラム2の円周方向に振りながら測定し、その測定値の最大値を平行段差Hdとする。この最大値は、ねじ溝2aの表面の接線位置での測定値に相当することになるから、得られた平行段差値Hdは、高度に正確なものである。
【0017】
図2は、図1に示す例とは、測定治具3の向きを逆にして測定する方法である。基準面4aを円錐形状部2a−1の表面に当て、隣接する円錐形状部2a−2に測定子5aを当て、このときの測定子5aの基準面4aに対する距離をメータ5bから読み取り、これを円錐形状部2a−1,2a−2間の平行段差Hdとする。この場合も、上記数式(2)により、円錐形状部の傾斜角度δdを求めることができる。
【0018】
図1および図2は、隣接する円錐形状部2a−1,2a−2に跨るように測定治具3をセットして、両円錐形状部2a−1,2a−2間の平行段差Hdを測定し、円錐形状部の傾斜角度δdを求めているが、図3に示すように、n個(図3では3個)離れた円錐形状部に測定治具3をセットしてこれらの円錐形状部間の平行段差Hdを測定することによって円錐形状部の傾斜角度δdを求めるようにしても良い。この場合は、n個分のリードLdにおいて測定することになるから、円錐形状部の傾斜角度δdは数式(3)によって求めることができる。
δd=sin-1{Hd/(n・Ld)} ……(3)
【0019】
また、測定される平行段差Hdは、n個分の円錐形状部の平行段差であり、このように測定範囲を広くすることにより、数式(3)中のHd/(n・Ld)は、平均値を求めることに等しく、これによって、より精度の高い円錐形状部の傾斜角度δdを求めることができる。
【0020】
図9および図10に示すねじ研削盤50によってねじ状ドラム2を研削加工するに際して、上記のような測定方法によってその円錐形状部の傾斜角度を随時測定しながら研削加工が行なわれるようにした場合は、所定の円錐形状部の傾斜角度を高精度に備えたねじ状ドラム2が得られる。このように作製されたねじ状ドラム2は、図5および図6に示すセンタレス研削装置30のねじ状回転軸ドラム31や、図7および図8に示す超仕上げ加工装置40のねじ状回転軸ドラム41,42としてこれらの装置に組み込まれ、図4に示すテーパころ軸受用テーパころ1の研削加工や仕上げ加工に供される。したがって、これらセンタレス研削装置30や超仕上げ加工装置40によって得られるテーパころ1は、極めて精度の高いものであり、テーパころ軸受の信頼性の向上に大きく寄与する。
【0021】
なお、上記実施形態では、テーパころ軸受用テーパころの外径面をセンタレス研削加工や超仕上げ加工する際に用いられるねじ状ドラムにおける円錐形状部の傾斜角度を測定する方法について述べたが、その他の加工装置に用いられる同様のねじ状ドラムにおける円錐形状部の傾斜角度の測定にも適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明のねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法の一例を示す概念図である。
【図2】同ねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法の別の例を示す概念図である。
【図3】同ねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法のさらに別の例を示す概念図である。
【図4】この発明のねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法が対象とするねじ状ドラムを用いて加工がなされるテーパころ軸受用テーパころの一例を示す平面図である。
【図5】同テーパころを研削加工するためのセンタレス研削装置の概略的側面図である。
【図6】同センタレス研削装置の概略的平面図である。
【図7】同テーパころを超仕上げ加工するための超仕上げ加工装置の概略的側面図である。
【図8】同超仕上げ加工装置の概略的平面図である。
【図9】ねじ状ドラムを研削加工するためのねじ研削盤の概略的平面図である。
【図10】同ねじ研削盤の概略的側面図である。
【図11】従来のねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0023】
2…ねじ状ドラム
2a…ねじ溝
2a−1〜n…円錐形状部(ねじ溝の各周の底面)
3…測定治具
4…治具本体
4a…基準面
5…測定ゲージ
5a…測定子
Hd…平行段差
Ld…ねじ溝のリード
δd…円錐形状部の傾斜角度
【技術分野】
【0001】
この発明は、テーパころ軸受のテーパころ等の外径面を、センタレス研削加工や超仕上げ加工する際等に用いられるねじ状ドラムの円錐形状部の傾斜角度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示すようなテーパころ軸受用のテーパころ1は、図5および図6に示すセンタレス研削装置30や、図7および図8に示すような超仕上げ加工装置40によって研削加工や仕上げ加工がなされる。センタレス研削装置30は、ねじ状回転軸ドラム31と回転砥石32との間に、テーパころワークwをブレード33によって支持した状態で配する。この状態で、ねじ状回転軸ドラム31および砥石32を図5および図6のように回転させ、ドラム31の表面に形成された円錐形状部31aの回転作用により、図6の白抜矢示a方向にワークwを推進させながら、回転する砥石32によって研削加工する。ドラム31は、ドラム軸軸受サポート部31bによって支持されている。
【0003】
超仕上げ加工装置40では、2本の平行なねじ状回転軸ドラム41,42の間にテーパころ用ワークwを配し、ワークwに固定の砥石43を当接させる。ドラム41,42を図7および図8のように回転させ、ドラム41,42の表面に形成された円錐形状部41a,42aの回転作用により、図8の白抜矢示b方向にワークwを推進させながら砥石43によって仕上げ加工する。ドラム41,42はドラム軸軸受サポート部41b,42bによって支持されている。
【0004】
これらの研削加工および仕上げ加工装置30,40においては、ワークwを支持するねじ状回転軸ドラム31,41,42が用いられる。これらドラム31,41,42の円錐形状部31a,41a,42aは、加工時にワークwの外径面に接しており、その角度はワークwの外径面の頂角や加工条件によって決まる。そのため、円錐形状部31a,41a,42aの角度を正確に作る必要がある。このようなドラム31,41,42は、図9および図10に示すねじ研削盤50によって研削加工される。
【0005】
このねじ研削盤50は、テーブル51上のドラム軸軸受サポート部52にドラム31(41,42)用ワークWを支持させ、このワークWの表面に研削作用面が所定角度に形成された回転砥石53を当接させる。ワークWおよび回転砥石53を、図9,図10のように回転させ、かつワークWを図9の白抜矢示c方向にトラバースさせることによって、ワークWの表面に角度δdの円錐形状部Waを研削加工形成する。
【0006】
上記のように研削加工して得たねじ状回転軸ドラム用ワークWの円錐形状部Waの角度δdは、図11に示すように求める。すなわち、ねじ研削盤50上で、砥石53側よりゲージ60を円錐形状部Waに当て、ワークWは回転させないで、軸方向(白抜矢示d方向)に移動させ、その移動距離Lmとゲージ振れ量Hmとにより、ドラム円錐形状部の傾斜角度δdが次式(1)により求められる。
δd=tan-1(Hm/Lm) ……(1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような測定方法においては、ゲージ振れ量および移動距離の両方を正確に測定する必要があり、測定に時間が掛かっていた。また、移動開始時や終了時にゲージ60の指示値が変化し易く、精度の良い測定ができなかった。そしてこのように研削加工して得たドラム31(41,42)を用いて、テーパころ用ワークwをセンタレス研削した場合、ワークwの角度(頂角)が狙い角度とずれ、あるいは超仕上げ加工した場合、ワークwと砥石43との悪い接触状態により、ワークwの表面の所定の仕上精度が得られず、ねじ研削盤50にて再度ドラム31(41,42)の円錐形状部角度δdの修正加工をする必要があり、多くの工数と時間を要していた。
【0008】
この発明の目的は、ねじ状ドラムの円錐形状部傾斜角度を正確かつ容易に測定することができるねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法は、螺旋状に続くねじ溝の各周の底面が、円錐形状部を成すねじ状ドラムにおける、前記円錐形状部の傾斜角度を測定する方法であって、任意の円錐形状部から他の任意の円錐形状部までの平行段差を測定し、この平行段差の測定値とねじ溝のリードとから円錐形状部の傾斜角度を求めることを特徴とする。
この測定方法によれば、任意の円錐形状部から他の任意の円錐形状部までの平行段差の測定値と、設計的に予め定められたねじ溝のリードとから円錐形状部の傾斜角度を求めるから、ゲージをドラム円錐形状部に当て、ドラムを移動させて測定する前記従来方法と異なり、円錐形状部の長さに影響を受けずに正確に円錐形状部の傾斜角度を測定することができる。また、ドラムを移動させるような操作を要しないから、操作も容易でかつ測定時間の短縮も図ることができる。
【0010】
この発明に係るねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法は、より具体的には、基準面を有する治具本体および前記基準面に対する垂直方向の距離を測定する測定ゲージを備えた測定治具を用いる。この測定治具の前記基準面を前記ねじ状ドラムの任意の円錐形状部に当て、他の任意の円錐形状部に前記測定ゲージの測定子を当て、前記基準面を当てた円錐形状部と測定ゲージを当てた円錐形状部との平行段差を測定することにより、この平行段差の測定値とねじ溝のリードとから円錐形状部の傾斜角度を求める。
この測定方法によれば、前記基準面を任意の円錐形状部に当てた上で、他の任意の円錐形状部に前記測定ゲージの測定子を当てることにより、前記基準面を当てた円錐形状部と測定ゲージを当てた円錐形状部との平行段差を測定するようにしている。このため、測定ゲージの測定子を円錐形状部に当てる際、その長さの影響を受けず、また前記従来方法と異なり、ドラムを移動させるような操作を要さず、正確かつ容易に傾斜角度の測定が可能で測定時間の短縮も図ることができる。
【0011】
この発明において、前記測定治具の前記基準面および測定ゲージを各円錐形状部に当てて測定ゲージの測定値を読み取るときに、治具本体または測定ゲージを、これら治具本体または測定ゲージが当たる箇所におけるねじ状ドラムの円周方向に移動させて得られる測定値の最大値を、求める平行段差の測定値とするようにしても良い。
この方法によれば、治具本体または測定ゲージを、ねじ状ドラムの円周方向に移動させて得られる測定値の最大値は、上記測定箇所における接線方向での測定値に相当することになるから、これによって得られる平行段差の測定値は、より正確なものとなる。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係るねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法は、螺旋状に続くねじ溝の各周の底面が、円錐形状部を成すねじ状ドラムにおける、前記円錐形状部の傾斜角度を測定する方法であって、任意の円錐形状部から他の任意の円錐形状部までの平行段差を測定し、この平行段差の測定値とねじ溝のリードとから円錐形状部の傾斜角度を求めるようにしたため、円錐形状部の平行段差を正確かつ容易に測定することができ、その結果ねじ状ドラムの円錐形状部傾斜角度を正確かつ容易に求めることができ、ねじ状ドラムを精度良く、効率的に加工することができる。したがって、このねじ状ドラムを用いてテーパころ軸受用のテーパころ等を生産する場合、精度良く効率的な生産が可能とされ、テーパころ軸受等の信頼性が向上する。
【0013】
この発明方法において、基準面を有する治具本体および前記基準面に対する垂直方向の距離を測定する測定ゲージを備えた測定治具を用い、この測定治具の前記基準面を前記ねじ状ドラムの任意の円錐形状部に当て、他の任意の円錐形状部に前記測定ゲージの測定子を当て、前記基準面を当てた円錐形状部と測定ゲージを当てた円錐形状部との平行段差を測定することにより、この平行段差の測定値とねじ溝のリードとから円錐形状部の傾斜角度を求めるようにした場合は、基準面および測定ゲージの円錐形状部に対する押し当て操作だけで、正確かつ容易に平行段差を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の一実施形態を図1と共に説明する。ねじ状ドラム2は、螺旋状に続くねじ溝2aの各周の底面が円錐形状部2a−1,2,3・・・を成し、ねじ溝2aのリードがLdとされたものである。測定治具3は、底面が基準面4aとなる治具本体4、および前記基準面4aに対する垂直方向の距離を測定する測定ゲージ5を備える。測定ゲージ5は、治具本体4に上記基準面4aに対する垂直方向の移動が可能な状態で保持された針状測定子5aと、この測定子5aの移動距離を示すメータ5bとよりなる。
【0015】
同図に示すように、基準面4aを円錐形状部2a−2の表面に当て、隣接する円錐形状部2a−1に測定子5aを当て、このときの測定子5aを円錐形状部2a−1に当てるに要する基準面4aに対する距離をメータ5bから読み取り、これを円錐形状部2a−1,2a−2間の平行段差Hdとする。ねじリードLdは、設計値として予め定められているから、円錐形状部の傾斜角度δdは次式(2)により求められる。
δd=sin-1(Hd/Ld) ……(2)
【0016】
上記平行段差Hdの測定は、基準面4aを円錐形状部2a−2の表面に当てた上で隣接する円錐形状部2a−1に測定子5aを当てるだけでなされるから、その操作は極めて容易であり、円錐形状部に基準面4aを当てることができれば、その長さに影響を受けずに正確に測定することができる。この平行段差Hdの測定に際しては、治具本体4または測定ゲージ5を、ねじ状ドラム2の円周方向に振りながら測定し、その測定値の最大値を平行段差Hdとする。この最大値は、ねじ溝2aの表面の接線位置での測定値に相当することになるから、得られた平行段差値Hdは、高度に正確なものである。
【0017】
図2は、図1に示す例とは、測定治具3の向きを逆にして測定する方法である。基準面4aを円錐形状部2a−1の表面に当て、隣接する円錐形状部2a−2に測定子5aを当て、このときの測定子5aの基準面4aに対する距離をメータ5bから読み取り、これを円錐形状部2a−1,2a−2間の平行段差Hdとする。この場合も、上記数式(2)により、円錐形状部の傾斜角度δdを求めることができる。
【0018】
図1および図2は、隣接する円錐形状部2a−1,2a−2に跨るように測定治具3をセットして、両円錐形状部2a−1,2a−2間の平行段差Hdを測定し、円錐形状部の傾斜角度δdを求めているが、図3に示すように、n個(図3では3個)離れた円錐形状部に測定治具3をセットしてこれらの円錐形状部間の平行段差Hdを測定することによって円錐形状部の傾斜角度δdを求めるようにしても良い。この場合は、n個分のリードLdにおいて測定することになるから、円錐形状部の傾斜角度δdは数式(3)によって求めることができる。
δd=sin-1{Hd/(n・Ld)} ……(3)
【0019】
また、測定される平行段差Hdは、n個分の円錐形状部の平行段差であり、このように測定範囲を広くすることにより、数式(3)中のHd/(n・Ld)は、平均値を求めることに等しく、これによって、より精度の高い円錐形状部の傾斜角度δdを求めることができる。
【0020】
図9および図10に示すねじ研削盤50によってねじ状ドラム2を研削加工するに際して、上記のような測定方法によってその円錐形状部の傾斜角度を随時測定しながら研削加工が行なわれるようにした場合は、所定の円錐形状部の傾斜角度を高精度に備えたねじ状ドラム2が得られる。このように作製されたねじ状ドラム2は、図5および図6に示すセンタレス研削装置30のねじ状回転軸ドラム31や、図7および図8に示す超仕上げ加工装置40のねじ状回転軸ドラム41,42としてこれらの装置に組み込まれ、図4に示すテーパころ軸受用テーパころ1の研削加工や仕上げ加工に供される。したがって、これらセンタレス研削装置30や超仕上げ加工装置40によって得られるテーパころ1は、極めて精度の高いものであり、テーパころ軸受の信頼性の向上に大きく寄与する。
【0021】
なお、上記実施形態では、テーパころ軸受用テーパころの外径面をセンタレス研削加工や超仕上げ加工する際に用いられるねじ状ドラムにおける円錐形状部の傾斜角度を測定する方法について述べたが、その他の加工装置に用いられる同様のねじ状ドラムにおける円錐形状部の傾斜角度の測定にも適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明のねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法の一例を示す概念図である。
【図2】同ねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法の別の例を示す概念図である。
【図3】同ねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法のさらに別の例を示す概念図である。
【図4】この発明のねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法が対象とするねじ状ドラムを用いて加工がなされるテーパころ軸受用テーパころの一例を示す平面図である。
【図5】同テーパころを研削加工するためのセンタレス研削装置の概略的側面図である。
【図6】同センタレス研削装置の概略的平面図である。
【図7】同テーパころを超仕上げ加工するための超仕上げ加工装置の概略的側面図である。
【図8】同超仕上げ加工装置の概略的平面図である。
【図9】ねじ状ドラムを研削加工するためのねじ研削盤の概略的平面図である。
【図10】同ねじ研削盤の概略的側面図である。
【図11】従来のねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0023】
2…ねじ状ドラム
2a…ねじ溝
2a−1〜n…円錐形状部(ねじ溝の各周の底面)
3…測定治具
4…治具本体
4a…基準面
5…測定ゲージ
5a…測定子
Hd…平行段差
Ld…ねじ溝のリード
δd…円錐形状部の傾斜角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に続くねじ溝の各周の底面が、円錐形状部を成すねじ状ドラムにおける、前記円錐形状部の傾斜角度を測定する方法であって、
任意の円錐形状部から他の任意の円錐形状部までの平行段差を測定し、この平行段差の測定値とねじ溝のリードとから円錐形状部の傾斜角度を求めることを特徴とするねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法。
【請求項2】
螺旋状に続くねじ溝の各周の底面が、円錐形状部を成すねじ状ドラムにおける、前記円錐形状部の傾斜角度を測定する方法であって、
基準面を有する治具本体および前記基準面に対する垂直方向の距離を測定する測定ゲージを備えた測定治具を用い、この測定治具の前記基準面を前記ねじ状ドラムの任意の円錐形状部に当て、他の任意の円錐形状部に前記測定ゲージの測定子を当て、前記基準面を当てた円錐形状部と測定ゲージを当てた円錐形状部との平行段差を測定することにより、この平行段差の測定値とねじ溝のリードとから円錐形状部の傾斜角度を求めることを特徴とするねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法。
【請求項3】
請求項2において、前記測定治具の前記基準面および測定ゲージを各円錐形状部に当てて測定ゲージの測定値を読み取るときに、治具本体または測定ゲージを、これら治具本体または測定ゲージが当たる箇所におけるねじ状ドラムの円周方向に移動させて得られる測定値の最大値を、求める平行段差の測定値とするねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法。
【請求項1】
螺旋状に続くねじ溝の各周の底面が、円錐形状部を成すねじ状ドラムにおける、前記円錐形状部の傾斜角度を測定する方法であって、
任意の円錐形状部から他の任意の円錐形状部までの平行段差を測定し、この平行段差の測定値とねじ溝のリードとから円錐形状部の傾斜角度を求めることを特徴とするねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法。
【請求項2】
螺旋状に続くねじ溝の各周の底面が、円錐形状部を成すねじ状ドラムにおける、前記円錐形状部の傾斜角度を測定する方法であって、
基準面を有する治具本体および前記基準面に対する垂直方向の距離を測定する測定ゲージを備えた測定治具を用い、この測定治具の前記基準面を前記ねじ状ドラムの任意の円錐形状部に当て、他の任意の円錐形状部に前記測定ゲージの測定子を当て、前記基準面を当てた円錐形状部と測定ゲージを当てた円錐形状部との平行段差を測定することにより、この平行段差の測定値とねじ溝のリードとから円錐形状部の傾斜角度を求めることを特徴とするねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法。
【請求項3】
請求項2において、前記測定治具の前記基準面および測定ゲージを各円錐形状部に当てて測定ゲージの測定値を読み取るときに、治具本体または測定ゲージを、これら治具本体または測定ゲージが当たる箇所におけるねじ状ドラムの円周方向に移動させて得られる測定値の最大値を、求める平行段差の測定値とするねじ状ドラム円錐形状部傾斜角度測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−64582(P2008−64582A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242272(P2006−242272)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]