説明

はんだプリコート方法

【課題】基板配列電極の微細化(電極パターンの電極間ピッチが100μm以下、最新技術では80μm以下)に対応可能な改良されたはんだプリコートの実現。
【解決手段】基板の配列電極のエリア上にはんだ組成物を導入し(1−1)、導入したはんだ組成物が存在する基板の上面が基板の下面より高温となり、かつ融点より低い温度にまではんだ組成物が加熱されるように加熱制御し(1−2)、かかる加熱ステップ(1−2)の後、基板の下面が上面より高温となり、かつはんだ組成物が溶融するように加熱制御して、はんだをプリコートする(1−3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの実装技術に関し、特に、基板(たとえば、半導体パッケージのコンポーネントであるインターポーザ/再配線基板などの回路基板)の配列電極にはんだ組成物を溶融接合する接合技術に関し、より具体的には、この種のはんだ溶融接合により、はんだ組成物を配列電極にコーティングするはんだプリコート方法に関するものである。
【0002】
なお、「はんだプリコート」の名は、はんだ組成物を配列電極上にデポジット(コーティング)した回路基板を、実装デバイス(たとえば表面実装デバイスSMD、SMTデバイス)に近接してリフロー炉(reflow oven)内にセットし、はんだリフロー(reflow soldering)により、再びはんだ組成物を溶融(フロー)して実装デバイスの配列電極を回路基板の配列電極に電気接続(はんだ接合)することに由来する。
【背景技術】
【0003】
昨今、半導体パッケージの高密度化に伴い、基板の配列電極の微細化が著しく進行している。たとえば、最新技術による基板配列電極の電極間ピッチは100マイクロメートル(μm)を割り込み、製品によっては、50μm以下になっている。半導体パッケージを作製するため、この種の基板配列電極には、はんだ組成物を接合する必要があるが、このような配列電極パターンの微細化は、はんだ接合技術にとって大いなる脅威(技術障壁)となっている。
【0004】
たとえば、従来の基板用はんだ接合技術として、はんだペースト印刷法、はんだボール搭載方法などが知られているが、いずれも電極パターンの微細化に対して十分に対応することができない。これらの方法は、一般的に加熱能力に優れた熱風方式(典型的に熱風循環式)のリフロー炉を用いて、はんだを溶融し、電極部位にはんだバンプを形成する。
【0005】
この種のはんだ接合技術において求められることは、十分な量のはんだを基板配列電極上に略均一にデポジット(コーティング)することである。
【0006】
しかし、はんだペースト印刷法では、配列電極ピッチが100マイクロメートル以下、特に80マイクロメートル以下の微細な電極パターン上へのはんだペーストの供給が困難である。また、はんだボール搭載法でも、均一なはんだボール径として80マイクロメートル(μmφ)程度が限界になっている。
【0007】
このような技術限界から、配列電極(典型的に銅製である)上に粘着層を形成し、この粘着層上に、粒度分布を持った微細はんだ粉末を付着させ、溶融することで電極にはんだをプリコートする技術(粘膜層付着方式)が開発されているが、この最新技術は、大規模な設備を要し、生産コストが経済許容性をはるかに超えて高くなる。また、粘着層に付着できるはんだ粉末量が限られるという問題点をかかえている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の主目的は、基板配列電極の微細化に対応可能な改良されたはんだプリコート方法を提供することである。
【0009】
具体的には、微細化された基板配列電極上へのはんだプリコート(デポジション、接合)を低コストで実現可能なはんだプリコート方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態によれば、基板の配列電極のエリア上にはんだ組成物を導入する導入ステップと、導入したはんだ組成物が存在する前記基板の上面が基板の下面より高温となり、かつ融点より低い温度にまで前記はんだ組成物が加熱されるように加熱制御する加熱ステップと、前記加熱ステップの後、前記基板の下面が上面より高温となり、かつ前記はんだ組成物が溶融するように加熱制御して、はんだをプリコートするプリコートステップとを有するはんだプリコート方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一形態に係るはんだプリコート方法によれば、基板の配列電極のエリア上にはんだ組成物を導入し、導入したはんだ組成物が存在する前記基板の上面が基板の下面より高温となり、かつ融点より低い温度にまで前記はんだ組成物が加熱されるように加熱制御し、かかる加熱ステップの後、前記基板の下面が上面より高温となり、かつ前記はんだ組成物が溶融するように加熱制御して、はんだをプリコートしているので、基板配列電極の微細化に対応可能な改良されたはんだプリコートが実現される。
【0012】
好適な実施形態において、前記エリアは個々の電極部位のみならず、電極間の部位も含む線状エリアであり、前記導入ステップは、前記線状エリア上に前記はんだ組成物を略一様に塗布することで実施される。これにより、一層、低コストではんだプリコートが実現され、半導体パッケージングの低コスト化に寄与する。
【0013】
本発明の上記目的、その他の目的、利点は以下の詳細な説明からさらに明らかになる。また、本発明の形態は上記形態には限られず、特許請求の範囲に規定する様々な実施形態を包含するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1に示すように、本発明の一形態に係るはんだプリコート方法Pによれば、基板の配列電極のエリア上にはんだ組成物を導入し(導入ステップ1−1)、導入したはんだ組成物が存在する前記基板の上面が基板の下面より高温となり、かつ融点より低い温度にまで前記はんだ組成物が加熱されるように加熱制御し(加熱ステップ1−2)、かかる加熱ステップ(soak process)の後、プリコートステップ1−3(wetting process)において、前記基板の下面が上面より高温となり、かつ前記はんだ組成物が溶融するように加熱制御して、はんだをプリコートする。これにより、基板配列電極の微細化(電極パターンの電極間ピッチが100μm以下、最新技術では50μm以下)に対応可能な改良されたはんだプリコートが実現される。
【0016】
本発明によれば、還元を伴うsoak process において、加熱(熱方向)は、はんだ組成物の上面から下面(電極面)に向けてなされる。一方、溶融を伴うwetting processにおいて、加熱(熱方向)は、電極からこれに対向するはんだ組成物に向けてなされる。はんだプリコートの技術分野において、加熱方向をsoak process とwetting process とで切り換える技法は新規(new)であり、本発明の根幹(essential feature, pith and marrow)をなすものである。
【0017】
好適な実施形態(図1参照)において、はんだ組成物が導入されるエリアは個々の電極部位のみならず、電極間の部位も含む線状エリアないし連結エリア(concatenated area)であり、導入ステップ1−1は、この連結エリア上にはんだ組成物を略一様に塗布する(1−1)ことで実施される。これにより、一層、低コストではんだプリコートが実現され、半導体パッケージングの低コスト化に寄与すると、期待される。また、加熱ステップ1−2とプリコートステップ1−3の作用により、所望のはんだプリコート(たとえば、電極に接合するはんだ量の均一性など)が実現可能となる。また、上述した粘着層付着方式(付着できるはんだ量に限界がある)に比べ、十分なはんだ量をエリア上に塗布可能である。また、粘着層付着方式のような大掛かりな設備は一切不要である。
【0018】
なお、はんだ組成物が塗布される線状エリアまたは連結エリアは、図5に示す基板の場合、配列電極の配列エリアをカバーする環状エリア(所望であれば、電極が存在しないエリアである4隅にははんだ組成物が塗布されない略環状エリア)である。図5において、半導体パッケージ用基板に対する好適な印刷プロセス(典型的にはスクリーン印刷法)に好都合なソルダーレジスト膜がレジスト開口部位以外の基板表面に形成されている。図示のレジスト開口は、配列電極と電極間スペースを含む、閉じた環状エリアを画定している。この環状エリア(レジスト開口部)に、たとえばスクリーン印刷法により、ハンダ組成物が塗布される。
【0019】
図1において、少なくとも加熱ステップ(soak step)1−2およびプリコートステップ(wetting and cooling step)1−3はリフロー炉(はんだリフローを実施する炉と同一または同種の炉)内において実行することが経済的に好ましい。
【0020】
典型的に、加熱ステップ1−2において、はんだ組成物の粘度が低下して、含有はんだ粉末が前記配列電極に向けて沈降する。
【0021】
さらに、加熱ステップ1−2の実行により、沈降したはんだ粉末は、基板配列電極との接触部位において、凝集(aggregation, amalgamation, bridging)すると、期待される。そして、本発明の一実施形態によれば、通常、この凝集した段階で、モードが前記加熱ステップ1−2のモードから、プリコートステップ1−3の加熱制御モードに切り換えられることになる。これに代え、配列電極との接触部位において、はんだ粉末から酸化膜が実質除去された段階、または除去されたとみなされる段階で、モードを前記加熱ステップ1−2のモードから、プリコートステップ1−3の加熱制御モードに切り換えるようにしてもよい。さらに、好適には、「時間プロファイル(図2参照)」を用いた「時間管理」により、加熱ステップ1−2とこれに続くプリコートステップ1−3を実施することができる。
【0022】
本発明で使用するはんだ組成物は、ビヒクル(フラックスビヒクル)にはんだ粉末を混合して作製されたものである。
【0023】
使用するはんだ組成物は、典型的に、はんだペースト、またはインク状はんだ組成物に属し、はんだ粉末の含有量は70重量%以下であり、好適には50重量%以下である。
【0024】
また、ビヒクルは、主成分であるコロホニー(ロジン)に添加剤を添加したものが使用できる。しかし、以上に限定されるものではない。
【0025】
典型的に、加熱ステップ1−2の実行により、はんだ組成物のはんだ融点mpより低いが電極に接触するはんだ粉末の酸化膜が実質除去(ほとんどまたは完全に除去)された状態で、加熱ステップ1−2からプリコートステップ1−3に切り換えられることになる。
【0026】
なお、モードの移行に関し、後述のように、積極的に温度センシングを利用する手法も考えられる。この場合、加熱ステップ1−2において、はんだ組成物のはんだ融点mpより低いが電極に接触するはんだ粉末の酸化膜が除去されたと考えられるような温度、または電極接触はんだ粉末が凝集したと期待されるような温度に基板温度(具体的には基板上面温度が好ましいが、温度勾配に配慮して基板下面温度でもかまわない、また基板上面温度と基板下面温度の両方を検知するようにしてもよい)が達したときに、これを検知して加熱ステップから前記プリコートステップに切り換えることになる。
【0027】
好適な実施形態において、加熱ステップ1−2は、基板上面への輻射加熱により実行され、プリコートステップ1−3における加熱制御は、基板下面への輻射加熱と熱風加熱の双方または一方を用いて行われる。その技術的意義は、プリコートステップ1−3において、電極から電極上のはんだ組成物の向きに負の温度勾配が生じるようにして、電極に接するはんだ粉末凝集体が溶融し、両者間に冶金的な結合(metallurgical bond)が確実に形成されるようにするためである。
【0028】
図1のようなはんだプリコート方法Pを実施すると、図2に例示するような時間プロファイル(図2の場合、横軸を時間軸に、縦軸を基板温度、たとえばはんだ組成物温度、たとえば電極に接触するはんだ粉末の温度にとった、時間/温度プロファイル)が実現される。逆にいうと、このような所望の時間プロファイルを設定モード(オフラインモード)において予め設定しておき、生産ライン時(オンライン時)に、設定した時間プロファイルを実行することで、所望のはんだプリコート方法を実施することができる。
【0029】
図2において、「移行」は「加熱ステップ」から「プリコートステップ」への移行を表している。「TC」は移行時の基板温度(移行温度)を表している。TCははんだ融点mpより少し低い温度に設定される。
【0030】
「TM」は時間プロファイル(時間/温度プロファイル)における最高温度を表し、この最高温度TMは融点mpよりある程度高く、プリコートステップの実行において一時的に発生する。
【0031】
図2において「主として上面からの輻射加熱」とあるのは、加熱ステップにおける加熱制御を表している。「主として上面からの輻射加熱」とは、この動作により、基板上面が基板下面より高温になることを意味している。すなわち、加熱ステップの準定常状態(安定状態)において、基板下面から基板上面に向けて温度勾配が「正」になることを意味している。基板下面からの加熱が一切無いことに限定されないことから「主として」という用語を使用している。
【0032】
同様に、図2において、「主として下面からの加熱」とあるのは、プリコートステップにおける加熱制御(輻射加熱と熱風加熱の並列稼働または単独稼働)を表している。「主として下面からの加熱」とは、この動作により、基板下面が基板上面より高温になることを意味している。すなわち、プリコートステップの準定常状態(安定状態)において、基板下面から基板上面に向けて温度勾配が「負」になることを意味している。基板上面からの加熱が一切無いことに限定されないことから「主として」という用語を使用している。
【0033】
移行温度TC、最高温度TMははんだ融点mpに配慮して決定することができる。移行温度TCに関しては、この温度TCに基板温度が達した段階で、電極に接触するはんだ粉末の酸化膜が実質除去されているとみなしえること、あるいは、電極接触はんだ粉末が凝集しているとみなしえることが望ましい。すなわち、移行温度TCは「酸化膜の実質除去」または「電極接触はんだ粉末の凝集体」が確実に発生しているような温度に設定することが好ましい。
【0034】
設定温度の具体例を示すと、はんだ融点mpが約219℃の場合で、移行温度TCが180〜200℃程度であり、最高温度TMが240〜260℃程度である。
【0035】
図3に、時間プロファイル管理によるはんだプリコート設定/実行方法Qのフローチャートを示す。
【0036】
まず、時間プロファイル設定ステップ3−1において、加熱ステップからプリコートステップへの移行が所望の条件下、たとえば、「電極接触はんだ粉末の凝集体の発生」または「はんだ粉末の酸化膜の実質除去」が確実視される状態下、で行われるように時間プロファイル、たとえば、図2に例示するような「時間/温度プロファイル」を設定する。
【0037】
たとえば、時間プロファイル設定ステップ3−1は、加熱ステップ1−2からプリコートステップ1−3への移行が所望の条件下で行われるように、加熱ステップ1−2において熱源(好適には輻射熱源)から発生する熱エネルギー、または基板エリアに供給される熱エネルギーの時間プロファイル、またはこれに相当する時間プロファイル、たとえば、基板における時間/温度プロファイルを設定するとともに、プリコートステップ1−3において熱源(輻射熱源と熱風熱源の双方またはいずれかを使用する)から基板エリアに供給される熱エネルギーの時間プロファイルまたはこれに相当する時間プロファイル、たとえば、基板における時間/温度プロファイルを設定することで、実現される。
【0038】
なお、相当する他の時間プロファイルとして、熱源に対する時間/給電プロファイルを設定し(たとえば、基板における時間/温度プロファイルから演算し)、同プロファイルを熱源の稼働制御に利用することができる。
【0039】
典型的には、オフライン時(設定モード時)に時間プロファイル設定ステップ3−1を実行する。
【0040】
オンライン時(はんだプリコートの生産時)に、はんだプリコートプロセスを実行する。すなわち、導入ステップ3−2(図1の導入ステップ1−1に相当する)を実行し、しかる後、時間プロファイル実行ステップ3−3を実行する。このステップ3−3では、設定した時間プロファイルに基づいて各熱源を稼働制御して、加熱ステップ1−2とそれに続くプリコートステップ1−3を実施する。
【0041】
なお、様々な種類の半導体パッケージングに対応して、種類毎に時間プロファイルを設定し、時間プロファイルのライブラリに登録しておくと都合がよい。
【0042】
この場合、はんだプリコートの生産に際し、生産する種類の情報に基づいて、時間プロファイルライブラリから、該当する時間プロファイル設定情報を取り出し(検索し)、この検索した時間プロファイル設定情報に基づいて時間プロファイル実行ステップ3−3を実行することになる。
【0043】
図3において、時間プロファイル実行ステップ3−3は、温度センシングを行うことなく、すなわち、温度センサを用いた温度フィードバック制御を行うことなく、実施することができる。たとえば、熱源から発生する熱エネルギー、または熱源への給電エネルギーを監視/制御する(この場合、時間プロファイル設定情報は、熱源から発生する熱エネルギーの時間プロファイルまたは熱源への給電エネルギーの時間プロファイルに、それぞれ対応する形式になる)ことで、実施できる。これは、非常に経済的であり、半導体パッケージングの更なる低コスト化に寄与する。
【0044】
代わりに、温度センサを利用して時間プロファイル実行ステップ3−3を実施することができる。温度センシングのために、コストは若干高めになるが、高精度の時間プロファイル管理が可能になる。
【0045】
具体例を図4に示す。図4の温度センシングはんだプリコートプロセスRは温度センサを利用した時間プロファイル実行ステップ3−3の一例である。各ステップ4−1〜4−7の記載から、プリコートプロセスRの詳細は明らかであるので、図の記載をもって、詳細な説明に代える。
【0046】
温度センサとしては、たとえば基板温度を非接触で検知する放射温度センサ(たとえば、赤外線センサ)が使用できる(たとえば、特開2000−332404参照)。なお、この特許文献(発明の名称は「リフロー装置」)の全内容は、リファレンスとして本書に組み込む。
【0047】
図4に示す温度センシングはんだプリコートプロセスRの代替形態について説明する。なお、この代替形態や図4の形態によれば、基板の表面温度を検知する基板温度センサを用意し、時間プロファイル実行ステップにおいて、予め設定した時間プロファイルが確実に実施されるように基板温度センサからの検出温度情報を利用している。また、加熱ステップからプリコートステップへの移行温度を予め規定しておき、時間プロファイル実行ステップにおいて、検出基板温度が移行温度に達したときに加熱ステップからプリコートステップに移行している。
【0048】
この代替形態では、温度センサに加え、タイマー(ソフトウェアタイマーまたはハードウェアタイマー)が使用される。加熱ステップ1−2を開始する際にこのタイマーをスタートさせるとともに熱源(好適には、基板上面を輻射加熱する輻射加熱源)を始動して加熱ステップ1−2をスタートさせる。その後の動作は次の通り。
【0049】
(S1)所定時間の経過毎にタイマーをインクリメントする。
【0050】
(S2)温度センサを用いて現時点における基板表面温度(実測値)を読む。
【0051】
(S3)実測値を、現時点における時間プロファイルにおける基板表面温度(設定値)と比較し、偏差をとる。
【0052】
(S4)時間プロファイルに沿った加熱ステップ実行のため、偏差を用いて、偏差が小さくなる方向に、熱源の稼働を制御する。
【0053】
(S5)偏差が所定値より小さければ、基板表面温度(実測値または設定値あるいは両者の平均値)が「移行温度TC」に達しているか判定する。
【0054】
(S6)達していなければS1に戻る。
【0055】
(S7)達していれば、移行(プリコートステップ1−3の始動)を実行する。以下の動作は次の通り。
【0056】
(S8)S1と同様なタイマー更新ステップの実行。
【0057】
(S9)S2と同様な実測値の取得ステップ実行。
【0058】
(S10)S3と同様な偏差計算ステップ実行。
【0059】
(S11)S4と同様な熱源稼働制御ステップ実行(ただし、プロコートステップの実行のために行われる)。
【0060】
(S12)基板表面温度(実測値)が時間プロファイルの「最高温度TM」に達しているか判定する。
【0061】
(S13)達していなければS8に戻る。
【0062】
(S14)達していれば、加熱リリース(解除)モードに移行する(以下、省略)。
【0063】
この代替形態も温度センシングを利用した具体例のひとつに過ぎず、様々な変形、改良が容易である。
【0064】
たとえば、時間/温度プロファイルに関し、加熱ステップにおけるランプ波形上昇率ramp-up rate(図2参照)は、典型的に約1.0℃/秒〜3.0℃/秒の範囲に収まることが、コンポーネントが受けるサーマルショック(熱ストレスなど)やクラッキングを回避するために望ましい。これを達成するには、温度センシングにより時間/温度プロファイルの標本列を読み、標本列に限界以上の温度上昇率が発生しないように熱源の稼働をコントロールすればよい。
【0065】
また、最高温度TMに関し、上記のようなポイント制御を取ることは必ずしも必要でない。好適な一実施形態において求められるのは、濡れ時間wetting time( time above liquidus(TAL))の管理であり、この濡れ時間(この期間中に最高温度TMの発生が見込まれる)が適切な時間(たとえば、均一な濡れを確保する最小必要時間以上で60秒以内)になるようにコントロールすることである。これを実現するには、濡れ時間タイマーを用意し、濡れ温度TW(はんだ融点より高いが最高温度TMより若干低い温度)を設定し、プリコートステップの実行において、検出温度が濡れ温度TWに最初に達したときに、濡れ時間タイマーをスタートさせ、基板温度がこれより低下しないように、かつ許容最高温度TMを超えないように加熱制御する。その後、濡れ時間タイマーが設定濡れ時間に達したら、基板が徐々に冷却されるように熱源を抑制稼働して冷却モード(cooling zone)に移行する。
【0066】
本発明の他の実施形態によれば、温度センサ以外のセンサを利用したはんだプリコート方法も実現可能である。たとえば、加熱ステップ1−2において、電極に接するはんだ粉末の凝集をモニタリング(検知)することが考えられる。
【0067】
実際に検証した具体例の1つを説明する。
【0068】
図5に示すように、半導体パッケージ用基板の4辺形の環状エリアにソルダーレジストの開口を形成した。レジスト開口は配列電極(図5において、個々の電極は黒く表示されている)と電極間スペース(白く表示されている)をカバーしている。はんだ組成物を用意する。はんだ組成物は、たとえばコロホニーを主成分として添加剤を添加したフラックスビヒクルに、30重量%の比率ではんだ粉末(たとえば、融点が約219℃のSn96.5Ag3.0Cu0.5)を混ぜて作製する。これによりインク状はんだ組成物(はんだインク)が得られる。
【0069】
次に、このレジスト開口部位にはんだインクをスクリーン印刷法により、スクリーンマスクを用いて印刷した(導入ステップ)。
【0070】
次に、加熱ステップ1−2を実施して、基板上面からの輻射加熱により、200℃程度まで基板を加熱した。
【0071】
その後、基板下面からの熱風加熱に変更し、はんだを溶融させ、電極上にはんだプリコートを形成した。良好なプリコートが得られた。
【0072】
上述したように、好適な実施形態(図1、図5参照)において、はんだ組成物が導入されるエリアは、個々の電極部位のみならず、電極間の部位もカバーする線状エリアまたは、連結エリアである。しかし、本発明はこれには限られず、他の形態が可能である。たとえば、電極間のスペースがある程度以上広い場合、この広いスペース(たとえば、図5に示す4角形レジスト開口の4隅)の全体にはんだ組成物を導入(典型的には塗布)する必要はない。代わりに、電極の存在しない比較的広いスペース(電極間スペース)には、はんだ組成物に含有されるフラックスビヒクルと同質のフラックスビヒクルを塗布することが、はんだ粉末の流れ込み(powder invasion)を低減または防止する上で好ましい。この手法では、たとえば、スクリーンマスクを2種類用意し、2回のスクリーン印刷を実行することで、簡単に導入ステップを実施可能である。たとえば、1回目で、ピースワイズの線上エリアにはんだ組成物を印刷し、2回目のスクリーン印刷で、電極の存在しない比較的広いスペースにフラックスビヒクルを印刷する。
【0073】
以上で、本発明の特定実施形態に関する説明を終えるが、これらは、本発明の原理を明らかにする目的でなされた例示にすぎない。本発明は様々な変更が容易であり、本発明の範囲は特許請求の範囲によって規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態に係るはんだプリコートプロセスのフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態に係るはんだプリコートプロセスの時間プロファイルを説明するグラフである。
【図3】時間管理に基づいた、本発明の実施形態に係るはんだプリコート設定/実行のフローチャートである。
【図4】温度センサを利用した、本発明の実施形態に係る温度センシングはんだプリコートプロセスのフローチャートである。
【図5】はんだ導入ステップの実施に好適な半導体パッケージ用基板と基板表面に形成されたソルダーレジスト開口を示す平面図である。
【符号の説明】
【0075】
P はんだプリコートプロセス
1―1 導入ステップ
1−2 加熱ステップ
1−3 プリコートステップ
TC 移行温度
TM 最高温度
mp はんだ融点
Q はんだプリコート設定/実行プロセス
3−1 時間プロファイル設定ステップ
3−2 導入ステップ
3−3 時間プロファイル実行ステップ
R 温度センシングはんだプリコートプロセス
4−1 導入ステップ
4−2 加熱ステップ開始
4−3 温度検出
4−4 温度比較
4−5 加熱続行
4−6 移行およびプリコートステップ開始
4−7 プリコートステップ時間プロファイル実行

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の配列電極のエリア上にはんだ組成物を導入する導入ステップと、
導入したはんだ組成物が存在する前記基板の上面が基板の下面より高温となり、かつ融点より低い温度にまで前記はんだ組成物が加熱されるように加熱制御する加熱ステップと、
前記加熱ステップの後、前記基板の下面が上面より高温となり、かつ前記はんだ組成物が溶融するように加熱制御して、はんだをプリコートするプリコートステップと、
を有するはんだプリコート方法。
【請求項2】
前記エリアは個々の電極部位のみならず、電極間の部位も含む連結エリアであり、前記導入ステップは、前記線状エリア上に前記はんだ組成物を略一様に塗布する請求項1に記載のはんだプリコート方法。
【請求項3】
少なくとも前記加熱ステップおよびプリコートステップはリフロー炉内において実行される請求項1に記載のはんだプリコート方法。
【請求項4】
前記加熱ステップにおいて、前記はんだ組成物の粘度が低下して、含有はんだ粉末が前記配列電極に向けて沈降する請求項1に記載のはんだプリコート方法。
【請求項5】
前記加熱ステップの実行により、沈降したはんだ粉末は、前記配列電極との接触部位において、凝集する請求項4に記載のはんだプリコート方法。
【請求項6】
前記凝集した段階で、モードを前記加熱ステップのモードから、前記プリコートステップの加熱制御モードに切り換える請求項5に記載のはんだプリコート方法。
【請求項7】
前記配列電極の電極間ピッチが100マイクロメートル以下である請求項1に記載のはんだプリコート方法。
【請求項8】
前記はんだ組成物は、ビヒクルにはんだ粉末を混合して作製されたものである請求項1に記載のはんだプリコート方法。
【請求項9】
前記加熱ステップは、前記基板上面への輻射加熱により実行される請求項1に記載のはんだプリコート方法。
【請求項10】
前記プリコートステップにおける加熱制御は、前記基板下面への輻射加熱と熱風加熱の双方または一方を用いて行われる請求項1に記載のはんだプリコート方法。
【請求項11】
前記加熱ステップにおいて、前記はんだ組成物のはんだ融点mpより低いが電極に接触するはんだ粉末の酸化膜が実質除去された状態で、前記加熱ステップから前記プリコートステップに切り換える請求項1に記載のはんだプリコート方法。
【請求項12】
前記加熱ステップにおいて、前記はんだ組成物のはんだ融点mpより低いが電極に接触するはんだ粉末の酸化膜が実質除去されたと考えられるような温度に基板上面温度が達したときに、前記加熱ステップから前記プリコートステップに切り換える請求項1に記載のはんだプリコート方法。
【請求項13】
前記加熱ステップ、前記プリコートステップ、および前者から後者への移行を時間管理により実行する請求項1に記載のはんだプリコート方法。
【請求項14】
熱源を用意し、
前記加熱ステップから前記プリコートステップへの移行が所望の条件下で行われるように、前記加熱ステップにおいて前記熱源から発生する熱エネルギーの時間プロファイル、またはこれに相当する時間プロファイル、たとえば時間/温度プロファイルを設定するとともに、前記プリコートステップにおいて前記基板エリアに供給される熱エネルギーの時間プロファイルまたはこれに相当する時間プロファイル、たとえば時間/温度プロファイルを設定する時間プロファイル設定ステップと、
前記設定した時間プロファイルに基づいて、前記熱源を制御して、前記加熱ステップとこれに続く前記プリコートステップを実施する時間プロファイル実行ステップを有する請求項13に記載のはんだプリコート方法。
【請求項15】
前記基板の表面温度を検知する温度センサを用意し、
前記時間プロファイル実行ステップは、前記設定した時間プロファイルが確実に実施されるように前記温度センサからの検出温度情報を利用する請求項14に記載のはんだプリコート方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−260149(P2009−260149A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109510(P2008−109510)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】