説明

はんだ付け方法及びリフローはんだ付け装置

【課題】
従来の超音波を用いたはんだ付け方法では、超音波振動子の高温化に伴う破壊やスループットの低下等の問題を有していた。
【解決手段】
被接続部材にはんだを供給し、リフロー炉内のステージに設置する第一の工程と、少なくとも前記はんだが溶融する温度にリフロー炉内の温度を上昇させる第二の工程と、前記はんだの溶融中に、超音波振動子と接続された音極を前期被接続部材に近づけて、前記被接続部材に振動を与える第三の工程と、前記被接続部材から前記超音波振動子と接続された音極を遠ざけ、前記リフロー炉内の温度を低下させて前記はんだを凝固させる第四の工程と、を有することを特徴とするはんだ付け方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毒性が少ないが、一般的にぬれ性が悪い鉛フリーはんだ合金を用いたリフローはんだ付け方法、及びこれを実現するリフローはんだ付け装置に関するものである。この鉛フリーはんだ合金は、有機基板等の回路基板への電子部品の接続に適用でき、220℃付近でのはんだ付けに用いられているSn−37Pb(単位:質量%)はんだの代替材として特に有効である。
【背景技術】
【0002】
従来の金属筐体へのはんだ付け方法としては、接続部に配置されたはんだ板材(プリフォーム)をリフロー炉の中で溶融させて接続する工程が主流となっている。
また、接続に使用されるはんだは地球環境保護の観点から鉛フリーはんだを使用することが必須であり、はんだとしては融点が200〜220℃付近のSn−Ag−Cu系を主体とした合金などが使用されている。
【0003】
しかしながら、鉛フリーはんだ合金は一般的に従来のSn−37Pbはんだと比較してぬれ性が悪く、特にSn−Zn系はんだの場合、はんだが接続部材に対してぬれ広がりにくく、結果としてはんだの広がり方が比較的少なくなった場所に応力集中し、そこが亀裂の早期発生点となることで接続信頼性が低下してしまう場合がある。
【0004】
そこで、ぬれ性を向上させるためにフラックスの供給量を増加させるとはんだ内にガスが残留し、その部分がはんだ内ボイドとなる。このボイドも接続信頼性低下をまねく危険性がある。
ぬれ性を向上させるためには、はんだの流動性を高めて、はんだの溶融物性を改善する、すなわち、溶融時のはんだの表面張力や動粘度を低くすれば良い。
【0005】
しかし、溶融物性ははんだのベース金属である錫の含有量によって殆どが決まってしまうため、はんだの組成を大きく変えてしまうと融点も大きく変わり場合によってははんだ付けに適さなくなってしまうため、はんだの組成によって溶融物性を制御するのは不可能である。
【0006】
さらに、鉛フリーはんだのなかでも、最も汎用的に使用されているSn−Ag−Cu系は組成によっては引け巣の発生が著しく、熱機械的なストレスが原因ではんだ内に発生したクラックを介してこの引け巣が前述のボイドと連結すると相乗効果で著しく接続信頼性が低下してしまう場合がある。
【0007】
これに対し、特許文献1では、超音波振動の振動エネルギーにより発生する応力により、はんだのぬれ性を得てはんだ付けを行なう方法が提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開平08−174206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者等は、上記問題点に対して、以下のような方法に効果があると考えた。
(ア)はんだ付けを窒素などの不活性雰囲気中で実施し、はんだ酸化物の出現を抑える、
(イ)はんだの流路幅を広くかつ、屈曲部を無くして流路形状を単純化する、
(ウ)超音波によりはんだの表面張力などを低下させる
しかし、上記(ア)では従来の技術で鉛フリーはんだの使用時には通常使用されるものであり、さらに、上記(イ)は被接続物側の仕様変更での対応方法であるが、被接続物が微細化するに伴い実現は困難となるため、適当でない。
【0010】
これに対して、上記特許文献1のように(ウ)の手段を用いることが有効であるが、従来技術においては以下の点が検討されておらず、課題を有していた。
すなわち、超音波を用いる場合、効果を得るためには超音波振動子を被接続部材付近に配置する又はこれに接触させなければならないところ、超音波振動子は耐熱温度が100度程度と低く、高温下のリフロー炉内で長時間使用すると破壊してしまうため、短時間しか使用できず、リフロー炉の中の高温雰囲気中で恒常的に使用することができなかった。また、一度使用され、超音波振動子が一旦高温になると、次に使用するまで温度が下がるのを待たなければならず、高温化防止又は高速低温化の施策がなされていない為、全体としてスループット低下を招いていた。
【0011】
また、一般的な鉛フリーはんだの溶融状態における音波の波長は音速を周波数で割った値であることから、超音波振動子の周波数が大きいほど波はきめ細かくなり、はんだ表面付近の溶融物性値は変化するものの、溶融はんだが大きな波長の波を持つ場合には溶融はんだの一部が周辺にあふれたり、液滴が周辺に飛散しやすくなる等の問題が生じるため、被接続部材がはんだ付け時にずれを生じないように十分なセルフアライメントの確保や適切なガイド構造が必要であるところ、上記特許文献1の従来技術においてはこれらが何ら検討されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するものであり、はんだの流動を比較的容易に実現して、高信頼接続を実現するはんだ付け方法及びこれに用いるリフローはんだ付け装置を提供するものである。本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば以下の通りである。
(1)被接続部材にはんだを供給し、リフロー炉内のステージに設置する第一の工程と、少なくとも前記はんだが溶融する温度にリフロー炉内の温度を上昇させる第二の工程と、前記はんだの溶融中に、超音波振動子と接続された音極を前記被接続部材に近づけて、前記被接続部材に振動を与える第三の工程と、前記被接続部材から前記超音波振動子と接続された音極を遠ざけ、前記リフロー炉内の温度を低下させて前記はんだを凝固させる第四の工程と、を有することを特徴とするはんだ付け方法である。
(2)被接続部材にはんだを供給する第一の工程と、前記はんだに光を照射して溶融させる第二の工程と、前記はんだの溶融中に、超音波振動子に接続された音極と前記被接続部材とを近づけて、前記被接続部材に振動を与える第三の工程と、前記被接続部材と前記超音波振動子に接続された音極とを遠ざけ、前記はんだを凝固させる第四の工程と、を有することを特徴とするはんだ付け方法である。
(3)炉体と、前記炉体に固定され、はんだが供給された被接続部材を搭載するステージと、前記炉体内に設けられ、前記被接続部材を加熱するヒーターと、前記被接続部材に近づく又は接触する音極と、前記音極と接続され、前記音極に超音波振動を付与する超音波振動子と、前記音極及び前記超音波振動子を支持し、上下に可動するスライダーと、を有することを特徴とするリフローはんだ付け装置である。
(4)筐体と、前記筐体に対して上下に可動し、はんだが供給された被接続部材を搭載するステージと、前記はんだに光を照射して加熱する光源と、前記被接続部材に近づく又は接触する音極と、前記音極と接続され、前記音極に超音波振動を付与する超音波振動子と、を有することを特徴とするリフローはんだ付け装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、はんだの流動を比較的容易に実現して、高信頼接続を実現するはんだ付け方法及びこれに用いるリフローはんだ付け装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るリフローはんだ付け装置の第一の実施形態は、図1に示す通り、リフロー炉の炉体1と、炉体1の上方に固定され、はんだが供給された被接続部材2を搭載するステージ3と、被接続部材2を加熱するヒーター4(シーズヒータ等)と、被接続部材の下方に近づける又は接触させる音極5と、音極5と接続され、これに超音波振動を付与する超音波振動子6と、音極5と超音波振動子6とを支持する超音波発信器本体7と、超音波発信機本体7と接続して音極5と超音波振動子6とを支持し、炉体1に対して上下に可動するスライダー8と、スライダー8が移動して炉体1の下方で待機する領域とステージ3及びヒーター4とが設けられた領域との間に設けられた耐火壁9とを有して構成される。
【0015】
本実施形態のリフローはんだ付け装置を用いたはんだ付けでは、被接続部材2のはんだが溶融している間にスライダー8が上昇し、超音波振動子6より超音波振動が付与された音極5により被接続部材2に対して直接あるいは波長に変化を生じさせない程度に間接的に超音波加振が行われる。これによれば、スライダー8によるガイド構造により被接続部材2に対して正確に加振することができ、適切にはんだのぬれ性を向上させることができる。また、加振後には、スライダー8により超音波振動子6を炉体1内において温度が低い下方に移動・退避させることで、超音波振動子6の高温化に伴う破壊を防止することができる。ここで、図示しないが、超音波振動子を温度フィルタリングして、耐熱温度に到達する前に自動的に移動・退避する手段を設けておくと、より有効である。さらに、この下方の領域と高温下に置かれるヒーター4が設けられた領域との間に耐火壁9を設けることで、下方領域の高温化を抑制することが可能となり、スループットの低下をより抑制することができる。
【0016】
次に、本発明に係るリフローはんだ付け装置の第二の実施形態について、図2を用いて説明する。
多くの構成で第一の実施形態と共通するものの、第一の実施形態と比較した本実施形態の主な特徴は、超音波振動子6をガラスウールなどの断熱材10で覆った構成とした点であり、これにより、超音波振動子6の温度上昇を遅延できるほか、長時間の超音波加振が可能となる。すなわち、本実施形態のリフローはんだ付け装置を用いたはんだ付けにおいては、はんだ溶融中に長時間にわたって超音波加振ができるため、はんだ付け時にはんだ内に発生しうるフラックスアウトガス起因のボイドの影響が問題となる組成のはんだに対しては有効となる。
【0017】
なお、図2においては、炉体1の下方にステージ3及びヒーター4を設け、被接続部材2の上から音極5を近づける例を示しているが、第一の実施形態のように、これらの位置関係を上下反対にしても、また、耐火壁9を設けた構成にしても構わない。
【0018】
次に、本発明に係るリフローはんだ付け装置の第三の実施形態は、図3に示すように、リフロー炉の炉体1と、炉体1の下方に固定され、はんだが供給された被接続部材2を搭載して上下に可動するステージ3と、被接続部材2を加熱するヒーター4と、被接続部材2の上方に近づける又は接触させる音極5と、炉体1の外部に配置され、音極5と接続してこれに超音波振動を付与する超音波振動子6と、音極5と超音波振動子6とを支持する超音波発信器本体7とを有して構成される。
【0019】
本実施形態の主な特徴は、炉体を十分小型化して、超音波振動子6を炉体1の外部に配置した点であり、超音波振動子6が直接高温環境下に置かれることなく、被接続部材2に超音波を加振することができる点で有効である。これを用いたはんだ付けにおいては、超音波振動子6は音極5から伝達される熱の影響のみで直接高温環境下に置かれないため、長時間の超音波加振ができるほか、超音波振動子6の冷却を待つ時間も短縮でき、スループットの向上も図ることができる。
【0020】
なお、本実施の形態では、ステージ3を可動な構成とすることで、被接続部材2と音極5との正確な位置合せを行なう例を示したが、これに限られず、図4のように、炉体1の外部に超音波発信器本体7と接続されたスライダー8を設けると共に、炉体1にシャッター11を設けて、適宜シャッター11を開閉させ、超音波振動子6が炉体1内に入らない範囲で可動な構成としてもよい。炉内を窒素などの不活性雰囲気とする必要があるときは、シャッター11により大気が炉内に入りにくくなるため、大気中の酸素の炉内侵入によるはんだぬれ性低下防止に有効である。また、図5のように、超音波振動子6を外部に配置する代わりに、必要に応じて冷媒により冷却することができるシリンダー12内に配置することも可能である。この場合にも、超音波発信器本体7が炉内と炉外とを隔絶するピストンの役割をも担うため、炉内への大気侵入によるはんだぬれ性低下を防止することができる。このほか、超音波振動子6と音極5との接続部に伸縮可能な手段を設け、超音波振動子6を動かすことなく、音極5だけを可動とする構成としてもよい。
【0021】
また、本実施形態においては、ステージ3が炉体1の下方に固定され、炉体1の上方に超音波振動子6等を配置する構成を示したが、第一の実施形態のように、これらの上下の構成を適宜反対にしたものであっても構わない。
【0022】
次に、本発明に係るリフローはんだ付け装置の第四の実施形態は、図6に示すように、筐体13と、筐体13の下方に固定され、はんだが供給された被接続部材2を搭載して上下に可動するステージ3と、被接続部材2に局所的に光を照射し加熱する赤外線ランプ等の光源14と、被接続部材2の上方に近づく又は接触させる音極5と、筐体13の外部に配置され、音極5と接続してこれに超音波振動を付与する超音波振動子6と、音極5と超音波振動子6とを支持する超音波発信器本体7とを有して構成される。
【0023】
多くの構成で第三の実施形態と共通するものの、第三の実施形態と比較した本実施形態の主な特徴は、被接続部材2の加熱を光源14で行なう構成とした点であり、このような局所加熱方式は筐体13内全体が高温下に置かれるわけではないため、超音波振動子6の温度上昇を防止することが可能となる。従って、図4では超音波振動子6を筐体13の外部に配置する例を示したが、筐体13の内部にあっても構わない。すなわち、本実施形態のリフローはんだ付け装置を用いたはんだ付けにおいては、音極5に直接赤外線ビームが当たらないようにすることで、超音波振動子6のみならず音極5もほとんど高温とならないため、長時間の超音波加振ができるほか、超音波振動子6の冷却を待つこともなく、他の実施形態を用いたはんだ付けよりもスループットの向上を図ることができる。
【0024】
なお、本実施の形態では、第三の実施形態と同様に、ステージ3を可動とするのでなく、筐体13の外部に超音波発信器本体7と接続されたスライダーを設けて、超音波振動子6が筐体13内に入らない範囲で可動な構成としてもよく、超音波振動子6と音極5との接続部に伸縮可能な手段を設け、超音波振動子6を動かすことなく、音極5だけを可動とする構成としてもよい。また、第一の実施形態のように、各構成の上下を適宜反対にしたものであってもよい。また、図4では光源14が2つの場合を示したが、光源の個数はこれに限られず、1個であっても3個以上であっても構わない。
【0025】
以下、本発明で開示したいくつかの実施形態のリフローはんだ付け装置を用いてはんだ付けした製品の接続信頼性について、具体的に実施した実験結果を示す。
【0026】
筐体内部に不活性ガスを封止する構造を持つ製品の該筐体に筐体内部と外部の間で電気信号を伝達する金属コネクタをはんだ接続し、該はんだ接続部から不活性ガスがリークしないようにする必要がある形態の実験例について説明をする。
このアルミ合金製筐体には、はんだ付け時にステンレス製コネクタのずれが生じないようガイドされている。
なお、アルミ合金製筐体、およびステンレス製コネクタには表面にニッケルめっきが施されている。また、正常にはんだ付けがなされると、アルミ合金製筐体、およびステンレス製コネクタの最も狭い50μmの間隙にもはんだが入り込むことになる。
フラックスはイソプロピルアルコールがベースで活性剤として2%の塩化物を含んでいるものとした。
リフローはんだ付けは、代表的な鉛フリーはんだであるSn−3Ag−0.5Cuを用いて、昇温速度1.6℃/秒、ピーク温度250℃で実施された。
なお、これらの条件は以下に示す実験例の全てにおいて適用した。
【0027】
[実験例1]
リフロー炉はバッチ式のものを使用し、リフローはんだ付けする際、超音波振動子(周波数:35kHz、出力1000W)の振動によりはんだのぬれを改善できる機構が備わっており、この炉を使用して、
(A)接続部の温度がピークの250℃に到達してから、はんだが溶融状態のときに10秒間超音波による加振を行なった後、炉のヒータースイッチを切ってはんだを凝固させたもの、
(B)超音波による加振を全く行わず、はんだ付けし、炉のヒータースイッチを切ってはんだを凝固させたもの、
の2種類のアルミ筐体サンプルを各20個ずつ合計40個作製した。
【0028】
その後、上記2種類の筐体を用いて実使用条件10年相当の温度サイクル試験(−30〜80℃、1サイクル/時、180サイクル)を実施した。
その結果、はんだの中のクラック進展によりはんだ接続部から不活性ガスの著しいリークが起きていたサンプルの発生率は、
(A)の場合・・・0%
(B)の場合・・・20%
であった。
【0029】
はんだ接続部のX線透視や断面観察による不良解析を実施すると、(B)の20%リーク不良の発生原因は主に、はんだ付け時にはんだ内に発生したフラックスアウトガス起因のボイドであり、温度サイクル試験時にはんだ接続部に発生したクラックがこのボイドと連結することで、早期にリークが開始してしまうことがわかった。
これにより、はんだ付け時に超音波加振することに効果があることがわかった。
【0030】
[実験例2]
リフロー炉はバッチ式のものを使用し、リフローはんだ付けする際、超音波振動子(周波数:35kHz、出力1000W)の振動によりはんだのぬれを改善できる機構が備わっており、この炉を使用して、
(C)接続部の温度がピークの250℃に到達してから、はんだが溶融状態のときに10秒間超音波による加振を行なった後、炉のヒータースイッチを切って、さらに振動子を炉内の最低温度部(雰囲気温度40℃の場所)に退避させて、はんだを凝固させたもの、
(D)接続部の温度がピークの250℃に到達してから、はんだが溶融状態のときに10秒間超音波による加振を行なった後、炉のヒータースイッチを切ってはんだを凝固させたもの、
の2種類のアルミ筐体サンプルを各20個ずつ合計40個作製した。
【0031】
その後、上記2種類の筐体を用いて実使用条件10年相当の温度サイクル試験(−30〜80℃、1サイクル/時、180サイクル)を実施した。
その結果、はんだの中のクラック進展によりはんだ接続部から不活性ガスの著しいリークが起きていたサンプルの発生率は、(C)、(D)いずれの場合も0%であった。
【0032】
しかし、振動子が十分冷却されるためにはんだ付けができず待機してなくてはいけない時間は両者の間に差が発生し、
(C)の場合・・・2分
(D)の場合・・・5分
となった。
よって、(C)の場合は、(D)の2.5倍の速度で製品の生産が可能となり、耐熱性の低い超音波振動子をリフロー炉の中で使用する際、超音波振動子が温度上昇しないよう、振動子が炉内の低温部に退避するかあるいは炉外へ移動できるようにすることにより、生産速度を向上させる効果があることがわかった。
【0033】
[実験例3]
リフロー炉はバッチ式のものを使用し、リフローはんだ付けする際、超音波振動子(周波数:35kHz、出力1000W)の振動によりはんだのぬれを改善できる機構が備わっている。
いま、この炉を使用して、接続部の温度がピークの250℃に到達してから、はんだが溶融状態のときに超音波による加振を開始し、振動子が80℃に到達したとき炉のヒータースイッチを切って、さらに振動子を炉内の最低温度部(雰囲気温度40℃の場所)に退避させて、はんだを凝固させることにした。
【0034】
また、振動子は、
(E)厚さ10mmのガラスウールで包み、さらにこの部分をステンレス製のカバーで覆っているもの、
(F)そのままのもの、
の2種類を使用してはんだ付けを行い、アルミ筐体サンプルを各20個ずつ合計40個作製した。
その結果、振動子が十分冷却されるためにはんだ付けができず待機してなくてはいけない時間は両者の間に差が発生し、
(E)の場合・・・3分
(F)の場合・・・2分
と、(E)の方が長時間待機する必要があった。
【0035】
しかし、はんだが溶融状態のときに超音波による加振を開始し、振動子が80℃に到達して炉のヒータースイッチを切るまでの時間は、
(E)の場合・・・15秒
(F)の場合・・・10秒
と、(E)の方が長時間超音波加振が可能であった。
【0036】
その後、上記2種類の筐体を用いて実使用条件20年相当の温度サイクル試験(−30〜80℃、1サイクル/時、360サイクル)を実施した。
その結果、はんだの中のクラック進展によりはんだ接続部から不活性ガスの著しいリークが起きていたサンプルの発生率は、
(E)の場合・・・0%
(F)の場合・・・20%
であった。
【0037】
はんだ接続部のX線透視や断面観察による不良解析を実施すると、(F)の20%リーク不良の発生原因は主に、はんだ付け時にはんだ内に発生したフラックスアウトガス起因の微細なボイドであり、温度サイクル試験時にはんだ接続部に発生したクラックがこのボイドと連結することで、(F)の場合は比較的早期にリークが開始してしまうことがわかった。
よって、(E)の場合は、製品1台あたりの生産時間が(F)の1.5倍かかるが、耐熱性の低い超音波振動子を長時間リフロー炉の中で使用できるため、接続信頼性を向上させる効果があることがわかった。
【0038】
[実験例4]
リフロー炉はバッチ式のものを使用し、リフローはんだ付けする際、超音波振動子(周波数:35kHz、出力1000W)の振動によりはんだのぬれを改善できる機構が備わっている以下の、
(G)炉体が小型でそのサイズが概ね一辺250mmの立方体の形状であり、耐熱性の低い超音波振動子をリフロー炉の中で使用する際、超音波振動子が温度上昇しないよう、音極の部分のみが炉内に入り、振動子の部分が常に炉外へ出ているもの、
(H)炉のサイズが概ね一辺400mmの立方体の形状であり、炉のヒータースイッチを切って、さらに振動子を炉内の最低温度部(雰囲気温度40℃の場所)に退避させるもの、
の2種類の炉とした。
【0039】
以上の2種類の炉を使用して、接続部の温度がピークの250℃に到達してから、はんだが溶融状態のときに10秒間超音波による加振を行なった後、炉のヒータースイッチを切ることにより、アルミ筐体サンプルを各20個ずつ合計40個作製した。
その後、上記2種類の筐体を用いて実使用条件10年相当の温度サイクル試験(−30〜80℃、1サイクル/時、180サイクル)を実施した。
その結果、はんだの中のクラック進展によりはんだ接続部から不活性ガスの著しいリークが起きていたサンプルの発生率は、(G)、(H)いずれの場合も0%であった。
【0040】
しかし、振動子が十分冷却されるためにはんだ付けができず待機してなくてはいけない時間は、言うまでもなく両者間で差が発生し、
(G)の場合・・・30秒
(H)の場合・・・2分
となった。
よって、炉体が小型で耐熱性の低い超音波振動子が温度上昇しないよう、音極の部分のみが炉内に入り、振動子の部分が常に炉外へ出ている(G)の場合は、(H)の場合と同様の接続信頼性を実現でき、さらに生産速度を向上させる効果があることがわかった。
【0041】
[実験例5]
リフロー炉はバッチ式のものを使用し、リフローはんだ付けする際、超音波振動子(周波数:35kHz、出力1000W)の振動によりはんだのぬれを改善できる機構が備わっている以下の、
(I)炉体が小型でそのサイズが概ね一辺250mmの立方体の形状であり、炉の熱源を赤外線ランプとし、耐熱性の低い超音波振動子をリフロー炉の中で使用する際、超音波振動子が温度上昇しないよう、音極の部分のみが炉内に入り、振動子の部分が常に炉外へ出ており、赤外線ランプのビームの焦点が音極から離れているもの、
(J)炉体が小型でそのサイズが概ね一辺250mmの立方体の形状であり、炉の熱源をシーズヒータとし、耐熱性の低い超音波振動子をリフロー炉の中で使用する際、超音波振動子が温度上昇しないよう、音極の部分のみが炉内に入り、振動子の部分が常に炉外へ出ているもの、
の2種類の炉とした。
【0042】
以上の2種類の炉により、アルミ筐体サンプルを各20個ずつ合計40個作製した。
その後、上記2種類の筐体を用いて実使用条件10年相当の温度サイクル試験(−30〜80℃、1サイクル/時、180サイクル)を実施した。
その結果、はんだの中のクラック進展によりはんだ接続部から不活性ガスの著しいリークが起きていたサンプルの発生率は、(I)、(J)いずれの場合も0%であった。
【0043】
しかし、振動子が十分冷却されるためにはんだ付けができず待機してなくてはいけない時間は、言うまでもなく両者間で差が発生し、
(I)の場合・・・0秒
(J)の場合・・・30秒
となった。
よって、耐熱性の低い超音波振動子をリフロー炉の中で使用する際、超音波振動子が温度上昇しないよう、被加熱物の加熱方法を赤外線ランプなどの局所加熱方式とし振動子に直接赤外線ビームが当たらないようにする(I)の場合は、(J)の場合と同様の接続信頼性を実現でき、さらに生産速度を向上させる効果があることがわかった。
【0044】
[実験例6]
リフロー炉はバッチ式のものを使用し、炉内に窒素を供給し概ね酸素濃度1000ppmの雰囲気でリフローはんだ付けする際、超音波振動子(周波数:35kHz、出力1000W)の振動によりはんだのぬれを改善できる機構が備わっており、この炉を使用して、
(K)接続部の温度がピークの250℃に到達してから、はんだが溶融状態のときに10秒間超音波による加振を行なった後、炉のヒータースイッチを切って、さらに振動子を炉外に退避させた後、炉体表面にできた開口部をシャッターによって閉じ、はんだを凝固させたもの、
(L)接続部の温度がピークの250℃に到達してから、はんだが溶融状態のときに10秒間超音波による加振を行なった後、炉のヒータースイッチを切って、さらに振動子を炉外に退避させて、はんだを凝固させたもの、
の2種類のアルミ筐体サンプルを各20個ずつ合計40個作製した。
【0045】
その後、上記2種類の筐体を用いて実使用条件10年相当の温度サイクル試験(−30〜80℃、1サイクル/時、180サイクル)を実施した。
その結果、はんだの中のクラック進展によりはんだ接続部から不活性ガスの著しいリークが起きていたサンプルの発生率は、(K)、(L)いずれの場合も0%であった。
【0046】
しかし、振動子が十分冷却され、次のロットのはんだ付け準備のために炉内の酸素濃度を1000ppmの不活性雰囲気にするために待機してなくてはいけない時間は両者の間に差が発生し、
(K)の場合・・・2分
(L)の場合・・・3分
となった。
よって、(K)の場合は、(L)の1.5倍の速度で製品の生産が可能となり、耐熱性の低い超音波振動子をリフロー炉の中で使用する際、超音波振動子が温度上昇しないよう、振動子を炉外に退避させた後、炉体表面にできた開口部をシャッターによって閉じることにより、生産速度を向上させる効果があることがわかった。
【0047】
[実験例7]
リフロー炉はバッチ式のものを使用し、炉内に窒素を供給し概ね酸素濃度1000ppmの雰囲気でリフローはんだ付けする際、超音波振動子(周波数:35kHz、出力1000W)の振動によりはんだのぬれを改善できる機構が備わっており、この炉を使用して、
(M)接続部の温度がピークの250℃に到達してから、はんだが溶融状態のときに10秒間超音波による加振を行なった後、炉のヒータースイッチを切って、さらに炉内と連結しており、必要に応じて冷媒により冷却することの出来るシリンダー内に振動子を退避し、振動子を持つ加振部が炉内と炉外を隔絶するピストンの役割を持った状態を維持させながら、はんだを凝固させたもの、
(N)接続部の温度がピークの250℃に到達してから、はんだが溶融状態のときに10秒間超音波による加振を行なった後、炉のヒータースイッチを切って、さらに振動子を炉外に退避させて、はんだを凝固させたもの、
の2種類のアルミ筐体サンプルを各20個ずつ合計40個作製した。
【0048】
その後、上記2種類の筐体を用いて実使用条件10年相当の温度サイクル試験(−30〜80℃、1サイクル/時、180サイクル)を実施した。
その結果、はんだの中のクラック進展によりはんだ接続部から不活性ガスの著しいリークが起きていたサンプルの発生率は、(M)、(N)いずれの場合も0%であった。
【0049】
しかし、振動子が十分冷却され、次のロットのはんだ付け準備のために炉内の酸素濃度を1000ppmの不活性雰囲気にするために待機してなくてはいけない時間は両者の間に差が発生し、
(M)の場合・・・20秒
(N)の場合・・・3分
となった。
よって、(M)の場合は、(N)の9倍の速度で製品の生産が可能となり、耐熱性の低い超音波振動子をリフロー炉の中で使用する際、超音波振動子が温度上昇しないよう、炉内と連結しており、必要に応じて冷媒により冷却することの出来るシリンダー内に振動子を退避し、振動子を持つ加振部が炉内と炉外を隔絶するピストンの役割を持った状態を維持させることにより、生産速度を向上させる効果があることがわかった。
【0050】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態を用いて説明すると共に、具体的な実験例を説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係るリフローはんだ付け装置の第一の実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係るリフローはんだ付け装置の第二の実施形態を示す図である。
【図3】本発明に係るリフローはんだ付け装置の第三の実施形態を示す図である。
【図4】本発明に係るリフローはんだ付け装置の第三の実施形態の変形例1を示す図である。
【図5】本発明に係るリフローはんだ付け装置の第三の実施形態の変形例2を示す図である。
【図6】本発明に係るリフローはんだ付け装置の第四の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 炉体、
2 被接続部材、
3 ステージ、
4 ヒーター、
5 音極、
6 超音波振動子、
7 超音波発信器本体、
8 スライダー、
9 耐火壁、
10 断熱材、
11 シャッター、
12 シリンダー、
13 筐体、
14 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接続部材にはんだを供給し、リフロー炉内のステージに設置する第一の工程と、
少なくとも前記はんだが溶融する温度にリフロー炉内の温度を上昇させる第二の工程と、
前記はんだの溶融中に、超音波振動子と接続された音極を前記被接続部材に近づけて、前記被接続部材に振動を与える第三の工程と、
前記被接続部材から前記超音波振動子と接続された音極を遠ざけ、前記リフロー炉内の温度を低下させて前記はんだを凝固させる第四の工程と、
を有することを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項2】
請求項1記載のはんだ付け方法であって、
前記第四の工程では、前記超音波振動子と接続された音極を、前記リフロー炉内の前記被接続部材が設置されたステージより下方に移動させることを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のはんだ付け方法であって、
前記超音波振動子は、断熱材で覆われていることを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項4】
請求項3記載のはんだ付け方法であって、
前記断熱材は、ガラスウールであることを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項5】
請求項1記載のはんだ付け方法であって、
前記第四の工程では、前記超音波振動子と接続された音極を、前記リフロー炉内のシリンダー内に移動させることを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項6】
請求項5記載のはんだ付け方法であって、
さらに、前記シリンダー内に移動した前記超音波振動子に接続された音極を、前記シリンダー内で冷却する第五の工程を有することを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のはんだ付け方法であって、
前記第三の工程及び第四の工程は、前記リフロー炉の外部に前記超音波振動子を配置した状態で実施することを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項8】
被接続部材にはんだを供給する第一の工程と、
前記はんだに光を照射して溶融させる第二の工程と、
前記はんだの溶融中に、超音波振動子に接続された音極と前記被接続部材とを近づけて、前記被接続部材に振動を与える第三の工程と、
前記被接続部材と前記超音波振動子に接続された音極とを遠ざけ、前記はんだを凝固させる第四の工程と、
を有することを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項9】
請求項8記載のはんだ付け方法であって、
前記第二の工程では、赤外線ランプを用いて光を照射することを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項10】
炉体と、
前記炉体に固定され、はんだが供給された被接続部材を搭載するステージと、
前記炉体内に設けられ、前記被接続部材を加熱するヒーターと、
前記被接続部材に近づく又は接触する音極と、
前記音極と接続され、前記音極に超音波振動を付与する超音波振動子と、
前記音極及び前記超音波振動子を支持し、上下に可動するスライダーと、
を有することを特徴とするリフローはんだ付け装置。
【請求項11】
請求項10記載のリフローはんだ付け装置であって、
前記ステージ及び前記ヒーターは、前記炉体内の上方に配置されており、
前記音極及び前記超音波振動子は、前記ステージよりも下方で前記スライダーにより上下に可動となるように配置されていることを特徴とするリフローはんだ付け装置。
【請求項12】
請求項11記載のリフローはんだ付け装置であって、
前記炉体内には、前記ヒーターよりも下方に耐火壁を有することを特徴とするリフローはんだ付け装置。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれかに記載のリフローはんだ付け装置であって、
前記超音波振動子は、断熱材で覆われていることを特徴とするリフローはんだ付け装置。
【請求項14】
請求項13記載のリフローはんだ付け装置であって、
前記断熱材は、ガラスウールであることを特徴とするリフローはんだ付け装置。
【請求項15】
請求項10記載のリフローはんだ付け装置であって、
さらに、前記超音波振動子を冷却するシリンダーを有することを特徴とするリフローはんだ付け装置。
【請求項16】
請求項10乃至15のいずれかに記載のリフローはんだ付け装置であって、
前記超音波振動子は、前記炉体の外部に配置されていることを特徴とするリフローはんだ付け装置。
【請求項17】
筐体と、
前記筐体に対して上下に可動し、はんだが供給された被接続部材を搭載するステージと、
前記はんだに光を照射して加熱する光源と、
前記被接続部材に近づく又は接触する音極と、
前記音極と接続され、前記音極に超音波振動を付与する超音波振動子と、
を有することを特徴とするリフローはんだ付け装置。
【請求項18】
筐体と、
前記筐体に固定され、はんだが供給された被接続部材を搭載するステージと、
前記はんだに光を照射して加熱する光源と、
前記被接続部材に近づく又は接触する音極と、
前記音極と接続され、前記音極に超音波振動を付与する超音波振動子と、
前記音極及び前記超音波振動子を支持し、上下に可動するスライダーと、
を有することを特徴とするリフローはんだ付け装置。
【請求項19】
請求項17又は18記載のリフローはんだ付け装置であって、
前記光源は、赤外線ランプであることを特徴とするリフローはんだ付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−94370(P2009−94370A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265070(P2007−265070)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】