説明

はんだ印刷方法及びはんだ印刷装置

【課題】本発明は、円形形状を含む半導体ウエハーに対して、均一なはんだバンプを形成することができるはんだ印刷方法及びはんだ印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】円形形状を含む半導体ウエハー110、110a、110b上に開口部121を有するマスク120を載置し、該マスク120上ではんだペースト130の付着したスキージ10を移動させ、前記開口部121にはんだバンプを形成するはんだ印刷方法であって、
前記スキージ10が前記マスク120上を移動するときに、前記半導体ウエハー110、110a、110bに対する前記スキージ10の位置を検出し、
前記スキージ10の位置から求められる前記スキージ10と前記マスク120との接触面積の変化に応じて、前記スキージ10に印加する目標印圧を変化させる印圧制御を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ印刷方法及びはんだ印刷装置に関し、特に、円形形状を含む半導体ウエハー上に開口部を有するマスクを載置し、開口部にはんだバンプを形成するはんだ印刷方法及びはんだ印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板上に配置されるスクリーンマスクを介して、基板上の所定位置にクリーム半田を印刷するようにしたスクリーン印刷装置において、スクリーンマスク上にスキージ部を押しつけた状態で摺動させて基板上にクリーム半田を印刷する際に、印刷圧力の検出手段による印刷圧力の検出結果に応じて制御手段によりスキージ部のアタック角度変更手段を制御するようにし、印刷位置に対してより正確にクリーム半田を印刷することができるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる特許文献1に記載の構成によれば、プリント基板のように、長方形形状をしている基板に対しては、プリント基板のどの位置でスクリーン印刷を行っている場合であっても、略同一の印刷圧力が得られるため、圧力を中心に半田の押し込み力が最適値となるような制御を行うことが可能となる。
【特許文献1】特開2001−47599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の構成では、円形形状を含む半導体ウエハー等の基板にはんだバンプを印刷する場合には、スキージの位置によりスキージとスクリーンマスクとの接触面積が変化し、接触抵抗の変化によりスキージの位置により圧力が大きく変化するため、特許文献1に記載のスクリーン印刷方法をそのまま半導体ウエハーには適用できないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、円形形状を含む半導体ウエハーに対しても、均一なはんだバンプを形成することができるはんだ印刷方法及びはんだ印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明に係るはんだ印刷方法は、円形形状を含む半導体ウエハー(110、110a、110b)上に開口部(121)を有するマスク(120)を載置し、該マスク(120)上ではんだペースト(130)の付着したスキージ(10)を移動させ、前記開口部(121)にはんだバンプを形成するはんだ印刷方法であって、
前記スキージ(10)が前記マスク(120)上を移動するときに、前記半導体ウエハー(110、110a、110b)に対する前記スキージ(10)の位置を検出し、
前記スキージ(10)の位置から求められる前記スキージ(10)と前記マスク(120)との接触面積の変化に応じて、前記スキージ(10)に印加する目標印圧を変化させる印圧制御を行うことを特徴とする。
【0007】
これにより、接触面積の増加に応じて目標印圧を変化させ、接触抵抗の変化を考慮したはんだ印刷を行うことができ、均一なはんだバンプを形成することができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に係るはんだ印刷方法において、
前記印圧制御は、前記スキージ(10)と前記マスク(120)との接触面積が増加するにつれて、前記スキージ(10)に印加する前記目標印圧を増加させる制御であることを特徴とする。
【0009】
これにより、接触抵抗の増加に応じて目標印圧を増加させることができ、接触抵抗の増加分を考慮して印圧を行うことができるので、接触抵抗が変化しても全体に均一にはんだバンプを形成することができる。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係るはんだ印刷方法において、
前記スキージ(10)に実際に印加された圧力を検出し、
検出された該圧力が前記目標印圧に追従するようにフィードバック制御を行うことを特徴とする。
【0011】
これにより、目標印圧に対するフィードバック制御を更に行うことができ、接触抵抗を考慮して設定された目標印圧に対して、確実に印圧を追従させることができ、均一なはんだバンプの形成を確実に実現することができる。
【0012】
第4の発明は、第1〜3のいずれかの発明に係るはんだ印刷方法において、
前記はんだペースト(130)の粘度を検出し、
検出された該粘度に基づいて、前記目標印圧を変化させることを特徴とする。
【0013】
これにより、ペーストの粘度の状態や変化も考慮して、最適な印圧制御を行うことができる。
【0014】
第5の発明は、第4の発明に係るはんだ印刷方法において、
前記粘度が高くなるにつれて前記目標印圧を高く設定することを特徴とする。
【0015】
これにより、粘度が高いときには、スキージに印加する押圧力を強め、粘度が低いときには押圧力を弱めて適切なバランスではんだ印刷を行うことができ、均一なバンプ形成を行うことができる。
【0016】
第6の発明は、第4又は第5の発明に係るはんだ印刷方法において、
前記粘度に基づいて、スキージ速度(V)、スキージ落とし込み量(ST)及び/又はスキージ角度(θ)を変化させることを特徴とする。
【0017】
これにより、粘度の状態をスキージ速度、スキージ落とし込み量、スキージ角度にも反映させることができ、より最適な印刷条件を設定してはんだ印刷を行うことができる。
【0018】
第7の発明に係るはんだ印刷装置は、円形形状を含む半導体ウエハー(110、110a、110b)上に開口部(121)を有するマスク(120)を載置し、該マスク(120)上ではんだペースト(130)の付着したスキージ(10)を移動させ、前記開口部(121)にはんだバンプを形成するはんだ印刷装置であって、
前記スキージ(109が前記マスク(120)上を移動するときに、前記半導体ウエハー(110、110a、110b)に対する前記スキージ(10)の位置を検出するスキージ位置検出手段(50)と、
前記スキージ位置検出手段(50)で検出されたスキージ位置から求められる前記スキージ(10)と前記マスク(120)との接触面積の変化に応じて、前記スキージ(10)に印加する目標印圧を変化させる印圧制御を行う制御手段(100)と、を有することを特徴とする。
【0019】
第8の発明は、第7の発明に係るはんだ印刷装置において、
前記印圧制御は、前記スキージ(10)と前記マスク(120)との接触面積が増加するにつれて、前記スキージ(10)に印加する前記目標印圧を増加させる制御であることを特徴とする。
【0020】
第9の発明は、第7又は第8の発明に係るはんだ印刷装置において、
前記目標圧力に基づいて前記スキージ(10)に圧力を印加する圧力印加機構(40)と、
該圧力印加機構(40)により前記スキージ(10)に印加された圧力を検出する圧力検出手段(60)とを更に備え、
前記制御手段(100)は、前記圧力検出手段(60)で検出された前記圧力が前記目標印圧に追従するようにフィードバック制御を行うことを特徴とする。
【0021】
第10の発明は、第7〜9のいずれかの発明に係るはんだ印刷装置において、
前記はんだペースト(130)の粘度を検出するはんだ粘度検出手段(70)を更に備え、
該はんだ粘度検出手段(70)により検出された前記粘度に基づいて、前記目標印圧を変化させることを特徴とする。
【0022】
第11の発明は、第10の発明に係るはんだ印刷装置において、
前記制御手段(100)は、前記粘度検出手段(70)で検出された前記粘度が高くなるにつれて、前記目標印圧を高く設定することを特徴とする。
【0023】
第12の発明は、第10又は第11に記載のはんだ印刷装置において、
前記制御手段(100)は、前記粘度に基づいて、スキージ速度(V)、スキージ落とし込み量(ST)及び/又はスキージ角度(θ)を変化させることを特徴とする。
【0024】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例に過ぎず、図示の態様に限定するものではない。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、円形形状を含む半導体ウエハーについて、均一にはんだバンプを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0027】
図1は、本発明を適用した実施例に係るはんだ印刷方法を実行するためのはんだ印刷装置の全体構成を示した図である。図1において、本実施例に係るはんだ印刷装置は、スキージ10と、モータ20と、送りネジ30と、圧力印加機構40と、スキージ位置検出手段50と、圧力検出手段60と、はんだ粘度検出手段70と、温度センサ80と、湿度センサ90と、制御手段100と、を備える。また、関連構成要素として、半導体ウエハー110と、マスク120と、はんだペースト130とを備える。マスク120には、はんだバンプを半導体ウエハー110上に形成する位置に合わせて、開口部121が設けられている。
【0028】
スキージ10は、はんだペースト130をマスク120の開口部121に充填して印刷するために、はんだペースト130をマスク120上で移動させて運搬する部材である。スキージ10は、半導体ウエハー110上に載置されたマスク120の上に、押し付けられるように押圧力が加えられ、水平方向に摺動してはんだペースト130を一方向に移動させるように運ぶ。図1においては、左側から右側へとスキージ10が移動することにより、はんだペースト130を左側から右側へと移動させる。そして、開口部121にはんだペースト130を移動させ、マスク開口部121に充填させる。
【0029】
スキージ10の先端部11は、マスク120に押し付けられる接触部分を含むため、弾性がある程度あり、また、はんだペースト130と直接接触するため、耐食性のある部材が用いられることが好ましい。スキージ10の先端部11には、例えば、ステンレスやウレタン等が適用されてもよい。
【0030】
モータ20は、スキージ10を移動させるための駆動手段である。モータ20により、送りネジ30を回転させることにより、圧力印加機構40を介してスキージ10はマスク120上を摺動する。送りネジ30は、棒状のネジであり、表面にはネジ山が切られている。送りネジ30は、モータ20の回転軸に固定又はギヤを介して固定され、モータ20の回転とともに回転する。送りネジ30の周囲を囲む圧力印加機構40の筒状部分の内壁には、送りネジ30と螺号するネジが切られており、送りネジ30の回転により移動可能に構成されている。モータ20の回転速度を変化させることにより、スキージ10の移動速度を制御することができる。
【0031】
圧力印加機構40は、スキージ10に印圧を加える機構を有するとともに、スキージの落とし込み量STと、スキージ10がマスク120となす角度θを調整する機構を有する。スキージ10の落とし込み量STは、マスク120を取り除いたときに、スキージ10の先端部11が伸長するであろう深さと、実際にマスク120を入れてスキージ10の先端部11が縮小又は変形した深さの差の量である。スキージ10とマスク120のなす角度θは、先端部11の変形した部分ではなく、それより上のスキージ10の先端部11とマスク120とのなす角を基準とする。
【0032】
圧力印加機構40は、上述のような機構を有するため、スキージ10を上下移動させることができる機構と、スキージ10を回転移動させる機構と、これらの移動位置を固定することができる機構を備えていればよい。
【0033】
スキージ位置検出手段50は、スキージ10の半導体ウエハー110に対する位置を検出する手段である。半導体ウエハー110は、ステージ(図示せず)上に載置する際に、位置合わせを行うので、半導体ウエハー110の位置は、既知である。スキージ位置検出手段50は、スキージ10の位置を検出し、それが半導体ウエハー110に対してどのような位置関係であるかを検出する。スキージ10は、半導体ウエハー110を横切るように移動するので、半導体ウエハー110に対するスキージ10の位置が分かれば、半導体ウエハー110のサイズを把握しておくことにより、スキージ10とマスク120との接触面積を求めることができる。
【0034】
スキージ位置検出手段50は、スキージ10の移動位置を検出できるものであれば、種々の手段が適用されてよい。例えば、スキージ位置検出手段50は、モータ20の回転数を検出し、スキージ10の位置を検出してもよい。また、光源、受光素子、集光レンズ、インデックススケール格子目盛及びメインスケール格子目盛等を有するリニアスケールを用いて、スキージ10の移動位置を検出してもよい。また、磁気を用いてスキージ10の移動位置を検出するようにしてもよい。
【0035】
圧力検出手段60は、スキージ10に実際に印加されている押圧力を検出する手段である。圧力検出手段60についても、ダイヤフラム等を用いた種々の形式又は種類の圧力センサが適用されてよい。
【0036】
はんだ粘度検出手段70は、スキージ10により移動しているはんだペースト70の粘度を測定し、検出するための手段である。はんだペースト130は、経時変化を伴う材料であり、時間の経過や周囲条件の変化に伴い、粘度が変化する。よって、はんだ粘度検出手段70により、はんだペースト130の粘度をリアルタイムで測定し、その状態を把握しておくことが制御及び管理上好ましい。はんだ粘度検出手段70も、種々の形式又は種類のはんだ粘度センサが適用されてよいが、例えば、図1に示すように、プローブ71を備え、プローブ71をはんだペースト71中に入れ、はんだペースト71の回転動作からプローブ71に加わる力を測定することにより、粘度を測定するようなセンサが適用されてもよい。
【0037】
温度センサ80は、室内の温度を検出するセンサであり、サーミスタ等を利用した温度センサ等が適用されてよい。湿度センサ90は、室内の湿度を検出するセンサであり、電気抵抗式や電気容量式等のセンサが適用されてよい。上述のように、はんだペースト130は、時間の経過のみならず周囲環境によっても影響を受け、周囲の温度及び湿度によっても影響を受ける。よって、温度センサ80及び湿度センサ90を用いて、周囲環境を管理することが好ましい。温度センサ80および湿度センサ90は、はんだ印刷を行っている室内の温度及び湿度について検出を行い、例えば、異常が生じたら、制御手段100でアラームを発する等の対応を行うようにしてもよい。
【0038】
制御手段100は、検出したスキージ10の位置、はんだペースト130の粘度、実際にスキージ10に印加されている圧力、温度や湿度等の種々の状態値から、印刷条件を最適化するアルゴリズム演算及びその結果に基づく制御を行う手段である。制御手段100は、そのような演算処理を行うため、所定の電子回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えプログラムにより動作するマイクロコンピュータとして構成されてもよい。
【0039】
制御手段100は、スキージ位置検出手段50で検出されたスキージ10の位置に基づいて、その位置との対応とで求められるマスク120との接触面積に応じて、圧力印加機構40の目標印圧を変化させる制御を行う。その際、目標印圧に実際の圧力が追従しているか否かを確認するため、圧力検出手段60で実際にスキージ10に印加された圧力を測定し、目標印圧と実測の圧力とで差があるようであれば、実測の圧力が目標印圧に追従するようなフィードバック制御を行うようにしてもよい。
【0040】
また、制御手段100は、上述の検出手段及びセンサ50、60、70、80、90で検出された検出値に基づいて、最適な印圧、ステージ速度V、落とし込み量ST、スキージ角度θ等を算出し、これに基づいて、アクチュエータであるモータ20及び圧力印加機構40の駆動を統合的に制御する機能を備えていてもよい。この場合、最適なスキージ速度Vは、モータ10により駆動実現され、スキージ10の印圧、落とし込み量ST及びマスク120とのなす角度θは、圧力印加機構40により実現されてよい。
【0041】
次に、制御手段100で行う具体的な制御演算の内容の一例について、図2を用いて説明する。図2は、半導体ウエハー110とスキージ10との位置関係及び移動位置と印圧との関係の一例について示した図である。
【0042】
図2(a)は、スキージ10の進行方向及び半導体ウエハー110とスキージ10との位置関係を示した図である。図2(a)において、半導体ウエハー110上を、右側から左側の向きでスキージ10が移動する例が示されている。図2(a)において、スキージ10が半導体ウエハー110に対して端の位置にある場合(図中、RE、LE)には、スキージ10と半導体ウエハー110の接触面積が小さくなり、スキージ10が半導体ウエハー110の中央付近にある場合(図中、C)には、スキージ10と半導体ウエハー110との接触面積が大きくなることが示されている。ここで、スキージ10と半導体ウエハー110との接触面積が大きいということは、接触抵抗もそれだけ大きくなることを意味する。従って、半導体ウエハー110の中央付近(C)においても、端付近(RE、LE)と単位当たりの圧力を同じにして均一な圧力を印加するためには、接触抵抗に応じた圧力を印加する必用がある。
【0043】
図2(b)は、スキージ10の移動距離又は位置と、印圧との関係を示した図である。横軸は、図2(a)に示したスキージ10と半導体ウエハー110の位置と対応している。図2(b)は、スキージ10の単位面積当たりの印圧を均一としたときの、圧力検出手段60で検出した値を示した図であるが、半導体ウエハー110の端(LE、RE)にスキージ10が位置するときには、印圧は小さな値となり、スキージ10が半導体ウエハー110の中央にあるときには、印圧が高くなった状態を示している。よって、半導体ウエハー110上にはんだバンプを形成する際に均一な押圧力を実現するためには、半導体ウエハー110の中央にスキージ10が接近する程大きな印圧を印加する必要がある。よって、制御手段100は、スキージ10の半導体ウエハー110に対する位置に応じて、スキージ10が半導体ウエハー110上の端付近の位置であれば、目標印圧を減少させ、スキージ10が半導体ウエハー110上の中央付近の位置であれば、目標印圧を増加させる制御を行うようにする。これは、つまり、スキージ10と半導体ウエハー110上のマスク110との接触面積が増加する程に印圧を増加させ、スキージ10と半導体ウエハー110上のマスク110との接触面積が減少する程に印圧を減少させる制御を行うことに等しい。
【0044】
このように、本実施例に係るはんだ印刷方法においては、スキージ10と半導体ウエハー110との接触面積に応じて目標印圧を変化させる制御を行い、はんだバンプを均一に形成する。
【0045】
図3は、半導体ウエハー110の種々の態様を示した図である。図3(a)は、純粋な円形の半導体ウエハー110の平面形状を示した図であり、図3(b)は、オリエンテーションフラット111を有する半導体ウエハー110aの平面形状を示した図であり、図3(c)は、ノッチ112を有する半導体ウエハー110bの平面形状を示した図である。
【0046】
図3(a)に示すように、半導体ウエハー110は、純粋な円形であってよいが、実際の半導体装置の製造工程においては、半導体ウエハー110の位置合わせを行う必要があるため、図3(b)に示すように、位置合わせ用のオリエンテーションフラット111が形成されているか、又は図3(c)に示すように、位置合わせ用のノッチ112が形成されている場合が多い。
【0047】
これらの位置合わせ用のオリエンテーションフラット111又はノッチ112を有する半導体ウエハー110a、120bは、純粋な円形形状ではないが、一部平坦部又は切り欠き部を有するのみであり、実質的に円形形状である。つまり、平面外形の大部分が円形形状である。よって、この上にはんだバンプを形成する場合にも、接触面積の大小は、半導体ウエハー110a、120bの端部付近と中央部付近とで大きな差が生じ、図2(a)、(b)で説明したような状況が同様に当てはまる。従って、本実施例に係るはんだ印刷方法及びはんだ印刷装置は、図3(a)〜(c)に示す総ての態様の半導体ウエハー110に適用することができる。
【0048】
次に、図4を用いて、はんだ粘度検出手段70で検出したはんだペースト130の粘度も考慮して、目標印圧を変化させる制御方法の一例について説明する。図4は、はんだペースト130の粘度を考慮した目標印圧の制御内容を説明するための図である。
【0049】
図4(a)は、スキージ10の進行方向及び半導体ウエハー110とスキージ10との位置関係を示した図である。図4(a)は、図2(a)と同様の図である。つまり、はんだペーストの粘度を考慮する場合においても、これを単独で考慮するのではなく、図2において説明した内容にプラスする形で制御を行う。なお、図4(a)の具体的な説明は、図2(a)における説明と同様であるので、その説明を省略する。
【0050】
図4(b)は、スキージ10の移動距離又は位置と目標印圧との関係の一例を示した図である。図4(b)において、曲線Nがはんだペースト130が通常の粘度を有する場合の目標印圧の設定曲線を示し、曲線Hがはんだペースト130が通常よりも高い粘度を有する場合の目標印圧の設定曲線を示し、曲線Lがはんだペースト130が通常よりも低い粘度を有する場合の目標印圧の設定曲線を示している。曲線N、曲線H、曲線Lは、総てスキージ10の位置が半導体ウエハー110の中央付近(C)では高く、端付近(LE、RE)では低い特性を示している点は、図2(b)で説明した特性と同様である。曲線Hは、曲線Nよりも全体の値が大きく、曲線Lは曲線Nよりも全体の値が小さくなっている点で異なっている。これは、はんだペースト130の粘度が高くなる程、それだけ大きい印圧を加えてマスク120の開口部121に押し込むようにはんだ印刷を行う必要があり、粘度が低くなる程、そのような大きな印圧が不必要になることを意味している。
【0051】
よって、図4(b)においては、そのようなはんだペースト130の粘度も考慮に入れ、はんだ印刷が最適となるような制御を制御手段100において行っている。このように、本実施例に係るはんだ印刷方法及びはんだ印刷装置においては、スキージ10の半導体ウエハー110に対する位置のみでなく、はんだペースト130の粘度をも考慮に入れ、これも反映させてはんだ印刷をより一層最適化するようにしてもよい。また、はんだペースト130の粘度が、時間の経過につれて変化している場合には、それに応じて目標印圧の設定を変化させてゆけば良い。例えば、はんだ印刷を開始した最初の段階では通常よりも粘度が高く、次いで通常の粘度に変化し、次いで更に通常よりも低い粘度に変化している場合には、図4(b)の最初は曲線Hの目標印圧の設定で制御を開始し、通常のレベルとなったら曲線Nの目標印圧の設定に移り、粘度が低くなったら、曲線Lの目標印圧の設定に移動するような制御を行うようにしてもよい。これにより、はんだペースト130の粘度変化をも考慮した最適な条件ではんだ印刷を行うことができる。
【0052】
図1に戻り、マスク120に着目すると、開口部121の手前に、領域L1、L2、L3からなる3つの領域が示されている。これは、領域L1、L2、L3において、スキージ10とマスク120との接触面積の変化、又は更にははんだペースト130の粘度変化を考慮して、印圧が各領域L1、L2、L3において異なる場合を示している。このように、本実施例に係るはんだ印刷方法及びはんだ印刷装置においては、スキージ10とマスク120との接触面積の変化、更には、必要に応じてはんだペースト130の粘度をも考慮して、変化する条件下で常に最適なはんだ印刷条件を設定してはんだ印刷を行うことができる。
【0053】
次に、図1を用いて、本実施例に係るはんだ印刷方法及びはんだ印刷装置において実行可能な付加的な制御について説明する。本実施例に係るはんだ印刷方法及びはんだ印刷装置においては、図2及び図4において説明した制御以外にも、更にはんだ印刷を最適化する制御を行うことができる。
【0054】
例えば、図1において、はんだ粘度検出手段70で検出した粘度が通常よりも高くなったら、スキージ10の移動速度を減少させる制御を行うことが好ましい。これにより、マスク120の開口部121に、確実にはんだペースト130を埋め込むことができる。逆に、粘度が通常よりも低くなったら、スキージ10の移動速度を増加させて、スループットを高めるようにしてよい。
【0055】
また、はんだ粘度検出手段70で検出した粘度が通常よりも高い場合には、スキージ10の落とし込み量STを上げるような制御を行うことが好ましい。はんだペースト130の粘度が大きい場合には、スキージ10とマスク120との隙間をあまり生じさせず、確実にはんだペースト130を運搬するようにすることが好ましいからである。逆に、はんだペースト130の粘度が低い場合には、落とし込み量STを小さくするような制御を行ってよい。
【0056】
更に、はんだペースト130の粘度が通常よりも高い場合には、スキージ10のマスク120とのなす角θを大きく設定し、粘度が通常よりも小さい場合には、なす角θを小さくする制御を行うことが好ましい。粘度が高いときには、開口部121にはんだペースト130が落下し難くなる傾向があるので、スキージ10の角度θを大きくし、はんだペースト130の形状を厚くして、開口部121に入り込み易くする。一方、粘度が低いときには、開口部121にはんだペースト130が落下し易いので、スキージ10の角度θを小さくし、はんだペースト130の形状が薄く横に広がるような形状とし、水平方向に運搬し易い状態で印刷を行うことが好ましい。
【0057】
一般に、時間が経過するにつれてはんだペースト130の粘度は低下する傾向にあるので、はんだペースト130の粘度が所定値以下となったら、はんだペースト130を自動交換するような制御を行うようにしてもよい。これにより、はんだ印刷により形成されるはんだバンプの品質を確実に維持することができる。
【0058】
このように、本実施例に係るはんだ印刷方法及びはんだ印刷装置は、スキージ10とマスク120との接触面積に応じたスキージ10の印圧制御の他、はんだ粘度検出手段70により検出されたはんだペースト130の粘度の情報を用いて、種々の制御を行うことができ、最適な印刷条件ではんだ印刷を行うことができる。
【0059】
そして、半導体ウエハー110、110a、110b上の全体ではんだ塗布量が均一になることにより、リフロー後のはんだボールの大きさが均一となり、基板実装時の機械的強度、耐ストレス性、鋏断応力、耐マイグレーション性が均一化し、信頼性を向上させることができる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施例に係るはんだ印刷方法を実行するはんだ印刷装置の全体構成図である。
【図2】半導体ウエハー110とスキージ10との位置関係及び移動位置と印圧との関係の一例について示した図である。図2(a)は、半導体ウエハー110とスキージ10との位置関係を示した図である。図2(b)は、スキージ10の位置と印圧との関係を示した図である。
【図3】半導体ウエハー110の種々の態様を示した図である。図3(a)は、純粋な円形の半導体ウエハー110を示した図である。図3(b)は、オリエンテーションフラット111を有する半導体ウエハー110aを示した図である。図3(c)は、ノッチ112を有する半導体ウエハー110bを示した図である。
【図4】はんだペースト130の粘度を考慮した目標印圧の制御内容の説明図である。図4(a)は、半導体ウエハー110とスキージ10との位置関係を示した図である。図4(b)は、スキージ10の位置と目標印圧との関係の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0062】
10 スキージ
11 先端部
20 モータ
30 送りネジ
40 圧力印加機構
50 スキージ位置検出手段
60 圧力検出手段
70 はんだ粘度検出手段
80 温度センサ
90 湿度センサ
100 制御手段
110、110a、110b 半導体ウエハー
111 オリエンテーションフラット
112 ノッチ
120 マスク
121 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形形状を含む半導体ウエハー上に開口部を有するマスクを載置し、該マスク上ではんだペーストの付着したスキージを移動させ、前記開口部にはんだバンプを形成するはんだ印刷方法であって、
前記スキージが前記マスク上を移動するときに、前記半導体ウエハーに対する前記スキージの位置を検出し、
前記スキージの位置から求められる前記スキージと前記マスクとの接触面積の変化に応じて、前記スキージに印加する目標印圧を変化させる印圧制御を行うことを特徴とするはんだ印刷方法。
【請求項2】
前記印圧制御は、前記スキージと前記マスクとの接触面積が増加するにつれて、前記スキージに印加する前記目標印圧を増加させる制御であることを特徴とする請求項1に記載のはんだ印刷方法。
【請求項3】
前記スキージに実際に印加された圧力を検出し、
検出された該圧力が前記目標印圧に追従するようにフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のはんだ印刷方法。
【請求項4】
前記はんだペーストの粘度を検出し、
検出された該粘度に基づいて、前記目標印圧を変化させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のはんだ印刷方法。
【請求項5】
前記粘度が高くなるにつれて前記目標印圧を高く設定することを特徴とする請求項4に記載のはんだ印刷方法。
【請求項6】
前記粘度に基づいて、スキージ速度、スキージ落とし込み量及び/又はスキージ角度を変化させることを特徴とする請求項4又は5に記載のはんだ印刷方法。
【請求項7】
円形形状を含む半導体ウエハー上に開口部を有するマスクを載置し、該マスク上ではんだペーストの付着したスキージを移動させ、前記開口部にはんだバンプを形成するはんだ印刷装置であって、
前記スキージが前記マスク上を移動するときに、前記半導体ウエハーに対する前記スキージの位置を検出するスキージ位置検出手段と、
前記スキージ位置検出手段で検出されたスキージ位置から求められる前記スキージと前記マスクとの接触面積の変化に応じて、前記スキージに印加する目標印圧を変化させる印圧制御を行う制御手段と、を有することを特徴とするはんだ印刷装置。
【請求項8】
前記印圧制御は、前記スキージと前記マスクとの接触面積が増加するにつれて、前記スキージに印加する前記目標印圧を増加させる制御であることを特徴とする請求項7に記載のはんだ印刷装置。
【請求項9】
前記目標圧力に基づいて前記スキージに圧力を印加する圧力印加機構と、
該圧力印加機構により前記スキージに印加された圧力を検出する圧力検出手段とを更に備え、
前記制御手段は、前記圧力検出手段で検出された前記圧力が前記目標印圧に追従するようにフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項7又は8に記載のはんだ印刷装置。
【請求項10】
前記はんだペーストの粘度を検出するはんだ粘度検出手段を更に備え、
該粘度検出手段により検出された前記粘度に基づいて、前記目標印圧を変化させることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載のはんだ印刷装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記粘度検出手段で検出された前記粘度が高くなるにつれて、前記目標印圧を高く設定することを特徴とする請求項10に記載のはんだ印刷装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記粘度に基づいて、スキージ速度、スキージ落とし込み量及び/又はスキージ角度を変化させることを特徴とする請求項10又は11に記載のはんだ印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−76324(P2010−76324A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248869(P2008−248869)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】