説明

びまん型胃癌を診断する方法

びまん型胃癌(DGC)を検出および診断する客観的な方法を本明細書において記述する。一つの態様において、本診断法は、DGC細胞と正常細胞とを識別するDGC関連遺伝子の発現レベルを決定する段階を含む。本発明は、DGCの治療において有用な治療薬剤をスクリーニングする方法、DGCを治療する方法、およびDGCに対するワクチンを被験者に接種する方法をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、びまん型胃癌を診断する方法に関する。
【0002】
優先権に関する情報
本出願は、2002年10月25日に提出された米国特許仮出願第60/421,193号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
胃癌は、世界における癌による死因の第二位である(1)。化学療法では依然として満足のゆく結果が得られないことから、治療に関しては手術がなおも主流である。初期段階の胃癌は、外科的切除によって治癒することができるが、進行胃癌の予後は依然として非常に不良である。
【0004】
組織学的研究により、胃癌は、疫学、病因、発病、および生物学的挙動に関して異なる特徴を有する二つの異なる群、すなわち腸型(分化型)とびまん型(未分化型)に分類されている(2)。腸型は、高齢者により一般的に起こり、予後がより良好であるが、びまん型胃癌(DGC)は、性別によらず比較的若い人に認められ、より浸潤性の高い表現型を示して重篤な臨床経過をたどる。腸型胃癌は、萎縮性胃炎に起因し、その後に腸上皮化生および/または異形成へと進行すると思われるが(3)、びまん型腫瘍の前駆病変はわかっていない。
【0005】
cDNAマイクロアレイ技術によって、正常および悪性細胞における包括的遺伝子発現プロファイルを得て、悪性細胞および対応する正常細胞における遺伝子発現を比較することが可能となった(Okabeら、Cancer Res. 61:2129〜37(2001);Kitaharaら、Cancer Res. 61:3544〜9(2001);Linら、Oncogene 21:4120〜8(2002);Hasegawaら、Cancer Res. 62:7012〜7(2002))。このアプローチにより、癌細胞の複雑な特性を明らかにすることが可能となり、これは発癌のメカニズムを理解するために役立つ。腫瘍において脱制御される遺伝子を同定することによって、個々の癌のより精密で正確な診断を得ることができ、新規治療標的を開発することができる(Bienz and Clevers、Cell 103:311〜20(2000))。ゲノム全域にわたる観点から腫瘍の基礎となるメカニズムを明らかにするため、そして診断のための標的分子の発見および新規治療薬の開発のために、本発明者らは、遺伝子23040個のcDNAマイクロアレイを用いて腫瘍細胞の発現プロファイルを解析している(Okabeら、Cancer Res. 61:2129〜37(2001);Kitaharaら、Cancer Res. 61:3544〜9(2001);Linら、Oncogene 21:4120〜8(2002);Hasegawaら、Cancer Res. 62:7012〜7(2002))。
【0006】
発癌メカニズムを解明するように計画された研究によって、抗腫瘍薬剤の分子標的の同定が既に促進されている。例えば、Rasに関連する増殖-シグナル伝達経路を阻害するように当初開発されたファルネキシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)(この活性は翻訳後のファルネシル化に依存する)は、動物モデルにおいてRas依存性腫瘍を治療するために有効である(Heら、Cell 99:335〜45(1999))。抗癌剤と、癌原遺伝子受容体HER2/neuに拮抗するための抗HER-2モノクローナル抗体トラスツズマブを併用したヒトに対する臨床試験が実施されており、乳癌患者の臨床応答および総生存率の改善が得られている(Linら、Cancer Res. 61:6345〜9(2001))。bcr-abl融合タンパク質を選択的に不活化するチロシンキナーゼ阻害剤STI-571は、bcr-ablチロシンキナーゼの構成的活性化が白血球の形質転換において重要な役割を果たしている慢性骨髄性白血病を治療するために開発されている。これらの種類の薬剤は、特定の遺伝子産物の発癌活性を抑制するように設計されている(Fujitaら、Cancer Res. 61:7722〜6(2001))。したがって、癌性細胞において一般的に上方制御される遺伝子産物は、新規抗癌剤を開発するための潜在的な標的として役立つ可能性がある。
【0007】
CD8+細胞障害性Tリンパ球(CTL)は、MHCクラスI分子上に提示された腫瘍関連抗原(TAA)に由来するエピトープペプチドを認識して、腫瘍細胞を溶解することが証明されている。TAAの最初の例としてMAGEファミリーが発見されて以来、免疫学的アプローチを用いて他にも多くのTAAが発見されている(Boon、Int. J. Cancer 54:177〜80(1993);Boonおよびvan der Bruggen、J. Exp. Med. 183:725〜9(1996);van der Bruggenら、Science 254:1643〜7(1991);Brichardら、J. Exp. Med.178:489〜95(1993);Kawakamiら、J. Exp. Med. 180:347〜52(1994))。発見されたTAAのいくつかは、現在免疫治療の標的として臨床開発段階にある。これまで発見されたTAAには、MAGE(van der Bruggenら、Science 254:1643〜7(1991))、gp100(Kawakamiら、J. Exp. Med. 180:347〜52(1994))、SART(Shichijoら、J. Exp. Med. 187:277〜88(1998))、およびNY-ESO-1(Chenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:1914〜8(1997))が含まれる。一方、腫瘍細胞において特に過剰発現されることが示されている遺伝子産物は、細胞性免疫応答を誘導する標的として認識されることが示されている。そのような遺伝子産物には、p53(Umanoら、Brit. J. Cancer 84:1052〜7(2001))、HER2/neu(Tanakaら、Brit. J. Cancer 84:94〜9(2001))、CEA(Nukayaら、Int. J. Cancer 80:92〜7(1999))等が含まれる。
【0008】
TAAに関する基礎および臨床研究における著しい進歩にもかかわらず(Rosenbergら、Nature Med. 4:321〜7(1998);Mukherjiら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:8078〜82(1995);Huら、Cancer Res. 56:2479〜83(1996))、結腸癌を含む腺癌の治療に利用できるのは、ごく限られた数の候補TAAに過ぎない。癌細胞において豊富に発現されると共にその発現が癌細胞に限定されるTAAは、免疫療法の標的として有望な候補薬剤となるであろう。さらに、強力で特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導する新規TAAが同定されれば、様々なタイプの癌におけるペプチドワクチン接種法の臨床利用を促進すると期待される(Boonおよびvan der Bruggen、J. Exp. Med. 183:725〜9(1996);van der Bruggenら、Science 254:1643〜7(1991);Brichardら、J. Exp. Med.178:489〜95(1993);Kawakamiら、J. Exp. Med. 180:347〜52(1994);Shichijoら、J. Exp. Med. 187:277〜88(1998);Chenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:1914〜8(1997);Harris、J. Natl. Cancer Inst. 88:1442〜5(1996);Butterfieldら、Cancer Res. 59:3134〜42(1999);Vissersら、Cancer Res. 59:5554〜9(1999);van der Burgら、J. Immunol. 156:3308〜14(1996);Tanakaら、Cancer Res. 57:4465〜8(1997);Fujieら、Int. J. Cancer 80:169〜72(1999);Kikuchiら、Int. J. Cancer 81:459〜66(1999);Oisoら、Int. J. Cancer 81:387〜94(1999))。
【0009】
特定の健康なドナーからのペプチド刺激された末梢血単核球細胞(PBMC)は、ペプチドに応答して著しいレベルのIFN-γを産生するが、51Cr-放出アッセイによるとHLA-A24または-A0201拘束的に腫瘍細胞に対して細胞障害性を及ぼすことはまれであることは繰り返し報告されている(Kawanoら、Cancer Res. 60:3550〜8(2000);Nishizakaら、Cancer Res. 60:4830〜7(2000);Tamuraら、Jpn. J. Cancer Res. 92:762〜7(2001))。しかし、HLA-A24およびHLA-A0201はいずれも、白人のみならず、日本人における一般的なHLA対立遺伝子の一つである(Dateら、Tissue Antigens 47:93〜101(1996);Kondoら、J. Immunol. 155:4307〜12(1995);Kuboら、J. Immunol. 152:3913〜24(1994);Imanishiら、Proceeding of the eleventh International Histocompatibility Workshop and Conference、オックスフォード大学出版、オックスフォード、1065(1992);Williamsら、Tissue Antigen 49:129(1997))。このように、これらのHLAによって提示される癌の抗原性ペプチドは、日本人および白人における癌の治療において特に有用となる可能性がある。さらに、インビトロでの低親和性CTLの誘導は、通常高濃度のペプチドを利用し、高レベルの特異的なペプチド/MHC複合体を、CTLを効果的に活性化する抗原提示細胞(APCs)上に生成することに起因することは知られている(Alexander-Millerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:4102〜7(1996))。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本発明は、DGC、例えば腺癌に関連した遺伝子発現パターンの発見に基づく。DGCにおいて発現に差のある遺伝子は、本明細書において集合的に「DGC核酸」または「DGCポリヌクレオチド」と呼ばれ、対応するコードされたポリペプチドは、「DGCポリペプチド」または「DGCタンパク質」と呼ばれる。
【0011】
したがって、本発明は、組織試料のような患者に由来する生物学的試料におけるDGC関連遺伝子の発現レベルを決定することによって、被験者におけるDGCの発症に対する素因を診断または決定する方法を特徴とする。DGC関連遺伝子とは、正常細胞と比較してDGC細胞から得られた細胞において発現レベルが異なることを特徴とする遺伝子を意味する。正常細胞は、癌性でないことが分かっている胃組織から得られた細胞である。DGC関連遺伝子は、DGC 1〜463の一つまたは複数を含む。遺伝子の正常対照レベルと比較して遺伝子の発現レベルが変化する、例えば増加または減少すれば、被験者がDGCを有するか、または発症のリスクを有することを示している。
【0012】
正常な対照レベルとは、正常な健康個体またはDGCを有しないことがわかっている個体集団において検出された遺伝子発現レベルを意味する。対照レベルは、単一の参照集団または複数の発現パターンに由来する単一の発現パターンである。例えば、対照レベルは、既に試験された細胞からの発現パターンのデータベースでありうる。
【0013】
正常対照レベルと比較して被験試料においてDGC 1〜136レベルの増加が検出されれば、(試料を採取した)被験者がDGCを有するか、または発症するリスクを有することを示している。対照的に、正常な対照レベルと比較して被験試料においてDGC 137〜463レベルの減少が検出されれば、被験者がDGCを有する、または発症のリスクを有することを示している。
【0014】
または、試料におけるDGC関連遺伝子パネルの発現を、同じ遺伝子パネルのDGC参照レベルと比較する。DGC参照レベルとは、DGCを有する集団において認められるDGC関連遺伝子の発現プロファイルを意味する。
【0015】
遺伝子発現は、正常対照レベルと比較して10%、25%、50%増加または減少する。または、遺伝子発現は、正常対照レベルと比較して1、2、5倍またはそれ以上増加または減少する。発現は、患者由来組織試料の遺伝子転写物またはそのコピーに対するDGC関連遺伝子プローブの、例えばアレイ上でのハイブリダイゼーションを検出することによって決定される。
【0016】
患者由来組織試料は、試験被験者、例えばDGCを有することがわかっているかまたは疑われる患者からの任意の組織である。例えば、組織は喀痰、血液、血清、血漿、または胃細胞(例えば、胃、小腸、大腸、またはリンパ節組織から得られる生検試料)を含む。
【0017】
本発明はまた、DGC 1〜463の二つまたはそれ以上の遺伝子発現レベルのDGC参照発現プロファイルを提供する。または、本発明は、DGC 1〜136またはDGC 137〜463の二つまたはそれ以上の発現レベルのDGC参照発現プロファイルを提供する。
【0018】
本発明はさらに、DGC関連遺伝子を発現する被験細胞を試験薬剤に接触させる段階、およびDGC関連遺伝子の発現レベルを決定する段階によって、DGC関連遺伝子、例えばDGC 1〜463の発現または活性を阻害または増強する薬剤を同定する方法を提供する。被験細胞は、胃粘膜細胞または粘膜下細胞のような胃細胞である。被験薬剤の存在下において、遺伝子の対照レベル(例えば被験薬剤の非存在下)と比較してDGC 1〜136レベルが減少すれば、被験薬剤がDGC関連遺伝子の阻害剤であり、DGCの症状を減少させることを示している。または、被験薬剤の存在下において、遺伝子の対照レベルまたは活性と比較してDGC 137〜463レベルまたは活性が増加すれば、その被験薬剤が、DGC関連遺伝子の発現または機能の増強剤であり、DGCの症状を減少させることを示している。
【0019】
本発明はまた、二つもしくはそれ以上のDGC核酸配列に結合するか、または核酸配列にコードされる遺伝子産物に結合する検出試薬を有するキットを提供する。同様に、二つまたはそれ以上のDGC核酸に結合する核酸のアレイも提供する。
【0020】
治療法には、被験者にアンチセンス組成物を投与することによって被験者におけるDGCを治療または予防する方法が含まれる。アンチセンス組成物は、特異的標的遺伝子の発現を減少させ、例えばアンチセンス組成物は、DGC 1〜136からなる群より選択される配列と相補的であるヌクレオチドを含む。もう一つの方法には、短鎖干渉RNA(siRNA)組成物を被験者に投与する段階が含まれる。siRNA組成物は、DGC 1〜136からなる群より選択される核酸の発現を減少させる。もう一つの方法において、被験者におけるDGCの治療または予防は、被験者にリボザイム組成物を投与することによって行われる。核酸特異的リボザイム組成物は、DGC 1〜136からなる群より選択される核酸の発現を減少させる。他の治療法には、DGC 137〜463の発現またはDGC 137〜463にコードされるポリペプチドの活性を増加させる化合物を被験者に投与する方法が含まれる。さらにDGCは、DGC 137〜463によりコードされるタンパク質を投与することによって治療することができる。タンパク質は患者に直接投与してもよく、または例えば目的の下方制御されたマーカー遺伝子を有する発現ベクターもしくは宿主細胞を投与することにより患者へ導入した後に、インビボで発現させてもよい。目的の遺伝子をインビボで発現させるための適切な手法は当技術分野で公知である。
【0021】
本発明にはまた、ワクチンおよびワクチン接種法が含まれる。例えば、被験者におけるDGCを治療または予防する方法は、DGC 1〜136からなる群より選択される核酸にコードされるポリペプチドまたはそのようなポリペプチドの免疫学的活性断片を含むワクチンを被験者に投与することによって行われる。免疫学的活性断片は、完全長の天然に存在するタンパク質より長さが短く、免疫応答を誘導するポリペプチドである。例えば、免疫学的活性断片は、長さが少なくとも8残基であって、T細胞またはB細胞のような免疫細胞を刺激する。免疫細胞の刺激は、細胞増殖、サイトカイン(例えば、IL-2)の産生、または抗体の産生を検出することによって測定される。
【0022】
特に定義していなければ、本明細書において用いた科学技術用語は全て、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記述の方法および材料と類似または同等の方法および材料を、本発明の実践または試験において用いることができるが、適した方法および材料を下記に記述する。本明細書において言及した全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。さらに、材料、方法、および例は、一例に過ぎず、制限することを意図しない。
【0023】
本発明のその他の特徴および長所は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0024】
詳細な説明
本明細書に記述のデータは、そのタイプの癌におけるゲノム全体の遺伝子に関する最初の発現解析を表す。他の試験、例えば、遺伝子6,800個を表すオリゴヌクレオチドアレイを用いて硬性型胃癌細胞株における発現を調べる試験、ならびに遺伝子1174個からなるcDNAアレイを用いてヒト腸型およびびまん型胃腫瘍の異種移植片における発現プロファイルを解析する試験とは異なり、本発明のデータは、臨床試料における23,000個を超える遺伝子の発現を測定することによって得られたDGCのゲノム全域にわたる発現プロファイルを提供する。
【0025】
DGC細胞は、大きい巣状病変を形成せず、胃壁に浸潤しないことから、レーザーマイクロビーム微小切除法は、間質組織から癌細胞を分離するのに非常に有利であった。細胞を得るこの方法は、この方法の混入細胞の割合がこれまでの方法より著しく小さいという点において、既存の方法に対する利点を提供する。したがって、本発明のデータは、びまん型腫瘍細胞の非常に純粋な集団の発現プロファイルを反映する。
【0026】
本方法によって、びまん型胃腫瘍の個体を早期に、高感度で、確実に同定することができる。例えば、腫瘍または腫瘍発症の素因は、明白な臨床症状が同定される前に検出される。早期検出は、このタイプの癌が侵攻的でより若い集団に罹患することから特に重要である。明白な臨床症状の発現前の段階での処置は、このタイプの癌の死亡率を減少させるために重要である。本発明の方法のもう一つの利点は、主観的な(したがって誤りのより多い)標準的な組織学的方法と比較して、遺伝子発現の増加、減少が測定できるといった、データが客観的な点である。
【0027】
本発明は、非癌性の胃の対照組織と比較して、びまん型の胃腺癌を有する患者の原発性胃癌組織に由来する胃粘膜において複数の核酸配列の発現パターンが変化することを発見したことに一部基づいている。遺伝子発現の差は、包括的なcDNAマイクロアレイシステムおよびレーザーマイクロビーム微小切除技術を用いて同定した。
【0028】
DGC細胞は、大きい巣状病変を形成せず、胃壁に浸潤しないことから、レーザーマイクロビーム微小切除法は、間質組織から癌細胞を分離するのに非常に有利であった。この方法の混入細胞の割合は、0.3%未満であると推定された。このように、本明細書に記述の発現プロファイルは、非常に純粋なびまん型腫瘍細胞集団を表す。
【0029】
20,000個を超える遺伝子についてcDNAマイクロアレイ解析を行って、DGC患者において一貫して確実に過剰発現された、または抑制された遺伝子を選択した。遺伝子463個が、調べた試料の50%超において発現に差があることが判明し、このうち遺伝子136個が上方制御され、遺伝子327個が下方制御された。
【0030】
本明細書において同定された発現差がある遺伝子を、診断目的のため、およびDGCを阻害する遺伝子標的治療手段を開発するために用いる。
【0031】
発現レベルがDGC患者において変調している(すなわち、増加または減少する)遺伝子を表1〜2に要約して、本明細書において集合的に「DGC関連遺伝子」、「DGC核酸」または「DGCポリヌクレオチド」と呼び、対応するコードされたポリペプチドを「DGCポリペプチド」または「DGCタンパク質」と呼ぶ。特に明記していなければ、「DGC」は、本明細書に開示の任意の配列を指すことを意味する(例えば、DGC 1〜463)。遺伝子は以前に記述されており、データベースアクセッション番号とともに示す。
【0032】
細胞の試料における様々な遺伝子の発現を測定することによって、細胞または細胞集団におけるDGCの存在を測定する。同様に、様々な薬剤に応答したこれらの遺伝子の発現を測定することによって、DGCを治療する薬剤を同定することができる。
【0033】
本発明は、表1〜2に記載したDGC配列の少なくとも一つおよび最大で全ての発現を決定すること(例えば測定すること)を含む。好ましくは、一つまたは複数のDGC関連遺伝子を、例えばK-ras、CTNNB1(β-カテニン)、c-erbB-2、K-sam、サイクリンE、c-met p53、RB、APC、DCCおよびCDH1(E-カドヘリン)のような胃癌に関連することがわかっている他の遺伝子と共に測定する。または、この方法は、前述の遺伝子の一つまたは複数の発現レベルを検出することを含まない。既知の配列に関するGenbank(登録商標)データベース登録項目によって提供された配列情報を用いて、DGC関連遺伝子を当業者に周知の技術を用いて検出および測定する。例えば、DGC配列に対応する配列データベース登録項目内の配列を用いて、例えばノーザンブロットハイブリダイゼーション解析においてDGC RNA配列を検出するためのプローブを構築する。プローブは好ましくは、長さが10、25、50、250、500、1000、2000ヌクレオチドであり、最大で参照配列の完全長までである。もう一つの例として、配列を用いて、例えば、逆転写を利用したポリメラーゼ連鎖反応のような、増幅に基づく検出法においてDGC配列を特異的に増幅するためのプライマーを構築することができる。
【0034】
次に、被験細胞集団、例えば患者由来の組織試料における一つまたは複数のDGC配列の発現レベルを、参照集団における同じ配列の発現レベルと比較する。参照細胞集団には、癌性または非癌性といった比較されるパラメータが既知である一つまたは複数の細胞が含まれる。
【0035】
被験細胞集団における遺伝子発現レベルを参照細胞集団における遺伝子発現レベルと比較することにより、測定されるパラメータの存在が明らかになるか否かは、参照細胞集団の組成に依存する。例えば、参照細胞集団が非癌性細胞からなる場合、被験細胞集団と参照細胞集団における遺伝子発現レベルが類似であれば、被験細胞集団が非癌性であることを示している。逆に、参照細胞集団が癌性細胞で構成される場合、被験細胞集団と参照細胞集団の遺伝子発現プロファイルが類似であれば、被験細胞集団に癌性細胞が含まれることを示す。
【0036】
被験細胞集団におけるDGC核酸またはポリペプチドの発現レベルは、その発現レベルが参照細胞集団より、参照細胞集団における対応するDGC配列の発現レベルから1.0、1.5、2.0、5.0、10.0倍、またはそれ以上より大きく異なる場合、変化したと見なされる。
【0037】
望ましければ、被験細胞集団と参照細胞集団とのあいだで発現に差のある遺伝子の比較は、発現が、測定されるパラメータまたは条件に依存しない対照核酸に関して行うことができる。例えば、対照核酸は、細胞の癌性または非癌性状態による差がないことがわかっている核酸である。被験核酸および参照核酸における対照核酸の発現レベルを用いて、比較される集団におけるシグナルレベルを標準化することができる。対照遺伝子は、例えばβ-アクチン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼまたはリボソームタンパク質P1でありうる。
【0038】
被験細胞集団を複数の参照細胞集団と比較する。複数の参照集団のそれぞれは、既知のパラメータが異なってもよい。このように、被験細胞集団を、例えばDGC細胞を含むことがわかっている第一の参照細胞集団と共に、例えば非DGC細胞(正常細胞)を含むことがわかっている第二の参照集団と比較してもよい。被験細胞は、DGC細胞を含むことがわかっているか、または含むことが疑われる被験者からの組織タイプまたは細胞試料に含まれる。
【0039】
被験細胞は、生体組織または体液、例えば生物学的液体(血液、血清、糞便、または喀痰)から得る。例えば、被験細胞は、組織から精製される。好ましくは、被験細胞集団は胃細胞を含む。胃細胞は、DGCであることがわかっているか、または疑われる組織から得る。
【0040】
参照細胞集団における細胞は、被験細胞と類似の組織タイプに由来する。または、対照細胞集団は、アッセイされるパラメータまたは条件が既知である細胞に由来する分子情報のデータベースに由来する。
【0041】
被験対象は好ましくは哺乳動物である。哺乳動物は、例えばヒト、ヒト以外の霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシでありうる。
【0042】
DGC1〜463によって表される配列のうち、1、2、3、4、5、25、35、50、もしくは100、またはそれ以上の配列の発現を決定し、望ましい場合、これらの核酸配列の発現を、本明細書に記載のパラメーターまたは条件の一つ(例えばDGCもしくは非DGC)に従って発現レベルが変化することが分かっている他の配列とともに決定することができる。
【0043】
本明細書に開示される遺伝子の発現は、当技術分野において既知の任意の方法を用いてRNAレベルで決定される。例えば、これらの配列の一つまたは複数を特異的に認識するプローブを用いるノーザンハイブリダイゼーション解析を用いて、遺伝子発現を決定することができる。または、発現は、例えば発現に差のある配列に対して特異的なプライマーを用いて、逆転写を利用したPCRアッセイを用いて測定される。
【0044】
発現はまた、タンパク質レベルで、すなわち本明細書に記載の遺伝子産物にコードされるポリペプチドのレベルまたはその生物学的活性を測定することによって決定される。そのような方法は当技術分野で周知であり、例えば遺伝子にコードされるタンパク質に対する抗体を利用したイムノアッセイが含まれる。遺伝子にコードされるタンパク質の生物学的活性も同様に周知である。
【0045】
DGCの診断
DGCは、被験細胞集団(すなわち患者に由来する生物学的試料)からの一つまたは複数のDGC核酸配列の発現レベルを調べることによって診断される。好ましくは、被験細胞集団は、胃細胞、例えば胃腸系から得た細胞を含む。遺伝子発現はまた、血液、糞便、または喀痰のような他の体液から測定される。他の生物学的試料は、タンパク質レベルを測定するために用いることができる。例えば、診断される被験者に由来する血液、または血清におけるタンパク質レベルは、イムノアッセイまたは生物学的アッセイによって測定することができる。
【0046】
一つまたは複数のDGC関連遺伝子、例えばDGC 1〜463の発現を、被験細胞または生物学的試料において決定して、正常対照レベルの発現と比較する。正常対照レベルは、DGCを有しないことがわかっている集団において典型的に認められるDGC関連遺伝子の発現プロファイルを意味する。正常対照レベルと比較して、DGC関連遺伝子の患者由来組織試料における発現レベルが増加または減少すれば、被験者がDGCを有するか、またはDGC発症のリスクを有することを示している。例えば、正常対照レベルと比較して被験集団におけるDGC 1〜136のレベルが増加すれば、被験者がDGCを有するか、またはDGC発症のリスクを有することを示している。逆に、正常対照レベルと比較して被験集団におけるDGC 137〜463の発現が減少すれば、被験者がDGCを有するか、または発症のリスクを有することを示している。
【0047】
一つまたは複数のDGC関連遺伝子が、正常対照レベルと比較して被験集団において変化している場合、被験者がDGCを有するか、またはDGC発症のリスクを有することを示している。例えば、本明細書において同定されたDGC関連遺伝子の10%、20%、50%、60%、80%、90%またはそれ以上が変化している場合、DGCと診断されることを示している。
【0048】
DGC関連遺伝子の発現を阻害または増強する薬剤の同定
DGC関連遺伝子の発現または活性を阻害する薬剤は、上方制御されたDGC関連遺伝子を発現する被験細胞集団を試験薬剤に接触させ、DGC関連遺伝子の発現レベルを決定することによって同定される。対照レベルと比較してDGC 1〜136のような胃癌関連遺伝子の発現が減少すれば、その薬剤が上方制御されたDGC関連遺伝子の阻害剤であり、DGCを阻害するのに有用であることを示している。
【0049】
または、下方制御されたDGC関連遺伝子の発現または活性を増強する薬剤は、DGC関連遺伝子を発現する被験細胞集団を試験薬剤に接触させ、下方制御されたDGC関連遺伝子の発現レベルまたは活性を決定することによって同定される。DGC関連遺伝子の対照レベルと比較して発現または活性が増加すれば、試験薬剤がDGC関連遺伝子のエンハンサーであることを示している。
【0050】
被験細胞集団は、DGC関連遺伝子を発現する任意の細胞である。例えば、被験細胞集団は胃上皮細胞を含む。例えば、被験細胞は、DGC細胞に由来する不死化細胞株である。または、被験細胞は、DGC関連遺伝子を導入した細胞、またはレポーター遺伝子に機能的に結合したDGC関連遺伝子の調節配列(例えば、プロモーター配列)を導入した細胞である。
【0051】
被験者におけるDGC治療の有効性の評価
本明細書において同定された発現差のあるDGC関連遺伝子によって、DGCの治療経過をモニターすることもできる。この方法において、被験細胞集団は、DGCの治療を受けている被験者から提供される。望ましければ、被験細胞集団は、治療前、治療中、または治療後の様々な時点で被験者から得られる。次に、細胞集団における一つまたは複数のDGC関連遺伝子の発現を決定して、DGC状態が既知である細胞を含む参照細胞集団と比較する。参照細胞は治療を受けていない。
【0052】
参照細胞集団がDGC細胞を含まない場合、被験細胞集団と参照細胞集団におけるDGC関連遺伝子の発現が類似であれば、治療が有効であるかまたは臨床上の利点を与えることを示している。しかし、被験集団とこの参照細胞集団におけるDGC配列の発現に差があれば、あまり好ましくない臨床転帰または予後を示している。
【0053】
「有効」とは、治療によって、病理学的に上方制御された遺伝子の発現が減少するか、病理学的に下方制御された遺伝子の発現が増加するか、または被験者におけるDGCの大きさ、発生率、もしくは転移能が減少することを意味する。治療を予防的に適用する場合、「有効である」とは、治療がDGCの形成を遅らせるかもしくは防止することを意味する。DGCの病期の評価は、標準的な臨床プロトコールを用いて行われる。
【0054】
有効性は、DGCを診断または治療する任意の既知の方法に関連して決定される。DGCは、例えば症候性の異常、例えば消化不良、嚥下困難、貧血、吐血、凝血、糞便潜血試験、CTスキャン、および胃鏡検査における血液を同定することによって診断される。
【0055】
特定の個体にとって適切なDGC治療用の治療薬剤の選択
個体における遺伝的構成の差によって、個体が様々な薬剤を代謝する相対的能力に差が起こりうる。被験者において代謝されて抗DGC薬剤として作用する薬剤は、被験者の細胞において、癌性状態に特徴的な遺伝子発現パターンから非癌性状態に特徴的な遺伝子発現パターンへの変化を誘導することによって顕在化しうる。したがって、薬剤が被験者において適した抗DGC薬剤であるか否かを決定するために、本明細書に開示される発現差のあるDGC関連遺伝子によって、選択された被験者由来の被験細胞集団において治療または予防効果のあると推定されるDGC阻害剤を調べることができる。
【0056】
特定の被験者にとって適当である抗DGC薬剤を同定するために、被験者由来の被験細胞集団を治療薬剤に曝露して、DGC 1〜463配列の一つまたは複数の発現を決定する。
【0057】
被験細胞集団は、DGC関連遺伝子を発現するDGC細胞を含む。好ましくは、被験細胞は上皮細胞である。例えば、被験細胞集団を候補薬剤の存在下でインキュベートし、被験試料の遺伝子発現パターンを測定して、一つまたは複数の参照プロファイル、例えばDGC参照発現プロファイルまたは非DGC参照発現プロファイルと比較する。
【0058】
DGCを含む参照細胞集団と比較して、被験細胞集団におけるDGC 1〜136の一つもしくは複数の発現が減少するか、またはDGC 137〜463の一つもしくは複数の発現が増加すれば、薬剤が治療効果があることを示している。試験薬剤はいかなる化合物または組成物であってよい。例えば試験薬剤は、免疫調節剤、異常に過剰発現されたDGC核酸に対応する特異的アンチセンスヌクレオチド化合物、治療する特定の個体において異常に過小発現されたDGC核酸またはポリペプチドの発現を増強する薬剤ポリペプチドである。
【0059】
治療薬剤を同定するためのスクリーニングアッセイ
本明細書に開示される発現差のある遺伝子はまた、DGCを治療するための候補治療薬剤を同定するためにも用いることができる。この方法は、候補治療薬剤をスクリーニングし、その薬剤がDGC状態に特徴的なDGC 1〜463配列の発現プロファイルを、DGCに関連しない臨床状態を示すパターンまたはそれにより類似しているパターンに変換させるか否かを決定することに基づく。
【0060】
この方法において、細胞を、試験薬剤または試験薬剤の組み合わせ(連続的または継続的に)に曝露して、細胞における一つまたは複数のDGC 1〜463配列の発現を測定する。被験集団におけるDGC関連遺伝子の発現プロファイルを、試験薬剤に曝露していない参照細胞集団におけるDGC関連遺伝子の発現レベルと比較する。
【0061】
本発明のスクリーニングにおける候補物質のタイプに制限はない。本発明の候補物質は、生物学的ライブラリー;空間的に位置指定可能な(spatially adressable)平行固相または液相ライブラリー;複雑な形状の解析(deconvolution)を必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物(one-bead one-compound)」ライブラリー法;およびアフィニティクロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法を含む、当技術分野で既知のコンビナトリアルライブラリー法における多数の手法のいずれかを用いて得ることができる。生物学的ライブラリー法は、ペプチドライブラリーに限定されるが、他の四つの手法は、ペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の低分子ライブラリーに応用可能である(Lam(1997)Anticancer Drug Des. 12:145)。
【0062】
分子ライブラリーを合成するための方法の例は、当技術分野において、例えばDeWittら(1993)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909;Erbら(1994)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422;Zuckermannら(1994)、J. Med. Chem. 37:2678;Choら(1993)Science 261:1303;Carrellら(1994)Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059;Carrellら(1994)Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061;およびGallopら(1994)J. Med. Chem. 37:1233に見出すことができる。化合物のライブラリーは、溶液中(例えば、Houghten(1992)Bio Techniques 13:412)またはビーズ上(Lam(1991)Nature 354:82)、チップ上(Fodor(1993)Nature 364:555)、細菌上(米国特許第5,223,409号)、胞子上(米国特許第5,571,698号;第5,403,484号;および第5,223,409号)、プラスミド上(Cullら(1992)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865)、もしくはファージ上(ScottおよびSmith(1990)Science 249:386;Devlin(1990)Science 249:404;Cwirlaら(1990)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378;およびFelici(1991)J. Mol. Biol. 222:301)(米国特許出願第20020103480号)に提示されてもよい。
【0063】
過小発現された遺伝子の発現を刺激するために、または過剰発現された遺伝子の発現を抑制するために有効な薬剤は、臨床上の利益をもたらすと思われる。そのような化合物を、癌細胞増殖の予防能に関してさらに試験する。
【0064】
さらなる態様において、本発明は、DGCの治療における潜在的な標的である候補薬剤をスクリーニングする方法を提供する。先に詳細に考察したように、マーカー遺伝子の発現レベルまたは活性を制御することによって、DGCの発症および進行を制御することができる。このように、DGCの治療における潜在的な標的である候補薬剤は、マーカー遺伝子の発現レベルおよび活性を指標として用いるスクリーニングによって同定することができる。本発明の状況において、そのようなスクリーニングは、例えば以下の段階を含んでよい:
a)DGC 1〜463からなる群より選択される核酸にコードされるポリペプチドに被験化合物を接触させる段階;
b)ポリペプチドと被験化合物との結合活性を検出する段階;および
c)ポリペプチドに結合する化合物を選択する段階。
【0065】
または、本発明のスクリーニング法は、以下の段階を含んでもよい:
a)DGC 1〜463からなる群より選択される一つまたは複数のマーカー遺伝子を発現する細胞に候補化合物を接触させる段階;および
b)DGC 1〜136からなる群より選択される一つもしくは複数のマーカー遺伝子の発現レベルを減少させるか、またはDGC 137〜463からなる群より選択される一つもしくは複数のマーカー遺伝子の発現レベルを上昇させる化合物を選択する段階。
マーカー遺伝子を発現する細胞には、例えばDGCから確立された細胞株が含まれ;そのような細胞は本発明の上記のスクリーニングに用いることができる。
【0066】
または、本発明のスクリーニング法は、以下の段階を含んでもよい:
a)DGC 1〜463からなる群より選択される核酸にコードされるポリペプチドに被験化合物を接触させる段階;
b)段階(a)のポリペプチドの生物学的活性を検出する段階;および
c)被験化合物の非存在下で検出された生物学的活性と比較して、DGC 1〜136からなる群より選択される核酸にコードされるポリペプチドの生物学的活性を抑制するか、または被験化合物の非存在下で検出された生物学的活性と比較して、DGC 137〜463からなる群より選択される核酸にコードされるポリペプチドの生物学的活性を増強する化合物を選択する段階。
【0067】
スクリーニングに必要なタンパク質は、マーカー遺伝子のヌクレオチド配列を用いて、組み換え型タンパク質として得ることができる。マーカー遺伝子の情報に基づいて、当業者は、タンパク質の任意の生物学的活性を選択し、選択された生物学的活性に基づいて、スクリーニングおよび測定法を行うことができる。
【0068】
または、本発明のスクリーニング法は以下の段階を含んでもよい:
a)DGC 1〜463からなる群より選択される一つまたは複数のマーカー遺伝子の転写調節領域と、転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子とを含むベクターが導入されている細胞に候補化合物を接触させる段階;
b)該レポーター遺伝子の活性を測定する段階;および
c)該マーカー遺伝子がDGC 1〜136からなる群より選択される上方制御されたマーカー遺伝子である場合には、対照と比較して該レポーター遺伝子の発現レベルを減少させる化合物、または該マーカー遺伝子がDGC 137〜463からなる群より選択される下方制御されたマーカー遺伝子である場合には、対照と比較して該レポーター遺伝子の発現レベルを増強する化合物を選択する段階。
適したレポーター遺伝子および宿主細胞は当技術分野で周知である。スクリーニングのために必要なレポーター構築物は、マーカー遺伝子の転写調節領域を用いて調製することができる。マーカー遺伝子の転写調節領域が当業者に既知である場合、レポーター構築物は、これまでの配列情報を用いて調製することができる。マーカー遺伝子の転写調節領域がまだ同定されていない場合、マーカー遺伝子のヌクレオチド配列情報に基づいて、転写調節領域を含むヌクレオチドセグメントをゲノムライブラリから単離することができる。
【0069】
スクリーニングによって単離された化合物は、マーカー遺伝子にコードされるタンパク質の活性を阻害し、かつDGCの治療または予防に適用することができる候補薬物である。
【0070】
その上、マーカー遺伝子にコードされるタンパク質の活性を阻害する化合物の構造の一部が、付加、欠失、および/または置換によって変換されている化合物も同様に、本発明のスクリーニング法によって得ることができる化合物に含まれる。
【0071】
本発明の方法によって単離された化合物をヒト、ならびにマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、ヒヒ、およびチンパンジーのような他の哺乳動物のための薬剤として投与する場合、単離された化合物を直接投与してもよく、または既知の薬学的調製法を用いて投与剤形に調製してもよい。例えば、必要に応じて、薬物は、糖衣錠、カプセル剤、エリキシル剤およびマイクロカプセルとして経口摂取されるか、または水もしくは他の任意の薬学的に許容される液体との滅菌溶液もしくは懸濁液の注射剤形で非経口摂取されうる。例えば、化合物は、薬学的に許容される担体または媒体、具体的には滅菌水、生理食塩液、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定化剤、着香料、賦形剤、溶剤、保存剤、結合剤などと共に、一般的に許容される投薬実施に必要な単位投与剤形で混合することができる。これらの調製物における活性成分の量によって、指示範囲内の適した用量を得ることができる。
【0072】
錠剤およびカプセル剤に混合することができる添加剤の例は、ゼラチン、コーンスターチ、トラガカントゴム、およびアラビアゴムのような結合剤;結晶セルロースのような賦形剤;コーンスターチ、ゼラチンおよびアルギン酸のような膨張剤;ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤;ショ糖、乳糖、またはサッカリンのような甘味料;ならびにペパーミント、アカモノ油、およびチェリーのような着香料である。単位投与剤形がカプセル剤である場合、油のような液体担体も同様に上記の成分にさらに含めることができる。注射用滅菌組成物は、注射用蒸留水のような溶剤を用いて通常の投薬実施に従って調製することができる。
【0073】
生理食塩液、グルコース、ならびにD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、および塩化ナトリウムのような補助剤を含む他の等張液は、注射用水溶液として用いることができる。これらは、アルコール、特にエタノール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールのような多価アルコール、ポリソルベート80(商標)およびHCO-50のような非イオン性界面活性剤のような適した溶解剤と共に用いることができる。
【0074】
ゴマ油または大豆油を油脂性液体として用いることができ、かつ安息香酸ベンジルまたはベンジルアルコールを溶解剤として共に用いてもよく、リン酸緩衝液および酢酸ナトリウム緩衝液のような緩衝液;塩酸プロカインのような鎮痛剤;ベンジルアルコールおよびフェノールのような安定化剤、ならびに抗酸化剤と共に調製してもよい。調製された注射剤は適したアンプルに充填してもよい。
【0075】
当業者に周知の方法を用いて、本発明の薬学的組成物を患者に、例えば動脈内、静脈内、または経皮注射として投与してもよく、同様に鼻腔内、気管支内、筋肉内、または経口投与としても投与してもよい。投与の用量および方法は、患者の体重および年齢ならびに投与法に応じて変化する;しかし、当業者は、適した投与法を日常的に選択することができる。該化合物がDNAによってコードされうる場合、DNAを遺伝子治療のベクターに挿入して、治療を行うためにベクターを患者に投与することができる。投与の用量および方法は、患者の体重、年齢、および症状に応じて変化するが、当業者はそれらを適切に選択することができる。
【0076】
例えば、本発明のタンパク質に結合してその活性を調節する化合物の用量は、症状に依存するが、用量は、正常な成人(体重60 kg)に経口投与する場合、約0.1 mg〜約100 mg/日、好ましくは約1.0 mg〜約50 mg/日、より好ましくは約1.0 mg〜約20 mg/日である。
【0077】
正常な成人(体重60 kg)に注射剤形で非経口投与する場合、患者、標的臓器、症状および投与法によって多少の差があるが、約0.01 mg〜約30 mg/日、好ましくは約0.1〜約20 mg/日、およびより好ましくは約0.1〜約10 mg/日を静脈内注射することが都合がよい。同様に、他の動物の場合においても、体重60 kgに変換した量を投与することが可能である。
【0078】
DGCを有する被験者の予後の評価
被験細胞集団における一つまたは複数のDGC関連遺伝子の発現を、患者に由来する参照細胞集団における遺伝子の発現と、病期のスペクトルについて比較することによって、DGCを有する被験者の予後を評価する方法も同様に提供される。被験細胞集団と参照細胞集団における一つもしくは複数のDGC遺伝子の遺伝子発現を比較することによって、または被験者に由来する被験細胞集団における経時的な遺伝子発現パターンを比較することによって、被験者の予後を評価することができる。
【0079】
正常対照と比較してDGC 137〜463の一つもしくは複数の発現の減少、または正常対照と比較してDGC 1〜136の一つもしくは複数の発現の増加は、予後があまり好ましくないことを示している。正常対照と比較してDGC 1〜463の一つまたは複数の発現が類似していれば、より好ましい予後を示す。
【0080】
キット
本発明にはまた、DGC検出試薬、例えばオリゴヌクレオチド配列のような一つまたは複数のDGC核酸に特異的に結合するか、またはこれを同定する核酸であって、DGC核酸の一部と相補的である核酸またはDGC核酸にコードされるタンパク質に結合する抗体が含まれる。試薬は、キットの形で共に包装される。試薬、例えば核酸または抗体(固相マトリクスに結合させるか、またはそれらをマトリクスに結合させるための試薬とは別に包装される)、対照試薬(陽性および/または陰性)、ならびに/または検出標識は異なる容器に包装される。アッセイを行うための説明書(例えば、書面、テープ、VCR、CD-ROM等)がキットに含まれる。キットのアッセイ形式は、当技術分野で既知のノーザンハイブリダイゼーションまたはサンドイッチELISAである。
【0081】
例えば、DGC検出試薬は、少なくとも一つのDGC検出部位を形成するために多孔性ストリップのような固相マトリクスに固定する。多孔性ストリップの測定または検出領域には、核酸を含む多数の部位が含まれてもよい。試験ストリップはまた、陰性および/または陽性対照のための部位を含んでもよい。または、対照部位は、試験ストリップとは異なるストリップに存在する。任意で、異なる検出部位は、異なる量の固定された核酸を含んでもよく、すなわち第一の検出部位はより多い量を含み、それに続く部位ではより少ない量を含んでもよい。被験試料を加えると、検出可能なシグナルを示す部位の数が、試料に存在するDGCの量の定量的な指標となる。検出部位は、任意の適した検出可能な形状で構成されてもよく、一般的には試験ストリップの幅に及ぶバーまたはドットの形状である。
【0082】
または、キットは、一つまたは複数の核酸を含む核酸基質アレイを含む。アレイ上の核酸は、DGC 1〜463によって示される一つまたは複数の核酸配列を特異的に同定する。DGC 1〜463によって表される核酸の2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、40、または50個またはそれ以上の発現は、アレイ試験小片またはチップへの結合レベルによって同定される。基質アレイは、例えば固相基質上、例えば米国特許第5,744,305号に記載される「チップ」上に存在しうる。
【0083】
アレイと複数性
本発明にはまた、一つまたは複数の核酸を含む核酸基質アレイも含まれる。アレイ上の核酸は、DGC 1〜463によって示される一つまたは複数の核酸配列に特異的に対応する。DGC 1〜463によって表される核酸の2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、40、または50個またはそれ以上の発現レベルは、アレイに結合する核酸を検出することによって同定される。
【0084】
本発明にはまた、単離された複数の核酸配列(すなわち、二つまたはそれ以上の核酸の混合物)が含まれる。核酸配列は、液相または固相に存在し、例えばニトロセルロースメンブレンのような固相支持体に固定される。複数には、DGC 1〜463によって示される核酸配列の一つまたは複数が含まれる。様々な態様において、複数には、DGC 1〜463によって表される配列の2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、40、または50個またはそれ以上が含まれる。
【0085】
チップ
DNAチップは、多くの遺伝子の発現レベルを同時に比較するために都合がよい装置である。DNAチップを利用した発現プロファイルの決定は、例えば「Microarray Biochip Technology」(Mark Schena、イートン出版、2000)等に開示される方法によって行うことができる。
【0086】
DNAチップは、多数の遺伝子を検出するために、固定された高密度プローブを含む。したがって、多くの遺伝子の発現レベルを1ラウンドの解析で同時に推定することができる。すなわち、標本の発現プロファイルをDNAチップによって決定することができる。本発明のDNAチップを利用した方法は、以下の段階を含む:
(1)マーカー遺伝子に対応するaRNAまたはcDNAを合成する段階;
(2)aRNAまたはcDNAをマーカー遺伝子に対するプローブとハイブリダイズさせる段階;および
(3)プローブとハイブリダイズしたaRNAまたはcDNAを検出して、そのmRNA量を定量する段階。
【0087】
aRNAとは、RNAポリメラーゼによって鋳型cDNAから転写されたRNAを指す。DNAチップを利用した発現プロファイル決定のためのaRNA転写キットは市販されている。そのようなキットによって、T7プロモーターを結合したcDNAを鋳型としてT7 RNAポリメラーゼを用いてaRNAを合成することができる。一方、ランダムプライマーを用いるPCRによって、mRNAから合成されたcDNAを鋳型として用いてcDNAを増幅することができる。
【0088】
一方、DNAチップは、その上にスポットされた、本発明のマーカー遺伝子を検出するためのプローブを含む。DNAチップ上にスポットされたマーカー遺伝子の数に制限はない。例えば、本発明のマーカー遺伝子の5%またはそれ以上、好ましくは20%またはそれ以上、より好ましくは50%またはそれ以上、さらにより好ましくは70%またはそれ以上を選択することが可能である。マーカー遺伝子と共に他の任意の遺伝子をDNAチップ上にスポットすることができる。例えば、発現レベルがほとんど変化しない遺伝子のプローブをDNAチップ上にスポットしてもよい。アッセイの結果を複数のチップ間、または異なるアッセイ間で比較することが意図される場合、そのような遺伝子を用いてアッセイ結果を標準化することができる。
【0089】
選択された各マーカー遺伝子に対してプローブを設計して、DNAチップ上にスポットする。そのようなプローブは、例えば、5〜50ヌクレオチド残基を含むオリゴヌクレオチドであってもよい。DNAチップ上のそのようなオリゴヌクレオチドを合成する方法は、当業者に既知である。より長いDNAをPCRで、または化学的に合成することができる。PCRなどによって合成された長いDNAをスライドガラス上にスポットする方法も同様に当業者に既知である。上記の方法によって得られたDNAチップは、本発明に従ってDGCを診断するために用いることができる。
【0090】
調製されたDNAチップをaRNAに接触させた後、プローブとaRNAとのハイブリダイゼーションを検出する。aRNAは、蛍光色素によって予め標識することができる。Cy3(赤色)およびCy5(緑色)のような蛍光色素を用いてaRNAを標識することができる。被験者および対照からのaRNAをそれぞれ、異なる蛍光色素によって標識する。両者の発現レベルの差を、シグナル強度の差に基づいて推定することができる。DNAチップ上の蛍光色素のシグナルを、スキャナによって検出して、特殊なプログラムを用いて解析することができる。例えば、Affymetrix社のSuite は、DNAチップ解析のためのソフトウェアパッケージである。
【0091】
DGCを阻害する方法
本発明は、被験者におけるDGCを治療する方法を提供する。治療化合物は、DGCを有する、発症のリスクを有する(または感受性がある)被験者に対して予防目的または治療目的で投与される。そのような被験者は、標準的な臨床的方法を用いて、または(例えばDGC 1〜463の)発現もしくは活性の異常なレベルを検出することによって同定される。
【0092】
治療法には、DGC細胞が由来する同じ組織型の正常細胞と比較して、DGC細胞において発現が減少している遺伝子(「過小発現遺伝子」)の一つまたは複数の遺伝子産物の発現、機能、またはその両者を増加させることが含まれる。これらの方法において、被験者において過小発現されている遺伝子の一つまたは複数の量を増加させる化合物の有効量によって被験者を治療する。投与は全身または局所的となりうる。治療化合物には、過小発現遺伝子のポリペプチド産物、またはその生物学的活性断片、過小発現遺伝子をコードし、DGC細胞における発現を許容する発現制御因子を有する核酸、例えばDGC細胞に対して内因性のそのような遺伝子の発現レベルを増加させる(すなわち、一つまたは複数の過小発現遺伝子の発現を上方制御する)薬剤が含まれる。そのような化合物の投与は、被験者の胃細胞における一つまたは複数の異常に過小発現された遺伝子の効果に対抗して、被験者の臨床状態を改善する。
【0093】
本方法にはまた、その発現が異常に増加している遺伝子(「過剰発現遺伝子」)の一つまたは複数の遺伝子産物の発現、機能、またはその双方を減少させることが含まれる。発現は、当業者に既知のいくつかの任意の方法によって阻害される。例えば、一つまたは複数の過剰発現された遺伝子の発現を阻害またはこれに拮抗する核酸、例えば一つまたは複数の過剰発現された遺伝子の発現を妨害するアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは低分子干渉RNAを被験者に投与することによって発現は阻害される。
【0094】
先に述べたように、DGC 1〜136のヌクレオチド配列に対応するアンチセンス核酸を用いて、DGC 1〜136の発現レベルを減少させることができる。DGCにおいて上方制御されるDGC 1〜136に対応するアンチセンス核酸は、DGCの治療において有用である。具体的には、本発明のアンチセンス核酸は、DGC 1〜136またはそれに対応するmRNAに結合して、それによって遺伝子の転写もしくは翻訳を阻害し、mRNAの分解を促進し、かつ/またはDGC 1〜136からなる群より選択される核酸にコードされるタンパク質の発現を阻害して、最終的にタンパク質の機能を阻害することによって作用してもよい。本明細書において用いられる「アンチセンス核酸」という用語は、アンチセンス核酸が標的配列に特異的にハイブリダイズすることができる限り、標的配列と完全に相補的であるヌクレオチドおよび一つまたは複数のヌクレオチドのミスマッチを有するヌクレオチドの双方を含む。例えば、本発明のアンチセンス核酸には、少なくとも15連続ヌクレオチドの長さにわたって少なくとも70%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上、より好ましくは90%またはそれ以上、さらにより好ましくは95%またはそれ以上の相同性を有するポリヌクレオチドが含まれる。当技術分野で既知のアルゴリズムを用いて相同性を決定することができる。
【0095】
本発明のアンチセンス核酸誘導体は、タンパク質をコードするDNAまたはmRNAに結合し、転写または翻訳を阻害し、mRNAの分解を促進し、かつタンパク質の発現を阻害し、それによってタンパク質の機能を阻害することによって、マーカー遺伝子にコードされるタンパク質を産生する細胞に作用する。
【0096】
本発明のアンチセンス核酸誘導体は、誘導体に対して不活性な適した基剤と混合することによって、リニメントまたは湿布剤のような外用調製物に調製することができる。
【0097】
同様に、必要に応じて、誘導体は、賦形剤、等張剤、溶解剤、安定化剤、保存剤、鎮痛剤等を加えることによって、錠剤、粉剤、顆粒剤、カプセル剤、リポソームカプセル、注射剤、溶液、点鼻液、および凍結乾燥剤に調製することができる。これらは以下の既知の方法によって調製することができる。
【0098】
アンチセンス核酸誘導体は、患部に直接適用することによって、または患部に達するように血管に注入することによって、患者に投与される。アンチセンス封入剤も、持続性および膜透過性を増加するために用いることができる。例としては、リポソーム、ポリ-L-リジン、脂質、コレステロール、リポフェクチンまたはこれらの誘導体である。
【0099】
本発明のアンチセンス核酸誘導体の用量は、患者の病態に応じて適切に調節して、所望の量で用いることができる。例えば、0.1〜100 mg/kg、好ましくは0.1〜50 mg/kgの用量範囲を投与することができる。
【0100】
本発明のアンチセンス核酸は、本発明のタンパク質の発現を阻害するので、本発明のタンパク質の生物学的活性を抑制するのに有用である。同様に、本発明のアンチセンス核酸を含む発現阻害剤は、それらが本発明のタンパク質の生物学的活性を阻害できることから有用である。
【0101】
本発明のアンチセンス核酸には、修飾オリゴヌクレオチドが含まれる。例えば、チオエート型オリゴヌクレオチドを用いて、オリゴヌクレオチドにヌクレアーゼ抵抗性を付与してもよい。
【0102】
同様に、マーカー遺伝子に対するsiRNAを用いて、マーカー遺伝子の発現レベルを減少させることができる。「siRNA」という用語は、標的mRNAの翻訳を妨げる二本鎖RNA分子を意味する。DNAがRNAを転写する鋳型となる技術を含む、siRNAを細胞に導入する標準的な方法が用いられる。本発明の状況において、siRNAは、DGC 1〜136のような、上方制御されたマーカー遺伝子に対するセンス核酸配列およびアンチセンス核酸配列を含む。siRNAは、単一の転写物が、標的遺伝子からのセンス配列および相補的アンチセンス配列の双方を有するように、例えばヘアピンを有するように構築される。
【0103】
この方法は、例えば細胞の悪性形質転換の結果として上方制御された細胞内の発現を変化させるために用いられる。標的細胞におけるDGC 1〜136の一つに対応する転写物に対するsiRNAの結合によって、細胞によるタンパク質産生の減少が起こる。オリゴヌクレオチドの長さは少なくとも10ヌクレオチドであり、天然に存在する転写物と同じ長さであってもよい。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、長さが19〜25ヌクレオチドである。最も好ましくは、オリゴヌクレオチドが長さが75、50、25ヌクレオチド未満である。
【0104】
siRNAのヌクレオチド配列は、アンビオン(Ambion)のウェブサイト(http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)から入手できるsiRNA設計コンピュータープログラムを用いて設計した。コンピュータープログラムは、以下のプロトコールに基づいてsiRNA合成のためのヌクレオチド配列を選択する。
【0105】
siRNA標的部位の選択:
1.対象となる転写物のAUG開始コドンから始めて、AAジヌクレオチド配列を求めて下流にスキャンする。可能性のあるsiRNA標的部位として、各AAおよび3'隣接ヌクレオチド19個の出現を記録する。Tuschlらは、5'および3'非翻訳領域(UTR)および開始コドン近傍(75塩基以内)の領域が、調節タンパク質結合部位により富んでいる可能性があることから、これらに対してsiRNAを設計しないことを推奨している。UTR-結合タンパク質および/または翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨害しうる。
2.可能性のある標的部位をヒトゲノムデータベースと比較して、他のコード配列と有意な相同性を有する如何なる標的配列も検討から除外する。相同性検索は、NCBIサーバー、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/において認められうるBLASTを用いて行うことができる。
3.合成のために適格な標的配列を選択する。アンビオンでは、好ましくは、評価すべき遺伝子の長さに沿っていくつかの標的配列を選択することができる。
【0106】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAは、本発明のポリペプチドの発現を阻害するので、本発明のポリペプチドの生物学的活性を抑制するのに有用である。同様に、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAを含む発現阻害剤は、それらが本発明のポリペプチドの生物学的活性を阻害できるという点において有用である。したがって、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAを含む組成物は、DGCを治療するのに有用である。
【0107】
または、一つまたは複数の過剰発現された遺伝子の遺伝子産物の機能は、遺伝子産物に結合する化合物、さもなければ遺伝子産物の機能を阻害する化合物を投与することによって阻害される。例えば、化合物は、一つまたは複数の過剰発現された遺伝子産物、例えば細胞表面タンパク質または遺伝子産物に結合し、遺伝子産物の機能、例えば同種のレセプターへの結合の活性を阻害する抗体である。
【0108】
本発明は、抗体、特に上方制御されたマーカー遺伝子にコードされるタンパク質に対する抗体、または抗体の断片を用いることに言及する。本明細書において用いられるように、「抗体」という用語は、抗体を合成するために用いられる抗原(すなわち、上方制御されたマーカー遺伝子産物)またはそれに近縁の抗原のみと相互作用する(すなわち結合する)、特異的構造を有する免疫グロブリン分子を指す。さらに抗体は、それがマーカー遺伝子にコードされるタンパク質の一つまたは複数に結合する限り、抗体断片または修飾抗体であってもよい。例えば、抗体断片は、Fab、F(ab')2、Fv、またはHおよびL鎖からのFv断片が適当なリンカーによって連結されている一本鎖Fv(scFv)であってもよい(Huston, J.S.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:5879〜5883(1988))。より詳しく述べると、抗体断片は、抗体をパパインまたはペプシンのような酵素によって処理することによって産生してもよい。または、抗体断片をコードする遺伝子を構築して、発現ベクターに挿入し、適当な宿主細胞において発現させてもよい(例えば、Co M.S.ら、J. Immunol. 152:2968〜2976(1994);Better M.およびHorwitz A.H.、Methods Enzymol. 178:476〜496(1989);Pluckthun A.およびSkerra A.、Methods Enzymol. 178:497〜515(1989);Lamoyi E.、Methods Enzymol. 121:652〜663(1986);Rousseaux J.ら、Methods Enzymol. 121:663〜669(1986);Bird R.E.およびWalker B.W.、Trends Biotechnol. 9:132〜137(1991)を参照されたい)。
【0109】
抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)のような多様な分子に結合させることによって修飾してもよい。本発明は、そのような修飾抗体を提供する。修飾抗体は、抗体を化学修飾することによって得ることができる。これらの修飾法は、当技術分野で常套的である。
【0110】
または、抗体は、ヒト以外の抗体に由来する可変領域とヒト抗体に由来する定常領域とのキメラ抗体として、またはヒト以外の抗体に由来する相補性決定領域(CDR)、ヒト抗体に由来するフレームワーク領域(FR)、および定常領域を含むヒト化抗体として得てもよい。そのような抗体は、既知の技術を用いて調製することができる。
【0111】
癌細胞において起こる特異的な分子変化に対する癌治療は、進行乳癌を治療するためのトラスツズマブ(ヘルセプチン)、慢性骨髄性白血病のためのイマチニブメチレート(グリーベック)、非小細胞肺癌(NSCLC)のためのゲフィチニブ(イレッサ)、ならびにB細胞リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫のためのリツキシマブ(抗CD20 mAb)のような抗癌剤の臨床開発および規制認可によって確認されている(Ciardiello F, Tortora G. A novel approach in the treatment of cancer: targeting the epidermal growth factor receptor. Clin Cancer Res. 2001 10月;7(10):2958〜70. Review.;Slamon DJ, Leyland-Jones B, Shak S, Fuchs H, Paton V, Bajamonde A, Fleming T, Eiermann W, Wolter J, Pegram M, Baselga J, Norton L. Use of chemotherapy plus a monoclonal antibody against HER2 for metastatic breast cancer that overexpresses HER2. N Engl J Med. 2001 3月15日;344(11):783〜92.;Rehwald U, Schulz H, Reiser M, Sieber M, Staak JO, Morschhauser F, Driessen C, Rudiger T, Muller-Hermelink K, Diehl V, Engert A. Treatment of relapsed CD20+ Hodgkin lymphoma with the monoclonal antibody rituximab is effective and well tolerated:results of a phase 2 trial of the German Hodgkin Lymphoma Study Group. Blood. 2003 1月15日;101(2):420〜424.;Fang G, Kim CN, Perkins CL, Ramadevi N, Winton E, Wittmann SおよびBhalla KN. (2000). Blood, 96, 2246〜2253.)。これらの薬剤は、形質転換した細胞のみを標的とすることから、臨床的に有効であり、従来の抗癌剤より許容性が良好である。したがって、そのような薬剤は、癌患者の生存および生活の質を改善するのみならず、分子標的癌治療の考え方が正当であることをを証明している。さらに、標的特異的薬剤は、標準的な化学療法と併用して用いた場合に、その有効性を増強することができる(Gianni, L.(2002)、Oncology 63 補遺1、47〜56;Klejman A., Rushen L., Morrione A., Slupianek AおよびSkorski T.(2002)、Oncogene 21:5868〜5876)。したがって、将来の癌治療はおそらく、従来の薬剤を血管新生および浸潤性のような腫瘍細胞の異なる特徴をねらった標的特異的薬剤と併用することを含むであろう。
【0112】
これらの調節法は、エクスビボまたはインビトロで(例えば、細胞を薬剤と共に培養することによって)、またはインビボで(例えば被験者に薬剤を投与することによって)行われる。この方法は、発現差のある遺伝子の異常な発現または活性を相殺する治療として、タンパク質もしくはタンパク質の組み合わせ、または核酸分子もしくは核酸分子の組み合わせを投与することを含む。
【0113】
遺伝子のレベルまたは生物学的活性の増加(疾患または障害を有しない被験者と比較して)を特徴とする疾患または障害は、一つまたは複数の過剰発現された遺伝子の活性に拮抗する(すなわち、減少または阻害する)治療剤によって治療してもよい。活性に拮抗する治療剤を治療または予防目的で投与する。
【0114】
利用してもよい治療剤には、例えば、(i)一つまたは複数の過小発現された配列のポリペプチド、またはその類似体、誘導体、断片、もしくは相同体、(ii)一つまたは複数の過剰発現された配列に対する抗体、(iii)一つまたは複数の過小発現された配列をコードする核酸、(iv)アンチセンス核酸または「機能欠損」核酸(すなわち、一つまたは複数の過剰発現遺伝子のコード配列内への異種挿入による);または(v)低分子干渉RNA(siRNA);または(vi)調節因子(すなわち、過剰/過小発現ポリペプチドとその結合パートナーとの相互作用を変化させる阻害剤、アゴニスト、およびアンタゴニスト)。機能欠損アンチセンス分子は、相同的組み換えによってポリペプチドの内因性の機能を「ノックアウト」するために利用される(例えば、Capecchi、Science 244:1288〜1292(1989)を参照されたい)。
【0115】
レベルまたは生物学的活性の減少(疾患または障害を有しない被験者と比較して)を特徴とする疾患および障害は、活性を増加させる(すなわちアゴニストである)治療剤によって治療してもよい。活性を上方制御する治療剤は、治療または予防目的で投与してもよい。利用してもよい治療剤には、ポリペプチド(またはその類似体、誘導体、断片もしくは相同体)または生物学的利用能を増加させるアゴニストが含まれるがこれらに限定されない。
【0116】
レベルの増加または減少は、患者の組織試料を採取し(例えば、生検組織から)、これをRNAまたはペプチドのレベル、発現されたペプチドの構造および/または活性(またはその発現が変化している遺伝子のmRNA)に関してインビトロでアッセイすることにより、ペプチドおよび/またはRNAを定量することによって、容易に検出することができる。当技術分野において周知である方法には、イムノアッセイ(例えば、ウェスタンブロット解析、免疫沈降後のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫細胞化学等)、および/またはmRNAの発現を検出するハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンアッセイ、ドットブロット、インサイチューハイブリダイゼーション等)が含まれるがこれらに限定されない。
【0117】
予防目的の投与は、疾患もしくは障害が予防されるように、またはその進行が遅れるように、疾患の明白な臨床症状が発現する前に行われる。
【0118】
治療法には、発現差のある遺伝子の遺伝子産物の活性の一つまたは複数を調節する薬剤に細胞を接触させることが含まれる。タンパク質活性を調節する薬剤には、核酸またはタンパク質、これらのタンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、または他の低分子の、天然に存在する同起源のリガンドが含まれる。例えば、薬剤は、一つまたは複数の異なるように過小発現される遺伝子の一つまたは複数のタンパク質活性を刺激する。
【0119】
本発明はまた、DGC 1〜136からなる群より選択される核酸にコードされるポリペプチド、もしくは該ポリペプチドの免疫学的活性断片、またはポリペプチドもしくはその断片をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを被験者に投与する段階を含む、被験者におけるDGCを治療または予防する方法にも関する。ポリペプチドの投与は、被験者において抗腫瘍免疫を誘導する。抗腫瘍免疫を誘導するために、DGC 1〜136からなる群より選択される核酸にコードされるポリペプチド、もしくは該ポリペプチドの免疫学的活性断片、またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを投与する。ポリペプチドまたはその免疫学的活性断片はDGCに対するワクチンとして有用である。場合によっては、タンパク質またはその断片は、T細胞受容体(TCR)に結合した形で投与してもよく、またはマクロファージ、樹状細胞(DC)、もしくはB細胞のような抗原提示細胞(APC)によって提示された形で投与してもよい。DCの強い抗原提示能のため、APCの中では、DCを用いることが最も好ましい。
【0120】
本発明において、DGCに対するワクチンとは、動物に接種すると抗腫瘍免疫を誘導する機能を有する物質を指す。本発明によると、DGC 1〜136からなる群より選択される核酸にコードされるポリペプチドまたはその断片は、DGC 1〜136を発現するDGC細胞に対して強力かつ特異的な免疫応答を誘導する可能性があるHLA-A24またはHLA-A*0201拘束性エピトープであることが示唆された。このように、本発明はまた、ポリペプチドを用いて抗腫瘍免疫を誘導する方法も含む。一般的に、抗腫瘍免疫には、以下のような免疫応答が含まれる:
−腫瘍に対する細胞障害性リンパ球の誘導、
−腫瘍を認識する抗体の誘導、および
−抗腫瘍サイトカイン産生の誘導。
【0121】
したがって、あるタンパク質が、動物への接種時にこれらの免疫応答のいずれか一つを誘導する場合、そのタンパク質は、抗腫瘍免疫誘導効果を有すると判定される。タンパク質による抗腫瘍免疫の誘導は、宿主におけるタンパク質に対する免疫系の反応をインビボまたはインビトロで観察することによって検出することができる。
【0122】
例えば、細胞障害性Tリンパ球の誘導を検出する方法は周知である。生体内に入る外来物質は、抗原提示細胞(APC)の作用によってT細胞およびB細胞に提示される。APCによって提示された抗原に対して抗原特異的に応答するT細胞は、抗原による刺激によって細胞障害性T細胞(または細胞障害性Tリンパ球;CTL)に分化した後増殖する(これはT細胞の活性化と呼ばれる)。したがって、あるペプチドによるCTL誘導は、APCによるT細胞へのペプチドの提示およびCTLの誘導を検出することによって評価することができる。さらに、APCは、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、マクロファージ、好酸球、およびNK細胞を活性化する効果を有する。CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞も同様に抗腫瘍免疫において重要であることから、ペプチドの抗腫瘍免疫誘導作用は、これらの細胞の活性化効果を指標として用いて評価することができる。
【0123】
APCとして樹状細胞(DC)を用いてCTLの誘導作用を評価する方法は、当技術分野で周知である。DCは、APCの中でも最も強力なCTL誘導作用を有する代表的なAPCである。この方法では、被験ポリペプチドをまずDCに接触させて、このDCをT細胞に接触させる。DCに接触させた後に、対象細胞に対して細胞障害作用を有するT細胞が検出されれば、被験ポリペプチドが細胞障害性T細胞の誘導活性を有することを示している。腫瘍に対するCTLの活性は、例えば51Cr標識腫瘍細胞の溶解を指標として用いて検出することができる。または、3H-チミジン取り込み活性またはLDH(乳糖デヒドロゲナーゼ)放出を指標として用いて腫瘍細胞の損傷の程度を評価する方法も同様に周知である。
【0124】
DCとは別に、末梢血単核球(PBMC)も同様にAPCとして用いてもよい。CTLの誘導は、GM-CSFおよびIL-4の存在下でPBMCを培養することによって増強されうることが報告されている。同様に、CTLは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびIL-7の存在下でPBMCを培養することによって誘導されることが示されている。
【0125】
これらの方法によってCTL誘導活性を有することが確認された被験ポリペプチドは、DC活性化効果およびその後のCTL誘導活性を有するポリペプチドである。したがって、腫瘍細胞に対してCTLを誘導するポリペプチドは、腫瘍に対するワクチンとして有用である。さらに、ポリペプチドに接触させることによって腫瘍に対するCTLの誘導能を獲得したAPCは、腫瘍に対するワクチンとして有用である。さらに、APCによるポリペプチドの抗原提示により細胞障害性を獲得したCTLも同様に、腫瘍に対するワクチンとして用いることができる。APCおよびCTLによる抗腫瘍免疫を用いるそのような腫瘍の治療法は、細胞免疫療法と呼ばれる。
【0126】
一般的に、細胞免疫療法のためにポリペプチドを用いる場合、CTL誘導効率は、異なる構造を有する複数のポリペプチドを組み合わせて、それらをDCに接触させることによって増加することが知られている。したがって、DCをタンパク質断片によって刺激する場合、複数のタイプの断片の混合物を用いることが有利である。
【0127】
または、ポリペプチドによる抗腫瘍免疫の誘導は、腫瘍に対する抗体産生の誘導を観察することによって確認することができる。例えば、ポリペプチドに対する抗体が、そのポリペプチドで免疫した実験動物において誘導される場合、そして腫瘍細胞の増殖がそれらの抗体によって抑制される場合、ポリペプチドは、抗腫瘍免疫の誘導能を有すると判定することができる。
【0128】
抗腫瘍免疫は本発明のワクチンを投与することによって誘導され、抗腫瘍免疫の誘導によって、DGCを治療および予防することができる。癌の治療または癌の発症の予防には、癌性細胞の増殖の阻害、癌の退縮、および癌の発生抑制のような段階のいずれかが含まれる。癌を有する個体の死亡率の低下、血液中の腫瘍マーカーの減少、癌に伴う検出可能な症状の軽減等も同様に、癌の治療または予防に含まれる。そのような治療および予防効果は好ましくは統計学的に有意である。例えば、細胞増殖疾患に対するワクチンの治療または予防効果を、ワクチン投与を行わない対照と比較する観察において、5%以下は有意水準である。例えば、スチューデントのt-検定、マン-ホイットニーのU検定、またはANOVAを統計解析に用いてもよい。
【0129】
免疫学的活性を有する上記のタンパク質またはそのタンパク質をコードするベクターをアジュバントと併用してもよい。アジュバントは、免疫学的活性を有するタンパク質と共に(または連続して)投与した場合にタンパク質に対する免疫応答を増強する化合物を指す。アジュバントの例には、コレラ毒素、サルモネラ毒素、ミョウバン等が含まれるがこれらに限定されない。さらに、本発明のワクチンは、薬学的に許容される担体と適切に組み合わせてもよい。そのような担体の例は、滅菌水、生理食塩液、リン酸緩衝液、培養液等である。さらに、ワクチンは必要に応じて、安定化剤、懸濁剤、保存剤、界面活性剤等を含んでもよい。ワクチンは、全身または局所投与される。ワクチン投与は、1回投与によって行ってもよく、または複数回投与によって追加免疫してもよい。
【0130】
本発明のワクチンとしてAPCまたはCTLを用いる場合、腫瘍を例えばエクスビボ法によって治療または予防することができる。より詳しく述べると、治療または予防を受けている被験者のPBMCを採取して、細胞をエクスビボでポリペプチドに接触させて、APCまたはCTLの誘導後、細胞を被験者に投与してもよい。APCはまた、ポリペプチドをコードするベクターをエクスビボでPBMCに導入することによって誘導することができる。インビトロで誘導されたAPCまたはCTLは、投与前にクローニングすることができる。標的細胞を損傷する高い活性を有する細胞をクローニングして増殖させることによって、細胞免疫療法をより効率よく行うことができる。さらに、このようにして単離されたAPCおよびCTLを用いて、細胞が由来する個体に対してのみならず、他の個体からの類似のタイプの腫瘍に対する細胞免疫療法のために用いてもよい。
【0131】
さらに、本発明のポリペプチドの薬学的有効量を含む、癌のような細胞増殖疾患を治療または予防するための薬学的組成物が提供される。薬学的組成物は、抗腫瘍免疫を惹起するために用いてもよい。
【0132】
DGCを阻害するための薬学的組成物
薬学的製剤には、経口、直腸内、鼻腔内、局所(口腔内および舌下を含む)、膣内、もしくは非経口(筋肉内、皮下、および静脈内を含む)投与に適した製剤、または吸入もしくは吹入による投与に適した製剤が含まれる。製剤は任意で個別の用量単位に包装される。
【0133】
経口投与に適した薬学的製剤には、それぞれが活性成分の規定量を含むカプセル剤、カシェ剤、または錠剤が含まれる。製剤にはまた、粉剤、顆粒剤、または溶液、懸濁液、または乳液が含まれる。活性成分は、任意でボーラス舐剤またはペーストとして投与される。経口投与用の錠剤およびカプセル剤は、結合剤、充填剤、潤滑剤、崩壊剤、または湿潤剤のような通常の賦形剤を含んでもよい。錠剤は、任意で一つまたは複数の製剤成分との圧縮または成形によって作製してもよい。圧縮錠は、粉剤または顆粒剤のような流動状の活性成分を、任意で結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、潤滑剤、表面活性剤、または分散剤と混合して、適した装置において圧縮することによって調製してもよい。成形錠剤は、不活性液体希釈剤によって湿らせた粉末化合物の混合物を適した機械において成形することによって作製してもよい。錠剤は、当技術分野で周知の方法に従ってコーティングしてもよい。経口液体調製物は、例えば、水性もしくは油性懸濁液、溶液、乳液、シロップ剤、もしくはエリキシル剤の形であってもよく、または使用前に水もしくは他の適した溶剤によって構成するための乾燥製品として提供してもよい。そのような液体調製物は、懸濁剤、乳化剤、非水性溶剤(食用油が含まれてもよい)、または保存剤のような通常の添加剤を含んでもよい。錠剤は任意で、活性成分の徐放または制御放出を提供するように調製してもよい。錠剤の包装は、毎月服用される錠剤1錠を含んでよい。薬剤の調製または用量は、月経周期の段階(プローブまたは分泌)に対して変化する。
【0134】
非経口投与用製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および意図するレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含んでもよい水性および非水性滅菌注射剤、ならびに懸濁剤および濃化剤を含んでもよい水性および非水性滅菌懸濁液が含まれる。製剤は、単位用量または複数回用量容器、例えば密封アンプルおよびバイアルに入れてもよく、滅菌液体担体、例えば生理食塩液、注射用水を使用直前に加えるだけでよい凍結乾燥状態で保存してもよい。または、製剤は、連続注入用であってもよい。即時調合注射溶液および懸濁液は、既に記述した種類の滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製してもよい。
【0135】
直腸投与用製剤には、カカオバターまたはポリエチレングリコールのような標準的な担体を含む坐剤が含まれる。口内への、例えば口腔内または舌下への局所投与用製剤には、ショ糖およびアカシアまたはトラガカントのような着香基剤に活性成分を含むトローチ剤、ならびにゼラチンとグリセリンまたはショ糖とアカシアのような基剤に活性成分を含む香錠が含まれる。鼻腔内投与の場合、本発明の化合物を液体スプレー、もしくは分散性の粉末として、または点鼻剤の形態で用いてもよい。点鼻剤は、一つまたは複数の分散剤、溶解剤、または懸濁剤も含む水性または非水性基剤によって調製してもよい。
【0136】
吸入による投与の場合、吸入器、ネブライザー、加圧パックまたはエアロゾルスプレーを送達するための他の便利な手段によって化合物を適宜送達する。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適したガスのような適した噴射剤を含んでもよい。加圧エアロゾルの場合、用量単位は、一定量を送達するための弁を提供することによって決定してもよい。
【0137】
あるいは、吸入または吹入による投与の場合、化合物は、乾燥粉末組成物、例えば化合物と、乳糖またはデンプンのような適した粉末基剤との粉末混合物の形状をとってもよい。粉末組成物は、単位投与剤形、例えば、粉末が吸入器または吹入器を利用して投与されうるカプセル剤、カートリッジ、ゼラチンまたはブリスターパックの形としてもよい。
【0138】
他の製剤には、治療薬剤を放出する埋め込み可能装置および接着パッチが含まれる。
【0139】
望ましければ、活性成分を持続的に放出するように適合された上記の製剤を用いてもよい。薬学的組成物はまた、抗菌剤、免疫抑制剤、または保存剤のような他の活性成分を含んでもよい。
【0140】
上記で特に言及した成分の他に、本発明の製剤には、当該製剤のタイプに関して当技術分野において通常の他の薬剤が含まれてもよいと理解すべきであり、例えば経口投与に適した製剤は着香料を含んでもよい。
【0141】
好ましい単位投与製剤は、下記に引用するように、活性成分またはその適当な分画の有効量を含む製剤である。
【0142】
上記の条件のそれぞれに関して、組成物、例えばポリペプチドおよび有機化合物は、約0.1〜約250 mg/kg/日の用量で経口または注射によって投与される。成人ヒトの用量範囲は一般的に、約5 mg〜約17.5 g/日、好ましくは約5 mg〜約10 g/日、および最も好ましくは約100 mg〜約3 g/日である。錠剤または個別の単位で提供される他の単位投与剤形は、便宜上、同一単位量を複数回投与した量で有効性を示すような単位量、例えば約5 mg〜約500 mg、通常約100 mg〜約500 mgを含みうる。核酸、例えばDNA構築物は、0.005〜50 mg/kg体重の範囲の用量で投与される。または、静脈内用量は核酸分子の場合106〜1022コピーの範囲である。
【0143】
用いられる用量は、被験者の年齢および性別、治療される正確な障害、およびその重症度を含む多数の要因によって左右されると考えられる。同様に、投与経路も、病態およびその重症度に依存して変化してもよい。
【0144】
本発明はさらに、添付の請求の範囲に記述される本発明の範囲を制限しない以下の実施例において説明される。以下の実施例は、DGC細胞において発現に差のある遺伝子の同定および特徴付けを説明する。
【0145】
実施例1:患者および組織試料
疾患組織から得た組織(例えば、DGC由来の粘膜)および正常組織を、発現差のある遺伝子、または疾患状態、例えばDGCを同定するために評価した。アッセイは次の通りに行った。
【0146】
胃切除術を受けた患者20人からインフォームドコンセントを得て、原発性胃癌および対応する非癌性胃粘膜を得た。患者のプロファイルをカルテから得た。Lauren's分類(2)に従って実施したそれぞれの腫瘍の組織病理学的分類から、全ての試料がびまん型胃腺癌であると診断された。臨床病期は、UICC TNM分類に従って決定した。胃癌組織20例には、進行(T2〜T4)癌19例および初期(T1)癌1例が含まれた。試料を全て直ちに凍結して、TissueTek OCT包埋剤(サクラ、東京、日本)に包埋して、マイクロアレイ解析に用いるまで-80℃で保存した。
【0147】
レーザーマイクロビーム微小切除、RNAの抽出、およびT7ベースのRNA増幅
凍結切片を調製して、70%エタノールにおいて45秒間固定し、ヘマトキシリン-エオジンによって染色して、70%、80%、および90%エタノール中で各段階30秒間脱水した後、最終的に100%エタノール中で2分間脱水した。空気乾燥させた後、レーザーマイクロビーム微小切除法を用いて、癌細胞と非癌性胃上皮とを染色組織から選択的に採取した。当技術分野で既知の方法を用いて、全RNAの抽出およびT7ベースの増幅を行った(8)。各癌性組織および非癌性組織からの2回増幅RNA(aRNA)のアリコート2.5 μgをそれぞれ、Cy3-dCTPおよびCy5-dCTPによって標識した。
【0148】
cDNAマイクロアレイおよびデータ解析
cDNAマイクロアレイスライドガラスの作製、ハイブリダイゼーション、洗浄、およびシグナルの検出は、当技術分野で既知の方法を用いて行った(8)。各標的スポットのCy5(非腫瘍)およびCy3(腫瘍)の蛍光強度は、ハウスキーピング遺伝子52個のCy3/Cy5比の平均値が1に等しくなるように調節した。選択基準を満たした遺伝子全てのCy3またはCy5のS/N(シグナル対ノイズ)比が3より大きくなるように、シグナル強度のカットオフ値を各スライドガラスに関して決定した後、Cy3とCy5色素の双方がカットオフ値より低いシグナル強度を生じた場合、その遺伝子をさらなる解析から除外した。遺伝子は、その発現比(Cy3/Cy5)に従って三群に分類した:上方制御(比が2.0に等しいかまたはそれ以上)、下方制御(比が0.3に等しいかまたはそれ以下)、および発現が変化なし(比が0.3〜2.0)。調べた症例の50%超において、Cy3/Cy5比が2.0より大きいか、または0.3より小さい遺伝子をそれぞれ、共通して上方制御または下方制御された遺伝子であると定義した。
【0149】
半定量的RT-PCR
共通して上方制御された遺伝子5個(TGFBI、SPARC、COL3A1、MSLN、およびEST)を選択して、その発現レベルを半定量的RT-PCRによって調べた。FDFT1遺伝子は、本発明者らの実験におけるハウスキーピング遺伝子52個の中でもCy3/Cy5の変動が最も小さかったことから、これを内部対照とした。PCR反応は、95℃で2分間の後、95℃で30秒、60℃で30秒、および72℃で30秒を25サイクル行った後、72℃で5分間の最終伸張を行った。プライマーの配列は以下の通りであった:
FDFT1フォワードプライマー、5'-TGTGTGGCTGGGACCTTTAGGAA-3'(配列番号:1)およびリバース、3'-TCATTCTAGCCAGGATCATACTAAG-5'(配列番号:2);
TGFBIフォワードプライマー、5'-TCCCTGGAAAAGGAGCTTCAGTA-3'(配列番号:3)およびリバース、3'-ACACCATGGCTCTGTCACAATAG-5'(配列番号:4);
SPARCフォワードプライマー、5'-CAAGAGTGAGATGTAGAAAGTTGT-3'(配列番号:5)およびリバース、3'-CTTCACATCATGGTGAGAGTTTG-5'(配列番号:6);
COL3A1フォワードプライマー、5'-AGACGCATGTTATGGTGCTAATGTA-3'(配列番号:7)およびリバース、3'-GATCAACAACCACATACAAGCTTAC-5'(配列番号:8);
MSLNフォワードプライマー、5'-AACGGCTACCTGGTCCTAGAC-3'(配列番号:9)およびリバース、3'-GTTTACTGAGCGCGAGTTCTCT-5'(配列番号:10);
およびEST(GenBankアクセッション番号AA430699)
フォワードプライマー、5'-TTTAACGCTGGTGGGCAGCA-3'(配列番号:11)およびリバース、3'-ATAAACAGAACCCATCCCAAAG -5'(配列番号:12)。
【0150】
実施例2:DGC細胞において臨床的に関連する発現パターンを有する遺伝子の同定
DGCの発癌の基礎となるメカニズムを明らかにするために、このタイプの腫瘍において共通して上方制御または下方制御される遺伝子を検索した。腫瘍20例における20,000個を超える遺伝子のcDNAマイクロアレイ解析により、調べた症例の50%超において上方制御された遺伝子136個が同定された(表1)。調べた試料の50%超において下方制御された遺伝子327個も同定された(表2)。
【0151】
共通して上方制御された要素には、シグナル伝達経路に関連する遺伝子(TGFBI、ARHGDIB、およびGNAI2)、転写因子をコードする遺伝子(HMG1Y)、ならびに様々な代謝経路(AHCY、IMPDH2、およびGNPI)、輸送系(SLC20A1)、アポトーシス(NOD1)、タンパク質の翻訳およびプロセシング(EIF3S6、CCT2、HSPCB、およびHSPB1)、DNA複製および組換え(CDC25B)に関与する遺伝子が含まれた。
【0152】
共通して下方制御された遺伝子の中には、糖質代謝(ADH3、ALDH3、FBP1、およびADH1)、薬物代謝(CYP3A7、およびCYP3A5)、二酸化炭素代謝(CA2)、防御反応(TFF1、TFF2)、または低分子もしくは重金属の輸送(ATP4A、ATP4B、ATP2A3、GIF、MT1E、MT1L)に関与する遺伝子があった。
【0153】
マイクロアレイのデータを確認するために、共通して上方制御された遺伝子5個(TGFBI、SPARC、COL3A1、MSLN、およびEST)(GenBankアクセッション番号AA430699)を選択して、マイクロアレイに用いた8対のRNAを用いて、半定量的RT-PCRを行った。結果は、5個全ての遺伝子についてのマイクロアレイデータを確認し(図1)、本明細書に記述のDGC遺伝子を用いる診断アッセイの信頼性を支持した。
【0154】
(表1)びまん型胃癌において上方制御された遺伝子





【0155】
(表2)びまん型胃癌において下方制御された遺伝子











【0156】
産業上の利用可能性
レーザー捕獲顕微解剖とゲノム全体のcDNAマイクロアレイとの併用によって得られた本明細書に記載のDGCにおける遺伝子発現分析によって、癌の予防および治療のための標的としての特異的遺伝子が同定された。これらの発現に差のある遺伝子サブセットの発現に基づいて、本発明者らは、DGCを同定または検出するための分子診断マーカーを提供する。
【0157】
本明細書に記載の方法はまた、DGCの予防、診断、および治療のためのさらなる分子標的を同定するために有用である。本明細書において報告したデータは、DGCの包括的な理解を補足し、新規診断戦略の開発を促進させ、治療薬および予防薬のための分子標的を同定する手がかりを提供する。そのような情報は、胃腫瘍形成のより深い理解に貢献して、DGCの診断、治療、および最終的には予防における新規戦略を開発するための指標を提供する。
【0158】
本明細書において引用した全ての特許、特許出願、および出版物は、その全文が参照として本明細書に組み入れられる。さらに、本発明は、詳細にその特定の態様に関して記述してきたが、本発明には様々な変更および改変が施されてもよく、それらも本発明の趣旨および範囲に含まれることは、当業者に明らかであると考えられる。
【0159】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】マイクロアレイデータにおいて共通して上方制御された遺伝子5個の発現レベルを示す遺伝子発現アッセイの写真である。DGC 8例と対応する非癌性粘膜組織由来のRNAを用いて、遺伝子5個の半定量的RT-PCR実験を行った。T、癌組織;N、非癌性粘膜。FDFT1の発現を内部対照とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者由来の生物学的試料においてDGC関連遺伝子の発現レベルを決定する段階を含む、被験者におけるDGCを診断するか、またはDGC発症の素因を診断する方法であって、該遺伝子の正常対照レベルと比較して該レベルが増加または減少すれば、該被験者がDGCを有するか、またはDGC発症のリスクを有することを示す方法。
【請求項2】
DGC関連遺伝子がDGC 1〜136からなる群より選択され、正常対照レベルと比較してレベルが増加すれば、被験者がDGCを有するか、またはDGC発症のリスクを有することを示す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記増加が正常対照レベルより少なくとも10%大きい、請求項2記載の方法。
【請求項4】
DGC関連遺伝子が、DGC 137〜463からなる群より選択され、正常対照レベルと比較してレベルが減少すれば、被験者がDGCを有するか、または発症のリスクを有することを示す、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記減少が正常対照レベルより少なくとも10%低い、請求項4記載の方法。
【請求項6】
複数のDGC関連遺伝子の発現レベルを決定する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
発現レベルが、以下からなる群より選択される任意の一つの方法によって決定される、請求項1記載の方法:
(a)DGC関連遺伝子のmRNAの検出;
(b)DGC関連遺伝子にコードされるタンパク質の検出;および
(c)DGC関連遺伝子にコードされるタンパク質の生物学的活性の検出。
【請求項8】
検出がDNAアレイ上で行われる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
生物学的試料が粘膜細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
生物学的試料が腫瘍細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
生物学的試料が胃癌細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
DGC 1〜463からなる群より選択される二つまたはそれ以上の遺伝子の遺伝子発現パターンを含む、DGC参照発現プロファイル。
【請求項13】
DGC 1〜136からなる群より選択される二つまたはそれ以上の遺伝子の遺伝子発現パターンを含む、DGC参照発現プロファイル。
【請求項14】
DGC 137〜463からなる群より選択される二つまたはそれ以上の遺伝子の遺伝子発現パターンを含む、DGC参照発現プロファイル。
【請求項15】
以下の段階を含む、DGCを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法:
a)DGC 1〜463によりコードされるポリペプチドに被験化合物を接触させる段階;
b)ポリペプチドと被験化合物との結合活性を検出する段階;および
c)ポリペプチドに結合する化合物を選択する段階。
【請求項16】
以下の段階を含む、DGCを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法:
a)DGC 1〜463からなる群より選択される一つまたは複数のマーカー遺伝子を発現する細胞に候補化合物を接触させる段階;および
b)DGC 1〜136からなる群より選択される一つもしくは複数のマーカー遺伝子の発現レベルを低下させるか、またはDGC 137〜463からなる群より選択される一つもしくは複数のマーカー遺伝子の発現レベルを上昇させる化合物を選択する段階。
【請求項17】
以下の段階を含む、DGCを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法:
a)DGC 1〜463からなる群より選択されるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドに被験化合物を接触させる段階;
b)段階(a)のポリペプチドの生物学的活性を検出する段階;および
c)被験化合物の非存在下において検出される生物学的活性と比較して、DGC 1〜136によりコードされるポリペプチドの生物学的活性を抑制するか、または被験化合物の非存在下において検出される生物学的活性と比較して、DGC 137〜463によりコードされるポリペプチドの生物学的活性を増強する化合物を選択する段階。
【請求項18】
被験細胞が胃癌細胞である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
以下の段階を含む、DGCを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法:
a)DGC 1〜463からなる群より選択される一つまたは複数のマーカー遺伝子の転写調節領域と、転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子とを含むベクターが導入されている細胞に候補化合物を接触させる段階;
b)レポーター遺伝子の活性を測定する段階;および
c)対照と比較して、該マーカー遺伝子がDGC 1〜136からなる群より選択される上方制御されたマーカー遺伝子である場合には、該レポーター遺伝子の発現レベルを低下させる化合物、または該マーカー遺伝子がDGC 137〜463からなる群より選択される下方制御されたマーカー遺伝子である場合には、該レポーター遺伝子の発現レベルを増強する化合物を選択する段階。
【請求項20】
DGC 1〜463からなる群より選択される二つもしくはそれ以上の核酸配列に結合する検出試薬を含むキット。
【請求項21】
DGC 1〜463からなる群より選択される二つまたはそれ以上の核酸配列に結合する核酸を含むアレイ。
【請求項22】
DGC 1〜136からなる群より選択されるコード配列と相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス組成物を被験者に投与する段階を含む、被験者におけるDGCを治療または予防する方法。
【請求項23】
DGC 1〜136からなる群より選択される核酸配列の発現を低下させるsiRNA組成物を被験者に投与する段階を含む、被験者におけるDGCを治療または予防する方法。
【請求項24】
DGC 1〜136からなる群より選択される任意の一つの遺伝子にコードされるタンパク質に結合する抗体またはその断片の薬学的有効量を被験者に投与する段階を含む、被験者におけるDGCを治療または予防する方法。
【請求項25】
DGC 1〜136からなる群より選択される核酸にコードされるポリペプチドもしくは該ポリペプチドの免疫学的活性断片、またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを被験者に投与することを含む、被験者におけるDGCを治療または予防する方法。
【請求項26】
DGC 137〜463の発現または活性を増加させる化合物を被験者に投与する段階を含む、被験者におけるDGCを治療または予防する方法。
【請求項27】
請求項15〜19のいずれか一項記載の方法によって得られる化合物を投与する段階を含む、被験者におけるDGCを治療または予防する方法。
【請求項28】
DGC 137〜463からなる群より選択されるポリヌクレオチドまたはそれにコードされるポリペプチドの薬学的有効量を被験者に投与する段階を含む、被験者におけるDGCを治療または予防する方法。
【請求項29】
活性成分としてDGC 1〜136からなる群より選択されるポリヌクレオチドに対するアンチセンスポリヌクレオチドまたは低分子干渉RNAの薬学的有効量と、薬学的に許容される担体を含む、DGCを治療または予防するための組成物。
【請求項30】
活性成分としてDGC 1〜136からなる群より選択される任意の一つの遺伝子にコードされるタンパク質に結合する抗体またはその断片の薬学的有効量と、薬学的に許容される担体を含む、DGCを治療または予防するための組成物。
【請求項31】
活性成分として請求項15〜19のいずれか一項記載の方法によって選択される化合物の薬学的有効量と、薬学的に許容される担体を含む、DGCを治療または予防するための組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2006−503575(P2006−503575A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546398(P2004−546398)
【出願日】平成15年9月19日(2003.9.19)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011975
【国際公開番号】WO2004/038045
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(504445356)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (22)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】