説明

めっき液および導電性素材の製造方法

【課題】希土類磁石などの導電性素材の表面に、密着性、耐食性および耐熱性に優れた保護膜を、希土類磁石などの導電性素材を腐蝕することなく形成できるめっき液を提供すること。
【解決手段】ニッケル塩化合物と、ニッケルイオンと錯体を形成するアミン化合物と、を含み、pHが8〜12であるめっき液。前記ニッケルイオンと前記アミン化合物とのモル比が、前記アミン化合物の前記ニッケルイオンへの配位数の1.0〜3.0倍であり、また、前記アミン化合物は、ニッケルイオンと錯体形成する際における第一段階反応の逐次生成定数Kが、K=4.0〜15.0の範囲にあることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類磁石などの導電性素材の表面処理に用いられるめっき液、およびこのめっき液を用いた導電性素材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
R(RはYを含む希土類元素の一種以上)、TM(TMはFeを主成分とする遷移元素)およびホウ素を含むR−TM−B系磁石、すなわち、希土類磁石は、優れた磁気特性を有することが知られている。そのため、このような希土類磁石は、各種機器のモーターやアクチュエーター用などの永久磁石部材として、広範に用いられている。
【0003】
たとえば、ボイスコイルモータの永久磁石部材としての用途もその一つである。ハードディスクドライブ(HDD)においては、磁気ヘッドのアクチュエータを駆動するために、スイング動作型のボイスコイルモータが用いられている。そして、このボイスコイルモータの永久磁石部材には、磁気特性が高いという観点より、希土類磁石が用いられるようになっている。
【0004】
このような希土類磁石は、主成分として酸化され易い希土類元素と鉄とを含有するために、耐食性が比較的低く、性能の劣化や、ばらつきなどが課題となっている。そのため、これらの問題点を回避するために、磁石素体上に、ニッケルめっき膜を成膜させる方法が提案されている。
【0005】
たとえば、特許文献1では、ニッケルイオンおよび塩素イオンと、緩衝剤としてコハク酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸およびこれらの塩から選ばれる少なくとも1種と、ホウ酸と、を含むめっき液を使用して、希土類磁石にニッケルめっき膜を形成する方法が開示されている。この文献では、希土類磁石の表面に、均一電着性、緻密性および外観に優れたニッケルめっき膜を形成することを目的としている。
【0006】
一方で、ハードディスクドライブにおいては、一層の小型、高性能化が求められており、そのため、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ用に用いられる永久磁石にも、小型化が要求されている。しかしながら、上記した特許文献1に記載された方法のように、錯化剤として、マロン酸やクエン酸などのカルボン酸やオキシカルボン酸を含有するめっき液を用いた場合には、希土類磁石の表面がめっき液により腐蝕されてしまい、特性が劣化してしまうという問題がある。特に、このようなめっき液による磁石表面付近の腐蝕の問題は、磁石形状が比較的に大きい場合には、その影響は小さいが、磁石を小型化した場合には、磁石全体に対する、磁石表面付近における腐食部分の影響が相対的に大きくなるため、特性劣化が著しくなってしまう。そのため、この特許文献1の方法では、小型かつ高性能な磁石を得ることができなかった。
【0007】
また、希土類磁石を小型化していくと、磁石に占めるニッケルめっき膜の割合が増加することとなるが、一般にニッケルめっき膜は磁気特性を発現しないため、小型化に伴い磁気特性が低下してしまうこととなる。すなわち、ニッケルめっき膜の厚みの分だけ、磁気特性が低下してしまい、結果として、小型かつ高性能を達成する妨げとなっていた。そのため、希土類磁石を小型化しても、高い性能を維持するために、ニッケルめっき膜を薄層化することも求められている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−212775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、希土類磁石などの導電性素材の表面に、密着性、耐食性および耐熱性に優れた保護膜を、希土類磁石などの導電性素材を腐蝕することなく形成できるめっき液を提供することである。また、本発明は、このようなめっき液を用いた導電性素材の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、ニッケル塩化合物を含有するめっき液において、pHを8〜12の範囲に設定するとともに、錯化剤として特定のアミン化合物を添加することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の第1の観点によれば、
ニッケル塩化合物と、
ニッケルイオンと錯体を形成するアミン化合物と、を含み、
pHが8〜12であるめっき液が提供される。
【0012】
本発明の第1の観点に係るめっき液は、電解めっきに好適に用いられるめっき液である。
【0013】
あるいは、本発明の第2の観点によれば、
ニッケル塩化合物と、
ニッケルイオンと錯体を形成するアミン化合物と、
還元剤と、を含み、
pHが8〜12であるめっき液が提供される。
【0014】
本発明の第2の観点に係るめっき液は、第1の観点に係るめっき液と比較して、さらに還元剤を有する構成となっており、無電解めっきに好適なめっき液である。第2の観点に係るめっき液に用いる還元剤としては、次亜リン酸、次亜リン酸塩化合物、テトラヒドロホウ酸、テトラヒドロホウ酸塩化合物、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボランおよびヒドラジンから選択される少なくとも1種が好ましい。
【0015】
本発明(第1の観点および第2の観点)において、好ましくは、前記アミン化合物として、ニッケルイオンと錯体形成する際における第一段階反応の逐次生成定数Kが、K=4.0〜15.0の範囲にあるアミン化合物を用いる。
【0016】
溶液中において、ニッケルイオンは、錯化作用を有する化合物を配位子として、ニッケルイオンは単核錯体を形成することとなる。このような単核錯体においては、配位子であるアミン化合物と、ニッケルイオンと、は段階的に結合する。そして、この段階的に結合する際における、第n段階反応における生成定数Kは、一般に、逐次生成定数と呼ばれる。本発明においては、特に、第一段階反応の逐次生成定数Kが、好ましくは上記範囲にあるアミン化合物を用いる。
【0017】
本発明のめっき液において、好ましくは、前記ニッケル塩化合物が、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケルおよびピロリン酸ニッケルから選択される少なくとも1種である。
【0018】
本発明のめっき液は、好ましくは、スズ、モリブデン、タングステン、銅、亜鉛、コバルトおよび鉄から選択される少なくとも1種の金属塩化合物を、さらに含む。
【0019】
また、本発明によれば、上記第1の観点に係るめっき液と、ニッケルを含有する陽極と、を用いて、電解めっきを行い、導電性素材の表面にニッケルを含有する保護膜を形成する導電性素材の製造方法が提供される。
【0020】
あるいは、本発明によれば、上記第2の観点に係るめっき液を用いて、無電解めっきにより、導電性素材の表面にニッケルを含有する保護膜を形成する導電性素材の製造方法が提供される。
【0021】
なお、本発明の製造方法により得られる導電性素材の表面に形成されるニッケルを含有する保護膜としては、ニッケルを主成分として含有する保護膜の他、ニッケル合金(たとえば、ニッケル−スズ合金、ニッケル−モリブデン合金など)からなる保護膜などが挙げられる。
【0022】
本発明の製造方法において、好ましくは前記導電性素材が、希土類磁石である。希土類磁石としては、たとえば、R(ただし、RはY元素または希土類元素)、FeおよびBを含むR−Fe−B系希土類磁石が挙げられ、特に、Nd−Fe−B系希土類永久磁石が好ましく例示される。
【発明の効果】
【0023】
本発明のめっき液は、ニッケル塩化合物に加えて、錯化剤として特定のアミン化合物を含有し、さらには、pHが8〜12の範囲としている。そのため、本発明によれば、希土類磁石などの導電性素材の表面に、密着性、耐食性および耐熱性に優れた保護膜を、希土類磁石などの導電性素材の表面部分を腐蝕することなく形成することができる。そして、希土類磁石などの導電性素材の表面部分を腐蝕しないため、腐食に起因する、これらの導電性素材の特性劣化を有効に防止することができる。
【0024】
特に、これらの導電性素材を小型化すると、表面部分における腐食の影響が、相対的に大きくなってしまう傾向にある。そのため、従来においては、このような腐食が原因となり、希土類磁石などの導電性素材の小型、高性能化の妨げとなっていた。これに対して、本発明は、希土類磁石などの導電性素材の表面部分における腐蝕を有効に防止することにより、小型、高性能化に対応可能な希土類磁石などの導電性素材を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態を説明する。第1実施形態では、本発明の第1の観点に係るめっき液を用いた永久磁石の製造方法について説明する。
【0026】
永久磁石
まず、導電性素材の1種である永久磁石について説明する。
永久磁石としては、特に限定されないが、R(ただし、RはYを含む希土類元素の1種以上)、FeおよびBを含むR−Fe−B系希土類磁石が好ましい。このR−Fe−B系希土類磁石において、R、FeおよびBの含有量は、好ましくは、5.5原子%≦R≦30原子%、42原子%≦Fe≦90原子%、2原子%≦B≦28原子%である。
【0027】
特に、このような希土類磁石を焼結法により製造する場合、下記の組成であることが好ましい。
Rとしては、Nd,Pr,Dy,Ho,Tbのうち少なくとも1種、あるいはさらに、La,Sm,Ce,Gd,Er,Eu,Pm,Tm,Yb,Lu,Yのうち1種以上を含むものが好ましい。
なお、Rとして2種以上の元素を用いる場合、原料としてミッシュメタル等の混合物を用いることもできる。
【0028】
Rの含有量は、5.5〜30原子%であることが好ましい。
Rの含有量が少なすぎると、磁石の結晶構造がα−Feと同一構造の立方晶組織となるため、高い保磁力(iHc)が得られず、多すぎると、Rリッチな非磁性相が多くなり、残留磁束密度(Br)が低下する。
【0029】
Feの含有量は42〜90原子%であることが好ましい。
Feの含有量が少なすぎると、Brが低下し、多すぎると、iHcが低下する。
【0030】
Bの含有量は、2〜28原子%であることが好ましい。
Bの含有量が少なすぎると、磁石の結晶構造が菱面体組織となるため保磁力(iHc)が不十分であり、多すぎると、Bリッチな非磁性相が多くなるため、残留磁束密度(Br)が低下する。
【0031】
なお、Feの一部をCoで置換することにより、磁気特性を損なうことなく温度特性を改善することができる。この場合、Co置換量がFeの50原子%を超えると磁気特性が劣化するため、Co置換量は50原子%以下とすることが好ましい。
【0032】
また、R、FeおよびBの他、不可避的不純物として、Ni,Si,Al,Cu,Ca等が全体の3原子%以下含有されていてもよい。
【0033】
さらに、Bの一部を、C,P,S,Cuのうちの1種以上で置換することにより、生産性の向上および低コスト化が実現できる。この場合、置換量は全体の4原子%以下であることが好ましい。また、保磁力の向上、生産性の向上、低コスト化のために、Al,Ti,V,Cr,Mn,Bi,Nb,Ta,Mo,W,Sb,Ge,Sn,Zr,Ni,Si,Hf等の1種以上を添加してもよい。この場合、添加量は総計で10原子%以下とすることが好ましい。
【0034】
本実施形態における希土類磁石は、実質的に正方晶系の結晶構造の主相を有する。この主相の粒径は、1〜100μm程度であることが好ましい。そして、通常、体積比で1〜50%の非磁性相を含むものである。
【0035】
上記のような希土類磁石は、以下に述べるような粉末冶金法により製造されるものであることが好ましい。
まず、原料となる金属や合金を所望の組成となるように配合する。そして、配合した原料を、真空または不活性ガス雰囲気にて、溶解し、その後、鋳造し、所望の組成を有する合金を得る。鋳造方法としては、特に限定されないが、たとえば、ストリップキャスト法などが挙げられる。ストリップキャスト法とは、溶融し、液体状となった合金を、回転ロール上に供給することにより、合金薄板を連続的に鋳造する方法である。鋳造により得られる合金は、必ずしも、最終組成を有する単一の合金でなくても良く、たとえば、組成の異なる複数種の合金を混合したものであっても良い。また、合金の形状も特に限定されず、必ずしも薄板状である必要はなく、たとえば、インゴットであっても良い。
【0036】
そして、得られた合金を、ジョークラッシャなどを使用して粉砕することにより、5〜100mm角程度の大きさの合金塊とし、得られた合金塊に対して水素吸蔵させる。次いで、水素吸蔵処理をした合金塊について、粗粉砕を行い、合金粉末を得る。なお、粗粉砕を行う際に、予め合金塊に水素を吸蔵させておくことにより、表面から自己崩壊的に粉砕を進行させることができる。その後、得られた合金粉末を熱処理することにより、脱水素処理を施す。
【0037】
次いで、脱水素処理を行った合金粉末について、粉砕助剤を0.03〜0.4重量%程度添加する。粉砕助剤を添加することにより、焼結後の残留炭素の量を低減することができ、磁気特性の向上を図ることができる。なお、粉砕助剤としては特に限定されないが、たとえば、脂肪酸系化合物が使用できる。
【0038】
次いで、粉砕助剤を添加した合金粉末に対して、ジェットミルなどを使用して、微粉砕を行う。微粉砕は、たとえば、合金粉末の粒径が1〜10μm程度、特に、3〜6μm程度となるまで行うことが好ましい。
【0039】
次いで、微粉砕により得られた粉末を、好ましくは磁場中にて成形し、成形体を得る。この場合、磁場強度は400〜1600kA/m程度、成形圧力は、50〜500MPa程度であることが好ましい。
【0040】
得られた成形体を、1000〜1200℃で0.5〜5時間焼結し、急冷する。その後、好ましくは不活性ガス雰囲気中で、500〜900℃にて1〜5時間、熱処理(時効処理)を行う。なお、熱処理(時効処理)までの各工程は、酸化防止のため、真空中あるいはArガス等の非酸化性ガス雰囲気中とすることが好ましい。
【0041】
このようにして製造された希土類磁石は、たとえばRがNdであるネオジウム磁石である場合に、特に磁気特性に優れる。このようにして得られる希土類磁石の表面に、以下に示す本発明の第1の観点に係るめっき液を使用して、ニッケルからなる保護膜を成膜する。
以下、この希土類磁石に保護膜を形成する方法について説明する。
【0042】
保護膜の形成
第1実施形態においては、上記の希土類磁石(永久磁石)の表面に、本発明の第1の観点に係るめっき液を用いて電解めっきを行い、ニッケルを含有する保護膜を成膜する。
以下、本発明の第1の観点に係るめっき液について説明する。
【0043】
めっき液
第1の観点に係るめっき液は、
ニッケル塩化合物と、
ニッケルイオンと錯体を形成するアミン化合物と、を少なくとも含み、
pHが8〜12である。
【0044】
ニッケル塩化合物としては、めっき液として完成したときに、めっき液中に溶解し、ニッケルイオンを生成するものであれば良く、特に限定されない。このようなニッケル塩化合物としては、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケルおよびピロリン酸ニッケルなどが挙げられる。めっき液中における、ニッケル塩化合物の含有量は、ニッケルイオン換算で、好ましくは0.1〜2.0mol/l、より好ましくは0.3〜1.0mol/lである。ニッケル塩化合物の含有量が少なすぎると、保護膜の形成が困難となる傾向にある。一方、ニッケル塩化合物の含有量が多すぎると、アミン化合物等の他の成分が飽和して、沈殿してしまい、めっき液として成立しない場合がある。
【0045】
アミン化合物としては、ニッケルイオンと錯体を形成できるものであれば特に限定されないが、本発明では、ニッケルイオンと錯体形成する際における第一段階反応の逐次生成定数Kが、K=4.0〜15.0の範囲にあるものが好ましい。
【0046】
溶液中において、ニッケルイオンは、錯化作用を有する化合物を配位子として、ニッケルイオンは単核錯体を形成することとなる。このような単核錯体においては、配位子L(本発明では、アミン化合物)と、金属イオンM(本発明では、ニッケルイオン)と、は段階的に結合する。そして、この場合に、第一段階反応、すなわち、配位子Lが全く配位していない状態の金属イオンMに対して、配位子Lが配位する際における反応は下記式(1)で示され、その生成定数Kは下記式(2)で定義される。
M+L=ML …(1)
=[ML]/[M][L] …(2)
同様に、第n段階目の反応は、下記式(3)で示され、その生成定数Kは下記式(4)で定義される。
MLn−1+L=ML …(3)
=[ML]/[MLn−1][L] …(4)
ここにおいて、Kは、第n段階反応における生成定数であり、逐次生成定数と呼ばれる。また、上記式(2)、(4)において、[M]、[L]等は、金属イオンM、配位子Lの濃度を意味する。
【0047】
本発明のめっき液に用いられるアミン化合物(上記説明において、配位子Lに該当)としては、ニッケルイオン(上記説明において、金属イオンMに該当)と錯体形成する際における第一段階反応の逐次生成定数Kが、K=4.0〜15.0の範囲にあるものが好ましく、より好ましくはK=4.0〜12.0、さらに好ましくはK=4.0〜9.0である。
【0048】
本発明では、めっき液のpHを8〜12の範囲とし、しかも、めっき液中に、このような特定のアミン化合物を添加している。
そして、このような構成を採用することにより、めっき処理時における、希土類磁石(永久磁石)表面の腐食を防止することができ、そのため、めっき対象物である希土類磁石の特性の劣化を有効に防止することができる。特に、磁石を小型化した場合には、磁石全体に対する、磁石表面付近における腐食部分の影響が相対的に大きくなるため、希土類磁石表面の腐食を防止することにより、小型かつ高性能を実現することができる。
【0049】
なお、希土類磁石の一種としてのネオジウム磁石は、NdFe14Bを主成分とする主相と、Ndを多く含む希土類リッチ相と、Bを多く含むホウ素リッチ相と、から構成され、Ndを多く含む希土類リッチ相は、主相の粒界に存在する。Ndなどの希土類元素は酸化還元電位が低いため、めっき液に接触すると、希土類リッチ相が溶出したり、希土類リッチ相がニッケルなどの金属と電気化学的に置換したりする。すなわち、腐食してしまう。さらには、溶出あるいは置換された希土類リッチ相の上には、めっきによる保護膜が形成されず、耐食信頼性が低下してしまう場合もある。
【0050】
これに対して、本発明では、めっき液のpHを8〜12に設定することにより、Ndなどの希土類元素の溶出を防止している。さらに、本発明では、pHを上記範囲とした場合に発生する不具合、すなわち、ニッケルイオンが、水に不溶な水酸化ニッケルとなってしまうことを、錯化剤として、上記特定のアミン化合物を使用することで防止している。そのため、希土類磁石の特性の劣化を有効に防止しながら、密着性、耐食性および耐熱性に優れた保護膜を良好に形成することができる。
【0051】
なお、逐次生成定数Kが上記範囲内となるアミン化合物としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、リシン酸、リシン−グルタミン酸、リシン−アスパラギン酸、アルギニン−グルタミン酸、ピコリン酸、ジアミノプロピオン酸、ジアミノ酪酸、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、メチオニン、アルギニン、バリン、テアニン、グリシルグリシン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1,10−フェナントロリン、フェナントロリンアンモニアなどが挙げられる。一方、アンモニア、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などは、アミン化合物に分類されるが、逐次生成定数Kが上記範囲外となる化合物である。また、クエン酸は、逐次生成定数Kが、K=5.35となり、上記範囲内ではあるが、アミン化合物ではないため、不適である。
【0052】
アミン化合物の含有量は、ニッケルイオンの含有量との関係で次のような範囲となっていることが好ましい。
すなわち、ニッケルイオンとアミン化合物とのモル比が、アミン化合物のニッケルイオンへの配位数の0.5〜3.0倍であることが好ましく、より好ましくは1.2〜3.0倍、さらに好ましくは1.3〜2.0倍である。アミン化合物の含有量が少なすぎると、上記効果が小さくなってしまう。一方、多すぎると、水に溶解しなかったり、無めっきとなる場合がある。
【0053】
本発明のめっき液は、pHが8〜12の範囲であり、好ましくは9.5〜10.5の範囲である。上述したように、めっき液中に、特定のアミン化合物を添加し、しかも、めっき液のpHを上記範囲とすることで、上記した効果を奏することができる。pHが低すぎると、Ndなどの希土類元素が溶出してしまうため、希土類磁石に保護膜を形成した場合に、希土類磁石の磁気特性を低下させてしまう。一方、pHが高すぎると、希土類磁石を構成するFeが溶出してしまうため、同様に、磁気特性を低下させてしまう。
【0054】
なお、めっき液のpHは、たとえば水酸化物塩などを用いて調整することができる。水酸化物塩としては、特に限定されないが、たとえば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。また、水酸化物塩に加えて、pH緩衝材として、ホウ酸を含有していても良い。
【0055】
さらに、めっき液中には、上記各成分に加えて、スズ、モリブデン、タングステン、銅、亜鉛、コバルトおよび鉄から選択される少なくとも1種の金属塩化合物を、含有していても良い。これらの金属塩化合物を含有させることにより、得られる保護膜をニッケル合金膜とすることができる。保護膜をニッケル合金膜とすることにより、保護膜の性質を非磁性とすることができる。
【0056】
このような金属塩化合物としては、たとえば、以下の化合物が挙げられる。
スズの化合物としては、硫酸第一錫、ピロリン酸第一錫、錫酸ナトリウム、錫酸カリウム、メタ錫酸、酸化第一錫、スルファミン酸第一錫、塩化第一錫などが挙げられる。モリブデンの化合物としては、硫酸モリブデン、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデンなどが挙げられる。タングステンの化合物としては、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウム、三酸化タングステンなどが挙げられる。銅の化合物としては、硫酸銅、硝酸銅、塩基性硫酸銅、炭酸銅、ピロリン酸銅、酸化第一銅、酸化第二銅、塩化銅、臭化銅などが挙げられる。亜鉛の化合物としては、炭酸亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛などが挙げられる。コバルトの化合物としては、硫酸コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、ピロリン酸コバルト、塩化コバルト、臭化コバルトなどが挙げられる。鉄の化合物としては、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、スルファミン酸鉄などが挙げられる。
【0057】
電解めっき
次いで、上述しためっき液と、ニッケルを含む陽極と、を使用して、たとえば、バレルめっき法やラックめっき法などにより、希土類磁石(永久磁石)の表面に保護膜を形成する。
【0058】
ニッケルを含む陽極としては、電解めっきで通常使用されるニッケル陽極を使用すればよい。
【0059】
具体的なめっき条件としては、めっき浴の温度を、好ましくは30〜90℃、めっき時の電流密度を、好ましくは0.01〜5A/dmとする。また、電解めっきにより成膜される保護膜の厚みは、好ましくは1〜50μm、より好ましくは3〜20μmと薄層化している。
【0060】
また、めっき浴中に、スズ、モリブデン、タングステン、銅、亜鉛、コバルトおよび鉄から選択される少なくとも1種の金属塩化合物を、含有させ、これらの金属塩化合物を含有させ、得られる保護膜をニッケル合金膜とする場合には、陽極として、ニッケルとこれら各金属との合金、あるいはニッケル陽極とこれら各金属元素を含有する陽極とを併用すれば良い。
【0061】
このようにして保護膜が形成された希土類磁石(永久磁石)は、めっき時における腐食(たとえば、希土類元素の溶出等)が防止されているため、腐食による特性劣化が抑制されており、優れた磁気特性を実現することができる。特に、小型かつ高性能を実現することができる。しかも、めっき時における腐食(たとえば、希土類元素の溶出等)を防止することにより、得られる保護膜の性質を、密着性、耐食性および耐熱性に優れるものとすることもできる。そのため、このようにして得られる希土類磁石(永久磁石)は、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ用の永久磁石部材などとして、好適に用いることができる。
【0062】
第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、めっき液として、本発明の第2の観点に係るめっき液を用いた永久磁石の製造方法について説明する。
なお、以下の説明において第1実施形態と重複する部分の説明は省略し、相違する部分についてのみ説明する。
【0063】
めっき液
本発明の第2の観点に係るめっき液は、
ニッケル塩化合物と、
ニッケルイオンと錯体を形成するアミン化合物と、
還元剤と、を少なくとも含み、
pHが8〜12である。
【0064】
ニッケル塩化合物としては、第1実施形態と同様なものを使用すれば良いが、一方、その含有量については、第2実施形態では、ニッケルイオン換算で、好ましくは0.1〜1.0mol/l、より好ましくは0.1〜0.5mol/lである。
【0065】
アミン化合物としても、第1実施形態と同様なものを使用することができ、また、その含有量も、第1実施形態と同様とすれば良い。
【0066】
還元剤としては、めっき液中に含有されるニッケルイオンを化学的に還元できるものであれば良く、特に限定されないが、たとえば、次亜リン酸、次亜リン酸塩化合物、テトラヒドロホウ酸、テトラヒドロホウ酸塩化合物、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、ヒドラジンなどが挙げられる。還元剤の含有量は、好ましくは0.05〜0.5mol/l、より好ましくは0.1〜0.3mol/lである。還元剤の含有量が少なすぎると、保護膜の形成が不十分となる傾向にある。一方、多すぎると、めっき液が自己分解する場合がある。
【0067】
また、必要に応じて、安定剤として、チオ尿素、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)などを、0.01〜10mg/l程度の範囲で、さらに含有していても良い。
【0068】
さらに、めっき液中には、第1実施形態と同様に、上記各成分に加えて、スズ、モリブデン、タングステン、銅、亜鉛、コバルトおよび鉄から選択される少なくとも1種の金属塩化合物を、含有していても良い。これらの金属塩化合物を含有させることにより、得られる保護膜をニッケル合金膜とすることができる。なお、これらの金属塩化合物を用いた場合には、これらに由来する金属イオン(たとえば、ズズイオン、モリブデンイオンなど)も、上記した還元剤により、還元されることとなる。
【0069】
無電解めっき
第2実施形態では、上述しためっき液を使用して、無電解めっきにより、永久磁石の表面に保護膜を形成する。なお、永久磁石としては、第1実施形態と同様のものを使用すれば良い。
【0070】
具体的なめっき条件としては、めっき浴の温度を、好ましくは30〜80℃とする。また、無電解めっきにより成膜される保護膜の厚みは、好ましくは3〜20μm、より好ましくは5〜10μmと薄層化している。
【0071】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、めっき液のpHを8〜12の範囲とし、しかも、めっき液中に、特定のアミン化合物を添加している。そのため、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0072】
なお、本発明は、上述した第1および第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、本発明に係る導電性素材に、まず、第1の観点に係るめっき液で非磁性膜を電気めっきし、その上に、(別のめっき液組成を有する)第1の観点に係るめっき液を用いて強磁性膜を形成しても良い。
また、本発明に係る導電性素材に、第2の観点に係るめっき液を用いて無電解めっきをし、その上に、第1の観点に係るめっき液を用いて、電気めっきをして、強磁性膜を形成しても良い。あるいは、その逆でも良い。
さらに、本発明に係る導電性素材に、第1の観点または第2の観点に係るめっき液を用いて、めっき膜を形成した後、その上に、市販のめっき液などを用いて、めっき処理を施すことにより、外観を整える方法を採用しても良い。
あるいは、上述した各実施形態では、本発明に係る導電性素材として、希土類磁石を例示したが、本発明に係る導電性素材としては、希土類磁石に限定されず、本発明のめっき液により表面処理することができる導電性素材であれば何でも良い。具体的には、チップバリスタ、チップサーミスター等の各種電子部品の端子電極の表面処理等にも用いることができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0074】
実施例1
実施例1(サンプルNo.1〜12)においては、電解めっきにより、永久磁石素体の表面にニッケル保護膜を形成した。
【0075】
まず、粉末冶金法によって作成した14Nd−1Dy−7B−78Fe(数字は原子比)の組成をもつ焼結体を、Ar雰囲気中で600℃にて2時間、熱処理を施し、5mm×9mm、厚さ0.8mmの大きさに加工して永久磁石素体を得た。
【0076】
次いで、この永久磁石素体のサンプルを、アルカリ性脱脂液で洗浄後、3%硝酸溶液にて表面の活性化を行い、純水で良く洗浄した。そして、この永久磁石素体のサンプルの表面に、表1に示す組成を有するめっき浴を用いて、電解ニッケル板を陽極とし、平行回転バレルにてめっき処理を行い、永久磁石素体表面にニッケル保護膜を形成した。なお、各めっき浴は、水酸化カリウムを用いて、pHが表1に示す値となるように適宜調整した。また、めっき処理の際における、電流密度およびめっき浴の温度は、表1に示す各条件とし、本実施例では、めっき膜が表1に示す厚みとなるまでめっき処理を行った。
【0077】
そして、得られた各磁石サンプル(サンプルNo.1〜12)について、磁束の測定および耐食性(恒温恒湿試験)の評価を行った。
磁束の測定は、得られた磁石サンプルを、飽和状態まで着磁し、その後、室温(25℃)下に30分以上放置した後に、フラックスメーターを用いて行った。本実施例では、めっき膜を形成する前の磁石素体の磁束(0.30mWb・T)に対して、磁束が−10%以内、すなわち、0.27mWb・T以上となったサンプルを良好とした。結果を表1に示す。
また、耐食性(恒温恒湿試験)の評価は、121℃、2atm、100%RH、48時間の条件によるP.C.T.試験(プレッシャークッカー試験)により行った。本実施例では、P.C.T.試験の結果、錆が発生していないサンプルを「合格」とし、一方、少しでも錆が発生したサンプルを「不合格」とした。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1より、本発明所定のアミン化合物を含有するめっき浴を使用したサンプルNo.1〜8においては、いずれも磁束が、0.27mWb・T以上となり良好な磁気特性を保っていることが確認できる。さらに、これらサンプルNo.1〜8は、耐食性(恒温恒湿試験)の結果も良好であった。
【0080】
これに対して、めっき浴中に、本発明所定のアミン化合物を含有させなかったサンプルNo.9〜12は、磁束が0.27mWb・T(ミリウェーバーターン)未満となり、磁気特性が劣化する結果となった。なお、この理由としては、めっき処理時に、磁石素体が腐食したことによると考えられる。
また上記に加えて、サンプルNo.9,11,12は、耐食性にも劣る結果となった。
【0081】
実施例2
実施例2(サンプルNo.21〜27)においては、電解めっきにより、永久磁石素体の表面にニッケル合金保護膜を形成した。
【0082】
まず、実施例1と同様にして、永久磁石素体を製造し、次いで、同様にして、洗浄および活性化を行った。そして、この永久磁石素体のサンプルの表面に、表2に示す組成を有するめっき浴を用い、平行回転バレルにてめっき処理を行い、永久磁石素体表面にニッケル合金保護膜を形成した。なお、各めっき浴は、水酸化カリウムを用いて、pHが表2に示す値となるように適宜調整した。さらに、陽極としては、電解ニッケルと、各陽極(サンプルNo.21:タングステン、サンプルNo.22,23:スズ、サンプルNo.24:モリブデン、サンプルNo.25:銅、サンプルNo.26:亜鉛、サンプルNo.27:コバルト)と、を使用した。また、めっき処理の際における、電流密度およびめっき浴の温度は、表2に示す各条件とし、本実施例では、めっき膜が表2に示す厚みとなるまでめっき処理を行った。
【0083】
そして、得られた各磁石サンプル(サンプルNo.21〜27)について、実施例1と同様にして、磁束の測定および耐食性(恒温恒湿試験)の評価を行った。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
表2より、ニッケル保護膜の代わりに、ニッケル合金保護膜を形成した場合においても同様の結果が得られることが確認できる。なお、各サンプルにおける、めっき膜の組成は、表2に示すものとなっていた。
【0086】
実施例3
実施例3(サンプルNo.31〜40)においては、無電解めっきにより、永久磁石素体の表面にニッケル保護膜を形成した。
【0087】
まず、実施例1と同様にして、永久磁石素体を製造し、次いで、同様にして、洗浄および活性化を行った。そして、この永久磁石素体のサンプルの表面に、表3に示す組成を有するめっき浴を用い、バレルめっきにてめっき処理を行い、永久磁石素体表面にニッケル保護膜を形成した。なお、各めっき浴は、水酸化カリウムを用いて、pHが表3に示す値となるように適宜調整した。また、めっき処理の際における、めっき浴の温度は、表3に示す各温度とし、本実施例では、めっき膜が表3に示す厚みとなるまでめっき処理を行った。
【0088】
そして、得られた各磁石サンプル(サンプルNo.31〜40)について、実施例1と同様にして、磁束の測定および耐食性(恒温恒湿試験)の評価を行った。結果を表3に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
表3のサンプルNo.31〜39より、電解めっきに代えて、無電解めっきにより、ニッケル保護膜を形成した場合においても同様の結果が得られることが確認できる。
一方、めっき浴中に、本発明所定のアミン化合物を含有させなかったサンプルNo.40は、磁石素体が腐食してしまい、ニッケル保護膜にピンホールおよびクラックが発生する結果となった。そして、このサンプルNo.40は、磁束が0.27mWb・T未満となり、磁気特性が劣化する結果となり、さらには、耐食性にも劣る結果となった。
【0091】
実施例4
実施例4(サンプルNo.41〜50)においては、無電解めっきにより、永久磁石素体の表面にニッケル合金保護膜を形成した。
【0092】
まず、実施例1と同様にして、永久磁石素体を製造し、次いで、同様にして、洗浄および活性化を行った。そして、この永久磁石素体のサンプルの表面に、表4に示す組成を有するめっき浴を用い、バレルめっきにてめっき処理を行い、永久磁石素体表面にニッケル合金保護膜を形成した。なお、各めっき浴は、水酸化カリウムを用いて、pHが表4に示す値となるように適宜調整した。また、めっき処理の際における、めっき浴の温度は、表4に示す各温度とし、本実施例では、めっき膜が表4に示す厚みとなるまでめっき処理を行った。
【0093】
そして、得られた各磁石サンプル(サンプルNo.41〜50)について、実施例1と同様にして、磁束の測定および耐食性(恒温恒湿試験)の評価を行った。結果を表4に示す。
【0094】
【表4】

【0095】
表4のサンプルNo.41〜49より、電解めっきに代えて、無電解めっきにより、ニッケル合金保護膜を形成した場合においても同様の結果が得られることが確認できる。なお、各サンプルにおける、めっき膜の組成は、表4に示すものとなっていた。
一方、めっき浴中に、本発明所定のアミン化合物を含有させなかったサンプルNo.50は、磁石素体が腐食してしまい、ニッケル保護膜にピンホールおよびクラックが発生する結果となった。そして、このサンプルNo.50は、磁束が0.27mWb・T未満となり、磁気特性が劣化する結果となり、さらには、耐食性にも劣る結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル塩化合物と、
ニッケルイオンと錯体を形成するアミン化合物と、を含み、
pHが8〜12であるめっき液。
【請求項2】
前記アミン化合物として、ニッケルイオンと錯体形成する際における第一段階反応の逐次生成定数Kが、K=4.0〜15.0の範囲にあるアミン化合物を用いる請求項1に記載のめっき液。
【請求項3】
前記ニッケル塩化合物が、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケルおよびピロリン酸ニッケルから選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載のめっき液。
【請求項4】
スズ、モリブデン、タングステン、銅、亜鉛、コバルトおよび鉄から選択される少なくとも1種の金属塩化合物を、さらに含む請求項1〜3のいずれかに記載のめっき液。
【請求項5】
ニッケル塩化合物と、
ニッケルイオンと錯体を形成するアミン化合物と、
還元剤と、を含み、
pHが8〜12であるめっき液。
【請求項6】
前記アミン化合物として、ニッケルイオンと錯体形成する際における第一段階反応の逐次生成定数Kが、K=4.0〜15.0の範囲にあるアミン化合物を用いる請求項5に記載のめっき液。
【請求項7】
前記ニッケル塩化合物が、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケルおよびピロリン酸ニッケルから選択される少なくとも1種である請求項5または6に記載のめっき液。
【請求項8】
前記還元剤が、次亜リン酸、次亜リン酸塩化合物、テトラヒドロホウ酸、テトラヒドロホウ酸塩化合物、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボランおよびヒドラジンから選択される少なくとも1種である請求項5〜7のいずれかに記載のめっき液。
【請求項9】
スズ、モリブデン、タングステン、銅、亜鉛、コバルトおよび鉄から選択される少なくとも1種の金属塩化合物を、さらに含む請求項5〜8のいずれかに記載のめっき液。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載のめっき液と、ニッケルを含有する陽極と、を用いて、電解めっきを行い、導電性素材の表面にニッケルを含有する保護膜を形成する導電性素材の製造方法。
【請求項11】
請求項5〜9のいずれかに記載のめっき液を用いて、無電解めっきにより、導電性素材の表面にニッケルを含有する保護膜を形成する導電性素材の製造方法。
【請求項12】
前記導電性素材が、希土類磁石である請求項10または11に記載の導電性素材の製造方法。

【公開番号】特開2007−270236(P2007−270236A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96651(P2006−96651)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】