説明

めまいに対する錠剤型の徐放型調製物

シンナリジンとジメンヒドリナートとを含有する医薬組成物において、作用物質放出が徐放化されている、医薬組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あらゆる原因のめまいを治療するための錠剤の形の徐放型調製物の医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
頭痛の他に、めまい(ラテン語でvertigo)は患者が最も頻繁に訴える症状である。これは、いわゆる多感覚性症候群であり、この症候群は多様な感覚の障害された知覚により特徴付けられ、空間内の身体安定性の喪失及びそれにより引き起こされるバランス障害が伴う。全く顕著な場合には、めまいは見かけ上動いている感覚、転倒する傾向ならびに吐き気及び嘔吐に現れる。めまいは偶発的にも持続的にも生じることがある。
【0003】
めまいとは、バランス障害を引き起こす空間感覚及び運動感覚の不快なゆがみであると解釈される。これは独自の疾患ではなく、多様な原因及び起源の複合症状であり、それには多様な身体感覚が関与している。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許公開(DE−A1)第10301981号明細書から、シンナリジンとジメンヒドリナートとを組み合わせて含有する、めまいに対する調製物は公知である。この場合、意外にも、前記作用物質の組合せが相乗効果を引き起こすことが見出された。
【0005】
しかしながら、この場合に、前記の作用が数時間後には弱まり、一日に複数回の更なる用量を適用する必要があることが欠点である。今まで、この医薬品は1日に5回までに分けて使用しなければならなかった。従って、これに伴い服薬順守に関する問題が明らかである。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許公開(DE−A1)第10301981号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来の医薬品と比べてその作用期間が持続化されている、めまいを治療するシステムを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記課題は、独立請求項による医薬組成物により解決される。本発明による医薬組成物の有利な実施態様は、従属請求項において特徴付けられている。
【0008】
前記課題は、作用物質放出が徐放化されているシンナリジン及びジメンヒドリナートを含有する医薬組成物により解決される。その際、本発明の場合に、前記の本発明による医薬組成物はさらに結合剤、徐放化剤及び充填剤を含有するのが有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
結合剤:徐放化剤:充填剤の質量比が、1:0.5:6〜1:10:50である本発明による医薬組成物が有利である。特に結合剤/徐放化剤/充填剤の質量比は1:0.75:8.94〜1:8:38.66であるのが有利である。
【0010】
この場合に、結合剤は低粘度のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)≦1000cp、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアセタート(PVA)、ゼラチン、及び/又は多糖類、例えばアラビアゴム及びトラガカント又はこれらの混合物から選択されているのが有利である。
【0011】
この場合に、さらに徐放化剤は高粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)≧1000cp、及び/又は多糖類、例えばアルギン酸/アルギン酸Na及びキサンタンゴム又はこれらの混合物から選択されているのが有利である。
【0012】
さらに、この場合に、充填剤はラクトース、デキストロース、糖、ソルビット、マンニット及び/又はデンプンもしくはデンプン誘導体、例えばNa−カルボキシメチルデンプン又はこれらの混合物から選択されているのが有利である。
【0013】
さらに、本発明による医薬組成物中に他の助剤が含まれているのが有利である。
【0014】
本発明の他の主題は、あらゆる原因のめまいを治療するための、シンナリジン及びジメンヒドリナート又はこれらの生理学的に許容性の塩の組み合わせた使用でもある。
【0015】
シンナリジン(CAS 293−57−7)は、1−ベンズヒドリル−4−トランス−シンナミルピペラジンについての国際一般名称(INN)である。これは、最新の知識によると主に前庭有毛細胞でのカルシウムチャンネルブロッカーとして作用する抗めまい剤(Antiverginosum)である。ジメンヒドリナート(CAS 523−87−5)は、ジフェンヒドラミンの8−クロロテオフィリン塩についての国際一般名称(INN)であり、抗めまい性及び抗嘔吐性に作用する抗コリン作動特性を有する抗ヒスタミン剤である。これらの作用物質の水中での可溶性は極めて異なっており、つまりシンナリジンは約2mg/100mlであり、ジメンヒドリナートは約3mg/mlである。
【0016】
この著しく異なる可溶性挙動に基づき、今までに、これらの作用物質を、作用物質の組合せの相乗効果を維持して同期的に放出する徐放型を製造することができなかった。
【0017】
意外にも、所定の助剤の組合せが、これが所定の量比で相互に存在する場合に、本発明による徐放化効果を示すことが見出された。
【0018】
作用物質の時間に応じた放出の本発明による効果を生じさせるために、結合剤、徐放化剤及び充填剤は相互に所定の割合で存在しなければならないことを示すことができた。
【0019】
本発明の前記課題は、独立請求項に記載されている医薬組成物により解決される。本発明による組成物の有利な実施態様は、従属請求項において特徴付けられている。
【0020】
従って、前記課題は、結合剤、徐放化剤及び充填剤を定義された質量比で含有する徐放型組成物の製造により解決される。結合剤:徐放化剤:充填剤の本発明による質量比は、1:0.5:6〜1:10:50、特に有利に1:0.75:8.94〜1:8:38.66である。
【0021】
意外にも、つまりこの量比の場合、作用物質のジメンヒドリナートとシンナリジンとの放出は互いに最適な割合で行われることが見出された。こうしてこれらの作用物質の組合せの相乗効果を達成することができる。
【0022】
本発明による医薬組成物は、少なくとも1種の結合剤を含有し、前記結合剤は低粘度のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)≦1000cp、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアセタート(PVA)、ゼラチン、及び/又は多糖類、例えばアラビアゴム及びトラガカント又はこれらの混合物から選択されている。もちろん、当業者に同種のものとして公知の他の結合剤を本発明の場合に使用することもできる。本発明による組成物を製造するために、前記の及び他の結合剤を組み合わせることも可能である。
【0023】
本発明による医薬組成物は、さらに少なくとも1種の徐放化剤を含有し、前記徐放化剤は高粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)≧1000cp、及び/又は多糖類、例えばアルギン酸/アルギン酸Na及びキサンタンゴム又はこれらの混合物から選択されている。もちろん、当業者に同種のものとして公知の他の徐放化剤を本発明の場合に使用することもできる。本発明による組成物を製造するために、前記の及び他の徐放化剤を組み合わせることも可能である。
【0024】
本発明による医薬組成物は、さらに、少なくとも1種の充填剤を含有し、前記充填剤はラクトース、デキストロース、糖、ソルビット、マンニット及び/又はデンプンもしくはデンプン誘導体、例えばNa−カルボキシメチルデンプン又はこれらの混合物から選択されている。もちろん、当業者に同種のものとして公知の他の充填剤を本発明の場合に使用することもできる。本発明による組成物を製造するために、前記の及び他の充填剤を組み合わせることも可能である。
【0025】
さらに、本発明による医薬組成物中に他の助剤が含まれていてもよい。この種の助剤は当業者に公知であり、所望の医薬形状を製造するために添加される。この種の助剤は、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、アエロジル、離型剤、滑剤などであり、これらは混合物の装置による加工を容易に及び/又は可能にする。
【0026】
本発明の場合に適当な調製形状は当業者に公知であり、これは錠剤、フィルム錠剤及び他の形であることができる。
【0027】
錠剤の飲み込みを助けるためにラッカーが設けられていることも有利である。この種のラッカーは当業者に公知である。このラッカーは、皮膜形成剤、例えばユードラギット(Eudragit)E、RL、RS又はHPMCからなり、さらに可塑剤、例えばPEG、トリアシン又はポリソルバート、顔料、例えばTiO、染料、例えば酸化鉄及び場合により離型剤、例えばタルクを含有する。このようなラッカーの製造もしくはこの種の錠剤の塗装は当業者に公知である。
【0028】
この種の医薬剤形の製造は当業者に公知である(例えばHagers Handbuch der Pharmazeut.Praxis,第5版,1990−1995,Springer−Verlag,Berlin)。
【0029】
次の実施例は本発明を詳説する。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
本発明による徐放型調製物の一般的な製造方法
本発明による医薬組成物の製造は自体公知のように行われる。この場合、第1のバッチにおいて、ジメンヒドリナート、シンナリジン、結合剤、徐放化剤、及び充填剤を予め混合し、造粒し、分級し、乾燥し、第2のバッチにおいて、ジメンヒドリナート、シンナリジン、結合剤、充填剤を混合し、分級し、均質化し、次いで第1のバッチからなる生成物を第2のバッチと混合により均質化し、ステアリン酸マグネシウムを添加し、もう一回混合する。こうして得られた錠剤混合物を、次いで適当な錠剤に圧縮成形する。
【0031】
本発明による組成物を多様な配合で前記したように製造し、その放出を欧州薬局方によるパドル法によって測定した。
【0032】
[実施例2〜11]
配合1〜10による次の本発明による組成物を製造した。
【0033】
【表1】

【0034】
次に、本発明を表及び図を用いて詳細に説明する。
【0035】
詳細は次に示す。
表2は、表1からの配合10による本発明による医薬組成物の放出を示す表である。
【0036】
図1はシンナリジンの放出を表すグラフである。
【0037】
図2はジメンヒドリナートの放出を表すグラフである。
【0038】
表3は、慣用のシンナリジン/ジメンヒドリナート調製物の放出を示す表である。
【0039】
図3はシンナリジンの放出を表すグラフである。
【0040】
図4はジメンヒドリナートの放出を表すグラフである。
【0041】
表2は、表1の配合10による本発明による医薬組成物を使用した場合の、シンナリジン及びジメンヒドリナートの放出を示す表である。3つの異なるバッチ(03/675、03/676及び03/677)を試験した。
【0042】
本発明による組成物からのシンナリジン(W1)の放出のグラフは図1に示されている。
【0043】
図2は、ジメンヒドリナート(W2)の時間(Z)に依存する放出(F)をプロットしたグラフを示す。
【0044】
表2と比較して、表3は、従来の本発明によらないシンナリジン/ジメンヒドリナート調製物の場合のシンナリジン及びジメンヒドリナートの放出を示す表である。
【0045】
図3は、シンナリジン(W1)の時間(Z)に依存する放出(F)をプロットしたグラフを示す。
【0046】
図4は、ジメンヒドリナート(W2)の時間(Z)に依存する放出(F)をプロットしたグラフを示す。
【0047】
本発明による医薬組成物から、シンナリジンベースのin−vitro放出は、90分後に20%〜40%、180分後に45%〜65%、420分後に>85%である。ジメンヒドリナートのin−vitro放出は、120分後に20%〜40%、210分後に40%〜60%、420分後に>80%である。
【0048】
図1と3ならびに図2と4の比較は、シンナリジンもしくはジメンヒドリナートの放出が、シンナリジンとジメンヒドリナートとの非徐放型混合物の場合にはまず著しく上昇し、次いで約100%の値に留まるが、本発明による組成物の場合に放出の上昇は遅れて起こることを示す。
【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】シンナリジンの放出を表すグラフである。
【図2】ジメンヒドリナートの放出を表すグラフである。
【図3】シンナリジンの放出を表すグラフである。
【図4】ジメンヒドリナートの放出を表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンナリジンとジメンヒドリナートとを含有する医薬組成物において、作用物質放出が徐放化されていることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項2】
さらに結合剤、徐放化剤及び充填剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
結合剤/徐放化剤/充填剤の質量比が、1:0.5:6〜1:10:50であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
結合剤/徐放化剤/充填剤の質量比が、1:0.75:8.94〜1:8:38.66であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
結合剤は低粘度のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)≦1000cp、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアセタート(PVA)、ゼラチン、及び/又は多糖類、例えばアラビアゴム及びトラガカント又はこれらの混合物から選択されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
徐放化剤は高粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)≧1000cp、及び/又は多糖類、例えばアルギン酸、アルギン酸Na及びキサンタンゴム又はこれらの混合物から選択されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
充填剤はラクトース、デキストロース、糖、ソルビット、マンニット及び/又はデンプンもしくはデンプン誘導体、例えばNa−カルボキシメチルデンプン又はこれらの混合物から選択されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
助剤を含有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
錠剤がラッカーで被覆されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
あらゆる原因のめまいを治療するための、請求項1から9のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−534452(P2008−534452A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502248(P2008−502248)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際出願番号】PCT/DE2006/000547
【国際公開番号】WO2006/099865
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(505265805)へンニッヒ アールツナイミッテル ゲーエムベーハー ウント コンパニ.カーゲー (4)
【Fターム(参考)】