説明

ろ過装置及び水処理装置

【課題】清澄な処理水が得られまた閉塞が抑制できるろ過装置及びそれを用いた水処理装置を提供する。
【解決手段】円筒状のろ過槽11と、該ろ過槽11に充填され被処理水中の濁質を捕捉するろ過体12とを有するろ過装置本体4を具備するろ過装置10であって、前記ろ過体12は、前記ろ過槽11の通水方向の少なくとも一端に接続される芯材13と一部が前記芯材13に固定されると共に前記ろ過槽11の内壁面に向かって広がるように設けられている紐状の濁質捕捉部14とを有し、前記ろ過槽11の内径が45〜600mmで、前記ろ過体12の径が50〜500mmであり、前記ろ過槽11の内径/前記ろ過体の径が0.9〜1.2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用水、市水、井水、河川水、湖沼水、工場廃水などの被処理水を凝集処理した後段等で好適に用いることができるろ過装置及びそれを用いた水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用水、市水、井水、河川水、湖沼水、工場廃水などの被処理水を処理する方法として、例えば被処理水に無機凝集剤及びアニオン性等の高分子凝集剤を添加して被処理水に含まれる濁質を吸着や凝結等する凝集処理をした後、砂ろ過や加圧浮上処理により濁質を除去する方法がある。しかしながら砂ろ過や加圧浮上処理では、装置が大きくなってしまうという問題がある。また、被処理水の濁度が高い場合は濁質の除去が不十分になるおそれがある。
【0003】
このような問題を解決するため、特許文献1には、所定の構造を有するろ過装置、具体的には、限外濾過膜(UF)モジュール又は精密濾過膜(MF)モジュールの前段に濁質除去装置を設置して成る濾過装置であって、上記の濁質除去装置(A)は、下向流形式で原水が供給され且つ上向流形式で洗浄水が供給される濁質除去装置であって、塔(1)の頂部にはバルブ付の原水供給配管と洗浄廃水排出配管とが設けられ、塔(1)の底部にはバルブ付の処理水排出配管と洗浄水供給配管と空気供給配管とが設けられ、塔内部には上部支持体(2)と下部支持体(3)とが配置され、上部支持体(2)と下部支持体(3)との間には芯紐および当該芯紐の周側に突設された濁質捕捉材から成る複数の濾材(4)が当該濾材の端部の上部吊り紐(7)と下部吊り紐(8)とによって懸垂状態で固定され、濾材(4)の芯紐ならびに上部吊り紐(7)及び下部吊り紐(8)は流水方向に沿って屈曲変形可能に構成され、上部支持体(2)と下部支持体(3)との間の距離(LA)、濾材(4)の長さ(LB)、上部吊り紐(7)の長さ(Lb1)、下部吊り紐(8)の長さ(Lb2)の関係が所定の式(1)〜(3)を満足する濁質除去装置が開示されている。しかしながら、この技術では、被処理水の濁度が高い場合にはろ過装置の閉塞が生じてしまい、高速運転が難しくなるという問題がある。
【0004】
また、発電所補給水の製造装置に用いられ、ろ過体として長繊維束を用いるろ過装置が開示されているが(特許文献2参照)、このろ過装置においても、ろ過装置の閉塞が生じるという問題や、処理水質が悪化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−24715号公報
【特許文献2】特開平6−134490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した事情に鑑み、清澄な処理水が得られまた閉塞が抑制できるろ過装置及びそれを用いた水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記目的を達成するために鋭意検討した結果、被処理水中の濁質を捕捉するろ過体を、芯材と一部が芯材に固定されると共にろ過槽の内壁面に向かって広がるように設けられている紐状の濁質捕捉部を有するものとし、ろ過槽の内径を45〜600mm、ろ過体の径を50〜500mm、ろ過槽の内径/ろ過体の径を0.9〜1.2の範囲とすることにより、上記目的が達成されることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明のろ過装置は、円筒状のろ過槽と、該ろ過槽に充填され被処理水中の濁質を捕捉するろ過体とを有するろ過装置本体を具備するろ過装置であって、前記ろ過体は、前記ろ過槽の通水方向の少なくとも一端に接続される芯材と一部が前記芯材に固定されると共に前記ろ過槽の内壁面に向かって広がるように設けられている紐状の濁質捕捉部とを有し、前記ろ過槽の内径が45〜600mmで、前記ろ過体の径が50〜500mmであり、前記ろ過槽の内径/前記ろ過体の径が0.9〜1.2であることを特徴とする。
【0009】
前記ろ過装置本体が、通水方向に複数並列して設けられていてもよい。
【0010】
また、前記ろ過装置本体は、逆洗時に対するろ過時のろ過部の体積変化率が0〜30%となるものであることが好ましい。
【0011】
本発明の他の態様は、被処理水が導入される反応槽と、凝集剤を前記反応槽又は反応槽の前段で導入して被処理水に前記凝集剤を添加する凝集剤導入手段と、前記反応槽の後段に設けられ前記反応槽で凝集処理した被処理水が導入される上記ろ過装置とを具備することを特徴とする水処理装置にある。
【0012】
ここで、前記ろ過装置の後段に、被処理水を膜分離処理する膜分離処理手段を有することが好ましい。
【0013】
また、前記凝集剤は、無機凝集剤及び水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子の少なくとも一種であることが好ましい。
【0014】
そして、任意の頻度で、洗浄液及び空気を前記ろ過装置に導入する洗浄液導入手段をさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
被処理水中の濁質を捕捉するろ過体を、芯材と一部が芯材に固定されると共にろ過槽の内壁面に向かって広がるように設けられている紐状の濁質捕捉部を有するものとし、ろ過槽の内径を45〜600mm、ろ過体の径を50〜500mm、ろ過槽の内径/ろ過体の径を0.9〜1.2の範囲とすることにより、良好に濁質を除去することができ、且つ、閉塞も抑制されたろ過装置を提供することができる。そして、このろ過装置は前段に凝集処理手段を有する水処理装置とすることができる。また、ろ過装置の後段に膜分離処理手段を有する水処理装置とすると、清澄な処理水が得られ、膜分離処理手段の閉塞も抑制できる。高速で水処理する場合や、被処理水の濁度が高い場合に、清澄な処理水が得られ難く、また、ろ過装置や膜分離処理手段で閉塞が生じ、良好に水処理することができないという問題が生じやすいが、本発明のろ過装置を用いることにより、高速処理や濁度が高い被処理水であっても、清澄な処理水が得られ且つろ過装置や膜分離処理手段の閉塞が抑制でき、良好に水処理することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係るろ過装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1中のA−A´線矢視図である。
【図3】実施形態1に係るろ過装置本体の構成を示す断面図である。
【図4】図3中のB−B´線矢視図である。
【図5】図3中のC−C´線矢視図である。
【図6】実施形態1に係る濁質捕捉部の一例を示す図である。
【図7】実施形態2に係る水処理装置例の概略系統図である。
【図8】実施形態2に係る水処理装置例の概略系統図である。
【図9】実施形態2に係る水処理装置例の概略系統図である。
【図10】実施形態2に係る水処理装置例の概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るろ過装置の構成を示す断面図であり、図2は、図1のA−A´線の矢印の方向からみた図である。
【0019】
図1に示すように、ろ過装置10は、被処理水が通水される略円筒状のろ過室1を構成する容器本体2及び容器蓋部3と、ろ過室1の内部に設けられ被処理水をろ過するろ過装置本体4とを有する。該ろ過装置本体4は、下流側の端部が円板状のろ過装置本体取付板5に取り付けられている。そして、ろ過装置本体取付板5は、容器本体2及び容器蓋部3のフランジで挟持され、ろ過装置本体4が取り付けられる箇所のみに被処理水が自由に通水できる程度の通水孔6が設けられている。なお、図2において、破線はろ過装置本体4が取り付けられている位置を示す。
【0020】
また、ろ過装置本体4は、断面図である図3、図3のB−B´線の矢印の方向からみた図である図4、及び、図3のC−C´線の矢印の方向からみた図である図5に示すように、被処理水が通水される円筒状のろ過槽11と、通水される被処理水中の濁質を捕捉するろ過体12とを有する。該ろ過体12は、ろ過槽11の通水方向の両端に接続される芯材13と、紐状の濁質捕捉部14とからなる。そして、ろ過槽11の通水方向両端には、それぞれ2本のパイプ16がろ過槽11内で交差するように設けられ、各パイプ16の交差位置に芯材13の両端が固定されている。また、濁質捕捉部14は、芯材13に一部が編みこまれて固定されると共に固定されていないいわゆるループ状の部分はろ過槽11の内壁面に向かって放射状に広がるように設けられており、ろ過槽11全体にろ過体12が広がっている。このため、濁質捕捉部14は通水方向と交差するので、濁質捕捉部14によって被処理水1に含まれる濁質が捕捉できる。なお、紐状の濁質捕捉部14は長い矩形をループ状にしたものである。
【0021】
また、ろ過装置本体4の上流側の端部、すなわち、ろ過装置本体取付板5に取り付けられた側とは反対側の端部には、被処理水が自由に通水できる程度の通水孔17が設けられた蓋体18(図5)が嵌めこまれている。そして、蓋体18の外側にはボルト穴19が設けられており、ボルト穴に通されたボルト(図示なし)がろ過装置本体取付板5に取付けられ、蓋体18がろ過装置本体取付板5に固定されている。これにより、蓋体18に嵌め込まれたろ過装置本体4がろ過装置本体取付板5に固定される。
【0022】
そして、本発明においては、ろ過槽11の内径は45〜600mm、好ましくは70〜120mmで、ろ過体12の径が50〜500mm、好ましくは70〜135mmであり、ろ過槽11の内径/ろ過体12の径は0.9〜1.2、好ましくは1.0〜1.1の範囲内である。ここで、ろ過体12の径とは、ろ過槽11の内壁面に向かう方向、すなわち、ろ過槽11の径方向に濁質捕捉部14を伸ばした際のろ過体12の直径である。
【0023】
このようなろ過装置10に被処理水を容器本体2側から通水すると、ろ過室1に導入された被処理水は、ろ過室1の入り口近傍に設けられた円板状の水流規制板7に規制されて、図1の矢印で示すように、ろ過室1全体に広がるように流れ、ろ過装置本体4の蓋体18に設けられた通水孔17を通ってろ過装置本体4に導入される。そして、ろ過装置本体4に導入された被処理水は、各紐状の濁質捕捉部14の間を通り、その際被処理水に含まれる濁質が紐状の濁質捕捉部14にトラップされ、濁質が除去された被処理水がろ過槽11からろ容器蓋部3側のろ過室1を通って、ろ過装置10から排出される。本発明においては、ろ過槽11の内径は45〜600mmで、ろ過体12の径は50〜500mmであり、ろ過槽11の内径/ろ過体12の径は0.9〜1.2の範囲内であるため、通水が妨げられず且つ濁質のトラップも良好になる。なお、被処理水としては、工業用水、市水、井水、河川水、湖沼水、工場廃水(特に、工場からの廃水を生物処理した生物処理水)、及びこれらに凝集剤を添加して凝集処理した水が挙げられる。
【0024】
このように、ろ過槽11の内径は45〜600mmで、ろ過体12の径が50〜500mmであり、ろ過槽11の内径/ろ過体12の径は0.9〜1.2の範囲内とすることにより、通水が妨げられず且つ濁質のトラップが良好になるため、ろ過装置10の閉塞が抑制でき、また、例えば濁度3以下程度の清澄な処理水が得られるという効果を奏する。特に、例えば100m/h以上の高速でろ過運転をしたり、濁度が高い(例えば20度以上)被処理水を処理すると、得られる処理水の濁質が悪くなるという問題や、装置が閉塞してしまうという問題が生じやすいが、ろ過槽11の内径は45〜600mmで、ろ過体12の径が50〜500mmであり、ろ過槽11の内径/ろ過体12の径は0.9〜1.2の範囲内としたろ過装置10とすることによって、高速運転や濁度の高い被処理水であっても、閉塞が抑制できまた清澄な処理水が得られる。勿論、低速で処理したり、濁度が低い被処理水を処理する場合であっても、閉塞が抑制できまた清澄な処理水が得られる。
【0025】
ここで、ろ過体12の径が500mmより大きいと、通水抵抗により濁質捕捉部14の同心円上の外周部、すなわち、濁質捕捉部14のうち芯材13から遠い部分が引きずられ、単位面積あたりのろ過体密度が上がった状態になり、濁質吸着がその部分に集中するためか、ろ過装置10や必要に応じて後段に設ける膜分離処理手段に閉塞が生じ、差圧上昇速度が高くなる。そして、逆洗をする場合、逆洗性も低下する。また、50mm未満では、処理水濁度が高くなる。ろ過槽11の径は、600mmより大きいと逆洗による濁質排除性が悪くなり、45mm未満では濁質捕捉部14の柔軟性が失われ、濁質捕捉性が悪くなる。そして、ろ過槽11の内径/ろ過体12の径は、1.2より大きいと逆洗による濁質排除性が悪くなり、0.9未満では、濁質捕捉性が悪くなる。
【0026】
芯材13や濁質捕捉部14の材質としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンなどの合成樹脂が挙げられる。ここで、芯材13は、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンなどの合成繊維を製造過程で編み上げることで強度を持たせてもよい。また、ねじりブラシの様に腐食されないSUSや樹脂で被覆された金属による針金を芯材13とし、濁質捕捉部14を均等に並べた後、金属を捩ることで、放射状に広げたろ過体12としてもよい。このように芯材13の強度を向上させることで、芯材13が屈曲することがなくなると共に、ろ過体12端部の固定が容易となるので、ろ過体12の交換作業が容易になる。
【0027】
また、濁質捕捉部14の大きさは、ろ過体12の径が50〜500mmで、ろ過槽11の内径/ろ過体12の径が0.9〜1.2の範囲内となるようにする以外は特に限定はないが、例えば、ろ過槽11の内壁面に向かう方向に濁質捕捉部14を伸ばした際の濁質捕捉部14の長さは25〜250mm、厚さ0.05〜2mm、幅1〜50mm程度とすることができる。
【0028】
ろ過槽11の内径/ろ過体12の径が0.9〜1.2であれば、ろ過槽11の内容積に対するろ過体12の体積も特に限定されないが、例えば、ろ過槽11の内容積に対するろ過体12の体積は、20〜70%、好ましくは30〜60%程度とすればよい。
【0029】
また、上述した例では、ろ過槽11の両端にそれぞれ設けられた2本のパイプの交差箇所に芯材13の両端をそれぞれ固定したが、これに限定されず、芯材の一端のみを固定するようにしてもよい。
【0030】
また、本実施形態では、ループ状の濁質捕捉部14を芯材13に突設するようにしたが、これに限定されず、例えば、図6に示すように、短冊状の複数の濁質捕捉部とし各濁質捕捉部の一端を芯材13に固定するようにしてもよい。また、本実施形態では、濁質捕捉部14の断面形状を四角形になるようにしたが、特に限定はなく、例えば円形状でもよい。なお、各濁質捕捉部の長さは、上記範囲を満たしていれば同一でも異なっていてもよいが、略同一であるほうが、より清澄な処理水が得られ、また、装置の閉塞がより抑制できるため、好ましい。さらに、本実施形態では、濁質捕捉部14の材質は一種類としたが、二種以上としてもよい。
【0031】
そして、本実施形態では、略円筒状のろ過室1としたが、円筒状でなくてもよく、通水できる形状、すなわち、中空であればよく、例えば角柱に空洞を設けた形状でもよい。
【0032】
さらに、本実施形態では、7つのろ過装置本体4を有するろ過装置10としたが、ろ過装置本体の数に限定はなく、例えば、ろ過装置本体4を1つのみ有するろ過装置10としてもよい。また、ろ過装置本体4の数を多くすると大流量の被処理水をろ過することができるろ過装置となる。ここで、大流量の被処理水をろ過するために、ろ過槽及びろ過体を大きくすることや、大きなろ過槽内に複数のろ過体のみを配置させることも考えられる。しかしながら、ろ過槽及びろ過体を大きくすると、濁質捕捉部のうち芯材から遠い部分が引きずられ、単位面積あたりのろ過体密度が上がった状態になり、濁質吸着がその部分に集中するため、差圧上昇速度が高くなり、逆洗性も低下してしまう。また、大きなろ過槽内に複数のろ過体のみを配置させると、各ろ過体の濁質捕捉部の境界部での濁質リークが生じ、清澄な処理水が得られなくなる。一方、本発明においては、このような差圧上昇や濁質リークの問題が生じず、清澄な処理水が得られまた閉塞が抑制できる。
【0033】
また、本実施形態では、被処理水の通水方向を鉛直方向上向きにしたが、通水方向に制限はなく、下向きでもよい。ただし、濁質の排除性を考慮すると、被処理水の通水方向は鉛直方向上向きであることが好ましい。
【0034】
ここで、本実施形態においては、図1に示すように、ろ過装置10の上流側及び下流側には、ろ過室1に空気を導入する空気導入路81及び導入された空気をろ過装置10から排出する空気排出路82が設けられている。そして、空気導入路81及び空気排出路82に設けられた空気制御バルブ83を制御して、ろ過室1に空気を導入すると共に、詳しくは後述するが、ろ過室1内にろ過処理時の通水方向とは逆の方向に洗浄水を通水することにより、ろ過体12等を逆洗することができる。なお、ろ過室1に導入する空気の流量は、空気導入路81に設けられた空気制御バルブ83近傍に設けられた圧力計84により制御されている。
【0035】
本実施形態では空気及び洗浄液により逆洗を行うようにしたが、逆洗は洗浄液のみで行ってもよい。また、ろ過処理能力に支障がなければ、逆洗は行わない構成としてもよい。
【0036】
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2に係る水処理装置の概略系統図である。なお、実施形態1と同じ部材には同じ符号を付し、重複する説明は省略してある。
【0037】
図7に示すように、水処理装置30は、被処理水(原水)が導入される反応槽31と、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子等の薬品が保持される薬品槽32から反応槽31に薬品を導入するポンプ等からなる薬品導入手段33と、無機凝集剤が保持される無機凝集剤槽34から反応槽31に無機凝集剤を導入するポンプ等からなる無機凝集剤導入手段35と、反応槽31で吸着や凝結など凝集処理した被処理水が導入される実施形態1のろ過装置10とを具備する。
【0038】
このような水処理装置30では、まず、被処理水(原水)が、反応槽31に導入される。そして、薬品槽32に保持された水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子等の薬品や、無機凝集剤槽34に保持された無機凝集剤が、薬品導入手段33や無機凝集剤導入手段35により反応槽31に導入され被処理水に添加される。そして、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子や無機凝集剤が添加された被処理水は、攪拌機36で攪拌されて、凝集処理される。次いで、凝集処理された被処理水は、反応槽31から排出され、ろ過装置10に送られて、濁質が除去される。本発明の水処理装置30においては、上記所定のろ過装置本体4を有するろ過装置10、具体的には、被処理水中の濁質を捕捉するろ過体12を、芯材13と一部が芯材13に固定されると共にろ過槽11の内壁面に向かって広がるように設けられている紐状の濁質捕捉部14を有するものとし、ろ過槽11の内径を45〜600mm、ろ過体12の径を50〜500mm、ろ過槽11の内径/ろ過体12の径を0.9〜1.2としたろ過装置10を用いているため、ろ過装置10の閉塞が抑制できまた清澄な処理水が得られるという効果を奏する。
【0039】
ここで、被処理水としては、例えば、フミン酸・フルボ酸系有機物、藻類等が生産する糖などの生物代謝物、又は、界面活性剤等の合成化学物質などを含む水、具体的には、工業用水、市水、井水、河川水、湖沼水、工場廃水(特に、工場からの廃水を生物処理した生物処理水)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、フミン質とは、植物などが微生物に分解されることにより生じる腐食物質をいい、フミン酸等を含むものであり、フミン質を含有する水は、フミン質および/またはフミン質に由来する溶解性COD成分、懸濁物質や色度成分を有する。
【0040】
被処理水に凝集剤として添加する水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子を構成する水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーは、例えば、一級アミン、二級アミン、三級アミンおよびそれらの酸塩、四級アンモニウム基などの官能基を有するカチオン性モノマーと、実質的に水に溶解しないようにするための架橋剤モノマーとの共重合体である。カチオン性モノマーの具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの酸塩もしくはその4級アンモニウム塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの酸塩もしくはその4級アンモニウム塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。架橋剤モノマーとしては、メチレンビスアクリルアミドなどのジビニルモノマーが挙げられる。また、上記カチオン性モノマーと共重合可能なアニオン性またはノニオン性モノマーとの共重合体としてもよい。共重合させるアニオン性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそれらのアルカリ金属塩等が挙げられるが、その含有量は、共重合体がカチオン性ポリマーとしての性質を損なわない程度に少量である必要がある。ノニオン性モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、Nイソプロピルアクリルアミド、Nメチル(NNジメチル)アクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン、メチルもしくはエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。各モノマーは1種でも複数種でもよい。なお、ジビニルモノマー等の架橋剤モノマー量は、全モノマーに対して0.0001〜0.1モル%必要であり、この量によって、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子の膨潤度や水中での粒子径が調整できる。そして、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子としては、例えば、クリバータEP(栗田工業製)が市販されている。また、WA20(三菱化学社製)等のアニオン交換樹脂を、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーとして用いてもよい。また、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子の平均粒子径は特に限定されないが、逆相エマルション液体やサスペンション状の分散液体中での平均粒子径、すなわち、水で膨潤していない状態の平均粒子径は100μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜10μmである。
【0041】
上記水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子を被処理水に添加する形態に特に限定はなく、例えば、粒子そのままでもよく、また、水中に分散した状態や、逆相エマルション液体やサスペンション状の分散液体の形態で添加してもよい。何れにしても、被処理水に水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子を添加することによって、被処理水が凝集処理される、すなわち、被処理水が水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子と接触して、被処理水中に含まれる濁質が粒子に吸着するようにすればよい。
【0042】
また、2種以上の水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子を被処理水に添加してもよい。なお、上記粒子を構成するカチオン性ポリマーは水中で膨潤し実質的に水に溶解しないため、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子も、通常の高分子凝集剤とは異なり、水中で膨潤し実質的に水に溶解しない。「実質的に水に溶解しない」とは、水溶性の程度が水中でカチオン性ポリマーからなる粒子として存在できる程度であればよく、具体的には、例えば、30℃での水への溶解性が0.1g/L以下程度であればよい。また、この粒子の水中での膨潤度は、水で膨潤していない時の粒子径に対して水中での粒子径は10〜200倍程度である。
【0043】
ここで、逆相エマルション液体の形態とした水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子について以下に詳細に説明するが、この形態に限定されるものではない。なお、特殊なものではなく、ごく一般的な逆相(W/O)エマルションポリマーである。
【0044】
逆相エマルション液体は、上記水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマー、水、炭化水素液体及び界面活性剤を含有する。そして、各成分の質量比(%)は、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマー:水:炭化水素液体:界面活性剤=20〜40:20〜40:20〜40:2〜20で、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーと水との合計質量が、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーと水と炭化水素液体と界面活性剤との全体質量に対して40〜60質量%とすることが好ましい。
【0045】
炭化水素液体としては、イソヘキサンなどのイソパラフィン、n−ヘキサン、ケロシン、鉱物油などの脂肪族系の炭化水素液体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
また、界面活性剤としては、例えば、HLB(親水親油バランス)が7〜10で、炭素数10〜20の高級脂肪族アルコールのポリオキシエチレンエーテル、もしくは、炭素数10〜22の高級脂肪酸のポリオキシエチレンエステルが挙げられる。前者の例としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどのポリオキシエチレン(EO付加モル数=3〜10)エーテルが挙げられる。後者の例としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などのポリオキシエチレン(EO付加モル数=3〜10)エステルが挙げられる。
【0047】
なお、逆相エマルション液体は、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーの原料であるカチオン性モノマーや架橋剤モノマーと、水、炭化水素液体、界面活性剤を混合してモノマーを重合(乳化重合又は懸濁重合)することにより得られるが、これに限定されるものではなく、例えば、各種モノマーを溶液重合した後、ホモジナイザーなどで粉砕し、その後、界面活性剤などの分散剤と共に炭化水素液体に添加することによっても得られる。
【0048】
水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子を被処理水に添加する際には、粒子の表面積が大きいことが好ましい。したがって、上記逆相エマルション液体やサスペンション状の分散液体の形態である粒子を、撹拌下の水に添加して粒子を膨潤させた状態にした後、被処理水に添加することが好ましい。
【0049】
水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子を被処理水に添加する量に特に制限は無いが、被処理水に対して0.2〜5mg/L、被処理水中に含まれる濁質に対して、1〜50質量%程度とすることが好ましい。また、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子を添加した被処理水のpHは特に制限はないが、低pH、例えばpH5.0〜7.5程度とすることが好ましい。凝集性が特に良好になるためである。
【0050】
なお、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子を上記被処理水に添加すると、被処理水の凝集粒子(フロック)を効率よく且つ大きく形成できるため、清澄な処理水が得られやすくなるが、ろ過装置や、必要に応じてろ過装置の後段に設ける膜分離処理手段が閉塞しやすくなるという問題がある。しかしながら、本発明においては、上記所定のろ過装置本体4を有するろ過装置10を用いているため、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子に由来する閉塞も良好に抑制することができ、また、清澄な処理水を得ることができるという効果も維持できる。
【0051】
また、被処理水に添加する無機凝集剤は特に限定はなく、例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム塩、塩化第二鉄、硫酸第一鉄等の鉄塩などが挙げられる。また、無機凝集剤の添加量にも特に限定はなく、処理する被処理水の性状に応じて調整すればよいが、被処理水に対して概ねアルミニウム又は鉄換算で0.5〜10mg/Lである。また、被処理水の性状にもよるが、無機凝集剤としてポリ塩化アルミニウム(PAC)を用いた場合、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子及び無機凝集剤を添加した被処理水のpHを、pH5.0〜7.0程度とすると、凝集が最適となる。無機凝集剤の添加は、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子を被処理水に添加する前でも後でもよく、また、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子と同時に添加してもよい。
【0052】
また、図8に示すように、上記水処理装置30のろ過装置10の後段に膜分離処理手段41を設けた水処理装置40としてもよい。膜分離処理としては、精密濾過膜(MF膜)、限外濾過膜(UF膜)、ナノ濾過膜(NF膜)、又は、逆浸透膜(RO膜)等が挙げられる。これらの膜は単独で一段以上用いてもよく、また、例えば、MF膜又はUF膜で被処理水を膜分離処理した後、RO膜で膜分離処理する等、各種の膜を組み合わせる膜分離処理としてもよい。
【0053】
ここで、被処理水である工業用水、市水、井水、生物処理水などは、通常フミン酸・フルボ酸系有機物、藻類等が生産する糖などの生物代謝物や、界面活性剤等の合成化学物質などの膜汚染物質を含むため、膜分離処理をすると、膜汚染物質が膜表面に吸着して膜分離性能が劣化してしまうという問題がある。しかしながら、本実施形態においては、膜分離処理の前に、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子を添加するため、該粒子に膜汚染物質が吸着して凝集した後に膜分離処理をすることになる。したがって、生物代謝物などの膜汚染物質の溶存有機物濃度が低い水を膜分離処理することができるので、膜汚染物質の膜への吸着を低減でき、膜の分離性能の劣化を抑制できる。なお、図8においては、ろ過装置10及び膜分離処理手段41を横にならべたが、これに限定されず、ろ過装置10と膜分離処理手段41を縦に一体的に重ねるようにしてもよい。これにより、設置面積を小さくすることができると共に、部品数を少なくすることができる。
【0054】
そして、上記水処理装置30や水処理装置40に追加して、図9に示すように、被処理水(原水)が貯留された原水槽に、被処理水の吸光度を測定する吸光度測定手段51が設けられ、この吸光度測定手段51で測定された吸光度データを受け取り、薬品槽32から反応槽31へ導入する水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子の添加量、及び、無機凝集剤槽34から反応槽31へ導入する無機凝集剤の添加量を算出し添加量を制御する添加量制御手段52が設けられている水処理装置50としてもよい。
【0055】
添加量制御手段52は、予め水質の異なる様々な吸光度の被処理水をジャーテスターで水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子及び無機凝集剤を用いて水処理することにより、被処理水の吸光度と水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子の最適添加量との関係を求めた式を、添加量補正情報として有する。そして、添加量制御手段52では、吸光度測定手段51で測定された被処理水(原水)の吸光度データとこの関係式(添加量補正情報)とから最適添加量を算出し、薬品導入手段32から導入される水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子の添加量を制御する。また、同様に、添加量制御手段52は、予め水質の異なる様々な吸光度の被処理水を無機凝集剤を用いて水処理することにより、被処理水の吸光度と無機凝集剤の最適添加量との関係を求めた式を、添加量補正情報として有する。そして、添加量制御手段52では、吸光度測定手段51で測定された被処理水(原水)の吸光度データとこの関係式(添加量補正情報)とから最適添加量を算出し、無機凝集剤導入手段35から導入される無機凝集剤の添加量を制御する。
【0056】
水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子を例に、詳述すると、まず、予め被処理水の吸光度と、その吸光度を有する被処理水を処理するのに適した水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子の添加量、即ち、濁質となる溶解性有機物を凝集させるために十分な添加量であって過剰とならない量の添加量との関係を添加量補正情報として求めておく。そして、水処理する際に被処理水の吸光度を測定し、その吸光度の測定結果と、添加量補正情報とに基づいて、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子の添加量を制御する。
【0057】
ここで、被処理水について、波長200nm〜400nmの紫外部と波長500nm〜700nmの可視部をそれぞれ1波長以上測定した吸光度と、溶解性有機物濃度には下記式で示す相関関係がある。
溶解性有機物濃度=A×[紫外部吸光度−可視部吸光度]
【0058】
そして、溶解性有機物濃度と、0.45μmメンブレンフィルターを用いて一定量の試料水を濾過するのに要する時間(以下「KMF値」という。)から判断した粒子の最適な添加量との間には相関関係がある。従って、紫外部及び可視部吸光度をそれぞれ1波長以上測定することにより、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子の最適添加量を推算できる。
【0059】
具体的には、水質の異なる被処理水、例えば、異なる日に採取した工業用水などの被処理水について予めジャーテストを行って、下記式(I)に示すような紫外部吸光度と可視部吸光度との差と水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子の最適添加濃度との関係式(添加量制御情報)を求めておく。なお、式(I)中、A〜Cは、被処理水の溶解性有機物の濃度など水質に依存する定数であり、E260は波長260nmでの吸光度、E660は波長660nmでの吸光度を表す。そして、水処理する際に被処理水の吸光度を測定し、吸光度の測定結果と下記式(I)から粒子の最適添加濃度を求め、その最適添加量の粒子を被処理水に添加する。
水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子の添加濃度
=A×(E260−E660)B+C (I)
【0060】
なお、上述した例では、添加量制御情報として紫外部吸光度と可視部吸光度との差と粒子の最適添加濃度との関係式を求めたものを示したが、これに限定されず、例えば、閾値制御としてもよい。閾値制御としては、吸光度差が所定値a1未満のときには水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子の添加濃度をb1とし、吸光度差が所定値a1〜a2のときには粒子の添加濃度をb2とし、吸光度差が所定値a2超のときには粒子の添加濃度をb3とするものなどが例示されるが、これに限定されない。
【0061】
このように、被処理水に含まれる濁質となる溶解性有機物量に基づいて、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子の添加量を制御することにより、最適な量の水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子を被処理水に添加することができるので、効率よく被処理水を処理することができる。また、被処理水の水質が変動した場合においても、変動した後の被処理水の水質に応じて水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子を最適量添加するので、安定して清澄度の高い処理水を得ることができる。なお、無機凝集剤の添加量の制御についても、上記水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子の添加量の制御と同様にすればよい。
【0062】
また、被処理水の濁度と溶解性有機物濃度にも相関関係があるため、吸光度の代わりに濁度を測定し、上記吸光度と同様の制御をするようにすれば、最適な量の水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子や無機凝集剤を被処理水に添加することができるので、効率よく被処理水を処理することができ、また、被処理水の水質が変動した場合においても、変動した後の被処理水の水質に応じて水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子や無機凝集剤を最適量添加するので、安定して清澄度の高い処理水を得ることができる。なお、被処理水(原水)の吸光度データに応じた凝集剤添加量の制御と、被処理水の濁度データに応じた凝集剤添加量の制御の両方を行ってもよい。
【0063】
さらに、上記水処理装置30や水処理装置40に追加して、被処理水の通水方向とは逆方向からろ過装置10に洗浄液及び空気を導入する洗浄液導入手段を有する水処理装置としてもよい。具体的には、例えば図10に示すように、水処理装置は、膜分離処理手段41で処理された被処理水を貯留する処理水槽61を有し、この処理水槽61の被処理水(洗浄液)及び空気を順に膜分離処理手段41及びろ過装置10に導入する洗浄液導入手段62を有する。
【0064】
このような水処理装置60では、ろ過後、膜分離処理された被処理水は、処理水槽61に貯留される。ここで、ろ過装置10のろ過体12は、被処理水の通水によって次第に凝集剤として添加した水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子や無機凝集剤に起因する固形物やその他濁質などの汚染物質の付着により、性能が劣化する。また、膜分離処理手段41のMF膜などの分離膜は、膜分離処理によって次第に凝集剤として添加した水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子や無機凝集剤に起因する固形物やその他濁質などの汚染物質の付着により、膜分離性能が劣化する。そこで、任意の頻度で、反応槽31とろ過装置10との間に設けられたバルブ63と、膜分離処理手段41と処理水槽61との間に設けられ膜分離処理の際には開かれているバルブ64を閉じて、ろ過処理及び膜分離処理を中断する。そして、処理水槽61と膜分離処理手段41とを繋ぐもう一つのバルブ65を開け、処理水槽61に貯留された被処理水をポンプ等の洗浄液導入手段62で膜分離処理手段41に導入して、例えば1分程度分離膜を通過させることにより、分離膜を洗浄液で逆洗する。次いで、膜分離処理手段41を通過させた洗浄液を、ろ過装置10の空気導入路84(図1参照)から導入された空気と共にろ過装置10を通過させることにより、ろ過体12を空気及び洗浄液で逆洗する。そして、洗浄液及び空気は、ろ過装置10からバルブ66(空気制御バルブ83)を介して水処理装置60外へ排水として排出される。また、膜分離処理手段41及びろ過装置10の間に洗浄液を送液するためのポンプ等がなくても、膜分離処理手段41に洗浄液を導入する洗浄液導入手段62により、ろ過装置10に洗浄液を導入することができる。
【0065】
そして、膜分離処理手段41及びろ過装置10の洗浄が終了した後は、再び、バルブ63及び64を開けバルブ65及び66を閉じて、ろ過及び膜分離処理を再開する。このように、ろ過装置10及び膜分離処理手段41を洗浄することにより、ろ過体12及び分離膜に吸着した濁質を除去することができるので、ろ過性能や、膜分離性能の劣化を確実に抑制することができる。なお、ろ過装置10のみに被処理水及び空気を導入するようにしてもよい。
【0066】
また、ろ過体12の両端が固定されていない場合や、ろ過体12の両端が固定されていてもろ過槽11の長さよりも芯材13が長いと、ろ過装置本体4のろ過部の体積が逆洗時とろ過時とで異なる場合があるが、逆洗時に対するろ過時のろ過部の体積変化率は、0〜30%、特に0〜10%であることが好ましい。なお、ろ過部とは、被処理水の濁質がろ過体12に捕捉される領域、すなわち、ろ過槽11の内壁面を側面とし通水時のろ過体12の通水方向両端を厚さ方向の両端とする層をいう。このような範囲とすることで、被処理水に接触する濁質捕捉部14の面積が大きくなるため、得られる処理水の濁度を安定させ低くすることができ、さらに、差圧上昇速度を顕著に低くすることができる。
【0067】
なお、本実施形態では、凝集剤として、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマー及び無機凝集剤を用いたが、いずれか一方でもよい。また、高分子凝集剤などを用いてもよく、これらの凝集剤を併用してもよい。高分子凝集剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミドの共重合物、及び、それらのアルカリ金属塩等のアニオン系の有機系高分子凝集剤、ポリ(メタ)アクリルアミド等のノニオン系の有機系高分子凝集剤、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートもしくはその4級アンモニウム塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドもしくはその4級アンモニウム塩等のカチオン性モノマーからなるホモポリマー、及び、それらカチオン性モノマーと共重合可能なノニオン性モノマーとの共重合体等のカチオン系の有機系高分子凝集剤が挙げられる。また、有機系高分子凝集剤の添加量にも特に限定はなく、処理水の性状に応じて調整すればよいが、被処理水に対して概ね固形分で0.01〜10mg/Lである。また、本実施形態では、凝集剤を反応槽31に導入するようにしたが、反応槽31の前段で導入するようにしてもよい。
【0068】
また、脱炭酸処理や、活性炭処理等、被処理水の精製処理手段をさらに有する水処理装置としてもよい。そして、必要に応じて、紫外線照射手段、オゾン処理手段、生物処理手段などを具備する水処理装置としてもよい。
【0069】
さらに、必要に応じて、凝結剤、殺菌剤、消臭剤、消泡剤、防食剤などを添加してもよく、例えば、薬品槽32に各添加剤を混合することにより、添加することができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例及び比較例に基づいてさらに詳述するが、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
濁度2.1〜28度、TOC(全有機炭素)0.4〜4.2mg/Lの工業用水に、40ppmのポリ塩化アルミニウム(PAC:10重量% as Al23)を添加して攪拌することにより凝集処理してフロックを形成したものを被処理水とした。この被処理水を、ろ過装置本体を1個有する構成とした以外は図1と同様の構成のろ過装置に、ろ過装置本体内でLV200m/h、SV867/hとなるように30分間通水した(ろ過工程)。ろ過工程後、ろ過装置から排出された処理水を、通水方向とは逆方向に、ろ過装置本体内でLV200m/h、SV967/hとなるように10秒間通過させた(逆洗工程)。このろ過工程及び逆洗工程をそれぞれ50回繰り返した後に、ろ過工程を行った時のろ過装置から排出された処理水の濁度(処理水濁度)及びろ過装置の差圧上昇速度を測定した。結果を表1に示す。なお、処理水の濁度はカオリン標準液を用いた透過光測定方法により求め、ろ過装置の差圧上昇速度は入口と出口の圧力差で求めた。
【0072】
なお、ろ過装置に用いたろ過装置本体は、図3に示すように芯材及び紐状の濁質捕捉部からなるろ過体を有し、ろ過槽全体にろ過体が広がっている。また、ろ過体は、ろ過槽の通水方向両端のパイプに芯材の両端がそれぞれ固定されてろ過時及び逆洗時のいずれにおいても移動しない構成となっている。そして、各濁質捕捉部は、厚さ1.5mm、幅5mm、長さ45mm(ループの長さの半分の値)であり、ろ過体の径は90mmである。また、ろ過槽は、内径が89mm、長さが230mmである。そして、ろ過槽の内容積に対するろ過体の体積は40%である。
【0073】
(実施例2)
濁質捕捉部の長さを220mm、ろ過体の径を440mm、ろ過槽の内径を438mmとした以外は実施例1と同様の条件で操作した。
結果を表1に示す。
【0074】
(比較例1)
濁質捕捉部の長さを20mm、ろ過体の径を40mm、ろ過槽の内径を38mmとした以外は実施例1と同様の条件で操作した。結果を表1に示す。
【0075】
(比較例2)
濁質捕捉部の長さを350mm、ろ過体の径を600mm、ろ過槽の内径を598mmとした以外は実施例1と同様の条件で操作した。結果を表1に示す。
【0076】
表1に示すように、ろ過槽の内径が45〜600mm、ろ過体の径が50〜500mm、ろ過槽の内径/ろ過体の径が0.9〜1.2である実施例1及び2は、顕著に差圧上昇速度及び処理水濁度が低く、清澄な処理水が得られまた閉塞が抑制できることが分かった。一方、ろ過槽の内径及びろ過体の径が小さい比較例1は、処理水濁度が高かった。また、ろ過槽の内径及びろ過体の径が大きい比較例2は、差圧上昇速度が高かった。
【0077】
【表1】

【0078】
(実施例3)
ろ過室の内径を800mmとし、また、ろ過装置本体を25個有するろ過装置とした以外は、実施例1と同様の条件で操作した。結果を表2に示す。
【0079】
(比較例3)
ろ過室の内径を445mmとし、ろ過装置本体のかわりに、実施例1と同様のろ過体をろ過体の径の外周側が互いに接するように25個配置した以外は、実施例1と同様の条件で操作した。結果を表2に示す。
【0080】
表2に示すように、ろ過槽内に複数のろ過体のみを配置させた比較例3は、差圧上昇速度は小さいが、処理水濁度が実施例3と比較して顕著に高かった。なお、ろ過装置本体を25個有するろ過装置とした実施例3は、実施例1と比較して大流量の被処理水を、実施例1と同じ処理水濁度と差圧上昇速度で処理することができた。
【0081】
【表2】

【0082】
(実施例4)
逆洗工程において、洗浄液に加えて、通水方向とは逆方向に、ろ過装置本体内で5.0Nm/h及び0.2MPaになるように、ろ過装置に空気を注入した以外は、実施例3と同様の条件で操作した。結果を表3に示す。
【0083】
この結果、洗浄液及び空気で逆洗した実施例4は、洗浄液のみで逆洗した実施例3と比較して、処理水濁度はかわらないが、差圧上昇速度は顕著に低かった。
【0084】
(実施例5)
PACのかわりに、被処理水に対してポリマー粒子として2.0mg/LのクリバータEP(栗田工業製、CE(コロイド当量値):0.4〜3meq/g(as ポリマー粒子))を添加した以外は、実施例4と同様の条件で操作した。結果を表3に示す。
【0085】
この結果、水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子を凝集剤として用いた実施例5では、フロックが粗大化して、実施例3よりも処理水濁度が低下し差圧上昇速度も遅くなった。
【0086】
(実施例6)
PACの添加に加えて、被処理水に対してポリマー粒子として2.0mg/LのクリバータEP(栗田工業製、CE:0.4〜3meq/g(as ポリマー粒子))を添加した以外は、実施例4と同様の条件で操作した。結果を表3に示す。
【0087】
この結果、凝集剤として水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子及びPACを併用した実施例6は、実施例4よりも、処理水濁度が低く、また、差圧上昇速度も低かった。
【0088】
(実施例7)
被処理水(原水)の吸光度を測定し、該吸光度の測定結果に基づいてPAC及びクリバータEPの添加濃度を制御した以外は、実施例6と同様の操作を行った。
【0089】
(実施例8)
被処理水(原水)の濁度を測定し、該吸光度の測定結果に基づいてPAC及びクリバータEPの添加濃度を制御した以外は、実施例6と同様の操作を行った。
【0090】
(実施例9)
被処理水(原水)の吸光度及び濁度を測定し、該吸光度及び濁度の測定結果に基づいてPAC及びクリバータEPの添加濃度を制御した以外は、実施例6と同様の操作を行った。
【0091】
この結果、吸光度測定結果に基づいて凝集剤の添加量を制御した実施例7や、濁度測定結果に基づいて凝集剤の添加量を制御した実施例8では、実施例4よりも処理水濁度が低下し差圧上昇速度も遅くなった。また、吸光度測定結果及び濁度測定結果に基づいて凝集剤の添加量を制御した実施例9では、実施例7及び8よりも、処理水濁度が低下し差圧上昇速度も遅くなった。
【0092】
【表3】

【符号の説明】
【0093】
1 ろ過室、 4 ろ過装置本体、 5 ろ過装置本体取付板、 6、17 通水孔、 10、20 ろ過装置、 11 ろ過槽、 12 ろ過体、 13 芯材、 14 濁質捕捉部、 16 パイプ、 18 蓋体、 19 ボルト穴、 30、40、50、60 水処理装置、 31 反応槽、 32 薬品槽、 33 薬品導入手段、 34 無機凝集剤槽、 35 無機凝集剤導入手段、 41 膜分離処理手段、 51 吸光度測定手段、 52 添加量制御手段、 61 処理水槽、 62 洗浄液導入手段、63〜66 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のろ過槽と、該ろ過槽に充填され被処理水中の濁質を捕捉するろ過体とを有するろ過装置本体を具備するろ過装置であって、
前記ろ過体は、前記ろ過槽の通水方向の少なくとも一端に接続される芯材と一部が前記芯材に固定されると共に前記ろ過槽の内壁面に向かって広がるように設けられている紐状の濁質捕捉部とを有し、
前記ろ過槽の内径が45〜600mmで、前記ろ過体の径が50〜500mmであり、前記ろ過槽の内径/前記ろ過体の径が0.9〜1.2であることを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
前記ろ過装置本体が、通水方向に複数並列して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のろ過装置。
【請求項3】
前記ろ過装置本体は、逆洗時に対するろ過時のろ過部の体積変化率が0〜30%となるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のろ過装置。
【請求項4】
被処理水が導入される反応槽と、凝集剤を前記反応槽又は反応槽の前段で導入して被処理水に前記凝集剤を添加する凝集剤導入手段と、前記反応槽の後段に設けられ前記反応槽で凝集処理した被処理水が導入される請求項1〜3の何れか一項に記載するろ過装置とを具備することを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
前記ろ過装置の後段に、被処理水を膜分離処理する膜分離処理手段を有することを特徴とする請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記凝集剤が、無機凝集剤及び水中で膨潤し実質的に水に溶解しないカチオン性ポリマーからなる粒子の少なくとも一種であることを特徴とする請求項4又は5に記載の水処理装置。
【請求項7】
任意の頻度で、洗浄液及び空気を前記ろ過装置に導入する洗浄液導入手段をさらに有することを特徴とする請求項4〜6の何れか一項に記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−179247(P2010−179247A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25407(P2009−25407)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】