説明

アイドリング状態判定システム

【課題】アイドリング時間の長短のみでアイドリングの不要・必要を判定するのではなく、真に必要か否かを正しく判定できる精度の高いアイドリング状態判定システムの提供。
【解決手段】車両の状態を検出する検出装置(1〜5)と、車両の状態が所定条件を満たした場合のみを不必要なアイドリングと判定する機能を有する制御装置(10)とを有しており、該制御装置(10)は、不必要なアイドリングと判定された場合におけるアイドリング時間の合計時間を計算して、しきい値(警告をするべきと判定される時間)を越えた場合に警告を発する機能を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運行管理を行う際、車両のアイドリング状態が当該車両の運転に必要不可欠なものであるか、不必要なアイドリングであるかを判断する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行中のエンジン回転数と車両速度の情報を、例えば無線通信手段であるテレマティクスによって運行管理を行う営業基地に送り、これらの情報を分析することにより、車両の不要なアイドリングを減少させるような運行管理システムが普及している。
【0003】
例えば、フットブレーキで車両を停止している状態におけるアイドリングの様に、車両の運転に不可避であって且つ短時間のアイドリングは、必要なアイドリングとして当然に認められるべきである。
しかし、上記運行管理システムでは、エンジンの回転数と車速のみによってアイドリングを判断するため、厳冬期などの霜取りのためのアイドリングや、PTO(パワー・テークオフ)を装備した車両のPTO作業におけるアイドリングは、不要なアイドリングとして誤判定がされてしまう。
すなわち、係る従来技術では、車両に必要不可欠なアイドリングであっても、「不要なアイドリングである」という誤判定をしてしまうので、評価用データを得るためには信頼性が乏しく、車両の運行管理に対する信頼性を低下されてしまうという問題点を有している。
【0004】
その他の従来技術として、長時間運転による過労や、居眠り運転を防止し、以って、過労や居眠り運転による事故を未然に防止するために、車両が走行中か否かを判断して走行中の時間をカウントし、係る走行中の時間には停車時間は除かれており、走行中の時間がしきい値を越えた場合に警告を発する技術が提案されている(特許文献1)。
しかし、係る従来技術(特許文献1)は過度の長時間運転を防止するためのものであり、霜取り時やPTO時のアイドリングの様な必要不可欠なアイドリング状態と、不必要なアイドリングとを判別するという上述した問題点を解決することは出来ない。
【特許文献1】特開平5−67263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、車両の運転に必要不可欠なアイドリング状態と、不必要なアイドリングとを正確に判別することが出来て、以って、車両の運行管理の信頼性を向上することが出来るようなアイドリング状態判定システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアイドリング状態判定システム(100)は、車両の状態を検出する検出装置(1〜5)と、車両の状態が所定条件を満たした場合のみを不必要なアイドリングと判定する機能を有する制御装置(演算装置10)とを有しており、該制御装置(10)は、不必要なアイドリングと判定された場合におけるアイドリング時間の合計時間を計算して、しきい値(警告アイドリング時間:それ以上アイドリングが続いたなら警告を与えるべきと判定される時間)を越えた場合に警告を発する機能を有していることを特徴としている(請求項1)。
【0007】
本発明(の請求項1のアイドリング状態判定システム)において、前記検出装置は、車両速度を計測する車速センサ(1)と、エンジン回転数を計測するエンジン回転センサ(2)と、パワーテイクオフ(PTO)を使用しているか否かを検出するパワーテイクオフ使用センサ(PTOスイッチ3)であり、前記所定条件は、車両速度がゼロであり、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であり、且つ、パワーテイクオフ(PTO)が使用されていないことであるのが好ましい(請求項2)。
【0008】
ここで(請求項2のアイドリング状態判定システムにおいて)、前記検出装置として、フットブレーキ(主ブレーキ)が使用されているか否か(フットブレーキで制動されているか否か)を検出するブレーキ使用センサ(ブレーキスイッチ4)を含んでおり、前記所定条件として、フットブレーキが使用されていない(フットブレーキによる制動がされていない)ことが含まれるのが好ましい(請求項3)。
【0009】
或いは(請求項2のアイドリング状態判定システムにおいて)、前記検出装置として、車内温度を計測する温度センサ(5)を含んでおり、前記所定条件として、車内温度が許可温度範囲(冷暖房用アイドリング許可範囲:例えば15℃以下または30℃以上)を外れていることが含まれるのが好ましい(請求項4)。
ここで、トラック等の貨物自動車においては、昼間仮眠をとり、夜間に運送を行う場合もある。仮眠によって疲れを確実にとるためには、上記車内温度範囲は避けたい。そのためには、アイドリング時の冷・暖房も認められるべきである。
【0010】
さらに(請求項2のアイドリング状態判定システムにおいて)、前記検出装置として、フットブレーキが使用されているか否かを検出するブレーキ使用センサ(ブレーキスイッチ4)と、車内温度を計測する温度センサ(5)とを含んでおり、前記所定条件として、フットブレーキが使用されていない(フットブレーキによる制動がされていない)こと及び車内温度が許可温度範囲(冷暖房用アイドリング許可範囲:例えば15℃以下または30℃以上)を外れていることが含まれるのが好ましい(請求項5)。
【0011】
また(本発明の請求項1のアイドリング状態判定システムにおいて)、前記検出装置は、車両速度を計測する車速センサ(1)と、エンジン回転数を計測するエンジン回転センサ(2)と、フットブレーキが使用されているか否かを検出するブレーキ使用センサ(ブレーキスイッチ4)であり、前記所定条件は、車両速度がゼロであり、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であり、且つ、フットブレーキが使用されていないことであるのが好ましい(請求項6)。
【0012】
ここで(請求項6のアイドリング状態判定システムにおいて)、前記検出装置として、車内温度を計測する温度センサ(5)を含んでおり、前記所定条件として、車内温度が許可温度範囲(冷暖房用アイドリング許可範囲:例えば15℃以下または30℃以上)を外れていることが含まれるのが好ましい(請求項7)。
【0013】
さらに(本発明の請求項1のアイドリング状態判定システムにおいて)、前記検出装置は、車両速度を計測する車速センサ(1)と、エンジン回転数を計測するエンジン回転センサ(2)と、車内温度を計測する温度センサ(5)であり、前記所定条件は、車両速度がゼロであり、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であり、且つ、車内温度が許可温度範囲(冷暖房用アイドリング許可範囲:例えば15℃以下または30℃以上)を外れていることであるのが好ましい(請求項8)。
【0014】
本発明の(請求項1の)アイドリング状態判定システムの制御方法は、車両の状態を検出する工程(ステップS1、S3、S5、S7、S9)と、車両の状態が所定条件を満たした場合のみを不必要なアイドリングと判定する工程(ステップS2、S4、S6、S8、S10、S12)と、不必要なアイドリングと判定された場合におけるアイドリング時間の合計時間を計算する工程(ステップS13)と、不必要なアイドリングと判定されたアイドリング時間の合計時間がしきい値(警告アイドリング時間:それ以上アイドリングを続ければ警告を与えるべきと判定される時間)を越えた場合に警告を発する工程(ステップS15)、とを有している。
【0015】
ここで、前記車両の状態を検出する工程(ステップS1、S3、S9)では、車速センサ(1)により車両速度を計測し、エンジン回転センサ(2)によりエンジン回転数を計測し、パワーテイクオフ使用センサ(PTOスイッチ3)でパワーテイクオフ(PTO)を使用しているか否かを検出しており、前記不必要なアイドリングと判定する工程(ステップS2、S4、S10)では、車両速度がゼロであり、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であり、且つ、パワーテイクオフ(PTO)が使用されていない場合に、不必要なアイドリングと判定している。
【0016】
そして、前記車両の状態を検出する工程(ステップS1、S3、S9、S5)では、車速センサ(1)により車両速度を計測し、エンジン回転センサ(2)によりエンジン回転数を計測し、パワーテイクオフ使用センサ(PTOスイッチ3)でパワーテイクオフを使用しているか否かを検出し、ブレーキ使用センサ(ブレーキスイッチ4)によりフットブレーキが使用されているか否か(フットブレーキで制動されているか否か)を検出しており、前記不必要なアイドリングと判定する工程(ステップS2、S4、S10、S6)では、車両速度がゼロであり、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であり、パワーテイクオフ(PTO)が使用されておらず、且つ、フットブレーキが使用されていない(フットブレーキによる制動がされていない)場合に、不必要なアイドリングと判定している。
【0017】
或いは、前記車両の状態を検出する工程(ステップS1、S3、S9、S7)では、車速センサ(1)により車両速度を計測し、エンジン回転センサ(2)によりエンジン回転数を計測し、パワーテイクオフ使用センサ(PTOスイッチ3)でパワーテイクオフ(PTO)を使用しているか否かを検出し、温度センサ(5)により車内温度を計測しており、前記不必要なアイドリングと判定する工程(ステップS2、S4、S10、S8)では、車両速度がゼロであり、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であり、パワーテイクオフ(PTO)が使用されておらず、且つ、車内温度が許可温度範囲(冷暖房用アイドリング許可範囲:例えば15℃以下または30℃以上)を外れている場合に、不必要なアイドリングと判定している。
【0018】
さらに、前記車両の状態を検出する工程(ステップS1、S3、S9、S5、S7)では、車速センサ(1)により車両速度を計測し、エンジン回転センサ(2)によりエンジン回転数を計測し、パワーテイクオフ使用センサ(PTOスイッチ3)でパワーテイクオフ(PTO)を使用しているか否かを検出し、ブレーキ使用センサ(ブレーキスイッチ4)によりフットブレーキが使用されているか否か(フットブレーキで制動されているか否か)を検出し、温度センサ(5)により車内温度を計測しており、前記不必要なアイドリングと判定する工程(ステップS2、S4、S10、S6、S8)では、車両速度がゼロであり、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であり、パワーテイクオフ(PTO)が使用されておらず、フットブレーキが使用されておらず、且つ、車内温度が許可温度範囲(冷暖房用アイドリング許可範囲:例えば15℃以下または30℃以上)を外れている場合に、不必要なアイドリングと判定している。
【0019】
また、前記車両の状態を検出する工程(ステップS1、S3、S5)では、車速センサ(1)により車両速度を計測し、エンジン回転センサ(2)によりエンジン回転数を計測し、ブレーキ使用センサ(ブレーキスイッチ4)によりフットブレーキが使用されているか否か(フットブレーキで制動されているか否か)を検出しており、前記不必要なアイドリングと判定する工程(ステップS2、S4、S6)では、車両速度がゼロであり、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であり、且つ、フットブレーキが使用されていない場合に、不必要なアイドリングと判定している。
【0020】
ここで、前記車両の状態を検出する工程(ステップS1、S3、S5、S7)では、車速センサ(1)により車両速度を計測し、エンジン回転センサ(2)によりエンジン回転数を計測し、ブレーキ使用センサ(ブレーキスイッチ4)によりフットブレーキが使用されているか否か(フットブレーキで制動されているか否か)を検出し、温度センサ(5)により車内温度を計測しており、前記不必要なアイドリングと判定する工程(ステップS2、S4、S6、S8)では、車両速度がゼロであり、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であり、フットブレーキが使用されておらず、且つ、車内温度が許可温度範囲(冷暖房用アイドリング許可範囲:例えば15℃以下または30℃以上)を外れている場合に、不必要なアイドリングと判定している。
【0021】
さらに、前記車両の状態を検出する工程(ステップS1、S3、S7)では、車速センサ(1)により車両速度を計測し、エンジン回転センサ(2)によりエンジン回転数を計測し、温度センサ(5)により車内温度を計測しており、前記不必要なアイドリングと判定する工程(ステップS2、S4、S8)では、車両速度がゼロであり、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であり、且つ、車内温度が許可温度範囲(冷暖房用アイドリング許可範囲:例えば15℃以下または30℃以上)を外れている場合に、不必要なアイドリングと判定している。
【発明の効果】
【0022】
上述する構成を具備する本発明によれば、車両の状態が所定条件を満たした場合のみを不必要なアイドリングと判定する機能を有する制御装置(演算装置10)を有しているので、当該所定条件にPTO使用時を除く様に構成すれば(請求項2)、PTOを使用している際に車両速度がゼロで、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であっても、必要なアイドリングと判断される。したがって、不必要なアイドリング時間に加算されてしまうことはない。
【0023】
同様に、当該所定条件に車内温度が所定範囲(例えば、15℃以下、又は30℃以上)にある場合を除く様に設定すれば(請求項4)、霜取り時に車両速度がゼロで、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であっても、必要なアイドリングと判断される。
あるいは、炎天下に駐車した車両を発進させる前の冷房時におけるアイドリングの様に、車両運転に必要不可欠な空調を行なう際のアイドリングは必要なアイドリングとして認められ、「不必要なアイドリング」に加算されてしまうことがない。
この様に、本発明によれば、車両に必要なアイドリングと不必要なアイドリングとが正確に判別されるので、不必要なアイドリングに基づいて行なわれる運行管理の信頼性が向上する。
【0024】
車両運行管理上、燃費低減は至上命題で、経費管理上の最重要課題となっており、こまめなアイドリングストップは燃費低減効果も大きい。
上述した様に、本発明によれば、より具体的にアイドリングの内容が把握でき、運転に必要なアイドリングが、運転に不必要なアイドリングと判断されてしまうことが回避でき、アイドリングに対して正しい評価をすることが出来る。そして、アイドリングに対して正しい評価がされることにより、こまめなアイドリングストップの励行も推進し易く、アイドリングストップの励行により、少なからぬ経費節減効果も見込まれる。
また、車内温度が所定範囲の場合には、アイドリング時の冷・暖房を認める様に構成することが可能であるため、運転時の環境を改善して、安全運転を確保できるとともに、事故等による経済的損失を回避できることが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、図示の実施形態に係るアイドリング状態判定システムは、全体を符号100で示しており、車両の状態を検出する検出装置1〜5、記憶装置であるデータベース6、表示手段であるモニタ7、制御手段である演算装置10を備えている。
【0026】
車両の状態を検出する検出装置1〜5は、車速を計測する車速センサ1、エンジン回転数を計測するエンジン回転数センサ2、パワー・テークオフ(PTO)が稼動しているか否かを検知するPTO使用センサ(PTOスイッチ)3、フットブレーキが作動しているか否かを検知するブレーキ使用センサ(ブレーキスイッチ)4、室内温度を計測する温度センサ5である。
【0027】
上記各種センサ1〜5は、入力信号ラインLiによってコントロールユニット10と接続されている。
モニタ7は制御信号ラインLoによってコントロールユニット10と接続され、データベース6は信号ラインLによってコントロールユニット10と接続されている。
【0028】
演算装置10は、各種センサ1〜5の情報により、所定条件を満たし、不必要なアイドリングと判定された場合におけるアイドリング時間の合計時間を積算し、その積算値がしきい値を越えた場合に警告を発する機能を有している。
そのしきい値とは、警告アイドリング時間、すなわち、それ以上アイドリング時間を増加することは不適当であり、警告を与えるべきと判定される時間である。具体的な数値については、運行基準に則って定められるべきである。
【0029】
図示の実施形態のアイドリング状態判定システム100においては、不必要なアイドリングと判定するための「所定条件」は、
車両速度がゼロであること、
エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であること、
PTOが使用されていないこと、
フットブレーキによる制動がされていないこと、
車内温度が許可温度範囲(冷暖房用アイドリング許可範囲:例えば15℃以下または30℃以上)を外れていること、
である。
図示の実施形態では、これ等5つの全ての条件を充足する場合に、「不必要なアイドリング」であると判断する。
【0030】
図2は、図示の実施形態に係るアイドリング状態判定システム100を用いて、必要なアイドリングであるか、不必要なアイドリングであるかを判定する制御を示している。
以下、主として図2に基づいて、図1をも参照して、アイドリング状態判定システム100におけるアイドリングの判定制御について説明する。
【0031】
図2のステップS1において、車速センサ1によって車速を検出し、車両が停車中であるか否かを判断する(ステップS2)。車両が停車中であれば(ステップS2がYES)、ステップS3に進む。
車両が走行中であれば(ステップS2がNO)アイドリングは行なわれていないので、ステップS1まで戻る。
【0032】
ステップS3では、図示しないタイマーにより時間の計測を開始し、エンジン回転センサ2によってエンジン回転数を検出し、エンジン回転数が所定範囲以内(例えば、通常のアイドリング回転数500rpm以下)であるか否かを判定する。
エンジン回転数が指定範囲内(500rpm以下)であれば(ステップS4がYES)、ステップS5に進む。
一方、エンジン回転数が指定範囲内(500rpm以下)になければ(ステップS4がNO)、エンジンは停止状態であるか(エンジン回転数が0rpm)、車両は走行中か或いはPTOによる作業中である(エンジン回転数が500rpmより高回転)と判定し、アイドリング時間として計測しないためにステップS3で計測を開始したタイマーをリセットする(ステップS16)。そして、ステップS1に戻る。
【0033】
ステップS5ではブレーキスイッチ4に通電し、フットブレーキ(主ブレーキ)が非作動であるか否かを判定する(ステップS6)。
フットブレーキが非作動状態であれば(ステップS6がYES)、ステップS7に進む。
一方、信号待ち等においてフットブレーキが作動しているのであれば(ステップS6がNO)、係るフットブレーキ操作は車両運転に必要不可欠であり、その間のアイドリングは不必要なアイドリングには該当しないと判断して、タイマーをリセットする(ステップS16)。そして、ステップS1まで戻る。
【0034】
ステップS7では、温度センサ5によって室内温度を計測し、室内温度が適温(例えば、15℃以上、30℃以下)か否かを判断する(ステップS8)。室内温度が適温であれば(使用許可温度である:ステップS8がYES)、ステップS9に進む。
一方、室内温度が適温ではない場合には(使用許可温度を外れている:ステップS8がNO)、運転室内の温度を適温にするべく、アイドリング状態でヒータ或いはエアコンを作動することが必要であるので、その様な状態におけるアイドリングは、必要な空調のためであると判断して、不必要なアイドリング時間に加算されることを防止するためにタイマーをリセットする(ステップS16)。そして、ステップS1まで戻る。
【0035】
ステップS9では、PTOスイッチ3に通電し、PTOが非作動中か否かを判定する(ステップS10)。
PTOが作動していなければ(非作動中であれば:ステップS10がYES)、ステップS11に進む。
一方、PTOによって作業中であれば(ステップS10がNO)、PTO作業を行なう上で、アイドリング運転を行なうことが必須であるため、その様なアイドリング運転は必要なアイドリングと判断される。そして、係る必要なアイドリングが「不必要なアイドリング」に加算されないように、タイマーをリセットする(ステップS16)。そして、ステップS1まで戻る。
【0036】
ステップS11に進んだ段階では、上述した「不必要なアイドリングであると判断するための所定条件」(車両速度がゼロであること、エンジン回転数がしきい値以下であること、PTOが使用されていないこと、フットブレーキによる制動がされていないこと、車内温度が許可温度範囲を外れていること)を全て充足している。
ステップS11では、ステップS3で計測を開始した時間を、「不必要なアイドリング時間」に加算する。
そして、ステップS12において、「不必要なアイドリング時間」が所定時間(例えば、3分)が経過したか否かを判断する。
「不必要なアイドリング時間」が所定時間を経過したならば(ステップS12がYES)、「不必要なアイドリング時間」を記録する(ステップS13)。
「不必要なアイドリング時間」が所定時間を経過していなければ(ステップS12がNO)、ステップS1に戻る。
【0037】
ステップS13で「不必要なアイドリング時間」を記録したならば、ステップS14において、警告アイドリング時間(例えば、20分)を越えたか否かが判断される。
警告アイドリング時間を超過したなら(ステップS14がYES)、ステップS15に進む。ステップS15では、モニタ12による表示、図示を省略した音声ガイダンス、警告音による警報の内の何れか一つ以上の手段によってドライバーに警告を与えると共に、警告時間をリセットする。そして、ステップS1まで戻り、再びステップS1以降を繰り返す。
ステップS13で記録された「不必要なアイドリング時間」が、警告アイドリング時間を超過していなければ(ステップS14がNO)、ステップS1まで戻る。
【0038】
上述した構成のアイドリング状態判定システム100によれば、車両の状態が所定条件を満たした場合のみを不必要なアイドリングと判定する機能を有する演算装置10を有しているので、当該所定条件に車両の走行やPTO使用時等に必要なアイドリングを除く様に構成することによって、PTOを使用している際の様に、車両速度がゼロで、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm)以下であっても、必要なアイドリングと判断される。したがって、PTO作業が不必要なアイドリング時間に加算されてしまうことはない。
【0039】
同様に、当該所定条件に車内温度が所定範囲(例えば、15℃以下、又は30℃以上)にある場合を除く様に設定すれば、霜取り時の暖機運転や、炎天下に駐車した際に冷房を行なった場合には、運転室を劣悪な環境としないための空調運転に必要なアイドリングと判断される。そのため、車両速度がゼロで、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であっても、これらのアイドリングが不必要なアイドリング時間に加算されてしまうことはない。
【0040】
この様に、図示の実施形態によれば、車両に必要なアイドリングと不必要なアイドリングとが正確に判別されるので、不必要なアイドリングに基づいて行なわれる運行管理の信頼性が向上する。
運行管理の信頼性が向上すれば、こまめなアイドリングストップの励行も推進し易くなり、経費節減効果も見込まれる。
【0041】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記載ではなく、例えば、図2の制御フローにおいて、ステップS5、S6と、ステップS7、S8と、ステップS9、S10との順序は、何れが先であっても構わない。
ここで、不必要なアイドリングの条件として、(1)フットブレーキが非作動、(2)室内温度が適温、(3)PTOが非作動の何れかの条件があれば良い。ここで、係る三つの条件の優先順位は、例えば(3)→(1)→(2)の順であるのが好ましい。
【0042】
本発明の実施に際して、不必要なアイドリングと判定するための「所定条件」を、
車両速度がゼロであること、
エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であること、
PTOが使用されていないこと、
の3つの条件のみにすることが出来る。
係る3つの条件によって、不必要なアイドリングであるか否かを判定する場合においては、図1で示すセンサ1〜5の全てが必要な訳ではない。上記3つの条件を判定するのに必要な検出装置は、車車速センサ1と、エンジン回転センサ2と、PTOスイッチ3である。
【0043】
その場合、図2における制御では、車両の状態を検出する工程として、車速センサ1により車両速度を計測し(ステップS1)、エンジン回転センサ2によりエンジン回転数を計測し(ステップS3)、PTOスイッチ3でPTOを使用しているか否かを検出(ステップS9)することのみが行なわれる。
そして、車両速度がゼロであり(ステップS2がYES)、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であり(ステップS4がYES)、PTOが使用されていない(ステップS10がYES)の場合に、不必要なアイドリングと判定する。
【0044】
また、本発明の実施において、不必要なアイドリングと判定するための「所定条件」を、
車両速度がゼロであること、
エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であること、
PTOが使用されていないこと、
フットブレーキによる制動がされていないこと、
の4つの条件を選択しても良い。係る4つの条件により不必要なアイドリングと判定するのであれば、上記検出装置としては、車車速センサ1と、エンジン回転センサ2と、PTOスイッチ3と、ブレーキスイッチ4を選択すれば良い。
【0045】
その場合における図2の制御では、車両の状態を検出する工程として、車速センサ1により車両速度を計測し(ステップS1)、エンジン回転センサ2によりエンジン回転数を計測し(ステップS3)、PTOスイッチ3でPTOを使用しているか否かを検出し(ステップS9)、ブレーキスイッチ4によりフットブレーキで制動されているか否かを検出(ステップS5)することのみが行なわれる。
そして、車両速度がゼロであり(ステップS2がYES)、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であり(ステップS4がYES)、PTOが使用されておらず(ステップS10がYES)、フットブレーキによる制動がされていない(ステップS6がYES)場合のみが不必要なアイドリングと判定される。
【0046】
或いは、不必要なアイドリングと判定するための「所定条件」を、
車両速度がゼロであること、
エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であること、
PTOが使用されていないこと、
車内温度が許可温度範囲(冷暖房用アイドリング許可範囲:例えば15℃以下または30℃以上)を外れていること、
の4つの条件としても良い。
係る4条件を選択するのであれば、上記検出装置としては、車車速センサ1と、エンジン回転センサ2と、PTOスイッチ3に加えて、室内温度センサ5を選択すれば良い。
【0047】
この場合、図2の制御は、車両の状態を検出する工程としては、車速センサ1により車両速度を計測し(ステップS1)、エンジン回転センサ2によりエンジン回転数を計測し(ステップS3)、PTOスイッチ3でPTOを使用しているか否かを検出し(ステップS9)、温度センサ5により車内温度を計測する(ステップS7)ことのみが行なわれる。
そして、車両速度がゼロであり(ステップS2がYES)、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であり(ステップS4がYES)、PTOが使用されておらず(ステップS10がYES)、車内温度が許可温度範囲(冷暖房用アイドリング許可範囲:例えば15℃以下または30℃以上)を外れている場合(ステップS8がYES)にのみ、不必要なアイドリングと判定している。
【0048】
さらに、図示の実施形態において、不必要なアイドリングと判定するための所定条件として、
車両速度がゼロであること、
エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であること、
フットブレーキが使用されていないこと、
の3つの条件を選択することも可能である。
この場合には、不必要なアイドリングと判定するための「所定条件」を検出するための検出装置としては、「車速センサ1」、「エンジン回転センサ2」、「ブレーキスイッチ4」が選択される。
【0049】
この場合における図2の制御では、車両の状態を検出する工程として、車速センサ1により車両速度を計測し(ステップS1)、エンジン回転センサ2によりエンジン回転数を計測し(ステップS3)、ブレーキスイッチ4によりフットブレーキで制動されているか否かを検出する(ステップS5)ことのみが行なわれる。
そして、車両速度がゼロであり(ステップS2がYES)、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であり(ステップS4がYES)、フットブレーキが使用されていない(ステップS6がYES)場合に、不必要なアイドリングと判定している。
【0050】
そして、本発明の実施形態において、不必要なアイドリングと判定するための「所定条件」として、
車両速度がゼロであること、
エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であること、
フットブレーキが使用されていないこと、
所定条件に、車内温度が許可温度範囲(冷暖房用アイドリング許可範囲:例えば15℃以下または30℃以上)を外れていること、
の4つの条件を選択しても良い。
その場合には、不必要なアイドリングと判定するための「所定条件」を検出するための検出装置としては、「車速センサ1」、「エンジン回転センサ2」、「ブレーキスイッチ4」、「車内温度センサ5」が選択される。
【0051】
この場合における図2の制御は、前記車両の状態を検出する工程としては、車速センサ1により車両速度を計測し(ステップS1)、エンジン回転センサ2によりエンジン回転数を計測し(ステップS3)、ブレーキスイッチ4によりフットブレーキで制動されているか否かを検出し(ステップS5)、温度センサ5により車内温度を計測(ステップS7)することのみが行なわれる。
そして、車両速度がゼロであり(ステップS2がYES)、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であり(ステップS4がYES)、フットブレーキが使用されておらず(ステップS6がYES)、車内温度が許可温度範囲(冷暖房用アイドリング許可範囲:例えば15℃以下または30℃以上)を外れている(ステップS8がYES)場合にのみ、不必要なアイドリングと判定している。
【0052】
それに加えて、本発明の実施形態で、不必要なアイドリングと判定するための前記所定条件として、
車両速度がゼロであること、
エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であること、
車内温度が許可温度範囲(冷暖房用アイドリング許可範囲:例えば15℃以下または30℃以上)を外れていること、
の3つの条件を選択しても良い。
この場合には、不必要なアイドリングと判定するための「所定条件」を検出するための検出装置として、「車速センサ1」、「エンジン回転センサ2」、「車内温度を計測する温度センサ5」を選択すれば良い。
【0053】
係る場合における図2の制御は、車両の状態を検出する工程は、車速センサ1により車両速度を計測し(ステップS1)、エンジン回転センサ2によりエンジン回転数を計測し(ステップS3)、温度センサ5により車内温度を計測する(ステップS7)ことのみである。
そして、車両速度がゼロであり(ステップS2がYES)、エンジン回転数がしきい値(例えば500rpm:設定値)以下であり(ステップS4がYES)、車内温度が許可温度範囲(冷暖房用アイドリング許可範囲:例えば15℃以下または30℃以上)を外れている(ステップS8がYES)場合のみ、不必要なアイドリングと判定している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態のブロック図。
【図2】本発明の実施形態に係るアイドリング判定制御のフローチャート。
【符号の説明】
【0055】
1・・・車両の状態を検出する検出装置/車速センサ
2・・・車両の状態を検出する検出装置/エンジン回転センサ
3・・・車両の状態を検出する検出装置/PTOスイッチ
4・・・車両の状態を検出する検出装置/ブレーキスイッチ
5・・・車両の状態を検出する検出装置/温度センサ
6・・・記憶手段/データベース
7・・・表示装置/モニタ
10・・・制御装置/演算装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の状態を検出する検出装置と、車両の状態が所定条件を満たした場合のみを不必要なアイドリングと判定する機能を有する制御装置とを有しており、該制御装置は、不必要なアイドリングと判定された場合におけるアイドリング時間の合計時間を計算して、しきい値を越えた場合に警告を発する機能を有していることを特徴とするアイドリング状態判定システム。
【請求項2】
前記検出装置は、車両速度を計測する車速センサと、エンジン回転数を計測するエンジン回転センサと、パワーテイクオフを使用しているか否かを検出するパワーテイクオフ使用センサであり、前記所定条件は、車両速度がゼロであり、エンジン回転数がしきい値以下であり、且つ、パワーテイクオフが使用されていないことである請求項1のアイドリング状態判定システム。
【請求項3】
前記検出装置として、フットブレーキが使用されているか否かを検出するブレーキ使用センサを含んでおり、前記所定条件として、フットブレーキが使用されていないことが含まれる請求項2のアイドリング状態判定システム。
【請求項4】
前記検出装置として、車内温度を計測する温度センサを含んでおり、前記所定条件として、車内温度が許可温度範囲を外れていることが含まれる請求項2のアイドリング状態判定システム。
【請求項5】
前記検出装置として、フットブレーキが使用されているか否かを検出するブレーキ使用センサと、車内温度を計測する温度センサとを含んでおり、前記所定条件として、フットブレーキが使用されていないこと及び車内温度が許可温度範囲を外れていることが含まれる請求項2のアイドリング状態判定システム。
【請求項6】
前記検出装置は、車両速度を計測する車速センサと、エンジン回転数を計測するエンジン回転センサと、フットブレーキが使用されているか否かを検出するブレーキ使用センサであり、前記所定条件は、車両速度がゼロであり、エンジン回転数がしきい値以下であり、且つ、フットブレーキが使用されていないことである請求項1のアイドリング状態判定システム。
【請求項7】
前記検出装置として、車内温度を計測する温度センサを含んでおり、前記所定条件として、車内温度が許可温度範囲を外れていることが含まれる請求項6のアイドリング状態判定システム。
【請求項8】
前記検出装置は、車両速度を計測する車速センサと、エンジン回転数を計測するエンジン回転センサと、車内温度を計測する温度センサであり、前記所定条件は、車両速度がゼロであり、エンジン回転数がしきい値以下であり、且つ、車内温度が許可温度範囲を外れていることである請求項1のアイドリング状態判定システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−61353(P2010−61353A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225852(P2008−225852)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】