説明

アイドル回転数制御装置

【課題】アイドル回転数制御装置において、そのCPUに低電圧瞬断リセットが発生しても余分な開弁動作を行わないものとして、的確な吸入空気量を確保できるようにする。
【解決手段】吸気通路のアイドルスピードコントロールバルブに付設したステップモータに駆動信号を出力してアイドルスピードコントロールバルブの開閉制御を行うCPU内蔵の電子制御ユニットであって、イグニッションスイッチがOFFからONになることでアイドルスピードコントロールバルブをエンジン始動時用の所定開度まで開弁動作させるアイドル回転数制御装置において、イグニッションスイッチのOFF動作によるリセットとCPU低電圧瞬断リセットとが判別可能とされており、CPU低電圧瞬断リセットの場合にはエンジン始動時用の開弁動作を行わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイドル回転数制御装置に関し、殊に、エンジンの吸気通路に配置したアイドルスピードコントロールバルブをステップモータの駆動操作により開閉制御して、適切なアイドリング性能を確保するためのアイドル回転数制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのアイドル回転数制御においては、例えば特開平10−103109号公報に記載されているように、吸気通路のスロットルバルブを迂回するバイパス通路の途中に設けたアイドルスピードコントロールバルブ(ISCV)の開度を、アイドル回転数制御装置がステップモータを駆動操作することによりスロットルバルブとは別に吸入空気量をコントロールして、的確なアイドルスピードを実現することが一般的に行われている。
【0003】
このようなエンジン制御を行うCPUを内蔵した電子制御ユニットがステップモータを駆動操作する制御システムおいては、イグニッションスイッチがOFFからONになった際に、ステップモータの開弁位置をエンジン始動時に必要とされる吸入空気量を供給可能な開弁位置に駆動させるのが通常である。
【0004】
しかし、エンジンの始動時にバッテリ電圧が低下する等してアイドル回転数制御装置のCPUに低電圧瞬断リセットが発生した場合には、イグニッションスイッチがOFFからONに変化したものとアイドル回転数制御装置が判断してしまい、ステップモータを操作してリセットが発生する以前のアイドルスピード開度からさらに開弁動作を行うことになる。
【0005】
このように開弁動作を余分に行った場合には、本来必要な吸入空気量を供給するアイドルスピードコントロールバルブの開弁位置よりも大きく開弁した状態になるため、エンジンの始動性に悪影響を及ぼす結果となってしまう。
【0006】
また、エンジン始動時以外の場合でも、ステップモータによる開弁位置はイグニッションスイッチのOFF時にアイドル回転数制御装置がメモリバックアップにより記憶した開弁位置を基準としてステップモータを駆動操作するところ、前述のような低電圧瞬断リセットが発生した場合には、アイドル回転数制御装置が認識している開弁位置はメモリバックアップで記憶した開弁位置になる。
【0007】
ところが、ステップモータによる実際の開弁位置は、低電圧瞬断リセットにより前述の開弁動作を行った開弁位置となっているため、アイドル回転数制御装置はステップモータによる実開弁位置とは異なった認識をすることになり、エンジン始動後でもステップモータによる実開弁位置とアイドル回転数制御装置の認識している開弁位置との間で差が生じてしまい、アイドリング性能に悪影響を及ぼすことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−103109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、アイドル回転数制御装置において、CPUに低電圧瞬断リセットが発生しても余分な開弁動作を行わないものとして、的確なアイドル性能を確保できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するためになされた本発明は、アイドルスピードコントロールバルブに付設したステップモータに駆動信号を出力してアイドルスピードコントロールバルブの開閉制御を行うCPUを内蔵した電子制御ユニットであって、イグニッションスイッチがOFFからONになることでアイドルスピードコントロールバルブをエンジン始動時用の所定開度まで開弁動作させるアイドル回転数制御装置において、イグニッションスイッチのOFF動作によるリセットとCPU低電圧瞬断リセットとが判別可能とされており、CPU低電圧瞬断リセットの場合にはエンジン始動時用の開弁動作を行わないこととした。
【0011】
このように、アイドル回転数制御装置がイグニッションスイッチのOFF動作によるリセットとバッテリ電圧低下等によるCPU低電圧瞬断リセットとを判別可能なものとして、CPU低電圧瞬断リセットの場合にはエンジン始動時用の開弁動作を行わないことにしたことにより、リセット時に余分な開弁動作が加わらないものとなって、アイドル回転数制御装置が認識する開弁位置とステップモータによる実際の開弁位置との間で差が生じない。
【0012】
また、このアイドル回転数制御装置において、イグニッションスイッチのOFF動作によるリセットとCPU低電圧瞬断リセットとの判別は、CPUのRAMにおけるリセット前後のデータの変化状況に応じて行うこととした場合には比較的簡易に判別を行えるようになる。
【0013】
さらに、この場合、その判別はRAMの特定のエリアに所定のデータを保存させておきリセット後にそのデータが保存されている場合はCPU低電圧瞬断リセットであると判定し、リセット後にそのデータが保存されていない場合にはイグニッションスイッチOFF動作によるリセットであると判定することによるものとすれば、比較的簡易な手順でCPUの処理負担を過大にすることなく、確実な判別が行われる。
【発明の効果】
【0014】
イグニッションスイッチのOFF動作によるリセットと電源電圧低下等によるCPU低電圧瞬断リセットとを判別可能として、CPU低電圧瞬断リセットの場合にエンジン始動時用の開弁動作を行わないものとした本発明によると、そのCPUに低電圧瞬断リセットが発生しても余分な開弁動作を行わないものとして、的確な吸入空気量を確保することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における実施の形態であるアイドル回転数制御装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図2】本発明における実施の形態であるアイドル回転数制御装置の電源電圧とそれによる実際のアイドルスピード開度を示すグラフである。
【図3】従来例によるアイドル回転数制御装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図4】従来例によるアイドル回転数制御装置の電源電圧とそれによる実際のアイドルスピード開度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。本実施の形態のアイドル回転数制御装置は、CPUを内蔵するとともに記憶手段にアイドル回転数制御用プログラムを有してエンジンの燃料供給システムに配設される電子制御ユニット(ECU)であって、吸気通路(スロットルバルブのバイパス路)に配置されたアイドルスピードコントロールバルブをステップモータに駆動信号を出力して操作することにより開閉制御して、適切なアイドル性能を確保するためのものである。また、本実施の形態のアイドル回転数制御装置は、アイドル回転数制御機能の他に、燃料噴射制御機能をはじめとする他の制御機能を同時に有したものであっても良いことは言うまでもない。
【0017】
図1のフローチャートは、本実施の形態であるアイドル回転数制御装置の動作手順を示すものであり、図2のグラフはそのときのアイドル回転数制御装置の電源電圧とステップモータの実際の開弁位置(=実アイドルスピードバルブ開度)を示している。これに対し、図3のフローチャートは従来例によるアイドル回転数制御装置の動作手順を示しており、図4のグラフはそのときのアイドル回転数制御装置の電源電圧とステップモータの実際の開弁位置を示している。
【0018】
従来例においては、図3のフローチャートに示すようにイグニッションスイッチのOFF動作によるリセットとCPU低電圧瞬断リセットのいずれであっても、イニシャル動作として始動時用のステップモータの駆動操作を行い、アイドルスピードコントロールバルブを開弁動作させるようになっていた。
【0019】
しかしこの場合、図4の上段のグラフに示すように、イグニッションのON動作後にアイドル回転数制御装置の電源電圧が低下してCPU低電圧瞬断リセットが発生したような場合には、図4の下段のグラフに示すようにイグニッションスイッチON動作に対応したイニシャル動作である開弁動作の後に再度同じ開弁動作が加わるため、アイドル回転数制御装置が認識しているステップモータの開弁位置と実際の開弁位置との間で差が生じる結果となっていた。
【0020】
そこで、本実施の形態のアイドル回転数制御装置おいては、通常のイグニッションスイッチOFF動作によるリセットとCPU低電圧瞬断リセットとを判別する機能を持つものとし、CPU低電圧瞬断リセットの発生時には始動時用の開弁動作を行わないようにした。
【0021】
図1のフローチャートを参照して、リセットがあった場合はCPU低電圧瞬断リセットであるか否かを判別する(A1)。そして、CPU低電圧リセットである場合はステップモータによるイニシャル動作を行わず、CPU低電圧リセットではない場合には、イグニッションスイッチOFFによるリセットであるとして、ステップモータによるイニシャル動作を行う(A2)。
【0022】
この判別の方法としては、アイドル回転数制御装置に内蔵したCPUのRAMのリセット前後の状態を基にCPU低電圧瞬断リセットであるか否かを判断すればよい。即ち、RAMの特定エリアに所定のデータを保存させておき、リセット後にそのデータが保持されていた場合はCPU低電圧リセットであると判定し、通常のイグニッションスイッチOFF動作によるリセットの場合は特定エリアのデータは保持されず不定の値になることから、この場合はイグニッションスイッチOFFによるものと判定する。
【0023】
アイドル回転数制御装置がリセットの度にこのような判別を行ない、ステップモータによるイニシャル動作を行うか否かを判断することにより、図2の下段のグラフに示すように、CPU低電圧瞬断リセットの場合には余分なイニシャル開弁動作を行わなくなるため、ステップモータによる実際の開弁位置とアイドル回転数制御装置が認識する開弁位置との間に差が生じない。
【0024】
従って、バッテリ電圧の低下等に伴ってCPU低電圧瞬断リセットが生じた場合でも、アイドル回転数制御装置におけるアイドルスピードコントロールバルブの開閉動作が正確に実施されるものとなって的確な吸入空気量が確保されるものとなり、エンジン運転性状態が良好に維持される。
【0025】
以上、述べたように、アイドル回転数制御装置において、そのCPUに低電圧瞬断リセットが発生した場合に、本発明により、余分な開弁動作を行うことがなくなって的確な吸入空気量を確保できるものとなった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイドルスピードコントロールバルブに付設したステップモータに駆動信号を出力して前記アイドルスピードコントロールバルブの開閉制御を行うCPU内蔵の電子制御ユニットであって、イグニッションスイッチがOFFからONになることで前記アイドルスピードコントロールバルブをエンジン始動時用の所定開度まで開弁動作させるアイドル回転数制御装置において、前記イグニッションスイッチのOFF動作によるリセットとCPU低電圧瞬断リセットとが判別可能であって、前記CPU低電圧瞬断リセットの場合には前記開弁動作を行わないことを特徴とするアイドル回転数制御装置。
【請求項2】
前記イグニッションスイッチのOFF動作によるリセットと前記CPU低電圧瞬断リセットとの判別を、前記CPUのRAMにおけるリセット前後のデータの変化状況に応じて行うことを特徴とする請求項1に記載したアイドル回転数制御装置。
【請求項3】
前記判別は、前記RAMの特定のエリアに所定のデータを保存させておきリセット後に前記データが保存されている場合は前記CPU低電圧瞬断リセットであると判定し、リセット後に前記データが保存されていない場合には前記イグニッションスイッチのOFF動作によるリセットであると判定することを特徴とする請求項2に記載したアイドル回転数制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−223030(P2010−223030A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69441(P2009−69441)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)
【Fターム(参考)】