説明

アウトリガーを備えた走行可能な作業機

本発明は、シャーシ(10)と2つの前部アウトリガー(20)および2つの後部アウトリガー(22)とを備えた走行可能な作業機に関わる。これらアウトリガーは、当該アウトリガーと前記シャーシとの間の基本角度(α)を変化させることでシャーシ付近の走行位置から支持位置へ回動可能であり、および/または、前記アウトリガーの長さを変化させることでその支持側端部とその自由端との間で伸縮可能である。シャーシ(10)に対する支持脚の位置(X/Y)を特定できるようにするため、動作信号または距離信号を送信し受信するために前記アウトリガーにそれぞれ3つの送受信ユニットが付設されている。さらに、送受信ユニットの互いに対で関連付けられる送受信信号に応答するマイクロプロセッサ支援型評価ユニットが設けられ、該評価ユニットは、シャーシ固定の座標系(x/y)での前記支持脚の位置を特定するためのソフトウェアルーチンを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャーシと2つの前部アウトリガーおよび2つの後部アウトリガーとを備え、これらアウトリガーが、支持側端部でもってシャーシ固定の回り継手または滑り継手で支持され、且つその自由端に伸縮可能で地面で支持可能な支持脚を担持するとともに、当該アウトリガーと前記シャーシとの間の基本角度を変化させることでシャーシ付近の走行位置から支持位置へ回動可能であり、および/または、前記アウトリガーの長さを変化させることでその支持側端部とその自由端との間で伸縮可能である走行可能な作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の走行可能な作業機は、たとえばオートコンクリートポンプである。オートコンクリートポンプは、搬送管用の担持体として用いられるコンクリート分配器を有している。コンクリート分配器は、その第1のマストアームでもって、回転駆動部の制御によって車両シャーシの高さ方向軸線のまわりに回転可能な回転ヘッドに枢着され、コンクリート分配器のマストアームは付設の屈曲駆動部の制御によって回転ヘッドに対し且つ隣接しているそれぞれのマストアームに対し水平屈曲軸線のまわりに回動可能である。他の適用例としては、オートクレーンまたは走行可能な伸縮梯子が考えられる。
【0003】
支持脚でもって地面上に支持されるアウトリガーは、シャーシを持ち上げたときに支持四角形を画成し、支持四角形は隣接し合っている隅角部の間に延在している4つの傾動エッジを備え、システムの重心はこれらの傾動エッジを外側へ越えてはならない。オートコンクリートポンプの場合、アウトリガーが完全に走出して支持されると、通常は、完全に開いて水平方向に配向されたコンクリート分配マストが傾動の危険なくその回転ヘッドのまわりに360゜回転することが可能である。さらに、特に建築現場が狭い場合には、アウトリガーがシャーシの片側でのみ走出して支持され、他方他の側ではその内側回動位置において地面上で支持されることが知られている。このようなケースでは、走出したアウトリガーによって支持される側でコンクリート分配マストの作業範囲が制限される。
【0004】
さらに、特許文献1から知られているオートコンクリートポンプでは、各アウトリガーは、シャーシに近い支持位置と、シャーシから遠い少なくとも1つの支持位置とを有しており、これらの支持位置は自在に選定可能であるので、4つのアウトリガーに対する所定の支持構成を形成することができる。どの支持構成においても、機械の重心が誤作動の危険なしに支持四角形の内側で移動するような、すなわち傾動エッジの内側で移動するようなマスト運動のみが可能である。支持脚の押し出し量が可変である場合は、支持脚の位置を検知することが重要である。これをしなければ、支持の安定性に関し予想することはできない。この公知の支持装置の場合、安全上の理由から、支持脚は特定の不連続位置でしか位置決めすることができない。これらの位置はコンクリートポンプ操縦者が作業場所のスペースの状況に応じて選定する。この場合の欠点は、作業場所でスペース上は可能な、作業装置の中間位置をとることができないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006031257A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、冒頭で述べた種類の公知の作業機を改善し、支持位置の自動検出が可能であり、よって許容荷重モーメントの自動検出が可能であり、その結果押し出しの際に安定性を損なうことなく支持脚の位置決めの可変性がより高い作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するため、請求項1に記載の構成を提案する。本発明の有利な構成および他の構成は従属項から明らかである。
【0008】
本発明による解決手段は、とりわけ、支持脚の位置の自動検出を測定技術で可能であり、その結果どのような支持構成に対しても、作業アウトリガーの運動の際にシステムの重心がサイドエッジを越えてはならないような支持四角形を検出できるという思想を出発点とするものである。これを達成するため、本発明によれば、動作信号または距離信号を送信し受信するためにアウトリガーにそれぞれ3つの送受信ユニットが付設され、その送信信号が隣接している送受信ユニットの受信器へ直線距離で相互に伝送可能であるように、第1の送受信ユニットがシャーシ固定の回り継手または滑り継手のすぐ近くのシャーシ固定の支持側参照点に配置され、第2の送受信ユニットが支持側参照点から所定の間隔でシャーシに固定して配置される参照点に配置され、第3の送受信ユニットがアウトリガー自由端付近で該アウトリガーに固定される参照点にそれぞれ配置され、送受信ユニットの互いに対で関連付けられる送受信信号に応答するマイクロプロセッサ支援型評価ユニットが設けられ、該評価ユニットが、アウトリガーに固定される参照点の座標を特定するための、または、シャーシ固定の座標系での支持脚の位置を特定するためのソフトウェアルーチンを有していることが提案される。本発明による参照点は三角形を張り、この三角形はそこに配置されている送受信ユニットを介して三角測量方式のようにして測定を行って、特定の押し出しで選定された支持脚位置が特定される。これらの参照点によって決定される三角形の隅角部は、支障のない測定が可能であるようにするため、互いに自在に対向してなければならない。
【0009】
本発明の有利な構成によれば、送受信ユニットは超音波送信器と超音波受信器とを有している。超音波送信器と超音波受信器とは参照点の間で対を成して、両方向に使用可能な、よって冗長性の距離測定システムを形成する。この場合、距離はその都度動作時間を測定することによって特定される。シャーシに固定の第1および第2の参照点の間の既知の距離は、アウトリガーに固定の参照点までの2つの可変な距離を検出するための参照値として使用できる。これと同時に、音速の温度依存性を考慮する温度補正も可能である。支障のない測定は、互いに隣接し合っている送受信ユニットが互いにオーバーラップする作用範囲を有していることによって可能になる。各アウトリガーの3つの異なる送受信ユニットの送信信号と受信信号とを互いに正確に関連付けることができるようにするため、送受信ユニットの送信信号が該送受信ユニットの受信器によって識別可能なコード部を有しているのが有利である。
【0010】
基本的には、送受信ユニットに送光器または受光器を備えさせ、この場合送光器がレーザーとして構成されていることも可能である。送受信ユニットに無線送信器および無線受信器を使用することも同様に可能である。
【0011】
本発明の特に有利な適用例は自動コンクリートポンプである。このため、走行可能な作業機は、有利には、シャーシ固定のアンダーボディに配置され、搬送管用の担持体として用いられ、少なくとも3つのマストアームを有している屈曲マストを有し、その第1のマストアームは、自由端でもって、シャーシの高さ方向軸線のまわりに回転可能な回転ヘッドに枢着され、そしてマストアームは、付設の屈曲駆動部の制御によって回転ヘッドおよび/またはそれぞれに隣接のマストアームに対し水平屈曲軸線のまわりに回動可能である。
【0012】
次に、本発明を図面に図示した実施形態を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1a】アウトリガーを備えたオートコンクリートポンプを走行位置で示した側面図である。
【図1b】アウトリガーを備えた図1aのオートコンクリートポンプを種々の支持位置で示した平面図である。
【図2】位置測定システムを備えた前部アウトリガーの概略説明図である。
【図3】送受信ユニットの作用範囲の概略説明図である。
【図4】三角測量方式によって支持脚の位置(対象)を検出するための図2の実施形態の幾何構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1aおよび図1bに図示したオートコンクリートポンプは、実質的に、2つの前車軸11および3つの後車軸12と運転室13とを備えた多軸のシャーシ10と、前車軸付近の回転装置14で鉛直軸線のまわりに回転可能に支持され、回転装置14から間隔をもってシャーシ10に取り付けられているポンプ装置16を備えたコンクリート分配マスト15と、シャーシ10用の支持構造部18とから構成されている。支持構造部18は、シャーシに固定された担持フレーム19を有するとともに、2つの前部アウトリガー20と2つの後部アウトリガー22とを含んでいる。前部および後部アウトリガーは搬送位置において引き込まれて車両長手軸線24に対し平行に配向され、支持位置では斜め前方または斜め後方へシャーシ10から突出する。
【0015】
前部アウトリガー20はその鉛直方向回動軸線32のまわりに、後部アウトリガー22はその鉛直方向回動軸線34のまわりに走行位置と支持位置との間をそれぞれ突き出しシリンダ36の作用で回動可能である。さらに、すべてのアウトリガー20,22はその自由端に伸縮可能な支持脚26,28を有し、該支持脚によりアウトリガーを、シャーシ10を持ち上げた状態で地面30上で支持可能である。
【0016】
前部アウトリガー20は伸縮アームとして構成されている。前部アウトリガー20はそれぞれ、鉛直方向回動軸線32のまわりでシャーシに対し回動可能な押し出しボックス38と、3つの伸縮セグメント40’,40’’,40’’’から成っている伸縮部分40とを含んでいる。押し出しボックス38と伸縮部分40とを貫通するようにして多段階伸縮可能な液圧シリンダ(図示せず)が延在している。図1bから見てとれるように、アウトリガーは、建築場所での必要スペースに応じて、選択的にシャーシ付近の内側支持またはシャーシから遠い外側支持で支持脚によって地面で支持されて、種々の突き出し構成を形成することができる。本発明の特徴は、内側支持位置と外側支持位置との間のすべての中間位置も可能なことである。後者は測定装置が設けられていることによって可能になる。測定装置を用いると、シャーシ固定の座標系内での支持脚26の位置を自動的に特定することができる。
【0017】
測定システムは、それぞれのアウトリガーにそれぞれ3つの送信・受信ユニットS/E,S/E,S/Eを有し、これら送信・受信ユニットは動作時間信号または距離信号を送受信するために構成されている。この目的のため、有利には、超音波送受信器を使用する。しかしながら、基本的には、光送受信器または無線送受信器を使用してもよい。第1の送受信ユニットS/Eは、シャーシ固定の回り継手32のすぐ近くの軸受側参照点Aに位置するようにシャーシに固定配置されている。第2の送受信ユニットS/Eは、軸受側参照点Aから所定間隔L12/21で配置されているシャーシ固定の参照点Bにあり、第3の送受信ユニットS/Eは、アウトリガー40の自由端近くに位置するようにアウトリガー固定の参照点Cに配置されている。送受信ユニットが設けられている参照点A,B,Cは、図3によれば、その作用範囲W,W,Wが互いにオーバーラップし、その結果その送信信号が他の参照点の受信器へ直線距離でエコーなしで交互に伝送可能であるように配置されている。参照点A,B,Cは、図2、図3、図4によれば三角形を張っており、その辺の長さを、送受信ユニットを用いて超音波信号を送受信することにより両方向において測定することができる。長さの値は、その測定方向に応じてL12とL21、23とL32、L13とL31で示してある。測定は、測定結果の冗長性を確保するため、よってより高い信頼性を確保するために、両方向において実施する。異なる支持脚に測定装置を設ける目的は、シャーシ固定の座標系x/yにおける支持脚位置を検出し、よって対象点Xを検出するためである。図4の幾何学的配置を考慮して、対象点Cにおける座標XとYを次のようにして算出する。
【0018】
三角形の辺a,b,cの長さは図2による距離測定から既知である。求めるのはx/y座標系における座標X/Yである。
【0019】
コサインの法則により、
cosα=(b+c−a)/2bc
α=arccos(b+c−a)/2bc
が適用される。
【0020】
これから、対象点の座標が次のようにして算出される。
=cos(90゜−α)b
=sin(90゜−α)b
【0021】
さらに演算を行うため、三角形の辺の長さの値をスケーリングする。信号スケーリングの場合は、両方向での長さ測定の際に冗長性をも考慮して評価する。その際、車両固定の距離L12/L21を温度補正用の参照距離として使用して、他の2つの長さ測定のための補正ファクタとして使用する。その後、前記の式を用いて支持脚位置の算出を行う。
【0022】
以上を総括すると、以下のようになる。本発明は、シャーシ10と2つの前部アウトリガー20および2つの後部アウトリガー22とを備えた走行可能な作業機に関わる。これらアウトリガーは、当該アウトリガーと前記シャーシとの間の基本角度αを変化させることでシャーシ付近の走行位置から支持位置へ回動可能であり、および/または、前記アウトリガーの長さを変化させることでその支持側端部とその自由端との間で伸縮可能である。シャーシ10に対する支持脚の位置X/Yを特定できるようにするため、動作信号または距離信号を送信し受信するために前記アウトリガーにそれぞれ3つの送受信ユニットS/EないしS/Eが付設されている。さらに、送受信ユニットの互いに対で関連付けられる送受信信号に応答するマイクロプロセッサ支援型評価ユニットが設けられ、該評価ユニットは、シャーシ固定の座標系(x/y)での前記支持脚の位置を特定するためのソフトウェアルーチンを有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシ(10)と2つの前部アウトリガー(20)および2つの後部アウトリガー(22)とを備え、これらアウトリガー(20,22)が、支持側端部でもってシャーシ固定の回り継手(32)または滑り継手(34)で支持され、且つその自由端に伸縮可能で地面で支持可能な支持脚(32)を担持するとともに、当該アウトリガー(20,22)と前記シャーシ(10)との間の基本角度(α)を変化させることでシャーシ付近の走行位置から支持位置へ回動可能であり、および/または、前記アウトリガー(20)の長さを変化させることでその支持側端部とその自由端との間で伸縮可能である走行可能な作業機において、
動作信号または距離信号を送信し受信するために前記アウトリガーにそれぞれ3つの送受信ユニットが付設され、その送信信号が隣接している送受信ユニットの受信器へ直線距離で相互に伝送可能であるように、第1の送受信ユニット(S/E)がシャーシ固定の前記回り継手または滑り継手(32)のすぐ近くのシャーシ固定の支持側参照点(A)に、第2の送受信ユニット(S/E)が前記支持側参照点(A)から所定の間隔(L12,L21)でシャーシに固定して配置される参照点(B)に、第3の送受信ユニット(S/E)が前記アウトリガー自由端付近で該アウトリガーに固定される参照点(C)にそれぞれ配置され、前記送受信ユニットの互いに対で関連付けられる送受信信号に応答するマイクロプロセッサ支援型評価ユニットが設けられ、該評価ユニットが、前記アウトリガーに固定される参照点(C)の座標(X/Y)を特定するための、または、シャーシ固定の座標系(x/y)での前記支持脚(26,28)の位置を特定するためのソフトウェアルーチンを有していることを特徴とする走行可能な作業機。
【請求項2】
前記送受信ユニットが超音波送信器と超音波受信器とを有していることを特徴とする、請求項1に記載の走行可能な作業機。
【請求項3】
前記送受信ユニットが送光器と受光器とを有していることを特徴とする、請求項1に記載の走行可能な作業機。
【請求項4】
前記送光器がレーザーを有していることを特徴とする、請求項3に記載の走行可能な作業機。
【請求項5】
互いに隣接し合っている前記送受信ユニットが互いにオーバーラップする作用範囲を有していることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載の走行可能な作業機。
【請求項6】
前記送受信ユニットの送信信号が該送受信ユニットの前記受信器によって識別可能なコード部を有していることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一つに記載の走行可能な作業機。
【請求項7】
シャーシ固定の支持側の第1の前記参照点(A)とシャーシ固定の第2の前記参照点(B)との間の前記所定の間隔(L12,L21)が、残りの受信測定のための参照距離を形成していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一つに記載の走行可能な作業機。
【請求項8】
シャーシ固定のアンダーボディに配置され、搬送管用の担持体として用いられ、少なくとも3つのマストアームを有している屈曲マストが設けられ、該屈曲マストが、その一端でもって、前記シャーシ(10)の高さ方向軸線のまわりに回転可能な回転ヘッド(14)に枢着されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一つに記載の走行可能な作業機。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−507427(P2012−507427A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533648(P2011−533648)
【出願日】平成21年9月21日(2009.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062168
【国際公開番号】WO2010/060668
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(510312961)プッツマイスター エンジニアリング ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】