説明

アクアポリン4阻害薬

【課題】アクアポリン4(AQP4)を直接阻害する作用を有し、疾患の治療に有用な新規のAQP4阻害薬を提供する。
【解決手段】本発明のアクアポリン4阻害薬は、一般式


(Rは任意の置換基、Arは任意の芳香族基を示す)で表される構造を有する。本発明のアクアポリン4阻害薬を含有する治療薬は、神経疾患、眼科疾患、呼吸器疾患、心臓疾患、全身性脈管系疾患、癌の治療に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクアポリン4阻害薬に関する。
【背景技術】
【0002】
アクアポリン(Aquaporin)及びグリコアクアポリン(glycoaquaporin)よりなるアクアポリンファミリーは1988年、Agreらにより発見された(非特許文献1)。アクアポリンファミリーは、生体の恒常性維持のために、細胞の内外の水の移動を司る水チャンネルであり、通常、膜貫通チャンネルとして存在する。現在までに13種類のアクアポリンのサブタイプが同定されており、アクアポリンファミリーが生体内に広く存在することが知られるようになった(非特許文献2)。アクアポリンファミリーは通常、四量体の構造をとるが、それぞれのサブユニットが各々独立した水チャンネル構造を持つという、他の膜貫通チャンネルにはない特徴を有している。アクアポリンファミリーは、生命の根源である水移動を司るチャンネルであり、かつ生体内に広く分布していることより、このチャンネルの制御を可能にすることは人類に多大な恩恵をもたらすと考えられる。
【0003】
アクアポリン4(AQP4)は、水選択性のきわめて高いアクアポリンファミリーの一つであり、人体においては脳、特に星状膠細胞のエンドフィート(end-feet)に多く存在するとともに、脳以外でも眼球、肺、腎臓、平滑筋に分布し、脳内水分布、脳圧、血液脳関門などの制御を初めとして、眼圧、肺胞内環境維持、尿管での水の再吸収、平滑筋機能に深く関わっていると考えられる(非特許文献3)。以上の機能を考慮した場合、AQP4特異性の高い作用薬、拮抗薬は、脳を初めとしたヒト各種組織の疾患に対し大きな効果を発揮する可能性があると考えられる。
【0004】
近年、AQP4がてんかんの発現に関係していることが報告された(非特許文献4、5)。また、統合失調症の症状発現に関係している可能性も指摘されている(非特許文献6)。これらの疾患に対するAQP4の関与のメカニズムはまだ完全には解明されていないものの、一部の報告では、AQP4とコネキシン43(connexin43)が細胞構造の維持に関与しているという報告も見られる(非特許文献7)。
【0005】
現時点においては、AQP4を直接阻害する化合物はin vitro及びin vivoのどのようなアッセイ系においても発見されていない。第四級アンモニウム化合物がアクアポリン阻害物質であることが開示されているものの(特許文献1)、この中で挙げられている化合物では、テトラエチルアンモニウムクロライドについて唯一AQP4に対する阻害作用が実証されているのみであり、ゆえに第四級アンモニウム化合物のAQP4阻害薬としての薬効は不明瞭である。また、眼科疾患治療における眼内圧を低下させる治療薬としてAQP阻害薬を用いることが開示されているが(特許文献2)、特定のAQPサブタイプに特異的な阻害剤、又はすべてのAQPサブタイプに共通な阻害薬として、どのようにAQP4を阻害する化合物を設計すればよいのか、或いは、どのような種類の化合物がAQP4を阻害するのか、ということついては、全く示されていない。さらに、フロレチン(phloretin)が汎AQP阻害作用を有するという報告が見られる(非特許文献8)が、AQP4特異性の欠如のためにAQP4阻害薬に特化した薬効は期待しがたい。AQPファミリーの多くは重金属塩で阻害されるという報告が見られ(非特許文献9)、その機構はAQPのポア内シスチン残基(an intra-pore cystine residue)に重金属塩が結合することによると考えられる。しかし、AQP4は構造上、ポア内シスチン残基を欠いており、そのために重金属塩により阻害されない(非特許文献10)。AQP1は炭酸脱水酵素阻害薬であるアセタゾールアミドにより阻害されることが報告されている(非特許文献11)。
【特許文献1】国際公開第2005/094806号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/069181号パンフレット
【非特許文献1】Denker, et al., J. Biol. Chem. 1998, 263, 15634-15642
【非特許文献2】Johansson, et al., Biochim. Biophys. Acta, 2000, 1465, 324-342
【非特許文献3】Castle, Drug Disc. Today 2005, 7, 485-493
【非特許文献4】Binder, et al., NeuroReport 2004, 15, 259-262
【非特許文献5】Eid, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 2005, 102, 1193-1198
【非特許文献6】Muratake, et al., Psych. Clin. Neurosci. 2005, 59, 595-598
【非特許文献7】Nicchia, et al. FASEB J., FJ Express 2005, 19, 1674-1676
【非特許文献8】Tsukaguchi, et al. J. Am. Physiol. Soc. 1999, 277, F685-F696
【非特許文献9】Kuwahara, et al. Biochemistry 1997, 36, 13973-13978
【非特許文献10】Jung, et al., Proc. Nat. Acad. Sci., USA 1994, 91, 13052-13056
【非特許文献11】Ma, et al., Acta Pharmacol. Sin. 2004, 25, 90-97
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、AQP4を直接阻害する薬効を有するAQP4阻害薬は知られておらず、このようなAQP4阻害薬が見出されれば、脳を初めとしたヒト各種組織の疾患に対して大きな効果を発揮する治療薬になるものと期待される。
【0007】
したがって、本発明は、AQP4を直接阻害する作用を有し、疾患の治療に有用な新規のAQP4阻害薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1記載のAQP4阻害薬は、一般式
【0009】
【化8】

【0010】
(Rは任意の置換基、Arは任意の芳香族基を示す)で表される構造を有する。
【0011】
本発明の請求項2記載のAQP4阻害薬は、一般式
【0012】
【化9】

【0013】
(R、R’は任意の置換基、Arは任意の芳香族基を示す)で表される構造を有する。
【0014】
本発明の請求項3記載のAQP4阻害薬は、一般式
【0015】
【化10】

【0016】
(R、Xは任意の置換基、Arは任意の芳香族基を示す)で表される構造を有する。
【0017】
本発明の請求項4載のAQP4阻害薬は、一般式
【0018】
【化11】

【0019】
(R、R’、Xは任意の置換基、Arは任意の芳香族基を示す)で表される構造を有する。
【0020】
本発明の請求項5載のAQP4阻害薬は、一般式
【0021】
【化12】

【0022】
(R、R’、Xは任意の置換基、Arは任意の芳香族基を示す)で表される構造を有する。
【0023】
本発明の請求項6載のAQP4阻害薬は、一般式
【0024】
【化13】

【0025】
(Ar’は任意の芳香族基を示す)で表される構造を有する。
【0026】
本発明の請求項7載のAQP4阻害薬は、一般式
【0027】
【化14】

【0028】
(R、R’、R''、R'''、Xは任意の置換基を示す)で表される構造を有する。
【0029】
本発明の請求項8載の治療薬は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のアクアポリン4阻害薬を含有し、局所又は全身の疾患の治療に用いられる。
【0030】
本発明の請求項9記載の治療薬は、請求項8記載において、前記疾患が神経疾患、眼科疾患、呼吸器疾患、心臓疾患、全身性脈管系疾患、癌のいずれかである。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、AQP4を直接阻害する作用を有し、疾患の治療に有用な新規のAQP4阻害薬を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明のAQP4阻害薬は、後述する構造で示される化合物群である。従来、これらの化合物群がAQP4に対して直接の阻害作用を示すことは知られていなかった。さらに、本発明よりも前に、AQP4阻害作用を有する化合物に必要な化学構造は知られていなかった。本発明の範囲において、これらの化合物は全身及び神経系の疾患の治療に用いることができる。
【0033】
本発明の第一のAQP4阻害薬は、一般式
【0034】
【化15】

【0035】
(Rは任意の置換基、Arは任意の芳香族基を示す)で表される構造を有する。
【0036】
ここで、Ar−SONHは芳香族スルフォンアミドであり、芳香族基(Ar)は五員環又は六員環のいかなる構造も取り得るが、少なくとも1つ以上の窒素原子を含むことが好ましい。また、芳香族基には、水素、酸素、硫黄原子などを含んでいてもよい。そして、Ar−SONHとしては、例えば、表1の左列に上から順にそれぞれの化学構造と対応させて示すように、4位置換ベンゼン−1−スルフォンアミド、5位置換ピリジン−2−スルフォンアミド、2位置換ピラジン−5−スルフォンアミド、5位置換ピリミジン−2−スルフォンアミド、5位置換オキサゾール−2−スルフォンアミド、5位置換チアジアゾール−2−スルフォンアミド、2位置換オキサジアゾール−5−スルフォンアミド、2位置換チアゾール−5−スルフォンアミド、2位置換イミジゾール−4−スルフォンアミド、1位置換ジアゾール−3−スルフォンアミド、さらには、置換ヘテロ2環式スルフォンアミドである、5位置換ベンゾチアゾール−2−スルフォンアミド、6位置換ベンゾチアゾール−2−スルフォンアミド、5位置換ベンゾオキサゾール−2−スルフォンアミド、6位置換ベンゾオキサゾール−2−スルフォンアミドが挙げられる。
【0037】
【表1】

【0038】
置換基(R)は、R’C(O)NH−又はR’C(O)O−のどちらであってもよい。ここで、R’は脂肪族基又は芳香族基であって、どちらの場合もヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよい。R’が脂肪族基の場合は、側鎖を有していても有していなくてもよい。
【0039】
また、置換基(R)は、R''O−又はR''NH−であってもよい。ここで、R''は脂肪族基又は芳香族基であって、どちらの場合もヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよい。R''が脂肪族基の場合は、側鎖を有していても有していなくてもよく、別の官能基を有していてもよい。
【0040】
また、置換基(R)は、R'''C(O)N(R'''')−であってもよい。ここで、R'''は脂肪族基又は芳香族基であって、どちらの場合もヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよい。R'''が脂肪族基の場合は、側鎖を有していても有していなくてもよく、R’と同様の構造であってもよい。また、R''''は、Hではなく、脂肪族基又は芳香族基であって、R’と同様の構造であってもよい。さらに、R'''とR''''は同一であっても同一でなくてもよく、脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、芳香族基、ヘテロ芳香族基の任意の組み合わせとすることができる。また、これらの側鎖に追加の官能基を有していてもよい。
【0041】
本発明の第一のAQP4阻害薬の構造の例を下記に示すが、これらの構造に限定されるものではない。
【0042】
【化16】

【0043】
本発明の第二のAQP4阻害薬は、一般式
【0044】
【化17】

【0045】
(R、R’は任意の置換基、Arは任意の芳香族基を示す)で表される構造を有する。
【0046】
ここで、芳香族基(Ar)は五員環又は六員環のいかなる構造も取り得るが、少なくとも1つの窒素原子を含む。また、芳香族基には、水素、酸素、硫黄原子などを含んでいてもよく、この芳香族基としては、例えば、表1の中列に上から順にそれぞれの化学構造と対応させて示すように、3位置換ピリジン、2位置換ピラジン、5位置換ピリミジン、5位置換オキサゾール、2位置換チオジアゾール、2位置換オキサジアゾール、5位置換チアゾール、5位置換イミジゾール、1位置換イミダゾール、5位置換ジアゾール、4位置換イソチアゾール、5位置換イソチアゾール、4位置換イソオキサゾール、5位置換イソオキサゾールが挙げられる。
【0047】
また、芳香族基(Ar)として、このほかの少なくとも1つの窒素原子を含む一置換へテロ二環式芳香族基を含み、例えば、表1の右列に上から順にそれぞれの化学構造と対応させて示すように、5位置換ベンゾチアゾール、6位置換ベンゾチアゾール、5位置換ベンゾオキサゾール、6位置換ベンゾオキサゾール、5位置換ベンズイミダゾール、6位置換シンノリン、7位置換シンノリン、6位置換キノキサリン、6位置換キナゾリン、7位置換キナゾリン、6位置換ナフチリジン、7位置換ナフチリジン、2位置換ナフチリジンが挙げられる。
【0048】
置換基(R)は、R''C(O)−であり、R''は脂肪族基又は芳香族基であって、どちらの場合もヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよい。R''が脂肪族基の場合は、側鎖を有していても有していなくてもよい。置換基(R)がカルボニル基を含むときは、置換基(R’)は、水素原子、脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、芳香族基、ヘテロ芳香族基のいずれであってもよい。また、置換基(R’)は、−(CH−Ar’であってもよい。ここで、(CHは長さが1から5単位の直鎖の脂肪族基であり、Ar’は五員環又は六員環のいかなる構造も取り得る。
【0049】
本発明の第二のAQP4阻害薬の構造の例を下記に示すが、これらの構造に限定されるものではない。
【0050】
【化18】

【0051】
本発明の第三のAQP4阻害薬は、一般式
【0052】
【化19】

【0053】
(R、Xは任意の置換基、Arは任意の芳香族基を示す)で表される構造を有する。
【0054】
ここで、芳香族基(Ar)は五員環又は六員環のいかなる構造も取り得るが、少なくとも1つの窒素原子を含む。また、芳香族基には、水素、酸素、硫黄原子などを含んでいてもよく、この芳香族基としては、例えば、表1の中列に上から順にそれぞれの化学構造と対応させて示すように、3位置換ピリジン、2位置換ピラジン、5位置換ピリミジン、5位置換オキサゾール、2位置換チオジアゾール、2位置換オキサジアゾール、5位置換チアゾール、5位置換イミジゾール、1位置換イミダゾール、5位置換ジアゾール、4位置換イソチアゾール、5位置換イソチアゾール、4位置換イソオキサゾール、5位置換イソオキサゾールが挙げられる。
【0055】
また、芳香族基(Ar)として、このほかの少なくとも1つの窒素原子を含む一置換へテロ二環式芳香族基を含み、例えば、表1の右列に上から順にそれぞれの化学構造と対応させて示すように、5位置換ベンゾチアゾール、6位置換ベンゾチアゾール、5位置換ベンゾオキサゾール、6位置換ベンゾオキサゾール、5位置換ベンズイミダゾール、6位置換シンノリン、7位置換シンノリン、6位置換キノキサリン、6位置換キナゾリン、7位置換キナゾリン、6位置換ナフチリジン、7位置換ナフチリジン、2位置換ナフチリジンが挙げられる。
【0056】
置換基(X)は、−(CH−、−O−、−S−のいずれであってもよい。置換基(R)は、脂肪族基又は芳香族基であって、どちらの場合もヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよい。置換基(R)が脂肪族基の場合は、側鎖を有していても有していなくてもよい。さらに、置換基(X)は、−NR’であってもよい。ここで、R’は、脂肪族基又は芳香族基であって、どちらの場合も追加のヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよい。また、R’は水素原子であってもよい。RとR’は同一であっても同一でなくてもよい。
【0057】
本発明の第三のAQP4阻害薬の構造の例を下記に示すが、これらの構造に限定されるものではない。
【0058】
【化20】

【0059】
本発明の第四のAQP4阻害薬は、一般式
【0060】
【化21】

【0061】
(R、R’、Xは任意の置換基、Arは任意の芳香族基を示す)で表される構造を有する。
【0062】
ここで、芳香族基(Ar)は五員環又は六員環のいかなる構造も取り得るが、少なくとも1つの窒素原子を含む。また、芳香族基には、水素、酸素、硫黄原子などを含んでいてもよく、この芳香族基としては、例えば、表1の中列に上から順にそれぞれの化学構造と対応させて示すように、3位置換ピリジン、2位置換ピラジン、5位置換ピリミジン、5位置換オキサゾール、2位置換チオジアゾール、2位置換オキサジアゾール、5位置換チアゾール、5位置換イミジゾール、1位置換イミダゾール、5位置換ジアゾール、4位置換イソチアゾール、5位置換イソチアゾール、4位置換イソオキサゾール、5位置換イソオキサゾールが挙げられる。
【0063】
また、芳香族基(Ar)として、このほかの少なくとも1つの窒素原子を含む一置換へテロ二環式芳香族基を含み、例えば、表1の右列に上から順にそれぞれの化学構造と対応させて示すように、5位置換ベンゾチアゾール、6位置換ベンゾチアゾール、5位置換ベンゾオキサゾール、6位置換ベンゾオキサゾール、5位置換ベンズイミダゾール、6位置換シンノリン、7位置換シンノリン、6位置換キノキサリン、6位置換キナゾリン、7位置換キナゾリン、6位置換ナフチリジン、7位置換ナフチリジン、2位置換ナフチリジンが挙げられる。
【0064】
置換基(X)は、−N=又は−CH=であってもよい。置換基(R、R’)は、それぞれ、脂肪族基又は芳香族基であって、どちらの場合もヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよい。置換基(R、R’)が脂肪族基の場合は、側鎖を有していても有していなくてもよい。RとR’は同一であっても同一でなくてもよい。
【0065】
本発明の第四のAQP4阻害薬の構造の例を下記に示すが、これらの構造に限定されるものではない。
【0066】
【化22】

【0067】
本発明の第五のAQP4阻害薬は、一般式
【0068】
【化23】

【0069】
(R、R’、Xは任意の置換基、Arは任意の芳香族基を示す)で表される構造を有する。
【0070】
ここで、芳香族基(Ar)は五員環又は六員環のいかなる構造も取り得るが、少なくとも1つの窒素原子を含む。また、芳香族基には、水素、酸素、硫黄原子などを含んでいてもよく、この芳香族基としては、例えば、表1の中列に上から順にそれぞれの化学構造と対応させて示すように、3位置換ピリジン、2位置換ピラジン、5位置換ピリミジン、5位置換オキサゾール、2位置換チオジアゾール、2位置換オキサジアゾール、5位置換チアゾール、5位置換イミジゾール、1位置換イミダゾール、5位置換ジアゾール、4位置換イソチアゾール、5位置換イソチアゾール、4位置換イソオキサゾール、5位置換イソオキサゾールが挙げられる。
【0071】
また、芳香族基(Ar)として、このほかの少なくとも1つの窒素原子を含む一置換へテロ二環式芳香族基を含み、例えば、表1の右列に上から順にそれぞれの化学構造と対応させて示すように、5位置換ベンゾチアゾール、6位置換ベンゾチアゾール、5位置換ベンゾオキサゾール、6位置換ベンゾオキサゾール、5位置換ベンズイミダゾール、6位置換シンノリン、7位置換シンノリン、6位置換キノキサリン、6位置換キナゾリン、7位置換キナゾリン、6位置換ナフチリジン、7位置換ナフチリジン、2位置換ナフチリジンが挙げられる。
【0072】
置換基(X)は、−O−、−NH−、又は−CH−が好ましい。置換基(R、R’)は、それぞれ、脂肪族基又は芳香族基であって、どちらの場合もヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよい。置換基(R、R’)が脂肪族基の場合は、側鎖を有していても有していなくてもよい。RとR’は同一であっても同一でなくてもよい。さらに、置換基(X)がNHのとき、R’はR''−C(O)−であってもよい。ここで、R''は、脂肪族基又は芳香族基であって、どちらの場合もヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよい。また、R’は水素元素であってもよい。
【0073】
本発明の第五のAQP4阻害薬の構造の例を下記に示すが、これらの構造に限定されるものではない。
【0074】
【化24】

【0075】
本発明の第六のAQP4阻害薬は、一般式
【0076】
【化25】

【0077】
(Ar’は任意の芳香族基を示す)で表される構造を有する。
【0078】
ここで、芳香族基(Ar’)は五員環又は六員環のいかなる構造を取ることができ、さらに、縮合した五員環−六員環と六員環−六員環の二環式の構造も取り得る。また、芳香族基(Ar’)は、さらに追加の脂肪族基又は芳香族基で置換されたものであってもよく、R−O−、F−、Cl−、R−NH−の置換基を含んでいてもよい。ここで、RはC、H、N、O、S、F、Clを含む直鎖式脂肪族基又は環式脂肪族基であってもよい。また、RはC、H、N、O、S、F、Clを含む五員環又は六員環の芳香族基であってもよい。
【0079】
本発明の第六のAQP4阻害薬の構造の例を下記に示すが、これらの構造に限定されるものではない。
【0080】
【化26】

【0081】
本発明の第七のAQP4阻害薬は、一般式
【0082】
【化27】

【0083】
(R、R’、R''、R'''、Xは任意の置換基を示す)で表される構造を有する。
【0084】
ここで、置換基(X)は、−CH−、−(CH−、−(CH−、−CHO−、−CHNH−、−(CHO−、−(CHNH−のいずれであってもよい。置換基(R、R’、R''、R''')は、H−、CH−、CHCH−、CHCHCH−、CH(CH−のいずれの組み合わせであってもよい。さらに、置換基(R、R’、R''、R''')は、環式アセタール又はケタールの構造をとってもよく、−CH−、−CH(CH)−又は−C(CH−のいずれであってもよい。置換基(R、R’、R''、R''')は、それぞれ上記の構造を取ることができ、同一であっても同一でなくてもよい。
【0085】
本発明の第七のAQP4阻害薬の構造の例を下記に示すが、これらの構造に限定されるものではない。
【0086】
【化28】

【0087】
本発明の範囲において、上述の化合物はヒトの局所又は全身の疾患の治療に用いることができる。好ましくは神経疾患に用いられ、特に、脳浮腫、脳虚血、てんかん、片頭痛、躁鬱病、大鬱病性障害、統合失調症、パーキンソン病、アルツハイマー病、及びこれらの疾病に起因する合併症に用いられる。また、本発明の化合物は、通常AQP4を経由して調節される眼科疾患、特に、緑内障、黄斑変性症、及びこれらの疾患に起因する合併症の治療において、治療薬として好適である。また、本発明の化合物は、呼吸器疾患、特に、浮腫及びこれらの疾患の合併症の治療に好適である。さらに、本発明の化合物は、心臓疾患と全身性脈管系疾患、特に、鬱血性心不全、及びこれらの疾患に起因する合併症の治療に好適である。また、本発明の化合物は、癌の治療、特に血管新生の抑制や遅延のために好適である。
【0088】
本発明の化合物は、本発明の範囲において、ヒトの疾患の治療に用いることができ、ほかの医薬製品と組み合わせることで、どの単独の構成成分と比較しても多大な効果を奏することができる。組み合わせた医薬製品が、相違するが相補的な蛋白質ターゲットと相互作用する場合、又は同じ蛋白質ターゲットを通じて作用する場合に、その組み合わせを行うことができる。また、本発明の化合物は、制御された予測可能な方法で1つ以上の相補的なターゲットと選択的に相互作用するように変形されてもよく、それによって、治療効果を向上させることができる。
【0089】
本発明の化合物を他の薬剤と組み合わせて、AQP4の変調により影響を受けた疾患をターゲットとした投薬形態を構成してもよい。薬学的に適切な投薬形態で、錠剤、カプセル、カプレット、液体、強壮剤、チンキ、トローチ剤によって、この化合物を経口的に導入することができる。また、本発明の化合物は、静脈注射、筋肉注射、皮下注射、又は吸収性パッチによっても導入することができる。また、本発明の化合物は、持続性製剤、マイクロカプセル化、重合体分散などを含む多くの皮下方式のいずれかによっても、投与できる。また、本発明の化合物は、エアゾール噴霧、微結晶性分散、鼻内噴霧などの吸入によって、肺、副鼻腔、呼吸器系へ直接投与してもよい。
【0090】
さらに、本発明は、AQP4を阻害するために設計された医薬品を、in silico(コンピュータ利用によるシミュレーション)やほかの計算方法を用いて識別、選別することを含む。本発明においては、AQP4阻害薬としての化合物を選別する方法として、当業者に自明な、AQP4蛋白質の単結晶X線構造や電子線回折派生構造を利用した、仮想スクリーニングや3次元計算を用いるのが好ましい。AQP4のポア領域に阻害化合物を置いたときを基準として、コンピュータを利用したソフトウェアによって決定された結合エネルギー又はスコアを関連付けることによって、この選別を行うことができる。このソフトウェアは、結合エネルギーやスコアを決定する方法として、MM2、CHARMM、PMFなどの古典的な関数、半経験的な量子力学、又は、これらの方法の組み合わせを用いることができる。また、本発明において、AQP4拮抗薬として作用するものを識別するために、当業者に自明な、AQP4阻害化合物の2次元分析を用いることと、それらを仮想図書館と比較することが好ましい。既知のAQP4阻害剤の分子量、cLogP、分極可能な表面積、溶媒が接近可能な表面積、誘電率、双極子モーメントなどの固有の物理化学的特性の任意の組み合わせを分析し、つぎに、その組み合わせをこれまで未確認であったAQP4阻害化合物を選別するための判断基準として用いることによって、選択を行ってもよい。これらの比較は、モンテカルロ法、遺伝的アルゴリズムなどの種々のアルゴリズムを用いることで行うことができる。
【0091】
さらに、本発明は、化合物の選別方法として任意のin vitro、ex vitro、in vivoのアッセイを用いて、本発明のAQP4阻害薬を選別することを含む。本発明の実施形態において、AQP4を発現するようにAQP4メッセンジャーRNA(mRNA)がトランスフェトされたアフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞、又はトランスフェクトされた哺乳類の培養細胞における60〜80mOsmの低浸透圧条件下の体積増加を抑える能力に基づいて化合物を選別することが好ましい。また、本発明の本実施形態は、結合アッセイによって化合物を選別することを含み、ここでは、AQP4阻害化合物は、H、125Iなどの放射性核種や、フルオレセイン、FITC、BODIPY、CY、CY3、CY5、DyLightなどの蛍光性基を有するように修飾されており、調査対象化合物の存在下で標識されたリガンドから発せられるシグナルの変化がリガンドの移動、すなわちAQP4への調査対象化合物の結合親和性に関連する。
【0092】
AQP4は、人の疾患の治療に関する潜在的な標的であると長い間考えられてきた。実際に、AQP4と脳浮腫の間の関連性は、この標的の機能を調節することのできる化合物が治療的に使用できることを明確に示した例となっている。眼科疾患、特に緑内障の治療におけるAQP4の拮抗薬の使用についても同様であり、かなり強い関連性が得られている。さらに最近の証拠として、AQP4蛋白と多数の神経疾患、特にてんかん、片頭痛、統合失調症との間に強い関連が示されている。しかし、この標的を利用できる薬剤の開発を制限する要因は、どのようなタイプの分子がその蛋白に結合してその機能を阻害するのかという知見がないことであった。本発明による新規のAQP4阻害化合物の識別は、疾患の治療のための新規な治療薬の開発を可能とする。
【0093】
本発明は、ヒトの疾患の治療と予防において、AQP4の機能を変更するために用いることのできるいくつかの新しい分類の分子化合物を開示している。本発明に先立って、どのようにAQP4蛋白標的が化学薬品によって直接拮抗されるのか、又はそのように作用するためにどのような化学的特徴が分子の要素として必要なのか、明確な理解はなく、従来技術は存在しなかった。本発明に想到する過程において、本発明者らは、AQP4に拮抗するために必要な化学的特徴と、これら化合物の阻害作用の調査方法の両方を特定することができた。また、本発明に特筆すべきことは、AQP4阻害化合物を識別、選別するためにコンピュータを利用した方法を特定したことである。さらに、本発明で見出された特筆すべきことは、新規なAQP4阻害化合物を識別、選別する方法として、生物学的in vitroスクリーニングを用いたことである。
【実施例1】
【0094】
[コンピュータモデリング]
AQP4モノマーの電子線回折固体構造(PDBファイル2D57、3.2Å、Hiroaki Y et al., J.Mol.Bio. 2006, 355, 628-639が提供)を、すべての仮想結合の研究に用いた。PDBファイルをBiomedCACheモデリング環境(富士通、バージョン6.1.12)に取り込み、価数、ハイブリダイゼーション、電荷を補正した。そして、この組み合わせを決定し、AQP4の細胞外領域表面(ファンデルワールス半径)の計算によって、潜在的な結合ポケットを見積もった。既知の直接AQP1阻害薬であるアセタゾールアミドをそのモデルに導入し、BiomedCACheのアクティブサイトモジュール中のPMFエネルギースコアリング機能を用いて、結合モデルのエネルギーを差し引いた。アセタゾールアミドリガンドについていくつかの起算点と、いくつかの結合サイトが用いられた。エネルギー論的に好適な、スルフォンアミド基が水ポアを貫通する、一つの結合コンフォメーションが確実に特定された。リガンドの5Å内のAQP1接触残基は、この好適な結合ポケットを再調査するために用いられ、後にすべての最小化に用いられた。
【0095】
リガンドは個々に選別され、別々に集められた。各構造のエネルギーは、順次、古典的手法(増大されたMM3力場)、CONFLEX低エネルギーサーチエンジン(増大されたMM3力場)、そして最後に半実験的手法(PM5パラメータセットと水和モデル)によって、最小化された。この最終的な化合物の構造は、この仮想的スクリーニングで用いられたリガンドとして決定された。各モデルは、上述のアセタゾールアミドを用いて決定された結合ポケットへそれぞれ導入された。シミュレーションは、BioMedCACheに統合されたPMFエネルギー機能を用いて実行されたが、ここでは、リガンドと蛋白結合ポケット側鎖に柔軟性が与えられた。結合リガンドのエネルギーと最終的なコンフォメーションは、さらなる評価において化合物に優先順位を付けるためのin vitroアッセイにおいて阻害性を示す化合物について決定されたコンフォメーションと比較された。
【0096】
表2は、AQP4膜貫通型蛋白質の細胞外領域に結合することのできる分子を設計するために必要であり望ましい構造上の特性を特定するためのin silicoの検討の結果を示す。ΔEの列はそれぞれの20の化合物について決定した結合エネルギーであり、単位はKcal/molである。後述するin vitroアッセイ系においてAQP4の阻害作用を有するものとして同定された化合物は、−53kcal/molより絶対値が大きい結合エネルギーを常に有している。該当する化合物は、表2の化合物1〜5に代表される。反対に、−50kcal/molより絶対値が小さい結合エネルギーを有する化合物は、化合物6に代表されるが、後述するin vitroアッセイにおいて活性がないことがわかった。
【0097】
負の結合エネルギーは、ホスト蛋白質と良好な相互作用を有するリガンドを表すものであり、言い換えれば、発熱結合エネルギーとみなされる。一般に、負の結合エネルギーの絶対値が大きくなると、相互作用が強くなり、リガンドが固定される。しかしながら、計算された結合エネルギーは蛋白機能を阻害する原因となる相互作用を表し、その程度は、実験的に相関があるに違いない。観測された結合エネルギーとin vitroのAQP4の阻害との間の相関は、さらなる研究のために、仮想スクリーニングを化合物の同定と選択の手段として用いることができることを示している。
【0098】
【表2】

【実施例2】
【0099】
[in vitroアッセイ]
アフリカツメガエル卵母細胞の単離、調製、トランスフェクションの詳細については、かなり詳細に記述されている(Sakimura, et al., FEBS Lett., 1990, 272, 73-80)。
【0100】
要するに、アフリカツメガエルの成体メス(重量150g)を犠牲にして、卵母細胞を取り出してバースの培地(Barth's Medium)に移した。卵母細胞を単離緩衝液へ部分的に移し、卵胞膜を手作業で除去して卵母細胞を露出させた。この膜を除去した卵母細胞を新鮮なバースの培地に移し、mRNAのインジェクションに先立って、2時間平衡化させた。
【0101】
0.1mMのNaOAcを追加した67%エタノール水溶液にmRNAをマイクロ分散させ(トータルのAQP4のmRNA濃度は=1μg/20μL)、つぎに遠心分離(12,000rpm、14分)によってペレット化した。そのペレットを順番に70%EtOH水溶液、そして100%EtOHで洗浄(洗浄の間に12,000rpm、3分の遠心分離)、風乾し、最後に蒸留水(10μL)でもどした。この最終溶液の濃度は、0.1μg/μLであった。
【0102】
Drummondマイクロインジェクションシステムを用いて、mRNA溶液のマイクロインジェクションを行った。それぞれ30μLのhAQP4bのmRNA(1つの卵母細胞について3ngのmRNAを注入)、又はネガティブコントロールとしての水へ、卵母細胞を注入した。バースの培地中において18℃で48時間、注入した卵母細胞を培養した。注入後24時間で培地を交換し、死んだ卵母細胞を除去した。
【0103】
注入の48時間後、卵母細胞を90μLのバースの培地とともに96ウェルプレート(Falcon 353077)へ移した。アッセイの2時間前に、1%のDMSO水溶液中の200μMの阻害薬溶液(10μL)、又はブランク(1%DMSO)を分取して卵母細胞に導入した。培養培地の最終濃度は、阻害薬が20μM、DMSOが0.1%であった。200μMの阻害薬溶液(10μL、1%のDMSO水溶液中)、又はブランク(1%DMSO水溶液)を分取したものを蒸留水(90μL)に希釈することによって、アッセイプレートを同様に準備した。
【0104】
アッセイプレート上の対応するウェルへ50μLの培養培地とともに卵母細胞を移すことによって、アッセイを行った。ニコンDSL1ディジタルイメージングシステムに接続されたオリンパスSZX12顕微鏡を用いて、移された卵母細胞を画像化した。アッセイ初期画像(t=3秒)と、30秒間隔の画像を、プレートへの導入後4分まで記録した。4分より前に死んだ卵母細胞は、つぎの分析から除外した。
【0105】
画像をパーソナルコンピュータへ移し、各卵母細胞の領域をNIH Image-Jを用いて評価した。等しく定められた複数の測定時間における各卵母細胞の断面積値は、球状と仮定した体積に変換した。初期の卵母細胞画像と比較した相対体積は、各時間点において、少なくとも5個体(n=5)の卵母細胞で平均をとり、標準偏差を求めた。その分析例を図1〜6に示す。
【0106】
なお、図1〜6は、阻害薬として、それぞれ表2に示した化合物1〜6を用いたときの分析結果を示している。化合物1は、N−(5−スルファモイル−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)アセトアミド、化合物2は、((3aS,5aR,8aR,8bS)−2,2,7,7−テトラメチルテトラヒドロ−3aH−ビス[1,3]ジオキソロ[4,5−b:4’,5’−d]ピラン−3a−イル)メチルスルファメート、化合物3は、6−エトキシベンゾ[d]チアゾール−2−スルフォンアミド、化合物4は、N−(4−スルファモイルフェニル)アセトアミド、化合物5は、6−(2,3−ジクロロフェニル)−1,2,4−トリアジン−3,5−ジアミン、化合物6は、5−クロロチオフェン−2−スルフォンアミドである。
【0107】
この図において、Sham(模擬)、Blank(ブランク)、Inhibitor(阻害薬)は、それぞれ、水が注入された卵母細胞、阻害薬を添加せずAQP4のmRNAが注入された卵母細胞、阻害薬を添加してAQP4のmRNAが注入された卵母細胞の相対体積の経時変化を示す。エラーバーは、5個体(n=5)における標準偏差を表す。模擬、ブランクの卵母細胞と比較して、図1〜5の化合物は、AQP4を介した水輸送を、申し分なく統計的に有意に阻害することを示している。化合物6は、模擬試験、ブランクの卵母細胞と比較して、水輸送を有意に阻害することを示さなかった。
【0108】
また、用量依存分析を上述と同様の方法で行った。しかし、ここでは、アッセイ培地と培養培地の両方における化合物1の濃度を、0.01μM、0.1μM、1.0μM、10μMに調整した。各リガンド濃度に加えて、模擬(sham)、AQP4が注入されたブランクに対して、分析においてn=5の卵母細胞を用いた。
【0109】
ここで用いたすべての化合物は、シグマ、アルドリッチ、TCIから購入し、追加の分析を行わずに購入したままで用いた。試薬は主に、アルドリッチ、シグマ、和光純薬、ナカライテスクから購入した。hAQP4bのmRNAは、ヴァークマン(Verkman)の方法(Yang, et al., J.Biol.Chem., 1995, 270, 22907-22913)で調製し、67%のエタノール水溶液中のマイクロ懸濁液として保存した。用いたすべての培地とアッセイ溶液は、使用に先立って新たに調製した(Sakimura, et al., FEBS Lett., 1990, 272, 73-80)。マイクロインジェクションのガラス針は、実験室で作成し、使用前に乾燥殺菌した。阻害薬化合物は入手したままで使用し、はじめにDMSOに溶解し、つぎにアッセイの前に2回蒸留した水で希釈した。最終の阻害薬の貯蔵溶液は、1%DMSO水溶液中で0.2mMであった。ブランクの貯蔵溶液は、1%DMSO水溶液に調製した。
【0110】
図7に用量依存分析の結果を示す。阻害薬の濃度は図に示している。また、図にはSham(模擬)とBlank(ブランク)が含まれており、これらは、水が注入された卵母細胞、阻害薬を添加せずAQP4のmRNAが注入された卵母細胞をそれぞれ示す。エラーバーは、5回反復した時点における標準偏差を表す。化合物1の0.1μM、1.0μM、10μMの溶液を、AQP4のmRNAが注入された卵母細胞に接触させた後に、AQP4を介した水輸送を有意に阻害することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】阻害化合物としてN−(5−スルファモイル−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)アセトアミドを含む20μMの溶液が存在する低浸透圧の条件下でAQP4膜貫通チャネル蛋白質を発現するようにトランスフェクトされたアフリカツメガエル卵母細胞における、AQP4を介した水膨潤の阻害の程度を示す図である。
【図2】同上、阻害化合物として((3aS,5aR,8aR,8bS)−2,2,7,7−テトラメチルテトラヒドロ−3aH−ビス[1,3]ジオキソロ[4,5−b:4’,5’−d]ピラン−3a−イル)メチルスルファメートを用いた場合の、AQP4を介した水膨潤の阻害の程度を示す図である。
【図3】同上、阻害化合物として6−エトキシベンゾ[d]チアゾール−2−スルフォンアミドを用いた場合の、AQP4を介した水膨潤の阻害の程度を示す図である。
【図4】同上、阻害化合物としてN−(4−スルファモイルフェニル)アセトアミドを用いた場合の、AQP4を介した水膨潤の阻害の程度を示す図である。
【図5】同上、阻害化合物として6−(2,3−ジクロロフェニル)−1,2,4−トリアジン−3,5−ジアミンを用いた場合の、AQP4を介した水膨潤の阻害の程度を示す図である。
【図6】同上、阻害化合物として5−クロロチオフェン−2−スルフォンアミドを用いた場合の、AQP4を介した水膨潤の阻害の程度を示す図である。
【図7】阻害化合物としてN−(5−スルファモイル−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)アセトアミドを用いた場合の、低浸透圧の条件下でAQP4膜貫通チャネル蛋白質を発現するようにトランスフェクトされたアフリカツメガエル卵母細胞における、AQP4を介した水膨潤の阻害の用量反応を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】

(Rは任意の置換基、Arは任意の芳香族基を示す)で表される構造を有することを特徴とするアクアポリン4阻害薬。
【請求項2】
一般式
【化2】

(R、R’は任意の置換基、Arは任意の芳香族基を示す)で表される構造を有することを特徴とするアクアポリン4阻害薬。
【請求項3】
一般式
【化3】

(R、Xは任意の置換基、Arは任意の芳香族基を示す)で表される構造を有することを特徴とするアクアポリン4阻害薬。
【請求項4】
一般式
【化4】

(R、R’、Xは任意の置換基、Arは任意の芳香族基を示す)で表される構造を有することを特徴とするアクアポリン4阻害薬。
【請求項5】
一般式
【化5】

(R、R’、Xは任意の置換基、Arは任意の芳香族基を示す)で表される構造を有することを特徴とするアクアポリン4阻害薬。
【請求項6】
一般式
【化6】

(Ar’は任意の芳香族基を示す)で表される構造を有することを特徴とするアクアポリン4阻害薬。
【請求項7】
一般式
【化7】

(R、R’、R''、R'''、Xは任意の置換基を示す)で表される構造を有することを特徴とするアクアポリン4阻害薬。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のアクアポリン4阻害薬を含有し、局所又は全身の疾患の治療に用いられることを特徴とする治療薬。
【請求項9】
前記疾患が神経疾患、眼科疾患、呼吸器疾患、心臓疾患、全身性脈管系疾患、癌のいずれかであることを特徴とする請求項8記載の治療薬。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−320920(P2007−320920A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154063(P2006−154063)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【Fターム(参考)】