アクチュエータ装置
【課題】 ボール螺子軸を軸受けする第1ボールベアリングの潤滑性を向上させると共に、ボール螺子軸の軸方向のガタツキを防止することができる。
【解決手段】 電動モータ36によってボール螺子軸45を回転させて、ボールナット46を軸方向へ直線移動させると共に、該ボールナットと、可変機構4を制御する制御軸32との間を連係する連係アーム47及びリンク部材48とを備えている。シリンダヘッドに傾斜状に取り付けられたハウジング35内に潤滑油を滞留させると共に、前記ボール螺子軸の両端部を軸受けする第1、第2ボールベアリング50,51を設けた。第1ボールベアリングを、複数列のアンギュラベアリングによって構成して、該ベアリングの内部に、ハウジング内で飛散した潤滑油を滞留させるようにすると共に、ボール螺子軸の軸方向の荷重を吸収するようにした。
【解決手段】 電動モータ36によってボール螺子軸45を回転させて、ボールナット46を軸方向へ直線移動させると共に、該ボールナットと、可変機構4を制御する制御軸32との間を連係する連係アーム47及びリンク部材48とを備えている。シリンダヘッドに傾斜状に取り付けられたハウジング35内に潤滑油を滞留させると共に、前記ボール螺子軸の両端部を軸受けする第1、第2ボールベアリング50,51を設けた。第1ボールベアリングを、複数列のアンギュラベアリングによって構成して、該ベアリングの内部に、ハウジング内で飛散した潤滑油を滞留させるようにすると共に、ボール螺子軸の軸方向の荷重を吸収するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、内燃機関の吸気弁や排気弁のバルブリフト量や作動角等を機関駆動状態に応じて可変制御する可変動弁装置などに適用されるアクチュエータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃機関の可変動弁装置に用いられるアクチュエータ装置としては、種々提供されており、その1つとして例えば以下の特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、可変動弁装置は、クランクシャフトから回転力が伝達される駆動軸と、揺動することによって一気筒当たり2つの吸気弁を開閉作動させる揺動カムと、前記駆動軸の外周に固定された駆動カムと前記揺動カムとの間に介装されて、駆動カムの回転力を揺動運動に変換して前記揺動カムに伝達するロッカアームなどからなる伝達機構と、前記ロッカアームの中央に有する支持孔内に挿通配置された偏心制御カム及び該偏心制御カムを回転制御する制御軸とからなる制御機構と、前記制御軸を機関駆動状態に応じて回転制御するアクチュエータ装置とを備えている。
【0004】
このアクチュエータ装置は、シリンダヘッドに取り付けられて、内部に潤滑油が滞留されたハウジングと、該ハウジング内において両端部がそれぞれ通常のボールベアリングによって回転自在に支持され、電動モータによって正逆回転されるボール螺子軸と、該ボール螺子軸の外周面に形成された雄ねじ部に内周の雌ねじが螺合して軸方向へ移動可能な移動ナットと、二股状の一端部が前記移動ナットの両側部にピンを介して揺動自在に連係されたリンク部材と、基端部が前記制御軸の一端部に固定されて、突出端が前記リンク部材の他端部に回転自在に連係された連結アームとを備えている。
【0005】
そして、前記電動モータの正逆回転駆動に伴ってボール螺子軸が正逆回転することにより、移動ナットが軸方向へ移動して、前記リンク部材を介して前記制御軸の回転位置を制御することにより、偏心制御カムが前記ロッカアームの揺動支点を変化させることによって前記吸気弁のバルブリフト量を変化させるするようになっている。
【特許文献1】特開2004−76824号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のアクチュエータ装置にあっては、前記ハウジングのシリンダヘッドに対する取り付け角度が傾斜状になっていることから、前記一方のボールベアリングは、ハウジング内の潤滑油に浸漬状態に配置されて十分に潤滑されているものの、他方のボールベアリングは前記潤滑油に浸漬されていない。このため、かかる他方のボールベアリングを十分に潤滑することが困難になり、耐久性が低下してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記従来のアクチュエータ装置の実状に鑑みて案出されたもので、請求項1記載の発明にあっては、とりわけ、一方の軸受を、ハウジング内に滞留した潤滑油に浸漬するように配置すると共に、他方の軸受を、前記潤滑油に浸漬されない状態で配置したアクチュエータ装置において、前記他方の軸受を、複数列のボールベアリングによって構成したことを特徴としている。
【0008】
この発明によれば、ハウジング内に滞留している潤滑油は、出力軸の回転や機関の振動によってハウジング内でミスト状態になりながら飛散して前記他方のボールベアリングの内部に流入するが、このボールベアリングは複数列になっていることから、この内部に滞留し易くなる。このため、該他方側のボールベアリングの潤滑性が向上する。
【0009】
しかも、例えば機関弁を閉方向に付勢するバルブスプリングのばね力などに起因して発生する交番トルクなどの振動が、前記制御軸から移動ナットを介して出力軸に伝達された場合に、かかる振動を前記他方のボールベアリング内に滞留した潤滑油によって効果的に吸収することが可能になる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記複数列のボールベアリングを、アンギュラベアリングによって構成したことを特徴としている。
【0011】
この発明によれば、他方のアンギュラベアリングによって出力軸の軸方向の荷重を吸収することができると共に、このアンギュラベアリング内に供給された前記潤滑油の粘性と相俟って前記交番トルクによる前記出力軸の軸方向の振動を効果的に抑制することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記駆動部を、電動モータによって構成すると共に、該電動モータを、前記ハウジングの内の潤滑油が滞留しない位置に取り付け、かつ、前記複数列のボールベアリングを、前記出力軸の電動モータ側に配置したことを特徴としている。
【0013】
一般に電動モータは、内部に電磁コイルが存在することから、常時良好な通電性を得る必要上、電動モータの内部に潤滑油が入り込まないようにしなければならないが、この発明によれば、電動モータは、ハウジング内の潤滑油からは隔絶した位置に配置され、しかも、複数列のボールベアリングによって、ハウジング内の潤滑油が電動モータ方向へ流入するのを遮断することができる。したがって、前記電動モータ内部への潤滑油の流入を十分に防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るアクチュエータ装置を内燃機関の可変動弁装置に適用した実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、この実施形態では、可変動弁装置をV型6気筒内燃機関の吸気側に適用したものであって、本実施形態の図面では片側3気筒に適用した場合を示している。
【0015】
すなわち、可変動弁装置は、図8〜図10に示すように、シリンダヘッド1に図外のバルブガイドを介して摺動自在に設けられて、バルブスプリング3,3によって閉方向に付勢された一対の吸気弁2,2と、該各吸気弁2,2のバルブリフト量を可変制御する可変機構4と、該可変機構4の作動位置を制御する制御機構5と、該制御機構5を回転駆動するアクチュエータ装置である駆動機構6とを備えている。
【0016】
前記可変機構4は、シリンダヘッド1の上部に有する軸受14に回転自在に支持された中空状の駆動軸13と、該駆動軸13に圧入等により固設された駆動カム15と、駆動軸13の外周面に揺動自在に支持されて、各吸気弁2,2の上端部に配設されたバルブリフター16,16の上面に摺接して各吸気弁2,2を開作動させる2つの揺動カム17,17と、前記駆動カム15と揺動カム17,17との間に連係されて、駆動カム15の回転力を揺動運動に変換して揺動カム17,17に揺動力として伝達する伝達手段とを備えている。
【0017】
前記駆動軸13は、機関前後方向に沿って配置されていると共に、一端部に設けられた図外の従動スプロケットや、該従動スプロケットに巻装されたタイミングチェーン等を介して機関のクランク軸から回転力が伝達されており、この回転方向は図8中、時計方向(矢印方向)に設定されている。
【0018】
前記軸受14は、図9Aに示すように、シリンダヘッド1の上端部に設けられて駆動軸13の上部を支持するメインブラケット14aと、該メインブラケット14aの上端部に設けられて、後述する制御軸32を回転自在に支持するサブブラケット14bとを有し、両ブラケット14a、14bが一対のボルト14c、14cによって上方から共締め固定されている。
【0019】
前記駆動カム15は、ほぼリング状を呈し、円環状のカム本体と、該カム本体の外端面に一体に設けられた筒状部とからなり、内部軸方向に駆動軸挿通孔が貫通形成されていると共に、カム本体の軸心Yが駆動軸13の軸心Xから径方向へ所定量だけオフセットしている。
【0020】
前記両揺動カム17は、同一形状のほぼ雨滴状を呈し、円環状のカムシャフト20の両端部に一体的に設けられていると共に、該カムシャフト20が駆動軸13に回転自在に支持されている。また、先端部のカムノーズ部21側にピン孔が貫通形成されていると共に、下面には各バルブリフタ16に摺接するカム面22がそれぞれ形成されている。このカム面22は、カムシャフト20側の基円面と、該基円面からカムノーズ部21側に円弧状に延びるランプ面と、該ランプ面からカムノーズ部21の先端側に有する最大リフトの頂面に連なるリフト面が形成されており、該基円面とランプ面及びリフト面が、揺動カム17の揺動位置に応じて各バルブリフター16の上面の所定位置に当接するようになっている。
【0021】
前記伝達手段は、駆動軸13の上方に配置されたロッカアーム23と、該ロッカアーム23の一端部23aと駆動カム15とを連係するリンクアーム24と、ロッカアーム23の他端部23bと揺動カム17とを連係するリンクロッド25とを備えている。
【0022】
前記ロッカアーム23は、中央に有する筒状の基部が支持孔を介して後述する制御カム33に回転自在に支持されている。また、筒状基部の外端部に突設された前記一端部23aには、ピン26が嵌入するピン孔が貫通形成されている一方、基部の内端部に突設された前記他端部23bには、リンクロッド25の一端部と連結するピン27が嵌入するピン孔が形成されている。
【0023】
前記リンクアーム24は、比較的大径な円環状の基部24aと、該基部24aの外周面所定位置に突設された突出端24bとを備え、基部24aの中央位置には、前記駆動カム15のカム本体が回転自在に嵌合する嵌合孔24cが形成されている一方、突出端24bには、前記ピン26が回転自在に挿通するピン孔が貫通形成されている。
【0024】
前記リンクロッド25は、ロッカアーム23側が凹状のほぼく字形状に形成され、両端部25a,25bには前記ロッカアーム23の他端部23bと揺動カム17のカムノーズ部21の各ピン孔に挿入した各ピン27,28の端部が回転自在に挿通するピン挿通孔が貫通形成されている。
【0025】
なお、各ピン26,27,28の一端部には、リンクアーム24やリンクロッド25の軸方向の移動を規制するスナップリングがそれぞれが設けられている。
【0026】
前記制御機構19は、駆動軸13の上方位置に同じ軸受14に回転自在に支持された制御軸32と、該制御軸32の外周に固定されてロッカアーム23の支持孔に摺動自在に嵌入されて、ロッカアーム23の揺動支点となる制御カム33とを備えている。
【0027】
前記制御軸32は、駆動軸13と並行に機関前後方向に配設されていると共に、所定位置のジャーナル部が前記軸受14のメインブラケット14a、とサブブラケット14bとの間に回転自在に軸受されている。
【0028】
前記制御カム33は、円筒状を呈し、軸心P2位置が制御軸32の軸心P1から所定分だけ偏倚している。
【0029】
前記駆動機構6は、図1〜図5に示すように、シリンダヘッド1の後端部に取り付けられたハウジング35と、該ハウジング35の一端部に固定された駆動部である電動モータ36と、ハウジング35の内部に設けられて電動モータ36の回転駆動力を前記制御軸32に伝達する減速機構であるボール螺子伝達機構37とから構成されている。
【0030】
前記ハウジング35は、アルミ合金材などによって一体に形成され、図1、図3にも示すように、シリンダヘッド1に対して水平線Qから所定角度θをもって傾斜状に取り付けられ、内部には、前記制御軸32の軸方向とほぼ直角方向に沿って配置されて、ボール螺子伝達機構37が収容配置される細長い収容部35aと、該収容部35aの上端部中央に上方へ突出して、内部に前記制御軸32の一端部32aが臨む膨出室35bが形成されている。
【0031】
さらに、前記収容室35aは、軸方向の一端部に円形状の開口部35cが形成されていると共に、他端部側が端壁35dによって閉塞されている。一方、前記膨出室35bは、シリンダヘッド1側の開口端が該シリンダヘッド1の内部に連通している。
【0032】
また、前記収容室35a内には、前記制御軸32の内部軸方向に形成された油通路32bやシリンダヘッド1の内部から常時供給された潤滑油Oが所定油面レベルLまで滞留している。前記油通路32bは、機関の潤滑油を圧送する図外のメインオイルギャラリーと連通している。
【0033】
さらに、前記収容室35a内部には、図5に示すように、前記駆動軸13の回転角度を検出する検出器である電磁式の前記駆動軸回転角センサ41の回転部材である角度検出子42が前記一端開口から収容配置されている。
【0034】
すなわち、前記駆動軸回転角センサ41は、駆動軸13の一端に固定された攪拌部材である角度検出子42と、前記ハウジング35に設けられて、前記角度検出子42の回転位置をピックアップする角度検出部43とから構成されている。
【0035】
前記角度検出子42は、前記収容室35a内に臨むほぼ円板状の検出子本体42aと、該検出子本体42aの外周に一体に設けられた4つの突部42bとから構成され、該各突部42bは検出子本体42aの円周方向へ約90°の角度位置にそれぞれ径方向に沿って突設されている。また、前記角度検出子42は、その約下半分が前記ハウジング35内に滞留した潤滑油Oの油面レベルLよりも下にあって常時エンジンオイルに浸されている状態になっている。
【0036】
前記電動モ−タ36は、比例型のDCモータによって構成され、ほぼ円筒状のモータケーシング38の先端部38aが前記収容室35aの前記開口部35cを封止する状態で固定されている。また、電動モ−タ36は、前記開口部35c側がメカニカルシール39によって駆動シャフト36aを介してシールされている。また、電動モータ36は、図8に示すように、機関の運転状態を検出するコントロールユニット40からの制御電流によって駆動するようになっている。
【0037】
このコントロールユニット40は、図外のクランク角センサやエアーフローメータ、水温センサや、前記駆動軸回転角センサ41及び制御軸32の回転位置を検出するポテンショメータ44等の各種のセンサからの検出信号をフィードバックして現在の機関運転状態を演算などにより検出して、前記電動モータ36に制御電流を出力している。
【0038】
前記ボール螺子伝達機構37は、前記ハウジング35の収容室35a内に電動モータ36の駆動シャフト36aとほぼ同軸上に配置された出力軸であるボール螺子軸45と、該ボール螺子軸45の外周に螺合する移動ナットであるボールナット46と、膨出室35b内で前記制御軸32の一端部32aに軸方向から連結された連係アーム47と、該連係アーム47と前記ボールナット46とを連係するリンク部材48とから主として構成され、この連係アーム47とリンク部材48によってリンク機構を構成している。
【0039】
前記ボール螺子軸45は、両端部を除く外周面全体に所定幅のねじ部であるボール循環溝49が螺旋状に連続して形成されていると共に、前記収容室35aの一端開口部35cと他端部の小径部内にそれぞれ臨んだ両端部45a、45bが軸受である第1、第2ボールベアリング50、51によって回転自在に軸受けされている。
【0040】
前記電動モータ36側の第1ボールベアリング50は、2列のボール溝にそれぞれ複数のボール50a、50bが転動自在に設けられたアンギュラベアリングによって構成され、アウターレースの外周面が一端開口部35cの内側に圧入固定されていると共に、円筒状の雄ねじ状のリテーナ63によって軸方向に位置決め固定されている
一方、先端側の第2ボールベアリング51は、通常の構造であって、1列のボール溝に複数のボールが転動自在に設けられていると共に、アウターレースの外周面が他端壁35dの小径部の内部に圧入固定されている。
【0041】
そして、前記ハウジング35が傾斜していることから、前記第2ボールベアリング51は、収容室35a内に滞留している潤滑油Oに常時浸漬されている状態になっているのに対して、前記アンギュラベアリングである第1ボールベアリング50は、潤滑油Oに浸漬されずに油面レベルLから露出した状態になっている。
【0042】
さらに、ボール螺子軸45は、一端部45aの先端の六角軸と電動モータ36の駆動シャフト36aの先端部が円筒状の連結部材52によって同軸上で軸方向移動可能に結合され、かかる結合によって電動モータ36の回転駆動力を前記ボール螺子軸45に伝達すると共に、ボール螺子軸45の軸方向の僅かな移動を許容している。
【0043】
前記ボールナット46は、ほぼ円筒状に形成され、内周面に前記ボール循環溝49と共同して複数のボール54を転動自在に保持するガイド溝53が螺旋状に連続して形成されていると共に、複数のボール54の循環列をボールナット46の軸方向の前後2個所に設定する2つのディフレクタが取り付けられている。つまり、このディフレクタは、前記ボール循環溝49とガイド溝53との間を転動する前記複数のボール54を同一溝内に循環させるために、同循環列内に再び戻すようにボール54を案内するものであり、この循環列を軸方向の前後2個所に設けたものである。
【0044】
前記ボールナット46は、各ボール54を介してボール螺子軸45の回転運動をボールナット46に直線運動に変換しつつ軸方向の移動力が付与されるようになっている。また、ボールナット46は、軸方向のほぼ中央位置に前記リンク部材48の一端部と連結される枢支ピン55が回転自在に設けられている。
【0045】
前記連係アーム47は、図2〜図5に示すように、ほぼ異形状に形成され、ほぼ菱形の基部47aが制御軸32の一端部32aに軸方向から一体的に固定されていると共に、前記基部47aの一端側に突設された突部47bに前記リンク部材48の他端部が枢支ピン56によって回転自在に連結されている。
【0046】
前記リンク部材48は、図1〜図5にも示すように、板材をプレス成形によって横断面ほぼコ字形状(凹状部)に折曲形成してなり、平行な一対の細長い平板状のリンク部57、57と、該両リンク部57、57のほぼ中央上端を結合する連結部58とから構成されている。
【0047】
前記両リンク部57,57は、長手方向のほぼ中央が互いにクランク状に折曲形成されて、一端部側が拡幅状に形成されている一方、他端部側が狭幅状に形成されており、前記両端部には、ピン孔がそれぞれ貫通形成されている。
【0048】
前記連結部58は、平面ほぼ長方形状に形成されて、両端部が下方へL字形状に折曲形成されていると共に、両端縁が各リンク部57,57の狭幅な他端部側寄りのほぼ中央位置の各上端縁に一体に結合されて、幅方向へ架橋状態に配置されている。
【0049】
したがって、リンク部材48は、内部が両リンク部57、57によって連結部58と反対側の下端が開口した細長い凹状部である空間部59になっていると共に、両端部側も開口状態になって、いわば平行な二股状に形成されている。
【0050】
また、両リンク部57,57は、各一端部が同じく前記ボールナット46のほぼ中央を僅かなクリアランスをもって挟み込むように嵌合している一方、各他端部が前記連係アーム47の突部47bを両側から僅かなクリアランスをもって挟み込むように嵌合している。
【0051】
そして、このリンク部材48は、前記各一端部の前記各ピン孔に挿通した前記枢支ピン55を介して前記ボールナット46に対して回動自在に連結されている一方、各他端部の前記各ピン孔に挿通した前記枢支ピン56を介して前記連係アーム47の突部47bに対して回転自在に連結されている。
【0052】
なお、前記両枢支ピン55,56は、両端部がかしめ加工によって前記各ピン孔に固定されている。
【0053】
したがって、このリンク部材48は、ピン55、56を介してボールナット46の移動に伴い傾動可能になっており、完全に傾倒した姿勢では、図7にも示すように、前記空間部59が前記ボール螺子軸45の上端部に嵌入して該ボール螺子軸45の軸線とほぼ平行となるまで傾倒可能になっている。
【0054】
また、前記ボールナット46の軸方向一端部に設けられたスプリングリテーナ60と第2ボールベアリング51側に設けられたスプリングリテーナ61との間には、前記ボールナット46を電動モータ36方向へ付勢するコイルスプリング62が弾装されている。
【0055】
以下、本実施形態に係るアクチュエータ装置の作動を説明すれば、まず、例えば、機関のアイドリング運転時を含む低回転運転領域には、コントロールユニット40から出力された制御電流によって電動モータ36が回転してこの回転トルクによりボール螺子軸45が回転する。そうすると、この回転に伴って各ボール54がボール循環溝49とガイド溝53との間を転動しながらボールナット46を、図2及び図3に示すように、最大左方向へ直線状に移動させる。
【0056】
これによって制御軸32は、図9に示すように、リンク部材48と連係アーム47とによって時計方向に回転駆動される。
【0057】
したがって、制御カム33は、軸心P2が図9A、Bに示すように制御軸32の軸心P1の回りを同一半径で回転して、肉厚部が駆動軸13から上方向に離間移動する。これにより、ロッカアーム23の他端部23bとリンクロッド25の枢支点は、駆動軸13に対して上方向へ移動し、このため、各揺動カム17は、リンクロッド25を介してカムノーズ部21側が強制的に引き上げられて全体が時計方向へ回動する。
【0058】
よって、駆動カム15が回転してリンクアーム24を介してロッカアーム23の一端部23aを押し上げると、そのバルブリフト量がリンクロッド25を介して揺動カム17及びバルブリフター16に伝達されるが、そのリフト量は充分小さくなる。
【0059】
したがって、かかる機関の低回転領域では、バルブリフト量L1が図11に示すように最も小さくなることにより、各吸気弁2の開時期が遅くなり、排気弁とのバルブオーバラップが小さくなる。このため、燃費の向上と機関の安定した回転が得られる。
【0060】
また、機関高回転領域に移行した場合は、コントロールユニット40からの制御電流によって電動モータ36が逆回転し、この回転トルクがボール螺子軸45に伝達されて回転すると、この回転に伴ってボールナット46が各ボール54を介して図1及び図2に示す位置から図3及び図4に示す右方向へ直線移動する。
【0061】
したがって、制御軸32は、制御カム33を図9に示す位置から時計方向へ回転させて、図10A、Bに示すように軸心P2を下方向へ回動させる。このため、ロッカアーム23は、今度は全体が駆動軸13方向寄りに移動して他端部23bが揺動カム17のカムノーズ部21をリンクロッド25を介して下方へ押圧して該揺動カム17全体を所定量だけ反時計方向へ回動させる。
【0062】
よって、駆動カム15が回転してリンクアーム24を介してロッカアーム23の一端部23aを押し上げると、そのバルブリフト量がリンクロッド25を介して揺動カム17及びバルブリフター16に伝達されるが、そのリフト量L2は大きくなる。
【0063】
よって、かかる高回転領域では、各吸気弁2のバルブリフト量L2が図11に示すように、最大に大きくなり、該各吸気弁2の開時期が早くなると共に、閉時期が遅くなる。この結果、吸気充填効率が向上し、十分な出力が確保できる。
【0064】
また、前記ボール螺子軸45の回転力をボール循環溝49とガイド溝53間で各ボール54がほぼ転がり接触状態で転動することによりボールナット46に伝達するようになっており、各部間の摩擦抵抗が極めて小さくなることから、ボールナット46の移動が円滑になると共に、移動応答性が向上する。この結果、機関運転状態変化に応じて制御軸32による吸気弁2,2のバルブリフト制御応答性も良好になる。
【0065】
また、この実施形態では、前記ボール螺子軸45が回転して前記ボールナット46が図4及び図5に示す一方向へ最大に移動すると、リンク部材48は、ボールナット46の移動に伴って漸次傾倒しながら前記空間部59がボール螺子軸45の上端部に嵌入して該ボール螺子軸45とほぼ平行になるまで傾倒させて伸ばすことが可能になる。このため、前記ボールナット46を軸方向へ大きく移動させることができる。
【0066】
この結果、前記制御軸32の回転角度範囲を十分に大きくすることができるので、前記可変機構4による各吸気弁2,2のバルブリフト量の可変制御幅を大きくすることが可能になる。
【0067】
また、前記ボールナット46がコイルスプリング62のばね力によって電動モータ36の方向へ付勢されることによって、ガイド溝53とボール循環溝49との間のバックラッシが低減されているため、ボールナット46の移動時、特に移動変換時における前記ガイド溝53とボール循環溝49との歯部間の打音の発生を効果的に防止できる。
【0068】
そして、この実施形態では、ハウジング35内に滞留している潤滑油Oは、出ボール螺子軸45の回転や機関の振動によってハウジング35内でミスト状態に飛散して前記第1ボールベアリング50の内部に流入するが、このボールベアリング50は複数列になっていることから、そこから外部へリークしにくくベアリング内部に滞留する。このため、該第1ボールベアリング50の潤滑性が向上する。
【0069】
また、駆動軸13の回転に伴って前記角度検出子42が回転すると、収容室35a内の潤滑油Oが跳ね上がられて、該潤滑油Oが前記第1ボールベアリング50に積極的に供給される。このため、該第1ボールベアリング50の潤滑性能がさらに向上する。
【0070】
また、前記角度検出子42を潤滑油Oの供給機構としても機能させることができるので、さらに特別に潤滑油供給機構を設ける必要がなくなる。したがって、コストの低減化が図れる。
【0071】
さらに、この実施形態では、例えば前記バルブスプリング3,3のばね力などに起因して発生する交番トルクなどの振動が、前記制御軸32からボールナット46を介してボール螺子軸45に伝達された場合に、かかる振動を前記第1ボールベアリング50内に滞留した潤滑油によって効果的に吸収することが可能になる。
【0072】
また、アンギュラベアリングによって構成された第1ボールベアリング50は、前記ボール螺子軸45の軸方向の荷重を吸収することができるので、第1ボールベアリング50内に供給された潤滑油の粘性と相俟って前記交番トルクによる前記ボール螺子軸45の軸方向の振動を効果的に抑制することができる。
【0073】
前記電動モータ36は、ハウジング35の内の潤滑油が滞留しない位置に取り付られていると共に、第1ボールベアリング50によって収容室35a内の潤滑油Oが電動モータ36方向へ流入するのを遮断することができる。したがって、電動モータ36のモータハウジング38内部への潤滑油の流入を確実に阻止することが可能になる。この結果、電動モータ36の電磁コイルの通電性能の低下を防止できる。
【0074】
次に、前記ボール螺子軸45やボールナット46などの各構成部品をハウジング35内に一端開口部35cから収容室35a内に組み付ける手順を簡単に説明する。
【0075】
まず、図6に示すように、ボール螺子軸45の外周にボールナット46を組み付ける際に、予め前記リンク部材48の連結部58を上側に位置させて一端部を、ピン孔57aを介してボールナット46の各ピン55に回転自在に連結しておく。
【0076】
次に、ボール螺子軸45の先端側に第2ボールベアリング51を取り付けると共に、この際に、第2ボールベアリング51とボールナット46との間にコイルスプリング62を各スプリングリテーナ60,61を介して弾装させる。また、ボール螺子軸45の電動モータ36側の端部に第1ボールベアリング50を配置固定する。
【0077】
その後、図7に示すように、ボールナット46を、コイルスプリング62のばね力に抗して先端側の第2ボールベアリング51方向へ回転させながら移動させると共に、前記リンク部材48を、ボール螺子軸45の上端部に前記空間部59を嵌入させた状態で大きくて傾倒させてボール螺子軸45の軸線とほぼ平行となるように配置する。この状態では、リンク部材48の他端部が、前記第1ボールベアリング50の一側面に前記コイルスプリング62のばね力によって弾接している。
【0078】
これによって、ボール螺子軸45を中心として各ボールベアリング50,51、ボールナット46及びリンク部材48,コイルスプリング62などのからなるボール螺子機構37全体が一つのユニット体に形成される。
【0079】
次に、かかるユニット体を前記ハウジング35の一端開口部35cから収容室35a内に軸方向から位置決めしつつ挿通することによって内部に組み付けるようになっている。
【0080】
続いて、ボール螺子軸45の一端部に前記連結部材52を介して前記電動モータ36の駆動シャフト36aを連結すると共に、前記モータケーシング38の先端部38aを一端開口部35cの孔縁にボルトによって固定することによって、各構成部品がハウジング35内に収容配置される。
【0081】
その後、ハウジング35内において、予めハウジング35の膨出部35b内に臨設された制御軸32の一端部32aに連係アーム47を固定すると共に、該連係アーム47の突部47bに、コイルスプリング62のばね力に抗して引き上げた前記リンク部材48の他端部をピン孔57bに挿通したピン56を介して回転自在に連結する。これによって、各構成部品の組み付け作業が簡単に終了する。
【0082】
特に、この実施形態では、前記リンク部材48を、前述のように、ボール螺子軸45とほぼ平行になるまで傾倒させることができるので、前記ユニット体が径方向に嵩張ることがなくなり、全体のコンパクト化が図れる。
【0083】
したがって、かかるユニット体を一端開口部35cからハウジング35内に挿入して組み付ける作業がきわめて容易になる。
【0084】
また、前述のように、各構成部品を予めユニット化する際に、リンク部材を48大きく傾倒させた状態でコイルスプリング62のばね力によってボール螺子軸45とほぼ平行状態に仮止め固定状態にすることができるので、前記ハウジング35内への挿入作業がさらに容易かつ安定して行うことができる。
【0085】
前記実施形態から把握される前記請求項に記載した発明以外の技術的思想について以下に説明する。
【0086】
請求項(1)前記ハウジング内に、機関のクランクシャフトによって回転駆動される回転部材が配置され、該回転部材の一部が前記ハウジング内の滞留した潤滑油に浸漬していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載されたアクチュエータ装置。
【0087】
ハウジング内に配置された回転部材の回転に伴って内部の潤滑油が跳ね上がられて、該潤滑油が前記複数列のボールベアリングに積極的に供給される。
【0088】
請求項(2)前記回転部材は、機関弁を開閉作動させる駆動軸の回転角度を検出する検出器の検出部であることを特徴とする請求項(1)に記載のアクチュエータ装置。
【0089】
この発明によれば、回転部材を潤滑油の供給機構としても機能させることができるので、さらに特別に潤滑油供給機構を設ける必要がなくなる。したがって、コストの低減化が図れる。
【0090】
請求項(3) 前記制御軸の回転制御によって前記機関弁のバルブリフト量を機関駆動状態に応じて可変制御する可変機構を備え、
前記可変機構は、
クランクシャフトから回転力が伝達される駆動軸と、
該駆動軸の回転運動を揺動運動に変換する運動変換機構と、
該運動変換機構からの揺動運動を前記カムに作用させて、該カムを揺動させる伝達機構とから構成されていることを特徴とする請求項1〜(2)のいずれかにに記載のアクチュエータ装置。
【0091】
請求項(4)前記可変機構は、
機関のクランク軸に同期して回転し、外周に駆動カムが設けられた駆動軸と、 支軸に揺動自在に支持されて、カム面がバルブリフター上面を摺接して機関弁を開閉作動させる揺動カムと、
一端部が前記駆動カムに機械的に連係し、他端部がリンクロッドを介して揺動カムに連係したロッカアームとを備え、
機関運転状態に応じて前記ロッカアームの揺動支点を変化させることにより、揺動カムのカム面のバルブリフター上面に対する当接位置を変化させて機関弁のバルブリフトを可変にするように構成されたことを特徴とする請求項(3)に記載のアクチュエータ装置。
【0092】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、複数列の軸受は、ボールベアリングに限定されるものではなくニードルベアリングなどによって構成することも可能であり、また複数列であればアンギュラベアリングでなくてもよい。
【0093】
また、前記制御軸32は、前述のようなバルブリフト量を可変制御する可変機構4以外の機構に適用することも可能である。
【0094】
また、例えば電動モータ36の配置は、エンジンルームのレイアウトによって自由に変更できる。また、前記駆動部としては電動モータの他に、油圧モータや油圧シリンダなどであってもよい。
【0095】
さらに、ボール螺子の循環列を形成する例として、ディフレクタを示したが、チューブなどを用いて循環列を形成する方式であってもよい。また、出力軸と移動ナットとは、ボール54を用いずにボルト、ナットの関係で直接噛合させることも可能である。
【0096】
また、本発明は、吸気弁側の他に排気弁側あるいは両方の弁側に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本実施形態のアクチュエータ装置による最小リフト制御時の作動説明図である。
【図2】同アクチュエータ装置の最小リフト制御時の斜視図である。
【図3】本実施形態のアクチュエータ装置による最小リフト制御時の作動説明図である。
【図4】同アクチュエータ装置の最大リフト制御時の斜視図である。
【図5】同アクチュエータ装置の要部斜視図である。
【図6】アクチュエータ装置のハウジングへの組み付け手順を示す分解図である。
【図7】アクチュエータ装置のハウジングへの組み付け手順を示す分解図である。
【図8】本実施形態が適用される可変機構及び駆動機構の斜視図ある。
【図9】Aは可変動弁装置における最小リフト制御時の閉弁作用を示す図8のA矢視図、Bは同最小リフト制御時の開弁作用を示す図8のA矢視図である。
【図10】Aは可変動弁装置における最大リフト制御時の閉弁作用を示す図8のA矢視図、Bは同最大リフト制御時の開弁作用を示す図8のA矢視図である。
【図11】本実施形態の可変動弁装置による各吸気弁のバルブリフト特性図である。
【符号の説明】
【0098】
2…吸気弁(機関弁)
4…可変機構
6…駆動機構(アクチュエータ装置)
32…制御軸
35…ハウジング
35a…収容室
37…ボール螺子伝達機構
45…ボール螺子軸(出力軸)
46…ボールナット(移動ナット)
47…連係アーム(リンク機構)
48…リンク部材(リンク機構)
49…雄ねじ部(ねじ部)
50…第1ボールベアリング(軸受)
51…第2ボールベアリング(軸受)
O…潤滑油
L…油面レベル
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、内燃機関の吸気弁や排気弁のバルブリフト量や作動角等を機関駆動状態に応じて可変制御する可変動弁装置などに適用されるアクチュエータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃機関の可変動弁装置に用いられるアクチュエータ装置としては、種々提供されており、その1つとして例えば以下の特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、可変動弁装置は、クランクシャフトから回転力が伝達される駆動軸と、揺動することによって一気筒当たり2つの吸気弁を開閉作動させる揺動カムと、前記駆動軸の外周に固定された駆動カムと前記揺動カムとの間に介装されて、駆動カムの回転力を揺動運動に変換して前記揺動カムに伝達するロッカアームなどからなる伝達機構と、前記ロッカアームの中央に有する支持孔内に挿通配置された偏心制御カム及び該偏心制御カムを回転制御する制御軸とからなる制御機構と、前記制御軸を機関駆動状態に応じて回転制御するアクチュエータ装置とを備えている。
【0004】
このアクチュエータ装置は、シリンダヘッドに取り付けられて、内部に潤滑油が滞留されたハウジングと、該ハウジング内において両端部がそれぞれ通常のボールベアリングによって回転自在に支持され、電動モータによって正逆回転されるボール螺子軸と、該ボール螺子軸の外周面に形成された雄ねじ部に内周の雌ねじが螺合して軸方向へ移動可能な移動ナットと、二股状の一端部が前記移動ナットの両側部にピンを介して揺動自在に連係されたリンク部材と、基端部が前記制御軸の一端部に固定されて、突出端が前記リンク部材の他端部に回転自在に連係された連結アームとを備えている。
【0005】
そして、前記電動モータの正逆回転駆動に伴ってボール螺子軸が正逆回転することにより、移動ナットが軸方向へ移動して、前記リンク部材を介して前記制御軸の回転位置を制御することにより、偏心制御カムが前記ロッカアームの揺動支点を変化させることによって前記吸気弁のバルブリフト量を変化させるするようになっている。
【特許文献1】特開2004−76824号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のアクチュエータ装置にあっては、前記ハウジングのシリンダヘッドに対する取り付け角度が傾斜状になっていることから、前記一方のボールベアリングは、ハウジング内の潤滑油に浸漬状態に配置されて十分に潤滑されているものの、他方のボールベアリングは前記潤滑油に浸漬されていない。このため、かかる他方のボールベアリングを十分に潤滑することが困難になり、耐久性が低下してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記従来のアクチュエータ装置の実状に鑑みて案出されたもので、請求項1記載の発明にあっては、とりわけ、一方の軸受を、ハウジング内に滞留した潤滑油に浸漬するように配置すると共に、他方の軸受を、前記潤滑油に浸漬されない状態で配置したアクチュエータ装置において、前記他方の軸受を、複数列のボールベアリングによって構成したことを特徴としている。
【0008】
この発明によれば、ハウジング内に滞留している潤滑油は、出力軸の回転や機関の振動によってハウジング内でミスト状態になりながら飛散して前記他方のボールベアリングの内部に流入するが、このボールベアリングは複数列になっていることから、この内部に滞留し易くなる。このため、該他方側のボールベアリングの潤滑性が向上する。
【0009】
しかも、例えば機関弁を閉方向に付勢するバルブスプリングのばね力などに起因して発生する交番トルクなどの振動が、前記制御軸から移動ナットを介して出力軸に伝達された場合に、かかる振動を前記他方のボールベアリング内に滞留した潤滑油によって効果的に吸収することが可能になる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記複数列のボールベアリングを、アンギュラベアリングによって構成したことを特徴としている。
【0011】
この発明によれば、他方のアンギュラベアリングによって出力軸の軸方向の荷重を吸収することができると共に、このアンギュラベアリング内に供給された前記潤滑油の粘性と相俟って前記交番トルクによる前記出力軸の軸方向の振動を効果的に抑制することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記駆動部を、電動モータによって構成すると共に、該電動モータを、前記ハウジングの内の潤滑油が滞留しない位置に取り付け、かつ、前記複数列のボールベアリングを、前記出力軸の電動モータ側に配置したことを特徴としている。
【0013】
一般に電動モータは、内部に電磁コイルが存在することから、常時良好な通電性を得る必要上、電動モータの内部に潤滑油が入り込まないようにしなければならないが、この発明によれば、電動モータは、ハウジング内の潤滑油からは隔絶した位置に配置され、しかも、複数列のボールベアリングによって、ハウジング内の潤滑油が電動モータ方向へ流入するのを遮断することができる。したがって、前記電動モータ内部への潤滑油の流入を十分に防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るアクチュエータ装置を内燃機関の可変動弁装置に適用した実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、この実施形態では、可変動弁装置をV型6気筒内燃機関の吸気側に適用したものであって、本実施形態の図面では片側3気筒に適用した場合を示している。
【0015】
すなわち、可変動弁装置は、図8〜図10に示すように、シリンダヘッド1に図外のバルブガイドを介して摺動自在に設けられて、バルブスプリング3,3によって閉方向に付勢された一対の吸気弁2,2と、該各吸気弁2,2のバルブリフト量を可変制御する可変機構4と、該可変機構4の作動位置を制御する制御機構5と、該制御機構5を回転駆動するアクチュエータ装置である駆動機構6とを備えている。
【0016】
前記可変機構4は、シリンダヘッド1の上部に有する軸受14に回転自在に支持された中空状の駆動軸13と、該駆動軸13に圧入等により固設された駆動カム15と、駆動軸13の外周面に揺動自在に支持されて、各吸気弁2,2の上端部に配設されたバルブリフター16,16の上面に摺接して各吸気弁2,2を開作動させる2つの揺動カム17,17と、前記駆動カム15と揺動カム17,17との間に連係されて、駆動カム15の回転力を揺動運動に変換して揺動カム17,17に揺動力として伝達する伝達手段とを備えている。
【0017】
前記駆動軸13は、機関前後方向に沿って配置されていると共に、一端部に設けられた図外の従動スプロケットや、該従動スプロケットに巻装されたタイミングチェーン等を介して機関のクランク軸から回転力が伝達されており、この回転方向は図8中、時計方向(矢印方向)に設定されている。
【0018】
前記軸受14は、図9Aに示すように、シリンダヘッド1の上端部に設けられて駆動軸13の上部を支持するメインブラケット14aと、該メインブラケット14aの上端部に設けられて、後述する制御軸32を回転自在に支持するサブブラケット14bとを有し、両ブラケット14a、14bが一対のボルト14c、14cによって上方から共締め固定されている。
【0019】
前記駆動カム15は、ほぼリング状を呈し、円環状のカム本体と、該カム本体の外端面に一体に設けられた筒状部とからなり、内部軸方向に駆動軸挿通孔が貫通形成されていると共に、カム本体の軸心Yが駆動軸13の軸心Xから径方向へ所定量だけオフセットしている。
【0020】
前記両揺動カム17は、同一形状のほぼ雨滴状を呈し、円環状のカムシャフト20の両端部に一体的に設けられていると共に、該カムシャフト20が駆動軸13に回転自在に支持されている。また、先端部のカムノーズ部21側にピン孔が貫通形成されていると共に、下面には各バルブリフタ16に摺接するカム面22がそれぞれ形成されている。このカム面22は、カムシャフト20側の基円面と、該基円面からカムノーズ部21側に円弧状に延びるランプ面と、該ランプ面からカムノーズ部21の先端側に有する最大リフトの頂面に連なるリフト面が形成されており、該基円面とランプ面及びリフト面が、揺動カム17の揺動位置に応じて各バルブリフター16の上面の所定位置に当接するようになっている。
【0021】
前記伝達手段は、駆動軸13の上方に配置されたロッカアーム23と、該ロッカアーム23の一端部23aと駆動カム15とを連係するリンクアーム24と、ロッカアーム23の他端部23bと揺動カム17とを連係するリンクロッド25とを備えている。
【0022】
前記ロッカアーム23は、中央に有する筒状の基部が支持孔を介して後述する制御カム33に回転自在に支持されている。また、筒状基部の外端部に突設された前記一端部23aには、ピン26が嵌入するピン孔が貫通形成されている一方、基部の内端部に突設された前記他端部23bには、リンクロッド25の一端部と連結するピン27が嵌入するピン孔が形成されている。
【0023】
前記リンクアーム24は、比較的大径な円環状の基部24aと、該基部24aの外周面所定位置に突設された突出端24bとを備え、基部24aの中央位置には、前記駆動カム15のカム本体が回転自在に嵌合する嵌合孔24cが形成されている一方、突出端24bには、前記ピン26が回転自在に挿通するピン孔が貫通形成されている。
【0024】
前記リンクロッド25は、ロッカアーム23側が凹状のほぼく字形状に形成され、両端部25a,25bには前記ロッカアーム23の他端部23bと揺動カム17のカムノーズ部21の各ピン孔に挿入した各ピン27,28の端部が回転自在に挿通するピン挿通孔が貫通形成されている。
【0025】
なお、各ピン26,27,28の一端部には、リンクアーム24やリンクロッド25の軸方向の移動を規制するスナップリングがそれぞれが設けられている。
【0026】
前記制御機構19は、駆動軸13の上方位置に同じ軸受14に回転自在に支持された制御軸32と、該制御軸32の外周に固定されてロッカアーム23の支持孔に摺動自在に嵌入されて、ロッカアーム23の揺動支点となる制御カム33とを備えている。
【0027】
前記制御軸32は、駆動軸13と並行に機関前後方向に配設されていると共に、所定位置のジャーナル部が前記軸受14のメインブラケット14a、とサブブラケット14bとの間に回転自在に軸受されている。
【0028】
前記制御カム33は、円筒状を呈し、軸心P2位置が制御軸32の軸心P1から所定分だけ偏倚している。
【0029】
前記駆動機構6は、図1〜図5に示すように、シリンダヘッド1の後端部に取り付けられたハウジング35と、該ハウジング35の一端部に固定された駆動部である電動モータ36と、ハウジング35の内部に設けられて電動モータ36の回転駆動力を前記制御軸32に伝達する減速機構であるボール螺子伝達機構37とから構成されている。
【0030】
前記ハウジング35は、アルミ合金材などによって一体に形成され、図1、図3にも示すように、シリンダヘッド1に対して水平線Qから所定角度θをもって傾斜状に取り付けられ、内部には、前記制御軸32の軸方向とほぼ直角方向に沿って配置されて、ボール螺子伝達機構37が収容配置される細長い収容部35aと、該収容部35aの上端部中央に上方へ突出して、内部に前記制御軸32の一端部32aが臨む膨出室35bが形成されている。
【0031】
さらに、前記収容室35aは、軸方向の一端部に円形状の開口部35cが形成されていると共に、他端部側が端壁35dによって閉塞されている。一方、前記膨出室35bは、シリンダヘッド1側の開口端が該シリンダヘッド1の内部に連通している。
【0032】
また、前記収容室35a内には、前記制御軸32の内部軸方向に形成された油通路32bやシリンダヘッド1の内部から常時供給された潤滑油Oが所定油面レベルLまで滞留している。前記油通路32bは、機関の潤滑油を圧送する図外のメインオイルギャラリーと連通している。
【0033】
さらに、前記収容室35a内部には、図5に示すように、前記駆動軸13の回転角度を検出する検出器である電磁式の前記駆動軸回転角センサ41の回転部材である角度検出子42が前記一端開口から収容配置されている。
【0034】
すなわち、前記駆動軸回転角センサ41は、駆動軸13の一端に固定された攪拌部材である角度検出子42と、前記ハウジング35に設けられて、前記角度検出子42の回転位置をピックアップする角度検出部43とから構成されている。
【0035】
前記角度検出子42は、前記収容室35a内に臨むほぼ円板状の検出子本体42aと、該検出子本体42aの外周に一体に設けられた4つの突部42bとから構成され、該各突部42bは検出子本体42aの円周方向へ約90°の角度位置にそれぞれ径方向に沿って突設されている。また、前記角度検出子42は、その約下半分が前記ハウジング35内に滞留した潤滑油Oの油面レベルLよりも下にあって常時エンジンオイルに浸されている状態になっている。
【0036】
前記電動モ−タ36は、比例型のDCモータによって構成され、ほぼ円筒状のモータケーシング38の先端部38aが前記収容室35aの前記開口部35cを封止する状態で固定されている。また、電動モ−タ36は、前記開口部35c側がメカニカルシール39によって駆動シャフト36aを介してシールされている。また、電動モータ36は、図8に示すように、機関の運転状態を検出するコントロールユニット40からの制御電流によって駆動するようになっている。
【0037】
このコントロールユニット40は、図外のクランク角センサやエアーフローメータ、水温センサや、前記駆動軸回転角センサ41及び制御軸32の回転位置を検出するポテンショメータ44等の各種のセンサからの検出信号をフィードバックして現在の機関運転状態を演算などにより検出して、前記電動モータ36に制御電流を出力している。
【0038】
前記ボール螺子伝達機構37は、前記ハウジング35の収容室35a内に電動モータ36の駆動シャフト36aとほぼ同軸上に配置された出力軸であるボール螺子軸45と、該ボール螺子軸45の外周に螺合する移動ナットであるボールナット46と、膨出室35b内で前記制御軸32の一端部32aに軸方向から連結された連係アーム47と、該連係アーム47と前記ボールナット46とを連係するリンク部材48とから主として構成され、この連係アーム47とリンク部材48によってリンク機構を構成している。
【0039】
前記ボール螺子軸45は、両端部を除く外周面全体に所定幅のねじ部であるボール循環溝49が螺旋状に連続して形成されていると共に、前記収容室35aの一端開口部35cと他端部の小径部内にそれぞれ臨んだ両端部45a、45bが軸受である第1、第2ボールベアリング50、51によって回転自在に軸受けされている。
【0040】
前記電動モータ36側の第1ボールベアリング50は、2列のボール溝にそれぞれ複数のボール50a、50bが転動自在に設けられたアンギュラベアリングによって構成され、アウターレースの外周面が一端開口部35cの内側に圧入固定されていると共に、円筒状の雄ねじ状のリテーナ63によって軸方向に位置決め固定されている
一方、先端側の第2ボールベアリング51は、通常の構造であって、1列のボール溝に複数のボールが転動自在に設けられていると共に、アウターレースの外周面が他端壁35dの小径部の内部に圧入固定されている。
【0041】
そして、前記ハウジング35が傾斜していることから、前記第2ボールベアリング51は、収容室35a内に滞留している潤滑油Oに常時浸漬されている状態になっているのに対して、前記アンギュラベアリングである第1ボールベアリング50は、潤滑油Oに浸漬されずに油面レベルLから露出した状態になっている。
【0042】
さらに、ボール螺子軸45は、一端部45aの先端の六角軸と電動モータ36の駆動シャフト36aの先端部が円筒状の連結部材52によって同軸上で軸方向移動可能に結合され、かかる結合によって電動モータ36の回転駆動力を前記ボール螺子軸45に伝達すると共に、ボール螺子軸45の軸方向の僅かな移動を許容している。
【0043】
前記ボールナット46は、ほぼ円筒状に形成され、内周面に前記ボール循環溝49と共同して複数のボール54を転動自在に保持するガイド溝53が螺旋状に連続して形成されていると共に、複数のボール54の循環列をボールナット46の軸方向の前後2個所に設定する2つのディフレクタが取り付けられている。つまり、このディフレクタは、前記ボール循環溝49とガイド溝53との間を転動する前記複数のボール54を同一溝内に循環させるために、同循環列内に再び戻すようにボール54を案内するものであり、この循環列を軸方向の前後2個所に設けたものである。
【0044】
前記ボールナット46は、各ボール54を介してボール螺子軸45の回転運動をボールナット46に直線運動に変換しつつ軸方向の移動力が付与されるようになっている。また、ボールナット46は、軸方向のほぼ中央位置に前記リンク部材48の一端部と連結される枢支ピン55が回転自在に設けられている。
【0045】
前記連係アーム47は、図2〜図5に示すように、ほぼ異形状に形成され、ほぼ菱形の基部47aが制御軸32の一端部32aに軸方向から一体的に固定されていると共に、前記基部47aの一端側に突設された突部47bに前記リンク部材48の他端部が枢支ピン56によって回転自在に連結されている。
【0046】
前記リンク部材48は、図1〜図5にも示すように、板材をプレス成形によって横断面ほぼコ字形状(凹状部)に折曲形成してなり、平行な一対の細長い平板状のリンク部57、57と、該両リンク部57、57のほぼ中央上端を結合する連結部58とから構成されている。
【0047】
前記両リンク部57,57は、長手方向のほぼ中央が互いにクランク状に折曲形成されて、一端部側が拡幅状に形成されている一方、他端部側が狭幅状に形成されており、前記両端部には、ピン孔がそれぞれ貫通形成されている。
【0048】
前記連結部58は、平面ほぼ長方形状に形成されて、両端部が下方へL字形状に折曲形成されていると共に、両端縁が各リンク部57,57の狭幅な他端部側寄りのほぼ中央位置の各上端縁に一体に結合されて、幅方向へ架橋状態に配置されている。
【0049】
したがって、リンク部材48は、内部が両リンク部57、57によって連結部58と反対側の下端が開口した細長い凹状部である空間部59になっていると共に、両端部側も開口状態になって、いわば平行な二股状に形成されている。
【0050】
また、両リンク部57,57は、各一端部が同じく前記ボールナット46のほぼ中央を僅かなクリアランスをもって挟み込むように嵌合している一方、各他端部が前記連係アーム47の突部47bを両側から僅かなクリアランスをもって挟み込むように嵌合している。
【0051】
そして、このリンク部材48は、前記各一端部の前記各ピン孔に挿通した前記枢支ピン55を介して前記ボールナット46に対して回動自在に連結されている一方、各他端部の前記各ピン孔に挿通した前記枢支ピン56を介して前記連係アーム47の突部47bに対して回転自在に連結されている。
【0052】
なお、前記両枢支ピン55,56は、両端部がかしめ加工によって前記各ピン孔に固定されている。
【0053】
したがって、このリンク部材48は、ピン55、56を介してボールナット46の移動に伴い傾動可能になっており、完全に傾倒した姿勢では、図7にも示すように、前記空間部59が前記ボール螺子軸45の上端部に嵌入して該ボール螺子軸45の軸線とほぼ平行となるまで傾倒可能になっている。
【0054】
また、前記ボールナット46の軸方向一端部に設けられたスプリングリテーナ60と第2ボールベアリング51側に設けられたスプリングリテーナ61との間には、前記ボールナット46を電動モータ36方向へ付勢するコイルスプリング62が弾装されている。
【0055】
以下、本実施形態に係るアクチュエータ装置の作動を説明すれば、まず、例えば、機関のアイドリング運転時を含む低回転運転領域には、コントロールユニット40から出力された制御電流によって電動モータ36が回転してこの回転トルクによりボール螺子軸45が回転する。そうすると、この回転に伴って各ボール54がボール循環溝49とガイド溝53との間を転動しながらボールナット46を、図2及び図3に示すように、最大左方向へ直線状に移動させる。
【0056】
これによって制御軸32は、図9に示すように、リンク部材48と連係アーム47とによって時計方向に回転駆動される。
【0057】
したがって、制御カム33は、軸心P2が図9A、Bに示すように制御軸32の軸心P1の回りを同一半径で回転して、肉厚部が駆動軸13から上方向に離間移動する。これにより、ロッカアーム23の他端部23bとリンクロッド25の枢支点は、駆動軸13に対して上方向へ移動し、このため、各揺動カム17は、リンクロッド25を介してカムノーズ部21側が強制的に引き上げられて全体が時計方向へ回動する。
【0058】
よって、駆動カム15が回転してリンクアーム24を介してロッカアーム23の一端部23aを押し上げると、そのバルブリフト量がリンクロッド25を介して揺動カム17及びバルブリフター16に伝達されるが、そのリフト量は充分小さくなる。
【0059】
したがって、かかる機関の低回転領域では、バルブリフト量L1が図11に示すように最も小さくなることにより、各吸気弁2の開時期が遅くなり、排気弁とのバルブオーバラップが小さくなる。このため、燃費の向上と機関の安定した回転が得られる。
【0060】
また、機関高回転領域に移行した場合は、コントロールユニット40からの制御電流によって電動モータ36が逆回転し、この回転トルクがボール螺子軸45に伝達されて回転すると、この回転に伴ってボールナット46が各ボール54を介して図1及び図2に示す位置から図3及び図4に示す右方向へ直線移動する。
【0061】
したがって、制御軸32は、制御カム33を図9に示す位置から時計方向へ回転させて、図10A、Bに示すように軸心P2を下方向へ回動させる。このため、ロッカアーム23は、今度は全体が駆動軸13方向寄りに移動して他端部23bが揺動カム17のカムノーズ部21をリンクロッド25を介して下方へ押圧して該揺動カム17全体を所定量だけ反時計方向へ回動させる。
【0062】
よって、駆動カム15が回転してリンクアーム24を介してロッカアーム23の一端部23aを押し上げると、そのバルブリフト量がリンクロッド25を介して揺動カム17及びバルブリフター16に伝達されるが、そのリフト量L2は大きくなる。
【0063】
よって、かかる高回転領域では、各吸気弁2のバルブリフト量L2が図11に示すように、最大に大きくなり、該各吸気弁2の開時期が早くなると共に、閉時期が遅くなる。この結果、吸気充填効率が向上し、十分な出力が確保できる。
【0064】
また、前記ボール螺子軸45の回転力をボール循環溝49とガイド溝53間で各ボール54がほぼ転がり接触状態で転動することによりボールナット46に伝達するようになっており、各部間の摩擦抵抗が極めて小さくなることから、ボールナット46の移動が円滑になると共に、移動応答性が向上する。この結果、機関運転状態変化に応じて制御軸32による吸気弁2,2のバルブリフト制御応答性も良好になる。
【0065】
また、この実施形態では、前記ボール螺子軸45が回転して前記ボールナット46が図4及び図5に示す一方向へ最大に移動すると、リンク部材48は、ボールナット46の移動に伴って漸次傾倒しながら前記空間部59がボール螺子軸45の上端部に嵌入して該ボール螺子軸45とほぼ平行になるまで傾倒させて伸ばすことが可能になる。このため、前記ボールナット46を軸方向へ大きく移動させることができる。
【0066】
この結果、前記制御軸32の回転角度範囲を十分に大きくすることができるので、前記可変機構4による各吸気弁2,2のバルブリフト量の可変制御幅を大きくすることが可能になる。
【0067】
また、前記ボールナット46がコイルスプリング62のばね力によって電動モータ36の方向へ付勢されることによって、ガイド溝53とボール循環溝49との間のバックラッシが低減されているため、ボールナット46の移動時、特に移動変換時における前記ガイド溝53とボール循環溝49との歯部間の打音の発生を効果的に防止できる。
【0068】
そして、この実施形態では、ハウジング35内に滞留している潤滑油Oは、出ボール螺子軸45の回転や機関の振動によってハウジング35内でミスト状態に飛散して前記第1ボールベアリング50の内部に流入するが、このボールベアリング50は複数列になっていることから、そこから外部へリークしにくくベアリング内部に滞留する。このため、該第1ボールベアリング50の潤滑性が向上する。
【0069】
また、駆動軸13の回転に伴って前記角度検出子42が回転すると、収容室35a内の潤滑油Oが跳ね上がられて、該潤滑油Oが前記第1ボールベアリング50に積極的に供給される。このため、該第1ボールベアリング50の潤滑性能がさらに向上する。
【0070】
また、前記角度検出子42を潤滑油Oの供給機構としても機能させることができるので、さらに特別に潤滑油供給機構を設ける必要がなくなる。したがって、コストの低減化が図れる。
【0071】
さらに、この実施形態では、例えば前記バルブスプリング3,3のばね力などに起因して発生する交番トルクなどの振動が、前記制御軸32からボールナット46を介してボール螺子軸45に伝達された場合に、かかる振動を前記第1ボールベアリング50内に滞留した潤滑油によって効果的に吸収することが可能になる。
【0072】
また、アンギュラベアリングによって構成された第1ボールベアリング50は、前記ボール螺子軸45の軸方向の荷重を吸収することができるので、第1ボールベアリング50内に供給された潤滑油の粘性と相俟って前記交番トルクによる前記ボール螺子軸45の軸方向の振動を効果的に抑制することができる。
【0073】
前記電動モータ36は、ハウジング35の内の潤滑油が滞留しない位置に取り付られていると共に、第1ボールベアリング50によって収容室35a内の潤滑油Oが電動モータ36方向へ流入するのを遮断することができる。したがって、電動モータ36のモータハウジング38内部への潤滑油の流入を確実に阻止することが可能になる。この結果、電動モータ36の電磁コイルの通電性能の低下を防止できる。
【0074】
次に、前記ボール螺子軸45やボールナット46などの各構成部品をハウジング35内に一端開口部35cから収容室35a内に組み付ける手順を簡単に説明する。
【0075】
まず、図6に示すように、ボール螺子軸45の外周にボールナット46を組み付ける際に、予め前記リンク部材48の連結部58を上側に位置させて一端部を、ピン孔57aを介してボールナット46の各ピン55に回転自在に連結しておく。
【0076】
次に、ボール螺子軸45の先端側に第2ボールベアリング51を取り付けると共に、この際に、第2ボールベアリング51とボールナット46との間にコイルスプリング62を各スプリングリテーナ60,61を介して弾装させる。また、ボール螺子軸45の電動モータ36側の端部に第1ボールベアリング50を配置固定する。
【0077】
その後、図7に示すように、ボールナット46を、コイルスプリング62のばね力に抗して先端側の第2ボールベアリング51方向へ回転させながら移動させると共に、前記リンク部材48を、ボール螺子軸45の上端部に前記空間部59を嵌入させた状態で大きくて傾倒させてボール螺子軸45の軸線とほぼ平行となるように配置する。この状態では、リンク部材48の他端部が、前記第1ボールベアリング50の一側面に前記コイルスプリング62のばね力によって弾接している。
【0078】
これによって、ボール螺子軸45を中心として各ボールベアリング50,51、ボールナット46及びリンク部材48,コイルスプリング62などのからなるボール螺子機構37全体が一つのユニット体に形成される。
【0079】
次に、かかるユニット体を前記ハウジング35の一端開口部35cから収容室35a内に軸方向から位置決めしつつ挿通することによって内部に組み付けるようになっている。
【0080】
続いて、ボール螺子軸45の一端部に前記連結部材52を介して前記電動モータ36の駆動シャフト36aを連結すると共に、前記モータケーシング38の先端部38aを一端開口部35cの孔縁にボルトによって固定することによって、各構成部品がハウジング35内に収容配置される。
【0081】
その後、ハウジング35内において、予めハウジング35の膨出部35b内に臨設された制御軸32の一端部32aに連係アーム47を固定すると共に、該連係アーム47の突部47bに、コイルスプリング62のばね力に抗して引き上げた前記リンク部材48の他端部をピン孔57bに挿通したピン56を介して回転自在に連結する。これによって、各構成部品の組み付け作業が簡単に終了する。
【0082】
特に、この実施形態では、前記リンク部材48を、前述のように、ボール螺子軸45とほぼ平行になるまで傾倒させることができるので、前記ユニット体が径方向に嵩張ることがなくなり、全体のコンパクト化が図れる。
【0083】
したがって、かかるユニット体を一端開口部35cからハウジング35内に挿入して組み付ける作業がきわめて容易になる。
【0084】
また、前述のように、各構成部品を予めユニット化する際に、リンク部材を48大きく傾倒させた状態でコイルスプリング62のばね力によってボール螺子軸45とほぼ平行状態に仮止め固定状態にすることができるので、前記ハウジング35内への挿入作業がさらに容易かつ安定して行うことができる。
【0085】
前記実施形態から把握される前記請求項に記載した発明以外の技術的思想について以下に説明する。
【0086】
請求項(1)前記ハウジング内に、機関のクランクシャフトによって回転駆動される回転部材が配置され、該回転部材の一部が前記ハウジング内の滞留した潤滑油に浸漬していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載されたアクチュエータ装置。
【0087】
ハウジング内に配置された回転部材の回転に伴って内部の潤滑油が跳ね上がられて、該潤滑油が前記複数列のボールベアリングに積極的に供給される。
【0088】
請求項(2)前記回転部材は、機関弁を開閉作動させる駆動軸の回転角度を検出する検出器の検出部であることを特徴とする請求項(1)に記載のアクチュエータ装置。
【0089】
この発明によれば、回転部材を潤滑油の供給機構としても機能させることができるので、さらに特別に潤滑油供給機構を設ける必要がなくなる。したがって、コストの低減化が図れる。
【0090】
請求項(3) 前記制御軸の回転制御によって前記機関弁のバルブリフト量を機関駆動状態に応じて可変制御する可変機構を備え、
前記可変機構は、
クランクシャフトから回転力が伝達される駆動軸と、
該駆動軸の回転運動を揺動運動に変換する運動変換機構と、
該運動変換機構からの揺動運動を前記カムに作用させて、該カムを揺動させる伝達機構とから構成されていることを特徴とする請求項1〜(2)のいずれかにに記載のアクチュエータ装置。
【0091】
請求項(4)前記可変機構は、
機関のクランク軸に同期して回転し、外周に駆動カムが設けられた駆動軸と、 支軸に揺動自在に支持されて、カム面がバルブリフター上面を摺接して機関弁を開閉作動させる揺動カムと、
一端部が前記駆動カムに機械的に連係し、他端部がリンクロッドを介して揺動カムに連係したロッカアームとを備え、
機関運転状態に応じて前記ロッカアームの揺動支点を変化させることにより、揺動カムのカム面のバルブリフター上面に対する当接位置を変化させて機関弁のバルブリフトを可変にするように構成されたことを特徴とする請求項(3)に記載のアクチュエータ装置。
【0092】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、複数列の軸受は、ボールベアリングに限定されるものではなくニードルベアリングなどによって構成することも可能であり、また複数列であればアンギュラベアリングでなくてもよい。
【0093】
また、前記制御軸32は、前述のようなバルブリフト量を可変制御する可変機構4以外の機構に適用することも可能である。
【0094】
また、例えば電動モータ36の配置は、エンジンルームのレイアウトによって自由に変更できる。また、前記駆動部としては電動モータの他に、油圧モータや油圧シリンダなどであってもよい。
【0095】
さらに、ボール螺子の循環列を形成する例として、ディフレクタを示したが、チューブなどを用いて循環列を形成する方式であってもよい。また、出力軸と移動ナットとは、ボール54を用いずにボルト、ナットの関係で直接噛合させることも可能である。
【0096】
また、本発明は、吸気弁側の他に排気弁側あるいは両方の弁側に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本実施形態のアクチュエータ装置による最小リフト制御時の作動説明図である。
【図2】同アクチュエータ装置の最小リフト制御時の斜視図である。
【図3】本実施形態のアクチュエータ装置による最小リフト制御時の作動説明図である。
【図4】同アクチュエータ装置の最大リフト制御時の斜視図である。
【図5】同アクチュエータ装置の要部斜視図である。
【図6】アクチュエータ装置のハウジングへの組み付け手順を示す分解図である。
【図7】アクチュエータ装置のハウジングへの組み付け手順を示す分解図である。
【図8】本実施形態が適用される可変機構及び駆動機構の斜視図ある。
【図9】Aは可変動弁装置における最小リフト制御時の閉弁作用を示す図8のA矢視図、Bは同最小リフト制御時の開弁作用を示す図8のA矢視図である。
【図10】Aは可変動弁装置における最大リフト制御時の閉弁作用を示す図8のA矢視図、Bは同最大リフト制御時の開弁作用を示す図8のA矢視図である。
【図11】本実施形態の可変動弁装置による各吸気弁のバルブリフト特性図である。
【符号の説明】
【0098】
2…吸気弁(機関弁)
4…可変機構
6…駆動機構(アクチュエータ装置)
32…制御軸
35…ハウジング
35a…収容室
37…ボール螺子伝達機構
45…ボール螺子軸(出力軸)
46…ボールナット(移動ナット)
47…連係アーム(リンク機構)
48…リンク部材(リンク機構)
49…雄ねじ部(ねじ部)
50…第1ボールベアリング(軸受)
51…第2ボールベアリング(軸受)
O…潤滑油
L…油面レベル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に所定量の潤滑油が滞留されたハウジングと、
該ハウジング内に両端側がそれぞれ軸受によって回転自在に収容され、外周にねじ部が形成された出力軸と、
該出力軸を回転駆動する駆動部と、
前記出力軸のねじ山に噛み合って、該出力軸の回転に伴い軸方向へ移動する移動ナットと、
前記移動ナットの軸方向の直線運動を回転運動に変換し、この回転運動を機関弁のバルブリフト量を可変制御する制御軸に伝達するリンク機構とを備え、
前記一方の軸受をハウジング内に滞留した潤滑油に浸漬するように配置すると共に、他方の軸受を前記潤滑油に浸漬されない状態で配置したアクチュエータ装置において、
前記他方の軸受を、複数列のボールベアリングによって構成したことを特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項2】
前記複数列のボールベアリングを、アンギュラベアリングによって構成したことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項3】
前記駆動部を、電動モータによって構成すると共に、該電動モータを前記ハウジングの内の潤滑油が滞留しない位置に設け、かつ、前記複数列のボールベアリングを、前記出力軸の電動モータ側に配置したことを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ装置。
【請求項1】
内部に所定量の潤滑油が滞留されたハウジングと、
該ハウジング内に両端側がそれぞれ軸受によって回転自在に収容され、外周にねじ部が形成された出力軸と、
該出力軸を回転駆動する駆動部と、
前記出力軸のねじ山に噛み合って、該出力軸の回転に伴い軸方向へ移動する移動ナットと、
前記移動ナットの軸方向の直線運動を回転運動に変換し、この回転運動を機関弁のバルブリフト量を可変制御する制御軸に伝達するリンク機構とを備え、
前記一方の軸受をハウジング内に滞留した潤滑油に浸漬するように配置すると共に、他方の軸受を前記潤滑油に浸漬されない状態で配置したアクチュエータ装置において、
前記他方の軸受を、複数列のボールベアリングによって構成したことを特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項2】
前記複数列のボールベアリングを、アンギュラベアリングによって構成したことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項3】
前記駆動部を、電動モータによって構成すると共に、該電動モータを前記ハウジングの内の潤滑油が滞留しない位置に設け、かつ、前記複数列のボールベアリングを、前記出力軸の電動モータ側に配置したことを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−2669(P2007−2669A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180035(P2005−180035)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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