アクチュエータ
【課題】クリープによる変形を抑えることができるアクチュエータを提供する。
【解決手段】基板の上に配置された下部電極と、前記下部電極に対向する可動の上部電極と、前記上部電極を基板に対して支持すると共に上部電極よりもクリープ耐性の高い支持体と、前記下部電極と上部電極との間に駆動電圧を供給する駆動部とを備え、前記上下両電極間の電位差の絶対値を増加させたときに上下両電極が接触し始める駆動電圧であるプルイン電圧を印加したときの前記下部電極と上部電極との間の静電容量をプルイン静電容量としたとき、前記電位差の絶対値をプルイン電圧以上に増加させたときにプルイン静電容量に対する静電容量の比率の変化率が急激に変化する第1の領域と、前記電位差の絶対値をさらに増加させたときに前記変化率が前記第1の領域よりも緩やかに変化する第2の領域とが存在し、前記駆動部は前記第2の領域における前記駆動電圧を供給する。
【解決手段】基板の上に配置された下部電極と、前記下部電極に対向する可動の上部電極と、前記上部電極を基板に対して支持すると共に上部電極よりもクリープ耐性の高い支持体と、前記下部電極と上部電極との間に駆動電圧を供給する駆動部とを備え、前記上下両電極間の電位差の絶対値を増加させたときに上下両電極が接触し始める駆動電圧であるプルイン電圧を印加したときの前記下部電極と上部電極との間の静電容量をプルイン静電容量としたとき、前記電位差の絶対値をプルイン電圧以上に増加させたときにプルイン静電容量に対する静電容量の比率の変化率が急激に変化する第1の領域と、前記電位差の絶対値をさらに増加させたときに前記変化率が前記第1の領域よりも緩やかに変化する第2の領域とが存在し、前記駆動部は前記第2の領域における前記駆動電圧を供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
可変容量やスイッチでは、低いロス、高いアイソレーション、および高い線形性を実現することが重要である。
例えば静電駆動型のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)アクチュエータを用いた高周波スイッチなどにおいては、制御導体や接続導体として例えばアルミ(Al)、銀、銅、金などの導電体が使用されている。しかしながら、アルミや金などは延性材料であるため、高い応力状態や高温環境下で駆動するとクリープによる変形が生ずる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−286540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、クリープによる変形を抑えることができるアクチュエータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施態様によれば、基板と、前記基板の上に配置された下部電極と、前記下部電極に対向し、前記下部電極との間の距離が可変する上部電極と、一端が前記基板に固定され、他端が前記上部電極に接続され、前記上部電極を支持し、前記上部電極よりもクリープ耐性の高い支持体と、前記下部電極と前記上部電極とに接続され、前記下部電極と前記上部電極との間に印加される駆動電圧を供給する駆動部と、を備え、前記下部電極と前記上部電極との間の電位差の絶対値を増加させたときに前記下部電極と前記上部電極とが接触し始める前記駆動電圧をプルイン電圧とし、前記プルイン電圧を印加したときの前記下部電極と前記上部電極との間の静電容量をプルイン静電容量とし、前記電位差の絶対値を前記プルイン電圧以上に増加させたときに前記プルイン静電容量に対する静電容量の比率の変化率が急激に変化する第1の領域と、前記電位差の絶対値をさらに増加させたときに前記変化率が前記第1の領域よりも緩やかに変化する第2の領域と、が存在し、前記駆動部は、前記第2の領域における前記駆動電圧を供給することを特徴とするアクチュエータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1(a)〜図1(c)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す模式図である。
【図2】図2(a)〜図2(c)は、アクチュエータの駆動を説明する端面模式図である。
【図3】図3(a)および図3(b)は、駆動電圧と静電容量との関係を表すグラフ図である。
【図4】静電容量比率の増加電圧による依存性の一例を例示する解析結果である。
【図5】アップステートの状態の静電容量の比率の一例を例示する解析結果である。
【図6】本実施形態の駆動電圧のプロファイルの一例を例示グラフ図である。
【図7】本実施形態にかかるクリープ解析の結果の一例を例示する斜視視式図である。
【図8】比較例にかかるクリープ解析の結果の一例を例示する斜視模式図である。
【図9】図9(a)〜図9(c)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す模式図である。
【図10】図10(a)〜図10(c)は、アクチュエータの駆動を説明する端面模式図である。
【図11】本実施形態の駆動電圧のプロファイルの一例を例示するグラフ図である。
【図12】図12(a)〜図12(c)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す模式図である。
【図13】図13(a)〜図13(c)は、アクチュエータの駆動を説明する端面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1(a)〜図1(c)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す模式図である。 なお、図1(a)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す平面模式図であり、図1(b)は、図1(a)に表した切断面A−Aにおける端面模式図であり、図1(c)は、図1(a)に表した切断面B−Bにおける端面模式図である。
【0008】
本実施形態のアクチュエータ10は、シリコン基板やガラス基板などにより形成された基板7と、基板7の上に形成された絶縁膜8と、基板7の下に形成されたグランド電極9と、絶縁膜8の上に設けられた静電型のアクチュエータ部12と、アクチュエータ部12を駆動する駆動部15と、を備える。
絶縁膜8は、例えばシリコン酸化膜(SiO2)やシリコン窒化膜(SiN)などである。
【0009】
アクチュエータ部12は、絶縁膜8の上に配置された下部電極1aと、下部電極1aに対向し下部電極1aとの間の距離が可変する上部電極3と、を有する。上部電極3には、ばね6および支持体5が接続されている。下部電極1aと上部電極3との間には、空洞部11が設けられている。これにより、上部電極3を駆動して下部電極1aと上部電極3との間の容量値を変更することができる。
【0010】
可動可能な上部電極3は、例えばアルミ(Al)やアルミ合金や金(Au)などの延性材料の金属により形成されている。ばね6は、延性材料の金属により形成されており、支持体5よりも柔らかい性質を有する。そして、上部電極3は、ばね6を介して支持部4に接続されている。
本願明細書において「延性」とは、物体がその弾性の限界を超えても破壊されずに引き伸ばされる性質をいうものとする。
【0011】
また、上部電極3は、支持体5を介して支持部4に接続されている。支持体5は、上部電極3およびばね6よりも延性の低い材料からなる。あるいは、支持体5のクリープ耐性は、上部電極3およびばね6のクリープ耐性よりも高い。支持体5は、例えば脆性材料により形成されている。支持体5に用いられる脆性材料は、二酸化ケイ素(SiO2)や窒化ケイ素(SiN)や酸窒化ケイ素(SiON)などの絶縁性を有する材料でもよいし、ポリシリコンやシリコンやタングステン(W)やチタンアルミニウム(AlTi)などの導電性を有する材料でもよい。
【0012】
本願明細書において「クリープ耐性」とは、クリープ変形に対する抵抗力をいうものとする。
また、本願明細書において「脆性」とは、物体が外力受けたときに、あまり変形しないうちに破壊する性質をいうものとする。
【0013】
支持体5に絶縁性材料を用いた場合には、上部電極3をフロート(浮遊)電極とすることが可能である。一方、支持体5に導電性材料を用いた場合には、支持体5を通して上部電極3に電圧を印加することが可能である。そのため、例えば、ばね6を省略することができ、省スペース化を図ることができる。
【0014】
なお、支持体5は、脆性材料により形成されていることに限定されるわけではない。支持体5は、例えばばね6よりも厚く形成されることにより構造全体として上部電極3およびばね6よりも変形し難い性質を有していてもよい。
つまり、本願明細書において「クリープ耐性」という範囲には、材料の種類に起因するクリープ耐性だけではなく、形状や構造に起因するクリープ耐性が含まれるものとする。
【0015】
ばね6を介して上部電極3を支持する支持部4は、駆動部15に接続されている。そのため、駆動部15は、支持部4およびばね6を介して上部電極3にバイアス電圧を印加することができる。また、下部電極1aは、駆動部15に接続されている。そのため、駆動部15は、下部電極1aにバイアス電圧を印加することができる。つまり、駆動部15は、下部電極1aと上部電極3との間に印加される駆動電圧を供給することができる。
【0016】
図2(a)〜図2(c)は、アクチュエータの駆動を説明する端面模式図である。
なお、図2(a)〜図2(c)は、図1(a)に表した切断面B−Bにおける端面模式図である。
【0017】
駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間に電位差を与えていない状態では、上部電極3は、図2(a)に表したように、下部電極1aから離間している。続いて、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間に電位差を与えると、下部電極1aおよび上部電極3は、静電引力により互いに引きつけられる。これにより、図2(b)に表したように、上部電極3を下方へ駆動することができる。そして、上部電極3は、絶縁膜7aを介して下部電極1aと接触する(プルイン:Pull−In)。
【0018】
アクチュエータ部12を駆動する際には、駆動部15が下部電極1aおよび上部電極3にバイアス電圧を印加する。例えば、駆動部15は、上部電極3に0V(ボルト)を供給し、下部電極1aに電圧Vbiasを印加する。あるいは、例えば、駆動部15は、上部電極3に電圧Vbiasを供給し、下部電極1aに0V(ボルト)を印加する。あるいは、駆動部15は、駆動回数や容量値に応じて電界の向きを適宜入れ替えてもよい。
【0019】
ここで、上部電極3は、前述したように延性材料の金属により形成されているため、高い応力状態や高温環境下で駆動するとクリープによる変形が生ずる場合がある。クリープ変形が生ずると、アップステート(Up−State)の状態の上部電極3と下部電極1aとの間の距離が短くなるため、可変容量の場合には容量値が変化する。また、スイッチの場合には、アイソレーション特性が悪くなる。
なお、本願明細書において「アップステートの状態」とは、駆動部15が下部電極1aおよび上部電極3にバイアス電圧を印加せず、上部電極3が絶縁膜7aを介して下部電極1aと接触していない状態をいうものとする。
【0020】
これに対して、本実施形態では、延性材料の金属により形成された上部電極3は、延性材料の金属により形成されたばね6と、上部電極3およびばね6よりも延性の低い材料からなる支持体5と、を介して支持部4に接続されている。これにより、アップステートの状態の上部電極3と下部電極1aとの間の距離は、実質的には支持体5により決定される。
【0021】
支持体5は、上部電極3およびばね6よりも変形し難く、クリープ変形を生じ難い。そのため、長時間の駆動を行っても、あるいは多数回の駆動を繰り返しても、アップステートの状態の上部電極3と下部電極1aとの間の距離は、変化し難い。また、ばね6は、クリープ変形を生ずるが、ばね定数が支持体5よりも小さいため、上部電極3と下部電極1aとの間の距離にはほとんど影響を及ぼさない。
【0022】
一方、アクチュエータ10を大多数の可変容量やスイッチに応用する場合には、信号を通しながらスイッチングする必要がある(ホットスイッチ)。この場合には、復元力が強く硬いばねにより上部電極3を支持する必要がある。これに対して、本実施形態では、上部電極3は、ばね6よりも硬い支持体5を介して支持部4に接続されている。
【0023】
しかしながら、復元力が強く硬いばねにより上部電極3を支持すると、図2(b)に表したように、ダウンステート(Down−State)の状態の上部電極3の端部3aが支持体5により引っ張られ絶縁膜7aから浮き上がる場合がある。そうすると、延性材料の金属により形成された上部電極3に応力が生ずる。これにより、上部電極3にクリープ変形が生ずる場合がある。
なお、本願明細書において「ダウンステートの状態」とは、駆動部15が下部電極1aおよび上部電極3にバイアス電圧を印加し、上部電極3が絶縁膜7aを介して下部電極1aと接触した状態をいうものとする。また、上部電極3の端部3aは、支持体5との接続部である。
【0024】
これに対して、本実施形態では、駆動部15は、下部電極1aと上部電極3との間にプルイン(Pull−In)電圧以上の電位差を与えて駆動する。そうすると、上部電極3の端部3aは、図2(c)に表したように、絶縁膜7aからほとんど浮き上がらず平らな状態となる。そのため、上部電極3には応力がほとんど生じない。一方、支持体5には応力が集中して生ずる。支持体5は、前述したようにクリープ変形を生じ難い。これにより、クリープによる変形を抑えることができる。
【0025】
ここで、クリープひずみ速度は、応力や温度などに依存し、一般的には以下のDorn-Woertmanの式で表される。
【数1】
式(1)において、材料に依存して決まるのは、定数a、クリープ指数n、およびクリープの活性化エネルギーQである。また、その他の条件としては、初期応力σおよび絶対温度Tがある。
【0026】
式(1)から分かるように、初期応力σが大きいほど、また絶対温度Tが高いほど、クリープの進展は速くなる。また、材料によってもクリープの進展速度は変わる。延性材料の金属(例えばアルミ(Al)、アルミ合金、金(Au)など)では、クリープの進展が非常に速く、一方で、脆性材料(例えば二酸化ケイ素(SiO2)や窒化ケイ素(SiN)など)では、クリープの進展が非常に遅いことが知られている。
【0027】
そのため、支持体5が例えば前述した脆性材料により形成されている場合には、支持体5のクリープの進展は遅い。この場合には、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧以上の電位差を与えたときに、発生する応力をクリープ耐性に優れた支持体5に集中させることができる。これにより、クリープによる変形を抑えることができる。
【0028】
次に、駆動電圧と静電容量との関係について、図面を参照しつつ説明する。
図3(a)および図3(b)は、駆動電圧と静電容量との関係を表すグラフ図である。 なお、図3(a)は、プルイン電圧Vp以下および以上の駆動電圧と静電容量との関係の一例を例示するグラフ図であり、図3(b)は、プルイン電圧Vp以上の駆動電圧と静電容量との関係の一例を例示する解析結果である。また、図3(a)に表した縦軸(静電容量)および横軸(駆動電圧)は、線形軸である。
【0029】
駆動部15が下部電極1aおよび上部電極3にバイアス電圧を印加すると、図2に関して前述したように、上部電極3は下部電極1aに引きつけられる。これにより、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以下の電位差を与えている場合には、上部電極3と下部電極1aとの間の距離が短くなるため、静電容量は、図3(a)に表したように微増する(ステートS1)。
【0030】
続いて、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vpの電位差を与えると、上部電極3は、絶縁膜7aを介して下部電極1aと接触する。このとき、上部電極3と下部電極1aとの間の静電容量は、急激に増加する。
【0031】
続いて、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差を与えると、上部電極3と下部電極1aとの間の静電容量は、徐々に増加する(ステート2)。続いて、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差をさらに与えると、上部電極3と下部電極1aとの間の静電容量は、飽和状態に近づいていく(ステートS3)。これについて、図3(b)を参照しつつさらに説明する。
【0032】
図3(b)に表したグラフ図の横軸は、プルイン電圧Vpを基準として駆動部15がさらに印加した電圧ΔV(ボルト)を表している。図3(b)に表したグラフ図の縦軸は、駆動部15がプルイン電圧Vpを印加したときのダウンステートの状態の静電容量(プルイン静電容量)を「100」とした場合に、ダウンステートの状態の静電容量の比率Cdr(パーセント)を表している。
【0033】
図3(b)に表したように、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間に与える電位差を大きくするにつれて、上部電極3と下部電極1aとの間の静電容量は、徐々に増加する。これは、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間に与える電位差を大きくするにつれて、下部電極1aと上部電極3との間に生ずる静電引力が増加し、下部電極1aと上部電極3との間の密着性および平坦性が向上するためである。このとき、支持体5により引っ張られ絶縁膜7aから浮き上がった上部電極3の端部3aは、絶縁膜7aを介して下部電極1aと徐々に接触していく。
【0034】
そして、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にさらに大きい電位差を与えると、静電容量は飽和状態に近づいていく。これは、下部電極1aと上部電極3との間の密着性および平坦性の向上が飽和していくためである。つまり、駆動部15がプルイン電圧Vp以上の電位差を与えてしばらくの間(ステートS2)においては、絶縁膜7aを介して接触する下部電極1aと上部電極3との面積は、電極全体に亘ってステートS3の状態よりも急激に増加していく。一方で、駆動部15がさらに大きい電位差を与えると(ステートS3)、絶縁膜7aを介して接触する下部電極1aと上部電極3との面積は、絶縁膜7aから浮き上がった上部電極3の端部3aのより狭い領域においてステートS2よりも緩やかに増加していく。
【0035】
図4は、静電容量比率の増加電圧による依存性の一例を例示する解析結果である。
図4に表したグラフ図の横軸は、図3(b)に表したグラフ図の横軸と同様である。図4に表したグラフ図の縦軸は、図3(b)に表したグラフ図の各静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVを表している。つまり、図4に表した変化率dCdr/dVは、図3に表したグラフ図の各静電容量比率Cdrにおける「傾き」を表している。
【0036】
図4に表したように、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間に与える電位差を大きくするにつれて、各静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVは、減少する。そして、静電容量は、飽和状態に近づいていく。これは、図3に関して前述したように、下部電極1aと上部電極3との間の密着性および平坦性の向上が飽和していくためである。
【0037】
下部電極1aと上部電極3との間の密着性および平坦性が向上すると、上部電極3の端部3aは、絶縁膜7aからほとんど浮き上がらず平らな状態となる。そうすると、図2に関して前述したように、上部電極3には応力がほとんど生じない。一方、支持体5には応力が集中して生ずる。支持体5は、クリープ変形を生じ難い。これにより、クリープによる変形を抑えるためには、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差を与え、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVがより減少した状態で駆動することが望ましい。
【0038】
ここで、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差を与えた場合、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVが急激に変化する第1の領域が存在する。一方、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVが第1の領域よりも緩やかに変化する第2の領域が存在する。例えば、図4に表したように、変化率dCdr/dVが「0.4」よりも大きいときには、変化率dCdr/dVは、急激に変化している(第1の領域)。一方、変化率dCdr/dVが「0.4」以下のときには、変化率dCdr/dVは、「0.4」よりも大きいときに比べて緩やかに変化している(第2の領域)。これにより、駆動部15は、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVが「0.4」以下となるような電位差を下部電極1aと上部電極3との間に与えることが望ましい。
【0039】
なお、1つの第2の領域が存在することに限定されず、複数の第2の領域が存在してもよい。例えば、図4に表した解析結果において、変化率dCdr/dVが「0.2」以下のときには、変化率dCdr/dVは、さらに緩やかに変化している(第2の領域)。これにより、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVが「0.2」以下となるような電位差を駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間に与えると、クリープによる変形をさらに抑えることができる。
【0040】
あるいは、変化率dCdr/dVが「0.6」よりも大きいときには、変化率dCdr/dVが急激に変化していると考えることができる(第1の領域)。一方、変化率dCdr/dVが「0.6」以下のときには、変化率dCdr/dVは、「0.6」よりも大きいときに比べて緩やかに変化していると考えることができる(第2の領域)。これにより、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVが「0.6」以下となるような電位差を駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間に与えることによっても、クリープによる変形を抑えることができる。
【0041】
図5は、アップステートの状態の静電容量の比率の一例を例示する解析結果である。 図5に表したグラフ図の横軸は、図3(b)に表したグラフ図の横軸と同様である。図5に表したグラフ図の縦軸は、初期のアップステートの状態の静電容量を「100」とした場合に、室温25℃の環境下でダウンステートの状態に3年間放置した後のアップステートの状態の静電容量の比率Cur(パーセント)を表している。つまり、図5に表したグラフ図の縦軸は、クリープ疲労前の初期のアップステートの状態と、クリープ疲労後のアップステートの状態と、の間における静電容量の比率Curを表している。
【0042】
図5に表したように、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vpの電位差を与え、室温25℃の環境下でダウンステートの状態に3年間放置した後のアップステートの状態の静電容量は、初期のアップステートの状態の静電容量よりも大きい。これは、上部電極3にクリープ変形が生じたことにより、上部電極3と下部電極1aとの間の距離が短くなったためである。そして、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間に与える電位差を大きくするにつれて、アップステートの状態の静電容量の比率Curは、減少する。これは、下部電極1aと上部電極3との間の密着性および平坦性が向上したことにより、上部電極3のクリープ変形を抑えることができたためである。クリープによる変形を抑えることができるように、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差を与え、クリープ疲労前後における静電容量の比率Curが約数パーセント程度以下となるようにすることが望ましい。例えば、駆動部15は、クリープ疲労前後における静電容量の比率Curが2パーセント以下となるような電位差を下部電極1aと上部電極3との間に与えることが望ましい。
【0043】
図6は、本実施形態の駆動電圧のプロファイルの一例を例示グラフ図である。
本実施形態では、駆動部15は、下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差を与えて駆動する。具体的には、駆動部15は、下部電極1aおよび上部電極3に印加するバイアス電圧を増加させ、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVが例えば「0.4」となる電圧V1以上の電圧V2を印加する。これにより、前述したようにクリープによる変形を抑えることができる。なお、図6に表したグラフ図において例示した静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVの数値「0.4」は、一例であり、これだけに限定されるわけではない。また、電圧V2は、駆動部15の制約電圧V3よりも低い。
【0044】
図7は、本実施形態にかかるクリープ解析の結果の一例を例示する斜視視式図である。 また、図8は、比較例にかかるクリープ解析の結果の一例を例示する斜視模式図である。
なお、図7(a)および図8(a)は、初期のアップステートの状態の解析結果の一例であり、図7(b)および図8(b)は、駆動部15が下部電極1aおよび上部電極3にバイアス電圧を印加した直後のダウンステートの状態の解析結果の一例であり、図7(c)および図8(c)は、ダウンステートの状態に3年間放置した後のダウンステートの状態の解析結果の一例であり、図7(d)および図8(d)は、絶縁膜7aを介して接触していた下部電極1aおよび上部電極3が剥離(プルアウト:Pull−Out)した後のアップステートの状態の解析結果の一例である。
また、図7(b)、図7(c)、図8(b)、および図8(c)は、上部電極3の端部3aを拡大して眺めた拡大模式図である。
また、図7および図8に表した解析結果は、室温25℃の環境下で行った解析結果である。
【0045】
図8に表した比較例の解析結果では、駆動部15は、下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vpの電位差を与えて駆動している。この場合には、図8(b)および図8(c)に表したように、バイアス電圧が印加された直後およびダウンステートの状態に3年間放置された後において、上部電極3の端部3aは、支持体5により引っ張られ絶縁膜7aから浮き上がった状態となっている。これにより、上部電極3の端部3aにおいて、クリープによる変形が生ずる場合がある。
【0046】
これに対して、図7に表した本実施形態の解析結果では、駆動部15は、下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vpよりも高い電位差を与えて駆動している。この場合には、図7(b)および図7(c)に表したように、バイアス電圧が印加された直後およびダウンステートの状態に3年間放置された後において、上部電極3の端部3aは、絶縁膜7aからほとんど浮き上がらず平らな状態となっている。そのため、上部電極3には応力がほとんど生じていない。一方、支持体5には応力が集中して生じている。支持体5は、前述したように上部電極3よりも延性の低い材料からなり、クリープ変形を生じ難い。これにより、クリープによる変形を抑えることができる。
【0047】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
図9(a)〜図9(c)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す模式図である。 なお、図9(a)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す平面模式図であり、図9(b)は、図9(a)に表した切断面C−Cにおける端面模式図であり、図9(c)は、図9(a)に表した切断面D−Dにおける端面模式図である。
【0048】
本実施形態にかかるアクチュエータ13は、例えば可変容量などに用いられる。本実施形態にかかるアクチュエータ13では、絶縁膜8の上に下部電極1a、2aが配置されている。また、下部電極1a、2aの下には、絶縁膜8を介してRF(Radio Frequency)電極が積層されている。RF電極は、下部電極1aに対向して設けられたシグナル線1bと、下部電極2aに対向して設けられたグランド線2bと、を有する。上部電極3は、下部電極1a、2aに対向して配置されている。そして、上部電極3と、下部電極1a、2aと、の間の距離は可変する。上部電極3および下部電極1a、2aにより、静電型のアクチュエータ部14が形成されている。
【0049】
下部電極1a、2aは、駆動部15に接続されている。そのため、駆動部15は、下部電極1a、2aにバイアス電圧を印加することができる。その他の構造および材料などは、図1に関して前述したアクチュエータ10と同様である。
【0050】
図10(a)〜図10(c)は、アクチュエータの駆動を説明する端面模式図である。 なお、図10(a)〜図10(c)は、図9(a)に表した切断面D−Dにおける端面模式図である。
【0051】
上部電極3は、RF電極と駆動電極との役割を兼ねている。図10(b)および図10(c)に表したように、上部電極3と駆動部15との間にはローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)が挿入されているため、上部電極3は、RF的にはフロートになっている。これにより、上部電極3は、RF電極と駆動電極との役割を兼ねることができる。
【0052】
駆動部15が下部電極1a、2aと上部電極3との間に電位差を与えていない状態では、上部電極3は、図10(a)に表したように、下部電極1a、2aから離間している。続いて、駆動部15が下部電極1a、2aと上部電極3との間に電位差を与えると、下部電極1a、2aおよび上部電極3は、静電引力により互いに引きつけられる。これにより、図10(b)に表したように、上部電極3を下方へ駆動することができる。そして、上部電極3は、絶縁膜7aを介して下部電極1a、2aと接触する(プルイン)。
【0053】
アクチュエータ部14を駆動する際には、駆動部15が下部電極1a、2aおよび上部電極3にLPFを介してバイアス電圧を印加する。例えば、駆動部15は、上部電極3に0V(ボルト)を供給し、下部電極1a、2aに電圧Vbiasを印加する。あるいは、例えば、駆動部15は、上部電極3に電圧Vbiasを供給し、下部電極1a、2aに0V(ボルト)を印加する。あるいは、駆動部15は、駆動回数や容量値に応じて電界の向きを適宜入れ替えてもよい。
【0054】
本実施形態においても、駆動部15は、下部電極1a、2aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差を与えて駆動する。そうすると、上部電極3の端部3aは、図10(c)に表したように、絶縁膜7aからほとんど浮き上がらず平らな状態となる。そのため、上部電極3には応力がほとんど生じない。一方、支持体5には応力が集中して生ずる。支持体5は、前述したようにクリープ変形を生じ難い。これにより、クリープによる変形を抑えることができる。
【0055】
本実施形態におけるダウンステートの状態の静電容量の比率Cdr、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dV、アップステートの状態の静電容量の比率Cur、およびクリープ解析については、図3〜図5および図7に関してそれぞれ前述した如くである。
【0056】
図11は、本実施形態の駆動電圧のプロファイルの一例を例示するグラフ図である。
一般的に、平行平板間に生じる静電引力は、駆動電圧や電極間ギャップに依存し、以下の式で表される。
【数2】
【0057】
式(2)から分かるように、静電引力は、駆動電圧や電極間ギャップに依存するため、絶縁膜7aを介して上部電極3と下部電極1a、2aとが接触するまでは、駆動部15は、より高い電位差を与える必要がある。一方、絶縁膜7aを介して上部電極3と下部電極1a、2aとが一旦接触し、下部電極1aと上部電極3との間の密着性および平坦性が向上すると、電極間ギャップが狭くなるため、より低い電位差でより大きな力を加えることが可能である。
【0058】
そこで、本実施形態では、駆動部15は、図11に表した駆動電圧のプロファイルのようなバイアス電圧を下部電極1aおよび上部電極3に印加することができる。これにより、駆動部15の負担を軽減することができる。また、消費電力をより低く抑えることができる。そして、クリープによる変形を抑えることができる。
【0059】
具体的には、駆動部15は、まず、下部電極1aおよび上部電極3に印加するバイアス電圧を増加させ、電圧増加過程において静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVが例えば「0.4」となる電圧V1以上の第1の駆動電圧V2を印加する。その後、駆動部15は、下部電極1aおよび上部電極3に印加するバイアス電圧を減少させ、電圧減少過程において静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVが例えば「0.4」となる電圧V1以下の第2の駆動電圧V4を印加する。これによっても、クリープによる変形を抑えることができる。
【0060】
なお、図11に表したグラフ図において例示した静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVの数値「0.4」は、一例であり、これだけに限定されるわけではない。また、駆動部15が下部電極1aおよび上部電極3に印加するバイアス電圧を減少させた後の電圧は、プルイン電圧Vp以上であることに限定されるわけではない。また、電圧V2は、駆動部15の制約電圧V3よりも低い。
【0061】
次に、本発明のさらに他の実施の形態について説明する。
図12(a)〜図12(c)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す模式図である。
なお、図12(a)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す平面模式図であり、図12(b)は、図12(a)に表した切断面E−Eにおける端面模式図であり、図12(c)は、図12(a)に表した切断面F−Fにおける端面模式図である。
【0062】
本実施形態にかかるアクチュエータ16は、例えば可変容量などに用いられる。本実施形態にかかるアクチュエータ16では、絶縁膜8の上に下部電極1a、2aおよびRF電極が並列に配置されている。RF電極は、シグナル線1bとグランド線2bとを有する。シグナル線1bは、下部電極1aと隣接して設けられている。一方、グランド線2bは、下部電極2aと隣接して設けられている。そして、上部電極3および下部電極1a、2aにより、静電型のアクチュエータ部18が形成されている。その他の構造および材料などは、図1に関して前述したアクチュエータ13と同様である。
【0063】
図13(a)〜図13(c)は、アクチュエータの駆動を説明する端面模式図である。 なお、図13(a)〜図13(c)は、図12(a)に表した切断面F−Fにおける端面模式図である。
【0064】
アクチュエータ部18を駆動する際には、図10に関して前述したアクチュエータ13と同様に、駆動部15が下部電極1a、2aおよび上部電極3にLPFを介してバイアス電圧を印加する。例えば、駆動部15は、上部電極3に0V(ボルト)を供給し、下部電極1a、2aに電圧Vbiasを印加する。あるいは例えば、駆動部15は、上部電極3に電圧Vbiasを供給し、下部電極1a、2aに0V(ボルト)を印加する。あるいは、駆動部15は、駆動回数や容量値に応じて電界の向きを適宜入れ替えてもよい。
【0065】
本実施形態においても、駆動部15は、下部電極1a、2aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差を与えて駆動する。そうすると、上部電極3の端部3aは、図13(c)に表したように、絶縁膜7aからほとんど浮き上がらず平らな状態となる。そのため、上部電極3には応力がほとんど生じない。一方、支持体5には応力が集中して生ずる。支持体5は、前述したようにクリープ変形を生じ難い。これにより、クリープによる変形を抑えることができる。
【0066】
本実施形態におけるダウンステートの状態の静電容量の比率Cdr、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dV、アップステートの状態の静電容量の比率Cur、およびクリープ解析については、図3〜図5および図7に関してそれぞれ前述した如くである。また、駆動電圧のプロファイルについては、図6および図11に関して前述した如くである。
【0067】
なお、下部電極1a、2aは、上部電極3と支持体5との接続部の近傍においてそれぞれ分割されていてもよい。この場合には、駆動部15は、接続部の近傍の下部電極と上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差を与えることができる。これは、図9および図10に関して前述したアクチュエータ13についても同様である。これにより、駆動部15の負担を軽減したり、消費電力をより低く抑えることができる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1a 下部電極、 1b シグナル線、 2a 下部電極、 2b グランド線、 3 上部電極、 3a 端部、 4 支持部、 5 支持体、 6 ばね、 7 基板、 7a、8 絶縁膜、 9 グランド電極、 10 アクチュエータ、 11 空洞部、 12 アクチュエータ部、 13 アクチュエータ、 14 アクチュエータ部、 15 駆動部、 16 アクチュエータ、 18 アクチュエータ部
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
可変容量やスイッチでは、低いロス、高いアイソレーション、および高い線形性を実現することが重要である。
例えば静電駆動型のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)アクチュエータを用いた高周波スイッチなどにおいては、制御導体や接続導体として例えばアルミ(Al)、銀、銅、金などの導電体が使用されている。しかしながら、アルミや金などは延性材料であるため、高い応力状態や高温環境下で駆動するとクリープによる変形が生ずる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−286540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、クリープによる変形を抑えることができるアクチュエータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施態様によれば、基板と、前記基板の上に配置された下部電極と、前記下部電極に対向し、前記下部電極との間の距離が可変する上部電極と、一端が前記基板に固定され、他端が前記上部電極に接続され、前記上部電極を支持し、前記上部電極よりもクリープ耐性の高い支持体と、前記下部電極と前記上部電極とに接続され、前記下部電極と前記上部電極との間に印加される駆動電圧を供給する駆動部と、を備え、前記下部電極と前記上部電極との間の電位差の絶対値を増加させたときに前記下部電極と前記上部電極とが接触し始める前記駆動電圧をプルイン電圧とし、前記プルイン電圧を印加したときの前記下部電極と前記上部電極との間の静電容量をプルイン静電容量とし、前記電位差の絶対値を前記プルイン電圧以上に増加させたときに前記プルイン静電容量に対する静電容量の比率の変化率が急激に変化する第1の領域と、前記電位差の絶対値をさらに増加させたときに前記変化率が前記第1の領域よりも緩やかに変化する第2の領域と、が存在し、前記駆動部は、前記第2の領域における前記駆動電圧を供給することを特徴とするアクチュエータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1(a)〜図1(c)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す模式図である。
【図2】図2(a)〜図2(c)は、アクチュエータの駆動を説明する端面模式図である。
【図3】図3(a)および図3(b)は、駆動電圧と静電容量との関係を表すグラフ図である。
【図4】静電容量比率の増加電圧による依存性の一例を例示する解析結果である。
【図5】アップステートの状態の静電容量の比率の一例を例示する解析結果である。
【図6】本実施形態の駆動電圧のプロファイルの一例を例示グラフ図である。
【図7】本実施形態にかかるクリープ解析の結果の一例を例示する斜視視式図である。
【図8】比較例にかかるクリープ解析の結果の一例を例示する斜視模式図である。
【図9】図9(a)〜図9(c)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す模式図である。
【図10】図10(a)〜図10(c)は、アクチュエータの駆動を説明する端面模式図である。
【図11】本実施形態の駆動電圧のプロファイルの一例を例示するグラフ図である。
【図12】図12(a)〜図12(c)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す模式図である。
【図13】図13(a)〜図13(c)は、アクチュエータの駆動を説明する端面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1(a)〜図1(c)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す模式図である。 なお、図1(a)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す平面模式図であり、図1(b)は、図1(a)に表した切断面A−Aにおける端面模式図であり、図1(c)は、図1(a)に表した切断面B−Bにおける端面模式図である。
【0008】
本実施形態のアクチュエータ10は、シリコン基板やガラス基板などにより形成された基板7と、基板7の上に形成された絶縁膜8と、基板7の下に形成されたグランド電極9と、絶縁膜8の上に設けられた静電型のアクチュエータ部12と、アクチュエータ部12を駆動する駆動部15と、を備える。
絶縁膜8は、例えばシリコン酸化膜(SiO2)やシリコン窒化膜(SiN)などである。
【0009】
アクチュエータ部12は、絶縁膜8の上に配置された下部電極1aと、下部電極1aに対向し下部電極1aとの間の距離が可変する上部電極3と、を有する。上部電極3には、ばね6および支持体5が接続されている。下部電極1aと上部電極3との間には、空洞部11が設けられている。これにより、上部電極3を駆動して下部電極1aと上部電極3との間の容量値を変更することができる。
【0010】
可動可能な上部電極3は、例えばアルミ(Al)やアルミ合金や金(Au)などの延性材料の金属により形成されている。ばね6は、延性材料の金属により形成されており、支持体5よりも柔らかい性質を有する。そして、上部電極3は、ばね6を介して支持部4に接続されている。
本願明細書において「延性」とは、物体がその弾性の限界を超えても破壊されずに引き伸ばされる性質をいうものとする。
【0011】
また、上部電極3は、支持体5を介して支持部4に接続されている。支持体5は、上部電極3およびばね6よりも延性の低い材料からなる。あるいは、支持体5のクリープ耐性は、上部電極3およびばね6のクリープ耐性よりも高い。支持体5は、例えば脆性材料により形成されている。支持体5に用いられる脆性材料は、二酸化ケイ素(SiO2)や窒化ケイ素(SiN)や酸窒化ケイ素(SiON)などの絶縁性を有する材料でもよいし、ポリシリコンやシリコンやタングステン(W)やチタンアルミニウム(AlTi)などの導電性を有する材料でもよい。
【0012】
本願明細書において「クリープ耐性」とは、クリープ変形に対する抵抗力をいうものとする。
また、本願明細書において「脆性」とは、物体が外力受けたときに、あまり変形しないうちに破壊する性質をいうものとする。
【0013】
支持体5に絶縁性材料を用いた場合には、上部電極3をフロート(浮遊)電極とすることが可能である。一方、支持体5に導電性材料を用いた場合には、支持体5を通して上部電極3に電圧を印加することが可能である。そのため、例えば、ばね6を省略することができ、省スペース化を図ることができる。
【0014】
なお、支持体5は、脆性材料により形成されていることに限定されるわけではない。支持体5は、例えばばね6よりも厚く形成されることにより構造全体として上部電極3およびばね6よりも変形し難い性質を有していてもよい。
つまり、本願明細書において「クリープ耐性」という範囲には、材料の種類に起因するクリープ耐性だけではなく、形状や構造に起因するクリープ耐性が含まれるものとする。
【0015】
ばね6を介して上部電極3を支持する支持部4は、駆動部15に接続されている。そのため、駆動部15は、支持部4およびばね6を介して上部電極3にバイアス電圧を印加することができる。また、下部電極1aは、駆動部15に接続されている。そのため、駆動部15は、下部電極1aにバイアス電圧を印加することができる。つまり、駆動部15は、下部電極1aと上部電極3との間に印加される駆動電圧を供給することができる。
【0016】
図2(a)〜図2(c)は、アクチュエータの駆動を説明する端面模式図である。
なお、図2(a)〜図2(c)は、図1(a)に表した切断面B−Bにおける端面模式図である。
【0017】
駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間に電位差を与えていない状態では、上部電極3は、図2(a)に表したように、下部電極1aから離間している。続いて、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間に電位差を与えると、下部電極1aおよび上部電極3は、静電引力により互いに引きつけられる。これにより、図2(b)に表したように、上部電極3を下方へ駆動することができる。そして、上部電極3は、絶縁膜7aを介して下部電極1aと接触する(プルイン:Pull−In)。
【0018】
アクチュエータ部12を駆動する際には、駆動部15が下部電極1aおよび上部電極3にバイアス電圧を印加する。例えば、駆動部15は、上部電極3に0V(ボルト)を供給し、下部電極1aに電圧Vbiasを印加する。あるいは、例えば、駆動部15は、上部電極3に電圧Vbiasを供給し、下部電極1aに0V(ボルト)を印加する。あるいは、駆動部15は、駆動回数や容量値に応じて電界の向きを適宜入れ替えてもよい。
【0019】
ここで、上部電極3は、前述したように延性材料の金属により形成されているため、高い応力状態や高温環境下で駆動するとクリープによる変形が生ずる場合がある。クリープ変形が生ずると、アップステート(Up−State)の状態の上部電極3と下部電極1aとの間の距離が短くなるため、可変容量の場合には容量値が変化する。また、スイッチの場合には、アイソレーション特性が悪くなる。
なお、本願明細書において「アップステートの状態」とは、駆動部15が下部電極1aおよび上部電極3にバイアス電圧を印加せず、上部電極3が絶縁膜7aを介して下部電極1aと接触していない状態をいうものとする。
【0020】
これに対して、本実施形態では、延性材料の金属により形成された上部電極3は、延性材料の金属により形成されたばね6と、上部電極3およびばね6よりも延性の低い材料からなる支持体5と、を介して支持部4に接続されている。これにより、アップステートの状態の上部電極3と下部電極1aとの間の距離は、実質的には支持体5により決定される。
【0021】
支持体5は、上部電極3およびばね6よりも変形し難く、クリープ変形を生じ難い。そのため、長時間の駆動を行っても、あるいは多数回の駆動を繰り返しても、アップステートの状態の上部電極3と下部電極1aとの間の距離は、変化し難い。また、ばね6は、クリープ変形を生ずるが、ばね定数が支持体5よりも小さいため、上部電極3と下部電極1aとの間の距離にはほとんど影響を及ぼさない。
【0022】
一方、アクチュエータ10を大多数の可変容量やスイッチに応用する場合には、信号を通しながらスイッチングする必要がある(ホットスイッチ)。この場合には、復元力が強く硬いばねにより上部電極3を支持する必要がある。これに対して、本実施形態では、上部電極3は、ばね6よりも硬い支持体5を介して支持部4に接続されている。
【0023】
しかしながら、復元力が強く硬いばねにより上部電極3を支持すると、図2(b)に表したように、ダウンステート(Down−State)の状態の上部電極3の端部3aが支持体5により引っ張られ絶縁膜7aから浮き上がる場合がある。そうすると、延性材料の金属により形成された上部電極3に応力が生ずる。これにより、上部電極3にクリープ変形が生ずる場合がある。
なお、本願明細書において「ダウンステートの状態」とは、駆動部15が下部電極1aおよび上部電極3にバイアス電圧を印加し、上部電極3が絶縁膜7aを介して下部電極1aと接触した状態をいうものとする。また、上部電極3の端部3aは、支持体5との接続部である。
【0024】
これに対して、本実施形態では、駆動部15は、下部電極1aと上部電極3との間にプルイン(Pull−In)電圧以上の電位差を与えて駆動する。そうすると、上部電極3の端部3aは、図2(c)に表したように、絶縁膜7aからほとんど浮き上がらず平らな状態となる。そのため、上部電極3には応力がほとんど生じない。一方、支持体5には応力が集中して生ずる。支持体5は、前述したようにクリープ変形を生じ難い。これにより、クリープによる変形を抑えることができる。
【0025】
ここで、クリープひずみ速度は、応力や温度などに依存し、一般的には以下のDorn-Woertmanの式で表される。
【数1】
式(1)において、材料に依存して決まるのは、定数a、クリープ指数n、およびクリープの活性化エネルギーQである。また、その他の条件としては、初期応力σおよび絶対温度Tがある。
【0026】
式(1)から分かるように、初期応力σが大きいほど、また絶対温度Tが高いほど、クリープの進展は速くなる。また、材料によってもクリープの進展速度は変わる。延性材料の金属(例えばアルミ(Al)、アルミ合金、金(Au)など)では、クリープの進展が非常に速く、一方で、脆性材料(例えば二酸化ケイ素(SiO2)や窒化ケイ素(SiN)など)では、クリープの進展が非常に遅いことが知られている。
【0027】
そのため、支持体5が例えば前述した脆性材料により形成されている場合には、支持体5のクリープの進展は遅い。この場合には、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧以上の電位差を与えたときに、発生する応力をクリープ耐性に優れた支持体5に集中させることができる。これにより、クリープによる変形を抑えることができる。
【0028】
次に、駆動電圧と静電容量との関係について、図面を参照しつつ説明する。
図3(a)および図3(b)は、駆動電圧と静電容量との関係を表すグラフ図である。 なお、図3(a)は、プルイン電圧Vp以下および以上の駆動電圧と静電容量との関係の一例を例示するグラフ図であり、図3(b)は、プルイン電圧Vp以上の駆動電圧と静電容量との関係の一例を例示する解析結果である。また、図3(a)に表した縦軸(静電容量)および横軸(駆動電圧)は、線形軸である。
【0029】
駆動部15が下部電極1aおよび上部電極3にバイアス電圧を印加すると、図2に関して前述したように、上部電極3は下部電極1aに引きつけられる。これにより、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以下の電位差を与えている場合には、上部電極3と下部電極1aとの間の距離が短くなるため、静電容量は、図3(a)に表したように微増する(ステートS1)。
【0030】
続いて、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vpの電位差を与えると、上部電極3は、絶縁膜7aを介して下部電極1aと接触する。このとき、上部電極3と下部電極1aとの間の静電容量は、急激に増加する。
【0031】
続いて、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差を与えると、上部電極3と下部電極1aとの間の静電容量は、徐々に増加する(ステート2)。続いて、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差をさらに与えると、上部電極3と下部電極1aとの間の静電容量は、飽和状態に近づいていく(ステートS3)。これについて、図3(b)を参照しつつさらに説明する。
【0032】
図3(b)に表したグラフ図の横軸は、プルイン電圧Vpを基準として駆動部15がさらに印加した電圧ΔV(ボルト)を表している。図3(b)に表したグラフ図の縦軸は、駆動部15がプルイン電圧Vpを印加したときのダウンステートの状態の静電容量(プルイン静電容量)を「100」とした場合に、ダウンステートの状態の静電容量の比率Cdr(パーセント)を表している。
【0033】
図3(b)に表したように、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間に与える電位差を大きくするにつれて、上部電極3と下部電極1aとの間の静電容量は、徐々に増加する。これは、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間に与える電位差を大きくするにつれて、下部電極1aと上部電極3との間に生ずる静電引力が増加し、下部電極1aと上部電極3との間の密着性および平坦性が向上するためである。このとき、支持体5により引っ張られ絶縁膜7aから浮き上がった上部電極3の端部3aは、絶縁膜7aを介して下部電極1aと徐々に接触していく。
【0034】
そして、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にさらに大きい電位差を与えると、静電容量は飽和状態に近づいていく。これは、下部電極1aと上部電極3との間の密着性および平坦性の向上が飽和していくためである。つまり、駆動部15がプルイン電圧Vp以上の電位差を与えてしばらくの間(ステートS2)においては、絶縁膜7aを介して接触する下部電極1aと上部電極3との面積は、電極全体に亘ってステートS3の状態よりも急激に増加していく。一方で、駆動部15がさらに大きい電位差を与えると(ステートS3)、絶縁膜7aを介して接触する下部電極1aと上部電極3との面積は、絶縁膜7aから浮き上がった上部電極3の端部3aのより狭い領域においてステートS2よりも緩やかに増加していく。
【0035】
図4は、静電容量比率の増加電圧による依存性の一例を例示する解析結果である。
図4に表したグラフ図の横軸は、図3(b)に表したグラフ図の横軸と同様である。図4に表したグラフ図の縦軸は、図3(b)に表したグラフ図の各静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVを表している。つまり、図4に表した変化率dCdr/dVは、図3に表したグラフ図の各静電容量比率Cdrにおける「傾き」を表している。
【0036】
図4に表したように、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間に与える電位差を大きくするにつれて、各静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVは、減少する。そして、静電容量は、飽和状態に近づいていく。これは、図3に関して前述したように、下部電極1aと上部電極3との間の密着性および平坦性の向上が飽和していくためである。
【0037】
下部電極1aと上部電極3との間の密着性および平坦性が向上すると、上部電極3の端部3aは、絶縁膜7aからほとんど浮き上がらず平らな状態となる。そうすると、図2に関して前述したように、上部電極3には応力がほとんど生じない。一方、支持体5には応力が集中して生ずる。支持体5は、クリープ変形を生じ難い。これにより、クリープによる変形を抑えるためには、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差を与え、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVがより減少した状態で駆動することが望ましい。
【0038】
ここで、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差を与えた場合、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVが急激に変化する第1の領域が存在する。一方、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVが第1の領域よりも緩やかに変化する第2の領域が存在する。例えば、図4に表したように、変化率dCdr/dVが「0.4」よりも大きいときには、変化率dCdr/dVは、急激に変化している(第1の領域)。一方、変化率dCdr/dVが「0.4」以下のときには、変化率dCdr/dVは、「0.4」よりも大きいときに比べて緩やかに変化している(第2の領域)。これにより、駆動部15は、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVが「0.4」以下となるような電位差を下部電極1aと上部電極3との間に与えることが望ましい。
【0039】
なお、1つの第2の領域が存在することに限定されず、複数の第2の領域が存在してもよい。例えば、図4に表した解析結果において、変化率dCdr/dVが「0.2」以下のときには、変化率dCdr/dVは、さらに緩やかに変化している(第2の領域)。これにより、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVが「0.2」以下となるような電位差を駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間に与えると、クリープによる変形をさらに抑えることができる。
【0040】
あるいは、変化率dCdr/dVが「0.6」よりも大きいときには、変化率dCdr/dVが急激に変化していると考えることができる(第1の領域)。一方、変化率dCdr/dVが「0.6」以下のときには、変化率dCdr/dVは、「0.6」よりも大きいときに比べて緩やかに変化していると考えることができる(第2の領域)。これにより、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVが「0.6」以下となるような電位差を駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間に与えることによっても、クリープによる変形を抑えることができる。
【0041】
図5は、アップステートの状態の静電容量の比率の一例を例示する解析結果である。 図5に表したグラフ図の横軸は、図3(b)に表したグラフ図の横軸と同様である。図5に表したグラフ図の縦軸は、初期のアップステートの状態の静電容量を「100」とした場合に、室温25℃の環境下でダウンステートの状態に3年間放置した後のアップステートの状態の静電容量の比率Cur(パーセント)を表している。つまり、図5に表したグラフ図の縦軸は、クリープ疲労前の初期のアップステートの状態と、クリープ疲労後のアップステートの状態と、の間における静電容量の比率Curを表している。
【0042】
図5に表したように、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vpの電位差を与え、室温25℃の環境下でダウンステートの状態に3年間放置した後のアップステートの状態の静電容量は、初期のアップステートの状態の静電容量よりも大きい。これは、上部電極3にクリープ変形が生じたことにより、上部電極3と下部電極1aとの間の距離が短くなったためである。そして、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間に与える電位差を大きくするにつれて、アップステートの状態の静電容量の比率Curは、減少する。これは、下部電極1aと上部電極3との間の密着性および平坦性が向上したことにより、上部電極3のクリープ変形を抑えることができたためである。クリープによる変形を抑えることができるように、駆動部15が下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差を与え、クリープ疲労前後における静電容量の比率Curが約数パーセント程度以下となるようにすることが望ましい。例えば、駆動部15は、クリープ疲労前後における静電容量の比率Curが2パーセント以下となるような電位差を下部電極1aと上部電極3との間に与えることが望ましい。
【0043】
図6は、本実施形態の駆動電圧のプロファイルの一例を例示グラフ図である。
本実施形態では、駆動部15は、下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差を与えて駆動する。具体的には、駆動部15は、下部電極1aおよび上部電極3に印加するバイアス電圧を増加させ、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVが例えば「0.4」となる電圧V1以上の電圧V2を印加する。これにより、前述したようにクリープによる変形を抑えることができる。なお、図6に表したグラフ図において例示した静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVの数値「0.4」は、一例であり、これだけに限定されるわけではない。また、電圧V2は、駆動部15の制約電圧V3よりも低い。
【0044】
図7は、本実施形態にかかるクリープ解析の結果の一例を例示する斜視視式図である。 また、図8は、比較例にかかるクリープ解析の結果の一例を例示する斜視模式図である。
なお、図7(a)および図8(a)は、初期のアップステートの状態の解析結果の一例であり、図7(b)および図8(b)は、駆動部15が下部電極1aおよび上部電極3にバイアス電圧を印加した直後のダウンステートの状態の解析結果の一例であり、図7(c)および図8(c)は、ダウンステートの状態に3年間放置した後のダウンステートの状態の解析結果の一例であり、図7(d)および図8(d)は、絶縁膜7aを介して接触していた下部電極1aおよび上部電極3が剥離(プルアウト:Pull−Out)した後のアップステートの状態の解析結果の一例である。
また、図7(b)、図7(c)、図8(b)、および図8(c)は、上部電極3の端部3aを拡大して眺めた拡大模式図である。
また、図7および図8に表した解析結果は、室温25℃の環境下で行った解析結果である。
【0045】
図8に表した比較例の解析結果では、駆動部15は、下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vpの電位差を与えて駆動している。この場合には、図8(b)および図8(c)に表したように、バイアス電圧が印加された直後およびダウンステートの状態に3年間放置された後において、上部電極3の端部3aは、支持体5により引っ張られ絶縁膜7aから浮き上がった状態となっている。これにより、上部電極3の端部3aにおいて、クリープによる変形が生ずる場合がある。
【0046】
これに対して、図7に表した本実施形態の解析結果では、駆動部15は、下部電極1aと上部電極3との間にプルイン電圧Vpよりも高い電位差を与えて駆動している。この場合には、図7(b)および図7(c)に表したように、バイアス電圧が印加された直後およびダウンステートの状態に3年間放置された後において、上部電極3の端部3aは、絶縁膜7aからほとんど浮き上がらず平らな状態となっている。そのため、上部電極3には応力がほとんど生じていない。一方、支持体5には応力が集中して生じている。支持体5は、前述したように上部電極3よりも延性の低い材料からなり、クリープ変形を生じ難い。これにより、クリープによる変形を抑えることができる。
【0047】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
図9(a)〜図9(c)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す模式図である。 なお、図9(a)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す平面模式図であり、図9(b)は、図9(a)に表した切断面C−Cにおける端面模式図であり、図9(c)は、図9(a)に表した切断面D−Dにおける端面模式図である。
【0048】
本実施形態にかかるアクチュエータ13は、例えば可変容量などに用いられる。本実施形態にかかるアクチュエータ13では、絶縁膜8の上に下部電極1a、2aが配置されている。また、下部電極1a、2aの下には、絶縁膜8を介してRF(Radio Frequency)電極が積層されている。RF電極は、下部電極1aに対向して設けられたシグナル線1bと、下部電極2aに対向して設けられたグランド線2bと、を有する。上部電極3は、下部電極1a、2aに対向して配置されている。そして、上部電極3と、下部電極1a、2aと、の間の距離は可変する。上部電極3および下部電極1a、2aにより、静電型のアクチュエータ部14が形成されている。
【0049】
下部電極1a、2aは、駆動部15に接続されている。そのため、駆動部15は、下部電極1a、2aにバイアス電圧を印加することができる。その他の構造および材料などは、図1に関して前述したアクチュエータ10と同様である。
【0050】
図10(a)〜図10(c)は、アクチュエータの駆動を説明する端面模式図である。 なお、図10(a)〜図10(c)は、図9(a)に表した切断面D−Dにおける端面模式図である。
【0051】
上部電極3は、RF電極と駆動電極との役割を兼ねている。図10(b)および図10(c)に表したように、上部電極3と駆動部15との間にはローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)が挿入されているため、上部電極3は、RF的にはフロートになっている。これにより、上部電極3は、RF電極と駆動電極との役割を兼ねることができる。
【0052】
駆動部15が下部電極1a、2aと上部電極3との間に電位差を与えていない状態では、上部電極3は、図10(a)に表したように、下部電極1a、2aから離間している。続いて、駆動部15が下部電極1a、2aと上部電極3との間に電位差を与えると、下部電極1a、2aおよび上部電極3は、静電引力により互いに引きつけられる。これにより、図10(b)に表したように、上部電極3を下方へ駆動することができる。そして、上部電極3は、絶縁膜7aを介して下部電極1a、2aと接触する(プルイン)。
【0053】
アクチュエータ部14を駆動する際には、駆動部15が下部電極1a、2aおよび上部電極3にLPFを介してバイアス電圧を印加する。例えば、駆動部15は、上部電極3に0V(ボルト)を供給し、下部電極1a、2aに電圧Vbiasを印加する。あるいは、例えば、駆動部15は、上部電極3に電圧Vbiasを供給し、下部電極1a、2aに0V(ボルト)を印加する。あるいは、駆動部15は、駆動回数や容量値に応じて電界の向きを適宜入れ替えてもよい。
【0054】
本実施形態においても、駆動部15は、下部電極1a、2aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差を与えて駆動する。そうすると、上部電極3の端部3aは、図10(c)に表したように、絶縁膜7aからほとんど浮き上がらず平らな状態となる。そのため、上部電極3には応力がほとんど生じない。一方、支持体5には応力が集中して生ずる。支持体5は、前述したようにクリープ変形を生じ難い。これにより、クリープによる変形を抑えることができる。
【0055】
本実施形態におけるダウンステートの状態の静電容量の比率Cdr、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dV、アップステートの状態の静電容量の比率Cur、およびクリープ解析については、図3〜図5および図7に関してそれぞれ前述した如くである。
【0056】
図11は、本実施形態の駆動電圧のプロファイルの一例を例示するグラフ図である。
一般的に、平行平板間に生じる静電引力は、駆動電圧や電極間ギャップに依存し、以下の式で表される。
【数2】
【0057】
式(2)から分かるように、静電引力は、駆動電圧や電極間ギャップに依存するため、絶縁膜7aを介して上部電極3と下部電極1a、2aとが接触するまでは、駆動部15は、より高い電位差を与える必要がある。一方、絶縁膜7aを介して上部電極3と下部電極1a、2aとが一旦接触し、下部電極1aと上部電極3との間の密着性および平坦性が向上すると、電極間ギャップが狭くなるため、より低い電位差でより大きな力を加えることが可能である。
【0058】
そこで、本実施形態では、駆動部15は、図11に表した駆動電圧のプロファイルのようなバイアス電圧を下部電極1aおよび上部電極3に印加することができる。これにより、駆動部15の負担を軽減することができる。また、消費電力をより低く抑えることができる。そして、クリープによる変形を抑えることができる。
【0059】
具体的には、駆動部15は、まず、下部電極1aおよび上部電極3に印加するバイアス電圧を増加させ、電圧増加過程において静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVが例えば「0.4」となる電圧V1以上の第1の駆動電圧V2を印加する。その後、駆動部15は、下部電極1aおよび上部電極3に印加するバイアス電圧を減少させ、電圧減少過程において静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVが例えば「0.4」となる電圧V1以下の第2の駆動電圧V4を印加する。これによっても、クリープによる変形を抑えることができる。
【0060】
なお、図11に表したグラフ図において例示した静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dVの数値「0.4」は、一例であり、これだけに限定されるわけではない。また、駆動部15が下部電極1aおよび上部電極3に印加するバイアス電圧を減少させた後の電圧は、プルイン電圧Vp以上であることに限定されるわけではない。また、電圧V2は、駆動部15の制約電圧V3よりも低い。
【0061】
次に、本発明のさらに他の実施の形態について説明する。
図12(a)〜図12(c)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す模式図である。
なお、図12(a)は、本実施形態にかかるアクチュエータを表す平面模式図であり、図12(b)は、図12(a)に表した切断面E−Eにおける端面模式図であり、図12(c)は、図12(a)に表した切断面F−Fにおける端面模式図である。
【0062】
本実施形態にかかるアクチュエータ16は、例えば可変容量などに用いられる。本実施形態にかかるアクチュエータ16では、絶縁膜8の上に下部電極1a、2aおよびRF電極が並列に配置されている。RF電極は、シグナル線1bとグランド線2bとを有する。シグナル線1bは、下部電極1aと隣接して設けられている。一方、グランド線2bは、下部電極2aと隣接して設けられている。そして、上部電極3および下部電極1a、2aにより、静電型のアクチュエータ部18が形成されている。その他の構造および材料などは、図1に関して前述したアクチュエータ13と同様である。
【0063】
図13(a)〜図13(c)は、アクチュエータの駆動を説明する端面模式図である。 なお、図13(a)〜図13(c)は、図12(a)に表した切断面F−Fにおける端面模式図である。
【0064】
アクチュエータ部18を駆動する際には、図10に関して前述したアクチュエータ13と同様に、駆動部15が下部電極1a、2aおよび上部電極3にLPFを介してバイアス電圧を印加する。例えば、駆動部15は、上部電極3に0V(ボルト)を供給し、下部電極1a、2aに電圧Vbiasを印加する。あるいは例えば、駆動部15は、上部電極3に電圧Vbiasを供給し、下部電極1a、2aに0V(ボルト)を印加する。あるいは、駆動部15は、駆動回数や容量値に応じて電界の向きを適宜入れ替えてもよい。
【0065】
本実施形態においても、駆動部15は、下部電極1a、2aと上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差を与えて駆動する。そうすると、上部電極3の端部3aは、図13(c)に表したように、絶縁膜7aからほとんど浮き上がらず平らな状態となる。そのため、上部電極3には応力がほとんど生じない。一方、支持体5には応力が集中して生ずる。支持体5は、前述したようにクリープ変形を生じ難い。これにより、クリープによる変形を抑えることができる。
【0066】
本実施形態におけるダウンステートの状態の静電容量の比率Cdr、静電容量比率Cdrの電圧に対する変化率dCdr/dV、アップステートの状態の静電容量の比率Cur、およびクリープ解析については、図3〜図5および図7に関してそれぞれ前述した如くである。また、駆動電圧のプロファイルについては、図6および図11に関して前述した如くである。
【0067】
なお、下部電極1a、2aは、上部電極3と支持体5との接続部の近傍においてそれぞれ分割されていてもよい。この場合には、駆動部15は、接続部の近傍の下部電極と上部電極3との間にプルイン電圧Vp以上の電位差を与えることができる。これは、図9および図10に関して前述したアクチュエータ13についても同様である。これにより、駆動部15の負担を軽減したり、消費電力をより低く抑えることができる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1a 下部電極、 1b シグナル線、 2a 下部電極、 2b グランド線、 3 上部電極、 3a 端部、 4 支持部、 5 支持体、 6 ばね、 7 基板、 7a、8 絶縁膜、 9 グランド電極、 10 アクチュエータ、 11 空洞部、 12 アクチュエータ部、 13 アクチュエータ、 14 アクチュエータ部、 15 駆動部、 16 アクチュエータ、 18 アクチュエータ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に配置された下部電極と、
前記下部電極に対向し、前記下部電極との間の距離が可変する上部電極と、
一端が前記基板に固定され、他端が前記上部電極に接続され、前記上部電極を支持し、前記上部電極よりもクリープ耐性の高い支持体と、
前記下部電極と前記上部電極とに接続され、前記下部電極と前記上部電極との間に印加される駆動電圧を供給する駆動部と、
を備え、
前記下部電極と前記上部電極との間の電位差の絶対値を増加させたときに前記下部電極と前記上部電極とが接触し始める前記駆動電圧をプルイン電圧とし、
前記プルイン電圧を印加したときの前記下部電極と前記上部電極との間の静電容量をプルイン静電容量とし、
前記電位差の絶対値を前記プルイン電圧以上に増加させたときに前記プルイン静電容量に対する静電容量の比率の変化率が急激に変化する第1の領域と、前記電位差の絶対値をさらに増加させたときに前記変化率が前記第1の領域よりも緩やかに変化する第2の領域と、が存在し、
前記駆動部は、前記第2の領域における前記駆動電圧を供給することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記第2の領域における前記変化率は、0.4(1/ボルト)以下であることを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記支持体は、酸化物、窒化物及び酸窒化物の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記支持体は、ポリシリコン、シリコン、タングステン及びチタンアルミニウムの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
基板と、
前記基板の上に配置された下部電極と、
前記下部電極に対向し、前記下部電極との間の距離が可変する上部電極と、
一端が前記基板に固定され、他端が前記上部電極に接続され、前記上部電極を支持し、前記上部電極よりもクリープ耐性の高い支持体と、
前記下部電極と前記上部電極とに接続され、前記下部電極と前記上部電極との間に印加される駆動電圧を供給する駆動部と、
を備え、
前記下部電極と前記上部電極との間の電位差の絶対値を増加させたときに前記下部電極と前記上部電極とが接触し始める前記駆動電圧をプルイン電圧とし、
前記駆動部は、前記電位差の絶対値が前記プルイン電圧以上である第1の駆動電圧を供給した後に、前記電位差の絶対値が前記第1の駆動電圧よりも小さい第2の駆動電圧を供給することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に配置された下部電極と、
前記下部電極に対向し、前記下部電極との間の距離が可変する上部電極と、
一端が前記基板に固定され、他端が前記上部電極に接続され、前記上部電極を支持し、前記上部電極よりもクリープ耐性の高い支持体と、
前記下部電極と前記上部電極とに接続され、前記下部電極と前記上部電極との間に印加される駆動電圧を供給する駆動部と、
を備え、
前記下部電極と前記上部電極との間の電位差の絶対値を増加させたときに前記下部電極と前記上部電極とが接触し始める前記駆動電圧をプルイン電圧とし、
前記プルイン電圧を印加したときの前記下部電極と前記上部電極との間の静電容量をプルイン静電容量とし、
前記電位差の絶対値を前記プルイン電圧以上に増加させたときに前記プルイン静電容量に対する静電容量の比率の変化率が急激に変化する第1の領域と、前記電位差の絶対値をさらに増加させたときに前記変化率が前記第1の領域よりも緩やかに変化する第2の領域と、が存在し、
前記駆動部は、前記第2の領域における前記駆動電圧を供給することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記第2の領域における前記変化率は、0.4(1/ボルト)以下であることを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記支持体は、酸化物、窒化物及び酸窒化物の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記支持体は、ポリシリコン、シリコン、タングステン及びチタンアルミニウムの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
基板と、
前記基板の上に配置された下部電極と、
前記下部電極に対向し、前記下部電極との間の距離が可変する上部電極と、
一端が前記基板に固定され、他端が前記上部電極に接続され、前記上部電極を支持し、前記上部電極よりもクリープ耐性の高い支持体と、
前記下部電極と前記上部電極とに接続され、前記下部電極と前記上部電極との間に印加される駆動電圧を供給する駆動部と、
を備え、
前記下部電極と前記上部電極との間の電位差の絶対値を増加させたときに前記下部電極と前記上部電極とが接触し始める前記駆動電圧をプルイン電圧とし、
前記駆動部は、前記電位差の絶対値が前記プルイン電圧以上である第1の駆動電圧を供給した後に、前記電位差の絶対値が前記第1の駆動電圧よりも小さい第2の駆動電圧を供給することを特徴とするアクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−66346(P2012−66346A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213449(P2010−213449)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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