説明

アクティブ免震装置、及びアクティブ免震構造

【課題】地震等により構造物に発生する揺れを低減するとともに、残留変形を生じた構造物を移動させることができるアクティブ免震装置、及びアクティブ免震構造を提供する。
【解決手段】第1駆動装置60により上部構造物16へ制御力を作用させて、地震等により上部構造物16に発生する揺れを低減する。また、第2駆動装置68により上部構造物16へ移動力を作用させて、残留変形を生じた上部構造物16を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等により構造物に生じる揺れを低減するアクティブ免震装置、及びアクティブ免震構造に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータやセミアクティブダンパー等の免震装置により、構造物に発生する地震時の揺れを制御し低減する免震構造において、地震後に残留変形が生じた場合、構造物を原位置へ復帰させることが求められる。
【0003】
モータ駆動式のアクチュエータを免震装置とし、このアクチュエータによって構造物を原位置へ復帰させようとする場合、構造物を移動させるためにモータを高トルクで回転させる必要があり、また、構造物に発生する揺れを制御するためにモータを高速で回転させる必要がある。そして、このような高トルクで高回転の大きなパワーのモータを製作するのは難しい。
【0004】
一方、ストローク変位に対する油圧抵抗や摩擦抵抗等によって、構造物に対して受動的に抵抗力を作用させるセミアクティブダンパーは、構造物に対して能動的に力を作用させることができないので、構造物を原位置へ復帰させることができない。特許文献1には、基礎免震層にセミアクティブダンパーが設けられた免震構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−189922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は係る事実を考慮し、地震等により構造物に発生する揺れを低減するとともに、残留変形を生じた構造物を移動させることが可能なアクティブ免震装置、及びアクティブ免震構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、下部構造物の上に水平免震支持された上部構造物に発生する揺れを制御するアクティブ免震装置において、前記下部構造物又は前記上部構造物に回転可能に設けられたねじ軸と、前記上部構造物又は前記下部構造物に設けられ、前記ねじ軸が捩じ込まれ貫通するナット部と、前記ねじ軸へ回転力を伝達する第1駆動装置と、前記第1駆動装置が前記ねじ軸へ伝達する回転力よりも大きな回転力を前記ねじ軸へ伝達する第2駆動装置と、前記第2駆動装置から前記ねじ軸へ回転力を伝達又は伝達解除する力伝達装置と、を有するアクティブ免震装置である。
【0008】
請求項1に記載の発明では、第1駆動装置からねじ軸へ回転力を伝達し、ねじ軸の回転運動をナット部の直線運動に変換して上部構造物へ制御力を作用させることにより、地震等によって上部構造物に発生する揺れを低減することができる。
【0009】
また、第1駆動装置からねじ軸へ伝達する回転力よりも大きな回転力を第2駆動装置からねじ軸へ伝達し、ねじ軸の回転運動をナット部の直線運動に変換して上部構造物へ移動力を作用させることにより、残留変形を生じた上部構造物を移動させて原位置へ復帰させることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、下部構造物の上に上部構造物を水平免震支持する免震支承と、前記下部構造物又は前記上部構造物に回転可能に設けられたねじ軸と、前記上部構造物又は前記下部構造物に設けられ、前記ねじ軸が捩じ込まれ貫通するナット部と、前記ねじ軸へ回転力を伝達する第1駆動装置と、前記第1駆動装置が前記ねじ軸へ伝達する回転力よりも大きな回転力を前記ねじ軸へ伝達する第2駆動装置と、前記第2駆動装置から前記ねじ軸へ回転力を伝達又は伝達解除する力伝達装置と、を有するアクティブ免震構造である。
【0011】
請求項2に記載の発明では、免震支承によって下部構造物の上に上部構造物を水平免震支持するアクティブ免震構造において、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記ねじ軸、前記ナット部、前記第1駆動装置、前記第2駆動装置及び前記力伝達装置により構成されるアクティブ免震装置が、平面2軸方向へそれぞれ配置されているアクティブ免震構造である。
【0013】
請求項3に記載の発明では、アクティブ免震装置が、平面2軸方向へそれぞれ配置されているので、地震等により上部構造物に発生する平面2軸方向の揺れを低減するとともに、上部構造物を平面2軸方向へ移動させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記構成としたので、地震等により構造物に発生する揺れを低減するとともに、残留変形を生じた構造物を移動させることが可能なアクティブ免震装置、及びアクティブ免震構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るアクティブ免震構造を示す正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るセミアクティブダンパーを示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るアクティブ免震装置を示す正面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るアクティブ免震構造の変形例を示す正面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るアクティブ免震構造の変形例を示す正面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るアクティブ免震構造を示す正面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る移動機構90を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図を参照しながら、本発明のアクティブ免震装置、及びアクティブ免震構造を説明する。なお、本実施形態では、鉄筋コンクリート造の建築物に本発明を適用した例を示すが、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、CFT造(Concrete-Filled Steel Tube:充填形鋼管コンクリート構造)、それらの混合構造など、さまざまな構造や規模の建築物に対して適用することができる。
【0017】
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0018】
図1の立面図に示すように、建築物10は、地盤12上に設けられた下部構造物としての鉄筋コンクリート造の基礎14と、上部構造物としての鉄筋コンクリート造の上部建物16とを有している。
【0019】
基礎14と上部建物16との間の基礎免震層18には、基礎14上に上部建物16を水平免震支持する免震支承としての直動転がり支承20が設置されている。また、基礎免震層18には、セミアクティブダンパー22とアクティブ免震装置24とが設けられている。すなわち、建築物10の基礎免震層18には、直動転がり支承20、セミアクティブダンパー22、及びアクティブ免震装置24を有するアクティブ免震構造26が構築されており、セミアクティブダンパー22及びアクティブ免震装置24によって、基礎14上に水平免震支持された上部建物16に発生する揺れを制御する。
【0020】
ここで、アクティブ免震構造とは、外部からの直接的な力の入力により建物の振動を制御する免震構造を意味し、図1のアクティブ免震構造26では、アクティブ免震装置24により上部建物16へ作用させる制御力が、「外部からの直接的な力」となる。
【0021】
直動転がり支承20は、基礎14の上面に設けられた支持台50の上面に取り付けられたレール52と、上部建物16の下面に設けられた脚部材78の下面に取り付けられレール52上を滑る移動ブロック54とを有する滑り装置であり、基礎14の上に上部建物16を支持するとともに、レール52と移動ブロック54との間に生じる摩擦力よりも大きな水平力が上部建物16に作用したときに、基礎14に対して上部建物16を相対移動させる。なお、直動転がり支承には、いわゆるベアリングを内蔵したブロック(滑動体)をレール上で動かすリニアスライダーが含まれる。
【0022】
セミアクティブダンパー22は、図2の断面図に示すように、ロッド28、30と連動するピストン32のシリンダー44内の移動に伴って部屋34又は部屋36から排出されたオイルが、油圧管38、40を通って部屋36又は部屋34に流入する際の流れ抵抗をセミアクティブダンパー22の抵抗力として上部建物16に付与する。
【0023】
また、サーボ弁42の弁の開口面積(サーボ弁42内を流れるオイルの流路の大きさ)を変更することによってオイルの流れ抵抗を変え、これによって、セミアクティブダンパー22の抵抗力を調整することができる。
【0024】
なお、図2は、セミアクティブダンパー22の原理を説明するために示したモデル図であり、説明の都合上、図2で示したロッド28が図1では省略されている。図1では、図2で示したシリンダー44の左側の端部が上部建物16の下部に接続され、ロッド30の右側の端部が基礎14の上部に接続されていることになる。
【0025】
アクティブ免震装置24は、図3の正面図に示すように、アクチュエータ46と構造物移動用ユニット48とによって構成されている。アクチュエータ46は、ねじ軸としてのボールねじ56、ナット部58、及び第1駆動装置としての高速モータ60を備えている。ボールねじ56は、基礎14上に設置された軸受け62、64に両端部を回転可能に支持されている。ナット部58は、上部建物16の下面に固定され、ボールねじ56が捩じ込まれて貫通している。高速モータ60は、ボールねじ56の一方の端部に出力軸66が接続され、ボールねじ56に回転力を伝達する。
【0026】
構造物移動用ユニット48は、第2駆動装置としての低速モータ68、及び力伝達装置としてのクラッチ70を備えている。低速モータ68は、モータ72と減速機74とによって構成されており、モータ72から得られる回転速度を減速機74により減らして、高速モータ60がボールねじ56に伝達する回転力よりも大きな回転力を出力軸76から出力させることができる。クラッチ70は、低速モータ68の出力軸76から得られる回転力をボールねじ56の他方の端部に伝達したり、又はこの伝達を解除したりすることができる。
【0027】
次に、本発明の第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0028】
第1の実施形態のアクティブ免震装置24及びアクティブ免震構造26では、図1〜3に示すように、通常は、クラッチ70を操作して低速モータ68からボールねじ56への回転力の伝達を解除した(低速モータ68からボールねじ56への回転力が伝達されない)状態にしておく。そして、地震等により上部建物16に発生する揺れに対して、アクチュエータ46により上部建物16へ制御力を作用させる。
【0029】
アクチュエータ46により上部建物16へ作用させる制御力は、高速モータ60からボールねじ56へ回転力を伝達し、ナット部58にボールねじ56が捩じ込まれたねじ構造により、ボールねじ56の回転運動をナット部58の直線運動に変換して生じさせる。
【0030】
また、上部建物16が揺れると、セミアクティブダンパー22のシリンダー44が上部建物16と連動して移動するので、上部建物16に付与する抵抗力がセミアクティブダンパー22に生じる。
【0031】
これらにより、地震等により上部建物16に発生する揺れを低減することができる。なお、アクチュエータ46に行わせる振動制御の制御則は、地震等により上部建物16に発生する揺れを、上部建物16へ制御力を作用させることによって低減できるものであれば、どのような制御則を用いてもよい。
【0032】
また、上部建物16を移動させる際には、クラッチ70の操作により低速モータ68の回転力がボールねじ56へ伝達される状態にし、低速モータ68により上部建物16へ移動力を作用させる。
【0033】
低速モータ68により上部建物16へ作用させる移動力は、低速モータ68からボールねじ56へ回転力を伝達し、ナット部58にボールねじ56が捩じ込まれたねじ構造により、ボールねじ56の回転運動をナット部58の直線運動に変換して生じさせる。
【0034】
ここで、低速モータ68は、高速モータ60がボールねじ56へ伝達する回転力よりも大きな回転力をボールねじ56へ伝達することができるので、低速モータ68により上部建物16へ作用させる移動力によって上部建物16を移動させることができる。これにより、残留変形を生じた上部建物16を原位置へ復帰させることができる。
【0035】
低速モータ68によりボールねじ56を回転させる場合、高速モータ60の出力軸66は、ゆっくり回転するので抵抗にならない。よって、クラッチによってボールねじ56から高速モータ60へ回転力が伝達されないようにしなくてもよい。なお、クラッチを設けてボールねじ56から高速モータ60への回転力の伝達を遮断してもよい。このようにすれば、低速モータ68からボールねじ56への回転力の伝達効率を高めることができる。
【0036】
また、高速モータ60により上部建物16へ作用させる制御力は、静止した状態の上部建物16を移動させる移動力よりも小さな力(例えば、レール52と移動ブロック54との間に生じる摩擦力よりも小さい力)でよいので、高速モータ60からボールねじ56へ伝達する回転力は小さくてよい。また、低速モータ68によって上部建物16を速いスピードで移動させなくてもよいので、低速モータ68からボールねじ56へ伝達する回転運動の回転速度は小さくてよい。
【0037】
よって、高速モータ60及び低速モータ68のパワーは、回転力と回転速度との積に比例するので、高速モータ60及び低速モータ68をパワーの小さい装置にすることができ、高速モータ60及び低速モータ68の製作を可能にするとともに、装置コストや運転コスト等の設備費を低く抑えることができる。
【0038】
例えば、高速モータ60の回転力を低速モータ68の回転力の0.05〜0.2倍とし、高速モータ60のパワーを低速モータ68のパワーの10倍とすると、高速モータ60の回転速度は低速モータ68の回転速度の50〜200倍となり十分に実現可能な値となる。
【0039】
また、例えば、高速モータ60の回転力を低速モータ68の回転力の0.05〜0.2倍とし、高速モータ60の回転速度を低速モータ68の回転速度の100倍とすると、高速モータ60のパワーは低速モータ68のパワーの5〜20倍となり十分に実現可能な値となる。
【0040】
なお、高速モータ60の回転力を低速モータ68の回転力の0.1倍とし、高速モータ60の回転速度を低速モータ68の回転速度の100倍とすると、高速モータ60のパワーは低速モータ68のパワーの10倍となり、経済性に適した値となるので好ましい。
【0041】
また、ボールねじ56の径は、回転による共振や強度上の問題から、一般に、ボールねじ56に生じる回転力と回転速度とに比例させて大きくしなければならない。しかし、高速モータ60から伝達される回転運動は高速であるが回転力は小さく、また、低速モータ68から伝達される回転運動の回転力は大きいが低速であるので、ボールねじ56の径を過大にしなくてもよい。
【0042】
また、セミアクティブバンパー22は、アクチュエータ46とほぼ同様の免震効果を上部建物16に対して発揮させることができ、油圧式のアクチュエータのように油圧ポンプ等の付帯設備を必要としないので、低コスト化を図ることができる。よって、図1に示したアクティブ免震構造26の構成にすれば、免震性能を低下させることなく、アクティブ免震構造の設備コストを低く抑えることができる。
【0043】
また、滑り装置を直動転がり支承20とすることにより、レール52に対して移動ブロック54が相対移動するときの抵抗力(レール52と移動ブロック54との間に生じる摩擦力)を小さくできるので、免震効果(上部建物16に発生する揺れを低減する効果)の高いアクティブ免震構造26を構築することができる。
【0044】
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
【0045】
なお、第1の実施形態では、ボールねじ56を基礎14に回転可能に設け、ナット部58を上部建物16に設けた例を示したが、ボールねじ56を上部建物16に回転可能に設け、ナット部58を基礎14に設けてもよい。
【0046】
また、第1の実施形態では、セミアクティブダンパー22及びアクティブ免震装置24を基礎免震層18に配置したアクティブ免震構造26の例を示したが、図4、5の立面図に示すように、セミアクティブダンパー22をアクチュエータ46やアクティブ免震装置24としてもよい。また、図4のアクチュエータ46を油圧式等の他の機構のアクチュエータにしてもよい。
【0047】
また、第1の実施形態では、セミアクティブダンパーを油圧式のセミアクティブダンパー22とした例を示したが、セミアクティブダンパーは、このセミアクティブダンパーのストローク変位量の増分方向(ストローク速度方向)と反対の方向へ抵抗力を作用させることができこの抵抗力を所定の値に変更できる装置であればよく、オイルを送る流路に設けられたオリフィスの面積を変えたり、流路に設けられた弁を切換えたりすることによって抵抗力を変更する方式のオイルダンパーや、摩擦板への押し付け力を変化させて抵抗力を変更する方式の摩擦ダンパー等のセミアクティブダンパーとしてもよい。
【0048】
また、基礎免震層にアクチュエータのみが配置されたフルアクティブ免震構造において、上部建物を移動させる十分な力がアクチュエータによって得られない場合には、このアクチュエータと第1の実施形態のアクティブ免震装置24とを基礎免震層に併設してもよい。
【0049】
また、第1の実施形態では、高速モータ60の出力軸66と低速モータ68の出力軸76とが、共通のボールねじ56の両端に接続されている例を示したが、高速モータ60の出力軸66と低速モータ68の出力軸76とは、共通のボールねじに接続されて回転力を伝達できれば、どのように配置されてもよい。例えば、ウォームとウォームホィールとによるウォームギア構造を用いて、ボールねじの材軸方向と、高速モータ60や低速モータ68の出力軸の軸方向とが略直交するようにしてもよい。
【0050】
次に、本発明の第2の実施形態とその作用及び効果について説明する。
【0051】
第2の実施形態は、第1の実施形態の基礎免震層18を2層にしたものである。したがって、第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0052】
図6の立面図に示すように、第2の実施形態のアクティブ免震構造80では、基礎免震層82の上に上部建物16が支持されている。基礎免震層82は、下部免震層84と上部免震層86とによって構成されている。下部免震層84は、基礎14の上に上部免震層86を水平免震支持し、上部免震層86は、下部免震層84の上に上部建物16を水平免震支持している。
【0053】
下部免震層84及び上部免震層86には、図1で示した基礎免震層18と同様に、セミアクティブダンパー22とアクティブ免震装置24とが配置されている。なお、説明の都合上、図6の上部免震層86には、セミアクティブダンパー22が省略されている。
【0054】
下部免震層84及び上部免震層86には、下部免震層84が上部免震層86を水平免震する方向と、上部免震層86が上部建物16を水平免震する方向とが略直交するように、セミアクティブダンパー22とアクティブ免震装置24とがそれぞれ配置されている。すなわち、アクティブ免震装置24が、平面2軸方向へそれぞれ配置されている。
【0055】
よって、第2の実施形態のアクティブ免震構造80では、地震等により上部建物16に発生する平面2軸方向の揺れを低減するとともに、上部建物16を平面2軸方向へ移動させることができる。
【0056】
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。
【0057】
なお、第2の実施形態では、図1で示した基礎免震層18と同様に、セミアクティブダンパー22とアクティブ免震装置24とを下部免震層84及び上部免震層86に配置した例を示したが、図4、5で示した基礎免震層18と同様に、アクチュエータ46やアクティブ免震装置24を下部免震層84及び上部免震層86に配置してもよいし、これらの構成を組み合わせてもよい。例えば、図1で示した基礎免震層18と同様に、セミアクティブダンパー22とアクティブ免震装置24とを下部免震層84に配置し、図5で示した基礎免震層18と同様に、アクティブ免震装置24を上部免震層86に配置してもよい。
【0058】
また、第2の実施形態では、直交する平面2軸方向への上部建物16の揺れ及び移動に対応可能なアクティブ免震構造80の例を示したが、第1の実施形態の図1、4、5で示したような、平面1軸方向への上部建物16の揺れ及び移動に対応可能なアクティブ免震構造においては、図7の拡大図に示すように、ボールねじ56の材軸方向と略直交する水平方向へのボールねじ56の移動を許容する移動機構90を設けるのが好ましい。移動機構90では、ボールねじ56の材軸方向と略直交する水平方向へ移動可能に、上部建物16の下面に固定された長尺のスライドレール88にナット部58が支持されている。なお、図7の移動機構90は、ボールねじ56の材軸方向と略直交する水平方向へのボールねじ56の移動を許容する機構の一例を示したものであり、このような動きを実現できるものであれば、実用性を考慮して他の機構を採用してもよい。
【0059】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明した。
【0060】
なお、第1及び第2の実施形態では、免震支承を直動転がり支承20とした例を示したが、基礎14の上に上部建物16を支持するとともに基礎14に対する上部建物16の相対移動を可能とするものであればよく、転がり支承、滑り支承、積層ゴム等を用いてもよい。
【0061】
また、第1及び第2の実施形態では、基礎免震層18、82にアクティブ免震構造26、80を構築した例を示したが、アクティブ免震構造26、80は、中間免震層に構築してもよい。
【0062】
また、第1及び第2の実施形態で示したセミアクティブダンパー22、アクティブ免震装置24、アクチュエータ46の数や配置は、上部建物16の規模や形状、対象とする地震力等に応じて適宜決めればよい。また、第1及び第2の実施形態の基礎免震層18、82に、セミアクティブダンパー22やアクチュエータ46と異なる機構のセミアクティブダンパーやアクチュエータを併設してもよいし、油圧ダンパー、鋼製ダンパー、粘性ダンパー、積層ゴム等の減衰装置を併設してもよい。
【0063】
また、第1及び第2の実施形態で示した低速モータ68(モータ72、減速機74)やクラッチ70が故障した際に人力で操作(上部建物16を移動)できるように、ボールねじ56を手動で回転させるためのハンドルが取り付けられるようにしてもよい。
【0064】
また、第1及び第2の実施形態で示したクラッチ70は、手動クラッチ、電動クラッチ、電磁クラッチ等のどのような機構のクラッチであってもよい。例えば、クラッチ70を、モータ駆動により自動で回転力の伝達と伝達解除との切換が可能な電動クラッチにして、地震がおさまった後に上部建物16の位置を自動計測し、許容値よりも大きな残留変形である場合にクラッチ70を自動で作動させて低速モータ68の回転力をボールねじ56へ伝達するようにしてもよい。
【0065】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1及び第2の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
14 基礎(下部構造物)
16 上部建物(上部構造物)
20 直動転がり支承(免震支承)
24 アクティブ免震装置
26、80 アクティブ免震構造
56 ボールねじ(ねじ軸)
58 ナット部
60 高速モータ(第1駆動装置)
68 低速モータ(第2駆動装置)
70 クラッチ(力伝達装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造物の上に水平免震支持された上部構造物に発生する揺れを制御するアクティブ免震装置において、
前記下部構造物又は前記上部構造物に回転可能に設けられたねじ軸と、
前記上部構造物又は前記下部構造物に設けられ、前記ねじ軸が捩じ込まれ貫通するナット部と、
前記ねじ軸へ回転力を伝達する第1駆動装置と、
前記第1駆動装置が前記ねじ軸へ伝達する回転力よりも大きな回転力を前記ねじ軸へ伝達する第2駆動装置と、
前記第2駆動装置から前記ねじ軸へ回転力を伝達又は伝達解除する力伝達装置と、
を有するアクティブ免震装置。
【請求項2】
下部構造物の上に上部構造物を水平免震支持する免震支承と、
前記下部構造物又は前記上部構造物に回転可能に設けられたねじ軸と、
前記上部構造物又は前記下部構造物に設けられ、前記ねじ軸が捩じ込まれ貫通するナット部と、
前記ねじ軸へ回転力を伝達する第1駆動装置と、
前記第1駆動装置が前記ねじ軸へ伝達する回転力よりも大きな回転力を前記ねじ軸へ伝達する第2駆動装置と、
前記第2駆動装置から前記ねじ軸へ回転力を伝達又は伝達解除する力伝達装置と、
を有するアクティブ免震構造。
【請求項3】
前記ねじ軸、前記ナット部、前記第1駆動装置、前記第2駆動装置及び前記力伝達装置により構成されるアクティブ免震装置が、平面2軸方向へそれぞれ配置されている請求項2に記載のアクティブ免震構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−97767(P2012−97767A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243510(P2010−243510)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【Fターム(参考)】