説明

アクリル系重合体微粒子及びそれを用いたプラスチゾル組成物

【課題】アクリル系重合体微粒子それ自体に接着性を付与することにより、接着性に優れたプラスチゾルを開発する。
【解決手段】脂肪族アミン及び/又は脂環式アミンを官能基として有し、組成が異なる2種類以上の重合体成分からなる粒子構造を有し、かつ、平均粒子径が500nm以上の一次粒子から構成されるアクリル系重合体微粒子及び当該重合体微粒子を用いたプラスチゾル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類以上の重合体成分からなる粒子構造を有するアクリル系重合体微粒子
及びプラスチゾル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性重合体微粒子を可塑剤に分散してなるプラスチゾルは、従来は塩化ビニル系重合体を用いたプラスチゾル(以下、塩ビゾル)が主流であったが、近年アクリル系重合体微粒子を用いたプラスチゾル(以下、アクリルゾル)が用いられるようになりつつある。アクリルゾルの特徴として、焼却時に塩化水素ガスを発生しない等の環境面での優位性が上げられるが、その一方で接着性に劣るなど物性上の低位が指摘されている。
【0003】
とりわけ、自動車用のアンダーコートやボディーシーラー等の用途では、鋼板もしくはカチオン電着塗料をプライマーとして施した鋼板などの基材に対して良好な接着性を有することが不可欠である。アクリルゾルの場合、単独では十分な接着性が得られないため、接着助剤として例えばブロックイソシアネート系やエポキシ系などの化合物を配合することが行われている。しかしこれら接着助剤は粘性の高い液状化合物であり、アンダーコートやボディーシーラー用のプラスチゾルとして適切な粘度特性を損なうものである。したがってプラスチゾルを塗装した際にタレが発生したり、またこれを防止しようとするとスプレー塗装性が低下する等、塗装適性や作業性のバランスをとることが困難となっていた。
【0004】
こうした背景から、イミダゾール系の官能基を含有する重合体を用いることによりアクリルゾル自体の接着性を向上する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参)。この方法では確かに接着性が改良される傾向にあるものの、近年は接着力に対する要求レベルが上がっており、焼き付け温度が低くても高い接着性を有することが求められてきている。しかるにこの方法では170〜180℃における接着性が実現されているのみで、近年求められている140℃以下の低温での接着性を解決するには至っていない。またプラスチゾルとしての貯蔵安定性も実用上欠くことのできない性能であるが、この方法では室温で貯蔵可能なレベルにとどまっており、より過酷な環境、例えば40℃付近での促進された貯蔵安定性試験に耐えることが出来ず、実用性が低いといわざるを得ない。
【0005】
また付着性モノマーを用いた高分子量の重合体を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかし、ここで用いられている付着性モノマーはいずれも自動車アンダーコートやボディーシーラー用として十分な接着性が得られるものではなく、また高分子量であるためにプラスチゾルを加熱した際の重合体の溶融性が低く、それが接着性を発揮できない原因になっていると思われる。
さらにプラスチゾルに反応性の高い官能基を導入することが提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかし、ここでの目的は架橋により重合体の強度を上げることであり、導入された官能基は基材と反応するのではなく、別の官能基と反応するよう設計されている。また実施されている例も水酸基やメチロール基などであり、これらは仮に接着目的に転用したとしても充分な接着力は得られない。
【0006】
このように、プラスチゾル組成物の接着性を高めようとする種々の試みがなされているが、要望にこたえ得る接着性が得られているとはいえないものであり、また作業性などの面でも改善すべき問題を内在しており、プラスチゾル用の重合体微粒子に接着性を付与しようという試みは十分に成功していないのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特公昭55−16177号公報
【特許文献2】特開昭52−42590号公報
【特許文献3】特許1390600号公報
【特許文献4】特開昭62−4767号公報
【特許文献5】特開平11−310681号公報
【特許文献6】特開平7−157622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、アクリル系重合体微粒子それ自体に接着性を付与することにより、接着性に優れたプラスチゾル組成物を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行なった結果、求核性の極めて高い官能基を重合体に導入した2種類以上の重合体成分からなる粒子構造を有するアクリル系重合体微粒子が極めて優れた特性を有するプラスチゾル組成物を与えることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(8)に記載のアクリル系重合体微粒子、それを用いたプラスチゾル組成物及びそれらの製造方法並びの利用方法を提供するものである。
(1)脂肪族アミン及び/又は脂環式アミンを官能基として有し、組成が異なる2種類以上の重合体成分からなる粒子構造を有し、かつ、平均粒子径が500nm以上の一次粒子から構成されているアクリル系重合体微粒子。
(2)重合体成分のうち少なくとも1成分が、炭素数が2以上のアルキル(メタ)アクリレートが20質量%以上共重合された重合体である(1)記載のアクリル系重合体微粒子。
(3)(1)又は(2)記載の重合体微粒子を用いたプラスチゾル組成物。
(4)可塑剤としてジイソノニルフタレートを50質量%以上含有する(3)記載のプラスチゾル組成物。
(5)(3)又は(4)記載のプラスチゾル組成物を用いた物品。
(6)(3)又は(4)記載のプラスチゾル組成物を用いた自動車用アンダーコート及びボディーシーラー。
(7)シード粒子に対して脂肪族アミン及び/又は脂環式アミンを官能基として有するビニル系モノマーを含むモノマー混合物を吸収させ重合させるシード重合法において、水溶性アゾ系ラジカル重合開始剤を用いることを特徴とする、(1)又は(2)記載のアクリル系重合体微粒子の重合方法。
(8)スプレードライ法を用いて重合体微粒子を回収することを特徴とする(7)記載のアクリル系重合体微粒子の製造方法。
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアクリル系重合体微粒子を用いて得られるプラスチゾル組成物は、接着助剤を配合することなく、それ自体がカチオン電着板等への接着性が極めて良好であり、またプラスチゾルとしての貯蔵安定性やゲル化成膜性のバランスも備えている。
さらに、本発明のプラスチゾル組成物を用いて自動車用のアンダーコートやボディーシーラーなどとして使用した場合、接着助剤に由来する作業性の低下や貯蔵安定性の低下などの弊害を受けることがないので、その工業的意義及び地球環境保全にもたらす効果は著大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のアクリル系重合体微粒子は、脂肪族アミン及び/又は脂環式アミンを官能基として含有することが必須である。これらの官能基は求核性が極めて高く、基材にコーティングされている各種プライマーとの反応性に優れるため、良好な接着性が得られる。またプライマーがコーティングされていない場合でも基材の金属原子と配位することで良好な接着性が得られる。
脂肪族アミン及び/又は脂環式アミンを有するビニル系モノマーは特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが反応性が高く好ましい。
【0013】
また本発明のアクリル系重合体微粒子は、2種類以上の重合体成分からなる粒子構造を有することが必須である。例えばプラスチゾルの場合、可塑剤中で微粒子が溶解してしまわないことが求められる一方で、加熱後は可塑剤と良好に相溶することが求められるなど、可塑剤に対して相反する特性が同時に要求されるケースが多く、そのためには単独の重合体成分からなるものではこれらの要求を満足することができない為である。そのため例えばコアシェル構造などを用いて、コアに可塑剤と相溶しやすい重合体を、シェルに可塑剤と相溶しにくい重合体を使う等の工夫が必要となる。
なおこの際、微粒子の粒子構造は2つ以上の重合体成分を含有することができれば特に限定しないが、構造制御の容易さ、機能発現の効率などの観点からして、コアシェル構造や多段構造など、粒子の中心部から同心状に層状の構造を有していることが好ましい。
【0014】
また本発明のアクリル系重合体微粒子は、その一次粒子の平均粒子径が0.5μm以上であることが必須である。例えばコアシェル構造などの粒子構造を作る際、粒子径が十分に大きくないとシェル層の厚みが十分に確保できず、実質的にシェルとして機能しないためである。或いは逆に、シェルの厚みを十分に確保しようとすると、コアの含有量が低下してしまい、コアに付与すべき性能が発揮できないためである。このように、コアシェル構造などの粒子構造に由来する機能を十分に発揮させるためには、一次粒子が一定以上の大きさを有していることが必要であり、その下限が0.5μmである。
なお、本書における平均粒子径は体積平均粒子径を意味する。
【0015】
本発明のアクリル系重合体組成物を構成する2つ以上の重合体成分のうち、少なくとも1成分は炭素数が2以上のアルキル(メタ)アクリレートを20質量%以上共重合してなる重合体であることが好ましい。この理由は、例えば可塑剤と配合して用いるプラスチゾルの場合、用いる可塑剤の種類によって重合体が相溶できたり相溶できなかったりするケースが想定されるが、炭素数が2以上のアルキル(メタ)アクリレートを20質量%以上共重合した重合体は多くの可塑剤に対して相溶性を有するからである。共重合比率が20質量%未満の場合、重合体の溶解度パラメーターが高すぎて相溶可能な可塑剤の種類が高極性のものに限定される。
この重合体成分の含有量は特に限定しないが、可塑剤と相溶する成分が多いほうが得られる製品が柔軟になることから好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。
【0016】
炭素数が2以上のアルキル(メタ)アクリレートの種類は特に限定されないが、例えばエチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tーブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等のアルキルアルコールの(メタ)アクリレート類、あるいはシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環式アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類などが挙げられる。これらのうち好ましいのは炭素数が4以上8未満のアルキル(メタ)アクリレートであり、これらの化合物は乳化重合しやすいという利点がある。
【0017】
本発明のアクリル系重合体微粒子は、質量平均分子量が100万以下の重合体成分を含有することが好ましく、更に好ましくは60万以下である。この理由は、幅広い温度域にわたって重合体が加熱溶融し、安定した接着性を発現できるためである。例えば自動車用アンダーコートの場合、一般的には140℃程度の加熱で接着できればよいが、実際の製造ラインにおける温度分布には局所的なムラがあり、これよりも更に低い温度、具体的には120℃においても安定して接着できることが好ましい。
重合体の残りの成分の分子量は特に限定されず、100万よりも高い分子量であっても構わないし、或いは部分的に架橋されたゲル状の重合体を含有していることも可能である。例えば用途によってはゴム状の反発弾性や、衝撃強度を求められるケースがあるが、そういう場合には部分的に架橋された重合体成分を含有することが効果的となる。
【0018】
本発明のアクリル系重合体微粒子の用途は特に限定しないが、可塑剤中に分散してプラスチゾルの形状として用いることが好ましい。特に接着性を要求されるプラスチゾルの用途に好適である。
その他、用途に限定はないが、可塑剤と配合して用いる用途に適している。その理由は、可塑剤と相溶しやすい重合体成分を含有し、それによって製品に柔軟性や可塑剤保持性などの特性が付与されるためである。可塑剤と配合して用いる用途とはプラスチゾル以外には、軟質のアクリル系成型品や、アクリル以外の樹脂より成る軟質成型品用途が挙げられる。また可塑剤の量を少なくして硬質に近い成型品用途に用いることも可能である。
本発明のアクリル系重合体微粒子を唯一の重合体成分として用いることもできるし、他の重合体成分とブレンドして用いることも可能である。或いは、他の重合体の中に少量添加して改質剤として用いることも可能である。
【0019】
使用される可塑剤としては、公知の可塑剤を広く使用することができる。例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル等のフタル酸ジアルキルエステル;フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸アルキルベンジル;フタル酸アルキルアリール;フタル酸ジベンジル;フタル酸ジアリール;あるいはリン酸トリクレシル等のリン酸トリアリール系、リン酸トリアルキル系、リン酸アルキルアリール系、等のリン酸エステル;さらにはアジピンジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル;ジブチルグリコールアジペート等のエーテル含有化合物;ポリエステル系可塑剤、エポキシ化大豆油等の大豆油系可塑剤等が挙げられる。これらの可塑剤は1種を単独で、あるいは2種以上の可塑剤を混合して用いるができる。可塑剤の配合量は、アクリル系重合体微粒子100質量部に対して50〜300質量部が好ましく、60〜200質量部がより好ましい。
特に好ましい可塑剤は、ジイソノニルフタレートであり、これを50質量%以上用いることである。その理由はジイソノニルフタレートが他の可塑剤に較べて耐熱性や粘度特性の点で優れているほか、製造コストが安いという経済上の利点がある。また、ジイソノニルフタレートを主成分として含むプラスチゾルは高温に加熱しても可塑剤の蒸気発生が少ないため健康あるいは環境上の問題が発生しない。
【0020】
本発明のプラスチゾル組成物は、重合体それ自体が接着性を有するため、接着助剤を配合しなくて済む、もしくはきわめて少量の配合で済むという利点がある。接着助剤は主剤としてブロックイソシアネート系やエポキシ系の化合物を用い、硬化剤としてポリアミドアミン等の液状アミン類や、アジピン酸ジヒドラジド或いはジシアンジアミド等の結晶性アミン類などを用いることが多い。これら接着助剤は粘性の高い液状化合物であり、プラスチゾルの粘度を上昇させ、同時に作業性において重要なチキソ性を低下させてしまうことが多い。チキソ性が低下したプラスチゾルは塗装後にタレを発生するという問題があり、粘度が高いプラスチゾルは噴霧塗装ができなくなる或いは吐出量が少なくなるという問題がある。
【0021】
また、本発明のプラスチゾル組成物は、必要に応じて各種の副資材を配合することが可能である。例として、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、クレー、コロイダルシリカ、マイカ粉、珪砂、珪藻土、カオリン、タルク、ガラス粉末、酸化アルミニウム、フライアッシュ、シラスバルーンなどの充填材、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、ミネラルターペン、ミネラルスピリット等の希釈剤、さらに消泡剤、防黴剤、防臭剤、抗菌剤、界面活性剤、滑剤、紫外線吸収剤、香料、発泡剤、レベリング剤、強度向上を目的としたウレタンプレポリマー及びその硬化剤、等を自由に配合することが可能である。
【0022】
本発明のアクリル系重合体を製造する方法は特に限定せず、乳化重合法、ソープフリー重合法、縣濁重合法、微細縣濁重合法、分散重合法、等が挙げられ、中でも好ましくは乳化重合法あるいはソープフリー重合法であり、コアシェル構造など粒子の構造を制御することが容易である。特に好ましい製造方法は、シード粒子に対して脂肪族アミンもしくは脂環式アミンを官能基として有するビニル系モノマーを含むモノマー混合物を吸収させ重合させるシード重合法を用い、その際に水溶性アゾ系ラジカル重合開始剤を用いる方法である。一般にラジカル重合においては過酸化物を重合開始剤として用いることが多いが、過酸化物の場合には本発明で必須とするアミン系モノマーと酸化還元反応をするため、重合中の消費が激しい。したがって過酸化物ではなくアゾ系の重合開始剤を用いるほうが開始剤が少量で有効に使えるため好適である。
【0023】
本発明のアクリル系重合体は、乾燥粉体としての性状や構造は問わない。例えば重合で得られた一次粒子が多数集合して凝集粒子(二次粒子)を形成していても構わないし、またそれ以上の高次構造も可能である。ただしこのような凝集構造の場合、一次粒子同士が強固に結合せず、緩く凝集している状態が好ましく、これにより可塑剤中での一次粒子の微細で均一な分散が達成される為である。
このような性状の微粒子を得るための好ましい方法として、スプレードライ法(噴霧乾燥法)が挙げられる。この場合、乾燥温度(とくに乾燥室出口付近の温度)を制御することにより一次粒子どうしの熱融着の程度を調整することができる。特に、乾燥室出口付近温度が重合体の最外層のガラス転移温度よりも低いほうが熱融着が抑制されて好ましい。
【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[シードエマルションの調製]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2000ccの4つ口フラスコに純水1280gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、メチルメタクリレート48.0g、n−ブチルアクリレート48.0gを入れ、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、32.0gの純水に溶解した過硫酸カリウム0.80gを一度に添加し、ソープフリー重合を開始した。そのまま80℃にて攪拌を60分継続した後、室温にまで冷却してシードエマルションを得た。以下ではこのシードエマルションを用いた。
【0025】
[実施例1]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2000ccの4つ口フラスコに上述のシードエマルション800gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、10.0gの純水に溶解した過硫酸カリウム0.20gを一度に添加した。
その後、第1滴下(コア)として、モノマー(メチルメタクリレート204g、n−ブチルメタクリレート196g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り1.0g)と純水(モノマー100gに対して50g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コア重合体エマルションを得た。
引き続き第2滴下(シェル)として、モノマー(メチルメタクリレート316g、n−ブチルメタクリレート52g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート32g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り0.5g)と純水(モノマー100gに対して50g)及び水溶性アゾ開始剤(和光純薬(株)製「VA−061」、モノマー100g当り0.05g)及び連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン、モノマー100g当り0.20g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を、240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コアシェル構造を有する重合体のエマルションを得た。
得られた重合体分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤー(大河原化工機(株)L8型)を用いて、入口温度150℃、出口温度65℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、重合体微粒子(A1)を得た。
【0026】
[実施例2]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2000ccの4つ口フラスコに上述のシードエマルション800gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、10.0gの純水に溶解した過硫酸カリウム0.20gを一度に添加した。
その後、第1滴下(コア)として、モノマー(メチルメタクリレート98.4g、n−ブチルメタクリレート141.6g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り1.0g)と純水(モノマー100gに対して50g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コア重合体エマルションを得た。
引き続き第2滴下(シェル)として、モノマー(メチルメタクリレート408.8g、n−ブチルメタクリレート145.6g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート5.6g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り0.5g)と純水(モノマー100gに対して50g)及び水溶性アゾ開始剤(和光純薬(株)製「VA−061」、モノマー100g当り0.05g)及び連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン、モノマー100g当り0.20g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コアシェル構造を有する重合体のエマルションを得た。
得られた重合体分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤー(大河原化工機(株)L8型)を用いて、入口温度150℃、出口温度65℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、重合体微粒子(A2)を得た。
【0027】
[実施例3]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2000ccの4つ口フラスコに上述のシードエマルション800gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、10.0gの純水に溶解した過硫酸カリウム0.20gを一度に添加した。
その後、第1滴下(コア)として、モノマー(メチルメタクリレート280g、n−ブチルアクリレート120g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り1.0g)と純水(モノマー100gに対して50g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コア重合体エマルションを得た。
引き続き第2滴下(シェル)として、モノマー(メチルメタクリレート372g、n−ブチルアクリレート20g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート8g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り0.5g)と純水(モノマー100gに対して50g)及び水溶性アゾ開始剤(和光純薬(株)製「VA−061」、モノマー100当り0.05g)及び連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン、モノマー100g当り0.20g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を、240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コアシェル構造を有する重合体のエマルションを得た。
得られた重合体分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤー(大河原化工機(株)L8型)を用いて、入口温度150℃、出口温度65℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、重合体微粒子(A3)を得た。
【0028】
[実施例4]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2000ccの4つ口フラスコに上述のシードエマルション800gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、水溶性アゾ開始剤(和光純薬(株)製「VA−061」)0.40gを一度に添加した。
その後、第1滴下(コア)として、モノマー(メチルメタクリレート285.6g、n−ブチルメタクリレート235.2g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート39.2g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り1.0g)と純水(モノマー100gに対して50g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コア重合体エマルションを得た。
引き続き第2滴下(シェル)として、モノマー(メチルメタクリレート223.2g、n−ブチルメタクリレート16.8g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り0.5g)と純水(モノマー100gに対して50g)及び連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン、モノマー100g当り0.20g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を、240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コアシェル構造を有する重合体のエマルションを得た。
得られた重合体分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤー(大河原化工機(株)L8型)を用いて、入口温度150℃、出口温度65℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、重合体微粒子(A4)を得た。
【0029】
[実施例5]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2000ccの4つ口フラスコに上述のシードエマルション800gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、10.0gの純水に溶解した過硫酸カリウム0.20gを一度に添加した。
その後、第1滴下(コア)として、モノマー(メチルメタクリレート288g、n−ブチルメタクリレート268g、アリルメタクリレート4.0g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り1.0g)と純水(モノマー100gに対して50g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コア重合体エマルションを得た。
引き続き第2滴下(シェル)として、モノマー(メチルメタクリレート216g、n−ブチルメタクリレート16.8g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート7.2g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り0.5g)と純水(モノマー100gに対して50g)及び水溶性アゾ開始剤(和光純薬(株)製「VA−061」、モノマー100g当り0.05g)及び連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン、モノマー100g当り0.20g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を、240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コアシェル構造を有する重合体のエマルションを得た。
得られた重合体分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤー(大河原化工機(株)L8型)を用いて、入口温度150℃、出口温度65℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、重合体微粒子(A5)を得た。
【0030】
[実施例6]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2000ccの4つ口フラスコに上述のシードエマルション800gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、10.0gの純水に溶解した過硫酸カリウム0.20gを一度に添加した。
その後、第1滴下(コア)として、モノマー(メチルメタクリレート319.2g、n−ブチルメタクリレート207.2g、グリシジルメタクリレート33.6g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り1.0g)と純水(モノマー100gに対して50g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コア重合体エマルションを得た。
引き続き第2滴下(シェル)として、モノマー(メチルメタクリレート189.6g、n−ブチルメタクリレート31.2g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート19.2g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り0.5g)と純水(モノマー100gに対して50g)及び水溶性アゾ開始剤(和光純薬(株)製「VA−061」、モノマー100g当り0.05g)及び連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン、モノマー100g当り0.20g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を、240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コアシェル構造を有する重合体のエマルションを得た。
得られた重合体分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤー(大河原化工機(株)L8型)を用いて、入口温度150℃、出口温度65℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、重合体微粒子(A6)を得た。
【0031】
[実施例7]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2000ccの4つ口フラスコに上述のシードエマルション800gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、10.0gの純水に溶解した過硫酸カリウム0.20gを一度に添加した。
その後、第1滴下(コア)として、モノマー(メチルメタクリレート204g、n−ブチルメタクリレート196g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100gあたり1.0g)と純水(モノマー100gに対して50g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コア重合体エマルションを得た。
引き続き第2滴下(シェル)として、モノマー(メチルメタクリレート316g、n−ブチルメタクリレート52g、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート32g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り0.5g)と純水(モノマー100gに対して50g)及び水溶性アゾ開始剤(和光純薬(株)製「VA−061」、モノマー100g当り0.05g)及び連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン、モノマー100g当り0.20g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を、240g/hrの速度で滴下し引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コアシェル構造を有する重合体のエマルションを得た。
得られた重合体分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤー(大河原化工機(株)L8型)を用いて、入口温度150℃、出口温度65℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、重合体微粒子(A7)を得た。
【0032】
[実施例8]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2000ccの4つ口フラスコに上述のシードエマルション800gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、10.0gの純水に溶解した過硫酸カリウム0.20gを一度に添加した。
その後、第1滴下(コア)として、モノマー(メチルメタクリレート204g、n−ブチルメタクリレート196g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り1.0g)と純水(モノマー100gに対して50g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コア重合体エマルションを得た。
引き続き第2滴下(シェル)として、モノマー(メチルメタクリレート372g、n−ブチルメタクリレート28g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り0.5g)と純水(モノマー100gに対して50g)及び連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン、モノマー100g当り0.20g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を、240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コアシェル構造を有する重合体のエマルションを得た。
得られた重合体分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤー(大河原化工機(株)L8型)を用いて、入口温度150℃、出口温度65℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、重合体微粒子(A8)を得た。
【0033】
[比較例1]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2000ccの4つ口フラスコに上述のシードエマルション800gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、水溶性アゾ開始剤(和光純薬(株)製「VA−061」)0.40gを一度に添加した。
その後、モノマー(メチルメタクリレート632g、n−ブチルメタクリレート104g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート64g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り1.0g)と純水(モノマー100gに対して50g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、均一な粒子構造を有する重合体のエマルションを得た。
得られた重合体分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤー(大河原化工機(株)L8型)を用いて、入口温度150℃、出口温度65℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、重合体微粒子(A9)を得た。
【0034】
[比較例2]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2000ccの4つ口フラスコに純水640g、乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)6.4gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、更にメチルメタクリレート24.0g、n−ブチルアクリレート24.0gを入れ、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、10.0gの純水に溶解した過硫酸カリウム0.20gを一度に添加し、シードエマルションを得た。
その後、第1滴下(コア)として、モノマー(メチルメタクリレート204g、n−ブチルメタクリレート196g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り1.0g)と純水(モノマー100gに対して50g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コア重合体エマルションを得た。
引き続き第2滴下(シェル)として、モノマー(メチルメタクリレート316g、n−ブチルメタクリレート52g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート32g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100g当り0.5g)と純水(モノマー100gに対して50g)及び水溶性アゾ開始剤(和光純薬(株)製「VA−061」、モノマー100g当り0.05g)及び連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン、モノマー100g当り0.20g)をホモジェナイザーで乳化処理した混合液を、240g/hrの速度で滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、コアシェル構造を有する重合体のエマルションを得た。
得られた重合体分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤー(大河原化工機(株)L8型)を用いて、入口温度150℃、出口温度65℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、重合体微粒子(A10)を得た。
以上、実施例1〜8及び比較例1、2で用いたモノマーの使用割合、調製した重合体微粒子の粒子径及び平均分子量について纏めて下記表1に示す。
【0035】
重合体微粒子の組成と物性
【表1】

表1中の略号は以下の化合物を表す。
MMA メチルメタクリレート
BMA n−ブチルメタクリレート
BA n−ブチルアクリレート
AMA アリルメタクリレート
DM N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート
DE N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート
GMA グリシジルメタクリレート
【0036】
[実施例9〜実施例15]、[比較例3〜比較例5]
上記実施例で調製し重合体微粒子を用いて次の方法によりそれぞれプラスチゾル組成物を製造した。
重合体微粒子100gあたり炭酸カルシウム250g(「CCR」150gと「NS200」100gの混合物)、可塑剤(ジイソノニルフタレート)260gを投入し、真空ミキサー((株)シンキー製ARV−200)にて脱泡攪拌(10秒間大気圧で混合した後、20mmHgに減圧して50秒間混合)を行い、均一なプラスチゾル組成物を得た。得られたプラスチゾル組成物について以下の方法により特性評価を行った。
これらの実施例及び比較例で用いた重合体微粒子並びに製造したプラスチゾル組成物の下記特性の評価結果を後掲表2に纏めて示す。
【0037】
1.ゲル化成膜性
プラスチゾル組成物をテフロン(登録商標)コートされた鉄板上にウェット厚2mmになるようにキャストし、これを120℃のギヤーオーブンで10分間加熱し、ゲル化した連続被膜が得られるかどうかを調べた。
○ …連続被膜が形成される。
× …連続被膜が形成されず粉状に崩れる、または被膜が形成されるが可塑剤が
明らかにブリードアウトする。
【0038】
2.接着性
得られたプラスチゾルをカチオン電着板()に1mm厚で塗布し、120℃のギヤーオーブン内で30分間加熱し、成膜を完了した。その後、カチオン電着板と被膜との界面にカミソリで5mmほど切れ目を入れ、そこを指で掴んで被膜の剥離を試みた。
◎ …被膜がカチオン電着板に接着しており、殆ど基材に残る。
(面積換算:90%以上が基材に残る)
○ …被膜がカチオン電着板に接着しており、殆ど基材に残る。
(面積換算:50%以上が基材に残る)
× …被膜が容易にカチオン電着板から剥離し、殆ど基材に残らない。
(面積換算:50%未満しか基材に残らない)
【0039】
3.貯蔵安定性
プラスチゾル組成物を35℃の恒温室にて保温し、5日後に取り出して再び粘度を測定した。プラスチゾルの増粘率を以下のようにして計算し貯蔵安定性を評価した。
{(貯蔵後の粘度/初期の粘度)−1}×100(%)
○:増粘率500%以下
×:増粘率500%より大、または粘度測定不能(ゲル化)
なお粘度の測定は継の方法を用いた。
【0040】
4.粘度
プラスチゾル組成物を調製してから1時間以内に、Brookfield型粘度計(東機産業(株)製、E型粘度計、コーン角3度)を用いて、測定温度25℃、回転数10rpmにおいて粘度を測定した。
【0041】
5.重合安定性
重合時にフラスコ壁や攪拌翼、温度計などに付着したカレット、及び得られたエマルションを100メッシュのナイロン濾布で濾過した後のカレット残渣を回収し、105℃のオーブン中で4時間乾燥させて合計質量を計測した。
○:カレット量が0.5質量%未満
△:カレット量が0.5質量%以上
【0042】
プラスチゾルの特性
【表2】

【0043】
上記表2に示した結果から明らかなように、本発明のプラスチゾル組成物は、実施例2及び実施例3において、カレット量が多少多く見られるが、ゲル化成膜性、貯蔵安定性、接着性のいずれの特性においても良好な結果が得られた。
これに対して、アミン系の官能基を含有しない重合体を用いた例(比較例3)、2成分以上の重合体成分を含有しない例(比較例4)及び一次粒子径が小さい例(比較例5)のプラスチゾルは、いずれかの特性が劣っており、実用に供し得ないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のアクリル系プラスチゾル組成物は、従来塩ビゾルが用いられていた用途分野をはじめ、ひろく利用可能である。具体的には、自動車アンダーコート、自動車ボディーシーラー、自動車マスチック接着剤、タイルカーペットバッキング材、クッションフロア、壁紙、鋼板塗料、玩具、手袋、食品サンプル、靴、建材用など各種接着材、各種シーラ、ガスケット、防水シート、自動車内層表皮材、帆布、テーブルクロス、合成皮革、消しゴム、スクリーン印刷用塗料等が挙げられる。ただし、元来が接着性の向上を目的としているため自動車用など基材に塗布して用いる用途が好ましく、特に自動車アンダーコート、自動車ボディーシーラーに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族アミン及び/又は脂環式アミンを官能基として有し、組成が異なる2種類以上の重合体成分からなる粒子構造を有し、かつ、平均粒子径が500nm以上の一次粒子から構成されるアクリル系重合体微粒子。
【請求項2】
重合体成分のうち少なくとも1成分が、炭素数が2以上のアルキル(メタ)アクリレートが20質量%以上共重合された重合体である請求項1記載のアクリル系重合体微粒子。
【請求項3】
請求項1又は2記載の重合体微粒子を用いたプラスチゾル組成物。
【請求項4】
可塑剤としてジイソノニルフタレートを50質量%以上含有する請求項3記載のプラスチゾル組成物。
【請求項5】
請求項3又は4記載のプラスチゾル組成物を用いた物品。
【請求項6】
請求項3又は4記載のプラスチゾル組成物を用いた自動車用アンダーコート及びボディーシーラー。
【請求項7】
シード粒子に対して脂肪族アミン及び/又は脂環式アミンを官能基として有するビニル系モノマーを含むモノマー混合物を吸収させ重合させるシード重合法において、水溶性アゾ系ラジカル重合開始剤を用いることを特徴とする請求項1又は2記載のアクリル系重合体微粒子の重合方法。
【請求項8】
スプレードライ法を用いて重合体微粒子を回収することを特徴とする請求項7記載のアクリル系重合体微粒子の製造方法。

【公開番号】特開2006−219559(P2006−219559A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33108(P2005−33108)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】