説明

アザインドール誘導体

式(I)で表され、式中X、X、X、X、R、R、RおよびRが請求項1に示す意味を有する化合物は、チロシンキナーゼ、特にMetキナーゼの阻害剤であり、とりわけ腫瘍を処置するために用いることができる。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、有用な特性を有する新規な化合物、特に医薬の調製のために用いることができる化合物を見出す目的を有していた。
【0002】
本発明は、キナーゼ、特にチロシンキナーゼおよび/またはセリン/トレオニンキナーゼによるシグナル伝達の阻害、制御および/または調節が役割を果たす化合物および化合物の使用、さらにはこれらの化合物を含む医薬組成物、ならびにキナーゼによって誘発された疾患を処置するための化合物の使用に関する。
特に、本発明は、Metキナーゼによるシグナル伝達の阻害、制御および/または調節が役割を果たす化合物および化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞制御がもたらされる主な機構の1つは、細胞内の生化学的経路を順次調節する、膜を隔てての細胞外シグナル伝達によってである。タンパク質リン酸化は、細胞内シグナルが分子から分子へと伝播し、最終的に細胞応答に至る1つの経過を表す。多くのプロテインキナーゼおよびホスファターゼの存在から明白であるとおり、これらのシグナル伝達カスケードは、高度に制御され、しばしば重複する。タンパク質のリン酸化は、主にセリン、トレオニンまたはチロシン残基で起こり、それゆえ、プロテインキナーゼは、、リン酸化部位のそれらの特異性によって、即ちセリン/トレオニンキナーゼおよびチロシンキナーゼに分類されている。
【0004】
リン酸化は細胞内でのそのような遍在するプロセスであり、そして細胞表現型はこれらの経路の活性によって大いに影響されるため、多くの疾患状態および/または疾患がキナーゼカスケードの分子構成要素において異常な活性化または機能的突然変異のいずれかに起因すると、現在考えられている。したがって、相当の注意が、それらの活性を調節することができるこれらのタンパク質および化合物の特徴づけに向けられている(概説について:Weinstein-Oppenheimer et al. Pharma. &. Therap., 2000, 88, 229-279を参照)。
【0005】
ヒト腫瘍形成における受容体チロシンキナーゼMetの役割およびHGF(肝細胞増殖因子)依存性Met活性化の阻害の可能性が、S. Berthou et al.によってOncogene, 第23巻、No. 31, 5387〜5393頁(2004)に記載されている。そこに記載される阻害剤SU11274、即ちピロール−インドリン化合物は、癌に対抗するに潜在的に適合する。
癌療法のための他のMetキナーゼ阻害剤が、J.G. Christensen et al.によってCancer Res. 2003, 63(21), 7345-55に記載されている。
【0006】
癌に対抗するための他のチロシンキナーゼ阻害剤が、H. Hov et al.によりClinical Cancer Research、第10巻、6686-6694 (2004)において報告されている。化合物PHA−665752、即ちインドール誘導体は、HGF受容体c−Metを対象とする。当該文献中において、HGFおよびMetが、癌、例えば多発性骨髄腫など、のさまざまな形態の悪性のプロセスに対しかなりの寄与を果たすことが、さらに報告されている。
【0007】
したがって、チロシンキナーゼおよび/またはセリン/トレオニンキナーゼ、特にMetキナーゼによってシグナル伝達を特異的に阻害、制御および/または調節する小化合物の合成が所望され、本発明の目的とされた。
本発明の化合物およびその塩は、極めて有用な薬理学的特性を有し、同時に良好に耐容されることが見出された。
【0008】
本発明は具体的に、Metキナーゼによるシグナル伝達を阻害、制御および/または調節する、式Iで表される化合物、これらの化合物を含む組成物、ならびに哺乳動物における、Metキナーゼによって誘発された疾患および愁訴、例えば血管形成、癌、腫瘍の形成、成長および増殖、動脈硬化、眼の疾患、例えば年齢によって誘発された黄斑変性、脈絡膜血管新生および糖尿病性網膜症、炎症性疾患、関節炎、血栓症、線維症、糸球体腎炎、神経変性、乾癬、再狭窄、創傷治癒、移植片拒絶、代謝疾患および免疫系の疾患、また自己免疫疾患、肝硬変、糖尿病および血管の疾患など、また不安定性および透過性などを処置するためのそれらの使用方法に関する。
【0009】
固形腫瘍、特に急速に成長する腫瘍を、Metキナーゼ阻害剤で処置することができる。これらの固形腫瘍は、単球性白血病、脳、尿生殖器、リンパ系、胃癌、喉頭癌ならびに肺腺癌および小細胞肺癌を含む肺癌を含む。
【0010】
本発明は、調節されていない、または乱れたMetキナーゼ活性と関連する疾患の予防および/または処置のためのMetキナーゼの制御、調節または阻害のための方法に関する。特に、式Iで表される化合物をまた、特定の形態の癌の処置において用いることができる。式Iで表される化合物をさらに用いて、特定の既存の癌化学療法において相加効果または相乗効果を提供することができ、かつ/またはそれを用いて、特定の既存の癌化学療法および放射線療法の有効性を回復させることができる。
【0011】
式Iで表される化合物をさらに、Metキナーゼの単離および活性または発現の調査のために用いることができる。さらに、これらは特に、調節されていない、または乱れたMetキナーゼ活性と関連する疾患についての診断法において用いるのに適する。
【0012】
本発明の化合物が異種移植腫瘍モデルにおいてインビボで抗増殖性作用を有することを、示すことができる。本発明の化合物を、過剰増殖性疾患を有する患者に投与して、例えば腫瘍成長を阻害し、リンパ球増殖性疾患と関連する炎症を低減し、組織修復などによる移植片拒絶または神経学的損傷を阻害する。本発明の化合物は、予防的または治療的目的に適する。本明細書中で用いる用語「処置」は、疾患の防止と既存の状態の処置との両方を指すのに用いられる。増殖の防止は、明白な疾患が発生する前に本発明の化合物を投与することによって達成され、これは例えば腫瘍の成長を防止し、転移性増殖を防止し、心血管手術に関連する再狭窄を軽減するためなどに行う。あるいはまた、患者の臨床的症状を安定化するかまたは改善することによって進行中の疾患を処置するために、当該化合物が用いられる。
【0013】
宿主または患者は、任意の哺乳類種、例えば霊長類種、特にヒト;マウス、ラットおよびハムスターを含む齧歯動物;ウサギ;ウマ、ウシ、イヌ、ネコなどに属し得る。動物モデルは、実験的調査のために重要であり、ここでこれらは、ヒト疾患の処置についてのモデルを提供する。
【0014】
本発明の化合物での処置に対する特定の細胞の感受性を、インビトロ試験により決定することができる。典型的に、細胞の培養物を、本発明の化合物と、種々の濃度において、活性剤が細胞死を誘発するかまたは遊走を阻害するのを可能にするのに十分な期間、通常約1時間〜1週間にわたり、混ぜ合わせる。インビトロ試験を生検試料から培養された細胞を用いて行うことができる。次に、処理の後に残留する生細胞を計数する。
【0015】
用量は、用いる具体的な化合物、具体的な疾患、患者の状況などに依存して変化する。治療的用量は、典型的には標的組織中の所望されない細胞集団を減少させ、同時に患者の生存能を維持するのに顕著に十分である。処置を一般的に、顕著な減少、例えば細胞負荷の少なくとも約50%の減少が発生するまで継続し、本質的に所望されない細胞が身体中でもはや検出されなくなるまで継続してもよい。
【0016】
シグナル伝達経路を同定するため、および種々のシグナル伝達経路間の相互作用を検出するために、さまざまな科学者は、好適なモデルまたはモデル系、例えば細胞培養モデル(例えばKhwaja et al., EMBO, 1997, 16, 2783-93)およびトランスジェニック動物のモデル(例えばWhite et al., Oncogene, 2001, 20, 7064-7072)を開発してきた。シグナル伝達カスケードにおけるいくつかの段階の決定のために、相互作用する化合物を用いて、シグナルを調整させることができる(例えばStephens et al., Biochemical J., 2000, 351, 95-105)。本発明の化合物をまた、動物および/または細胞培養モデルにおける、または本出願において述べる臨床的疾患におけるキナーゼ依存性シグナル伝達経路を試験するための試薬として、用いることができる。
【0017】
キナーゼ活性の測定は、当業者に十分知られている手法である。基質、例えばヒストン(例えばAlessi et al., FEBS Lett. 1996, 399, 3, 333〜338頁)または塩基性ミエリンタンパク質を用いるキナーゼ活性の決定のための一般的な試験系は、文献中に記載されている(例えば、Campos-Gonzalez, R. and Glenney, Jr., J.R. 1992, J. Biol. Chem. 267, 14535頁)。
【0018】
キナーゼ阻害剤を同定するために、種々のアッセイ系が利用可能である。シンチレーション近接アッセイ(Sorg et al., J. of Biomolecular Screening, 2002, 7, 11-19)およびフラッシュプレート(flashplate)アッセイにおいて、基質としてのタンパク質またはペプチドのγATPでの放射活性リン酸化を、測定する。阻害化合物の存在下では、低減された放射活性シグナルが検出可能であるか、またはシグナルは完全に検出不能である。さらに、均一時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(HTR−FRET)および蛍光偏光(FP)技術は、アッセイ法として適する(Sills et al., J. of Biomolecular Screening, 2002, 191-214)。
【0019】
他の非放射活性ELISAアッセイ法は、特定のホスホ−抗体(ホスホ−AB)を用いる。ホスホ−ABは、リン酸化された基質にのみ結合する。この結合を、第2のペルオキシダーゼ結合抗ヒツジ抗体を用いて、ケモルミネセンス(chemiluminescence)により検出することができる(Ross et al., 2002, Biochem. J.)。
【0020】
細胞増殖および細胞死(アポトーシス)の調節解除に関連する多くの疾患がある。関連する状態には、以下のものが含まれるが、これらには限定されない。本発明の化合物は、平滑筋細胞および/または炎症細胞の血管の内膜層中への増殖および/または遊走があり、例えば新生内膜閉塞性病変の場合などにおけるように、当該血管を通過する制限された血流をもたらす種々の状態の処置に適する。対象となる閉塞性移植血管疾患には、アテローム硬化症、移植後の冠血管疾患、静脈移植血管狭窄症、吻合部周囲の(peri-anastomatic)補綴再狭窄、血管形成術またはステント留置後の再狭窄などが含まれる。
【0021】
従来技術
他のアザインドール誘導体は、WO2004016609、WO1999020624、WO2004078756、WO2005062795、WO2005085244、WO2005095400、WO2006004984、WO2006127587、WO2006017443、WO2006112828、WO2004032874、WO2007002433、WO2007002325、WO2007007919、WO2007044779、WO2007067537、WO2007077949、US7282588、WO2007135398、WO2007076320、WO2006114520、WO2008014249においてキナーゼ阻害剤として記載されている。
【発明の概要】
【0022】
本発明は、式I
【化1】

式中、
、X、X、Xは、各々、互いに独立してCHまたはNを示し、
ここでラジカルX、X、X、Xの1つのみが、Nを示し、
は、H、CN、Hal、Het、A、COOH、COOAまたはCONH(CHNAを示し、
は、H、HetまたはArを示し、
は、H、(CHArまたはHetを示し、
ここでラジカルRまたはRの一方は、≠Hであり、
は、H、A、(CHArまたはHetを示し、
【0023】
Hetは、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式または二環式の芳香族複素環を示し、それは非置換であるか、またはHal、A、NHおよび/またはNHCHArによって単置換、二置換もしくは三置換されていてもよく、
Hetは、1〜2個のNおよび/またはO原子を有し、Aによって単置換または二置換されていてもよい、単環式の不飽和または飽和複素環を示し、
【0024】
Arは、非置換であるか、またはHal、A、OH、OA、CN、NO、SOA、COOH、COOA、NH、NHA、NA、CHO、COA、CHO、CONH、CONHA、SONH、SONHA、CONAおよび/またはNHCOAによって単置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを示し、
Aは、1〜10個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、
ここで、1〜7個のH原子は、OH、F、Clおよび/またはBrによって置き換えられていてもよく、
【0025】
Halは、F、Cl、BrまたはIを示し、
mは、1、2、3または4を示し、
nは、0、1、2、3または4を示す、
で表される化合物ならびに、それらの薬学的に使用可能な塩、互変異性体および立体異性体、ならびにすべての比率でのそれらの混合物に関する。
【0026】
式Iで表される化合物はまた、これらの化合物の水和物および溶媒和物、さらに薬学的に使用可能な誘導体を意味するものと解釈される。
【0027】
本発明はまた、これらの化合物の光学的に活性な形態(立体異性体)、鏡像異性体、ラセミ体、ジアステレオマーならびに水和物および溶媒和物に関する。化合物の溶媒和物は、相互の引力のために形成される、化合物上への不活性溶媒分子のアダクション(adduction)を意味するものと解釈される。溶媒和物は、例えば、一もしくは二水和物またはアルコラートである。
薬学的に使用可能な誘導体は、例えば本発明の化合物の塩およびまたいわゆるプロドラッグ(prodrug)化合物を意味するものと解釈される。
【0028】
プロドラッグ誘導体は、例えばアルキル基もしくはアシル基、糖またはオリゴペプチドにより修飾され、生物体中で迅速に切断されて本発明の有効な化合物を形成する、式Iで表される化合物を意味するものと解釈される。
これらはまた、例えばInt. J. Pharm. 115, 61-67 (1995)に記載されているように、本発明の化合物の生分解性ポリマー誘導体を含む。
【0029】
「有効量」の表現は、組織、系、動物またはヒトにおいて、例えば研究者または医師により求められているかまたは所望されている生物学的または薬学的応答を生じる、医薬の、または薬学的に活性な成分の量を示す。
さらに、「治療的に有効な量」の表現は、この量を施与されていない対応する対象と比較して、以下の結果:
疾患、症候群、状態、愁訴、障害もしくは副作用の改善された処置、治癒、防止もしくは解消、あるいはまた疾患、愁訴もしくは障害の進行の低減
を有する量を示す。
「治療的に有効な量」の用語はまた、正常な生理学的機能を増大させるのに有効である量を包含する。
【0030】
本発明はまた、式Iで表される化合物の混合物、例えば2種のジアステレオマーの、例えば1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100または1:1000の比率での混合物の使用に関する。
これらは、特に好ましくは、立体異性体化合物の混合物である。
【0031】
本発明は、式Iで表される化合物およびその塩、ならびに式Iで表される化合物およびそれらの薬学的に使用可能な塩、互変異性体および立体異性体の製造方法であって、
a)式Iで表され、式中RがHを示す化合物の製造のために、式II
【化2】

式中、X、X、X、X、RおよびRは、請求項1において示した意味を有する、
で表される化合物を、式III
−L III
式中、Rは、請求項1において示した意味を有し、
Lは、ボロン酸またはボロン酸エステルラジカルを示す、
で表される化合物と反応させ、
その後、または同時に、Boc基を切断して除去し、
あるいは、
【0032】
b)式Iで表され、式中RがHを示す化合物の製造のために、式IV
【化3】

式中、X、X、X、X、RおよびRは、請求項1において示した意味を有し、RはHを示す、
で表される化合物を、式V
−L V
式中、Rは、請求項1において示した意味を有し、
Lは、ボロン酸またはボロン酸エステルラジカルを示す、
で表される化合物と反応させ、
あるいは、
【0033】
c)式Iで表され、式中RがHを示す化合物の製造のために、式VI
【化4】

式中、X、X、X、XおよびRは、請求項1において示した意味を有する、
で表される化合物を、式VII
−C≡C−R VII
式中、RおよびRは、請求項1において示した意味を有する、
で表される化合物と反応させ、
かつ/または
式Iで表される塩基または酸を、その塩の1種に変換する
ことを特徴とする、前記方法に関する。
【0034】
本明細書中、ラジカルX、X、X、X、R、R、RおよびRは、他に明確に示さない限り式Iについて示した意味を有する。
1回より多く出現するすべてのラジカルについて、それらの意味は、互いに独立している。
【0035】
Aは、アルキルを示し、非分枝状(直鎖状)または分枝状であり、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のC原子を有する。Aは、好ましくは、メチル、さらにエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、さらにまたペンチル、1−、2−または3−メチルブチル、1,1−、1,2−または2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1−、2−、3−または4−メチルペンチル、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−または3,3−ジメチルブチル、1−または2−エチルブチル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−または1,2,2−トリメチルプロピル、さらに好ましくは、例えばトリフルオロメチルを示す。
【0036】
Aは、特に好ましくは1〜10個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、ここで1〜7個のH原子は、OH、F、Clおよび/またはBrによって置き換えられていてもよい。
Aは、極めて特に好ましくは、1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたは1,1,1−トリフルオロエチルを示す。
【0037】
は、好ましくはCN、HalまたはHet、さらにH、A、COOH、COOA、CONH、CONH(CHNAまたはCONH(CHHetを示す。
は、好ましくはHetまたはAr、さらにHを示す。
は、好ましくは(CHArまたはHet、さらにHを示す。
は、好ましくはH、さらにA、(CHArまたはHetを示す。
【0038】
Arは、例えば、フェニル、o−、m−またはp−トリル、o−、m−またはp−エチルフェニル、o−、m−またはp−プロピルフェニル、o−、m−またはp−イソプロピルフェニル、o−、m−またはp−tert−ブチルフェニル、o−、m−またはp−ヒドロキシフェニル、o−、m−またはp−ニトロフェニル、o−、m−またはp−アミノフェニル、o−、m−またはp−(N−メチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N−メチルアミノカルボニル)フェニル、o−、m−またはp−アセトアミドフェニル、o−、m−またはp−メトキシフェニル、o−、m−またはp−エトキシフェニル、o−、m−またはp−エトキシカルボニルフェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジメチルアミノカルボニル)フェニル、o−、m−またはp−(N−エチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−フルオロフェニル、o−、m−またはp−ブロモフェニル、o−、m−またはp−クロロフェニル、o−、m−またはp−(メチルスルホンアミド)フェニル、o−、m−またはp−(メチルスルホニル)フェニル、o−、m−またはp−シアノフェニル、o−、m−またはp−カルボキシフェニル、o−、m−またはp−メトキシカルボニルフェニル、o−、m−またはp−アミノスルホニルフェニル、
【0039】
さらに好ましくは2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジブロモフェニル、2,4−もしくは2,5−ジニトロフェニル、2,5−もしくは3,4−ジメトキシフェニル、3−ニトロ−4−クロロフェニル、3−アミノ−4−クロロ−、2−アミノ−3−クロロ−、2−アミノ−4−クロロ−、2−アミノ−5−クロロ−もしくは2−アミノ−6−クロロフェニル、2−ニトロ−4−N,N−ジメチルアミノ−もしくは3−ニトロ−4−N,N−ジメチルアミノフェニル、2,3−ジアミノフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,6−もしくは3,4,5−トリクロロフェニル、2,4,6−トリメトキシフェニル、2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル、p−ヨードフェニル、3,6−ジクロロ−4−アミノフェニル、4−フルオロ−3−クロロフェニル、2−フルオロ−4−ブロモフェニル、2,5−ジフルオロ−4−ブロモフェニル、3−ブロモ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−4−アセトアミドフェニル、3−フルオロ−4−メトキシフェニル、3−アミノ−6−メチルフェニル、3−クロロ−4−アセトアミドフェニルまたは2,5−ジメチル−4−クロロフェニルを示す。
【0040】
Arは、特に好ましくは、非置換であるか、またはHal、A、OH、OA、CN、NOおよび/またはSOAによって単置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを示す。
【0041】
他の置換基とは関係なく、Hetは、例えば、2−または3−フリル、2−または3−チエニル、1−、2−または3−ピロリル、1−、2、4−または5−イミダゾリル、1−、3−、4−または5−ピラゾリル、2−、4−または5−オキサゾリル、3−、4−または5−イソキサゾリル、2−、4−または5−チアゾリル、3−、4−または5−イソチアゾリル、2−、3−または4−ピリジル、2−、4−、5−または6−ピリミジニル、
【0042】
さらに好ましくは1,2,3−トリアゾール−1−、−4−または−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−3−または5−イル、1−または5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−または−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−または−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−または−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−または−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−または−5−イル、3−または4−ピリダジニル、ピラジニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−または7−インドリル、4−または5−イソインドリル、インダゾリル、1−、2−、4−または5−ベンズイミダゾリル、1−、3−、4−、5−、6−または7−ベンゾピラゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾキサゾリル、3−、4−、5−、6−または7−ベンズイソキサゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾチアゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンズイソチアゾリル、4−、5−、6−または7−ベンズ−2,1,3−オキサジアゾリル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−キノリル、1−、3−、4−、5−、6−、7−または8−イソキノリル、3−、4−、5−、6−、7−または8−シンノリニル、2−、4−、5−、6−、7−または8−キナゾリニル、5−または6−キノキサリニル、2−、3−、5−、6−、7−または8−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニル、さらに好ましくは1,3−ベンゾジオキソール−5−イル、1,4−ベンゾジオキサン−6−イル、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−もしくは−5−イル、2,1,3−ベンズオキサジアゾール−5−イルまたはジベンゾフラニルを示す。
【0043】
Hetは、特に好ましくは、チアゾリル、チオフェニル、フラニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、ベンゾ−1,3−ジオキソリル、インダゾリル、ベンゾ−2,1,3−チアジアゾリルまたはピロロ[2,3−b]ピリジニルを示し、
ここで、複素環はまた、Hal、A、NHおよび/またはNHCHArによって単置換、二置換または三置換されていてもよい。
【0044】
他の置換基とは関係なく、Hetは、例えば、2,3−ジヒドロ−2−、−3−、−4−または−5−フリル、2,5−ジヒドロ−2−、−3−、−4−または5−フリル、テトラヒドロ−2−または−3−フリル、1,3−ジオキソラン−4−イル、テトラヒドロ−2−または−3−チエニル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピロリル、2,5−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピロリル、1−、2−または3−ピロリジニル、テトラヒドロ−1−、−2−または−4−イミダゾリル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピラゾリル、テトラヒドロ−1−、−3−または−4−ピラゾリル、1,4−ジヒドロ−1−、−2−、−3−または−4−ピリジル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−または−6−ピリジル、1−、2−、3−または4−ピペリジニル、2−、3−または4−モルホリニル、テトラヒドロ−2−、−3−または−4−ピラニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキサン−2−、−4−または−5−イル、ヘキサヒドロ−1−、−3−または−4−ピリダジニル、ヘキサヒドロ−1−、−2−、−4−または−5−ピリミジニル、1−、2−または3−ピペラジニルを示す。
【0045】
Hetは、特に好ましくはピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、イミダゾリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニルまたはテトラヒドロピラニルを示し、
ここで、複素環はまた、Aによって単置換または二置換されていてもよい。
Halは、好ましくはF、ClまたはBr、しかしまたI、特に好ましくはFまたはClを示し;mは、好ましくは1または2を示し;nは、好ましくは0、1、2または3を示す。
【0046】
本発明を通して、1回よりも多く出現するすべてのラジカルは、同一であっても異なっていてもよく、即ち互いに独立している。
式Iで表される化合物は、1つまたは2つ以上のキラル中心を有していてもよく、したがって種々の立体異性体形態で存在し得る。式Iは、すべてのこれらの形態を包含する。
【0047】
したがって、本発明は特に、少なくとも1つの前述のラジカルが前に示した好ましい意味の1つを有する、式Iで表される化合物、およびそれらの使用に関する。いくつかの好ましい群の化合物を、以下の従属式Ia〜Ijにより表すことができ、これは、式Iに適合し、ここで、一層詳細に表していないラジカルは、式Iについて示した意味を有するが、ここで、
【0048】
Iaにおいて、Rは、H、CN、Hal、Het、A、COOH、COOA、CONH、CONH(CHNAまたはCONH(CHHetを示し;
Ibにおいて、Rは、HetまたはArを示し;
Icにおいて、Rは、(CHArまたはHetを示し;
Idにおいて、Rは、Hを示し;
【0049】
Ieにおいて、Hetは、チアゾリル、チオフェニル、フラニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、ベンゾ−1,3−ジオキソリル、インダゾリル、ベンゾ−2,1,3−チアジアゾリルまたはピロロ[2,3−b]ピリジニルを示し、
ここで、複素環はまた、Hal、A、NHおよび/またはNHCHArによって単置換、二置換または三置換されていてもよく;
【0050】
Ifにおいて、Hetは、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニルまたはテトラヒドロピラニルを示し、
ここで複素環はまた、Aによって単置換または二置換されていてもよく;
【0051】
Igにおいて、Arは、非置換であるか、またはHal、A、OH、OA、CN、NOおよび/またはSOAによって単置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを示し;
Ihにおいて、Aは、1〜6個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、
ここで、1〜5個のH原子は、Fおよび/またはClによって置き換えられていてもよく;
【0052】
Iiにおいて、X、X、X、Xは、各々、互いに独立してCHまたはNを示し、
ここでラジカルX、X、X、Xの1つのみが、Nを示し、
は、H、CN、Hal、Het、A、COOH、COOA、CONH、CONH(CHNAまたはCONH(CHHetを示し、
は、HetまたはArを示し、
は、(CHArまたはHetを示し、
は、Hを示し、
【0053】
Hetは、チアゾリル、チオフェニル、フラニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、ベンゾ−1,3−ジオキソリル、インダゾリル、ベンゾ−2,1,3−チアジアゾリルまたはピロロ[2,3−b]ピリジニルを示し、
ここで、複素環はまた、Hal、A、NHおよび/またはNHCHArによって単置換、二置換または三置換されていてもよく、
【0054】
Hetは、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニルまたはテトラヒドロピラニルを示し、
ここで複素環はまた、Aによって単置換または二置換されていてもよく、
【0055】
Arは、非置換であるか、またはHal、A、OH、OA、CN、NOおよび/またはSOAによって単置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを示し、
Aは、1〜6個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、
ここで、1〜5個のH原子は、Fおよび/またはClによって置き換えられていてもよく、
Halは、F、Cl、BrまたはIを示し、
mは、1、2、3または4を示し、
nは、0、1、2、3または4を示し;
【0056】
Ijにおいて、X、X、X、Xは、各々、互いに独立してCHまたはNを示し、
ここでラジカルX、X、X、Xの1つのみが、Nを示し、
は、H、CN、Hal、Het、A、COOH、COOA、CONH、CONH(CHNAまたはCONH(CHHetを示し、
は、H、HetまたはArを示し、
は、H、(CHArまたはHetを示し、
ここで、ラジカルRまたはRの一方は、≠Hであり、
は、H、A、(CHArまたはHetを示し、
【0057】
Hetは、チアゾリル、チオフェニル、フラニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、ベンゾ−1,3−ジオキソリル、インダゾリル、ベンゾ−2,1,3−チアジアゾリルまたはピロロ[2,3−b]ピリジニルを示し、
ここで、複素環はまた、Hal、A、NHおよび/またはNHCHArによって単置換、二置換または三置換されていてもよく、
【0058】
Hetは、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニルまたはテトラヒドロピラニルを示し、
ここで複素環はまた、Aによって単置換または二置換されていてもよく、
【0059】
Arは、非置換であるか、またはHal、A、OH、OA、CN、NOおよび/またはSOAによって単置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを示し、
Aは、1〜6個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、
ここで、1〜5個のH原子は、Fおよび/またはClによって置き換えられていてもよく、
Halは、F、Cl、BrまたはIを示し、
mは、1、2、3または4を示し、
nは、0、1、2、3または4を示し;
ならびに、それらの薬学的に使用可能な塩、互変異性体および立体異性体であり、すべての比率でのそれらの混合物を含む。
【0060】
式Iで表される化合物およびまたそれらの製造のための出発物質は、さらに、文献(例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Georg-Thieme-Verlag, Stuttgartなどの標準的学術書)に記載されているような自体公知の方法により、正確には前述の反応に適する周知の反応条件の下で、製造される。また、ここで、本明細書ではこれ以上詳細には述べない自体公知の変法を用いることができる。
【0061】
式Iで表される化合物を、好ましくは式IIで表される化合物を式IIIで表される化合物と反応させることによって得ることができる。
当該反応を、スズキ反応として当業者に知られている条件下で行う。
【0062】
式IIおよびIIIで表される出発化合物は、一般的に知られている。しかし、それらが新規である場合には、それらを、自体公知の方法によって調製することができる。
式IIで表される化合物において、Lは、好ましくは
【化5】

を示す。
当該反応を、スズキカップリングの標準的な条件下で行う。
【0063】
用いる条件に依存して、反応時間は数分〜14日であり、反応温度は約−30℃〜140℃、通常0℃〜100℃、特に約60℃〜約90℃である。
【0064】
好適な不活性溶媒は、炭化水素類、例えばヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエンもしくはキシレン;塩素化炭化水素類、例えばトリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロホルムもしくはジクロロメタン;アルコール類、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノールもしくはtert−ブタノール;エーテル類、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)もしくはジオキサン;グリコールエーテル類、例えばエチレングリコールモノメチルもしくはモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム);ケトン類、例えばアセトンもしくはブタノン;アミド類、例えばアセトアミド、ジメチルアセトアミドもしくはジメチルホルムアミド(DMF);ニトリル類、例えばアセトニトリル;スルホキシド類、例えばジメチルスルホキシド(DMSO);二硫化炭素;カルボン酸類、例えばギ酸もしくは酢酸;ニトロ化合物、例えばニトロメタンもしくはニトロベンゼン;エステル類、例えば酢酸エチル、または前述の溶媒の混合物である。
特に好ましいのは、エタノール、トルエン、ジメトキシエタンおよび/または水である。
【0065】
式Iで表される化合物を、さらに、好ましくは式IVで表される化合物を式Vで表される化合物と反応させることによって得ることができる。
当該反応を、スズキ反応として当業者に知られている条件下で行う。
【0066】
式IVおよびVで表される出発化合物は、一般的に知られている。しかし、それらが新規である場合には、それらを、自体公知の方法によって調製することができる。
式Vで表される化合物において、Lは、好ましくは
【化6】

を示す。
当該反応を、スズキカップリングの標準的な条件下で行う。
【0067】
用いる条件に依存して、反応時間は数分〜14日であり、反応温度は約−30℃〜140℃、通常0℃〜100℃、特に約60℃〜約90℃である。
好適な不活性溶媒は、上述のものである。
【0068】
式Iで表される化合物を、さらに、好ましくは式VIで表される化合物を式VIIで表される化合物と反応させることによって得ることができる。
式VIおよびVIIで表される出発化合物は、一般的に知られている。しかし、それらが新規である場合には、それらを、自体公知の方法によって調製することができる。
用いる条件に依存して、反応時間は数分〜14日であり、反応温度は約−30℃〜140℃、通常0℃〜100℃、特に約60℃〜約90℃である。
好適な不活性溶媒は、上述のものである。
【0069】
さらに、遊離のアミノ基を、酸塩化物もしくは無水物を用いる慣用の方法においてアシル化するか、または、有利には不活性溶媒、例えばジクロロメタンもしくはTHF中で、および/または塩基、例えばトリエチルアミンもしくはピリジンの存在下で、−60℃〜+30℃の温度にて、非置換もしくは置換ハロゲン化アルキルを用いてアルキル化することができる。
【0070】
式Iで表される化合物をさらに、加溶媒分解、特に加水分解によって、または水素化分解によってこれらをこれらの官能的誘導体から遊離させることにより、得ることができる。
【0071】
加溶媒分解または水素添加分解に好ましい出発物質は、1つまたは2つ以上の遊離アミノ基および/または水酸基の代わりに対応する保護されたアミノ基および/または水酸基を含む物質、好ましくはN原子に結合したH原子の代わりにアミノ保護基を担持している物質、例えば式Iに適合するが、NH基の代わりにNHR’基(式中R’はアミノ保護基、例えばBOCまたはCBZを示す)を含む物質である。
【0072】
好ましいのは、さらに、水酸基のH原子の代わりに水酸保護基を担持している出発物質、例えば式Iに適合するが、ヒドロキシフェニル基の代わりにR’’O−フェニル基(式中R’’は水酸保護基を示す)を含む物質である。
【0073】
また、多くの−同一のまたは異なる−保護されたアミノ基および/または水酸基が、出発物質の分子中に存在することが可能である。存在する保護基が互いに異なる場合には、多くの場合において、これらを、選択的に切断して除去することができる。
【0074】
「アミノ保護基」の表現は、一般的用語において知られており、化学反応に対してアミノ基を保護(遮断)するのに適するが、分子中の他の位置において所望の化学反応が行われた後に容易に除去される基に関する。このような基の代表例は、特に、非置換または置換アシル、アリール、アラルコキシメチルまたはアラルキル基である。アミノ保護基は、所望の反応(または反応順序)の後に除去されるため、これらのタイプおよび大きさは、さらには重要ではない;しかし、1〜20個、特に1〜8個のC原子を有するものが好ましい。
【0075】
「アシル基」の表現は、本方法に関連して、最も広い意味で理解されるべきである。これは、脂肪族、芳香脂肪族、芳香族または複素環式カルボン酸またはスルホン酸から誘導されるアシル基、ならびに特に、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基および特にアラルコキシカルボニル基を含む。このようなアシル基の例は、アルカノイル、例えばアセチル、プロピオニル、ブチリル;アラルカノイル、例えばフェニルアセチル;アロイル、例えばベンゾイルまたはトリル;アリールオキシアルカノイル、例えばPOA;アルコキシカルボニル、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、BOC、2−ヨードエトキシカルボニル;アラルコキシカルボニル、例えばCBZ(「カルボベンゾキシ」)、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、FMOC;アリールスルホニル、例えばMtr、PbfまたはPmcである。好ましいアミノ保護基は、BOCおよびMtr、さらにCBZ、Fmoc、ベンジルおよびアセチルである。
【0076】
「水酸保護基」の表現は、同様に一般的な用語において知られており、化学反応に対して水酸基を保護するのに適するが、分子中の他の位置において所望の化学反応が行われた後に容易に除去される基に関する。このような基の代表例は、前述の非置換または置換アリール、アラルキルまたはアシル基、さらにまたアルキル基である。これらは、所望の化学反応または反応順序の後に再び除去されるため、水酸保護基の性質および大きさは、重要ではない;1〜20個、特に1〜10個のC原子を有する基が好ましい。水酸保護基の例は、特に、tert−ブトキシカルボニル、ベンジル、p−ニトロベンゾイル、p−トルエンスルホニル、tert−ブチルおよびアセチルであり、ここで、ベンジルおよびtert−ブチルが、特に好ましい。アスパラギン酸およびグルタミン酸中のCOOH基は、好ましくは、これらのtert−ブチルエステル類(例えばAsp(OBut))の形態で保護されている。
【0077】
式Iで表される化合物を、(用いられる保護基に依存して、)例えば強酸を用いて、有利にはTFAまたは過塩素酸を用いて、しかしまた他の強無機酸、例えば塩酸または硫酸、強有機カルボン酸、例えばトリクロロ酢酸またはスルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸もしくはp−トルエンスルホン酸を用いて、これらの官能的誘導体から遊離させる。追加の不活性溶媒を存在させることが可能であるが、常には必要ではない。好適な不活性溶媒は、好ましくは、有機酸、例えばカルボン酸類、例えば酢酸、エーテル類、例えばテトラヒドロフランまたはジオキサン、アミド類、例えばDMF、ハロゲン化炭化水素類、例えばジクロロメタン、さらにまたアルコール類、例えばメタノール、エタノールまたはイソプロパノールおよび水である。前述の溶媒の混合物が、さらに好適である。TFAは、好ましくは、他の溶媒を加えずに過剰に用いられ、過塩素酸は、好ましくは、酢酸と70%過塩素酸との9:1の比率での混合物の形態で用いられる。切断のための反応温度は、有利には、約0〜約50℃、好ましくは15〜30℃(室温)である。
【0078】
BOC、OBut、Pbf、PmcおよびMtr基を、例えば、好ましくは、ジクロロメタン中のTFAを用いて、またはジオキサン中の約3〜5NのHClを用いて、15〜30℃で切断して除去することができ、FMOC基を、ジメチルアミン、ジエチルアミンまたはピペリジンをDMFに溶解した約5〜50%溶液を用いて、15〜30℃で切断して除去することができる。
【0079】
水素添加分解的に除去可能な保護基(例えば、CBZまたはベンジル)を、例えば、触媒(例えば、有利には担体、例えば炭素上の貴金属触媒、例えばパラジウム)の存在下での水素での処理により、切断して除去することができる。ここで、好適な溶媒は、前に示したもの、特に、例えば、アルコール類、例えばメタノールもしくはエタノール、またはアミド類、例えばDMFである。水素添加分解を、一般的には、約0〜100℃の温度および約1〜200バールの圧力において、好ましくは20〜30℃および1〜10バールにおいて行う。CBZ基の水素添加分解は、例えば、メタノール中の5〜10%のPd/C上で、またはメタノール/DMF中のPd/C上で、ギ酸アンモニウム(水素の代わりに)を用いて、20〜30℃で、良好に成功する。
【0080】
薬学的塩および他の形態
本発明の前述の化合物を、これらの最終的な非塩形態で用いることができる。一方、本発明はまた、これらの化合物を、当該分野において知られている手順により、種々の有機および無機酸類および塩基類から誘導し得るこれらの薬学的に許容し得る塩の形態で用いることを包含する。式Iで表される化合物の薬学的に許容し得る塩形態は、大部分、慣用的な方法により調製される。式Iで表される化合物がカルボキシル基を含む場合には、その好適な塩の1種を、当該化合物を好適な塩基と反応させて対応する塩基付加塩を得ることにより、生成することができる。そのような塩基は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムを含むアルカリ金属水酸化物;アルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化バリウムおよび水酸化カルシウム;アルカリ金属アルコキシド類、例えばカリウムエトキシドおよびナトリウムプロポキシド;ならびに種々の有機塩基、例えばピペリジン、ジエタノールアミンおよびN−メチルグルタミンである。
【0081】
式Iで表される化合物のアルミニウム塩は、同様に包含される。式Iで表されるある化合物の場合において、これらの化合物を、薬学的に許容し得る有機および無機酸類、例えばハロゲン化水素、例えば塩化水素、臭化水素またはヨウ化水素、他の鉱酸およびそれらの対応する塩、例えば硫酸塩、硝酸塩またはリン酸塩など、ならびにアルキルおよびモノアリールスルホン酸塩類、例えばエタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩およびベンゼンスルホン酸塩、ならびに他の有機酸およびこれらの対応する塩、例えば酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩などで処理することにより、酸付加塩を生成することができる。
【0082】
したがって、式Iで表される化合物の薬学的に許容し得る酸付加塩には、以下のものが含まれる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アルギニン酸塩(arginate)、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、重亜硫酸塩、臭化物、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、リン酸二水素塩、ジニトロ安息香酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩(ムチン酸から)、ガラクツロン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミコハク酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル安息香酸塩、リン酸一水素塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、オレイン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、フタル酸塩、しかしこれは、限定を表すものではない。
【0083】
さらに、本発明の化合物の塩基性塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄(III)、鉄(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(III)、マンガン(II)、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛塩が含まれるが、これは、限定を表すことを意図しない。前述の塩の中で、好ましいのは、アンモニウム;アルカリ金属塩、ナトリウムおよびカリウム、ならびにアルカリ土類金属塩、カルシウムおよびマグネシウムである。
【0084】
薬学的に許容し得る有機無毒性塩基から誘導される、式Iで表される化合物の塩には、第一、第二および第三アミン類、また天然に存在する置換アミン類を含む置換アミン類、環状アミン類、ならびに塩基性イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、クロロプロカイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン(ベンザチン)、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン(hydrabamine)、イソプロピルアミン、リドカイン、リシン、メグルミン、N−メチル−D−グルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(トロメタミン)の塩が含まれるが、これは、制限を表すことを意図しない。
【0085】
塩基性窒素含有基を含む本発明の化合物を、剤、例えば(C〜C)アルキルハロゲン化物、例えば塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、イソプロピルおよびtert−ブチル;ジ(C〜C)アルキル硫酸塩、例えば硫酸ジメチル、ジエチルおよびジアミル;(C10〜C18)アルキルハロゲン化物、例えば塩化、臭化およびヨウ化デシル、ドデシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリル;ならびにアリール(C〜C)アルキルハロゲン化物、例えば塩化ベンジルおよび臭化フェネチルを用いて四級化することができる。本発明の水溶性および油溶性の化合物を共に、このような塩を用いて調製することができる。
【0086】
好ましい前述の薬学的塩には、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ベシル酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、ヘミコハク酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、イセチオン酸塩、マンデル酸塩、メグルミン、硝酸塩、オレイン酸塩、ホスホン酸塩、ピバリン酸塩、リン酸ナトリウム、ステアリン酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、チオリンゴ酸塩、トシル酸塩およびトロメタミンが含まれるが、これは、制限を表すことを意図しない。
特に好ましいのは、塩酸塩、二塩酸塩、臭化水素酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、リン酸塩、硫酸塩およびコハク酸塩である。
【0087】
式Iで表される塩基性化合物の酸付加塩を、遊離塩基形態を十分な量の所望の酸と接触させ、慣用的な方法で塩の生成を生じることによって調製する。塩形態を塩基と接触させ、慣用の方法で遊離塩基を単離することによって、遊離塩基を再生することができる。遊離塩基形態は、ある観点において、いくつかの物理的特性、例えば極性溶媒への溶解性の点で、対応する塩形態と異なる;しかし、本発明の目的のためには、塩は、他の点ではそれぞれの遊離塩基形態に相当する。
【0088】
述べたように、式Iで表される化合物の薬学的に許容し得る塩基付加塩は、金属またはアミン類、例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミン類を用いて生成する。好ましい金属は、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムである。好ましい有機アミン類は、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチル−D−グルカミンおよびプロカインである。
【0089】
本発明の酸性化合物の塩基付加塩を、遊離酸形態を十分な量の所望の塩基と接触させ、慣用的な方法で塩の生成を生じることによって調製する。塩形態を酸と接触させ、慣用的な方法で遊離酸を単離することによって、遊離酸を再生することができる。遊離酸形態は、ある観点において、いくつかの物理的特性、例えば極性溶媒への溶解性の点で、対応する塩形態と異なる;しかし、本発明の目的のためには、塩は、他の点ではそれぞれの遊離酸形態に相当する。
【0090】
本発明の化合物が、このタイプの薬学的に許容し得る塩を生成することができる1つよりも多い基を含む場合には、本発明はまた、多重塩(multiple salt)を包含する。典型的な多重塩形態には、例えば、重酒石酸塩、二酢酸塩、二フマル酸塩、ジメグルミン、二リン酸塩、二ナトリウムおよび三塩酸塩が含まれるが、これは、制限を表すことを意図しない。
【0091】
上記で述べたことに関して、本文脈における表現「薬学的に許容し得る塩」は、式Iで表される化合物をこの塩の1種の形態で含む活性成分を意味するものと解釈されることが明らかであり、特に、この塩形態が、活性成分に対して、前に用いられていた活性成分の遊離形態または活性成分のすべての他の塩形態と比較して改善された薬物動態学的特性を付与する場合には、このように解釈されることが明らかである。活性成分の薬学的に許容し得る塩形態はまた、活性成分に以前には有していなかった所望の薬物動態学的特性を初めて付与することができ、さらに、活性成分の薬力学に関し、身体における治療的有効性に関する正の影響を有することができる。
【0092】
本発明はさらに、少なくとも1種の式Iで表される化合物および/または、それらの薬学的に使用可能な塩および立体異性体(すべての比率でのそれらの混合物を含む)、ならびに任意に賦形剤および/または補助剤を含む医薬に関する。
【0093】
医薬処方物を、投与単位あたり所定量の活性成分を含む投与単位の形態で、投与することができる。このような単位は、処置される状態、投与の方法、ならびに患者の年齢、体重および状態に依存して、例えば0.5mg〜1g、好ましくは1mg〜700mg、特に好ましくは5mg〜100mgの本発明の化合物を含んでもよく、または医薬処方物を、投与単位あたり所定量の活性成分を含む投与単位の形態で投与してもよい。好ましい投与単位処方物は、前に示したように、毎日の用量もしくは部分的用量を含むもの、または活性成分のこの対応する部分である。さらに、このタイプの医薬処方物を、薬学分野において一般的に知られている方法を用いて製造することができる。
【0094】
医薬処方物を、任意の所望の好適な方法による、例えば経口(口腔内もしくは舌下を含む)、直腸内、鼻腔内、局所的(口腔内、舌下もしくは経皮的を含む)、膣内または非経口(皮下、筋肉内、静脈内もしくは皮内を含む)方法による投与のために適合させることができる。このような処方物を、薬学分野において知られているすべての方法を用いて、例えば活性成分を賦形剤(1種もしくは2種以上)または補助剤(1種もしくは2種以上)と混ぜ合わせることによって製造することができる。
【0095】
経口投与のために適合された医薬処方物を、別個の単位、例えばカプセルもしくは錠剤;散剤もしくは顆粒;水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液;食用発泡体もしくは発泡体食品;または水中油型液体エマルジョンもしくは油中水型液体エマルジョンとして投与することができる。
【0096】
したがって、例えば、錠剤またはカプセルの形態での経口投与の場合において、活性成分要素を、経口的な、無毒性の、かつ薬学的に許容し得る不活性賦形剤、例えばエタノール、グリセロール、水などと混ぜ合わせることができる。散剤を、化合物を好適な微細な大きさに粉砕し、これを同様にして粉砕した薬学的賦形剤、例えば食用炭水化物、例えばデンプンまたはマンニトールと混合することによって製造する。香味料、保存料、分散剤および色素が、同時に存在してもよい。
【0097】
カプセルを、上記のように散剤混合物を調製し、成形したゼラチン殻をこれで充填することによって製造する。流動促進剤および潤滑剤、例えば固体形態での高度に分散性のケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたはポリエチレングリコールを、充填操作の前に散剤混合物に加えることができる。崩壊剤または可溶化剤、例えば寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムを、同様に加えて、カプセルを服用した後の医薬の有効性を改善することができる。
【0098】
さらに、所望により、または所要に応じて、好適な結合剤、潤滑剤および崩壊剤ならびに染料を、同様に混合物中に包含させることができる。好適な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然糖類、例えばグルコースまたはベータ−ラクトース、トウモロコシから製造された甘味剤、天然および合成ゴム、例えばアカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ろうなどが含まれる。これらの投与形態で用いられる潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤には、限定されずに、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンゴムなどが含まれる。錠剤を、例えば散剤混合物を調製し、混合物を顆粒化または乾燥圧縮し、潤滑剤および崩壊剤を加え、混合物全体を圧縮して錠剤を得ることによって処方する。
【0099】
散剤混合物を、好適な方法で粉砕した化合物を上記のように希釈剤または塩基と、および随意に結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン、溶解遅延剤、例えばパラフィン、吸収促進剤、例えば第四級塩および/または吸収剤、例えばベントナイト、カオリンまたはリン酸二カルシウムと混合することによって調製する。散剤混合物を、それを結合剤、例えばシロップ、デンプンペースト、アラビアゴム粘液(acadia mucilage)またはセルロースの溶液またはポリマー材料で湿潤させ、これをふるいに通して押圧することによって顆粒化することができる。顆粒化の代替として、散剤混合物を、打錠機に通し、不均一な形状の塊を得、それを崩壊させて、顆粒を形成することができる。
【0100】
顆粒を、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油を加えることによって潤滑化して、錠剤流延型への粘着を防止することができる。次に、潤滑化した混合物を圧縮して、錠剤を得る。本発明の化合物をまた、自由流動の不活性賦形剤と混ぜ合わせ、次に直接圧縮して、顆粒化または乾燥圧縮工程を行わずに錠剤を得ることができる。セラック密封層、糖またはポリマー材料の層およびろうの光沢層からなる透明な、または不透明な保護層が、存在してもよい。異なる投与単位間を区別することができるようにするために、色素を、これらのコーティングに加えることができる。
【0101】
経口液体、例えば溶液、シロップおよびエリキシル剤を、投与単位の形態で調製し、したがって所定量が予め特定された量の化合物を含むようにすることができる。シロップを、化合物を水性溶液に好適な香味料と共に溶解することによって調製することができ、一方エリキシル剤を、無毒性アルコール性ビヒクルを用いて調製する。懸濁液を、化合物を無毒性ビヒクル中に分散させることによって処方することができる。可溶化剤および乳化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール類およびポリオキシエチレンソルビトールエーテル類、保存料、香味用添加物、例えばペパーミント油もしくは天然甘味料もしくはサッカリン、または他の人工甘味料などを、同様に加えることができる。
【0102】
経口投与用の投与単位処方物を、所望により、マイクロカプセル中にカプセル封入することができる。処方物をまた、放出が延長されるかまたは遅延されるように、例えば粒子状材料をポリマー、ろうなどの中にコーティングするかまたは包埋することによって調製することができる。
【0103】
式Iで表される化合物およびそれらの塩をまた、リポソーム送達系、例えば小さい単層の小胞、大きい単層の小胞、および多層の小胞の形態で投与することができる。リポソームを、種々のリン脂質、例えばコレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリン類から生成することができる。
【0104】
式Iで表される化合物およびそれらの塩をまた、化合物分子が結合した個別の担体としてモノクローナル抗体を用いて送達することができる。化合物をまた、標的化された医薬担体としての可溶性ポリマーに結合させることができる。このようなポリマーは、パルミトイルラジカルにより置換された、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパラタミドフェノール(polyhydroxyethylaspartamidophenol)またはポリエチレンオキシドポリリジンを包含することができる。化合物をさらに、医薬の制御された放出を達成するのに適する生分解性ポリマーの群、例えばポリ乳酸、ポリ−イプシロン−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル類、ポリアセタール類、ポリジヒドロキシピラン類、ポリシアノアクリレート類、およびヒドロゲルの架橋ブロックコポリマーまたは両親媒性のブロックコポリマーに結合させることができる。
【0105】
経皮的投与用に適合された医薬処方物を、レシピエントの表皮との長期間の、密接な接触のための独立した硬膏剤として投与することができる。したがって、例えば、活性成分を、Pharmaceutical Research, 3(6), 318 (1986)に一般的に記載されているように、イオン泳動によって硬膏剤から送達することができる。
局所的投与用に適合された医薬化合物を、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、散剤、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアゾールまたは油として処方することができる。
【0106】
目または他の外部組織、例えば口および皮膚の処置のために、処方物を、好ましくは、局所的軟膏またはクリームとして適用する。処方物を軟膏とする場合において、活性成分を、パラフィン系または水混和性クリームベースのいずれかと共に用いることができる。あるいはまた、活性成分を処方して、水中油型クリームベースまたは油中水型ベースを有するクリームを得ることができる。
【0107】
目への局所的適用のために適合された医薬処方物には、活性成分を好適な担体、特に水性溶媒中に溶解させるかまたは懸濁させた点眼剤が含まれる。
口における局所的適用のために適合された医薬処方物は、薬用キャンデー、トローチおよび洗口剤を包含する。
直腸内投与のために適合された医薬処方物を、坐剤または浣腸剤の形態で投与することができる。
【0108】
担体物質が固体である鼻腔内投与のために適合された医薬処方物は、例えば20〜500ミクロンの範囲内の粒子の大きさを有する粗粉末を含み、それを、嗅ぎ薬を服用する方法で、即ち鼻に近接して保持した散剤を含む容器からの鼻の経路を介しての迅速な吸入によって投与する。担体物質としての液体を有する鼻腔内スプレーまたは点鼻剤としての投与に適する処方物は、水または油に溶解した活性成分溶液を包含する。
【0109】
吸入による投与のために適合された医薬処方物は、エアゾール、噴霧器または吸入器を有する種々のタイプの加圧ディスペンサーにより発生することのできる微細な粒子状ダストまたはミストを包含する。
膣内投与のために適合された医薬処方物を、膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡体またはスプレー処方物として投与することができる。
【0110】
非経口投与のために適合された医薬処方物は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤および溶質を含む水性および非水性の無菌注射溶液であって、これにより処方物が処置されるべきレシピエントの血液と等張になるもの;ならびに水性の、および非水性の無菌懸濁液であって、懸濁媒体および増粘剤を含むことができるもの、を含む。処方物を、単一用量または複数用量の容器、例えば密封したアンプルおよびバイアルにおいて投与してもよく、使用の直前に無菌の担体液体、例えば注射用水を添加することしか必要としないようにフリーズドライした(freeze-dried)(凍結乾燥(lyophilised))状態において貯蔵してもよい。処方によって製造される注射溶液および懸濁液を、無菌の散剤、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0111】
上記で特定的に述べた構成成分に加えて、処方物はまた、処方物の特定のタイプに関して当該分野において普通である他の剤を含むことができることは、言うまでもない;したがって、例えば、経口投与に適する処方物は、香味料を含んでいてもよい。
【0112】
式Iで表される化合物の治療的に有効な量は、例えば、動物の年齢および体重、処置が必要である正確な状態およびその重篤度、処方物の性質および投与の方法を含む多くの要因に依存し、最終的には、処置する医師または獣医師によって決定される。しかし、腫瘍性成長、例えば結腸癌または乳癌の処置のための本発明の化合物の有効な量は、一般的に、1日あたり0.1〜100mg/レシピエント(哺乳動物)の体重1kgの範囲内、特に典型的には1日あたり1〜10mg/体重1kgの範囲内である。したがって、体重が70kgである成体の哺乳動物についての1日あたりの実際の量は、通常70〜700mgであり、ここで、この量を、1日あたり単一の用量として、または通常1日あたり一連の部分用量(例えば2回分、3回分、4回分、5回分もしくは6回分)において投与し、したがって合計の日用量が同一であるようにすることができる。塩もしくは溶媒和物の、またはこの生理学的な機能的誘導体の有効量を、本発明の化合物自体の有効量の比として決定することができる。同様の用量が、前述の他の状態の処置に適すると、推測することができる。
【0113】
本発明はさらに、式Iで表される少なくとも1種の化合物および/または、その薬学的に使用可能な塩および立体異性体(すべての比率でのこの混合物を含む)ならびに少なくとも1種の他の医薬活性成分を含む医薬に関する。
【0114】
本発明はまた、
(a)式Iで表される化合物および/または、その薬学的に使用可能な塩および立体異性体(すべての比率でのその混合物を含む)の有効量、
ならびに
(b)さらなる医薬活性成分の有効量
の個別のパックからなる、セット(キット)に関する。
【0115】
当該セットは、好適な容器、例えば箱、個別のビン、袋またはアンプルを含む。当該セットは、例えば、各々が溶解したかまたは凍結乾燥された形態での、式Iで表される化合物および/または、その薬学的に使用可能な塩および立体異性体(すべての比率でのその混合物を含む)の有効量、ならびに、さらなる医薬活性成分の有効量を含む個別のアンプルを含んでいてもよい。
【0116】
使用
本発明の化合物は、哺乳動物のための、特にヒトのための、チロシンキナーゼにより誘発された疾患の処置における医薬活性成分として適する。これらの疾患には、固形腫瘍、眼性血管新生(糖尿病性網膜症、年齢により誘発された黄斑変性症など)および炎症(乾癬、関節リウマチなど)の成長を促進する腫瘍細胞、病理学的血管新生(または血管形成)の増殖が含まれる。
【0117】
本発明は、式Iで表される化合物および/またはそれらの生理学的に許容し得る塩の、癌の処置または予防のための医薬の調製のための使用を包含する。処置のための好ましい癌腫は、脳の癌腫、尿生殖路の癌腫、リンパ系の癌腫、胃癌、喉頭癌および肺癌の群から由来する。他の群の癌の好ましい形態は、単球性白血病、肺腺癌、小細胞肺癌、膵癌、神経膠芽腫および乳癌である。
【0118】
また、包含されるのは、本発明の請求項1に記載の化合物および/またはそれらの生理学的に許容し得る塩の、血管形成が関与する疾患を処置または防止するための医薬を調製するための使用である。
血管形成が関与するこのような疾患は、眼の疾患、例えば網膜血管化、糖尿病性網膜症、年齢により誘発された黄斑変性症などである。
【0119】
式Iで表される化合物および/またはそれらの生理学的に許容し得る塩および溶媒和物の、炎症性疾患を処置または防止するための医薬を調製するための使用もまた、本発明の範囲内にある。このような炎症性疾患の例には、関節リウマチ、乾癬、接触性皮膚炎、遅延型過敏症応答などが含まれる。
【0120】
また、包含されるのは、式Iで表される化合物および/またはそれらの生理学的に許容し得る塩の、哺乳動物におけるチロシンキナーゼ誘発性疾患またはチロシンキナーゼ誘発性の状態を処置するかまたは防止するための医薬を調製するための使用であり、ここでこの方法に対して、本発明の化合物の治療的に有効な量を、このような処置を必要とする疾患を有する哺乳動物に投与する。治療的な量は、具体的な疾患によって変動し、過度の努力を伴わずに当業者により決定することができる。
【0121】
本発明はまた、式Iで表される化合物および/またはそれらの生理学的に許容し得る塩および溶媒和物の、網膜血管化を処置または防止するための医薬を調製するための使用を包含する。
眼の疾患、例えば糖尿病性網膜症および年齢により誘発された黄斑変性症を処置または防止するための方法は、同様に本発明の一部である。炎症性疾患、例えば関節リウマチ、乾癬、接触性皮膚炎および遅延型過敏症応答の処置または防止、ならびに骨肉腫、骨関節炎およびくる病の群からの骨の病態の処置または防止のための使用もまた、同様に本発明の範囲内にある。
【0122】
「チロシンキナーゼ誘発性疾患または状態」の表現は、1種または2種以上のチロシンキナーゼの活性に依存する病理学的状態を指す。チロシンキナーゼは、増殖、付着および遊走および分化を含む種々の細胞活性のシグナル伝達経路に直接、または間接的に関与する。チロシンキナーゼ活性と関連する疾患は、腫瘍細胞の増殖、固形腫瘍の成長を促進する病理学的血管新生、眼性血管新生(糖尿病性網膜症、年齢によって誘発された黄斑変性など)および炎症(乾癬、関節リウマチなど)を含む。
【0123】
式Iで表される化合物を、癌、特に急速に成長する腫瘍を処置するために、患者に投与することができる。
したがって、本発明は、式Iで表される化合物ならびにそれらの薬学的に使用可能な塩および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物の、キナーゼシグナル伝達の阻害、調節および/または調整が作用を奏する疾患を処置するための医薬を調製するための使用に関する。
【0124】
好ましいのは、ここではMetキナーゼである。
好ましいのは、式Iで表される化合物ならびにそれらの薬学的に使用可能な塩および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物の、請求項1に記載の化合物によってチロシンキナーゼを阻害することによって影響される疾患を処置するための医薬を調製するための使用である。
【0125】
特に好ましいのは、請求項1に記載の化合物によるMetキナーゼの阻害によって影響される疾患の処置のための医薬の調製のための使用である。
特に好ましいのは、疾患が固形腫瘍である疾患の処置のための使用である。
固形腫瘍は、好ましくは、肺、扁平上皮、膀胱、胃(stomach)、腎臓、頭頸部、食道、子宮頚部、甲状腺、腸、肝臓、脳、前立腺、尿生殖路、リンパ系、胃および/または喉頭の腫瘍の群から選択される。
【0126】
固形腫瘍は、さらに、好ましくは肺腺癌、小細胞肺癌、膵癌、神経膠芽腫、結腸癌および乳癌の群から選択される。
好ましいのは、さらに、血液および免疫系の腫瘍の処置のための、好ましくは急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病および/または慢性リンパ性白血病の群から選択される腫瘍の処置のための使用である。
【0127】
式Iで表される開示した化合物を、抗癌剤を含む他の既知の治療剤と組み合わせて投与することができる。ここで用いる用語「抗癌剤」は、癌を処置する目的で癌を有する患者に投与されるすべての剤に関する。
【0128】
本明細書中で定義した抗癌処置を、単一の療法として適用してもよいか、またはこれは、本発明の化合物に加えて、慣用の手術もしくは放射線療法もしくは化学療法を伴ってもよい。このような化学療法は、1種または2種以上の以下の分類の抗腫瘍剤を含んでもよい:
【0129】
(i)内科的腫瘍学において用いられる、抗増殖剤/抗悪性腫瘍剤/DNA損傷剤およびそれらの組み合わせ、例えばアルキル化剤(例えばシスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファンおよびニトロソ尿素);代謝拮抗薬(例えば葉酸代謝拮抗薬、例えばフルオロピリミジン類、例えば5−フルオロウラシルおよびテガフール、ラルチトレキセド、メトトレキセート、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素およびゲムシタビン);抗腫瘍抗生物質(例えばアントラサイクリン類、例えばアドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン−C、ダクチノマイシンおよびミトラマイシン);有糸分裂阻害薬(例えばビンカアルカロイド類、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビン、ならびにタキソイド類、例えばタキソールおよびタキソテール);トポイソメラーゼ阻害薬(例えばエピポドフィロトキシン類(epipodophyllotoxins)、例えばエトポシドおよびテニポシド、アムサクリン、トポテカン、イリノテカンおよびカンプトテシン)ならびに細胞分化剤(例えばオールトランスレチノイン酸(all-trans-retinoic acid)、13−シス−レチノイン酸およびフェンレチニド(fenretinide));
【0130】
(ii)細胞分裂阻害剤、例えば抗エストロゲン剤(例えばタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)およびヨードキシフェン(iodoxyfene))、エストロゲン受容体下方調節剤(downregulator)(例えばフルベストラント)、抗アンドロゲン薬(例えばビカルタミド、フルタミド、ニルタミドおよび酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えばゴセレリン、リュープロレリンおよびブセレリン)、プロゲステロン類(例えば酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えばアナストロゾール、レトロゾール、ボロゾールおよびエキセメスタン)ならびに5α−レダクターゼの阻害剤、例えばフィナステリド;
【0131】
(iii)癌細胞侵入を阻害する剤(例えばメタロプロテイナーゼ阻害剤、例えばマリマスタット、およびウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体機能の阻害剤);
【0132】
(iv)成長因子機能の阻害剤、例えばこのような阻害剤は、成長因子抗体、成長因子受容体抗体(例えば抗erbb2抗体トラスツズマブ[Herceptin(登録商標)]および抗erbbl抗体セツキシマブ[C225])、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤およびセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、例えば上皮成長因子ファミリーの阻害剤(例えばEGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、例えばN−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(ゲフィチニブ、AZD1839)、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(エルロチニブ、OSI−774)および6−アクリルアミド−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(CI1033))、例えば血小板由来成長因子ファミリーの阻害剤、および例えば肝細胞成長因子ファミリーの阻害剤を含む;
【0133】
(v)抗血管新生薬、例えば血管内皮成長因子の効果を阻害するもの(例えば抗血管内皮細胞成長因子抗体ベバシズマブ[Avastin(登録商標)]、化合物、例えば公開された国際特許出願WO 97/22596、WO 97/30035、WO 97/32856およびWO 98/13354に開示されているもの)、ならびに他の機構により作動する化合物(例えばリノミド(linomide)、インテグリンαvβ3機能の阻害剤およびアンジオスタチン);
【0134】
(vi)血管損傷剤、例えばコンブレタスタチンA4、ならびに国際特許出願WO 99/02166、WO 00/40529、WO 00/41669、WO 01/92224、WO 02/04434およびWO 02/08213に開示されている化合物;
【0135】
(vii)アンチセンス療法、例えば上に列挙した標的に向けられるもの、例えばISIS2503、抗Rasアンチセンス;
【0136】
(viii)遺伝子療法方法であって、以下を含むもの、例えば、異常な遺伝子、例えば異常なp53または異常なBRCA1もしくはBRCA2の置換のための方法、GDEPT(遺伝子に向けられた酵素プロドラッグ療法)法、例えばシトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌性ニトロレダクターゼを用いるもの、および化学療法または放射線療法に対する患者の耐性を増大させるための方法、例えば多剤耐性遺伝子療法;ならびに
【0137】
(ix)免疫療法であって、以下を含むもの、例えば患者腫瘍細胞の免疫原性を増大させるためのex-vivoおよびin-vivo方法、例えばインターロイキン2、インターロイキン4または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子などのサイトカインによるトランスフェクション、T細胞アネルギーを低下させるための方法、サイトカインをトランスフェクトした樹状細胞などのトランスフェクトした免疫細胞を用いる方法、サイトカインでトランスフェクトした腫瘍細胞株を用いる方法、および抗イディオタイプ抗体を用いる方法。
【0138】
以下の表1からの医薬を、好ましくは、しかし排他的にではなく、式Iで表される化合物と組み合わせる。
【0139】
【表1】

【0140】
【表2】

【0141】
【表3】

【0142】
【表4】

【0143】
【表5】

【0144】
【表6】

【0145】
【表7】

【0146】
【表8】

【0147】
【表9】

【0148】
【表10】

【0149】
このタイプの組み合わせ処置を、その処置の個別の成分を同時に、連続的に、または別個に投薬することによって達成することができる。このタイプの組み合わせ生成物は、本発明の化合物を用いる。
【0150】
アッセイ
例中に記載した式Iで表される化合物を、以下に記載するアッセイによって試験し、キナーゼ阻害活性を有することが見出された。他のアッセイは、文献から知られており、当業者によって容易に行うことができた(例えば、Dhanabal et al., Cancer Res. 59:189-197; Xin et al., J. Biol. Chem. 274:9116-9121; Sheu et al., Anticancer Res. 18:4435-4441; Ausprunk et al., Dev. Biol. 38:237-248; Gimbrone et al., J. Natl. Cancer Inst. 52:413-427; Nicosia et al., In Vitro 18:538- 549を参照)。
【0151】
Metキナーゼ活性の測定
製造者のデータ(Met、活性、Upstate、カタログ番号14−526)において、Metキナーゼを、昆虫細胞(Sf21;S. frugiperda)におけるタンパク質産生の目的のために発現させ、その後バキュロウイルス発現ベクターにおいて「N末端6Hisタグ付与」組換えヒトタンパク質としてアフィニティークロマトグラフィー精製する。
【0152】
キナーゼ活性を、種々の入手可能な測定システムを用いて測定することができる。シンチレーション近接法(Sorg et al., J. of Biomolecular Screening, 2002, 7, 11-19)、フラッシュプレート(flashplate)法またはフィルター結合試験において、基質としてのタンパク質またはペプチドの放射活性リン酸化を、放射活性標識したATP(32P−ATP、33P−ATP)を用いて測定する。阻害化合物が存在する場合において、低減された放射活性シグナルを検出することができるか、または当該シグナルを完全に検出することはできない。さらに、均一時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(HTR−FRET)および蛍光偏光(FP)技術を、アッセイ方法として用いることができる(Sills et al., J. of Biomolecular Screening, 2002, 191-214)。
【0153】
他の非放射性ELISAアッセイ法は、特定のホスホ抗体(ホスホAB)を用いる。ホスホ抗体は、リン酸化された基質を結合するに過ぎない。この結合を、第2のペルオキシダーゼ抱合型抗体を用いた化学発光によって検出することができる(Ross et al., 2002, Biochem. J.)。
【0154】
フラッシュプレート法(Metキナーゼ)
用いる試験プレートは、Perkin Elmerからの96ウェルFlashplate(登録商標)マイクロタイタープレート(カタログ番号SMP200)である。以下に記載するキナーゼ反応の構成成分を、アッセイプレート中にピペットで移送する。Metキナーゼおよび基質のポリAla−Glu−Lys−Tyr(pAGLT、6:2:5:1)を、室温にて3時間、放射活性標識した33P−ATPと共に、100μlの合計容積において試験物質の存在下および不存在下でインキュベートする。当該反応を、150μlの60mMのEDTA溶液を用いて終了する。室温にてさらに30分間インキュベーションした後、上清を、吸引により濾別し、ウェルを、各々の回において200μlの0.9%のNaCl溶液で3回洗浄する。結合した放射活性の測定を、シンチレーション測定機器(Topcount NXT, Perkin-Elmer)によって行う。
【0155】
用いる完全な値は、阻害剤を有しないキナーゼ反応である。これは、約6000〜9000cpmの範囲内になければならない。用いる薬理学的ゼロ値は、0.1mMの最終濃度におけるスタウロスポリンである。阻害値(IC50)を、RS1_MTSプログラムを用いて決定する。
【0156】
ウェルごとのキナーゼ反応条件:
30μlのアッセイ緩衝液
10%のDMSOと共にアッセイ緩衝液中で試験するべき物質10μl
10μlのATP(最終濃度1μM低温、0.35μCiの33P−ATP)
アッセイ緩衝液中のMetキナーゼ/基質混合物50μl;
(10ngの酵素/ウェル、50ngのpAGLT/ウェル)
【0157】
用いる溶液:
− アッセイ緩衝液:
50mM HEPES
3mM 塩化マグネシウム
3μM オルトバナジウム酸ナトリウム
3mM 塩化マンガン(II)
1mM ジチオスレイトール(DTT)
pH=7.5(水酸化ナトリウムを用いて設定)
【0158】
− 停止溶液:
60mMのTitriplex III(EDTA)
33P−ATP:Perkin-Elmer;
− Metキナーゼ:Upstate、カタログ番号14−526、保存1μg/10μl;比活性954U/mg;
− ポリ−Ala−Glu−Lys−Tyr、6:2:5:1:Sigma、カタログ番号P1152
【0159】
in-vivo試験
実験的手順:雌のBalb/Cマウス(ブリーダー:Charles River Wiga)は、到着時に5週齢であった。それらを、本発明者らの保持条件に7日間慣れさせた。その後、各々のマウスに、100μlのPBS(Ca++およびMg++を有しない)中の400万個のTPR−Met/NIH3T3細胞を、骨盤領域中に皮下注射した。5日後、当該動物を、3つの群に無作為化し、各々の群の9匹のマウスが、110μlの平均腫瘍容積(範囲:55〜165)を有するようにした。100μlのビヒクル(0.25%のメチルセルロース/100mMの酢酸緩衝液、pH5.5)を、対照群に毎日投与し、ビヒクルに溶解した200mg/kgの「A56」または「A91」(容積は同様に100μl/動物であった)を、各々の場合において胃管によって処置群に毎日投与した。9日後、対照は、1530μlの平均容積を有しており、実験を終了した。
【0160】
腫瘍容積の測定:長さ(L)および幅(B)を、Vernierキャリパーを用いて測定し、腫瘍容積を、式L×B×B/2から計算した。
保持条件:ケージあたり4匹または5匹の動物、商業的なマウス食物(Sniff)を摂食させた。
【0161】
本明細書中、すべての温度を、℃で示す。以下の例において、「慣用的な精製操作(work-up)」は、以下のことを意味する:所要に応じて水を加え、pHを所要に応じて、最終生成物の構成に依存して2〜10の値に調節し、混合物を、酢酸エチルまたはジクロロメタンで抽出し、相を分離し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させ、残留物をシリカゲル上でのクロマトグラフィーによって、および/または結晶化によって精製する。シリカゲル上でのRf値;溶離剤:酢酸エチル/メタノール9:1。
質量分析法(MS):EI(電子衝撃イオン化)M
FAB(高速原子衝撃)(M+H)
ESI(エレクトロスプレーイオン化)(M+H)
APCI−MS(大気圧化学イオン化−質量分析法)(M+H)
【0162】
例1
調製を、以下の一般的な反応スキームと同様にして行う。
【化7】

【0163】
3−(4−フルオロフェニル)−2−(ピリジン−4−イル)−1H−ピロロ[3,2−b]ピリジン−5−カルボニトリル(「A1」)の調製
1.1 27.91g(109.96mmol)のヨウ素および34.02g(109.13mmol)の硫酸銀を、10.0g(83.94mmol)の5−アミノ−2−シアノピリジンを150mlのエタノールに溶解した溶液中に直接導入し、反応混合物を、室温にて11時間撹拌する。沈殿物を濾別し、残留物を、エタノールで多数回洗浄する。混ぜ合わせた有機相を真空において蒸発させ、残留物を、シリカゲル上のクロマトグラフィー(溶離剤:シクロヘキサン/酢酸エチル8/2)によって精製し、16.30g(66.52mmol、79.2%)の5−アミノ−6−ヨードピコリノニトリルをベージュ色結晶として得る。
【化8】

ESI−MS:m/e:246([M+H])。
【0164】
1.2 5.02g(20.50mmol)の5−アミノ−6−ヨードピコリノニトリルおよび33.39g(102.50mmol)のCsCOを、真空において乾燥し、100mlの乾燥THFに窒素の下で溶解する。3.14g(22.55mmol)の4−エチニルピリジン塩酸塩、390mg(2.05mmol)のCuIおよび837mg(1.02mmol)のPd(dppf)Cl・CHClを、窒素の下で導入し、溶液を、50℃にて48時間、次にRTにてさらに72時間撹拌する。沈殿物を濾別し、酢酸エチルで洗浄する。混ぜ合わせた有機相を真空において蒸発させ、NaCl溶液を残留物に加え、混合物をEAで抽出し、混ぜ合わせた有機相をNaSOで乾燥する。溶媒を除去した後、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:EA/MeOH 99/1〜95/5)によって、2.80g(12.71mmol、62%)の5−アミノ−6−(ピリジン−4−イルエチニル)ピコリノニトリルを黄色固体として得る。
【化9】

ESI−MS:m/e:221([M+H])、463([2M+Na]
【0165】
1.3 1.75g(4.90mmol)の5−アミノ−6−(ピリジン−4−イルエチニル)ピコリノニトリルを、真空において乾燥し、15mlのNMPに窒素の下で溶解する。935mg(8.33mmol)のカリウムtert−ブトキシドを導入した後、反応混合物を、90℃にて4時間加熱する。混合物を、その後0℃に冷却し、1.65g(7.35mmol)のN−ヨードスクシンイミドを10mlのNMPに溶解した溶液を、滴加する。RTにて1時間後、反応混合物を0°に再び冷却し、5.35g(24.52mmol)のジ−tert−ブチルジカーボネートおよび599mg(4.90mmol)の4−(ジメチルアミノ)ピリジンを5mlのNMPに溶解した溶液を、滴加する。0℃にて1時間後、250mlの氷水を反応混合物に加え、それを次にCHClで抽出する。混ぜ合わせた有機相を飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、溶媒を真空において除去する。中性の酸化アルミニウム上のフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:EA/CH 9/1)によって、1750mg(3.92mmol、80%)の5−シアノ−3−ヨード−2−(ピリジン−4−イル)−1H−ピロロ[3,2−b]ピリジン−1−カルボン酸tert−ブチルを白色固体として得る。
【化10】

ESI−MS:m/e:447([M+H])、347([M−BOC])。
【0166】
1.4 223mg(0.5mmol)の5−シアノ−3−ヨード−2−(ピリジン−4−イル)−1H−ピロロ[3,2−b]ピリジン−1−カルボン酸tert−ブチル、104mg(0.75mmol)の4−フルオロベンゼンボロン酸および207mgのKCOを7.5mlのDME/HO(2/1)に溶解した溶液を、超音波浴中で10分間撹拌し、20mg(0.025mmol)のPd(dppf)Cl・CHCl[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)二塩化物/ジクロロメタン複合体]を、窒素の下で加える。80℃にて2.5時間加熱した後、反応混合物をRTに冷却し、5mlのエタノール性HCl溶液を滴加し、混合物をその後60℃にて16時間撹拌する。RTに冷却した後、pHを、希薄NaOH溶液を用いて約12に調整し、水相を酢酸エチルで抽出する。混ぜ合わせた有機相をNaSOで乾燥し、溶媒を真空において除去する。シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:EA/MeOH 9/1)によって、136mg(0.43mmol、86%)の3−(4−フルオロフェニル)−2−(ピリジン−4−イル)−1H−ピロロ[3,2−b]ピリジン−5−カルボニトリル(「A1」)を黄色固体として得る;
【化11】

ESI−MS:m/e:315([M+H])、651([2M+Na]);
EI−MS:m/e(%):313(100、[M−H])、286(15、[C1710FN);融点230℃;
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ= 7.30 (dd, 2H, J = 8.8 Hz, J = 2.2 Hz), 7.48 - 7.53 (m, 4H), 7.81 (d, 1H, J = 8.3 Hz), 8.08 (d, 1H, J = 8.3 Hz), 8.63 (dd, 2H, J = 6.0 Hz, J = 1.6 Hz), 12.65 (br, 1H) ppm.
【0167】
例2
調製を、以下の一般的な反応スキームと同様にして行う。
【化12】

【0168】
3−(4−フルオロフェニル)−2−(ピリミジン−5−イル)−1H−ピロロ[3,2−b]ピリジン−5−カルボニトリル(「A14」)の調製
2.1 5.00g(20.40mmol)の5−アミノ−6−ヨードピコリノニトリルおよび751mg(4.08mmol)のMgBrを、50mlの乾燥THFに溶解し、10mlの3,4−ジヒドロ−2H−ピランを加え、混合物を還流下で48時間加熱する。その後、溶媒を真空において除去し、残留物をシリカゲル上のクロマトグラフィー(溶離剤:EA/CH 7/3)によって精製し、6.70g(20.40mmol、定量的)の6−ヨード−5−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルアミノ)ピコリノニトリルを淡黄色油として得る;
【化13】

ESI−MS:m/e:246([M−THP])、330([M+H])、681([2M+Na])。
【0169】
2.2 6.35g(60.0mmol)のNaCOおよび953mg(22.50mmol)のLiClを、真空において加熱することによって乾燥し、150mlの乾燥DMFに窒素の下で溶解する。4.93g(15.0mmol)の6−ヨード−5−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルアミノ)ピコリノニトリル、5.27g(22.50mmol)のトリエチル((4−フルオロフェニル)エチニル)シランおよび1.22g(1.50mmol)のPd(dppf)Cl・CHClを導入し、混合物を110℃にて30時間撹拌する。飽和NaCl溶液を反応混合物に加え、それを次に酢酸エチルで抽出する。混ぜ合わせた有機相をNaSOで乾燥し、溶媒を真空において除去する。シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:CH/EA 9/1〜7/3)によって、2.70g(6.19mmol、41%)の3−(4−フルオロフェニル)−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−2−(トリエチルシリル)−1H−ピロロ[3,2−b]ピリジン−5−カルボニトリルを白色固体として得る;
【化14】

ESI−MS:m/e:436([M+H])、458([M+Na])、893([2M+Na])。
【0170】
2.3 1.30g(2.98mmol)の3−(4−フルオロフェニル)−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−2−(トリエチルシリル)−1H−ピロロ[3,2−b]ピリジン−5−カルボニトリルおよび1.33g(3.58mmol)のビス(ピリジン)ヨードニウムテトラフルオロボレートを、15mlのジクロロエタンに溶解し、523μl(5.96mmol)のトリフルオロメタンスルホン酸を加える。反応混合物を、還流下で一晩加熱する。さらに700mg(1.88mmol)のビス(ピリジン)ヨードニウムテトラフルオロボレートおよび523μl(5.96mmol)のトリフルオロメタンスルホン酸を、高温の混合物に加え、それを、還流下でさらに5時間加熱する。RTに冷却した後、水を加え、pHを、希薄NaOH溶液を用いて約11に調整し、水相をジクロロメタンで抽出する。混ぜ合わせた有機相を、NaSOで乾燥する。溶媒を真空において除去した後、残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:CH/EA 7/3〜1/1)によって精製し、850mg(2.34mmol、78%)の3−(4−フルオロフェニル)−2−ヨード−1H−ピロロ[3,2−b]ピリジン−5−カルボニトリルを淡黄色固体として得る;
【化15】

ESI−MS:m/e:364([M+H])、386([M+Na])。
【0171】
2.4 181mg(0.5mmol)の3−(4−フルオロフェニル)−2−ヨード−1H−ピロロ[3,2−b]ピリジン−5−カルボニトリル、92mg(0.75mmol)の5−ピリミジニルボロン酸および207mgのKCOを7.5mlのDMF/HO(2/1)に溶解した溶液を、超音波浴中で10分間撹拌し、20mg(0.025mmol)のPd(dppf)Cl・CHClを、窒素の下で加える。80℃にて5時間加熱した後、さらに9.2mgの5−ピリミジニルボロン酸および2mgのPd(dppf)Cl・CHClを、反応混合物中に導入し、それを次に80℃にて23時間撹拌する。RTに冷却した後、水を加え、水相を酢酸エチルで抽出する。混ぜ合わせた有機相をNaSOで乾燥し、溶媒を真空において除去する。シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:EA/CH 7/3〜EA)によって、15mg(0.04mmol、9%)の3−(4−フルオロフェニル)−2−(ピリミジン−5−イル)−1H−ピロロ[3,2−b]ピリジン−5−カルボニトリル(「A14」)を黄色固体として得る;
【化16】

【0172】
ESI−MS:m/e:316([M+H])、653([2M+Na]);
EI−MS:m/e(%):315(100、[M])、314(95、[M−H]);
融点230〜232℃;
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 7.23 - 7.32 (m, 2H), 7.51 - 7.55 (m, 2H), 7.83 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 8.12 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 8.91 (s, 2H), 9.23 (s, 1H), 12.04 (br, 1H) ppm.
【0173】
同一な、RおよびRの置換物のための他の潜在的なアクセスは、以下のスキーム(例えば化合物「A11」、以下を参照)から、上述の手順と同様にして生じる:
【化17】

【0174】
以下の化合物を、上記の例と同様にして得る。
【表11】

【0175】
【表12】

【0176】
【表13】

【0177】
【表14】

【0178】
【表15】

【0179】
【表16】

【0180】
【表17】

【0181】
【表18】

【0182】
【表19】

【0183】
【表20】

【0184】
【表21】

【0185】
【表22】

【0186】
【表23】

【0187】
【表24】

【0188】
【表25】

【0189】
【表26】

【0190】
【表27】

【0191】
【表28】

【0192】
【表29】

【0193】
【表30】

【0194】
【表31】

【0195】
【表32】

【0196】
【表33】

【0197】
薬理学的データ
Metキナーゼ阻害
表1
【表34】

【0198】
以下の例は、医薬に関する:
例A:注射バイアル
100gの式Iで表される活性成分および5gのリン酸水素二ナトリウムを3lの2回蒸留水に溶解した溶液を、2N塩酸を用いてpH6.5に調整し、滅菌濾過し、注射バイアル中に移送し、滅菌条件下で凍結乾燥し、滅菌条件下で密封する。各々の注射バイアルは、5mgの活性成分を含む。
【0199】
例B:座剤
20gの式Iで表される活性成分の100gの大豆レシチンおよび1400gのココアバターとの混合物を、溶融し、型中に注入し、放冷する。各々の座剤は、20mgの活性成分を含む。
【0200】
例C:溶液
1gの式Iで表される活性成分、9.38gのNaHPO・2HO、28.48gのNaHPO・12HOおよび0.1gの塩化ベンザルコニウムから、940mlの2回蒸留水中に溶液を調製する。pHを6.8に調整し、溶液を1lにし、放射線により滅菌する。この溶液を、点眼剤の形態で用いることができる。
【0201】
例D:軟膏
500mgの式Iで表される活性成分を、99.5gのワセリンと、無菌条件下で混合する。
【0202】
例E:錠剤
1kgの式Iで表される活性成分、4kgのラクトース、1.2kgのジャガイモデンプン、0.2kgのタルクおよび0.1kgのステアリン酸マグネシウムの混合物を、慣用の方法で圧縮して、錠剤を得、各々の錠剤が10mgの活性成分を含むようにする。
【0203】
例F:糖衣錠
例Eと同様にして、錠剤を圧縮し、次に、慣用の方法で、スクロース、ジャガイモデンプン、タルク、トラガカントおよび染料の被膜で被覆する。
【0204】
例G:カプセル
2kgの式Iで表される活性成分を、硬質ゼラチンカプセル中に慣用の方法で導入して、各々のカプセルが20mgの活性成分を含むようにする。
【0205】
例H:アンプル
1kgの式Iで表される活性成分を60lの2回蒸留水に溶解した溶液を、滅菌濾過し、アンプル中に移送し、滅菌条件下で凍結乾燥し、滅菌条件下で密封する。各々のアンプルは、10mgの活性成分を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

式中、
、X、X、Xは、各々、互いに独立してCHまたはNを示し、
ここでラジカルX、X、X、Xの1つのみが、Nを示し、
は、H、CN、Hal、Het、A、COOH、COOA、CONH、CONH(CHNAまたはCONH(CHHetを示し、
は、H、HetまたはArを示し、
は、H、(CHArまたはHetを示し、
ここでラジカルRまたはRの一方は、≠Hであり、
は、H、A、(CHArまたはHetを示し、
Hetは、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式または二環式の芳香族複素環を示し、それは非置換であるか、またはHal、A、NHおよび/またはNHCHArによって単置換、二置換もしくは三置換されていてもよく、
Hetは、1〜2個のNおよび/またはO原子を有し、Aによって単置換または二置換されていてもよい、単環式の不飽和または飽和複素環を示し、
Arは、非置換であるか、またはHal、A、OH、OA、CN、NO、SOA、COOH、COOA、NH、NHA、NA、CHO、COA、CHO、CONH、CONHA、CONA、SONH、SONHAおよび/またはNHCOAによって単置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを示し、
Aは、1〜10個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、
ここで、1〜7個のH原子は、OH、F、Clおよび/またはBrによって置き換えられていてもよく、
Halは、F、Cl、BrまたはIを示し、
mは、1、2、3または4を示し、
nは、0、1、2、3または4を示す、
で表される化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩、互変異性体または立体異性体、あるいはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項2】
が、HetまたはArを示す、
請求項1に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩、互変異性体または立体異性体、あるいはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項3】
が、(CHArまたはHetを示す、
請求項1または2に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩、互変異性体または立体異性体、あるいはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項4】
が、Hを示す、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩、互変異性体または立体異性体、あるいはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項5】
Hetが、チアゾリル、チオフェニル、フラニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、ベンゾ−1,3−ジオキソリル、インダゾリル、ベンゾ−2,1,3−チアジアゾリルまたはピロロ[2,3−b]ピリジニルを示し、
ここで、複素環がまた、Hal、A、NHおよび/またはNHCHArによって単置換、二置換または三置換されていてもよい、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩、互変異性体または立体異性体、あるいはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項6】
Hetが、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニルまたはテトラヒドロピラニルを示し、
ここで複素環がまた、Aによって単置換または二置換されていてもよい、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩、互変異性体または立体異性体、あるいはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項7】
Aが、1〜6個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、
ここで、1〜5個のH原子が、Fおよび/またはClによって置き換えられていてもよい、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩、互変異性体または立体異性体、あるいはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項8】
、X、X、Xが、各々、互いに独立してCHまたはNを示し、
ここでラジカルX、X、X、Xの1つのみが、Nを示し、
が、H、CN、Hal、Het、A、COOH、COOA、CONH、CONH(CHNAまたはCONH(CHHetを示し、
が、HetまたはArを示し、
が、(CHArまたはHetを示し、
が、Hを示し、
Hetが、チアゾリル、チオフェニル、フラニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、ベンゾ−1,3−ジオキソリル、インダゾリル、ベンゾ−2,1,3−チアジアゾリルまたはピロロ[2,3−b]ピリジニルを示し、
ここで、複素環がまた、Hal、A、NHおよび/またはNHCHArによって単置換、二置換または三置換されていてもよく、
Hetが、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニルまたはテトラヒドロピラニルを示し、
ここで複素環がまた、Aによって単置換または二置換されていてもよく、
Arが、非置換であるか、またはHal、A、OH、OA、CN、NOおよび/またはSOAによって単置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを示し、
Aが、1〜6個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、
ここで、1〜5個のH原子が、Fおよび/またはClによって置き換えられていてもよく、
Halが、F、Cl、BrまたはIを示し、
mが、1、2、3または4を示し、
nが、0、1、2、3または4を示す、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩、互変異性体または立体異性体、あるいはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項9】
、X、X、Xが、各々、互いに独立してCHまたはNを示し、
ここでラジカルX、X、X、Xの1つのみが、Nを示し、
が、H、CN、Hal、Het、A、COOH、COOA、CONH、CONH(CHNAまたはCONH(CHHetを示し、
が、H、HetまたはArを示し、
が、H、(CHArまたはHetを示し、
ここで、ラジカルRまたはRの一方が、≠Hであり、
が、H、A、(CHArまたはHetを示し、
Hetが、チアゾリル、チオフェニル、フラニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、ベンゾ−1,3−ジオキソリル、インダゾリル、ベンゾ−2,1,3−チアジアゾリルまたはピロロ[2,3−b]ピリジニルを示し、
ここで、複素環がまた、Hal、A、NHおよび/またはNHCHArによって単置換、二置換または三置換されていてもよく、
Hetが、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニルまたはテトラヒドロピラニルを示し、
ここで複素環がまた、Aによって単置換または二置換されていてもよく、
Arが、非置換であるか、またはHal、A、OH、OA、CN、NOおよび/またはSOAによって単置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを示し、
Aが、1〜6個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、
ここで、1〜5個のH原子が、Fおよび/またはClによって置き換えられていてもよく、
Halが、F、Cl、BrまたはIを示し、
mが、1、2、3または4を示し、
nが、0、1、2、3または4を示す、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩、互変異性体または立体異性体、あるいはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項10】
以下の群
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

から選択される、請求項1に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩、互変異性体または立体異性体、あるいはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の式Iで表される化合物あるいはそれらの薬学的に使用可能な塩、互変異性体または立体異性体の製造方法であって、
a)式Iで表され、式中RがHを示す化合物の製造のために、式II
【化2】

式中、X、X、X、X、RおよびRは、請求項1において示した意味を有する、
で表される化合物を、式III
−L III
式中、Rは、請求項1において示した意味を有し、
Lは、ボロン酸またはボロン酸エステルラジカルを示す、
で表される化合物と反応させ、
その後、または同時に、Boc基を切断して除去し、
あるいは、
b)式Iで表され、式中RがHを示す化合物の製造のために、式IV
【化3】

式中、X、X、X、X、RおよびRは、請求項1において示した意味を有し、RはHを示す、
で表される化合物を、式V
−L V
式中、Rは、請求項1において示した意味を有し、
Lは、ボロン酸またはボロン酸エステルラジカルを示す、
で表される化合物と反応させ、
あるいは、
c)式Iで表され、式中RがHを示す化合物の製造のために、式VI
【化4】

式中、X、X、X、XおよびRは、請求項1において示した意味を有する、
で表される化合物を、式VII
−C≡C−R VII
式中、RおよびRは、請求項1において示した意味を有する、
で表される化合物と反応させ、
かつ/または
式Iで表される塩基または酸を、その塩の1種に変換する
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の式Iで表される少なくとも1種の化合物、および/または、それらの薬学的に使用可能な塩、互変異性体および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物、ならびに、任意に賦形剤および/または補助剤を含む、医薬。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物あるいはそれらの薬学的に使用可能な塩、互変異性体または立体異性体、あるいはすべての比率でのそれらの混合物の、腫瘍、癌、腫瘍の形成、成長および増殖、動脈硬化、眼の疾患、例えば年齢によって誘発された黄斑変性、脈絡膜血管新生および糖尿病性網膜症、炎症性疾患、関節炎、血栓症、線維症、糸球体腎炎、神経変性、乾癬、再狭窄、創傷治癒、移植片拒絶、代謝疾患および免疫系の疾患、自己免疫疾患、肝硬変、糖尿病および血管の疾患を処置するための医薬の調製のための使用。
【請求項14】
処置するべき疾患が固形腫瘍である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
固形腫瘍が、扁平上皮、膀胱、胃、腎臓、頭頸部、食道、子宮頸部、甲状腺、腸、肝臓、脳、前立腺、尿生殖路、リンパ系、胃、喉頭および/または肺の腫瘍の群から発生する、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
固形腫瘍が、単球性白血病、肺腺癌、小細胞肺癌、膵癌、神経膠芽腫および乳癌の群から発生する、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
固形腫瘍が、肺腺癌、小細胞肺癌、膵癌、神経膠芽腫、結腸癌および乳癌の群から発生する、請求項14に記載の使用。
【請求項18】
処置するべき疾患が血液および免疫系の腫瘍である、請求項13に記載の使用。
【請求項19】
腫瘍が、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病および/または慢性リンパ性白血病の群から発生する、請求項18に記載の使用。

【公表番号】特表2012−506389(P2012−506389A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532512(P2011−532512)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006911
【国際公開番号】WO2010/046013
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】