説明

アシストグリップ

【課題】従来から公知の後輪フェンダー部に設けられたアシストグリップは操縦部のシートの両サイドに配設され、オペレータは座ったまま一旦腰を上げることも無く自然に掴むことができ、トラクタが不意に姿勢を崩しても身を守る姿勢を保持するためのグリップとして有効である。しかし操縦部への乗降に際しては、片手で前記アシストグリップを握り、他方の手でハンドルを握る場合が多い。この時ハンドルは固定されていないため、乗降時に身体の体重をかけたりするとハンドルが回転し、思わぬ方向へ身体が倒れたりすることがあった。そこで、オペレータが容易に操縦部へ乗降するためのアシストグリップの提供を課題とする。
【解決手段】トラクタ1の操縦部4に配置するステアリングハンドル11前方のダッシュボード10に配置するアシストグリップ31であって、該アシストグリップ31を上下高さ変更可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両のアシストグリップに関し、特に、トラクタ等のステアリングハンドル前方のダッシュボードに配設される、アシストグリップの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からトラクタ等の作業車両においては、オペレータがステップに足を載せて操縦部へ搭乗する際に、或いは、操縦部から降りる際に、身体を安定させ、容易に乗降できるように握る補助グリップとして、後輪のフェンダー上部に設けられたアシストグリップが公知となっている。(例えば特許文献1を参照。)
【特許文献1】実公平7−34781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のアシストグリップは、操縦部の座席シートの両サイドに配設されるため、例えばオペレータは、座った状態から一旦腰を上げることも無く、自然に掴むことができる。従って、トラクタが不意に姿勢を崩した場合等に、自身の身を守るべく姿勢を保持するためのグリップとしても有効である。
しかし操縦部への乗車、または降車に際しては、片手で前記アシストグリップを握り、他方の手でハンドルを握る場合が多い。この時ハンドルは固定されていないために、乗降時に身体の体重をかけたり、力を入れたりするとハンドルが回転してしまい、思わぬ方向へ身体が倒れたり、急に捩じられたりすることがあった。
そこで本発明においては、オペレータが、容易に操縦部へ乗車、または降車するための、アシストグリップの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
すなわち、請求項1においては、トラクタの操縦部に配置するステアリングハンドル前方のダッシュボードに配置するアシストグリップであって、該アシストグリップを上下高さ変更可能に構成したものである。
【0006】
請求項2においては、前記アシストグリップの基部を、機体側に設けた固定支持体に上下摺動自在に挿入し、該固定支持体と前記基部との間に固定手段を配置したものである。
【0007】
請求項3においては、前記固定手段は、前記固定支持体に設けた貫通孔と、該貫通孔に合わせて前記アシストグリップの基部に設けた複数の貫通孔と、両貫通孔に挿入可能な締結部材より構成したものである。
【0008】
請求項4においては、前記アシストグリップを側面視前低後高状に傾斜して設け、ステアリングハンドルの前端に対して接近・離間するように、該アシストグリップの傾斜角度を保ったまま上下高さを変更するように構成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、オペレータの体格やアシストグリップを使用する際の持ち具合に合わせてアシストグリップの高さを調節することができ、操縦部への乗降がスムースにできるようになる。
【0011】
請求項2においては、アシストグリップを上下に摺動して固定するので、その高さ調整が容易にできる。また、アシストグリップの交換も容易にできる。
【0012】
請求項3においては、アシストグリップの高さ調整は締結部材の抜き差しで容易に高さ調節して固定することができ、固定手段も簡単で安価に構成できる。
【0013】
請求項4においては、アシストグリップ上端部の位置を斜め前下方、あるいは、斜め後上方に移動することができるため、オペレータが着座姿勢から立ち上がる際には、アシストグリップの水平部分を握ることになるが、オペレータの体格や好みに応じて最も適した高さに調節することができる。そして、該アシストグリップの後方に配置されるステアリングハンドルとの距離が、アシストグリップの上下高さの変更とともに変更できるため、ステアリングハンドルをチルト(傾斜)させた場合でも、両者の間隔を調節することができ、アシストグリップが邪魔になるようなことがなく、オペレータの好みや使い勝手に応じて最適な位置に調整をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る、トラクタの全体的な構成を示した側面図、図2は実施例1のアシストグリップの側面図である。また、アシストグリップの詳細図として、図3は実施例1のアシストグリップの取付け図、図4は実施例2のアシストグリップの側面図、図5は実施例2のアシストグリップの取付け図である。更に、図6は本発明におけるアシストグリップの正面図、図7は同じく平面図、図8は本発明におけるアシストグリップと固定支持体との固定構造を示す図である。
【0015】
[全体構成]
まず図1により、トラクタ1の全体構造について説明する。
トラクタ1は、エンジンフレーム2の上部前側にエンジン部3が配設され、その後部に操縦部4が配設されている。前記エンジンフレーム2の前下部には、フロントアクスルケース5が左右揺動自在に配設され、該フロントアクスルケース5に軸支された前車軸(図示せず。)の両端には、前輪6・6が軸支されている。一方、前記エンジンフレーム2の後部には、ミッションケースが配設され、該ミッションケースの後部両側には、リアクスルケースに軸止された後車軸が設けられている。そして、該後車軸の両端部には、後輪7・7が軸支されている。
【0016】
前記エンジン部3において、エンジンフレーム2上にはエンジン8やラジエータやバッテリが搭載されており、これらはボンネット9により覆われている。該エンジン8からの動力が、前記ミッションケース内の変速装置や駆動伝達機構等を介して、前輪6・6や後輪7・7やPTO軸等に伝達される。
【0017】
前記操縦部4はエンジン部3の後方に位置し、トラクタ1の略中央部から後部にかけて配設される。
前記ボンネット9の後方には、ダッシュボード10が配設され、その内部には、燃料タンク等が収納されている。また、ダッシュボード10の上後部には、ハンドル軸を挿通するための開口部が設けられ、該ハンドル軸の上端にステアリングハンドル11が固設されている。また、該ステアリングハンドル11の前方には、回転数計や燃料計や警報ランプ等を配備した表示パネル12が配設され、該表示パネル12の前方、すなわち、前記ダッシュボード10の上前部には、本発明に係るアシストグリップ(前アシストグリップ)31が固設されている。また、前記ダッシュボード10の後方には、座席シート13が配設され、該座席シート13の両側部には、アシストグリップ(横アシストグリップ)16・16が配置されている。該座席シート13とダッシュボード10の間の下部には、ステップ14が設けられており、これらステアリングハンドル11、座席シート13等により、操縦部4が構成されている。
なお、座席シート13の後方には、安全フレーム15が立設されている。
【0018】
ボンネット9内後方には、エンジンフレーム2から上方に、ラジエータブラケット17(図2、および、図4を参照。)が立設されており、該ラジエータブラケット17の上部より機体後方に向かって、固定部材となるステー18が固設されている。該ステー18の左右両側には後述する嵌合部18a・18aが一体的に形成され、固定支持体41の螺子部42を挿通するための孔が開口されている。
【実施例1】
【0019】
[アシストグリップ]
次に、本発明に係るアシストグリップ31の実施例1について、図2、および、図3を用いて説明する。なお、図2、および、図3に示す矢印Aの向きを前方として、以下詳述する。
トラクタ1の操縦部4に配置した、ステアリングハンドル11前方のダッシュボード10にはアシストグリップ31が配置されており、該アシストグリップ31は上下高さ変更可能に構成されている。つまり、該アシストグリップ31は、樹脂製素材(ダッシュボード10と同素材。)で成形された一体型の正面視「門型」形状に構成され、ダッシュボード10の上面部に配設される。すなわち、前記アシストグリップ31の左右両側下部(基部)はステアリングハンドル11の前方に取り付けられており、ダッシュボード10(またはボンネット後部)の上面部(または上側面部)において、後述の固定支持体41を介して取付けられる。そして、この固定支持体41より緩やかに操縦部4側へ傾倒しながら、上方向へと(斜め上後方)延出される。つまり、アシストグリップ31はダッシュボード10上において側面視で前低後高状に上後方へ傾斜するように配置している。このアシストグリップ31の傾斜は前記表示パネル12の上部カバーの傾斜に合わせることで違和感なく意匠性を向上させている。こうして、操縦部4へ左右両側から乗車する場合に、ステアリングハンドル11の前部に位置するアシストグリップ31の側部31aを容易に握れるようにしている。
【0020】
そして、アシストグリップ31の上側部はステアリングハンドル11の最上端部と、略同一高さの位置まで達した後、左右両側から中央へ緩やかに上方に変化させ、継ぎ目無く連結され、正面視略逆U字状に形成される。換言すると、ステアリングハンドル11の上端の略前方にアシストグリップ31の上端が位置するように構成している。こうして、アシストグリップ31の左右中央部の上端はステアリングハンドル11の上端よりも高くなるように配置し、また、アシストグリップ31の左右幅はステアリングハンドル11の左右幅より長くダッシュボード10の左右幅と略同じ、或いは、短く構成して、アシストグリップ31を上方や側方より容易に握れるようにするとともに、該アシストグリップ31と安全フレーム15により操縦者の安全空間を形成している。
【0021】
また、アシストグリップ31は表示パネル12上方を跨いで左右方向に配置され、図6に示すように、正面視において、アシストグリップ31の内側と表示パネル12の外周との間に所定の空間を形成して、その間に指が入り、確実に握れるようにしている。
【0022】
また、図7に示すように、アシストグリップ31の上部は平面視において、前方に向かって凸とする緩やかな円弧状に構成しており、ステアリングハンドル11と略同心円状として、アシストグリップ31とステアリングハンドル11との間に所定の空間を形成して、ハンドル操作の邪魔にならないようにし、かつ、アシストグリップ31の上部を上から容易に握れるようにしている。
【0023】
アシストグリップ31の断面形状は略矩形の形状とし、鋭角部を排除した、曲線による構成を基本とするが、これに限定されるものでは無く、例えば、部材の剛性や、オペレータの握り易さ等の理由から、円形、多角形、または独特の形状にて構成しても良い。
【0024】
なお、アシストグリップ31の素材については、本実施例の如く樹脂製素材に限定されるものでは無く、例えば、金属素材等を用いて形成しても良い。また、構成部品についても、本実施例の如く一体型に限定されるものでは無く、例えば、両側部と水平部を別部品で構成し、組立性の容易化を図る構成としても良い。
【0025】
アシストグリップ31の左右両側下部には、断面視矩形からなる基部19・19が設けられる。前記基部19はアシストグリップ31の中途部断面積に比べてやや小さな断面形状からなり、側面視における前記アシストグリップ31の傾斜形状に合わせて、前斜下方に向かって延出して設けられる。
【0026】
前記アシストグリップ31の基部19は、機体側のステー18上に立設した、該基部19と同形状のパイプ状に構成した固定支持体41に上下摺動自在に挿入し、該固定支持体41と前記基部19との間に固定手段を配置している。該固定手段は、前記固定支持体41に設けた貫通孔41bと、該貫通孔41bに合わせて前記アシストグリップ31の基部19に設けた複数の貫通孔19a・19a・・・と、両貫通孔19a・41bに挿入可能な締結部材である固定ピン43により構成している。
【0027】
つまり、前記基部19の側面には、左右方向に貫通する複数の貫通孔19a・19a・・・が設けられている。前記貫通孔19a・19a・・・は2個の貫通孔19a・19aを一組として、基部19の延出方向に対して直交方向に並列し、かつ、該延出方向に向かって一定間隔を空け複数組設けられており、アシストグリップ31は該貫通孔19aを用いて、後述の固定支持体41と固定される。
【0028】
なお、前記貫通孔19a・19a・・・は1個の貫通孔19aを基部19の延出方向に沿って複数配置してもよい。また、前記基部19は中空構造、中実構造のいずれを用いて形成してもよく、また、本実施例1に示すように矩形の断面形状に限定されるものではなく、例えば、円形断面からなる棒部材から形成しても良い。
【0029】
[固定支持体]
次に、本発明に係る固定支持体41の実施例1について、図2、および、図3を用いて説明する。
固定支持体41は断面視矩形状の鋼管で構成した本体41aの下面に螺子部42が下方に突設して形成され、該本体41aは斜め後上方に向かって延出して設けられる。すなわち、該本体41aの底部は板部材41cを水平方向に設けて塞がれており、該板部材41cの下面からは複数の螺子部42・42が垂下して設けられている。
【0030】
一方、前述のダッシュボード10内に設けたステー18の左右端部には、上面、および、前面を開口した直方体状の凹部が設けられており、該凹部の底面には複数の貫通孔44・44が設けられている。
すなわち、ボンネット9内後部には、エンジンフレーム2からラジエータブラケット17が立設されており、該ラジエータブラケット17の上部より機体後方に突出して、取付部となるステー18が一体的に形成されている。該ステー18の左右両側には、上部が開口された略筒状の嵌合部18aが一体的に形成され、該嵌合部18aの内部には前記螺子部42・42を挿通するための貫通孔44・44が上下方向に開口されている。つまり、固定支持体41の形状に合わせた略筒状の嵌合部18aが、ラジエータブラケット17上のステー18の左右両側上に一体的に構成されているのである。
【0031】
前記貫通孔44・44は固定支持体41下面の螺子部42・42の本数にあわせて開口されており、本実施例においては一箇所の嵌合部18aにつき前後二箇所の貫通孔44・44が開口されている。また、本実施例では後面及び左右両側面に板状部材を立設して嵌合部18aを形成しているが、前記ステー18のを大きくとり、嵌合部18aを刳り貫いて形成することも可能である。
【0032】
このような構造により、ステー18に固定支持体41を嵌合して固定している。すなわち、固定支持体41を嵌合部18aの凹部内に挿入すると同時に、固定支持体41の螺子部42がステー18に設けられた貫通孔44に挿入され、下方より螺子部42にナット20を螺装して固定している。
【0033】
また、前記嵌合部18a内の左右両側面間の幅は、固定支持体41の左右方向の幅寸法に比べてほぼ同一(僅かに大きい)に構成し、固定支持体41を嵌合部18a内に挿入するため、前記ステー18と固定支持体41は互いに側面において面接触にて荷重を支えることができ、例えば、オペレータが操縦部4へ搭乗・降車する際や、座席シート13上での着座姿勢から立ち上がる際に生じる横荷重、或いは、障害物との接触による不意の横方向への衝撃荷重が加えられても、十分に支えることができるため、変形することもないのである。
【0034】
前記本体41aの上端部側面には左右方向に貫通する2個の貫通孔41b・41bが設けられている。該貫通孔41b・41bは本体41aの延出方向に対して直交方向に並列して設けられており、上述した、アシストグリップ31の基部19に設けられる一組の貫通孔19a・19aと同じ間隔を有する。なお、前記本体41aの全体をダッシュボード10内に潜り込ませて、貫通孔41b・41bの位置をダッシュボード10内に配置する場合には、外観を向上でき、また、前記本体41aの上端部の一部をダッシュボード10より突出させて、貫通孔41b・41bをダッシュボード10の上面より上方に配置する場合には、ダッシュボード10を外すことなく後述する固定ピン43・43を容易に付け替え可能となり、高さ調節も容易に行える。
【0035】
このような構造を有することにより、アシストグリップ31は斜め上下方向に高さを変更可能としている。
すなわち、アシストグリップ31を固定支持体41に挿入し、基部19に設けられる複数組の貫通孔19a・19aのいずれか一つの組と本体41aに設けられる貫通孔41b・41bを所望の高さの位置で一致させ、該貫通孔19a・19aと貫通孔41b・41bに固定部材となる固定ピン43・43、または、ボルト等を挿入して抜け止め固定することで、アシストグリップ31を固定支持体41に固定することができる。
【0036】
このように、アシストグリップ31を機体本体側に固定される固定支持体41に対して、斜め後上方、または、斜め前下方に摺動して、貫通孔の位置を合わせて固定することができるので、容易に着脱できるとともに、アシストグリップ31は座席シート13側、或いは、ステアリングハンドル11側に近づけたり離したりした状態で固定することができる。
【0037】
また、固定支持体41を側面視にて斜後上方に延出して設け、前記アシストグリップ31の基部19を該固定支持体41に沿って斜め上下摺動自在に挿入することで、ステアリングハンドル11との距離を変更可能に構成したことで、アシストグリップ31を握って乗降する際の、オペレータの体格等に合わせてアシストグリップ31の位置を調整することができ、さらに、オペレータが座席シート13での着座姿勢から立ち上がろうとする場合にも、オペレータの体格や好みに応じて、アシストグリップ31とステアリングハンドル11との距離を容易に調整することができるのである。
【0038】
また、チルト機構を具備するステアリングハンドル11においては、該ステアリングハンドル11を前方または後方に倒して角度調整を行った場合、アシストグリップ31とステアリングハンドル11との間の距離が変更されるが、この場合においても、オペレータは自分の体格や好みに応じて、最適な位置にアシストグリップを調整することができる。
【実施例2】
【0039】
[アシストグリップ]
また、本発明に係るアシストグリップは、実施例1に示すように、その傾斜角度を保ったまま、傾斜方向と平行に摺動させて上下方向に調整可能とするのに対して、実施例2においては、その傾斜角度を保ったまま鉛直方向に摺動させて、上下方向に高さ調節可能な構造とすることもできる。この実施例2について、図4、および、図5を用いて説明する。なお、図4、および、図5に示す矢印Aの向きを前方として、以下詳述する。
アシストグリップ33は、前記実施例1の根元部の角度が異なるだけで、その他の構成は同じである。すなわち、アシストグリップ33の左右両側下部には、基部25・25が直下方向に垂下して設けられ、該基部25の上端よりアシストグリップ本体が前記同様に斜め後方に延設される。
[固定支持体]
【0040】
また、固定支持体46は、前記実施例1の本体41aの角度が異なり、その他の構造は同じである。つまり、板部材46cの下面からは複数の螺子部47・47が垂下して設けられ、板部材46cと本体46aは直交している。すなわち、固定支持体46は断面視矩形を有する本体46aの底部において板部材46cで塞がれ、該板部材46cの下面から螺子部47・47が垂設され、上面に本体46aが立設され、本体46aの長手方向と螺子部47は平行に配設される。
【0041】
ステー18の左右両端部に設けられた嵌合部18a・18aは固定支持体46に合わせて鉛直方向に形成されて、底面に貫通孔44が開口されている。
固定支持体46の上端部には左右方向に貫通する2個の貫通孔46b・46bが設けられている。前記貫通孔46b・46bは固定支持体46の延出方向に対して直交方向に並列して設けられており、上述した、アシストグリップ33の基部25に設けられる一組の貫通孔25a・25aと同じ間隔を有する。
【0042】
こうして、前記同様に、基部25を本体46aに挿入し、所望の高さで貫通孔の位置を合わせて、固定ピン43・43を用いて固定することができるのである。
【0043】
このように、前記アシストグリップ33を上下(鉛直)方向に摺動して固定し、高さ調節可能に構成することで、オペレータの体格に応じてアシストグリップ33を最も適切な高さに調整することが可能となり、無理な操縦(作業)姿勢を強いられることもない。
【0044】
[固定構造]
また、上述のアシストグリップ31(33)の高さ調節構造は、これに限定されるものではなく、以下に示す構造とすることも可能である。
【0045】
すなわち、図8の(イ)に示すように、固定支持体48の本体48aは、アシストグリップ31(33)の基部19(25)の形状に合わせて、該アシストグリップ31(33)の基部19(25)を挿入できる角パイプまたは丸パイプより構成している。
該本体48aの側面には、固定手段49が配設されている。該固定手段49は摺動体となるロックピン50と付勢バネ51と支持ケース52を備える。支持ケース52はパイプ状に構成して、支持ケース52の軸心部の孔を本体48aの側面に開口したピン孔48bに一致させて該本体48aに固設し、本体48aの軸心と支持ケース52の軸心が直交するように配設している。該支持ケース52と前記ピン孔48bに貫通してロックピン50が摺動自在に挿入される。該ロックピン50の中途部には止め輪50bを外嵌し、該止め輪50bと支持ケース52の外側端との間のロックピン50上に付勢バネ51を外嵌している。
【0046】
このような構造を具備することで、ロックピン50は付勢バネ51によって、止め輪50bを介して常に本体48aの軸心方向へと付勢されることとなる。また、前記ロックピン50の外側端には把手50aを設けて容易にロックピン50を摺動操作できるようにしている。なお、支持ケース52の外側端部に段部を形成して、ロックピン50を外側に引いた状態で回転して、板状に構成した把手50aの基部を段部に係止して、ロック解除した状態に保持できるように構成することもできる。
【0047】
一方、アシストグリップ31(33)の基部19(25)外周面には、軸心方向に一定間隔を開けて複数の挿入孔(または凹部)54・54・・・が設けられている。該挿入孔54は前記ロックピン50の先端を挿入可能な大きさとしている。
【0048】
このような構成において、ロックピン50を外方向に摺動させて、ロックピン50の先端を挿入孔54から抜き出すことにより、アシストグリップ31(33)の基部19(25)を本体48aに対して上下に摺動自在となり、ロック解除状態となる。この状態でアシストグリップ31(33)を所望の高さにセットし、ロックピン50を放すと付勢バネ51の付勢力により先端が挿入孔54に挿入されて、ロックしてその高さを保持することができるのである。
【0049】
従って、前記固定手段49は、前記アシストグリップ31(33)の基部19(25)の外周に長手方向に複数設けた凹部(挿入孔54)と、前記固定支持体41(46)に取り付けて前記挿入孔54に嵌入可能な摺動体(ロックピン50)より構成することにより、アシストグリップ31(33)の高さ調整についてはロックピン50を摺動させることで、容易にアシストグリップ31(33)を上下方向に摺動させることができる。また、ロックピン50を挿入孔54に嵌入することで容易、かつ、確実に固定することができるため、簡単で安価に構成することができる。
【0050】
また、高さ調節するために、図8の(ロ)に示すように、固定支持体48の本体48aにおいて、該本体48aの上端部(先端部)にクランプ機構55を設ける構成とすることも可能である。
クランプ機構55は内径寸法を前記本体48aの外形寸法と略同一とするクランプ部材56と、該クランプ部材56の内径寸法を縮小して締め付ける締付ロッド57等から構成される。
【0051】
クランプ部材56は板材を平面視略「C字」に形状されており、その開放端部から外側(半径方向)に向かって締付片56a・56aが延出されている。該締付片56a・56aの中央部には、軸心と直交して貫通孔が設けられており、該貫通孔に締付ロッド57が挿入される。
【0052】
該締付ロッド57は長手方向の一側が螺子部として前記貫通孔に挿入して先端側にナットを螺装している。該ナットは締付片56aに固設してもよく、締付片56aの貫通孔に雌螺子を形成する構成であってもよい。締付ロッド57の他側は前記貫通孔よりも大径のロッドとして、「L字」形状のハンドル58を取り付けている。該ハンドル58を設ける代わりに二面加工、あるいは、六角形状等として、工具(スパナ等)を用いて締め付ける構成とすることも可能である。
【0053】
一方、前記本体48aの上端部(先端部)は、先端側から所定長さの複数のスリット48c・48c・・・が設けられている。
【0054】
このような構成において、クランプ部材56を本体48aの先端部に外嵌し、該本体48aにアシストグリップ31(33)の基部19(25)を挿入する。
そして、アシストグリップ31(33)を所望の高さに位置させた状態で、ハンドル58を締付方向に回動することにより締付片56a・56aの間隔が狭められて、クランプ部材56の内径寸法が縮小され、本体48a上部の直径も縮小されて、アシストグリップ31(33)の基部19(25)が締付固定されて、アシストグリップ31(33)は所望の高さに保持される。
【0055】
また、図8の(ハ)に示すように、アシストグリップの高さを調節するために、螺子部材により直接アシストグリップ31(33)の基部19(25)を締付固定することも可能である。
すなわち、本体48aの側面に螺子孔48dを開口して、その螺子孔48dに一致させてナット45を固設し、本体48aの内径部にアシストグリップ31(33)の基部19(25)を挿入して所望の高さとしたうえで、前記ナット45に摺動体となるボルト59を捩じ込むことで、アシストグリップ31(33)の基部19(25)を締付固定するのである。なお、ボルト頭部を蝶ボルトとすることで、工具を必要とせず手動で容易に回動して締め付けることができる。また、ボルト59先端が当たる基部19(25)側面に所定間隔を開けて長手方向に複数の凹部を形成しておくことにより、確実に高さを保持することが可能となる。
このような固定方法を用いることにより、アシストグリップ31(33)をオペレータが所望する取付け高さに容易に保持することができる。
【0056】
また、図8の(ニ)に示すように、ラックとピニオンによりアシストグリップの高さを調節する構成とすることもできる。
即ち、左右のアシストグリップ31(33)の基部19(25)において、該基部19(25)の延出方向側面にラック61を形成し、一方、固定支持体48の本体48a外側にピニオン62を回転自在に配置して前記ラック61と噛合させる。
前記ピニオン62はウオームホイールを兼用しており、該ピニオン62にウオーム65が噛合されている。つまり、ラック61とウオーム65の間にピニオン62が配置される。該ウオーム65の軸心延長上にハンドル等の操作部材66が連設される。
【0057】
このような構成において、操作部材66を回転操作すると、ウオーム65が回転され、該ウオーム65の回転によりピニオン62が回転され、該ピニオン62の回転により、ラック61が上または下方に摺動され、アシストグリップ31(33)の高さを調整することが可能となる。
なお、前記操作部材66にモータなどのアクチュエータを連動連結することで、スイッチ等の操作により、アシストグリップ31(33)の高さを容易変更できる構成とすることもできる。
【0058】
このように、前記固定支持体41・46・48は任意の高さでアシストグリップ31(33)の基部を保持する機構を具備することが可能なため、オペレータがアシストグリップ31(33)の取付け高さを所望の位置に調整した後には、外部から不意な衝撃を受けた場合にも位置ずれ等を起こすことなく、確実にアシストグリップ31(33)の取付け高さを保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例に係る、トラクタの全体的な構成を示した側面図。
【図2】実施例1のアシストグリップの側面図。
【図3】実施例1のアシストグリップの取付け図。
【図4】実施例2のアシストグリップの側面図。
【図5】実施例2のアシストグリップの取付け図。
【図6】本発明におけるアシストグリップの正面図。
【図7】同じく平面図。
【図8】本発明におけるアシストグリップと固定支持体との固定構造を示す図。
【符号の説明】
【0060】
1 トラクタ
4 操縦部
10 ダッシュボード
11 ステアリングハンドル
12 表示パネル
17 ラジエータブラケット
18 ステー
20 ナット
31 アシストグリップ
41 固定支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタの操縦部に配置するステアリングハンドル前方のダッシュボードに配置するアシストグリップであって、該アシストグリップを上下高さ変更可能に構成したことを特徴とするアシストグリップ。
【請求項2】
前記アシストグリップの基部を、機体側に設けた固定支持体に上下摺動自在に挿入し、該固定支持体と前記基部との間に固定手段を配置したことを特徴とする請求項1に記載のアシストグリップ。
【請求項3】
前記固定手段は、前記固定支持体に設けた貫通孔と、該貫通孔に合わせて前記アシストグリップの基部に設けた複数の貫通孔と、両貫通孔に挿入可能な締結部材より構成したことを特徴とする請求項2に記載のアシストグリップ。
【請求項4】
前記アシストグリップを側面視前低後高状に傾斜して設け、ステアリングハンドルの前端に対して接近・離間するように、該アシストグリップの傾斜角度を保ったまま上下高さを変更するように構成したことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のアシストグリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−35183(P2009−35183A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202355(P2007−202355)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】