説明

アジリジン架橋剤を伴うアクリル感圧接着剤

ここでは、酸官能性(メタ)アクリレートコポリマー及びアジリジン架橋剤を含む予備接着剤組成物が説明され、これが架橋されると、感圧接着剤及び感圧接着剤物品が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧接着剤、及びそれから調製されたテープ製品に関する。このテープは、接着と粘着特性との全体的バランス、及び優れた耐荷重性を示すことを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
感圧テープは家庭及び仕事場において実質的にどこにでも存在する。その最もシンプルな構成においては、感圧テープは接着剤及び裏材を備え、全体的構造は使用温度で粘着性があり、固着を形成するために中程度の圧力を使うだけで種々の基板に付着する。こうした方法で、感圧テープは完全で自己充足型の接着システムを構成する。
【0003】
感圧テープ協議会によると、感圧接着剤(PSA)は、次の特性を有することが知られている:(1)強力かつ恒久的粘着性、(2)指圧以下での接着性、(3)被着体への十分な保持力、及び(4)被着体からきれいに除去するための十分な粘着力。PSAとして良好に機能することが分かっている材料としては、必須の粘弾性特性を示し、粘着、剥離接着、及び剪断保持力の所望のバランスをもたらすように設計及び処方されたポリマーが挙げられる。PSAは、通常は、室温(例えば、20℃)で粘着性であることを特徴とする。PSAは、べたっとしている、又は表面に付着することだけから、組成物を採用するわけではない。
【0004】
これらの要求事項は概ね、A.V.Pocius in Adhesion and Adhesives Technology:An Introduction,2nd Ed.,Hanser Gardner Publication,Cincinnati,OH,2002において説明されているタック、接着(剥離強度)、及び粘着(剪断保持力)を個々に測定するために設計された試験によって評価される。これらの測定結果は全体として、PSAを特徴付けるためにしばしば使用される特性のバランスを構成している。
【0005】
近年の感圧テープの用途の拡大に伴い、性能要件はますます厳しくなっている。例えば、当初は室温での中程度の荷重を支えるための適用を目的としていた剪断保持力は、操作温度や荷重に関して数多くの適用に対応するために大幅に増強した。いわゆる高性能感圧テープは、高温で10,000分、荷重を支えることができるものを指す。剪断保持力の増強は、通常PSAを架橋することで達成されるが、その際、高度の粘着及び接着を保持し、前述の特性バランスを保持するためには、相当の注意を払う必要がある。
【0006】
アクリル接着剤においては2つの主な架橋メカニズムが存在する。即ち、他のモノマーを伴う多官能エチレン性不飽和基のフリーラジカル共重合、及びアクリル酸などの官能性モノマーによる共有架橋又はイオン架橋である。もう1つの方法は、共重合性ベンゾフェノンなどの紫外線架橋剤、又は多官能性ベンゾフェノン及びトリアジンなどの後添加光架橋剤を使用するものである。これまで、例えば多官能性アクリレート、アセトフェノン、ベンゾフェノン及びトリアジンなどのような、様々な異なる材料が架橋剤として使用されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述の架橋剤は、1つ以上の次のような欠点をもっている:高揮発性、特定のポリマー系との不適合性、腐食性又は毒性副産物の生成、好ましくない色の生成、架橋反応を開始するための別の光能動性化合物の必要性、及び高酸素感受性。
【課題を解決するための手段】
【0008】
簡単に言えば、本開示は、酸官能性(メタ)アクリレートコポリマー、及び水溶性又は分散性のアジリジン架橋剤を含む予備接着剤組成物を提供する。別の一態様では、本開示は、酸官能性(メタ)アクリレートコポリマーの水性エマルジョンを含む接着性エマルジョン、及び感圧接着剤を形成するためにコーティングされ乾燥され得るアジリジン架橋剤を提供する。別の関連した実施形態では、本開示は、酸官能性(メタ)アクリレートコポリマーの反応生成物の水性エマルジョンを含む接着性エマルジョン、及び感圧性接着剤を形成するためにコーティングされ乾燥され得るアジリジン架橋剤を提供する。
【0009】
本開示の感圧接着剤、架橋組成物は、タック、剥離接着、剪断保持力の所望のバランスを提供し、更にダルキスト基準に準拠しており、即ち、適用温度(典型的には室温)の接着剤の弾性率は、1Hzの周波数で3×10dynes/cm未満である。
【0010】
多くの実施形態において、アジリジン架橋剤の使用は、従来の(メタ)アクリル接着剤架橋剤の使用に比べて数多くの利点をもたらす。これらの利点は、架橋可能組成物の酸素に対する感度の低下、毒性若しくは腐食性副産物、又は最終製品の変退色の発出の回避、及び硬化後の架橋添加剤としての使用可能性のうちの1つ以上を含む。アジリジン架橋剤は、合成の容易さ及び低コストの出発原料という点で、前述された剤よりも更なる利点を有する。更に、接着剤エマルジョンは、接着剤コポリマー、又はそれから導かれる接着性物品の調製において揮発物有機溶媒に依存しない。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示は再生可能な資源に由来する接着剤組成物を提供する。特に、本発明は、植物性材料に部分的に由来する接着剤組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、基材又は裏材も再生可能資源に由来する接着剤物品を更に提供する。石油及び付随する石油派生製品の価格上昇によって、多くの接着剤製品の価格が高騰し、供給が不安定になった。石油系原材料の全て又は一部を、植物などの再生可能な資源に由来するものに置き換えることが望ましいが、それはこのような材料が比較的安価になり、したがって経済的にかつ社会的に有益だからである。したがって、このような植物由来材料の必要性は、ますます重要になった。
【0012】
本出願の「予備接着剤」は、官能性酸−官能性(メタ)アクリレートコポリマー及び感圧性接着剤を形成するために引き続いて架橋され得るアジリジン架橋剤を含むエマルジョンを指す。本出願においては、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルの両方を含む。
【0013】
環境的な理由により、コーティングプロセスにおける揮発性有機溶媒(VOC)の使用を止め、環境によりやさしい水系材料を使用する方向への要求があるため、本発明では、上記の水性エマルジョンを含む水性接着剤を提供する。水性系は、コスト、環境、安全、及び規制の理由で望ましい。水性系は、容易にコーティングすることができ、乾燥したとき、感圧接着剤をもたらす。他の実施形態では、接着剤コポリマーはシロップ重合法によって調製してよく、これは1つ以上の溶媒モノマー内の溶質ポリマーの溶液を含み、それを揮発性有機溶媒を使わずにコーティングし、重合することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、架橋されると感圧接着剤及び感圧接着剤物品を提供する、酸官能性(メタ)アクリレートコポリマー及びアジリジン架橋剤を含む予備接着剤組成物を提供する。
【0015】
酸官能性(メタ)アクリレート接着剤コポリマーの調製に有用な(メタ)アクリレートエステルモノマーは、非三級アルコールの単量体(メタ)アクリルエステルであり、そのアルコールは1〜14個の炭素原子、好ましくは平均で4〜12個の炭素原子を含有する。
【0016】
(メタ)アクリレートエステルモノマーとして用いるのに好適なモノマーの例としては、非第三級アルコール、例えばエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、イソオクチルアルコール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,7−ジメチルヘプタノール、3,7−ジメチルヘプタ3−エネオール(3,7-dimethylhept3-eneol)、1−デカノール、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール、シトロネロール、ジヒドロシトロネロールなどと、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれかとのエステルが挙げられる。いくつかの実施形態において、2つ以上の異なる(メタ)アクリレートエステルモノマーの組み合わせが好ましいが、好ましい(メタ)アクリレートエステルモノマーは、ブチルアルコール若しくはイソオクチルアルコール又はこれらの組み合わせと(メタ)アクリル酸とのエステルである。いくつかの実施形態では、好ましい(メタ)アクリレートエステルモノマーは、2−オクタノール、シトロネロール、ジヒドロシトロネロールなどの再生可能な資源に由来するアルコールを伴う(メタ)アクリル酸のエステルである。
【0017】
(メタ)アクリレートエステルモノマーは、ポリマーを調製するのに使用される100部の総モノマー含量を基準として85〜99重量部の量で存在する。好ましくは、(メタ)アクリレートエステルモノマーは、100部の総モノマー含量を基準として90〜95重量部の量で存在する。
【0018】
ポリマーは更に、酸官能性モノマーを含み、ここで酸官能基は、本質的にカルボン酸などの酸であるか、又はその部分がアルカリ金属カルボン酸塩などの塩であってもよい。有用な酸官能性モノマーとしては、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和スルホン酸、エチレン性不飽和ホスホン酸、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。このような化合物の例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、オレイン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられる。
【0019】
それらの入手可能性のため、酸官能性コポリマーの酸官能性モノマーは一般に、エチレン性不飽和カルボン酸類、即ち(メタ)アクリル酸から選択される。更に強い酸が望ましい場合、酸性モノマーとして、エチレン性不飽和スルホン酸及びエチレン性不飽和ホスホン酸が挙げられる。酸官能性モノマーは一般に、100重量部の総モノマーを基準として1〜15重量部、好ましくは1〜5重量部の量で使用される。
【0020】
接着剤コポリマーは、1つ以上の極性モノマーを更に含むことができる。コポリマーの調製に有用な極性モノマーは、油溶性及び水溶性の両方の性質をある程度有し、エマルジョン重合中の水相と油相との間に、極性モノマーの分配をもたらす。有用な極性モノマーは、非酸官能性である。
【0021】
好適な極性モノマーの代表的な例としては、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート;N−ビニルピロリドン;N−ビニルカプロラクタム;アクリルアミド;モノ−又はジ−N−アルキル置換アクリルアミド;t−ブチルアクリルアミド;ジメチルアミノエチルアクリルアミド;N−オクチルアクリルアミド;2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートを含むポリ(アルコキシアルキル)(メタ)アクリレート;ビニルメチルエーテルを含むアルキルビニルエーテル;及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい極性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びN−ビニルピロリドンからなる群から選択されるものが挙げられる。極性モノマーは、100重量部の総モノマーを基準として0〜10重量部、好ましくは1〜5重量部の量で使用される。
【0022】
接着剤コポリマーは、1つ以上のビニルモノマーを更に含むことができる。使用されるとき、(メタ)アクリレートポリマーに有用なビニルモノマーとしては、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル)、スチレン、置換スチレン(例えば、α−メチルスチレン)、ビニルハロゲン化物、及びこれらの混合物が挙げられる。そのようなビニルモノマーは一般に、総モノマー100重量部を基準として0〜5重量部、好ましくは1〜5重量部で使用される。
【0023】
コーティングされた接着剤組成物の粘着強度を増大させるために、多官能性(メタ)アクリレートが重合性モノマーのブレンドに組み込まれてもよい。多官能性アクリレートは特に、エマルジョン又はシロップ重合に有用である。有用な多機能性(メタ)アクリレートの例には、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、及びテトラ(メタ)アクリレート、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、及びプロポキシル化グリセリントリ(メタ)アクリレート並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。多機能性(メタ)アクリレートの量及び同一性は、接着剤組成物の用途に応じて調整される。典型的には、多官能性(メタ)アクリレートは、接着剤組成物の総乾燥重量を基準として5部未満の量で存在する。より詳細には、架橋剤は、接着剤組成物の総モノマー100部を基準として、0.01部〜1部の量で存在してよい。
【0024】
(メタ)アクリレートコポリマーに加えて、接着剤組成物は水溶性又は分散性のアジリジン架橋剤を更に含む。このアジリジン架橋剤は通常、コポリマー100部に対して0.005〜5.0重量部の量のアジリジン架橋剤で加えられる。
【0025】
アジリジン架橋剤は、以下の式:
【0026】
【化1】

【0027】
のものであり、式中、
は、−H又は−CH−であり、
zは、0、1又は2であり、
Aは、−O−R−Z又は−N(R)R
であり、Rは、H又はC〜Cアルキル基であり、
は、H、C〜Cアルキル基又は−R−Z
であり、Rは、二価のアルキレン又はアリーレン基であり、
Zは、水溶性基である。
【0028】
好ましい実施形態において、アジリジン架橋剤は以下の式:
【0029】
【化2】

【0030】
のものであり、式中、
は、−H又は−CH−であり、
各Rは、独立してH又はC〜Cアルキル基であり、
zは、0、1又は2であり、
は、−NR−又は−O−であり、
は、二価のアルキレン又はアリーレン基であり、
Zは、水溶性基である。
【0031】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、飽和又は不飽和両方の直鎖及び分枝鎖基、並びに環状基、即ち、シクロアルキル及びシクロアルケニルを含む。別に特定しない限り、これらの基は1〜20個の炭素原子を含有するが、好ましい基では合計で最大10個までの炭素原子を有する。環状基は、単環式又は多環式であることができ、好ましくは3〜10個の環炭素原子を有する。代表的な環状基としては、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロペンチル、シクロへキシル、及びアダマンチルが挙げられる。用語「アリール」は、本明細書で用いられるとき、炭素環式芳香族環、又は環系を含む。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フルオレニル及びインデニルが挙げられる。用語「水溶性基」は、水に架橋剤(及び引き続き接着剤コポリマー)を可溶化又は分散するのを補助する官能基である。用語「水溶性」は、少なくとも0.1重量%、好ましくは0.5%重量%の濃度の架橋剤が室温で水に溶解できることを意味する。用語「水分散性」は、少なくとも0.1重量%の架橋剤の水への分散が、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも4時間、更なる乳化剤の存在なしに安定することができることを意味する。
【0032】
アジリジン架橋剤はZを含有し、Zは、水溶性基を形成できる水溶性基又は複数の基であり、そのため、水中で自己乳化する反応生成物が得られる。好適な水溶性基としては、カチオン性基、アニオン性基及び双性イオン性基、並びに非イオン性水溶性基が挙げられる。水中で水溶性を形成する能力のある基の例は、アミノ基、特に第三級アミノ基のような水中でプロトン化される潜在能力を有する基を含む。
【0033】
水溶性基Zは、カチオン性、アニオン性又は非イオン性水溶性基であることができる。任意の水溶性基のイオン性の性質はエマルジョンのpHに影響されることが理解されるであろう。即ち、カルボン酸基は低pHでは非イオン性であり、高pHではイオン性である。
【0034】
式IIのいくつかの実施形態では、ZはZであってよく、Zは、アンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、カルボキシレート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネート、又はホスフィネート基から選択されるイオン性水溶性基である。このような基は、−COM、−OSOM、−SOM、−OPOM、−PO(OM)、−NRHX、−NRX、−NRHX、及び−NHXで表されることができ、式中、Mは、H、又はナトリウム、カリウム、カルシウム、及びN(R)などの一価若しくは二価の可溶性カチオンの一等価物であり、Xは、ハロゲン化物、水酸化物、カルボキシレート、スルホネートなどからなる群から選択されるもののような可溶性アニオンであり、Rは、フェニル基、脂環式基、又は約1〜約12個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖脂肪族基からなる群から選択される。好ましくは、Rは、1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基である。
【0035】
非イオン性水溶性基の典型的な例は、ヒドロキシル基及びポリ(オキシアルキレン)基である。ポリ(オキシアルキレン)基のオキシアルキレン単位は、好ましくは、−OCHCH−、−OCHCHCH−、及び−OCH(CH)CHのような2又は3個の炭素原子を有し、ポリ(オキシアルキレン)基が水溶性又は水分散性のままである限り、ポリ(オキシアルキレン)基のオキシアルキレン単位は、ポリ(オキシエチレン)中と同じものであることができ、又は混合物として直鎖若しくは分枝鎖又は不特定に分配されたオキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位中、又はオキシエチレン単位のブロック及びオキシプロピレン単位のブロックの直鎖若しくは分枝鎖中に存在できる。特に好ましいポリ(オキシアルキレン)基は、最大約1500の分子量を有するポリオキシエチレン及びアルコキシポリオキシエチレンである。好ましくは、ポリ(オキシアルキレン)中のオキシアルキレン単位の数は、2〜120であり、より好ましくは2〜48である。式IIを参照すると、Zは、Zであり、Zは、ポリ(オキシアルキレン)基である。
【0036】
アジリジン架橋剤は、米国特許第3,243,429号(ハム(Ham))に記載される一般的な手順書を使用して、及び式IIの化合物の調製で示されるように、アクリロイル化合物とアジリジン化合物とのマイケル付加反応で調製され得る。
【0037】
【化3】

【0038】
式中、
は、−H又は−CH−であり、
は、H又はC〜Cアルキル基であり、
は、−NR−又は−O−であり、
は、二価のアルキレン又はアリーレン基であり、
Zは、水溶性基であり、
zは、0、1又は2である。
【0039】
アジリジン基は、酸官能性(メタ)アクリレートコポリマーのペンダント酸官能基と反応してカルボキシエチレンアミノ結合を形成すると考えられている。1つの実施形態では、中間体は以下の構造であってよく、ここでは、所望のモノマー単位及び非反応(フリー)酸官能性モノマー単位は示されていない。
【0040】
【化4】

【0041】
式中、
アクリレートは、(メタ)アクリレートモノマーに由来する重合モノマー単位を表し、
は、酸官能性モノマーに由来する重合モノマーを表し、
a及びbは、少なくとも1の整数であり、したがってa+bはポリマーであり、
は、−H又は−CH−であり、
各Rは、H又はC〜Cアルキル基であり、
は、−NR−又は−O−であり、
は、二価のアルキル又はアリール基であり、
Zは、水溶性基である。
【0042】
基は、アジリジン基の開環によって、示された炭素上にあってもよく、又はエステル酸素原子に隣接する炭素に結合してもよいことが理解されよう。
【0043】
その結果、開環の結果生じたアミンは、隣接するペンダント酸基とイオン結合を形成してコポリマーをイオン架橋することがある。
【0044】
【化5】

【0045】
更に、イオン結合はその後、アミドに変換され、イオン架橋から共有架橋を形成し、IR及び動的機械分析(DMA)から推論されると考えられる。このようなアミド結合はまた、(アジリジンからの)2次アミンがエステルモノマー単位からのペンダントエステル基と反応する結果生じ得ることが明らかである。
【0046】
【化6】

【0047】
本明細書のポリマーは、溶液、放射線、バルク、分散、エマルジョン及び懸濁プロセスを含む任意の従来のフリーラジカル重合法により調製することができる。(メタ)アクリレートポリマーは懸濁重合により調製してもよく、これは米国特許第3,691,140号(シルバー(Silver))、同第4,166,152号(ベイカー(Baker)ら)、同第4,636,432号(シバノ(Shibano)ら)、同第4,656,218号(キノシタ(Kinoshita))、及び同第5,045,569号(デルガード(Delgado)に開示されている。それぞれは、接着剤組成物及び重合プロセスの詳細を説明している。
【0048】
本発明に用いられる(メタ)アクリレート接着性ポリマーの調製に有用な水溶性反応開始剤及び油溶性反応開始剤は、熱への曝露により、モノマー混合物の(共)重合を開始するフリーラジカルを発生する反応開始剤である。水溶性反応開始剤は、エマルジョン重合により(メタ)アクリレートポリマーを調製するのに好ましい。
【0049】
好適な水溶性反応開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物、上記過硫酸塩とメタ重亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムからなる群から選択されるものなどの還元剤との反応生成物などの酸化還元反応開始剤、並びに4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)及びその可溶性塩(例えば、ナトリウム、カリウム)からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい水溶性反応開始剤は、過硫酸カリウムである。好適な油溶性反応開始剤としては、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours Co.)から入手可能な、VAZO(商標)64(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル))、VAZO(商標)67(2,2’アゾビス(2−メチルブチロニトリル))、及びVAZO(商標)52(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル))などのアゾ化合物;過酸化ベンゾイル及び過酸化ラウロイルなどの過酸化物、及びこれらの混合物からなる群から選択されるようなものが挙げられるが、これらに限定するものではない。好ましい油溶性熱反応開始剤は、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリルである。使用する場合、反応開始剤は、モノマー構成成分の100重量部を基準にして、約0.05〜約1重量部、好ましくは約0.1〜約0.5重量部で、感圧接着剤中に含まれてよい。
【0050】
共重合性エマルジョン混合物は、任意に連鎖移動剤を更に含んで、得られたポリマーの分子量を制御することができる。有用な連鎖移動剤の例としては、四臭化炭素、アルコール、メルカプタン及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。存在する場合、好ましい連鎖移動剤は、イソオクチルチオグリコレート及び四臭化炭素である。エマルジョン混合物は、使用する場合、100重量部の全モノマー混合物を基準として、約0.5重量部までの、典型的には約0.01〜約0.5重量部の、好ましくは約0.05〜約0.2重量部の連鎖移動剤を更に含んでよい。
【0051】
好ましくは、接着剤コポリマーを調製するためにエマルジョン重合方法が使用される。乳化技術による重合は、乳化剤(乳化作用剤又は界面活性剤と呼ばれる場合もある)の存在を必要とする場合がある。本発明に有用な乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0052】
好ましくは、本発明のエマルジョン重合は、アニオン性界面活性剤の存在下で行われる。有用な乳化剤濃度の範囲は、エマルジョン感圧接着剤の全てのモノマーの総重量を基準として約0.5〜約8重量%、好ましくは約1〜約5重量%である。
【0053】
エマルジョン重合では、水性媒質に懸濁されたミセル又はエマルジョン微小液滴内で反応が起こる。微小液滴又はミセル内に発生したあらゆる熱は、周囲の水相の熱容量の影響により、素早く緩和される。エマルジョン重合は、発熱反応がよりよく制御された状態で進行し、生じた接着剤組成物は、水性媒質が主要な構成成分であるので不燃性である。
【0054】
(メタ)アクリレートコポリマーは、バッチ式、連続式、又は半連続式エマルジョン重合プロセスによって調製され得る。バッチ重合は、一般に、
(a)
(i)(メタ)アクリル酸エステルモノマー、
(ii)酸官能性モノマー、
(iii)所望により極性モノマー、
(iv)所望によりビニルモノマー、
(v)所望により多官能性(メタ)アクリレート、
(vi)所望により連鎖移動剤、
を含むモノマープレミックスを製造する工程、及び
(b)
(i)水、
(ii)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される界面活性剤、
(iii)フリーラジカル反応開始剤、好ましくは水溶性反応開始剤、
を含む水相と該プレミックスとを組み合わせる工程、
(c)前記エマルジョンを攪拌しながら、同時に約30℃〜約80℃の温度まで加熱し、高分子ラテックスが形成されるまで水中油型エマルジョン中で前記モノマーを重合させる工程、を含む。その他の混合物が使用されてよいことが理解されるであろう。例えば、酸官能性モノマー、又はその他の親水性モノマーが、水溶液に添加されてよい。更に、いったんエマルジョン混合物が調製されたら、モノマーは、それらのそれぞれの分配係数により、油相及び水相の間で分配し得る。
【0055】
半連続プロセスでは、フラスコに、脱イオン(DI)水、界面活性剤、酸官能性モノマー、(メタ)アクリレートエステルモノマー、任意の共重合性モノマー、例えば任意の極性モノマー、ビニルモノマー、及び多官能アクリレート、加えて、あらゆる任意の連鎖移動剤、pH調節剤又は他の添加剤を含むシードモノマー混合物が充填される。混合物を、窒素雰囲気生成装置などの不活性雰囲気下で攪拌及び加熱する。混合物が、典型的に約50〜70℃の誘導温度に到達すると、第1の反応開始剤が添加され重合が開始し、反応を発熱させる。シード反応終了後、バッチ温度は、フィード反応温度約70〜85℃に上げられる。フィード反応温度において、脱イオン水、界面活性剤、酸官能性モノマー、(メタ)アクリレートエステルモノマー、任意の極性モノマーを含む任意の共重合性モノマー、連鎖移動剤又はその他の添加剤を含むモノマープレエマルジョンを、一定時間、典型的には2〜4時間にわたって、温度を維持しながら、攪拌されたフラスコに加える。使用する場合、フィード反応の最後で第2の反応開始剤が反応に加えられて、エマルジョン中の残留モノマーを更に減少させる。追加の加熱時間の後、混合物を室温(約23℃)まで冷却し、評価のためにエマルジョンを収集する。
【0056】
中和剤をこのコポリマーの調製に用いてもよい。中和剤は、ポリマーの酸性基のすべて又は一部を中和するのに十分な濃度で用いられてよい。中和は、水酸化アルカリ金属又は水酸化アルカリ金属と少量の別の中和剤との組み合わせの使用によって実現される。その他の種々の中和剤を使用してもよいことが、当業者に理解されるであろう。その他の中和剤の選択、及び用いられる量は、所望の結果を達成するように変えてよい。しかし、選択した種類及び量が、接着剤を非分散性にしてはならない。好ましくは、水酸化アンモニウム、ナトリウム及びカリウムが中和剤として使用される。
【0057】
エマルジョンのpHは、4又はそれ以上であってよい。エマルジョンの酸性度を、ラテックス形成の後に、塩基性溶液(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化リチウムなどの溶液)又は緩衝液(例えば、重炭酸ナトリウムなど)のようなpH調節剤を用いて、所望のpHレベルに調節してよい。
【0058】
感圧接着剤物品を調製する別の方法としては、モノマーを部分的に重合して、酸官能(メタ)アクリレートコポリマー及び非重合モノマーを含むシロップポリマーを製造する方法がある。一般に、アジリジン架橋剤は部分的に重合された組成物に添加され、その後、好適な基材にコーティングされ、更に重合される。シロップポリマー組成物は有用なコーティング粘度に重合され、それを(テープ裏材などの)基材にコーティングして、更に重合することができる。部分的重合は、1つ以上の溶媒モノマー内に酸官能性(メタ)アクリレート溶質コポリマーのコーティング可能な溶液を提供する。
【0059】
シロップ適用処理においては、好ましいモノマー混合物(第2の構成成分)は、100部の全モノマーを基準として、85〜99pbwの1つ以上の(メタ)アクリレートエステルモノマー、1〜15pbwの酸官能性モノマー、0〜10pbwの1つ以上の第2の非酸極性モノマー、及び0〜約5pbwのその他のビニルモノマーを含む。
【0060】
重合は、シロップポリマーの構成成分の官能基と反応しないエチルアセテート、トルエン、及びテトラヒドロフランなどの好適な溶媒の存在の下で、又は好ましくは、それらが存在しない状態で行うことができる。
【0061】
重合は光開始剤の存在の下でエネルギーにシロップポリマー組成物を暴露することで達成することができる。エネルギーによって活性化された光開始剤は、例えば、重合を開始するために電離放射線が使用される場合は、不要である場合がある。これらの光開始剤は、重合性組成物100pbwあたり約0.0001〜約3.0pbw、好ましくは約0.001〜約1.0pbw、及びより好ましくは約0.005〜約0.5pbwの範囲の濃度で用いることができる。
【0062】
コーティング可能なシロップポリマーの調製の好ましい方法は、光開始されたフリーラジカル重合である。光重合法の利点は、1)モノマー溶液を加熱する必要がない、及び2)活性光源がオフになると光開始が完全に停止することである。コーティング可能な粘性を達成するための重合は、モノマーからポリマーへの変換が最大約30%になるように行ってよい。重合は、所望の変換、及び粘性が達成されたときに、光源を除去し、溶液に空気泡(酸素)を送って増殖しているフリーラジカルを抑えることで終了させることができる。溶質ポリマーは、非モノマー溶媒中で、従来の方法で調製し、その後高変換(重合度)に進むことができる。溶媒(モノマー又は非モノマー)を使用する際、溶媒はシロップポリマーの形成前又は形成後のいずれかに(例えば、真空蒸留で)除去することができる。これは許容できる方法ではあるが、高度に変換された官能性ポリマーが関わるこの手順は、追加的な溶媒除去作業が必要であり、別の材料(非モノマー溶剤)が必要とされる場合があり、高い分子量の、モノマー混合物内の高度に変換された溶質ポリマーは相当な時間を必要とし得るため、好ましいとは言えない。
【0063】
有用な光開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル;イルガキュア(商標)651光開始剤(ニューヨーク州アーズリーのチバ・ガイギー社)として入手可能な2,2−ジメトキシアセトフェノン、エサキュア(商標)KL 200光開始剤(ペンシルバニア州ウエストチェスターのサートマー社)として入手可能な2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、及びジメトキシヒドロキシアセトフェノンなどの置換アセトフェノン;2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換a−ケトール;2−ナフタレン−スルホニル塩化物などの芳香族スルホニル塩化物;並びに1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシ−カルボニル)オキシムなどの光能動的なオキシムが挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、置換アセトフェノンである。
【0064】
好ましい光開始剤は、ノリッシュI開裂を起こして、アクリル二重結合に付加して開始できるフリーラジカルを生成する光能動的化合物である。光開始剤は、コポリマーが形成された後に、コーティングする混合物に添加することができ、例えば、光開始剤はシロップポリマー混合物に添加することができる。このような重合性光開始剤は、例えば、米国特許第5,902,836号及び同第5,506,279号(バブ(Babu)ら)に記載されている。
【0065】
シロップポリマー組成物及び光開始剤は、活性化紫外線で照射して、モノマー構成成分を重合することができる。紫外線光源は、1)280〜400ナノメートルの波長範囲にわたって一般に10mW/cm以下(米国標準技術局(United States National Institute of Standards and Technology)に承認されている手順に沿って、例えば、バージニア州スターリング(Sterling)のエレクトロニックインスツルメンテーション&テクノロジー社(Electronic Instrumentation & Technology, Inc.)製のUVIMAP(商標)UM 365 L−Sラジオメーターを用いて測定される)の強度を提供するブラックライトなどの比較的低い強度の光源、及び2)10mW/cmを超え、好ましくは15〜450mW/cmの強度を提供する中圧水銀ランプなどの比較的高い強度の光源、の2つのタイプが挙げられる。シロップポリマー組成物を完全に又は部分的に重合するために化学線を用いる場合、高い強度と短い曝露時間が好ましい。例えば、600mW/cmの強度と約1秒の曝露時間とをうまく用いることができる。強度は、約0.1〜約150mW/cm、好ましくは約0.5〜約100mW/cm、及びより好ましくは約0.5〜約50mW/cmの範囲であることができる。これらの光開始剤は、好ましくはシロップポリマー組成物100pbwあたり約0.1〜1.0pbwの量で存在する。
【0066】
したがって、光開始剤の消光係数が低い場合は、比較的厚いコーティング(例えば少なくとも約1ミル又は25.4マイクロメートル)を達成することができる。
【0067】
変換の程度は、照射中に前述のように重合媒質の屈折率を測定することによって監視することができる。有用なコーティング粘度は、最大30%まで、好ましくは2〜20%、より好ましくは5〜15%、及び最も好ましくは7〜12%の範囲の変換(即ち、入手可能な重合されたモノマーの割合)によって達成される。溶質ポリマーの分子量(重量平均)は少なくとも100,000、好ましくは少なくとも500,000である。
【0068】
本発明の感圧接着剤を調製する場合、光開始重合反応を実質的に完了させる、即ち、約70℃(好ましくは50℃以下)の温度で、24時間未満、好ましくは12時間未満、及びより好ましくは6時間未満の反応時間で、モノマー構成成分を枯渇させることが得策である。これらの温度範囲及び反応速度は、好ましくない、未熟重合及びゲル化に対する安定化のためにアクリルシステムに添加されることが多いフリーラジカル重合阻害物質の必要性を取り除く。更に、阻害物質の付加は、システムに残留する外来材料を加えることになり、本発明の所望のシロップポリマーの重合及び架橋感圧接着剤の形成を阻害する。フリーラジカル重合阻害物質が、約6〜10時間超の反応時間に対して、70℃以上の処理温度ではしばしば必要とされる。
【0069】
いくつかの実施形態では、接着剤コポリマーは溶液方式で調製してもよい。典型的な溶液重合法は、モノマー、好適な溶媒、及び任意の連鎖移動剤を反応槽に加えること、フリーラジカル反応開始剤を添加すること、窒素でパージすること、並びにバッチサイズ及び温度に応じて、反応が完了するまで、典型的には約1〜約20時間、典型的には約40℃〜100℃の範囲の高温に反応槽を維持すること、によって実施される。溶媒の例は、メタノール、テトラヒドロフラン、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、及びエチレングリコールアルキルエーテルである。それらの溶媒は、単独で又はそれらの混合物として使用することができる。
【0070】
感圧接着剤はまた、1つ以上の従来の添加剤を含有してよい。好ましい添加剤としては、粘着付与剤、可塑剤、染料、酸化防止剤、及びUV安定剤が挙げられる。そのような添加剤は、それらがエマルジョン感圧接着剤の優れた特性に影響を及ぼさなければ、使用することができる。
【0071】
粘着付与剤が使用される場合、総接着剤ポリマーの乾燥重量を基準として約40重量%まで、好ましくは30重量%未満、より好ましくは5重量%未満が好適である。(メタ)アクリレートポリマー分散液と共に使用して好適な粘着付与剤としては、ロジン酸、ロジンエステル、テルペンフェノール樹脂、炭化水素樹脂、及びクマロンインデン樹脂が挙げられる。粘着付与剤の種類及び量は、接触性、固着範囲、固着強度、耐熱性及び特異的接着などの特性に影響を及ぼし得る。粘着付与剤は一般に、水性分散液の形態で使用される。好適な市販の粘着付与剤として、タコリン(TACOLYN)(商標)1070、5001、及び5002(ハーキュレス社(Hercules Inc.)から入手可能な、低分子量熱可塑性樹脂系の、水性で固形分55%の合成樹脂分散液)、SE1055(商標)(ハーキュレス社(Hercules Inc.)から入手可能なロジンエステルの水性分散液)、エスコレズ(ESCOREZ)(商標)9271(エクソン(Exxon)から入手可能な脂肪族炭化水素樹脂エマルジョン)、ダームルセン(DERMULSENE)(商標)82、ダームルセン(DERMULSENE)(商標)92、ダームルセン(DERMULSENE)(商標)DT、又はダームルセン(DERMULSENE)(商標)DT50(DRTから入手可能な変性テルペンフェノール樹脂の水性分散液)、及びアクアタック(AQUATAK)(商標)4188(アリゾナ・ケミカル社(Arizona Chemical Company)から入手可能な変性ロジンエステル)が挙げられる。
【0072】
調製後、接着剤組成物をただちにコーティングすることが好ましい。シロップ又は溶液状の(コポリマー、モノマー、及びアジリジン架橋剤を含有する)予備接着剤組成物は、接着性のコーティングされたシート材料を製造するために、従来のコーティング技法を使って好適な柔軟性のある裏材材料上に簡単にコーティングされ、その後、更に重合し、硬化又は乾燥される。エマルジョン重合技法が使用される場合は、接着性のコーティングされたシート材料を製造するために、既存コポリマー及びアジリジン架橋剤を含むエマルジョンがコーティングされ、乾燥される。可撓性裏材材料は、テープ裏材、光学フィルム又は任意の他の可撓性材料として従来利用されている任意の材料であってよい。
【0073】
可撓性支持体に包含することができる材料の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン(アイソタクチックポリプロピレンを含む)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(カプロラクタム)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリラクチド、セルロースアセテート、及びエチルセルロースなどのポリオレフィンが挙げられる。本発明に有用な市販の裏材材料としては、クラフト紙(モナドノックペーパー社(Monadnock Paper, Inc.)から入手可能);セロファン(フレクセル社(Flexel Corp.)から入手可能);タイベック(Tyvek)(商標)及びタイパー(Typar)(商標)などのスパンボンドポリ(エチレン)及びポリ(プロピレン)(デュポン社(DuPont, Inc.)から入手可能);並びにテスリン(Teslin)(商標)(PPGインダストリーズ社(PPG Industries, Inc.)及びセルガード(Cellguard)(商標)(ヘキスト−セラニーズ(Hoechst-Celanese)から入手可能)などのポリ(エチレン)及びポリ(プロピレン)から得られる多孔質フィルムが挙げられる。
【0074】
裏材はまた、綿、ナイロン、レーヨン、ガラス、セラミック材料などの合成若しくは天然材料の糸から形成される織布、あるいは天然若しくは合成繊維又はそれらのブレンドのエアレイドウェブなどの不織布などの布地から調製されてもよい。裏材はまた、金属、金属化高分子フィルム、又はセラミックシート材で形成されてもよく、ラベル、テープ、標識、カバー、表示用しるしなどのような、感圧性接着剤組成物と共に利用されるのに従来既知の任意の物品の形状を取ってもよい。
【0075】
上記組成物は、特定の基材に適するように調整された従来のコーティング技術を使用して基材にコーティングされる。例えば、これらの組成物は、ローラーコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、及びダイコーティングなどの方法によって様々な固体基材に塗布することができる。これらの種々のコーティング法は、組成物を可変の厚さで基材上に定置することを可能にし、それにより組成物をより広い範囲で使用することを可能にする。コーティングの厚さは、前述のように異なっていてよい。エマルジョンはまた、引き続くコーティングのために、任意の所望の濃度であってよいが、典型的には30〜70重量%のポリマー固体である。コーティング組成材の更なる希釈、又は部分乾燥により、所望の濃度を得ることができる。
【0076】
可撓性支持材はまた、剥離コーティング基材を含んでもよい。このような基材は、典型的には、接着転写テープが提供される場合に使用される。剥離コーティング基材の例は、当該技術分野において周知であり、例としてはシリコンコーティングクラフト紙などが挙げられる。本発明のテープはまた、当該技術分野において既知の低接着性バックサイズ(LAB)などを取り入れてもよい。
【実施例】
【0077】
【表1】

【0078】
試験方法:
剥離接着試験[ASTM D3330/D 3330M−04]
ポリプロピレンフィルム上にコーティングされた2つの1.3×10cm(〜0.5インチx少なくとも4インチ)の接着剤ストリップが、テープ上に2kgのローラを圧延することによってガラスプレートに接着された。接着剤コーティングフィルム試料の少なくとも8.9cm(〜3.5インチ長)がガラスプレートに接触し、試料の短い部分(「自由端」)がガラスプレートと接触しないようにされた。試料の自由端が引き戻されて、ガラスプレートに接着したサンプル部分とほぼ180度の角度を形成した。試料の自由端は、粘着力試験はかりに貼り付けられた。ガラスプレートに試料が接着されたら直ぐに剥離接着試験が開始された。即ち、「ドウェルタイム」はできる限りゼロに近くなるように保持された。テープを引き剥がすのに必要とされる力は、1分あたり228.6cm(90インチ)の圧盤速度で1.3cm(0.5インチ)幅あたりのリットル(オンス)で測定された。2つのテープ試料の測定値が平均された。剥離接着データはその後、以下の表用にニュートン/デシメートル(N/dm)に正規化された。
【0079】
剪断強度試験[ASTM D−3654/D 3654M 06,PSTC−7]
室温剪断試験のために、ポリプロピレンフィルム上にコーティングされた1.3×10cm(〜0.5インチ×少なくとも4インチ)の接着剤のストリップが、ファイバーボード基材に接着剤によって接着され、秤量された荷重を取り付けるためのループを形成するために数インチの試料の自由端がそれ自体に折り重なった状態で、基材に接着された接着剤コーティング試料1.3×1.3平方cm(〜0.5インチ×0.5インチ)を残すように切り落とされた。2kgの重りを接着部分の上で転がした。1000gのgの荷重が試験用のテープ試料に貼り付けられた。基材に試料が接着されたら直ぐに剪断強度試験が開始された。即ち、「ドウェルタイム」はできる限りゼロに近くなるように保持された。それぞれの試料は、破壊及び/又は試験が終了するまで吊るされた。基材から試料が離れるまでの時間(分)が剪断強度として記録された。破壊するまでの時間並びに破壊の形態が記録された。試料は3重に行われ、以下の表に平均された。
【0080】
アジリジン架橋剤の調製
アジリジン架橋剤は、アクリロイル化合物にアジリジンをマイケル付加反応することで調製することができる。一般に、1.1〜4当量の2−メチルアジリジンが(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドと混合され、その後、室温で放置された。余分の2−メチルアジリジンが減圧の下で除去されて、マイケル付加物が生じ、これは更なる精製なしで使うことができる。メタクリレート及びアクリルアミドは一般に、1.1〜4当量の2−メチルアジリジンで1〜7日間、約70℃で加熱する必要がある。
【0081】
化合物Iの調製
28.8g(0.20mol)の4−ヒドロキシブチルアクリレート(アルドリッチ社)に19.0g(0.30mol)の2−メチルアジリジン(アルドリッチ社、90%)を加えて、穏やかな発熱反応を発生させた。反応混合物は室温で20時間、放置された。この時点で、NMR分光法による反応混合物の分析は、原料のヒドロキシブチルアクリレートのビニルプロトンの完全な欠如及び表題化合物の形成を示した。過剰の2−メチルアジリジンが減圧下で除去されて、39.1g(97%)のマイケル付加物が無色油として残った。
【0082】
本質的に同じ手順を使って、アジリジン化合物I〜VIIIが、表1に示す反応体及び反応条件を使って調製された。
【0083】
【表2】

【0084】
実施例1A〜1L及び比較実施例C1
表2に示すように、エマルジョン接着剤コポリマーは、様々な濃度のアジリジン架橋剤とブレンドされた。使用された接着剤は、3M社(3M Company)(ミネソタ州セントポール(St. Paul))から市販されているアクリルエマルジョン接着剤(ファストボンド(FASTBOND(商標)49)であった。未変性接着剤は、C1と指定された比較実施例として含まれる。接着剤溶液は、その後、三菱ホストファン(商標)下塗りポリエステルフィルム上にコーティングされ、50マイクロメートル(〜1ミル)の乾燥接着剤厚さを得た。上記の試験方法で説明された接着剤から調製されたテープの剥離接着及び剪断強度が測定され、そのデータが表2に示されている。
【0085】
【表3】

【0086】
実施例2A〜C及び比較実施例C2、C3及びC4
シロップコポリマーの調製
473mL(〜16オンス)のジャーに450gのアクリル酸イソオクチル(IOA、90部)、50gのアクリル酸(AA、10部)、及び0.2gの2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン光開始剤(イルガキュア(商標)651,0.04phr)が充填された。モノマー混合物は窒素で20分間パージされ、その後、コーティング可能シロップコポリマーが調製されるまで低強度の紫外線照射に暴露され、その後、0.8g(0.16phr)の光開始剤が更に添加された。
【0087】
予備接着剤ポリマーシロップは、表2A〜Cに示すように様々な濃度のアジリジン架橋剤とブレンドされた。表2A〜Cのアジリジン濃度は、予備接着剤ポリマーシロップの重量%を基準にしている。製剤は、その後、シロップ予備接着剤製剤に関して三菱ホスタファン(商標)下塗りポリエステルフィルム上に50マイクロメートル(〜2ミル)の厚さでコーティングされ、500mJ/cmで硬化された。
【0088】
比較目的で、架橋剤(実施例C2)を使わない、又は架橋剤として1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(実施例C3で0.1phrを使用)若しくは2−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−トリアジン(実施例C4で0.1phrを使用)を使用した対照例が調製され試験された。上記の試験方法で説明された接着剤から調製されたテープの剥離接着及び剪断強度が測定され、そのデータが表3に示されている。
【0089】
【表4】

【0090】
故障モード凡例:(c)は凝集、(po)はポップオフを示す。
【0091】
実施例3A〜C及び比較実施例C5
表2に示されるように、溶液接着剤コポリマーは、様々な濃度のアジリジン架橋剤とブレンドされた。使用された接着剤は、3M社(3M Company)(ミネソタ州セントポール(St. Paul))から市販されている溶液アクリル接着剤であった。未変性接着剤は、C5と指定された比較実施例として含まれる。接着剤溶液は、その後、三菱ホストファン(商標)下塗りポリエステルフィルム上にコーティングされ、〜50マイクロメートル(1ミル)の乾燥接着剤厚さを得た。上記の試験方法で説明された接着剤から調製されたテープの剥離接着及び剪断強度が測定され、そのデータが表4に示されている。
【0092】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸官能性(メタ)アクリレートコポリマー及び以下の式のアジリジン架橋剤を含む架橋可能組成物であって、
【化1】

式中、
は、−H又は−CH−であり、
各Rは、独立してH又はC〜Cアルキル基であり、
zは、0、1又は2であり、
Aは、−O−R−Z又は−N(R)R
であり、Rは、H、C〜Cアルキル又は−R−Zであり、
は、二価のアルキレン又はアリーレン基であり、
Zは、水溶性基である、架橋可能組成物。
【請求項2】
前記アジリジン架橋剤が以下の式:
【化2】

のものであり、式中、
は、−H又は−CH−であり、
各Rは、独立してH又はC〜Cアルキル基であり、
zは、0、1又は2であり、
は、−NR−又は−O−であり、
は、二価のアルキレン又はアリーレン基であり、
Zは、水溶性基である、請求項1に記載の架橋可能組成物。
【請求項3】
前記水溶性基が、カチオン性、アニオン性、双性イオン性又は非イオン性水溶性基である、請求項2に記載の架橋可能組成物。
【請求項4】
ZはZであり、Zは、アンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、カルボキシレート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネート、又はホスフィネート基から選択されるイオン性水溶性基である、請求項2に記載の架橋可能組成物。
【請求項5】
ZはZであり、Zはポリ(オキシアルキレン)基である、請求項2に記載の架橋可能組成物。
【請求項6】
Zはヒドロキシル基である、請求項2に記載の架橋可能組成物。
【請求項7】
前記酸官能性(メタ)アクリレートコポリマーが100重量部の総モノマーを基準として、
i.85〜99重量部の非第三級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、
ii.1〜15重量部の酸官能性エチレン性不飽和モノマー、
iii.0〜10重量部の非酸官能性エチレン性不飽和極性モノマー、
iv.0〜5部のビニルモノマー、及び
v.0〜5部の多官能性(メタ)アクリレート、
を含む、請求項1に記載の架橋可能組成物。
【請求項8】
コポリマー100部に対して0.005〜5.0重量部のアジリジン架橋剤を含む、請求項1に記載の架橋可能組成剤。
【請求項9】
前記第2の極性モノマーが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、ポリ(アルコキシアルキル)(メタ)アクリレート、ポリ(ビニルメチルエーテル)、及びこれらの混合物から選択される、請求項7に記載の架橋可能組成物。
【請求項10】
前記コポリマーが、1〜5重量部のアクリル酸と1〜5重量部の極性モノマーとを含む、請求項7に記載の架橋可能接着剤。
【請求項11】
前記組成物が水性エマルジョンである、請求項1に記載の架橋可能組成物。
【請求項12】
前記酸官能性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、オレイン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の架橋可能組成物。
【請求項13】
ビニルエステル、スチレン、置換スチレン、ビニルハロゲン化物、プロピオン酸ビニル、及びこれらの混合物から選択される1〜5重量部のビニルモノマーを含む、請求項8に記載の架橋可能組成物。
【請求項14】
Aが、−NHである、請求項1に記載の架橋可能組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の前記架橋可能組成物を含む、感圧接着剤。
【請求項16】
請求項1に記載の前記架橋可能組成物、及び可撓性裏層を含む、接着剤物品。
【請求項17】
(a)前記エマルジョンの総重量を基準として30〜約70重量%の請求項1に記載の前記架橋可能組成物、及び
(b)前記エマルジョンの総重量を基準として界面活性剤を含む30〜70重量%の水相
を含む、エマルジョン。
【請求項18】
前記組成物のpHが≧4である、請求項17に記載のエマルジョン。
【請求項19】
請求項17に記載のエマルジョンを基材にコーティングし、乾燥することを含む、感圧性接着剤物品を調製する方法。
【請求項20】
(a)コポリマーであって、
i.85〜99重量部の非第三級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、
ii.1〜15重量部の酸官能性モノマー、
iii.0〜10重量部の第2の非酸官能性極性モノマー、及び
iv.0〜5重量部のビニルモノマー、
を含むコポリマーと、
(b)以下の式のアジリジン架橋剤であって、
【化3】

式中、
は、−H又は−CH−であり、
zは、0、1又は2であり、
Aは、−O−R−Z又は−N(R)R
であり、
各Rは、独立してH又はC〜Cアルキル基であり、
は、H、C〜Cアルキル、又は−R−Z
であり、
は、二価のアルキレン又はアリーレン基であり、
Zは、水溶性基である、アジリジン架橋剤と、
を組み合わせること、並びに
架橋を達成するために混合物を加熱することを含む、感圧接着剤を調製する方法。
【請求項21】
式:
【化4】

の化合物であって、
式中、
は、−H又は−CH−であり、
各Rは、独立してH又はC〜Cアルキル基であり、
zは、0、1又は2であり、
は、−NR−又は−O−であり、
は、二価のアルキレン又はアリーレン基であり、
Zは、水溶性基である、化合物。

【公表番号】特表2011−515561(P2011−515561A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501856(P2011−501856)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/034017
【国際公開番号】WO2009/120420
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】