説明

アスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体を含有する組成物

【課題】 本発明はアスコルビン酸誘導体のうち、特定のアスコルビン酸−2−リン酸エステルの安定性を飛躍的に高め、美白効果やしわの予防改善効果に優れた組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明の皮膚外用剤は、特定のアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体、非イオン性界面活性剤及び水を含有する組成物、又は特定のアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体、非イオン性界面活性剤、油性成分及び水を含有する組成物を調製し、これと2価以上の金属塩又はその水溶液を混合することにより調製した組成物を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(1)で表されるアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体を含有し、その化合物の安定性を飛躍的に向上させ、美白効果やしわの予防改善効果などに特に優れた組成物に関する。
【0002】

【背景技術】
【0003】
アスコルビン酸およびその種々の誘導体は、美白作用、抗酸化作用、コラーゲン合成促進作用等の効能効果を示す化合物として知られており、医薬品、化粧品等に配合されている。
【0004】
とくに、アスコルビン酸誘導体のうち、アスコルビン酸の2位の水酸基をリン酸エステル化し、かつ6位の水酸基を高級脂肪酸エステル化した化合物は、生体への親和性が高く、皮膚等の生体組織への移行が速やかであり、医薬品、化粧品等への適用が期待されている。
【0005】
しかしながら、このアスコルビン酸−2−リン酸エステルの高級脂肪酸エステルおよび/またはその塩は製剤中での安定性が満足ではなかった。
【0006】
前記アスコルビン酸−2−リン酸エステルの高級脂肪酸エステルの塩を含有する皮膚外用剤において、そのpHを7〜9に調整することにより、該エステル塩の剤中での分解を抑制し、安定性、溶解性を改善した皮膚外用剤が知られている(特許文献1参照)。さらに、高級アルコールなどと併用し、乳化することで安定性を向上させることも知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−176217号公報
【特許文献2】特開2005−187465号公報
【0007】
しかしながら、製剤中に存在するアスコルビン酸−2−リン酸エステルについて、さらなる安定化が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すなわち本発明はアスコルビン酸誘導体のうち、式(1)で示されるアスコルビン酸−2−リン酸エステルの安定性を飛躍的に高め、美白効果やしわの予防改善効果に優れた組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記実情に鑑みて鋭意検討した結果、上記式(1)で示されるアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体、非イオン性界面活性剤及び水を含有する組成物を調製し、これとアルカリ土類金属塩又はその水溶液を混合することにより、アスコルビン酸−2−リン酸エステルの分解が飛躍的に抑制でき、生理活性も向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は下記の通りである。
【0011】
〔1〕
式(1)で示されるアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体、非イオン性界面活性剤及び水を含有する組成物を調製し、これと2価以上の金属塩又はその水溶液を混合することにより調製した組成物。


【0012】
〔2〕
式(1)で示されるアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体、非イオン性界面活性剤、油性成分及び水を含有する組成物を調製し、これと2価以上の金属塩又はその水溶液を混合することにより調製した組成物。
【0013】
〔3〕
式(1)中のRが、炭素原子数8〜22の脂肪酸残基であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の組成物。
【0014】
〔4〕
2価以上の金属塩の含有量が、式(1)の化合物1モルに対し、0.5倍モル以上であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の組成物。
【0015】
〔5〕
非イオン性界面活性剤のHLBが9〜17の範囲であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の組成物。
【0016】
〔6〕
平均粒子径が300nm以下であることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれか記載の組成物。
【0017】
〔7〕
〔1〕〜〔6〕のいずれか1項記載の組成物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【0018】
〔8〕
式(1)で示されるアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体、非イオン性界面活性剤及び2価以上の金属塩を含有する組成物、又は式(1)で示されるアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体、非イオン性界面活性剤、油性成分及び2価以上の金属塩を含有する組成物。
【0019】
本発明に用いるアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体とは、上記式(1)で表される化合物であって、アスコルビン酸−2−リン酸エステルの6位の水酸基の水素原子をアシル基に置換したものである(式1のRがアシル基である)。アシル基の置換方法としては周知の方法を用いることができ、例えば、アスコルビン酸−2−リン酸塩に酸性触媒下、アシル酸又はアシル酸のエステルを反応させることによって得ることができる。アシル酸としては脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸などが挙げられる。中でも、炭素原子数8〜22の脂肪酸が好ましい。すなわち、式(1)中のRは炭素原子数8〜22の脂肪酸残基が好ましい。中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、2−ヘキシルデカン酸、イソステアリン酸などが汎用性の面で好ましい。
【0020】
上記式(1)で表される化合物における、Xは水素及び/又はアルカリ金属である。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。該アスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体に置換するアルカリ金属のモル数は、それ自身の安定性の面から1モル以上が好ましく、2モル以上が最も好ましい。
【0021】
該アスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体としては、例えば、アスコルビン酸−2−リン酸−6−ラウリン酸ナトリウム、アスコルビン酸−2−リン酸−6−ミリスチン酸ナトリウム、アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム、アスコルビン酸−2−リン酸−6−ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸−2−リン酸−6−イソステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸−2−リン酸−6−(2−ヘキシルデカン酸)ナトリウム、これらの物質のナトリウムをカリウムにしたものなどが挙げられる。
【0022】
これらの化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。本発明の組成物において、アスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体は、組成物中、0.0001〜20重量%含有することが好ましく、より好ましくは0.01〜10重量%含有されるように用いると良い。
【0023】
本発明に用いる非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシドなどがあげられる。中でも、POE(25)ラウリルエーテル、POE(20)オレイルエーテル、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン、モノイソステアリン酸POE(20)ソルビタン、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン、POE(40)硬化ヒマシ油、POE(60)硬化ヒマシ油、POE(30)フィトステロール、モノステアリン酸デカグリセリル、ショ糖ステアリン酸モノエステルなどが好ましい。
【0024】
これらの非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよいが、本発明に用いる非イオン性界面活性剤の混合HLB(2種以上の非イオン性界面活性剤を用いた場合にはその混合HLBを定法によって算出する)が9〜17の範囲で用いることが好ましい。なお、HLBとは親水性と親油性のバランスを示すものであり、本発明においてはGriffinの算出法を用いた。
【0025】
本発明の皮膚外用剤において、非イオン性界面活性剤は、油性成分の使用量などによっても異なるが、式(1)で示されるアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体に対して50重量%以上用いるのが好ましく、100重量%以上用いるのがより好ましく、200重量%以上用いるのが最も好ましい。
【0026】
本発明は、式(1)で示されるアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体、非イオン性界面活性剤及び水を含有する組成物を調製し、これと2価以上の金属塩又はその水溶液を混合することにより調製した組成物を得る方法と、式(1)で示されるアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体、非イオン性界面活性剤、油性成分及び水を含有する組成物を調製し、これと2価以上の金属塩又はその水溶液を混合することにより調製した組成物を得る方法があるが、油性成分を用いる後者の方が製剤(乳化粒子)の安定性の面から好ましい。
【0027】
本発明に用いる油性成分は、炭化水素類、ロウ・エステル類、油脂類、シリコーン油類などがあげられる。これらは化粧品や医薬部外品、医薬品に用いられるものを使用できる。例えば、スクワレン、スクワラン、流動パラフィン、ミネラルオイル、ワセリン等の炭化水素類や、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸オクチル、イソノナン酸トリデシル、イソノナン酸イソトリデシル等のエステル類、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリルなどのトリグリセライド類、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油類、天然の油性成分である、ホホバ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、オリーブ油、マカデミアナッツ油、メドウホーム油などがあげられる。また、トコフェロールやレチノールなどの油溶性ビタミンやこれらの誘導体、アスタキサンチン、カロテンなどの油性成分も使用できる。
【0028】
これらの油性成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。油性成分の使用量は、式(1)で示されるアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体に対して20重量%以上用いるのが好ましく、100重量%以上用いるのがより好ましい。
【0029】
本発明に用いる2価以上の金属塩とは、カルシウムをはじめとするアルカリ土類金属、マグネシウム、亜鉛などの塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩、有機酸塩などがあげられる。中でも、カルシウム、マグネシウム塩が好ましく、塩化マグネシウムや硫酸マグネシウム、塩化カルシウムがより好ましい。2価以上の金属塩は上記式(1)で示されるアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体を含有する組成物に直接混合することができるし、水溶液にして混合することもできる。
【0030】
これらの2価以上の金属塩は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。本発明の組成物において、式(1)の化合物1モルに対し、0.1モル以上使用することが好ましく、0.5モル以上がより好ましく、1〜5モルが最も好ましい。
【0031】
本発明の組成物は、式(1)で示されるアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体、非イオン性界面活性剤及び水(及び油性成分)を含有する組成物を調製し、これと2価以上の金属塩又はその水溶液を混合することにより調製できる。その混合方法はアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体を含有する前記組成物に2価以上の金属塩又はその水溶液を添加する方法や、2価以上の金属塩又はその水溶液にアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体を含有する前記組成物を添加することができるが、組成物の安定性の面から前者が好ましい。
【0032】
本発明の組成物は、式(1)で示されるアスコルビン酸−2−リン酸エステルの安定性の面から、pHを7以上にすることが好ましい。また、pHを7.5以上9以下にすることがより好ましい。pH調整に用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどの無機塩基や、トリエタノールアミンやアミノメチルプロパンジオール、アルギニン、リシンなどの有機塩基が挙げられる。
【0033】
本発明の組成物は、製剤の安定性の面で平均粒子径は300nm以下が好ましく、200nm以下が最も好ましい。大塚電子株式会社製の光散乱方式の粒子径測定装置などが使用できる。
【0034】
本発明の組成物又は皮膚外用剤は、化粧品、医薬部外品及び医薬品のいずれにも用いることができ、その剤形としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、軟膏、パップ剤等が挙げられる。
【0035】
本発明の組成物又は皮膚外用剤には、上記アスコルビン酸−2−リン酸エステルと2価以上の金属塩を含有する組成物をそのまま使用しても良く、本発明の効果を損なわない範囲内で、一般の外用剤に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、抗炎症剤、キレート剤等の成分を配合することもできる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の皮膚外用剤によれば、製剤中のアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体の安定性が高く、分解による製剤の黄変や褐変が極めて起こりにくく、美白効果やしわ予防改善効果に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例において制限されるものではない。なお、処方中の各成分の含有量は重量%とする。
【実施例1】
【0038】
本発明の組成物の物性及び安定性評価
種々の構造の非イオン性界面活性剤、油性成分、2価以上の金属塩で調製した製剤の平均粒子径と変色性およびアスコルビン酸誘導体の残存率について比較検討した結果を表1に示す。用いたアスコルビン酸誘導体はNaが2〜3モル置換されたものを用いた。表2中のアスコルビン酸誘導体に対するMgのモル比については、アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム Mw:560.46(3Na体)として算出した。
【0039】
なお、製剤の製造方法については以下の手順で行った。まず、常温下でA部を混合し、40℃のB部を徐々に添加する。次に超音波洗浄器内でC部を加え、40℃で15分間保持する。30℃まで冷却後、D、E部を加えて目的とする製剤を得た。
【0040】
平均粒子径の測定は大塚電子株式会社製の光散乱方式の粒子径測定装置(FPAR−1000)で行い、キュムラント(cumulant)法により求めた。測定温度は25±1℃で行った。なお、平均粒子径の測定は製剤の調製後3時間後に行った。
【0041】
経時観察は50℃で1ヶ月経過後に評価を行い、指標にはアスコルビン酸などが分解して生じる褐色化の有無(変色の有無)、アスコルビン酸−2−リン酸エステルの残存率を判断した。
【0042】
また、製剤中のアスコルビン酸−2−リン酸エステルの残存率(%)は、下記測定条件の高速液体クロマトグラフィーによって測定し下記式により算出した。
分析試料は、各製剤0.2gをとり、20重量%のリン酸水溶液1mLを加え、50容量%のエタノールを加えて50mLとしたものを用いた。
【0043】
残存率(%)=100×[50℃静置1ヵ月後の製剤中のアスコルビン酸誘導体濃度(g/L)/調製直後の剤中のアスコルビン酸誘導体濃度(g/L)]
<高速液体クロマトグラフィー測定条件>
カラム:オクタデシル化シリカゲル(ODS) 4.6mmφ×250mm
カラム温度:40℃
溶離液:20mMリン酸水素二カリウム(リン酸でpH7.0)/アセトニトリル=40/60
流速:1mL/分
検出:UV265nm

上記残存率について、下記の4段階の評価項目で評点付けをした。
◎:残存率90%以上
○:残存率80%以上90%未満
△:残存率70%以上80%未満
×:残存率70%未満
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【実施例2】
【0048】
本発明の製剤と、単純にアスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸マグネシウムを添加した製剤との製造比較及び製剤の安定性(40℃で1ヶ月)について評価した。
保存安定性評価項目
◎:乳化粒子の変化がほとんど認められない。
○:顕微鏡で観察すると若干の乳化粒子径の増大が確認できる。
×:相分離が顕著である。
【0049】
比較例4の製造方法
アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸マグネシウムの調製
アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム2.8gを精製水350mLに溶解し、硫酸マグネシウム・7水和物1.85gを精製水150mLに溶解した水溶液を撹拌しながらゆっくりと添加した後30分間反応させ、生じた沈殿物をろ過し、乾燥して白色粉末2.5gを得た。
製剤の調製
表1の比較例2の処方において、アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウムを上記のアスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸マグネシウムに変えて同様に製造し、比較例4とした。
【0050】
これらの実験結果を表5に示した。その結果、単純にアスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸マグネシウムを添加した場合、同じ界面活性剤、使用量にもかかわらず、白色のけんだく状態であり、3時間後には沈降してしまうのに対し、本発明の製剤は乳青白色の溶液で均一性が高かった。また、40℃1ヶ月後の安定性においても比較例よりも安定性に優れていた。
【0051】
【表5】

【実施例3】
【0052】
本発明の組成物の美白効果(メラニン生成抑制試験)
対数増殖期にあるメラノーマを60mmのシャーレに3×10個/mL懸濁液を1.0mL加え、アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸が20μMとなるように各実施例の試料を添加し、含むEagles’MEM(10%牛胎児血清含有)3.0mLを加え、37℃、5%CO条件下にて培養した。培養5日後に細胞をシャーレから剥離し、細胞を超音波破砕した後に、4N水酸化ナトリウム水溶液0.5mLを加え、60℃で2時間の処理を行い、分光光度計でO.D.475nmを測定した。なお、超音波処理後の細胞破砕液をLowryの方法(J.Biol.Chem.,193,265−275,1951)でタンパク定量し、タンパク量当りのメラニン量を比較することによって、メラニン生成抑制作用の指標とした。
【0053】
これらの実験結果を表6に示した。その結果、本発明のアスコルビン酸誘導体は2価以上の金属塩を用いないアスコルビン酸誘導体よりも特に優れたメラニン生成抑制作用を示した。また、本発明の製法にて得られたアスコルビン酸誘導体を含有する製剤は、単純にアスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸マグネシウムを添加する方法に比べて顕著なメラニン生成抑制作用を示した。
【0054】
【表6】

【実施例4】
【0055】
本発明の組成物のコラーゲン合成促進効果
培養ヒト皮膚線維芽細胞におけるコラーゲン合成の促進作用を下記の条件にて測定した。コンフルエントな状態の正常ヒト皮膚線維芽細胞をアスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸が10μMとなるように各実施例の試料を添加したEagle’s MEM培地で24時間培養した後、総RNAの抽出を行った。正常ヒト皮膚線維芽細胞から抽出した総RNAを基にRT−PCR法によりコラーゲンmRNA発現量の測定を行った。RT−PCR法にはTaKaRa RNA PCR Kit (AMV) Ver.2.1を用いた。また、内部標準としてはGAPDHを用いた。その他の操作は定められた方法に従い、PCR反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、コラーゲン及びGAPDHのmRNA発現をバンドとして確認した。これらのバンドをカメラにて撮影してデンシトメーターを用いて定量化し、コラーゲンmRNAの発現量を内部標準であるGAPDH mRNA発現量に対する割合として求めた。コントロールのコラーゲンmRNA発現量に対する試料添加時のコラーゲンmRNA発現量値からコラーゲン合成促進率を求めた。
コラーゲン合成促進率(%)=A/B×100
A:試料添加時のコラーゲンmRNAの発現量
B:試料未添加時のコラーゲンmRNAの発現量
【0056】
これらの実験結果を表7に示した。その結果、本発明のアスコルビン酸誘導体は2価以上の金属塩を用いないアスコルビン酸誘導体よりも特に優れたコラーゲン合成促進効果を示した。また、本発明にて得られたアスコルビン酸誘導体を含有する製剤は、単純にアスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸マグネシウムを添加する方法に比べて顕著なコラーゲン合成促進効果を示した。
【0057】
【表7】

【実施例5】
【0058】
次に本発明の皮膚外用剤の処方例を示す。
【0059】
処方例1 濃縮エッセンス
配合成分 配合量(重量%)
(1)アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム 5.0
(2)モノステアリン酸POE(20)ソルビタン 10.0
(3)イソノナン酸イソトリデシル 5.0
(4)精製水 56.0
(5)塩化マグネシウム・6水和物 1.8
(6)精製水 15.2
(7)水酸化カリウム水溶液(5重量%) 7.0
〔製法〕実施例1と同じ方法で製造した。
【0060】
処方例2 化粧水
配合成分 配合量(重量%)
(1)処方例1の濃縮エッセンス 5.0
(2)1,3ブチレングリコール 5.0
(3)エタノール 5.0
(4)防腐剤 適 量
(5)香料 適 量
(6)精製水で全量 100.0
〔製法〕(1)〜(6)を混合する。平均粒子径は220nmであった。
【0061】
処方例3 美容液
配合成分 配合量(重量%)
(1)処方例1の濃縮エッセンス 40.0
(2)カルボキシビニルポリマー 0.5
(3)水酸化カリウム 適 量
(4)グリセリン 10.0
(5)1,3ブチレングリコール 8.0
(6)エタノール 3.0
(7)防腐剤 適 量
(8)精製水で全量 100.0
〔製法〕(1)〜(8)を混合する。
【0062】
この美容液を男性5人、女性5人で1ヶ月使用試験を行った結果、80%が有効又はやや有効と評価した。
【0063】
処方例4 乳液
配合成分 配合量(重量%)
(1)処方例1の濃縮エッセンス 2.0
(2)モノステアリン酸POE(5)グリセリル 1.0
(3)親油型モノステアリン酸グリセリル 1.0
(4)スクワラン 10.0
(5)ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 5.0
(6)パルミチン酸セチル 2.0
(7)ベヘニルアルコール 0.4
(8)グリセリン 5.0
(9)1,3−ブチレングリコール 8.0
(10)キサンタンガム 0.1
(11)防腐剤 適 量
(12)精製水で全量 100.0
(13)カルボキシビニルポリマー 0.2
(14)精製水 20.0
(15)水酸化カリウム 適 量
〔製法〕(13)は(12)によく分散させ、これに(14)(15)次いで(8)〜(11)を添加し、水相とする。(2)〜(7)の油相部の原料および水相部をそれぞれ75℃に加熱し完全溶解した後、水相部を油相部へ混合し乳化し、40℃で(1)を添加し、室温まで冷却する。
【0064】
処方例5 クリーム
配合成分 配合量(重量%)
(1)処方例1の濃縮エッセンス 20.0
(2)モノステアリン酸POE(5)グリセリル 2.0
(3)モノステアリン酸グリセリル 2.0
(4)セタノール 3.0
(5)スクワラン 10.0
(6)流動パラフィン 5.0
(7)香料 適 量
(8)グリセリン 5.0
(9)1,3−ブチレングリコール 5.0
(10)キサンタンガム 0.2
(11)防腐剤 適 量
(12)精製水で全量 100.0
〔製法〕(2)〜(7)の油相部の原料および(8)〜(12)の水相部の原料をそれぞれ75℃に加熱し完全溶解した後、水相部を油相部へ混合し乳化し、40℃で(1)を添加し、室温まで冷却する。
【0065】
処方例6 ファンデーション
配合成分 配合量(重量%)
(1)処方例1の濃縮エッセンス 2.0
(2)モノステアリン酸POE(20)ソルビタン 1.0
(3)POE(20)セチルエーテル 2.0
(4)セタノール 1.0
(5)液状ラノリン 2.0
(6)流動パラフィン 3.0
(7)ミリスチン酸イソプロピル 6.5
(8)パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
(9)カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
(10)ベントナイト 0.5
(11)プロピレングリコール 4.0
(12)トリエタノールアミン 1.1
(13)パラオキシ安息香酸メチル 0.2
(14)二酸化チタン 8.0
(15)タルク 4.0
(16)ベンガラ 1.0
(17)黄酸化鉄 2.0
(18)香料 0.1
(19)精製水で全量 100.0
[製造方法]成分(2)〜(8)を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分(19)に成分(9)をよく膨潤させ、続いて、成分(10)〜(13)を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分(14)〜(17)を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。この水相に油相をかき混ぜながら加え、冷却し、45℃で成分(18)を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の皮膚外用剤により、特定のアスコルビン酸−2−リン酸エステルの安定性を飛躍的に向上させることが可能となり、美白効果やしわの予防改善効果などに特に優れており、皮膚外用剤として化粧料、医薬部外品、医薬品等に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

式(1)で示されるアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体、非イオン性界面活性剤及び水を含有する組成物を調製し、これと2価以上の金属塩又はその水溶液を混合することにより調製したことを特徴とする組成物。
【請求項2】
式(1)で示されるアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体、非イオン性界面活性剤、油性成分及び水を含有する組成物を調製し、これと2価以上の金属塩又はその水溶液を混合することにより調製したことを特徴とする組成物。
【請求項3】
式(1)中のRが、炭素原子数8〜22の脂肪酸残基であることを特徴とする請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
2価以上の金属塩の含有量が、式(1)の化合物1モルに対し、0.5倍モル以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
非イオン性界面活性剤の混合HLBが9〜17の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
平均粒子径が300nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項8】
式(1)で示されるアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体、非イオン性界面活性剤及び2価以上の金属塩を含有する組成物、
又は式(1)で示されるアスコルビン酸−2−リン酸エステル誘導体、非イオン性界面活性剤、油性成分及び2価以上の金属塩を含有することを特徴とする組成物。

【公開番号】特開2007−320858(P2007−320858A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149798(P2006−149798)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】