説明

アスベスト処理用の組成物

【課題】アスベスト又はアスベストを主成分とする屑又は物質を、無害にする処理組成物を提供すること。
【解決手段】下記成分を含む組成物。
(a) 式:Si(OR)4(Rはアルキル)のオルガノシラン、式:M(OR)m(MはB、Ti、Fe、Al、Mg、V、Zr、W、P又はLa)の金属アルコキシド、又はシリカのコロイド状懸濁液、
(b) 式:[X-(CH2)n ] x -Si(OR)4-x(Xはスルフヒドリル、アミノ、イソシアナト、(メタ)アクリロイル、エチルアクリロイル、ビニル、フェニル、アニリノ、ウレイド、チオシアナト、ニトリロ又はエポキシ基、nは0〜3、xは1〜3)のオルガノ珪酸化合物、
(c) エチレングリコール、(メタ)アクリル酸、マレイン酸又はフタール酸、ビニル、アクリルアミド又はエチレンオキシド、を主成分とするモノマー、及び
(d)フリーラジカル開始剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベストを無害のものとすることを可能とする組成物、並びに該組成物を利用した、アスベストの処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微細な繊維状のアスベスト、例えば蛇紋岩(クリソライト)型のアスベストおよび角閃石型のアスベストを含有する骨材は、組織の病変および特に肺癌を誘発する。従って、何の危険もなしに、アスベストおよびアスベストを含有する物質を廃棄することは、極めて重要である。
多数のアスベストの処理法が既に知られている。しかしながら、これらは該アスベストの化学的性質を大幅に変えることはなく、あるいは該方法が、アスベストを化学的に変化させるものであっても、その実施は出費がかさむことは明らかであり、また何れにしろ建築物内の所定の場所でフロック加工されたアスベストを処理するために、該方法を使用することは不可能であると思われる。
特許出願EP-A-O 074 913号はオルガノポリシロキサン系の組成物に関わり、該組成物は
−25℃にて測定した粘度5〜100,000 mPa.s を有する、α,ω−ジヒドロキシポリジオルガノポリシロキサン、
−珪素原子1個当たり1.60〜1.90の有機基を有し、25℃における粘度が30〜3000mPa.s であり、0.2 〜10% のヒドロキシル基を有する、ポリオルガノポリシロキサン、
−ポリアルコキシシリル基を有する架橋剤、および
−鉄またはジルコニウムの有機金属キレートまたは錯体により構成される触媒を含むものである。
【0003】
この組成物は、特に、アスベストまたはセルロース誘導体または合成材料等の種々の物質に、防水性を付与することを可能とし、また良好な付着防止特性を示す。これらは、特に自動車工業用の継手、パッキンの製造のために使用することができる。
この文献は、フロック加工されたまたは脱フロック加工されたアスベストを廃棄することを考慮していない。
日本国特許JP 95068513 号は、珪酸ナトリウムまたはカリウムを主成分とする溶液および合成樹脂のエマルションおよび/または溶液を、しかるべき場所でアスベスト上に噴霧する方法を記載している。しかしながら、この方法では、脱フロック加工中に放出される繊維の量を減じつつ、該アスベストに係わる危険性を大幅に減ずることを可能とした場合には、化学的な変化を生ずることはない。このような状況において、該危険性が大幅に低減された場合にも、零ということは全くなく、その操作中に放出された繊維の数に比例して、その危険性が残されている。
【0004】
特許出願WO 90/15642 は、その場でまたは脱フロック加工した後に、水性溶液を使用して、アスベストを処理することによりこれを破壊する方法が記載されている。ここで、該水性溶液は1〜25重量%の弱い有機酸および場合により1〜10重量%のフッ素イオン源を含むものである。この処理時間は2時間〜数日の範囲で変動する。この方法は、無視しえない程のアスベストの化学的崩壊を可能とする。しかしながら、高濃度の酸およびフッ素イオンの使用は、該アスベスト上での反応により消費されなかった残留酸およびフッ素イオンの中和のための、第二段階の利用を必要とする。この処理後に、更に該残留物を、最終的に担体上に固定するための、樹脂またはラテックスエマルションで選択的に、現場で処理する必要がある。従って、この方法は経費がかさみ、かつこれを適用するヒトに危険を及ぼさないはずがない。事実、酸性媒体中のフッ素が皮膚に対して特に攻撃的であり、また火傷を生じ、皮膚の下部に浸透して、神経末端を攻撃することは公知である。
特許出願WO 94/08661 号は、アスベスト屑の処理方法を記載している。この処理方法は、約10Mのアルカリ溶液の存在下で、約300℃の温度にて、該屑を反応させる工程を含む。
【0005】
特許出願WO 93/18867 号は、アスベストを廃棄するための方法に関連し、ここで該アスベストは、粉砕により、無機相を含有する非−繊維性の安定な物質に転化され、ここで該粉砕は、水中でOH- イオンを遊離する少なくとも1種の物質と共に、極めて微細な粉砕体の水性懸濁状態で実施する。特に有利には、水性懸濁液として得られる、かくして粉砕された生成物はオートクレーブに送られ、そこで高圧かつ高温条件下で処理される。
これら2つの文献に記載された方法は、脱フロック加工されたアスベスト、即ち該アスベストが存在する建築物を取り除いた際のアスベストのみに利用されるに過ぎない。
従って、従来の技術は、簡単な方法により、周囲温度にて単一の工程で、無害なアスベストとするような、処理方法を提案していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ゾル−ゲル法により、無機またはハイブリッド(有機または無機)ポリマーの薄層を堆積することにより、アスベスト繊維を構成する分子上に、使用した試薬により与えられる他の分子がグラフトされ、かくしてアスベストの化学的な変更が可能となることを、今や見出した。供給すべきこれらの分子は、全くの合成ガラスのような高密度かつコンパクトな網状組織として重合する性質をもつ。これらの繊維は該ポリマーの網状構造の一部として組み込まれかつ該網状構造の構成要素であると考えられる。
かくして、本発明の第一の目的は、アスベストまたはアスベストを主成分とする屑を、その物理的並びに機械的諸特性を完全に維持しつつ、無害のものとすることにある。
本発明のもう一つの目的は、アスベストまたはアスベストを含有する物質を、低温にて化学的に変化することを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、本発明の組成物により達成され、該組成物は、
(a) 式:Si(OR)4 (ここで、Rは(C1-C4) アルキル基である)で表されるオルガノシラン、式:M(OR) m (ここで、MはB、Ti、Fe、Al、Mg、V、Zr、W、PまたはLaからなる群から選ばれる金属であり、mは該金属の原子価を満足し、Rは上記定義通りである)で表される金属アルコキシド、またはシリカのコロイド状懸濁液からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、
(b) 式:[X-(CH2)n ] x -Si(OR)4-x(ここで、Rは上記定義通りであり、Xはスルフヒドリル、アミノ、イソシアナト、(メタ)アクリロイル、エチルアクリロイル、ビニル、フェニル、アニリノ、ウレイド、チオシアナト、ニトリロまたはエポキシ基、またはこのような置換基を含有する基であり、nは0〜3の範囲で変動し、xは1〜3の範囲で変動する)で表される少なくとも1種のオルガノ珪酸化合物、
(c) エチレングリコール、(メタ)アクリル酸、マレイン酸またはフタール酸、ビニル、アクリルアミドまたはエチレンオキシド、または(ポリ)メチレンを主成分とする、少なくとも1種のモノマー、および
(d) 少なくとも1種のフリーラジカル開始剤、
の混合物を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法は、建築物の所定の場所のアスベスト(またはこれを含有する物質)および規定により許可された廃棄センターによる貯蔵前の、アスベストまたはこれを含有する物質(ディスクブレーキパッド製造の際の屑、脱フロック加工によるアスベスト、アスベスト含有ガスケット、アスベストセメント製板等)を処理することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(C1-C4) アルキル基とは、本明細書および上記特許請求の範囲において、メチル、エチル、プロピル、i-プロピル、ブチル、i-ブチル、s-ブチルまたはt-ブチル基を表すものとする。
使用する成分(a) 、(b) 、(c) および(d) の量は、本発明の目的を達成するための一ファクタを構成しない。
有利には、成分(a) に対して、0.5 〜25重量%、好ましくは5〜20重量%の成分(b) を使用し、成分(a) と(b) との総和に対して、1〜200 重量%、好ましくは10〜150 重量%の成分(c) を使用し、および成分(b) と(c) との総重量に対して、0.5 〜50重量%、好ましくは1〜40重量%の成分(d) を使用する。
一般的に、オルガノシランは、単独で、あるいは以下に定義する金属アルコキシドおよび/または以下に定義されるシリカのコロイド状懸濁液との混合物として使用される。該シリカ懸濁液において、シリカの粒径は、有利には5〜75nm、好ましくは6〜50nmの範囲内にある。
しかしながら、本発明の特別の態様では、上記成分(a) として、上に定義したような、金属アルコキシドとシリカのコロイド状懸濁液との混合物の使用を想定している。
【0010】
本発明のもう一つの特定の態様においては、該成分(a) として、上で定義されたシリカのコロイド状懸濁液を使用することができる。
本発明によるオルガノ珪酸化合物の置換基Xはスルフヒドリル、アミノ、イソシアナト、(メタ)アクリロイル、エチルアクリロイル、ビニル、フェニル、アニリノ、ウレイド、チオシアナト、ニトリロまたはエポキシ基、またはこのような置換基を含有する基であり、例えば以下の式で表される基である:CH2=C(C2H5)-COO-; CH2=CH-CO-N(CH3)-CH2-; -(CH2)3-NH-(CH2)2-NH2; -O-Epo; または-O-CH2-Epo(ここで、Epoはエポキシ基を表す)。
これらの本発明によるオルガノ珪酸化合物は、一方では置換基Xの介在によって、有機モノマーの重合により得られる、重合体状の網状構造をもった化学結合を、および他方では珪素原子の所有するヒドロキシル基の介在により、該オルガノシロキサンから得られた、加水分解され/縮合されたシリカの網状構造をもった化学結合を容易に確立する。
【0011】
有機モノマーとしては、特に以下に列挙するものを例示できる:
−エチレングリコールを主成分とするモノマー、例えばエチレングリコールアリルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル、エチレングリコールビニルエーテル、エチレングリコールテレフタレート;
−(メタ)アクリル酸、マレイン酸またはフタール酸を主成分とするモノマー、例えば(メタ)アクリル酸、(C1-C4)アルキル、アミノ(C1-C4)アルキル、(C1-C4) アルコキシ(C1-C4) アルキル、ヒドロキシフェノキシ(C1-C4) アルキル、ヒドロキシ(C1-C4) アルキルまたはエチレングリコール化合物の(メタ)アクリレート;(C1-C4) アルキルジ(メタ)アクリレート;ナトリウムメタクリレート;スルホエチルメタクリレート;グリジジルメタクリレート;またはベンジルメタクリレート;
−ビニル系モノマー、例えば酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドンおよび塩化ビニル;
−ビスフェノールを主成分とするモノマー、例えばビスフェノールA、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、ビスフェノールAのジメタクリレートまたはビスフェノールAエチレートのジ(メタ)アクリレート;
−アクリルアミドを主成分とするモノマー、例えばアクリルアミド、ヒドロキシ(C1-C4) アルキルアクリルアミド、(C1-C4) アルキルアクリルアミドまたはジ(C1-C4) アルキルアクリルアミド;
−エチレンオキシドまたは(ポリ)メチレンを主成分とするモノマー、例えばエチレンオキシドまたはテトラメチレンオキシド。
【0012】
エチレングリコール化合物の(メタ)アクリレートの例としては、特にビニルエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレートあるいは更にエチルベンジルエーテル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
本発明の一態様においては、上記モノマーの代わりに、モノマー成分が、上に例示した如きエチレングリコール、(メタ)アクリル酸、ビニル、ビスフェノールまたはアクリルアミドを主成分とするものである、少なくとも1種のポリマーおよび/またはポリエチレングリコール、ビスフェノールAカーボネート、ウレタンカーボネート、ウレタンアクリレート、水素化ポリブタジエン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ〔ビス(メトキシエトキシエトキシ)ホスファゼン〕、ポリ(2-メチル-2- オキサゾリン)、ポリエーテルケトン、アクリル酸/マレイン酸コポリマーまたはエチレン/アクリル酸コポリマーからなる群から選ばれる1または複数の(コ)ポリマーを直接使用することができる。
本発明の組成物は、同様に少なくとも1種のフリーラジカル開始剤を含む、一般的に、該フリーラジカル開始剤として、アゾ化合物、パーオキシドあるいはまたパーオキシドと4級アミンとの混合物を使用する。
本発明の範囲内で使用することのできるアゾ化合物は、例えば2,2'- アゾビスイソブチロニトリル、1,1'- アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'- アゾビス(2- メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩あるいはまた4,4'- アゾビス(4- シアノバレリン酸)を包含する。パーオキシドの例は、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、カリウムまたはアンモニウム、ベンゾイルパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、あるいはまたt-ブチルハイドロパーオキシドを含む。
本発明の目的にとって適当なパーオキシド+四級アミンの混合物は、例えば過硫酸ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムと、トリエタノールアミンとの混合物あるいはまた過酸化水素とトリエタノールアミンとの混合物を包含する。
【0013】
本発明による組成物は、メタノールまたはエタノール等のアルコールまたは水/アルコール混合物等の不活性溶媒中で、特に該オルガノシロキサンを加水分解できる触媒の存在下で、該組成物を構成する種々の成分を混合することにより、調製することができる。
このようにして、本発明による該オルガノシロキサンは、水および触媒の存在下で、以下の反応式に従って反応する:Si(OR)4 → Si(OH)4 + 4ROH
触媒としては、一般的に強酸、例えばHF、H2SiF6、HCl 、H2SO4 、H3PO4 またはHNO3;強塩基例えばNaOH、KOH またはNH4OH;および/またはフッ素イオン源、例えばNH4FまたはNaF を使用する。
本発明の好ましい態様の一つによれば、オルガノシロキサンとしてテトラエトキシシランを使用する。
有利には、以下の溶液を別々に調製する。
(i) 不活性溶媒中に、反応触媒の存在下で、オルガノシロキサン、シリカのコロイド状懸濁液および/または金属アルコキシドを含む第一の溶液、および
(ii)場合によっては上記段階(i) で使用したものと同一の、不活性溶媒中に、該組成物のその他の成分を含有する第二の溶液。
次いで、これら2つの溶液を混合して、本発明による組成物を得るが、この組成物は、そのままアスベストまたはアスベストを含有する物質に適用できる状態にある。
【0014】
使用する触媒の量は、その性質に応じて変化し、恐らく少量であり得る。例えば、該オルガノシロキサンに対して、あるいは必要な場合には該シリカのコロイド状懸濁液に対して、1〜25重量%、好ましくは2〜20重量%の触媒を使用することができる。
使用する溶媒の量は、本発明の組成物の、約30〜75重量%、好ましくは40〜65重量%である。
本発明のもう一つの目的は、アスベストまたはアスベストを含有する物質を処理する方法に関連し、この方法は該アスベストまたは該物質に本発明の組成物を適用する工程を含む。
この適用は噴霧、含浸またはアスベスト繊維の完全な含浸を達成できる他のあらゆる手段によって実施することができる。
このようにして処理したアスベストは、該アスベスト繊維のSiO2、MgO 、FeO および/またはCaO サイト上で、SiO2および/または金属酸化物の分子のグラフトまたは架橋によって、低温の下で化学的に変化される。
【0015】
本発明を、以下の実施例および添付図面を参照して、更に詳しく説明する。
特に、図1および図2は、本発明の組成物で処理したクリソライトアスベスト繊維の電子顕微鏡写真である。図3は本発明の組成物で処理したおよび比較のための処理されていないこれら繊維のX-線分光スペクトルを表す。
これら実施例において、以下の略号を使用する:
B(OEt)3: トリエチルボレート
HEMA: ヒドロキシエチルメタクリレート
HCl: 塩化水素酸
LEVASIL:バイエル(BAYER) 社により市販されている、シリカのコロイド状
懸濁液
Mg(OEt)2: マグネシウムエチラート
MMA: メチルメタクリレート
N(EtOH)3: トリエタノールアミン
NH4F: フッ化アンモニウム
NH4OH: 水酸化アンモニウム
(NH4)2S2O8: 過硫酸アンモニウム
TEOS: テトラエトキシシラン
TMSM: トリメトキシシリルプロピルメタクリレート
以下の実施例の組成物の成分の割合は、重量部で示されている。
【0016】
実施例1
攪拌装置を備えた第一の反応器内に、以下の試薬を導入した。
TEOS 10
HCl(36%) 2
NH4F 0.2
Mg(OEt)2 1
水 8
エタノール 16
この混合物を、攪拌下で、数分間に渡り、周囲温度にて加水分解させた。
同時に、同一の型の第二の反応器内で、以下の混合物を調製した。
MMA 5
TMSM 1
ベンゾイルパーオキシド 1
エタノール 4
この混合物を、重合反応を開始するのに必要な時間である、15分間に渡り、輻射線源(IR、UV等)で照射した。
この15分の終了時点で、これら2つの溶液を混合した。このようにして得た組成物を、次に実験室的に、脱フロック加工用の該クリソライトアスベストに噴霧した。
【0017】
数分後に、かくして噴霧した該組成物は、シリカの重縮合の作用下でゲル化を開始した。同時に、PMMAによるMMA の重合が続いた。
周囲温度にて、8〜12時間後に、該繊維上に堆積された液状フィルムが、ハイブリッドガラスの硬いフィルムに転化された。このハイブリッドガラスの機械特性は、時間の経過中に、増大し続けた。
8日後に、このように処理したアスベストを、電子顕微鏡で観察(図1および2参照)し、2つの領域BおよびCについて、X-線エネルギーの分散による微量分析を行った。得られた結果を、未処理のアスベスト繊維について実施した、同様な分析と比較して示した。
この検討した物体は、処理されたアスベスト繊維上における、ゲルのみの化学的組成と未処理のアスベスト繊維の化学的組成との間の、中間的な化学的組成の存在を明らかにした。
図3は観測された3つのスペクトルA、BおよびCを表す。
A:未処理のアスベスト繊維
B:ゲルのみ
C:ゲルの薄膜で覆われたアスベスト繊維
Cのスペクトルはゲルの薄膜で覆われた該アスベスト繊維が、アスベストの組成(スペクトルA)とゲルの組成(スペクトルB)との中間の組成を有することを示している。
そのサブミクロンレベルの考察により、上記現象が生じ、このことは、堆積されたゲルと該アスベスト繊維との間の化学的結合に関連する証拠を意味する。
【0018】
実施例2
第一の反応器内で、以下の混合物を調製した:
TEOS 10
HCl 0.42
N(EtOH)3 0.15
B(OEt)3 1
TMSM 1
水 13.3
この混合物を周囲温度にて、数分間攪拌下で、加水分解にかけた。
同時に、第二の反応器内で、もう一つの混合物を調製した。
HEMA 5
NH4OH 0.6
(NH4)2S2O8 0.2
水 6
該第一の混合物を完全に加水分解したら、該混合物1に該混合物2を添加し、その後数分間激しく攪拌した。かくして得た溶液は、アスベストまたはこれを含有する物質にいつでも噴霧することができる。
【0019】
実施例3
第一の反応器内で、以下の混合物を調製した:
TEOS 2
LEVASIL 4055 18
HCl 0.4
TMSM 0.5
水 4
N(EtOH)3 0.15
この混合物を周囲温度にて、数分間攪拌下で、加水分解にかけた。
同時に、第二の反応器内で、もう一つの混合物を調製した。
HEMA 5
NH4OH 0.6
H2O2
水 6
該第一の混合物を完全に加水分解したら、該混合物1に該混合物2を添加し、その後数分間激しく攪拌した。かくして得た溶液は、アスベストまたはこれを含有する物質にいつでも噴霧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の組成物で処理したクリソライト製アスベスト繊維の、電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明の組成物で処理したクリソライト製アスベスト繊維の、電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明の組成物で処理したおよび比較のための処理されていないクリソライト製アスベスト繊維のX-線分光スペクトルを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスベスト処理用の組成物であって、
(a) 式:Si(OR)4 (ここで、Rは(C1-C4) アルキル基である)で表されるオルガノシラン、式:M(OR) m (ここで、MはB、Ti、Fe、Al、、Mg、V、Zr、W、PまたはLaからなる群から選ばれる金属であり、mは該金属の原子価を満足し、Rは上記定義通りである)で表される金属アルコキシド、またはシリカのコロイド状懸濁液からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、
(b) 式:[X-(CH2)n ] x -Si(OR)4-x(ここで、Rは上記定義通りであり、Xはスルフヒドリル、アミノ、イソシアナト、(メタ)アクリロイル、エチルアクリロイル、ビニル、フェニル、アニリノ、ウレイド、チオシアナト、ニトリロまたはエポキシ基、またはこのような置換基を含有する基であり、nは0〜3の範囲で変動し、xは1〜3の範囲で変動する)で表される少なくとも1種のオルガノ珪酸化合物、
(c) エチレングリコール、(メタ)アクリル、マレインまたはフタール酸、ビニル、アクリルアミドまたはエチレンオキシド、または(ポリ)メチレンを主成分とする、少なくとも1種のモノマー、および
(d) 少なくとも1種のフリーラジカル開始剤、
の混合物を含むことを特徴とする、上記組成物。
【請求項2】
該成分(a) として、オルガノシロキサン、Si(OR)4 、を使用する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該成分(a) として、シリカのコロイド状懸濁液を使用する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
該成分(a) として、オルガノシロキサンSi(OR)4 と、金属アルコキシドM(OR) m との混合物を使用する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
該成分(a) として、オルガノシロキサンSi(OR)4 と、シリカのコロイド状懸濁液との混合物を使用する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
該成分(a) として、金属アルコキシドM(OR) m と、シリカのコロイド状懸濁液との混合物を使用する、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
該成分(a) として、オルガノシロキサンSi(OR)4 と、金属アルコキシドM(OR) m と、シリカのコロイド状懸濁液との混合物を使用する、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
上記モノマーの代わりに、エチレングリコール、(メタ)アクリル、ビニル、ビスフェノールまたはアクリルアミドを主成分とする少なくとも1種のポリマーおよび/またはポリエチレングリコール、ビスフェノールAカーボネート、ウレタンカーボネート、ウレタンアクリレート、水素化ポリブタジエン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ〔ビス(メトキシエトキシエトキシ)ホスファゼン〕、ポリ(2-メチル-2- オキサゾリン)、ポリエーテルケトン、アクリル酸/マレイン酸コポリマーまたはエチレン/アクリル酸コポリマーからなる群から選ばれる1または複数のモノマーをモノマー成分とする、(コ)ポリマーを使用する、請求項1〜7の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】
該オルガノシロキサンが、テトラエトキシシランである、請求項1〜8の何れか1項に記載の組成物。
【請求項10】
上記のフリーラジカル開始剤が、アゾ化合物、パーオキシドまたはパーオキシド/4級アミン混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜9の何れか1項に記載の組成物。
【請求項11】
アスベストまたはこれを含有する物質を処理する方法であって、該アスベストまたはこれを含有する物質に、請求項1〜10の何れか1項に記載の組成物を適用する工程を含むことを特徴とする、上記方法。

【図3】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−105463(P2007−105463A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273049(P2006−273049)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【分割の表示】特願平10−22573の分割
【原出願日】平成10年1月20日(1998.1.20)
【出願人】(598015420)
【Fターム(参考)】