説明

アセチルCoAカルボキシラーゼのスプライスバリアント、及びその使用

本発明は、アセチルCoAカルボキシラーゼ2(ACC2)のスプライスバリアントをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離された核酸分子に関する。これはまた、前記核酸によりコードされる対応するポリペプチド、ならびに、脂肪酸酸化能の障害に関連する疾患または障害を治療するのに潜在的に有用な化合物を同定する方法であって、ACC2スプライスバリアントの複合体またはその複合体の活性または量を調節するその能力に関して化合物をアッセイすることを含んでなる上記方法にも、関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、アセチルCoAカルボキシラーゼ2(ACC2)のスプライスバリアントをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離された核酸分子に関する。また、本発明は、前記核酸によりコードされる対応するポリペプチド、ならびに脂肪酸酸化能の障害に関連する疾患または障害を治療するのに潜在的に有用な化合物を同定する方法に関し、ここで該方法は、ACC2スプライスバリアント複合体もしくはその複合体の活性または量を調節するその能力について、化合物をアッセイすることを含んでなる。
【0002】
発明の背景
多くの最近の知見によれば、タンパク質多様性(単一の遺伝子から生じる多様性の程度について、場合によっては免疫系にも匹敵する)の発生元として、選択的プレmRNAスプライシングが挙げられている。選択的スプライシングのゲノム規模での解析に基づき、ヒト遺伝子の40〜60%ほどが、選択的スプライス形態を有すると予測されている。この過程により、構成的エキソンにより供される定常フレームワークにおけるいくつかのエキソンの、所望による包含または置換が可能になる。生じるタンパク質のアイソフォームは、特定の機能ドメイン間で一般的に異なるものの、共通の機能を有する(Lopez AJ. Annu Rev Genet, 32:279-305, 1998年;Graveley. Trends Genet. 17:100-107, 2001年)。また、選択的スプライシングにより、オープンリーディングフレームの中途での終結や、さらには、二つの異なるリーディングフレームにおける同じmRNA配列の使用が導かれることがある(Quelleら、Cell. 83:993-1000, 1995年)。したがって、選択的スプライシングは、タンパク質に関する主要な機能的結論を有する可能性があり、タンパク質多様性が生じる際の選択的スプライシングの全体的な意義は、その広範性及び一部の遺伝子の極限の組み合わせ出力による。
【0003】
過去25年間に、肥満の発生率及び重症度の憂慮すべき増加が明らかになっている。これは、先進国と新興の第三世界国の双方で起こっている。例えば、米国人口の半分よりも多くが、過体重に冒されている。過剰の体重(西洋社会ではBMI>27、アジアでは>25)は、2型糖尿病、高血圧、異脂肪血症、循環器疾患、変形性関節炎及び一部の癌のリスク増加に関連する。体重減少は、これらの罹患の多くに著明な効果を有する可能性があり、例えば、2型糖尿病への進行は、ほとんどの場合予防可能である。しかしながら、有意かつ有益な体重減少は容易に達成可能であるにもかかわらず、最大の課題はその維持であり、体重回復は大多数の者にとって不可避である。したがって、この問題を特に解決する抗肥満剤によれば、主要な満たされていない臨床的ニーズを満たされるであろう。
【0004】
骨格筋は、全身の脂質酸化の大部分に関与しており、筋肉に送達される脂質の主要な運命は、酸化力のある燃料としての使用のためである。血漿中の非エステル化遊離脂肪酸(NEFA)は、空腹時及び軽度の運動において筋肉の燃料ニーズの80〜90%を占めるが、一方、循環、細胞間または細胞内トリアシルグリセリド(TAG)由来脂肪酸は、燃料の需要がより持続する場合に、ほとんどの脂質酸化を占める。筋肉の脂質代謝の制御は、基質の利用可能度、及びそれに続く細胞内での遊離脂肪酸の輸送に依存する。遊離脂肪酸基質の筋肉への送達は、TAGの形態で最初にエステル化された遊離脂肪酸の動員及び輸送に依存する。肥満においては、遊離脂肪酸が過剰供給されることにより、TAG合成に向けての代謝及び筋肉内貯蔵が促進される。現在では、インスリン抵抗性が、骨格筋における過剰の筋肉細胞内TAGと密接に関連することが、確立されている((Krssakら、Diabetologia 42:113-6, 1999年)。
【0005】
臨床において、体重減少維持の失敗は、脂肪酸酸化の障害と強く関連し(Valtuenaら、Int J. Obes. Relat. Metab. Disord. 21:811-7, 1997a; Valtuenaら、Int. J. Obes. Relat. Metab. Disord. 21:267-732, 1997b)、肥満の薬物療法における主な障害である。概念的には、骨格筋などの酸化力のある組織においてアセチルCoAカルボキシラーゼ2(ACC2)により生成するマロニルCoAが減少すると、脂肪酸酸化速度が高くなり、呼吸商(RQ)が低下することが期待されることになる。したがって、これは、体重減少後の肥満患者において、酸化の潜在性を向上する可能性がある。したがって、ACC2がないとマウスで痩せたフェノタイプが生じることから、ACC2は、有望な抗肥満標的として提唱されており(Abu-Elheigaら、Science 291:2613-2664, 2001年)、そしてその阻害は、マロニルCoAの低下を介した、レプチンにより誘導される脂肪酸酸化の増加における後期工程である。
【0006】
アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)には、二つの公知のアイソフォームが存在する。細胞質型で肝臓及び脂肪組織に優性発現するACC1(ACCα)と、ミトコンドリアに会合していると考えられ、骨格筋及び心臓に主に発現するACC2(ACCβ)である。アセチルCoAカルボキシラーゼは、ATPにより駆動されるアセチルCoAのカルボキシル化を触媒して、マロニルCoAを形成する。ACC1によって生成するマロニルCoAは脂肪酸合成において用いられる一方、ミトコンドリア表面で局所的にACC2によって形成されることが想定されるマロニルCoAは、パルミトイルCoAシャトル系(CPT−1)を制御する。マロニルCoAは、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1(CPT−1)の強力な阻害剤であり、そしてその結果として、これは、脂肪酸のミトコンドリアへの流入を減少させる。このように、ACC2活性が低下すると、局所的なマロニルCoAレベルが低下し、脂肪酸β酸化が増加するとともに、トリアシルグリセロール(TAG)合成が低下することになる(Munday. Biochem Soc Trans. 30:1059-64, 2001年)。
【0007】
このように、アセチルCoAカルボキシラーゼ(EC 6.4.1.2)は、炭素結合形成リガーゼの酵素ファミリーに属する。ビオチンをコファクターとして用いて、ACCは、ATPにより駆動される複数工程の反応においてアセチルCoAをカルボキシル化して、マロニルCoAを形成する:
【0008】
【化1】

【0009】
ヒトアセチルCoAカルボキシラーゼ2は、ミトコンドリア外膜中の疎水性N末端にアンカーすると考えられている(Abu-Elheigaら、Proc Natl Acad Sci U S A. 97(4):1444-9, 2000年)。該酵素は、2458アミノ酸の大きな単一ポリペプチド鎖(〜280kDa)上に三つの機能ドメインを有し、これらは協働して上記に示す一部の反応を行う。
【0010】
ACC1は、重合、脱重合及びリン酸化によって短期間に制御されることが知られている。クエン酸は、ACCの生理学的アロステリック活性化因子であると考えられ、そしてACC1プロトマーのフィラメント様構造への複数工程の重合を誘導することが実証されている。クエン酸の結合は、不活性ACC1プロトマーの最初のコンフォメーション変化を引き起こし、これは、続くダイマー形成(4個のACC1ペプチドから構成される「ダイマー」)を誘発する。この最初の複合体形成は、ACC重合の全体における律速段階であると考えられている。ACC2もまた、クエン酸により活性化されることが実証されている。しかしながら、ACC2単量体/プロトマーのミトコンドリア外膜への付着が、酵素が重合可能な程度を制限すると予想されるため、メカニズムは明らかでない。新規に発見されたACC2のスプライスバリアントであるACC2(1b)は、膜結合配列を欠損し、クエン酸により誘導されるACC2との多量体を形成する際の細胞質内のパートナーであることが示唆されている。
【0011】
しかしながら、カルボキシラーゼ反応のクエン酸活性化は、酵素の二量体と多量体の双方の出現に先行するかのようにみえる。この知見は、酵素の代謝回転の開始が酵素複合体の形成に依存しておらず、したがって、ミトコンドリアのマロニルCoA形成における、想定されるACC2−ACC2(1b)の連携を必要としないことを示唆している。その代わり、重合の機能及び重要性は、例えばAMPK及び/またはcAMP PKなどのキナーゼによるリン酸化を不活化することによる、ACC代謝回転の構造的な保護であると考えられている。このように、ACC2プロトマーは、クエン酸によって最初に活性化されるにもかかわらず、急速に上記のキナーゼに接近可能となり、そしてACC2(1b)と会合していないならば、同時リン酸化によって遮断されることになる。したがって、ACC2−ACC2(1b)複合体形成を防ぐ化合物は、それ自体が活性化を防ぐのではなく、むしろ細胞のエネルギー制御機構による酵素の下流阻害を引き起こすことになる。このように、クエン酸によって誘導される複合体形成をブロックするようにACC及び/またはACC2(1b)と相互作用する化合物は、ミトコンドリア表面でのマロニルCoA生成を減速させ、そしてそれゆえにミトコンドリアにおける脂肪酸酸化速度を増加させるのにも、有用であることになる。免疫沈降試験より、ACC1とACC2のヘテロ二量体化の前例がある。ある試験において(Dyckら、Eur J Biochem 1999年)、ラット心臓ACC2と共沈降するより低分子量の産物が、単にストレプトアビジン−HRPを用いることによって(すなわち、ACC1を直接的にではなく、ビオチン標識したACC1サイズのタンパク質を同定することによって)、検出された。ACC2(1b)は、SDS−PAGEを用いて分離されるときに、ACC1とほぼ同じ速度で移動することが予想される。しかしながら、同じ研究者が、ACC1に対する特異的抗体を用いるときに、ACC−2がACC1と免疫共沈降することを示していることにも、留意すべきである。へテロ二量体形成に関するさらなる裏づけは、ラット肝臓ACC1とACC2の免疫共沈降実験(Winzら、JBC 269(20):14438-14445, 1994年)からもたらされ、ここでは、二つのアイソフォームから構成される1:1複合体が報告されている。加えて、ACC1及びACC2は、非変性PAGEにかけた場合に一緒に移動することが実証された。骨格筋及び心臓などの酸化力のある組織においてACC1が比較的少量であることは、これらの器官において、例えばACC2(1b)などの別の制御パートナーがあることを、示唆している。
【0012】
ACC2をコードする遺伝子は第12染色体上に位置し、そしてゲノム配列はEMBL登録AC007637に開示されている。ヒトACC2のcDNA配列は、EMBL登録HSU89344に見つけられる。この二つの配列の配列比較により、ヒトACC2遺伝子が52個のコーディングエキソンからなることが示される。また、配列を比較することにより、公表されたACC2のcDNA配列における多数の誤りが確認される。したがって、本発明者は、ACC2のcDNAをクローニングし、そして再度配列決定した。補正された配列を、配列番号2に示す。 関連するタンパク質。ACC2遺伝子を表すと考えられるマウスゲノム配列は、ヒト酵素と最も高い相同性(〜91%)を示す。ラットACC2の誤りの多いデータベース配列は、ヒトACC2と83%の同一性を有する。ヒトのACC1とACC2は、76%の同一性である(類似性〜82%)。
【0013】
発明の概要
本発明は、本明細書でACC2(1b)と称される、ACC2のスプライスバリアントの発見から生じる。ACC2(1b)のmRNAは、ヒト骨格筋、心臓、脂肪組織及び肝臓中に検出されている。該スプライスバリアントは、膜アンカードメインを欠損し、そしてACC2の制御パートナーであって、膜にアンカーするACC2とともにクエン酸により誘導されるポリマーを形成すると考えられている。加えて、ACC2(1b)は、脂肪酸酸化のコントロールにおいてマロニルCoA軸の一部を構成する上流/下流のキナーゼ及びホスファターゼの制御作用の、潜在的なメディエーターである。本発明の目的は、肥満、2型糖尿病、異脂肪血症、及び脂肪酸酸化能の障害に関連する他の障害などの代謝性疾患の理解において重要な役割を有するタンパク質を、提供することである。本目的は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するアセチルCoAカルボキシラーゼ2(ACC2)のスプライスバリアント、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有するバリアント、あるいは配列番号1に開示される配列と同義語コドンの置換のみにより異なるバリアントであって、膜結合能を欠損する上記バリアントをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離された核酸分子を提供するという点において、達成されている。このスプライスバリアントを、野生型ACC2と同じスクリーニング、診断、療法等に用いることが可能である。
【0014】
本発明のさらなる側面によると、上記の核酸を含んでなるプラスミドが、提供される。さらに、配列番号1のアミノ酸配列、それと少なくとも85%の配列同一性を有する配列、またはそのC末端切断型を含んでなるポリペプチドであって、膜にアンカーすることができない前記ポリペプチドを生成するための方法であって、
a) ACC2スプライスバリアントポリペプチド、またはそれと少なくとも85%配列同一性を有するポリペプチド、またはそのC末端切断型であって、膜にアンカーすることができない上記ポリペプチドをコードする核酸配列を含んでなる発現ベクターを含有する宿主細胞を、ポリペプチドの発現に適した条件下で培養すること; 及び、
b) 宿主細胞培養物から、該ポリペプチドを回収すること;
を含んでなる上記方法が、提供される。
【0015】
本発明のさらに別の側面によると、配列番号1に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも85%の類似性を有する配列を含んでなる単離されたポリペプチドであって、膜結合が不可能な上記ポリペプチドが、提供される。
【0016】
本発明の別の側面によると、選択的にACC2スプライスバリアントと結合可能な精製抗体が、提供される。
本発明の一側面によると、脂肪酸酸化能の障害に関連する疾患または障害の治療のための、ACC2スプライスバリアントの活性または量を調節可能な化合物の使用が、提供される。
【0017】
本発明の別の側面によると、脂肪酸酸化能の障害に関連する疾患または障害を治療するのに潜在的に有用な化合物を同定する方法であって、ACC2スプライスバリアントのタンパク質の活性または量のその調節能に関して化合物をアッセイすることを含んでなる上記方法が、提供される。
【0018】
本発明の別の側面によると、単離されたACC2−ACC2(1b)タンパク質複合体が、提供される。したがって、脂肪酸酸化能の障害に関連する疾患または障害を治療するのに潜在的に有用な化合物を同定するための方法であって、ACC2とACC2スプライスバリアントを含んでなる複合体の活性または量のその調節能に関して化合物をアッセイすることを含んでなる上記方法が、提供される。
【0019】
さらに、野生型ACC2とACC2(1b)スプライスバリアントを含んでなる複合体は、マロニルCoAを生成する酵素の生理学的な形態である。したがって、今回初めて、この複合体を、組換え技術を用いてin vitroで調製することが可能である。したがって、この複合体を、肥満、2型糖尿病、異脂肪血症、及び脂肪酸酸化能の障害に関連する他の障害などの代謝性疾患の治療において潜在的な治療の利点を伴う化合物を同定するためのスクリーニングにて、用いることが可能である。
【0020】
さらに、ACC2スプライスバリアントの核酸に対して選択的な阻害核酸分子、またはACC2スプライスバリアントのタンパク質に対する選択的抗体の、脂肪酸酸化能の障害に関連する疾患または障害を治療するための薬剤の製造における使用が、提供される。加えて、ACC2とACC2(1b)スプライスバリアントの複合体に対して選択的な阻害核酸分子の、脂肪酸酸化能の障害に関連する疾患または障害を治療するための薬剤の製造における使用が、提供される。
【0021】
発明の詳細な説明
したがって、本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するACC2スプライスバリアント、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有するバリアント、または配列番号1に開示される配列と同義語コドンの置換のみにより異なるバリアントであって、膜にアンカーすることができない上記バリアントをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離された核酸分子を、提供する。本発明はまた、前記配列の相補体を含んでなる核酸分子も提供する。本発明はまた、出願の核酸分子を含有する発現ベクター、ならびに前記核酸で形質転換された宿主細胞も、提供する。本発明はまた、ACC2−ACC2(1b)複合体を形成するように、ACC2の野生型(膜アンカー)とスプライスバリアント型の双方を発現するための発現系も、提供する。本発明はまた、前記複合体の活性を調節する化合物のスクリーニングにおける、このACC2−ACC2(1b)複合体の使用も、提供する。本発明はまた、精製ACC2スプライスバリアントポリペプチド、具体的には、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するもの、それと少なくとも85%の配列同一性を有するもの、またはそのCもしくはN末端切断型であって、膜にアンカーすることができない上記バリアントも、提供する。本発明はまた、本発明のACC2スプライスバリアントの発現または活性を調節する化合物であって、具体的には肥満、2型糖尿病、異脂肪血症、及び脂肪酸酸化能の障害に関連する他の障害における治療価値を有してもよい化合物を同定するためのアッセイも、提供する。
【0022】
本発明の最初の側面によると、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するACC2のスプライスバリアント、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有するバリアント、あるいは配列番号1と同義語コドンの置換のみにより異なるバリアントであって、膜アンカー能を欠損する上記バリアントをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離された核酸分子が、提供される。一実施態様において、ACC2スプライスバリアントは、配列番号3に開示されるアミノ酸配列を含んでなる。
【0023】
本発明の別の側面によると、配列番号3に開示されるN末端の16アミノ酸配列を有するACC2ポリペプチド、またはこの16アミノ酸領域内に4アミノ酸未満の置換を伴うものであって、膜にアンカーすることができない上記バリアントをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離された核酸分子が、提供される。本発明の別の側面によると、1〜8位(配列番号4)により表されるシグナルペプチド/標的ペプチドドメインがないACC2ポリペプチドをコードする核酸配列を含んでなる、単離された核酸分子が、提供される。当業者に明らかであろうように、遺伝子コードの縮重は、コードされるタンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさない、所与のコード配列における多数のヌクレオチド置換を可能にする。このように、本発明はまた、掲載した配列中に開示されるヌクレオチド配列をコードするACC2スプライスバリアントのいずれかと、このような同義語コドンの置換のみにより異なる単離された核酸も、提供する。実施例10の遺伝子多型解析は、見いだされた個体間の差異の詳細を供する。
【0024】
本発明の具体的な実施態様において、核酸は、配列番号1に記載のヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチドを含んでなり、ここで前記核酸は、配列番号3に示されるN末端を有するACC2スプライスバリアントのポリペプチドをコードする。別の実施態様において、本発明はまた、配列番号3に開示されるポリペプチドのバリアントであって、それと少なくとも81%の配列同一性を有する前記バリアントをコードするヌクレオチド配列も、包含する。一実施態様において、核酸は、配列番号5に示されるヌクレオチド配列を含んでなる。
【0025】
別の側面において、本発明は、単離されたACC2(1b)ポリペプチドを提供する。一実施態様において、該ポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列;またはそれと少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する配列;またはそのC末端切断型を有する。具体的な実施態様は、配列番号3に示されるN末端配列を有するバリアントである。
【0026】
別の側面において、本発明は、特定の残基に対して保存的アミノ酸置換を行って、ACC2活性を保持する自然発生でないスプライスバリアントを作り出した、ACCスプライスバリアントタンパク質を、提供する。保存的置換は、好ましくは、触媒に関係していない部分にてなされる。
【0027】
「単離された」の語は、材料がその元の環境(例えば、自然に発生しているならば、自然環境)から取り出されることを意味する。例えば、生きている動物中に存在する自然発生ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されないが、しかし、自然系において共存する材料の一部または全部から分離される、同ポリヌクレオチドまたはDNAまたはポリペプチドは、単離される。このようなポリヌクレオチドは、ベクターの一部であることが可能であり、かつ/あるいは、このようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、組成物の一部であることが可能であり、そして、ベクターまたは組成物がその自然環境の一部でないという点で、なお単離されることが可能である。
【0028】
さらに別の側面において、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列、それと少なくとも85%の配列同一性を有する配列、またはそのC末端切断型を含んでなるポリペプチドであって、膜にアンカーすることができない前記ポリペプチドを産生するための方法を、提供する。該方法は、a)ACC2スプライスバリアントのポリペプチド、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有するポリペプチド、またはそのC末端切断型であって、膜にアンカーすることができない上記ポリペプチドをコードする核酸配列を含んでなる発現ベクターを含有する宿主細胞を、ポリペプチドの発現に適した条件下で培養すること;ならびに、b)宿主細胞培養物から、該ポリペプチドを回収すること;を含んでなる。
【0029】
適切な異種分泌シグナル(SUC2またはα因子由来のものなど)を用いて、培養液中へのポリペプチド分泌を確認するならば、このようなタンパク質を、細胞自体から、または培養液から回収することが可能である。
【0030】
さらに別の側面において、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列、それと少なくとも95%の配列同一性を有する配列、またはそのC末端切断型を含んでなるポリペプチドであって、配列番号3に示される配列もまた含んでなる前記ポリペプチドを産生するための方法を、提供する。該方法は、a)ACC2スプライスバリアントのポリペプチド、またはそれと少なくとも95%の配列同一性を有し、かつ配列番号3に示されるN末端の16アミノ酸を含んでなるポリペプチド、またはそのC末端切断型をコードする核酸配列を含んでなる発現ベクターを含有する宿主細胞を、ポリペプチドの発現に適した条件下で培養すること;ならびに、b)宿主細胞培養物から、該ポリペプチドを回収すること;を含んでなる。
【0031】
このように、別の側面において、本発明は、本発明の核酸で形質転換された細胞及び細胞株を、提供する。例えば、形質転換された細胞は、哺乳動物、細菌、酵母または昆虫の細胞であってもよい。
【0032】
本発明のさらなる側面によると、ACC2−ACC2(1b)複合体を調製するための方法であって、野生型及びスプライスバリアント型のACC2を発現可能な宿主細胞を、ポリペプチドの発現に適した条件下で培養し;(b)該ポリペプチドに複合体を形成させ;そして、(c)該複合体を回収すること;を含んでなる上記方法が、提供される。
【0033】
本発明の別の側面によると、単離されたACC2−ACC2(1b)タンパク質複合体が提供される。前記の単離されたタンパク質複合体は、膜調製物または画分上に存在するか、またはそれと会合してもよい。
【0034】
本発明の別の側面によると、治療への潜在性を有する化合物のスクリーニングにおける、組換えにより産生したACC2−ACC2(1b)複合体の使用が、提供される。
本発明の別の側面によると、治療への潜在性を有する化合物のスクリーニングにおける、単離されたACC2−ACC2(1b)複合体の使用が、提供される。
【0035】
別の側面において、本発明は、ACC2スプライスバリアントに選択的に結合する精製抗体、ならびに本発明のACC2スプライスバリアントのタンパク質と選択的に結合する抗体を作製するための方法を、提供する。選択的に結合するとは、天然の全長ACC2またはその任意の一部、あるいはACC2スプライスバリアント以外の任意の他のタンパク質またはポリペプチドに実質的に結合できないことを意味する。当業者は、選択的抗体を設計及び調製するために、野生型ACC2とそれに対する種々のスプライスバリアント型との間のアミノ酸配列の差異を同定することが可能である。重要な差異は、N末端領域にある。本明細書では、抗体結合に関して、「選択的な」及び「特異的な」の語を同義的に用いる。
【0036】
本発明の別の側面において、ACC2スプライスバリアントの活性または量を調節することが可能な化合物の使用であって、肥満、2型糖尿病、異脂肪血症、及び脂肪酸酸化能の障害に関連する他の障害などの疾患の治療のための上記使用が、提供される。
【0037】
本発明のACC2スプライスバリアントの量の調節を、例えば遺伝子発現レベルまたはメッセージ安定性の変化を介してもたらしてもよい。ACC2スプライスバリアントの活性の化合物による調節を、例えば、ACC2スプライスバリアントのタンパク質またはACC2−ACC2(1b)複合体に結合する化合物を介して、もたらしてもよい。一実施態様において、ACC2スプライスバリアントの調節は、ACC2スプライスバリアントの活性または量を低下させることが可能な化合物を含んでなる。別の実施態様において、ACC2スプライスバリアントの調節は、ACC2スプライスバリアントの活性または量を増加させることが可能な化合物を含んでなる。別の実施態様において、ACC2活性の調節は、ACC2−ACC2(1b)複合体の活性または量を阻害可能な化合物、あるいはそれ自体の複合体形成によって、影響を受ける。ACC2スプライスバリアントの活性を調節可能な化合物の例は、抗体である。抗体は、任意の適切な方法を用いて作製可能である。例えば、精製ポリペプチドを利用して、特異的な抗体を調製してもよい。「抗体」の語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ならびに、例えばF(ab’)、Fab及び一本鎖Fvなどの種々のタイプの抗体コンストラクトを含むことが、意図される。抗体は、約10−1を超えるかまたはそれと同等のKにて結合するならば、特異的に結合していると定義される。結合親和性を、例えば、Scatchardら、Ann. N.Y. Acad. Sci., 51:660(1949年)に記載されるものなどの、慣用の技術を用いて、測定することが可能である。
【0038】
ポリクローナル抗体を、例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ニワトリ、ウサギ、マウスまたはラットなどの多様な源から、当該技術分野において周知の手順を用いて、容易に作出することが可能である。一般には、抗原を、典型的には非経口注射を介して、宿主動物に投与する。抗原の免疫原性を、例えばフロイント完全もしくは不完全アジュバントなどのアジュバントの使用を介して、増強してもよい。追加免疫に続いて、少量の血清試料を採取し、そして抗原に対する反応性について検査する。このような測定に有用な種々のアッセイの例としては、「Antibodies: A Laboratory Manual」(Harlow及びLane(編集)、コールドスプリングハーバー研究所プレス、1988年)に記載のもの;ならびに、向流免疫電気泳動(CIEP)、ラジオイムノアッセイ、放射性免疫沈降、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ドットブロットアッセイ及びサンドイッチアッセイなどの手順が挙げられ、米国特許第4,376,110及び第4,486,530を参照されたい。
【0039】
モノクローナル抗体を、周知の手順を用いて容易に調製してもよく、例えば、米国特許第RE 32,011;第4,902,614;第4,543,439及び第4,411,993;「Monoclonal Antibodies, Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses」(Plenum Press, Kennett, McKearn及びBechtol(編集)(1980年))を参照されたい。
【0040】
本発明のモノクローナル抗体を、Alting-Meesらの「Monoclonal Antibody Expression Libraries: A Rapid Alternative to Hybridomas」(Strategies in Molecular Biology 3: 1-9(1990年))に記載されるものなどの別の技術を用いて、作製することが可能である。該文献は、参照によって本明細書に記載されているものとする。同様に、結合パートナーを、特異的結合抗体をコードする遺伝子の可変領域を組み入れるための組換えDNA技術を用いて、構築することが可能である。このような技術は、Larrickら(Biotechnology 7: 394、1989年)において記載されている。
【0041】
単離及び精製した後に、抗体を用いて、確立されたアッセイプロトコールを用いて、試料中の抗原の存在を検出してもよく、例えば、D. M. Kemenyによる「A Practical Guide to ELISA」(ペルガモンプレス、オックスフォード、英国)を参照されたい。
【0042】
本発明の別の側面によると、肥満、2型糖尿病、異脂肪血症、及び脂肪酸酸化能の障害に関連する他の障害の治療のための薬剤の調製における、ACC2スプライスバリアントの活性または量を調節可能な化合物の使用が、提供される。
【0043】
このように、本発明はまた、本発明のACC2スプライスバリアントの遺伝子もしくはタンパク質の発現または活性を調節可能な、小分子または他の化合物を同定するためのアッセイも、提供する。このようなアッセイを、形質転換されていない細胞、確立された細胞株または本発明の形質転換された細胞を用いてin vitroで、あるいは、正常な非ヒト動物またはトランスジェニック動物を用いてin vivoで、行ってもよい。
【0044】
具体的には、アッセイは、本発明の核酸の発現の変化(増加または減少)、このような核酸によりコードされるタンパク質産物レベルの増加または減少、あるいはこのようなタンパク質の活性の増加または減少の存在を検出してもよい。
【0045】
本発明のさらに別の側面によると、肥満、2型糖尿病、異脂肪血症、及び脂肪酸酸化能の障害に関連する他の障害などの疾患の治療に潜在的に有用な化合物を同定する方法であって、ACC2スプライスバリアントの活性または量の調節能について化合物をアッセイすることを含んでなる上記方法が、提供される。好ましくは、アッセイは、
i)ACC2スプライスバリアントを発現する細胞株を用いるか、または精製ACC2スプライスバリアントタンパク質を用いた、ACC2スプライスバリアントの活性の測定;
ii)ACC2スプライスバリアント及びACC2野生型を発現する細胞株を用いるか、または精製ACC2−ACC2(1b)タンパク質複合体を用いた、ACC2活性の測定;ならびに、
iii)ACC2スプライスバリアントを発現する細胞株における、ACC2スプライスバリアントの転写または翻訳の測定;
から選択される。
【0046】
該方法は、単離されたACC2とACC2(1b)スプライスバリアントの複合体を用い、そしてマロニルCoA生成に関して前記複合体の活性を測定することによって、実行可能である。該測定は、無細胞アッセイにおいては、前記複合体により形成された生成した無機リン酸塩のマラカイトグリーン検出を用いて、または14CO14C−マロニルCoAへの取り込みの測定によって、実行可能である。該方法は、細胞ベースアッセイにおいては、ACC2とACC2(1b)スプライスバリアントの複合体を発現する細胞株を用いて、ACC2とACC2(1b)スプライスバリアントの複合体の活性を測定することによって、実行可能である。ACC2とACC2(1b)スプライスバリアントの複合体を発現する細胞株を用いて、ACC2とACC2(1b)スプライスバリアントの複合体の転写及び/または翻訳の測定を実行可能である。一実施態様において、疾患または障害は、肥満、2型糖尿病または異脂肪血症からなる群より選択される。
【0047】
ACC2スプライスバリアントの転写または翻訳に対する試験化合物の効果を測定するために用いられるアッセイは、
i) 例えばノーザンブロット解析または定量性リアルタイムPCRを用いた、形成されたACC2スプライスバリアントmRNAの量の測定;
ii) 例えばウエスタンブロット解析またはELISAなどの免疫化学的解析を用いた、形成されたACC2スプライスバリアントタンパク質の量の測定;
iii) ACC2スプライスバリアントを発現する細胞における、上述のようなACC2スプライスバリアントの活性の測定;
に基づくことが可能である。
【0048】
アッセイにおいて用いられる細胞は、ACC2スプライスバリアントを天然に発現する細胞か、または組換えACC2スプライスバリアントを発現するトランスフェクトされた細胞であることが可能である。好ましくは、ACC2スプライスバリアントは、ヒト組換えACC2スプライスバリアントである。
【0049】
単独の、または野生型ACC2と共発現させたACC2スプライスバリアントを、細菌、植物細胞、昆虫細胞、真菌細胞ならびにヒト及び動物細胞などの多様な宿主において発現させてもよい。組換え真核宿主細胞が、特に好ましい。例としては、酵母、ならびにヒト、ウシ、ブタ、サル及びげっ歯類起源の細胞株を始めとする哺乳動物細胞、ならびに、ショウジョウバエ及びカイコ由来細胞株を始めとする昆虫細胞が挙げられる。用いられてもよく、かつ市販されている哺乳動物種由来細胞株としては、L細胞L−M(TK−)(ATCC CCL 1.3)、L細胞L−M(ATCC CCL 1.2)、HEK 293(ATCC CRL 1573)、Raji(ATCC CCL 86)、CV−1(ATCC CCL 70)、COS−1(ATCC CRL 1650)、COS−7(ATCC CRL 1651)、CHO−K1(ATCC CCL 61)、3T3(ATCC CCL 92)、NIH/3T3(ATCC CRL 1658)、HeLa(ATCC CCL 2)、C127I(ATCC CRL 1616)、BS−C−1(ATCC CCL 26)及びMRC−5(ATCC CCL 171)が挙げられる。
【0050】
単独の、または野生型ACC2と共発現させたACC2スプライスバリアントをコードする核酸を含んでなる発現ベクターを、リン酸カルシウム形質転換、DEAE−デキストラン形質転換、陽イオン性脂質を介したリポフェクション、電気穿孔または感染を始めとする多数の技術のいずれか一つを介して、宿主細胞に導入して、ポリペプチドを発現させてもよい。
【0051】
形質転換された宿主細胞を、例えば限界希釈によって、増殖させ、そしてクローン化し、そして解析して、組換えACC2スプライスバリアント/野生型ACC2の発現レベルを測定する。単独の、または野生型ACC2を伴うACC2スプライスバリアントを発現する形質転換された宿主細胞の同定を、抗体との免疫学的反応性及び/または本明細書に記載されるアッセイを用いた生物活性の検出を始めとするいくつかの手段によって、成し遂げてもよい。
【0052】
遺伝子発現の転写制御は、遺伝子の転写を媒介する転写因子の結合を指示するプロモーター中の特定のDNAエレメントによって、媒介される。真核細胞の転写因子を、二つの主な群:i)転写の開始に近位のプロモーター配列と相互作用し、それによってRNAポリメラーゼIIの動員により転写を開始する、基本転写因子、ならびに、ii)特定の遠位プロモーターエレメントに結合し、それによって基本転写機構との接触により転写を調節する、転写因子;に分けることが可能である。真核生物体における基本的な生理学的過程とは、細胞がその環境と連絡し、そしてホルモン及び成長因子などのシグナリング分子を介した細胞外刺激に応答することが可能であるということである。このようなシグナリングの最終的な事象は、転写因子が特定の遠位プロモーターエレメントに結合して、例えば、遺伝子発現の増加または組織特異的な遺伝子発現へと導くことである。それらの制御的役割のために、プロモーターエレメントは、治療剤のスクリーニングのための推定される標的である。
【0053】
適切な宿主細胞は、ACC2スプライスバリアントを発現することが公知の細胞であるか、またはACC2スプライスバリアントの転写に影響を与えることが可能な転写因子を発現することが公知の細胞である。好ましくは、特定の転写因子をコードするDNAでトランスフェクトした宿主細胞を用いて、定義された転写因子とACC2スプライスバリアントのプロモーターとの相互作用を研究することが可能である。
【0054】
ACC2スプライスバリアントの転写に対する試験化合物の効果を測定するために用いられるアッセイは、レポーター遺伝子系を用いたACC2スプライスバリアントのプロモーター活性の測定に基づくことが可能である。レポーター遺伝子系は、ACC2スプライスバリアントのプロモーターを構成している核酸分子またはそのフラグメントを含んでなる発現系であり、ここで、発現系はレポーター遺伝子をさらに含んでなり、プロモータ及びレポーター遺伝子は、レポーター遺伝子の発現がACC2スプライスバリアントのプロモーターによって制御されるように配置される。形成されるレポータータンパク質の量は、ACC2スプライスバリアントのプロモーター活性の指標として用いられる。
【0055】
レポーター遺伝子系の構築に用いることが可能な適切なレポーター遺伝子は、例えば、ホタルルシフェラーゼ遺伝子、細菌クロラムフェニコールアセチル転移酵素(CAT)遺伝子、β−ガラクトシダーゼ(β−GAL)遺伝子及び緑色蛍光タンパク質(GFP)である。
【0056】
本発明の別の側面によると、医薬組成物を調製する方法であって、
i) 肥満、2型糖尿病、異脂肪血症、及び脂肪酸酸化能の障害に関連する他の障害などの疾患の治療に有用な化合物を、本明細書に記載されるような方法によって同定すること;ならびに、
ii) 化合物または医薬的に許容可能なその塩を、医薬的に許容可能な賦形剤または希釈剤と混合すること;
を含んでなる上記方法が、提供される。
【0057】
診断または予後への適用は、各スプライスバリアント型の相対量の測定に基づいて、存在してもよい。治療への適用のさらなる方法は、種々のスプライスバリアント型の発現または量を調節することによって利用可能であってもよい。
【0058】
このように、本発明のさらなる側面によると、肥満、2型糖尿病、異脂肪血症、及び脂肪酸酸化能の障害に関連する他の障害などの疾患を発症する個体の感受性を判定する方法であって、個体が発現するACC2の野生型とスプライスバリアント型の相対量を測定し、そして肥満、2型糖尿病、異脂肪血症、及び脂肪酸酸化能の障害に関連する他の障害などの疾患を発症する個体の感受性を、存在する相対量に基づいて判定することを含んでなる上記方法が、提供される。
【0059】
本発明のさらなる側面によると、肥満、2型糖尿病、異脂肪血症、及び脂肪酸酸化能の障害に関連する他の障害などの疾患の重症度を診断する方法であって、個体が発現するACC2の野生型とスプライスバリアント型の相対量を測定し、そして疾患の重症度を存在する相対量に基づいて判定することを含んでなる上記方法が、提供される。
【0060】
一実施態様においては、ACC2の型の量を、筋肉の生検試料より測定する。さらなる実施態様において、該診断方法を用いて、治療のタイプを評価することが可能である。さらなる実施態様において、該方法を用いて、個体が発現するACC2の全長型とスプライスバリアント型の相対量を、治療の間にモニターすることによって、個体の治療の有効性を評価することが可能である。例えば、治療の前、間及び後にモニターすることによる。
【0061】
別の側面において、本発明はまた、脂肪酸酸化能の障害に関連する障害を有する個体を診断する方法であって、本発明のACC2スプライスバリアントの存在または相対量について個体をアッセイすることを含んでなる上記方法も、提供する。特定の実施態様において、該障害は肥満である。適切なアッセイとしては、核酸ベースのアッセイ(本発明の核酸、または本発明の核酸を特異的に同定可能なものを用いる)及びタンパク質ベースのアッセイ(本発明の抗体またはポリペプチドを用いる)が挙げられる。
【0062】
本発明のさらに別の側面において、患者から得たDNA試料中のACC2スプライスバリアント遺伝子またはその選択部分の配列解析を含んでなる診断方法であって、肥満、2型糖尿病、異脂肪血症、及び脂肪酸酸化能の障害に関連する他の障害などの疾患を発症する感受性を判定するための上記方法が、提供される。
【0063】
本発明による遺伝子の知識はまた、例えばアンチセンスDNAもしくはRNAの使用による、in vivoでその発現を制御する能力も、提供する。特定の遺伝子または遺伝子転写物(例えば、本明細書において特定されたACC2スプライスバリアント)の発現レベルを阻害するかまたは弱める一つの治療手段は、アンチセンス療法を用いることである。アンチセンス療法は、DNAまたはRNAの合成セグメント(「オリゴヌクレオチド」)であって、特定のmRNA配列を鏡映し、かつタンパク質産生をブロックするよう設計された、アンチセンス核酸分子を利用する。形成されると、mRNAは、効果的にRNA配列を読み、そして遺伝子により指示された特定のタンパク質分子を製造する細胞のタンパク質産生「工場」であるリボソームに、結合する。アンチセンス分子が、(例えば、天然オリゴヌクレオチドとして、または適切なアンチセンス発現ベクターを介して)細胞に送達されるならば、それは、その配列が標的塩基配列の相補体であるよう設計されているため、メッセンジャーRNAに結合する。二つの鎖が結合すると、mRNAは、コードされたタンパク質のリボソームによる製造をもはや指示することができず、そして細胞の酵素によって急速に分解され、それによってアンチセンスオリゴヌクレオチドを解放して、これが別のmRNA同一メッセンジャー鎖を求め、そして不能にする。
【0064】
本明細書にて教示されるACC2スプライスバリアントの遺伝子及びmRNA配列を知った上で、当業者は、適切なアンチセンス核酸の治療用分子を設計し、そしてそれを必要に応じて投与することが可能である。
【0065】
治療の潜在性を伴うアンチセンスオリゴヌクレオチド分子を、確立された技術を用いて実験により判定することが可能である。本発明のACC2スプライスバリアント遺伝子の発現を低下させる方法を、哺乳動物細胞において可能にするため、アンチセンス発現コンストラクトの例を、例えばpREP10ベクター(インビトロジェン・コーポレーション)を用いて、容易に構築することが可能である。転写物は、このタイプのコンストラクトでトランスフェクトされた細胞において、遺伝子の翻訳を阻害することが予想される。アンチセンス転写物は、天然の遺伝子転写物の翻訳を阻害するのに有効であり、そして本明細書に記載される効果(例えば、組織生理の制御)を誘導することが可能である。ACC2スプライスバリアント遺伝子のmRNAのいずれの部分とも相補的かつハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドは、治療での使用が意図される。1997年6月17日に発行された米国特許第5,639,595「Identification of Novel Drugs and Reagents」には、in vivo活性を呈するオリゴヌクレオチド配列を同定する方法について完全に記載されている。該出願は、参照により本明細書に記載されているものとする。ACC2スプライスバリアント遺伝子配列由来のランダムなオリゴヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを、細胞に形質転換する。次いで、細胞を、所望のオリゴヌクレオチド活性がもたらすフェノタイプに関してアッセイする。所望のフェノタイプの細胞が同定されたならば、所望の活性を有するオリゴヌクレオチドの配列を同定することが可能である。同定は、ベクターを回収することによって、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって、ならびに挿入された核酸材料を含有する領域の配列決定により、遂行してもよい。アンチセンス分子を、アンチセンス療法用に合成してもよい。これらのアンチセンス分子は、DNA、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートなどのDNAの安定誘導体、2’−O−アルキルRNAなどのRNAの安定誘導体、あるいは他のオリゴヌクレオチドミメティックであってもよい。1997年7月29日に発行された米国特許第5,652,355「Hybrid Oligonucleotide Phosphorothioates」、または1997年7月29日に発行された米国特許第5,652,356「Inverted Chimeric and Hybrid Oligonucleotides」は、生理学的に安定なアンチセンス分子の合成及び効果について記載しており、該出願は、参照により本明細書に記載されているものとする。アンチセンス分子を、マイクロインジェクション、リポソーム封入によって、またはアンチセンス配列を保有するベクターからの発現によって、細胞内に導入してもよい。
【0066】
上記のように、アンチセンス核酸分子をRNAとしても提供してよく、これは、いくつかの安定型RNAが長い半減期を有し、ベクターを使用せずに直接的に投与されてもよいことが、現在、当該技術分野において公知のためである。加えて、DNAコンストラクトを、リポソーム、受容体を介したトランスフェクション、及び当該技術分野に公知の他の方法によって、細胞に送達してもよい。
【0067】
標的遺伝子と連携するためのアンチセンスDNAまたはRNAを、慣用の手段を用いて、上述のような標準的な分子生物学及び/または化学合成によって作製することが可能である。所望の場合には、アンチセンスDNAまたはアンチセンスRNAを、in vivoでの分解を防ぐように、または細胞膜を介して継代を促進するように化学修飾してもよく、ならびに/あるいは、例えばリボザイムなどのmRNAを不活化可能な物質を、それと連結させてもよく、そして本発明はこのようなコンストラクトにまで及ぶ。
【0068】
アンチセンスDNAまたはアンチセンスRNAを、ACC2スプライスバリアント遺伝子産物の産生が過剰に制御されているか、または制御が十分でないことに関わるヒトにおける疾患または障害の治療に、利用してもよい。
【0069】
あるいは、リボザイム分子を、in vivoでACC2スプライスバリアントmRNAを切断及び破壊するよう設計してもよい。リボザイムは、高度に特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するRNA分子である。ハンマーヘッド型リボザイムは、ヌクレオチド配列において標的RNAの少なくとも一部と相補的なハイブリダイズする領域、ならびに標的RNAを認識し、そして切断するのに適応した触媒領域を、含んでなる。ハイブリダイズする領域は、好ましくは、少なくとも9ヌクレオチドを含有する。このようなリボザイムの設計、構築及び使用は当該技術分野において周知であり、そしてHaselhoff及びGerlach(Nature 334:585-591, 1988年)により十分に記載されている。別の選択肢では、三重らせん構造を形成するようにACC2スプライスバリアント遺伝子の5’領域とハイブリダイズするよう設計されたオリゴヌクレオチドを用いて、ACC2スプライスバリアント遺伝子の転写をブロックまたは低下させてもよい。別の選択肢では、プラスミドベクターにクローニングした、RNA干渉(RNAi)オリゴヌクレオチドまたは短い(18〜25bp)RNAiのACC2スプライスバリアント配列を、二本鎖RNAを哺乳動物細胞に導入してACC2スプライスバリアントのメッセンジャーRNAを阻害し、かつ/またはその分解をもたらすように設計する。ACC2スプライスバリアントのRNAi分子は、アデニン/アデニン(AA)または少なくとも(任意の塩基−A、U、CまたはG)Aで始まってもよく、そして好ましい長さが21塩基対である、18または19または20または21または22または23または24または25塩基対の二本鎖RNA分子からなってもよく、そして2個のヌクレオチド3’オーバーハング、またはヘアピン形成45〜50mer RNA分子を有する個々のACC2スプライスバリアント配列に特異的であってもよい。このような阻害RNA小分子の設計、構築及び使用は当該技術分野において周知であり、かつ以下により十分に記載されている:Elbashirら(Nature 411(6836):494-498, 2001年);Elbashirら(Genes & Dev. 15:188-200, 2001年);Harborth, J.ら(J. Cell Science 114:4557-4565, 2001年);Mastersら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:8012-8017, 2001年);及び、Tuschlら(Genes & Dev. 13:3191-3197, 1999年)。
【0070】
本発明のさらなる側面によると、ACC2スプライスバリアントタンパク質またはACC2−ACC2(1b)タンパク質複合体上で作用する小分子薬物、あるいはACC2スプライスバリアントmRNAに対して作用する阻害核酸分子を用いた治療を必要とするヒトを治療する方法であって、
i) ヒトから得た適切な試料中のACC2スプライスバリアントmRNAのレベルを、測定すること;
ii) ACC2スプライスバリアントmRNAの正常レベルを参照することにより、ヒトの状態を判定すること;及び、
iii) 有効量の薬物または阻害核酸分子を投与すること;
を含んでなる上記方法が、提供される。
【0071】
本発明のさらなる側面によると、ACC2スプライスバリアントタンパク質またはACC2−ACC2(1b)タンパク質複合体上で作用する小分子薬物、あるいはACC2スプライスバリアントmRNAに対して作用する阻害核酸分子を用いた治療を必要とするヒトを治療する方法であって、
i) ヒトから得た適切な試料中のACC2スプライスバリアントタンパク質またはACC2−ACC2(1b)タンパク質複合体のレベルを、測定すること;及び、
ii) 前記タンパク質の正常レベルを参照することにより、ヒトの状態を判定すること;及び、
iii) ACC2スプライスバリアントmRNAに対して作用する、有効量の薬物または阻害核酸分子を投与すること;
を含んでなる上記方法が、提供される。
【0072】
肥満、2型糖尿病、異脂肪血症、及び脂肪酸酸化能の障害に関連する他の障害を患う患者の治療方法であって、ACC2スプライスバリアントの転写または発現を低下させることが可能な化合物または核酸分子を患者に投与することを含んでなる、上記治療方法。
【0073】
肥満、2型糖尿病、異脂肪血症、及び脂肪酸酸化能の障害に関連する他の障害を患う患者の治療方法であって、ACC2スプライスバリアントmRNAを標的とする阻害核酸分子を患者に投与することを含んでなる、上記治療方法。
【0074】
肥満、2型糖尿病、異脂肪血症、及び脂肪酸酸化能の障害に関連する他の障害などの疾患を治療するための薬剤の製造における、ACC2スプライスバリアント核酸に対する阻害核酸分子、またはACC2スプライスバリアントタンパク質に対する抗体の使用。
【0075】
本発明の上記の側面のそれぞれにおいて、「阻害核酸分子」は、アンチセンス、リボザイム、三重らせん、アプタマー(aptemer)及びRNAi分子:からなる群より選択される。
【0076】
特に定義されない限り、本明細書において用いられるすべての技術用語及び科学用語は、本発明の属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記されるすべての出版物は、参照により本明細書に記載されているものとする。
【0077】
実験セクション
これより、本発明を、以下の非限定的な実施例に関して例示していくことにする。
パーキンエルマーCetus社から入手可能なAMPLITAQ(商標登録)を、熱安定性DNAポリメラーゼの源として用いる。
【0078】
本発明の実行には、特に示されない限り、当該技術分野における技能の範囲内にあるウイルス学、免疫学、微生物学、分子生物学及び組換えDNA技術の慣用の方法が用いられるであろう。このような技術は、文献において十分に説明されている。例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第3版)」(Sambrookら編集、コールドスプリングハーバー研究所プレス、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州(2001年)); 「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubelら編集、John Wiley & Sons、ニューヨーク、ニューヨーク州(2002年)); 「DNA Cloning 3: A Practical Approach, 第I、II及びIII巻」(Glover及びHames編集、IRLプレス、オックスフォード(1995年)); 「Methods in Enzymology」(Colowick及びKaplan編集、アカデミックプレス)、「Handbook of Experimental Immunology」(Weirら編集、第5版、Blackwell Scientific Publications, Ltd., エディンバラ(1997年)); 「Fields Virology(第3版)第I及びII巻」(Fields、Knipe及びHowley編集、Lippincott Williams & Wilkins Pubs.(1996年)); 「Principles of Virology: Molecular Biology, Pathogenesis, and Control」(Flintら編集、ASMプレス(1999年)); 「Current Protocols in Immunology」(Coliganら編集、John Wiley & Sons、ニューヨーク、ニューヨーク州(2002年))を参照されたい。
【0079】
本発明は、記載される特定の方法論、プロトコール、細胞株、ベクター及び試薬に限定されず、これらを変えてもよいことが、理解される。
【実施例】
【0080】
(実施例1)
ヒトアセチルcoaカルボキシラーゼ2の新規スプライスバリアントであるACC2(1b)のコンピューターによる予測
ヒトACC2の新規スプライスバリアントの配列を、新規の配列情報とコンピューターによる予測方法との組み合わせを用いて同定した。ヒトACC2のEMBL登録であるHSU89344を、ヒトゲノムDNAを含有するEMBL登録に対してBLAST検索した(Blast2 NCBI)。第12染色体から得たヒトBACクローンであるRCPI11-443D10は、ヒトACC2をコードする遺伝子を含有することが見いだされた。該クローンのゲノム配列は、EMBL登録AC007637に見つけられた。
【0081】
ヒトACC2の遺伝子構造を、HSU89344とAC007637との間の配列比較を用いて解析した。配列比較を用いてエキソンを予測し、そして正確なエキソン境界を、イントロンのスプライスコンセンサス部位を用いて予測した。配列比較は、ヒトACC2遺伝子が52個のコーディングエキソンからなることを示した。複数のミスマッチが、HSU89344の配列とAC007637のゲノム配列との間に見つけられた。ヒトACC2の補正された配列を、ACC2の予測されるコード配列を得るために、52個のコーディングエキソンの配列を貼り合わせることによって作製した。一事例において、HSU89344の配列の一部を、異型のスプライスシグナルに隣接するイントロン配列からなると予測し、そしてそれゆえに、ヒトACC2の予測される補正されたコード配列から削除した。
【0082】
予測されるヒトACC2配列を用いてEMBLのEST部分に対して行ったBlast2(NCBI)解析は、遺伝子エキソン2配列へとスプライスされる新規5’末端を有する二つのマウスEST配列(マウスEST BB854145及びBB866065)があることを示した。これら二つのESTの新規5’末端とヒトゲノムDNAとの間の配列比較は、該配列がヒトにおいて保存されていることを示した。さらに、この保存された配列は、別の開始ATGを含有し、そしてマウスとヒト双方のゲノムDNAにおいて、5’コンセンサススプライス部位が後に続くことが、見いだされた。したがって、この配列は、二者択一的に用いられるユニークなACC2の開始エキソンをコードするようである。このエキソンを、(HSU89344において用いられる開始ATGを含有するエキソン1aに対して)エキソン1bと称し、そして新たなエキソンを含む遺伝子構造のスキームを、図1に示す。
【0083】
ヒトACC2(1b)の新規スプライスバリアントのコード部分を、エキソン1bのコード配列を予測されるエキソン2〜52の配列へとスプライスすることによって、構築した(新規スプライス型の予測されるヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を、配列番号5及び1にそれぞれ示す)。
【0084】
図2に、ヒトACC2とヒトACC2(1b)のアミノ酸配列の配列比較を示す。配列比較は、以下のパラメータ:
ギャップの重み:8 平均マッチ:2.912
長さの重み:2 平均ミスマッチ:−2.003
質:11665 長さ:2461
割合:5.171 ギャップ:1
パーセント類似性:99.512 パーセント同一性:99.423
を用いたGCGギャップ(ウィスコンシン社)を用いて行った。
【0085】
(実施例2)
ヒトACC2のクローニング
組換えACC2産生のための手段を開発するために、ヒトACC2をコードするcDNAを、RT−PCRによってヒト骨格筋mRNAからクローニングした。ACC2の7.5kb配列を網羅する三つのフラグメント全部をPCR増幅し、そして複数のクローンを配列決定した。
【0086】
1〜3925の第一フラグメントを、ヒト心臓cDNAライブラリから、プルーフリーディングポリメラーゼpfu(ストラタジーン社)を用いてPCR増幅した。PCRに用いたプライマーは、それぞれ、順方向プライマーとして5’-ATGGTCTTGCTTCTTTGTCTATC-3’(配列番号6)、及び逆方向プライマーとして5’-GGCTGTTTAACACATAGGCGA-3’(配列番号7)であった。該産物を、「TA」クローニングベクターpCR2.1にクローニングし、大腸菌(E. coli)XL−10 Gold細胞(ストラタジーン社)に形質転換し、そして二本鎖を完全に配列決定した。
【0087】
それぞれ3250〜5356bp及び5335〜7302bpの第二及び第三フラグメントを、ヒト骨格筋cDNAから、Taq-plus Precision(ストラタジーン社)を用いてPCR増幅した。第二PCRフラグメントに関しては、5’-CAGAGCATGGTGCAGTTGGT-3’(配列番号8)を順方向プライマーとして、そして5’-CCATGTCTTCCAGGAGAGGTCC-3’(配列番号9)を逆方向プライマーとして用いた。第三PCRフラグメントに関しては、5’-TCGTCATCGGCAATGACATA-3’(配列番号10)を順方向プライマーとして、そして5’-GGTCCACCTCCGGCCC-3’(配列番号11)を逆方向プライマーとして用いた。該PCR産物を、pCR2.1−TOPOベクターにクローニングし、そして大腸菌(E. coli)Top 10細胞(インビトロジェン社)に形質転換し、そして二本鎖を配列決定した。
【0088】
その結果は、すべてのクローンのヌクレオチド配列が、公開されたcDNA配列(受入番号NM_001993)とは有意に異なるが、しかしヒトゲノムプロジェクトならびに公開データベース中に見つけられるESTから得られたゲノム配列とはかなり一致することを、示した。
【0089】
完全長のACC2 cDNAを、pCR2.1−TOPOベクターから消化されてできた三つのフラグメントの連結によって、貼り合わせた。これらのフラグメントは、1〜3288bp、3288〜5323bp及び5323〜7302bpを含み、BamH1部位を、二つの内部部位を繋ぎ合わせるために用いた。完全長cDNAを、哺乳動物発現ベクターpcDNA3.1(+)内に連結した。
【0090】
pcDNA−ACC2のCOS−7細胞及びHEK293細胞への一過性トランスフェクションにより、ヒトACC2に対する抗体によって検出されるように、高レベルのACC2発現が生じた。
【0091】
ヒトACC2のN末端領域におけるN末端選別シグナルのコンピューターによる予測を、iPSORT予測ソフトウェアを用いて行った(Bannaiら、Bioinformatics 18:2, 298-305, 2002年)。ヒトACC2(配列番号2)、及びコンピューターによるヒトACC2のN末端切り詰めを解析し、そしてiPSORTにより予測を行った。完全長ヒトACC2は、シグナルペプチドを包含することが予測された。配列:MVLLLの切り詰めは、iPSORT予測を「シグナルペプチド」から「ミトコンドリア輸送ペプチド」へと変える。配列:MVLLLCLを排除するさらなるN末端切り詰めは、ヒトACC2のN末端における標的サインの消失をもたらす。
【0092】
(実施例3)
ヒト組織のTaqMan解析により、ACC2(1b)転写物の存在を確認する
hACC2(1b)のオリゴヌクレオチドプライマー及びプローブを、プライマーエクスプレス1.5ソフトウェア(アプライド・バイオシステムズ社)を用いて設計した。順方向プライマー5´-AGTCCTGCCAAGTGCAAGATCT-3´(配列番号12)、逆方向プライマー5´-TCTGTGCAGGTCCAGCTTCTT-3´(配列番号13)及びFAM標識プローブ5´-TGATCGCGAAGTAAAGCCGAGCATGT-3´(配列番号14)を、エキソン1B及びエキソン2を網羅するよう設計した。ヒト酸性リボソームリンタンパク質(h36B4)のプライマー及びVIC標識プローブを、内在性対照として用いた。
【0093】
第一鎖cDNAを、スーパースクリプトIII(インビトロジェン社)及びオリゴDtプライマーを用いて、100ngのポリA+ RNA(脂肪組織)及び1μgのRNA(心筋、骨格筋及び肝臓)から合成した。ヒト心筋(アンビオン社)、骨格筋(アンビオン社)、肝臓(BDバイオサイエンシズ社)及び脂肪組織(BDバイオサイエンシズ社)におけるACC2(1b)の発現を測定するため、リアルタイムPCR(ABIプリズム7500検出システム、アプライド・バイオシステムズ社)を用いた。PCRを、Taqman Universal PCR Mastermix(アプライド・バイオシステムズ社)を用いることによって行い、これにプライマー及びプローブを加え、そして予想されるサイズのリアルタイムPCR産物を、3%アガロースゲル上で確認した。7500リアルタイムPCRシステム・シーケンス検出ソフトウェア(アプライド・バイオシステムズ社)を、解析に用いた。図3中の結果は、ACC2(1b)の転写物レベルが、脂肪組織>骨格筋>心筋=肝臓であり、試料(n=4)間でほとんどまたは全くばらつきがないことを示している。
【0094】
(実施例4)
ヒトACC2(1b)のクローニング
ACC2(1b)クローンを作製するために、我々は、エキソン1のみが、ACC2とそのスプライスバリアントであるACC2(1b)との間で異なるとの事実を用いた。補正された配列(配列番号2)のヒトACC2をコードするcDNAを含有するベクターを、出発材料として用いた。二つの制限酵素Nhe1及びHind3の切断部位を用いて、ACC2のN末端の配列を切り離し、そしてこれをユニークなACC2(1b)のN末端をコードするフラグメントに置き換えた。Nhe1認識配列は、ACC2開始コドンのすぐ上流にあるベクターのマルチクローニング部位に存在し、一方で、Hind3部位は、ACC2とACC2(1b)との間で共通の、下流の天然配列中に存在した。ユニークなACC2(1b)のN末端をコードし、さらにそれに続く共通のACC2/ACC2(1b)配列も含むcDNAを、ヒト心臓cDNAから、Taqplus(商標登録)precision(ストラタジーン社)を用いて増幅した。Nhe1部位を含有する順方向PCRプライマーは、5´-ATAAGCTAGCGCCACCATGAGTCCTGCCAAGTGCA-3´(配列番号15)であり、そして天然Hind3部位下流の逆方向プライマーは、5´-TCCTCCGCACTCTCAGCCTTCCGGATT-3´(配列番号16)であった。
【0095】
ACC2のcDNAを包含するベクターと上記のPCRプライマーを用いたPCR産物の双方を、制限酵素Nhe1及びHind3を用いて消化し、切断された産物を取り除き、次いで挿入断片(PCR産物)をベクター内に連結した。生じた連結産物を、大腸菌TOP−10細胞に形質転換し、そしてACC2(1b)配列のベクター内への挿入を、ジデオキシ配列決定により確認した。
【0096】
(実施例5)
HEK293細胞におけるACC2(1b)の機能発現
実施例1及び3に記載されるcDNAを包含するベクターpcDNA3.1(+)を、HEK(ヒト胎児腎臓)293細胞の一過性トランスフェクションに用いた。5μgの上記プラスミド/10cmペトリ皿で、細胞に、親油性トランスフェクション試薬を用いてトランスフェクトした。細胞単層は、トランスフェクション時(第1日)に〜60%コンフルエントであり、そして回収時(第4日)には完全にコンフルエントであった。これらのトランスフェクトされたHEK293細胞から得た細胞溶解物を、14CO固定化アッセイを用いて、アセチルCoAカルボキシラーゼ活性についてモニターした。図4に示されるデータは、クエン酸により刺激された、発現したACC2(1b)の活性を示す。ACC2でトランスフェクトされた細胞から得た溶解物とともに行った、ACC2(1b)細胞溶解物のSDS−PAGE解析は、二つのタンパク質間の分子量の予想される差異を示し、ここで前者は、完全長ACC2よりもわずかに速く移動した(データは示さず)。このように、ACC2のスプライスバリアントであるACC2(1b)は、クエン酸により刺激される触媒活性、ならびにゲル電気泳動中の予想されるより速い移動速度を実証している。N末端ACC2配列を特異的に認識する抗体(エピトープ=アミノ酸45〜64)ならびに共通のACC2/ACC2(1b)配列に対する抗体(エピトープ=アミノ酸1335〜1354)を用いた比較ウエスタン解析を、行った。前者の抗体はACC2ペプチドのみを認識したが、後者はACC2ペプチドとACC2(1b)ペプチドの双方を識別し、したがって、二つのタンパク質間のN末端配列の差異が確認された。
【0097】
(実施例6)
ACC2(1b)抗体
ユニークなヒトACC2(1b)のN末端と同一の合成ペプチドMSPAKCKICFPDREVK(配列番号3)を、ウサギの免疫に用いた。同ペプチドを、樹脂に結合させ、そして生じた血清のアフィニティ精製に利用すると、ACC2(1b)を特異的に認識するIgG画分が得られた。ACC2、ACC2(1b)及びモックをトランスフェクトしたHEK293細胞から得た細胞溶解物をSDS−PAGEにかけ、そしてタンパク質を、1:5000に希釈した産生されたproduce抗体(二次抗体=1:25000に希釈したヤギ抗ウサギHRP結合)を用いるウエスタンブロットのために、PVDFに移行した。ECLプラス(化学発光)を用いた検出、及びそれに続くフィルムへの露出により、ACC2ペプチドがクマシー染色により確認されるように存在するにもかかわらず、モックをトランスフェクトされた細胞溶解物においてもACC2をトランスフェクトされた細胞溶解物においても全く認識されないACC2(1b)に相当する特異的バンドが、同定された(図5)。
【0098】
(実施例7)
ヒト心臓及び骨格筋の免疫染色
図6は、ベンタナ社のヤギ抗ウサギ抗体(HRP結合、1:500希釈)と組み合わせて、実施例6に記載したACC2(1b)抗体(1:100希釈)で染色した、ヒト骨格筋を示す。染色を、10倍過剰の合成ペプチドMSPAKCKICFPDREVK(配列番号3)の非存在下(図6A)または存在下(図6B)、あるいは第一抗体なし(図6C)で行った。図6A及び図6Bの比較は、ペプチドによる前吸着が染色をブロックし、そしてそれによってACC2(1b)抗体と内因性酵素との間の特異的相互作用が実証されることを、示している。さらに、図6Cは、第二抗体のみの存在下では発色しないため、染色が第一抗体のみによって媒介されることを実証している。しかしながら、完全長ACC2とスプライスバリアントであるACC2(1b)の双方を認識する抗体(ACC2−4、1:100希釈)を用いたヒト骨格筋の免疫染色は、ペプチドMSPAKCKICFPDREVK(配列番号3)による前吸着によってブロックされず(図6D)、ACC2(1b)抗体と内因性エピトープであるACC2(1b)との間の相互作用における特異性を、さらに支持している。図6E及びFは、1:100希釈を用いたヒト心筋(心房)のACC2(1b)抗体による染色を示す。このように、ACC2(1b)スプライスバリアントのタンパク質は、ACC2(1b)が骨格筋及び心臓などの酸化力のある天然のヒト組織の免疫染色によって検出可能なことから、天然に存在することが示されている。
【0099】
(実施例8)
ACC2−ACC2(1b)複合体の形成
HisタグをC末端上に融合させたヒトACC2を、発現させる(hACC2−6xHis)。発現させた融合タンパク質を含有する細胞溶解物を、クエン酸非存在下でニッケル樹脂カラムと平衡化させ、そしてそれに結合させる。組換えヒトACC2(1b)を包含する細胞溶解物を、適切な量のクエン酸を含有する溶剤を含むカラムに通して、ACC2のコンフォメーション移行、及びそれに続く、ニッケル樹脂に結合しているACC2と添加した可溶性ACC2(1b)との間の複合体形成を、誘導する。平衡化バッファーを用いていかなる過剰のACC2(1b)も洗い落とした後に、適切な濃度のイミダゾールを含有する溶出バッファーを加え、そしてACC2−ACC2(1b)生成物を収集し、そして試験化合物用に用いた。形質転換されて、生理学的に関連性のあるレベルのACC2とACC2(1b)双方を発現する細胞株を、確立することが可能である。
【0100】
(実施例9)
ACC2−ACC2(1b)複合体による、マロニルCoA生成を阻害する化合物のスクリーニング
無細胞アッセイにおけるACC2−ACC2(1b)複合体の阻害を、触媒中に形成される生成した無機リン酸塩のマラカイトグリーン検出と、14COの酸安定性14C−マロニルCoAへの取り込みの直接測定の双方を用いて、モニターすることが可能である。組換えヒトACC2−ACC2(1b)複合体を発現する全細胞における化合物の効果を、処理細胞対対照細胞から得た細胞溶解物中のマロニルCoA濃度をモニターすることにより、測定する。マロニルCoA濃度を、ミディアムスループット・スクリーニングに適したHPLCに基づくプロトコールを用いて、検出する。
【0101】
(実施例10)
ACC2遺伝子の遺伝子多型の検討
肝臓RNAを、ヨーロッパ起源の米国出身の14例の個体から得て、そしてACC2のcDNAを、ACC2に特異的なプライマー(7336〜7355)を用いて、各試料から調製した。ACC2の最も共通の配列を得るため、11個の重複するPCR産物を、個々のcDNAから作製した。順方向プライマーにはM13F配列を、そして逆方向プライマーにはM13R配列を付けた。さらに、エキソン1、36、41及び51を、5例の血縁関係にないヨーロッパ人から得たゲノムDNAから、ならびに60例の血縁関係にないヨーロッパ人から得たDNAプールから、増幅させた。個々のPCR産物を、M13F及びM13Rプライマーを用いた色素ターミネーターによる配列決定によって、双方向に配列決定した。配列のトレースを、アセンブリーとクオリティに関して、polyphred/phrap/consedパッケージを使って遺伝子多型解析した。Seqmanを用いて、コンセンサス配列と配列番号2に開示された配列とを配列比較した。最も共通のハプロタイプのACC2を同定するために、エキソン11、42及び45も、血縁関係にないヨーロッパ人から得た28のリンパ芽球腫細胞株におけるゲノムDNAから配列決定した。
【0102】
【表1】

【0103】
11の遺伝子多型が、ACC2のコード配列(配列番号2)においてみられた。これらの遺伝子多型に加えて、4506位にdb SNP rs2241220、C−Tがある。すべての肝臓の配列はホモ接合型のCであるが、配列番号2はその位置にTを有する。加えて、配列番号2は、525位及び1791位により低頻度のアリルを有する。しかしながら、これらの三つの位置は、アミノ酸配列に影響を及ぼさない。我々はまた、3’UTRの9番目の塩基における、約50%のアリル頻度を伴うA−G遺伝子多型(rs2075262)、ならびにイントロン10におけるアリル頻度が7%のSNP(rs7978168)及びイントロン41におけるアリル頻度が20%のSNP(rs2075259)も同定した。
【0104】
【表2】

【0105】
配列番号2に示される配列は、最も共通のハプロタイプ1を表す。
14例の個体は、10%の頻度のアリルを検出する95%の確率をもたらすであろう。最も共通の配列がどの配列であるかの見積もりに影響を及ぼす他のSNPがあるとは、考えにくい。ハプロタイプ解析は、五つの異なるタンパク質配列を実証し、ここで三つの配列が、ポピュレーション内で共通である可能性が高い。ハプロタイプ1は最も共通であるが、しかし染色体の50%のみを表す。アミノ酸置換は、保存的である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1は、新たなエキソン1bを含むヒトACC2遺伝子構造を、スキームに示したものである。該遺伝子は、およそ130kbであり、かつ、二者択一的に用いられる二つの開始ATG含有開始エキソン(エキソン1a及びエキソン1bと称される)を含む、53個のコーディングエキソンを含んでなる。
【図2】図2は、ヒトACC2とヒトACC2(1b)のアミノ酸配列の配列比較を示す。
【図3】図3は、リアルタイムPCRを用いて測定した、ヒト心臓、肝臓、骨格筋、脾臓及び脂肪組織中のACC2(1b)のRNA発現レベルを示す。
【図4】図4は、トランスフェクトされたHEK293細胞における、クエン酸により刺激された、発現したACC2(1b)の活性を示す。
【図5】図5a〜5bは、ACC2、ACC2(1b)及びモックをトランスフェクトされたHEK293細胞から得た細胞溶解物の、SDS−PAGE及びそれに続くウエスタンブロット解析の結果を示す。
【図6】図6a〜fは、ヒト心臓及び骨格筋の免疫染色を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するアセチルCoAカルボキシラーゼ2(ACC2)のスプライスバリアント、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有するバリアント、または配列番号1に開示される配列と同義語コドンの置換のみにより異なるバリアントであって、膜結合能を欠く上記バリアントをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離された核酸分子。
【請求項2】
配列番号3を含んでなるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項3】
配列番号3に開示されるポリペプチドのバリアントであって、それと少なくとも85%の配列同一性を有する前記バリアントをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、請求項2に記載の単離された核酸。
【請求項4】
配列番号5に示されるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1または2に記載の単離された核酸。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおける核酸を含んでなる、プラスミド。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかにおける核酸を含んでなる、単離された細胞または細胞株。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかにおける核酸により形質転換またはトランスフェクトされた、単離された細胞または細胞株。
【請求項8】
哺乳動物、細菌、酵母もしくは昆虫の細胞または細胞株である、請求項6または7のいずれかに記載の細胞または細胞株。
【請求項9】
配列番号1のアミノ酸配列、それと少なくとも85%の配列同一性を有する配列、またはそのC末端切断型を含んでなるポリペプチドであって、膜にアンカーすることができない前記ポリペプチドを産生するための方法であって、
a) ACC2スプライスバリアントポリペプチド、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有するポリペプチド、またはそのC末端切断型であって、膜にアンカーすることができない上記ポリペプチドをコードする核酸配列を含んでなる発現ベクターを含有する宿主細胞を、ポリペプチドの発現に適した条件下で培養すること;ならびに、
b) 宿主細胞培養物から該ポリペプチドを回収すること;
を含んでなる上記方法。
【請求項10】
配列番号1に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも85%の類似性を有する配列を含んでなる単離されたポリペプチドであって、膜に結合することができない上記ポリペプチド。
【請求項11】
配列番号1に示されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項10に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項12】
単離されたACC2−ACC2(1b)タンパク質複合体。
【請求項13】
ACC2スプライスバリアントに選択的に結合可能な精製抗体。
【請求項14】
ACC2(1b)スプライスバリアントに選択的に結合可能な、請求項に記載の抗体。
【請求項15】
前記ポリペプチドを調節する化合物を同定するためのアッセイにおける、請求項10または11に記載のポリペプチドの使用。
【請求項16】
脂肪酸酸化能の障害に関連する疾患または障害の治療のための、ACC2スプライスバリアントの活性または量を調節可能な化合物の使用。
【請求項17】
脂肪酸酸化能の障害に関連する疾患または障害が、肥満、2型糖尿病及び異脂肪血症:からなる群より選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
脂肪酸酸化能の障害に関連する疾患または障害を治療するのに潜在的に有用な化合物を同定する方法であって、
ACC2スプライスバリアントタンパク質の活性または量を調節する能力に関して化合物をアッセイすることを含んでなる、上記方法。
【請求項19】
前記アッセイが、
i) ACC2スプライスバリアントを発現する細胞株を用いるか、または精製ACC2スプライスバリアントタンパク質を用いた、ACC2スプライスバリアントの活性の測定;及び、
ii) ACC2スプライスバリアントを発現する細胞株におけるACC2スプライスバリアントの転写または翻訳の測定;
から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項18または19のいずれかに記載の方法によって同定される化合物。
【請求項21】
脂肪酸酸化能の障害に関連する疾患または障害を治療するのに潜在的に有用な化合物を同定する方法であって、
ACC2とACC2スプライスバリアントとを含んでなる複合体の活性または量を調節する能力に関して化合物をアッセイすることを含んでなる、上記方法。
【請求項22】
単離されたACC2とACC2(1b)スプライスバリアントの複合体を用い、そして前記複合体の活性をマロニルCoA生成に関して測定する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、前記複合体によって形成された、生成した無機リン酸塩のマラカイトグリーン検出の測定を含んでなる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記方法が、14CO14C−マロニルCoAへの取り込みの測定を含んでなる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
ACC2とACC2(1b)スプライスバリアントの複合体の活性を、ACC2とACC2(1b)スプライスバリアントの複合体を発現する細胞株を用いて測定すること:を含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
ACC2とACC2(1b)スプライスバリアントの複合体の転写及び/または翻訳を、ACC2とACC2(1b)スプライスバリアントの複合体を発現する細胞株を用いて測定することを含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記疾患または障害が、肥満、2型糖尿病または異脂肪血症からなる群より選択される、請求項18〜19、または21〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
請求項21〜27のいずれかに記載の方法によって同定される化合物。
【請求項29】
医薬組成物を調製する方法であって、
(i) 請求項18〜19、または21〜26のいずれかに記載の方法によって、肥満、2型糖尿病、異脂肪血症、及び脂肪酸酸化能の障害に関連する他の障害などの疾患を治療するのに有用な化合物を、同定すること;ならびに、
(ii) 該化合物または医薬的に許容可能なその塩を、医薬的に許容可能な賦形剤または希釈剤と混合すること;
を含んでなる上記方法。
【請求項30】
脂肪酸酸化能の障害に関連する疾患または障害を治療するための薬剤の製造における、ACC2スプライスバリアント核酸に対して選択的な阻害核酸分子、またはACC2スプライスバリアントタンパク質に対する選択的抗体の使用。
【請求項31】
脂肪酸酸化能の障害に関連する疾患または障害を治療するための薬剤の製造における、ACC2とACC2(1b)スプライスバリアントの複合体に対して選択的な阻害核酸分子の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−505637(P2008−505637A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520274(P2007−520274)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【国際出願番号】PCT/SE2005/001121
【国際公開番号】WO2006/004549
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】