説明

アタクチック1−ブテンポリマー類の製造方法

a)式(I)[式中、Mは遷移金属の元素であり;pは0から3の整数であり;
Xは同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり;Lは元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む2価のC1−C40炭化水素基であり;R1とR2はC1−C40炭化水素基であり;Tは互いに同一または異なり、式(IIa)または(IIb)(式中、R3はC1−C40炭化水素基であり;R4とR6は水素原子またはC1−C40炭化水素基であり;R5はC1−C40炭化水素基であり;R7とR8は互いに同一または異なり、水素原子またはC1−C40炭化水素基である)の部分である]のメソまたはメソ様形態の少なくとも1つのメタロセン化合物、およびb)アルモキサンまたはアルキルメタロセンカチオンを形成し得る化合物を接触させることにより得られる触媒系の存在で、1−ブテンと任意にエチレン、プロピレンまたは式CH2=CHR(式中、Rは線状または分枝状のC3−C20アルキル基である)のアルファ−オレフィンとを重合する段階からなる、エチレン、プロピレンまたは前記のアルファ−オレフィンから選択される少なくとも1つのコモノマーを任意に含む、アタクチック1−ブテンポリマー類を得る方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異性体のメソまたはメソ様形態のメタロセン触媒成分の存在での1−ブテンと任意にアルファ−オレフィンを重合することによる、アタクチックでかつ非晶質の1−ブテンのポリマー類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1−ブテンの非晶質ポリマー類は、主として粘着剤、結晶性ポリオレフィン用改質剤などとして用いられてきた。それらは種々の触媒系を用ることにより得られる。
【0003】
例えば、US6,288,192号は、ジクロロ{2,2'−チオビス〔4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノラート〕}チタニウムのような化合物を用いることによって得られる、超高分子量を有する1−ブテンの非晶質ポリマー類に関する。これらの化合物は、メタロセン化合物とは完全に異なる。その文献は、200,000またはそれ以上、好ましくは300,000またはそれ以上、さらに好ましくは500,000またはそれ以上のMnを有する1−ブテンポリマー類を記載している。しかしながら、実施例の1−ブテンポリマー類のMnは、一層高く、特にそれは約100万から約350万までの範囲である。その文献が、水素のような連鎖移動剤が分子量を調節するために使用できるとことを記載しているとしても、チオビス(フェノキシ)チタニウムジクロリドによって製造されたポリマー類の分子量が比較的水素に反応しないことは、WO02/060963号から公知である。
【0004】
したがって、分子量調節剤として水素を用いることにより、1−ブテンポリマー類の分子量を100万以下に低下させることは不可能であり、その結果、100万以下のMn値のUS6,288,192号の開示は可能性がないと考えられる。また、US6,288,192号が得られたポリ1−ブテンのNMR構造について言及していないとしても、Journal of polymer Science; Part A; Polymer Chemistry, vol.42,1107‐1111(2004)において、発明者らはこの米国特許で記載された方法で得られたポリマーを分析し、前記の得られたポリブテンが、約25%のmmmmペンタド(pentad)含量を有して、わずかにアイソタクッチクであることを示している。
【0005】
米国特許出願2003/0069320号に、二重架橋したメタロセン化合物類を用いることにより得られた1−ブテンポリマー類が記載されている。このようにして得られた1−ブテンのホモ−およびコポリマーは、完全な非晶質ではなく、少なくとも1つの融点で特徴付けられている。
【0006】
EP604908号の実施例17で、ジメチルシランジルビス(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを用いることによりポリブテンポリマーが得られている。しかしながら、このメタロセン化合物類はC2v対象を有し、かつその結果、ラセミおよびメソ異性体の形態を示していない。得られたポリマーは、さらに増大した分子量(I.V.)を有し、触媒活性度は低かった。
【0007】
1つの単独シクロペンタジエニル置換基を有するメタロセン化合物類を用いた非晶質プロピレン/1−ブテンコポリマー類が、JP11−193309号に記載されている。このようにして得られたコポリマー類は高いプロピレン含量で特徴付けられている。
【0008】
Macromol. Chem. Phys, 200, 1587‐1594(1999)において、ラセミ/メソ Me2Si(2−Me−Ind)2ZrCl2の存在で、1−ブテンを重合する方法が開示されている。しかしながら、表1で報告された、得られたポリマーのアタクチック分率の分子量は極めて低い。
【0009】
Macromol. Rapid Commun. 18, 581‐589, (1997)で、ジメチルシリレンビス(2,3,5−トリメチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドのラセミとメソの混合物が、1−ブテンを重合するために用いられている。この場合も同様にアタクチック分率の分子量は極めて低い。
【0010】
Macromolecules 2000, 33, 1955‐1959で、3つの異なるメタロセン化合物類、すなわちMe2Si(2−Me−4,5−BzoInd)2ZrCl2、Me2Si(2−Me−4−PhInd)2ZrCl2およびMe2Si(Ind)2ZrCl2のラセミとメソ混合物が1−ブテンの重合で試験されている。しかしながら、アタクチックポリブテンの分子量と活性度は、本願の比較例で示したように、さら改良することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、高分子量でかつ高収率で、アタクチックでかつ非晶質の1−ブテンポリマー類を得ることを可能にする新しい方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの目的は、
a)式(I):
【化1】

【0013】
[式中、
Mは、元素の周期律表の3、4、5、6族かまたはランタニドまたはアクチニド族に属する元素から選択される遷移金属の元素であり;好ましくはMはチタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり;
pは、0から3の整数であり、好ましくはpは2であり、金属Mの形式酸化状態マイナス2に等しく;
【0014】
Xは、同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、またはR、OR、OSO2CF3、OCOR、SR、NR2もしくはPR2基(式中、Rは、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、線状もしくは分枝状の、環状もしくは非環状の、C1−C40アルキル、C2−C40アルケニル、C2−C40アルキニル、C6−C40アリール、C7−C40アルキルアリールまたはC7−C40アリールアルキル基であり;好ましくはRは、線状もしくは分枝状のC1−C20アルキル基である)であり;または、2つのXは、置換もしくは未置換のブタジエニル基またはOR'O基(式中、R'は、C1−C40アルキリデン、C6−C40アリーリデン、C7−C40アルキルアリーリデンおよびC7−C40アリールアルキリデンから選択される2価の基である)を任意に形成し;好ましくはXは、水素原子、ハロゲン原子またはR基であり;より好ましくはXは、塩素またはメチルもしくはエチル基のようなC1−C10アルキル基であり;
【0015】
Lは、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、2価のC1−C40炭化水素基、または5以下の珪素原子を含む2価のシリリデン基であり;好ましくはLは、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、C1−C40アルキリデン、C3−C40シクロアルキリデン、C6−C40アリーリデン、C7−C40アルキルアリーリデンまたはC7−C40アリールアルキリデン基、およびSiMe2、SiPh2のような5以下の珪素原子を含む2価のシリリデン基から選択される2価の架橋基であり;好ましくはLは、基(Z(R")2n(式中、Zは、炭素またはシリコン原子であり、nは1または2であり、かつR"は、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含むC1−C20炭化水素基であり;好ましくはR"は、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、線状もしくは分枝状の、環状もしくは非環状の、C1−C20アルキル、C2−C20アルケニル、C2−C20アルキニル、C6−C20アリール、C7−C20アルキルアリールまたはC7−C20アリールアルキル基であり;より好ましくは基(Z(R")2nは、Si(CH32、SiPh2、SiPhMe、SiMe(SiMe3)、CH2、(CH22およびC(CH32である)であり;
【0016】
1とR2は、互いに同一または異なり、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、C1−C40炭化水素基であり;好ましくはそれらは、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、線状もしくは分枝状の、環状もしくは非環状の、C1−C40アルキル、C2−C40アルケニル、C2−C40アルキニル、C6−C40アリール、C7−C40アルキルアリールまたはC7−C40アリールアルキル基であり;より好ましくはR1とR2は、線状もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和のC1−C20アルキル基であり;さらに好ましくはR1とR2は、メチルまたはエチル基であり;
【0017】
Tは、互いに同一または異なり、式(IIa)または(IIb):
【化2】

(式中、記号*で示される原子は、式(I)の化合物の同じ記号で示した原子に結合し;
【0018】
3は、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、C1−C40炭化水素基であり;好ましくはR3は、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、線状もしくは分枝状の、環状もしくは非環状の、C1−C40アルキル、C2−C40アルケニル、C2−C40アルキニル、C6−C40アリール、C7−C40アルキルアリールまたはC7−C40アリールアルキル基であり;より好ましくはR3は、線状もしくは分枝状の、C1−C20アルキル、C6−C40アリール、C7−C40アリールアルキル基であり;さらに好ましくはR3は、1つまたはそれ以上のC1−C10アルキル基で任意に置換されたC6−C20アリール基であり;
【0019】
4とR6は、互いに同一または異なり、水素原子、または元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含むC1−C40炭化水素基であり;好ましくはR4とR6は、互いに同一または異なり、水素原子、または元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、線状もしくは分枝状の、環状もしくは非環状の、C1−C40アルキル、C2−C40アルケニル、C2−C40アルキニル、C6−C40アリール、C7−C40アルキルアリールまたはC7−C40アリールアルキル基であり;好ましくはR4とR6は水素原子であり;
【0020】
5は、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含むC1−C40炭化水素基であり;好ましくはR5は、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、線状もしくは分枝状の、環状もしくは非環状の、C1−C40アルキル、C2−C40アルケニル、C2−C40アルキニル、C6−C40アリール、C7−C40アルキルアリールまたはC7−C40アリールアルキル基であり;より好ましくはR5は、線状もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和の、C1−C20アルキル基であり;さらに好ましくはR5は、メチルあるいはエチル基であり;
【0021】
7とR8は、互いに同一または異なり、水素原子、または元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含むC1−C40炭化水素基であり;好ましくはR7とR8は、水素原子、または元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、線状もしくは分枝状の、環状もしくは非環状の、C1−C40アルキル、C2−C40アルケニル、C2−C40アルキニル、C6−C40アリール、C7−C40アルキルアリールまたはC7−C40アリールアルキル基であり;好ましくはR8は、水素原子、または線状もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和のC1−C20アルキル基であり;より好ましくはR8は、メチルまたはエチル基であり;好ましくはR7は、C1−C40アルキル、C6−C40アリールまたはC7−C40アリールアルキルであり;より好ましくはR7は、式(III):
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、R9、R10、R11、R12およびR13は、互いに同一か異なって、水素原子、または元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、線状もしくは分枝状の、環状もしくは非環状の、C1−C20アルキル、C2−C20アルケニル、C2−C20アルキニル、C6−C20アリール、C7−C20アルキルアリールまたはC7−C20アリールアルキル基であり;好ましくはR9とR12は、水素原子であり;R10、R11およびR13は、水素原子、または線状もしくは分枝状の、環状もしくは非環状の、C1−C10アルキル基である)の基である)の部分である]
のメソまたはメソ様形態の少なくとも1つのメタロセン化合物、
【0024】
b)アルモキサンまたはアルキルメタロセンカチオンを形成し得る化合物;および任意に、
c)有機アルミニウム化合物
を接触させることにより得られる触媒系の存在で、1−ブテンと任意にエチレン、プロピレンまたは式CH2=CHR(式中、Rは線状または分枝状のC3−C20アルキル基である)のアルファ−オレフィンとを重合する段階からなる、エチレン、プロピレンまたは前記のアルファ−オレフィンから選択される少なくとも1つのコモノマーを任意に含む、アタクチックでかつ非晶質の1−ブテンポリマー類を得る方法である。
【0025】
本発明の目的に関し、用語「メソ形態」は、2つのシクロペンタジエニル部分上の同じ置換基が、ジルコニウムと前記シクロペンタジエニル部分の中心を含む平面に対して同じ側上にあることを意味する。「メソ様形態」は、次の化合物に示されるように、メタロセン化合物上の二つのシクロペンタジエニル部分のより嵩高い置換基がジルコニウムと前記シクロペンタジエニル部分の中心を含む平面に対して同じ側上にあることを意味する。
【0026】
【化4】

【0027】
1つの実施形態において、式(I)の化合物は、次式(IV):
【化5】

[式中、M、X、p、L、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は上で記した意味を有する]を有する。
【0028】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、次の式(V):
【化6】

[式中、M、X、p、L、R1、R2、R7およびR8は上で記した意味を有する]を有する。
【0029】
式(I)のメタロセン化合物は先行技術で公知であり、それらは、WO01/4431
8号、PCT/EP02/13552号およびDE10324541.3号に記載されているように、公知の手順にしたがって製造することができる。
【0030】
成分b)として使用されるアルモキサンは、水と、式HjAlU3-jまたはHjAl26-j(式中、U置換基は、同一か異なって、水素原子、ハロゲン原子、少なくとも1つのUがハロゲンとは異なるとき、シリコンまたはゲルマニウム原子を任意に含む、C1−C20アルキル、C3−C20シクロアルキル、C6−C20アリール、C7−C20アルキルアリールあるいはC7−C20アリールアルキル基であり、かつJは、非整数でもある0から1の範囲である)の有機アルミニウム化合物との反応により得ることができる。この反応におけるAl/水のモル比は、1:1と100:1の間からなるのが好ましい。
【0031】
本発明による方法で使用されるアルモキサンは、タイプ:
【化7】

[式中、置換基Uは、同一または異なり、上で定義されている]
の少なくとも1つの群を含む線状、分枝状または環状化合物であると考えられる。
【0032】
特に、式:
【化8】

(式中、n1は、0あるいは1から40の整数であり、かつ置換基Uは上のように定義されている)のアルモキサンは、線状の化合物の場合に使用することができ;また式:
【0033】
【化9】

(式中、n2は、2から40の整数であり、かつ置換基Uは上のように定義されている)のアルモキサンは、環状の化合物の場合に使用することができる。
【0034】
本発明による使用に好適なアルモキサンの例は、メチルアルモキサン(MAO)、テトラ−(イソブチル)アルモキサン(TIBAO)、テトラ−(2,4,4−トリメチル−ペンチル)アルモキサン(TIOAO)、テトラ−(2,3−ジメチルブチル)アルモキサン(TDMBAO)およびテトラ−(2,3,3−トリメチルブチル)アルモキサン(TTMBAO)である。
特に興味ある助触媒は、アルキルおよびアリール基が特異な分枝パターンを有している、WO99/21899号 およびWO01/21674号に記載されているものである。
【0035】
水と反応して好適なアルモキサン(b)を与える、WO99/21899号およびWO01/21674号に記載されているアルミニウム化合物の非限定例は;
トリス(2,3,3−トリメチル−ブチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチル−ヘキシル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチル−ブチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチル−ペンチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチル−ヘプチル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−エチル−ペンチル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−エチル−ヘキシル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−エチル−ヘプチル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−プロピル−ヘキシル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3−メチル−ブチル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3−メチル−ペンチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジエチル−ペンチル)アルミニウム、トリス(2−プロピル−3−メチル−ブチル)アルミニウム、トリス(2−イソプロピル−3−メチル−ブチル)アルミニウム、トリス(2−イソブチル−3−メチル−ペンチル)アルミニウム、トリス(2,3,3−トリメチル−ペンチル)アルミニウム、トリス(2,3,3−トリメチル−ヘキシル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3,3−ジメチル−ブチル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3,3−ジメチル−ペンチル)アルミニウム、トリス(2−イソプロピル−3,3−ジメチル−ブチル)アルミニウム、トリス(2−トリメチルシリル−プロピル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−フェニル−ブチル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3−フェニル−ブチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチル−3−フェニル−ブチル)アルミニウム、トリス(2−フェニル−プロピル)アルミニウム、トリス[2−(4−フルオロ−フェニル)−プロピル]アルミニウム、トリス[2−(4−クロロ−フェニル)−プロピル]アルミニウム、トリス[2−(3−イソプロピル−フェニル)−プロピル]アルミニウム、トリス(2−フェニル−ブチル)アルミニウム、トリス(3−メチル−2−フェニル−ブチル)アルミニウム、トリス(2−フェニル−ペンチル)アルミニウム、トリス[2−(ペンタフルオロフェニル)−プロピル]アルミニウム、トリス(2,2−ジフェニル−エチル)アルミニウムおよびトリス(2−フェニル−2−メチル−プロピル)アルミニウム、同様に1つの炭化水素基が水素で置換された対応する化合物、および炭化水素基の1つまたは2つがイソブチル基で置換されたものである。
【0036】
上記のアルミニウム化合物の中で、トリエチルアルミニウム(TMA)、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、トリス(2,4,4−トリメチル−ペンチル)アルミニウム(TIOA)、トリス(2,3−ジメチルブチル)アルミニウム(TDMBA)およびトリス(2,3,3−トリメチルブチル)アルミニウム(TTMBA)が好ましい。
【0037】
アルキルメタロセンカチオンを形成し得る非限定例は、式D+-(式中、D+は、プロトンを供与でき、かつ式(I)のメタロセンの置換基Xと不可逆に反応することができ
るブレンステッド酸であり、E-は、2つの化合物の反応に由来する活性な触媒種を安定化でき、かつオレフィン系モノマーによって除去され得るに十分に不安定である親和性(compatible)アニオンである)の化合物である。
【0038】
好ましくは、アニオンE-は、1つまたはそれ以上の硼素原子からなる。より好ましくは、アニオンE-は、式BAr4(-)(式中、置換基Arは、同一または異なり、フェニル、ペンタフルオロフェニルまたはビス(トリフルオロメチル)フェニルのようなアリール基である)のアニオンである。テトラキス−ペンタフルオロフェニルボレートは、WO91/02012号に記載されているように、特に好ましい化合物である。さらに、式BAr3の化合物は、簡便に使用できる。このタイプの化合物は、例えば、国際特許出願公開WO92/00333号に記載されている。アルキルメタロセンカチオンを形成し得る化合物の他の例は、式BAr3P(式中、Pは、置換もしくは未置換のピロール基である)の化合物である。これらの化合物類は、WO01/62764号に記載されている。硼素原子を含む化合物類は、DE−A−19962814号およびDE−A−19962910号の記載により簡便に担持され得る。硼素原子を含む全てのこれらの化合物は、硼素とメタロセンの金属との間のモル比が約1:1と約10:1、好ましくは1:1と2:1、より好ましくは約1:1の間で使用できる。
【0039】
式D+-の化合物類の非限定例は:
トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート、
トリメチルアンモニウムテトラ(トリル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(トリル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、
トリプロピルアンモニウムテトラ(ジメチルフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(トリフロオロメチルフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(4−フルオロフェニル)ボレート、
【0040】
N,N−ジメチルベンジルアンモニウム−テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、
N,N−ジメチルヘキシルアンモニウム−テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、
N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボレート、
N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボレート、
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、
N,N−ジメチルベンジルアンモニウム−テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、
N,N−ジメチルヘキシルアンモニウム−テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、
ジ(プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジ(シクロヘキシル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルフォスフォニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
トリエチルフォスフォニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
ジフェニルフォスフォニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
トリ(メチルフェニル)フォスフォニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
トリ(ジメチルフェニル)フォスフォニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
【0041】
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(フェニル)アルミネート、
フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、および
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
である。
【0042】
化合物c)として使用される有機アルミニウム化合物は、上記した式HjAlU3-jまたはHjAl26-jのものである。
【0043】
本発明の重合方法は、任意に不活性炭化水素溶剤の存在中で、液相で、または気相で行うこうとができる。前記炭化水素溶剤は、(トルエンのような)芳香族または(プロパン、ヘキサン、ヘプタン、イソブタン、シクロヘキサンおよび2,2,4−トリメチルペンタンのような)脂肪族の何れかでよい。好ましくは、本発明の重合方法は、重合媒体として液体1−ブテンを用いて行われる。好ましくは塊状である。
【0044】
重合温度は、好ましくは0℃から250℃の範囲;好ましくは20℃と150℃の間、より好ましくは40℃と90℃の間である。
【0045】
分子量分布は、種々のメタロセン化合物の混合物を使用することにより、または重合温度および/または分子量調整剤の濃度および/またはモノマー類濃度に関して異なるいくつかの段階で重合を行うことにより、変化させることができる。2つの異なる式(I)の
メタロセン化合物の組み合わせを使用して重合を行うことにより、広い溶融点を備えたポリマーが製造される。
【0046】
また、1−ブテンがエチレン、プロピレンまたは式CH2=CHR(式中、Rは線状もしくは分枝状のC3−C20アルキル基である)のアルファオレフィンから選択される少なくとも1つのコモノマーの存在で重合された場合、触媒系の活性度が増加することが、驚くべきことに発見された。したがって、たとえ僅かな量の、エチレン、プロピレンまたは前記アルファ−オレフィン類から選択されるコモノマー類を添加することで、本発明の方法の活性度を増加させることができる。好ましくは、1−ブテンは、少なくとも1つの前記コモノマー類の、60モル%以下、好ましくは50モル%以下、より好ましくは5−30モル%の存在中で重合される。特に好ましい実施形態において、コモノマーは、プロピレン、1−ペンテン、1−ヘキセンまたは1−オクテンであり;より好ましくはプロピレンである。
【0047】
本発明の方法を用いて、高分子量を与えられた、アタクチックでかつ非晶質の1−ブテンのホモポリマー類およびコポリマー類を高収率で得ることができる。
特に、本発明により得られた1−ブテンポリマー類においては、融解エンタルピーが示差走査熱量計(DSC)で検出されず、ポリマーは完全に非晶質である。本発明の方法で得られる1−ブテンポリマー類のアタクチック度は、格別に低いmmmmペンタドの値で示され;特にホモポリマー類のmmmmペンタドの値は20以下である。
【0048】
本発明のさらなる目的は、次の特徴:
(i)テトラヒドロナフタレン(THN)中135℃で測定された極限粘度(I.V.)
が、1.30dL/gに等しいかそれより高く;好ましくは、極限粘度が1.80dL/gより高く;より好ましくは2.0dL/gより高い;
(ii)分子量分布Mw/Mnが4よりも低い;好ましくは3.5より低い;より好ましくは2.5より高く、かつ3.5より低い;
(iii)示差走査熱量計(DSC)で融解エンタルピー不検出;
(iv)アイソタクチックペンタド(mmmm)が20%より低く、好ましくは15%より低く;より好ましくは10%より低い
を有するアタクチックな非晶質1−ブテンのホモポリマーである。
【0049】
上記のように、本発明の方法を用いて、高収率で1−ブテンコポリマー類を得ることができる。前記のコポリマー類は、完全にアタクチックであるという事実で特徴付けられ、すなわちポリマー鎖中の1−ブテンブロックでさえアタクチックである。したがって、コモノマーの主たる効果は、本方法の収率を増加させることであり、1−ブテンが結晶性ポリマーを製造する触媒系を用いて共重合される場合に通常発生するように、結果として得られたポリマーの結晶を破壊することではない。
【0050】
本発明のよりさらなる目的は、
次の特徴:
(i)1.00から2.50dL/g、好ましくは1.79から2.31dL/gの、テトラヒドロナフタレン(THN)中135℃で測定された極限粘度(I.V.);
(ii)4より低い;好ましくは3.5より低い;より好ましくは3より低い分子量分布Mw/Mn;
(iii)示差走査熱量計(DSC)で融解エンタルピー不検出
を有している、51モル%以下、好ましくは50モル%以下の、エチレン、プロピレンまたは式CH2=CHR(式中、Rは、線状もしくは分枝状のC3−C10アルキル基である)のアルファ−オレフィンから誘導されるコモノマー単位を含有し、好ましくは5−30モル%のエチレン、プロピレンまたは前記アルファ−オレフィンからなるアタクチックな非晶質1−ブテンコポリマーである。
【0051】
好ましくは、コモノマー誘導単位は、プロピレン、1−ペンテン、1−ヘキセンまたは1−オクテンから選択され;さらにより好ましくは、コモノマー誘導単位は、プロピレンである。
【0052】
本発明のアタクチックな非晶質1−ブテンコポリマーは、粘度が1.78から1.79dl/gまたは2.31から2.32dl/gでない場合に、1.00から2.50dl/g、好ましくは1.79から2.31dl/gの、テトラヒドロナフタレン(THN)中135℃で測定された極限粘度(I.V.)を有する。
【0053】
本発明のアタクチックな非晶質1−ブテンコポリマーは、0.80から1.20の範囲の;好ましくは0.90から1.10の範囲の;より好ましくは、0.95から1.05の範囲である、実施例に記載されているように、測定されたr1×r2反応性比を与えられている。
【0054】
もし本発明の1−ブテンコポリマー類の極限粘度(I.V.)が、2.50dl/gより高いならば、溶融ポリマーの流動性が急激に低下するので、コポリマー類の取り扱い性は、許容値以下に低下する。もし極限粘度が1.00dl/gより低いならば、本発明のアタクチックな非晶質1−ブテンコポリマー類は、受入れ難い粘着性である。
【0055】
本発明の方法で得られるアタクチックな非晶質1−ブテンのホモ−およびコポリマー類は、ポリマー組成物の成分として使用され得る。特に、高分子量であるために、それらはアイソタクチックポリプロピレンのホモまたはコポリマー類からなる組成物で使用され得る。
【実施例】
【0056】
以下の実施例は、本発明を説明するに与えられ、限定するためではない。
【0057】
実施例
極限粘度(I.V.)は、テトラヒドロナフタレン(THN)中135℃で測定した。
MwとMnは、次の経験式:
Mw=59403(I.V.)2+137760(I.V.)
Mn=32996(I.V.)2+53607(I.V.)
を用いて計算した。
【0058】
ポリマーの融点(Tm)は、標準法によりParkin Elmer DSC-7装置の示差走査熱量計(D.S.C.)で測定した。重合から得られた秤量試料(5〜10mg)は、アルミニウム皿中に密封し、10℃/分に相当する走査速度で180℃まで加熱した。その試料を180℃で5分間保持して、全ての結晶を完全に融解させた。引き続き、10℃/分に相当する走査速度で20℃まで冷却した後、20℃で2分間保持した後、その試料を2度目に10℃/分に相当する走査速度で180℃まで加熱した。この2度目の加熱試験で、ピーク温度を融点(Tm)とし、その面積を融解エンタルピー(△Hf)として採用した。
【0059】
全ての試料に関する分子量パラメーターと分子量分布を、4つの混合−ゲルカラムPLgel 20μm Mixed‐A LS(Polymer Laboratories, Church Stretton, United Kingdom)を備えたWater 150C ALC/GPC装置(Water, Milford, Massachusetts, USA)を使用して測定した。カラムの寸法は300×7.8mmであった。使用した溶剤はTCBで、流速は1.0mL/分に保持した。溶液濃度は、1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)溶液中0.1g/dLであった。0.1g/Lの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を、劣化を防止するために添加し、注入容量は300μLであった。全ての測定を135℃で行った。GPC補正は、良好にキャラクタライズされた狭い分子量分布の標準参照物質が1−ブテンポリマーに関して利用できないので、複雑である。したがって、一般的な補正曲線を、580〜13,200,000の範囲の分子量を有する12のポリスチレン標準試料を使用して得た。Mark‐Houwick関係式のK値は、ポリスチレンとポリ−1−ブタジエンに対してそれぞれKPS=1.21×10-4dL/gとKPB=1.78×10-4dL/gであると推定された。Mark‐Houwick指数αは、ポリスチレンに対して0.706とポリ−1−ブテンに対して0.725と推定された。それでもこの研究方法において得られた分子パラメーターは、各分子鎖の流体力学容量(hydrodynamic volume)の唯1つの推定であり、相対的な比較を行うことを可能としている。
【0060】
NMR分析 13C−NMRスペクトルを、120℃におけるフーリエ変換モードで100.61MHzで操作するDPX-400スペクトロメーターで得た。試料を1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2中、120℃で8wt%/v濃度で溶解した。各スペクトルを、90°パルスで、1H−13Cカップリングを除去するために、パルスとCPD(ワルツ16)との間の15秒の遅延で取得した。約3000トランジェントが、6000Hzのスペクトルウインドーを用いて32kデータ点で蓄えられた。メタロセン−製PBのアイソタクティシティーが13CNMRで測定され、エチル枝の診断メチレンのmmmmペンタドピークの相対強度として定義される。27.73ppmにおけるこのピークを内部参照として使用した。ペンタドの指定は、Macromolecules, (1992), 25, 6814‐6817により与えられた。
【0061】
コポリマー組成は、次のようにダイアド(diads)から測定された。
PP=[Sαα(47.5−45.9ppm)/Σ(Sαα)]×100
PB=[Sαα(44.1−42.8ppm)/Σ(Sαα)]×100
BB=[Sαα(39.93−40.31ppm)/Σ(Sαα)]×100
Σ(Sαα)=Sααピーク面積の和=Sαα(47.5−45.9ppm)+Sαα(44.1−42.8ppm)+Sαα(39.93−40.31ppm)
P=PP+0.5PB
B=BB+0.5PB
【0062】
反応比の積r1×r2の測定
反応比の積を、C.J. Carman, R.A. Harrington and C.E. Wilkes, Macromolecules, 10, 536 (1977)により、13CMNRトリアド(triad)分布から次の式を用いて得た。
ブテン/プロピレンコポリマー類:
【数1】

【0063】
メタロセン化合物類
meso−ジメチルシランジルビス−6−[2,5−ジメチル−3―(2'−メチル−フェニル)シクロペンタジエニル−[1,2−b]−チオフェン]ジルコニウムジクロリド(A−1)を、WO01/44318号により製造した。
rac−ジメチルシリルビス(2,4,6−トリメチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド(A−2rac)を、Journal of Polymer science: Part A: polymer chemistry, vol. 38,4299−4307(2000)により製造し、ジメチルシリルビス(2,4,6−トリメチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド(A−2)を、以下の手順により製造し、それはラセミ メソ 60:40の混合物で得られた:
【0064】
Me2Si(2,4,6−トリメチルインデニル)2ZrCl2の合成
2,4,6−トリメチル−インダン−1−オンの合成
磁気式攪拌棒と還流凝縮器を備えた500mLの3つ首丸底フラスコを、窒素雰囲気で満たし、240mLのクロロベンゼン中に溶解した71.6gのAlCl3(0.53モル、2.3当量)を装填した。室温で、28.38mLのm−キシレン(0.23モル、1当量)を滴下により添加し、淡黄色の懸濁物得た。次いで、そのフラスコを0℃に冷却し、28.68mLの2−ブロモイソブチルブロミド(0.23モル、1当量)を徐々に添加した。添加の終点で暗赤色のスラリーを得た。次いで、その反応混合物を室温まで加温させ、2時間攪拌した。次いで、それを氷/37%HCl=3/1の溶液を含むフラスコ中に移した。有機相をEt2O(3×200mL)で抽出し:全てを合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、そして溶剤を真空中で除去した。燈色の油を製品として得た(37.48g、収率93.5%)。後者を、さらなる精製を行うことなしに、次の段階でそのまま使用した。
【0065】
2,4,6−トリメチルインダン−1−オールの合成
37.48gの2,4,6−トリメチル−インダン‐1−オン(0.215モル)を、磁気式攪拌棒、温度計および還流凝縮器を備えた500mLの3つ首丸底フラスコ中の200mLのEtOH中に溶解した。次いで、NaBH4(15.01g、0.394モル、1.6等量)を、添加の間、温度を20℃以下に保って徐々に添加した。明黄色の懸濁物を、室温で18時間攪拌した。次いで、100mLのアセトンを注意深く添加し、次いでその溶剤を除去して白色の固体を与えた。後者を100mLの水で処理し、トルエン(2×150mL)で抽出した。さらに水相をトルエンで抽出し、有機相を一体にし、10%のNH4Cl水溶液で洗浄した。洗浄後、有機相をNa2SO4で乾燥し、濾過し、そして蒸発させて、35.57gの黄色粘着性固体を与え、それはNMR分析で、5wt%の出発インダノンを含む、1.4/1の2つのジアステレオアイソマーのような所望の製品である結果となった(収率89.2%)。その製品は、さらなる精製を行うことなしに、次の段階でそのまま使用した。
【0066】
2,4,6−トリメチル‐インデンの合成
上記のように製造された、2,4,6−トリメチルインダン‐1−オール(35.57g、0.192モル)、0.5gのp−トルエンスルフォン酸1水和物および160mLのトルエンを、磁気式攪拌棒、Dean−Stark装置および還流凝縮器を備えた500mLの3つ首丸底フラスコ中に置いた。反応混合物を80℃で3時間加熱し、3.5mLの水を回収した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、飽和NaHCO3水溶液で処理し:有機層を分離し、水層をEt2Oで抽出し、そして有機相を回収した。Na2SO4で乾燥させた後、溶剤を真空中で蒸発させて28.46gの燈色の油を与え、それはプロトンNMR分析で、2,4,6−トリメチルインダン−1−オールの段階に由来する2.0wt%のインダノンで汚染された、所望の製品(GC−MSで、純度93.7%)である結果となった(収率87.8%)。その製品は、さらなる精製を行うことなしに、次の段階でそのまま使用した。
【0067】
Me2Si(2,4,6−トリメチルインデニル)2ZrCl2の合成
5gの2,4,6−トリメチルインデン(31.6ミリモル)を100mLのEt2Oに溶解し、その溶液を0℃に冷却し、そして13.27mLのBuLiの2.5Mヘキサン溶液(33.2ミリモル、1.05当量)をそれに滴下により添加した。氷浴を取り除き、その反応混合物を1時間攪拌した。そのようにして得られたクリーム黄色のスラリーを0℃に冷却し、それに1.92mLのMe2SiCl2(16.5ミリモル)の20mLのTHF溶液を滴下により添加した。室温まで加温した後、黄色スラリーを1時間30分攪拌し、次いで溶剤を減圧下で除去し、残渣はトルエン中に取り込み、G4フリットで濾過し、残渣を濾液が無色になるまで追加のトルエン(合計300mLのトルエン)で洗浄した。その濾液を真空中で乾燥するまで蒸発させ、プロトンNMR分析が目標の配位子であることを確認する、5.8gの褐色の油を与えた。この製品(15.56ミリモル)を100mLのEt2O中に溶解し、0℃に冷却し、それに12.6mLのBuLiの2.5Mヘキサン溶液(31.5ミリモル)を滴下により添加した。添加の終点で、赤色溶液を室温に到達させ、さらに1時間攪拌し、次いで0℃に冷却した。それに3.67gのZrCl4(15.75ミリモル)の50mLのトルエンのスラリーを滴下により添加した。氷浴を除去し、室温で2時間攪拌した後、濃黄色の懸濁物を乾燥させ、トルエン中に取り込み、G4フリットで濾過した。暗色の濾液をプロトンNMRで分析し、乾燥し、Et2O(20mL)とトルエン(20mL)の混合物中でスラリーにし、濾過し、固体の残渣(1.7g)をプロトンNMRで分析した:その分析は、メソ:ラセミ比が60:40の目標メタロセンの形成を確認した。
【0068】
meso−ジメチルシリルビス(2−メチル−4,5−ベンゾ−インデニル)ジルコニウムジクロリド(C−1)を、USP5,830,821号により製造した。
meso−ジメチルシリルビス(2−メチル−4−フェニル‐インデニル)ジルコニウムジクロリド(C−2)を、USP5,786,432号により製造した。
助触媒メチルアルモキサン(MAO)は市販品であり、受け入れのままで使用した:Crompton AG、10wt%/volのトルエン溶液、実施例1〜6および比較例1〜2に関してAlで1.7M:実施例7−9に関してAlbemarle 30wt%/wtのトルエン溶液。
【0069】
実施例1〜6および比較例1〜2
触媒混合物を、表1に示された量のメタロセンを適切な量のMAO溶液(Al(MAO)/Zr比を表1に報告する)と共に4〜8mlのトルエンに溶解し、オートクレーブ中に注入する前に室温で10分間攪拌した溶液を得て製造した。
【0070】
6ミリモルのAl(i−Bu)3(TIBA)(1Mのヘキサン溶液として)と1350gの1−ブテンを、室温で、磁気式駆動攪拌器および35mLのステンレス鋼製の容器を備え、温度調節用のサーモスタットに接続され、予めAl(i−Bu)3のヘキサン溶液で洗浄して浄化されかつ窒素気流中50℃で乾燥された、4Lのジャケット付ステンレス鋼製のオートクレーブに装填した。次いで、そのオートクレーブを、表1に報告された重合温度に温度調節し、上で報告されたように製造された触媒系を、ステンレス鋼製の容器を通して窒素圧の手段でそのオートクレーブ中に注入した。重合を一定温度で1時間行った。次いで、攪拌を中断し;オートクレーブの圧力を、窒素で20bar−gに上げた。底面の排出バルブを開栓し、1‐ブテン/ポリ−1−ブテン混合物を、70℃の水を含む加熱された鋼製のタンクに排出した。そのタンクの加熱を切り、0.5bar−gで窒素流を供給した。室温で冷却した後、鋼製のタンクを開栓され、湿ポリマーを回収した。湿ポリマーを70℃で減圧下のオーブンで乾燥させた。
重合条件および得られたポリマーの特性データを表1に報告する。
【0071】
実施例5および6において、A−2の純粋のメソ形態の代わりに60のメソと40のラセミ形態の混合物を使用した。我々は、A−2(A−2rac)のラセミ形態を試験し、その結果はブテンの重合において不活性であった。したがって、実施例5と6においては、活性度は純粋のメソ形態に対して計算した。このことは、ラセミが不活性であり、メソ形態からラセミ形態を分離する必要がないので、化合物A−2を使用する場合に、メタロセン化合物を精製の必要なしにそのまま使用することができるという、本発明の方法のさらなる利点である。
【0072】
【表1】

【0073】
実施例7−9
触媒/助触媒混合物を、5.2mlのMAOの30wt%のトルエン溶液をトリイソブチルアルミニウム(TIBA)のイソドデカン溶液(110g/L溶液−AlMAO/AlTIBA=2/1モル/モル)と予備反応することにより製造した;その混合物を室温で1時間攪拌した。
全有機メタロセン化合物の含量が100g/Lに達するまで追加のイソドデカンを添加した後、トルエン/イソドデカン溶液を、室温でメタロセンに徐々に添加し、10分間の攪拌の後、透明な赤‐燈色の触媒溶液を与えた。触媒溶液中のA−1の濃度は1.64mg/lであった。
【0074】
6ミリモルのAl(i−Bu)3(1Mのヘキサン溶液として)および表2に記載された量のモノマー類を、室温で、磁気式駆動攪拌器および35mLのステンレス鋼製の容器を備え、温度調節用のサーモスタットに接続され、予めAl(i−Bu)3のヘキサン溶液で洗浄して浄化されかつ窒素気流中50℃で乾燥された、4Lのジャケット付ステンレス鋼製のオートクレーブに装填した。重合中にモノマー類を追加供給しなかった。
【0075】
次いで、そのオートクレーブを60℃の重合温度に温度調節し、次いで触媒/助触媒混合物を含む溶液を、ステンレス鋼製の容器を通して窒素圧の手段でそのオートクレーブ中に注入し、重合を一定温度で1時間行った。次いで、攪拌を中断し;オートクレーブの圧力を、窒素で20bar−gに上げた。底面の排出バルブを開栓し、1‐ブテン/1−ブテンコポリマー混合物を、70℃の水を含む加熱されたスチール鋼製のタンクに排出した。そのタンクの加熱を切り、0.5bar−gで窒素流を供給した。室温で冷却した後、鋼製のタンクを開栓し、湿ポリマーを回収した。湿ポリマーを70℃で減圧下にオーブンで乾燥させた。
【0076】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式(I):
【化1】

[式中、
Mは、元素の周期律表の3、4、5、6族かまたはランタニドまたはアクチニド族に属する元素から選択される遷移金属の元素であり;
pは、0から3の整数であり、金属Mの形式酸化状態マイナス2に等しく;
Xは、同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、またはR、OR、OSO2CF3、OCOR、SR、NR2もしくはPR2基(式中、Rは、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、線状もしくは分枝状の、環状もしくは非環状の、C1−C40アルキル、C2−C40アルケニル、C2−C40アルキニル、C6−C40アリール、C7−C40アルキルアリールまたはC7−C40アリールアルキル基である)であり;または、2つのXは、置換もしくは未置換のブタジエニル基またはOR'O基(式中、R'は、C1−C40アルキリデン、C6−C40アリーリデン、C7−C40アルキルアリーリデンおよびC7−C40アリールアルキリデンから選択される2価の基である)を任意に形成し;
Lは、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、2価のC1−C40炭化水素基、または5以下の珪素原子を含む2価のシリリデン基であり;
1とR2は、互いに同一または異なり、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、C1−C40炭化水素基であり;
Tは、互いに同一または異なり、式(IIa)または(IIb):
【化2】

(式中、記号*で示される原子は、式(I)の化合物の同じ記号で示した原子に結合し;
3は、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、C1−C40炭化水素基であり;
4とR6は、互いに同一または異なり、水素原子、または元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含むC1−C40炭化水素基であり;
5は、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含むC1−C40炭化水素基であり;
7とR8は、互いに同一または異なり、水素原子、または元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含むC1−C40炭化水素基である)の部分である]
のメソまたはメソ様形態の少なくとも1つのメタロセン化合物、および
b)アルモキサンまたはアルキルメタロセンカチオンを形成し得る化合物
を接触させることにより得られる触媒系の存在で、1−ブテンと任意にエチレン、プロピレンまたは式CH2=CHR(式中、Rは線状または分枝状のC3−C20アルキル基である)のアルファ−オレフィンとを重合する段階からなる、エチレン、プロピレンまたは前記のアルファ−オレフィンから選択される少なくとも1つのコモノマーを任意に含む、アタクチック1−ブテンポリマー類を得る方法。
【請求項2】
触媒系が、さらにc)有機アルミニウム化合物を含む請求項1による方法。
【請求項3】
式(I)の化合物において、Mが、チタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり;Xが、水素原子、ハロゲン原子またはR基(式中、Rは請求項1のように定義される)であり;pが、2であり;かつLが、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、C1−C40アルキリデン、C3−C40シクロアルキリデン、C6−C40アリーリデン、C7−C40アルキルアリーリデンまたはC7−C40アリールアルキリデン基、および5以下の珪素原子を含む2価のシリリデン基から選択される2価の架橋基である請求項1または2による方法。
【請求項4】
Lが、基(Z(R")2n(式中、Zは、炭素またはシリコン原子であり、nは1または2であり、かつR"は、元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含むC1−C20炭化水素基である)である請求項1〜3のいずれか1つによる方法。
【請求項5】
1とR2が、線状もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和のC1−C20アルキル基であり;R3が、線状もしくは分枝状の、C1−C20アルキル、C6−C40アリール、C7−C40アリールアルキル基であり;R4とR6が、水素原子であり;R5が、線状もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和のC1−C20アルキル基であり;R8が、水素原子、または線状もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和のC1−C20アルキル基であり;かつR7が、C1−C40アルキル、C6−C40アリールまたはC7−C40アリールアルキル基である請求項1〜4のいずれか1つによる方法。
【請求項6】
7が、式(III):
【化3】

(式中、R9、R10、R11、R12およびR13は、互いに同一か異なって、水素原子、または元素の周期律表の13−17族に属する異原子を任意に含む、線状もしくは分枝状の、環状もしくは非環状の、C1−C20アルキル、C2−C20アルケニル、C2−C20アルキニル、C6−C20アリール、C7−C20アルキルアリールまたはC7−C20アリールアルキル基である)の基である請求項5による方法。
【請求項7】
メソまたはメソ様形態のメタロセン化合物が、式(IV):
【化4】

[式中、M、X、p、L、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は請求項1に記載された意味を有する]を有する請求項1〜6のいずれか1つによる方法。
【請求項8】
メソまたはメソ様形態のメタロセン化合物が、式(V):
【化5】

[式中、M、X、p、L、R1、R2、R7およびR8は請求項1に記載された意味を有する]を有する請求項1〜6のいずれか1つによる方法。
【請求項9】
1−ブテンが、エチレン、プロピレンまたは式CH2=CHR(式中、Rは線状もしくは分枝状のC3−C20アルキル基である)のアルファオレフィンから選択される少なくとも1つのコモノマーの存在で重合される請求項1〜8のいずれか1つによる方法。
【請求項10】
1−ブテンが、プロピレンの存在で重合される請求項9による方法。
【請求項11】
次の特徴:
(i)テトラヒドロナフタレン(THN)中135℃で測定された極限粘度(I.V.)が、1.30に等しいかそれより高い;
(ii)分子量分布Mw/Mnが4よりも低い;
(iii)示差走査熱量計(DSC)で融解エンタルピー不検出;
(iv)アイソタクチックペンタド(mmmm)が20%より低い
を有するアタクチックな非晶質1−ブテンのホモポリマー。
【請求項12】
分子量分布Mw/Mnが3.5より低く;かつアイソタクチックペンタド(mmmm)が15%より低い請求項9によるアタクチックな非晶質1−ブテンのホモポリマー。
【請求項13】
次の特徴:
(i)1.00から2.50dL/gの、テトラヒドロナフタレン(THN)中135℃で測定された極限粘度(I.V.);
(ii)4より低い;好ましくは3.5より低い;より好ましくは3より低い分子量分布Mw/Mn;
(iii)示差走査熱量計(DSC)で融解エンタルピー不検出
を有している、51モル%以下の、エチレン、プロピレンまたは式CH2=CHR(式中、Rは、線状もしくは分枝状のC3−C10アルキル基である)のアルファ−オレフィンから誘導されるコモノマー単位を含有するアタクチックな非晶質1−ブテンコポリマー。
【請求項14】
50モル%以下のコモノマー単位からなる請求項13によるアタクチックな非晶質1−ブテンのホモポリマー。
【請求項15】
5−30モル%のコモノマー単位からなる請求項14によるアタクチックな非晶質1−ブテンのホモポリマー。
【請求項16】
コモノマー単位が、プロピレンである請求項13〜15のいずれか1つによるアタクチックな非晶質1−ブテンのホモポリマー。
【請求項17】
0.8から1.2の範囲のr1×r2反応性比によりさらに特徴付けられる請求項13〜16のいずれか1つによるアタクチックな非晶質1−ブテンのホモポリマー。

【公表番号】特表2007−536421(P2007−536421A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511958(P2007−511958)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004506
【国際公開番号】WO2005/105865
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(502303902)バセル ポリオレフィン ジーエムビーエイチ (19)
【氏名又は名称原語表記】BASELL POLYOLEFINE GMBH
【住所又は居所原語表記】Bruhler Strasse 60,50389 Wesseling,Germany
【Fターム(参考)】