アプタマー使用測色センサー系
本発明は、サンプル中の分析物の存在、及び場合によってその濃度を決定するアプタマー使用測色センサー系を提供する。前記センサー系を使用する方法及び前記センサーを含むキットもまた提供される。本センサーは、凝集物を形成するためにリンカー及びオリゴヌクレオチド官能化粒子を利用し、前記凝集物は分析物に応答して脱凝集する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
背景技術
【0002】
サンプル中の分析物の存在を決定する能力は重要な利点である。例えば、多くの金属及び金属イオン、例えば鉛、水銀、カドミウム、クロム、及び砒素は、飲料水源に存在するときは重大な健康上のリスクとなる。飲料用及び他の水源の汚染を防止するために、工業排液を前記が水処理プラントに送られる前に検査することは一般的である。生物学的な液体、例えば血液及び体組織に由来する液体もまた、身体が有害物質に暴露されたか否か、又は病的状態が存在するか否かを決定するために、多様な分析物について検査することができる。例えば、多様なサンプルで微量の炭疽を検出する要求が最近生じた。
【0003】
測色方法は、通常は土壌、廃液、生物学的サンプル、体液などにおける金属及びイオンの検出に用いられる。装置を基本とする分析方法、例えば原子吸収分光分析に関して、測色方法は迅速となり、さらに装置又は使用者の巧緻さに関してほとんど必要とされない傾向がある。例えば、水族館管理者には、硝酸イオン(NO3-)濃度が上昇した水サンプルに添加したときより明暗の濃いピンクに変わる測色検査が利用可能である。このようにして、測色検査は、問題の分析物(例えば硝酸塩)がサンプル中に存在することを示し、さらにまた発生する色の比色相(specific hue)からサンプル中の分析物量の指標を提供する。通常の測色検査は極めて有用であるが、一方、それらは限られた分析物セットのために存在し、しばしば極少量又は微量の分析物を検出することができない。
上記の記述から理解されるように、より広範囲の微量の分析物を同定することができ、さらに分析の信頼性が高められた測色センサー系が希求され続けている。
【発明の開示】
【0004】
発明の要旨
分析物を検出するセンサー系は、分析物に応答して折り畳まれるアプタマーを含むリンカー、及び前記アプタマーの少なくとも一部分と相補的な第二のオリゴヌクレオチドと結合した第二の粒子を含む。前記リンカーは伸長部を含むことができ、この伸長部では、第一の粒子と結合した第一のオリゴヌクレオチドは前記伸長部の少なくとも一部分と相補的である。
分析物を検出する方法は、凝集物をサンプルと一緒にして分析物に応答する色の変化を検出することを含む。前記凝集物は、リンカー及び第二の粒子を含むことができる。前記凝集物はまた第一の粒子を含むことができ、前記リンカーは伸長部を含むことができる。
分析物を検出するキットは、第二の粒子及び分析物に応答して折り畳まれるアプタマーを含むリンカーを含む凝集物を形成するための系を収納する第一の容器を含む。第二の粒子は第二のオリゴヌクレオチドと結合されてあり、前記第二のオリゴヌクレオチドは、アプタマーの少なくとも一部分と相補的である。
分析物に対するアプタマーの感度及び選択性を決定する方法は、前記凝集物を分析物と一緒にし、分析物に応答する色の変化を検出し、DNA鎖が折り畳まれて色の変化を提供したのか否かを決定することを含む。前記凝集物は、第二の粒子及びDNA鎖を含むリンカーを含む。前記凝集物はまた第一の粒子を含むことができる。リンカーは伸長部を含むことができる。
【0005】
明細書及び特許請求の範囲の明確で一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。
“サンプル”という用語は、問題の分析物を含むと考えられる分析に付される組成物と定義される。典型的には、分析のためのサンプルは液体形であり、好ましくは、サンプルは水性混合物である。サンプルは任意の供給源、例えば廃液由来の工業サンプル、又は生物学的サンプル、例えば血液、尿又は唾液でありえる。サンプルは、工業的又は生物学的サンプルから誘導された物、例えば抽出物、稀釈物、ろ液又は再構成沈殿物であってもよい。
“分析物”という用語はサンプルに潜在的に存在する1つ以上の物質と定義される。分析によって、サンプルに存在する分析物の存在、量又は濃度が決定される。
“測色”という用語は、センサー系を構成する1つの試薬又は複数の試薬が、分析物の有無において色の変化を生じる分析と定義される。
“ライトアップ”という用語は、サンプル中に存在する分析物に応答して所望の色の変化を示す測色センサー系を指す。
“ライトダウン”という用語は、分析物がサンプルに存在するときに色の変化を示さないが、分析物が存在しないときに所望の色の変化が生じる測色センサー系を指す。
【0006】
“感度”という用語は、センサー系が検出することができる分析物の濃度の最も小さな増加、又はセンサー系が分析物に応答するシグナルをバックグラウンドシグナルから識別することができる最低濃度限界(検出限界)を指す。
“選択性”という用語は、所望の分析物を他の物質種が存在する中で検出するセンサー系の能力を指す。
“ハイブリダイゼーション”という用語は、低ストリンジェンシー条件下で少なくとも1つの第二のヌクレオチドと少なくとも1つの水素結合を形成する、第一のポリヌクレオチドの能力を指す。
“アプタマー”という用語は、分析物に応答して構造的変化を受ける核酸鎖を指す。
“構造的変化”という用語はアプタマーがまた別の状態から三次構造を採るプロセスを指す。平易にいえば、“折り畳む”という用語を構造的変化の代りに用いることができる。
【0007】
詳細な説明
アプタマーは核酸使用触媒よりも容易に単離することができる。核酸酵素に比してアプタマーのより単純な構造はまた、核酸酵素を利用することができない分析物センサー系のデザインを可能にする。本発明は、アプタマーの折り畳み構造及び非折り畳み構造とオリゴヌクレオチド官能化粒子との間のハイブリダイゼーション強度を選択することによって、分析物に応答して粒子を遊離させることができるという発見を利用する。このようにして、室温で選択分析物に応答して所望の色の変化を示す(したがって米国特許出願10/144,679号に開示されたセンサー系の欠点が克服される)、ライトアップ測色センサーが提供される。
図1は、サンプル(102)中の分析物(105)の存在及び場合によってその濃度を決定することを目的とする測色分析(100)を示す。(110)で、方法(100)によってその存在/濃度が決定される分析物(105)が選択される。
ある特徴では、分析物(105)は、アプタマー(124)の折り畳みを引き起こす任意のイオンでありえる。別の特徴では、分析物(105)は、アプタマー(124)の折り畳みを引き起こす任意の金属イオンでありえる。+1の形式酸化状態(I)を有する好ましい一価イオンには、NH4+、K(I)、Li(I)、Ti(I)及びAg(I)が含まれる。+2の形式酸化状態(II)を有する好ましい二価イオンには、Mg(II)、Ca(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)、Zn(II)、Cd(II)、Cu(II)、Pb(II)、Hg(II)、Pt(II)、Ra(II)、Sr(II)、Ni(II)及びBa(II)が含まれる。+3(III)、+4(IV)、+5(V)又は+6(VI)の形式酸化状態を有する好ましい三価及びそれより高い価数の金属イオンには、Co(III)、Cr(III)、Ce(IV)、As(V)、U(VI)、Cr(VI)、ランタニドイオンが含まれる。より好ましい分析物イオンには、一価の金属イオン及び生物にとって有毒な金属イオン、例えばAg(I)、Pb(II)、Hg(II)、U(VI)、及びCr(VI)が含まれる。
【0008】
別の特徴では、分析物(105)は、アプタマー(124)の折り畳みを引き起こす任意のバイオ分子でありえる。好ましいバイオ分子には、大きなバイオ分子、例えばタンパク質(例えばHIV関連タンパク質、hCG-ホルモン、インスリン)、抗体、成長因子、酵素、ウイルス(例えばHIV、天然痘)、ウイルス由来成分(例えばHIV-由来分子)、細菌(例えば炭疽)、細菌由来分子及び成分(例えば炭疽由来分子)、又は細胞が含まれる。好ましいバイオ分子にはまた小さなバイオ分子、例えばアミノ酸(例えばアルギニン)、ヌクレオチド(例えばATP、GTP)、神経伝達物質(例えばドーパミン)、補助因子(例えばビオチン)、ペプチド、又はアミノグリコシドが含まれる。
別の特徴では、分析物(105)は、アプタマー(124)の折り畳みを引き起こす任意の有機分子でありえる。好ましい有機分子には、薬剤(例えば抗生物質及びテオフィリン)、又は管理物質(例えばコカイン)、色素、オリゴ糖、多糖類、グルコース、窒素肥料、農薬、ジオキシン、フェノール、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、神経ガス、トリニトロトルエン(TNT)、又はジニトロトルエン(DNT)が含まれる。
【0009】
いったん分析物(105)が選択されたら、分析物(105)に応答して折り畳まれる1つ以上のアプタマー(124)が選択される。アプタマーの選択(120)は、in vitro選択、誘導進化、又は当業者に公知の他の方法によって実施される。アプタマーの選択(120)は、選択した分析物(105)の存在下で折り畳みの強化が示される1つ以上のアプタマーを提供する(それによってセンサーの感度が提供される)。選択(120)はまた、選択した分析物の存在下で折り畳まれるが、選択されていない分析物及び/又はサンプル中に存在する他の物質種の存在下で折り畳まれないアプタマーを除外することもできる(それによってセンサー選択性が提供される)。
例えば、K(I)と特異的に結合するが、Na(I)、Li(I)、Cs(I)、Rb(I)又は他の競合金属イオンとは顕著には結合しないアプタマーを選択することができる。ある特徴では、これは、K(I)と結合するアプタマーを単離し、続いてNa(I)、Li(I)、Cs(I)又はRb(I)と結合するアプタマーを除去することによって達成することができる。別の特徴では、Na(I)、Li(I)、Cs(I)又はRb(I)と結合するアプタマーを先ず廃棄し、続いてK(I)と結合するものが単離される。このようにして、アプタマーの選択性を高めることができる。
【0010】
アプタマー(124)は、分析物(105)の存在下で折り畳まれる核酸鎖を含む。ある特徴では、前記折り畳みは、一次構造又はデュープレックス構造の三次構造への変換と考えられる。アプタマーの塩基配列は、アプタマーが、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド官能化粒子と少なくとも部分的なハイブリダイゼーションを経るようにデザインすることができる。この特徴では、アプタマー(124)の塩基配列の少なくとも一部分は、前記オリゴヌクレオチド官能化粒子の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドと相補的でありえる。
アプタマー(124)はデオキシリボヌクレオチドから生成することができる。前記デオキシリボヌクレオチドは、天然核酸でも非天然核酸でも又は改変核酸でもよい。ポリアミド骨格及びヌクレオシド塩基を含むペプチド核酸(PNA、例えばBiosearch, Inc., Bedford, MAから入手できる)もまた有用でありえる。
下記の表Iには、分析物、前記分析物に応答してこれと結合し折り畳まれるアプタマー、及び各アプタマーの配列が記載されている参考文献が列挙されている。これらアプタマー及び他のアプタマーの分析物結合領域は、リンカー(128)での使用のために修正することができる。例えば、コカインアプタマーの非分析物結合領域(下記表Iの配列番号:10として提示)を改変して、アプタマーGGGAGACAAGGATAATCCTTCAATGAAGTGGGTCTCCC(配列番号:56)を提供し、リンカー(128)内に含ませることができる。
【0011】
【0012】
表1に対する文献リスト
【表1】
【0013】
適切なアプタマーを(120)で選択した後、アプタマー(124)を含むリンカー(128)を形成する。ある特徴では、アプタマー(124)はリンカー(128)として直接提供することができる。別の特徴では、リンカー(128)は、1つ以上の伸長部(126)を用いてアプタマー(124)と結合させることによって形成することができる。
伸長部(126)は、アプタマー(124)と結合することができ、1つ以上のオリゴヌクレオチド官能化粒子と少なくとも部分的にハイブリダイズすることができ、さらに分析(100)と適合することができる任意の核酸配列であろう。この特徴では、伸長部(126)の塩基配列の少なくとも一部分は、1つ以上のオリゴヌクレオチド官能化粒子の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドと相補的でありえる。ある特徴では、固相合成を用いて、アプタマー(124)を伸長部(126)と結合させ、リンカー(128)を形成することができる。別の特徴では、リンカー(128)のアプタマー(124)部分を合成した後、この合成を継続して伸長部(126)を形成する。同様に、アプタマー(124)配列を用いてリンカー(128)を伸長させてもよい。
好ましくは、伸長部(126)は1から100塩基を含む。ある特徴では、伸長部(126)に存在する塩基の少なくとも50、70又は90%は、第一のオリゴヌクレオチド官能化粒子の相補的部分(例えば、図3Aの粒子(336)のTGAGTAGACACT-5'(配列番号:43)部分)とハイブリダイズすることができ、一方、伸長部に存在する塩基の少なくとも50、35、25又は10%は、第二のオリゴヌクレオチド官能化粒子(例えば図3Aの粒子(337))とハイブリダイズすることができる。
【0014】
リンカー(128)を選択又は合成した後、凝集物(132)を(130)で形成することができる。凝集物(132)は、リンカー(128)及びオリゴヌクレオチド官能化粒子(136)を含む。その成分の物理的サイズを考慮して、凝集物(132)はかなり大きいであろう。
リンカー(128)は、オリゴヌクレオチド官能化粒子(136)とハイブリダイズし、アプタマー(124)を含み、さらに伸長部(126)を含むことができる。例えば、第一及び第二オリゴヌクレオチド官能化粒子が、それぞれ塩基配列、3'-AAAAAAAAAAAATGAGTAGACACT(配列番号:44)及び5'-CCCAGGTTCTCT(配列番号:45)を有するならば、アデノシン分析物の存在下で折り畳まれるアプタマー(124)及び伸長部(126)を含むリンカー(128)に適した配列は、5'-ACTCATCTGTGAAGAGAACCTGGGGGAGTATTGCGGAGGAAGGT(配列番号:46)でありえる。
アデノシン分析物の場合、リンカー(128)の伸長部(126)部分は前記配列のACTCATCTGTGAAGAGA(配列番号:47)部分であり、前記は、伸長部(126)が第一の官能化粒子の12塩基と、さらに第二の官能化粒子の5塩基とハイブリダイズすることを可能にする。同様に、リンカー(128)のアプタマー(124)は、当該配列のACCTGGGGGAGTATTGCGGAGGAAGGT(配列番号:18)部分であり、前記は、アプタマー(124)のACCTGGG(配列番号:48)部分が第二の官能化粒子のTGGACCC(配列番号:49)部分とハイブリダイズすることを可能にする。
【0015】
粒子(136)は距離依存性光学特性を示すので、凝集物(132)中で接近し保持されるときは一色であり、粒子間の距離が増加するにつれて色の変化を示す。例えば、粒子(136)が金のナノ粒子であるときは、凝集物(132)は水溶液中で青色を提示し、前記は脱凝集が進行するにつれ赤色になる。
脱凝集は、リンカー(128)のアプタマー(124)部分が分析物(105)と応答してこれと結合し折り畳まれたときに発生する。アプタマー(124)が折り畳まれたとき、第二のオリゴヌクレオチド官能化粒子とのハイブリダイゼーションの部分が失われる。このハイブリダイゼーションが失われることによって第二のオリゴヌクレオチド官能化粒子の凝集物(132)からの分離が可能になる。したがって、粒子(136)が凝集物(132)から拡散していくにつれ、溶液は青から赤に変化する。
粒子(136)は、距離依存光学特性を示し、センサー系の操作に適合しえる任意の物質種で、センサー系の操作に適合しえるものである。適切な粒子には、金属(例えば金、銀、銅及び白金)、半導体(例えばCdSe、CdS、及びZnSで被覆したCdS又はCdSe)、及び磁性コロイド物質(例えば以下の文献に記載されたもの:Josephson, Lee et al. Angewandte Chemie, International Edition (2001), 40(17):3204-3206)が含まれる。特に有用な粒子には、ZnS、ZnO、TiO2、AgI、AgBr、HgI2、PbS、PbSe、ZnTe、CdTe、In2Se3、Cd3P2、Cd3As2、InAs、及びGaAsが含まれえる。
【0016】
好ましい特徴では、粒子は金(Au)のナノ粒子であり、5から70ナノメートル(nm)又は10から50nmの平均直径を有する。より好ましい特徴では、10から15nmの平均直径を有する金のナノ粒子はオリゴヌクレオチドに対して官能化されている。
オリゴヌクレオチド官能化金粒子の製造方法に関するより詳細な処理については、以下を参照されたい:米国特許6,361,944号;Mirkin et al. Nature(London) 1996, 382:607-609;Storhoff et al. J Am Chem Soc 1998, 20:1959-1064;及びStorhoff et al. Chem Rev (Washington, D.C.) 1999, 99:1849-1862)。金のナノ粒子が現在のところ好ましいが、距離依存性の色の変化を受ける他の物質種、例えば無機結晶、量子ドット(quantum dots)もまたオリゴヌクレオチドに結合させることができる。
(140)では、凝集物(132)はサンプル(102)と一緒にすることができる。(150)では、サンプル(102)は色の変化について監視される。色の変化が生じない場合は、分析物(105)はサンプル(102)に存在しない。色の変化が(160)で生じたら、分析物(105)はサンプル(102)に存在する。色の変化は、分析物(102)がアプタマー(124)の折り畳みを引き起こし、したがって粒子(136)を凝集物(132)からサンプル(102)の溶液中に拡散させたことを示す。したがって、分析(100)は、色の変化が分析物(105)の存在下で生じるので“ライトアップ”センサー系を提供する。
【0017】
分析物(105)に応答して、実質的に完全な色の変化が生じる速度は、センサー系の応答時間と考えることができる。ある特徴では、色の変化は、可視領域の吸収ピークが20%増加したときに実質的に完了したと考えることができる。別の特徴では、金粒子については522nmの吸光係数が700nmより100%増加したとき、色の変化は実質的に完了したと考えることができる。センサー系の好ましい応答時間は1秒から60分、又は2秒から10分である。センサー系のより好ましい応答時間は5秒から2分、又は8から12秒である。センサー系の好ましい操作温度範囲は0℃から60℃、又は15℃から40℃である。より好ましい操作温度範囲は23℃から37℃、又は25℃から30℃である。別の特徴では、分析(100)は23℃から37℃で実施され、好ましい応答時間は2分未満、又は1から12秒でありえる。
分析物(105)に応答して色が変化する度合いは、当業者に公知の比色定量方法によって(170)で定量することができる。多様な色の比較円板(例えば以下から入手できるもの:Hach Co., Loveland, CO;又はLaMotte Co., Chestertown, MD)を、本発明での使用に応用することができる。サンプルに加えて、選択した分析物の既知量を含む標準物を分析して、比較の正確さを高めることができる。より高度な正確さが所望される場合、種々のタイプの分光光度計を用いて、所望の濃度範囲のビアーズ曲線(Beer's curve)を作成することができる。続いて、サンプルの色を前記曲線と比較し、サンプル中に存在する分析物の濃度を決定することができる。適切な分光光度計にはヒューレットパッカード8453及びBausch & Lomb Spec-20が含まれる。
【0018】
さらに別の特徴では、方法(100)を改変して、分析物(105)に対するアプタマーの感度及び選択性を決定することができる。この特徴では、分析物(105)に応答するアプタマーであると思われる1つ以上のDNAが(120)で選択される。DNA鎖は改変しなくても、又は(125)で伸長部(126)を用いて改変してもよい。(130)で、凝集物がDNA鎖及び適切な粒子から形成される。(140)で、凝集物は分析物(105)と一緒にされる。凝集物が色の変化を示したら、前記DNA鎖は前記標的(105)のための適切なアプタマー配列である。このようにして、(120)で選択した多数のアプタマーを測色センサー系で使用するために試験することができる。
図2Aは、2つの分析分子に依存して構造的変化を受けて折り畳み構造(230)をとるアプタマー(224)を示している。図2Bは、2つのアデノシン分子に応答して折り畳み構造(230)を形成するアプタマー(224)の特異的な塩基対を示す。この特定のアプタマー配列は折り畳みに2分子のアデノシン分析物を必要とするが、一方、他のアプタマーはただ1つの分析物分子に応答して折り畳まれる。
【0019】
図2Cは、伸長部(226)と結合してリンカーを形成するアプタマー(224)を示す。伸長部(226)はA及びB部分を含み、ここで、A部分は、第一の粒子(236)のオリゴヌクレオチドと安定なハイブリダイゼーションを形成するために十分な相補性塩基を含む。例えば、12のアデニン塩基を含む非相補性ポリアデニン鎖(A12)が、第一の粒子(236)の相補性配列に付加されて、ハイブリダイゼーション安定性が強化される。伸長部(226)のB部分の配列は、本質的に安定な二次構造を形成するリンカーを排除するように選択することができる。コンピュータプログラム、例えばM-ホールド(http://www.bioinfo.rpi.edu/applications/mfold/;M. Zuker, Mfold web server for nucleic acid folding and hybridization prediction. Nucleic Acids Res. 31(13), 3406-15 (2003)で利用可能である)又は他のプログラムを用いて、排除のための安定なリンカーを予想することができる。例えばリンカーのための安定な配列がACTCATCTGTGAAGATGACCTGGGGGAGTATTGCGGAGGAAGGT(配列番号:50)である場合は、下線部のTG塩基をGAに置換し、配列ACTCATCTGTGAAGAGAACCTGGGGGAGTATTGCGGAGGAAGGT(配列番号:51)を提供することよって、リンカーは本質的に不安定になりえる。
アプタマー(224)はC及びD部分を含む。ある特徴では、結合した伸長部(226)のB部分及びアプタマー(224)のC部分と第二の粒子(237)とのハイブリダイゼーション安定性はA及び第一の粒子(236)とのハイブリダイゼーション安定性より低いであろう。好ましい特徴では、このC+B/第二の粒子のハイブリダイゼーションの融解温度はセンサー系が用いられる温度よりも高い。別の好ましい特徴では、第二の粒子(237)のオリゴヌクレオチド配列とハイブリダイズするB部分の融解温度は、センサー系が用いられる温度より低い。別の好ましい特徴では、C+D+分析物複合体の安定性は、Cと第二の粒子(237)とのハイブリダイゼーション安定性よりも高くなければならない。別の特徴では、B及びCの配列は、センサー系の操作に適合しえるように短い。
【0020】
図3Aは、アデノシン分析物(305)の存在下における凝集物(332)の脱凝集を示す。凝集物(332)は、多数の凝集ユニット(331)から形成される。凝集ユニット(331)の各々はリンカー(328)から形成される。前記リンカー(328)は、3' 及び5'チオール-オリゴヌクレオチド官能化粒子(336)と(337)にそれぞれハイブリダイズされる。リンカー(328)はアプタマー部分(324)及び伸長部分(326)を含む。3'-A12AdeAU粒子(336)は伸長部分(326)とハイブリダイズし、一方、5'-AdeAU粒子(337)は伸長部分(326)及びアプタマー(324)とハイブリダイズして凝集ユニット(331)を形成する。
リンカーの1つの塩基と粒子が示されているが、前記塩基は対抗鎖により変化して対合を維持することができる。例えば、粒子のオリゴヌクレオチドの対合塩基をグアニンからアデニンに変更することができるかぎり、リンカー(228)のA又はB部分の任意のシトシンをチミンに変えることができる。
アデノシン分析物(305)の存在下で、リンカー(328)のアプタマー部分(324)は折り畳まれ、したがってリンカー(328)のアプタマー部分(324)と5'-AdeAU粒子(337)との間のハイブリダイゼーションの少なくとも一部分が排除される。このアプタマー部分(324)と5'-AdeAU粒子(337)との間のハイブリダイゼーションの低下が、5'-AdeAU粒子(337)を溶液に放出する。
【0021】
5'-AdeAU粒子(337)が遊離するにつれて、青色の凝集物(332)は脱凝集を開始して部分的凝集物(390)を形成する。この部分的脱凝集は、粒子(337)が凝集物(332)から拡散するために赤色を青色溶液に追加し、したがって紫色の溶液を生じる。十分なアデノシン分析物(305)がサンプルに存在する場合は、反応は、凝集物(332)が完全に脱凝集するまで持続し、(395)を生じる。完全な脱凝集は、粒子(336)、(337)の間の距離が大きくなるために赤色溶液をもたらす。
粒子(336)、(337)の互いのアラインメント(尾対尾、頭対尾、又は頭対頭)は、凝集ユニット(331)の結合の緊密さに影響を与える。図3Bは、官能化粒子(例えば(336)及び(337))が尾対尾アラインメントでリンカー(328)とハイブリダイズしたときに形成される凝集ユニット(331)を示している。頭対尾(図3C)又は頭対頭(図3D)のハイブリダイゼーションは、粒子を結合させるオリゴヌクレオチドの一方の端又は両端をそれぞれ逆向きにすることによって選択することができる。したがって、官能化粒子(336)の3'結合を5'へ反対にすることによって、粒子(338)はハイブリダイゼーションにより頭対尾アラインメントを生じる(図3C)。同様に、官能化粒子(336)の3'結合を粒子(338)の5'結合に反対にすることによって、さらに粒子(337)の5'結合を粒子(339)の3'結合に反対にすることによって、粒子(338)、(339)はハイブリダイゼーションにより頭対頭アラインメントを生じる(図3D)。
【0022】
現時点では、図3Bの尾対尾のハイブリダイゼーション編成が好ましい。なぜならば、図3C及び図3Dの頭対尾及び頭対頭ハイブリダイゼーション編成は、アプタマーの結合及び/又は凝集形成を立体的に妨害する凝集物を生成する可能性があるからである。しかしながら、この立体的妨害は、例えば、粒子の平均直径の減少、又は粒子官能化塩基数及び伸長部の長さを増すことによって緩和することができる。
提示されてはいないが、図3Aの方法論を他の分析物(カリウムイオン、コカイン及び上記の表Iに列挙した分析物を含む)に適用することができる。下記の表IIは、アデノシン、K(I)及びコカインセンサー系のためのリンカー及び粒子の塩基配列を提供する。各リンカーのアプタマー部分は大文字で提示され、一方、各リンカーの伸長部分は小文字で提示されている。
【0023】
表II
【0024】
サンプルのイオン強度は、凝集物を形成する部分が如何に緊密に結合しあうかに影響を及ぼす。より高い塩濃度は凝集を促進し、したがってセンサーの応答を遅くし、一方、低い塩濃度は、凝集を維持するために必要なイオン強度を不足させる可能性がある。ある特徴では、サンプルは、30mM以上の一価の金属イオン濃度を含むか、又は前記濃度を含むように試薬を用いて改変することができる。サンプルのイオン強度は、例えばNa+イオンで改変することができる。好ましい特徴では、サンプル(凝集物を含む)の一価の金属イオン濃度は150から400mMである。現時点では、特に好ましい一価の金属イオン濃度は、アデノシンおよびカリウム分析物については約300mMであり、コカイン分析物については約150mMである。pHもまた、おそらく低pHでのポリヌクレオチド塩基対のプロトン化のために凝集物の結合に影響を及ぼしえる。ある特徴では、5から9のpHが好ましく、ほぼ中性のpHがより好ましい。
したがって、センサーの性能は、サンプルと凝集物を混合する前にサンプルのイオン強度及びpHを調節することによって改善することができる。サンプルに応じて、凝集物を含む溶液にサンプル又は分析物を添加することが(又はその逆が)好ましい(イオン強度及びpHが管理されえる場合でも)。
【0025】
アプタマー、伸長部及びオリゴヌクレオチド官能化粒子を含むセンサー系はキットの形で提供することができる。ある特徴では、キットは、アプタマー及びリンカーを形成するために結合させた伸長部を含む。さらに別の特徴では、キットは伸長部を含むが、アプタマーは除外される(アプタマーは続いてユーザーによって提供されるか、又は別々に提供される)。この特徴では、キットはまた、供給された伸長部をアプタマーに連結するために必要な試薬を含む。この特徴では、キットはまた、選択した分析物に対する種々のアプタマーの特異性及び/又は選択性の決定に用いることができる。したがって、キットを用いて、分析物の検出に加えて適切なアプタマーを選択することができる。さらに別の特徴では、キットはリンカー及びオリゴヌクレオチド官能化粒子を入れた外部パッケージを含む。
これらキットの成分の1つ以上を個々の容器に分離してもよいが、それらはまた、それらを凝集させた状態で提供してもよい。分離する場合は、凝集物をサンプルを導入する前に形成することができる。さらに別に緩衝物質及び/又はpH改変剤を、サンプルのイオン強度及び/又はpHを調整するためにキットで提供することができる。
容器はビン、タブ、サシェ、エンベロープ、チューブ、アンプルなどの形態を有することができ、それらは、部分的に又は全体がプラスチック、ガラス、紙、ホイル、MYLAR(商標)、ワックスなどで形成されえる。容器には、最初は容器の部分でありえる、全体的又は部分的に取り外し可能な蓋が取り付けられていてもよいが、また蓋は機械的手段、粘着剤又は他の手段によって容器に固定されてあってもよい。容器にはまた栓が取り付けられてあってもよく、注射針によって内容物に接近することを可能にする。ある特徴では、外部のパッケージは紙又はプラスチックで作製され、一方、容器はガラス又はアンプルである。
【0026】
外部のパッケージは、成分の使用に関する指示を含むことができる。色の比較物質;標準分析物(例えば分析物の10μm溶液);及び可視化促進物質、例えば薄層クロマトグラフィー(TLC)プレート、試験管、及びキュベットもまた含むことができる。膜(混合を可能にするために取り除くことができる)によって分離された2つ以上の成分を有する容器を含むことができる。外部パッケージはまた、ろ紙及び分析のためにサンプルの調製を可能にする試薬を含むことができる。
別の特徴では、本発明のセンサー系に加えて、キットはまた多数のセンサー系を含み、分析物の決定の信頼性を高め、使用者の手違いの確率を減らすことができる。ある特徴では、本発明の多数のライトアップセンサー系が含まれえる。別の特徴では、“ライトダウン”センサー系を本発明のライトアップセンサー系とともに含むことができる。本特許請求範囲のキットに含むことができる適切なライトダウンセンサーは、選択した分析物の存在下では形成されないDNAzyme/基質/粒子凝集物を基礎にしえる。本特許請求範囲のキットに含むことができる適切なライトダウンセンサー系のさらに詳細な記載は、例えば米国特許出願10/756,825号(2004年1月13日出願、発明の名称 ”Biosensors Based on Directed Assembly of Particles”、前記文献は参照により本明細書に含まれる)で見出すことができる。
上述の記載は、本発明の範囲を記載の態様に限定しようとするものではなく、むしろ当業者が本発明を実施し利用することを可能にするためのものである。同様に、下記の実施例は、添付の請求の範囲又はそれらの等価物を制限するものと解してはならない。下記の工程に対して多数の改変(前記もまた添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に包含される)を実施することができることは理解されよう。
【実施例】
【0027】
全てのDNAサンプルはインテグレーテッド・DNA・テクノロジー社(Coralville, IA)から購入した。伸長部を形成したDNAはゲル電気泳動によって精製し、一方、オリゴヌクレオチド官能化粒子を形成するためのチオール改変DNAサンプルは、標準的な脱塩によって精製した。アデノシン、シチジン、ウリジン、グアノシン及びコカインはアルドリッチ社から購入した。13nmの平均直径を有する金ナノ粒子を調製し、例えば以下の文献に記載された方法にしたがって12-merのチオール改変DNAで官能化した(J. Storhoff et al. “One-pot colorimetric differentiation of polynucleotides with single base imperfections using gold particle probes,” JACS 1998, 120:1959-1964)。金ナノ粒子の平均直径は透過型電子顕微鏡(JEOL 2010)によって立証した。
実施例1:測色アデノシンセンサーの調製
500μLの5'-AdeAU(522nmでの吸光は2.2に等しい)及び500μLの3'-A12AdeAU(522nmでの吸光は2.2に等しい)を、300mMのNaCl、25mMのトリス酢酸緩衝液(pH8.2)及び100nMのアデノシンアプタマー/伸長部(アデノシンリンカー)の存在下で混合した。このサンプルを65℃に1分間加温し、続いてゆっくりと4℃に冷却させた。このプロセスの間にナノ粒子は赤から濃紫色に変化した。サンプルを遠心し、沈殿物を採集し、続いて同じ緩衝液(300mMのNaCl、25mMのトリス酢酸緩衝液(pH8.2))の2000μLに懸濁した。この懸濁物をアデノシンの検出に用いた。
【0028】
実施例2:アデノシンの測色検出
実施例1のセンサー懸濁物の100μLを小量の濃アデノシン溶液に添加した。例えば、50mMのアデノシンの2μLを添加して、最終濃度1mMを得た。色の変化をUV-vis分光光度計又は裸眼でモニターした。
【0029】
実施例3:アデノシンセンサーの性能のモニタリング
実施例2のサンプルの色の変化をUV-vis吸光分光光度計によってモニターした。図4は、脱凝集中にサンプルから特定の波長で提供される吸光比に関するグラフである。図4の点線は、分離した13nmナノ粒子によって示される522nmでの強い吸光ピークであり、前記は濃赤色を提供する。図4の実線から分かるように、凝集に際して、522nmのピークは強度が減弱し、より長い波長にシフトし、一方、700nm領域の吸光は増加し、赤色から青色への色の遷移が生じる。したがって、700nmに対し522nmでのより高い吸光比は分離したナノ粒子の赤色と密接に関連し、一方、低い吸光比は凝集したナノ粒子の青色に密接に関連する。この吸光比を用いて、粒子の凝集状態をモニターした。
【0030】
実施例4:アデノシンセンサーの選択性及び感度
UV-vis分光光度計の石英セル(Hellma, Germany)に、実施例1で調製したアデノシンセンサー系の100μLを添加した。アデノシン、ウリジン、シチジン又はグアノシンを含む少量(1−5μL)の溶液を前記分光光度計セルに添加し、セル中の分析物濃度を所望レベルにした。
各セルの拡散カイネティクスを時間の関数として、ヒューレットパッカード8453分光光度計を用いてモニターした。図5Aは、522及び700nmでの吸光比を時間の関数として表したグラフである。図表から分かるように、アデノシンのみが時間の関数として有意な吸光比の増加を示し、一方、ウリジン、シチジン及びグアノシンはバックグラウンドと一致した色の変化を提供した。したがって、センサーの高い選択性が確認された。
図5Bは、センサー系の色の変化について凝集5分後に観察された吸光比とアデノシン分析物の濃度との間の相関性を示すグラフである。センサー系の優れた直線性は約0.1から約1.5mMで明白であった。
図5Cは、多数のアデノシン分析物濃度についての6分間の吸光比を示すグラフである。グラフは、数分以内で種々の分析物濃度間を効果的に識別することができるこのセンサー系の能力を示している。したがって、正確な定量的情報を提供するこのセンサー系の能力が確認された。
図5Bの装置による方法に加えて、前記センサーによる発色は可視的に簡便に観察された。青から赤への色の変化は、アデノシン濃度が0から2mMに増加するときに認められた。ウリジン、シチジン及びグアノシンはバックグラウンドと類似の色を提供した。
【0031】
実施例5:測色カリウムイオンセンサーの調製
図6A−6Bは、K(I)の存在下で折り畳まれるアプタマーを含む分析物センサー系を示す。図6Aは、リンカーの伸長部及びアプタマー、並びにオリゴヌクレオチド官能化粒子の配列を提供する。図6Bは、K(I)分析物の存在下で折り畳まれたアプタマーを示す。K(I)センサー系を調製するために、500μLの5'-K(I)AU(522nmでの吸光は2.2に等しい)及び500μLの3'-A12K(I)AU(522nmでの吸光は2.2に等しい)を、300mMのNaCl、25mMのトリス酢酸緩衝液(pH8.2)及び100nMのカリウムイオンアプタマー/伸長部(カリウムリンカー)の存在下で混合した。このサンプルを65℃に1分間加温し、続いてゆっくりと4℃に冷却させた。このプロセスの間にナノ粒子は赤から濃紫色に変化した。サンプルを遠心し、沈殿物を採集し、同じ緩衝液(300mMのNaCl、25mMのトリス酢酸緩衝液(pH8.2))の10μLに懸濁させた。この懸濁物をK+の検出に用いた。
【0032】
実施例6:カリウムの測色検出
Li+、Na+、K+、Rb+、又はCs+イオンの金属イオン溶液を、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、又はCsCl塩をそれぞれ脱イオン水に溶解し、3Mのイオン濃度を得ることによって作製した。これらの金属イオンストック溶液から、25mMのトリス酢酸緩衝液(pH8.2)及び300mMのLi+、Na+、K+、Rb+、又はCs+イオンを含む溶液を調製した。これら5種の溶液の各々に、それぞれ金属イオン含有溶液の99μLに対して実施例5のK(I)センサー系の1μLを添加した。したがって、各溶液は、〜300mMのLi+、Na+、K+、Rb+、又はCs+金属イオン及びさらに別にバックグラウンドとして3mMのNa+イオンを含んでいた。各サンプルを65℃に加熱し、続いてゆっくりと4℃に1時間冷却した。色の変化はUV-vis分光光度計又は裸眼によってモニターした。図6Cは、Li+、Na+、K+、Rb+、又はCs+イオンの存在下におけるカリウムイオンセンサー系の吸光比を示し、したがってこのセンサー系のK(I)に対する選択性が確認された。
【0033】
実施例7:測色コカインセンサーの調製
図7A−7Bは、コカインの存在下で折り畳まれるアプタマーを含む分析物センサー系を示す。図7Aは、リンカーの伸長部及びアプタマー、並びにオリゴヌクレオチド官能化粒子の配列を提供する。図7Bは、コカイン分析物の存在下で折り畳まれたアプタマーを示す。コカインセンサー系を調製するために、500μLの5'-CocAU(522nmでの吸光は2.2に等しい)及び500μLの3'-A12CocAU(522nmでの吸光は2.2に等しい)を、300mMのNaCl、25mMのトリス酢酸緩衝液(pH8.2)及び100nMのコカインアプタマー/伸長部(コカインリンカー)の存在下で混合した。このサンプルを65℃に1分間加温し、続いてゆっくりと4℃に冷却させた。このプロセスの間にナノ粒子は赤から濃紫色に変化した。サンプルを遠心し、沈殿物を採集した。続いて採集した沈殿物を2000μLの別の緩衝液(150mMのNaCl、25mMのトリス酢酸緩衝液(pH8.2))に懸濁させた。この懸濁物をコカインの検出に用いた。
【0034】
実施例8:コカインの測色検出
上記で調製したコカインセンサー懸濁物の100μLを少量の濃コカイン溶液と混合した。例えば100mMのコカインの1μLを前記懸濁液に添加して、最終濃度1mMを得た。色の変化はUV-vis分光光度計又は裸眼によってモニターした。
【0035】
実施例9:コカインセンサーの選択性及び感度
UV-vis分光光度計の石英セル(Hellma, Germany)に、実施例7で調製したコカインセンサー系の100μLを添加した。コカイン、アデノシン、又はシュクロースを含む少量(0.5−2μL)の溶液を前記分光光度計セルに添加し、セル中の分析物濃度を所望レベルにした。
各セルの拡散カイネティクスを時間の関数として、ヒューレットパッカード8453分光光度計を用いてモニターした。図8Aは、522及び700nmでの吸光比を時間の関数として表したグラフである。図表から分かるように、コカインのみが時間の関数として有意な吸光比の増加を示し、一方、アデノシン及びシュクロースはバックグラウンドと一致した色の変化を提供した。したがって、センサーの高い選択性が確認された。
図8Bは、センサー系の色の変化について凝集1分後に観察された吸光比とコカイン分析物の濃度との間の相関性を示すグラフである。センサー系の優れた直線性は約0.1から約1mMで明白であった。
図8Cは、多数のコカイン分析物濃度についての5分間の吸光比を示すグラフである。グラフは、数分以内で種々の分析物濃度間を効果的に識別することができるこのセンサー系の能力を示している。したがって、正確な定量的情報を提供するこのセンサー系の能力が確認された。
図8Bの装置による方法に加えて、前記センサーによる発色は可視的に簡便に観察された。青から赤への色の変化は、コカイン濃度が0から1mMに増加するときに認められた。アデノシン及びシュクロースはバックグラウンドと類似の色を提供した。
提供した説明、図面及び実施例から当業者には理解されるところであるが、本発明の特許請求の範囲で規定されたもの及びその等価物から外れることなく、好ましい実施態様に対して改変及び変更を為すことができよう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明は以下の図面及び詳細な説明を参照してより良好に理解することができる。図中の成分は必ずしも比率が一致せず、さらに分子又はそれらの相互作用を正確に表すことは意図されず、それよりも本発明の原理を示すことに主眼が置かれている。
【図1】サンプル中の分析物の存在、及び場合によってその濃度を決定する測色分析を示す。
【図2】2Aは、折り畳みに2つの分析物分子を必要とするアプタマーを示す。2Bは、折り畳みに2つのアデノシン分子を必要とするアプタマーのための塩基対を示す。
【図3】3Aは、アデノシン分析物の存在下における凝集物の脱凝集を示す。3Bは、リンカーを有するオリゴヌクレオチド官能化粒子の尾対尾ハイブリダイゼーションを示す。3Cは、リンカーを有するオリゴヌクレオチド官能化粒子の頭対尾ハイブリダイゼーションを示す。3Dは、リンカーを有するオリゴヌクレオチド官能化粒子の頭対頭ハイブリダイゼーションを示す。
【図4】凝集(実線)及び脱凝集(点線)金ナノ粒子によってサンプルから放出された光の波長に対する吸光比に関するグラフである。
【図5】5Aは、グアノシン(白丸)、シチジン(黒三角)、ウリジン(白四角)、及びアデノシン(黒丸)を含むサンプルについて、時間経過時の吸光比の変化を示すグラフである。5Bは、センサー系の色の変化について観察された吸光比と1分後のアデノシン分析物濃度との間の相関関係を示すグラフである。5Cは、6分間の間の複数のアデノシン濃度についての吸光比を示すグラフである。
【図6】6Aは、カリウムイオンセンサー系のためのリンカーの伸長部及びアプタマー部分の配列並びにオリゴヌクレオチド官能化粒子の配列を提供する。6BはK(I)分析物の存在下でのアプタマーの折り畳みを示す。6Cは、複数の金属イオンに対するカリウムイオンセンサーの吸光比を示す。
【図7】7Aは、コカインセンサー系のためのリンカーの伸長部及びアプタマー部分の配列並びにオリゴヌクレオチド官能化粒子の配列を提供する。7Bはコカイン分析物の存在下でのアプタマーの折り畳みを示す。
【図8】8Aは、アデノシン(白三角)、シュクロース(白丸)、及びコカイン(黒丸)を含むサンプルについて、時間経過時の吸光比の変化を示すグラフである。8Bは、センサー系の色の変化について観察された吸光比と1分の凝集後のコカイン分析物濃度との間の相関関係を示すグラフである。8Cは、5分間の間の複数のコカイン分析物の濃度についての吸光比を示すグラフである。
【発明の詳細な説明】
【0001】
背景技術
【0002】
サンプル中の分析物の存在を決定する能力は重要な利点である。例えば、多くの金属及び金属イオン、例えば鉛、水銀、カドミウム、クロム、及び砒素は、飲料水源に存在するときは重大な健康上のリスクとなる。飲料用及び他の水源の汚染を防止するために、工業排液を前記が水処理プラントに送られる前に検査することは一般的である。生物学的な液体、例えば血液及び体組織に由来する液体もまた、身体が有害物質に暴露されたか否か、又は病的状態が存在するか否かを決定するために、多様な分析物について検査することができる。例えば、多様なサンプルで微量の炭疽を検出する要求が最近生じた。
【0003】
測色方法は、通常は土壌、廃液、生物学的サンプル、体液などにおける金属及びイオンの検出に用いられる。装置を基本とする分析方法、例えば原子吸収分光分析に関して、測色方法は迅速となり、さらに装置又は使用者の巧緻さに関してほとんど必要とされない傾向がある。例えば、水族館管理者には、硝酸イオン(NO3-)濃度が上昇した水サンプルに添加したときより明暗の濃いピンクに変わる測色検査が利用可能である。このようにして、測色検査は、問題の分析物(例えば硝酸塩)がサンプル中に存在することを示し、さらにまた発生する色の比色相(specific hue)からサンプル中の分析物量の指標を提供する。通常の測色検査は極めて有用であるが、一方、それらは限られた分析物セットのために存在し、しばしば極少量又は微量の分析物を検出することができない。
上記の記述から理解されるように、より広範囲の微量の分析物を同定することができ、さらに分析の信頼性が高められた測色センサー系が希求され続けている。
【発明の開示】
【0004】
発明の要旨
分析物を検出するセンサー系は、分析物に応答して折り畳まれるアプタマーを含むリンカー、及び前記アプタマーの少なくとも一部分と相補的な第二のオリゴヌクレオチドと結合した第二の粒子を含む。前記リンカーは伸長部を含むことができ、この伸長部では、第一の粒子と結合した第一のオリゴヌクレオチドは前記伸長部の少なくとも一部分と相補的である。
分析物を検出する方法は、凝集物をサンプルと一緒にして分析物に応答する色の変化を検出することを含む。前記凝集物は、リンカー及び第二の粒子を含むことができる。前記凝集物はまた第一の粒子を含むことができ、前記リンカーは伸長部を含むことができる。
分析物を検出するキットは、第二の粒子及び分析物に応答して折り畳まれるアプタマーを含むリンカーを含む凝集物を形成するための系を収納する第一の容器を含む。第二の粒子は第二のオリゴヌクレオチドと結合されてあり、前記第二のオリゴヌクレオチドは、アプタマーの少なくとも一部分と相補的である。
分析物に対するアプタマーの感度及び選択性を決定する方法は、前記凝集物を分析物と一緒にし、分析物に応答する色の変化を検出し、DNA鎖が折り畳まれて色の変化を提供したのか否かを決定することを含む。前記凝集物は、第二の粒子及びDNA鎖を含むリンカーを含む。前記凝集物はまた第一の粒子を含むことができる。リンカーは伸長部を含むことができる。
【0005】
明細書及び特許請求の範囲の明確で一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。
“サンプル”という用語は、問題の分析物を含むと考えられる分析に付される組成物と定義される。典型的には、分析のためのサンプルは液体形であり、好ましくは、サンプルは水性混合物である。サンプルは任意の供給源、例えば廃液由来の工業サンプル、又は生物学的サンプル、例えば血液、尿又は唾液でありえる。サンプルは、工業的又は生物学的サンプルから誘導された物、例えば抽出物、稀釈物、ろ液又は再構成沈殿物であってもよい。
“分析物”という用語はサンプルに潜在的に存在する1つ以上の物質と定義される。分析によって、サンプルに存在する分析物の存在、量又は濃度が決定される。
“測色”という用語は、センサー系を構成する1つの試薬又は複数の試薬が、分析物の有無において色の変化を生じる分析と定義される。
“ライトアップ”という用語は、サンプル中に存在する分析物に応答して所望の色の変化を示す測色センサー系を指す。
“ライトダウン”という用語は、分析物がサンプルに存在するときに色の変化を示さないが、分析物が存在しないときに所望の色の変化が生じる測色センサー系を指す。
【0006】
“感度”という用語は、センサー系が検出することができる分析物の濃度の最も小さな増加、又はセンサー系が分析物に応答するシグナルをバックグラウンドシグナルから識別することができる最低濃度限界(検出限界)を指す。
“選択性”という用語は、所望の分析物を他の物質種が存在する中で検出するセンサー系の能力を指す。
“ハイブリダイゼーション”という用語は、低ストリンジェンシー条件下で少なくとも1つの第二のヌクレオチドと少なくとも1つの水素結合を形成する、第一のポリヌクレオチドの能力を指す。
“アプタマー”という用語は、分析物に応答して構造的変化を受ける核酸鎖を指す。
“構造的変化”という用語はアプタマーがまた別の状態から三次構造を採るプロセスを指す。平易にいえば、“折り畳む”という用語を構造的変化の代りに用いることができる。
【0007】
詳細な説明
アプタマーは核酸使用触媒よりも容易に単離することができる。核酸酵素に比してアプタマーのより単純な構造はまた、核酸酵素を利用することができない分析物センサー系のデザインを可能にする。本発明は、アプタマーの折り畳み構造及び非折り畳み構造とオリゴヌクレオチド官能化粒子との間のハイブリダイゼーション強度を選択することによって、分析物に応答して粒子を遊離させることができるという発見を利用する。このようにして、室温で選択分析物に応答して所望の色の変化を示す(したがって米国特許出願10/144,679号に開示されたセンサー系の欠点が克服される)、ライトアップ測色センサーが提供される。
図1は、サンプル(102)中の分析物(105)の存在及び場合によってその濃度を決定することを目的とする測色分析(100)を示す。(110)で、方法(100)によってその存在/濃度が決定される分析物(105)が選択される。
ある特徴では、分析物(105)は、アプタマー(124)の折り畳みを引き起こす任意のイオンでありえる。別の特徴では、分析物(105)は、アプタマー(124)の折り畳みを引き起こす任意の金属イオンでありえる。+1の形式酸化状態(I)を有する好ましい一価イオンには、NH4+、K(I)、Li(I)、Ti(I)及びAg(I)が含まれる。+2の形式酸化状態(II)を有する好ましい二価イオンには、Mg(II)、Ca(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)、Zn(II)、Cd(II)、Cu(II)、Pb(II)、Hg(II)、Pt(II)、Ra(II)、Sr(II)、Ni(II)及びBa(II)が含まれる。+3(III)、+4(IV)、+5(V)又は+6(VI)の形式酸化状態を有する好ましい三価及びそれより高い価数の金属イオンには、Co(III)、Cr(III)、Ce(IV)、As(V)、U(VI)、Cr(VI)、ランタニドイオンが含まれる。より好ましい分析物イオンには、一価の金属イオン及び生物にとって有毒な金属イオン、例えばAg(I)、Pb(II)、Hg(II)、U(VI)、及びCr(VI)が含まれる。
【0008】
別の特徴では、分析物(105)は、アプタマー(124)の折り畳みを引き起こす任意のバイオ分子でありえる。好ましいバイオ分子には、大きなバイオ分子、例えばタンパク質(例えばHIV関連タンパク質、hCG-ホルモン、インスリン)、抗体、成長因子、酵素、ウイルス(例えばHIV、天然痘)、ウイルス由来成分(例えばHIV-由来分子)、細菌(例えば炭疽)、細菌由来分子及び成分(例えば炭疽由来分子)、又は細胞が含まれる。好ましいバイオ分子にはまた小さなバイオ分子、例えばアミノ酸(例えばアルギニン)、ヌクレオチド(例えばATP、GTP)、神経伝達物質(例えばドーパミン)、補助因子(例えばビオチン)、ペプチド、又はアミノグリコシドが含まれる。
別の特徴では、分析物(105)は、アプタマー(124)の折り畳みを引き起こす任意の有機分子でありえる。好ましい有機分子には、薬剤(例えば抗生物質及びテオフィリン)、又は管理物質(例えばコカイン)、色素、オリゴ糖、多糖類、グルコース、窒素肥料、農薬、ジオキシン、フェノール、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、神経ガス、トリニトロトルエン(TNT)、又はジニトロトルエン(DNT)が含まれる。
【0009】
いったん分析物(105)が選択されたら、分析物(105)に応答して折り畳まれる1つ以上のアプタマー(124)が選択される。アプタマーの選択(120)は、in vitro選択、誘導進化、又は当業者に公知の他の方法によって実施される。アプタマーの選択(120)は、選択した分析物(105)の存在下で折り畳みの強化が示される1つ以上のアプタマーを提供する(それによってセンサーの感度が提供される)。選択(120)はまた、選択した分析物の存在下で折り畳まれるが、選択されていない分析物及び/又はサンプル中に存在する他の物質種の存在下で折り畳まれないアプタマーを除外することもできる(それによってセンサー選択性が提供される)。
例えば、K(I)と特異的に結合するが、Na(I)、Li(I)、Cs(I)、Rb(I)又は他の競合金属イオンとは顕著には結合しないアプタマーを選択することができる。ある特徴では、これは、K(I)と結合するアプタマーを単離し、続いてNa(I)、Li(I)、Cs(I)又はRb(I)と結合するアプタマーを除去することによって達成することができる。別の特徴では、Na(I)、Li(I)、Cs(I)又はRb(I)と結合するアプタマーを先ず廃棄し、続いてK(I)と結合するものが単離される。このようにして、アプタマーの選択性を高めることができる。
【0010】
アプタマー(124)は、分析物(105)の存在下で折り畳まれる核酸鎖を含む。ある特徴では、前記折り畳みは、一次構造又はデュープレックス構造の三次構造への変換と考えられる。アプタマーの塩基配列は、アプタマーが、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド官能化粒子と少なくとも部分的なハイブリダイゼーションを経るようにデザインすることができる。この特徴では、アプタマー(124)の塩基配列の少なくとも一部分は、前記オリゴヌクレオチド官能化粒子の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドと相補的でありえる。
アプタマー(124)はデオキシリボヌクレオチドから生成することができる。前記デオキシリボヌクレオチドは、天然核酸でも非天然核酸でも又は改変核酸でもよい。ポリアミド骨格及びヌクレオシド塩基を含むペプチド核酸(PNA、例えばBiosearch, Inc., Bedford, MAから入手できる)もまた有用でありえる。
下記の表Iには、分析物、前記分析物に応答してこれと結合し折り畳まれるアプタマー、及び各アプタマーの配列が記載されている参考文献が列挙されている。これらアプタマー及び他のアプタマーの分析物結合領域は、リンカー(128)での使用のために修正することができる。例えば、コカインアプタマーの非分析物結合領域(下記表Iの配列番号:10として提示)を改変して、アプタマーGGGAGACAAGGATAATCCTTCAATGAAGTGGGTCTCCC(配列番号:56)を提供し、リンカー(128)内に含ませることができる。
【0011】
【0012】
表1に対する文献リスト
【表1】
【0013】
適切なアプタマーを(120)で選択した後、アプタマー(124)を含むリンカー(128)を形成する。ある特徴では、アプタマー(124)はリンカー(128)として直接提供することができる。別の特徴では、リンカー(128)は、1つ以上の伸長部(126)を用いてアプタマー(124)と結合させることによって形成することができる。
伸長部(126)は、アプタマー(124)と結合することができ、1つ以上のオリゴヌクレオチド官能化粒子と少なくとも部分的にハイブリダイズすることができ、さらに分析(100)と適合することができる任意の核酸配列であろう。この特徴では、伸長部(126)の塩基配列の少なくとも一部分は、1つ以上のオリゴヌクレオチド官能化粒子の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドと相補的でありえる。ある特徴では、固相合成を用いて、アプタマー(124)を伸長部(126)と結合させ、リンカー(128)を形成することができる。別の特徴では、リンカー(128)のアプタマー(124)部分を合成した後、この合成を継続して伸長部(126)を形成する。同様に、アプタマー(124)配列を用いてリンカー(128)を伸長させてもよい。
好ましくは、伸長部(126)は1から100塩基を含む。ある特徴では、伸長部(126)に存在する塩基の少なくとも50、70又は90%は、第一のオリゴヌクレオチド官能化粒子の相補的部分(例えば、図3Aの粒子(336)のTGAGTAGACACT-5'(配列番号:43)部分)とハイブリダイズすることができ、一方、伸長部に存在する塩基の少なくとも50、35、25又は10%は、第二のオリゴヌクレオチド官能化粒子(例えば図3Aの粒子(337))とハイブリダイズすることができる。
【0014】
リンカー(128)を選択又は合成した後、凝集物(132)を(130)で形成することができる。凝集物(132)は、リンカー(128)及びオリゴヌクレオチド官能化粒子(136)を含む。その成分の物理的サイズを考慮して、凝集物(132)はかなり大きいであろう。
リンカー(128)は、オリゴヌクレオチド官能化粒子(136)とハイブリダイズし、アプタマー(124)を含み、さらに伸長部(126)を含むことができる。例えば、第一及び第二オリゴヌクレオチド官能化粒子が、それぞれ塩基配列、3'-AAAAAAAAAAAATGAGTAGACACT(配列番号:44)及び5'-CCCAGGTTCTCT(配列番号:45)を有するならば、アデノシン分析物の存在下で折り畳まれるアプタマー(124)及び伸長部(126)を含むリンカー(128)に適した配列は、5'-ACTCATCTGTGAAGAGAACCTGGGGGAGTATTGCGGAGGAAGGT(配列番号:46)でありえる。
アデノシン分析物の場合、リンカー(128)の伸長部(126)部分は前記配列のACTCATCTGTGAAGAGA(配列番号:47)部分であり、前記は、伸長部(126)が第一の官能化粒子の12塩基と、さらに第二の官能化粒子の5塩基とハイブリダイズすることを可能にする。同様に、リンカー(128)のアプタマー(124)は、当該配列のACCTGGGGGAGTATTGCGGAGGAAGGT(配列番号:18)部分であり、前記は、アプタマー(124)のACCTGGG(配列番号:48)部分が第二の官能化粒子のTGGACCC(配列番号:49)部分とハイブリダイズすることを可能にする。
【0015】
粒子(136)は距離依存性光学特性を示すので、凝集物(132)中で接近し保持されるときは一色であり、粒子間の距離が増加するにつれて色の変化を示す。例えば、粒子(136)が金のナノ粒子であるときは、凝集物(132)は水溶液中で青色を提示し、前記は脱凝集が進行するにつれ赤色になる。
脱凝集は、リンカー(128)のアプタマー(124)部分が分析物(105)と応答してこれと結合し折り畳まれたときに発生する。アプタマー(124)が折り畳まれたとき、第二のオリゴヌクレオチド官能化粒子とのハイブリダイゼーションの部分が失われる。このハイブリダイゼーションが失われることによって第二のオリゴヌクレオチド官能化粒子の凝集物(132)からの分離が可能になる。したがって、粒子(136)が凝集物(132)から拡散していくにつれ、溶液は青から赤に変化する。
粒子(136)は、距離依存光学特性を示し、センサー系の操作に適合しえる任意の物質種で、センサー系の操作に適合しえるものである。適切な粒子には、金属(例えば金、銀、銅及び白金)、半導体(例えばCdSe、CdS、及びZnSで被覆したCdS又はCdSe)、及び磁性コロイド物質(例えば以下の文献に記載されたもの:Josephson, Lee et al. Angewandte Chemie, International Edition (2001), 40(17):3204-3206)が含まれる。特に有用な粒子には、ZnS、ZnO、TiO2、AgI、AgBr、HgI2、PbS、PbSe、ZnTe、CdTe、In2Se3、Cd3P2、Cd3As2、InAs、及びGaAsが含まれえる。
【0016】
好ましい特徴では、粒子は金(Au)のナノ粒子であり、5から70ナノメートル(nm)又は10から50nmの平均直径を有する。より好ましい特徴では、10から15nmの平均直径を有する金のナノ粒子はオリゴヌクレオチドに対して官能化されている。
オリゴヌクレオチド官能化金粒子の製造方法に関するより詳細な処理については、以下を参照されたい:米国特許6,361,944号;Mirkin et al. Nature(London) 1996, 382:607-609;Storhoff et al. J Am Chem Soc 1998, 20:1959-1064;及びStorhoff et al. Chem Rev (Washington, D.C.) 1999, 99:1849-1862)。金のナノ粒子が現在のところ好ましいが、距離依存性の色の変化を受ける他の物質種、例えば無機結晶、量子ドット(quantum dots)もまたオリゴヌクレオチドに結合させることができる。
(140)では、凝集物(132)はサンプル(102)と一緒にすることができる。(150)では、サンプル(102)は色の変化について監視される。色の変化が生じない場合は、分析物(105)はサンプル(102)に存在しない。色の変化が(160)で生じたら、分析物(105)はサンプル(102)に存在する。色の変化は、分析物(102)がアプタマー(124)の折り畳みを引き起こし、したがって粒子(136)を凝集物(132)からサンプル(102)の溶液中に拡散させたことを示す。したがって、分析(100)は、色の変化が分析物(105)の存在下で生じるので“ライトアップ”センサー系を提供する。
【0017】
分析物(105)に応答して、実質的に完全な色の変化が生じる速度は、センサー系の応答時間と考えることができる。ある特徴では、色の変化は、可視領域の吸収ピークが20%増加したときに実質的に完了したと考えることができる。別の特徴では、金粒子については522nmの吸光係数が700nmより100%増加したとき、色の変化は実質的に完了したと考えることができる。センサー系の好ましい応答時間は1秒から60分、又は2秒から10分である。センサー系のより好ましい応答時間は5秒から2分、又は8から12秒である。センサー系の好ましい操作温度範囲は0℃から60℃、又は15℃から40℃である。より好ましい操作温度範囲は23℃から37℃、又は25℃から30℃である。別の特徴では、分析(100)は23℃から37℃で実施され、好ましい応答時間は2分未満、又は1から12秒でありえる。
分析物(105)に応答して色が変化する度合いは、当業者に公知の比色定量方法によって(170)で定量することができる。多様な色の比較円板(例えば以下から入手できるもの:Hach Co., Loveland, CO;又はLaMotte Co., Chestertown, MD)を、本発明での使用に応用することができる。サンプルに加えて、選択した分析物の既知量を含む標準物を分析して、比較の正確さを高めることができる。より高度な正確さが所望される場合、種々のタイプの分光光度計を用いて、所望の濃度範囲のビアーズ曲線(Beer's curve)を作成することができる。続いて、サンプルの色を前記曲線と比較し、サンプル中に存在する分析物の濃度を決定することができる。適切な分光光度計にはヒューレットパッカード8453及びBausch & Lomb Spec-20が含まれる。
【0018】
さらに別の特徴では、方法(100)を改変して、分析物(105)に対するアプタマーの感度及び選択性を決定することができる。この特徴では、分析物(105)に応答するアプタマーであると思われる1つ以上のDNAが(120)で選択される。DNA鎖は改変しなくても、又は(125)で伸長部(126)を用いて改変してもよい。(130)で、凝集物がDNA鎖及び適切な粒子から形成される。(140)で、凝集物は分析物(105)と一緒にされる。凝集物が色の変化を示したら、前記DNA鎖は前記標的(105)のための適切なアプタマー配列である。このようにして、(120)で選択した多数のアプタマーを測色センサー系で使用するために試験することができる。
図2Aは、2つの分析分子に依存して構造的変化を受けて折り畳み構造(230)をとるアプタマー(224)を示している。図2Bは、2つのアデノシン分子に応答して折り畳み構造(230)を形成するアプタマー(224)の特異的な塩基対を示す。この特定のアプタマー配列は折り畳みに2分子のアデノシン分析物を必要とするが、一方、他のアプタマーはただ1つの分析物分子に応答して折り畳まれる。
【0019】
図2Cは、伸長部(226)と結合してリンカーを形成するアプタマー(224)を示す。伸長部(226)はA及びB部分を含み、ここで、A部分は、第一の粒子(236)のオリゴヌクレオチドと安定なハイブリダイゼーションを形成するために十分な相補性塩基を含む。例えば、12のアデニン塩基を含む非相補性ポリアデニン鎖(A12)が、第一の粒子(236)の相補性配列に付加されて、ハイブリダイゼーション安定性が強化される。伸長部(226)のB部分の配列は、本質的に安定な二次構造を形成するリンカーを排除するように選択することができる。コンピュータプログラム、例えばM-ホールド(http://www.bioinfo.rpi.edu/applications/mfold/;M. Zuker, Mfold web server for nucleic acid folding and hybridization prediction. Nucleic Acids Res. 31(13), 3406-15 (2003)で利用可能である)又は他のプログラムを用いて、排除のための安定なリンカーを予想することができる。例えばリンカーのための安定な配列がACTCATCTGTGAAGATGACCTGGGGGAGTATTGCGGAGGAAGGT(配列番号:50)である場合は、下線部のTG塩基をGAに置換し、配列ACTCATCTGTGAAGAGAACCTGGGGGAGTATTGCGGAGGAAGGT(配列番号:51)を提供することよって、リンカーは本質的に不安定になりえる。
アプタマー(224)はC及びD部分を含む。ある特徴では、結合した伸長部(226)のB部分及びアプタマー(224)のC部分と第二の粒子(237)とのハイブリダイゼーション安定性はA及び第一の粒子(236)とのハイブリダイゼーション安定性より低いであろう。好ましい特徴では、このC+B/第二の粒子のハイブリダイゼーションの融解温度はセンサー系が用いられる温度よりも高い。別の好ましい特徴では、第二の粒子(237)のオリゴヌクレオチド配列とハイブリダイズするB部分の融解温度は、センサー系が用いられる温度より低い。別の好ましい特徴では、C+D+分析物複合体の安定性は、Cと第二の粒子(237)とのハイブリダイゼーション安定性よりも高くなければならない。別の特徴では、B及びCの配列は、センサー系の操作に適合しえるように短い。
【0020】
図3Aは、アデノシン分析物(305)の存在下における凝集物(332)の脱凝集を示す。凝集物(332)は、多数の凝集ユニット(331)から形成される。凝集ユニット(331)の各々はリンカー(328)から形成される。前記リンカー(328)は、3' 及び5'チオール-オリゴヌクレオチド官能化粒子(336)と(337)にそれぞれハイブリダイズされる。リンカー(328)はアプタマー部分(324)及び伸長部分(326)を含む。3'-A12AdeAU粒子(336)は伸長部分(326)とハイブリダイズし、一方、5'-AdeAU粒子(337)は伸長部分(326)及びアプタマー(324)とハイブリダイズして凝集ユニット(331)を形成する。
リンカーの1つの塩基と粒子が示されているが、前記塩基は対抗鎖により変化して対合を維持することができる。例えば、粒子のオリゴヌクレオチドの対合塩基をグアニンからアデニンに変更することができるかぎり、リンカー(228)のA又はB部分の任意のシトシンをチミンに変えることができる。
アデノシン分析物(305)の存在下で、リンカー(328)のアプタマー部分(324)は折り畳まれ、したがってリンカー(328)のアプタマー部分(324)と5'-AdeAU粒子(337)との間のハイブリダイゼーションの少なくとも一部分が排除される。このアプタマー部分(324)と5'-AdeAU粒子(337)との間のハイブリダイゼーションの低下が、5'-AdeAU粒子(337)を溶液に放出する。
【0021】
5'-AdeAU粒子(337)が遊離するにつれて、青色の凝集物(332)は脱凝集を開始して部分的凝集物(390)を形成する。この部分的脱凝集は、粒子(337)が凝集物(332)から拡散するために赤色を青色溶液に追加し、したがって紫色の溶液を生じる。十分なアデノシン分析物(305)がサンプルに存在する場合は、反応は、凝集物(332)が完全に脱凝集するまで持続し、(395)を生じる。完全な脱凝集は、粒子(336)、(337)の間の距離が大きくなるために赤色溶液をもたらす。
粒子(336)、(337)の互いのアラインメント(尾対尾、頭対尾、又は頭対頭)は、凝集ユニット(331)の結合の緊密さに影響を与える。図3Bは、官能化粒子(例えば(336)及び(337))が尾対尾アラインメントでリンカー(328)とハイブリダイズしたときに形成される凝集ユニット(331)を示している。頭対尾(図3C)又は頭対頭(図3D)のハイブリダイゼーションは、粒子を結合させるオリゴヌクレオチドの一方の端又は両端をそれぞれ逆向きにすることによって選択することができる。したがって、官能化粒子(336)の3'結合を5'へ反対にすることによって、粒子(338)はハイブリダイゼーションにより頭対尾アラインメントを生じる(図3C)。同様に、官能化粒子(336)の3'結合を粒子(338)の5'結合に反対にすることによって、さらに粒子(337)の5'結合を粒子(339)の3'結合に反対にすることによって、粒子(338)、(339)はハイブリダイゼーションにより頭対頭アラインメントを生じる(図3D)。
【0022】
現時点では、図3Bの尾対尾のハイブリダイゼーション編成が好ましい。なぜならば、図3C及び図3Dの頭対尾及び頭対頭ハイブリダイゼーション編成は、アプタマーの結合及び/又は凝集形成を立体的に妨害する凝集物を生成する可能性があるからである。しかしながら、この立体的妨害は、例えば、粒子の平均直径の減少、又は粒子官能化塩基数及び伸長部の長さを増すことによって緩和することができる。
提示されてはいないが、図3Aの方法論を他の分析物(カリウムイオン、コカイン及び上記の表Iに列挙した分析物を含む)に適用することができる。下記の表IIは、アデノシン、K(I)及びコカインセンサー系のためのリンカー及び粒子の塩基配列を提供する。各リンカーのアプタマー部分は大文字で提示され、一方、各リンカーの伸長部分は小文字で提示されている。
【0023】
表II
【0024】
サンプルのイオン強度は、凝集物を形成する部分が如何に緊密に結合しあうかに影響を及ぼす。より高い塩濃度は凝集を促進し、したがってセンサーの応答を遅くし、一方、低い塩濃度は、凝集を維持するために必要なイオン強度を不足させる可能性がある。ある特徴では、サンプルは、30mM以上の一価の金属イオン濃度を含むか、又は前記濃度を含むように試薬を用いて改変することができる。サンプルのイオン強度は、例えばNa+イオンで改変することができる。好ましい特徴では、サンプル(凝集物を含む)の一価の金属イオン濃度は150から400mMである。現時点では、特に好ましい一価の金属イオン濃度は、アデノシンおよびカリウム分析物については約300mMであり、コカイン分析物については約150mMである。pHもまた、おそらく低pHでのポリヌクレオチド塩基対のプロトン化のために凝集物の結合に影響を及ぼしえる。ある特徴では、5から9のpHが好ましく、ほぼ中性のpHがより好ましい。
したがって、センサーの性能は、サンプルと凝集物を混合する前にサンプルのイオン強度及びpHを調節することによって改善することができる。サンプルに応じて、凝集物を含む溶液にサンプル又は分析物を添加することが(又はその逆が)好ましい(イオン強度及びpHが管理されえる場合でも)。
【0025】
アプタマー、伸長部及びオリゴヌクレオチド官能化粒子を含むセンサー系はキットの形で提供することができる。ある特徴では、キットは、アプタマー及びリンカーを形成するために結合させた伸長部を含む。さらに別の特徴では、キットは伸長部を含むが、アプタマーは除外される(アプタマーは続いてユーザーによって提供されるか、又は別々に提供される)。この特徴では、キットはまた、供給された伸長部をアプタマーに連結するために必要な試薬を含む。この特徴では、キットはまた、選択した分析物に対する種々のアプタマーの特異性及び/又は選択性の決定に用いることができる。したがって、キットを用いて、分析物の検出に加えて適切なアプタマーを選択することができる。さらに別の特徴では、キットはリンカー及びオリゴヌクレオチド官能化粒子を入れた外部パッケージを含む。
これらキットの成分の1つ以上を個々の容器に分離してもよいが、それらはまた、それらを凝集させた状態で提供してもよい。分離する場合は、凝集物をサンプルを導入する前に形成することができる。さらに別に緩衝物質及び/又はpH改変剤を、サンプルのイオン強度及び/又はpHを調整するためにキットで提供することができる。
容器はビン、タブ、サシェ、エンベロープ、チューブ、アンプルなどの形態を有することができ、それらは、部分的に又は全体がプラスチック、ガラス、紙、ホイル、MYLAR(商標)、ワックスなどで形成されえる。容器には、最初は容器の部分でありえる、全体的又は部分的に取り外し可能な蓋が取り付けられていてもよいが、また蓋は機械的手段、粘着剤又は他の手段によって容器に固定されてあってもよい。容器にはまた栓が取り付けられてあってもよく、注射針によって内容物に接近することを可能にする。ある特徴では、外部のパッケージは紙又はプラスチックで作製され、一方、容器はガラス又はアンプルである。
【0026】
外部のパッケージは、成分の使用に関する指示を含むことができる。色の比較物質;標準分析物(例えば分析物の10μm溶液);及び可視化促進物質、例えば薄層クロマトグラフィー(TLC)プレート、試験管、及びキュベットもまた含むことができる。膜(混合を可能にするために取り除くことができる)によって分離された2つ以上の成分を有する容器を含むことができる。外部パッケージはまた、ろ紙及び分析のためにサンプルの調製を可能にする試薬を含むことができる。
別の特徴では、本発明のセンサー系に加えて、キットはまた多数のセンサー系を含み、分析物の決定の信頼性を高め、使用者の手違いの確率を減らすことができる。ある特徴では、本発明の多数のライトアップセンサー系が含まれえる。別の特徴では、“ライトダウン”センサー系を本発明のライトアップセンサー系とともに含むことができる。本特許請求範囲のキットに含むことができる適切なライトダウンセンサーは、選択した分析物の存在下では形成されないDNAzyme/基質/粒子凝集物を基礎にしえる。本特許請求範囲のキットに含むことができる適切なライトダウンセンサー系のさらに詳細な記載は、例えば米国特許出願10/756,825号(2004年1月13日出願、発明の名称 ”Biosensors Based on Directed Assembly of Particles”、前記文献は参照により本明細書に含まれる)で見出すことができる。
上述の記載は、本発明の範囲を記載の態様に限定しようとするものではなく、むしろ当業者が本発明を実施し利用することを可能にするためのものである。同様に、下記の実施例は、添付の請求の範囲又はそれらの等価物を制限するものと解してはならない。下記の工程に対して多数の改変(前記もまた添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に包含される)を実施することができることは理解されよう。
【実施例】
【0027】
全てのDNAサンプルはインテグレーテッド・DNA・テクノロジー社(Coralville, IA)から購入した。伸長部を形成したDNAはゲル電気泳動によって精製し、一方、オリゴヌクレオチド官能化粒子を形成するためのチオール改変DNAサンプルは、標準的な脱塩によって精製した。アデノシン、シチジン、ウリジン、グアノシン及びコカインはアルドリッチ社から購入した。13nmの平均直径を有する金ナノ粒子を調製し、例えば以下の文献に記載された方法にしたがって12-merのチオール改変DNAで官能化した(J. Storhoff et al. “One-pot colorimetric differentiation of polynucleotides with single base imperfections using gold particle probes,” JACS 1998, 120:1959-1964)。金ナノ粒子の平均直径は透過型電子顕微鏡(JEOL 2010)によって立証した。
実施例1:測色アデノシンセンサーの調製
500μLの5'-AdeAU(522nmでの吸光は2.2に等しい)及び500μLの3'-A12AdeAU(522nmでの吸光は2.2に等しい)を、300mMのNaCl、25mMのトリス酢酸緩衝液(pH8.2)及び100nMのアデノシンアプタマー/伸長部(アデノシンリンカー)の存在下で混合した。このサンプルを65℃に1分間加温し、続いてゆっくりと4℃に冷却させた。このプロセスの間にナノ粒子は赤から濃紫色に変化した。サンプルを遠心し、沈殿物を採集し、続いて同じ緩衝液(300mMのNaCl、25mMのトリス酢酸緩衝液(pH8.2))の2000μLに懸濁した。この懸濁物をアデノシンの検出に用いた。
【0028】
実施例2:アデノシンの測色検出
実施例1のセンサー懸濁物の100μLを小量の濃アデノシン溶液に添加した。例えば、50mMのアデノシンの2μLを添加して、最終濃度1mMを得た。色の変化をUV-vis分光光度計又は裸眼でモニターした。
【0029】
実施例3:アデノシンセンサーの性能のモニタリング
実施例2のサンプルの色の変化をUV-vis吸光分光光度計によってモニターした。図4は、脱凝集中にサンプルから特定の波長で提供される吸光比に関するグラフである。図4の点線は、分離した13nmナノ粒子によって示される522nmでの強い吸光ピークであり、前記は濃赤色を提供する。図4の実線から分かるように、凝集に際して、522nmのピークは強度が減弱し、より長い波長にシフトし、一方、700nm領域の吸光は増加し、赤色から青色への色の遷移が生じる。したがって、700nmに対し522nmでのより高い吸光比は分離したナノ粒子の赤色と密接に関連し、一方、低い吸光比は凝集したナノ粒子の青色に密接に関連する。この吸光比を用いて、粒子の凝集状態をモニターした。
【0030】
実施例4:アデノシンセンサーの選択性及び感度
UV-vis分光光度計の石英セル(Hellma, Germany)に、実施例1で調製したアデノシンセンサー系の100μLを添加した。アデノシン、ウリジン、シチジン又はグアノシンを含む少量(1−5μL)の溶液を前記分光光度計セルに添加し、セル中の分析物濃度を所望レベルにした。
各セルの拡散カイネティクスを時間の関数として、ヒューレットパッカード8453分光光度計を用いてモニターした。図5Aは、522及び700nmでの吸光比を時間の関数として表したグラフである。図表から分かるように、アデノシンのみが時間の関数として有意な吸光比の増加を示し、一方、ウリジン、シチジン及びグアノシンはバックグラウンドと一致した色の変化を提供した。したがって、センサーの高い選択性が確認された。
図5Bは、センサー系の色の変化について凝集5分後に観察された吸光比とアデノシン分析物の濃度との間の相関性を示すグラフである。センサー系の優れた直線性は約0.1から約1.5mMで明白であった。
図5Cは、多数のアデノシン分析物濃度についての6分間の吸光比を示すグラフである。グラフは、数分以内で種々の分析物濃度間を効果的に識別することができるこのセンサー系の能力を示している。したがって、正確な定量的情報を提供するこのセンサー系の能力が確認された。
図5Bの装置による方法に加えて、前記センサーによる発色は可視的に簡便に観察された。青から赤への色の変化は、アデノシン濃度が0から2mMに増加するときに認められた。ウリジン、シチジン及びグアノシンはバックグラウンドと類似の色を提供した。
【0031】
実施例5:測色カリウムイオンセンサーの調製
図6A−6Bは、K(I)の存在下で折り畳まれるアプタマーを含む分析物センサー系を示す。図6Aは、リンカーの伸長部及びアプタマー、並びにオリゴヌクレオチド官能化粒子の配列を提供する。図6Bは、K(I)分析物の存在下で折り畳まれたアプタマーを示す。K(I)センサー系を調製するために、500μLの5'-K(I)AU(522nmでの吸光は2.2に等しい)及び500μLの3'-A12K(I)AU(522nmでの吸光は2.2に等しい)を、300mMのNaCl、25mMのトリス酢酸緩衝液(pH8.2)及び100nMのカリウムイオンアプタマー/伸長部(カリウムリンカー)の存在下で混合した。このサンプルを65℃に1分間加温し、続いてゆっくりと4℃に冷却させた。このプロセスの間にナノ粒子は赤から濃紫色に変化した。サンプルを遠心し、沈殿物を採集し、同じ緩衝液(300mMのNaCl、25mMのトリス酢酸緩衝液(pH8.2))の10μLに懸濁させた。この懸濁物をK+の検出に用いた。
【0032】
実施例6:カリウムの測色検出
Li+、Na+、K+、Rb+、又はCs+イオンの金属イオン溶液を、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、又はCsCl塩をそれぞれ脱イオン水に溶解し、3Mのイオン濃度を得ることによって作製した。これらの金属イオンストック溶液から、25mMのトリス酢酸緩衝液(pH8.2)及び300mMのLi+、Na+、K+、Rb+、又はCs+イオンを含む溶液を調製した。これら5種の溶液の各々に、それぞれ金属イオン含有溶液の99μLに対して実施例5のK(I)センサー系の1μLを添加した。したがって、各溶液は、〜300mMのLi+、Na+、K+、Rb+、又はCs+金属イオン及びさらに別にバックグラウンドとして3mMのNa+イオンを含んでいた。各サンプルを65℃に加熱し、続いてゆっくりと4℃に1時間冷却した。色の変化はUV-vis分光光度計又は裸眼によってモニターした。図6Cは、Li+、Na+、K+、Rb+、又はCs+イオンの存在下におけるカリウムイオンセンサー系の吸光比を示し、したがってこのセンサー系のK(I)に対する選択性が確認された。
【0033】
実施例7:測色コカインセンサーの調製
図7A−7Bは、コカインの存在下で折り畳まれるアプタマーを含む分析物センサー系を示す。図7Aは、リンカーの伸長部及びアプタマー、並びにオリゴヌクレオチド官能化粒子の配列を提供する。図7Bは、コカイン分析物の存在下で折り畳まれたアプタマーを示す。コカインセンサー系を調製するために、500μLの5'-CocAU(522nmでの吸光は2.2に等しい)及び500μLの3'-A12CocAU(522nmでの吸光は2.2に等しい)を、300mMのNaCl、25mMのトリス酢酸緩衝液(pH8.2)及び100nMのコカインアプタマー/伸長部(コカインリンカー)の存在下で混合した。このサンプルを65℃に1分間加温し、続いてゆっくりと4℃に冷却させた。このプロセスの間にナノ粒子は赤から濃紫色に変化した。サンプルを遠心し、沈殿物を採集した。続いて採集した沈殿物を2000μLの別の緩衝液(150mMのNaCl、25mMのトリス酢酸緩衝液(pH8.2))に懸濁させた。この懸濁物をコカインの検出に用いた。
【0034】
実施例8:コカインの測色検出
上記で調製したコカインセンサー懸濁物の100μLを少量の濃コカイン溶液と混合した。例えば100mMのコカインの1μLを前記懸濁液に添加して、最終濃度1mMを得た。色の変化はUV-vis分光光度計又は裸眼によってモニターした。
【0035】
実施例9:コカインセンサーの選択性及び感度
UV-vis分光光度計の石英セル(Hellma, Germany)に、実施例7で調製したコカインセンサー系の100μLを添加した。コカイン、アデノシン、又はシュクロースを含む少量(0.5−2μL)の溶液を前記分光光度計セルに添加し、セル中の分析物濃度を所望レベルにした。
各セルの拡散カイネティクスを時間の関数として、ヒューレットパッカード8453分光光度計を用いてモニターした。図8Aは、522及び700nmでの吸光比を時間の関数として表したグラフである。図表から分かるように、コカインのみが時間の関数として有意な吸光比の増加を示し、一方、アデノシン及びシュクロースはバックグラウンドと一致した色の変化を提供した。したがって、センサーの高い選択性が確認された。
図8Bは、センサー系の色の変化について凝集1分後に観察された吸光比とコカイン分析物の濃度との間の相関性を示すグラフである。センサー系の優れた直線性は約0.1から約1mMで明白であった。
図8Cは、多数のコカイン分析物濃度についての5分間の吸光比を示すグラフである。グラフは、数分以内で種々の分析物濃度間を効果的に識別することができるこのセンサー系の能力を示している。したがって、正確な定量的情報を提供するこのセンサー系の能力が確認された。
図8Bの装置による方法に加えて、前記センサーによる発色は可視的に簡便に観察された。青から赤への色の変化は、コカイン濃度が0から1mMに増加するときに認められた。アデノシン及びシュクロースはバックグラウンドと類似の色を提供した。
提供した説明、図面及び実施例から当業者には理解されるところであるが、本発明の特許請求の範囲で規定されたもの及びその等価物から外れることなく、好ましい実施態様に対して改変及び変更を為すことができよう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明は以下の図面及び詳細な説明を参照してより良好に理解することができる。図中の成分は必ずしも比率が一致せず、さらに分子又はそれらの相互作用を正確に表すことは意図されず、それよりも本発明の原理を示すことに主眼が置かれている。
【図1】サンプル中の分析物の存在、及び場合によってその濃度を決定する測色分析を示す。
【図2】2Aは、折り畳みに2つの分析物分子を必要とするアプタマーを示す。2Bは、折り畳みに2つのアデノシン分子を必要とするアプタマーのための塩基対を示す。
【図3】3Aは、アデノシン分析物の存在下における凝集物の脱凝集を示す。3Bは、リンカーを有するオリゴヌクレオチド官能化粒子の尾対尾ハイブリダイゼーションを示す。3Cは、リンカーを有するオリゴヌクレオチド官能化粒子の頭対尾ハイブリダイゼーションを示す。3Dは、リンカーを有するオリゴヌクレオチド官能化粒子の頭対頭ハイブリダイゼーションを示す。
【図4】凝集(実線)及び脱凝集(点線)金ナノ粒子によってサンプルから放出された光の波長に対する吸光比に関するグラフである。
【図5】5Aは、グアノシン(白丸)、シチジン(黒三角)、ウリジン(白四角)、及びアデノシン(黒丸)を含むサンプルについて、時間経過時の吸光比の変化を示すグラフである。5Bは、センサー系の色の変化について観察された吸光比と1分後のアデノシン分析物濃度との間の相関関係を示すグラフである。5Cは、6分間の間の複数のアデノシン濃度についての吸光比を示すグラフである。
【図6】6Aは、カリウムイオンセンサー系のためのリンカーの伸長部及びアプタマー部分の配列並びにオリゴヌクレオチド官能化粒子の配列を提供する。6BはK(I)分析物の存在下でのアプタマーの折り畳みを示す。6Cは、複数の金属イオンに対するカリウムイオンセンサーの吸光比を示す。
【図7】7Aは、コカインセンサー系のためのリンカーの伸長部及びアプタマー部分の配列並びにオリゴヌクレオチド官能化粒子の配列を提供する。7Bはコカイン分析物の存在下でのアプタマーの折り畳みを示す。
【図8】8Aは、アデノシン(白三角)、シュクロース(白丸)、及びコカイン(黒丸)を含むサンプルについて、時間経過時の吸光比の変化を示すグラフである。8Bは、センサー系の色の変化について観察された吸光比と1分の凝集後のコカイン分析物濃度との間の相関関係を示すグラフである。8Cは、5分間の間の複数のコカイン分析物の濃度についての吸光比を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物検出用センサー系であって、分析物に応答して折り畳まれるアプタマーを含むリンカー、及び前記アプタマーの少なくとも一部分と相補的な第二のオリゴヌクレオチドと結合した第二の粒子を含む、前記センサー系。
【請求項2】
リンカーが伸長部を含む、請求項1に記載の系。
【請求項3】
第二のオリゴヌクレオチドが伸長部の少なくとも一部分と相補的である、請求項1又は2のいずれかに記載の系。
【請求項4】
伸長部を形成する塩基の少なくとも一部分が、分析物なしに本質的に安定な二次構造をリンカーが形成することを阻害する、請求項1から3のいずれかに記載の系。
【請求項5】
さらに第一のオリゴヌクレオチドと結合した第一の粒子を含み、前記第一のオリゴヌクレオチドが伸長部の少なくとも一部分と相補的である、請求項1から4のいずれかに記載の系。
【請求項6】
伸長部が1から100の塩基を含み、前記塩基の少なくとも50%が第一又は第二のオリゴヌクレオチドと相補的である、請求項1から5のいずれかに記載の系。
【請求項7】
第一のオリゴヌクレオチドの一部分が伸長部と相補的でない、請求項1から6のいずれかに記載の系。
【請求項8】
分析物と一緒になったアプタマーのハイブリダイゼーションの安定性が、第二のオリゴヌクレオチドとアプタマーの一部分とのハイブリダイゼーションの安定性より強い、請求項1から7のいずれかに記載の系。
【請求項9】
第一及び第二の粒子が、金属、半導体、磁化性物質及び前記の組合せから成る群から選択される物質を含む、請求項1から8のいずれかに記載の系。
【請求項10】
第一及び第二の粒子が金を含む、請求項1から9のいずれかに記載の系。
【請求項11】
分析物が金属イオンである、請求項1から10のいずれかに記載の系。
【請求項12】
分析物が、大きなバイオ分子、小さなバイオ分子及び有機分子から成る群から選択される、請求項1から11のいずれかに記載の系。
【請求項13】
リンカーが、配列番号:46、52、54、及び前記の保存的改変変種から成る群から選択される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1から12のいずれかに記載の系。
【請求項14】
アプタマーが、配列番号:1−42及び前記の保存的改変変種から成る群から選択される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1から13のいずれかに記載の系。
【請求項15】
第一のオリゴヌクレオチドが、配列番号:44及びその保存的改変変種を含む配列を有するポリヌクレオチドを含み、さらに第二のオリゴヌクレオチドが、配列番号:45、53、55、及び前記の保存的改変変種から成る群から選択される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1から14のいずれかに記載の系。
【請求項16】
リンカーが配列番号:54を含み、第一のオリゴヌクレオチドが配列番号:44を含み、さらに第二のオリゴヌクレオチドが配列番号:55を含む、請求項1から15のいずれかに記載の系。
【請求項17】
応答時間が60分未満である、請求項1から16のいずれかに記載の系。
【請求項18】
応答時間が23℃から37℃で10分未満である、請求項1から17のいずれかに記載の系。
【請求項19】
凝集物をサンプルと一緒にする工程及び分析物に応答する色の変化を検出する工程を含む、分析物を検出する方法であって、前記凝集物が、分析物に応答して折り畳まれるアプタマーを含むリンカー、及び第二のオリゴヌクレオチドと結合した第二の粒子を含み、前記第二のオリゴヌクレオチドがアプタマーの少なくとも一部分と相補的である、前記分析物検出方法。
【請求項20】
凝集物がさらに第一のオリゴヌクレオチドと結合した第一の粒子を含み、前記第一のオリゴヌクレオチドが、リンカーの一部分を形成する伸長部の少なくとも一部分と相補的である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第二のオリゴヌクレオチドが、伸長部の少なくとも一部分と相補的である、請求項19又は20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
伸長部を形成する塩基の少なくとも一部分が、分析物なしに本質的に安定な二次構造をリンカーが形成することを阻害する、請求項19から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
伸長部が1から100の塩基を含み、前記塩基の少なくとも50%が第一又は第二のオリゴヌクレオチドと相補的である、請求項19から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
分析物と一緒になったアプタマーのハイブリダイゼーションの安定性が、第二のオリゴヌクレオチドとアプタマーの一部分とのハイブリダイゼーションの安定性より強い、請求項19から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
さらにサンプルのイオン強度を調節する工程を含む、請求項19から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
一緒にする工程が、サンプルを凝集物に添加する工程及び凝集物をサンプルに添加する工程からなる群から選択される、請求項19から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
第一及び第二の粒子が金を含む、請求項19から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
分析物が、金属イオン、大きなバイオ分子、小さなバイオ分子及び有機分子から成る群から選択される、請求項19から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
アプタマーが、配列番号:1−42及び前記の保存的改変変種から成る群から選択される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項19から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
第一のオリゴヌクレオチドが、配列番号:44及びその保存的改変変種を含む配列を有するポリヌクレオチドを含み、さらに第二のオリゴヌクレオチドが、配列番号:45、53、55、及び前記の保存的改変変種から成る群から選択される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項19から29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
応答時間が23℃から37℃で10分未満である、請求項19から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
一緒にする工程が20℃から30℃で実施される、請求項19から31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
凝集物が分析物に応答して脱凝集する、請求項19から32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
応答がサンプル中の分析物の量に比例する、請求項19から33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
さらに色の変化を定量する工程を含む、請求項19から34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
サンプルの供給源が、生物学的供給源、工業廃液、及び人間の消費のために汲み出される水源から成る群から選択される、請求項19から35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
凝集物を形成するための系及び前記凝集物形成系を収納する少なくとも1つの第一の容器を含む、分析物を検出するキットであって、前記凝集物形成系が、分析物に応答して折り畳まれるアプタマーを含むリンカー、及びアプタマーの少なくとも一部分と相補的な第二のオリゴヌクレオチドと結合した第二の粒子を含み、ここで、サンプルを第一の容器及び第二の容器を含む群から選択される容器に添加することができる、前記キット。
【請求項38】
分析物と一緒になったアプタマーのハイブリダイゼーションの安定性が、第二のオリゴヌクレオチドとアプタマーの一部分とのハイブリダイゼーションの安定性より強い、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
アプタマーが、配列番号:1−42及び前記の保存的改変変種から成る群から選択される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項37又は38のいずれかに記載のキット。
【請求項40】
凝集物を形成するための指示をさらに含む、請求項37から39のいずれかに記載のキット。
【請求項41】
凝集物形成系がさらに第一のオリゴヌクレオチドと結合した第一の粒子を含み、前記第一のオリゴヌクレオチドがリンカーの一部分を形成する伸長部の少なくとも一部分と相補的である、請求項37から40のいずれかに記載のキット。
【請求項42】
第二のオリゴヌクレオチドが伸長部の少なくとも一部分と相補的である、請求項37から41のいずれかに記載のキット。
【請求項43】
伸長部が1から100の塩基を含み、前記塩基の少なくとも50%が第一又は第二のオリゴヌクレオチドと相補的である、請求項37から42のいずれかに記載のキット。
【請求項44】
さらにサンプルのイオン強度を改変するための試薬を含む、請求項37から43のいずれかに記載のキット。
【請求項45】
さらにサンプルのイオン強度を改変するための指示を含む、請求項37から44のいずれかに記載のキット。
【請求項46】
さらにサンプルのpHを改変するための試薬を含み、前記試薬が酸及び塩基から成る群から選択される、請求項37から45のいずれかに記載のキット。
【請求項47】
さらに凝集物の脱凝集に応答する色の変化を定量するための装置を含む、請求項37から46のいずれかに記載のキット。
【請求項48】
装置が分光光度計及び色の比較計から成る群から選択される、請求項37から47のいずれかに記載のキット。
【請求項49】
さらに分析物に応答するライトダウンセンサー系を含む、請求項37から48のいずれかに記載のキット。
【請求項50】
凝集物を分析物と一緒にする工程、分析物に応答する色の変化を検出する工程、DNA鎖が折り畳まれて色の変化を提供したか否かを決定する工程を含む、分析物に対するアプタマーの感度及び選択性を決定する方法であって、前記凝集物が、DNA鎖を含むリンカー及び前記DNA鎖の少なくとも一部分と相補的な第二のオリゴヌクレオチドと結合した第二の粒子を含む、前記方法。
【請求項51】
凝集物がさらに第一のオリゴヌクレオチドと結合した第一の粒子を含み、前記第一のオリゴヌクレオチドが、リンカーの一部分を形成する伸長部の少なくとも一部分と相補的である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
第二のオリゴヌクレオチドが伸長部の少なくとも一部分と相補的である、請求項50又は51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
伸長部が1から100の塩基を含み、前記塩基の少なくとも50%が第一又は第二のオリゴヌクレオチドと相補的である、請求項50から52のいずれかに記載の方法。
【請求項1】
分析物検出用センサー系であって、分析物に応答して折り畳まれるアプタマーを含むリンカー、及び前記アプタマーの少なくとも一部分と相補的な第二のオリゴヌクレオチドと結合した第二の粒子を含む、前記センサー系。
【請求項2】
リンカーが伸長部を含む、請求項1に記載の系。
【請求項3】
第二のオリゴヌクレオチドが伸長部の少なくとも一部分と相補的である、請求項1又は2のいずれかに記載の系。
【請求項4】
伸長部を形成する塩基の少なくとも一部分が、分析物なしに本質的に安定な二次構造をリンカーが形成することを阻害する、請求項1から3のいずれかに記載の系。
【請求項5】
さらに第一のオリゴヌクレオチドと結合した第一の粒子を含み、前記第一のオリゴヌクレオチドが伸長部の少なくとも一部分と相補的である、請求項1から4のいずれかに記載の系。
【請求項6】
伸長部が1から100の塩基を含み、前記塩基の少なくとも50%が第一又は第二のオリゴヌクレオチドと相補的である、請求項1から5のいずれかに記載の系。
【請求項7】
第一のオリゴヌクレオチドの一部分が伸長部と相補的でない、請求項1から6のいずれかに記載の系。
【請求項8】
分析物と一緒になったアプタマーのハイブリダイゼーションの安定性が、第二のオリゴヌクレオチドとアプタマーの一部分とのハイブリダイゼーションの安定性より強い、請求項1から7のいずれかに記載の系。
【請求項9】
第一及び第二の粒子が、金属、半導体、磁化性物質及び前記の組合せから成る群から選択される物質を含む、請求項1から8のいずれかに記載の系。
【請求項10】
第一及び第二の粒子が金を含む、請求項1から9のいずれかに記載の系。
【請求項11】
分析物が金属イオンである、請求項1から10のいずれかに記載の系。
【請求項12】
分析物が、大きなバイオ分子、小さなバイオ分子及び有機分子から成る群から選択される、請求項1から11のいずれかに記載の系。
【請求項13】
リンカーが、配列番号:46、52、54、及び前記の保存的改変変種から成る群から選択される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1から12のいずれかに記載の系。
【請求項14】
アプタマーが、配列番号:1−42及び前記の保存的改変変種から成る群から選択される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1から13のいずれかに記載の系。
【請求項15】
第一のオリゴヌクレオチドが、配列番号:44及びその保存的改変変種を含む配列を有するポリヌクレオチドを含み、さらに第二のオリゴヌクレオチドが、配列番号:45、53、55、及び前記の保存的改変変種から成る群から選択される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1から14のいずれかに記載の系。
【請求項16】
リンカーが配列番号:54を含み、第一のオリゴヌクレオチドが配列番号:44を含み、さらに第二のオリゴヌクレオチドが配列番号:55を含む、請求項1から15のいずれかに記載の系。
【請求項17】
応答時間が60分未満である、請求項1から16のいずれかに記載の系。
【請求項18】
応答時間が23℃から37℃で10分未満である、請求項1から17のいずれかに記載の系。
【請求項19】
凝集物をサンプルと一緒にする工程及び分析物に応答する色の変化を検出する工程を含む、分析物を検出する方法であって、前記凝集物が、分析物に応答して折り畳まれるアプタマーを含むリンカー、及び第二のオリゴヌクレオチドと結合した第二の粒子を含み、前記第二のオリゴヌクレオチドがアプタマーの少なくとも一部分と相補的である、前記分析物検出方法。
【請求項20】
凝集物がさらに第一のオリゴヌクレオチドと結合した第一の粒子を含み、前記第一のオリゴヌクレオチドが、リンカーの一部分を形成する伸長部の少なくとも一部分と相補的である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第二のオリゴヌクレオチドが、伸長部の少なくとも一部分と相補的である、請求項19又は20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
伸長部を形成する塩基の少なくとも一部分が、分析物なしに本質的に安定な二次構造をリンカーが形成することを阻害する、請求項19から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
伸長部が1から100の塩基を含み、前記塩基の少なくとも50%が第一又は第二のオリゴヌクレオチドと相補的である、請求項19から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
分析物と一緒になったアプタマーのハイブリダイゼーションの安定性が、第二のオリゴヌクレオチドとアプタマーの一部分とのハイブリダイゼーションの安定性より強い、請求項19から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
さらにサンプルのイオン強度を調節する工程を含む、請求項19から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
一緒にする工程が、サンプルを凝集物に添加する工程及び凝集物をサンプルに添加する工程からなる群から選択される、請求項19から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
第一及び第二の粒子が金を含む、請求項19から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
分析物が、金属イオン、大きなバイオ分子、小さなバイオ分子及び有機分子から成る群から選択される、請求項19から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
アプタマーが、配列番号:1−42及び前記の保存的改変変種から成る群から選択される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項19から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
第一のオリゴヌクレオチドが、配列番号:44及びその保存的改変変種を含む配列を有するポリヌクレオチドを含み、さらに第二のオリゴヌクレオチドが、配列番号:45、53、55、及び前記の保存的改変変種から成る群から選択される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項19から29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
応答時間が23℃から37℃で10分未満である、請求項19から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
一緒にする工程が20℃から30℃で実施される、請求項19から31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
凝集物が分析物に応答して脱凝集する、請求項19から32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
応答がサンプル中の分析物の量に比例する、請求項19から33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
さらに色の変化を定量する工程を含む、請求項19から34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
サンプルの供給源が、生物学的供給源、工業廃液、及び人間の消費のために汲み出される水源から成る群から選択される、請求項19から35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
凝集物を形成するための系及び前記凝集物形成系を収納する少なくとも1つの第一の容器を含む、分析物を検出するキットであって、前記凝集物形成系が、分析物に応答して折り畳まれるアプタマーを含むリンカー、及びアプタマーの少なくとも一部分と相補的な第二のオリゴヌクレオチドと結合した第二の粒子を含み、ここで、サンプルを第一の容器及び第二の容器を含む群から選択される容器に添加することができる、前記キット。
【請求項38】
分析物と一緒になったアプタマーのハイブリダイゼーションの安定性が、第二のオリゴヌクレオチドとアプタマーの一部分とのハイブリダイゼーションの安定性より強い、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
アプタマーが、配列番号:1−42及び前記の保存的改変変種から成る群から選択される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項37又は38のいずれかに記載のキット。
【請求項40】
凝集物を形成するための指示をさらに含む、請求項37から39のいずれかに記載のキット。
【請求項41】
凝集物形成系がさらに第一のオリゴヌクレオチドと結合した第一の粒子を含み、前記第一のオリゴヌクレオチドがリンカーの一部分を形成する伸長部の少なくとも一部分と相補的である、請求項37から40のいずれかに記載のキット。
【請求項42】
第二のオリゴヌクレオチドが伸長部の少なくとも一部分と相補的である、請求項37から41のいずれかに記載のキット。
【請求項43】
伸長部が1から100の塩基を含み、前記塩基の少なくとも50%が第一又は第二のオリゴヌクレオチドと相補的である、請求項37から42のいずれかに記載のキット。
【請求項44】
さらにサンプルのイオン強度を改変するための試薬を含む、請求項37から43のいずれかに記載のキット。
【請求項45】
さらにサンプルのイオン強度を改変するための指示を含む、請求項37から44のいずれかに記載のキット。
【請求項46】
さらにサンプルのpHを改変するための試薬を含み、前記試薬が酸及び塩基から成る群から選択される、請求項37から45のいずれかに記載のキット。
【請求項47】
さらに凝集物の脱凝集に応答する色の変化を定量するための装置を含む、請求項37から46のいずれかに記載のキット。
【請求項48】
装置が分光光度計及び色の比較計から成る群から選択される、請求項37から47のいずれかに記載のキット。
【請求項49】
さらに分析物に応答するライトダウンセンサー系を含む、請求項37から48のいずれかに記載のキット。
【請求項50】
凝集物を分析物と一緒にする工程、分析物に応答する色の変化を検出する工程、DNA鎖が折り畳まれて色の変化を提供したか否かを決定する工程を含む、分析物に対するアプタマーの感度及び選択性を決定する方法であって、前記凝集物が、DNA鎖を含むリンカー及び前記DNA鎖の少なくとも一部分と相補的な第二のオリゴヌクレオチドと結合した第二の粒子を含む、前記方法。
【請求項51】
凝集物がさらに第一のオリゴヌクレオチドと結合した第一の粒子を含み、前記第一のオリゴヌクレオチドが、リンカーの一部分を形成する伸長部の少なくとも一部分と相補的である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
第二のオリゴヌクレオチドが伸長部の少なくとも一部分と相補的である、請求項50又は51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
伸長部が1から100の塩基を含み、前記塩基の少なくとも50%が第一又は第二のオリゴヌクレオチドと相補的である、請求項50から52のいずれかに記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【公表番号】特表2009−505641(P2009−505641A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526096(P2008−526096)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/030617
【国際公開番号】WO2007/106118
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(500033634)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・イリノイ (21)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE UNIVERSITY OF ILLINOIS
【住所又は居所原語表記】506 South Wright Street, Urbana, IL 61801
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/030617
【国際公開番号】WO2007/106118
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(500033634)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・イリノイ (21)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE UNIVERSITY OF ILLINOIS
【住所又は居所原語表記】506 South Wright Street, Urbana, IL 61801
【Fターム(参考)】
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