説明

アポトーシス誘導遺伝子PL−3およびPL−3蛋白を標的としたアポトーシス関連疾患の治療および予防

【課題】アポトーシス関連疾患を予防および治療するための手段を提供する。
【解決手段】アポトーシス誘導遺伝子PL−3およびPL−3蛋白を標的としたアポトーシス抑制因子または促進因子、それらの使用、およびそれらのスクリーニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アポトーシス誘導遺伝子PL−3およびPL−3蛋白を標的としたアポトーシス抑制因子または促進因子、ならびにそれらの使用に関する。さらに本発明は、かかる因子のスクリーニング方法等にも関する。
【背景技術】
【0002】
心筋梗塞や脳梗塞のごとき虚血性疾患はアポトーシスにより引き起こされることが知られている(非特許文献1参照)。心筋梗塞は動脈硬化によって血管が閉塞し、血流が途絶することによって心筋細胞がアポトーシスを起こした病態である。同様に脳梗塞は脳の細胞がアポトーシスを起こした病態である。これらのアポトーシスは虚血によって細胞に十分な酸素が供給されなくなったために起こる。従来これらのアポトーシスを防止する確実な方法はなく、従来の治療方法は血流を再開する方法が中心であった。このような従来の治療方法では、心筋梗塞や脳梗塞のようなアポトーシス関連疾患を十分に治療および予防することは不可能であった。
【0003】
本発明者らは、アポリポタンパクE(ApoE)欠損マウスの動脈硬化症の病巣から、該細胞において特異的に発現している遺伝子をクローニングし、この遺伝子の発現によりアポトーシスが誘導されることを明らかにしている(特許文献1参照)。しかしながら、このようなアポトーシス誘導遺伝子やその産物である蛋白を標的とした、動脈硬化によるアポトーシスあるいはアポトーシス関連疾患の治療や予防のための具体的手段は詳細に検討されていなかった。
【特許文献1】国際公開WO2003/070951明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、動脈硬化によるアポトーシスあるいは心筋梗塞や脳梗塞のようなアポトーシス関連疾患を十分に予防および治療するための具体的手段を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、アポトーシス遺伝子PL−3およびPL−3蛋白を標的としてアポトーシスを抑制することにより、動脈硬化あるいは心筋梗塞や脳梗塞のようなアポトーシスに関連する虚血性疾患を十分に治療および予防できることを見出し、本発明を完成するに至った。詳細には、PL−3遺伝子の発現を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドあるいはsiRNA等の因子を製造し、さらにはPL−3遺伝子およびPL−3蛋白の発現および作用を抑制する物質を見出し、これらを用いて効果的に上記疾患を治療または予防できることを見出した。さらにアポトーシスを抑制または促進する因子、ならびにそれらのスクリーニング方法も開発した。
【0006】
すなわち本発明は、下記のものを提供する。
(1)PL−3 DNAの発現を抑制する因子。
(2)アンチセンスプラスミド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAおよび低酸素条件からなる群より選択される(1)記載の因子。
(3)アンチセンスオリゴヌクレオチドである(1)記載の因子。
(4)下記のいずれかのヌクレオチド配列:
(a)配列番号:8に示すヌクレオチド配列、
(b)(a)のDNAに対して全長にわたって80%以上の相同性を有するヌクレオチド配列、あるいは
(c)(a)または(b)のヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするヌクレオチド配列
を有する(3)記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
(5)siRNAである(1)記載の因子。
(6)下記のいずれかのヌクレオチド配列:
(a)配列番号:9、10または11に示すヌクレオチド配列、
(b)(a)のヌクレオチド配列に対して全長にわたって80%以上の相同性を有するヌクレオチド配列、あるいは
(c)(a)または(b)の配列にハイブリダイゼーションする配列
を有する(5)記載のsiRNA。
(7)低酸素条件である(1)記載の因子。
(8)PL−3蛋白の作用を抑制する因子。
(9)IGF−1(インスリン様成長因子−1)からなる群より選択される(8)記載の因子。
(10)PL−3蛋白に対する抗体。
(11)(1)ないし(10)のいずれかに記載の因子を含む、アポトーシスを抑制することが有益な疾患を治療するための医薬組成物。
(12)該疾患が動脈硬化、心筋梗塞または脳梗塞である(11)記載の医薬組成物。
(13)PL−3 DNAの発現を促進する因子。
(14)リゾホスファチジルコリン、ニトロプルシドナトリウム、カルシウムイオノフォアおよび過酸化水素からなる群より選択される(13)記載の因子。
(15)PL−3蛋白の作用を促進する因子。
(16)リゾホスファチジルコリン、ニトロプルシドナトリウム、カルシウムイオノフォアおよび過酸化水素からなる群より選択される(15)記載の因子。
(17)(13)ないし(16)のいずれかに記載の因子を含む、アポトーシスを促進することが有益な疾患を治療するための医薬組成物。
(18)該疾患が癌、動脈硬化または自己免疫疾患である(17)記載の医薬組成物。
(19)(1)ないし(10)のいずれかに記載の因子で処理された細胞。
(20)(13)ないし(16)のいずれかに記載の因子で処理された細胞。
(21)下記工程:
(i)PL−3 DNAを発現している細胞を候補薬剤の存在下で培養し、次いで、
(ii)候補薬剤の不存在下で同様に培養を行った場合と比較して、細胞のアポトーシスを抑制または促進する候補薬剤を見出す
を特徴とする、アポトーシス抑制または促進因子のスクリーニング方法。
(22)(21)記載の方法により見出されるアポトーシス抑制または促進因子。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アポトーシス遺伝子PL−3およびPL−3蛋白を標的としてアポトーシスを抑制することにより、アポトーシスの抑制が有益な疾患、例えば、動脈硬化によるアポトーシスあるいは心筋梗塞や脳梗塞のようなアポトーシスに関連する虚血性疾患を十分に治療および予防することができる。また、アポトーシスの促進が有益な疾患、例えば、癌を治療または予防することもできる。さらに、アポトーシスを抑制する因子または促進する因子、ならびにそれらのスクリーニング方法も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は第1の態様において、PL−3 DNAの発現を抑制する因子に関するものである。本明細書において、PL−3 DNAとは下記のいずれかのDNA:
(a)配列番号:1に示すヌクレオチド配列を有するDNA、
(b)(a)のDNAに対して全長にわたって80%以上の相同性を有するDNA、
(c)(a)または(b)のDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするDNA
あるいは
(d)配列番号:2に示すヌクレオチド配列を有するDNA、
(e)(d)のDNAに対して全長にわたって80%以上の相同性を有するDNA、
(f)(d)または(e)のDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするDNA
をいう。
【0009】
PL−3 DNAの典型例は、配列番号:1に示すマウス平滑筋由来のヌクレオチド配列を有するもので、本明細書において-Apop−1 DNAと称される。また、配列番号:1に示すヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%の相同性を有するDNAもPL−3 DNAに包含される。さらなる態様において、上記相同性は、好ましくは少なくとも85%、そのうえさらに好ましくは少なくとも90%である。また、Apop−1 DNAのスプライスバリアントもPL−3 DNAに包含され、本明細書においてApop−2 DNAと称される(そのヌクレオチド配列を配列番号:2に示す)。配列番号:2に示すヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、そのうえさらに好ましくは少なくとも80%の相同性を有するDNAもPL−3 DNAに包含される。さらなる態様において、上記相同性は、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%である。したがって、ヒトおよびその他の哺乳動物のPL−3カウンターパートであるDNAもPL−3 DNAに包含される。本発明のPL−3 DNAのさらなる典型例として、ヒトのPL−3 DNAがあり、そのヌクレオチド配列を配列番号:3に示す。
【0010】
これらのPL−3 DNAが発現することにより、細胞、特に平滑筋細胞や神経細胞におけるアポトーシスが惹起される。
【0011】
なお、本明細書において、PL−3 DNAを含む遺伝子をPL−3遺伝子ということがある。また本明細書において、PL−3遺伝子の発現という場合にはPL−3 DNAの発現を包含する。
【0012】
さらに、上記PL−3 DNAに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするDNAもやはりPL−3 DNAに包含されるものとする。ここに、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は当業者に公知であるが、例えば、0.5x SSC 0.1% SDSで55℃ 30分間の洗浄、あるいは0.2x SSC 0.1% SDSで65℃ 15分間の洗浄といった条件が挙げられる。さらに、配列番号:1または2に示すヌクレオチド配列において、1個ないし複数個のヌクレオチドが置換、欠失または付加されているヌクレオチド配列、あるいはそれらの組み合わせを含んでいるヌクレオチド配列を有するDNAもPL−3 DNAに包含されるものとする。ここで、複数個とは好ましくは約120個、より好ましくは約90個、さらに好ましくは約60個を意味する。
【0013】
これらのPL−3遺伝子の発現を抑制することにより、細胞、特に平滑筋細胞や神経細胞におけるアポトーシスを抑制することができる。例えば、PL−3遺伝子の発現あるいはその発現産物である蛋白の作用を抑制する因子でもって細胞、特に平滑筋細胞や神経細胞を処理することによって、これらの細胞におけるアポトーシスを抑制することができる。したがって、PL−3遺伝子の発現を抑制する因子で処理された細胞、特に平滑筋細胞や神経細胞も本発明の1態様であり、かかる細胞を用いて、アポトーシスの抑制が有益な疾患を治療することができる。
【0014】
アポトーシスの抑制が有益な疾患としては、動脈硬化、血栓症、心筋梗塞、脳梗塞などが挙げられる。動脈硬化の場合は、動脈硬化により生じた血管の閉塞によりその下流が虚血状態となり、アポトーシスが起こる。血栓の下流においても同様にアポトーシスが起こる。また、種々の要因により虚血状態に陥った部位においてアポトーシスが起こった結果として心筋梗塞や脳梗塞が生じる。本発明のPL−3遺伝子の発現を抑制する因子は、かかるアポトーシスが原因となる疾病を治療または予防するのに有用である。
【0015】
PL−3遺伝子の発現を抑制する因子は、PL−3遺伝子の合成を抑制するものであってもよく、あるいはPL−3遺伝子の作用および機能を抑制するものであってもよい。本明細書において、特に断らないかぎり、遺伝子の「発現を抑制する」とは、その遺伝子の発現を通常レベルよりも低下させること、ならびに完全に消失させてしまうことを包含する。具体的には、遺伝子の「発現を抑制する」とは、その遺伝子の合成を不活性化あるいは消失させること、その遺伝子の制御・調節機構を発現抑制の方向にシフトさせることなどを包含する。例えば、PL−3遺伝子を、公知の方法によりノックダウン、ノックアウト、あるいは欠失させてもよい。また例えば、同種の機能を有する蛋白、例えばアイソザイムをコードする遺伝子が複数ある場合において、それらの遺伝子のうち1つまたはそれ以上、あるいはすべての発現を抑制してもよい。本明細書において、特に断らない限り、遺伝子という場合はDNAおよびRNAを包含する。したがって、「PL−3遺伝子」とは、DNAであるPL−3遺伝子のみならずその対応RNAも包含する。
【0016】
PL−3遺伝子の発現を抑制する因子の例としては、PL−3のアンチセンスを発現するアンチセンスプラスミド、PL−3 DNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(DNAおよびRNAを包含)、PL−3 DNAに対するSiRNA等の因子や薬剤、あるいは低酸素条件等が挙げられるが、これらに限らない。低酸素条件における酸素濃度は、3%未満、好ましくは1%未満である。PL−3 DNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドやPL−3 DNAに対するsiRNAはPL−3遺伝子に対する特異性が高く、ノックダウンあるいはノックアウト効率も高く、副作用のリスクも小さいという利点を有する。そのうえこれらの因子の細胞への導入方法(例えば、トランスフェクション法)も確立されており、導入が容易で使用しやすいという利点もある(siRNA導入用キットも市販されている)。これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドやsiRNAの設計・製造方法は当業者に公知であり、商業的にオーダーメードすることにより入手することもできる。
【0017】
好ましいPL−3 DNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、
下記のいずれかのヌクレオチド配列:
(a)配列番号:8に示すヌクレオチド配列、
(b)(a)のDNAに対して全長にわたって80%以上の相同性を有するヌクレオチド配列、あるいは
(c)(a)または(b)のヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするヌクレオチド配列
を有するものである。
【0018】
本発明のPL−3 DNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号:8に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%の相同性、そのうえさらに好ましくは80%の相同性を有する。さらなる態様において、上記相同性は、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%である。また、上記ヌクレオチド配列において、1個ないし複数個のヌクレオチドが置換、欠失または挿入されたヌクレオチド配列、あるいはそれらの組み合わせを含むヌクレオチド配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドも好ましい。ここに、複数個とは好ましくは約120個、より好ましくは約90個、さらに好ましくは約60個を意味する。アンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞への導入は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを適当なベクター(例えば、pcDNA3.1ベクターなど)中に組み込むことにより得られた構築物を細胞に導入して行うことが一般的であるが、遺伝子銃、エレクトロポレーション、HVJリポソーム、リポフェクション等の方法により導入してもよい。
【0019】
PL−3遺伝子の発現を抑制する好ましい因子として、さらにsiRNAが挙げられる。PL−3 DNAに対する好ましいsiRNAは、
下記のいずれかのヌクレオチド配列:
(a)配列番号:9、10または11に示すヌクレオチド配列、
(b)(a)のヌクレオチド配列に対して全長にわたって80%以上の相同性を有するヌクレオチド配列、あるいは
(c)(a)または(b)の配列にハイブリダイゼーションする配列
を有するものである。
【0020】
本発明のPL−3 DNAに対するsiRNAは、配列番号:9、10または11に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、そのうえさらに好ましくは少なくとも80%の相同性を有する。さらなる態様において、上記相同性は、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%である。また、上記ヌクレオチド配列において、1個ないし複数個のヌクレオチドが置換、欠失または挿入されたヌクレオチド配列、あるいはそれらの組み合わせを含むヌクレオチド配列を有するsiRNAも好ましい。ここに、複数個とは好ましくは4個、より好ましくは3個、さらに好ましくは2個を意味する。
【0021】
好ましくは、siRNAはアンチセンスRNAi配列であり(配列番号:9、10または11はすべてアンチセンスRNAi配列である)、公知の方法で合成することができる。不安定なsiRNAを安定化させるために、3’末端にdTdT配列を付加してもよい。siRNAの細胞への導入方法としては様々なものがあるが、siRNAと細胞を接触させることによる直接導入法が一般的である。
【0022】
細胞をこれらの因子で処理することにより、例えば、細胞をこれらの因子と接触させ、あるいは細胞にこれらの因子を導入することにより、PL−3遺伝子の発現を抑制することができる。これらの因子をコードする遺伝子を細胞に導入してもよい。これらの因子で細胞を処理する方法、例えば、これらの因子またはこれらの因子をコードする遺伝子を細胞に接触させ、あるいは細胞に導入する方法は当該分野で公知である。例えば、細胞への遺伝子の導入には、直接細胞に接触させて導入する方法、ベクターによる方法、細胞融合、エレクトロポレーション、遺伝子銃、リポフェクション、HVJリポソームなどの方法を用いることができる。当業者は細胞の種類、因子の種類等に応じて、これらの方法を適宜選択して用いることができる。また、当該分野で公知の他の方法により、細胞のPL−3遺伝子の発現を抑制してもよい。
【0023】
患者から得られ、上記のごとくPL−3 DNAの発現を抑制する因子で処理された細胞を、好ましくはその患者自身に戻すことによっても、アポトーシスの抑制が有益な疾病の治療または予防を行うことができる。好ましい細胞は平滑筋細胞、神経細胞などである。
【0024】
本発明は、もう1つの態様において、PL−3蛋白の作用を抑制する因子に関するものである。すなわち、本発明のこの態様は、上で定義したPL−3 DNAによりコードされる蛋白(以下、「PL−3蛋白」ということがある)の作用を抑制する因子に関するものである。PL−3蛋白はアポトーシスを促進する作用を有している。PL−3蛋白の例として、配列番号:1のApop−1 DNAによりコードされるApop−1蛋白のアミノ酸配列を配列番号:4に、配列番号:2のApop−2 DNAによりコードされるApop−2蛋白のアミノ酸配列を配列番号:5に示す。さらなるPL−3蛋白の例として、配列番号:3のヒトPL−3 DNAによりコードされるヒトPL−3蛋白のアミノ酸配列を配列番号:6に示す。
【0025】
PL−3蛋白の作用を抑制する因子の例としては、IGF−1(インスリン様成長因子−1)等が挙げられる。本発明に用いられるPL−3蛋白の作用を抑制する好ましい因子の例としては、PL−3蛋白に対する抗体が挙げられる。抗体はモノクローナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよい。かかる抗体の作成方法は当業者に公知であり、種々の方法から適宜選択して用いることができる。本明細書において、特に断らないかぎり、ある物質の「作用を抑制する」とは、その物質の作用を通常レベルよりも低下させること、ならびに完全に消失させてしまうことを包含する。同種の蛋白(例えば、アイソザイム)が複数存在する場合に、それらのうちの1つまたはそれ以上の作用を抑制してもよく、あるいは全部の作用を抑制してもよい。細胞をこれらの因子で処理することにより、例えば、細胞をこれらの因子と接触させ、あるいは細胞にこれらの因子を導入することによりPL−3蛋白の作用を抑制することができる。また、これらのPL−3蛋白の作用を抑制する因子をコードする遺伝子を細胞に導入してもよい。これらの因子で細胞を処理する方法、例えば、これらの因子またはこれらの因子をコードする遺伝子を細胞に接触させ、あるいは細胞に導入する方法は当該分野で公知であり、当業者は細胞の種類、因子の種類等に応じて、これらの方法を適宜選択して用いることができる。細胞としては、PL−3蛋白を発現しているものであればよく、例えば、平滑筋細胞、神経細胞、心筋細胞等が挙げられる。
【0026】
患者から得られ、上記のごとくPL−3蛋白の作用を抑制する因子で処理された細胞を、好ましくはその患者自身に戻すことによっても、アポトーシスの抑制が有益な疾病の治療または予防を行うことができる。
【0027】
さらに別の態様において、本発明は、PL−3遺伝子の発現を抑制する因子あるいはPL−3蛋白の作用を抑制する因子を含む、アポトーシスの抑制が有益な疾病の治療または予防のための医薬組成物に関するものである。通常は、これらの医薬組成物は担体または賦形剤を含む。これらの因子のかわりに、これらの因子で処理された細胞を用いてもよい。これらの因子や細胞以外にも、アポトーシスを抑制することがわかっている薬剤を本発明の医薬組成物に含有させてもよい。医薬組成物の製造方法、剤形、投与量、投与経路については、当業者が疾病や対象の状態等に応じて適宜選択することができる。
【0028】
さらなる態様において、本発明は、本発明は、PL−3遺伝子の発現を抑制する因子、あるいはPL−3蛋白の作用を抑制する因子、あるいはこれらの因子で処理された細胞を対象に投与することを特徴とする、アポトーシスの抑制が有益な疾病の治療または予防方法に関するものである。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、アポトーシスの抑制が有益な疾病の治療または予防のための医薬組成物の製造における、PL−3遺伝子の発現を抑制する因子、あるいはPL−3蛋白の作用を抑制する因子、あるいはこれらの因子で処理された細胞の使用に関するものである。
【0030】
さらなる態様において、本発明は、PL−3遺伝子の発現を抑制する因子、あるいはPL−3蛋白の作用を抑制する因子、あるいはこれらの因子で処理された細胞を対象に投与することを特徴とする、アポトーシスの抑制が有益な疾病の治療または予防方法に関するものである。
【0031】
さらにもう1つの態様において、本発明は、PL−3 DNAの発現を促進する因子
に関するものである。すなわち、上記とは逆に、PL−3遺伝子の発現を促進する因子でもって細胞、特に平滑筋細胞や神経細胞を処理することによって、これらの細胞におけるアポトーシスを促進することができる。したがって、これらの因子で処理された細胞を用いて、アポトーシスの促進が有益である疾病を治療することができる。
【0032】
アポトーシスの促進が有益である疾病としては、種々の癌や悪性腫瘍、動脈硬化、自己免疫疾患等が挙げられる。
【0033】
PL−3遺伝子の発現を促進する因子は、PL−3遺伝子の合成を促進するものであってもよく、あるいはPL−3遺伝子の作用および機能を促進するものであってもよい。本明細書において、特に断らないかぎり、遺伝子の「発現を促進する」とは、その遺伝子の発現を通常レベルよりも高めることをいう。具体的には、遺伝子の「発現を促進する」とは、その遺伝子の合成を活性化させること、その遺伝子の制御・調節機構を発現促進の方向にシフトさせることなどを包含する。また例えば、同種の機能を有する蛋白、例えばアイソザイムをコードする遺伝子が複数ある場合において、それらの遺伝子のうち1つまたはそれ以上、あるいはすべての発現を促進してもよい。PL−3遺伝子の発現を促進する因子の例としては、リゾホスファチジルコリン、ニトロプルシドナトリウム、カルシウムイオノフォア、例えばA23187、過酸化水素等が挙げられるが、これらに限らない。細胞をこれらの因子で処理することにより、例えば、細胞をこれらの因子と接触させ、あるいは細胞にこれらの因子を導入することにより、PL−3遺伝子の発現を抑制することができる。これらの因子をコードする遺伝子を細胞に導入してもよい。これらの因子で細胞を処理する方法、例えば、これらの因子をまたはこれらの因子をコードする遺伝子を細胞に接触させ、あるいは細胞に導入する方法は当該分野で公知であり、当業者は細胞の種類、因子の種類等に応じて、これらの方法を適宜選択して用いることができる。例えば、細胞への遺伝子の導入には、細胞に直接接触させて導入する方法、ベクターによる方法、細胞融合、エレクトロポレーション、遺伝子銃、リポフェクション、HVJリポソームなどの方法を用いることができる。
【0034】
患者から得られ、上記のごとくPL−3 DNAの発現を促進する因子で処理された細胞を、好ましくはその患者自身に戻すことによっても、アポトーシスの促進が有益な疾病の治療または予防を行うことができる。
【0035】
さらにもう1つの態様において、本発明は、PL−3蛋白の作用を促進する因子
に関するものである。すなわち、本発明のこの態様は、PL−3蛋白の作用を促進する因子に関するものである。
【0036】
PL−3蛋白の作用を促進する因子の例としては、リゾホスファチジルコリン、ニトロプルシドナトリウム、カルシウムイオノフォア、例えばA23817、過酸化水素等が挙げられるが、これらに限らない。本明細書において、特に断らないかぎり、ある物質の「作用を促進する」とは、その物質の作用を通常レベルよりも上昇させることを包含する。同種の蛋白(例えば、アイソザイム)が複数存在する場合に、それらのうちの1つまたはそれ以上の作用を抑制してもよく、あるいは全部の作用を抑制してもよい。細胞をこれらの因子で処理することにより、例えば、細胞をこれらの因子と接触させ、あるいは細胞にこれらの因子を導入することにより、PL−3蛋白の作用を促進することができる。また、これらの因子をコードする遺伝子を細胞に導入してもよい。これらの因子で細胞を処理する方法、例えば、これらの因子またはこれらの因子をコードする遺伝子を細胞と接触させ、あるいは細胞に導入する方法は当該分野で公知であり、当業者は細胞の種類、因子の種類等に応じて、これらの方法を適宜選択して用いることができる。細胞としては、PL−3蛋白を発現しているものであればよく、例えば、平滑筋細胞、神経細胞、心筋細胞等が挙げられる。
【0037】
本発明のさらなる態様において、患者から得られ、上記のごとくPL−3 DNAの発現を促進する因子で処理された細胞を、好ましくはその患者自身に戻すことによっても、アポトーシスの促進が有益な疾病の治療または予防を行うことができる。
【0038】
さらに別の態様において、本発明は、PL−3 遺伝子またはPL−3 DNAの発現を促進する因子あるいはPL−3蛋白の作用を促進する因子を含む、アポトーシスの促進が有益な疾病の治療または予防のための医薬組成物に関するものである。通常は、これらの医薬組成物は担体または賦形剤を含む。これらの因子のかわりに、これらの因子で処理された細胞を用いてもよい。これらの因子や細胞以外にも、アポトーシスを促進することがわかっている薬剤を本発明の医薬組成物に含有させてもよい。医薬組成物の製造方法、剤形、投与量、投与経路については、当業者が疾病や対象の状態等に応じて適宜選択することができる。
【0039】
さらなる態様において、本発明は、本発明は、PL−3 遺伝子またはPL−3 DNAの発現を促進する因子、あるいはPL−3蛋白の作用を促進する因子、あるいはこれらの因子で処理された細胞を対象に投与することを特徴とする、アポトーシスの促進が有益な疾病の治療または予防方法に関するものである。
【0040】
さらなる態様において、本発明は、アポトーシスの促進が有益な疾病の治療または予防のための医薬組成物の製造における、PL−3遺伝子の発現を促進する因子、あるいはPL−3蛋白の作用を促進する因子、あるいはこれらの因子で処理された細胞の使用に関するものである。
【0041】
さらなる態様において、本発明は、PL−3遺伝子の発現を促進する因子、あるいはPL−3蛋白の作用を促進する因子、あるいはこれらの因子で処理された細胞を対象に投与することを特徴とする、アポトーシスの促進が有益な疾病の治療または予防方法に関するものである。
【0042】
さらにもう1つの態様において、本発明は、
下記工程:
(i)PL−3 DNAを発現している細胞を候補薬剤の存在下で培養し、次いで、
(ii)候補薬剤の不存在下で同様に培養を行った場合と比較して、細胞のアポトーシスを抑制または促進する候補薬剤を見出す
を特徴とする、アポトーシス抑制または促進因子のスクリーニング方法に関するものである。
【0043】
本発明のスクリーニング法において、先ず、PL−3遺伝子を発現している細胞、例えば、平滑筋細胞または神経細胞を用意する。PL−3遺伝子を発現していることが明かである細胞を用いてもよく、PL−3 DNAを組み込んだ発現ベクターを細胞に導入することにより、細胞にPL−3遺伝子を発現させてもよい。特に、アポトーシスを抑制する候補薬剤をスクリーニングする場合にはアポトーシスを誘発することが知られている因子の存在下でスクリーニングを行ってもよい。次いで、該細胞を候補薬剤の存在下で培養して細胞のアポトーシスの程度を調べ、候補薬剤の不存在下で同様に培養した細胞のアポトーシスの程度と比較する。候補薬剤としては、細胞のアポトーシスを抑制または促進することが知られている物質、およびそれらのアナログ、誘導体、変異体等が挙げられるが、これらに限らない。本発明のアンチセンスDNA、siRNA、およびこれらの変異体、誘導体等がアポトーシス抑制物質として例示される。エトポシド、リゾホスファチジルコリン、ニトロプルシドナトリウム、およびこれらのアナログ、誘導体等がアポトーシス促進物質の候補物質として例示される。低酸素条件(アポトーシス促進)等の細胞周囲の環境条件も「候補薬剤」に包含される。細胞のアポトーシスの程度を調べる方法は当業者によく知られている。例えば、細胞の収縮、Hoechst33342で染色した場合の凝縮され断片化された核のような形態学的特徴、TUNEL染色によるDNAの断片化、フローサイトメーターによるアポトーシスの定量等を調べることにより、細胞のアポトーシスの程度を調べることができる。また、例えば、例えば、PL−3 DNAを組み込んだ発現ベクターを細胞に導入して候補薬剤をスクリーニングする場合には、PL−3とGFPなどのマーカー蛋白の融合蛋白を発現できるようにして、視覚的チェックを併用することもできる。
【0044】
かかるスクリーニング方法により見出されたアポトーシス抑制または促進因子を、上で説明したように用いることができる。
【0045】
以下に実施例を示して本発明をより詳細かつ具体的に説明するが、実施例は単に説明のためのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0046】
PL−3 DNAに対するアンチセンスDNA、およびそれを発現するベクターの製造
PL−3 DNA(Apop−1)(配列番号:3)に対するアンチセンスDNAフラグメントを、PL−3蛋白とGFPの融合蛋白発現ベクター(pcDNA3 PL3/GFP)から制限酵素(HindIII、BamHI)を用いて切り出すことにより得た。pcDNA3.1plusベクター(Invitrogen)のAAGCTT(HindIII)部位とGGATCC(BamHI)部位に、PL−3 DNAフラグメントをアンチセンス向きに挿入した。挿入されたフラグメントは上記のPL−3とGFPの融合蛋白発現ベクターから切り出したため、GFP配列の一部(配列番号:7のヌクレオチド917から1039まで)も含まれていたが、実施例2に示すようにアンチセンス作用には問題を生じなかった。このようにして得られたPL−3 DNAに対するアンチセンスDNAを含むアンチセンスプラスミドベクターをpcDNA3ASと命名した。pcDNA3ASの構成スキームを図1に、その全ヌクレオチド配列を配列番号:7に示す。挿入フラグメント中のGFP由来の配列を除いたヌクレオチド配列、すなわちPL−3 DNAに対するアンチセンスDNAのヌクレオチド配列を配列番号:8に示す。
【実施例2】
【0047】
PL−3 DNAに対するsiRNAの製造
配列番号:9、10および11に示すsiRNA(アンチセンスRNAi)を常法により化学合成した。合成RNAを安定化させるために、配列番号:9、10および11の3’にdTdT配列を付加したもの(それぞれRNAi−1、RNAi−2、RNAi−3と称する)を実験に使用した。PL−3 RNAの標的配列と各アンチセンスRNAiとのハイブリダイゼーションの様子を図2に示す。
【実施例3】
【0048】
アンチセンスDNAによるPL−3発現の抑制
PL−3蛋白(Apop−1)とGFPの融合蛋白発現ベクター(pcDNA3Apop−1/GFP)、pcDNA3Apop−1/GFP+pcDNA3AS、およびpcDNA3Apop−1/GFP+pcDNA3.1を(各1μg)、平滑筋細胞(ApoE欠損マウスの下行胸大動脈細胞)に導入した。pcDNA3Apop−1/GFPは、pcDNA3.1/CT−GFP−TOPO(invitrogen)にApop−1遺伝子を挿入することにより作成した。細胞へのベクター導入はエレクトロポレーション法によった。5% CO雰囲気下、10%ウシ胎児血清(FCS)含有D−MEM培地にて、37℃、24時間培養し、緑色蛍光を観察した。結果を図3に示す。図3aからわかるように、pcDNA3Apop−1/GFPを導入した細胞において緑色蛍光が認められ、Apop−1の発現が確認された。pcDNA3ASをpcDNA3Apop−1/GFPとともに導入した細胞では緑色蛍光が認められず、アンチセンスDNAによりApop−1の発現が完全にブロックされたことがわかる(図3b)。図3cは対照実験の結果であり、pcDNA3ASのかわりに空ベクターpcDNA3.1をpcDNA3Apop−1/GFPとともに細胞に導入した結果である。緑色蛍光が認められ、Apop−1の発現が認められた。
【実施例4】
【0049】
siRNAによるPL−3発現の抑制
RNAi−1、RNAi−2、RNAi−3を用いてPL−3の発現を抑制した。各siRNA(1μg)の細胞への導入は、直接導入法により行った。結果を図4に示す。PL−3蛋白(Apop−1)とGFPの融合蛋白発現ベクター(pcDNA3Apop−1/GFP)を平滑筋細胞(マウス動脈由来)に導入し(導入方法および培養方法は実施例3と同じ)、発現させたところ、緑色蛍光が認められ、Apop−1の発現が確認された(陽性対照)(図4A)。RNAi−1、RNAi−2、RNAi−3(各1μg)をpcDNA3Apop−1/GFP(1μg)とともに細胞に導入することにより、緑色蛍光が抑制され、Apop−1の発現が抑制されたことが確認された(それぞれ図4B、図4C、図4D)。実施例3と同様に、pcDNA3AS(1μg)をpcDNA3Apop−1/GFP(1μg)とともに細胞に導入した場合には、Apop−1の発現が完全にブロックされた(図4E)。対照siRNA(CGT ACG CGG AAT ACT TCG A(配列番号:12))(1μg)をpcDNA3Apop−1/GFP(1μg)とともに細胞に導入した場合には、Apop−1の発現は抑制されなかった(図4F)。
【実施例5】
【0050】
アンチセンスDNAのPL−3発現抑制作用による心筋細胞生存率の増加
心筋細胞(ラット胎児由来)を低酸素条件下(1%)にて培養した場合におけるアンチセンスDNAによる心筋細胞生存率の増加を調べた。図5の左のバーは、心筋細胞(ラット由来)を5% CO雰囲気下、D−MEM培地にて、37℃、24時間培養し、その場合の細胞生存率を1としたものである。図5の中央のバーは、心筋細胞を低酸素条件下(1%)にて培養した場合(他の条件は同じ)の生存率を示す。低酸素により生存率は0.5以下に減少した。図5の右のバーは、pcDNA3ASを導入した心筋細胞の低酸素条件下で同様に培養した場合の生存率を示す(ベクターの導入方法は上記実施例と同じ)。アンチセンスDNAの導入により生存率が完全に回復したことが確認された。pcDNA3ASのかわりに実施例4記載のRNAi−1、−2および−3を用いた場合にも生存率の回復が確認された(データ示さず)。
【実施例6】
【0051】
アポトーシス誘導因子により誘導されたアポトーシスのアンチセンスDNAによる抑制
アポトーシスを誘導することがわかっている物質および環境因子(エトポシド(ETP)(100μM)、リゾホスファチジルコリン(LPC)(200μM)、ニトロプルシドナトリウム(SNP)(50μM)、および低酸素条件(HO)(1%))の存在下で平滑筋細胞を培養した。図中CTLは対照実験系で、上記物質および環境因子を作用させなかった。平滑筋細胞にpcDNA3.1(対照ベクター)あるいはpcDNA3AS(アンチセンスDNAを担持するベクター)を導入しておいた。使用細胞とその培養法およびベクターの導入法は実施例3と同様であった。24時間培養した後、MTTアッセイにより生細胞数をカウントした。次いで、上記物質を含む培地(無血清培地)中、あるいは低酸素条件にてさらに24時間細胞を培養してから生存率を評価した。生存率の評価にはMTTアッセイを用いた。結果を図6に示す。
【0052】
pcDNA3.1を導入した細胞において、試験したすべての物質および低酸素条件によりアポトーシスが誘導された(図6の黒色バー参照)。アポトーシス誘導の程度に差異があり、SNPのアポトーシス誘導作用が大きかった。これらの結果から、この系をアポトーシス誘導物質または誘導環境のスクリーニングに使用できることがわかった。次に、pcDNA3ASを導入した細胞について見てみると、ETP処理細胞以外においては、若干の程度の差異はあるものの生存率が回復していた。pcDNA3ASのかわりに実施例4記載のRNAi−1、−2および−3を用いた場合にも生存率の回復が確認された(データ示さず)。したがって、この系をアポトーシス抑制物質または抑制環境のスクリーニングに使用できることがわかった。
【0053】
配列表フリーテキスト
配列番号:1はマウスPL−3 DNA(Apop−1 DNA)のヌクレオチド配列を示す。
配列番号:2はマウスPL−3 DNA(Apop−2 DNA)のヌクレオチド配列を示す。
配列番号:3はヒトPL−3 DNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号:4はマウスPL−3蛋白(Apop−1蛋白)のアミノ酸配列を示す。
配列番号:5はマウスPL−3蛋白(Apop−2蛋白)のアミノ酸配列を示す。
配列番号:6はヒトPL−3蛋白のアミノ酸配列を示す。
配列番号:7はpcDNA3ASの全ヌクレオチド配列を示す。
配列番号:8はpcDNA3ASに挿入されたアンチセンスDNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号:9は本発明のsiRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号:10は本発明のsiRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号:11は本発明のsiRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号:12は実施例4で使用した対照siRNAのヌクレオチド配列を示す。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、アポトーシスに関連した医薬品の開発や製造の分野、ならびに生化学的研究分野等において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1はpcDNA3ASのスキームを示す図である。
【図2】図2は本発明のsiRNAのヌクレオチド配列およびそれらの標的配列を示す図である。
【図3】図3は本発明のアンチセンスDNAによるPL−3発現の抑制を示す蛍光顕微鏡写真である。
【図4】図4は本発明のsiRNAおよびアンチセンスDNAによるPL−3発現の抑制を示す蛍光顕微鏡写真である。
【図5】図5は本発明のアンチセンスDNAのPL−3発現抑制作用による心筋細胞生存率の増加を示す図である。
【図6】図6はアポトーシス誘導因子による細胞の生存率の低下を、本発明のアンチセンスDNAにより回復できることを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PL−3 DNAの発現を抑制する因子。
【請求項2】
アンチセンスプラスミド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAおよび低酸素条件からなる群より選択される請求項1記載の因子。
【請求項3】
アンチセンスオリゴヌクレオチドである請求項1記載の因子。
【請求項4】
下記のいずれかのヌクレオチド配列:
(a)配列番号:8に示すヌクレオチド配列、
(b)(a)のDNAに対して全長にわたって80%以上の相同性を有するヌクレオチド配列、あるいは
(c)(a)または(b)のヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするヌクレオチド配列
を有する請求項3記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
siRNAである請求項1記載の因子。
【請求項6】
下記のいずれかのヌクレオチド配列:
(a)配列番号:9、10または11に示すヌクレオチド配列、
(b)(a)のヌクレオチド配列に対して全長にわたって80%以上の相同性を有するヌクレオチド配列、あるいは
(c)(a)または(b)の配列にハイブリダイゼーションする配列
を有する請求項5記載のsiRNA。
【請求項7】
低酸素条件である請求項1記載の因子。
【請求項8】
PL−3蛋白の作用を抑制する因子。
【請求項9】
IGF−1(インスリン様成長因子−1)である請求項8記載の因子。
【請求項10】
PL−3蛋白に対する抗体。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項記載の因子を含む、アポトーシスを抑制することが有益な疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項12】
該疾患が動脈硬化、心筋梗塞または脳梗塞である請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
PL−3 DNAの発現を促進する因子。
【請求項14】
リゾホスファチジルコリン、ニトロプルシドナトリウム、カルシウムイオノフォアおよび過酸化水素からなる群より選択される請求項13記載の因子。
【請求項15】
PL−3蛋白の作用を促進する因子。
【請求項16】
リゾホスファチジルコリン、ニトロプルシドナトリウム、カルシウムイオノフォアおよび過酸化水素からなる群より選択される請求項15記載の因子。
【請求項17】
請求項13ないし16のいずれか1項記載の因子を含む、アポトーシスを促進することが有益な疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項18】
該疾患が癌、動脈硬化または自己免疫疾患である請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
請求項1ないし10のいずれか1項記載の因子で処理された細胞。
【請求項20】
請求項13ないし16のいずれか1項記載の因子で処理された細胞。
【請求項21】
下記工程:
(i)PL−3 DNAを発現している細胞を候補薬剤の存在下で培養し、次いで、
(ii)候補薬剤の不存在下で同様に培養を行った場合と比較して、細胞のアポトーシスを抑制または促進する候補薬剤を見出す
を特徴とする、アポトーシス抑制または促進因子のスクリーニング方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法により見出されるアポトーシス抑制または促進因子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−97420(P2007−97420A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287960(P2005−287960)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(599125249)学校法人武庫川学院 (24)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【Fターム(参考)】