説明

アミノアルキルテトラサイクリン化合物の合成方法および精製方法

【課題】 アミノアルキルテトラサイクリン化合物を合成する方法を提供すること。
【解決手段】 上記方法は、第1の適切な条件下、水捕捉剤および酸の存在下でテトラサイクリン化合物をN−ヒドロキシメチル−フタルイミドと接触させ、第1のアミノメチルテトラサイクリン中間体を形成すること、第2の適切な条件下で該第1のアミノメチルテトラサイクリン中間体をメチルアミンで処理し、第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体を形成すること、ならびに適切な水素化条件下で該第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体を処理し、該アミノメチルテトラサイクリン化合物を形成することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2007年4月27日に出願された米国仮特許出願第60/926,461号に対する優先権を主張し、この全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
テトラサイクリン抗生物質の開発は、殺菌性組成物および/または静菌性組成物を産生することができる微生物の証拠を求めて世界中の多数の地方から集められた土壌試料の組織的なスクリーニングの直接の成果であった。これらの新規な化合物の最初のものは1948年にクロルテトラサイクリンという名称で導入された。2年後、オキシテトラサイクリンが手に入るようになった。これらの化合物の化学構造の解明がそれらの類似性を確認し、1952年のこのグループの第3のメンバー(テトラサイクリン)の生産のための解析の基礎を提供した。1957年には初期のテトラサイクリン中に存在していた環に結合したメチル基のない新しい種類のテトラサイクリン化合物が調製され、1967年に一般に入手可能となった。1972年までにはミノサイクリンが使用に供された。
【0003】
最近、さまざまな治療条件下および投与経路下で有効な新しいテトラサイクリン抗生物質組成物を開発することに研究努力が重中している。最初に導入されたテトラサイクリン化合物と同等以上の効力があることが証明されることがある新しいテトラサイクリン類縁体も検討されてきた。例は、特許文献1〜11を含む。これらの特許は、薬学的に活性なテトラサイクリンおよびテトラサイクリン類縁体組成物の範囲を代表する。
【0004】
歴史的に、テトラサイクリンは、初期開発および導入後まもなくリケッチア;複数のグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌;ならびに鼠径リンパ肉芽腫症、封入体結膜炎およびオウム病の原因となる因子に対して薬理的に非常に有効であることが見いだされた。従って、テトラサイクリンは「広いスペクトル」の抗生物質として知られるようになった。種類としてのテトラサイクリンは、その後のインビトロ抗菌性活性、実験的感染症における効力、および薬理特性の確立によって急速に治療目的に広く用いられるようになった。しかし、生命にかかわるおよび生命にかかわらない病気および疾患の双方へのテトラサイクリンのこの広範な使用は、片利共生性および病原性の両方の非常に敏感な細菌種(例えば肺炎球菌およびサルモネラ)の間でさえ、直ぐにこれらの抗生物質に対する耐性の出現をもたらした。テトラサイクリン抵抗性生物の増加の結果、テトラサイクリンおよびテトラサイクリン類縁体組成物が最上の抗生物質として使われることは全体として低下した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第2,980,584号明細書
【特許文献2】米国特許第2,990,331号明細書
【特許文献3】米国特許第3,062,717号明細書
【特許文献4】米国特許第3,165,531号明細書
【特許文献5】米国特許第3,454,697号明細書
【特許文献6】米国特許第3,557,280号明細書
【特許文献7】米国特許第3,674,859号明細書
【特許文献8】米国特許第3,957,980号明細書
【特許文献9】米国特許第4,018,889号明細書
【特許文献10】米国特許第4,024,272号明細書
【特許文献11】米国特許第4,126,680号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
一実施態様では、本発明は、少なくとも部分的に、アミノアルキルテトラサイクリン化合物を合成する方法に関する。この方法は、アミノメチルテトラサイクリン中間体化合物が形成されるように、適切な条件下、水捕捉剤および酸の存在下でテトラサイクリン化合物をN−ヒドロキシメチル−フタルイミドと接触させることを含む。
【0007】
別の実施態様では、本発明は、少なくとも部分的に、アミノアルキルテトラサイクリン化合物の合成のための方法に関する。この方法は、適切な条件下、水捕捉剤および酸の存在下でテトラサイクリン化合物をN−ヒドロキシメチル−フタルイミドと接触させてアミノメチルテトラサイクリン中間体化合物を形成させること、第2の適切な条件下でアミノメチルテトラサイクリン中間体化合物をメチルアミンで処理して第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体を形成させること、およびアミノメチルテトラサイクリン化合物が形成されるように、適切な水素化条件下で第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体を処理することを含む。
【0008】
別の実施態様では、本発明は、少なくとも部分的に、アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物を、該化合物の低pH水溶液を極性有機溶媒グラジエントのHPLCに注入し、アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物を含む生成物画分を一緒にすることによって、精製する方法に関する。
【0009】
さらに別の実施態様では、本発明は、少なくとも部分的に、アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物から疎水性不純物および酸化的分解物を除去する方法に関する。本発明は、ミノサイクリン化合物を4.0〜4.5のpHの水溶液に溶解すること、水溶液を非極性有機溶媒で洗浄すること、および疎水性不純物および酸化的分解物がアルキルアミノメチルミノサイクリン化合物から除去されるように水溶液を保持することを含む。
【0010】
さらに別の実施態様では、本発明は、少なくとも部分的に、アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物からβエピマーおよび副生物を除去する方法にも関する。この方法は、ミノサイクリン化合物を7.5〜8.5のpHの水溶液に溶解すること、水溶液を非極性有機溶媒で洗浄すること、およびβエピマーおよび副生物がアルキルアミノメチルミノサイクリン化合物から除去されるように有機溶液を保持すること含む。
【0011】
さらに別の実施態様では、本発明は、本発明の方法によって合成され、および/または精製されたテトラサイクリン化合物および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬品組成物を含む。
【0012】
さらに別の実施態様では、本発明は、有効な量の本発明の方法によって合成され、および/または精製されたテトラサイクリン化合物を対象に投与することによって、対象におけるテトラサイクリン応答性状態を治療するための方法を含む。
したがって、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1)
アミノアルキルテトラサイクリン化合物を合成する方法であって、
アミノメチルテトラサイクリン中間体化合物が形成されるように、適切な条件下、水捕捉剤および酸の存在下でテトラサイクリン化合物をN−ヒドロキシメチル−フタルイミドと接触させること
を含む方法。
(項目2)
上記テトラサイクリン化合物は、ミノサイクリンである、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記N−ヒドロキシメチルフタルイミドは、下式
【化11】

式中、
およびRは、それぞれ、水素、アルキル、ハロゲン、アルケニル、アルキニル、アリール、シアノ、アミノ、アミジノ、アルコキシおよびアシルである
のものである、項目1に記載の方法。
(項目4)
上記適切な条件は、約20〜25Cの反応温度である、項目1に記載の方法。
(項目5)
上記水捕捉剤は、酸塩化物または酸無水物である、項目1に記載の方法。
(項目6)
上記酸無水物は、メチルスルホン酸無水物である、項目5に記載の方法。
(項目7)
上記酸は、トリフルオロメタンスルホン酸またはメタンスルホン酸である、項目1に記載の方法。
(項目8)
上記アミノメチルテトラサイクリン中間体は、10%を超えてトリスアルキル化されていない、項目1に記載の方法。
(項目9)
上記アミノメチルテトラサイクリン中間体は、さらにアセトン中に溶解されている、項目1に記載の方法。
(項目10)
第2の適切な条件下で上記アミノメチルテトラサイクリン中間体をメチルアミンで処理することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目11)
上記第2の適切な条件は、アルキルアルコールおよびアルキルエーテルを含む、項目9に記載の方法。
(項目12)
上記第2の適切な条件は、不活性雰囲気を含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
第2の適切な条件下で上記アミノメチルテトラサイクリン中間体をメチルアミンで処理した後、第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体が形成される、項目10に記載の方法。
(項目14)
上記第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体は、上記第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体の塩酸塩の形成によって精製される、項目13に記載の方法。
(項目15)
上記塩酸塩は、アルキルアルコール中で形成された後、アルキルエーテルによって沈殿させられる、項目14に記載の方法。
(項目16)
アミノアルキルテトラサイクリン化合物の合成のための方法であって、
適切な条件下、水捕捉剤および酸の存在下でテトラサイクリン化合物をN−ヒドロキシメチル−フタルイミドと接触させてアミノメチルテトラサイクリン中間化合物を形成させること、
第2の適切な条件下で上記アミノメチルテトラサイクリン中間化合物をメチルアミンで処理して第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体を形成させること、
アミノメチルテトラサイクリン化合物が形成されるように、適切な水素化条件下で上記第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体を処理すること
を含む方法。
(項目17)
上記テトラサイクリン化合物は、ミノサイクリンである、項目15に記載の方法。
(項目18)
置換アミノメチルテトラサイクリン化合物が形成されるように、適切な条件下で上記アミノメチルテトラサイクリン化合物をアルデヒドまたはケトンと接触させることをさらに含む、項目16または17に記載の方法。
(項目19)
上記水素化条件は、Pd/CまたはPd/C/S触媒を含む、項目16から18のいずれか1つに記載の方法。
(項目20)
上記水素化条件は、メタノールおよびアルデヒドを含む、項目16から19のいずれか1つに記載の方法。
(項目21)
上記適切な条件は、水素気体を含む、項目16から20のいずれか1つに記載の方法。
(項目22)
上記置換アミノメチルテトラサイクリン化合物は、過剰に水素化された不純物を実質的に含まないで形成される、項目16から21のいずれか1つに記載の方法。
(項目23)
上記置換アミノメチルテトラサイクリン化合物は、10%未満のβ異性体を含む、項目16から22のいずれか1つに記載の方法。
(項目24)
上記置換アミノメチルテトラサイクリン化合物は、約5%未満のβ異性体を含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
上記アミノアルキルテトラサイクリン化合物は、
【化12】

式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールである
である、項目1から24のいずれか1つに記載の方法。
(項目26)
は水素である、項目25に記載の方法。
(項目27)
はアルキルである、項目25または26に記載の方法。
(項目28)
は(CHCCH−である、項目25から27のいずれか1つに記載の方法。
(項目29)
上記アミノアルキルテトラサイクリン化合物は、
【化13】

である、項目1から24のいずれか1つに記載の方法。
(項目30)
アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物を精製する方法であって、上記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物が精製されるように、上記化合物の低pH水溶液を極性有機溶媒グラジエントのHPLC中に注入し、上記生成物画分を一緒にすることを含む方法。
(項目31)
上記低pH溶液は、約2〜3のpHを有する、項目30に記載の方法。
(項目32)
上記低pH溶液は、メチルスルホン酸を含む、項目31に記載の方法。
(項目33)
上記極性有機溶媒は、アセトニトリルである、項目30に記載の方法。
(項目34)
上記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物は、エピマーおよび副生物から精製される、項目30に記載の方法。
(項目35)
上記一緒にされた生成物画分のpHを約4.0〜4.5に調節するステップをさらに含む、項目30に記載の方法。
(項目36)
上記生成物画分を非極性有機溶媒で洗浄すること、および有機層を廃棄し、水層を保持することをさらに含む、項目35に記載の方法。
(項目37)
上記非極性有機溶媒は、塩化メチレンである、項目36に記載の方法。
(項目38)
上記有機層は、上記ミノサイクリン化合物の疎水性不純物および酸化的分解物を含む、項目36に記載の方法。
(項目39)
上記pHが約7.5から8.5の間になって中性溶液を形成するように上記水層に塩基が加えられる、項目46に記載の方法。
(項目40)
上記中性溶液は非極性有機溶媒で洗浄され、上記ミノサイクリン化合物は上記有機溶媒中に溶解される、項目39に記載の方法。
(項目41)
上記非極性有機溶媒は、塩化メチレンである、項目40に記載の方法。
(項目42)
上記ミノサイクリン化合物のβエピマーおよび副生物は、上記中性水溶液中に保持される、項目40に記載の方法。
(項目43)
上記水溶液または画分に酸化防止剤が加えられる、項目30から42のいずれか1つに記載の方法。
(項目44)
上記酸化防止剤は、亜硫酸アンモニウムである、項目43に記載の方法。
(項目45)
アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物から疎水性不純物および酸化的分解物を除去する方法であって、上記ミノサイクリン化合物を4.0〜4.5のpHの水溶液中に溶解すること、上記水溶液を非極性有機溶媒で洗浄すること、および上記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物から疎水性不純物および酸化分解物が除去されるように、上記非極性有機溶媒を廃棄し、上記水溶液を保持することを含む方法。
(項目46)
上記非極性有機溶媒は、塩化メチレンである、項目45に記載の方法。
(項目47)
アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物からβエピマーおよび副生物を除去する方法であって、上記ミノサイクリン化合物を7.5〜8.5のpHの水溶液中に溶解すること、上記水溶液を非極性有機溶媒で洗浄すること、および上記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物からβエピマーおよび副生物が除去されるように、上記水溶液を廃棄し、上記無極性有機溶液を保持することを含む方法。
(項目48)
上記非極性有機溶媒は塩化メチレンである、項目47に記載の方法。
(項目49)
上記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物は、
【化14】

式中、Rはアルキルであり、Rは水素またはアルキルである
である、項目30から48のいずれか1つに記載の方法。
(項目50)
は水素である、項目49に記載の方法。
(項目51)
はアルキルである、項目49または50に記載の方法。
(項目52)
は(CHCCH−である、項目49から51のいずれか1つに記載の方法。
(項目53)
上記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物は、
【化15】

である、項目30から48のいずれか1つに記載の方法。
(項目54)
項目1から53のいずれか1つの方法によって合成されるかまたは精製されたテトラサイクリン化合物および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬品組成物。
(項目55)
対象におけるテトラサイクリン応答性状態を治療するための方法であって、項目1から29のいずれか1つに記載の方法によって合成されるかまたは精製されたアミノアルキルテトラサイクリン化合物の有効な量を、上記テトラサイクリン応答性状態が治療されるように、上記対象に投与することを含む方法。
(項目56)
対象におけるテトラサイクリン応答性状態を治療するための方法であって、項目30から53のいずれか1つに記載の方法によって合成されるかまたは精製されたアルキルアミノメチルミノサイクリン化合物の有効な量を、上記テトラサイクリン応答性状態が治療されるように、上記対象に投与することを含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
1. アミノ−メチルテトラサイクリン化合物を合成するための方法
実施態様において、本発明は、低い4−β−エピマー含有率を有する4−α−9−アミノメチルテトラサイクリンの改善された合成に関する。C−4位におけるテトラサイクリン化合物のエピマー化は、新しいテトラサイクリン誘導体を合成するように取り組んでいる化学者にとって難問であった。
【0014】
一実施態様では、アミノメチルテトラサイクリン中間体化合物が形成されるように、適切な条件下、酸および水捕捉剤の存在下でテトラサイクリン化合物をN−ヒドロキシメチル−フタルイミドと接触させることを含むアミノアルキルテトラサイクリン化合物を合成する方法。
【0015】
用語「テトラサイクリン化合物」は、テトラサイクリンに類似の環構造を有する多くの化合物を含む。テトラサイクリン化合物の例は、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、メタサイクリン、サンサイクリン、ドキシサイクリンおよびミノサイクリンを含む。類似の4環構造を含む他の誘導体および類縁体も含まれる。表1は、テトラサイクリンおよびいくつかの既知のテトラサイクリン誘導体を示す。C−4位は、矢印によって印が付けられている。
【0016】
【表1】

テトラサイクリン化合物は、テトラサイクリン環の任意の位置において置換されていてよい。例えば、テトラサイクリン化合物は、1、2、3、4、5、6、7、8、10、10a、11、11a、12、12aおよび/または13位においてさらに置換されていてよい。用語テトラサイクリン化合物は、式(I)
【0017】
【化1】

式中、
Xは、CHC(R13Y’Y)、CR6’、S、NRまたはOであり、
、R2’、R4’およびR4”は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、ヘテロ芳香族またはプロドラッグ部分であり、
、R11およびR12は、それぞれ、水素またはプロドラッグ部分であり、
10は、水素、プロドラッグ部分であるかまたはRと結合して環を形成し、
は、ヒドロキシル、水素、チオール、アルカノイル、アロイル、アルカロイル、アリール、ヘテロ芳香族、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アルキルカルボニルオキシまたはアリールカルボニルオキシであり、
およびR6’は、それぞれ独立に、水素、メチレン、存在しない、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノまたはアリールアルキルであり、
は、水素、ハロゲン、ニトロ、アルキル、アルケニル、複素環、アシル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールアルキル、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニルまたは−(CH0〜3(NR7c0〜1C(=W’)WR7aであり、
は、水素であり、
Wは、CR7d7e、S、NR7bまたはOであり、
W’は、O、NR7fSであり、
7a、R7b、R7c、R7d、R7eおよびR7fは、それぞれ独立に、水素、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、ヘテロ芳香族またはプロドラッグ部分であり、
は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノまたはアリールアルキルであり、
13は、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノまたはアリールアルキルであり、
Y’およびYは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルフヒドリル、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノまたはアリールアルキルである、の化合物およびその薬学的に許容される塩も含む。
【0018】
さらに別の実施態様では、テトラサイクリン化合物は、ミノサイクリンである。ミノサイクリンの構造は、下式に示される。
【0019】
【化2】

用語「N−ヒドロキシメチルフタルイミド」は、下式の化合物を含む。
【0020】
【化3】

式中、
およびRは、それぞれ、水素、アルキル、ハロゲン、アルケニル、アルキニル、アリール、シアノ、アミノ、アミジノ、アルコキシおよびアシルである。さらに別の実施態様では、RおよびRは、それぞれ、アルキルまたは水素である。
【0021】
用語「酸」は、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機酸、および発煙硫酸を含む。塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸等などの当分野において既知の他の酸も含まれる。
【0022】
用語「水捕捉剤」は、反応から水分を除去する剤を含む。これらの剤は、酸塩化物および酸無水物(例えばメチルスルホン酸無水物)を含む。
【0023】
特定の実施態様では、反応は、約20〜25℃の温度で行われる。特定の実施態様では、反応物は、N−ヒドロキシメチルフタルイミドの最初の一部分の添加後、約1〜2時間撹拌される。N−ヒドロキシフタルイミドの追加の一部分が加えられ、温度を20〜35℃の間に保持する。反応は、反応物のアリコートのHPLC分析が4面積パーセント未満のモノアルキル化ミノサイクリンしか残っていないことを確認するまで続けられてよい。反応条件は、氷で冷やされた水のフラスコへ溶液を加え、温度が25℃未満に保持される後処理をさらに含んでよい。生成物はろ過され、水で洗浄され、中性のpHにされてよい。さらに別の実施態様では、適切な条件は、不活性雰囲気(例えば窒素またはアルゴン)を含む。さらに、アミノメチルテトラサイクリン中間体は、もっと正確な中和を実現するためにアセトンまたはアセトニトリルにさらに溶解されてよい。
【0024】
さらに別の実施態様では、得られたアミノメチルテトラサイクリン中間体は、9:1のビス置換(例えば2および9位において置換されている)対トリス置換(例えば2、9および10位において置換されている)の比を含む。さらに別の実施態様では、ビス置換アミノメチルテトラサイクリン化合物の量は、約50%より大きいか、約60%より大きいか、約70%より大きいか、約80%より大きいかまたは約90%より大きい。
【0025】
さらに別の実施態様では、アミノメチルテトラサイクリン中間体化合物は、下式
【0026】
【化4】

のものであってよい。
【0027】
アミノメチルテトラサイクリン中間体は、メチルアミンによってさらに処理されてアミノメチルテトラサイクリン化合物を形成してよい。メチルアミンによる処理は、アルキルアルコール(例えばEtOH、MeOH等)溶媒中で実行されてよい。生成するフタルアミド副生物は沈殿によって除去されてよい。生成物は、約1.5:1の比の環状/アルキルエーテルとアルキルアルコールとの混合物から沈殿させられてよい。さらに別の実施態様では、適切な量のアルキルアルコールが、反応物からのアミノメチルテトラサイクリン中間体の沈殿を防ぐのに十分な量である。
【0028】
さらに別の実施態様では、本発明は、アミノアルキルテトラサイクリン化合物の合成のための方法に関する。この方法は、適切な条件下、酸および水捕捉剤の存在下でテトラサイクリン化合物をN−ヒドロキシメチル−フタルイミドと接触させてアミノメチルテトラサイクリン中間体化合物を形成させること、第2の適切な条件下、前記アミノメチルテトラサイクリン中間体化合物をメチルアミンで処理して第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体を形成させること、アミノメチルテトラサイクリン化合物が形成されるように第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体を適切な水素化条件下で処理することを含む。さらに別の実施態様では、テトラサイクリン化合物は、ミノサイクリンである。
【0029】
さらに別の実施態様では、第2の適切な条件は、アミノメチルテトラサイクリン中間体化合物を環状またはアルキルエーテルおよび適切な量のアルキルアルコールに溶解することを含む。例えば、副生物を選択的に沈殿させるためにアルキルアルコールが用いられてよく、アミノアルキルテトラサイクリン中間体を選択的に沈殿させるために環状またはアルキルエーテルが用いられてよい。
【0030】
次に、得られた第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体は、遊離塩基として単離されてよい。精製を実行するために遊離塩基のさまざまな塩が形成させられてよい。遊離塩基を塩に変換するために用いられてよい酸の例は、HCl、トリフルオロ酢酸、メチルスルホン酸および酢酸を含むがそれらに限定されない。例えば、塩酸塩を沈殿させるとき、メタノール中の化合物の懸濁液にイソプロパノール中の塩酸が加えられて約3.0のpHにされる。混合物は撹拌され、必要ならろ過されて不溶性成分を除去する。第2のアミノメチルテトラサイクリンの塩は、t−ブチルメチルエーテルによって沈殿させられ、ろ過によって単離されてよい。第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体の塩は、次に直接、水素化を受けてよい。
【0031】
第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体の例は、下式の化合物を含む。
【0032】
【化5】

さらに別の実施態様では、適切な水素化条件は、第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体を水素化フラスコへ移し、フラスコにPd/CまたはPd/C/Sを湿った粉体または乾燥粉体として入れることを含む。反応は、メタノールおよびアルデヒドなどの溶媒を用いて行われてよい。適切な水素化条件は、水素気体の使用も含む。水素気体は、約30psiの圧力下で反応を行うことによって組み込まれてよい。水素化は、約24時間などの適切な長さの時間進行してよい。アミノメチルテトラサイクリン化合物の例は、下式である。
【0033】
【化6】

さらに別の実施態様では、アミノメチルテトラサイクリン化合物は、置換アミノメチルテトラサイクリン化合物が形成されるように、適切な条件下でアルデヒドまたはケトンと接触させられる。置換アミノメチルテトラサイクリン化合物の例は、下式の化合物を含む。
【0034】
【化7】

式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールである。
【0035】
一実施態様では、Rは水素であり、Rはアルキル(例えば(CHCCH−)である。別の実施態様では、置換アミノメチルテトラサイクリン化合物は、下式である。
【0036】
【化8】

アミノメチルミノサイクリン化合物の4−αおよび4−βエピマーが下記に示される。矢印は、テトラサイクリン環系のC−4位を指し示している。
【0037】
【化9】

用語「エピマー純度」は、特定の所望のエピマー構成を有する所定の試料中のテトラサイクリン化合物の%を指す(例えば、本発明のテトラサイクリン化合物((例えば置換アミノアルキルテトラサイクリン化合物、アミノメチルテトラサイクリン化合物またはアルキルアミノメチルミノサイクリン化合物)。一実施態様では、本発明のテトラサイクリン化合物のエピマー純度は、C−4位におけるテトラサイクリン化合物のα−エピマーが95%より大きい。さらに別の実施態様では、テトラサイクリン化合物のエピマー純度は、テトラサイクリン化合物のC−4位におけるα−エピマーが少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または少なくとも99.9%である。
【0038】
好ましくは、本発明の置換アミノアルキルテトラサイクリン化合物、アミノメチルテトラサイクリン化合物またはアルキルアミノメチルミノサイクリン化合物は、大部分(例えば少なくとも50%)α−C−4エピマーを含む。さらに別の実施態様では、本化合物は、約60%がα−C−4エピマー、約70%がα−C−4エピマー、約80%がα−C−4エピマー、約90%がα−C−4エピマー、少なくとも約95%がα−C−4エピマーまたは少なくとも約97%がα−C−4エピマーである。さらに別の実施態様では、本発明の置換アミノアルキルテトラサイクリン化合物、アミノメチルテトラサイクリン化合物またはアルキルアミノメチルミノサイクリン化合物は、約7%未満のβ−C−4エピマー、約5%未満のβ−C−4エピマーまたは約3%未満のα−C−4エピマーを含む。
【0039】
本発明の方法によって作られる特定のテトラサイクリン化合物のエピマー純度は、当分野において知られている方法を用いて決定され得る。例えば、エピマー純度は、HPLCまたは高磁場NMRによって測定され得る。
【0040】
一実施態様では、本発明のアミノアルキルテトラサイクリン化合物、アミノメチルテトラサイクリン化合物またはアルキルアミノメチルミノサイクリン化合物の疎水性不純物および酸化的分解物(例えば、本発明の特定の化合物の酸性水溶液由来の4−カルボニル副生物などの遅く溶出する疎水性不純物および他の酸化的分解物)はいずれも水溶液を非極性有機溶媒(例えばCHCl)で洗浄することによって除去されてよい。有機層が廃棄され、次に水層が一緒にされ、保持されてよい。
【0041】
2. 9−アルキルアミノメチルテトラサイクリン化合物の単離および精製のための方法
別の実施態様では、本発明は、9−アルキルアミノメチルテトラサイクリン(または本方法によって精製することができる任意のテトラサイクリン化合物)を不純物、β−エピマーおよび副生物から精製する方法に関する。
【0042】
一実施態様では、本発明は、クロマトグラフィーを用いてアルキルアミノメチルミノサイクリン化合物を精製する方法に関する。この方法は、アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物が精製されるように、化合物の低pH水溶液を極性有機溶媒グラジエントのHPLC中に注入し、生成物画分を一緒にすることを含む。
【0043】
適当な酸性移動相の選択がプロセス安定性および選択性を高めることが見いだされた。pH制御または酸の選択によってエピマー不純物および接近して溶出する副生物を含む副生物を分離するのに、有機酸および無機酸移動相が有効なことがある。酸性移動相は、ミノサイクリン化合物の酸化分解に対する保護となることもある。
【0044】
さらに別の実施態様では、低pH溶液は、約2〜3の間のpHを有する。用いられてよい溶液の例は、メタンスルホン酸の0.1%水溶液を含む。特定の実施態様では、エピマーおよび接近して溶出する副生物からミノサイクリン化合物を精製するために、94%の水溶液と6%アセトニトリルまたは別の極性有機溶媒との定組成グラジエントが用いられてよい。
【0045】
得られた水性生成物画分は一緒にされてもよく、pHは塩基(例えばNaOH)を用いて約4.0〜4.5の間に調節されてよい。ミノサイクリン化合物の疎水性不純物および酸化的分解物は、水溶液を非極性有機溶媒(例えばCHCl)で洗浄することによって除去されてよい。次に有機層は廃棄されてよく、水層は一緒にされ、保持される。
【0046】
4−カルボニル副生物および他の酸化的分解物などの遅く溶出する疎水性不純物をミノサイクリン化合物の酸性水溶液から選択的に除去するために、塩化メチレンなどの有機溶媒が用いられてよいことに注意するべきである。
【0047】
一緒にされた水層のpHは、次に中性pH例えば約7.5から約8.5に調節されてよい。pHは、NaOHなどの塩基の添加によって調節されてよい。次に、中性溶液は、塩化メチレンなどの非極性有機溶媒で洗浄される。中性pH域への選択的pH調節は、ミノサイクリン化合物が有機溶媒中に抽出されることを可能にする一方で、望ましくないβ−エピマーおよび副生物を水相に溶解したまま保持することに注意するべきである。
【0048】
さらに、本明細書に記載されているミノサイクリン化合物の水溶液に酸化防止剤も加えられてよい。酸化防止剤は、ミノサイクリン化合物の酸化分解を予防するために提供されてよい。適当な酸化防止剤は、例えば、亜硫酸塩(例えばメタ重亜硫酸塩、重亜硫酸塩、アンモニウム亜硫酸塩等)、クエン酸等を含む。
【0049】
用語「アルキル」は、直鎖アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等)、分岐鎖アルキル基(例えばイソプロピル、tert−ブチル、イソブチル等)、シクロアルキル(脂環)基(例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基を含む。用語アルキルは、炭化水素主鎖の1つ以上の炭素を置換している酸素、窒素、硫黄またはリン原子をさらに含むことができるアルキル基をさらに含む。特定の実施態様では、直鎖または分岐鎖アルキルは、その主鎖中に20以下(例えば直鎖の場合C〜C20、分岐鎖の場合C〜C20)、より好ましくは4以下の炭素原子を有する。シクロアルキルは、環構造中に3〜8の炭素原子を有してよく、より好ましくは環構造中に5または6の炭素を有してよい。用語C〜Cは、1から6の炭素原子を含むアルキル基を含む。
【0050】
さらに、用語アルキルは、「非置換アルキル」と「置換アルキル」との両方を含む。後者は、炭化水素主鎖の1つ以上の炭素上の水素を置換している置換基を有するアルキル部分を指す。そのような置換基は、例えばアルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族またはヘテロ芳香族部分を含んでよい。シクロアルキルは、例えば上記に記載されている置換基でさらに置換され得る。「アルキルアリール」または「アリールアルキル」部分は、アリール(例えばフェニルメチル(ベンジル))で置換されたアルキルである。用語「アルキル」は、天然および非天然アミノ酸の側鎖も含む。
【0051】
用語「アリール」は、0から4のヘテロ原子を含んでよい5員および6員の単環芳香族基を含む基、例えばベンゼン、フェニル、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンならびに類似物を含む。さらに、用語「アリール」は、多環アリール基、例えば3環、2環、例えば、ナフタレン、ベンゾキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフスリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、またはインドリジンを含む。環構造中にヘテロ原子を有するアリール基も「アリール複素環」、「複素環」、「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」と呼ばれてよい。芳香環は、1つ以上の環位置において上記に記載されているような置換基、例えばハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アルキルアミノアカルボニル、アリールアルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族またはヘテロ芳香族部分で置換されていてよい。アリール基は、芳香族でない脂環式の環または複素環式の環と縮合するかまたは橋かけして多環化合物(例えばテトラリン)も形成してよい。
【0052】
用語「アルケニル」は、上記に記載されているアルキルと長さおよび可能な置換が類似しているが少なくとも1つの二重結合を含む不飽和脂肪族基を含む。
【0053】
例えば、用語「アルケニル」は、直鎖アルケニル基(例えばエチレニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル等)、分岐鎖アルケニル基、シクロアルケニル(脂環)基(シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキルまたはアルケニル置換シクロアルケニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルケニル基を含む。用語アルケニルは、炭化水素主鎖の1つ以上の炭素を置換している酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含むアルケニル基をさらに含む。特定の実施態様では、直鎖または分岐鎖アルケニル基は、主鎖中に20以下の炭素原子(例えば直鎖の場合C〜C20、分岐鎖の場合C〜C20)を有する。同様に、シクロアルケニル基は、環構造中に3〜8の炭素原子を有してよく、より好ましくは環構造中に5または6の炭素を有してよい。用語C〜C20は、2から20の炭素原子を含むアルケニル基を含む。
【0054】
さらに、用語アルケニルは、「非置換アルケニル」と「置換アルケニル」との両方を含む。後者は、炭化水素主鎖の1つ以上の炭素上の水素を置換している置換基を有するアルケニル部分を指す。そのような置換基は、例えばアルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族またはヘテロ芳香族部分を含んでよい。
【0055】
用語「アルキニル」は、長さおよび可能な置換が上記に記載されているアルキルに類似しているが、少なくとも1つの三重結合を含む不飽和脂肪族基を含む。
【0056】
例えば、用語「アルキニル」は、直鎖アルキニル基(例えばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル等)、分岐鎖アルキニル基およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルキニル基を含む。用語アルキニルは、炭化水素主鎖の1つ以上の炭素を置換している酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含むアルキニル基をさらに含む。特定の実施態様では、直鎖または分岐鎖アルキニル基は、主鎖中に20以下の炭素原子(例えば直鎖の場合C〜C20、分岐鎖の場合C〜C20)を有する。用語C〜Cは、2から6の炭素原子を含むアルキニル基を含む。
【0057】
さらに、用語アルキニルは、「非置換アルキニル」と「置換アルキニル」との両方を含む。後者は、炭化水素主鎖の1つ以上の炭素上の水素を置換している置換基を有するアルキニル部分を指す。そのような置換基は、例えばアルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族またはヘテロ芳香族部分を含んでよい。
【0058】
炭素の数が特に指定されていない限り、本明細書で用いられる「低級アルキル」は、上記に定義されているがその主鎖構造中に1から5の炭素原子を有するアルキル基を意味する。「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、例えば2〜5の炭素原子の鎖長を有する。
【0059】
用語「アシル」は、アシルラジカル(CHCO−)またはカルボニル基を含む化合物および部分を含む。用語「置換アシル」は、水素原子の1つ以上が、例えばアルキル基、アルケニル、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族またはヘテロ芳香族部分によって置換されているアシル基を含む。
【0060】
用語「アシルアミノ」は、アシル部分がアミノ基に結合している部分を含む。例えば、この用語は、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイド基を含む。
【0061】
用語「アルコキシ」は、共有結合によって酸素原子に結合している置換および非置換のアルキル、アルケニルおよびアルキニル基を含む。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシおよびペントキシ基を含む。置換アルコキシ基の例は、ハロゲン化アルコキシ基を含む。アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族またはヘテロ芳香族部分などの基で置換されていてよい。ハロゲン置換アルコキシ基の例は、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシ等を含むがそれらに限定されない。
【0062】
用語「アルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルキル」および「チオアルコキシアルキル」は、上記に記載され、炭化水素主鎖の1つ以上の炭素を置換している酸素、窒素または硫黄原子、例えば酸素、窒素または硫黄原子をさらに含むアルキル基を含む。
【0063】
用語「アミド」または「アミノカルボキシ」は、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合している窒素原子を含む化合物または部分を含む。この用語は「アルカミノカルボキシ」基を含む。アルカミノカルボキシ基は、カルボキシ基に結合しているアミノ基に結合しているアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を含む。この用語はアリールアミノカルボキシ基を含む。アリールアミノカルボキシ基は、カルボニルまたはチオカルボニル基の炭素に結合しているアミノ基に結合しているアリールまたはヘテロアリール部分を含む。用語「アルキルアミノカルボキシ」、「アルケニルアミノカルボキシ」、「アルキニルアミノカルボキシ」および「アリールアミノカルボキシ」は、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール部分がそれぞれ、それ自体がカルボニル基の炭素に結合している窒素原子に結合している部分を含む。
【0064】
用語「アミン」または「アミノ」は、窒素原子が少なくとも1つの炭素またはヘテロ原子に共有結合している化合物を含む。用語「アルキルアミノ」は、窒素が少なくとも1つの別のアルキル基に結合している基および化合物を含む。用語「ジアルキルアミノ」は、窒素原子が少なくとも2つの別のアルキル基に結合している基を含む。用語「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」は、窒素が少なくとも1つまたは2つのアリール基にそれぞれ結合している基を含む。用語「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」または「アリールアミノアルキル」は、少なくとも1つのアルキル基および少なくとも1つのアリール基に結合しているアミノ基を指す。用語「アルカミノアルキル」は、アルキル基にも結合している窒素原子に結合しているアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を指す。
【0065】
用語「アロイル」は、カルボニル基に結合しているアリール部分またはヘテロ芳香族部分を有する化合物および部分を含む。アロイル基の例は、フェニルカルボキシ、ナフチルカルボキシ等を含む。
【0066】
用語「カルボニル」または「カルボキシ」は、二重結合で酸素原子に結合している炭素を含む化合物および部分を含む。カルボニルを含む部分の例は、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物等を含む
用語「エステル」は、カルボニル基の炭素に結合している酸素原子に結合している炭素またはヘテロ原子を含む化合物および部分を含む。用語「エステル」は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル等などのアルコキシカルボニル基を含む。アルキル、アルケニルまたはアルキニル基は、上記に定義されているとおりである。
【0067】
用語「エーテル」は、2つの異なる炭素原子またはヘテロ原子に結合している酸素を含む化合物または部分を含む。例えば、この用語は、別のアルキル基に共有結合している酸素原子に共有結合しているアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を指す「アルコキシアルキル」を含む。
【0068】
用語「ハロゲン」は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素等を含む。一般に、用語「ペルハロゲン化」は、すべての水素がハロゲン原子によって置換されている部分を指す。
【0069】
用語「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を含む。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄およびリンである。
【0070】
用語「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、−OHまたは−Oを有する基を含む。ここでXは対イオンである。
【0071】
用語「多環式」または「多環ラジカル」は、2つ以上の炭素が2つの隣り合う環に共通である2つ以上の環(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリル)を指し、例えば、環は「縮合環」である。非隣接原子を介して連結している環は、「橋かけ」環と呼ばれる。多環化合物の環のそれぞれは、例えばハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルアミノアカルボニル、アリールアルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキル、アルキルアリール、芳香族またはヘテロ芳香族部分などの上記に記載されているような置換基で置換されていてよい。
【0072】
用語「チオカルボニル」または「チオカルボキシ」は、硫黄原子に二重結合で結合している炭素を含む化合物および部分を含む。
【0073】
用語「チオエーテル」は、2つの異なる炭素またはヘテロ原子に結合している硫黄原子を含む化合物および部分を含む。チオエーテルの例は、アルキルチオアルキル、アルキルチオアルケニルおよびアルキルチオアルキニルを含むがそれらに限定されない。用語「アルクチオアルキル」は、アルキル基に結合している硫黄原子に結合しているアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を有する化合物を含む。同様に、用語「アルクチオアルケニル」およびアルクチオアルキニル」は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基がアルキニル基に共有結合している硫黄原子に結合している化合物または部分を指す。
【0074】
用語「プロドラッグ部分」は、インビボでヒドロキシル基に代謝され得る部分およびインビボでエステル化されたまま有利に残ることがある部分を含む。好ましくは、プロドラッグ部分は、インビボでエステラーゼによってまたは他の機序によってヒドロキシル基または他の有利な基に代謝される。プロドラッグおよびプロドラッグの使用の例は、当分野で公知である(例えば、Berge et al.(1977)“Pharmaceutical Salts”,J.Pharm.Sci.66:1〜19参照)。プロドラッグは、化合物の最終的な単離および精製時にインサイチュで、または精製された化合物を別にその遊離酸形またはヒドロキシルで適当なエステル化試薬と反応させることによって調製することができる。ヒドロキシル基は、カルボン酸による処理によってエステルに変換することができる。プロドラッグ部分の例は、置換および非置換、分岐または非分岐の低級アルキルエステル部分、(例えばプロピオノン酸エステル)、低級アルケニルエステル、ジ−低級アルキル−アミノ低級アルキルエステル(例えばジメチルアミノエチルエステル)、アシルアミノ低級アルキルエステル(例えばアセチルオキシメチルエステル)、アシルオキシ低級アルキルエステル(例えばピバロイルオキシメチルエステル)、アリールエステル(フェニルエステル)、アリール−低級アルキルエステル(例えばベンジルエステル)、置換された(例えばメチル、ハロまたはメトキシ置換基で)アリールおよびアリール−低級アルキルエステル、アミド、低級アルキルアミド、ジ低級アルキルアミドおよびヒドロキシアミドを含む。好ましいプロドラッグ部分は、プロピオノン酸エステルおよびアシルエステルである。
【0075】
3. 本発明のテトラサイクリン化合物を含む医薬品組成物
さらに別の実施態様では、本発明は、本発明のテトラサイクリン化合物(例えば、本発明の方法によって合成されるかまたは精製された)またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグまたはエステルを含む医薬品組成物に関する。医薬品組成物は、薬学的に許容されるキャリアを含んでよい。
【0076】
句「薬学的に許容されるキャリア」は、当分野において認められており、本発明の化合物を哺乳類に投与するのに適している薬学的に許容される物質、組成物またはビヒクルを含む。キャリアは、主題薬剤を1つの臓器または体の一部から別の臓器または体の一部に運ぶかまたは輸送することに関与する液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料を含む。各キャリアは、製剤の他の成分と適合し、患者に有害でないという意味において「許容され」なくてはならない。薬学的に許容されるキャリアとして使われ得る物質のいくつかの例は、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロースおよびカルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのその誘導体;トラガント末;モルト;ゼラチン;タルク;カカオバターおよび坐薬ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱性物質を含まない水;等張性食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;および医薬品製剤に使用される他の非毒性適合物質を含む。
【0077】
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの濡れ剤、乳化剤および潤滑剤、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、着香料および芳香剤、防腐剤および酸化防止剤も組成物中に存在してよい。
【0078】
薬学的に許容される酸化防止剤の例は、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムおよび類似物などの水溶性酸化防止剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールおよび類似物などの油溶性酸化防止剤;およびクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸および類似物などの金属キレート剤を含む。
【0079】
本発明の製剤は、経口、鼻腔、局所、経皮、頬内、舌下、直腸、膣および/または非経口投与に適しているものを含む。製剤は、単位用量形で便利に提供されても、調剤の分野において公知の任意の方法によって提供されてもよい。一般に、キャリア材料と組み合わせて単一の用量形を作り出すことができる有効成分の量は、治療効果を作り出す化合物の量である。一般に、この量は、100パーセント中、有効成分の約1パーセントから約99%、好ましくは約5パーセントから約70パーセント、最も好ましくは約10パーセントから約30パーセントの範囲である。
【0080】
これらの製剤または組成物を調製する方法は、本発明の化合物をキャリアおよび、任意選択として1つ以上の付属成分と会合させるステップを含む。一般に、製剤は、本発明の化合物を液体キャリアまたは微細に分割された固体キャリアあるいは両方と均一におよび緊密に会合させ、次に、必要なら製品の形状を整えることによって調製される。
【0081】
経口投与に適している本発明の製剤は、それぞれが予め定められた量の本発明の化合物を有効成分として含むカプセル、カシェ剤、丸薬、錠剤、ロゼンジ(風味をつけた基材、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカンタを用いる)、粉末、顆粒あるいは水性液体または非水性液体中の溶液または懸濁液として、または水中油または油中水乳化液として、またはエリキシルまたはシロップとして、またはパステル剤(ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性基材を用いる)としておよび/またはマウスウォッシュおよび類似物としての形であってよい。ボーラス、舐剤またはペーストとして本発明の化合物が投与されてもよい。
【0082】
経口投与のための本発明の固体投与形(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣錠、粉末、顆粒および類似物)においては、有効成分は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムおよび/または以下すなわちデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸などの充填剤または増量剤;例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなどのバインダー;グリセロールなどの湿潤剤;寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;パラフィンなどの溶液緩和剤;第四アンモニウム化合物などの吸収促進剤;例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの濡れ剤;カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収材;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物などの潤滑剤;および着色剤の任意のものなどの1つ以上の薬学的に許容されるキャリアと混合される。カプセル、錠剤および丸薬の場合、医薬品組成物は、緩衝剤も含んでよい。ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールおよび類似物のような医薬品添加物を用いるソフトおよびハード充填ゼラチンカプセル中の充填材として同様な種類の固体組成物も使用してよい。
【0083】
錠剤は、任意選択として1つ以上の付属成分とともに、圧縮または成型によって作られてよい。圧縮された錠剤は、バインダー(例えばゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えばナトリウムデンプングリコラートまたは架橋されたカルボキシルメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤を用いて調製されてよい。不活性な液体希釈剤で湿らされた粉末状の化合物の混合物を適当な機械の中で成形することによって成形錠剤が作られてよい。
【0084】
本発明の医薬品組成物の錠剤、および糖衣錠、カプセル、丸薬および顆粒剤などの他の固体剤形は、任意選択として、医薬品調合分野で公知の腸溶被覆物およびその他の被覆物などの被覆物およびシェルによって仕上げまたは調製されてよい。固体剤形は、例えば、所望の放出プロフィルを提供するさまざまな比率のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他の高分子マトリックス、リポソームおよび/または微小球体を用いて、低速または制御された有効成分の内部の放出を提供するように調合されてもよい。固体剤形は、例えば、細菌保持フィルターを通すろ過によって、または使用の直前に滅菌水またはその他の無菌の注射可能な媒質中に溶解させることができる無菌の固体組成物の形の滅菌剤を組み込むことによって滅菌してよい。これらの組成物は、任意選択として乳白剤も含んでよく、任意選択として、好ましくは、胃腸管の特定の部分だけにおいて、任意選択として遅延させて有効成分(単数または複数)を放出する組成物であってよい。用いられることができる埋め込み組成物の例は、高分子物質およびワックスを含む。有効成分は、適切であるなら、上記に記載されている賦形剤の1つ以上を有するマイクロカプセル化形でもあってよい。
【0085】
本発明の化合物の経口投与のための液体用量形は、薬学的に許容される乳化液、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルを含む。液体用量形は、有効成分に加えて水、またはエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ、胚油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルならびにそれらの混合物などの当分野において一般的に用いられている他の溶媒、可溶化剤および乳化剤などの不活性希釈剤を含んでよい。
【0086】
経口組成物は、不活性希釈剤の他に濡れ剤、乳化材および懸濁剤、甘味料、着香料、着色剤、芳香剤および防腐剤などのアジュバントも含んでよい。
【0087】
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカンタならびにそれらの混合物のような懸濁剤を含んでよい。
【0088】
直腸投与または膣投与のための本発明の医薬品組成物の製剤は、坐薬として提供されてよい。坐薬は、本発明の1つ以上の化合物を、例えばカカオバター、ポリエチレングリコール、坐薬ワックスまたはサリチラートを含む、室温で固体であるが体温で液体であり、従って直腸腔または膣腔内で融解し、活性化合物を放出する1つ以上の適当な非刺激性賦形剤またはキャリアと混合することによって調製されてよい。
【0089】
膣投与に適している本発明の製剤は、当分野において適切であることが知られているようなキャリアを含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡体またはスプレー製剤も含む。
【0090】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための用量形は、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入薬を含む。活性化合物は、無菌条件下で薬学的に許容されるキャリアおよび必要とされることがある任意の防腐剤、緩衝剤または噴霧剤と混合されてよい。
【0091】
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本発明の活性化合物に加えて、動物および植物脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカンタ、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛またはそれらの混合物などの賦形剤を含んでよい。
【0092】
粉末およびスプレーは、本発明の化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、けい酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含んでよい。スプレー剤は、さらに、クロロフルオロ炭化水素などの通常の噴霧剤、ならびにブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素を含んでもよい。
【0093】
経皮パッチは、本発明の化合物の体への制御された送達を提供するまた別の利点を有する。そのような用量形は、化合物を適切な媒体中に溶解させるかまたは分散させることによって作られ得る。皮膚を通る化合物の流束を増加させるために吸収促進剤も用いられてよい。そのような流束の速度は、速度制御膜を提供するかまたは活性化合物を高分子マトリックスまたはゲル中に分散させることによって制御され得る。
【0094】
眼科製剤、眼軟膏、粉末、溶液および類似物も本発明の範囲内にあるものとみなされる。
【0095】
非経口投与に適している本発明の医薬品組成物は、使用の直前に無菌の注射可能溶液または分散液に再構成することができ、酸化防止剤、緩衝液、静菌薬、剤形を意図される被検者の血液と等張性にする溶質、あるいは懸濁剤または増粘剤を含んでよい、1つ以上の薬学的に許容される無菌等張性水または非水溶液、分散液、懸濁液または乳化液、あるいは無菌粉末と組み合わされた本発明の1つ以上の化合物を含む。
【0096】
本発明の医薬品組成物中に使用されてよい適当な水性キャリアおよび非水性キャリアの例は、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよび類似物など)、およびそれらの適当な混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルを含む。例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、適切な流動性が維持され得る。
【0097】
これらの組成物は、防腐剤、濡れ剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントも含んでよい。さまざまな抗菌性および抗真菌性の剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸および類似物などを含むことによって微生物の作用の予防が確実にされてよい。砂糖、塩化ナトリウムおよび類似物などの等張剤を組成物中に含むことも望ましいことがある。さらに、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅くさせる剤を含むことによって、注射可能剤形の長期の吸収が実現されてよい。
【0098】
場合によっては、薬物の作用を長引かせるために、皮下注射または筋肉注射からの薬物の吸収を遅くすることが望ましい。これは、水溶性の低い結晶または非晶質材料の液体懸濁物の使用によって実現されることがある。この場合、薬物の吸収速度は薬剤の溶解速度に依存し、溶解速度の方は結晶のサイズおよび結晶の形によって決まる。あるいは、薬物を油ビヒクル中に溶解させるかまたは懸濁させることによって、非経口投与された薬物形の遅くした吸収が実現されてよい。
【0099】
主題化合物のマイクロカプセルマトリックスをポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性高分子中に形成させることによって注射可能なデポー形が作られる。高分子に対する薬物の比、および使用される特定の高分子の性質によって、薬物放出の速度が制御され得る。他の生分解性高分子の例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)を含む。デポー注射剤形は、さらに、体組織と適合するリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を捕捉することによっても調製される。
【0100】
本発明の調製物は、経口、非経口、局所または直腸投与されてよい。もちろん、調製物は、各投与経路に適した形によって与えられる。例えば、調製物は、錠剤またはカプセルの形で、注射、灌流または吸入による注射、吸入、点眼剤、軟膏、坐薬等投与によって;ローションまたは軟膏による局所;坐薬による直腸投与される。経口投与が好ましい。
【0101】
本明細書で用いられる句「非経口投与」および「非経口投与される」は、通常は注射による、腸内投与および局所投与を除く投与モードを意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内および胸骨内注射および灌流を含むがそれらに限定されない。
【0102】
本明細書で用いられる句「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」および「末梢投与される」は、中枢神経系中に直接以外の、化合物、薬物または他の物質が患者の系に入り、従って代謝および他の類似のプロセスの対象となるような投与、例えば皮下投与を意味する。
【0103】
これらの化合物は、例えばスプレーによる経口、鼻腔、粉末、軟膏またはドロップによる直腸、膣内、非経口、嚢内ならびに頬内および舌下を含む局所を含む任意の適当な投与経路によって、治療のためにヒトおよび他の動物に投与されてよい。
【0104】
選ばれた投与経路に関らず、適当な水和形で用いられてよい本発明の化合物、および/または本発明の医薬品組成物は、当業者に既知の従来の方法によって薬学的に許容される用量形に製剤化される。
【0105】
本発明の医薬品組成物中の有効成分の実際の用量レベルは、患者に有毒とならずに特定の患者のための所望の治療応答、組成物および投与モードを実現するのに有効な量の有効成分を得るように変化してよい。
【0106】
選ばれた用量レベルは、使用される本発明の特定の化合物あるいはそのエステル、塩またはアミドの活性、投与の経路、投与の時間、使用される特定の化合物の排泄の速度、治療の長さ、他の薬物、使用される特定の化合物と組み合わされて用いられる化合物および/または物質、治療を受ける患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康および医療歴ならびに医療において公知の類似因子を含むさまざまな因子によって決まる。
【0107】
当分野における通常の技量を有する医師または獣医であれば、必要とされる医薬品組成物の有効な量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医は、医薬品組成物中に使用される本発明の化合物の用量を所望の治療効果を実現するために必要なものより低いレベルで開始し、所望の効果が実現されるまで用量を次第に増加させることができる。
【0108】
一般に、本発明の化合物の適当な一日投与量は、治療効果を生じるために有効な最低投与量である本化合物の量である。一般に、そのような有効な量は、上記に記載されている因子によって決まる。一般に、患者のための本発明の化合物の静脈内および皮下投与量は、示された鎮痛効果のために用いられるとき、1日あたり体重kgあたり約0.0001から約100mg、より好ましくは1日あたりkgあたり約0.01から約50mg、さらにより好ましくは1日あたりkgあたり約1.0から約100mgの範囲である。望ましければ、活性な化合物の有効な一日投与量は、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれ以上の分割投与量として1日全体にわたって適切な間隔で別々に、任意選択として単位用量形で投与されてよい。
【0109】
本発明の化合物は単独で投与されることもあり得るが、化合物を医薬品組成物として投与する方が好ましい。
【0110】
上記に示されたように、本化合物の特定の実施態様は、アミノまたはアルキルアミノなどの塩基性官能基を含んでよく、従って薬学的に許容される酸と薬学的に許容される塩を形成することができる。用語「薬学的に許容される塩」は、当分野において認められており、本発明の化合物の比較的非毒性の無機酸および有機酸の付加塩を含む。これらの塩は、本発明の化合物の最終的な単離および精製時に、あるいはその遊離塩基形にある精製された本発明の化合物を適当な有機酸または無機酸と別に反応させ、こうして形成された塩を単離することによってインサイチュで調製され得る。代表的な塩は、臭化水素塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩およびラウリルスルホン酸塩ならびに類似物を含む。(Berge et al.(1977)“Pharmaceutical Salts”,J Farm.SCI.66:1〜19参照)。
【0111】
他の場合には、本発明の化合物は、1つ以上の酸性官能基を含んでよく、従って、薬学的に許容される塩基と薬学的に許容される塩を形成することができる。これらの実例における用語「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物の比較的非毒性の無機塩基および有機塩基付加塩を含む。同様に、これらの塩は、化合物の最終的な単離および精製時に、またはその遊離酸の形にある精製された化合物を薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩などの適当な塩基と、アンモニアと、または薬学的に許容される有機第一、第二または第三アミンと別に反応させることによってインサイチュで調製され得る。代表的なアルカリまたはアルカリ土類塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウム塩ならびに類似物を含む。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンは、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンおよび類似物を含む。
【0112】
用語「薬学的に許容されるエステル」は、本発明の化合物の比較的非毒性のエステル化生成物を指す。これらのエステルは、化合物の最終的な単離および精製時に、またはその遊離酸またはヒドロキシルの形にある精製された化合物を適当なエステル化剤と別に反応させることによってインサイチュで調製され得る。カルボン酸は、触媒存在下のアルコールでの処理によってエステルに変換され得る。ヒドロキシルは、アルカノイルハロゲン化物などのエステル化剤での処理によってエステルに変換され得る。この用語は、生理条件下で溶媒和することができる低級炭化水素基、例えばアルキルエステル、メチル、エチルおよびプロピルエステルも含む。(例えば上記Berge et al.参照)。
【0113】
本発明は、本発明の方法によって合成され、および/または精製されたテトラサイクリン化合物、およびその薬学的に許容される塩にも関する。
【0114】
4. 本発明のテトラサイクリン化合物を用いる方法
本発明は、対象におけるテトラサイクリン応答性状態を、本発明の方法によって合成され、および/または精製されたテトラサイクリン化合物あるいは薬学的に許容されるその塩の有効な量を、該状態が治療されるように対象に投与することによって治療するための方法に関する。
【0115】
用語「治療する」は、状態、疾患または障害、例えばテトラサイクリン化合物応答性状態の少なくとも1つの症状を回復させることならびに改善させることを含む。
【0116】
言葉「テトラサイクリン化合物応答性状態」または、「テトラサイクリン応答性状態」は、本発明のテトラサイクリン化合物の投与によって治療され、予防され、または他の様相で改善され得る状態を含む。テトラサイクリン化合物応答性状態は、細菌、ウィルス、および真菌感染(他のテトラサイクリン化合物に抵抗性のものを含む)、癌(例えば、前立腺、乳房、結腸、肺のメラノーマおよびリンパ癌、ならびに米国特許第6,100,248号明細書に記載されているものを含むがそれらに限定されない望ましくない細胞増殖を特徴とする他の障害)、関節炎、骨粗鬆症、糖尿病、およびテトラサイクリン化合物が活性であることが見いだされた他の状態(例えば参照によって本明細書に明示的に組み込まれる米国特許第5,789,395号、第5,834,450号、第6,277,061号および第5,532,227号の明細書参照)を含む。本発明の化合物は、下痢、尿路感染症、皮膚および皮膚構造の感染症、耳、鼻および咽喉感染症、創傷感染症、乳房炎および類似症などの重要な哺乳類および獣医学的疾患を予防するかまたは抑えるために用いられ得る。さらに、本発明のテトラサイクリン化合物を用いて新生物を治療するための方法も含まれる(van der Bozert et al.,Cancer Res.,48:6686〜6690(1988))。さらに別の実施態様では、テトラサイクリン応答性状態は、細菌性感染症ではない。別の実施態様では、本発明のテトラサイクリン化合物は、基本的に非抗菌性である。例えば、本発明の非抗菌性のテトラサイクリン化合物は、約4μg/mlより大きなMIC値(当分野において既知アッセイおよび/または実施例2に示されるアッセイによって測定されたとき)を有してよい。
【0117】
テトラサイクリン化合物応答性状態は、炎症過程関連状態(IPAS)も含む。用語「炎症過程関連状態」は、炎症または炎症因子(例えばマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、一酸化窒素(NO)、TNF、インターロイキン、血漿タンパク質、細胞防衛システム、サイトカイン、脂質代謝産物、プロテアーゼ、有毒ラジカル、接着分子等)が含まれるかまたはある区域に異常な量、例えば、有利なことがある、例えば、対象に有利になるように変化する量が存在する状態を含む。炎症過程は、損傷に対する生組織の応答である。炎症の原因は、物理的損傷、化学物質、微生物、組織壊死、癌または他の剤に起因することがある。急性炎症は短期持続性であり、数日しか続かない。しかし、それが長期持続性であるなら、慢性炎症と呼ばれることがある。
【0118】
IPAFは、炎症性障害を含む。一般に、炎症性障害は、熱、赤らみ、腫れ、痛みおよび機能の低下を特徴とする。炎症性障害の原因の例は、微生物感染(例えば細菌感染および真菌感染)、物理因子(例えば火傷、放射線および外傷)、化学剤(例えば毒素および苛性物質)、組織壊死およびさまざまな種類の免疫反応を含むがそれらに限定されない。
【0119】
炎症性障害の例は、骨関節炎、リウマチ性関節炎、急性および慢性感染症(ジフテリアおよび百日咳を含む細菌性および真菌性);急性および慢性気管支炎、副鼻腔炎、および普通の風邪を含む上気道感染;急性および慢性胃腸炎および結腸炎;急性および慢性膀胱炎および尿道炎;急性および慢性皮膚炎;急性および慢性結膜炎;急性および慢性漿膜炎(心膜炎、腹膜炎、滑膜炎、胸膜炎および腱炎);尿毒症性心膜炎;急性および慢性胆嚢炎;急性および慢性腟炎;急性および慢性ブドウ膜炎;薬物反応;虫刺症;火傷(熱、化学および電気);および日焼けを含むがそれらに限定されない。
【0120】
テトラサイクリン化合物応答性状態はNO関連状態も含む。用語「NO関連状態」は、一酸化窒素(NO)または誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)を含むかまたは関連している状態を含む。NO関連状態は、異常な量のNOおよび/またはiNOSを特徴とする状態を含む。好ましくは、NO関連状態は、本発明のテトラサイクリン化合物を投与することによって治療され得る。米国特許第6,231,894号、第6,015,804号、第5,919,774号および第5,789,395号の明細書に記載されている障害、疾患および状態もNO関連状態として含まれる。これらの特許のそれぞれの内容全体は、ここで参照によって本明細書に組み込まれる。
【0121】
NO関連状態の他の例は、マラリア、老化、糖尿病、血管卒中、神経変性障害(アルツハイマー病およびハンチントン病)、心臓病(梗塞後の再潅流関連傷害)、若年型糖尿病、炎症性障害、骨関節症、リウマチ性関節炎、急性、反復性および慢性感染症(細菌性、ウィルス性および真菌性);急性および慢性気管支炎、副鼻腔炎および普通の風邪を含む呼吸感染症;急性および慢性胃腸炎および結腸炎;急性および慢性膀胱炎および尿道炎;急性および慢性皮膚炎;急性および慢性結膜炎;急性および慢性漿膜炎(心膜炎、腹膜炎、滑膜炎、胸膜炎および腱炎);尿毒症性心膜炎;急性および慢性胆嚢炎;嚢胞性線維症、急性および慢性腟炎;急性および慢性ブドウ膜炎;薬物反応;虫刺症;火傷(熱、化学および電気);および日焼けを含むがそれらに限定されない。
【0122】
一実施態様では、用語「炎症過程関連状態」は、マトリックスメタロプロテイナーゼ関連状態(MMPAS)を含む。MMPASは、異常な量のMMPまたはMMP活性を特徴とする状態を含む。これらも、本発明の化合物を用いて治療されてよいテトラサイクリン化合物応答性状態として含まれる。
【0123】
マトリックスプロテイナーゼ関連状態(「MMPAS」)の例は、動脈硬化症、角膜潰瘍、気腫、骨関節症、多発性硬化症(Liedtke et al.,Ann Neurol.1998,44:35〜46、Chandler et al.,J.Neuroimmunol.1997,72:155〜71)、骨肉腫、骨髄炎、気管支拡張症、慢性肺閉塞性疾患、皮膚病および眼病、歯周炎、骨粗鬆症、リウマチ性関節炎、潰瘍性結腸炎、炎症性障害、腫瘍成長および侵襲(Stetler−Stevenson et al.,Annu.Rev.Cell Biol.1993,9:541〜73、Tryggvason et al.,Biochim.Biophys.Acta 1987,907:191〜217、Li et al.,Mol.Carcinog.1998,22:84〜89))、転移、急性肺傷害、卒中、虚血、糖尿病、大動脈または血管動脈瘤、皮膜組織傷口、ドライアイ、骨および軟骨劣化(Greenwald et al.,Bone 1998,22:33−38、Ryan et al.,Cur.Op.Rheumatol.1996,8;238−247)を含むがそれらに限定されない。他のMMPASは、参照によって本明細書に全体として組み込まれる米国特許第5,459,135号、第5,321,017号、第5,308,839号、第5,258,371号、第4,935,412号、第4,704,383号、第4,666,897号および米国再発行特許第34,656号の明細書に記載されているものを含む。
【0124】
別の実施態様では、テトラサイクリン化合物応答性状態は、癌である。本発明のテトラサイクリン化合物が治療するのに有用なことがある癌の例は、すべての固形腫瘍、すなわち癌腫例えば腺癌および肉腫を含む。腺癌は、腺組織から誘導されるかまたは内部で腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成する癌腫である。広義には、肉腫は、細胞が原線維または胚結合組織のような均一な物質の中に埋め込まれる腫瘍を含む。本発明の方法を用いて治療されることがある癌腫の例は、前立腺、乳房、卵巣、精巣、肺、結腸および乳腺の癌腫を含むがそれらに限定されない。本発明の方法は、これらの腫瘍型の治療に限定されず、任意の器官系から誘導される任意の固形腫瘍に拡大される。治療可能な癌の例は、大腸癌、膀胱癌、乳癌、メラノーマ、卵巣悪性腫瘍、前立腺癌、肺癌およびさまざまな他の癌も含むがそれらに限定されない。本発明の方法は、例えば前立腺、乳房、腎臓、卵巣、睾丸および結腸の腺癌などの腺癌における癌成長の阻害も引き起こす。
【0125】
実施態様によっては、本発明のテトラサイクリン応答性状態は、癌である。本発明は、癌を病んでいるかまたは病む危険がある対象を、癌細胞成長の抑制が起こる、すなわち細胞増殖、侵襲、転移または腫瘍発生が減少し、遅くなるかまたは停止するように、置換テトラサイクリン化合物の有効な量を投与することによって、治療するための方法に関する。抑制は、炎症過程の阻害、炎症過程の下方調節、なんらかの他の機構、または機構の組み合わせの結果として生じてよい。あるいは、テトラサイクリン化合物は、例えば、外科的切除または放射線療法の後の残留癌を治療するために癌再発を予防するために有用であってよい。本発明によって有用なテトラサイクリン化合物は、他の癌治療法と比較すると実質的に毒性がないので特に有利である。さらに別の実施態様では、本発明の化合物は、化学療法などであるがそれに限定されない標準的な癌治療と組み合わされて投与される。
【0126】
テトラサイクリン応答性状態の例は、アルツハイマー病、アルツハイマー病に関連した痴呆症(ピック病など)、パーキンソン病および他のレビー拡散小体病、老人性痴呆、ハンチントン病、ジルドラトゥレット症候群、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性核上性麻痺、てんかん症、およびクロイツフェルトヤコブ病;高血圧および睡眠障害などの自律的機能の障害、およびうつ病、精神分裂症、分裂情動障害、コルサコフ精神病、躁病、不安障害、または恐怖症などの神経精神病学的障害;学習障害または記憶障害、例えば記憶喪失症または加齢記憶喪失、注意欠陥障害、気分変調性障害、大うつ病性障害、躁病、強迫性障害、精神活性物質使用障害、不安症、恐怖症、恐慌障害、ならびに双極性感情障害、例えば、重症双極性の情動性(気分)障害(BP−1)、双極性情動性神経障害、例えば偏頭痛および肥満症などの精神神経障害と神経変性障害との両方を含む神経疾患も含むがそれらに限定されない。さらに、神経障害は、例えばthe American Psychiatric Association’s Diagnostic and Statistical manual of Mental Disorders(DSM)に挙げられているものを含み、参照によってDSMの最新版が全体として本明細書に組み込まれる。
【0127】
別の治療薬剤または治療「と組み合わされた」という言葉は、テトラサイクリン化合物(例えば阻害剤)の他の治療薬剤または治療との同時投与、テトラサイクリン化合物の投与が最初で続いて他の治療薬剤または治療、および他の治療薬剤の投与または治療が最初で続いてテトラサイクリン化合物を含む。他の治療薬剤は、IPASを治療し、予防し、または症状を軽減することが当分野において知られている任意の薬剤であってよい。さらに、他の治療薬剤は、テトラサイクリン化合物の投与と組み合わされて投与されるとき患者に有用である任意の剤であってよい。一実施態様では、本発明の方法によって治療される癌は、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,100,248号、第5,843,925号、第5,837,696号または第5,668,122号明細書に記載されているものを含む。
【0128】
別の実施態様では、テトラサイクリン化合物応答性状態は、糖尿病、例えば若年性糖尿病、真性糖尿病、I型糖尿病またはII型糖尿病である。さらに別の実施態様では、蛋白質糖鎖形成は、本発明のテトラサイクリン化合物の投与の影響を受けない。別の実施態様では、本発明のテトラサイクリン化合物は、インシュリン治療などであるがそれらに限定されない標準的な糖尿病治療と組み合わされて投与される。さらに別の実施態様では、IPASは、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第5,929,055号および第5,532,227号明細書に記載されている障害を含む。
【0129】
別の実施態様では、テトラサイクリン化合物応答性状態は、骨量障害である。骨量障害は、対象の骨が、骨の形成、修復または再構築が有利である、障害および状態である障害を含む。例えば、骨量障害は、骨粗鬆症(例えば骨強度および密度の減少)、骨折、手術手技(例えば顔面再構成)と関連する骨形成、骨形成不全症(脆性骨疾患)、低フォスファターゼ血症、ページェット病、線維性異形成症、大理石骨病、骨髄腫骨疾患、および原発性上皮小体亢進症に関連するものなどの骨中カルシウム欠乏症を含む。骨量障害は、骨の形成、修復または再構築が対象にとって有利であるすべての状態、ならびに本発明のテトラサイクリン化合物で治療され得る対象の骨または骨格系と関連するすべての他の障害を含む。さらに別の実施態様では、骨量障害は、ここでそれぞれが参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第5,459,135号、第5,231,017号、第5,998,390号、第5,770,588号、米国再発行特許第34,656号、第5,308,839号、第4,925,833号、第3,304,227号および第4,666,897号明細書に記載されているものを含む。
【0130】
別の実施態様では、テトラサイクリン化合物応答性状態は、急性肺損傷である。急性肺損傷は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、ポストポンプ症候群(PPS)および外傷を含む。外傷は、外因性薬剤または事象によって引き起こされる生組織へのあらゆる損傷を含む。外傷の例は、挫滅外傷、硬い表面との接触、または肺への切り傷または他の損傷を含むがそれらに限定されない。
【0131】
本発明は、本発明の置換テトラサイクリン化合物を投与することによって急性肺損傷を治療するための方法にも関する。
【0132】
本発明のテトラサイクリン応答性状態は、慢性肺障害も含む。本発明は、本明細書に記載されているものなどのテトラサイクリン化合物を投与することによって慢性肺障害を治療するための方法に関する。この方法は、慢性肺障害が治療されるように有効な量の置換テトラサイクリン化合物を対象に投与することを含む。慢性肺障害の例は、喘息、嚢胞性線維症および気腫を含むがそれらに限定されない。さらに別の実施態様では、本発明のテトラサイクリン化合物は、ここでそれぞれが参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第5,977,091号、第6,043,231号、第5,523,297号および第5,773,430号明細書に記載されているものなどの急性および/または慢性肺障害を治療するために用いられる。
【0133】
さらに別の実施態様では、テトラサイクリン化合物応答性状態は、虚血、卒中または虚血性発作である。本発明は、有効な量の本発明の置換テトラサイクリン化合物を投与することによって虚血、卒中または虚血性発作を治療するための方法にも関する。さらに別の実施態様では、本発明のテトラサイクリン化合物は、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,231,894号、第5,773,430号、第5,919,775号または第5,789,395号明細書に記載されているような障害を治療するために用いられる。
【0134】
別の実施態様では、テトラサイクリン化合物応答性状態は、皮膚創傷である。本発明は、少なくとも部分的に、急性外傷(例えば切り傷、火傷、すり傷、等)に対する上皮化組織(例えば皮膚、粘膜)の治癒反応を改善するための方法にも関する。この方法は、急性創傷を治癒させる上皮化組織の能力を改善するために本発明のテトラサイクリン化合物(抗菌性を有しても有しなくてもよい)を用いることを含んでもよい。この方法は、治癒中の組織のコラーゲン蓄積の速度を増加させてよい。この方法は、MMPのコラーゲン分解活性および/またはゼラチン分解活性を減少させることによって、上皮化組織の中のタンパク質分解活性を減少させてもよい。さらに別の実施態様では、本発明のテトラサイクリン化合物は、皮膚の表面に投与(例えば局所)される。さらに別の実施態様では、本発明のテトラサイクリン化合物は、皮膚創傷および、例えば、それぞれが参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第5,827,840号、第4,704,383号、第4,935,412号、第5,258,371号、第5,308,839号、第5,459,135号、第5,532,227号および第6,015,804号明細書に記載されているような他の障害を治療するために用いられる。
【0135】
さらに別の実施態様では、テトラサイクリン化合物応答性状態は、対象(例えば大動脈瘤または血管動脈瘤を有するかまたはその危険性を有する対象等)の血管組織中の大動脈瘤または血管動脈瘤である。テトラサイクリン化合物は、血管動脈瘤のサイズを低下させるのに有効なことがあり、あるいは血管動脈瘤の始まりの前に動脈瘤が予防されるように対象に投与されてよい。一実施態様では、血管組織は、動脈、例えば大動脈、例えば腹部大動脈である。さらに別の実施態様では、本発明のテトラサイクリン化合物は、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,043,225号および第5,834,449号明細書に記載されている障害を治療するために用いられる。
【0136】
多種多様なグラム陽性菌およびグラム陰性菌によって細菌性感染が引き起こされ得る。本発明の化合物は、他のテトラサイクリン化合物に対して抵抗性である生物に対する抗生物質として有用である。本発明のテトラサイクリン化合物の抗生物質活性は、Waitz,J.A.,National Commission for Clinical Laboratory Standards,Document M7−A2,vol.10,no.8,pp.13〜20,2nd edition,Villanova,PA(1990)に記載されているインビトロ標準ブロス希釈法を用いて求められてよい。
【0137】
テトラサイクリン化合物は、例えばリケッチア;いくつかのグラム陽性およびグラム陰性細菌;ならびに性病性リンパ肉芽腫、封入体結膜炎、オウム病の原因となる物質など、テトラサイクリン化合物で従来から治療されている感染症を治療するためにも用いられてよい。テトラサイクリン化合物は、例えば、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、サルモネラ菌,腸内連鎖球菌(E.hirae)、日和見感染病原体(A.baumanii)、カタル球菌(B.catarrhalis)、インフルエンザ菌(H.influenzae)、緑膿菌(P.aeruginosa)、発酵乳酸球菌(E.faecium)、大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)または糞便連鎖球菌(E.faecalis)の感染症を治療するために用いられてよい。一実施態様では、テトラサイクリン化合物は、他のテトラサイクリン抗生物質化合物に対して抵抗性である細菌感染症を治療するために用いられる。本発明のテトラサイクリン化合物は、薬学的に許容されるキャリアとともに投与されてよい。
【0138】
化合物の「有効な量」という言葉は、テトラサイクリン化合物応答性状態を治療するかまたは予防するのに必要なまたは十分な量である。有効な量は、対象の大きさおよび体重、疾患の種類、または特定のテトラサイクリン化合物のような因子に依存して変化してよい。例えば、テトラサイクリン化合物の選択は、「有効な量」を構成するものに影響を及ぼし得る。当業者は、前述の因子を研究し、余計な実験をすることなくテトラサイクリン化合物の有効な量に関して決定をすることができるであろう。
【0139】
本発明の治療方法においては、本発明の1つ以上のテトラサイクリン化合物が対象に単独で投与されてよく、またはより一般的には通常の賦形剤、すなわち非経口、経口または他の所望の投与に適し、活性化合物と悪影響のある反応をせず、その受入れ側に有害でない薬学的に許容される有機または無機のキャリア物質と混合され、医薬品組成物の一部として本発明の化合物が投与される。
【0140】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、実施例はさらに限定すると解釈されるべきでない。
【実施例】
【0141】
(実施例1)
本発明の実施例
9−アルキルアミノメチルミノサイクリンの合成
【0142】
【化10】

塩酸ミノサイクリン(化合物2)がメチルスルホン酸無水物を有するメチルスルホン酸中に溶解された。反応混合物にN−ヒドロキシメチルフタルイミドが加えられた。混合物は、反応が完了するまで20〜35℃で撹拌された。酸溶液は氷/水混合液に加えられ、トリフルオロメタンスルホン酸塩が直ちに沈殿し、ろ過され、集められた。塩はアセトン中に再溶解され、塩基で中性pHにされた。水の添加によって生成物は沈殿した。生成物はビスおよびトリスアルキル化生成物の混合物として単離された。この反応の単離された物質は、所望のビス比(90%)に濃縮された。
【0143】
固体は、EtOH中に懸濁された。メチルアミンを用いることによってアミノ分解が実行された。反応が進むにつれてフタルアミド副生物が沈殿し、ろ過によって除去された。淡黄色の固体生成物は、反応混合物への約1.5体積のt−ブチルメチルエーテルの添加によって沈殿させられ、多くの少量の不純物およびメチルアミン試薬を溶液中に残した簡単なろ過によって集められた。化合物のさらなる精製は、メタノールによる再スラリー化によって実行された。
【0144】
遊離塩基としての化合物4は、メタノールおよびアルデヒドを入れた水素化容器へ移された。不活性化Pd/C触媒が入れられ、容器は水素ガスで加圧された。反応混合物は、約30Psiの水素圧力下で約24時間水素化された。化合物4の1への変換が完了したとき、溶液はセライトの層を通してろ過され、洗浄された。この時点で、反応混合物は、約3〜7%の非常に低いC−4 βエピマーを含んでいた。
【0145】
生成物(1)は後処理され、不純物から選択的に単離された。溶液のpHは濃HClで約4.5に調節され、溶液はジクロロメタンで洗浄された。水層に亜硫酸塩が加えられ、生成物は約7から8のpHにおいてジクロロメタンで抽出され、好ましいエピマー生成物(例えばα)を選択的に回収した。ジクロロメタン層は一緒にされ、濃縮され、生成物を沈殿させるために2Lのn−ヘプタンが加えられた。粗生成物を溶解するためにt−ブチルメチルエーテルを用いてまたは用いないで、この後処理手順を繰り返すことによって、さらなる精製が得られた。
【0146】
(実施例2)
9−アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物の単離および精製
粗製9−(2’,2’−ジメチルプロピルアミノメチル)ミノサイクリン遊離塩基(40g)が150mLの緩衝液A(メタンスルホン酸MSAの0.1%水溶液)に溶解され、pHはMSAで2〜3に調節された。
【0147】
溶液はろ過され、HPLCに注入され、生成物は94%の緩衝液Aと6%のアセトニトリルとの定組成グラジエントで溶出させられた。生成物ピークが検出されたとき、生成物画分回収が開始された。各画分が分析され、主なピークの80%AUCより大きな合格基準が早期生成物画分に用いられた。画分を一緒にするとき、不純物のレベルと集められた画分の相対濃度とが最終生成物仕様を満たす選択基準の要因とされた。集められた画分の元の体積の10%に等しい亜硫酸ナトリウムの10%水溶液が生成物画分に加えられた。
【0148】
3.5リットルの体積の生成物画分(亜硫酸ナトリウムを含む)が集められ、pHは水酸化ナトリウムの溶液を用いて4.0〜4.5に調節された。水溶液は2リットルのジクロロメタンで洗浄され、有機層は分離され、廃棄された。
【0149】
水層のpHは水酸化ナトリウムを用いて7.5〜8.5に調節され、生成物は2.4リットルのジクロロメタンで4回抽出された。各抽出前に、pHは水酸化ナトリウムで7.5から8.5に再調整された。
【0150】
4つのジクロロメタン層は一緒にされ、約200mlに濃縮され、次に、激しく撹拌されているn−ヘプタン(2.5L)にゆっくり(約10分間かけて)加えられた。懸濁液は、室温で約10分間撹拌され、n−ヘプタン1.5Lでゆっくり(5分間かけて)希釈された。スラリーは0〜5℃に冷却され、1〜2時間撹拌された。懸濁された固体はろ過され、小分けした3×150mLのnーヘプタンで洗浄された。生成物は、真空下40℃で恒量が実現され、すべての残留溶媒のレベルが仕様内になるまで少なくとも24時間乾燥された。約13.6gの9−(2’,2’−ジメチルプロピルアミノメチル)ミノサイクリン遊離塩基が黄色の固体として単離された。
【0151】
同様の方法で規格落ち画分が単離され、1.64gが得られた。
【0152】
均等物
当業者は、本明細書に記載されている特定の実施態様および方法への多くの均等物を認識し、または日常的な程度の実験を用いて確認することができる。そのような均等物は、以下の請求項の範囲によって包含されるものとされる。
【0153】
すべての特許、特許出願および参考文献は、ここで参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化11B】

アミノメチルテトラサイクリン化合物を合成するための方法であって、該方法は:
第1の適切な条件下、水捕捉剤および酸の存在下でテトラサイクリン化合物をN−ヒドロキシメチル−フタルイミドと接触させ、第1のアミノメチルテトラサイクリン中間体を形成すること
第2の適切な条件下で該第1のアミノメチルテトラサイクリン中間体をメチルアミンで処理し、第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体を形成すること、ならびに
適切な水素化条件下で該第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体を処理し、該アミノメチルテトラサイクリン化合物を形成すること
を含み、
ここで、該N−ヒドロキシメチルフタルイミドは、下式:
【化12B】

であり、式中、
およびRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、ハロゲン、アルケニル、アルキニル、アリール、シアノ、アミノ、アミジノ、アルコキシまたはアシルであり
は、アルキルであり、そしてRは、水素またはアルキルである、
方法。
【請求項2】
が、水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が、(CHCCH−である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記置換アミノメチルテトラサイクリン化合物が、
【化13B】

である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の適切な条件は、20〜35℃の反応温度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水捕捉剤は、酸塩化物または酸無水物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酸無水物は、メチルスルホン酸無水物である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸は、トリフルオロメタンスルホン酸またはメタンスルホン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のアミノメチルテトラサイクリン中間体は、10%を超えてトリスアルキル化されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のアミノメチルテトラサイクリン中間体は、アセトン中に溶解されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の適切な条件は、アルキルアルコールおよびアルキルエーテルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の適切な条件は、不活性雰囲気を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体の塩酸塩を形成することによって、該第2のアミノメチルテトラサイクリン中間体を精製することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記塩酸塩は、アルキルアルコール中で形成された後、アルキルエーテルによって沈殿させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記適切な水素化条件は、Pd/CまたはPd/C/S触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記適切な水素化条件は、メタノールおよびアルデヒドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記適切な水素化条件は、水素気体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
第3の適切な条件下で前記アミノメチルテトラサイクリン化合物をアルデヒドまたはケトンと接触させて、置換アミノメチルテトラサイクリン化合物を形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記第3の適切な条件は、Pd/CまたはPd/C/S触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第3の適切な条件は、メタノールおよびアルデヒドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第3の適切な条件は、水素気体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記置換アミノメチルテトラサイクリン化合物は、過剰に水素化された不純物を実質的に含まないで形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記置換アミノメチルテトラサイクリン化合物は、10%未満のβ異性体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記置換アミノメチルテトラサイクリン化合物は、約5%未満のβ異性体を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物を精製する方法であって、該方法は:
a)該アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物の低pH水溶液を極性有機溶媒グラジエントの液体クロマトグラフィー装置中に注入し、生成物画分を一緒にする工程、
b)該生成物画分のpHを4.0〜4.5に調節する工程、
c)該生成物画分を第1の非極性有機溶媒で洗浄し、第1の有機層および第1の水層を形成し、そして該第1の有機層を廃棄する工程、
d)該第1の水層のpHを7.5〜8.5に調節する工程、ならびに
e)該アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物が精製されるように、該第1の水層を第2の非極性有機溶媒で洗浄し、第2の有機層および第2の水層を形成し、そして該第2の水層を廃棄する工程、
を含み、
ここで、該アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物が、下式:
【化14B】

であり、式中、
は、アルキルであり、そしてRは、水素またはアルキルである、
方法。
【請求項26】
が、水素である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
が、(CHCCH−である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物が、
【化15B】

である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記低pH水溶液は、2〜3のpHを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項30】
前記低pH水溶液は、メチルスルホン酸を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項31】
前記極性有機溶媒は、アセトニトリルである、請求項2に記載の方法。
【請求項32】
工程b)または工程d)における前記phは、塩基で調節される、請求項2に記載の方法。
【請求項33】
前記塩基が、金属の水酸化物、金属の炭酸塩、金属の炭酸水素塩、アンモニア、有機第一アミン、有機第二アミンおよび有機第三アミンからなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムからなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記塩基が、水酸化ナトリウムまたはアンモニアである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の非極性有機溶媒は、塩化メチレンである、請求項2に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の有機層は、前記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物の副生物、疎水性不純物および酸化的分解物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項38】
前記第2の非極性有機溶媒は、塩化メチレンである、請求項2に記載の方法。
【請求項39】
前記第2の水層は、前記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物の副生物およびβエピマーを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項40】
工程a)の前記水溶液に酸化防止剤が加えられる、請求項2に記載の方法。
【請求項41】
前記酸化防止剤は、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸塩またはメタ重亜硫酸塩である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
疎水性不純物および酸化的分解物が、前記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物から除去される、請求項2に記載の方法。
【請求項43】
副生物およびβ−C−4エピマーが、前記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物から除去される、請求項2に記載の方法。
【請求項44】
前記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物が、本質的に疎水性不純物および酸化的分解物を含まない、請求項2に記載の方法。
【請求項45】
前記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物が、本質的に副生物、β−C−4エピマー、疎水性不純物および酸化的分解物を含まない、請求項2に記載の方法。
【請求項46】
前記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物が、少なくとも50%のα−C−4エピマーを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項47】
前記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物が、少なくとも95%のα−C−4エピマーを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項48】
前記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物が、少なくとも99.9%のα−C−4エピマーを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項49】
前記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物が、7%未満のβ−C−4エピマーを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項50】
前記アルキルアミノメチルミノサイクリン化合物が、3%未満のβ−C−4エピマーを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項51】
請求項1に記載の方法によって合成されたかまたは請求項2に記載の方法によって精製されたアルキルアミノメチルミノサイクリン化合物および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬品組成物。

【公開番号】特開2010−138182(P2010−138182A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35276(P2010−35276)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【分割の表示】特願2010−506291(P2010−506291)の分割
【原出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(500127209)パラテック ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (50)
【Fターム(参考)】