アミノベンゼン組成物ならびに関連する素子および方法
アリールアミン部分およびフッ素化アルキレンオキシ部分を含む主鎖を含む、架橋されていてもよいオリゴマーおよび/またはポリマーを開示する。オリゴマーもしくはポリマーまたは対応するモノマーより、インク調合物および素子を形成することができる。ドープ組成物を形成することができる。電荷注入層および電荷輸送層を形成することができる。OLEDおよびOPVなどの有機電子素子において安定性の改善を実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2008年11月18日出願の米国仮出願第61/115,877号の優先権を主張し、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
例えば有機発光ダイオード(OLED)などの有機発光素子および有機光起電力素子(OPV)などの光起電力素子などの種々の電子素子の性能を改善する必要性が存在する。この必要性を満たす1つの方法は、素子出力を強化しかつ素子寿命を延長する、これらの素子用の新規材料の開発を通じてのものである。特に有望なアプローチは、正孔注入層、正孔輸送層および正孔抽出層などの素子層用の新規材料の開発にある。
【0003】
特に、これらの素子における正孔注入および/または正孔輸送用の技術の改善が望ましい。一般に、最先端の有機電子素子は、素子を通じる電荷の流れならびに電子および正孔の分離または再結合を最適化する、素子内の正孔注入層(HIL)および/または正孔輸送層(HTL)の利点を依然として享受し得る。しかし、正孔注入層および正孔輸送層は、加工用溶媒中の成分材料の溶解性(またはその欠如)が理由で、かつHIL性能に必要なドーパントおよび/または酸が理由で、困難な問題を示すことがある。ドーパントおよび酸は、素子動作(例えば効率および劣化)へのそれらの関与を最小化するように、公正に選択すべきである。
【0004】
さらに、素子動作に対する有害な影響を最小化するために、例えば非水性および/または非プロトン性の高純度溶媒などの選択される溶媒から正孔注入層成分および/または正孔輸送層成分を加工可能にする必要性が存在することが認識される。さらに、気相プロセスまたは溶液プロセスによる後続層の堆積に対して適合性がある層を開発する必要性も存在する。
【発明の概要】
【0005】
概要
例えば正孔輸送層(HTL)または正孔注入層(HIL)に使用される組成物、ならびに該組成物を作製する方法および該組成物より製作される素子が提供される。
【0006】
組成物は、少なくとも1つの半導電性有機材料および任意的なドーパントを含み得るものであり、絶縁性マトリックス成分を実質的に含まないかまたは全く含まないことがある。組成物は、OLEDまたはOPVなどの電子素子に組み入れられる際に素子の性能の増加を導き得る、改善されたHILおよびHTLを例えば生成することができる。
【0007】
一態様は、少なくとも1つのアリールアミンを含む少なくとも1つの繰り返し部分と、少なくとも1つのフッ素化アルキレンオキシを含む少なくとも1つの繰り返し部分とを含む、ポリマー主鎖またはオリゴマー主鎖を含む、組成物を提供する。一態様では、アリールアミンを含む繰り返し部分とフッ素化アルキレンオキシを含む繰り返し部分とは、交互に現れる部分である。一態様では、アリールアミンはトリアリールアミンを含む。一態様では、アリールアミン部分は少なくとも2個の窒素原子を含む。一態様では、フッ素化アルキレンオキシはC1〜C10アルキレンエーテルを含む。一態様では、フッ素化アルキレンオキシはフッ素化C1〜C10ビニルエーテルを含む。一態様では、フッ素化アルキレンオキシはトリフルオロアルキレンオキシ部分を含む。一態様では、組成物は、アリールアミンおよびフッ素化アルキレンオキシを含む可溶性の線状ポリマーを含む。一態様では、組成物は架橋されている。
【0008】
別の態様は、以下で表される繰り返し単位を含むオリゴマーまたはポリマーを提供する:
式中、Ar1はアリールアミンを含み、Ar2はアリールを含み、R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキレンより独立して選択される。一態様では、繰り返し単位(I)および(II)は交互に現れる。一態様では、Ar1は以下で表される:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、kは1〜4の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数である。一態様では、Ar1は以下で表される。
一態様では、Ar2は以下で表される:
式中、zは1〜5の整数である。一態様では、Ar2は以下で表される:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、kは1〜4の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数である。一態様では、Ar2は以下で表される:
式中、R3はフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルであり、Zは1〜5の整数である。一態様では、Ar2は以下で表される。
一態様では、R1およびR2はフルオロアルキルより独立して選択される。一態様では、R1およびR2はトリフルオロエチルであり、オリゴマーまたはポリマーは不溶性でありかつ架橋されているか、または可溶性である。
【0009】
別の態様は、
(X) HO-Ar4-OH
で表される第1のモノマーと、
(XII) R5-O-Ar5-O-R6
で表される第2のモノマーとを共重合する工程を含む、オリゴマーまたはポリマーを作製する方法を提供する:
式中、Ar4およびAr5はアリール部分またはアリールアミン部分より独立して選択され、但し、Ar4およびAr5の少なくとも一方はアリールアミンであり、R5およびR6は独立してフッ素化C1〜C10アルキレンを表す。一態様では、Ar4は以下で表される:
式中、zは1〜5の整数である。一態様では、Ar4は以下で表される:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、kは1〜4の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数である。一態様では、Ar4は以下で表される。
一態様では、Ar5は以下で表される:
式中、zは1〜5である。一態様では、Ar5は以下で表される:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、kは1〜4の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数である。一態様では、Ar5は以下で表される。
一態様では、Ar5は以下で表される:
式中、R3はフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルであり、Zは1〜5の整数である。一態様では、R5およびR6はフッ素化C1〜C10アルキレンより独立して選択される。一態様では、R5およびR6はトリフルオロアルキレンである。
【0010】
別の態様は、
(X) HO-Ar4-OH
で表される第1のモノマーと、
(XII) R5-O-Ar5-O-R6
で表される第2のモノマーとを共重合することで形成されるオリゴマーまたはポリマーを提供する:
式中、Ar4およびAr5はアリール部分またはアリールアミン部分より独立して選択され、但し、Ar4およびAr5の少なくとも一方はアリールアミンであり、R5およびR6は独立してフッ素化C1〜C10アルキレンを表す。一態様では、Ar4は以下で表される:
式中、zは1〜5である。一態様では、Ar4は以下で表される:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、kは1〜4の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数である。一態様では、Ar4は以下で表される。
一態様では、Ar5は以下で表される:
式中、zは1〜5の整数である。一態様では、Ar5は以下で表される:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、kは1〜4の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数である。一態様では、Ar5は以下で表される。
一態様では、Ar5は以下で表される:
式中、R3はフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルであり、Zは1〜5の整数である。一態様では、R5およびR6はフッ素化C1〜C10アルキレンより独立して選択される。一態様では、R5およびR6はトリフルオロアルキレンである。
【0011】
別の態様は、以下で表される繰り返し単位を含むオリゴマーまたはポリマーと、少なくとも1つの溶媒とを含む、組成物を提供する:
式中、Ar1はアリールアミンであり、Ar2はアリールを含み、R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキルより独立して選択される。一態様では、組成物は、少なくとも1つのn型材料または少なくとも1つのp型ポリマーをさらに含む。一態様では、組成物は少なくとも1つの共役ポリマーをさらに含む。一態様では、組成物は少なくとも1つのドーパントをさらに含む。一態様では、組成物は少なくとも1つの量子ドットをさらに含む。一態様では、組成物は、約50重量%〜約99重量%の前記少なくとも1つの溶媒をさらに含む。一態様では、組成物は、約0.01重量%〜約5重量%の前記オリゴマーまたはポリマーをさらに含む。一態様では、Ar1は以下で表され:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、kは1〜4の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数であり; Ar2は以下で表される:
式中、R3はフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルであり、Zは1〜5の整数である。一態様では、Ar1は以下で表され:
Ar2は以下で表される。
【0012】
別の態様は、以下で表される繰り返し単位を含むオリゴマーまたはポリマーを含む層を含む、素子を提供する:
式中、Ar1はアリールアミンであり、Ar2はアリールを含み、R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキルより独立して選択される。一態様では、前記素子はOLED、PLED、PHOLEDまたはOPV素子である。一態様では、前記層は正孔注入層である。一態様では、前記層は正孔輸送層である。一態様では、前記層は光活性層である。一態様では、前記層は電子遮断層である。一態様では、前記層はn型ポリマーをさらに含む。一態様では、前記層はp型ポリマーをさらに含む。一態様では、前記層は共役ポリマーをさらに含む。一態様では、前記層は量子ドットをさらに含む。一態様では、前記オリゴマーまたはポリマーはドープされている。
【0013】
別の態様は、(i) 少なくとも1つのアリールアミンと、(2) アリールアミンに共有結合している少なくとも1つのフルオロビニルエーテル単位とを含む、組成物を提供する。一態様では、組成物はモノマー、オリゴマーまたはポリマーである。一態様では、組成物はモノマーであり、一態様では、組成物はオリゴマーであり、一態様では、組成物はポリマーである。
【0014】
別の態様では、組成物は(i) 少なくとも1つのアリールアミンと、(2) アリールアミンに共有結合している少なくとも1つのフルオロビニルエーテル単位とから本質的になる。
【0015】
別の態様では、正孔輸送を行うように適合されている少なくとも1つの繰り返し部分と、少なくとも1つのフッ素化アルキレンオキシ繰り返し部分とを含む、ポリマー主鎖またはオリゴマー主鎖を含む、組成物が提供される。
【0016】
別の態様では、正孔輸送を行うように適合されている少なくとも1つの繰り返し部分と、以下で表されるモノマーに由来する少なくとも1つのフッ素化繰り返し部分とを含む、ポリマー主鎖またはオリゴマー主鎖を含む、組成物が提供される:
または
式中、Rは
のうちの1つで表される。
【0017】
別の態様は、 少なくとも2つの第二級アミン部分を含む少なくとも1つのアリールアミンと、アルキレンオキシ単位を含む少なくとも1つのアリールブロミドとを、有機金属錯体を使用して反応させて、アルキレンオキシ単位を含むアリールアミンモノマーを形成させる工程を含む方法を提供する。一態様では、前記反応は、相間移動触媒作用を使用して行われる。
【0018】
いくつかの態様の1つの利点は、より良い動作安定性を有するポリマーを提供することにある。いくつかの態様の別の利点は、素子層への電荷注入を容易にするポリマーを提供することにある。いくつかの態様の別の利点は、溶液加工素子層の調製用の直交溶媒に対して適合性があるポリマーを提供することにある。いくつかの態様のさらに別の利点は、正孔注入層または正孔抽出層用のポリマーを作製する比較的簡便な方法を提供することにある。いくつかの態様のさらに別の利点は、OPV素子の漏れ電流を減少させることに役立つ材料を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ガラス基板上のポリ(TPD-TFVBPA)の薄膜の吸光度スペクトルおよび蛍光スペクトルを示す。
【図2】ガラス基板上にクロロベンゼン中溶液から流延した4-イソプロピル-4'メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートでドープし、3つの温度でアニールした、ポリ(TPD-TFVBPA)の薄膜の紫外可視近赤外スペクトルである。
【図3】図3aおよび3bは、それぞれ比較正孔注入層および一態様に係る正孔注入層のIVL測定値である。
【図4】共重合体の一態様の1H-NMRスペクトルを示す。
【図5】共重合体の一態様のゲル浸透クロマトグラフィー分析を示す。
【図6】TPD-TFVモノマーのプロトンNMRを示す。
【図7】TPD-TFVモノマーのフッ素NMRを示す。
【図8】ポリ(nap-(TPD-TFV)のGPCを示す。
【図9】ポリ(nap-(TPD-TFV)のNMRを示す。
【図10】図10a、bは、素子4、5、6および比較例のIVL測定値を示す。
【図11】図11a、bは、素子7、8、9および比較例のIVL測定値を示す。
【図12】HTL 3膜の紫外スペクトルおよび光ルミネセンススペクトルを示す。
【図13】HTL 3膜の透過率測定値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
序論
本明細書で使用する「TPD」という用語は、4,4'-ビス(m-トリルフェニルアミノ)ビフェニルを意味する。
【0021】
本明細書で使用する「ポリ(TPD-TFVBPA)」という用語は、下記実施例1で調製されるポリマーを意味する。
【0022】
本明細書で使用する「TPD-TFV」という用語は、下記実施例2で調製される化合物を意味する。
【0023】
本明細書で使用する「ポリ(nap-TPD-TFV)」という用語は、下記実施例3で調製されるポリマーを意味する。
【0024】
本明細書において引用されるすべての参考文献はその全体が参照により組み入れられる。
【0025】
本明細書で提供される組成物は、少なくとも1つの半導電性成分および任意的なドーパントを含み得るものであり、絶縁性マトリックス成分を実質的に含まないことがある。組成物は、OLEDまたはOPVなどの電子素子に組み入れられる際に素子性能の増加を生じさせ得る、改善されたHTLまたはHILを形成するために使用することができる。例えば、組成物は、OLED中のHILを形成するために使用可能なインク調合物を含み得る。組成物を用いて構築されるOLEDは、効率および輝度の増加を示し得る。したがって、本組成物は、有機エレクトロルミネセンスを包含する用途、特に、OLEDならびに他の照明ディスプレイおよび/または用途に使用可能な改善された正孔注入技術を提供することができる。
【0026】
少なくともいくつかの態様の組成物では、素子中のHIL層またはHTL層のいずれかとして存在する場合の半導電性成分は、電荷注入が層の表面でというよりむしろ層の全体を通じて行われることを可能にすることができる。
【0027】
組成物はまた、1つまたは複数の半導電性ポリマーの組成物用のドープ剤として機能し得るドーパントを含有し得る。半導電性材料およびポリマーのドーピングは、有機電子素子に組み入れられる際に本組成物の全体を通じた速やかな電荷輸送を可能にして、素子の性能を増加させることができる。組成物の半導電性ドープポリマーは、より高い導電率を有するHILまたはHTLを生成することができ、これは有機電子素子の直列抵抗を低下させる。これは、はるかに低い導電率を有するHILまたはHTL(およびその結果として、より高い直列抵抗を有する素子)を生成することがある他の正孔注入技術とは対照的である。
【0028】
いくつかの態様では、層の厚さが通常より大きく、例えば約60nm〜約200nmのオーダーである場合でも、組成物は、実質的に可視光透過性のHILまたはHTLを生成することができる。例えば、HILまたはHTLは、約400〜800nmの波長を有する光の約85%〜約90%またはそれ以上(すなわち%T>85〜90%)を透過させることができる。したがって、少なくともいくつかの態様のさらなる利点は、中程度の厚さを有する実質的に透過性のHILまたはHTLの形成であり得る。動作電圧に有害な影響を与えることなく半導体素子において短絡を排除するために、厚いHILまたはHTLを使用してもよい。
【0029】
より特定的には、本態様は、アミノベンゼンモノマー、オリゴマーおよびポリマー(共重合体を含む)、それを作製する方法、ならびに該モノマー、オリゴマーおよびポリマーを使用して形成される組成物および素子を例えば含む。ポリマーは、少なくとも1つのアリールアミン部分と、少なくとも1つのフッ素化アルキレンオキシ部分などのハロゲン化アルキレンオキシ部分とを含み得る。オリゴマーまたはポリマーを作製する方法は、ヒドロキシル基を含むモノマーと、ハロゲン化またはフッ素化アルキレンオキシ基を含むモノマーとを共重合する工程を例えば含み得る。オリゴマーまたはポリマーは、インク組成物中で使用可能であり、各種素子中の機能性層を形成するためにさらに使用可能である。
【0030】
ポリチオフェンおよび位置規則性ポリチオフェンを含む半導電性および共役ポリマー、正孔注入および正孔輸送、ならびに有機電子素子に関連する先行の米国特許出願公開としては、例えば以下が挙げられる。
【0031】
ポリマーおよび共重合体は当技術分野で一般に公知である。例えばBillmeyer, Textbook of Polymer Science, 3rd Ed., 1984; Allcock, Lampe, Contemporary Polymer Chemistry, 1981を参照。ポリマーおよび共重合体は、主鎖に結合している原子および側基をさらに含むポリマー主鎖および共重合体主鎖を含み得る。
【0032】
ポリマーおよび共重合体は可溶性の線状分子であり得る。繰り返し部分を含み得る。例えば、一態様では、共重合体は、少なくとも1つのアリールアミン繰り返し部分と、少なくとも1つのフッ素化アルキレンオキシ繰り返し部分とを含む主鎖を含む。これらの部分は交互に現れることがある。オリゴマーを作製することができる。軽架橋材料および重架橋材料を含む架橋材料を作製することができる。網目材料を作製することができる。
【0033】
オリゴマーは、当技術分野で公知であり、ポリマーのより小さい分子量の形態であり得る。オリゴマーは線状であるかまたは架橋されていることがある。網目オリゴマーを調製することができる。オリゴマー分子量は例えば1,000g/mol以下または750g/mol以下(Mn)であり得る。
【0034】
正孔輸送/アリールアミン繰り返し部分
アリールアミン材料および化合物を例えば含む正孔輸送材料は、当技術分野で公知である。アリールアミン繰り返し部分は当技術分野で公知である。例えばLim et al., Organic Letters, 2006, 8, 21, 4703-4706; Fukase et al., Polymers for Advanced Technologies, 13, 601-604 (2002). Shirota, Y. et al., Chem. Rev. 107, 2007, 953-1010; Z. Li and H. Meng, Eds., Organic Light-Emitting Materials and Devices, CRC Press (Taylor and Francis Group, LLC), Boca Raton (2007)およびその参考文献を参照。アリールアミン部分は各々、少なくとも1個の窒素原子および少なくとも1個のベンゼン環を含み得る。非限定的な例としては、それらは窒素原子に結合している1個のベンゼン環; 窒素原子に結合している2個のベンゼン環; または窒素原子に結合している3個のベンゼン環を含み得る。正孔注入および/または正孔輸送特性を示すように、繰り返し部分を適合させることができる。
【0035】
さらに、チオフェン、ピロール、アリールオキシおよび有機金属錯体部分を含むがそれに限定されない、正孔輸送組成物および繰り返し部分をさらに選択することができる。例えばShirota, Y. et al., Chem. Rev. 107, 2007, 953-1010; Z. Li and H. Meng, Eds., Organic Light-Emitting Materials and Devices, CRC Press (Taylor and Francis Group, LLC), Boca Raton (2007)およびその参考文献を参照。
【0036】
非限定的な例としては、アリールアミン部分は少なくとも1つのトリアリールアミンを含み得る。
【0037】
さらに別の非限定的な例としては、アリールアミン部分は、N,N-ジフェニルベンゼンアミンなどであるがそれに限定されないビストリアリールアミンを含み得る。
【0038】
直接共有結合、少なくとも1個の炭素原子を通じた共有結合、または酸素原子を通じた共有結合を通じて、ベンゼン環は少なくとも1個の他のベンゼン環に結合し得る。
【0039】
環の間で共有される1個または2個の炭素原子を通じて、ベンゼン環は別のベンゼン環と縮合し得る。2個以上の環が一緒に縮合し得る。
【0040】
ベンゼン環は置換されていても置換されていなくてもよい。非限定的な例としては、それらは、1個または複数の水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基、またはその組み合わせで置換されていてもよい。
【0041】
アリールアミンはまた、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,166,010号; 国際公開公報第2003037844号; および国際公開公報第2008032631号に例えば記載されている。
【0042】
スペーサー/フッ素化アルキレンオキシ繰り返し部分
ある部分は、正孔輸送官能基を配置するために役立ち得る。この部分は、先に記載のアリールアミン部分とは異なり得る。ハロゲン化およびフッ素化アルキレンオキシ繰り返し部分などのスペーサーは当技術分野で公知である。例えばIacono et al., Chem. Commun., 2006, 4844-4846; Babb et al., Macromolecules, 1996, 29, 852-860; Smith et al., Polym. Int., 2007, 56, 1142-1146; Smith et al., J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 12772-12773; Kim et al., Org. Lett., 2006, 8, 4703-4706. Rudolf et al., J. Appl. Pol. Sci., 1998, 69, 2005-2012; Kim et al., Macromolecules, 2004, 37, 5724-5731; Smith et al., Macromolecules, 2007, 40, 9378-9383; Smith et al., J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 7055-7064; Sundar et al., Appl. Phys. Lett., 2004, 85, 4469-4471; Smith et al., J. Polym. Sc. Pt. A, 2007, 45, 5705-5721; Smith et al., Polymer, 2005, 46, 6923-2932; Smith et al., Chem. Comm., 2006, 4844-4846; Wonchoba et al., J. Org. Chem., 1992, 57, 7014-7017; Jen et al., Appl. Phys. Lett., 2006, 88, 093505; Jen et al. Adv. Funct. Mat., 2002, 12, 745-751; Jen et al., Appl. Phys. Lett., 2000, 76, 1813-1815; Jen et al., Appl. Phys. Lett., 2000, 76, 2985-2987を参照。フッ素化アルキレンオキシ繰り返し部分は、少なくとも1個のフッ素原子、少なくとも1個の酸素原子、およびC1〜C10アルキレンであり得る少なくとも1個のアルキレン部分を含み得る。より好ましくは、アルキレン部分は、エチレンなどであるがそれに限定されないC1〜C5アルキレンであり得る。C1〜C10アルキレンは直鎖状、分岐状または環状であり得る。
【0043】
C1〜C10アルキレンは、少なくとも1個のフルオロ、クロロ、ブロモもしくはヨード基、またはその組み合わせでフッ素化され得る。好ましくは、アルキレン部分は、例えばトリフルオロエチレン部分を形成する少なくとも1個のフルオロ基でフッ素化されている。好ましくは、アルキレン部分は全フッ素化されている。
【0044】
フッ素化アルキレンオキシに変換可能なフッ素化アルコキシ部分は、少なくとも1個のアリール、アリールアルキル、ハロアリールアルキル、ジアリールアミンまたはトリアリールアミンをさらに含み得る。非限定的な例としては、アリール部分はN,N-ジフェニルベンゼンアミンである。アリール部分のベンゼン環は、アルキル部分または酸素原子に共有結合し得る。好ましくは、アリール部分のベンゼン環は、フッ素化アルコキシ部分の酸素原子に結合している。
【0045】
一態様では、アリールアミンおよびフッ素化アルキレンオキシという繰り返し部分が唯一の繰り返し単位である。他の態様では、共重合体はこれら2種の繰り返し部分からなり得るかまたは本質的になり得る。所望であれば、アリールアミンを別の正孔輸送部分で置き換えてもよい。
【0046】
重合形態または非重合形態とその組み合わせとの両方を含む、ビニルエーテル、フッ素化ビニルエーテルおよび全フッ素化ビニルエーテル部分を使用することができる。
【0047】
オリゴマー/ポリマー/共重合体構造
オリゴマー、ポリマーおよび共重合体を、以下の構造によりさらに記載することができる。例えば、一態様では、それらは以下で表される繰り返し単位を含む:
式中、Ar1はアリールアミンを含み、Ar2はアリールを含み、R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキレンより独立して選択される。
【0048】
繰り返し単位(I)および(II)は交互に現れ得る。
【0049】
より特定的には、Ar1はトリアリールアミンを含み得るかまたはそれであり得るものであり、ベンゼン環は置換されていてもよい。非限定的な例としては、Ar1は以下で表すことができる:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され; kは1〜4の整数であり; mは1〜5の整数であり; nは1〜5の整数である。
【0050】
特定の例では、Ar1は以下で表すことができる。
【0051】
Ar2は、例えばアリール、アリールアルキル、ハロアリールアルキル、ジアリールアミンまたはトリアリールアミンを含み得るかまたはそれであり得る。例えば、Ar2は、ベンゼン環または互いに共有結合している少なくとも2個のベンゼン環を含む、アリールであり得る。Ar2はアリーレンであり得る。非限定的な例では、Ar2は以下で表される:
式中、zは1〜5の整数である。
【0052】
さらに、Ar2は、多環式芳香環を含むアリール、または2〜10個の炭素原子を有する置換基を含むアリールであり得る。多環式芳香環は、一緒に縮合した2個以上の環を例えば有し得る。非限定的な例では、Ar2は以下で表すことができる:
式中、nは1〜5の整数である。結合の異性体形態を使用することができる。
【0053】
Ar2はトリアリールアミンであり得る。Ar2の構造はAr1の構造でもあり得る。
【0054】
Ar2はアリールアルキルまたはハロアリールアルキルであり得る。非限定的な例では、Ar2は以下で表すことができる:
式中、R3はフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルなどのフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルであり、zは1〜5の整数である。R3は直鎖状、分岐状または環状アルキルであり得る。
【0055】
別の非限定的な例としては、Ar2は以下で表すことができる。
【0056】
構造(II)で表される繰り返し単位では、R1およびR2は例えば、C1〜C10フルオロアルキルなどのC1〜C10アルキルより独立して選択することができる。非限定的な例では、R1およびR2はトリフルオロエチレンである。
【0057】
特定の態様では、共重合体は、以下で表される繰り返し単位を含み得る:
式中、Ar3はアリールアミンであり得るものであり、R4はC1〜C10フッ素化アルキレンであり得る。
【0058】
例えば、Ar3はジアリールアミンまたはトリアリールアミンであり得る。Ar2の構造はAr1および/またはAr2について先に記載の構造でもあり得る。
【0059】
また、これらの態様の異性体を使用することができる。
【0060】
モノマー合成
ある種のモノマーは商業的に得ることができ、一方他のモノマーは合成することができる。合成モノマーの非限定的な例を以下に示す。
【0061】
有機合成およびポリマーの技術分野を含む当技術分野で公知の方法を使用することで、重合可能なまたは反応性の官能基を含むモノマーを調製し、かつモノマーを一緒に連結させてポリマーを形成することができる。例えばMarch's Advanced Organic Chemistry, 6th Ed, 2007を参照。
【0062】
フッ素化不飽和化合物およびポリマーを包含する、求核付加反応を含むモノマーおよび反応は、当技術分野で公知である。例えばSynthetic Fluorine Chemistry, Ed. Olah, 1992を参照。
【0063】
フッ素化アルキレンオキシ繰り返し部分を合成的に入手しかつ利用するための方法は当技術分野で公知である。例えばIacono et al., Chem. Commun., 2006, 4844-4846; Babb et al., Macromolecules, 1996, 29, 852-860; Smith et al., Polym. Int., 2007, 56, 1142-1146; Smith et al., J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 12772-12773; Kim et al., Org. Lett., 2006, 8, 4703-4706. Rudolf et al., J. Appl. Pol. Sci., 1998, 69, 2005-2012; Kim et al., Macromolecules, 2004, 37, 5724-5731; Smith et al., Macromolecules, 2007, 40, 9378-9383; Smith et al., J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 7055-7064; Sundar et al., Appl. Phys. Lett., 2004, 85, 4469-4471; Smith et al., J. Polym. Sc. Pt. A, 2007, 45, 5705-5721; Smith et al., Polymer, 2005, 46, 6923-2932; Smith et al., Chem. Comm., 2006, 4844-4846; Wonchoba et al., J. Org. Chem., 1992, 57, 7014-7017を参照。
【0064】
さらに、導電性結合形成クロスカップリング/アミノ化反応のための方法は当技術分野で公知である。例えばCross-Coupling Reactions: A Practical Guide, Ed. Miyaura, 2002; Handbook of Organopalladium Chemistry for Organic Synthesis, Ed. Negishi, 2002. Kuwano et al., J. Org. Chem., 2002, 67, 6479-6486を参照。
【0065】
1つの第1のモノマーを、正孔輸送機能を行うように適合させることができる。1つの第2のモノマーを、正孔輸送部分を分離および接続するスペーサー機能を行うために使用することができる。本発明において有用である適切なヒドロキシルまたはフッ素化アルキレンオキシ置換基を有する広範な塩基性部分を含むように、モノマーを選択することができる。例えばPolycyclic Aromatic Hydrocarbons, Harvey, R. G., Wiley-VCH, 1996; Polycyclic Hydrocarbons Vol. I and II, Clar, E, Academic Press, 1964を参照。
【0066】
得られるポリマー中でアリールアミン繰り返し部分を与えるモノマーを調製するかまたは得ることができる。
【0067】
一般に、一組のモノマーは、正孔輸送部分と、ヒドロキシルアリール基またはアミノヒドロキシルアリール基などであるがそれに限定されない2個のヒドロキシル末端基とを含み得る。正孔輸送部分は少なくとも1個のアリール基を含み得る。例えば、正孔輸送官能基は1〜10個のアリール基を含み得る。
【0068】
そのようなモノマーの非限定的な例を以下に示す:
式中、Arは例えばベンゼン、ナフタレン、ビフェニルなどのアリール基より独立して選択され、置換されていてもよく、Rはアルキルまたはエチレンオキシであり、置換されていてもよい。
【0069】
最適な取り扱い、効率および/または動作寿命のために望まれるエネルギー特性(HOMO-LUMO、三重項、一重項)、移動度および熱力学特性を例えば与えるように、置換基を選択することができる。
【0070】
さらに、得られるポリマー中でフッ素化アルキレンオキシ繰り返し部分を与えるモノマーを調製するかまたは得ることができる。例えば、別の一組のモノマーは、フッ素化アルキレンオキシ基を含むアリールアミンを含み得る。一般に、これらのモノマーは、スペーサー部分と、2個、3個またはそれ以上のトリフルオロビニルオキシ末端基とを含み得る。
【0071】
スペーサー部分は少なくとも1個のアリール基を含み得る。例えば、スペーサー部分は1〜10個のアリール基を含み得る。
【0072】
そのようなモノマーの非限定的な例を以下に示す。
【0073】
線状で可溶性のオリゴマーまたはポリマーを調製できるように、モノマーは二官能性であり得る。例えば、Aモノマーを、Bモノマーと反応してA-B共重合体を形成するように適合させることができる。あるいは、AおよびBを重合前に組み合わせてA-Bを形成することができ、次にA-Bを重合することができる。
【0074】
さらに、網目を形成できるように、モノマーは三官能性、四官能性またはそれ以上であり得る。
【0075】
一態様では、フェノール基もしくはヒドロキシル基および/またはトリフルオロビニルエーテル基を含むようにモノマーを適合させることができ、これらの基を重合反応中に一緒にすることができる。
【0076】
一態様では、モノマーは反応性フッ素化アルケンを含む。
【0077】
フッ素化アルケンを互いに反応させることで、付加環化反応を例えば含むオリゴマー化または重合のための連結を行うことができる。例えば、トリフルオロビニルエーテル含有化合物は、熱環化重合を経ることでパーフルオロシクロブタン(PFCB)ポリマーを与える有用な反応性モノマーであり得る。
【0078】
一態様は、以下の工程を含む方法を提供する: 少なくとも2つの第二級アミン部分を含む少なくとも1つのアリールアミンと、アルキレンオキシ単位を含む少なくとも1つのアリールブロミドとを反応させて、アルキレンオキシ単位を含むアリールアミンモノマーを形成させる工程であって、反応を例えばPd2(dba)3などの0価パラジウム錯体などの有機金属錯体の使用により行う工程。例えば実施例2を参照。対照として比較例2Aを参照。水、有機溶媒(例えばトルエン)および相間移動触媒の組み合わせの使用による相間移動条件下で反応を行うことができる。例えばKOHなどの強塩基を使用することができる。少なくとも2個の第二級アミン部分を含むアリールアミンは、例えばN,N'-ジフェニルベンジジンであり得る。
【0079】
ポリマー合成
ポリマー合成法は当技術分野で公知である。例えばBillmeyer, Textbook of Polymer Science, 3rd Ed., 1984; Allcock, Lampe, Contemporary Polymer Chemistry, 1981を参照。例としては逐次重合、縮合重合、付加重合、フリーラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合および配位重合が挙げられるがそれに限定されない。いくつかの態様では、重合反応は、ヒドロキシアリール基などのヒドロキシル基を含む化合物と、フッ素化アルキレンオキシ基を含む化合物との反応を含む。当技術分野で公知のように、オリゴマーを生成するためにこれらの方法を使用することもできる。
【0080】
一態様では、少なくとも2個のヒドロキシル基を含む第1のモノマーと、少なくとも2個のフッ素化アルキレンオキシ基を含む第2のモノマーとを共重合する。好ましくは、第2のモノマーは少なくとも2個のトリフルオロエチレンオキシ基を含む。
【0081】
別の態様では、
(X) HO-Ar4-OH
で表される第1のモノマーと、
(XII) R5-O-Ar5-O-R6
で表される第2のモノマーとを共重合することで共重合体またはオリゴマーを形成する:
式中、Ar4およびAr5はアリール部分またはアリールアミン部分より独立して選択され、但し、Ar4およびAr5の少なくとも一方はアリールアミンであり、R5およびR6は独立してフッ素化C1〜C10アルキレンを表す。
【0082】
Ar4は以下で表すことができる:
式中、zは1〜5の整数である。
【0083】
あるいは、Ar4は以下で表すことができる:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され; kは1〜4の整数であり; mは1〜5の整数であり; nは1〜5の整数である。
【0084】
さらに別の代替案としては、Ar4は以下で表すことができる。
【0085】
第2のモノマーでは、Ar5は以下で表すことができる:
式中、zは1〜5の整数である。
【0086】
あるいは、Ar5は以下で表すことができる:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され; kは1〜4の整数であり; mは1〜5の整数であり; nは1〜5の整数である。
【0087】
さらに別の代替案としては、Ar5は以下で表すことができる。
【0088】
さらに別の代替案としては、Ar5は以下で表すことができる:
式中、R3はフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルなどのフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルであり得るものであり、zは1〜5の整数である。R3は直鎖状、分岐状または環状アルキルであり得る。
【0089】
R5およびR6は、フッ素化C1〜C10アルキレンなどであるがそれに限定されないフッ素化アルキレンより独立して選択することができる。好ましくは、R5およびR6は、トリフルオロエチレンなどのフッ素化C1〜C10アルキレンより独立して選択される。
【0090】
特定の態様では、1つのモノマーを使用してポリマーを形成する。モノマーは、少なくとも1つのヒドロキシアリールアミン部分と、少なくとも1つのフッ素化C1〜C10アルキレンオキシ部分とを含み得る。
【0091】
一態様では、以下で表されるモノマーを重合することでポリマーを形成する:
(XIII) HO-Ar6-O-R7
式中、Ar6はアリールアミンであり、R7はフッ素化C1〜C10アルキレンオキシである。
【0092】
これらのモノマーは、商業的に得ることができるか、または有機化学で公知の方法を使用して合成することができる。
【0093】
各種溶媒中で重合を行うことができる。例としてはジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびアセトニトリル、ならびにその組み合わせが挙げられる。
【0094】
各種触媒の存在下で重合を行うことができる。例としてはナトリウムtert-ブトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムtert-ブトキシドおよびカリウムメトキシドが挙げられる。
【0095】
そのような重合により得られる代表的ポリマーとしては以下が挙げられる。
【0096】
分子量は特に限定されないが、得られるポリマーは、例えば約1,000g/mol〜約100,000g/mol、または約5,000g/mol〜約50,000g/mol、または約10,000g/mol〜約20,000g/molの数平均分子量を例えば有し得る。
【0097】
多分散度は特に限定されないが、得られるポリマーは1〜5または1〜2のPDIを例えば有し得る。
【0098】
架橋剤とモノマーまたはポリマーとを組み合わせることで、得られる膜に材料上での溶液加工を支援するために必要な特性を付与できるように、ポリマーを調製することができる。例えば一態様では、ペンダントアルキレンオキシ基、アルケン基またはベンゾシクロブタン基をアニール中に利用して、引き続く加工に十分な不溶性を架橋構造に付与する可能性がある。さらに、ある材料または成分をインク中のポリマーに加えることで、膜上での引き続く加工に十分な不溶性を膜にやはり付与する可能性がある架橋されたまたは絡み合った膜構造を与える可能性がある。例えばThompson et al., Chem. Mat., 2007, 19, 4827-4832; Meerholtz et al., App. Phys. Lett., 2007, 91, 103507; Marks et al., App. Phys. Lett., 2003, 82, 331-333; およびTownsら、国際公開公報第2006/043087号を参照。
【0099】
さらなる態様
モノマー、オリゴマーおよびポリマーを以下のように調製することもできる:
式中、Xは重合条件に応じて例えばHまたはFであり、Z1およびZ2は正孔輸送結合およびスペーサー結合より独立して選択され、但し、Z1およびZ2の少なくとも一方は正孔輸送結合であり、スペーサー結合は例えばフェニル、ナフチルなどの芳香族、アルキレン、ポリエーテル、パーフルオロポリエーテルおよびパーフルオロアルコキシより選択される。スペーサー結合は、正孔輸送または拡張共役を行う必要はない。
【0100】
例えばアルコキシドを使用するフェノール系モノマーの脱プロトン化を経由するその場発生を通じての、またはフェノキシドを最初に合成して反応に使用する場合でのアルコールの外部付加を通じての、アルコールの存在は、XがHであるポリマーを導き得る。あるいは例えば、フェノキシドで出発して反応を行う場合、N-フルオロベンゼンスルホンアミドなどのフルオロカチオン源を加えて、XがFであるポリマーを得ることができる。
【0101】
さらに、フッ素またはヒドロキシル基を有する鎖末端を動作不安定性を導くことがあるという理由で排除するために末端封止されている、ポリマーを有することが望ましいことがある。合成後にポリマーを処理して、フェノールまたはアルコキシドを有する残りのフッ素置換基を除去することができる。活性化アルキルアレーン、またはヨウ化メチルなどのアルキル化剤を用いるアルキル化により、末端ヒドロキシル基を遮断することもできる。また、ポリマー化学で公知のように、一官能性材料を使用して重合中にその場でポリマーを末端封止することができる。トリフルオロビニルオキシ、ビニレン性、アセチレン性、オキセタン、トリクロロシリル、トリアルコキシシリル、エポキシなどの架橋性官能基でポリマーを末端封止することで、層の堅固さを強化する可能性もある。上記の基の組み入れは、先に記載の適切な官能基を有する一官能性モノマーを使用して重合中にその場で、または重合後手順により、達成することができる。末端封止剤の代表的および非限定的な例を以下に示す。
【0102】
ポリマー特性
ポリマーおよび共重合体は可溶性であり得る。それらは有機溶媒に可溶性であり得る。
【0103】
本態様のポリマーは、正孔注入層、正孔輸送層、光活性層および電子遮断層用の材料として有利に役立ち得る。例えば、これらのポリマーは、安定であり、励起状態がポリマー中で発生する際に生じることがある正孔輸送劣化に比較的耐性がある。したがって、そのようなポリマーは、各種素子に動作安定性を付加することができる。これらのポリマーはまた、ポリマーが層として適用される界面において誘電率を増加させ、それにより電荷注入を容易にすることができる。典型的には、これはバンドベンディング型の偏角の文脈内で理解される。ここで、界面での適切に配向された双極子は、真空準位誤整列にもかかわらず層間のフェルミ準位ピンニング、したがって電荷注入を可能にするために十分な内部電界を与えることができる。さらに、これらのポリマーは、溶液加工層に対する直交溶媒適合性を示し、このことは素子層形成に非常に有用である。任意の特定の理論に限定されることは望まないが、フッ素化鎖がポリマーの直交溶媒適合性に寄与すると考えられる。
【0104】
さらに、例えば素子動作に対する有害な影響を最小化するために好適なHOMO-LUMOエネルギー特性を示すようにポリマーを選択することが望まれる。
【0105】
インク組成物および調合物
本明細書に記載のポリマーおよび共重合体と溶媒、他のポリマー(ブレンドとしての)、添加剤、ドーパントまたはその組み合わせとを組み合わせて、各種素子中の層として流延可能なインクなどの組成物を形成することができる。
【0106】
ポリマーと少なくとも1つの溶媒とを組み合わせてインク組成物を形成することができる。例えば、一態様では、組成物は、以下で表される繰り返し単位を含む共重合体と、少なくとも1つの溶媒とを含む:
式中、Ar1はアリールアミンであり、Ar2はアリールであり、R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキルより独立して選択される。
【0107】
各種溶媒を使用することができる。非限定的な例としては、組成物は以下の溶媒のうち1つまたは複数を含み得る: クロロベンゼン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロベンゼン、ジクロロメタン、安息香酸エチル、安息香酸メチル、酢酸プロピル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸フェニル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ペンタノン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン、ピリジン、ピペリジン、N-メチルピロール、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン、および1,3-トリフルオロメチルベンゼン、エチレングリコールジエーテル、ジエチレングリコールジエーテル、プロピレングリコールジエーテル、ジプロピレングリコールジエーテル、エチレングリコールモノエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエーテルアセテート、アニソール、エトキシベンゼン、ジメトキシベンゼン。さらに、インク組成物は1つまたは複数の溶媒を含み得る。
【0108】
一態様では、インクは、プロトン性溶媒を実質的に含まないかまたは全く含まない。例えば、プロトン性溶媒の量は1重量%未満または0.1重量%未満であり得る。
【0109】
容易に制御可能な厚さ、組成および質を有する所望の物性および性能の膜が得られるインクを与えるように、かつ用途の必要性を満たす素子において有用性を有するインクを与えるように、溶媒を選択しなければならない。非限定的な例としては、以下の参考文献に見られるリストより溶媒を選択することができ、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる: Cheremisinoff, N. P. In Industrial Solvents Handbook Second Edition; Marcel Dekker: New York, NY, 2003; Ash, M.; Ash, In Handbook of Solvents; Synapse Information Resources Inc; 2nd Edition, 2003; Wypych, G. In Handbook of Solvents (Chemical); Noyes Publications, 1st Edition, 2000; Hansen, C. M.; Durkee, J.; Kontogeorgis, G. In Hanson Solubility Parameters: A User's Handbook; Taylor and Francis, Inc, 2007。
【0110】
2つ以上の溶媒を使用するインク溶媒系は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第61/090,464号(2008年8月20日出願)および2009年8月14日出願の米国特許出願第12/541,500号に記載されている。
【0111】
インク調合物中の溶媒の量は約10重量%〜約99重量%、例えば約90重量%〜約99重量%であり得る。
【0112】
あるいは、インク組成物中の共重合体の重量パーセントは、約0.01重量%〜約10重量%、例えば約0.1重量%〜約1.0重量%であり得る。
【0113】
インク組成物は少なくとも1つのn型ポリマーをさらに含み得る。
【0114】
インク組成物は少なくとも1つのp型ポリマーをさらに含み得る。
【0115】
インク組成物は少なくとも1つの共役ポリマーをさらに含み得る。
【0116】
特定の調合物では、本態様のポリマー(p型ポリマーとして使用する)とn型ポリマーとを組み合わせる。n型材料とp型材料とは、例えば約0.1〜4.0(p型)対約1(n型)の重量比、または約1.1〜約3.0(p型)対約1(n型)の比、または約1.1〜約1.5(p型)対約1(n型)の比で混合することができる。各種類の材料の量、または2種類の成分間の比は、特定の用途について変動し得る。
【0117】
ドーパント
本組成物は1つまたは複数のドーパントを含んでいてもよい。
【0118】
ドーパントは、HILまたはHTLのポリマー成分に望まれる導電性状態を得るために典型的に使用され、しばしば素子性能の改善を生じさせる。例えば、レドックスドーパントによる半導電性ポリマーの酸化の時点で、電子がポリマーの価電子帯より除去される。酸化状態のこの変化は、ポリマーの新しいエネルギー状態の形成を生じさせる。エネルギーレベルは、価電子帯に残存する電子の一部に接近可能であり、これによりポリマーが導体/半導体として機能することが可能になる。
【0119】
特に本組成物では、導電性共役ポリマーをレドックスドーパントでドープすることができる。当技術分野で公知の好適なレドックスドーパントの例としては、キノン、ボラン、カルボカチオン、ボラ-テトラアザペンタレン、アミニウム塩もしくはアンモニリウム(ammonilium)塩、スルホニウム塩、オキソニウム塩、セレノニウム(selenonoium)塩、ニトロソニウム塩、アルソニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、選択金属(例えば銀)塩、またはその組み合わせが挙げられるがそれに限定されない。好適なレドックスドーパントとしては、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,853,906号および第5,968,674号に開示されているものが挙げられるがそれに限定されない。
【0120】
レドックスドーパントは、好適な電荷平衡対アニオンを与えるように選択することもできる。ドーパントアニオンの種類は、導電性ポリマーのドーピングレベル、およびこれらの溶液より調製される素子の素子性能に影響し得る。
【0121】
ドーパントアニオンの大きさおよび性質は、素子の効率を調節するために重要なパラメータであり得る。
【0122】
アニオン/対イオンは以下であり得る: スルホン酸アニオン、塩化物アニオン、臭化物アニオン、ヨウ化物アニオン、置換されていてもよいアリールスルホン酸アニオン、置換されていてもよいアルキルスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、または下記式(i)で表される材料:
(i) [MYp(ArXn)4-p]-
式中、M = BまたはGaであり; Arはフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、チエニル、ピロリル、フリル、ピリジル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリルより独立して選択され; XおよびYはハロゲン化物(F、Cl、BrおよびI)、シアン化物、ニトロ、別の置換されていてもよいアリールより独立して選択することができ; p≦4であり; n≦10である; もしくは下記式(ii)で表される材料:
(ii) [MYp(ArXn)6-p]-
式中、M = PまたはSbであり; Arはフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、チエニル、ピロリル、フリル、ピリジル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリルより独立して選択され; XおよびYはハロゲン化物(F、Cl、BrおよびI)、シアン化物、ニトロ、別の置換されていてもよいアリールより独立して選択することができ; p≦4であり; n≦10である。
【0123】
最終組成物において、組成物は、当初の成分の組み合わせとは明瞭に異なることがある(すなわち、半導電性ポリマーおよび/またはレドックスドーパントは、最終組成物中に混合前と同一の形態で存在することもあれば存在しないこともある)。したがって、半導電性共役ポリマーおよびドーパントまたはレドックスドーパントは、反応してドープ共役ポリマーを形成する成分を意味することがある。さらに、いくつかの態様は、ドーピングプロセスの反応副生成物の除去を可能にする。例えば、ヨードニウムレドックスドーパントは有機副生成物を生じさせることがあり、これをドープポリマーから洗い流すことができる。
【0124】
いくつかの態様では、レドックスドーパントは光酸である。好適な光酸の例としては、その全体が参照により本明細書に組み入れられるJournal of Polymer Science Part A, Polymer Chem. 37, 4241-4254, 1999に例えば記載のスルホニウム塩およびヨードニウム塩などのオニウム塩が挙げられるがそれに限定されない。
【0125】
ヨードニウム塩は当技術分野で公知である。中性ポリアリールアミンなどの導電性ポリマーのドーピングは、ヨードニウム塩またはジアリールヨードニウム塩、特にジフェニルヨードニウム塩などの光酸を使用して実現することができる。ヨードニウム塩中のフェニル基などのアリール基は、当技術分野で公知のように置換されていてもよい。例えば、レドックスドーパントは親油性ヨードニウム塩であり得る。典型的には、ヨードニウム塩は以下で表される:
式中、R1は独立して、置換されていてもよいアリール基であり、R2は独立して、置換されていてもよいアリール基であり、X-はアニオンである。
【0126】
中性ポリアリールアミンのドーピングは、スルホニウム塩などの光酸を使用して実現することもできる。スルホニウム塩は当技術分野で公知である。スルホニウム塩中のアリール基は、当技術分野で公知のように置換されていてもよい。典型的には、スルホニウム塩は以下で表される:
式中、R1は独立して、置換されていてもよいアレーンであり、R2は独立して、置換されていてもよいアレーンであり、R3は置換されていてもよいアレーンであり、X-はアニオンである。
【0127】
ドーパントは、例えば約100g/mol〜約500g/mol、または約300g/molの分子量を有する置換されていてもよいジフェニルヨードニウム塩を含み得る。
【0128】
いくつかの態様では、ドーパントは以下で表される光酸4-イソプロピル-4'-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニルボレート)(IMDPIB(PhF5)4)である。
【0129】
使用可能な他のヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(DPIPF6)、ジフェニルヨードニウムパラ-トルエンスルホネート(DPITos)、ビス-(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート(tBDPITFSO3)およびジフェニルヨードニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホネート(DPIPFBSO3)が挙げられるがそれに限定されない。ヨードニウム塩は、低分子量化合物であり得るか、またはポリマーなどの高分子量化合物に連結し得る。
【0130】
レドックスドーパントはスルホニウム塩であり得る。好適なスルホニウム塩の例としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムパラ-トルエンスルホネート、ビス-(4-tert-ブチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネートおよびジフェニルスルホニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホネートが挙げられるがそれに限定されない。
【0131】
選択対イオンについて有効なドーピングを実現できるように、他のオニウム塩を使用することができる。
【0132】
使用可能な別のクラスのドーパントはキノンを含む。ドーピングを行うために使用可能である好適なキノンの例としては、テトラフルオロテトラシアノ-p-キノジメタン(F4TCNQ)、トリフルオロテトラシアノ-p-キノジメタン(F3TCNQ)、ジフルオロテトラシアノ-p-キノジメタン(F2TCNQ)、フルオロテトラシアノ-p-キノジメタン(FTCNQ)、ジクロロジシアノキニン(DDQ)、o-クロラニルおよびシアニルが挙げられるがそれに限定されない。
【0133】
好適なドーパントのさらなる例としては、その全体が参照により本明細書に組み入れられるKuehlらによる米国特許第6,908,783号に開示されているものを例えば含むキノンジイミン誘導体が挙げられる。
【0134】
使用可能な別のクラスのドーパントはアンモニウム塩を含む。アンモニウムラジカルカチオンを、電子移動を経る調合物に対するレドックス添加剤として使用することができる。形成される副生成物は、正孔輸送部分でもありかつ輸送に有害な影響を与えにくいことから、必ずしも組成物より除去する必要はない。好適なアンモニウム塩の例としては、トリス-(4-ブロモフェニル)アミンアンチモン六塩化物が挙げられるがそれに限定されない。
【0135】
他の有用なレドックスドーパントとしてはボラ-テトラアザペンタレンが挙げられる。ボラ-テトラアザペンタレンの例は以下で表される:
式中、R1、R2、R3は独立して水素、置換されていても置換されていなくてもよいアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、縮合炭素環または縮合複素環基であり、R4およびR5は独立してフッ素、水素、置換されていても置換されていなくてもよいアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、縮合炭素環または縮合複素環であり、あるいは、ホウ素原子と一緒になってホウ素含有複素環となる。(Rothe, Carsten, Laser and Photonics Reviews (2007), 1(4), 303-306; 国際公開公報第2007115540A1号20071018およびその参考文献。)
【0136】
別のクラスの有用なドーパントは、テトラフルオロホウ酸銀、テトラフェニルホウ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀などの銀塩である。銀イオンは、銀金属および導電性ポリマー塩へのまたはそれからの電子移動を経ることがある。米国特許第5,853,906号および第5,968,674号。
【0137】
本組成物を調製する上で、典型的にはドーパントを半導電性ポリマーと共に最初に調合することで、ポリマーのドーピングが生じることを確実にする。
【0138】
例えば、いくつかの態様では、組成物は、共役ポリマーとドーパントとを組み合わせて半導電性ポリマー-ドーパント混合物を形成することで調製されるインク調合物である。典型的には、半導電性共役ポリマーの原液(例えば有機溶媒に半導電性ポリマーを溶解または分散させることで作製されるもの)と、ドーパントの原液とを組み合わせて、ポリマー-ドーパント溶液を形成する。あるいは、いくつかの態様では、ドーパントを導電性共役ポリマーに共有結合させる。これらの態様では、導電性ポリマー-ドーパントと半導電性マトリックス成分とを組み合わせて組成物を形成することで、組成物を調製する。
【0139】
量
本組成物は、約1重量%〜99重量%(「wt%」または「% (w/w)」)の半導電性共役ポリマー、および、ドーパントが存在する場合は約0重量%〜75重量%のドーパントを含み得る。各成分の重量百分率は、組成物中の全固形分の重量に基づいて計算される。
【0140】
例えば、いくつかの態様では、組成物は、半導電性ポリマーおよび存在する場合はドーパントの全量に対して約10重量%〜約90重量%、約15重量%〜約80重量%、約25重量%〜約75重量%、約30重量%〜約70重量%または約35重量%〜約65重量%の半導電性共役ポリマーを含む。
【0141】
さらに、ドーパントは、半導電性共役ポリマーの繰り返し単位のモル量に対応する量で存在し得る。例えば、ドーパントは、約0.01モルドーパント/モル半導電性ポリマー繰り返し単位(「m/ru」)〜約1m/ruの量で組成物中に典型的に存在し、ここでmはドーパントのモル量であり、ruは半導電性ポリマー繰り返し単位のモル量である。いくつかの態様では、ドーパントは約0.01m/ru〜約0.5m/ru、約0.1m/ru〜約0.4m/ruまたは約0.2m/ru〜約0.3m/ruの量で存在する。典型的には、ドーパントは約0.2〜0.3m/ruの量で存在する。いくつかの態様では、ドーパントは組成物中に存在しない。
【0142】
素子および用途
ポリマー、および該ポリマーを使用して形成される組成物を使用して、各種素子中の素子層を作り出すことができる。したがって一態様では、素子は、以下で表される繰り返し単位を含む共重合体を含む層を含む:
式中、Ar1はアリールアミンであり、Ar2はアリールを含み、R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキレンオキシより独立して選択される。
【0143】
素子は、OLED、PLED、PHOLEDまたはOPV素子であり得るがそれに限定されない。
【0144】
ポリマーを使用して例えば正孔注入層を形成することができる。ポリマーを使用して正孔輸送層を形成することができる。ポリマーを使用して光活性層を形成することができる。ポリマーを使用して電子遮断層を形成することができる。
【0145】
本態様のポリマーを使用して、当技術分野で公知の方法に従って素子を作製することができる。インクを含む組成物を、各種素子中の正孔注入層、正孔輸送層、電子遮断層および活性層として堆積させることができる。
【0146】
例えば、ポリマー組成物を、スピンキャスト法、インクジェット法、ドクターブレード法、スプレーキャスト法、ディップコート法、蒸着法または任意の他の公知の堆積法によってHIL膜上に堆積させることができる。例えば次に、堆積膜を約40〜約250℃、または約150〜180℃で、約1分間〜2時間、例えば10分間〜1時間、例えば不活性雰囲気中でアニールしてもよい。
【0147】
ポリマー組成物を用いて流延される層の厚さは、例えば約10nm〜約300nm厚、または30nm〜60nm、60nm〜100nmもしくは100nm〜200nmであり得る。次に、膜を110〜200℃で1分〜1時間、任意で不活性雰囲気中で、乾燥/アニールしてもよい。アニール用の方法は当技術分野で公知である。溶媒アニールを行うこともできる。
【0148】
本組成物より製作可能な有機電子素子の例としては、OLED、PLED、PHOLED、SMOLED、ESD、光電池、ならびにスーパーキャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、カチオントランスデューサ、薬物放出デバイス、エレクトロクロミック素子、センサ、FET、アクチュエータおよび膜が挙げられるがそれに限定されない。別の用途は、有機電界効果トランジスタ(OFETS)用電極改質層を含む電極改質層である。他の用途としてはプリンテッドエレクトロニクス、プリンテッドエレクトロニクスデバイスおよびロール・ツー・ロール生産プロセスの分野のものが挙げられる。さらに、本明細書で論じる組成物は電極上のコーティングであり得る。
【0149】
本組成物を使用して、有機光起電力素子(OPV)用のHTLを形成することができる。有機光起電力素子は例えばOrganic Photovoltaics, S-S, Sun, N. Sariciftci, 2005に一般に記載されている。OPVは当技術分野で公知である。例えば2006年4月13日公開の米国特許出願公開第2006/0076050号を参照。OPV活性層の記載を含む、2008年2月14日公開の国際公開公報第2008/018931号も参照。その全体が参照により本明細書に組み入れられる、「Hole Collection Layer Compositions and Photovoltaic Devices」と題する、Williamsらによる2008年4月9日出願の米国仮出願第61/043,654号も参照。例えば、この素子は、ガラスまたはPET上の酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体を含む陽極と; 正孔注入層および/または正孔輸送層と; P/Nバルクヘテロ接合層と; LiFなどのコンディショニング層と; 例えばCa、AlまたはBaなどの陰極とを例えば含む多層構造を含み得る。例えば、種々の光活性層をOPV素子中で使用することができる。米国特許第5,454,880号(Univ. Cal.); 第6,812,399号; および第6,933,436号に例えば記載の導電性ポリマーと例えば混合したフラーレン誘導体を含む光活性層を有する光起電力素子を調製することができる。また、光活性層は導電性ポリマーのブレンド、導電性ポリマーと半導電性ナノ粒子とのブレンド、ならびにフタロシアニン、フラーレンおよびポルフィリンなどの小分子の二重層を含み得る。
【0150】
LEDおよびOLEDは、例えばOrganic Light-Emitting Materials and Devices (Ed., Z. Li, H. Meng), 2007に一般に記載されている。例えば欧州特許第1950818号(Samsung SDI)も参照。
【0151】
例えば、本組成物を使用して、OLED素子用のHILを形成することができる。OLED素子は当技術分野で公知である。例えば2006年4月13日公開の米国特許出願公開第2006/00787661A1号を参照。「Hole Injection/Transport Layer Compositions and Devices」と題する2006年8月10日公開のHammondらの米国特許出願公開第2006/0175582A1号も参照。例えば、この素子は、ガラスまたはPETもしくはPEN上のITOなどの透明導電体を含む陽極と; 正孔注入層と; ポリマー層などのエレクトロルミネセンス層と; LiFなどのコンディショニング層と; 例えばCa、AlまたはBaなどの陰極とを例えば含む多層構造を含み得る。米国特許第4,356,429号および第4,539,507号(Kodak)も参照。
【0152】
これらの層または成分の各々を調製するための材料および調製する方法は当技術分野で周知である。例えば、OLED中のエレクトロルミネセンス層に使用される、発光する共役ポリマーは、例えば米国特許第5,247,190号および第5,401,827号(Cambridge Display Technologies)に記載されている。素子構造、物理的原理、溶液加工、多層形成、ブレンド、ならびに材料の合成および調合を含む、その全体が参照により本明細書に組み入れられるKraft et al., "Electroluminescent Conjugated Polymers - Seeing Polymers in a New Light," Angew. Chem. Int. Ed., 1998, 37, 402-428も参照。各種導電性ポリマー、およびSumation、Lumtec、Merck Yellow、Merck Blue、American Dye Sources(ADS)、Kodak(例えばAlQ3など)、さらにはAldrichより入手可能なBEHP-PPVなどの材料などの有機分子を含む、当技術分野で公知のかつ市販の発光体を使用することができる。そのようなポリマーおよび小分子材料は当技術分野で周知であり、例えばVanSlykeに発行した米国特許第5,047,687号; およびBredas, J.-L., Silbey, R., eds., Conjugated Polymers, Kluwer Academic Press, Dordrecht (1991)に記載されている。OLED成分および層のより完全な記載については、"Organic Light-Emitting Materials and Devices," Z. Li and H. Meng, Eds., Leo et al. Chemical Reviews, 107, 2007, 1233-1271, CRC Press (Taylor and Francis Group, LLC), Boca Raton (2007)、特に第1章(pp. 1-44)、第2章(pp. 45-294)、第3章(pp. 295-412)および第10章(pp. 617-638)も参照。
【0153】
製作した素子を素子性能について、当技術分野で公知の方法を使用して試験することができる。例えばOLEDでは、当技術分野で公知の方法を使用して、輝度、効率および寿命などの素子性能パラメータを測定することができる。
【0154】
当技術分野で公知の方法を使用してOLED性能パラメータを測定することができる。典型的には、素子性能測定を10mA/cm2で行う。例えば、以下に概説するプロトコールを使用して、電流密度(mA/cm2)、動作電圧(V)、輝度(cd/m2)および効率(cd/A)のOLED素子性能パラメータを測定することができる。
【0155】
典型的なOLEDパラメータの例は以下の通りである。
【0156】
典型的なOLED素子電圧は例えば約2〜約15、または約2〜約8、または約2〜5、または約3〜約14、または約3〜約7であり得る。典型的な素子輝度は例えば少なくとも100cd/m2、または少なくとも500cd/m2、または少なくとも750cd/m2、または少なくとも1,000cd/m2であり得る。典型的な素子効率は例えば少なくとも0.25cd/A、または少なくとも0.45cd/A、または少なくとも0.60cd/A、または少なくとも0.70cd/A、または少なくとも1.00cd/A、または少なくとも2.5cd/A、少なくとも4.00cd/A、または少なくとも5.00cd/Aであり得る。典型的な素子寿命は、50mA/cm2または最大75mA/cm2で時間単位で測定可能であり、例えば少なくとも50時間、または少なくとも100時間、または少なくとも約900時間、または少なくとも1,000時間、または少なくとも1100時間、または少なくとも2,000時間、または少なくとも5,000時間、または少なくとも10,000時間、または少なくとも20,000時間、または少なくとも50,000時間であり得る。
【0157】
有機素子中のHILまたはHTLとして使用する場合の本組成物は、電力効率などの素子パラメータの増加を典型的に導く。例えば、いくつかの態様では、本組成物は、OLED中のHILとして使用する場合、絶縁性マトリックス成分を含む伝統的なHILを使用して製作されるOLEDに比べて、良好な正孔注入層の非存在下でのOLEDの動作電圧および量子効率に応じて少なくとも5%または少なくとも約10%以上〜最大約50%の効率の増加を導き得る。
【0158】
電子素子ならびにそれを作製および使用する方法を教示する他の参考文献としては、例えばPlextronics, Inc.に譲渡された米国特許出願公開第2006/0076050号; 第2006/0078761号; 第2006/0175581号; 第2006/0237695号; 第2007/0065590号; 第2008/0248313号が挙げられる。
【実施例】
【0159】
各種態様を、非限定的な実施例の使用によりさらに説明する。
【0160】
実施例1:ポリ(TPD-TFVBPA)の合成
ポリ(TPD-TFVBPA)の合成を以下の反応スキームに従って行った。
【0161】
清潔な火炎乾燥100mL二つ口シュレンクフラスコに、J. Mater. Chem. (2008), 18(12), 1296-1301に見られるものと同様の様式で調製可能なTPD-(OH)2 0.911グラムを加えた。セプタムで封止したこのフラスコに無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF) 5mLを注入し、固形分の溶解の時点でカリウムtert-ブトキシド98mgを加えた。溶液は橙赤色から淡黄色になった。内容物を窒素下室温で20分間撹拌し、無水DMF 5mLに溶解した4,4'-(パーフルオロプロパン-2,2-ジイル)ビス((1,2,2-トリフルオロビニルオキシ)ベンゼン) (Oakwood Products) 0.886gをシリンジを経由して加えた。トリフルオロビニルエーテルモノマーを含むバイアルを無水DMF 5mLで1回すすぎ、洗浄液を反応フラスコに加えた。反応を室温で17.5時間続け、その時点で、Synquest Labsより得たポリマー連鎖停止剤パーフルオロ(5-メチル-3,6-ジオキサノン-1-エン) 0.05mlを加えた。反応を室温でさらに8時間続け、室温でエタノール250mLに注ぐことで析出させた。析出したポリマーを遠心分離し、上澄み液をデカントした後に真空オーブン中で乾燥させた。乾燥固形分約1.4グラムを得て、これを再度無水テトラヒドロフラン15mLに溶解させ、エタノール200mL中に析出させた。次にポリマーを遠心分離し、上澄み液をデカントした。次に白色ポリマーを0.45μm PVDF疎水性膜フィルター上に配置し、エタノール(約50mL)で洗浄した。ポリマーを最後に真空オーブン中にて室温で24時間乾燥させて白色粉末0.88グラムを得た。構造を、核磁気共鳴分光法(図4を参照)、およびクロロホルムを溶離液として使用しかつポリ(スチレン標準物質)により較正するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(ポリマーについてMn = 12,221 (PDI = 1.59)を示す図5を参照)で確認した。
【0162】
実施例2:TPD-TFVモノマーの合成
TPD-TFVモノマーの合成を以下の反応スキームに従って行った。
【0163】
温度計および還流冷却器付きの清潔な火炎乾燥500mL三つ口シュレンクフラスコに、N,N'-ジフェニルベンジジン(Aldrich Chemicals) 10グラム、水酸化カリウム10グラム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド140mg、トルエン250ml、1-ブロモ-4-(トリフルオロビニルオキシ)ベンゼン(Oakwood Chemical) 16.7グラムおよび脱イオン水5mlを加えた。この攪拌混合物を、窒素を15分間吹き込むことで脱気した。この反応混合物に無水無酸素トルエン中0.33Mトリ-tert-ブチルホスフィン(Aldrich) 14.7mlを加えた。激しく攪拌しながらPd2dba3 1.36グラムを一度に加え、反応液を窒素ブランケット下で封止し、98℃に14.5時間加熱した。反応液を室温に冷却し、この攪拌溶液(黒褐色および均一)にMgSO4約5gを加えた。MgSO4が易流動性になる(水をすべて吸収する)までこれを攪拌し、中程度のガラスフリットを通じて濾過し、SiO2 100グラム上に吸着させた。90%ヘキサン:クロロホルム溶離液を伴う大きいシリカゲルカラム上にこれを添加した。カラムをそれで溶出させて非極性副生成物を除去した。次に極性を30%クロロホルムまで増加させて所望の材料を溶出させることにより、易流動性白色固体14.98gを収率74%で得た。プロトンおよびフッ素NMRは割り当てられた構造と一致した。
【0164】
比較例2A:TPD-TFVモノマーの合成の試み
清潔な火炎乾燥500mL三つ口丸底フラスコにN,N'ジフェニルベンジジン10.0g、続いて乾燥トルエン200mLを加えた。このスラリーにナトリウムtert-ブトキシド10.0gを加え、反応混合物を窒素で15分間掃流した。次にp-ブロモトリフルオロビニルオキシベンゼン17.8gおよびPd2dba3 1.15gを反応フラスコに加えた。次にトルエン中2.30M tert-Bu3P 8.5mLを反応フラスコに加え、加熱を開始した。反応液を終夜還流させ、全溶媒をロータリーエバポレーター上で除去した。塩化メチレン-ヘキサン混合物を使用するカラムクロマトグラフィーを経由して反応混合物を精製して、白色固体4.3gを得た。1H NMRは、化合物上のtert-ブチル基の存在を示し、19F NMRは、トリフルオロビニルオキシ官能基の、何らかの他のフッ素化アルキル種への望まれない変換の可能性を示した。このことは、トリフルオロビニルオキシ官能基上のtert-ブトキシドの望まれない求核置換の可能性を示唆した。
【0165】
実施例3:ポリ(nap-TPD-TFV)の合成
ポリ(nap-TPD-TFV)の合成を以下の反応スキームに従って行った。
【0166】
乾燥窒素でフラッシングした100mL二つ口RBFに、4,4'-ビス(トリフルオロビニルオキシ)テトラフェニルベンジジン1.0g、カリウムtert-ブトキシド(Aldrichの昇華精製グレード) 0.165gおよび2,7-ジヒドロキシナフタレン0.235gをグローブボックス中で加えた。フラスコをラバーセプタムで封止し、無水DMF 12mLをフラスコに注入した。反応混合物を窒素圧下、室温で終夜撹拌した。次に反応混合物を50℃に7時間加熱し、続いてパーフルオロ(5-メチル-3,6-ジオキサノン-1-エン) 0.2mLを注入し、反応を室温で終夜続けた。次にポリマーをメタノール(半導体グレード、Aldrich) 100mL中に析出させ、2000rpmで15分間遠心分離した。上澄み液を廃棄後、遠心分離物をメタノール(半導体グレード、Aldrich) 100mLと共に振盪し、2000rpmで15分間再度遠心分離した。上澄み液を慎重に注ぎ出した後、白色ポリマーを真空オーブン中にて室温で乾燥させた。次に固形分を無水THF (Mbraun溶媒送達システムからの) 10mLに溶解させ、0.45ミクロンシリンジフィルターを通じて濾過し、メタノール(半導体グレード、Aldrich) 100mL中に析出させた。溶媒をロータリーエバポレーター上で除去し、ポリマーをメタノール20mLに懸濁させ、親水性膜フィルター(Millipore #SVLP09050)上で濾過し、室温で減圧乾燥させて白色ポリマー500mgを得た。クロロホルムを溶離液として使用しかつポリ(スチレン標準物質)により較正するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、図8を参照、Mn = 2,893 (PDI = 1.52)。
【0167】
ガラス転移温度(「Tg」)、融点(「Tm」)および分解開始温度(「T分解開始」)を決定した。ポリマーのガラス転移温度を、TA Instruments (DSCQ200)示差走査熱量計を使用して20℃/分のランプ速度で得た。分解温度を、(TGAQ500)熱重量分析計を使用して50℃/分のランプ速度で得た。Tg (ポリ(nap-TPD-TFV) = 100℃。
【0168】
実施例4:インク組成物およびHIL試験
ポリ(TPD-TFVBPA)、およびドーパントとしてのIMDPIB(PhF5)4を使用して、一連のHILインク組成物を調製した。組成物を下記表1に示す。
【0169】
以下の一般的手順を使用してインク組成物を得た。各々1%(w/w)固形分を含む、クロロベンゼンまたはPMA中のポリ(TPD-TFVBPA)およびIMDPIB(PhF5)4の別々の原液を最初に調製した。次に様々な量の各原液を表1に示すように組み合わせた。
【0170】
(表1)ポリ(TPD-TFVBPA)および4-イソプロピル-4'メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを含む組成物
【0171】
得られた組み合わせ溶液を窒素ブランケット下で2時間還流させ、グローブボックス中に保管した。
【0172】
さらに、表2に示すように、PMAプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中で(TPD-TFV - 実施例2)およびドーパントとしてのIMDPIB(PhF5)4を使用して、いくつかのインク調合物を作製した。
【0173】
(表2)TPD-TFVおよび4-イソプロピル-4'メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを含む組成物
【0174】
正孔注入層(HIL)試験
表1および2のインク組成物1〜9をITO表面上で回転させてHIL層を調製した。比較ベンチマークとして役立つ異なるHIL層(「比較HIL 1」)を、下記表3に示すインク組成物より形成した。
【0175】
(表3)比較HIL 1の組成
*P3MEET-Sは、Plextronics, Inc.に譲渡された2007年7月13日出願の米国特許出願公開第2008/0248313号に記載のスルホン化ポリ(3-メトキシエトキシエトキシチオフェン)である。
【0176】
ポリ(TPD-TFVBPA)インク組成物を使用して形成した薄膜の吸光度、蛍光および紫外可視近赤外スペクトルを得た。図1は、ガラス基板上のポリ(TPD-TFVBPA)の薄膜の吸光度スペクトルおよび蛍光スペクトルを示す。図2は、ガラス基板上にクロロベンゼン中溶液から流延した4-イソプロピル-4'メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートでドープし、3つの温度でアニールした、ポリ(TPD-TFVBPA)の薄膜の紫外可視近赤外スペクトルを示す。ポリマーの酸化のドーピングプロファイルを観察した。
【0177】
実施例5:素子製作
当技術分野で公知の手順に従ってOLED素子を製作した。素子は、ガラス基板上に堆積した酸化インジウムスズ(ITO)表面上にて製作した。ITO表面を予めパターン形成して0.05cm2の画素面積を確定した。希石鹸溶液中で20分間の超音波処理、続いて蒸留水洗浄により、素子基板を清浄にした。これに続いてイソプロパノール中で超音波処理を20分間行った。基板を窒素流下で乾燥させた後、300Wで作動する紫外-オゾン室中で20分間処理した。
【0178】
次に、清浄にした基板をHILインク調合物でコーティングし、90〜170℃で5〜15分間乾燥させてHIL膜層を形成した。乾燥膜厚は約20nm〜60nmの範囲であった。コーティングプロセスは、スピンコーター上で行ったが、スプレーコーティング、インク噴射、接触印刷、または所望の厚さのHIL薄膜を得ることが可能な任意の他の堆積方法によって同様に実現することができる。次に基板を真空室に移し、そこで素子スタックの残りの層を物理蒸着法により堆積させた。
【0179】
このようにして得た素子をガラスカバースリップで封入して、4分間の80W/cm2紫外線露光で硬化する紫外線硬化性エポキシ樹脂による周囲条件に対する露光を防止した。
【0180】
実施例6および7のOLED素子について性能試験を行った。典型的には、動作電圧(低くあるべきである)、ニット単位での輝度(明るく輝いているべきである)、cd/A単位での効率(素子より光を得るためにどの程度の電荷が必要であるかを反映する)および動作下の寿命(試験開始時点の初期輝度値の半分に到達するために必要な時間)などの異なるパラメータの組み合わせにより性能が定量化される。したがって、HIL性能の比較評価においては、全体的な性能が非常に重要である。以下の手順を使用して素子の性能を試験した。
【0181】
OLED素子はガラス基板上の画素を含み、画素の電極は素子の封入区域の外側に延伸しており、封入区域は画素の発光部分を含む。そのような素子中の各画素の典型的な面積は0.05cm2である。素子を試験するために、電極をKeithley 2400ソースメータなどの電流ソースメータと接触させ、アルミニウム電極を接地している間にバイアスを酸化インジウムスズ電極に印加した。この手順により正に帯電した担体(正孔)および負に帯電した担体が得られ、これらは、励起子を形成しかつ光を発生させる素子に注入される。この実施例のOLED素子では、素子のHIL層が電荷担体の発光層への注入を補助し、これにより素子の低動作電圧(画素を通じた所与の電流密度を実行するために必要な電圧として定義される)が得られる。
【0182】
同時に、別のKeithley 2400ソースメータを使用して大面積ケイ素フォトダイオードをアドレスした。このフォトダイオードを、2400ソースメータで0ボルトバイアスに維持し、OLED画素の点灯区域の直下にあるガラス基板の区域に直接接触させて配置した。フォトダイオードを使用して、OLED素子が発生させた光を収集し、それを光電流に変換し、光電流をソースメータで読み取った。発生したフォトダイオード電流は、Minolta CS-200クロマメータの助けによりそれを較正することで、光学単位(カンデラ/平方メートル)として定量化される。
【0183】
素子のOLED画素の電圧-電流-光またはIVLデータを以下のように作成した。素子の試験中に、OLED画素をアドレスするKeithley 2400ソースメータがそれに電圧掃引を印加した。画素を通過する得られた電流を測定した。同時に、OLED画素を通過する電流により光の発生が得られ、次にこの光により、フォトダイオードに接続されるもう1つのKeithley 2400ソースメータによる光電流の読み取りが得られた。これにより、画素に対する入力電力1ワット当たりのルーメン(電力効率)および画素電流1アンペア当たりのカンデラなどの他の素子特性の測定が可能になった。
【0184】
電流密度(mA/cm2)、動作電圧(V)、輝度(cd/m2)および効率(cd/A)を、実施例6および7のOLED素子について測定した。これらの素子は、表1および2に示すインク組成物1〜9より形成されるHIL、ならびに表3の比較HILを含んでいた。結果を表4、5、6および7に提示する。表4〜7では、HIL 1〜9は表1および2のインク組成物1〜9に対応する。上記表3に記載のように比較HILを作製した。インク組成物1〜9より形成したHILを含むほぼすべての素子が、比較HILを含む素子よりも大きい輝度および大きい効率を生成した。
【0185】
実施例6:ポリ(TPD-TFVBPA)を用いるOLED素子の製作および試験
ポリ(TPD-TFVBPA)を含むインク組成物を、素子の正孔注入層として流延した。
【0186】
HIL上に堆積させた素子層は、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、正孔遮断層(HBL)、電子輸送層(ETL)および金属カソードを含んでいた。使用した材料は、HTLとしてのN,N'(ジナフタレン-1-イル)-N,N'-ジフェニル-ベンジジン(NPB)、EMLとしてのトリス-(1-フェニルイソキノリン)イリジウムIII (Ir(piq)3)でドープしたビス(2-メチル-8-キノリノラト-N1,O8)-(1,1'-ビフェニル-4-オラト)アルミニウム(BAlq)、HBLとしてのBAlq、およびETLとしてのトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)であった。これらの材料はすべて市販されている。2つの金属層、すなわちCaの3nm〜5nm層である第1の層(0.1nm/秒)、続いてAlの200nm層(0.5nm/秒)を、5x10-7Torrのベース圧力で順次堆積させることで、カソード層を調製した。
【0187】
図3は、素子1、2、3のIVL測定値を比較HIL例と共に示す。
【0188】
HIL 1〜3および比較HILの素子性能を表4に要約する。表でわかるように、これらの非水性HILの各々は、比較水性HILよりも良くなかったとしても同等のIVL性能を示す。
【0189】
(表4)本発明HIL 1〜3と比較HILとの比較。素子構造: ITO/HIL/NPB/BAlq:Ir(piq)3 (15重量%)/BAlq/Alq3/Ca/Al
【0190】
実施例7:TPD-TFV (実施例2)を用いるOLED素子の製作および試験
TPD-TFVを含むインク組成物を、素子の正孔注入層として流延した。HILの上に堆積させた層は、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、正孔遮断層(HBL)、電子輸送層(ETL)および金属カソードを含んでいた。使用した材料は、HTLとしてのN,N'(ジナフタレン-1-イル)-N,N'-ジフェニル-ベンジジン(NPB)、EMLとしてのトリス-(1-フェニルイソキノリン)イリジウムIII (Ir(piq)3)でドープしたビス(2-メチル-8-キノリノラト-N1,O8)-(1,1'-ビフェニル-4-オラト)アルミニウム(BAlq)、ビス(2-メチルキノリン-8-オラト-κ2N,O)(6-フェニル-2-ナフトラト-κO)アルミニウム(III) (BAlq')、ならびに電子輸送層ETLおよび電子注入層EILであった。これらの材料はすべて市販されている。Alの200nm層(0.5nm/秒)を5x10-7Torrのベース圧力で順次堆積させることで、カソード層を調製した。
【0191】
図10a、bは、素子4、5、6および比較例のIVL測定値を示す。図11a、bは、素子7、8、9および比較例のIVL測定値を示す。
【0192】
(表5)HIL 4〜9と比較HILとの比較。素子構造: ITO/HIL/NPB/BAlq:Ir(piq)3 (15重量%)/BAlq'/ETL/EIL/Al
【0193】
さらに、OLED素子をそれらの寿命性能について試験することもできる。試験される素子に定電流を供給する寿命試験器を使用して寿命性能を測定することができる。素子への電流が一定の初期輝度値を与えるようにそれを調整する。寿命性能試験では、この値を典型的には1,000カンデラ/メートル2に設定する。次に経時的な輝度減衰および電流上昇を記述する。
【0194】
上記実施例5〜7のそれと同様にして製作したOLED素子を寿命性能について試験した。OLED素子は、表6に示す素子効率測定に使用した比較HILおよび本発明HILを含んでおり、一般構造ITO/HIL/NPB/BAlq:Ir(piq)3 (15重量%)/ETL/EIL/Alを有していた。寿命性能試験の結果を表6に示す。一般に、本発明HILを含む素子は、比較HILを含む素子よりも大きい輝度および長い寿命を生成した。
【0195】
(表6)比較および本発明HILの寿命試験。素子構造: ITO/HIL/NPB/BAlq:Ir(piq)3 (15重量%)/ETL/EIL/Al
【0196】
洗浄試験
実施例8:1,1,1-トリス(4-トリフルオロビニルオキシフェニル)エタン(TFVOE)を有するおよび有さないTPD-TFVモノマーの膜厚
上記実施例2に記載の反応スキームに従ってTPD-TFVの試料を合成した。95重量% DOWANOL(商標)PMAプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(ミシガン州ミッドランド48674のThe Dow Chemical Companyより入手可能)に溶解した5重量% TPD-TFVを含む試料を、参照溶液として調製した。4.25〜4.75重量% TPD-TFV、0.25〜0.75重量% TFVOE (カタログ番号019500、サウスカロライナ州ウエストコロンビア29172のOakwood Chemicalより入手可能)および95重量% DOWANOL(商標)PMAを含むいくつかの実験溶液を調製した。TPD-TFV溶液への0.25〜0.75重量%三官能性成分TFVOEの添加の、そのような組成物で形成することで得られる膜に対する効果を測定するために、試験を行った。具体的には、グローブボックス中で溶液をITOプレート上にて1000rpmで回転させた後、アニールした。第1のアニール後に第1の厚さ測定値(「トルエン前」)を得た。次に得られた膜をトルエン洗浄にさらし、4330rpmで回転させ、130℃でさらに15分間アニールした。次に第2の厚さ測定値(「トルエン後」)を得た。偏光解析技術により膜厚測定値を得た。結果を下記表7に示す。
【0197】
(表7)膜厚測定試験
【0198】
表7のデータは、TFVOEを有さない膜ではアニール間のトルエン洗浄により膜厚の何らかの損失が生じることを示す。TFVOEが溶液および得られる膜に存在する場合、同様のトルエン洗浄は、厚さの変化があったとしてもほとんどそれを引き起こさない。調製した溶液中での0.25重量%から0.75重量% TFVOEへのTFVOEの増加により、トルエン洗浄後の厚さの損失の減少が得られる。有機溶媒を含むインクよりさらなる層を堆積させる時点で保護しなければ洗い流される可能性がある下地膜を保護するための経路を、これらの結果は与える。
【0199】
実施例9:N3,N6-ジフェニル-N3,N6,9-トリス(4-(1,2,2-トリフルオロビニルオキシ)フェニル)-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン(Cz-TFV)の合成および試験
1. 合成
N3,N6-ジフェニル-N3,N6,9-トリス(4-(1,2,2-トリフルオロビニルオキシ)フェニル)-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン(下記化合物4)の合成を、以下の反応スキームに従って行った。
【0200】
第1の反応により、以下のスキームに従って化合物(1)を生成する。
【0201】
3,6-ジブロモ-9-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-9H-カルバゾール(化合物1)の調製:
フラスコ(1L)にN2下室温で、3,6-ジブロモカルバゾール(50g)、ジクロロメタン(500mL)、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(40g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(1g)を加えた。反応液を終夜攪拌した。NaHCO3 (3g)を加え、反応液を1時間攪拌した。濾過後、濾液中の溶媒を蒸発除去した。MeOH (1L)を加え、N2下で2時間還流させた。それが昇温した時点で濾過して生成物37.5gを得た。MeOH (800mL)を蒸発除去し、固体を析出させた。濾過により生成物12.5gを得た。両生成物はTLC上で白色の単一スポットであり、GS-MSおよび1H NMRはそれらが純粋な生成物であることを示した。全収率は80%である。
【0202】
上記反応スキームに続く第2および第3の反応により、以下のスキームに従ってそれぞれ化合物(2)および(3)を生成する。
【0203】
N3,N6-ジフェニル-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン(化合物3)の調製:
乾燥フラスコにN2下で3,6-ジブロモ-9-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-9H-カルバゾール(1) (37.5g)、アニリン(25mL)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(430mg)、水酸化カリウム水溶液(68.6g、水中45%)、トルエン(1.2L)を加えた。攪拌混合物をN2で15分間掃流した。次にこの混合物にPd2dba3 (4.12g)およびトリ-tert-ブチルホスフィン(無水トルエン中2.97g)を加えた。反応液を終夜加熱還流させた。反応液を室温に冷却し、無水MgSO4を加え、シリカゲルおよびセライトの層を通じて濾過した。溶媒を除去し、粗生成物を精製せずに次の反応に使用した。2LフラスコにN2下で、N3,N6-ジフェニル-9-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン(2)の粗生成物全部、THF (1L)および濃HCl (20mL)を加えた。反応混合物を2時間攪拌した。THF (700mL)を蒸発除去した後、氷水に注ぎ、濾過して固体粗生成物を得た。固体を酢酸エチル(500mL)中で2時間攪拌し、濾過により最終生成物(13.7g)を2段階収率42%で得た。1H NMRはこの化合物と一致した。
【0204】
化合物4を調製する引き続く第4の反応を以下のように行う。
【0205】
N3,N6-ジフェニル-N3,N6,9-トリス(4-(1,2,2-トリフルオロビニルオキシ)フェニル)-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン(Cz-TFV; 化合物4)の調製
乾燥フラスコにN2下でN3,N6-ジフェニル-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン(3) (5g)、1-ブロモ-4-(トリフルオロビニルオキシ)ベンゼン(14.5g)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(313mg)、水酸化カリウム水溶液(17.8g、水中45%)、1,4-ジオキサン(500mL)を加えた。攪拌混合物をN2で15分間掃流した。次にこの混合物にPd2dba3 (1.2g)およびトリ-tert-ブチルホスフィン(無水トルエン中0.75g)を加えた。反応液を終夜加熱還流させた。反応液を室温に冷却し、無水MgSO4を加え、シリカゲルおよびセライトの層を通じて濾過した。溶媒を除去し、粗生成物をシリカプラグ(ヘキサン、次にヘキサン中1% EtOAc)を使用して精製した後、自動カラム(ヘキサン)を使用してさらに精製した。純粋な生成物4.8gを収率39%で得た。1H、13Cおよび19F NMRはこの化合物と一致した。
【0206】
2. 調合
TS = 全固形分
【0207】
3. Cz-TFVの特性
この膜はグローブボックス中1,000rpm/60秒の回転条件によるものであり、アニール条件はガラス上のグローブボックス中250℃/60分とした。
紫外可視: λmax = 311nm、PL: λmax = 425nm
図12を参照
透過率: λ= 462nmの場合95%超
図13を参照。
【0208】
さらなる膜試験
プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)
回転条件: グローブボックス中1000rpm/60秒
アニール条件: グローブボックス中250℃/60分
良好な膜とは目視観察において平滑で透明な均一の膜を意味する。
ITO基板。
【0209】
膜中の架橋反応
膜中の架橋反応をFTIRでモニタリングした。1833cm-1ピークは弱く、965cm-1ピークを使用して膜中の架橋反応をモニタリングした。アニール温度150、200および250℃ならびにこれらの温度でのアニール時間2、15、60分をHTL 1について試験する。250℃/60分でのピーク増加はない。しかし、トルエン洗浄後は膜が残存しない。したがって、5% TFVOEを調合物HTL2に加えた。
【0210】
ITO上での膜形成および洗浄試験
HTL2、HTL3およびHTL4は、ITO上で良好な膜を形成すること、およびトルエン/クロロベンゼン洗浄後に90〜100%の膜保持率を有することが可能である。Cz-TFVは3個の架橋基を有し、膜保持率についてTPD-TFVよりも優れた性能を示す。
【0211】
(1) HIL比較2ならびに非水性HIL比較3および4上での膜形成
HTL 3は、水性HILと非水性HILとの両方の上で一貫した厚さで良好な膜を形成可能である。
【0212】
(4) 紫外線および熱アニール
紫外線および熱アニールではいずれも、トルエン洗浄後に膜厚が90〜100%保持される。しかし紫外線アニールはより厚い膜を与えた。基板はITOとする。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2008年11月18日出願の米国仮出願第61/115,877号の優先権を主張し、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
例えば有機発光ダイオード(OLED)などの有機発光素子および有機光起電力素子(OPV)などの光起電力素子などの種々の電子素子の性能を改善する必要性が存在する。この必要性を満たす1つの方法は、素子出力を強化しかつ素子寿命を延長する、これらの素子用の新規材料の開発を通じてのものである。特に有望なアプローチは、正孔注入層、正孔輸送層および正孔抽出層などの素子層用の新規材料の開発にある。
【0003】
特に、これらの素子における正孔注入および/または正孔輸送用の技術の改善が望ましい。一般に、最先端の有機電子素子は、素子を通じる電荷の流れならびに電子および正孔の分離または再結合を最適化する、素子内の正孔注入層(HIL)および/または正孔輸送層(HTL)の利点を依然として享受し得る。しかし、正孔注入層および正孔輸送層は、加工用溶媒中の成分材料の溶解性(またはその欠如)が理由で、かつHIL性能に必要なドーパントおよび/または酸が理由で、困難な問題を示すことがある。ドーパントおよび酸は、素子動作(例えば効率および劣化)へのそれらの関与を最小化するように、公正に選択すべきである。
【0004】
さらに、素子動作に対する有害な影響を最小化するために、例えば非水性および/または非プロトン性の高純度溶媒などの選択される溶媒から正孔注入層成分および/または正孔輸送層成分を加工可能にする必要性が存在することが認識される。さらに、気相プロセスまたは溶液プロセスによる後続層の堆積に対して適合性がある層を開発する必要性も存在する。
【発明の概要】
【0005】
概要
例えば正孔輸送層(HTL)または正孔注入層(HIL)に使用される組成物、ならびに該組成物を作製する方法および該組成物より製作される素子が提供される。
【0006】
組成物は、少なくとも1つの半導電性有機材料および任意的なドーパントを含み得るものであり、絶縁性マトリックス成分を実質的に含まないかまたは全く含まないことがある。組成物は、OLEDまたはOPVなどの電子素子に組み入れられる際に素子の性能の増加を導き得る、改善されたHILおよびHTLを例えば生成することができる。
【0007】
一態様は、少なくとも1つのアリールアミンを含む少なくとも1つの繰り返し部分と、少なくとも1つのフッ素化アルキレンオキシを含む少なくとも1つの繰り返し部分とを含む、ポリマー主鎖またはオリゴマー主鎖を含む、組成物を提供する。一態様では、アリールアミンを含む繰り返し部分とフッ素化アルキレンオキシを含む繰り返し部分とは、交互に現れる部分である。一態様では、アリールアミンはトリアリールアミンを含む。一態様では、アリールアミン部分は少なくとも2個の窒素原子を含む。一態様では、フッ素化アルキレンオキシはC1〜C10アルキレンエーテルを含む。一態様では、フッ素化アルキレンオキシはフッ素化C1〜C10ビニルエーテルを含む。一態様では、フッ素化アルキレンオキシはトリフルオロアルキレンオキシ部分を含む。一態様では、組成物は、アリールアミンおよびフッ素化アルキレンオキシを含む可溶性の線状ポリマーを含む。一態様では、組成物は架橋されている。
【0008】
別の態様は、以下で表される繰り返し単位を含むオリゴマーまたはポリマーを提供する:
式中、Ar1はアリールアミンを含み、Ar2はアリールを含み、R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキレンより独立して選択される。一態様では、繰り返し単位(I)および(II)は交互に現れる。一態様では、Ar1は以下で表される:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、kは1〜4の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数である。一態様では、Ar1は以下で表される。
一態様では、Ar2は以下で表される:
式中、zは1〜5の整数である。一態様では、Ar2は以下で表される:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、kは1〜4の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数である。一態様では、Ar2は以下で表される:
式中、R3はフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルであり、Zは1〜5の整数である。一態様では、Ar2は以下で表される。
一態様では、R1およびR2はフルオロアルキルより独立して選択される。一態様では、R1およびR2はトリフルオロエチルであり、オリゴマーまたはポリマーは不溶性でありかつ架橋されているか、または可溶性である。
【0009】
別の態様は、
(X) HO-Ar4-OH
で表される第1のモノマーと、
(XII) R5-O-Ar5-O-R6
で表される第2のモノマーとを共重合する工程を含む、オリゴマーまたはポリマーを作製する方法を提供する:
式中、Ar4およびAr5はアリール部分またはアリールアミン部分より独立して選択され、但し、Ar4およびAr5の少なくとも一方はアリールアミンであり、R5およびR6は独立してフッ素化C1〜C10アルキレンを表す。一態様では、Ar4は以下で表される:
式中、zは1〜5の整数である。一態様では、Ar4は以下で表される:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、kは1〜4の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数である。一態様では、Ar4は以下で表される。
一態様では、Ar5は以下で表される:
式中、zは1〜5である。一態様では、Ar5は以下で表される:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、kは1〜4の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数である。一態様では、Ar5は以下で表される。
一態様では、Ar5は以下で表される:
式中、R3はフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルであり、Zは1〜5の整数である。一態様では、R5およびR6はフッ素化C1〜C10アルキレンより独立して選択される。一態様では、R5およびR6はトリフルオロアルキレンである。
【0010】
別の態様は、
(X) HO-Ar4-OH
で表される第1のモノマーと、
(XII) R5-O-Ar5-O-R6
で表される第2のモノマーとを共重合することで形成されるオリゴマーまたはポリマーを提供する:
式中、Ar4およびAr5はアリール部分またはアリールアミン部分より独立して選択され、但し、Ar4およびAr5の少なくとも一方はアリールアミンであり、R5およびR6は独立してフッ素化C1〜C10アルキレンを表す。一態様では、Ar4は以下で表される:
式中、zは1〜5である。一態様では、Ar4は以下で表される:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、kは1〜4の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数である。一態様では、Ar4は以下で表される。
一態様では、Ar5は以下で表される:
式中、zは1〜5の整数である。一態様では、Ar5は以下で表される:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、kは1〜4の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数である。一態様では、Ar5は以下で表される。
一態様では、Ar5は以下で表される:
式中、R3はフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルであり、Zは1〜5の整数である。一態様では、R5およびR6はフッ素化C1〜C10アルキレンより独立して選択される。一態様では、R5およびR6はトリフルオロアルキレンである。
【0011】
別の態様は、以下で表される繰り返し単位を含むオリゴマーまたはポリマーと、少なくとも1つの溶媒とを含む、組成物を提供する:
式中、Ar1はアリールアミンであり、Ar2はアリールを含み、R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキルより独立して選択される。一態様では、組成物は、少なくとも1つのn型材料または少なくとも1つのp型ポリマーをさらに含む。一態様では、組成物は少なくとも1つの共役ポリマーをさらに含む。一態様では、組成物は少なくとも1つのドーパントをさらに含む。一態様では、組成物は少なくとも1つの量子ドットをさらに含む。一態様では、組成物は、約50重量%〜約99重量%の前記少なくとも1つの溶媒をさらに含む。一態様では、組成物は、約0.01重量%〜約5重量%の前記オリゴマーまたはポリマーをさらに含む。一態様では、Ar1は以下で表され:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、kは1〜4の整数であり、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数であり; Ar2は以下で表される:
式中、R3はフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルであり、Zは1〜5の整数である。一態様では、Ar1は以下で表され:
Ar2は以下で表される。
【0012】
別の態様は、以下で表される繰り返し単位を含むオリゴマーまたはポリマーを含む層を含む、素子を提供する:
式中、Ar1はアリールアミンであり、Ar2はアリールを含み、R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキルより独立して選択される。一態様では、前記素子はOLED、PLED、PHOLEDまたはOPV素子である。一態様では、前記層は正孔注入層である。一態様では、前記層は正孔輸送層である。一態様では、前記層は光活性層である。一態様では、前記層は電子遮断層である。一態様では、前記層はn型ポリマーをさらに含む。一態様では、前記層はp型ポリマーをさらに含む。一態様では、前記層は共役ポリマーをさらに含む。一態様では、前記層は量子ドットをさらに含む。一態様では、前記オリゴマーまたはポリマーはドープされている。
【0013】
別の態様は、(i) 少なくとも1つのアリールアミンと、(2) アリールアミンに共有結合している少なくとも1つのフルオロビニルエーテル単位とを含む、組成物を提供する。一態様では、組成物はモノマー、オリゴマーまたはポリマーである。一態様では、組成物はモノマーであり、一態様では、組成物はオリゴマーであり、一態様では、組成物はポリマーである。
【0014】
別の態様では、組成物は(i) 少なくとも1つのアリールアミンと、(2) アリールアミンに共有結合している少なくとも1つのフルオロビニルエーテル単位とから本質的になる。
【0015】
別の態様では、正孔輸送を行うように適合されている少なくとも1つの繰り返し部分と、少なくとも1つのフッ素化アルキレンオキシ繰り返し部分とを含む、ポリマー主鎖またはオリゴマー主鎖を含む、組成物が提供される。
【0016】
別の態様では、正孔輸送を行うように適合されている少なくとも1つの繰り返し部分と、以下で表されるモノマーに由来する少なくとも1つのフッ素化繰り返し部分とを含む、ポリマー主鎖またはオリゴマー主鎖を含む、組成物が提供される:
または
式中、Rは
のうちの1つで表される。
【0017】
別の態様は、 少なくとも2つの第二級アミン部分を含む少なくとも1つのアリールアミンと、アルキレンオキシ単位を含む少なくとも1つのアリールブロミドとを、有機金属錯体を使用して反応させて、アルキレンオキシ単位を含むアリールアミンモノマーを形成させる工程を含む方法を提供する。一態様では、前記反応は、相間移動触媒作用を使用して行われる。
【0018】
いくつかの態様の1つの利点は、より良い動作安定性を有するポリマーを提供することにある。いくつかの態様の別の利点は、素子層への電荷注入を容易にするポリマーを提供することにある。いくつかの態様の別の利点は、溶液加工素子層の調製用の直交溶媒に対して適合性があるポリマーを提供することにある。いくつかの態様のさらに別の利点は、正孔注入層または正孔抽出層用のポリマーを作製する比較的簡便な方法を提供することにある。いくつかの態様のさらに別の利点は、OPV素子の漏れ電流を減少させることに役立つ材料を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ガラス基板上のポリ(TPD-TFVBPA)の薄膜の吸光度スペクトルおよび蛍光スペクトルを示す。
【図2】ガラス基板上にクロロベンゼン中溶液から流延した4-イソプロピル-4'メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートでドープし、3つの温度でアニールした、ポリ(TPD-TFVBPA)の薄膜の紫外可視近赤外スペクトルである。
【図3】図3aおよび3bは、それぞれ比較正孔注入層および一態様に係る正孔注入層のIVL測定値である。
【図4】共重合体の一態様の1H-NMRスペクトルを示す。
【図5】共重合体の一態様のゲル浸透クロマトグラフィー分析を示す。
【図6】TPD-TFVモノマーのプロトンNMRを示す。
【図7】TPD-TFVモノマーのフッ素NMRを示す。
【図8】ポリ(nap-(TPD-TFV)のGPCを示す。
【図9】ポリ(nap-(TPD-TFV)のNMRを示す。
【図10】図10a、bは、素子4、5、6および比較例のIVL測定値を示す。
【図11】図11a、bは、素子7、8、9および比較例のIVL測定値を示す。
【図12】HTL 3膜の紫外スペクトルおよび光ルミネセンススペクトルを示す。
【図13】HTL 3膜の透過率測定値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
序論
本明細書で使用する「TPD」という用語は、4,4'-ビス(m-トリルフェニルアミノ)ビフェニルを意味する。
【0021】
本明細書で使用する「ポリ(TPD-TFVBPA)」という用語は、下記実施例1で調製されるポリマーを意味する。
【0022】
本明細書で使用する「TPD-TFV」という用語は、下記実施例2で調製される化合物を意味する。
【0023】
本明細書で使用する「ポリ(nap-TPD-TFV)」という用語は、下記実施例3で調製されるポリマーを意味する。
【0024】
本明細書において引用されるすべての参考文献はその全体が参照により組み入れられる。
【0025】
本明細書で提供される組成物は、少なくとも1つの半導電性成分および任意的なドーパントを含み得るものであり、絶縁性マトリックス成分を実質的に含まないことがある。組成物は、OLEDまたはOPVなどの電子素子に組み入れられる際に素子性能の増加を生じさせ得る、改善されたHTLまたはHILを形成するために使用することができる。例えば、組成物は、OLED中のHILを形成するために使用可能なインク調合物を含み得る。組成物を用いて構築されるOLEDは、効率および輝度の増加を示し得る。したがって、本組成物は、有機エレクトロルミネセンスを包含する用途、特に、OLEDならびに他の照明ディスプレイおよび/または用途に使用可能な改善された正孔注入技術を提供することができる。
【0026】
少なくともいくつかの態様の組成物では、素子中のHIL層またはHTL層のいずれかとして存在する場合の半導電性成分は、電荷注入が層の表面でというよりむしろ層の全体を通じて行われることを可能にすることができる。
【0027】
組成物はまた、1つまたは複数の半導電性ポリマーの組成物用のドープ剤として機能し得るドーパントを含有し得る。半導電性材料およびポリマーのドーピングは、有機電子素子に組み入れられる際に本組成物の全体を通じた速やかな電荷輸送を可能にして、素子の性能を増加させることができる。組成物の半導電性ドープポリマーは、より高い導電率を有するHILまたはHTLを生成することができ、これは有機電子素子の直列抵抗を低下させる。これは、はるかに低い導電率を有するHILまたはHTL(およびその結果として、より高い直列抵抗を有する素子)を生成することがある他の正孔注入技術とは対照的である。
【0028】
いくつかの態様では、層の厚さが通常より大きく、例えば約60nm〜約200nmのオーダーである場合でも、組成物は、実質的に可視光透過性のHILまたはHTLを生成することができる。例えば、HILまたはHTLは、約400〜800nmの波長を有する光の約85%〜約90%またはそれ以上(すなわち%T>85〜90%)を透過させることができる。したがって、少なくともいくつかの態様のさらなる利点は、中程度の厚さを有する実質的に透過性のHILまたはHTLの形成であり得る。動作電圧に有害な影響を与えることなく半導体素子において短絡を排除するために、厚いHILまたはHTLを使用してもよい。
【0029】
より特定的には、本態様は、アミノベンゼンモノマー、オリゴマーおよびポリマー(共重合体を含む)、それを作製する方法、ならびに該モノマー、オリゴマーおよびポリマーを使用して形成される組成物および素子を例えば含む。ポリマーは、少なくとも1つのアリールアミン部分と、少なくとも1つのフッ素化アルキレンオキシ部分などのハロゲン化アルキレンオキシ部分とを含み得る。オリゴマーまたはポリマーを作製する方法は、ヒドロキシル基を含むモノマーと、ハロゲン化またはフッ素化アルキレンオキシ基を含むモノマーとを共重合する工程を例えば含み得る。オリゴマーまたはポリマーは、インク組成物中で使用可能であり、各種素子中の機能性層を形成するためにさらに使用可能である。
【0030】
ポリチオフェンおよび位置規則性ポリチオフェンを含む半導電性および共役ポリマー、正孔注入および正孔輸送、ならびに有機電子素子に関連する先行の米国特許出願公開としては、例えば以下が挙げられる。
【0031】
ポリマーおよび共重合体は当技術分野で一般に公知である。例えばBillmeyer, Textbook of Polymer Science, 3rd Ed., 1984; Allcock, Lampe, Contemporary Polymer Chemistry, 1981を参照。ポリマーおよび共重合体は、主鎖に結合している原子および側基をさらに含むポリマー主鎖および共重合体主鎖を含み得る。
【0032】
ポリマーおよび共重合体は可溶性の線状分子であり得る。繰り返し部分を含み得る。例えば、一態様では、共重合体は、少なくとも1つのアリールアミン繰り返し部分と、少なくとも1つのフッ素化アルキレンオキシ繰り返し部分とを含む主鎖を含む。これらの部分は交互に現れることがある。オリゴマーを作製することができる。軽架橋材料および重架橋材料を含む架橋材料を作製することができる。網目材料を作製することができる。
【0033】
オリゴマーは、当技術分野で公知であり、ポリマーのより小さい分子量の形態であり得る。オリゴマーは線状であるかまたは架橋されていることがある。網目オリゴマーを調製することができる。オリゴマー分子量は例えば1,000g/mol以下または750g/mol以下(Mn)であり得る。
【0034】
正孔輸送/アリールアミン繰り返し部分
アリールアミン材料および化合物を例えば含む正孔輸送材料は、当技術分野で公知である。アリールアミン繰り返し部分は当技術分野で公知である。例えばLim et al., Organic Letters, 2006, 8, 21, 4703-4706; Fukase et al., Polymers for Advanced Technologies, 13, 601-604 (2002). Shirota, Y. et al., Chem. Rev. 107, 2007, 953-1010; Z. Li and H. Meng, Eds., Organic Light-Emitting Materials and Devices, CRC Press (Taylor and Francis Group, LLC), Boca Raton (2007)およびその参考文献を参照。アリールアミン部分は各々、少なくとも1個の窒素原子および少なくとも1個のベンゼン環を含み得る。非限定的な例としては、それらは窒素原子に結合している1個のベンゼン環; 窒素原子に結合している2個のベンゼン環; または窒素原子に結合している3個のベンゼン環を含み得る。正孔注入および/または正孔輸送特性を示すように、繰り返し部分を適合させることができる。
【0035】
さらに、チオフェン、ピロール、アリールオキシおよび有機金属錯体部分を含むがそれに限定されない、正孔輸送組成物および繰り返し部分をさらに選択することができる。例えばShirota, Y. et al., Chem. Rev. 107, 2007, 953-1010; Z. Li and H. Meng, Eds., Organic Light-Emitting Materials and Devices, CRC Press (Taylor and Francis Group, LLC), Boca Raton (2007)およびその参考文献を参照。
【0036】
非限定的な例としては、アリールアミン部分は少なくとも1つのトリアリールアミンを含み得る。
【0037】
さらに別の非限定的な例としては、アリールアミン部分は、N,N-ジフェニルベンゼンアミンなどであるがそれに限定されないビストリアリールアミンを含み得る。
【0038】
直接共有結合、少なくとも1個の炭素原子を通じた共有結合、または酸素原子を通じた共有結合を通じて、ベンゼン環は少なくとも1個の他のベンゼン環に結合し得る。
【0039】
環の間で共有される1個または2個の炭素原子を通じて、ベンゼン環は別のベンゼン環と縮合し得る。2個以上の環が一緒に縮合し得る。
【0040】
ベンゼン環は置換されていても置換されていなくてもよい。非限定的な例としては、それらは、1個または複数の水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基、またはその組み合わせで置換されていてもよい。
【0041】
アリールアミンはまた、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,166,010号; 国際公開公報第2003037844号; および国際公開公報第2008032631号に例えば記載されている。
【0042】
スペーサー/フッ素化アルキレンオキシ繰り返し部分
ある部分は、正孔輸送官能基を配置するために役立ち得る。この部分は、先に記載のアリールアミン部分とは異なり得る。ハロゲン化およびフッ素化アルキレンオキシ繰り返し部分などのスペーサーは当技術分野で公知である。例えばIacono et al., Chem. Commun., 2006, 4844-4846; Babb et al., Macromolecules, 1996, 29, 852-860; Smith et al., Polym. Int., 2007, 56, 1142-1146; Smith et al., J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 12772-12773; Kim et al., Org. Lett., 2006, 8, 4703-4706. Rudolf et al., J. Appl. Pol. Sci., 1998, 69, 2005-2012; Kim et al., Macromolecules, 2004, 37, 5724-5731; Smith et al., Macromolecules, 2007, 40, 9378-9383; Smith et al., J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 7055-7064; Sundar et al., Appl. Phys. Lett., 2004, 85, 4469-4471; Smith et al., J. Polym. Sc. Pt. A, 2007, 45, 5705-5721; Smith et al., Polymer, 2005, 46, 6923-2932; Smith et al., Chem. Comm., 2006, 4844-4846; Wonchoba et al., J. Org. Chem., 1992, 57, 7014-7017; Jen et al., Appl. Phys. Lett., 2006, 88, 093505; Jen et al. Adv. Funct. Mat., 2002, 12, 745-751; Jen et al., Appl. Phys. Lett., 2000, 76, 1813-1815; Jen et al., Appl. Phys. Lett., 2000, 76, 2985-2987を参照。フッ素化アルキレンオキシ繰り返し部分は、少なくとも1個のフッ素原子、少なくとも1個の酸素原子、およびC1〜C10アルキレンであり得る少なくとも1個のアルキレン部分を含み得る。より好ましくは、アルキレン部分は、エチレンなどであるがそれに限定されないC1〜C5アルキレンであり得る。C1〜C10アルキレンは直鎖状、分岐状または環状であり得る。
【0043】
C1〜C10アルキレンは、少なくとも1個のフルオロ、クロロ、ブロモもしくはヨード基、またはその組み合わせでフッ素化され得る。好ましくは、アルキレン部分は、例えばトリフルオロエチレン部分を形成する少なくとも1個のフルオロ基でフッ素化されている。好ましくは、アルキレン部分は全フッ素化されている。
【0044】
フッ素化アルキレンオキシに変換可能なフッ素化アルコキシ部分は、少なくとも1個のアリール、アリールアルキル、ハロアリールアルキル、ジアリールアミンまたはトリアリールアミンをさらに含み得る。非限定的な例としては、アリール部分はN,N-ジフェニルベンゼンアミンである。アリール部分のベンゼン環は、アルキル部分または酸素原子に共有結合し得る。好ましくは、アリール部分のベンゼン環は、フッ素化アルコキシ部分の酸素原子に結合している。
【0045】
一態様では、アリールアミンおよびフッ素化アルキレンオキシという繰り返し部分が唯一の繰り返し単位である。他の態様では、共重合体はこれら2種の繰り返し部分からなり得るかまたは本質的になり得る。所望であれば、アリールアミンを別の正孔輸送部分で置き換えてもよい。
【0046】
重合形態または非重合形態とその組み合わせとの両方を含む、ビニルエーテル、フッ素化ビニルエーテルおよび全フッ素化ビニルエーテル部分を使用することができる。
【0047】
オリゴマー/ポリマー/共重合体構造
オリゴマー、ポリマーおよび共重合体を、以下の構造によりさらに記載することができる。例えば、一態様では、それらは以下で表される繰り返し単位を含む:
式中、Ar1はアリールアミンを含み、Ar2はアリールを含み、R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキレンより独立して選択される。
【0048】
繰り返し単位(I)および(II)は交互に現れ得る。
【0049】
より特定的には、Ar1はトリアリールアミンを含み得るかまたはそれであり得るものであり、ベンゼン環は置換されていてもよい。非限定的な例としては、Ar1は以下で表すことができる:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され; kは1〜4の整数であり; mは1〜5の整数であり; nは1〜5の整数である。
【0050】
特定の例では、Ar1は以下で表すことができる。
【0051】
Ar2は、例えばアリール、アリールアルキル、ハロアリールアルキル、ジアリールアミンまたはトリアリールアミンを含み得るかまたはそれであり得る。例えば、Ar2は、ベンゼン環または互いに共有結合している少なくとも2個のベンゼン環を含む、アリールであり得る。Ar2はアリーレンであり得る。非限定的な例では、Ar2は以下で表される:
式中、zは1〜5の整数である。
【0052】
さらに、Ar2は、多環式芳香環を含むアリール、または2〜10個の炭素原子を有する置換基を含むアリールであり得る。多環式芳香環は、一緒に縮合した2個以上の環を例えば有し得る。非限定的な例では、Ar2は以下で表すことができる:
式中、nは1〜5の整数である。結合の異性体形態を使用することができる。
【0053】
Ar2はトリアリールアミンであり得る。Ar2の構造はAr1の構造でもあり得る。
【0054】
Ar2はアリールアルキルまたはハロアリールアルキルであり得る。非限定的な例では、Ar2は以下で表すことができる:
式中、R3はフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルなどのフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルであり、zは1〜5の整数である。R3は直鎖状、分岐状または環状アルキルであり得る。
【0055】
別の非限定的な例としては、Ar2は以下で表すことができる。
【0056】
構造(II)で表される繰り返し単位では、R1およびR2は例えば、C1〜C10フルオロアルキルなどのC1〜C10アルキルより独立して選択することができる。非限定的な例では、R1およびR2はトリフルオロエチレンである。
【0057】
特定の態様では、共重合体は、以下で表される繰り返し単位を含み得る:
式中、Ar3はアリールアミンであり得るものであり、R4はC1〜C10フッ素化アルキレンであり得る。
【0058】
例えば、Ar3はジアリールアミンまたはトリアリールアミンであり得る。Ar2の構造はAr1および/またはAr2について先に記載の構造でもあり得る。
【0059】
また、これらの態様の異性体を使用することができる。
【0060】
モノマー合成
ある種のモノマーは商業的に得ることができ、一方他のモノマーは合成することができる。合成モノマーの非限定的な例を以下に示す。
【0061】
有機合成およびポリマーの技術分野を含む当技術分野で公知の方法を使用することで、重合可能なまたは反応性の官能基を含むモノマーを調製し、かつモノマーを一緒に連結させてポリマーを形成することができる。例えばMarch's Advanced Organic Chemistry, 6th Ed, 2007を参照。
【0062】
フッ素化不飽和化合物およびポリマーを包含する、求核付加反応を含むモノマーおよび反応は、当技術分野で公知である。例えばSynthetic Fluorine Chemistry, Ed. Olah, 1992を参照。
【0063】
フッ素化アルキレンオキシ繰り返し部分を合成的に入手しかつ利用するための方法は当技術分野で公知である。例えばIacono et al., Chem. Commun., 2006, 4844-4846; Babb et al., Macromolecules, 1996, 29, 852-860; Smith et al., Polym. Int., 2007, 56, 1142-1146; Smith et al., J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 12772-12773; Kim et al., Org. Lett., 2006, 8, 4703-4706. Rudolf et al., J. Appl. Pol. Sci., 1998, 69, 2005-2012; Kim et al., Macromolecules, 2004, 37, 5724-5731; Smith et al., Macromolecules, 2007, 40, 9378-9383; Smith et al., J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 7055-7064; Sundar et al., Appl. Phys. Lett., 2004, 85, 4469-4471; Smith et al., J. Polym. Sc. Pt. A, 2007, 45, 5705-5721; Smith et al., Polymer, 2005, 46, 6923-2932; Smith et al., Chem. Comm., 2006, 4844-4846; Wonchoba et al., J. Org. Chem., 1992, 57, 7014-7017を参照。
【0064】
さらに、導電性結合形成クロスカップリング/アミノ化反応のための方法は当技術分野で公知である。例えばCross-Coupling Reactions: A Practical Guide, Ed. Miyaura, 2002; Handbook of Organopalladium Chemistry for Organic Synthesis, Ed. Negishi, 2002. Kuwano et al., J. Org. Chem., 2002, 67, 6479-6486を参照。
【0065】
1つの第1のモノマーを、正孔輸送機能を行うように適合させることができる。1つの第2のモノマーを、正孔輸送部分を分離および接続するスペーサー機能を行うために使用することができる。本発明において有用である適切なヒドロキシルまたはフッ素化アルキレンオキシ置換基を有する広範な塩基性部分を含むように、モノマーを選択することができる。例えばPolycyclic Aromatic Hydrocarbons, Harvey, R. G., Wiley-VCH, 1996; Polycyclic Hydrocarbons Vol. I and II, Clar, E, Academic Press, 1964を参照。
【0066】
得られるポリマー中でアリールアミン繰り返し部分を与えるモノマーを調製するかまたは得ることができる。
【0067】
一般に、一組のモノマーは、正孔輸送部分と、ヒドロキシルアリール基またはアミノヒドロキシルアリール基などであるがそれに限定されない2個のヒドロキシル末端基とを含み得る。正孔輸送部分は少なくとも1個のアリール基を含み得る。例えば、正孔輸送官能基は1〜10個のアリール基を含み得る。
【0068】
そのようなモノマーの非限定的な例を以下に示す:
式中、Arは例えばベンゼン、ナフタレン、ビフェニルなどのアリール基より独立して選択され、置換されていてもよく、Rはアルキルまたはエチレンオキシであり、置換されていてもよい。
【0069】
最適な取り扱い、効率および/または動作寿命のために望まれるエネルギー特性(HOMO-LUMO、三重項、一重項)、移動度および熱力学特性を例えば与えるように、置換基を選択することができる。
【0070】
さらに、得られるポリマー中でフッ素化アルキレンオキシ繰り返し部分を与えるモノマーを調製するかまたは得ることができる。例えば、別の一組のモノマーは、フッ素化アルキレンオキシ基を含むアリールアミンを含み得る。一般に、これらのモノマーは、スペーサー部分と、2個、3個またはそれ以上のトリフルオロビニルオキシ末端基とを含み得る。
【0071】
スペーサー部分は少なくとも1個のアリール基を含み得る。例えば、スペーサー部分は1〜10個のアリール基を含み得る。
【0072】
そのようなモノマーの非限定的な例を以下に示す。
【0073】
線状で可溶性のオリゴマーまたはポリマーを調製できるように、モノマーは二官能性であり得る。例えば、Aモノマーを、Bモノマーと反応してA-B共重合体を形成するように適合させることができる。あるいは、AおよびBを重合前に組み合わせてA-Bを形成することができ、次にA-Bを重合することができる。
【0074】
さらに、網目を形成できるように、モノマーは三官能性、四官能性またはそれ以上であり得る。
【0075】
一態様では、フェノール基もしくはヒドロキシル基および/またはトリフルオロビニルエーテル基を含むようにモノマーを適合させることができ、これらの基を重合反応中に一緒にすることができる。
【0076】
一態様では、モノマーは反応性フッ素化アルケンを含む。
【0077】
フッ素化アルケンを互いに反応させることで、付加環化反応を例えば含むオリゴマー化または重合のための連結を行うことができる。例えば、トリフルオロビニルエーテル含有化合物は、熱環化重合を経ることでパーフルオロシクロブタン(PFCB)ポリマーを与える有用な反応性モノマーであり得る。
【0078】
一態様は、以下の工程を含む方法を提供する: 少なくとも2つの第二級アミン部分を含む少なくとも1つのアリールアミンと、アルキレンオキシ単位を含む少なくとも1つのアリールブロミドとを反応させて、アルキレンオキシ単位を含むアリールアミンモノマーを形成させる工程であって、反応を例えばPd2(dba)3などの0価パラジウム錯体などの有機金属錯体の使用により行う工程。例えば実施例2を参照。対照として比較例2Aを参照。水、有機溶媒(例えばトルエン)および相間移動触媒の組み合わせの使用による相間移動条件下で反応を行うことができる。例えばKOHなどの強塩基を使用することができる。少なくとも2個の第二級アミン部分を含むアリールアミンは、例えばN,N'-ジフェニルベンジジンであり得る。
【0079】
ポリマー合成
ポリマー合成法は当技術分野で公知である。例えばBillmeyer, Textbook of Polymer Science, 3rd Ed., 1984; Allcock, Lampe, Contemporary Polymer Chemistry, 1981を参照。例としては逐次重合、縮合重合、付加重合、フリーラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合および配位重合が挙げられるがそれに限定されない。いくつかの態様では、重合反応は、ヒドロキシアリール基などのヒドロキシル基を含む化合物と、フッ素化アルキレンオキシ基を含む化合物との反応を含む。当技術分野で公知のように、オリゴマーを生成するためにこれらの方法を使用することもできる。
【0080】
一態様では、少なくとも2個のヒドロキシル基を含む第1のモノマーと、少なくとも2個のフッ素化アルキレンオキシ基を含む第2のモノマーとを共重合する。好ましくは、第2のモノマーは少なくとも2個のトリフルオロエチレンオキシ基を含む。
【0081】
別の態様では、
(X) HO-Ar4-OH
で表される第1のモノマーと、
(XII) R5-O-Ar5-O-R6
で表される第2のモノマーとを共重合することで共重合体またはオリゴマーを形成する:
式中、Ar4およびAr5はアリール部分またはアリールアミン部分より独立して選択され、但し、Ar4およびAr5の少なくとも一方はアリールアミンであり、R5およびR6は独立してフッ素化C1〜C10アルキレンを表す。
【0082】
Ar4は以下で表すことができる:
式中、zは1〜5の整数である。
【0083】
あるいは、Ar4は以下で表すことができる:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され; kは1〜4の整数であり; mは1〜5の整数であり; nは1〜5の整数である。
【0084】
さらに別の代替案としては、Ar4は以下で表すことができる。
【0085】
第2のモノマーでは、Ar5は以下で表すことができる:
式中、zは1〜5の整数である。
【0086】
あるいは、Ar5は以下で表すことができる:
式中、J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され; kは1〜4の整数であり; mは1〜5の整数であり; nは1〜5の整数である。
【0087】
さらに別の代替案としては、Ar5は以下で表すことができる。
【0088】
さらに別の代替案としては、Ar5は以下で表すことができる:
式中、R3はフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルなどのフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルであり得るものであり、zは1〜5の整数である。R3は直鎖状、分岐状または環状アルキルであり得る。
【0089】
R5およびR6は、フッ素化C1〜C10アルキレンなどであるがそれに限定されないフッ素化アルキレンより独立して選択することができる。好ましくは、R5およびR6は、トリフルオロエチレンなどのフッ素化C1〜C10アルキレンより独立して選択される。
【0090】
特定の態様では、1つのモノマーを使用してポリマーを形成する。モノマーは、少なくとも1つのヒドロキシアリールアミン部分と、少なくとも1つのフッ素化C1〜C10アルキレンオキシ部分とを含み得る。
【0091】
一態様では、以下で表されるモノマーを重合することでポリマーを形成する:
(XIII) HO-Ar6-O-R7
式中、Ar6はアリールアミンであり、R7はフッ素化C1〜C10アルキレンオキシである。
【0092】
これらのモノマーは、商業的に得ることができるか、または有機化学で公知の方法を使用して合成することができる。
【0093】
各種溶媒中で重合を行うことができる。例としてはジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびアセトニトリル、ならびにその組み合わせが挙げられる。
【0094】
各種触媒の存在下で重合を行うことができる。例としてはナトリウムtert-ブトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムtert-ブトキシドおよびカリウムメトキシドが挙げられる。
【0095】
そのような重合により得られる代表的ポリマーとしては以下が挙げられる。
【0096】
分子量は特に限定されないが、得られるポリマーは、例えば約1,000g/mol〜約100,000g/mol、または約5,000g/mol〜約50,000g/mol、または約10,000g/mol〜約20,000g/molの数平均分子量を例えば有し得る。
【0097】
多分散度は特に限定されないが、得られるポリマーは1〜5または1〜2のPDIを例えば有し得る。
【0098】
架橋剤とモノマーまたはポリマーとを組み合わせることで、得られる膜に材料上での溶液加工を支援するために必要な特性を付与できるように、ポリマーを調製することができる。例えば一態様では、ペンダントアルキレンオキシ基、アルケン基またはベンゾシクロブタン基をアニール中に利用して、引き続く加工に十分な不溶性を架橋構造に付与する可能性がある。さらに、ある材料または成分をインク中のポリマーに加えることで、膜上での引き続く加工に十分な不溶性を膜にやはり付与する可能性がある架橋されたまたは絡み合った膜構造を与える可能性がある。例えばThompson et al., Chem. Mat., 2007, 19, 4827-4832; Meerholtz et al., App. Phys. Lett., 2007, 91, 103507; Marks et al., App. Phys. Lett., 2003, 82, 331-333; およびTownsら、国際公開公報第2006/043087号を参照。
【0099】
さらなる態様
モノマー、オリゴマーおよびポリマーを以下のように調製することもできる:
式中、Xは重合条件に応じて例えばHまたはFであり、Z1およびZ2は正孔輸送結合およびスペーサー結合より独立して選択され、但し、Z1およびZ2の少なくとも一方は正孔輸送結合であり、スペーサー結合は例えばフェニル、ナフチルなどの芳香族、アルキレン、ポリエーテル、パーフルオロポリエーテルおよびパーフルオロアルコキシより選択される。スペーサー結合は、正孔輸送または拡張共役を行う必要はない。
【0100】
例えばアルコキシドを使用するフェノール系モノマーの脱プロトン化を経由するその場発生を通じての、またはフェノキシドを最初に合成して反応に使用する場合でのアルコールの外部付加を通じての、アルコールの存在は、XがHであるポリマーを導き得る。あるいは例えば、フェノキシドで出発して反応を行う場合、N-フルオロベンゼンスルホンアミドなどのフルオロカチオン源を加えて、XがFであるポリマーを得ることができる。
【0101】
さらに、フッ素またはヒドロキシル基を有する鎖末端を動作不安定性を導くことがあるという理由で排除するために末端封止されている、ポリマーを有することが望ましいことがある。合成後にポリマーを処理して、フェノールまたはアルコキシドを有する残りのフッ素置換基を除去することができる。活性化アルキルアレーン、またはヨウ化メチルなどのアルキル化剤を用いるアルキル化により、末端ヒドロキシル基を遮断することもできる。また、ポリマー化学で公知のように、一官能性材料を使用して重合中にその場でポリマーを末端封止することができる。トリフルオロビニルオキシ、ビニレン性、アセチレン性、オキセタン、トリクロロシリル、トリアルコキシシリル、エポキシなどの架橋性官能基でポリマーを末端封止することで、層の堅固さを強化する可能性もある。上記の基の組み入れは、先に記載の適切な官能基を有する一官能性モノマーを使用して重合中にその場で、または重合後手順により、達成することができる。末端封止剤の代表的および非限定的な例を以下に示す。
【0102】
ポリマー特性
ポリマーおよび共重合体は可溶性であり得る。それらは有機溶媒に可溶性であり得る。
【0103】
本態様のポリマーは、正孔注入層、正孔輸送層、光活性層および電子遮断層用の材料として有利に役立ち得る。例えば、これらのポリマーは、安定であり、励起状態がポリマー中で発生する際に生じることがある正孔輸送劣化に比較的耐性がある。したがって、そのようなポリマーは、各種素子に動作安定性を付加することができる。これらのポリマーはまた、ポリマーが層として適用される界面において誘電率を増加させ、それにより電荷注入を容易にすることができる。典型的には、これはバンドベンディング型の偏角の文脈内で理解される。ここで、界面での適切に配向された双極子は、真空準位誤整列にもかかわらず層間のフェルミ準位ピンニング、したがって電荷注入を可能にするために十分な内部電界を与えることができる。さらに、これらのポリマーは、溶液加工層に対する直交溶媒適合性を示し、このことは素子層形成に非常に有用である。任意の特定の理論に限定されることは望まないが、フッ素化鎖がポリマーの直交溶媒適合性に寄与すると考えられる。
【0104】
さらに、例えば素子動作に対する有害な影響を最小化するために好適なHOMO-LUMOエネルギー特性を示すようにポリマーを選択することが望まれる。
【0105】
インク組成物および調合物
本明細書に記載のポリマーおよび共重合体と溶媒、他のポリマー(ブレンドとしての)、添加剤、ドーパントまたはその組み合わせとを組み合わせて、各種素子中の層として流延可能なインクなどの組成物を形成することができる。
【0106】
ポリマーと少なくとも1つの溶媒とを組み合わせてインク組成物を形成することができる。例えば、一態様では、組成物は、以下で表される繰り返し単位を含む共重合体と、少なくとも1つの溶媒とを含む:
式中、Ar1はアリールアミンであり、Ar2はアリールであり、R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキルより独立して選択される。
【0107】
各種溶媒を使用することができる。非限定的な例としては、組成物は以下の溶媒のうち1つまたは複数を含み得る: クロロベンゼン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロベンゼン、ジクロロメタン、安息香酸エチル、安息香酸メチル、酢酸プロピル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸フェニル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ペンタノン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン、ピリジン、ピペリジン、N-メチルピロール、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン、および1,3-トリフルオロメチルベンゼン、エチレングリコールジエーテル、ジエチレングリコールジエーテル、プロピレングリコールジエーテル、ジプロピレングリコールジエーテル、エチレングリコールモノエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエーテルアセテート、アニソール、エトキシベンゼン、ジメトキシベンゼン。さらに、インク組成物は1つまたは複数の溶媒を含み得る。
【0108】
一態様では、インクは、プロトン性溶媒を実質的に含まないかまたは全く含まない。例えば、プロトン性溶媒の量は1重量%未満または0.1重量%未満であり得る。
【0109】
容易に制御可能な厚さ、組成および質を有する所望の物性および性能の膜が得られるインクを与えるように、かつ用途の必要性を満たす素子において有用性を有するインクを与えるように、溶媒を選択しなければならない。非限定的な例としては、以下の参考文献に見られるリストより溶媒を選択することができ、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる: Cheremisinoff, N. P. In Industrial Solvents Handbook Second Edition; Marcel Dekker: New York, NY, 2003; Ash, M.; Ash, In Handbook of Solvents; Synapse Information Resources Inc; 2nd Edition, 2003; Wypych, G. In Handbook of Solvents (Chemical); Noyes Publications, 1st Edition, 2000; Hansen, C. M.; Durkee, J.; Kontogeorgis, G. In Hanson Solubility Parameters: A User's Handbook; Taylor and Francis, Inc, 2007。
【0110】
2つ以上の溶媒を使用するインク溶媒系は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第61/090,464号(2008年8月20日出願)および2009年8月14日出願の米国特許出願第12/541,500号に記載されている。
【0111】
インク調合物中の溶媒の量は約10重量%〜約99重量%、例えば約90重量%〜約99重量%であり得る。
【0112】
あるいは、インク組成物中の共重合体の重量パーセントは、約0.01重量%〜約10重量%、例えば約0.1重量%〜約1.0重量%であり得る。
【0113】
インク組成物は少なくとも1つのn型ポリマーをさらに含み得る。
【0114】
インク組成物は少なくとも1つのp型ポリマーをさらに含み得る。
【0115】
インク組成物は少なくとも1つの共役ポリマーをさらに含み得る。
【0116】
特定の調合物では、本態様のポリマー(p型ポリマーとして使用する)とn型ポリマーとを組み合わせる。n型材料とp型材料とは、例えば約0.1〜4.0(p型)対約1(n型)の重量比、または約1.1〜約3.0(p型)対約1(n型)の比、または約1.1〜約1.5(p型)対約1(n型)の比で混合することができる。各種類の材料の量、または2種類の成分間の比は、特定の用途について変動し得る。
【0117】
ドーパント
本組成物は1つまたは複数のドーパントを含んでいてもよい。
【0118】
ドーパントは、HILまたはHTLのポリマー成分に望まれる導電性状態を得るために典型的に使用され、しばしば素子性能の改善を生じさせる。例えば、レドックスドーパントによる半導電性ポリマーの酸化の時点で、電子がポリマーの価電子帯より除去される。酸化状態のこの変化は、ポリマーの新しいエネルギー状態の形成を生じさせる。エネルギーレベルは、価電子帯に残存する電子の一部に接近可能であり、これによりポリマーが導体/半導体として機能することが可能になる。
【0119】
特に本組成物では、導電性共役ポリマーをレドックスドーパントでドープすることができる。当技術分野で公知の好適なレドックスドーパントの例としては、キノン、ボラン、カルボカチオン、ボラ-テトラアザペンタレン、アミニウム塩もしくはアンモニリウム(ammonilium)塩、スルホニウム塩、オキソニウム塩、セレノニウム(selenonoium)塩、ニトロソニウム塩、アルソニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、選択金属(例えば銀)塩、またはその組み合わせが挙げられるがそれに限定されない。好適なレドックスドーパントとしては、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,853,906号および第5,968,674号に開示されているものが挙げられるがそれに限定されない。
【0120】
レドックスドーパントは、好適な電荷平衡対アニオンを与えるように選択することもできる。ドーパントアニオンの種類は、導電性ポリマーのドーピングレベル、およびこれらの溶液より調製される素子の素子性能に影響し得る。
【0121】
ドーパントアニオンの大きさおよび性質は、素子の効率を調節するために重要なパラメータであり得る。
【0122】
アニオン/対イオンは以下であり得る: スルホン酸アニオン、塩化物アニオン、臭化物アニオン、ヨウ化物アニオン、置換されていてもよいアリールスルホン酸アニオン、置換されていてもよいアルキルスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、または下記式(i)で表される材料:
(i) [MYp(ArXn)4-p]-
式中、M = BまたはGaであり; Arはフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、チエニル、ピロリル、フリル、ピリジル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリルより独立して選択され; XおよびYはハロゲン化物(F、Cl、BrおよびI)、シアン化物、ニトロ、別の置換されていてもよいアリールより独立して選択することができ; p≦4であり; n≦10である; もしくは下記式(ii)で表される材料:
(ii) [MYp(ArXn)6-p]-
式中、M = PまたはSbであり; Arはフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、チエニル、ピロリル、フリル、ピリジル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリルより独立して選択され; XおよびYはハロゲン化物(F、Cl、BrおよびI)、シアン化物、ニトロ、別の置換されていてもよいアリールより独立して選択することができ; p≦4であり; n≦10である。
【0123】
最終組成物において、組成物は、当初の成分の組み合わせとは明瞭に異なることがある(すなわち、半導電性ポリマーおよび/またはレドックスドーパントは、最終組成物中に混合前と同一の形態で存在することもあれば存在しないこともある)。したがって、半導電性共役ポリマーおよびドーパントまたはレドックスドーパントは、反応してドープ共役ポリマーを形成する成分を意味することがある。さらに、いくつかの態様は、ドーピングプロセスの反応副生成物の除去を可能にする。例えば、ヨードニウムレドックスドーパントは有機副生成物を生じさせることがあり、これをドープポリマーから洗い流すことができる。
【0124】
いくつかの態様では、レドックスドーパントは光酸である。好適な光酸の例としては、その全体が参照により本明細書に組み入れられるJournal of Polymer Science Part A, Polymer Chem. 37, 4241-4254, 1999に例えば記載のスルホニウム塩およびヨードニウム塩などのオニウム塩が挙げられるがそれに限定されない。
【0125】
ヨードニウム塩は当技術分野で公知である。中性ポリアリールアミンなどの導電性ポリマーのドーピングは、ヨードニウム塩またはジアリールヨードニウム塩、特にジフェニルヨードニウム塩などの光酸を使用して実現することができる。ヨードニウム塩中のフェニル基などのアリール基は、当技術分野で公知のように置換されていてもよい。例えば、レドックスドーパントは親油性ヨードニウム塩であり得る。典型的には、ヨードニウム塩は以下で表される:
式中、R1は独立して、置換されていてもよいアリール基であり、R2は独立して、置換されていてもよいアリール基であり、X-はアニオンである。
【0126】
中性ポリアリールアミンのドーピングは、スルホニウム塩などの光酸を使用して実現することもできる。スルホニウム塩は当技術分野で公知である。スルホニウム塩中のアリール基は、当技術分野で公知のように置換されていてもよい。典型的には、スルホニウム塩は以下で表される:
式中、R1は独立して、置換されていてもよいアレーンであり、R2は独立して、置換されていてもよいアレーンであり、R3は置換されていてもよいアレーンであり、X-はアニオンである。
【0127】
ドーパントは、例えば約100g/mol〜約500g/mol、または約300g/molの分子量を有する置換されていてもよいジフェニルヨードニウム塩を含み得る。
【0128】
いくつかの態様では、ドーパントは以下で表される光酸4-イソプロピル-4'-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニルボレート)(IMDPIB(PhF5)4)である。
【0129】
使用可能な他のヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(DPIPF6)、ジフェニルヨードニウムパラ-トルエンスルホネート(DPITos)、ビス-(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート(tBDPITFSO3)およびジフェニルヨードニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホネート(DPIPFBSO3)が挙げられるがそれに限定されない。ヨードニウム塩は、低分子量化合物であり得るか、またはポリマーなどの高分子量化合物に連結し得る。
【0130】
レドックスドーパントはスルホニウム塩であり得る。好適なスルホニウム塩の例としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムパラ-トルエンスルホネート、ビス-(4-tert-ブチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネートおよびジフェニルスルホニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホネートが挙げられるがそれに限定されない。
【0131】
選択対イオンについて有効なドーピングを実現できるように、他のオニウム塩を使用することができる。
【0132】
使用可能な別のクラスのドーパントはキノンを含む。ドーピングを行うために使用可能である好適なキノンの例としては、テトラフルオロテトラシアノ-p-キノジメタン(F4TCNQ)、トリフルオロテトラシアノ-p-キノジメタン(F3TCNQ)、ジフルオロテトラシアノ-p-キノジメタン(F2TCNQ)、フルオロテトラシアノ-p-キノジメタン(FTCNQ)、ジクロロジシアノキニン(DDQ)、o-クロラニルおよびシアニルが挙げられるがそれに限定されない。
【0133】
好適なドーパントのさらなる例としては、その全体が参照により本明細書に組み入れられるKuehlらによる米国特許第6,908,783号に開示されているものを例えば含むキノンジイミン誘導体が挙げられる。
【0134】
使用可能な別のクラスのドーパントはアンモニウム塩を含む。アンモニウムラジカルカチオンを、電子移動を経る調合物に対するレドックス添加剤として使用することができる。形成される副生成物は、正孔輸送部分でもありかつ輸送に有害な影響を与えにくいことから、必ずしも組成物より除去する必要はない。好適なアンモニウム塩の例としては、トリス-(4-ブロモフェニル)アミンアンチモン六塩化物が挙げられるがそれに限定されない。
【0135】
他の有用なレドックスドーパントとしてはボラ-テトラアザペンタレンが挙げられる。ボラ-テトラアザペンタレンの例は以下で表される:
式中、R1、R2、R3は独立して水素、置換されていても置換されていなくてもよいアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、縮合炭素環または縮合複素環基であり、R4およびR5は独立してフッ素、水素、置換されていても置換されていなくてもよいアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、縮合炭素環または縮合複素環であり、あるいは、ホウ素原子と一緒になってホウ素含有複素環となる。(Rothe, Carsten, Laser and Photonics Reviews (2007), 1(4), 303-306; 国際公開公報第2007115540A1号20071018およびその参考文献。)
【0136】
別のクラスの有用なドーパントは、テトラフルオロホウ酸銀、テトラフェニルホウ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀などの銀塩である。銀イオンは、銀金属および導電性ポリマー塩へのまたはそれからの電子移動を経ることがある。米国特許第5,853,906号および第5,968,674号。
【0137】
本組成物を調製する上で、典型的にはドーパントを半導電性ポリマーと共に最初に調合することで、ポリマーのドーピングが生じることを確実にする。
【0138】
例えば、いくつかの態様では、組成物は、共役ポリマーとドーパントとを組み合わせて半導電性ポリマー-ドーパント混合物を形成することで調製されるインク調合物である。典型的には、半導電性共役ポリマーの原液(例えば有機溶媒に半導電性ポリマーを溶解または分散させることで作製されるもの)と、ドーパントの原液とを組み合わせて、ポリマー-ドーパント溶液を形成する。あるいは、いくつかの態様では、ドーパントを導電性共役ポリマーに共有結合させる。これらの態様では、導電性ポリマー-ドーパントと半導電性マトリックス成分とを組み合わせて組成物を形成することで、組成物を調製する。
【0139】
量
本組成物は、約1重量%〜99重量%(「wt%」または「% (w/w)」)の半導電性共役ポリマー、および、ドーパントが存在する場合は約0重量%〜75重量%のドーパントを含み得る。各成分の重量百分率は、組成物中の全固形分の重量に基づいて計算される。
【0140】
例えば、いくつかの態様では、組成物は、半導電性ポリマーおよび存在する場合はドーパントの全量に対して約10重量%〜約90重量%、約15重量%〜約80重量%、約25重量%〜約75重量%、約30重量%〜約70重量%または約35重量%〜約65重量%の半導電性共役ポリマーを含む。
【0141】
さらに、ドーパントは、半導電性共役ポリマーの繰り返し単位のモル量に対応する量で存在し得る。例えば、ドーパントは、約0.01モルドーパント/モル半導電性ポリマー繰り返し単位(「m/ru」)〜約1m/ruの量で組成物中に典型的に存在し、ここでmはドーパントのモル量であり、ruは半導電性ポリマー繰り返し単位のモル量である。いくつかの態様では、ドーパントは約0.01m/ru〜約0.5m/ru、約0.1m/ru〜約0.4m/ruまたは約0.2m/ru〜約0.3m/ruの量で存在する。典型的には、ドーパントは約0.2〜0.3m/ruの量で存在する。いくつかの態様では、ドーパントは組成物中に存在しない。
【0142】
素子および用途
ポリマー、および該ポリマーを使用して形成される組成物を使用して、各種素子中の素子層を作り出すことができる。したがって一態様では、素子は、以下で表される繰り返し単位を含む共重合体を含む層を含む:
式中、Ar1はアリールアミンであり、Ar2はアリールを含み、R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキレンオキシより独立して選択される。
【0143】
素子は、OLED、PLED、PHOLEDまたはOPV素子であり得るがそれに限定されない。
【0144】
ポリマーを使用して例えば正孔注入層を形成することができる。ポリマーを使用して正孔輸送層を形成することができる。ポリマーを使用して光活性層を形成することができる。ポリマーを使用して電子遮断層を形成することができる。
【0145】
本態様のポリマーを使用して、当技術分野で公知の方法に従って素子を作製することができる。インクを含む組成物を、各種素子中の正孔注入層、正孔輸送層、電子遮断層および活性層として堆積させることができる。
【0146】
例えば、ポリマー組成物を、スピンキャスト法、インクジェット法、ドクターブレード法、スプレーキャスト法、ディップコート法、蒸着法または任意の他の公知の堆積法によってHIL膜上に堆積させることができる。例えば次に、堆積膜を約40〜約250℃、または約150〜180℃で、約1分間〜2時間、例えば10分間〜1時間、例えば不活性雰囲気中でアニールしてもよい。
【0147】
ポリマー組成物を用いて流延される層の厚さは、例えば約10nm〜約300nm厚、または30nm〜60nm、60nm〜100nmもしくは100nm〜200nmであり得る。次に、膜を110〜200℃で1分〜1時間、任意で不活性雰囲気中で、乾燥/アニールしてもよい。アニール用の方法は当技術分野で公知である。溶媒アニールを行うこともできる。
【0148】
本組成物より製作可能な有機電子素子の例としては、OLED、PLED、PHOLED、SMOLED、ESD、光電池、ならびにスーパーキャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、カチオントランスデューサ、薬物放出デバイス、エレクトロクロミック素子、センサ、FET、アクチュエータおよび膜が挙げられるがそれに限定されない。別の用途は、有機電界効果トランジスタ(OFETS)用電極改質層を含む電極改質層である。他の用途としてはプリンテッドエレクトロニクス、プリンテッドエレクトロニクスデバイスおよびロール・ツー・ロール生産プロセスの分野のものが挙げられる。さらに、本明細書で論じる組成物は電極上のコーティングであり得る。
【0149】
本組成物を使用して、有機光起電力素子(OPV)用のHTLを形成することができる。有機光起電力素子は例えばOrganic Photovoltaics, S-S, Sun, N. Sariciftci, 2005に一般に記載されている。OPVは当技術分野で公知である。例えば2006年4月13日公開の米国特許出願公開第2006/0076050号を参照。OPV活性層の記載を含む、2008年2月14日公開の国際公開公報第2008/018931号も参照。その全体が参照により本明細書に組み入れられる、「Hole Collection Layer Compositions and Photovoltaic Devices」と題する、Williamsらによる2008年4月9日出願の米国仮出願第61/043,654号も参照。例えば、この素子は、ガラスまたはPET上の酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体を含む陽極と; 正孔注入層および/または正孔輸送層と; P/Nバルクヘテロ接合層と; LiFなどのコンディショニング層と; 例えばCa、AlまたはBaなどの陰極とを例えば含む多層構造を含み得る。例えば、種々の光活性層をOPV素子中で使用することができる。米国特許第5,454,880号(Univ. Cal.); 第6,812,399号; および第6,933,436号に例えば記載の導電性ポリマーと例えば混合したフラーレン誘導体を含む光活性層を有する光起電力素子を調製することができる。また、光活性層は導電性ポリマーのブレンド、導電性ポリマーと半導電性ナノ粒子とのブレンド、ならびにフタロシアニン、フラーレンおよびポルフィリンなどの小分子の二重層を含み得る。
【0150】
LEDおよびOLEDは、例えばOrganic Light-Emitting Materials and Devices (Ed., Z. Li, H. Meng), 2007に一般に記載されている。例えば欧州特許第1950818号(Samsung SDI)も参照。
【0151】
例えば、本組成物を使用して、OLED素子用のHILを形成することができる。OLED素子は当技術分野で公知である。例えば2006年4月13日公開の米国特許出願公開第2006/00787661A1号を参照。「Hole Injection/Transport Layer Compositions and Devices」と題する2006年8月10日公開のHammondらの米国特許出願公開第2006/0175582A1号も参照。例えば、この素子は、ガラスまたはPETもしくはPEN上のITOなどの透明導電体を含む陽極と; 正孔注入層と; ポリマー層などのエレクトロルミネセンス層と; LiFなどのコンディショニング層と; 例えばCa、AlまたはBaなどの陰極とを例えば含む多層構造を含み得る。米国特許第4,356,429号および第4,539,507号(Kodak)も参照。
【0152】
これらの層または成分の各々を調製するための材料および調製する方法は当技術分野で周知である。例えば、OLED中のエレクトロルミネセンス層に使用される、発光する共役ポリマーは、例えば米国特許第5,247,190号および第5,401,827号(Cambridge Display Technologies)に記載されている。素子構造、物理的原理、溶液加工、多層形成、ブレンド、ならびに材料の合成および調合を含む、その全体が参照により本明細書に組み入れられるKraft et al., "Electroluminescent Conjugated Polymers - Seeing Polymers in a New Light," Angew. Chem. Int. Ed., 1998, 37, 402-428も参照。各種導電性ポリマー、およびSumation、Lumtec、Merck Yellow、Merck Blue、American Dye Sources(ADS)、Kodak(例えばAlQ3など)、さらにはAldrichより入手可能なBEHP-PPVなどの材料などの有機分子を含む、当技術分野で公知のかつ市販の発光体を使用することができる。そのようなポリマーおよび小分子材料は当技術分野で周知であり、例えばVanSlykeに発行した米国特許第5,047,687号; およびBredas, J.-L., Silbey, R., eds., Conjugated Polymers, Kluwer Academic Press, Dordrecht (1991)に記載されている。OLED成分および層のより完全な記載については、"Organic Light-Emitting Materials and Devices," Z. Li and H. Meng, Eds., Leo et al. Chemical Reviews, 107, 2007, 1233-1271, CRC Press (Taylor and Francis Group, LLC), Boca Raton (2007)、特に第1章(pp. 1-44)、第2章(pp. 45-294)、第3章(pp. 295-412)および第10章(pp. 617-638)も参照。
【0153】
製作した素子を素子性能について、当技術分野で公知の方法を使用して試験することができる。例えばOLEDでは、当技術分野で公知の方法を使用して、輝度、効率および寿命などの素子性能パラメータを測定することができる。
【0154】
当技術分野で公知の方法を使用してOLED性能パラメータを測定することができる。典型的には、素子性能測定を10mA/cm2で行う。例えば、以下に概説するプロトコールを使用して、電流密度(mA/cm2)、動作電圧(V)、輝度(cd/m2)および効率(cd/A)のOLED素子性能パラメータを測定することができる。
【0155】
典型的なOLEDパラメータの例は以下の通りである。
【0156】
典型的なOLED素子電圧は例えば約2〜約15、または約2〜約8、または約2〜5、または約3〜約14、または約3〜約7であり得る。典型的な素子輝度は例えば少なくとも100cd/m2、または少なくとも500cd/m2、または少なくとも750cd/m2、または少なくとも1,000cd/m2であり得る。典型的な素子効率は例えば少なくとも0.25cd/A、または少なくとも0.45cd/A、または少なくとも0.60cd/A、または少なくとも0.70cd/A、または少なくとも1.00cd/A、または少なくとも2.5cd/A、少なくとも4.00cd/A、または少なくとも5.00cd/Aであり得る。典型的な素子寿命は、50mA/cm2または最大75mA/cm2で時間単位で測定可能であり、例えば少なくとも50時間、または少なくとも100時間、または少なくとも約900時間、または少なくとも1,000時間、または少なくとも1100時間、または少なくとも2,000時間、または少なくとも5,000時間、または少なくとも10,000時間、または少なくとも20,000時間、または少なくとも50,000時間であり得る。
【0157】
有機素子中のHILまたはHTLとして使用する場合の本組成物は、電力効率などの素子パラメータの増加を典型的に導く。例えば、いくつかの態様では、本組成物は、OLED中のHILとして使用する場合、絶縁性マトリックス成分を含む伝統的なHILを使用して製作されるOLEDに比べて、良好な正孔注入層の非存在下でのOLEDの動作電圧および量子効率に応じて少なくとも5%または少なくとも約10%以上〜最大約50%の効率の増加を導き得る。
【0158】
電子素子ならびにそれを作製および使用する方法を教示する他の参考文献としては、例えばPlextronics, Inc.に譲渡された米国特許出願公開第2006/0076050号; 第2006/0078761号; 第2006/0175581号; 第2006/0237695号; 第2007/0065590号; 第2008/0248313号が挙げられる。
【実施例】
【0159】
各種態様を、非限定的な実施例の使用によりさらに説明する。
【0160】
実施例1:ポリ(TPD-TFVBPA)の合成
ポリ(TPD-TFVBPA)の合成を以下の反応スキームに従って行った。
【0161】
清潔な火炎乾燥100mL二つ口シュレンクフラスコに、J. Mater. Chem. (2008), 18(12), 1296-1301に見られるものと同様の様式で調製可能なTPD-(OH)2 0.911グラムを加えた。セプタムで封止したこのフラスコに無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF) 5mLを注入し、固形分の溶解の時点でカリウムtert-ブトキシド98mgを加えた。溶液は橙赤色から淡黄色になった。内容物を窒素下室温で20分間撹拌し、無水DMF 5mLに溶解した4,4'-(パーフルオロプロパン-2,2-ジイル)ビス((1,2,2-トリフルオロビニルオキシ)ベンゼン) (Oakwood Products) 0.886gをシリンジを経由して加えた。トリフルオロビニルエーテルモノマーを含むバイアルを無水DMF 5mLで1回すすぎ、洗浄液を反応フラスコに加えた。反応を室温で17.5時間続け、その時点で、Synquest Labsより得たポリマー連鎖停止剤パーフルオロ(5-メチル-3,6-ジオキサノン-1-エン) 0.05mlを加えた。反応を室温でさらに8時間続け、室温でエタノール250mLに注ぐことで析出させた。析出したポリマーを遠心分離し、上澄み液をデカントした後に真空オーブン中で乾燥させた。乾燥固形分約1.4グラムを得て、これを再度無水テトラヒドロフラン15mLに溶解させ、エタノール200mL中に析出させた。次にポリマーを遠心分離し、上澄み液をデカントした。次に白色ポリマーを0.45μm PVDF疎水性膜フィルター上に配置し、エタノール(約50mL)で洗浄した。ポリマーを最後に真空オーブン中にて室温で24時間乾燥させて白色粉末0.88グラムを得た。構造を、核磁気共鳴分光法(図4を参照)、およびクロロホルムを溶離液として使用しかつポリ(スチレン標準物質)により較正するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(ポリマーについてMn = 12,221 (PDI = 1.59)を示す図5を参照)で確認した。
【0162】
実施例2:TPD-TFVモノマーの合成
TPD-TFVモノマーの合成を以下の反応スキームに従って行った。
【0163】
温度計および還流冷却器付きの清潔な火炎乾燥500mL三つ口シュレンクフラスコに、N,N'-ジフェニルベンジジン(Aldrich Chemicals) 10グラム、水酸化カリウム10グラム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド140mg、トルエン250ml、1-ブロモ-4-(トリフルオロビニルオキシ)ベンゼン(Oakwood Chemical) 16.7グラムおよび脱イオン水5mlを加えた。この攪拌混合物を、窒素を15分間吹き込むことで脱気した。この反応混合物に無水無酸素トルエン中0.33Mトリ-tert-ブチルホスフィン(Aldrich) 14.7mlを加えた。激しく攪拌しながらPd2dba3 1.36グラムを一度に加え、反応液を窒素ブランケット下で封止し、98℃に14.5時間加熱した。反応液を室温に冷却し、この攪拌溶液(黒褐色および均一)にMgSO4約5gを加えた。MgSO4が易流動性になる(水をすべて吸収する)までこれを攪拌し、中程度のガラスフリットを通じて濾過し、SiO2 100グラム上に吸着させた。90%ヘキサン:クロロホルム溶離液を伴う大きいシリカゲルカラム上にこれを添加した。カラムをそれで溶出させて非極性副生成物を除去した。次に極性を30%クロロホルムまで増加させて所望の材料を溶出させることにより、易流動性白色固体14.98gを収率74%で得た。プロトンおよびフッ素NMRは割り当てられた構造と一致した。
【0164】
比較例2A:TPD-TFVモノマーの合成の試み
清潔な火炎乾燥500mL三つ口丸底フラスコにN,N'ジフェニルベンジジン10.0g、続いて乾燥トルエン200mLを加えた。このスラリーにナトリウムtert-ブトキシド10.0gを加え、反応混合物を窒素で15分間掃流した。次にp-ブロモトリフルオロビニルオキシベンゼン17.8gおよびPd2dba3 1.15gを反応フラスコに加えた。次にトルエン中2.30M tert-Bu3P 8.5mLを反応フラスコに加え、加熱を開始した。反応液を終夜還流させ、全溶媒をロータリーエバポレーター上で除去した。塩化メチレン-ヘキサン混合物を使用するカラムクロマトグラフィーを経由して反応混合物を精製して、白色固体4.3gを得た。1H NMRは、化合物上のtert-ブチル基の存在を示し、19F NMRは、トリフルオロビニルオキシ官能基の、何らかの他のフッ素化アルキル種への望まれない変換の可能性を示した。このことは、トリフルオロビニルオキシ官能基上のtert-ブトキシドの望まれない求核置換の可能性を示唆した。
【0165】
実施例3:ポリ(nap-TPD-TFV)の合成
ポリ(nap-TPD-TFV)の合成を以下の反応スキームに従って行った。
【0166】
乾燥窒素でフラッシングした100mL二つ口RBFに、4,4'-ビス(トリフルオロビニルオキシ)テトラフェニルベンジジン1.0g、カリウムtert-ブトキシド(Aldrichの昇華精製グレード) 0.165gおよび2,7-ジヒドロキシナフタレン0.235gをグローブボックス中で加えた。フラスコをラバーセプタムで封止し、無水DMF 12mLをフラスコに注入した。反応混合物を窒素圧下、室温で終夜撹拌した。次に反応混合物を50℃に7時間加熱し、続いてパーフルオロ(5-メチル-3,6-ジオキサノン-1-エン) 0.2mLを注入し、反応を室温で終夜続けた。次にポリマーをメタノール(半導体グレード、Aldrich) 100mL中に析出させ、2000rpmで15分間遠心分離した。上澄み液を廃棄後、遠心分離物をメタノール(半導体グレード、Aldrich) 100mLと共に振盪し、2000rpmで15分間再度遠心分離した。上澄み液を慎重に注ぎ出した後、白色ポリマーを真空オーブン中にて室温で乾燥させた。次に固形分を無水THF (Mbraun溶媒送達システムからの) 10mLに溶解させ、0.45ミクロンシリンジフィルターを通じて濾過し、メタノール(半導体グレード、Aldrich) 100mL中に析出させた。溶媒をロータリーエバポレーター上で除去し、ポリマーをメタノール20mLに懸濁させ、親水性膜フィルター(Millipore #SVLP09050)上で濾過し、室温で減圧乾燥させて白色ポリマー500mgを得た。クロロホルムを溶離液として使用しかつポリ(スチレン標準物質)により較正するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、図8を参照、Mn = 2,893 (PDI = 1.52)。
【0167】
ガラス転移温度(「Tg」)、融点(「Tm」)および分解開始温度(「T分解開始」)を決定した。ポリマーのガラス転移温度を、TA Instruments (DSCQ200)示差走査熱量計を使用して20℃/分のランプ速度で得た。分解温度を、(TGAQ500)熱重量分析計を使用して50℃/分のランプ速度で得た。Tg (ポリ(nap-TPD-TFV) = 100℃。
【0168】
実施例4:インク組成物およびHIL試験
ポリ(TPD-TFVBPA)、およびドーパントとしてのIMDPIB(PhF5)4を使用して、一連のHILインク組成物を調製した。組成物を下記表1に示す。
【0169】
以下の一般的手順を使用してインク組成物を得た。各々1%(w/w)固形分を含む、クロロベンゼンまたはPMA中のポリ(TPD-TFVBPA)およびIMDPIB(PhF5)4の別々の原液を最初に調製した。次に様々な量の各原液を表1に示すように組み合わせた。
【0170】
(表1)ポリ(TPD-TFVBPA)および4-イソプロピル-4'メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを含む組成物
【0171】
得られた組み合わせ溶液を窒素ブランケット下で2時間還流させ、グローブボックス中に保管した。
【0172】
さらに、表2に示すように、PMAプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中で(TPD-TFV - 実施例2)およびドーパントとしてのIMDPIB(PhF5)4を使用して、いくつかのインク調合物を作製した。
【0173】
(表2)TPD-TFVおよび4-イソプロピル-4'メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを含む組成物
【0174】
正孔注入層(HIL)試験
表1および2のインク組成物1〜9をITO表面上で回転させてHIL層を調製した。比較ベンチマークとして役立つ異なるHIL層(「比較HIL 1」)を、下記表3に示すインク組成物より形成した。
【0175】
(表3)比較HIL 1の組成
*P3MEET-Sは、Plextronics, Inc.に譲渡された2007年7月13日出願の米国特許出願公開第2008/0248313号に記載のスルホン化ポリ(3-メトキシエトキシエトキシチオフェン)である。
【0176】
ポリ(TPD-TFVBPA)インク組成物を使用して形成した薄膜の吸光度、蛍光および紫外可視近赤外スペクトルを得た。図1は、ガラス基板上のポリ(TPD-TFVBPA)の薄膜の吸光度スペクトルおよび蛍光スペクトルを示す。図2は、ガラス基板上にクロロベンゼン中溶液から流延した4-イソプロピル-4'メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートでドープし、3つの温度でアニールした、ポリ(TPD-TFVBPA)の薄膜の紫外可視近赤外スペクトルを示す。ポリマーの酸化のドーピングプロファイルを観察した。
【0177】
実施例5:素子製作
当技術分野で公知の手順に従ってOLED素子を製作した。素子は、ガラス基板上に堆積した酸化インジウムスズ(ITO)表面上にて製作した。ITO表面を予めパターン形成して0.05cm2の画素面積を確定した。希石鹸溶液中で20分間の超音波処理、続いて蒸留水洗浄により、素子基板を清浄にした。これに続いてイソプロパノール中で超音波処理を20分間行った。基板を窒素流下で乾燥させた後、300Wで作動する紫外-オゾン室中で20分間処理した。
【0178】
次に、清浄にした基板をHILインク調合物でコーティングし、90〜170℃で5〜15分間乾燥させてHIL膜層を形成した。乾燥膜厚は約20nm〜60nmの範囲であった。コーティングプロセスは、スピンコーター上で行ったが、スプレーコーティング、インク噴射、接触印刷、または所望の厚さのHIL薄膜を得ることが可能な任意の他の堆積方法によって同様に実現することができる。次に基板を真空室に移し、そこで素子スタックの残りの層を物理蒸着法により堆積させた。
【0179】
このようにして得た素子をガラスカバースリップで封入して、4分間の80W/cm2紫外線露光で硬化する紫外線硬化性エポキシ樹脂による周囲条件に対する露光を防止した。
【0180】
実施例6および7のOLED素子について性能試験を行った。典型的には、動作電圧(低くあるべきである)、ニット単位での輝度(明るく輝いているべきである)、cd/A単位での効率(素子より光を得るためにどの程度の電荷が必要であるかを反映する)および動作下の寿命(試験開始時点の初期輝度値の半分に到達するために必要な時間)などの異なるパラメータの組み合わせにより性能が定量化される。したがって、HIL性能の比較評価においては、全体的な性能が非常に重要である。以下の手順を使用して素子の性能を試験した。
【0181】
OLED素子はガラス基板上の画素を含み、画素の電極は素子の封入区域の外側に延伸しており、封入区域は画素の発光部分を含む。そのような素子中の各画素の典型的な面積は0.05cm2である。素子を試験するために、電極をKeithley 2400ソースメータなどの電流ソースメータと接触させ、アルミニウム電極を接地している間にバイアスを酸化インジウムスズ電極に印加した。この手順により正に帯電した担体(正孔)および負に帯電した担体が得られ、これらは、励起子を形成しかつ光を発生させる素子に注入される。この実施例のOLED素子では、素子のHIL層が電荷担体の発光層への注入を補助し、これにより素子の低動作電圧(画素を通じた所与の電流密度を実行するために必要な電圧として定義される)が得られる。
【0182】
同時に、別のKeithley 2400ソースメータを使用して大面積ケイ素フォトダイオードをアドレスした。このフォトダイオードを、2400ソースメータで0ボルトバイアスに維持し、OLED画素の点灯区域の直下にあるガラス基板の区域に直接接触させて配置した。フォトダイオードを使用して、OLED素子が発生させた光を収集し、それを光電流に変換し、光電流をソースメータで読み取った。発生したフォトダイオード電流は、Minolta CS-200クロマメータの助けによりそれを較正することで、光学単位(カンデラ/平方メートル)として定量化される。
【0183】
素子のOLED画素の電圧-電流-光またはIVLデータを以下のように作成した。素子の試験中に、OLED画素をアドレスするKeithley 2400ソースメータがそれに電圧掃引を印加した。画素を通過する得られた電流を測定した。同時に、OLED画素を通過する電流により光の発生が得られ、次にこの光により、フォトダイオードに接続されるもう1つのKeithley 2400ソースメータによる光電流の読み取りが得られた。これにより、画素に対する入力電力1ワット当たりのルーメン(電力効率)および画素電流1アンペア当たりのカンデラなどの他の素子特性の測定が可能になった。
【0184】
電流密度(mA/cm2)、動作電圧(V)、輝度(cd/m2)および効率(cd/A)を、実施例6および7のOLED素子について測定した。これらの素子は、表1および2に示すインク組成物1〜9より形成されるHIL、ならびに表3の比較HILを含んでいた。結果を表4、5、6および7に提示する。表4〜7では、HIL 1〜9は表1および2のインク組成物1〜9に対応する。上記表3に記載のように比較HILを作製した。インク組成物1〜9より形成したHILを含むほぼすべての素子が、比較HILを含む素子よりも大きい輝度および大きい効率を生成した。
【0185】
実施例6:ポリ(TPD-TFVBPA)を用いるOLED素子の製作および試験
ポリ(TPD-TFVBPA)を含むインク組成物を、素子の正孔注入層として流延した。
【0186】
HIL上に堆積させた素子層は、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、正孔遮断層(HBL)、電子輸送層(ETL)および金属カソードを含んでいた。使用した材料は、HTLとしてのN,N'(ジナフタレン-1-イル)-N,N'-ジフェニル-ベンジジン(NPB)、EMLとしてのトリス-(1-フェニルイソキノリン)イリジウムIII (Ir(piq)3)でドープしたビス(2-メチル-8-キノリノラト-N1,O8)-(1,1'-ビフェニル-4-オラト)アルミニウム(BAlq)、HBLとしてのBAlq、およびETLとしてのトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)であった。これらの材料はすべて市販されている。2つの金属層、すなわちCaの3nm〜5nm層である第1の層(0.1nm/秒)、続いてAlの200nm層(0.5nm/秒)を、5x10-7Torrのベース圧力で順次堆積させることで、カソード層を調製した。
【0187】
図3は、素子1、2、3のIVL測定値を比較HIL例と共に示す。
【0188】
HIL 1〜3および比較HILの素子性能を表4に要約する。表でわかるように、これらの非水性HILの各々は、比較水性HILよりも良くなかったとしても同等のIVL性能を示す。
【0189】
(表4)本発明HIL 1〜3と比較HILとの比較。素子構造: ITO/HIL/NPB/BAlq:Ir(piq)3 (15重量%)/BAlq/Alq3/Ca/Al
【0190】
実施例7:TPD-TFV (実施例2)を用いるOLED素子の製作および試験
TPD-TFVを含むインク組成物を、素子の正孔注入層として流延した。HILの上に堆積させた層は、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、正孔遮断層(HBL)、電子輸送層(ETL)および金属カソードを含んでいた。使用した材料は、HTLとしてのN,N'(ジナフタレン-1-イル)-N,N'-ジフェニル-ベンジジン(NPB)、EMLとしてのトリス-(1-フェニルイソキノリン)イリジウムIII (Ir(piq)3)でドープしたビス(2-メチル-8-キノリノラト-N1,O8)-(1,1'-ビフェニル-4-オラト)アルミニウム(BAlq)、ビス(2-メチルキノリン-8-オラト-κ2N,O)(6-フェニル-2-ナフトラト-κO)アルミニウム(III) (BAlq')、ならびに電子輸送層ETLおよび電子注入層EILであった。これらの材料はすべて市販されている。Alの200nm層(0.5nm/秒)を5x10-7Torrのベース圧力で順次堆積させることで、カソード層を調製した。
【0191】
図10a、bは、素子4、5、6および比較例のIVL測定値を示す。図11a、bは、素子7、8、9および比較例のIVL測定値を示す。
【0192】
(表5)HIL 4〜9と比較HILとの比較。素子構造: ITO/HIL/NPB/BAlq:Ir(piq)3 (15重量%)/BAlq'/ETL/EIL/Al
【0193】
さらに、OLED素子をそれらの寿命性能について試験することもできる。試験される素子に定電流を供給する寿命試験器を使用して寿命性能を測定することができる。素子への電流が一定の初期輝度値を与えるようにそれを調整する。寿命性能試験では、この値を典型的には1,000カンデラ/メートル2に設定する。次に経時的な輝度減衰および電流上昇を記述する。
【0194】
上記実施例5〜7のそれと同様にして製作したOLED素子を寿命性能について試験した。OLED素子は、表6に示す素子効率測定に使用した比較HILおよび本発明HILを含んでおり、一般構造ITO/HIL/NPB/BAlq:Ir(piq)3 (15重量%)/ETL/EIL/Alを有していた。寿命性能試験の結果を表6に示す。一般に、本発明HILを含む素子は、比較HILを含む素子よりも大きい輝度および長い寿命を生成した。
【0195】
(表6)比較および本発明HILの寿命試験。素子構造: ITO/HIL/NPB/BAlq:Ir(piq)3 (15重量%)/ETL/EIL/Al
【0196】
洗浄試験
実施例8:1,1,1-トリス(4-トリフルオロビニルオキシフェニル)エタン(TFVOE)を有するおよび有さないTPD-TFVモノマーの膜厚
上記実施例2に記載の反応スキームに従ってTPD-TFVの試料を合成した。95重量% DOWANOL(商標)PMAプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(ミシガン州ミッドランド48674のThe Dow Chemical Companyより入手可能)に溶解した5重量% TPD-TFVを含む試料を、参照溶液として調製した。4.25〜4.75重量% TPD-TFV、0.25〜0.75重量% TFVOE (カタログ番号019500、サウスカロライナ州ウエストコロンビア29172のOakwood Chemicalより入手可能)および95重量% DOWANOL(商標)PMAを含むいくつかの実験溶液を調製した。TPD-TFV溶液への0.25〜0.75重量%三官能性成分TFVOEの添加の、そのような組成物で形成することで得られる膜に対する効果を測定するために、試験を行った。具体的には、グローブボックス中で溶液をITOプレート上にて1000rpmで回転させた後、アニールした。第1のアニール後に第1の厚さ測定値(「トルエン前」)を得た。次に得られた膜をトルエン洗浄にさらし、4330rpmで回転させ、130℃でさらに15分間アニールした。次に第2の厚さ測定値(「トルエン後」)を得た。偏光解析技術により膜厚測定値を得た。結果を下記表7に示す。
【0197】
(表7)膜厚測定試験
【0198】
表7のデータは、TFVOEを有さない膜ではアニール間のトルエン洗浄により膜厚の何らかの損失が生じることを示す。TFVOEが溶液および得られる膜に存在する場合、同様のトルエン洗浄は、厚さの変化があったとしてもほとんどそれを引き起こさない。調製した溶液中での0.25重量%から0.75重量% TFVOEへのTFVOEの増加により、トルエン洗浄後の厚さの損失の減少が得られる。有機溶媒を含むインクよりさらなる層を堆積させる時点で保護しなければ洗い流される可能性がある下地膜を保護するための経路を、これらの結果は与える。
【0199】
実施例9:N3,N6-ジフェニル-N3,N6,9-トリス(4-(1,2,2-トリフルオロビニルオキシ)フェニル)-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン(Cz-TFV)の合成および試験
1. 合成
N3,N6-ジフェニル-N3,N6,9-トリス(4-(1,2,2-トリフルオロビニルオキシ)フェニル)-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン(下記化合物4)の合成を、以下の反応スキームに従って行った。
【0200】
第1の反応により、以下のスキームに従って化合物(1)を生成する。
【0201】
3,6-ジブロモ-9-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-9H-カルバゾール(化合物1)の調製:
フラスコ(1L)にN2下室温で、3,6-ジブロモカルバゾール(50g)、ジクロロメタン(500mL)、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(40g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(1g)を加えた。反応液を終夜攪拌した。NaHCO3 (3g)を加え、反応液を1時間攪拌した。濾過後、濾液中の溶媒を蒸発除去した。MeOH (1L)を加え、N2下で2時間還流させた。それが昇温した時点で濾過して生成物37.5gを得た。MeOH (800mL)を蒸発除去し、固体を析出させた。濾過により生成物12.5gを得た。両生成物はTLC上で白色の単一スポットであり、GS-MSおよび1H NMRはそれらが純粋な生成物であることを示した。全収率は80%である。
【0202】
上記反応スキームに続く第2および第3の反応により、以下のスキームに従ってそれぞれ化合物(2)および(3)を生成する。
【0203】
N3,N6-ジフェニル-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン(化合物3)の調製:
乾燥フラスコにN2下で3,6-ジブロモ-9-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-9H-カルバゾール(1) (37.5g)、アニリン(25mL)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(430mg)、水酸化カリウム水溶液(68.6g、水中45%)、トルエン(1.2L)を加えた。攪拌混合物をN2で15分間掃流した。次にこの混合物にPd2dba3 (4.12g)およびトリ-tert-ブチルホスフィン(無水トルエン中2.97g)を加えた。反応液を終夜加熱還流させた。反応液を室温に冷却し、無水MgSO4を加え、シリカゲルおよびセライトの層を通じて濾過した。溶媒を除去し、粗生成物を精製せずに次の反応に使用した。2LフラスコにN2下で、N3,N6-ジフェニル-9-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン(2)の粗生成物全部、THF (1L)および濃HCl (20mL)を加えた。反応混合物を2時間攪拌した。THF (700mL)を蒸発除去した後、氷水に注ぎ、濾過して固体粗生成物を得た。固体を酢酸エチル(500mL)中で2時間攪拌し、濾過により最終生成物(13.7g)を2段階収率42%で得た。1H NMRはこの化合物と一致した。
【0204】
化合物4を調製する引き続く第4の反応を以下のように行う。
【0205】
N3,N6-ジフェニル-N3,N6,9-トリス(4-(1,2,2-トリフルオロビニルオキシ)フェニル)-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン(Cz-TFV; 化合物4)の調製
乾燥フラスコにN2下でN3,N6-ジフェニル-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン(3) (5g)、1-ブロモ-4-(トリフルオロビニルオキシ)ベンゼン(14.5g)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(313mg)、水酸化カリウム水溶液(17.8g、水中45%)、1,4-ジオキサン(500mL)を加えた。攪拌混合物をN2で15分間掃流した。次にこの混合物にPd2dba3 (1.2g)およびトリ-tert-ブチルホスフィン(無水トルエン中0.75g)を加えた。反応液を終夜加熱還流させた。反応液を室温に冷却し、無水MgSO4を加え、シリカゲルおよびセライトの層を通じて濾過した。溶媒を除去し、粗生成物をシリカプラグ(ヘキサン、次にヘキサン中1% EtOAc)を使用して精製した後、自動カラム(ヘキサン)を使用してさらに精製した。純粋な生成物4.8gを収率39%で得た。1H、13Cおよび19F NMRはこの化合物と一致した。
【0206】
2. 調合
TS = 全固形分
【0207】
3. Cz-TFVの特性
この膜はグローブボックス中1,000rpm/60秒の回転条件によるものであり、アニール条件はガラス上のグローブボックス中250℃/60分とした。
紫外可視: λmax = 311nm、PL: λmax = 425nm
図12を参照
透過率: λ= 462nmの場合95%超
図13を参照。
【0208】
さらなる膜試験
プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)
回転条件: グローブボックス中1000rpm/60秒
アニール条件: グローブボックス中250℃/60分
良好な膜とは目視観察において平滑で透明な均一の膜を意味する。
ITO基板。
【0209】
膜中の架橋反応
膜中の架橋反応をFTIRでモニタリングした。1833cm-1ピークは弱く、965cm-1ピークを使用して膜中の架橋反応をモニタリングした。アニール温度150、200および250℃ならびにこれらの温度でのアニール時間2、15、60分をHTL 1について試験する。250℃/60分でのピーク増加はない。しかし、トルエン洗浄後は膜が残存しない。したがって、5% TFVOEを調合物HTL2に加えた。
【0210】
ITO上での膜形成および洗浄試験
HTL2、HTL3およびHTL4は、ITO上で良好な膜を形成すること、およびトルエン/クロロベンゼン洗浄後に90〜100%の膜保持率を有することが可能である。Cz-TFVは3個の架橋基を有し、膜保持率についてTPD-TFVよりも優れた性能を示す。
【0211】
(1) HIL比較2ならびに非水性HIL比較3および4上での膜形成
HTL 3は、水性HILと非水性HILとの両方の上で一貫した厚さで良好な膜を形成可能である。
【0212】
(4) 紫外線および熱アニール
紫外線および熱アニールではいずれも、トルエン洗浄後に膜厚が90〜100%保持される。しかし紫外線アニールはより厚い膜を与えた。基板はITOとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアリールアミンを含む少なくとも1つの繰り返し部分と、少なくとも1つのフッ素化アルキレンオキシを含む少なくとも1つの繰り返し部分とを含む、ポリマー主鎖またはオリゴマー主鎖を含む、組成物。
【請求項2】
アリールアミンを含む繰り返し部分と、フッ素化アルキレンオキシを含む繰り返し部分とが、交互に現れる部分である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
アリールアミンがトリアリールアミンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
フッ素化アルキレンオキシがC1〜C10アルキレンエーテルを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
フッ素化アルキレンオキシがフッ素化C1〜C10ビニルエーテルを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
フッ素化アルキレンオキシがトリフルオロアルキレンオキシ部分を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
アリールアミンおよびフッ素化アルキレンオキシを含む可溶性の線状ポリマーを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
架橋されている、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
以下で表される繰り返し単位を含むオリゴマーまたはポリマー:
式中、
Ar1はアリールアミンを含み、
Ar2はアリールを含み、
R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキレンより独立して選択される。
【請求項10】
繰り返し単位(I)および(II)が交互に現れる、請求項9記載のオリゴマーまたはポリマー。
【請求項11】
Ar1が以下で表される、請求項9記載のオリゴマーまたはポリマー:
式中、
J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、
kは1〜4の整数であり、
mは1〜5の整数であり、
nは1〜5の整数である。
【請求項12】
Ar1が
で表される、請求項9記載のオリゴマーまたはポリマー。
【請求項13】
Ar2が以下で表される、請求項9記載のオリゴマーまたはポリマー:
式中、zは1〜5の整数である。
【請求項14】
Ar2が以下で表される、請求項9記載のオリゴマーまたはポリマー:
式中、
J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、
kは1〜4の整数であり、
mは1〜5の整数であり、
nは1〜5の整数である。
【請求項15】
Ar2が以下で表される、請求項9記載のオリゴマーまたはポリマー:
式中、
R3はフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルであり、
Zは1〜5の整数である。
【請求項16】
Ar2が
で表される、請求項9記載のオリゴマーまたはポリマー。
【請求項17】
(X) HO-Ar4-OH
で表される第1のモノマーと、
(XII) R5-O-Ar5-O-R6
で表される第2のモノマーとを共重合する工程を含む、オリゴマーまたはポリマーを作製する方法:
式中、Ar4およびAr5はアリール部分またはアリールアミン部分より独立して選択され、但し、Ar4およびAr5の少なくとも一方はアリールアミンであり、R5およびR6は独立してフッ素化C1〜C10アルキレンを表す。
【請求項18】
(X) HO-Ar4-OH
で表される第1のモノマーと、
(XII) R5-O-Ar5-O-R6
で表される第2のモノマーとを共重合することで形成される、オリゴマーまたはポリマー:
式中、Ar4およびAr5はアリール部分またはアリールアミン部分より独立して選択され、但し、Ar4およびAr5の少なくとも一方はアリールアミンであり、R5およびR6は独立してフッ素化C1〜C10アルキレンを表す。
【請求項19】
以下で表される繰り返し単位を含むオリゴマーまたはポリマーと、少なくとも1つの溶媒とを含む、組成物:
式中、
Ar1はアリールアミンであり、
Ar2はアリールを含み、
R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキルより独立して選択される。
【請求項20】
以下で表される繰り返し単位を含むオリゴマーまたはポリマーを含む層を含む、素子:
式中、
Ar1はアリールアミンであり、
Ar2はアリールを含み、
R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキルより独立して選択される。
【請求項21】
OLED、PLED、PHOLEDまたはOPV素子である、請求項20記載の素子。
【請求項22】
前記層が正孔注入層である、請求項20記載の素子。
【請求項23】
前記層が正孔輸送層である、請求項20記載の素子。
【請求項24】
(i) 少なくとも1つのアリールアミンと、(2) アリールアミンに共有結合している少なくとも1つのフルオロビニルエーテル単位とを含む、組成物。
【請求項25】
モノマー、オリゴマーまたはポリマーである、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
モノマーである、請求項24記載の組成物。
【請求項27】
オリゴマーである、請求項24記載の組成物。
【請求項28】
ポリマーである、請求項24記載の組成物。
【請求項29】
正孔輸送を行うように適合されている少なくとも1つの繰り返し部分と、少なくとも1つのフッ素化アルキレンオキシ繰り返し部分とを含む、ポリマー主鎖またはオリゴマー主鎖を含む、組成物。
【請求項30】
正孔輸送を行うように適合されている少なくとも1つの繰り返し部分と、以下で表されるモノマーに由来する少なくとも1つのフッ素化繰り返し部分とを含む、ポリマー主鎖またはオリゴマー主鎖を含む、組成物:
または
式中、Rは
のうちの1つで表される。
【請求項31】
少なくとも2つの第二級アミン部分を含む少なくとも1つのアリールアミンと、アルキレンオキシ単位を含む少なくとも1つのアリールブロミドとを反応させて、アルキレンオキシ単位を含むアリールアミンモノマーを形成させる工程
を含む方法であって、該反応が有機金属錯体の使用により行われる、方法。
【請求項1】
少なくとも1つのアリールアミンを含む少なくとも1つの繰り返し部分と、少なくとも1つのフッ素化アルキレンオキシを含む少なくとも1つの繰り返し部分とを含む、ポリマー主鎖またはオリゴマー主鎖を含む、組成物。
【請求項2】
アリールアミンを含む繰り返し部分と、フッ素化アルキレンオキシを含む繰り返し部分とが、交互に現れる部分である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
アリールアミンがトリアリールアミンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
フッ素化アルキレンオキシがC1〜C10アルキレンエーテルを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
フッ素化アルキレンオキシがフッ素化C1〜C10ビニルエーテルを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
フッ素化アルキレンオキシがトリフルオロアルキレンオキシ部分を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
アリールアミンおよびフッ素化アルキレンオキシを含む可溶性の線状ポリマーを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
架橋されている、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
以下で表される繰り返し単位を含むオリゴマーまたはポリマー:
式中、
Ar1はアリールアミンを含み、
Ar2はアリールを含み、
R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキレンより独立して選択される。
【請求項10】
繰り返し単位(I)および(II)が交互に現れる、請求項9記載のオリゴマーまたはポリマー。
【請求項11】
Ar1が以下で表される、請求項9記載のオリゴマーまたはポリマー:
式中、
J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、
kは1〜4の整数であり、
mは1〜5の整数であり、
nは1〜5の整数である。
【請求項12】
Ar1が
で表される、請求項9記載のオリゴマーまたはポリマー。
【請求項13】
Ar2が以下で表される、請求項9記載のオリゴマーまたはポリマー:
式中、zは1〜5の整数である。
【請求項14】
Ar2が以下で表される、請求項9記載のオリゴマーまたはポリマー:
式中、
J1、J2およびJ3は、水素、C1〜C10アルキル、パーフルオロアルキル、チオアルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シアノ、ハロおよびアルキルチオ基より独立して選択され、
kは1〜4の整数であり、
mは1〜5の整数であり、
nは1〜5の整数である。
【請求項15】
Ar2が以下で表される、請求項9記載のオリゴマーまたはポリマー:
式中、
R3はフッ素化されていてもよいC1〜C10アルキルであり、
Zは1〜5の整数である。
【請求項16】
Ar2が
で表される、請求項9記載のオリゴマーまたはポリマー。
【請求項17】
(X) HO-Ar4-OH
で表される第1のモノマーと、
(XII) R5-O-Ar5-O-R6
で表される第2のモノマーとを共重合する工程を含む、オリゴマーまたはポリマーを作製する方法:
式中、Ar4およびAr5はアリール部分またはアリールアミン部分より独立して選択され、但し、Ar4およびAr5の少なくとも一方はアリールアミンであり、R5およびR6は独立してフッ素化C1〜C10アルキレンを表す。
【請求項18】
(X) HO-Ar4-OH
で表される第1のモノマーと、
(XII) R5-O-Ar5-O-R6
で表される第2のモノマーとを共重合することで形成される、オリゴマーまたはポリマー:
式中、Ar4およびAr5はアリール部分またはアリールアミン部分より独立して選択され、但し、Ar4およびAr5の少なくとも一方はアリールアミンであり、R5およびR6は独立してフッ素化C1〜C10アルキレンを表す。
【請求項19】
以下で表される繰り返し単位を含むオリゴマーまたはポリマーと、少なくとも1つの溶媒とを含む、組成物:
式中、
Ar1はアリールアミンであり、
Ar2はアリールを含み、
R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキルより独立して選択される。
【請求項20】
以下で表される繰り返し単位を含むオリゴマーまたはポリマーを含む層を含む、素子:
式中、
Ar1はアリールアミンであり、
Ar2はアリールを含み、
R1およびR2はC1〜C10フッ素化アルキルより独立して選択される。
【請求項21】
OLED、PLED、PHOLEDまたはOPV素子である、請求項20記載の素子。
【請求項22】
前記層が正孔注入層である、請求項20記載の素子。
【請求項23】
前記層が正孔輸送層である、請求項20記載の素子。
【請求項24】
(i) 少なくとも1つのアリールアミンと、(2) アリールアミンに共有結合している少なくとも1つのフルオロビニルエーテル単位とを含む、組成物。
【請求項25】
モノマー、オリゴマーまたはポリマーである、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
モノマーである、請求項24記載の組成物。
【請求項27】
オリゴマーである、請求項24記載の組成物。
【請求項28】
ポリマーである、請求項24記載の組成物。
【請求項29】
正孔輸送を行うように適合されている少なくとも1つの繰り返し部分と、少なくとも1つのフッ素化アルキレンオキシ繰り返し部分とを含む、ポリマー主鎖またはオリゴマー主鎖を含む、組成物。
【請求項30】
正孔輸送を行うように適合されている少なくとも1つの繰り返し部分と、以下で表されるモノマーに由来する少なくとも1つのフッ素化繰り返し部分とを含む、ポリマー主鎖またはオリゴマー主鎖を含む、組成物:
または
式中、Rは
のうちの1つで表される。
【請求項31】
少なくとも2つの第二級アミン部分を含む少なくとも1つのアリールアミンと、アルキレンオキシ単位を含む少なくとも1つのアリールブロミドとを反応させて、アルキレンオキシ単位を含むアリールアミンモノマーを形成させる工程
を含む方法であって、該反応が有機金属錯体の使用により行われる、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−509278(P2012−509278A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536609(P2011−536609)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/064857
【国際公開番号】WO2010/059646
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(507094393)プレックストロニクス インコーポレーティッド (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/064857
【国際公開番号】WO2010/059646
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(507094393)プレックストロニクス インコーポレーティッド (24)
【Fターム(参考)】
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