説明

アミノ酸のN−アシル誘導体、その製法、薬理組成物および抗−アレルギー性、抗−炎症性および抗−脂血性薬剤としてのその使用

本発明は、一般式(I):
HOOC-(CH2)n-CO-NH-CH(CH2R1)-COOR2 (I)
(ここで、nは2または3であり;またR1は以下の構造を持つ基:
【化1】


を表し;R2 = H, -CH3、-C2H5である)で表されるアミノ酸のN-アシル誘導体またはこれらの製薬上許容される塩;その新規製法;抗-アレルギー剤、抗-アナフィラキシー剤性、抗-炎症剤および抗-脂血症剤としてのその使用;並びに該化合物を有効量で含有する薬理組成物;およびアレルギー性および炎症性諸疾患並びに脂質代謝障害:気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、季節性および通年性鼻炎、アレルギー性肺炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、蕁麻疹、虫刺されおよび医薬に対するアレルギー(アナフィラキシーをも含む)反応、寒冷アレルギー、アレルギー性結膜炎、アテローム性硬化症、肥満症、虚血性心臓および脳疾患、心筋梗塞および発作を治療する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物有機化学の分野に係り、またアミノ酸のN-アシル誘導体およびこれらの製薬上許容される塩、該化合物の新規な製法、並びにこれら化合物を主成分とする薬理組成物および抗-アレルギー性、抗-炎症性および抗-脂血性薬剤としてのその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アレルギー性疾患および脂質代謝障害が、住民、集団の貧弱な環境的状況、栄養および生活スタイルにおける変化のために、現時点において、極めて高い罹患率を示すことは公知である。従って、これらの病状並びにアレルギーを伴う炎症過程を撲滅するための、医薬を開発するという課題が、実際問題として残されている。
H1-ヒスタミンレセプタ遮断因子は、最も普及している抗-アレルギー性薬物群である。現時点では、抗-ヒスタミン薬物の2つの系統を区別している[Mashkovsky M.D. Lekarstvennye sredstva (Medicaments(医薬))/モスクワ(Moscow), Novaya Volna社刊, 2005, p.285]。
該第一の系統に属する抗-ヒスタミン剤は、血液脳関門を通過し、また中枢神経系細胞の有害な鎮静作用を引き起こす、該神経系のH1-レセプタ遮断を誘発することができる。これら薬物の高い血中濃度が、高い用量でのその処方を必要とする、顕著な抗-ヒスタミン作用を達成するために必要とされる。タキフィラキシーの、寧ろ高頻度での発生、障害のある調整によって現れるCNSに及ぼされる作用、眩暈、無気力感、注意力集中能の低下等がこれら薬物の負の特徴である。上記の事実にも拘らず、この第一世代の抗-ヒスタミン剤は、特に極めて迅速な効果が必要とされるような状況において、例えばアナフィラキシーにおいて、依然として使用されている。ジメドロール(Dimedrol;ジフェンヒドラミン)、スプラスチン(suprastine;クロロピラミン)、タベジール(クレマスチン)およびフェンカロール(phencarol;キフェナジン(chyphenadine))は、この第一世代の抗-ヒスタミン剤に属する。
【0003】
該第二世代の抗-ヒスタミン剤は、該第一世代の薬物にとって固有の有害な作用を持たないことから、アレルギー学的実務において広く利用されている。特に、該第二世代の薬物は、血液脳関門を通過せず、鎮静作用および催眠作用を示すことがない。これらの薬物は、迅速、かつ長期持続性の抗-ヒスタミンによって特徴付けられる。クラリチン(claritine;ロラタジン)、ジルテック(Zirtec;セチリジン(Cetirisine))、ケスチン(Kestine;エバスチン)は、この第二世代の抗-ヒスタミン剤に属する。しかし、実施した臨床的な試みは、これらと他の薬剤との相互作用またはP450シトクロームにより誘発されるその代謝の中断、妨害によって引起される、これら薬物の副作用を明らかにした。このようにして、潜在的な鎮静作用性(セチリジン、ロラタジン)および潜在的な心臓毒性[テルフェナジン、アセミソール(Asthemisol(エバスチン))]作用が、該第二世代の抗-ヒスタミン剤において検出されている。
【0004】
幾つかの場合において、例えば気管支喘息において、強い抗-アレルギー作用を及ぼすグルココルチコイドを使用している。しかし、その使用は、Itsenko-Cushing症候群、高血圧症、高カリウム血症、骨粗鬆症等の全身的な発現を伴う[Mashkovsky M.D. Lekarstvennye sredstva (Medicaments(医薬))/モスクワ(Moscow), Novaya Volna社刊, 1993, Vol. 1, p.365]。
第一次アレルギーターゲット細胞(好塩基球およびマスト細胞)の活性化の程度によって、かなりの程度まで決定される、アレルギー応答発現の病理化学的な段階は、アレルギー疾患の発現において特別な役割を演じている。刺激(アレルゲン)の作用下で、生物学的に活性な化合物(第一には、ヒスタミン)を蓄積し、またこれを放出する能力は、その重要な一つの特徴である。抗原に対するIgE-および/またはIgG-媒介応答において、正にこれらの細胞は、即時性アレルギーの臨床的病像発現の程度を決定付ける[Parker Ch.V./媒介体:放出および機能(Mediators: Release and Functions): Immunology, W. Pole編, モスクワ, Mir社刊, 1989, 3:170-247; Chakravarty N.K., マスト細胞:その健康な人々および罹病者における役割(The mast cell: Its role in health and disease), J. Pepys編, 1979, p.38-46]。
【0005】
気管支喘息および気管支痙攣状態において有用な、一群の薬物[ナトリウムクロモグリケート(クロモグリシン酸の2ナトリウム塩)、ケトチフェン(ketotyphen)、オキサトミド]が存在し、その作用は、マスト細胞の脱顆粒反応を阻害する能力、およびこれらからの、気管支痙攣、アレルギーおよび炎症の発現を促進する、媒介物質(ブラジキニン、ヒスタミン)の放出を阻止する能力に基くものである。粘膜の刺激状態、頭痛、咽頭浮腫、咳、窒息が、副作用として観測される恐れがある[Mashkovsky M.D. Lekarstvennye sredstva (Medicaments(医薬))/モスクワ(Moscow), Novaya Volna社刊, 2005, p.297]。
世界的に、成人集団の最も頻度の高い第一の死因である、虚血性心疾患は、アテローム性硬化症の、最も高頻度で発現する症状として知られている。「アテローム発症性」リポタンパクと呼ばれる、低密度リポタンパクコレステロール(LDLC)および超低密度のリポタンパクコレステロール(VLDLC)を包含する、高い血漿コレステロールレベルによって顕在化される脂質代謝障害は、同時に「抗-アテローム発症性」リポタンパクの量における低下を伴い、この疾患における主流となる障害の一つとして認識されている。
【0006】
血漿脂質含有率および比における変化は、実質器官の膜構造におけるその変質を反映することが示された。細胞膜、例えばマクロソーム(macrosomal)の組成は、実験動物に与えられた食餌に直接依存する(Wada A., Harred W.,//Feder. Proct., 1976, 55:2475-2479)。動物へのコレステロールの投与は、細胞膜におけるコレステロールの蓄積を誘発し、これはその流動性を低下し、結果的に酵素の機能状態の変更をもたらす(Buters J.T.M., Zysset T., Reichen J.// Biochem. Pharmacol., 1993、Vol.46, Iss 6, pp. 983-991)。
コレステロールおよびトリグリセライドの血中レベルを低下する、抗-脂血症剤は、脂質代謝障害に関連する疾患の治療並びに予防のために使用することができる。脂質代謝障害は、高レベルのトリグリセライド、全コレステロール(TC)、低密度および超低密度リポタンパクコレステロール(LDLCおよびVLDLC)およびアテローム性動脈硬化症、肥満症、虚血性心臓および脳疾患、心筋梗塞、および発作等の諸疾患における、低レベルの高密度リポタンパクコレステロールによって特徴付けられ、これらは、また顕在化された糖尿病および血栓形成のリスクファクタである。
【0007】
コレステロールの生合成阻害剤である、所謂スタチン、例えばゾコール(Zokol;シンバスタチン)の臨床的使用は、公知である。毎日の投与量80mgでの、与えられた群の薬物は、主として全コレステロールレベルの低下については、十分に効果的であるが、これらの薬物は、入手可能性が低く、また身体に対して異種発生性を示す化学的な化合物である。更に、その使用は、高い血中トランスアミナーゼレベルおよび消化不良を伴う、肝機能における変化等の副作用をもたらす可能性がある[Mashkovsky M.D., Medicaments./(Meditsina)社刊,モスクワ, 1993, 1:463]。
上記観点から、低濃度にて活性を示すことができ、また副作用を回避する、別の作用機構を示す、新規、かつ効果的な抗-アレルギー性および抗-高脂血症薬に関する研究が、行われている。この点に関して、天然起源の物質の残基を含む化合物が、該薬物に関して特に興味深いものであり、低毒性および副作用の低発生率を持つものであることを予測できる。
【0008】
国際特許出願WO 99/01103号には、生体アミン、例えばγ-グルタミルヒスタミンおよびその最も近い類似体であるグルタリルヒスタミンのN-アシル誘導体の、抗-アレルギーおよび抗-高脂血症活性が記載されており、これらの化合物は、構造および作用の点で、請求された化合物に最も近いものである。Krzhechkovskaya V.V., Zheltukhina G.A., Nebolsin V.E.等の、γ-L-グルタミルヒスタミンの抗-アナフィラキシー活性およびその作用のメカニズムに関連する研究を記載する文献(Pathogenez (Pathogenesis). 2003. Vol.1 No 2, pp.60-64)において、γ-グルタミルヒスタミンが、異なる動物種および投与割合を使用した場合に、明らかな抗-アナフィラキシー活性を持つことが示された。得られた結果は、動物のマスト細胞内において、著しく低下したヒスタミンレベルおよびその抗原-刺激性分泌が、γ-グルタミルヒスタミンの作用下で引起されることを示している。コントロールに比して50%を越える、気管支痙攣値における低下が、抗原-誘発性気管支痙攣発症の程度に及ぼす、グルタリルヒスタミン作用に関するテストにおいて示された。この効果は、50μg/kgという低い用量での経口投与および気管支内投与両者において認められた。グルタリルヒスタミンは、受動皮膚アナフィラキシーの発生頻度の低下を可能とする。WO 99/01103号は、50~500μg/kgなる範囲の用量での、グルタリルヒスタミンの動物への投与が、遅延型の過敏症の強度を大幅に低下することを示した。更に、50~500μg/kgなる範囲の用量での、グルタリルヒスタミンが、アテローム発生性の負荷が掛けられた動物に比して、5~7%高い、全コレステロールを低下する、幾分かの抗-コレステロール血症活性を示した。
【0009】
グルタリルヒスタミンの欠点は、その製造に必要な出発物質、即ちヒスタミンの比較的高いコストおよび低い入手可能性である。その上、指定された物質は、上記テストにおける有効性が不十分である。
技術的な手段の蓄積を拡大するために、またより効果的な、かつ利用可能性の高い抗-アレルギー、抗-炎症および抗-高脂血症薬剤を製造するために、本発明者等は、国際特許出願WO 99/01103号に記載されている一般式Iで示されるが、具体的には記載されておらず、製造されておらず、かつグルタリル-L-ヒスチジンメチルエステル(XII)以外は特徴付けされていない、アミノ酸の幾つかの特定のN-アシル誘導体を明らかにした。
従って、本発明の化合物は、上記国際特許出願の一般式Iでカバーされる。しかし、指定された刊行物には、与えられた化合物の特定の構造式も、如何なる物理-化学的諸特性も示されておらず、更にその製造法も開示されていない。本発明の化合物は、誘発される細胞分化活性を呈する、国際特許出願WO 03/072124号に記載されている化合物の、一般的な構造式に含まれる。しかし、この与えられた刊行物において、該化合物の合成方法は開示されておらず、また如何なる物理-化学的諸特性も提示されていない。
【0010】
該化合物の一つ:グルタリルヒスチジンは、USP No. 3,963,691において、そのHis C-末端メチルエステル[Glt-His(OMe) (XII)]の形状でのみ、ペプチド:Glt-His-Trp-Ser-Tyr-Gly-Leu-Arg-Pro-Gly-poly-Lysの合成において使用される中間体として述べられているに過ぎない。更に国際特許出願99/01103号には、グルタリル-L-ヒスチジンメチルエステル(XII)の合成が記載されており、かつその物理-化学的諸特性が示されている:即ち1H-NMR、マススペクトル、HPLC。
国際特許出願WO 93/04690には、サクシニルヒスチジン化合物が記載されている。この刊行物においては、遊離イミダゾール(imidasole)またはサクシニルヒスチジンの添加が、カルノシンとジヒドロキシアセトンとの反応を促進することが示されている。サクシニルヒスチジンの合成および物理-化学的定数は提示されていない。
サクシニルトリプトファンの構造式は、米国特許出願第2005/079515号に述べられている。この刊行物には、サクシニルトリプトファンの合成も、その物理-化学的定数も提示されていない。
【0011】
Journal “Byuleten' experimental'noy biologii i meditsiny”, 1998, vol.125, No 5, pp.544-547には、抗-不整脈活性および抗-心房細動活性を呈する、N-サクシニル-d,l-トリプトファンの二カリウム塩が開示されており、この二カリウム塩は、抗-虚血性および抗-低酸素症活性を与え、また急性心筋虚血における、血流力学的パラメータを安定化する。
Justus liebigs annalen der chemie, 1966, Band 691. P. 159-164には、ラセミ型サクシニルトリプトファンが記載されている。
Tetrahedron, 2005, v.61, No.4, P.919-926には、サクシニル-L-トリプトファンおよびサクシニル-D-トリプトファンの物理-化学的諸特性が提示されている。その生物学的な活性に関する情報は、欠落している。
Joseph R.Votano等の文献:好ましいサイトにおいてヘモグロビン分子と結合することが分かっている、2-芳香族性ペプチドによるデオキシヘモグロビンSの重合阻害(Inhibition of deoxyhemoglobin S polymerization by bi-aromatic peptides found to associate with the hemoglobin molecule at a preferred site), Biochemistry, 1977, v. 16, No.25, pp.5484-5491には、サクシニル-L-トリプトファンが記載されており、またデオキシヘモグロビンに対するその結合能力が検討されている。
【0012】
Dongmei H., Chao W., Ming Z., Shiqi P.の文献:N,N'-ジカルボニルトリプタミンの合成および鎮痛活性(Synthesis and analgesic activity of N,N'-dicarbonyl-tryptamines), Prep. Biochem. & Biotechnol., 2000, V.30 (3), P.231-240には、Nα-サクシニル-L-トリプトファンメチルエステル(XI)の合成が開示され、ここでは、ジメチルアミンピリジンの存在下で、トリプトファンメチルエステルと琥珀酸無水物とから合成され、引続き該ターゲット生成物のクロマトグラフィーによる精製が行われる。Nα-サクシニル-L-トリプトファンメチルエステルは、物理-化学的データ:1H-NMR-スペクトル分析、IR-スペクトル分析、マススペクトル分析、融点および元素分析データによって特徴付けされている。
グルタリル-L-トリプトファンメチルエステル(XIII)は、Raimondi S., Monti D., Pagnoni U.M., Rivaの文献:グルタリルアシラーゼ:一種の反応酵素または多能なエナンショマー-選択性生物触媒か?(Glutaryl acylases: One-reaction enzymes or versatile enantioselective biocatalysts?), Adv. Synth. Catal., 2003. V.345 (6-7). P.783-789に記載されており、そこでは唯一の典型的な合成法のみが、提示されており、また物理-化学的な定数の中で、1H-NMRデータのみが、提示されているに過ぎない。この化合物(XIII)は、グルタリルアシラーゼに対する基質として合成された。
【0013】
Nα-グルタリル-L-ヒスタミンの製造は、国際特許出願WO 99/01103号に記載されており、この方法は、生物起源のアミンの、無水N,N-ジメチルホルムアミドを含む媒体中での、グルタル酸無水物によるN-アシル化である。更に、Gershkovich A.A., Kibirev V.K.による文献:ペプチドの化学的合成(Chemical synthesis of peptides), Kiev, Naukova Dumka社刊, 1992, p.360には、水性-有機強アルカリ性媒体中での、アミノ酸のアシル化方法が記載されている。
刊行物:Sorm F., Pravda Z.のタンパク質およびアミノ酸、X. 2ペプチド類似体の合成(Proteins and amino acids. X. Synthesis of two peptide analogs)と題する文献:Chemicke Listy pro Vedu a Prumysl., 1951. V.45. P.423-425には、1:1なる混合比の水と酢酸エチルとの混合溶媒中での、サクシニルチロシンエチルエステルの合成方法が、開示されており、この化合物は、弱塩基性pHを維持するための、NaHCO3の存在下における、チロシンエチルエステルクロロハイドレートとグルタル酸無水物とから得られる。
カルボン酸無水物による遊離ヒスチジンのアシル化は、この文献には記載されていない。
【発明の開示】
【0014】
本発明の目的は、低濃度において、抗-アレルギー性、抗-炎症性および抗-脂血性活性を有するが、副作用を示さない、新規かつ効果的なアミノ酸のN-アシル誘導体およびその製薬上許容される塩、これらを主成分とする薬理組成物、そのより効果的な抗-アレルギー剤、抗-炎症剤および抗-脂血症剤としてのその利用、並びに新規な、アミノ酸のN-アシル誘導体の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、一般式Iで示される化合物の、簡単かつ効率的な方法を開発した。該方法は、固体形状にあるグルタル酸および琥珀酸無水物を、無機および有機塩基の不在下で、アミノ酸の水性溶液に添加して、55〜60%という十分に高い収率にて、ターゲット生成物を得ることからなる。
本発明者等は、ヒスチジンおよびトリプトファンのN-アシル誘導体を含む、一般式Iで示される化合物の、もう一つの合成方法を開発した。この方法は、水性ヒスチジン溶液またはトリプトファン塩と、適当な有機溶媒中のアシル化剤溶液とからなる二相系における、過剰量の該アシル化剤を使用する反応である。
即ち、本発明は、抗-アレルギー性、抗-炎症性および抗-脂血性活性を有する、以下の一般式Iで表されるアミノ酸の新規なN-アシル誘導体:
HOOC-(CH2)n-CO-NH-CH(CH2R1)-COOR2 (I)
(ここで、nは2または3であり;またR1は以下の構造を持つ基:
【0015】
【化1】

【0016】
を表し;R2 = H, -CH3、-C2H5である)およびこれらの製薬上許容される塩に関する。
本発明は、また一般式Iで表されるアミノ酸のN-アシル誘導体およびその塩の製造方法にも係り、該方法は、固体形状にあるグルタル酸または琥珀酸無水物を、以下の一般式:NH2-CH(CH2R1)-COOHで表されるアミノ酸またはその塩(ここで、R1は以下の構造を持つ基:
【0017】
【化2】

【0018】
を表す)の水性溶液に添加する工程;および
場合によって該ターゲット生成物を、その塩に転化する工程を含む。
本発明は、更にアミノ酸のN-アシル誘導体またはこれらの塩の製造方法に係り、該方法は、二相系において、グルタル酸または琥珀酸無水物と、以下の一般式:NH2-CH(CH2R1)-COOHで表されるアミノ酸(ここで、R1は以下の構造を持つ基:
【0019】
【化3】

【0020】
を表す)の水性溶液とを、水と不混和性の有機溶媒中で反応させる工程と;
場合によって該ターゲット生成物を、その塩に転化する工程、を含む。
本発明は、また一般式Iで表される化合物およびその製薬上許容される塩の、抗-アレルギー剤、抗-炎症剤および抗-脂血剤としての使用にも関連する。
更に、本発明は、有効量で、一般式Iで表される化合物またはその製薬上許容される塩並びに必要により、製薬上許容される担体を含有する、抗-アレルギー活性、抗-アナフィラキシー活性、抗-炎症活性および抗-脂血活性を有する、薬理組成物および薬剤にも関連する。
【0021】
本発明のもう一つの目的は、アレルギー性諸疾患、例えば気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、季節性鼻炎、通年性鼻炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、蕁麻疹、虫刺されおよび医薬に対するアレルギー(アナフィラキシーをも含む)反応、寒冷アレルギー、アレルギー性結膜炎、慢性閉塞性肺疾患、即ち慢性閉塞性気管支炎、肺気腫、閉塞性気管支炎、膵臓線維症、並びに脂質代謝障害に関連する諸疾患:アテローム性動脈硬化症、肥満症、虚血性心臓および脳疾患、心筋梗塞、および発作を治療する方法を提供するものであり、この方法は、一般式Iで表される化合物またはその製薬上許容される塩の有効量を、対象に投与することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
一般式Iで表される、好ましい化合物は、以下の表1に示すものである:
【0023】
【表1】

【0024】
一般式Iの化合物の合成は、2つの方法によって行うことができる。その第一の方法は、以下の一般式:NH2-CH(CH2R1)-COOHで表されるアミノ酸(ここで、R1は以下の構造を持つ基:
【0025】
【化4】

【0026】
を表す)の水性溶液に、固体状態にあるグルタル酸または琥珀酸無水物を、徐々に添加し、引続きイオン交換クロマトグラフィーを利用して、好ましくは該反応混合物を、カチオナイト(cationite)を含むカラムに通すことにより、該ターゲット生成物を単離し、次いで水性溶液から結晶化させることからなる。得られる該ターゲット生成物の結晶を、適当な溶媒、好ましくはメタノールで洗浄する。特許請求されたこの方法の主な利点は、該アミノ酸水性溶液中にアルカリが存在しないことにあり、このことは、加水分解によって生成するジカルボン酸無水物の不活性化を防止する。更に、該アミノ酸分子中に存在する、イミダゾール残基は、アミノ酸のアミノ基のアシル化反応の、酸性-塩基性自己触媒作用を発揮できる。特許請求された該方法を利用した際に、寧ろ高い収率(55-60%)が、特に過剰量で使用するジカルボン酸無水物の徐々の添加および反応系の激しい攪拌によって、達成される。
一般式Iの化合物は、また二相系におけるもう一つの方法によって製造することも可能であり、そこでは、水不混和性溶媒中のグルタル酸または琥珀酸無水物を、以下の一般式:NH2-CH(CH2R1)-COOHで表されるアミノ酸(ここで、R1は以下の構造:
【0027】
【化5】

【0028】
を持つ基を表す)の水性溶液に添加することを含む。
本発明の方法は、過剰量のアシル化剤の使用を可能とし、該アミノ酸のα-アミノ基の完全なアシル化を、および約70%という該ターゲット生成物の収率の達成を可能とする。必要なpHを維持するために、無機アルカリの代わりに、有機塩基であるピリジンを使用するが、これは無水物を加水分解せず、また更にアシル化の触媒であることも知られている。ピリジンの使用は、無機塩による最終生成物の汚染回避を可能とする。該塩は、該反応生成物と共に水性相中に残存している。この使用した方法は、未反応の無水物および各アミノ酸からの、該ターゲット生成物の分離を簡略化し、かつ簡単な結晶化による該ターゲット生成物の単離を可能とする。
好ましい水不混和性有機溶媒は、ブタノール、酢酸ブチル、およびクロロホルムである。
該ターゲット生成物を結晶化するのに有用な、好ましい溶媒は、水-アルコール混合物、特に水-エタノール混合物である。
【0029】
本発明のアミノ酸エステルのN-アシル誘導体(VI-XIII)は、有機または水-有機媒体中で、ジカルボン酸の各分子内無水物を、遊離アミノヒスチジンまたはトリプトファンエステルに作用させることによって、製造できる。好ましくは、該化合物VI-XIIIを、二相系内で、水不混和性有機溶媒であるブタノール、酢酸エチルおよびクロロホルムを使用して製造する。
一般式Iの化合物は、また製薬上許容される塩として、文献において広く記載されている通常の方法を利用して、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸カルシウムと反応させることによって、製造することも可能である。
一般式Iの化合物は、抗-アレルギー活性、抗-炎症活性および抗-脂血活性を有し、またこれらは、アレルギー、炎症を伴う疾患を包含するアナフィラキシー性諸疾患、並びに脂質代謝障害を治療する目的で使用することも可能である。
特に、本発明の化合物は、以下に列挙するアレルギー性疾患:気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、季節性鼻炎、通年性鼻炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、蕁麻疹、虫刺されおよび医薬に対するアレルギー(アナフィラキシーをも含む)反応、寒冷アレルギー、アレルギー性結膜炎、慢性閉塞性肺疾患、即ち慢性閉塞性気管支炎、肺気腫、閉塞性気管支炎、膵臓線維症、並びに脂質代謝障害に関連する諸疾患:例えば、アテローム性動脈硬化症、肥満症、虚血性心臓および脳疾患、心筋梗塞、および発作を治療するために、使用することができる。
【0030】
本発明の化合物は、所定の治療上の結果を与える、有効量で投与される。
気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、季節性鼻炎、通年性鼻炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、蕁麻疹、虫刺されおよび医薬に対するアレルギー(アナフィラキシーをも含む)反応、寒冷アレルギー、アレルギー性結膜炎、慢性閉塞性肺疾患、即ち慢性閉塞性気管支炎、肺気腫、閉塞性気管支炎、膵臓線維症を包含するアレルギー性疾患;並びに脂質代謝障害に関連する諸疾患:例えば、アテローム性動脈硬化症、肥満症、虚血性心臓および脳疾患、心筋梗塞、および発作を治療するために、一般式Iの化合物を、無毒の製薬上許容される担体を含む単位投薬形状で経口、局所、腸管外、経鼻投与、吸入または経直腸投与することが可能である。本明細書の開示において、使用する該用語「腸管外投与」とは、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、または腹腔内注射または輸液投与を意味する。
本発明の化合物は、1日当たり、0.01〜10mg/kg体重なる範囲の用量、好ましくは1日当たり1回またはそれ以上の回数に渡り、0.05〜5mg/kg体重なる範囲の用量にて、患者に投与することができる。
【0031】
同時に、各特定の患者に対する特定の用量は、使用する所定の化合物の活性、該患者の年齢、体重、性別、一般的な健康状態および滋養養生、医薬投与の時点および経路、身体からの該医薬の排除速度、使用する医薬の特定の組合せ、並びに与えられた個々の個体の、治療すべき疾患の重篤度等を含む、多くのファクタに依存するであろう。
本発明の薬理組成物は、所定の結果を達成するのに有効な量の、一般式Iの化合物を含有し、あるいは活性成分としての本発明の化合物を、筋肉内、静脈内、経口、舌下、吸入、経鼻、および鞘内(クモ膜下)投与に適した担体または賦形剤との混合物の形状で含有する、単位投与剤形(例えば、固体、半固体または液体形状)で投与することができる。活性成分は、液剤、錠剤、ペレット、カプセル、糖衣錠剤、坐剤、乳剤、懸濁剤、軟膏剤、ゲルおよび任意の他の投与剤形の製造に適した、従来から使用されている、無害な製薬上許容される担体と共に組成物に含めることができる。
【0032】
賦形剤としては、様々な物質、例えばグルコース、ラクトース、スクロース、マニトールまたはソルビトール、セルロース誘導体および/またはリン酸カルシウム、例えば燐酸トリ-カルシウムまたは酸性リン酸カルシウムを使用することができ、またバインダ成分としては、デンプンペースト、例えばコーン、小麦、米、馬鈴薯デンプンのペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドン等の材料を使用することができる。必要ならば、崩壊剤、例えば上記デンプン、およびカルボキシメチルデンプン、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを使用することができる。
随意の添加剤、例えば流動性および潤滑性を調節する薬剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸およびその塩、例えばステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム、および/またはプロピレングリコールを使用することができる。
【0033】
コアは、通常胃液の作用に対して抵抗性の層で被覆される。このために、糖類の濃厚溶液を使用することができ、該溶液は、場合によってアラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、および適当な有機溶媒またはそれらの混合物を含むことができる。
添加剤としては、安定剤、増量剤、着色剤および香料を使用することも可能である。
軟膏剤の基剤としては、炭水化物軟膏剤用基剤、例えば白色および黄色ワセリン[バセリナムアルバム(Vaselinum album)、バセリナムフラブム(Vaselinum flavum)]、ワセリン油[オレウムバセリニ(Oleum Vaselini)]、白色および液状軟膏(アンゲンタムアルバム(Unguentum album)、アンゲンタムフラブム(Unguentum flavum)]を使用することができ、またより密な稠度を付与するための添加剤としては、硬質パラフィンおよびワックス、吸収性軟膏剤用基剤、例えば親水性ワセリン(バセリウムヒドロフィリカム(Vaselium hydrophylicum))、ラノリン(ラノリナム(Lanolinum))、コールドクリーム(アンゲンタムレニエンス(Unguentum leniens));水洗可能な軟膏剤用基剤、例えば親水性軟膏(アンゲンタムヒドロフィラム(Unguentum hydrophylum))、水溶性軟膏剤用基剤、例えばポリエチレングリコール軟膏(アンゲンタムグリコリスポリエチレニ(Unguentum Glycolis Polyaethyleni))、ベントナイト基剤およびその他のものを使用することができる。
【0034】
ゲル用の基剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、オキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキシドおよびカルボポールを使用することができる。
坐剤用の基剤としては、水不溶性の基剤、例えばココアバター;水溶性または水混和性の基剤、例えばゼラチン-グリセロールまたはポリエチレンオキシドおよび併合(ソープ-グリセロール)を使用することができる。
単位投与剤形の製造において、担体との組合せで使用される、活性成分の量は、治療下に置かれるレシピエント、薬剤の特定の投与経路に依存して変えることができる。
従って、注射液として、本発明の化合物を使用する際には、そこにおける活性成分の含有率は、0.01〜5%なる範囲にある。希釈剤としては、0.9%の塩化ナトリウム溶液、蒸留水、注射用のノボカイン(プロカイン)溶液、リンゲル液、グルコース溶液および溶解用の特定の添加剤を使用することができる。本発明の化合物を、錠剤および坐剤として身体に投与する際には、その量は、単位投与剤形当たり、5.0〜500.0mgなる範囲内にある。
【0035】
本発明の投与剤形は、標準的な技術、例えば混合、造粒、糖衣剤製造、溶解および凍結乾燥技術等に従って製造する。
本発明の化合物は、比較の目的で使用された公知の薬物の用量の、2-3倍も低い用量にて、実際上同一の薬効で、生物学的な活性を示し、またこれらに関して、有害な副作用は全く検出されず、その使用に関する禁忌は見出されなかった。同時に、本発明による化合物の毒性検査において、経口で3,000mg/kgにおいて、実験動物の死亡は全く記録されなかった。
【実施例】
【0036】
本発明による化合物、その製造に関する詳細な説明、およびその薬理的な活性に関する研究は、以下の実施例において提示される。但し、以下の実施例は、本発明の好ましい態様を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものと考えるべきではない。
一般式IのN-アシル誘導体の合成例:
製造した化合物の固有性は、系:メタノール(1)、クロロホルム/メタノール/アンモニア(4:3:1) (2)において、「メルク(Merck)」社(ドイツ)製の、プレート:「キーゼルゲル(Kieselgel) 60 F254」上でのTLC法を利用してチェックした。
クロマトグラムは、クロロトルイジン試薬、ニンヒドリン、ヨウ素により展開させ、UV光によるルミネッセンスを利用した。
光学的旋光度は、旋光度計「パーキンエルマー(Perkin Elmer) 341」(スウェーデン)を用いて測定した。
1H-NMRは、装置:「AMX-400ブルーカー(Bruker)」(ドイツ)を用いて記録した。
融点は、装置:「ベーティウス(Boetius)」(ドイツ)を用いて測定した。
解析的HPLCは、装置:「システムゴールド(System Gold)」「ベックマン(Beckman), USA」を用い、溶出速度:0.25mL/分;以下のような条件下での、214nmにおける検出により実施した。使用カラム:ウルトラスフェア(Ultrasphere) ODS「ベックマン(Beckman)」;2×250mm、5μm、0.1%のTFAを用いて溶出、溶出速度:0.25mL/分(1);溶出速度:1mL/分、220nmでの検出、カラム:ルナ(Luna)-5「フェノメネックス(Phenomenex)」、C18、250×4.6mm、溶出:0.05M リン酸塩緩衝液中、25%アセトニトリル (pH 3.0) (2)。
【0037】
実施例1:Nα-グルタリル-L-ヒスチジン(IV)
方法A:
400mLの水に、103.4g(0.67mM)のヒスチジンを溶解した溶液に、83.7g(0.73M)のグルタル酸無水物を添加した。この懸濁液を、1時間攪拌し、生成する溶液を、容積150mLとなるまで沸騰させ、冷蔵庫内で16時間放置した。生成した沈殿を濾別し、150mLのエタノールで洗浄し、乾燥させた。精製は、H+型の樹脂:プロライト(Purolight)上でのイオン交換クロマトグラフィーにより行い、水で溶出させた。該ターゲット生成物を含有する画分を併合し、沈殿生成が開始するまで沸騰させ、次いで4℃にて16時間放置した。生成した沈殿を濾別し、200mLのメタノールで洗浄し、一定質量となるまで乾燥した。収量(収率):98.8g(55%);Rf 0.55 (1), 0.37 (2);Tm.p.=222-224℃;[α]D20+15.95゜ (C 0.53, 水);[M+H]+ 270.1;1H-NMRスペクトル(D2O), δ, m.d.: 1.60-1.80 (m, 2H, β-CH2-Glt), 2.10-2.25 (m, 4H, α,γ-CH2-Glt), 2.90-3.25 (m, 2H, β-CH2-His), 4.40-4.50 (m, 1H, α-CH-His), 7.15 (s, 1H, CH-4-Im), 8.50 (s, 1H, CH-2-Im);元素分析:実測値(%): C 49.18; H 5.91; N 15.42. C11H15N3O5.;計算値(%): C 49.07; H 5.62; N 15.61。
【0038】
方法B:
激しく攪拌しつつ、5mLの水に分散させた0.3g(1.93mM)のヒスチジンの懸濁液に、2.5mLの酢酸エチルに0.44g(3.86mM)のグルタル酸無水物を溶解して得た溶液を添加する。この懸濁液を2時間攪拌し、pHをピリジンで7に調整し、更に1時間攪拌した。酢酸エチルおよび水性相を分離した。該水性相を、エステルで2回洗浄し、該エステル相を捨てた。水を、減圧下で除去し、生成した沈殿を、最少量の水に溶解し、白色の沈殿の沈降が開始する前に、エタノールを添加し、+4℃にて20時間放置し、生成した沈殿を濾別し、減圧下で乾燥した。収量(収率):0.36 g (70%);Rf:0.56 (1);0.35 (2);Tm.p.=219-221℃;[α]D20=+15.71゜ (C 0.56, 水);[M+H]+ 270.1;1H-NMRスペクトル(D2O), δ, m.d.: 1.40-1.55 (m, 2H, β-CH2-Glt), 1.90-2.0 (m, 4H, α, γ-CH2-Glt), 2.7-3.0 (m, 2H, β-CH2-His), 4.20-4.30 (m, 1H, α-CH-His), 6.95 (s, 1H, 4-CH-Im), 8.30 (s, 1H, 2-CH-Im);HPLC(条件: (1)):個々のピーク、滞留時間:14.55分;元素分析:実測値(%): C 49.07; H 5.65; N 15.65;C11H15N3O5;計算値(%): C 49.07; H 5.62; N 15.61。
【0039】
実施例2:Nα-サクシニル-L-ヒスチジン(V)
化合物IVについて提示された方法Aに従って、合成を行った。
収量(収率):0.08 g (57%);Rf:0.44 (1), 0.25 (2);Tm.p.=179-181℃;[α]D20=+30.71゜ (C 0.56, 水);[M]+ 255.2;1H-NMRスペクトル(D2O), δ, m.d.: 2.15-2.30 (m, 4H, (CH2)2-Suc), 2.75-2.95 (m, 2H, β-CH2-His), 4.25 (br.s, 1H, α-CH-His), 6.95 (s, 1H, 4-CH-Jm), 8.25 (s, 1H, 2-CH-Jm);元素分析:実測値(%): C 47.09; H 5.04; N 16.40;C10H13N3O5;計算値(%): C 47.06; H 5.13; N 16.46。
化合物IVについて実施された方法Bに従って、合成を行った。
収量(収率):0.101 g (67%);Rf:0.45 (1), 0.27 (2);Tm.p.=178-180℃;[α]D20=+30.8゜ (C 0.57, 水);HPLC(条件:(1)):個々のピーク、滞留時間:7.54分;元素分析:実測値(%): C 47.15; H 5.2; N 16.50;C10H13N3O5;計算値(%): C 47.06; H 5.13; N 16.46。
【0040】
実施例3:Nα-グルタリルトリプトファン(III)
水7mLに分散させた1.0g(4.9mM)のトリプトファンを含む懸濁液に、1NのNaOH溶液(4.9mM)を滴添した。かくして調製された溶液に、酢酸エチル3mLに0.56g(4.9mM)のグルタル酸無水物を溶解した溶液を添加した。この反応混合物を、アルゴン雰囲気下で、暗所において、3時間攪拌し、+4℃にて20時間放置した。この反応混合物から、減圧下で該溶媒を除去した。得られた油状残渣を、30mLの水に攪拌しつつ溶解し、0℃まで冷却し、1NのHCl溶液を添加し、pHを4に調節した。得られる生成物を酢酸エチルで抽出した(3×25mL)。併合した酢酸エチル抽出液を、0℃まで冷却し、pHが7となるまで水で洗浄し(4×25mL)、5%HCl溶液(5mL)で洗浄し、再度水で洗浄して(4×25mL)、pHを7.0に調節し、次いで無水Na2SO4上で、1時間乾燥した。Na2SO4の残渣を濾別し、酢酸エチルで洗浄し、該溶媒を減圧下で除去した。灰色がかった固体沈殿が得られたが、これを減圧下で乾燥した。
収量(収率):1.0 g (70%);Rf:0.54 (1);Tm.p.=150-152℃;[α]D20=+8.20゜ (C 0.5, メタノール);1H-NMRスペクトル(CD3OD), δ, m.d.: 1.75-1.84 (m, 2H, β-CH2-Glt), 2.15-2.30 (m, 4H, α,γ-CH2-Glt), 3.30-3.40 (m, 2H, β-CH2-Trp), 3.80-3.90 (m, 1H, α-CH-Trp), 6.97 (t, J=7 Hz, 1H, CH-6-Ind), 7.06 (t, J=7 Hz, 1H, CH-7-Ind), 7.15 (d, J=7 Hz, 1H, CH-2-Ind), 7.33 (d, J=7 Hz, 1H, CH-5-Ind), 7.55 (d, J=7 Hz, 1H, CH-8-Ind);HPLC(条件: (2)):個々のピーク、滞留時間:6.77分;元素分析:実測値(%): C 60.07; H 5.65; N 8.75、C16H18N2O5;計算値(%): C 60.37; H 5.7; N 8.8。
【0041】
実施例4:Nα-サクシニル-L-トリプロファン(II)
上記化合物IIIに関連して提示された方法に従って、合成を行った。
収量(収率):100.5 mg (67%);Rf:0.63 (1);[α]D20=+21.05゜ (C 0.6, 水);1H-NMRスペクトル(DMSO-d6), δ, m.d.: 2.33-2.41 (d, 4H, α,β-CH2-Suc), 2.93-3.01 (d, 1H, β-CH2-Trp), 3.10-3.16 (m, 1H, β-CH2-Trp), 4.39-4.47 (m, 1H, α-CH-Trp), 6.93-7.06 (m, 2H, CH-6,7-Ind), 7.11 (d, J=2.2 Hz, 1H, CH-2-Ind), 7.30-7.32 (m, 1H, CH-5-Ind), 7.44-7.47 (m, 1H, CH-8-Ind). [M]+ 304.3;HPLC(条件: (2)):個々のピーク、滞留時間:6.35分;元素分析:実測値(%): C 59.07; H 5.65; N 9.35;C15H16N2O5 計算値(%): C 59.21; H 5.3; N 9.21。
実施例5:Nα-グルタリル-L-ヒスチジン1-ナトリウム塩(IV)
水15mLに、Nα-グルタリル-L-ヒスチジン1.0g(3.7mM)を溶解した溶液に、水20mLに、0.15g(3.7mM)のNaOHを溶解した溶液を、攪拌しつつ、かつ+5℃まで冷却しつつ添加した。この溶液を30分間攪拌し、該溶媒を減圧下で除去した。得られる油状残渣に、ベンゼンを少量づつ添加し、該溶媒を減圧下で除去した。得られる固体残渣を、顆粒状のアルカリ上で乾燥した。
収量(収率):1.07 g (99.7%);Tm.p.=208-210℃;[α]D20=+16.27゜ (C 0.58, 水);元素分析:実測値(%): C 45.25; H 5.51; N 14.52;C11H15N3O5Na;計算値(%): C 45.21; H 5.17; N 14.38。
【0042】
実施例6:Nα-サクシニル-L-ヒスチジン1-ナトリウム塩(V)
Nα-グルタリル-L-ヒスチジン1-ナトリウム塩(IV)(実施例5)について提示した方法に従って、合成を行った。
収量(収率):1.06 g (97.0%);[α]D20=+40.21゜ (C 0.48, 水);元素分析:実測値(%): C 43.25; H 4.51; N 15.52;C10H13N3O5Na;計算値(%): C 43.17; H 4.71; N 15.10。
実施例7:Nα-サクシニル-L-トリプロファン1-ナトリウム塩(II)
Nα-グルタリル-L-ヒスチジン1-ナトリウム塩(IV)(実施例5)について提示した方法に従って、合成を行った。
収量(収率):0.21 g (98.0%);Tm.p.=147-150℃;[α]D20=+22.02゜ (C 0.39, 水);元素分析:実測値(%): C 55.25; H 4.51; N 8.32;C15H16N2O5Na;計算値(%): C 55.05; H 4.93; N 8.56;HPLC(条件:(2)):個々のピーク、滞留時間:6.56分。
【0043】
実施例8:Nα-グルタリル-L-トリプロファン1-ナトリウム塩(III)
Nα-グルタリル-L-ヒスチジン1ナトリウム塩(IV)(実施例5)について提示した方法に従って、合成を行った。
収量(収率):0.11 g (99.0%);Tm.p.=128-130℃;[α]D20=+22.06゜ (C 0.34, メタノール);元素分析:実測値(%): C 56.15; H 5.21; N 8.22;C16H18N2O5Na;計算値(%): C 56.30; H 5.32; N 8.21;HPLC(条件:(2)):個々のピーク、滞留時間:6.96分。
実施例9:Nα-グルタリル-L-ヒスチジン1-ナトリウム塩(IV)
水15mLに、1.0g(3.7mM)のNα-グルタリル-L-ヒスチジンを溶解して得た溶液に、水15mLに0.3g(7.44mM)のNaOHを溶解して得た溶液を、攪拌しつつ、かつ+5℃まで冷却しつつ添加した。この溶液を30分間攪拌し、該溶媒を減圧下で除去した。得られる油状残渣に、ベンゼンを少量づつ添加し、該溶媒を減圧下で除去した。得られる固体残渣を、顆粒状のアルカリ上で乾燥した。
収量(収率):1.15 g (99.0%);[α]D20=+11.92゜ (C 0.57, 水);元素分析:実測値(%): C 41.25; H 4.51; N 13.52;C11H15N3O5Na2;計算値(%): C 41.91; H 4.80; N 13.3。
【0044】
実施例10:Nα-サクシニル-L-ヒスチジン2-ナトリウム塩(V)
Nα-グルタリル-L-ヒスチジン2-ナトリウム塩(IV)(実施例9)に関して提示した方法に従って合成を行った。
収量(収率):1.16 g (99.0%);Tm.p.=124-128℃;[α]D20=+20.06゜ (C 0.67, 水);元素分析:実測値(%): C 39.55; H 4.31; N 13.52;C10H13N3O5Na2;計算値(%): C 39.88; H 4.35; N 13.95。
実施例11:Nα-サクシニル-L-トリプロファン2-ナトリウム塩(II)
Nα-グルタリル-L-ヒスチジン2-ナトリウム塩(IV)(実施例9)に関して提示した方法に従って合成を行った。
収量(収率):0.56 g (97.7%);元素分析:実測値(%): C 51.35; H 4.31; N 8.22;C15H16N2O5Na2;計算値(%): C 51.43; H 4.60; N 8.0。
実施例12:Nα-グルタリル-L-トリプロファン2-ナトリウム塩(III)
Nα-グルタリル-L-ヒスチジン2-ナトリウム塩(IV)(実施例9)に関して提示した方法に従って合成を行った。
収量(収率):0.56 g (98.5%);元素分析:実測値(%): C 52.55; H 4.71; N 7.52;C16H18N2O5Na2;計算値(%): C 52.75; H 4.98; N 7.69。
【0045】
実施例13:Nα-サクシニル-L-ヒスチジンメチルエステル
5mLのN,N-ジメチルホルムアミドに、1.0g(4.13mM)のヒスチジンメチルエーテルを溶解して得た溶液に、水5mLおよび2.5mLの酢酸エチルに0.41g(4.13mM)の琥珀酸無水物を溶解して得た溶液を、激しく攪拌しつつ添加した。この混合物を、室温にて2時間攪拌した。酢酸エチルおよび水の相を、分離した。該水相を2度、エステルで洗浄し、得られるエステル相を捨てた。水を減圧下で除去し、得られる残渣を、10mLのヘキサン中で圧潰した。得られる残渣を、濾別し、減圧乾燥した。
収量(収率):0.70 g (67%);Rf 0.38 (1);Tm.p.=171-173℃;1H-NMRスペクトル(DMSO-d6), δ, m.d.: 2.26-2.37 (m, 4H, α,β-CH2-Suc), 2.70 (s, 3H, -O-CH3), 2.76-2.87 (m, 2H, β-CH2-His), 4.33-4.45 (m, 1H, α-CH2-His), 6.78 (s, 1H, 4-CH-Im), 7.93 (s, 1H, 2-CH-Im), 8.25 (d, J=7Hz, NH-アミド);[α]D20=+11.92゜ (C 0.57, 水)。
同様な、典型的な方法に従って、以下の表2に示す、一般式Iの新規な化合物をも製造した:
【0046】
【表2】

【0047】
生物学的な活性に関するテスト
実施例14:一般式Iの化合物の、即時型アレルギー反応に及ぼす作用(免疫化されたモルモットの、オボアルブミン(OA)-誘発性血液好塩基球の脱顆粒反応に関するインビトロテスト)
モルモットの血液由来の白血球を、フリーメル(Freemel)の方法に従って、単離した[Immunologicheskiye Metody, G. Frimel編, モスクワ, “Meditsina” 社刊, 1987, p.222、本発明者らにより変更]。
雄および雌両者の、600〜800gなる範囲内の体重を持つモルモットを、このテストを行うために使用した。これらの動物を、一旦、動物1匹当たり、10μgのオボアルブミンおよび100mgの水酸化アルミニウムを含む混合物で、アンダーソン(Andersson)[Anderson P. 能動的に感作したモルモットにおける抗原-誘発気管支アナフィラキシー(Antigen-induced bronchial anaphylaxis in actively sensitized guinea-pigs), Allergy, 1980, 35: 6371]に従って、一度免疫化処理した。
【0048】
エステルによる麻酔状態の下で、15mLの血液を、モルモットの心臓から抜取った。EDTAおよびクエン酸塩-含有沈殿液を用いた、細胞の二重沈殿処理を利用して、該白血球の懸濁液中の、好塩基球を単離した。
この血液を、5% EDTA・Na22H2O(シグマ(Sigma)社)溶液と、9:1なる比率にて混合し、これを、30分以内に、温和な遠心分離処理に掛けた(80gにて12分間)。上澄を集めて、500gにて15分間遠心分離処理に掛けた。
残留する細胞に、クエン酸塩-含有沈殿液(3)を、3:10なる割合にて、添加した(37℃にて30分間温度調節した)。白血球に富む、上澄画分を、100gにて7分間の遠心分離処理に掛けた。白血球の沈殿に、0.85%のNaCl溶液を添加し、細胞濃度を、30×103/μlとした。
インビトロでの好塩基球の脱顆粒反応に関するテストのプロトコール[Spravochnil po klinicheskim laboratornym metodam issledovaniya (臨床的研究室実験方法に関する参考書)/E.A. Cost編, モスクワ, “Meditsina”社刊, 1975, p. 130]:
【0049】
このテストのために、遠沈管(各サンプルにつき3つの管)を、300μLの細胞懸濁液で満たし、次いでテスト化合物の塩溶液(または自発的および最大脱顆粒反応のコントロールには、塩溶液)を添加し、37℃にて15分間予備インキュベートし、更に各管に、300μLの1%OA溶液を添加し(自発的な脱顆粒反応用コントロールには、同一の量の塩溶液を添加した)、また再度37℃にて10分間予備インキュベートした。機能性の白血球の濃度は、104/μLであった。該サンプル(100μL)を、各管から採って、別の管に入れ、完全な好塩基球の脱顆粒反応を評価し、また残りの細胞には、冷却した塩溶液(各管に対して5mL)を添加して、脱顆粒反応を停止させ、次いでこれらの管を、100gにて7分間遠心分離処理し、得られた沈殿から、顕微鏡観察用のプレパラートを調製した。これらのプレパラートは、Seder等の方法に従って固定化し、かつ染色した[Seder R.A.等, 高アフィニティーでFcεレセプタを発現し、かつインターロイキン-4を生産する、マウス脾臓および骨髄細胞集団は、著しく好塩基球に富んでいる(Mouse splenic and bone marrow cell populations that express high - affinity Fcε receptors and produce interleukin-4 are highly enriched in basophiles), Proc. Natl. Acad. USA, 1991, 88: 2835-2839]。
【0050】
特定の好塩基球顆粒反応を検出するために、染料0.5%アルシアニックブルー(alcyanic blue)(pH 1.0)を使用し、核を付随的にサフラニン(1%酢酸中の、0.1%溶液)で染色した。これらのプレパラートを、全脱顆粒反応阻害を評価するために使用した。
全脱顆粒反応阻害率(DI)(%)は、以下の式に従って計算した:
DI = [(最大値-実測値)/(最大値-自発阻害値)]×100(%)
ここで、最大値(max)は、最大脱顆粒化(OA)における脱顆粒化好塩基球の割合(%);自発阻害値(spontaneous)とは、自発的脱顆粒化における脱顆粒化好塩基球の割合(%)(コントロール);実測値とは、該テスト化合物に暴露された後の、脱顆粒化好塩基球の割合(%)である。
【0051】
完全な好塩基球の脱顆粒反応の評価
好塩基球の脱顆粒反応テスト後に選択されたサンプル(各々100μL)を、染料(0.5%アルシアニックブルー、pH 1.0)を含む管に、1:1なる比にて注ぎ込んだ。室温にて50分以上、染色を行った。染色された好塩基球を、フックス-ローゼンタール(Fooks-Rosenthal)チャンバーを用いて計数した。完全な好塩基球の脱顆粒反応の阻害(ICD)は、以下の式に従って計算した:
ICD(%)=1-[(Mm(c) - Mm(実測)) / [Mm(c) - Mm(OA)] × 100
ここで、Mm(c)は、該自発的な好塩基球脱顆粒化テストにおける平均(3サンプル)の好塩基球数であり;M±m(OA)は、最大抗原-誘発好塩基球脱顆粒化テストにおける平均(3サンプル)の好塩基球数を意味し;M±m(実測)とは、該テスト化合物と共にインキュベートした後の、該好塩基球脱顆粒化テストにおける平均(3サンプル)の好塩基球数を意味する。
【0052】
【表3】

【0053】
上記表3のデータは、グルタリルヒスタミンと比較して、本発明の化合物(IV)が、免疫化されたモルモットから採取された血中好塩基球の、完全なOA-誘発脱顆粒反応に関するテスト(カルシウムを含まない媒体中での、インビトロアナフィラキシー反応)において、実際上100%なる脱顆粒阻害によって示される、顕著な抗-アナフィラキシー作用を及ぼすことを明らかにしている。この化合物(IV)の顕著な抗-アナフィラキシー作用は、また特に濃度10-5 M(脱顆粒化された細胞の不在下)において顕著な、脱顆粒化細胞数における減少によっても証明される。
実施例15:インビボにおける全身的なアナフィラキシーに及ぼす、一般式Iの化合物の作用に関する検討
抗原としてのオボアルブミンのエーロゾルに暴露することによって、能動的に感作された意識のあるモルモットにおける気管支痙攣モデルを利用した[Kovaleva V.L. “Metodicheskiye ukazaniya po izucheniyu bronkholiticheskikh I protivovospalitel'nykh sredstv.// Rukovodstvo po experimental'nomy (doklinicheskomu) izucheniyu novykh pharmacologicheskikh veshchestv, Moscow. 2000. pp.242250]。
【0054】
モルモットを、Andersonの方法[Anderson P.: 能動的に感作されたモルモットにおける、抗原-誘発気管支アナフィラキシー(Antigen-induced bronchial anaphylaxis in actively sensitized guinea-pigs), Allergy, 1980, 35: 63-71]に従って、オボアルブミンにより感作し、該感作後1-2ヶ月以内に、アルブミンのブースター投与量(1mLの生理食塩水中、3mg/kg)の、エーロゾル投与によって、気管支痙攣を誘発させた。
テスト動物群において、モルモットにはプローブを用いて、10μg/kg、50μg/kgおよび150μg/kgなる用量にて、テスト化合物を3日間に渡り投与した。他の実験動物群においては、50μg/kg(1mLの生理食塩水中)なる用量にて、テスト化合物を、同様に3日間に渡り、1日1回当て、経鼻投与(ネブライザーを使用)した。コントロール群には、生理食塩水を投与した。これら物質の最終的な投与の1時間後に、オボアルブミンを、ネブライザーを用いた吸入により投与し、これら動物における気管支痙攣反応の強度および期間(秒)を評価した。
【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
上記表4および5に示された実験結果は、化合物IVの、10および150μg/kgなる用量での胃内投与および50μg/kgなる用量での吸入による投与が、抗-アナフィラキシー活性を呈することを、明らかにしている。この物質を、50μg/kgなる用量で吸入により投与すると、窒息を誘発することによって動物の死をもたらす、気管支収縮反応の、急性期の発現が遮断された。化合物IVの、10および150μg/kgなる用量での胃内投与では、抗原-誘発気管支痙攣に関して、顕著な防御作用が検出された。
従って、化合物IVは、インビボにおける全身的なアナフィラキシー反応に関して、顕著な防御作用を示す。
実施例16:モルモットにおける、アレルギー性鼻炎のモデルに及ぼす、一般式Iの化合物の抗-アレルギー作用
モルモットにおける、アレルギー性鼻炎のモデルを使用した。
1.5-2ヶ月間に渡り、所定のスキーム(Hutson P.A., Church M.K.等, 1988)に従って、モルモットを免疫化した:これらの動物を、7-日間隔で(2度)、10mg/kgなる用量にて、オボアルブミンを腹腔内投与することにより先ず免疫化し、次いで0.1%から開始し、1%に達するまでの漸増する濃度にて、吸入間の間隔4-日にて、パリ(Pari)ネブライザーを用いて、モルモットに、オボアルブミン溶液を吸入させた。最後のオボアルブミン用量は、マイクロピペットを用いて、鼻腔内に投与した。該最終的なオボアルブミン投与の24時間後に、洗液を集め(特殊な管系を用いて)、鼻粘膜における変化を、組織学的および細胞学的な方法の組合せを利用して評価した。該テスト化合物(0.1%溶液)は、ネブライザー装置を用いて、6日間に渡り、吸入によって毎日投与し、投与6日目には、抗原(OA)による攻撃を行った。鼻の洗液を、該攻撃の24時間後において得た。
【0058】
【表6】

【0059】
【表7】

【0060】
【表8】

【0061】
上記表5-7から、モデル化したアレルギー性鼻炎の状態の下で、化合物IVは、好酸球による炎症の発生を著しく抑制することが分かる。この事実は、好酸球数の平均の絶対的および相対的な数への低下によって、並びに鼻洗液における細胞数の大幅な低下によって支持されている。
実施例17:モルモットにおけるアレルギー性肺炎モデルにおける、一般式Iの化合物の抗-アレルギー活性
モルモットにおけるアレルギー性肺炎モデルを使用した。
該動物の免疫化は、実施例7に記載のものと類似していた。
該最終的なオボアルブミン投与から24時間後に、気管支肺胞洗液を集め(気管内に挿入されたカニューレを介して)、気管支粘膜における変化を、組織学的および細胞学的方法の組合せを利用して、評価した。
テストした化合物(0.1%溶液)は、ネブライザー装置を用いて、6日間に渡り、吸入によって毎日投与し、投与6日目には、抗原(OA)による攻撃を行った。
【0062】
【表9】

【0063】
【表10】

【0064】
上記表9および10のデータから、アレルギー性肺炎モデルの状態の下で、細胞数における減少、重大な炎症性細胞である好酸球濃度における低下、急峻な好中球レベルにおける低下並びにリンパ球数における減少によって明らかにされるように、化合物IVが、炎症過程を著しく阻害することが分かる。
実施例18:セファデックスによりラット内に誘発した肺炎モデルに及ぼす、一般式Iの化合物の抗炎症作用に関する研究
ラット内でセファデックス-誘発(6-日間)した肺炎モデル:
これらのテストにおいては、270-300gなる範囲の体重を持つオスのウイスター(Wistar)ラットを使用した。
肺における炎症は、吸入器「サイクロヘイラー(Cyclohaler)」(RFの、サイエンティフィック-リサーチインスティチュートフォーパルモノロジー(Scientific-Research Institute for Pulmonology))に類似する実験用装置である、投与デバイスを用いて、用量5mg/kgにて、セファデックスA-25(20~80μmなる範囲の粒径を持つ、親水性粉末)を、1回吸入させることにより誘発した。
【0065】
セファデックスおよび薬理的物質の、吸入による投与方法
用量5mg/kg体重にて、セファデックスA-25を、乾燥粉末を吸入投与するための独自の投与デバイスを用いて、エステル麻酔状態にあるラットに投与した。セファデックスA-25の投与に続き、ウイスターラットを、即座に麻酔から覚醒させたが、その挙動および呼吸特性における特異性は、観測されなかった。乾燥粉末形状にある該物質を、セファデックス投与の1時間後に、用量500μg/kgで、1時間に渡り、吸入により投与し、次いで5日間に渡り、午前中の同一の時間において、毎日1回継続的に投与した。コントロールは2つの群からなっていた。即ち、そのままの完全な動物の群および吸入によりセファデックスを1回投与したラット群であった。
発現した肺炎に対する薬理物質の治療作用の結果は、エーロゾルによるセファデックス投与の6日後に、形態学的および形態計測学的パラメータ(体積密度および肺胞炎)を利用して評価した。
【0066】
本研究において使用した方法:
組織学的方法:ヘマトキシリンおよびエオシンによって染色した肺の、組織学的な検査
形態計測学的方法
4-5μmなる厚みを持つ組織学的な肺のスライスを調製した。ここで、好中球数を算出し、並びに肺胞炎および肺気腫の体積密度を、Avtandilovのメッシュ[Avtandilov G.G., Vvedeniye v kolichestvennuyu pathologicheskuyu morphologiyu.//モスクワ, “Meditsina”社刊, 1980, p. 203]を用いて、評価した。肺リンパ系組織の形態計測学的検査も実施した。そのために、該肺の微細なプレパラートを、Beinenstock等の方法[Bienenstock J., Johnson N., Perey D.Y.E., 気管支リンパ系組織(Bronchial lymphoid tissue) 1: 形態学的特長(Morphologic characteristics)//Lab. Invest., 1973, 28: 693-698]に従って固定した。気管を持つ該肺を、胸腔から取出し、その微細プレパラートを、2%の酢酸水溶液に入れた。18-24時間後に、該気管、主および小葉気管支を、切除し、該気管と関連するリンパ系組織の体積密度の、形態計測学的な評価を、拡大鏡観察(倍率x7)下に、点計算法(point calculation method)を利用して行った。肺胞炎および肺気腫の体積密度を、該点計算法を利用して決定した。
【0067】
細胞学的方法
気管支肺胞洗液を、ヘキセン(hexenal)麻酔状態の下にあるラットおよびモルモット内で、その気管を介して、10mLの生理食塩水により2度洗浄することにより得た。細胞の生存率は、トリプタンブルーを用いたテストにおいて決定した。1mL中の細胞の絶対数(細胞数増加)を、Goryaevのチャンバーを用いて、気管支肺胞洗液(BAW)内で測定した。該BAW液の塗抹において、200gにて10分間遠心分離処理し、次いでRomanovsky-Gimzaの方法に従って染色することにより得た沈殿、即ち肺内部サイトグラムを算出した(%単位にて)[Avtsyn A.P., Lukomskij G.I., Romanova L.K.等, Endopul'monal'naya cytogramma.// Sov. Med., 1982, No 7, pp.8-14]。
この研究の結果は、変動統計(variation statistics)法およびスチューデントt-テストを利用して処理した。
【0068】
【表11】

【0069】
【表12】

【0070】
肺の組織学的な検査
化合物IVは明確な抗-炎症作用を誘発した:肺胞の罹患率は、動物のモデル群と比較して、大幅に低下され、また肺気腫は、実際上検出されず、好中球による肺胞間中隔の浸潤は認められなかった。該BAWにおける細胞数レベルおよび好中球の数によれば、炎症形成過程は、また5日間に渡りセファデックスを投与した動物における値と比較して、顕著に低いものであった。
従って、使用した実験モデルの全ての組合せが、インビトロテストおよびインビボでのモデル化された、アレルギーおよび炎症性病理両者において、一般式Iの化合物が、顕著な抗-アレルギー活性、抗-アナフィラキシー活性および抗-炎症活性を持つことを示唆している。
【0071】
実施例19:ラットにおける高コレステロール血症のモデルに及ぼす、一般式Iの化合物の抗-脂血作用に関する研究
この研究は、体重200±20gの雄のウイスターラットについて行った。高脂血症は、コレステロール負荷を、即ち油状のコレステロール懸濁液を経口投与することによって誘発させた:
オリーブオイル(スペインの、アコルサ(Acorsa)製):5mL/kg(動物体重);
コレステロール(シグマ(Sigma)社、USA):1g/kg体重;
コール酸ナトリウム(シグマ(Sigma)社、USA):100mg/kg体重
基準処方物として、メルクシャープ&ドーン(Merck Sharp & Dohn)社により製造された、一群のスタチン「メバコール(Mevacor)」(ロバスタチン(Lovastatine))からの処方物を、用量40mg/kgにて使用した。コレステロール懸濁液は、10日間に渡り、毎日午前中に投与した。テストした化合物(用量500μg/kgにて)および該基準処方物(用量40mg/kgにて)を、10日間に渡り、コレステロール懸濁液と共に、該動物に投与した。全ての実験動物には、標準の固形飼料を与えた。
【0072】
これらの動物を、以下のようなグループに分けた:
「コントロール」:そのままの動物(n=6);
「コレステロール」:経口的にコレステロール負荷を及ぼしたラット(n=10);
「ロバスタチン」:経口的にコレステロール負荷およびロバスタチンの投与を受けたラット(n=10);
「化合物IV」:経口的にコレステロール負荷およびテスト化合物IVの投与を受けたラット(n=10)。
実験動物の血液を、実験開始後の5、8および10日目に採取した。
該テスト物質に関する抗-脂血作用データの統計的な処理を、該「コレステロール」群に関して行った(表13)。
【0073】
【表13】

【0074】
化合物IVの用量500μg/kgでの投与は、19.5%の血清中の全コレステロール、22.7%の肝臓コレステロール、29.8%のLDLコレステロール、および19%の肝臓トリグリセライドという大幅な低下をもたらした。僅かに9%の全コレステロールレベルの低下をもたらす、該化合物、グルタリルヒスタミンは、国際特許出願WO 99/01103号刊行物に示されているように、LDLおよびVLDL(低および超低密度リポタンパク)のみに影響を及ぼし、また見かけ上、同様な生物学的実験において、化合物IVよりも効果が低い。
他の特許請求した化合物の研究結果を以下に示す:
実験動物群は、以下に列挙するものを含む:
1) 「コレステロール」:10日間に渡り、油状コレステロール懸濁液を、経口的に投与したラット;
2) 「化合物IV」:油状コレステロール懸濁液およびテスト化合物IVを、経口的に投与したラット;
3) 「化合物IV-1Na」:油状コレステロール懸濁液およびテスト化合物IVの1-ナトリウム塩を、経口的に投与したラット;
【0075】
4) 「化合物IV-2Na」:油状コレステロール懸濁液およびテスト化合物IVの2-ナトリウム塩を、経口的に投与したラット;
5) 「化合物V-1Na」:油状コレステロール懸濁液およびテスト化合物Vの1-ナトリウム塩を、経口的に投与したラット;
6) 「化合物III-1Na」:油状コレステロール懸濁液およびテスト化合物IIIの1-ナトリウム塩を、経口的に投与したラット;
7) 「化合物II-1Na」:油状コレステロール懸濁液およびテスト化合物IIの1-ナトリウム塩を、経口的に投与したラット;
8) 「Sim」:油状コレステロール懸濁液およびシンバスタチン(Simvastatin)を、経口的に投与したラット;
9) 「コントロール」:テスト開始前の、そのままのラット。
【0076】
このテストの10日目に、血液サンプルを、これら実験動物の断頭後に、採取した。これらの動物は、断頭に先立って12時間に渡り絶食させた。
血清の全コレステロール、トリグリセライド、および高密度リポタンパクコレステロール(HDLC)を測定した。低および超低密度リポタンパクコレステロールは、全コレステロールとHDLコレステロールとの間の差から算出した。
血清の全コレステロールおよびトリグリセライドは、酵素を用いた方法によって測定した。
高密度リポタンパク(α-LP)におけるコレステロールレベルは、リンタングステン酸およびマグネシウムイオンによる、LDLおよびVLDLの沈殿法を利用して測定した。
統計的処理
表におけるデータは、平均値±標準偏差として示されている。「コレステロール」および「処方物…」間の差異の有意さは、2-サンプルスチューデントt-テストにより評価した。誤差確率(p)は、表、グラフに示されている。
該化合物の、コレステロール負荷を受けたラットにおける、血清コレステロールおよびトリグリセライドレベルに及ぼす効果に関するデータは、以下の表14~21に示されている:
【0077】
【表14】

【0078】
10日間に渡る油状コレステロール懸濁液のラットへの投与は、有意に2,3-倍に血清コレステロールレベルを高め、また1.9-倍にトリグリセライドレベルを高めた。誘発された高脂血症の発現において、HDLコレステロールは、15%低下された。LDL+VLDLコレステロールにおける5-倍の増加が観測された。LDL+VLDLトリグリセライドにおける2.3-倍の上昇が観測された。
【0079】
【表15】

【0080】
【表16】

【0081】
【表17】

【0082】
【表18】

【0083】
該油状コレステロール懸濁液をラットに投与した後の10-日目に、血清中の全コレステロールにおける1.7-倍の上昇、およびトリグリセライドレベルにおける1.6-倍の上昇という顕著な結果が得られた(表18)。HDLコレステロールは、誘発された高脂血症の発現において、初めの66.7から48mg/100mLまでに、28%低下した。22.5から99mg/100mLまでの、4.4-倍のLDL+VLDLコレステロールレベルにおける上昇が観測された。
【0084】
【表19】

【0085】
【表20】

【0086】
【表21】

【0087】
化合物IIIの1-ナトリウム塩の該実験動物への投与は、全コレステロール(CH)を29%、および該VLDL+LDL画分のコレステロールを40%と、大幅に低下したが、血清の抗-アテローム発生性のCHのレベルおよび全コレステロールレベルを変えることはなかった。
得られたこれらの結果は、1-ナトリウム塩および2-ナトリウム塩が、血清全コレステロールおよびLDL+VLDLコレステロール並びに他の脂質代謝パラメータに、動的な作用を及ぼすことによって、化合物IVを越えて優れていることを示唆している。一方で、上記実験の10日目には、上記パラメータにおける大幅な、かつ匹敵する低下が、上記化合物全ての作用下で起り、また基準の処方:「ゾコール」(シンバスタチン)、化合物IVの塩が、該実験の初期の段階で(5日目および8日目)作用し始めた。該化合物IVのこれら両ナトリウム塩は、該実験の5日目には既にHDLを上昇させ、一方で化合物IVは、該パラメータを8日目に始めて上昇させた。基準の処方シンバスタチンは、コレステロールに影響を及ぼさなかった。更に、化合物IVの2-ナトリウム塩は、該実験の5日目および8日目に、血清中の全トリグリセライドレベルを低下した。
【0088】
化合物Vの1-ナトリウム塩の際立った特徴は、このものの、血清中の全トリグリセライドレベルを低下する能力であるが、全コレステロールおよびVLDPコレステロールレベルの低下およびHDLレベルの上昇は、化合物IIIおよび化合物IVの1-ナトリウム塩における値よりも低かった。
従って、国際特許出願WO 99/01103の刊行物に記載されている化合物の活性と比較して、本発明において提案する化合物、即ち化合物II、III、IVおよびVの塩は、血清トリグリセライドの低下能力、LDLコレステロールレベルを包含する全コレステロールレベルの低下能力およびHDLコレステロールを高める能力を含む、高い抗-脂肪血症活性を持つ。
【0089】
実施例19:一般式Iの化合物の、モルモットにおける「内因性の」高コレステロール血症のモデルに及ぼす、低脂血活性の研究
本研究は、体重304±25gを持つ、雄モルモット(アグチ(Aguti)系)について行った。この実験は31日間に渡り行った。コントロール群は、6匹のモルモット(そのままの動物)を含んでいた。検討した化合物は、この実験の第一日目(脂肪負荷の投与第一日目)から投与した。
これら実験群の動物は、経口経路で31日間に渡り、検討すべき化合物および脂肪負荷の投与を受けた。以下に示す用量で、該テスト化合物を、水性溶液として投与(動物当たり0.5mL)し、脂肪負荷(ラードと予備加熱したコーン油との、容積比4:1の混合物)を、該テスト化合物の投与後0.5時間において、5mL/kg体重なる割合で投与した。
実験動物群:
1) 「コントロール」:そのままの動物群;
2) 「脂肪」投与群:脂肪負荷のみを投与した動物群;
3) 「化合物IV」投与群:(脂肪負荷+用量500μg/kg体重の化合物IV)投与動物群;
4) 「化合物V」投与群:(脂肪負荷+用量500μg/kg体重の化合物V)投与動物群。
脂肪負荷およびテスト化合物の投与を受けたモルモットにおける、血清コレステロールおよびトリグリセライドレベルに関するデータを、以下の表22〜25に与える:
【0090】
【表22】

【0091】
変数の1-階乗解析を利用して、統計処理を行った。
【0092】
【表23】

【0093】
【表24】

【0094】
【表25】

【0095】
検討した化合物IVおよびVは、夫々該実験の31日目までに、全コレステロールレベルを、33.9および37.8%にまで、有意に低下した。同時に、これらの化合物は、LDLコレステロールを、37.7および38%まで有意に低下した。
図1は、脂肪負荷および様々な用量(50〜1,500μg/kg)における化合物IVの投与により達成された、全コレステロールレベルにおける変化を示す図である。細い垂直方向のラインは、平均値からの標準偏差を表す。
特許請求された本発明の化合物、特に化合物IVの利点は、このものが広い範囲の治療効果をもたらす、広い範囲の作用用量を持つことにある。従って、例えば該化合物IVは、20日間に、30-倍も異なる、50〜1,500μg/kgなる用量範囲において、全コレステロールレベルを低下する上で、実際上同様に有効であった。
従って、一般式Iに相当する特許請求された本発明の化合物は、血清中および肝臓内の脂質代謝パラメータを、かなり改善する、有意な低脂質血活性を呈する。
【0096】
実施例20:カラギーナン-誘発ラット足の浮腫モデルに及ぼす、一般式Iの化合物の抗-炎症活性に関する研究
これらの実験は、体重250gの、白色異系交配雄ラットについて行った。1実験当たりの使用動物数は、12であった。
Winter等のモデルに従う、カラギーナン-誘発浮腫モデルを使用した(Winter等, カラギーナンおよびターペンタインにより、ラットの様々なサイトにおいて誘発させた、急性炎症性応答の、媒介体に関する研究(Studies of the mediators of the acute inflammatory response induced in rats in different sites by carrageenan and turpentine), J. Pharmacol., 1971, 104: 15-29)。0.1mLの1%カラギーナン溶液(SERVA)を、ラットの右足に、亜足底経路で注射した。これらの動物を、個々のチャンバーに入れた。カラギーナン投与の直後に、テスト物質を含有するゲル(1%)を、該ラットの足に3回適用し、該投与の1および2時間後に、また該カラギーナン投与の4時間後に、肢体容積計[ウゴバシル(Ugo Basile)]を用いて、足の体積を測定した。該ゲルの治療効果を、所定の動物のそのままの完全な左足およびコントロール(未処置)群のラットの足の反応と比較して、炎症反応阻害の程度によって評価した。百分率(%)で表された、炎症反応阻害は、以下の式に従って計算した:
【0097】
獲得体積=(体積差)/(左足の体積)×100;
阻害率=100-[(実測獲得体積)/(コントロール獲得体積)]×100
1%のゲルとしてのテストされた化合物IVおよびXIIIは、夫々44%および40%の浮腫の阻害を生じ、また基準製剤ジクロフェナク(1%ゲル)は、浮腫の62%を阻害した。
投与剤形の例
実施例21:A. 錠剤:
以下に示す成分を用いて、錠剤を製造する:
一般式Iに対応する化合物またはその製薬上許容される塩:1-150mg;馬鈴薯デンプン:20-50mg;ステアリン酸マグネシウム:3mg;エーロシル(Aerosyl):1mg;およびラクトース:300mgまで。
これらの成分を、混合し、圧縮して、各々300mgの錠剤を形成する。
【0098】
B. 坐剤:
坐剤組成の例
一般式Iに対応する化合物またはその製薬上許容される塩:1-100mg;ココアバター:坐剤を製造するのに要する量。
必要ならば、夫々に必要な賦形剤を用いて、直腸、膣、および尿道用の坐剤を製造することが可能である。
C. 軟膏剤:
軟膏剤組成の例
一般式Iに対応する化合物またはその製薬上許容される塩:1-500mg;ワセリン:10g。
D. ゲル剤:
ゲル剤組成の例
一般式Iに対応する化合物またはその製薬上許容される塩:1-500mg;カルボポール:200mg;ベンジルアルコール:20mg;エチルアルコール:300mg;水:10gまで。
E. 吸入用乾燥粉剤:
粉剤組成の例
一般式Iに対応する化合物またはその製薬上許容される塩:20-200mg;ラクトース:1gまで。
この粉剤を、特別なデバイス(容器)にまたはゼラチンカプセルに充填する。
【0099】
F. スプレー剤:
スプレー剤組成の例
一般式Iに対応する化合物またはその製薬上許容される塩:1.5-150mg;精製水:15mLまで。
G. 点眼剤:
点眼剤組成の例
一般式Iに対応する化合物またはその製薬上許容される塩:0.5-50mg;保存剤:10mg;精製水:5mLまで。
H. 注射溶液:
注射溶液組成の例
一般式Iに対応する化合物またはその製薬上許容される塩:0.2-20mg;注射液用の水:2mg。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】脂肪負荷および様々な用量(50〜1,500μg/kg)における化合物IVの投与により達成された、全コレステロールレベルにおける変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I):
HOOC-(CH2)n-CO-NH-CH(CH2R1)-COOR2 (I)
(ここで、nは2または3であり;またR1は以下の構造を持つ基:
【化1】

を表し;R2 = H, -CH3、-C2H5である)で表されるアミノ酸のN-アシル誘導体およびこれらの製薬上許容される塩、但し該一般式Iで表される化合物は、サクシニル-L-トリプトファン、サクシニル-D-トリプトファンおよびサクシニル-D,L-トリプトファン並びにこれらの二カリウム塩、Nα-サクシニル-L-トリプトファンメチルエーテル、Nα-グルタリル-L-ヒスチジンメチルエーテル、Nα-グルタリル-L-トリプトファンメチルエーテルではないことを条件とする。
【請求項2】
該製薬上許容される塩が、モノ-またはジ-ナトリウム塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
以下の一般式(I):
HOOC-(CH2)n-CO-NH-CH(CH2R1)-COOR2 (I)
(ここで、nは2または3であり;またR1は以下の構造を持つ基:
【化2】

を表し;R2 = Hである)で表されるアミノ酸のN-アシル誘導体およびこれらの製薬上許容される塩の製造方法であって、該方法が、固体形状にあるグルタル酸または琥珀酸無水物を、以下の一般式:NH2-CH(CH2R1)-COOHで表されるアミノ酸またはその塩(ここで、R1は以下の構造を持つ基:
【化3】

を表す)の水性溶液に添加する工程;および
場合によって該ターゲット生成物を、その塩に転化する工程、を含むことを特徴とする、上記方法。
【請求項4】
以下の一般式(I):
HOOC-(CH2)n-CO-NH-CH(CH2R1)-COOR2 (I)
(ここで、nは2または3であり;またR1は以下の構造を持つ基:
【化4】

を表し)で表されるアミノ酸のN-アシル誘導体またはこれらの塩の製造方法であって、該方法が、二相系において、グルタル酸または琥珀酸無水物と、以下の一般式:NH2-CH(CH2R1)-COOHで表されるアミノ酸またはその塩、もしくはNH2-CH(CH2R1)-COOR2で表されるアミノ酸(ここで、R2は-CH3、-C2H5であり、またR1は以下の構造を持つ基:
【化5】

を表す)の水性溶液または水性-有機溶液とを、水と不混和性の有機溶媒中で反応させる工程と;
場合によって該ターゲット生成物を、その塩に転化する工程、を含むことを特徴とする、上記方法。
【請求項5】
以下の一般式(I):
HOOC-(CH2)n-CO-NH-CH(CH2R1)-COOR2 (I)
(ここで、nは2または3であり;またR1は以下の構造を持つ基:
【化6】

を表し;R2 = H, -CH3、-C2H5である)で表される、アミノ酸のN-アシル誘導体またはこれらの製薬上許容される塩を、その有効量において、製薬上許容される添加剤と共に含有する、抗-アレルギー性、抗-アナフィラキシー性、抗-炎症性および抗-脂血性活性を有する薬理組成物。
【請求項6】
以下の一般式(I):
HOOC-(CH2)n-CO-NH-CH(CH2R1)-COOR2 (I)
(ここで、nは2または3であり;またR1は以下の構造を持つ基:
【化7】

を表し;R2 = H, -CH3、-C2H5である)で表される、アミノ酸のN-アシル誘導体またはこれらの製薬上許容される塩の、抗-アレルギー性、抗-アナフィラキシー性、抗-炎症性および抗-脂血性活性を有する、医薬製造のための使用。
【請求項7】
請求項6に記載したアミノ酸のN-アシル誘導体の、抗原-依存性ヒスタミン分泌、好塩基球の脱顆粒性を低下させ、並びに好酸性球、好中球およびリンパ球のレベルを調節するための、医薬を製造するための使用。
【請求項8】
請求項6に記載したアミノ酸のN-アシル誘導体の、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、季節性および通年性鼻炎、アレルギー性肺炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、蕁麻疹、虫刺されおよび医薬に対するアレルギー(アナフィラキシーをも含む)反応、寒冷アレルギー、アレルギー性結膜炎の症候群を改善するための、医薬製造のための使用。
【請求項9】
以下の一般式(I):
HOOC-(CH2)n-CO-NH-CH(CH2R1)-COOR2 (I)
(ここで、nは2または3であり;またR1は以下の構造を持つ基:
【化8】

を表し;R2 = H, -CH3、-C2H5である)で表されるアミノ酸のN-アシル誘導体またはこれらの製薬上許容される塩であって、但し該一般式Iで表される化合物において、サクシニル-D,L-トリプトファンの二カリウム塩を除外する、該化合物またはその塩の、アテローム性動脈硬化症、肥満症、虚血性心臓および脳疾患、心筋梗塞、および発作の症候群を改善するための、医薬製造のための使用。
【請求項10】
以下の一般式(I):
HOOC-(CH2)n-CO-NH-CH(CH2R1)-COOR2 (I)
(ここで、nは2または3であり;またR1は以下の構造を持つ基:
【化9】

を表し;R2 = H, -CH3、-C2H5である)で表されるアミノ酸のN-アシル誘導体またはこれらの製薬上許容される塩を含有する、抗-アレルギー性、抗-アナフィラキシー性、抗-炎症性および抗-脂血性活性を有する医薬。
【請求項11】
炎症、高脂血症、高コレステロール血症を伴う諸疾患を包含する、アレルギー性、アナフィラキシー性諸疾患の治療方法であって、以下の一般式(I):
HOOC-(CH2)n-CO-NH-CH(CH2R1)-COOR2 (I)
(ここで、nは2または3であり;またR1は以下の構造を持つ基:
【化10】

を表し;R2 = H, -CH3、-C2H5である)で表されるアミノ酸のN-アシル誘導体またはこれらの製薬上許容される塩の有効量を、哺乳動物に投与することを特徴とする、上記治療方法。
【請求項12】
気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、季節性および通年性鼻炎、アレルギー性肺炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、蕁麻疹、虫刺されおよび医薬に対するアレルギー(アナフィラキシーをも含む)反応、寒冷アレルギー、アレルギー性結膜炎を治療するための、請求項11記載の方法。
【請求項13】
アテローム性動脈硬化症、肥満症、虚血性心臓および脳疾患、心筋梗塞、および発作を治療する方法であって、以下の一般式(I):
HOOC-(CH2)n-CO-NH-CH(CH2R1)-COOR2 (I)
(ここで、nは2または3であり;またR1は以下の構造を持つ基:
【化11】

を表し;R2 = H, -CH3、-C2H5である)で表されるアミノ酸のN-アシル誘導体またはこれらの製薬上許容される塩であって、但し該一般式Iで表される化合物において、サクシニル-D,L-トリプトファンの二カリウム塩を除外する、該化合物またはその塩の有効量を、哺乳動物に投与することを特徴とする、上記治療方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−543830(P2008−543830A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516776(P2008−516776)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際出願番号】PCT/RU2006/000311
【国際公開番号】WO2006/135280
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(507412999)
【出願人】(507412184)
【Fターム(参考)】