説明

アミロイドベータタンパク質産生を阻害するための方法、組成物及び化合物アッセイ

細胞においてアミロイドベータ前駆体タンパク質プロセシングを阻害する化合物を同定する方法であって、テスト化合物をGPCRポリペプチド又はそれらのフラグメントに接触させること、及びアミロイドベータペプチドの産生に関連する化合物−GPCR特性を測定することを含む。本方法の細胞アッセイは、二次メッセンジャー及び/又はアミロイドベータペプチドレベルを含む指標を測定する。アミロイドベータ前駆体プロセシングを阻害するのに有効な量のGPCR発現阻害剤を含む治療法及び医薬組成物は、アルツハイマー病などの認識機能障害を伴う病気の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、哺乳動物の神経細胞疾患の分野、及び特に効果的な化合物を同定するための方法、及びヒトにおける知的能力の進行性喪失に関連する疾患の予防及び治療に有用な、そのような化合物を用いた治療並びに組成物に関連する。
知的能力の進行的喪失として最も広く知られている神経疾患はアルツハイマー病(AD)である。世界的に、約2000万人の人々がアルツハイマー病で苦しんでいる。ADは、記憶の初期喪失に続いて見当識障害、一般的に認識機能障害としてみなされる判断並びに論理的思考の障害、及び最終的には完全な認知症によって臨床的に特徴付けられる。AD患者は最終的に該疾患の発症後4〜12年の間、ひどく衰弱して不動状態に陥る。
【背景技術】
【0002】
ADに対する重要な病理学的証拠は、神経変性に付随する細胞外アミロイド斑及び脳内の細胞内タウタングル(tau tangle)の存在である(Ritchie及びLovestone (2002))。細胞外のアミロイド斑は、アミロイドベータ前駆体タンパク質(APP)の代謝によって産生された不溶性アミロイドベータペプチド1〜42の増加の結果であると考えられている。分泌の後、これらのアミロイドベータ1〜42ペプチドは、健康な人々で優勢に産生されるアミロイドベータ1〜40ペプチドよりも、より容易にアミロイド線維を形成する。アミロイドベータペプチドは神経毒カスケードの頂点にあるようである:実験は、アミロイドベータ線維がP301Lタウトランスジェニックマウスの脳内に注入された場合に、神経原線維変化の形成を促進することを示す(Gotzらの文献 (2001))。実際に、様々なアミロイドベータペプチドが、アミロイドベータペプチド1〜42、1〜40、1〜39、1〜38、1〜37として同定されてきており、これらは斑内に存在することもあり、かつしばしば脳脊髄液中に見られる。
【0003】
アミロイドベータペプチドは、1及び40又は42の位置で、それぞれベータセクレターゼ並びにガンマセクレターゼによって切断された後、膜アンカー型APPから生じる(プロセシングされる)(図1A)(Annaert及びDe Strooperの文献(2002))。さらに、ベータセクレターゼの高い活性は、位置1から位置11への切断の移動によって生じる。位置17におけるアルファセクレターゼ活性、及び40又は42におけるガンマセクレターゼ活性によるアミロイドベータ前駆体タンパク質の切断は、非病理的なp3ペプチドを生じる。ベータセクレターゼは、膜アンカー型アスパルチルプロテアーゼBACEとして同定され、一方ガンマセクレターゼは、プレセニリン1(PS1)又はプレセニリン2(PS2)、ニカストリン、前部咽頭欠損1(Anterior Pharynx Defective 1)(APH1)、及びプレセニリンエンハンサー2(PEN2)を含むタンパク質複合体である。これらのタンパク質の中で、プレセニリンは、ガンマセクレターゼの触媒活性を構成すると広く考えられている一方で、他の構成要素はタンパク質複合体の成熟化及び局在に役割を担う。いくつかの結果は、プロテアーゼADAM10及びTACEが冗長的な機能を有し得ることを指摘しているが、アルファセクレターゼの独自性はそれでも傑出している。
【0004】
AD病状(ほとんどは早発型AD)のごく少数は、プレセニリン1及び2(PS1;PS2)、並びにアミロイドベータ前駆体タンパク質(APP)をコードする遺伝子における常染色体の優性突然変異によって引き起こされ、かつAPP,PS1及びPS2における変異は、脳において産生されるアミロイドベータ1〜42のレベルの上昇をもたらすアミロイドベータ前駆体タンパク質の代謝を変化させることが見出されている。PS1、PS2及びアミロイドベータ前駆体タンパク質の変異は、遅発型のAD患者においては同定されていないが、その病理学的特性は早発型のAD患者によく似ている。これらのアミロイドベータペプチドの増加レベルは、乱れたアミロイドベータ前駆体タンパク質のプロセシング(例えば、高コレステロールレベルはアミロイドベータペプチド産生を高める)、又は減少したアミロイドベータペプチドの異化から加齢に伴って進行的に起こり得る。それゆえ、遅発型のAD患者のADはまた、脳において異常に上昇したアミロイドペプチドレベルによって引き起こされることが一般的に受け入れられている。これらのアミロイドベータペプチド、及びより具体的にはアミロイドベータペプチド1〜42のレベルは、健常者におけるこれらのペプチドのレベルに比較して、アルツハイマー患者において上昇している。すなわち、これらのアミロイドベータペプチドのレベルを下げることが認識機能障害を有する患者に対して有益である可能性が高い。
【0005】
(成果報告)
主要な現在のAD治療は、コリン作動性ニューロンがADの間に変性する最初の神経細胞であるために低下するアセチルコリン神経伝達物質レベルを上昇させるアセチルコリンエステラーゼ酵素を阻害することによって、進行的な記憶の喪失を遅延させることに限定される。この治療は該疾患の進行を止めはしない。
【0006】
脳においてアミロイドベータペプチドのレベルを減少させることを目的とする治療はますます調査され、そしてベータ又はガンマセクレターゼ酵素が関与する異常なアミロイドベータ前駆体タンパク質プロセシングに焦点を当てている。
本発明は、特定の既知のポリペプチドが、神経細胞においてアミロイドベータ前駆体のプロセシングの上方調節及び/又は誘導における因子であり、かつそうしたポリペプチドの機能の阻害は、アミロイドベータペプチドのレベルを下げることに効果的であるという発見に基づいている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、アミロイドベータタンパク質産生を阻害するための方法、組成物及び化合物アッセイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、哺乳動物細胞内において、Gタンパク質共役受容体(「GPCR」)の機能とアミロイドベータ前駆体タンパク質プロセシングとの関係に関連する。
本発明のある態様は、哺乳動物細胞内において、アミロイドベータ前駆体タンパク質のプロセシングを阻害する化合物を同定するための方法であって;
(a)化合物を、配列番号:4〜6、289〜333からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに接触させること;及び
(b)アミロイドベータタンパク質の産生に関連する化合物−ポリペプチド特性を測定すること、を含む。
【0009】
本方法の態様は、GPCRのポリペプチドドメインを使用した化合物のインビトロアッセイを含み、及びGPCR阻害の後で二次メッセンジャーレベル及び/又はアミロイドベータペプチドレベルを含む有効性の指標を観察する細胞アッセイを含む。
本発明の別の態様は、認識機能障害に苦しんでいる又は該病気に感受性の高い対象に対して、アミロイドベータ前駆体のプロセシングを阻害するのに効果的な量のGPCR拮抗薬(antagonist)又は逆作動薬(inverse agonist)を含む医薬組成物を投与することによって、認識機能障害を伴う病気又は該病気に対する感受性を治療又は予防する方法である。
【0010】
本発明のさらなる態様は、前記方法での使用用途の医薬組成物であり、ここで当該阻害剤はアンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、及び低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択されるポリペプチドを含み、当該作用物質は、配列番号:4〜6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする天然のポリペプチド配列に相補的な、又は該配列から設計された核酸配列を含む。
【0011】
本発明の別のさらなる態様は、医薬として許容し得るキャリアーとの混合物中で、アミロイドベータ前駆体のプロセシング阻害するのに治療的に有効な量のGPCR拮抗薬又は逆作動薬、若しくは医薬として許容し得る塩、水和物、溶媒和物、又はそれらのプロドラッグを含む医薬組成物である。本ポリヌクレオチド、及びGPCR拮抗薬並びに逆作動薬化合物はまた、アルツハイマー病の治療用薬物の製造において有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
下記の用語は、以下に示された意味を有することが意図され、また本発明の記述及び意図された範囲を理解することにおいて有用である。
(定義)
用語「作動薬(agonist)」は、作動薬が結合する受容体の細胞内反応を活性化させるリガンドをさす。
【0013】
用語「アミロイドベータペプチド」は、アミロイドベータ前駆体タンパク質(APP)からプロセシングされたアミロイドベータペプチドを意味する。最も一般的なペプチドは、アミロイドベータペプチド1〜40、1〜42、11〜40及び11〜42を含む。他の種の、より一般的でないアミロイドベータペプチドはy−42として記述され、このときyは2〜17で変動し、かつ1−xにおいてxは24〜39から41の間で変動する。
用語「拮抗薬」は、作動薬と同じ部位で受容体に競合的に結合するが、該受容体の活性形態によって開始される細胞内反応を活性化させない部分を意味し、それによって作動薬による細胞内反応を阻害することができる。拮抗薬は、作動薬又は部分的作動薬の不在下で、細胞内反応のベースラインを減少させない。
【0014】
用語「キャリアー」は、溶剤、容積及び/又は使用可能な形態の医薬組成物を提供するための医薬組成物の製剤において使用される非毒性物質を意味する。キャリアーは、賦形剤、安定剤又は水性のpH緩衝液などの1以上のそのような物質を含んでもよい。生理的に許容可能なキャリアーの例は、リン酸、クエン酸及び他の有機酸を含む、水性又は固形緩衝成分;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む、単糖、二糖、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール、又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又はTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール及びPLURONICS(商標)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0015】
用語「化合物」は、本明細書において本発明のアッセイに関連して記述される「テスト化合物」又は「薬剤候補化合物」の文脈で用いられる。そのようなものとして、これらの化合物は合成的に得られたか又は天然資源に由来する、有機若しくは無機化合物を含む。該化合物は、比較的低分子量として特徴付けられたポリヌクレオチド、脂質又はホルモン類似物質などの、無機又は有機化合物を含む。他の生体高分子有機テスト化合物は、約2〜約40アミノ酸からなるペプチド、及び抗体又は抗体複合体などの約40〜約500アミノ酸を含むより大きなペプチドを含む。
【0016】
用語「構成的受容体活性」は、その内因性リガンド又はその化学的同等物を用いた受容体の結合以外の手段による、活性状態における受容体の安定化を意味する。
用語「接触(contact)」又は「接触すること(contacting)」は、インビトロ(in vitro)システム内又はインビボ(in vivo)システム内を問わず、少なくとも2つの部分を1つに合わせることを意味する。
用語「病気(condition)」又は「疾患(disease)」は、症状の明白な表出(すなわち、疾病(illness))若しくは異常な臨床指標の表出(例えば、生化学的指標)を意味し、あるアミロイドベータタンパク質前駆体プロセシングの欠陥に起因する。あるいは、用語「疾患」は、そのような症状又は異常な臨床指標を発現する遺伝的危険性又は環境的危険性若しくは傾向に関連する。
【0017】
用語「内因性(endogenous)」は、哺乳動物が自然に産生する物質を意味するものとする。例えば、限定されないが、用語「受容体」に関する内因性は、哺乳動物(例えば、限定されないが、ヒト)又はウイルスによって自然に産生されるものを意味するものとする。対照的に、この文脈における用語「非内因性(non-endogenous)」は、哺乳動物(例えば、限定されないが、ヒト)、又はウイルスによって自然に産生されないものを意味するものとする。例えば、限定されないが、その内因性形態では構成的に活性ではないが、操作された場合に構成的に活性になる受容体は、本明細書で最も好ましくは「非内因性、構成的に活性化された受容体」と呼ばれる。両方の用語を使用して、「インビボ」及び「インビトロ」システムの両方を記載することができる。例えば、限定されないが、スクリーニングアプローチにおいて、内因性又は非内因性受容体は、インビトロスクリーニングシステムに関連するかもしれない。さらなる例としては、限定されないが、哺乳動物のゲノムが非内因性の構成的に活性化された受容体を含むように操作された場合、インビボシステムの手段による候補化合物のスクリーニングは実行可能である。
【0018】
用語「発現」は、内因性発現及び形質導入による過剰発現の両方を含む。
用語「発現性核酸」は、タンパク質分子、RNA分子又はDNA分子をコードする核酸を意味する。
用語「ハイブリダイゼーション」は、それによって核酸の鎖が塩基対を介して相補鎖に結合する任意のプロセスを意味する。用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補的塩基間での水素結合の形成の効力によって、2つの核酸配列間で形成される複合体をさす。ハイブリダイゼーション複合体は、溶液中(例えば、C. sub. 0t又はR.sub.0t解析)で形成してもよく、又は溶液中に存在するある核酸配列と、固形支持体(例えば、紙、膜、フィルター、チップ、ピン、又はガラススライド、若しくは細胞又はそれらの核酸が固定される任意の他の適切な基質)上に固定された別の核酸配列との間で形成してもよい。用語「厳しい条件(stringent condition)」は、ポリヌクレオチドと本特許請求の範囲に記載されたポリヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーションを可能にする条件をさす。厳しい条件は、塩濃度、有機溶媒、例えばホルムアミドの濃度、温度、及び当業者に周知の他の条件によって定義され得る。特に、塩濃度を減少させること、ホルムアミド濃度を増加させること又はハイブリダイゼーション温度を上げることは、厳しさを増加させ得る。
【0019】
用語「反応」に関連して、用語「阻害(inhibit)」又は「阻害すること(inhibiting)」は、化合物の不在とは反対に、化合物の存在下で反応が減少させられる又は阻止させられることを意味する。
用語「逆作動薬」は、受容体の内因性形態に結合する部分を意味し、内因性リガンド又は作動薬、若しくは膜へのGTPの結合の減少の不在下で観察される通常の基準レベルの活性以下で、受容体の活性型内因性形態によって開始される基準細胞内反応を阻害する。好ましくは、該基準細胞内反応は、逆作動薬の不在下における基準反応に比較して、少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%、及び最も好ましくは少なくとも75%が逆作動薬の存在下で減少させられる。
【0020】
用語「リガンド」は、内因性の、天然の受容体に特異的な、内因性の天然分子を意味する。
本明細書で用いられているように、用語「医薬として許容し得るプロドラッグ」は、本発明において有用な化合物のプロドラッグを意味し、これは健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、妥当な利益/危険性比率に相応なアレルギー反応を有する患者の組織と接触する使用に適しており、かつ本発明の化合物のそれらの使用目的に対して効果的である。用語「プロドラッグ」は、本発明、又はその医薬として許容し得る塩、水和物、又は溶媒和物において有用な、効果的な化合物を生じさせるために、インビボで形質転換された化合物を意味する。形質転換は、血中での加水分解を介するなどの、様々な機構によって発生することがある。代謝的に切断可能な基を有する化合物は、代謝的に切断可能な基の存在の特性によって、親化合物に与えられた促進された可溶性及び/又は吸収速度の結果として生体利用効率の向上が示されることがあり、それゆえそのような化合物はプロドラッグとして機能するので有利である。徹底した議論は、『プロドラッグのデザイン』、H. Bundgaard編, Elsevier (1985);『酵素学の方法』、 K. Widderら編, Academic Press, 42, 309-396 (1985);『ドラッグデザイン及び開発のテキストブック』、Krogsgaard-Larsen 及びH. Bandaged編、5章;『プロドラッグのデザイン及び応用』113-191 (1991);『上級薬剤送達概説』, H. Bundgard, 8 , 1-38, (1992);J. Pharm. Sci, 77,285 (1988) ;Chem. Pharm. Bull., N. Nakeyaらの論文, 32, 692 (1984);『新規デリバリーシステムとしてのプロドラッグ』、T. Higuchi及びV. Stella, 14 A.C.S. Symposium Series;及び『ドラッグデザインにおける生体可逆性キャリアー』、E. B. Roche編, American Pharmaceutical Association 及びPergamon Press, 1987において提供され、これらは引用によって本明細書に組み込まれる。プロドラッグの例は、エステルプロドラッグである。「エステルプロドラッグ」は、本発明に従って、代謝的手段(例えば、加水分解によって)によって、インビボで阻害化合物に変換可能な化合物を意味する。例えば、カルボキシ基を含む化合物のエステルプロドラッグはインビボでの加水分解によって、対応するカルボキシ基へと変換されてもよい。
【0021】
用語「医薬として許容し得る塩」は、本発明の化合物の非毒性、無機及び有機酸付加塩並びに塩基付加塩をさす。これらの塩は、本発明において有用な化合物の最終的な単離及び精製の間に、インサイチュウで調製され得る。
用語「ポリヌクレオチド」は、一本鎖又は二本鎖形態の、かつセンス又はアンチセンス方向のポリ核酸、厳しい条件下において特定のポリ核酸にハイブリダイズする相補的ポリ核酸、及びその塩基対の少なくとも約60パーセント、及びより好ましくはその塩基対の70%が共通であり、最も好ましくは90パーセント、及び特別な実施態様ではその塩基対の100パーセントで相同であるポリヌクレオチドを意味する。該ポリヌクレオチドは、ポリリボ核酸、ポリデオキシリボ核酸及びそれらの合成類似物を含む。該ポリヌクレオチドは、約10〜約5000塩基、好ましくは約100〜約4000塩基、より好ましくは約250〜約2500塩基の範囲の長さで変化する配列によって記載される。好ましいポリヌクレオチドの実施態様は約10〜約30塩基の長さを含む。ポリヌクレオチドの特別な実施態様は、約10〜約22ヌクレオチドのポリリボ核酸であり、より一般的には低分子干渉RNA(siRNA)として記載される。別の特別な実施態様は、ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、及び2´−O−(2−メトキシ)エチルフォスフォロチオエートなどの修飾された骨格を有する核酸であり、又は非天然の核酸残基、若しくはメチル、チオ、硫酸、ベンゾイル、フェニル、アミノ、プロピル、クロロ及びメタノカルバヌクレオシドなどの1以上の核酸置換基、又はその検出を促進するためのレポーター分子を含む。
【0022】
用語「ポリペプチド」は、タンパク質、タンパク性分子、(キナーゼ、プロテアーゼ、GPCRなどの)タンパク質の一部分、ペプチド及びオリゴペプチドに関連する。
用語「溶媒和物」は、1以上の溶媒分子を有する、本発明において有用な化合物の物理的結合を意味する。この物理的結合は水素結合を含む。特定の例において溶媒和物は、例えば、1以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれた場合に単離可能であろう。「溶媒和物」は、液相、及び単離可能な溶媒和物の両方を含む。代表的な溶媒和物は、水和物、エタノレート及びメタノレートを含む。
【0023】
用語「対象」は、ヒト及び他の哺乳動物を含む。
用語「有効量」又は「治療的に効果的な量」は、医師又は他の臨床医によって探求される対象の生物学的若しくは医学的反応を誘導するであろう化合物の量又は作用物質の量を意味する。特に、神経疾患の治療に関して、用語「有効量」は対象の脳組織中の、アミロイドベータペプチドのレベルの生物学的に有意な減少を引き起こすであろう化合物又は作用物質において、効果的にアミロイドベータ前駆体プロセシングを阻害する量を意味することを意図する。
【0024】
用語「治療すること(treating)」は、その病状の進行を防ぐ又は病状を変化させる意図をもって実行される介入を意味し、それによってそうした障害又は病気の1以上の症状を含む障害、疾患又は病気を緩和させる。したがって、「治療すること」は、治療的処置、及び予防又は再発防止策の両方をさす。治療が必要な人々は、疾患が予防されている人々同様、その疾患にすでに罹っている人々も含む。本明細書で使用されているように、関連した用語「治療(treatment)」は、用語「治療すること」が先に定義したように、障害、症状、疾患又は病気を治療する行為をさす。
本発明の発見の背景は、以下において手短に記載される。
【0025】
(Gタンパク質共役受容体の背景)
1994年にMarcheseとその同僚は、GPR3遺伝子(Marcheseらの文献、1994)をクローニングし、1年後に、単一エキソンが330アミノ酸を有するこの受容体タンパク質をコードすることが見出され、アデニル酸シクラーゼ構成的活性化因子(ACCA)と呼ばれた。そのアミノ酸配列に基づいて、GPR3を、GPR6及びGPR12と同じサブファミリーに分類することができた:GPR3とGPR6は58%の同一性、及びGPR3とGPR12は57%の同一性を示す(図5)。
【0026】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は共通の構造モチーフを共有する。全てのこれらの受容体は、それぞれが7個の膜貫通ドメインを形成して膜を貫通する7個のアルファへリックスを形成する22〜24個の疎水性アミノ酸の7個の配列、細胞外N末端、及び細胞内C末端を有する。該膜貫通へリックスは、膜の細胞外側上の4番目から5番目の膜貫通ヘリックスの間のより大きなループを有するアミノ酸の鎖によって連結される。主に親水性アミノ酸で構成される別の大きなループは、膜の細胞内側上の膜貫通ヘリックス5及び6に連結する。図1Bを参照されたい。
【0027】
生理的条件下において、GPCRは2つの異なる状態又は立体構造:「不活性」状態及び「活性」状態の間で、平衡に細胞膜内に存在する。不活性状態の受容体は、細胞内変換経路に繋がり、生物学的反応を生じさせることはできない。活性化状態への受容体立体構造の変化は変換経路への繋がりを可能にし、生物学的反応を生じさせる。受容体は、内因性リガンド又は外因性作動薬リガンドによって、活性状態に安定化されることもある。最近の発見である該受容体のアミノ酸配列への修飾(それだけに限定されない)は、該活性状態立体構造を安定化させるためのリガンド以外の代替機構を提供している。これらのアプローチは、受容体に結合するリガンドの効果を刺激することによって、受容体を活性化状態に効率的に安定化させる。そのようなリガンド独立的アプローチによる安定化は「構成的受容体活性化」と称される。
【0028】
GPCRによって活性化される主要なシグナル変換カスケードは、3つの異なるタンパク質;Gα、Gβ及びGγサブユニットから構成されるヘテロ三量体Gタンパク質の活性化によって開始される。カルボキシ末端同様、ヘリックス5及び6に連結しているループはGタンパク質と相互作用していると考えられる。Uhlenbrockと同僚は(2002)、GPR3、GPR6及びGPR12の全てが、G(a)(s)及びG(a)(i/o)の構成的活性化を与えることを示し、かつ、最近、スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)及びジヒドロスフィンゴシン−1−リン酸(DHS1P)は、GPR3、GPR6及びGPR12に対する生物活性の脂質リガンドとして同定された(Uhlenbrockらの論文、2002)。該GPR3、GPR6及びGPR12の発現プロファイルもまた同様である:それらは全て脳組織において一次発現している。
【0029】
シグナル変換カスケードは作動薬による受容体の活性化と共に開始する。該受容体における変形的変化はそれからGタンパク質へと移行される。Gタンパク質は、Gα及びGβγサブユニットへと解離する。両方のサブユニットは、該受容体から解離し、両方とも異なる細胞性反応を開始することができる。最もよく知られているのは、Gαサブユニットによって開始される細胞性効果である。Gタンパク質が、それらのGαサブユニットによって分類されるのはこの理由による。Gタンパク質は、G、Gi/o、G及びG12/13の4つのグループに分けられる。 これらのGタンパク質のそれぞれは、エフェクタータンパク質を活性化させることができ、細胞内の二次メッセンジャーの変化をもたらす。二次メッセンジャーのレベル変化は、細胞を特定様式の細胞外シグナルに応答させる引き金である。GPCRの活性は、二次メッセンジャーの活性レベルを測定することによって測定され得る。
【0030】
細胞における2つの最も重要な二次メッセンジャーは、cAMP、及びCa2+である。Gタンパク質のGクラスのαサブユニットはアデニル酸シクラーゼを活性化することができ、ATPからcAMPへの代謝回転の増加をもたらす。Gi/oGタンパク質のαサブユニットは正反対のことを行い、アデニル酸シクラーゼ活性を阻害し、細胞のcAMPレベルの減少をもたらす。これら2つのクラスのGタンパク質は共に、二次メッセンジャーcAMPを制御する。Ca2+は、Gタンパク質のGクラスのαサブユニットによって制御される。フォスフォリパーゼCの活性化を介して、細胞膜からのフォスファチジルイノシトール4,5−ビスフォスフェート(PIP2)は、イノシトール1,4,5−トリフォスフェート及び1,2−ジアシルグリセロールに加水分解され、これらの分子の両方は二次メッセンジャーとして作用する。イノシトール1,4,5−トリフォスフェートは、小胞体において特定の受容体と結合し、Ca2+チャネルの開口、そして細胞質内でのCa2+の放出をもたらす。
【0031】
GPCRに与えられた機能は明らかではない。GPR3及びGPR12の発現レベルは、せん断応力後のヒト臍帯静脈内皮細胞において上昇する(Uhlenbrockらの文献、2003)。スフィンゴシン−1−リン酸は、GPR3及びGPR12に対するリガンドなので、上記データはヒト内皮細胞において、スフィンゴシン−1−リン酸介在性細胞内シグナリングにおける両方のGPCRの役割を示唆する。またGPR3及びGPR6の発現は、齧歯動物肥満モデルにおいて異なった制御をされることから、両方のGPCR(+GPR2)は、食欲、空腹感、及び満腹感の制御における、潜在的薬剤標的として考えられる。一方、GPR12は、有糸分裂後ニューロンの分化及び成熟化に関与しているように見受けられる(Ignatovらの文献、2003)。
【0032】
(参考文献)
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Uhlenbrock, K.; Gassenhuber, H. 及びKostenis, E.の論文 (2002). 『スフィンゴシン−1−リン酸は構成的活性型Gタンパク質共役受容体の、ヒトGPR3ファミリー、ヒトGPR6ファミリー及びヒトGPR12ファミリーのリガンドである』Cell Signal, 14, 11 : 941- 953.
Uhlenbrock, K.; Huber, J.; Ardati, A; Bush, AE. 及びKostenis, E. の論文(2003). 『流体せん断応力は、ヒト臍帯静脈内皮細胞におけるGPR3、GPR6、及びGPR12を別々に制御する』Cell Physiol. Biochem. 13, 2: 75- 84.
Wess, J. の論文(1998). 『受容体/Gタンパク質共役選択性の分子基盤』Pharmacol Ther 80(3): 231-64.
【0033】
(GPCRとアミロイドベータペプチドとの関連性に基づいた本出願人の発明)
先に記載されたように、本発明は、Gタンパク質共役受容体(「GPCR」)が、哺乳動物、及び基本的には神経細胞におけるアミロイドベータ前駆体プロセシングの上方調節及び/又は誘導における因子であること、並びにそのようなポリペプチドの機能の抑制はアミロイドベータタンパク質ペプチドのレベルを減少させることに効果的であるという、本発明者の発見に基づいている。
【0034】
本発明者は、GPCR、及びより特異的にはGPR3、並びにアミロイドベータペプチド形成及び分泌を関連づける予備知識を何も持たない。以下の実験の項においてより詳細に議論されるように、本発明者は、GPR3の過剰発現は形質導入細胞の馴化培地におけるアミロイドベータ1〜42を増加させ、そしてGPR3のノックダウンは減少させることを示す。GPR3、GPR6及びGPR12の優勢な発現は中枢神経系の組織内であるので、本発明はこれらの知見、及びGPCRがアルツハイマー病に対する推定上の薬剤標的であるという認識に基づいている。
【0035】
本発明のある態様は、哺乳動物細胞におけるアミロイドベータ前駆体タンパク質のプロセシングを阻害する化合物を同定するための上記の発見に基づいた方法であり、それゆえ対象におけるアミロイドベータペプチドレベルを減少させることに有用であるかもしれない。本方法は、薬剤候補化合物をGPCRポリペプチド又は前記ポリペプチドのフラグメントに接触させること、及びアミロイドベータタンパク質の産生に関連する化合物−ポリペプチド特性を測定することを含む。「化合物−ポリペプチド特性」は、一般的な当業者によって選択される測定可能な現象であり、かつGPCRの活性化及び不活化は、アミロイドベータタンパク質前駆体プロセシングのそれぞれ活性化及び不活化、並びにアミロイドベータペプチドレベルのそれぞれ増加及び減少における原因因子であるという認識に基づいている。該測定可能な特性は、GPCRポリペプチドのペプチドドメインに対する結合親和性から、GPCRの活性化又は不活化から生じる多くの『二次メッセンジャー』の任意の1つのレベル、上記の二次メッセンジャーに直接結合したレポーター分子の特性、及び最終的には該化合物に接触した哺乳動物細胞によって分泌されたアミロイドベータペプチドのレベルにまで及ぶこともある。
【0036】
当業者の選択によっては、本アッセイ方法を一連の測定として機能するためにデザインしてもよく、各測定を、薬物候補化合物がアミロイドベータペプチド経路に対するGPCR上で実際に作用しているかどうかを決定するためにデザインした。例えば、GPCR又はそのフラグメントに対する化合物の結合親和性を測定するためにデザインされたアッセイは、テスト化合物が対象に投与された場合にアミロイドベータペプチドレベルを減少させるのに有用であるかどうかを確定させるために必要であるかもしれないが、十分ではない。それにもかかわらず、そのような結合の情報は、異なる特性、さらに下流の生化学的経路を測定する検査における使用のためのテスト化合物のセットを同定することに有用であるかもしれない。そのような二番目のアッセイをデザインして、GPCRペプチドへの結合親和性を有するテスト化合物が、哺乳動物細胞において、作動薬又は逆作動薬としてGPCR機能を実際に下方調節又は阻害することを確認してもよい。このさらなるアッセイで、GPCRの活性化又は不活化の直接的な結果である二次メッセンジャー、若しくは二次メッセンジャーに応答する合成レポーターシステムを測定してもよい。異なる二次メッセンジャーを測定すること、及び/又はアッセイシステム自体が直接的に影響されずかつGPCR経路ではないことを確認することは、おそらくさらに該アッセイの正当性を立証するであろう。後者の事項において、適切なコントロールを常に行い、擬陽性の解釈を防ぐ手段をとるべきである。
【0037】
これらの測定を行う順番は本発明の実行に極めて重要であるとは考えられないので、これは任意の順番で実行されてよい。例えば、化合物のGPCRへの結合親和性についての情報が知られていない化合物セットのスクリーニングアッセイが最初に実行してもよい。あるいは、GPCRペプチドドメインに対して結合親和性を有するものとして同定された化合物、又はGPCRの作動薬又は逆作動薬であるとして同定された化合物のクラスのセットをスクリーニングしてもよい。GPCRポリペプチドの膜内ドメインでの可能な化合物相互作用のためにGPCRに対する結合親和性を知ることは必須ではなく、そのドメイン立体構造を親和性実験において再現することができなくてもよい。しかしながら、本アッセイが薬物候補化合物の最終的な使用に有意であるために、二次メッセンジャー又は最終的なアミロイドベータペプチドレベルの測定は必要である。コントロール及びGPCRへの結合親和性の測定を含む検証実験はそれでもなお、全ての治療的又は診断的用途において有用な化合物を同定することにおいて有用である。
【0038】
本アッセイ方法は、1以上のGPCRタンパク質又はそれらのフラグメント若しくはGPCRポリペプチドを過剰発現するベクターを用いて形質導入された細胞から作られた膜画分を用いて、インビトロで実行してもよい。GPCRのアミノ酸配列及びそれらの有用なフラグメントは、配列番号:4〜6、289〜333において見出される。ポリペプチドと化合物との結合親和性は、表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore)、標識された化合物を用いた飽和結合解析(例えば、Scatchard及びLindmo解析)、微分紫外分光光度計、蛍光偏光アッセイ、蛍光分析イメージングプレートリーダー(FLIPR(登録商標))システム、蛍光共鳴エネルギー転移、及び生物発光共鳴エネルギー転移の使用などの当業者に既知の方法によって測定され得る。化合物の結合親和性はまた、解離定数(Kd)又はIC50若しくはEC50で表現され得る。IC50は、別のリガンドのポリペプチドへの結合の50%阻害に対して必要とされる化合物の濃度を表す。EC50は、受容体機能を測定する任意のアッセイにおいて最大効果の50%を獲得するために必要とされる濃度を表す。解離定数Kdは、リガンドがポリペプチドにどのくらい結合しているかの測定であって、ポリペプチド上の結合部位のちょうど半分を飽和させるために必要とされるリガンド濃度に等しい。高親和性結合を有する化合物は、低いKd、低いIC50値、及び低いEC50値、すなわち100nMから1pMの範囲を有しており;中程度から低親和性結合は、高いKd,高いIC50値、及び高いEC50値、すなわちマイクロモラーの範囲に関連する。
【0039】
本アッセイ方法はまた細胞アッセイにおいて実施してもよく、GPCRポリペプチドを発現している宿主細胞は、ポリペプチドの内因性発現を有する細胞又は例えば形質導入によってポリペプチドを過剰発現している細胞であり得る。ポリペプチドの内因性発現が容易に測定し得るベースラインを決定するのに十分でない場合、GPCRを過剰発現する宿主細胞を使用してもよい。過剰発現は、二次メッセンジャーのレベルが内因性発現による活性レベルよりも高いという利点を有する。したがって、現在利用可能な技術を用いてそのようなレベルを測定することはより容易である。そのような細胞アッセイにおいて、サイクリックAMP、又はCa2+、サイクリックGMP、イノシトール三リン酸(IP)及び/又はジアシルグリセロール(DAG)などの二次メッセンジャーを使用してGPCRの生物学的活性を測定してもよい。サイクリックAMP、又はCa2+は、測定するのに好ましい二次メッセンジャーである。二次メッセンジャーの活性化は以下に議論される、ELISA又は放射性テクノロジーによって直接的に、若しくはレポーター遺伝子解析によって間接的にのいずれかの、いくつかの異なる技術によって測定してもよい。好ましくは、該方法はさらに、ベースラインレベルを決定する前に該宿主細胞をGPCRに対する作動薬に接触させることを含む。作動薬の添加はさらにGPCRを刺激し、それによってさらに二次メッセンジャーの活性レベルが増加する。いくつかのそのような作動薬(リガンド)は当業者に既知であり;好ましくは、スフィンゴシン−1−リン酸又はジヒドロスフィンゴシン−1−リン酸である。GPCRポリペプチド、過剰発現、又は活性化された場合、分泌されたアミロイドベータペプチドのレベル。
【0040】
本発明はさらに、哺乳動物細胞におけるアミロイドベータ前駆体タンパク質のプロセシングを阻害する化合物を同定するための方法に関連し:
(a)化合物を配列番号:4〜6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに接触させること、
(b)該化合物の該ポリペプチドに対する結合親和性を決定すること、
(c)該化合物を発現している哺乳動物細胞の集団を、少なくとも10マイクロモラーの結合親和性を示す化合物と接触させること、及び
(d)哺乳動物細胞内で、アミロイドベータ前駆体タンパク質のプロセシングを阻害する化合物を同定することを含む。
【0041】
本発明のさらなる実施態様は、細胞におけるアミロイドベータ前駆体タンパク質のプロセシングを阻害する化合物を同定するための方法に関連し、ここでGPCRポリペプチドの活性レベルは、1以上の二次メッセンジャーのレベルを決定するために測定され、このとき一次又は二次メッセンジャーは、該二次メッセンジャーに応答するプロモータによって制御されるレポーターを用いて決定される。該レポーターは、二次メッセンジャーの細胞レベルに応答するプロモータの制御下のレポーター遺伝子である。そのような好ましい二次メッセンジャーは、サイクリックAMP、又はCa2+である。レポーター遺伝子は容易に検出される遺伝子産物を有するべきであり、当該宿主細胞内に安定的に感染されてもよい。そのような方法は任意の当業者に周知である。
【0042】
レポーター遺伝子は、数あるなかでも、アルカリフォスファターゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化された緑色蛍光タンパク質(eGFP)、不安定化緑色蛍光タンパク質(dGFP)、ルシフェラーゼ、ベータガラクトシダーゼから選択されてよい。レポーターはすぐに利用可能であり、かつ広い範囲にわたって測定することが容易なルシフェラーゼ又はベータガラクトシダーゼが好ましい。レポーター構築におけるプロモータは、サイクリックAMP応答性プロモータ、NF−KB応答性プロモータ又はNF−AT応答性プロモータが好ましい。サイクリックAMP応答性プロモータは、当該細胞内において、サイクリックAMPのレベルに応答する。NF−AT応答性プロモータは、当該細胞内の細胞質Ca2+レベルに感受性である。NF−KB応答性プロモータは、当該細胞内の活性化されたNF−κBレベルに対して感受性である。
【0043】
本発明のさらなる実施態様は、細胞内でアミロイドベータ前駆体タンパク質のプロセシングを阻害する化合物を同定するための方法に関連し、このときGPCRポリペプチドの活性レベルはアミロイドベータペプチドのレベルを決定することによって測定される。これらのペプチドのレベルは、異なるアミロイドベータペプチド種を特異的に認識する抗体を用いた特異的ELISAを用いて測定してもよい(例えば、実施例1を参照されたい)。様々なアミロイドベータペプチドの分泌はまた、全てのペプチドに結合する抗体を用いて測定してもよい。アミロイドベータペプチドのレベルはまた、質量分析解析によって測定され得る。
【0044】
ハイスループットを目的とするために、化合物のライブラリーは抗体フラグメントライブラリー、ペプチドファージディスプレーライブラリー、ペプチドライブラリー(例えば、LOPAP(商標)、Sigma Aldrich社)、脂質ライブラリー(BioMol社)、合成化合物ライブラリー(例えば、LOPAC(商標)、Sigma Aldrich社)又は天然化合物ライブラリー(Specs, TimTec社)などを使用してもよい。
【0045】
好ましい薬剤候補化合物は低分子量化合物である。低分子量化合物、すなわち500ダルトン以下の分子量を有する化合物は、生物学的システムにおいて優れた吸収能及び浸透能を有する可能性が高く、結果として500ダルトンより上の分子量を有する化合物よりも良好な薬剤候補である可能性がより高い(Lipinskiらの文献(1997))。ペプチドは既知のGPCR拮抗薬であるので、ペプチドは薬剤候補化合物の別の好ましいクラスを含む。おそらくペプチドはすばらしい薬剤候補であり、また稔性ホルモン及び血小板凝集阻害剤などの商業的に価値のあるペプチドの複数の例がある。天然の化合物は薬剤候補化合物の別の好ましいクラスである。そのような化合物は天然資源に見出され、天然資源から抽出され、その後合成されることもある。脂質は薬剤候補化合物の別の好ましいクラスである。脂質は表2にリスト化されているGPCRの拮抗薬でもよい(配列番号:1〜3、4〜6)。
【0046】
薬剤候補化合物の別の好ましいクラスは抗体である。本発明はまた、GPCRの細胞外ドメインに対して指示される抗体を提供する。これらの抗体は、GPCRの1以上の細胞外ドメインに特異的に結合すべきであり、あるいは後に更に記載されるように内因性的に産生され、細胞内GPCRドメインに結合するよう設計されるべきである。これらの抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であってよい。本発明は、FAbフラグメント並びにFAb発現ライブラリーの産物、及びFvフラグメント並びにFv発現ライブラリーの産物のみならず、キメラ抗体、一本鎖抗体及びヒト化抗体を含む。
【0047】
特定の実施態様において、ポリクローナル抗体を本発明の実践において使用してもよい。当業者はポリクローナル抗体の調製方法を知っている。ポリクローナル抗体は、例えば、1以上の免疫剤及び所望ならばアジュバントの注射によって、哺乳動物内で抗体価を上げることができる。典型的には、免疫剤及び/又はアジュバントは、複数回の皮下又は腹腔内注射によって哺乳動物内へ注入される。抗体はまた、無傷のGPCRタンパク質又はポリペプチド若しくは細胞外ドメインペプチドなどのフラグメント、複合体を含む誘導体、又はGPCRタンパク質の他のエピトープ若しくは細胞膜に埋め込まれたGPCRなどのポリペプチド、又はファージディスプレーライブラリーなどの抗体可変領域のライブラリーに対して生成されることもある。
【0048】
免疫された動物において免疫原性であることが知られているタンパク質に免疫剤を共役させることは有用である可能性がある。そのような免疫原性タンパク質の例は、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン及びダイズトリプシン阻害因子を含むがこれらに限定されない。使用されてもよいアジュバントの例は、フロイント完全アジュバント及びMPL−TDMアジュバント(モノフォスフォリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート)を含む。不適切な実験をしていない当業者は免疫プロトコールを選択することもある。
【0049】
いくつかの実施態様において、抗体はモノクローナル抗体であってよい。モノクローナル抗体を当業者に周知の方法を使用して調製してもよい。本発明のモノクローナル抗体を「ヒト化」して、当該宿主を該抗体への免疫反応の高まりから保護してもよい。「ヒト化抗体」は、分子レベルで、相補性決定領域(CDR)、及び/又は軽鎖並びに/若しくは重鎖可変領域構造の他の部分がヒト以外の免疫グロブリンに由来するが、当該分子の残りの部分は1以上のヒト免疫グロブリンに由来する抗体である。またヒト化抗体は、ドナー又はアクセプターに関連するヒト化重鎖、修飾されていない軽鎖又はキメラ軽鎖によって特徴付けられる抗体を含み、或いはそれらの特徴を持つ抗体がヒト化抗体を含む。抗体のヒト化は当業者に周知の方法によって達成してもよい(例えば、Mark及びPadlanらの文献, (1994) 「4章.モノクローナル抗体のヒト化」『実験薬理学のハンドブック 第113巻』, Springer- Verlag, New Yorkを参照されたい)。トランスジェニック動物を使用してヒト化抗体を発現してもよい。
【0050】
ヒト抗体はまた当業者に既知の様々な方法を用いて産生することができ、ファージディスプレーライブラリーを含む(Hoogenboom及びWinterの論文, (1991) J. MoI. Biol. 227:381- 8; Marksらの論文 (1991). J. MoI. Biol. 222:581-97)。Coleら、及びBoernerらの技術もまたヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Coleらの文献(1985) 『モノクローナル抗体及びガン治療』, Alan R. Liss, p. 77; Boernerらの論文 (1991). J. Immunol., 147(l):86-95)。
【0051】
一本鎖抗体の産生用途の当業者に既知の技術は、GPCRポリペプチド及び本発明のタンパク質に対する一本鎖抗体を産生するために適用され得る。一本鎖抗体は一価抗体であってよい。一価抗体の調製方法は当業者に既知である。例えばある方法は、免疫グロブリン軽鎖と修飾された重鎖の組換え発現を含む。該重鎖は、重鎖の交差結合を防ぐためにそのFc領域内の任意の箇所で一般的に切り捨てられる。あるいは;関連するシステイン残基は、交差結合を防ぐために別のアミノ酸残基に置換されるか又は削除される。
【0052】
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に、好ましくは細胞表面タンパク質又は受容体若しくは受容体サブユニットに特異的に結合するモノクローナル抗体、好ましくはヒトの又はヒト化モノクローナル抗体である。本事例において、結合特異性の1つはGPCRのある細胞外ドメインに対するものであり、他の1つは同じ又は異なるGPCRの別の細胞外ドメインに対するものである。
【0053】
二重特異性抗体の作成方法は当業者に既知である。伝統的に、二重特異性抗体の組換え産生は2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現に基づいており、このとき当該2つの重鎖は異なる特異性を有する(Milstein及びCuelloの論文, (1983) Nature 305:537-9)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の無作為の組み合わせのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を産生し、そのうちの1種だけが正しい二重特異性構造を有する。親和性クロマトグラフィーの段階は通常、正しい分子の精製を達成する。同様な手順は、Trauneekerらの論文(199I) EMBO J. 10:3655-9に開示されている。
【0054】
別の好ましい実施態様に従って、アッセイ法はGPCRへの結合親和性を有するものとして同定された薬剤候補化合物、及び/又は1以上のGPCRに対する拮抗薬又は逆作動薬活性などの下方制御活性を有するものとしてすでに同定されている薬物候補化合物を使用することを含む。そのような化合物の例は米国特許第6,420,563号(WO 01/62765)に開示されるアリールオキシジチオウレアであり、そこで開示される活性逆作動薬については引用によって本明細書に組み込まれる。
【0055】
本発明の別の態様は哺乳動物細胞におけるアミロイドベータ前駆体タンパク質プロセシングを減少させるための方法に関連し、哺乳動物細胞を、GPCRポリペプチドをコードするポリリボヌクレオチドの該細胞内における翻訳を阻害する発現阻害剤と接触させることによることを含む。特定の実施態様は、発現阻害剤と標的GPCRmRNAを対を形成して機能する、少なくとも1つのアンチセンス鎖を含むポリヌクレオチドを含む組成物に関連し、それによってGPCRポリペプチドの発現を下方調節又は阻止する。該発現阻害剤は、好ましくはアンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、及び低分子干渉RNA(siRNA)を含み、前記発現阻害剤は配列番号:4〜6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする天然のポリヌクレオチド配列に相補的な、又は該配列から設計された核酸配列を含む。
【0056】
本発明の特別な実施態様は、発現阻害剤が、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号:4〜6をコードするポリリボヌクレオチドを切断するリボザイム、siRNAがGPCRポリリボヌクレオチドからGPCRポリペプチドへの翻訳を妨げるような配列番号4〜6に一致するポリリボヌクレオチドの一部分に十分に相同的な低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択される方法に関連する。
【0057】
本発明の別の実施態様は、発現阻害剤がアンチセンスRNAを発現する核酸、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号:4〜6をコードするポリリボヌクレオチドを切断するリボザイム、siRNAがGPCRポリリボヌクレオチドのGPCRポリペプチドへの翻訳を妨げるような配列番号4〜6に対応するポリリボヌクレオチドの一部分に対して十分に相同的な低分子干渉RNA(siRNA)である方法に関連する。好ましくは、本発現阻害剤は、アンチセンスRNA、リボザイム、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、又は配列番号:7〜287からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むsiRNAである。
【0058】
アンチセンス核酸を用いた遺伝子発現の下方調節は、翻訳又は転写レベルで達成され得る。本発明のアンチセンス核酸は、好ましくは、GPCRポリペプチド又は対応するメッセンジャーRNAをコードする核酸の全て若しくは一部を用いて特異的にハイブリダイズすることができる核酸フラグメントである。さらにアンチセンス核酸はその一次転写産物のスプライシングを阻害することによって、GPCRポリペプチドをコードすることができる核酸配列の発現を減少させるようにデザインされてもよい。任意の長さのアンチセンス配列は、GPCRをコードする核酸の発現を下方調節又は阻止することができる限り本発明の実行に適する。好ましくは、アンチセンス配列は少なくとも約17ヌクレオチドの長さである。アンチセンス核酸、アンチセンスRNAをコードするDNAの調製及び使用、並びにオリゴ及び遺伝的アンチセンスの使用は当業者に既知である。
【0059】
発現阻害剤のある実施態様は、配列番号:1〜3を含む核酸に対してアンチセンスである核酸である。例えばアンチセンス核酸(例えば、DNA)は、配列番号:1〜3を含む核酸の細胞性発現を阻害するための遺伝子治療として、インビトロで細胞内へ導入、又はインビボで対象に投与してもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは約17〜約100ヌクレオチドを含む配列を含み、より好ましくは該アンチセンスオリゴヌクレオチドは約18〜約30ヌクレオチドを含む。アンチセンス核酸は反対方向に発現する、配列番号:1〜3の該配列から選択される約10〜約30の連続したヌクレオチドから調製されてよい。
【0060】
アンチセンス核酸は好ましくはオリゴヌクレオチドであり、デオキシリボヌクレオチド、修飾されたデオキシリボヌクレオチド又は両方のいくつかの組み合わせだけでなることもある。アンチセンス核酸は合成オリゴヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドを、所望ならば安定性及び/又は選択性を向上させるために化学的に修飾してもよい。オリゴヌクレオチドは細胞内ヌクレアーゼによる分解に感受性であるため、修飾は、例えばフォスフォジエステル結合の遊離酸素原子を置換するための硫黄基の使用を含み得る。この修飾はフォスフォロチオエート結合と呼ばれる。フォスフォロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドは水溶性、ポリアニオン性であり、かつ内因性ヌクレアーゼに耐性である。さらにフォスフォロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドがその標的部位にハイブリダイズした場合、RNA−DNA二量体はハイブリッド分子のmRNA成分を切断する内因性酵素リボヌクレアーゼ(RNase)Hを活性化させる。
【0061】
さらに、フォスフォアミダイト及びポリアミド(ペプチド)結合を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドは合成され得る。これらの分子はヌクレアーゼ分解に対してかなり抵抗性であるべきである。さらに、糖部分の2´炭素、及びピリミジンの5炭素(C−5)に化学基を付加して安定性を増大させ、かつその標的部位へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの結合を促進することができる。修飾は当業者に既知の他の修飾と同様、2´−デオキシ、O−ペントキシ、O−プロポキシ、O−メトキシ、フルオロ、メトキシエトキシフォスフォロチオエート、修飾された塩基を含んでよい。
【0062】
GPCRのレベルを減少させる発現阻害薬剤の別のタイプは、リボザイムである。リボザイムは、個々の触媒及び基質結合ドメインを有する触媒RNA分子(RNA酵素)である。基質結合配列は、ヌクレオチドの相補性、及び場合によってはその標的配列との非水素結合相互作用によって結合する。触媒部位は特定の部位で標的RNAを切断する。リボザイムの基質ドメインを設計して、それを特定のmRNA配列に指示することができる。リボザイムは認識し、それから相補的塩基対を介して標的mRNAに結合する。いったん正しい標的部位に結合すると、リボザイムは酵素的に対象のmRNAを切断するために作用する。リボザイムによるmRNAの切断は、対応するポリペプチドの合成を指示するためのその能力を破壊する。いったんリボザイムがその標的配列を切断するとリボザイムは放出され、繰り返し結合し、他のmRNAを切断することが可能である。
【0063】
リボザイムの形態は、ハンマーヘッドモチーフ、ヘアピンモチーフ、デルタ肝炎ウイルス、グループIイントロン、又はRNaseP RNA(RNAガイド配列に関連して)モチーフ、若しくはアカパンカビVS RNAモチーフを含む。ハンマーヘッド又はヘアピン構造を有するリボザイムは、これらの触媒RNA分子が細胞内の真核生物プロモータから発現され得るので、容易に調製される(Chenらの論文(1992) Nucleic Acids Res. 20:4581-9)。本発明のリボザイムは適切なDNAベクターから真核生物細胞内で発現され得る。所望ならば、リボザイムの活性を、2番目のリボザイムによる一次転写産物からのその放出によって増加させてもよい(Venturaらの論文(1993) Nucleic Acids Res. 21 :3249-55)。
【0064】
リボザイムは、オリゴデオキシリボヌクレオチドを、転写後に標的mRNAにハイブリダイズする配列の側面に位置するリボザイム触媒ドメイン(20ヌクレオチド)に組み合わせることによって化学的に合成してもよい。オリゴデオキシリボヌクレオチドは、基質結合配列をプライマーとして用いることによって増幅される。増幅産物は、真核生物発現ベクター内にクローニングされる。
【0065】
リボザイムは、DNA、RNA、又はウイルスベクター内に挿入された転写単位から発現される。リボザイム配列の転写は、真核生物RNAポリメラーゼI(polI)、RNAポリメラーゼII(polII)、又はRNAポリメラーゼIII(polIII)に対するプロモータから駆動される。polII又はpolIIIプロモータからの転写産物は、全ての細胞において高レベルで発現されるであろう;所与の細胞型における所与のpolIIプロモータのレベルは、近隣の遺伝子制御配列次第であろう。該原核生物RNAポリメラーゼ酵素が適切な細胞において発現される限り、原核生物RNAポリメラーゼプロモータもまた使用される(Gao及びHuangの論文, (1993) Nucleic Acids Res. 21:2867-72)。これらのプロモータから発現されたリボザイムは、哺乳動物細胞内で機能できることが示されている(Kashani-Sabetらの論文(1992) Antisense Res. Dev. 2:3-15)。
【0066】
特に好ましい阻害剤は低分子干渉RNA(siRNA)である。siRNAは、抑制されたRNAに配列が相同である二本鎖RNA(dsRNA)による遺伝子抑制の転写後プロセスを仲介する。本発明に従ったsiRNAは、配列番号:1〜3に記載される配列からなる群から選択される連続した17〜25ヌクレオチド配列に相補的又は相同的な17〜25ヌクレオチドのセンス鎖、及び該センス鎖に相補的な17〜23ヌクレオチドのアンチセンス鎖を含む。最も好ましいsiRNAは、互いに及び標的ポリヌクレオチド配列に対して100パーセント相補的であるセンス及びアンチセンス鎖を含む。好ましくは、siRNAはさらにセンス鎖とアンチセンス鎖とを連結するループ領域を含む。
【0067】
本発明に従った自己相補的一本鎖siRNA分子ポリヌクレオチドは、ループ領域リンカーによって連結されたセンス部分及びアンチセンス部分を含む。好ましくは、ループ領域配列は、4〜30ヌクレオチド長、より好ましくは5〜15ヌクレオチド長、及び最も好ましくは8ヌクレオチド長である。最も好ましい実施態様において、リンカー配列はUUGCUAUA(配列番号:288)である。自己相補的一本鎖siRNAはヘアピンループを形成し、通常のdsRNAよりもより安定である。さらにそれらはベクターからより容易に産生される。
【0068】
siRNAは、アンチセンスRNAに類似であるため、siRNAを修飾して、核酸分解に対する抵抗性を確認する、又は活性を強化させる、若しくは細胞内分布を広げる、又は細胞内取り込みを増加させることができ、そのような修飾は、修飾されたヌクレオシド内結合、修飾された核酸塩基、修飾された糖、及び/又は1以上の成分若しくは結合体へのsiRNAの化学的結合から構成されてもよい。ヌクレオチド配列は、これらのsiRNAのデザイン規則に適合しないヌクレオチド配列に比較して、標的配列の減少を強化させるsiRNAのデザイン規則に従って選択される(siRNAの調製のこれらの規則及び実施例の議論について、2004年11月4日に公開されたWO2004094636、及びUA20030198627は引用によって本明細書に組み込まれる)。
【0069】
また本発明は組成物及び前記組成物を使用する方法に関連し、アミロイドベータタンパク質前駆体プロセシングを阻害することができ、かつ発現阻害剤として先に記載されたポリヌクレオチドを発現することができる、DNA発現ベクターを含む。
これらの組成物及び方法の特別な態様は、GPCRポリペプチドに選択的に相互作用することができる細胞内結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの誘導された発現による、GPCRポリペプチドの発現の下方調節又は阻止に関連する。細胞内結合タンパク質は、それが発現している細胞内でポリペプチドに選択的に相互作用又は結合し、かつ該ポリペプチドの機能を中和することができる任意のタンパク質を含む。好ましくは、細胞内結合タンパク質は配列番号:4〜6の該GPCRポリペプチドの細胞内ドメインに結合親和性を有する中和抗体又は中和抗体のフラグメントである。より好ましくは、細胞内結合タンパク質は一本鎖抗体である。
【0070】
この組成物の特別な実施態様は、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号:4〜6をコードするポリリボヌクレオチドを切断するリボザイム、及び、siRNAがGPCRポリリボヌクレオチドからGPCRポリペプチドへの翻訳に干渉するように配列番号4〜6に一致するポリリボヌクレオチドの一部分に十分に相同である低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択される発現阻害剤を含む。
【0071】
該発現阻害剤を発現しているポリヌクレオチド、又は細胞内結合タンパク質をコードするものは、ベクター内に好ましく含まれる。ポリ核酸は核酸配列の発現を可能にするシグナルに人為的に連結され、いったんベクターが細胞内に導入されるとアンチセンス核酸を発現する組換えベクターコンストラクトを好ましく利用して細胞内へと導入される。アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ヘルペス単純ウイルス、又はセンダイウイルスのベクターシステムを含む、ウイルスに基づいた様々なシステムが利用可能であり、かつそれらの全てを使用して、標的細胞内で発現阻害剤に対するポリヌクレオチド配列を導入かつ発現させてもよい。
【0072】
好ましくは、本発明の諸方法において使用されたウイルスベクターは複製欠損型である。そのような複製欠損型ベクターは通常、感染細胞におけるウイルスの複製に必要な少なくとも1つの領域を欠いている。これらの領域は当業者に既知の任意の技術によって(全体、又は一部分)削除されるか、又は非機能的にされるかのどちらかであり得る。これらの技術は、全体の削除、置換、部分的削除、又は(複製のために)不可欠な領域への1以上の塩基の付加を含む。そのような技術は、遺伝子操作技術の使用又は突然変異誘発物質を用いた処理によって、(単離されたDNAの)インビトロ、又はインサイチュウで実行されてよい。好ましくは、複製欠損型ウイルスはウイルス粒子をカプシドで包むために必要な、それ自身のゲノム配列を保持する。
【0073】
好ましい実施態様において、ウイルス成分はアデノウイルスに由来する。好ましくは、媒体はアデノウイルスカプシド内に梱包されたアデノウイルスベクター、又はそれらの機能的部分、誘導体、及び/又は類似体を含む。アデノウイルスの生物学はまた、分子レベルで比較的よく知られている。アデノウイルスベクターのための多くのツールは発展し続けてきており、それゆえアデノウイルスカプシドを本発明のライブラリーに組み込むのに好ましい媒体にしている。アデノウイルスは様々な細胞に感染することができる。しかしながら、異なるアデノウイルス血清型は、細胞に対して異なる優先傾向を有する。本発明のアデノウイルスカプシドが、好ましい実施態様で入ることができる標的細胞集団を結集させ広げるために、媒体は少なくとも2種類のアデノウイルスからのアデノウイルス線維タンパク質を含む。
【0074】
好ましい実施態様において、アデノウイルス由来の核酸は、アデノウイルス後期タンパク質、又はその機能的部分、誘導体、及び/又は類似体をコードする核酸を含む。アデノウイルス線維タンパク質を例とするアデノウイルス後期タンパク質は、これを都合に合わせて用いて特定の細胞に媒体を標的化させてもよく、又は該細胞に該媒体の強化された輸送を誘導してもよい。好ましくは、アデノウイルス由来の核酸は、実質的に全てのアデノウイルス後期タンパク質をコードし、アデノウイルスカプシド全体、又はその機能的部分、類似体、及び/又は誘導体の形成を可能にする。好ましくは、アデノウイルス由来の核酸はアデノウイルスE2A、又はその機能的部分、誘導体、及び/又は類似体をコードする核酸を含む。好ましくは、アデノウイルス由来の核酸は、細胞内で核酸に由来するアデノウイルスの複製を少なくとも部分的には促進する、少なくとも1つのE4領域タンパク質、又はその機能的部分、誘導体、及び/又は類似体をコードする核酸を含む。本明細書の実施例で使用されるアデノウイルスベクターは、治療法発明に属する本方法において有用なベクターの典型である。
【0075】
本発明の特定の実施態様はレトロウイルスベクターシステムを使用する。レトロウイルスは分裂細胞に感染する組込みウイルスであり、かつそれらの構成は当業者に周知である。レトロウイルスベクターは、MoMuLV(「マウスモロニー白血病ウイルス」)、MSV(「マウスモロニー肉腫ウイルス」)、HaSV(「ハーベイ肉腫ウイルス」);SNV(「脾臓壊死ウイルス」);RSV(「ラウス肉腫ウイルス」)及びフレンドウイルスなどの、異なるタイプのレトロウイルスから構築され得る。レンチウイルスベクターシステムもまた本発明の実践に使用されてよい。レトロウイルスシステム及びヘルペスウイルスシステムは、神経細胞のトランスフェクションに好ましい媒体であることがある。
【0076】
本発明の他の好ましい実施態様は、アデノ随伴ウイルス(「AAV」)が使用されることである。AAVウイルスは、感染細胞のゲノム中に安定的かつ部位特異的様式で組み込む、比較的小さなサイズのDNAウイルスである。それらは、細胞の成長、形態、又は分化にどのような影響も誘発せずに、幅広い範囲の細胞に感染することができ、かつそれらはヒトの病理に関与していないようである。
【0077】
ベクター構築において、本発明のポリヌクレオチド剤は、1以上の制御領域に連結されてよい。適切な制御領域の選択は当業者の技術レベル内で決まりきった事柄である。制御領域はプロモータを含み、かつエンハンサー、サプレッサーなどを含んでもよい。
本発明の発現ベクターに使用してもよいプロモータは、構成的プロモータ及び制御(誘導可能な)プロモータの両方を含む。プロモータは宿主次第で原核生物又は真核生物であってよい。原核生物(バクテリオファージを含む)プロモータの中で本発明の実践に有用なのは、lacプロモータ、lacZプロモータ、T3プロモータ、TIプロモータ、ラムダP.sub.rプロモータ、P.sub.lプロモータ、及びtrpプロモータである。真核生物(ウイルスを含む)プロモータの中で本発明の実践に有用なのは、遍在性プロモータ(例えば、HPRT、ビメンチン、アクチン、チューブリン)、中間径フィラメントプロモータ(例えば、デスミン、神経フィラメント、ケラチン、GFAP)、治療遺伝子プロモータ(例えば、MDRタイプ、CFTR、因子VIII)、組織特異的プロモータ(例えば、平滑筋におけるアクチンプロモータ、又は内皮細胞において活性なFitプロモータ及びFlkプロモータ)であり、組織特異性を示しかつトランスジェニック動物において用いられる以下の動物転写制御領域を含む:膵腺房細胞において活性であるエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftらの論文(1984) Cell 38:639-46; Ornitzらの論文(1986) Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409; MacDonaldの論文 (1987) Hepatology 7:425-515);膵臓ベータ細胞において活性であるインスリン遺伝子制御領域(Hanahanの論文(1985) Nature 315:115-22)、リンパ球細胞において活性である免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlらの論文(1984) Cell 38:647-58; Adamesらの論文(1985) Nature 318:533-8; Alexanderらの論文(1987) MoI. Cell. Biol. 7:1436-44)、睾丸、乳腺、リンパ球及びマスト細胞において活性であるマウス乳ガンウイルス制御領域(Lederらの論文 (1986) Cell 45:485-95)、肝臓において活性であるアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertらの論文(1987) Genes and Devel. 1 :268-76)、肝臓において活性であるアルファ−フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufらの論文(1985) MoI. Cell. Biol., 5: 1639-48; Hammerらの論文(1987) Science 235:53-8)、肝臓において活性であるアルファ1−アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelseyらの論文(1987) Genes and Devel., 1: 161-71)、骨髄性細胞において活性であるベータグロビン遺伝子制御領域(Mogramらの論文 (1985) Nature 315:338-40; Kolliasらの論文 (1986) Cell 46:89- 94)、脳中のオリゴデンドロサイト細胞において活性であるミエリン塩基タンパク質遺伝子制御領域(Readheadらの論文 (1987) Cell 48:703-12)、骨格筋において活性であるミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(Saniの論文(1985) Nature 314.283-6)、及び視床下部において活性である性腺刺激放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonらの論文(1986) Science 234:1372-8)。
【0078】
本発明の実践において使用されてもよい他のプロモータは、分裂細胞で選択的に活性化されるプロモータ、刺激に応答するプロモータ(例えば、ステロイドホルモン受容体、レチノイン酸受容体)、テトラサイクリン制御性転写モジュレーター、サイトメガロウイルス前初期プロモータ、レトロウイルスLTRプロモータ、メタロチオネインプロモータ、SV−40プロモータ、E1aプロモータ、及びMLPプロモータを含む。
【0079】
ベクターはまた、エンハンサー、リプレッサーシステム、及び局在化シグナルなどの他の要素を含む。膜局在化シグナルは、GPCRの細胞内ドメインに接触することによって機能する細胞内結合タンパク質をコードし、かつベクター産物が、細胞内結合タンパク質の標的が存在する細胞膜の内側表面に指示される場合に最も効果的である配列を発現する場合に、好ましい要素である。膜局在化シグナルは当業者に周知である。例えば、原形質膜にポリペプチドを局在化させるための適切な膜局在化ドメインはファルネシル化のためのC末端配列CaaXであり(ここで「a」は脂肪酸アミノ酸残基であり、かつ「X」は任意のアミノ酸残基、一般的にはロイシンである)、例えば、システイン−アラニン−アラニン−ロイシン、又はシステイン−イソロイシン−バリン−メチオニンである。他の膜局在化シグナルは、Bcl−2のC末端又はBcl−2ファミリータンパク質の他のメンバーのC末端からの推定上の膜局在化配列を含む。
【0080】
さらなるベクターシステムは、患者へのポリヌクレオチド剤の導入を促進する非ウイルスシステムを含む。例えば所望の配列をコードするDNAベクターは、リポフェクションによってインビボで導入され得る。リポソーム介在性トランスフェクションで遭遇する困難を制限するためにデザインされた合成カチオン性脂質を使用して、マーカーをコードする遺伝子のインビボトランスフェクションのためのリポソームを調製することができる(Feignerらの論文(1987) Proc. Natl. Acad ScL USA 84:7413-7; Mackeyらの論文(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8027-31; Ulmerらの論文(1993) Science 259:1745-8を参照されたい)。カチオン性脂質の使用は、負に荷電した核酸のカプシド包囲を促進することがあり、また負に荷電した細胞膜との融合を促進することもある(Feigner及びRingoldの論文, (1989) Nature 337:387-8)。核酸の導入用途の特に有用な脂質化合物及び組成物は、国際特許公報WO 95/18863並びにWO 96/17823、及び米国特許第5,459,127号に記載されている。インビボで特定の組織内に外来遺伝子を導入するためのリポフェクションの使用は特定の実用上の利点を有し、また特定の細胞型にトランスフェクションを指示することは、例えば、膵臓、肝臓、腎臓及び脳などの細胞の不均質性を有する組織において特に有利であるだろう。脂質は標的化の目的のために他の分子に化学的に連結されてよい。標的化ペプチド、例えば、ホルモン又は神経伝達物質及び、抗体を例とするタンパク質又は非ペプチド分子は、化学的にリポソームに連結され得る。他の分子もまたインビボにおける核酸のトランスフェクションを促進するために有用であり、例えばカチオン性オリゴペプチド(例えば、国際特許公報WO 95/21931)、DNA結合タンパク質由来のペプチド(例えば、国際特許公報WO 96/25508)、又はカチオン性ポリマー(例えば、国際特許公報WO 95/21931)がある。
【0081】
裸のDNAプラスミドとしてインビボでDNAベクターを導入することもまた可能である(米国特許第5,693,622号、第5,589,466号及び第5,580,859号を参照されたい)。治療目的のための裸のDNAベクターは当業者に既知の方法、例えばトランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、遺伝子銃の使用、又はDNAベクタートランスポーターの使用によって所望の宿主細胞内に導入され得る(例えば、Wilsonらの論文(1992) J. Biol. Chem. 267:963-7; Wu及びWuの論文 (1988) J. Biol. Chem. 263:14621-4; Hartmutらによって1990年3月15日に出願されたカナダ特許出願第2,012,311号; Williamsらの論文(1991). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2726-30を参照されたい)。受容体介在性DNA送達アプローチもまた使用され得る(Curielらの論文(1992) Hum. Gene Ther. 3:147- 54; Wu及びWuの論文, (1987) J. Biol. Chem. 262:4429-32)。
【0082】
本発明はまた、GPCRの拮抗薬及び/又は逆作動薬として同定された化合物を含む生物学的適合性組成物、及び先に記載されたような発現阻害剤を提供する。
生物学的に適合性を有する組成物は、固体、液体、ゲル、又は他の形態であることもある組成物であり、組成物中に本発明の化合物、ポリヌクレオチド、ベクター及び抗体が、活性な形態、例えば、生物学的活性に影響を与え得る形態で維持される。例えば本発明の化合物は、GPCR上で逆作動薬活性又は拮抗薬活性を有し;核酸は複製、伝達内容の翻訳、又はGPCRの相補的mRNAにハイブリダイズすることができ;ベクターは標的細胞にトランスフェクト、及び先に記載されたようなアンチセンス、抗体、リボザイム又はsiRNAを発現することができ;抗体はGPCRポリペプチドドメインに結合するであろう。
【0083】
好ましい生物学的適合性組成物は、例えば、トリス、リン酸、又は塩イオンを含むHEPESバッファーを用いて緩衝化された水溶液である。通常、塩イオン濃度は生理的レベルに近いであろう。生物学的適合性溶液は、安定剤及び保存料を含んでよい。さらに好ましい実施態様において、生体適合性組成物は、医薬として許容し得る組成物である。そのような組成物は、局所的経路、経口経路、非経口経路、鼻腔内経路、皮下経路、及び眼球内経路による投与のために製剤され得る。非経口投与は、静脈内注射、筋肉内注射、動脈内注射、又は融合技術を含んだものを意味する。組成物は、標準的で周知の非毒性の生理的に許容し得るキャリアー、所望のアジュバント、及び賦形剤を含む用量単位製剤で非経口的に投与されてよい。
【0084】
本組成物発明の特に好ましい実施態様は、医薬として許容し得るキャリアーとの混合物中の、先に記載したような治療的有効量の発現阻害剤を含む認識強化医薬組成物である。別の好ましい実施態様は、認識機能障害を伴う病気又は該病気への感受性の治療又は予防のための医薬組成物であり、医薬として許容し得るキャリアーとの混合物中の、効果的にアミロイドベータペプチドを阻害する量のGPCR拮抗薬又は逆作動薬、それらの医薬として許容し得る塩、水和物、溶媒和物、又はプロドラッグを含む。そのような組成物の特に好ましいクラスは、アリールオキシジチオウレア化合物を含む。
【0085】
経口投与用の医薬組成物は経口投与に適切な容量で、当業者に周知の医薬として許容し得るキャリアーを用いて製剤され得る。そのようなキャリアーは、医薬組成物が患者による摂取のために、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして処方されることを可能にする。経口使用のための医薬組成物は活性化合物と固形賦形剤とを混合し、結果としてできた混合物を任意に粉砕すること、及び所望ならば錠剤又は糖衣錠核を得るための適切な助剤を加えた後に、顆粒混合物を加工することによって調製することができる。適切な賦形剤は炭水化物又はタンパク質充填剤であり、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖;トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ、又は他の植物からのデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;アラビア及びトラガカントを含むゴム;及びゼラチン及びコラーゲンなどのタンパク質などである。所望ならば、崩壊剤又は安定剤には、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はアルギン酸ナトリウムなどのその塩などが添加されてよい。糖衣錠核は濃縮糖溶液などの適切な被覆剤と合わせて使用されてよく、また被覆剤はアラビアゴム、滑石、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物を含んでよい。染料又は色素を、製品識別のために錠剤又は糖衣錠の被覆剤に添加、又は活性化合物の量、すなわち用量を特徴付けてもよい。
【0086】
経口的に使用することができる医薬組成物は、ゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどの被覆剤から作られた軟らかい密封カプセルと同様に、ゼラチンから作られた押し込み型カプセルを含む。押し込み型カプセルは、ラクトース又はデンプンなどの充填剤又は結合剤、滑石又はステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、及び任意に安定剤と混合された活性成分を含み得る。軟らかいカプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、液体、又は安定剤を含む若しくは含まない液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁されてよい。
【0087】
好ましい無菌の注射製剤は、非毒性の非経口的に許容可能な溶剤又は希釈剤中の溶液若しくは懸濁液であり得る。医薬として許容し得るキャリアーの例は、生理食塩水、緩衝食塩水、等張食塩水(例えば、リン酸一ナトリウム又はリン酸二ナトリウム、ナトリウム、カリウム;塩化カルシウム又は塩化マグネシウム、若しくはそれらのような塩の混合物)、リンガー溶液、デキストロース、水、滅菌水、グリセロール、エタノール及びそれらの組み合わせであり、また1,3−ブタンジオール及び滅菌された固定油は、溶剤又は懸濁化剤として都合に合わせて用いられる。任意の無味の固定油が使用されることができ、合成モノグリセリド又は合成ジグリセリドを含む。オレイン酸などの脂肪酸もまた注入可能な製剤での使用を見出す。
【0088】
構成培地もまたヒドロゲルであることができ、ヒドロゲルは薬物吸収スポンジとして機能することができる親水性ポリアクリル酸ポリマーなどの任意の生体適合性又は非細胞毒性のホモポリマー若しくはヘテロポリマーから調製される。特にエチレン及び/又はプロピレン酸化物から得られたあるものは市販されている。ヒドロゲルは、例えば外科的介入の間、治療すべき組織の表面上に直接的に溶着され得る。
【0089】
本発明の医薬組成物の実施態様は、本発明のポリヌクレオチド阻害剤、及びポロクサマーといったトランスフェクションエンハンサーをコードする複製欠損型組換えウイルスベクターを含む。ポロクサマーの例は、市販のポロクサマー407(BASF, Parsippany, N.J.)及び非毒性の生体適合性ポリオールである。組換えウイルスを浸透させたポロクサマーは、例えば外科的介入の間、治療すべき組織の表面上に直接的に溶着されてもよい。ポロクサマーは低目の粘度を有しているので、本質的にヒドロゲルと同じ利点を有する。
【0090】
活性発現阻害剤はまた、コロイド薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)内又はマクロエマルジョン内で、例えば界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル、及びポリ−(メチルメタクリル樹脂)マイクロカプセル中にそれぞれ封入されてもよい。そのような技術は、レミングトンの薬学(1980)第16版, Osol, A.編に開示されている。
【0091】
徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性製剤の適切な例は抗体を含む固形の疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、マトリクスが、例えばフィルム又はマイクロカプセルなどの造形品の形態である。徐放性マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル樹脂)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸のコポリマー及びガンマ−エチル−L−グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン酢酸−ビニル、LUPRON DEPOT(商標)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー(乳酸−グリコール酸コポリマー、及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能なミクロスフェア)、及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン−酢酸ビニル及び乳酸−グリコール酸などのポリマーは100日間を超えて分子の放出が可能であるが、特定のヒドロゲルはより短い期間でタンパク質を放出する。封入された抗体が体内で長期間保持された場合、それらは37℃で水分にさらされた結果として分解又は凝集するかもしれず、生物学的活性の喪失及び免疫原性の変化の可能性をもたらす。合理的な方法は関与する機構次第で安定を図るために工夫され得る。例えば凝集機構がチオ−ジスルフィド交換を介した分子内S−S結合形成であることが発見されたならば、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、含水率の制御、適切な添加剤の使用及び特定のポリマーマトリクス組成物の開発によって安定化を達成してよい。
【0092】
本発明はまた、アミロイドベータ前駆体タンパク質の異常なプロセシングに苦しむ又は感受性である対象における、前記タンパク質のプロセシングを阻害する方法を提供し、方法は前記対象への治療的有効量の本発明の発現阻害剤の投与を含む。本方法発明の別の態様は、認識機能障害を伴う病気又は該病気に対する感受性の治療若しくは予防である。本発明の特別な実施態様は病気がアルツハイマー病である場合の方法である。
【0093】
先に定義されたように、治療的に有効な用量は、タンパク質、ポリヌクレオチド、ペプチド、又は症状若しくは病気を改善するその抗体、又は作動薬若しくは拮抗薬の量を意味する。そのような化合物の治療的有効性及び毒性は、例えば、ED50(集団の50%において治療的に有効な用量)及びLD50(集団の50%に対する致死用量)などの、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手順によって決定され得る。毒性効果対治療効果の用量比は治療指数であり、それはLD50/ED50の割合として表され得る。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトでの使用のための用量の範囲を策定することに用いられる。そのような化合物の用量は、ほとんど、あるいは全く毒性のないED50を含む血中濃度の範囲内にあることが好ましい。用量は、使用される剤形、患者の感受性、及び投与経路によってこの範囲内で変化する。
【0094】
任意の化合物について、治療的に有効な用量は、細胞培養アッセイ、又は通常マウス、ウサギ、イヌ若しくはブタの動物モデルのどちらかで最初に概算され得る。動物モデルもまた、好ましい濃度範囲及び投与経路を得るために使用される。そのような情報がそれから使用され、ヒトでの有効用量及び投与経路を決定することができる。正確な用量は、治療される患者を考慮してそれぞれの医師によって選択される。用量及び投与は、十分なレベルの活性成分を提供、又は所望の効果を維持するために調節される。考慮されてよいさらなる因子は、病状の重篤度、年齢、体重、及び患者の性別;食事、望まれる治療期間、投与方法、投与時間及び頻度、薬剤の組み合わせ、反応感受性、及び治療に対する耐性/反応を含む。長時間作用型医薬組成物は、特定の製剤の半減期及び除去率次第で、3〜4日毎、1週毎又は2週毎に投与されてよい。
【0095】
本発明に従った医薬組成物は様々な方法で対象に投与されてよい。それらは標的組織に直接的に加えられるか、カチオン性脂質と複合体を形成されるか、リポソーム内に包まれるか、又は当業者に既知の他の方法によって標的細胞へ輸送されてよい。所望の組織への局所的投与は、カテーテル、輸液ポンプ、又はステントでなされてよい。DNA、DNA/賦形剤複合体、又は組換えウイルス粒子は、治療部位に対する局所的に投与される。代替輸送経路は、これらに限定されないが、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、エアロゾル吸入、経口(錠剤、又は丸薬形態)、局所的輸送、全身的輸送、眼球輸送、腹腔内輸送、及び/又は髄腔内輸送を含む。リボザイム輸送及び投与の例は、Sullivanらの WO 94/02595において提供されている。
【0096】
本発明に従った抗体は、ボーラスのみとして送達、経時的に注入、又はボーラスとしての投与及び経時的な注入の両方で送達されてよい。当業者は、タンパク質用とは異なる製剤を、ポリヌクレオチド用に用いてよい。同様に、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの輸送は、特定の細胞、状態、位置などに特異的であろう。
【0097】
先に記載されたように、組換えウイルスを利用して、本発明で有用なポリヌクレオチド剤をコードするDNAを導入してもよい。本発明に従った組換えウイルスは、通常約10. sup.4〜約10. sup.14 pfuの間の用量の剤形で処方及び投与される。AAV及びアデノウイルスの場合、約10.sup.6〜約10. sup.11 pfuの用量が好ましく使用される。用語pfu(「プラーク形成単位」)はビリオン懸濁液の感染力に対応し、適切な培養細胞に感染させ、形成されたプラークの数を測定することによって決定される。ウイルス溶液のpfu力価を決定するための技術は、先行技術において十分に立証されている。
【0098】
本発明の別の態様は、対象において認識機能障害を伴う病態又は該病態への感受性を診断するための方法に関連し、生体サンプル中の配列番号:4〜6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの量を決定すること、及び該ポリペプチドの量を健康な対象のポリペプチド量と比較することを含み、このとき健康な対象と比較したポリペプチドの量の増加が病態の存在を示す。
【0099】
(実験セクション)
(実施例1):GPR3はアミロイドベータ1〜42のレベルを上昇させる
APPプロセシングを変化させる新規薬剤標的を同定するために、APPを過剰発現する安定細胞株を作成する。この安定細胞株は、pcDNA3.1にクローン化されたAPP770wtのcDNAをHEK293細胞にトランスフェクトし、続いて3週間、G418を用いて選抜することによって作成する。この時点でコロニーを選別し、安定なクローンを増幅させ、かつ分泌されたアミロイドベータペプチドのレベルをテストする。高レベルでアミロイドベータを分泌するクローンであるHEK293 APPwtを、薬剤標的を同定する実験のために選別する。これは、アデノウイルスcDNAライブラリーを用いてHEK293 APPwtに形質導入すること、及び結果として生じたアミロイドベータ1〜42のレベルの変化をELISAを介して測定することによって達成される。
【0100】
DMEM(10%FBS)中に、15000細胞/ウエル(384ウエルプレート)の細胞密度で、コラーゲン被覆されたプレートにまかれた細胞を、1μl又は0.2μlのアデノウイルス(それぞれ、120及び24の平均感染の多重度(MOI)に一致する)を用いて、24時間後に感染させる。その翌日、アデノウイルスを洗い流し、そしてDMEM(25mM Hepes;10%FBS)を該細胞に添加する。アミロイドベータペプチドを24時間蓄積させる。ELISAプレートは、バッファー42(表1)中において2.5μg/mlの濃度の捕捉抗体(JRF/cAbeta42/26)(M Mercken, Johnson and Johnson Pharmaceutical Research and Development, B-2340 Beerse, Belgiumから入手)を用いて一晩被覆することによって調製する。その翌朝にPBSを用いて余剰の捕捉抗体を洗い流し、それから該ELISAプレートを4℃でカゼインバッファー(表1を参照されたい)を用いて一晩ブロッキングする。ブロッキングバッファーの除去後速やかに30μlのサンプルをELISAプレートに移し、4℃で一晩インキュベートする。PBS−Tween20及びPBSを用いた多量の洗浄の後、30μlのワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識された検出抗体(ペルオキシダーゼラベリングキット, Roche)、JRF/AbetaN/25-HRP(M Mercken, Johnson and Johnson Pharmaceutical Research and Development, B-2340 Beerse, Belgiumから入手)をバッファーC(表1を参照されたい)で1/5000希釈し、そしてさらに2時間該ウエルに添加する。PBS−Tween20及びPBSを用いた洗浄による余剰の検出抗体の除去の後、HRP活性を、HRP酵素によって化学発光へと変換されるルミノール基質(Roche)の添加を介して検出する。
【表1】

【0101】
該アッセイの正当性を立証するには、無作為な力価の2種の臨床的PS1変異体及びBACEを伴うアデノウイルスの過剰発現が、アミロイドベータ1〜42の産生に及ぼす効果を、HEK293 APPwt細胞内で評価する。図2に示したように、全てのPS1及びBACEコンストラクトは、予測どおりアミロイドベータ1〜42レベルを誘導する。
【0102】
アデノウイルスGPCR cDNAライブラリーを下記のように構築した。GPCRの全長コード領域をカバーするDNAフラグメントを、プールされた胎盤及び胎児肝臓のcDNAライブラリー(InvitroGen)からのPCRによって増幅した。全てのフラグメントを、該内容が引用によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,340,595号に記載されるようなアデノウイルスベクター内へクローン化し、次にアデノウイルスが作成され、アデノウイルスは対応するcDNAを保持する。HEK293 APPwt細胞におけるアデノウイルスGPCRライブラリーのスクリーニングの間、GPR3の過剰発現はHEK293 APPwt細胞の馴化培地中のアミロイドベータ1〜42ペプチドのレベルの上昇をもたらす。これらの結果はGPR3がAPPプロセシングのモジュレーターとして同定されたことを示す。
【0103】
GPR3の刺激効果を、定量的リアルタイムPCRで決定したとおりの既知の力価(ウイルス粒子/ml)を有するウイルスの再スクリーニング時に確認する。GPR3ウイルスを2〜250の範囲のMOIで感染させ、そして実験を先に記載されたように実行する。アミロイドベータ1〜42のレベルは、Ad5/GPR3に対するネガティブコントロールに比較して2倍高い(図3A)。さらに、アミロイドベータ1〜40、11〜42、1−x及びy−42のレベルへのGPR3の効果を、上記と同様な条件下でチェックする(図3B〜3E)。それぞれのELISAは、下記の抗体を使用したことを除いては先に記載されたように実行する:アミロイドベータ1〜40ELISAに対しては、捕捉及び検出抗体はそれぞれJRF/cAbeta40/10、及びJRF/AbetaN/25-HRP (M Mercken, Johnson and Johnson Pharmaceutical Research and Development, B-2340 Beerse, Belgiumから入手)、アミロイドベータ11〜42ELISAに対しては、捕捉及び検出抗体はそれぞれJRF/cAbeta42/26及びJRF/hAb11/1(M Mercken, Johnson and Johnson Pharmaceutical Research and Development, B-2340 Beerse, Belgiumから入手)、アミロイドベータy−42ELISAに対しては(yは1〜17の範囲)、捕捉及び検出抗体はそれぞれJRF/cAbeta42/26及び4G8-HRP(それぞれ、M Mercken, Johnson and Johnson Pharmaceutical Research and Development, B-2340 Beerse, Belgium、及びSignet, USAから得られる)、さらにアミロイドベータ1−x ELISAに対しては(xは24〜42の範囲)、捕捉及び検出抗体はそれぞれJRF/AbetaN/25及び4G8-HRP(それぞれM Mercken, Johnson and Johnson Pharmaceutical Research and Development, B-2340 Beerse, Belgium、及びSignet, USAから得られる)である。アミロイドベータ1−x ELISAは、可変C末端(アミロイドベータ1〜37;1〜38;1〜39;1〜40;1〜42)を用いたアミロイドペプチドの検出のために使用する。これらの実験結果は、GPR3の形質導入直後の、アミロイドベータ1〜40、11〜42、y−42及び1−x種の増加を明らかに示す(図3B〜3E)。同手順は、GPR6及びGPR12によるAPPプロセシングの解析のために使用する。
【0104】
(実施例2):GPR3類似体の同定
ヒトGPR3受容体のアミノ酸配列は、GPR3の最も近い類似体を見つけるために、全てのヒトGPCRに対して、BLASTサーチにおける問い合わせ(query)として使用した。表2(配列番号:5〜6)は、2つの最も近いGPR3受容体である。ClustalWを用いて配列比較を構築して、GPR3とその最も近い類似体であるGPR6並びにGPR12との間の相同性の度合いを示した(図5)。
【表2】








【0105】
(実施例3):GPCR発現のノックダウンによるアミロイドベータペプチドの減少
拮抗薬の効果は、標的タンパク質の発現レベルの減少をもたらすsiRNAに基づいた方法の使用を介して模倣し得る。例えば、GPR3 siRNAを用いたトランスフェクションはアミロイドベータ1〜42を減少させる。
オリゴフェクタミンと共に、GPR3(Dharmacon, USA:表3)、eGFP、ルシフェラーゼ及びBACEのsiRNAのスマートプールを用いて、HEK293 APPwt細胞をトランスフェクトさせる。トランスフェクション後24時間で培地を新しくし、該細胞は先に記載したように、ELISA解析に先立つ24時間の間、馴化培地中でアミロイドベータペプチドを蓄積することが可能になる。データは、GPR3 RNAレベルに対して標的化されたsiRNAは、コントロール条件に比較してアミロイドベータ1〜42レベルを減少させることを明らかに示す(図4)。結論として、これらのデータは、GPR3が分泌されるアミロイドベータのレベルを調節することを示す。同手順は、GPR6及びGPR12によるAPPプロセシングの解析に対して用いる。
【表3】

【0106】
(実施例4):ヒト脳におけるGPR3の発現
APPプロセシングのモジュレーターの同定の際、モジュレーターが関心を引く組織及び細胞で発現しているかどうかを検討することは重要である。これは組織並びに細胞における、RNA及び/又はタンパク質レベルを測定することによって達成され得る。近年、RNAレベルはリアルタイムPCR技術を使用して定量され、それによってRNAは最初にcDNAへ転写され、続いて、関心を引くcDNAの増幅がPCR反応の間監視される。増幅プロット及び結果のCt値は、サンプル中に存在するRNA量についての指標である。ハウスキーピング遺伝子のレベルの決定は、異なるRNAサンプル間での標的遺伝子のRNAレベルの標準化を可能にし、ΔCt値として表される。
【0107】
本発明のGPCRがヒト脳で発現しているかどうかを調査するには、GAPDH特異的プライマー及び本発明のそれぞれのGPCRのための特異的プライマーを用いたリアルタイムPCRを、ヒト全体脳、ヒト大脳皮質、及びヒト海馬のトータルRNA(BD Biosciences)で実行する(表4を参照されたい)。
【表4】

【0108】
他のGPCRにはサイバーグリーン(SybrGreen)を用いたのに対し、GAPDHはタックマン(Taqman)プローブで検出する。手短に言うと、40ngのRNAを、MultiScribe Reverse Transcriptase(50U/μl)酵素(Applied BioSystems社)を用いてDNAへと逆転写させる。結果として生じたcDNAを、ABI PRISM(登録商標)7000配列検出システムを使用し、40サイクルの間に、AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(Applied BioSystems社)を用いて増幅させる。
【0109】
全体脳、大脳皮質、及び海馬のトータルRNAを、定量的リアルタイムPCRを使用してGPCR転写産物が存在するか解析する。GPR3に関して、得られたCt値は、全てのRNAサンプルにおいてGPR3が検出されたことを示す(表5)。
特異的な細胞性発現へのさらなる洞察を得るために、免疫組織化学(タンパク質レベル)及び/又はインサイチュウハイブリダイゼーション(RNAレベル)を、ヒト正常並びにアルツハイマーの脳海馬、皮質及び皮質下構造からの切片で実行する。これらの結果は、発現が、神経細胞、マイクログリア細胞、又はアストロサイトで起こるかどうかを示す。疾患組織と健康組織との比較は、GPR3が疾患組織で発現しているか、かつその発現レベルが、非病的状況に比較して変化しているかを示す。同手順は、GPR6及びGPR12の発現プロファイリングに対して使用する。
【表5】

【0110】
(実施例5):ラット初代神経細胞におけるアミロイドベータ産生
実際のニューロンにおいて、GPR3がアミロイドベータ産生に影響するかどうかを調べるために、ヒト又はラットの初代海馬若しくは皮質ニューロンに、GPR3 cDNAを含むアデノウイルスを用いて形質導入する。アミロイドベータのレベルをELISAで決定する(実施例1を参照されたい)。齧歯類のAPP遺伝子は、該ヒト配列に比較してAPP中に多くの突然変異を有しているため、齧歯類のAPP遺伝子はより少ないアミロイドベータ1〜40及び1〜42を産生する。より高いアミロイドベータレベルを達成するために、GPR3と、ヒト野生型APP又はヒトスウェーデン変異型APP(これはアミロイドベータ産生を増幅する)cDNAとの共形質導入を実行する。
【0111】
ラット初代ニューロン培養は、Goslin及びBanker(神経細胞培養, 第2版, 1998 ISBN 0−262-02438-1)に従って、E18〜E19日齢の胎児スプラーグダウリー(Sprague Dawley)ラットの脳から調製する。手短に言うと、海馬又は皮質から得られた単個細胞浮遊液を調製する。生存細胞の数を決定し、10%ウマ血清を添加した最小必須培地(MEM)中で、ポリ−L−リジンで被覆されたプラスチック製96ウエルプレート上にまく。該細胞は、ウエル当たり50,000細胞の密度(すなわち、約166,000細胞/cm)でまく。3〜4時間後、培地をB27サプリメント(GIBCO BRL社)を含む160μlの無血清神経基礎培地に交換する。シトシンアラビノシド(5μM)をまいた24時間後に添加して、非神経性(グリア)細胞増殖を防ぐ。
【0112】
まいた5日後にニューロンを使用する。アデノウイルス形質導入前に、これらの培地の150μlの馴化培地を空の96ウエルプレートの対応するウエルに移し、そして50μlの該馴化培地を該細胞に戻す。残りの100μl/ウエルは、37℃かつ5%COで保存する。海馬初代神経培養細胞を、250〜2000の範囲にわたるそれぞれ異なるMOIで、GPR3、LacZ、eGFP、及びルシフェラーゼのcDNAを含む、Ad5C09Att00/A011200-GPR3_v3ウイルス、Ad5C09Att00/A010801-LacZ_v1ウイルス、Ad5C09Att00/A010800-eGFP_v1ウイルス並びにAd5C09Att00/A010800-luc_v17ウイルスの粗溶解物で感染させる。さらに該細胞はまた、2000のMOIでヒト野生型APP695を発現する精製アデノウイルスAd5C0lAtt01/A010800 APP_v6で感染させる。形質導入後16〜24時間でウイルスを取り除き、培養細胞を100μlの予め温めた未使用神経基礎培地で洗浄する。該洗浄溶液の除去後、50μlの保存されていた馴化培地及び50μlの未使用神経基礎培地を含む新しい培地を対応する細胞に移す。培地は48〜72時間後に回収した。該ウエル内の細胞数は、ATPレベルを調査することによって決定した。アミロイドベータ濃度は、アミロイドベータ1〜42に特異的なELISA(実施例1を参照されたい)によって決定した。アミロイドベータ1〜42のレベルを細胞数に対して標準化する。
データ(図6)は、初代ニューロンにおけるGPR3の過剰発現の増加レベルによって、ネガティブコントロールウイルスに比較して、アミロイドベータの1〜42レベルが用量依存的に増加して対応したことをはっきりと示している。
【0113】
(実施例6):GPCRに対するリガンド選別
(レポーター遺伝子選別)
HEK293細胞又はCHO−K1細胞などの哺乳動物細胞は、cAMP依存性プロモータ(CREエレメント)の制御下にルシフェラーゼ遺伝子を保持しているプラスミドを用いて安定的にトランスフェクトするか、又はcAMP依存性プロモータの制御下でルシフェラーゼ遺伝子を保持しているアデノウイルスを用いて形質転換するかのどちらかである。さらに、レポーターコンストラクトを、ルシフェラーゼ遺伝子と共に、Ca2+依存性プロモータ(NF−ATエレメント)の制御下又はNF−κBによって制御されるプロモータの制御下で使用することができる。該レポーターコンストラクトを発現しているこれらの細胞をそれから、本発明のGPCRのcDNAを保持しているアデノウイルスを用いて形質導入する。形質導入40時間後、該細胞を以下を用いて処理する:
a)受容体に対する作動薬(例えば、スフィンゴシン−1−リン酸)、及びペプチド(LOPAP, Sigma Aldrich社)、脂質(Biomol, TimTech社)、炭水化物(Specs)、天然化合物(Specs, TimTech社)、小さな化合物(Tocris)、市販のスクリーニングライブラリー、並びに配列番号:4〜6、289〜333からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに結合親和性を有することが実証された化合物を含む対照化合物の多数のコレクションに対して選別された作動薬であって、アリールオキシジチオウレア(米国特許第6,420,563号を参照されたい)、その塩、水和物、又は溶媒和物を含む化合物を含む作動薬、又は、
b)GPR3が構成的に活性なGPCRであると考えられる場合においてのみ、ペプチド(LOPAP, Sigma Aldrich社)、脂質(Biomol, TimTech社)、炭水化物(Specs)、天然化合物(Specs, TimTech社)、小さな化合物(Tocris)、市販のスクリーニングライブラリー、及び配列番号:4〜6、289〜333からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに結合親和性を有することが実証された化合物を含む対照化合物の多数のコレクションであって、アリールオキシジチオウレア(米国特許第6,420,563号を参照されたい)、その塩、水和物、又は溶媒和物を含む化合物を含む対照化合物の多数のコレクション。
【0114】
作動薬が誘導したルシフェラーゼ活性又は構成的活性の増加を減少させる化合物は、GPR3への拮抗薬又は逆作動薬であると考えられる。これらの化合物を検証のために再び選別し、分泌されるアミロイドベータペプチドのレベルへのそれらの効果に対して選別する。該化合物をまた選別し、GPCRに結合することを証明する。該結合、アミロイドベータペプチド及びレポーター活性アッセイを実質的に任意の順番で実行し、化合物を選別することができる。
【0115】
さらに、NF−ATレポーター遺伝子を発現している細胞は、G15のα−サブユニット、又はキメラのGαサブユニットをコードするcDNAを保持しているアデノウイルスを用いて形質導入することができる。G15は、多くの異なるGPCRに共役するGクラスに属する、何にでも結合する(promiscuous) Gタンパク質であり、そのようなものとして、GPCRのシグナル伝達を細胞内Ca2+貯蔵の放出に向け変更する。キメラのGアルファサブユニットは、その最後の5個のC末端残基がGαqのC末端残基と置換されたG及びGi/oファミリーのメンバーであり、これらのキメラのGタンパク質もまたcAMPシグナル伝達をCa2+シグナル伝達に変更する。
【0116】
(FLIPR選別)
HEK293細胞又はCHO−K1細胞などの哺乳動物細胞に、本発明のGPCRのcDNAを保持する発現プラスミドコンストラクトを用いて安定的にトランスフェクトする。十分に安定な細胞を得ることができるまで、細胞をまき、成長させ、選別する。細胞はFura3又はFura4などのCa2+依存性蛍光物質と共にロードする。余剰の蛍光物質を洗い流した後、該細胞へ同時に作動薬(あるいは、該受容体の構成的活性が使用されている場合には、作動薬を添加する必要はない)及び化合物を添加することによって、ペプチド(LOPAP, Sigma Aldrich社)、脂質(Biomol, TimTech社)、炭水化物(Specs)、天然化合物(Specs, TimTech社)、小さな化合物(Tocris)、市販のスクリーニングライブラリー、及び配列番号:4〜6、289〜333からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに結合親和性を有することが実証された化合物を含み、アリールオキシジチオウレア(米国特許第6,420,563号を参照されたい)、その塩、水和物、又は溶媒和物を含む化合物含む、対照化合物の多数のコレクションを対照に、該細胞を選別する。該受容体の活性化は、放出される蛍光物質とCa2+との相互作用に起因するほとんど瞬間的な蛍光の増加として測定する。作動薬によって誘導される蛍光の増加(又は構成的な蛍光)を減少させる又は阻害する化合物は、それらを選別するのに対照する受容体に対する拮抗薬又は逆作動薬であると考えられる。これらの化合物を再び選別し、GPCRへの結合と同様に、分泌されるアミロイドベータペプチドの量を測定する。
【0117】
(Aequo選別)
安定的にアポエクオリン(Apoaequorin)を発現しているCHO細胞に、GPCRのcDNAを保持しているプラスミドコンストラクトを用いて安定的にトランスフェクトする。十分に安定な細胞が得られることができるまで、細胞をまき、成長させ、選別する。該細胞をアポエクオリンの補因子であるセレンテラジン(coelenterazine)とともにロードする。受容体活性化の直後に細胞内Ca2+貯蔵は枯渇し、そしてエクオリン(aequorin)は発光プロセスにおいてセレンテラジンと反応する。該細胞に同時に作動薬(あるいは、該受容体の構成的活性が使用されている場合には、作動薬は添加する必要はない)及び化合物を添加することによって、ペプチド(LOPAP, Sigma Aldrich)、脂質(Biomol, TimTech)、炭水化物(Specs)、天然化合物(Specs, TimTech)、小さな化合物(Tocris)、市販のスクリーニングライブラリー、及びアリールオキシジチオウレア(米国特許第6,420,563号を参照されたい)、その塩、水和物、又は溶媒和物を含む化合物を含む配列番号:4〜6、289〜333からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに対して結合親和性を有することが実証された化合物を含む、対照化合物の多数のコレクションを対照に、アポエクオリン及び該受容体の両方を安定的に発現しているCHOを選別する。該受容体の活性化を、アポエクオリン、セレンテラジン、及び放出されるCa2+の相互作用に起因する、ほとんど瞬間的な発光として測定する。作動薬が誘起する光、又は構成的活性の増大を低下若しくは阻害する化合物は、それらが選別された該受容体に対する拮抗薬又は逆作動薬であると考えられる。これらの化合物を再び選別し、該GPCRへの結合に加えて、分泌されるアミロイドベータペプチドの量を測定する。
【0118】
さらに、安定的にアポエクオリン遺伝子を発現しているCHO細胞を、G15のαサブユニット、又はキメラのGαサブユニットをコードしているcDNAを保持するプラスミドコンストラクトを用いて、安定的にトランスフェクトさせる。G15は、多くの異なるGPCRに共役するGクラスに属する、何にでも結合する(promiscuous) Gタンパク質であり、そのようなものとして、GPCRのシグナル伝達を細胞内Ca2+貯蔵の放出に向け変更する。キメラのGアルファサブユニットは、その最後の5個のC末端残基がGαqのC末端残基と置換するG及びGi/oファミリーのメンバーであり、これらのキメラのGタンパク質もまたcAMPシグナル伝達をCa2+シグナル伝達に変更する。
【0119】
(GPCRポリペプチドに結合する化合物のスクリーニング(置換実験))
化合物はGPCRポリペプチドへの結合について選別する。GPCRポリペプチドへの化合物の親和性は置換実験で決定する。手短に言うと、GPCRポリペプチドは、GPCRポリペプチドに結合することが既知である標識された(放射性同位体で標識された、蛍光標識された)リガンド(例えば、スフィンゴシン−1−リン酸、又はジヒドロスフィンゴシン−1−リン酸)、及びラベルされていない化合物と共にインキュベートする。GPCRポリペプチドからの標識されたリガンドの置換は、現在GPCRポリペプチドに結合している標識されたリガンドの量を測定することによって決定する。GPCRポリペプチドに結合した量は化合物の濃度に対してプロットし、IC50値を計算する。この値は、その標的、すなわち化合物のGPCRポリペプチドへの結合親和性を反映する。強力な結合剤は、ナノモラー及びピコモラーの範囲においてさえIC50を有する。少なくとも10マイクロモル又はそれ以下の(nmolからpmol)のIC50を有する化合物をベータアミロイド分泌アッセイに適用し、ベータアミロイド分泌及びプロセシングにおけるそれらの効果をチェックする。GPCRポリペプチドは、アッセイが細胞、細胞画分又は生化学的に精製されたタンパク質のどれで行われるかによって多くの方法で調製可能である。
【0120】
(GPCRポリペプチドに結合する化合物のスクリーニング(一般的なGPCRスクリーニングアッセイ))
Gタンパク質受容体が構成的に活性になる場合、それはGタンパク質(Gq、Gs、Gi、Go)に結合し、Gタンパク質へのGTPの結合を促進する。Gタンパク質はそれからGTPaseとして機能し、GTPをGDPへとゆっくりと加水分解し、それによって通常条件下の該受容体は不活化された状態になる。しかしながら、構成的に活性化された受容体はGDPからGTPへの交換を続ける。GTPの非加水分解性類似体である[35S]GTPγSを用いて、構成的に活性化された受容体を発現する膜への促進された結合をモニターすることができる。[35S]GTPγSを用いて、リガンド不在及び存在下で膜に共役するGタンパク質をモニターすることができることが報告されている。さらに、好ましいアプローチは、GPCR−Gタンパク質融合タンパク質の使用である。GPR3−Gタンパク質融合タンパク質を産生するための方法は当業者に周知である。GPR3−Gタンパク質融合タンパク質を発現している膜を、逆作動薬などの候補化合物の直接的な同定における使用のために調製する。ホモジナイズされたGPR3−Gタンパク質融合タンパク質を有する膜を、96ウエルプレート中に移す。ピンツール(pin-tool)を使用して候補化合物を[35S]GTPγSを加えたそれぞれのウエルに移し、続いて室温で60分間、シェーカー上でインキュベーションする。該アッセイは、22℃で15分間、4000RPMで該プレートを回転させることによって停止させる。該プレートをそれから吸引し、続いて放射活性を読み取る。同手順をGPR6及びGPR12の解析に用いる。
【0121】
(細胞表面上での受容体リガンド結合調査)
受容体は、アデノウイルス形質導入細胞(米国特許第6,340,595号)によって、哺乳動物細胞(HEK293、CHO、COS7)で発現させる。該細胞を、10pM〜10μMにわたる範囲の様々な濃度で、標識されたリガンド(ヨウ素化された、トリチウム化された、又は蛍光)、及びラベルされていない化合物の両方と共にインキュベートする(4℃で3時間:pH7.4に調整した、25 mM HEPES, 140 mM NaCl, 1 mM CaCl2, 5 mM MgCl2 及び0.2% BSA)。反応混合物を、細胞収穫機(Packard)を用いてPEI処理したGF/Bガラスフィルター上に吸引する。該フィルターを、氷冷洗浄バッファー(pH7.4に調整した、25 mM HEPES, 500 mM NaCl, 1 mM CaCl2, 5 mM MgCl2)で2回洗浄する。シンチラント(Scintillant)(MicroScint−10; 35 μl)を乾いたフィルターに加え、そして該フィルターを(Packard Topcount)シンチレーションカウンターで計測する。データをプリズムソフトウエア(GraphPad Software, San Diego, Calif)を用いて解析し、プロットする。競合曲線を解析し、かつIC50値を計算する。1以上のデータ点が、競合曲線のシグモイド範囲内、又は該シグモイド範囲の近傍にこない場合、該アッセイを繰り返し、そして標識されたリガンド及びラベルされていない化合物の濃度を、該曲線のシグモイド範囲内又はその近傍により多くのデータ点を有するように適合化させた。
【0122】
(膜画分についての受容体リガンド結合調査)
膜分画は下記のように行い、受容体を過剰発現している哺乳動物細胞(HEK293、CHO、COS7)から単離する:培地を該形質導入細胞から吸引し、そして細胞を穏やかに剥離することによって1×PBS中に収集する。細胞を沈殿させ(2500rpm、5分)、そして50mMトリスpH7.4に再懸濁した(10×10細胞/ml)。該細胞沈殿物は、5秒で3回超音波処理することによって(UP50H; sonotrode MSl; 最大振幅: 140 μm; 最大超音波密度: 125W/cm2)ホモジナイズする。膜画分を、最大速度(13000〜15000から20000g、又はrcf)で20分遠心分離することによって調製する。結果として生じた沈殿物を500μlの50mMトリスpH7.4に再懸濁し、そして再び5秒で3回超音波処理した。該膜画分を遠心分離によって単離し、そして最終的にPBS中に再懸濁した。結合競合及びIC50値の導出を、先に記載したように決定する。
【0123】
(内在化選別(1))
GPCR関連性シグナル転換経路の活性化は一般的に、細胞質から原形質膜、又は細胞質から核への特定のシグナル転換分子の転移を導く。Norak社は、細胞質から原形質膜への受容体−β−アレスチン−GFP複合体の作動薬誘導性転移、及びそれに続く受容体脱感作の間に起こるこの複合体の内在化に基づいて、自社のトランスフロー(transfluor)アッセイを発展させてきた。同様なアッセイは、β−アレスチンの代わりにGFP標識された受容体を用いる。HEK293細胞を、GPR3−eGFP融合タンパク質を翻訳するGPR3−eGFPベクターを用いて形質導入する。形質導入後48時間で、該細胞を60分間、未使用無血清培地に置き、37℃かつ5%COで15分間、30分間、60分間又は120分間リガンド(例えば、100nMスフィンゴシン−1−リン酸)で処理する。表示の曝露時間後、細胞をPBSで洗浄し、そして室温で20分間、5%パラホルムアルデヒドを用いて固定する。GFP蛍光を、デジタルカメラがついたツァイス(Zeiss)顕微鏡で可視化する。この方法は、細胞内区画への該融合タンパク質のリガンド介在性(構成的活性仲介型)転移を阻害する化合物の同定を目的とする。同手順は、GPR6及びGPR12の解析に用いる。
【0124】
(内在化選別(2))
β−アレスチン及びβ−ガラクトシダーゼ酵素相補性、並びにエネルギードナーとしての受容体及びエネルギーアクセプターとしてのβ−アレスチンを有するBRETに基づいたアッセイを使用することで、転移アッセイには様々なバリエーションが存在する。またpH感受性色素を用いて標識された特異的受容体抗体の使用は、作動薬によって誘導された酸性リソソームへの受容体転移を検出するために使用する。それらの転移アッセイの全ては、作動薬性及び拮抗薬性作用リガンドの両方のスクリーニングのために使用する。
【0125】
(メラニン細胞アッセイ(Arena Pharmaceutical社))
メラニン細胞アッセイは、ゼノパスメラノフォアズ(Xenopus melanophores)におけるメラノソームを含むメラニンの分布を変化させるGPCRの能力に基づいている。メラノソームの分布は、Gi/o又はGs/qのどちらかに共役する外因性受容体に依存する。メラノソームの分布(分散した又は凝集した)は、吸光度を測定することによって容易に検出される。このタイプのアッセイを、拮抗薬化合物選別と作動薬化合物選別の両方に用いる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1A】APPプロセシング:膜アンカー型アミロイド前駆体タンパク質(APP)は、2つの経路:アミロイド生成型及び非アミロイド生成型経路によって処理される。後者の経路において、APPは最初にアルファセクレターゼによって、次にガンマセクレターゼによって切断され、p3ペプチド(17〜40、又は17〜42)を生じる。アミロイド生成型経路は、それぞれベータ及びガンマセクレターゼによって切断された後、病原性アミロイドベータペプチド(Aベータ)を生じる。表示の数字はAベータ配列を含む、アミノ酸の位置である。
【図1B】GPCRタンパク質の膜貫通構造の絵描写。
【図2】APPプロセシングアッセイの評価:ポジティブ(PS1G384L; PS1L392V 及びBACE1)及びネガティブ(eGFP, LacZ、及び空)コントロールウイルスを、スクリーニングを模倣する無作為のMOIでHek293APPwt中で感染させる。A及びB:形質導入を、それぞれ1μl及び0.2μlのウイルスを用いて実行し、そしてアミロイドベータ1〜42レベルを測定する。データは相対的光単位として表現され、かつアミロイドベータ1〜42のpMに相関がある。
【図3】APPプロセシングにおけるGPR3の関与:HEK293 APPwt細胞を、Ad5/GPR3、及び異なったMOI(2、10、50、250)でネガティブコントロールウイルス(Ad5/空, Ad5/LacZ, Ad5/eGFP、及びAd5/ルシフェラーゼ)を用いて形質導入する。結果として生じたアミロイドベータ1〜42、1〜40、11〜42、x〜42、及び1〜xペプチドを、適切なELISAを用いて測定した。データはpM、又はアミロイドベータのpMに相関する相対的光単位(rlu)として表現される。
【図4】GPR3 siRNAを用いたトランスフェクションは、アミロイドベータ1〜42を減少させる:HEK293 APPwt cl29細胞は、GPR3、eGFP、ルシフェラーゼ、及びBACEのsiRNAを用いてトランスフェクトし、そしてアミロイドベータ1〜42レベルを測定した。細胞をトランスフェクトし、そしてトランスフェクションの24時間後に培地を新しくし、そして細胞は24時間(トランスフェクション後48時間(p.t.))の間、アミロイドベータが蓄積することが可能である。アミロイドベータは、先に記載されたように、アミロイドベータ1〜42ELISAの方法によって測定する。データはアミロイドベータのpMで表現される。GPR3のRNAレベルはこれらのサンプルから決定される。
【図5】GPR3、GPR6、及びGPR12のクラスタルWタンパク質配列比較。
【図6】異なるMOIで様々なタンパク質発現ウイルスを用いてトランスフェクトされたニューロンにおける、アミロイドベータペプチドレベルのグラフ。該グラフは、初代ニューロンにおけるGPR3過剰発現の増加したレベルが、ネガティブコントロールと比較したアミロイドベータ1〜42レベルの用量依存的増加に対応することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物細胞内で、アミロイドベータ前駆体タンパク質のプロセシングを阻害する化合物を同定するための方法であって、
(a)化合物を配列番号:4〜6、289〜333からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに接触させること;及び
(b)アミロイドベータタンパク質の産生に関連する化合物−ポリペプチド特性を測定することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、インビトロ無細胞調製において配列番号:289〜333を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペプチドが膜結合型である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、哺乳動物細胞内で膜貫通型細胞レセプターとして存在する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記特性が、前記化合物の前記ポリペプチドへの結合親和性である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記特性が、アミロイドベータ前駆体タンパク質のプロセシングの指標を産生する生物学的経路の活性化である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記指標が二次メッセンジャーである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記二次メッセンジャーが、サイクリックAMP、又はCa2+である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記指標がアミロイドベータペプチドである、請求項6の方法。
【請求項10】
前記アミロイドベータタンパク質が、1以上のアミロイドベータペプチド1〜42、1〜40、11〜42、及び11〜40からなる群から選択される、請求項9の方法。
【請求項11】
前記アミロイドベータタンパク質がアミロイドベータペプチド1〜42である、請求項10の方法。
【請求項12】
前記指標が、前記哺乳動物細胞内でレポーターの発現を誘導する、請求項6記載の方法。
【請求項13】
前記レポーターが、アルカリフォスファターゼ、GFP、eGFP、dGFP、ルシフェラーゼ、及びβ−ガラクトシダーゼからなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、市販のスクリーニングライブラリーの化合物からなる群、及び配列番号:4〜6、289〜333からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドへの結合親和性を有することが示されている化合物から選択される、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が、ファージディスプレーライブラリー、又は抗体フラグメントライブラリー中のペプチドである、請求項2記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が、アリールオキシジチオウレア、その塩、水和物、又は溶媒和物である、請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、及び低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択される、アミロイドベータ前駆体プロセシングを阻害するための作用物質であって、配列番号:4〜6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする天然のポリヌクレオチド配列に相補的な、又は該配列から設計された核酸配列を含む、前記作用物質。
【請求項18】
哺乳動物細胞内のベクターが前記作用物質を発現する、請求項17記載の作用物質。
【請求項19】
前記ベクターが、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペス単純ウイルスベクター、又はセンダイウイルスベクターである、請求項18記載の作用物質。
【請求項20】
前記アンチセンスポリヌクレオチド、及び前記siRNAが、センス鎖に対して相補的な17〜25ヌクレオチドのアンチセンス鎖を含み、このとき前記センス鎖が配列番号:4〜6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする天然の核酸の17〜25の連続したヌクレオチドから選択される、請求項17、18、又は19記載の作用物質。
【請求項21】
前記siRNAがさらに前記センス鎖を含む、請求項17〜20のいずれか1項記載の作用物質。
【請求項22】
前記センス鎖が、配列番号:1〜3からなる群から選択される核酸配列の17〜25の連続したヌクレオチドから選択される、請求項20記載の作用物質。
【請求項23】
前記siRNAがさらに、前記センス鎖と前記アンチセンス鎖とを連結するループ領域を含む、請求項17〜22いずれか1項記載の作用物質。
【請求項24】
前記ループ領域が、配列番号:288で定義される核酸配列を含む、請求項23記載の作用物質。
【請求項25】
前記作用物質が、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、又は配列番号:7〜287からなる群から選択される核酸配列を含むsiRNAである、請求項17〜24のいずれか1項記載の作用物質。
【請求項26】
医薬として許容し得るキャリアーとの混合物中に、治療的有効量の請求項17〜25のいずれか1項記載の作用物質を含む、認識促進医薬組成物。
【請求項27】
前記作用物質が、配列番号:7〜287からなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチド、前記核酸配列に相補的なポリヌクレオチド、及びそれらの組み合わせを含む、請求項26記載の認識促進医薬組成物。
【請求項28】
前記タンパク質の異常なプロセシングに苦しんでいる又は感受性である対象におけるアミロイドベータ前駆体タンパク質のプロセシングの阻害方法であって、前記対象に請求項26又は27記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項29】
認識機能障害を伴う病気、又は前記病気に対する感受性の治療又は予防のための、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記病気がアルツハイマー病である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
認識機能障害を伴う病気、又は該病気に対する感受性の治療又は予防のための医薬組成物であって、アミロイドベータ前駆体プロセシングを阻害するのに効果的な量のGPCR拮抗薬又は逆作動薬を含む、前記医薬組成物。
【請求項32】
前記GPCR逆作動薬が、医薬として許容し得るキャリアーとの混合物中において、アリールオキシジチオウレア、その医薬として許容し得る塩、水和物、溶媒和物、又はそれらのプロドラッグである、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
アミロイドベータ前駆体プロセシングの阻害用途の薬剤の調製のための、請求項17〜25のいずれか1項記載の作用物質の使用。
【請求項34】
認識機能障害を伴う病気、又は前記病気への感受性の治療又は予防用途の薬剤の調製のための、請求項17〜25のいずれか1項記載の作用物質の使用。
【請求項35】
認識機能障害を伴う病気、又は前記病気への感受性の治療又は予防のための、GPCR拮抗薬又は逆作動薬の使用。
【請求項36】
前記病気がアルツハイマー病である、請求項34又は35記載の使用。
【請求項37】
前記GPCR逆作動薬が、医薬として許容し得るキャリアーとの混合物中で、アリールオキシジチオウレア、その医薬として許容し得る塩、水和物、溶媒和物、又はそれらのプロドラッグである、請求項35又は36記載の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−533989(P2007−533989A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508855(P2007−508855)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004325
【国際公開番号】WO2005/103713
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(504064364)ガラパゴス・ナムローゼ・フェンノートシャップ (27)
【氏名又は名称原語表記】Galapagos N.V.
【Fターム(参考)】