説明

アミン−アミド官能性シロキサンの調製方法

【課題】アミン−アミド官能性シロキサンの調製方法を提供する。
【解決手段】本発明は、アミン−アミド官能性シロキサン、およびSiOH−官能性シロキサンを、カルボン酸無水物の存在下、アミノ官能性シランと化学反応させることによる、その調製方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アミン官能基で置換されたシロキサンは、繊維産業において繊維潤滑剤、洗濯用柔軟剤、または防しわ助剤としてしばしば使用されている。更にそれらは、パーソナルケア用途において、例えば髪のコンディショナーとして広く使用されている。
【背景技術】
【0002】
これとは対照的に、シロキサン骨格にアミン官能基だけでなくアミド官能基も更に結合しているシロキサンは、この種の化合物がアミド官能基の挿入の結果として特有の特性プロフィールを有するにもかかわらず、特許文献中では注目されていない。例えば、アミド官能基の挿入は粘度の著しい増大をもたらし、恐らく多くの用途の諸特性に大きな影響を及ぼすであろう。
【0003】
この種の化合物が使用されないのは、アミンおよびアミド混合官能性シロキサンの調製が複雑であるためであり、純粋なアミノシロキサンが出発原料として使用される場合、後続反応によって最初にアミド官能基をそのポリマー中に挿入しなければならない。
【0004】
純粋なアミノシロキサンの調製方法は、特許文献中に記載されている。
【0005】
例えば、米国特許第4,633,002号は、シラノール末端シロキサンを有機金属触媒の存在下でアミノ官能性シランと反応させるアミノシロキサンの調製方法について記載する。
【0006】
米国特許第5,391,675号は、末端シラノール官能性ポリシロキサン、アミン官能性シラン、および水酸化バリウムまたは水酸化ストロンチウムと、更にホウ酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウムとからなる触媒系を反応させるアミノシロキサンの調製方法について記載する。
【0007】
米国特許第7,238,768号は、アミン官能性シランを、カルボン酸およびシラノール官能性ポリシロキサンと反応させることによって調製されるアミノ官能性シロキサンについて記載する。その中で記載される反応は、鎖末端に縮合性基を備えたアミノシロキサンを生成する。それらは、OH官能基か、または炭素原子8〜30個を有するアルコキシ基のどちらかである。その中で記載され反応条件下ではアミド官能基は形成されない。
【0008】
国際公開第2009/06564号は、疎水性および親水性有機基に加えて、アミド官能基もまた有することができるシロキサンついて記載する。これらの構造は、ヒドロシリル化によって調製される。
【0009】
国際公開第2009/025151号は、ポリベンゾイミダゾールおよびポリベンゾキサゾール樹脂用の成分として好適なアミド基含有シロキサンについて記載する。
【0010】
国際公開第2004/072152号は、ヒドロシリル化を促進させる触媒の存在下で有機アミドを水素化物官能性ポリシロキサンと反応させるシロキサン系ポリアミドの調製方法について記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、アミン官能基を坦持するシロキサンとアミド官能基を坦持するシロキサンの特性プロフィールを良い意味で兼ね備えた新規な化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
アミン官能基に加えてアミド官能基も追加して有する、したがって特有の特性プロフィールを特徴とするシロキサンを見出した。
【0013】
したがって本発明は、アミンおよびアミド混合官能性シロキサンの簡単かつ迅速な合成を可能にする方法と、更にこの方法で調製されるアミンおよびアミド混合官能性シロキサンとを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
例えばアミド官能基の挿入は、純粋なアミノシロキサンと比べて高い粘度をもたらす。表面の吸収能もまたかなり変化し、それは応用特性が純粋なアミノシロキサンとは異なることを意味する。
【0015】
本発明の文脈において、アミン−アミド官能性シロキサンは、アミン官能基と、更にアミド官能基との両方で修飾された、また必要に応じて更に有機基で修飾されたシロキサンを意味するものと理解される。
【0016】
アミン−アミド官能性シロキサンを調製するには、カルボン酸無水物の存在下、かつ任意にアルコール、アミン、および/またはアルカノールアミンの存在下、40〜180℃の温度で、一般式IのSiOH−官能性シロキサンを、一般式IIのアミノ官能性シランと反応させる。
【0017】
この合成のための好適な方法は、一般式IのSiOH−官能性シロキサンを、一般式IIのアミノ官能性シランおよびカルボン酸無水物および任意のアルコール、アミン、および/またはアルカノールアミンと反応させることにある。
【0018】
OH (式I)
(式中、
OH=[HO−SiR1/2]、
D=[SiR2/2]、
T=[SiR3/2]、
Q=[SiO4/2]、
a=2〜10、好ましくは2〜4、特に2、
b=5〜150、好ましくは8〜80、特に10〜60、
c=0〜10、好ましくは0〜3、特に0、
d=0〜10、好ましくは0〜3、特に0、
=炭素原子1〜30個を有するアルキル基、炭素原子6〜30個を有するアリール基、炭素原子7〜30個を有するアルカリル(alkaryl:アルカリールともいう)基の群からの同一または異なる基、好ましくはメチル、エチル、またはフェニル基、特にメチル基である)。
【0019】
(RO)SiR (式II)
[式中、
e+f=3という条件で
e=0、1、または2、好ましくは0または1、特に1、
f=1、2、または3、好ましくは2または3、特に2、
=同一または異なる、炭素原子1〜30個を有するアルキル基、または炭素原子6〜30個を有するアリール基、または炭素原子7〜30個を有するアルカリル(alkaryl:アルカリールともいう)基、好ましくはメチル、エチル、またはフェニル基、特にメチルまたはエチル、
=少なくとも1個のアミノ官能基を坦持する同一または異なる有機基、特に、同一または異なる、一般式(III)の基である
−(CR[NR−(CRNR (式III)
(式中、
g=1〜6、好ましくは1〜3、特に1または3の同一または異なる整数、
h=0〜6、好ましくは0〜3、特に0または1の同一または異なる整数、
i=1〜6、好ましくは1〜3、特に2または3の同一または異なる整数、
=同一または異なる、炭素原子1〜12個を有するアルキル基、または炭素原子6〜12個を有するアリール基、または炭素原子7〜12個を有するアルカリル(alkaryl:アルカリールともいう)基、またはH、好ましくはメチルまたはH、特にH、
=同一または異なる、炭素原子1〜12個を有するアルキル基、または炭素原子6〜12個を有するアリール基、または炭素原子7〜12個を有するアルカリル(alkaryl:アルカリールともいう)基、またはH、好ましくはメチル、フェニル、ベンジル、またはH、特にHである)]。
【0020】
このSiOH−官能性シロキサンだけでなく、この反応によって形成される生成物もまた、ある一定の分子量分布を有するポリマーである。その結果、上記指数a、b、c、およびdは平均値に過ぎない。
【0021】
好ましいアミノ官能性シランの例は、(EtO)Si(CHNH、(MeO)Si(CHNH、Me(EtO)Si(CHNH、Me(MeO)Si(CHNH、(EtO)Si(CHNH(CHNH、(MeO)Si(CHNH(CHNH、Me(EtO)Si(CHNH(CHNH、Me(MeO)Si(CHNH(CHNH、(EtO)SiCHNH、(MeO)SiCHNHである。
【0022】
好適なカルボン酸無水物は、とりわけ直鎖もしくは分岐の飽和または不飽和アルキルカルボン酸の無水物、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、または無水イソノナン酸などである。環状無水物、例えば無水コハク酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸、グルタル酸無水物、無水フタル酸、またはヘキサヒドロフタル酸無水物などもまた、適している。
【0023】
特に、1または複数の単官能性または多官能性アルコール、第一または第二アミン、あるいはアミノアルカノールが、任意の成分として適している。
【0024】
この反応において、カルボン酸無水物が、アミノ官能性シランを介して導入されるアミノ基と共にアミド官能基を形成する。更に、遊離カルボン酸が形成される。例としてこの反応を、無水酢酸およびプロピルアミノ基を用いて製法スキーム1に図式的に示す。
【化1】


(製法スキーム1)
【0025】
更にこの反応の間に、一般式IIのシランのアルコキシ官能基が、一般式IのSiOH−官能性シロキサンのSiOH官能基と反応する縮合反応が起こる。例えばこれは、この反応の間にアルコールが形成されるという事実から理解することができる。例としてこの反応を製法スキーム2に図式的に示す。任意に使用される単官能性または多官能性アルコール、第一または第二アミン、あるいはアミノアルカノールもまた、水またはアルコールの脱離を伴って、シラノールまたはシランと縮合により反応することができる。
【化2】


(製法スキーム2)
【0026】
これらの反応に加えて、例えば水の形成を伴う2個のSiOH官能基の縮合などの更なる反応もまた起こる可能性がある。
【0027】
縮合反応の結果としてアミンおよびアミド官能基は、シロキサン骨格中に組み込まれる。すでにシロキサン骨格中に組み込まれているアミノ官能基を後にアミド化することもまた可能である。アミン官能基と、更にアミド官能基との両方を有し、かつ使用した一般式Iのシロキサンよりも高い平均分子量を有するシロキサンが形成される。
【0028】
分子量の増加はまた、反応混合物の粘度の増加から理解することができる。
【0029】
必要に応じて一般式IIのアミノ官能性シロキサンに加えて、例えば形成されるポリマー中に有機官能基を更に組み込むために、またはポリマー骨格中に分枝を組み込むために、反応混合物にジ−、またはトリ−、またはテトラアルコキシシランを更に加えることが可能である。好適なアルコキシシランは、例えばテトラエトキシシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシオクチルシラン、フェニルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、またはポリエチレングリコール官能性アルコキシシランである。
【0030】
縮合の間に、アミン−アミド官能性シロキサンを主として含有する組成物が形成される。したがって本発明は更に、本発明による方法によって入手可能な組成物を提供し、それは一般式IVのアミド−アミンシロキサンを含有する。
【0031】
ORM′D′T′ (式IV)
[式中、D、T、およびQは上記で定義したものと同様である。
OR=[ROSiR1/2]、
M=[RSiO1/2]、
M′=[RSiR1/2]、
D′=[SiR2/2]、
T′=[SiR3/2]、
=RまたはH、
=同一または異なる有機基であり、ただし、式IVの各分子は、統計的に、少なくとも1個の一般式IIIのアミン基および更に少なくとも1個の一般式Vのアミド基を担持し、
−(CR[NR−(CRNR (式III)
−(CR[NR−(CRNR (式V)
(式中、
=Rまたはカルボキシレート基であり、ただし、式V中の2個のR基の少なくとも一方がカルボキシレート基である)
j+kが2以上であるという条件で
j=0〜10、
k=0〜10、
l=10〜3000、好ましくは16〜2000、特に20〜800、
m=0〜20、好ましくは0〜6、特に0、
n=0〜20、好ましくは0〜6、特に0、
o+pが2以上であるという条件で
o=0〜10、
p=0〜20、好ましくは1〜15、特に2〜10、
q=0〜20、好ましくは1〜15、特に2〜10である]。
【0032】
具体的には本発明の方法の利点は、生成物が一つの合成ステップで形成される点にある。最初にアミン官能性シロキサンを調製し、続いて次にそれをアミド化する必要がない。
【0033】
この場合、反応時間は、反応温度の選択だけでなく、所望の変換率にも左右される。
【0034】
例えば揮発性反応生成物または反応副産物または溶媒画分を除去するために、一時的または完全な減圧下で反応を行うのが賢明な場合もある。少なくとも一時的には(at least at times)圧力500mbar未満、特に少なくとも一時的には300mbar未満で作業することが有利である。
【0035】
必要に応じて、反応中に圧力を1回または複数回変えること、また圧力プロフィールを実行することが有用である。したがって、例えば反応中にアルコールが形成され、それを反応混合物から減圧においてより容易に除去することができる。しかしながら蒸留による除去は、反応混合物の猛烈な泡立ちを引き起こす恐れがある。この場合、不連続的な反応手順の場合には、反応器からの反応塊の過剰な泡立ちが生ずる恐れがあるので、必要に応じてあまり低い圧力を選択しないことが有用である。
【0036】
出発材料の反応は、40〜180℃、好ましくは50〜140℃、特に60〜120℃で行われる。必要に応じて反応相の間に温度を変えることが有用であり、例えば温度プロフィールを時間の関数として、または変換率の関数として実行することができる。
【0037】
幾つかの例では出発材料を予熱し、それらを計量しながら一定の温度で反応器に供給することが有用である。
【0038】
必要に応じて、出発材料を一定の順序で計量しながら供給し、最初にそれらを別の反応物と反応させることが有用である。
【0039】
必要に応じて、溶媒の存在下で反応を行うことが有用な場合もある。溶媒によっては反応速度論に影響を及ぼすことが可能な場合もある。更に、溶媒の使用は、標的化した様式で反応混合物の粘度に影響を与えるのに有用な場合もある。好適な溶媒は、例えばトルエン、キシレン、ポリエーテル、または、例えば炭酸ジエチルヘキシルなどの炭酸エステルである。溶媒は、生成物中に残留しても、また蒸留によって更に除去されてもよい。
【0040】
本明細書中に記載する方法によるアミド−アミンシロキサンの調製については連続または半連続工程もまた適している。例えば、反応を撹拌槽反応器のカスケード中で行うことも、また流管(流通反応装置)中で行うこともできる。
【0041】
カルボン酸無水物とは別に、反応を触媒するために更に遊離カルボン酸を加えることも可能である。
【0042】
カルボン酸無水物の存在下における式IのSiOH−官能性シロキサンと式IIのアミノ官能性シランの反応では、ポリマー骨格が末端縮合性基を備えたアミド−アミンシロキサンが形成される。この場合、縮合性基は、ケイ素原子に結合したアルコキシまたはOH官能基である。必要に応じてこれらを、もはや縮合可能でない基に完全にまたは部分的に変換することが有用な場合もある。この目的を達成する一つの選択肢は、例えば単官能性トリアルキルアルコキシシラン(例えばトリメチルエトキシシランまたはトリメチルメトキシシランなど)の標的化付加反応により、またはビス(トリアルキルシリル)アミン(例えばビス(トリメチルシリル)アミンなど)の付加反応により、それらをトリアルキルシリル基に換える(シリル化)ことである。このシリル化剤の付加反応は、カルボン酸無水物の存在下でのSiOH−官能性シロキサンとアミノ官能性シランの反応の前、間、または後に行うことができる。
【0043】
したがって本発明は更に、カルボン酸無水物の存在下で温度40〜180℃において、一般式IのSiOH−官能性シロキサンを、一般式IIのアミノ官能性シラン、および一般式VIのトリアルキルアルコキシシランまたは一般式VIIのビス(トリアルキルシリル)アミンと反応させるアミド−アミン官能性シロキサンの調製方法を提供する。
Si(OR) (式VI)
(RSi)NR (式VII)
(式中、
=炭素原子1〜12個を有するアルキル基、または炭素原子6〜12個を有するアリール基、または炭素原子7〜12個を有するアルカリル(alkaryl:アルカリールともいう)基、またはH、好ましくはメチル、フェニル、ベンジル、またはH、特にHであり、
=炭素原子1〜30個を有する同一または異なるアルキル基、好ましくは炭素原子1〜8個を有するアルキル基、特にメチルまたはエチルである。)
【0044】
必要に応じて、例えばケイ素上でのアルコキシ官能基の加水分解を容易にするために、かつ/またはその加水分解速度を増すために反応混合物に水を加えることが有用な場合もある。
【0045】
SiOH−官能性シロキサンを基準にしたアルコキシシランの量は変えることができ、所望の改変度に応じて調整することができる。使用するSiOH−官能基を基準にしてアルコキシ官能基が過剰に使用される場合、残ったアルコキシ官能基が生成物中に残留し、ポリマーをそれらの鎖末端で終結させることが予想される。
【0046】
OH官能基が過剰に使用される場合、選択される反応条件によってはそれらが互いに更に縮合して水を形成する可能性があることが明らかになった。その場合、調製されたポリマーの分子量は、選択される反応条件にかなり左右される。
【0047】
上記のように方法がシリル化剤の使用を伴う場合、得られる生成物の分子量を標的化した様式で調整することができる。
【0048】
カルボン酸無水物の量は、使用するアミンの量を基準にして不足する量で使用される。本発明による方法ではアミノ官能性シラン/カルボン酸無水物の量比は、1/0.9〜1/0.02、好ましくは1/0.8〜1/0.04、特に1/0.6〜1/0.06である。
【0049】
本発明は更に、一般式IのSiOH−官能性シロキサンと、一般式IIのアミノ官能性シランおよび1または複数の単官能性または多官能性アルコール、および必要に応じてトリアルキルアルコキシシランまたはビス(トリアルキルシリル)アミンの、カルボン酸無水物の存在下での温度40〜180℃における反応を提供する。
【0050】
この場合、アルコールはSiOH−官能性シロキサンまたはアミノ官能性シランと縮合反応で反応してSiOC結合を形成する。アルコールの標的化付加反応により、アミン−アミドシロキサンの特性を標的化した様式で調整することができる。
【0051】
特に好適なアルコールは、脂肪アルコールおよびポリエーテルである。
【0052】
好適なポリエーテルは、スターター上へのモノマーの付加反応により得ることができ、スターターは好ましくはアルコール、アミン、アルカノールアミン、水、またはアンモニアである。スターターは、例えばメタノール、エタノール、1−ブタノール、ビスフェノールA、2−アミノエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、オリゴおよびポリグリセロール、1,3−ジヒドロキシプロパン、1,4−ジヒドロキシブタン、1,6−ジヒドロキシヘキサン、1,2,4−トリヒドロキシブタン、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、1,1,1−トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ペンタエリトリトールのオリゴマー、ポリカプロラクトン、キシリトール、アラビトール、ソルビトール、マンニトール、エチレンジアミン、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、ヒマシ油、またはフルクトースであることができる。
【0053】
好適なモノマーは、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ならびにテトラヒドロフラン、1,2−エポキシブタン(n−ブチレンオキシド)、2,3−エポキシブタン(イソブチレンオキシド)、およびドデシルオキシドを含む群から選択される化合物である。この場合、モノマーの分布は任意に選択することができ、例えばブロックが存在してもよい。更に、ユニットが、統計的分布で存在するか、または段階的に分布するポリエーテルが得られるような、モノマーの混合物を使用することも可能である。このようなポリエーテルはランダムに配列させることも、またブロック構造を有することもできる。
【0054】
カルボン酸無水物の存在下での一般式IのSiOH−官能性シロキサンと、一般式IIのアミノ官能性シラン、および必要に応じてトリアルキルアルコキシシランまたはビス(トリアルキルシリル)アミンの反応に単官能性アルコールを加えることによって、その単官能性アルコールが鎖末端を形成するので、例えば縮合生成物の分子量を標的化した様式で調整することが可能である。これに反して二官能性アルコールは、縮合によって完全に組み込まれるとポリマー骨格中で線状セグメントを形成する。更に高い官能性を有するアルコールは、ポリマー骨格中で分枝を生じさせる。更に、得られるアミノ官能性ポリマーの親水性または疎水性がかなり影響を受ける。
【0055】
更に好適なアルコールは、例えば脂肪酸変性アルコールである。それらは、OH官能基が部分的にエステル化されている二価または多価アルコールである。
【0056】
少なくとも1個のOH官能基を坦持する更なる好適な化合物は、例えばフッ素化アルコール類、例えばC13−CHCHOH、あるいは多価アルコール類、例えば1,2−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリ(エチレン−co−1,2−ブチレン)ジオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボナート)ジオール、グルコース、フルクトース、ポリグリセロール、ポリエステルモノオール類またはポリエステルジオール類、例えばポリ(カプロラクトン)ジオールまたはポリ(ヘキサメチレンフタラート)ジオール、あるいはフッ素化ポリエーテル類である。更にアルコールアミン、例えばジエタノールアミンまたはエタノールアミンなどが適している。この場合、そのOHおよび/またはアミン官能基は、部分的にエステル化および/またはアミド化された形態で存在してもよい。
【0057】
本発明の更なる主題は特許請求の範囲から生じ、その開示内容がその全体としてこの説明の一部を形成する。
【実施例】
【0058】
下記に列挙する実施例において本発明は、実施例中で具体的に記載する実施形態に本発明を限定するものではなく、本発明を例示するために記述され、本発明の適用範囲はこの説明全体および特許請求の範囲から生じる。範囲、一般式、または化合物の種類がその説明および実施例中で述べられる場合、それらは、明白に記述されているそれら化合物の該当する範囲または群だけでなく、個々の値(範囲)または個々の化合物を除去することによって得ることができる化合物のすべての部分的範囲および部分的群もまた包含するものである。本発明の説明の文脈で文献が引用されている場合、それらの内容は、その全体が本発明の開示内容の一部を形成する。本発明の文脈で、例えば様々な複数のモノマーユニットを有することができるアミン−アミド官能性シロキサンなどの化合物について記載する場合、それらはランダム分布(ランダムオリゴマー)で生ずることも、またそれら化合物中で配列(ブロックオリゴマー)することもできる。そのような化合物中のユニットの数に関するデータは、その該当する化合物全体にわたって平均した統計的な平均値を意味するものと理解されたい。
【0059】
アミド−アミンシロキサンの調製方法について記載する様々な実施例を下記に列挙する。
【0060】
生成物の粘度は、Brookfield Viscometer model DV-I+型を用いて測定した。
【0061】
実施例1
精密研削ガラススターラーおよび温度計を備えた250ml三つ口フラスコ中で、一般式[HOSiMe1/2[SiMe2/238を有するシロキサン191gおよび式Me(EtO)Si(CHNHのアミノ官能性シラン7.4gを混合し、無水酢酸1.3gを加えた。その混合物を90℃まで加熱し、100mbarで3時間撹拌した。形成された留出物をその反応混合物から取り出した。粘度4500mPasを有するアミド−アミン官能性シロキサンが得られた。
【0062】
比較例1
精密研削ガラススターラーおよび温度計を備えた250ml三つ口フラスコ中で、一般式[HOSiMe1/2[SiMe2/238を有するシロキサン191gおよび式Me(EtO)Si(CHNHのアミノ官能性シラン7.4gを混合し、酢酸1.3gを加えた。その混合物を90℃まで加熱し、100mbarで3時間撹拌した。形成された留出物をその反応混合物から取り出した。粘度1100mPasを有するアミン官能性シロキサンが得られた。
【0063】
実施例2
精密研削ガラススターラーおよび温度計を備えた250ml三つ口フラスコ中で、一般式[HOSiMe1/2[SiMe2/238を有するシロキサン189g、式Me(EtO)Si(CHNHのアミノ官能性シラン7.3g、およびトリメチルエトキシシラン3.0gを混合し、無水酢酸1.3gを加えた。その混合物を90℃まで加熱し、100mbarで3時間撹拌した。形成された留出物をその反応混合物から取り出した。粘度2600mPasを有するアミド−アミン官能性シロキサンが得られた。29Si−NMR分光検査の結果、得られたポリマーの鎖末端基の53%がトリメチルシリル基であることが明らかになる。
【0064】
実施例3
精密研削ガラススターラーおよび温度計を備えた250ml三つ口フラスコ中で、一般式[HOSiMe1/2[SiMe2/238を有するシロキサン189g、式Me(EtO)Si(CHNHのアミノ官能性シラン7.3g、およびビス(トリメチルシリル)アミン2.0gを混合し、無水酢酸1.3gを加えた。その混合物を90℃まで加熱し、100mbarで3時間撹拌した。形成された留出物をその反応混合物から取り出した。粘度2100mPasを有するアミド−アミン官能性シロキサンが得られた。29Si−NMR分光検査の結果、得られたポリマーの鎖末端基の61%がトリメチルシリル基であることが明らかになる。
【0065】
実施例4
精密研削ガラススターラーおよび温度計を備えた250ml三つ口フラスコ中で、一般式[HOSiMe1/2[SiMe2/238を有するシロキサン191g、式Me(EtO)Si(CHNH(CH)NHのアミノ官能性シラン4.0g、およびトリメチルエトキシシラン4.1gを混合し、無水酢酸1.0gを加えた。その混合物を90℃まで加熱し、大気圧で1時間、更に100mbarで3時間撹拌した。形成された留出物をその反応混合物から取り出した。粘度10500mPasを有するアミド−アミン官能性シロキサンが得られた。29Si−NMR分光検査の結果、得られたポリマーの鎖末端基の55%がトリメチルシリル基であることが明らかになる。
【0066】
実施例5
精密研削ガラススターラーおよび温度計を備えた250ml三つ口フラスコ中で、一般式[HOSiMe1/2[SiMe2/212を有するシロキサン164g、式Me(EtO)Si(CHNHのアミノ官能性シラン10.4g、トリエトキシオクチルシラン15g、およびトリメチルエトキシシラン8.6gを混合し、無水酢酸1.8gを加えた。その混合物を80℃まで加熱し、100mbarで3時間撹拌した。形成された留出物をその反応混合物から取り出した。粘度25000mPasを有するアミド−アミン官能性シロキサンが得られた。29Si−NMR分光検査の結果、得られたポリマーの鎖末端基の58%がトリメチルシリル基であることが明らかになる。
【0067】
実施例6
精密研削ガラススターラーおよび温度計を備えた250ml三つ口フラスコ中で、一般式[HOSiMe1/2[SiMe2/238を有するシロキサン189gおよびトリメチルエトキシシラン3.0gを混合し、無水酢酸1.3gを加えた。その混合物を2時間撹拌した。次いで式Me(EtO)Si(CHNHのアミノ官能性シラン7.3gを加えた。その混合物を100℃まで加熱し、200mbarで3時間撹拌した。形成された留出物をその反応混合物から取り出した。粘度2300mPasを有するアミド−アミン官能性シロキサンが得られた。
【0068】
実施例7
精密研削ガラススターラーおよび温度計を備えた250ml三つ口フラスコ中で、一般式[HOSiMe1/2[SiMe2/238を有するシロキサン192gおよびビス(トリメチルシリル)アミン1.5gを混合し、無水酢酸2.5gを加えた。その混合物を2時間撹拌した。次いで式Me(EtO)Si(CHNHのアミノ官能性シラン4.9gを加えた。その混合物を100℃まで加熱し、200mbarで3時間撹拌した。形成された留出物をその反応混合物から取り出した。粘度3500mPasを有するアミド−アミン官能性シロキサンが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン−アミド官能性シロキサンの調製方法であって、カルボン酸無水物の存在下、かつ任意にアルコール、アミンおよび/またはアルカノールアミンの存在下、温度40〜180℃で、一般式IのSiOH官能性シロキサン
OH (式I)
(式中、
OH=[HO−SiR1/2]、 D=[SiR2/2]、
T=[SiR3/2]、
Q=[SiO4/2]、
a=2〜10、
b=5〜150、
c=0〜10、
d=0〜10、
=炭素原子1〜30個を有するアルキル基、炭素原子6〜30個を有するアリール基、炭素原子7〜30個を有するアルカリル基の群からの、同一または異なる基である)
を、一般式IIのアミノ官能性シラン
(RO)SiR (式II)
(式中、
e+f=3という条件で
e=0、1、または2、
f=1、2、または3、
=同一または異なる、炭素原子1〜30個を有するアルキル基、または炭素原子6〜30個を有するアリール基、または炭素原子7〜30個を有するアルカリル基、
=少なくとも1個のアミノ官能基を坦持する、同一または異なる有機基である)
と反応させることを特徴とする方法。
【請求項2】
式II中のRが、一般式(III)の基
−(CR[NR−(CRNR (式III)
(式中、
g=1〜6の同一または異なる整数、
h=0〜6の同一または異なる整数、
i=1〜6の同一または異なる整数、
=同一または異なる、炭素原子1〜12個を有するアルキル基、または炭素原子6〜12個を有するアリール基、または炭素原子7〜12個を有するアルカリル基、またはH、
=同一または異なる、炭素原子1〜12個を有するアルキル基、または炭素原子6〜12個を有するアリール基、または炭素原子7〜12個を有するアルカリル基、またはHである)
であることを特徴とする、請求項1に記載のアミン−アミド官能性シロキサンの調製方法。
【請求項3】
c=0、d=0、a=2が適用される、請求項1および2のいずれかに記載のアミン−アミド官能性シロキサンの調製方法。
【請求項4】
=Meが適用される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアミン−アミド官能性シロキサンの調製方法。
【請求項5】
=H、R=H、h=0、g=1〜5が適用される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアミン−アミド官能性シロキサンの調製方法。
【請求項6】
=H、R=H、h=1または2、g=1〜5、i=1〜5が適用される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアミン−アミド官能性シロキサンの調製方法。
【請求項7】
式IIのアミノ官能性シランとして、(EtO)Si(CHNH、(MeO)Si(CHNH、Me(EtO)Si(CHNH、Me(MeO)Si(CHNH、(EtO)Si(CHNH(CHNH、(MeO)Si(CHNH(CHNH、Me(EtO)Si(CHNH(CHNH、Me(MeO)Si(CHNH(CHNH、(EtO)SiCHNHまたは(MeO)SiCHNHが使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアミン−アミド官能性シロキサンの調製方法。
【請求項8】
カルボン酸無水物として、直鎖もしくは分岐の飽和または不飽和アルキルカルボン酸の無水物、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸または無水イソノナン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸、グルタル酸無水物、無水フタル酸またはヘキサヒドロフタル酸無水物が使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアミン−アミド官能性シロキサンの調製方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の、鎖末端の半数超がもはや縮合可能でないアミン−アミド官能性シロキサンの調製方法であって、
1または複数の、式VIのトリアルキルアルコキシシランまたは一般式VIIのビス(トリアルキルシリル)アミン
Si(OR) (式VI)
(RSi)NR (式VII)
(式中、
=炭素原子1〜12個を有するアルキル基、または炭素原子6〜12個を有するアリール基、または炭素原子7〜12個を有するアルカリル基、またはH、
=炭素原子1〜30個を有する、同一または異なるアルキル基である)
を、カルボン酸無水物の存在下、温度40〜180℃で、更なる反応成分として反応させることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の、鎖末端の半数超がもはや縮合可能でないアミン−アミド官能性シロキサンの調製方法であって、1または複数のビス(トリアルキルシリル)アミンを更なる反応成分として加えることを特徴とする方法。
【請求項11】
1または複数の多官能性アルコールを更なる反応成分として加えることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のアミン−アミド官能性シロキサンの調製方法。
【請求項12】
前記反応が、少なくとも一時的に500mbar未満の圧力で行われる、請求項1〜11のいずれか一項に記載のアミン−アミド官能性シロキサンの調製方法。
【請求項13】
アミノ官能性シランとカルボン酸無水物の間の量比が、1/0.9〜1/0.02であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載のアミン−アミド官能性シロキサンの調製方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法により入手可能な組成物であって、
一般式IVのアミド−アミンシロキサン
ORM′D′T′ (式IV)
[式中、
D、TおよびQは請求項1の場合と同様に定義され、かつ
OR=[ROSiR1/2]、
M=[RSiO1/2]、
M′=[RSiR1/2]、
D′=[SiR2/2]、
T′=[SiR3/2]、
=RまたはH、
=同一または異なる有機基であり、ただし、式IVの各分子が、統計的に、少なくとも1個の一般式IIIのアミン基および更に少なくとも1個の一般式Vのアミド基を担持し、
−(CR[NR−(CRNR (式III)
−(CR[NR−(CRNR (式V)
(式中、
=Rまたはカルボキシレート基であり、ただし、式V中の2個のR基の少なくとも一方がカルボキシレート基である)
j+kが2以上であるという条件で
j=0〜10、
k=0〜10、
l=10〜3000、
m=0〜20、
n=0〜20、
o+pが2以上であるという条件で
o=0〜10、
p=0〜20、
q=0〜20]
を含有する組成物。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法により入手可能な一般式IVのアミド−アミンシロキサン(ここで、m=0、n=0、j+k=2が適用される)を含有する組成物。

【公開番号】特開2011−168782(P2011−168782A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−34327(P2011−34327)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(507375465)エヴォニク ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (100)
【Fターム(参考)】