説明

アリスキレン硝酸塩

本発明は、アリスキレンの新規な塩、その製造および用途、ならびに当該塩を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レニン阻害剤である式(I)
【化1】

の2(S),4(S),5(S),7(S)−N−(3−アミノ−2,2−ジメチル−3−オキソプロピル)−2,7−ジ(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロポキシ)フェニル]−オクタンアミドの新規塩に関する。
この化合物はアリスキレンというINN名を有しており、EP 678503 Aに具体的に記載されている。
【背景技術】
【0002】
有効成分であるアリスキレンはEP 678503 Aに具体的に記載されている遊離塩基であり、これは1個の塩基性基であるアミノ基を5位に有している。この基はpKa 9.79を有する。したがって、1個の酸性基が当該アミノ基の窒素孤立電子対に結合することができる。
【0003】
EP 678503 Aは、塩酸塩(実施例137)およびヘミフマル酸塩(実施例83)をアリスキレンの具体的な塩として開示している。しかし、これらの塩の特性を全く記載していない。一方、有効成分ヘミフマル酸塩形のアリスキレンは、抗高血圧剤として開発されている。遊離塩基およびHCl塩とは対照的に、ヘミフマル酸塩は扱いやすく、少なくとも部分的には結晶化することができ、そしてこの塩は容易に入手可能である。さらに、これは、当該技術分野において、弱酸とは逆に強酸はアリスキレンと安定な塩を形成しないということを前提としていた。
【0004】
ヘミフマル酸塩は開口るつぼ(open crucible)中で96.6℃の融点および28.9 J・g-1の融解エンタルピーを有する(加熱速度10 K/分)。
アリスキレンヘミフマル酸塩は製剤するのが難しい。典型的には、アリスキレンヘミフマル酸塩を含むガレヌス製剤において、高用量の薬剤物質(DS)が必要であり、これが錠剤の製剤を困難にしている。
【0005】
例えば、アリスキレンヘミフマル酸塩は針状結晶態様を有するが、これは薬剤物質のバルク特性、例えば流動性およびバルク密度に陰性の影響を有する。薬剤物質の圧縮特性は低く、これは粒子間の結合を弱め、そして圧力下での多形変化および/または圧縮下でのアモルファス化を導く。アリスキレンヘミフマル酸塩は、粒子間結合の弱化をも導く強可塑性成分を有する。高用量(錠剤あたり遊離塩基300または600 mgまで)には、合理的な錠剤サイズを得るために高薬剤ローディングが必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薬剤物質の性質が錠剤の加工性、例えば粒度分布、バルク密度、流動性、ぬれ特性、表面積および固着性に対する影響と共に極めて変化しやすい。水との接触によって、薬剤物質多形がアモルファス状に変化し、これは結晶状態と比較してより劣った安定性を示す。これらの障害の組合せによって標準的な錠剤製造方法が極端に困難なものとなっている。
【0007】
直接圧縮は、その高い吸湿性、針状粒子構造、低い流動性、加工性の問題および均一性の問題のため、通常の製造のための選択肢が利用できない。ローラー圧縮法は薬剤物質の高バルク体積の減少を導く。しかし、ローラー圧縮中の薬剤物質の前圧縮は、高用量の賦形剤を用いることなしに、十分な強度および脆砕抵抗性を有する錠剤にさらに圧縮することを、薬剤物質の低圧縮性のために、極端に困難にする。約35%以上のアリスキレンの薬剤ロードを有する錠剤は、ロバスト錠剤(例えば脆砕性および強度)およびロバスト処理(例えばローラー圧縮および打錠中のスティッキングおよびピッキング)を導かないことが見出されている。
【0008】
上記の通り、とりわけ湿気の存在下における、低結晶性、吸湿性および相対的に低い安定性のため、とりわけ最終生成物を単離するとき、より複雑な製造プロセスが必要となる。具体的には、ろ過および乾燥のようなプロセスが、アリスキレンヘミフマル酸塩の上記望ましくない特性のために極めて長くなり得る。アリスキレンヘミフマル酸塩はまた、造粒プロセスに敏感である。
【0009】
したがって、アリスキレンが成す極めて多大な貢献にもかかわらず、報告された望ましくない特性が処理の経済性の点で障害となる。したがって、乾燥、ろ過または造粒プロセス、そして化学製造プロセスの最終段階において、ならびに医薬製剤の製造の段階において、より取り扱いが容易である、より安定な、例えば結晶形態のアリスキレンが必要とされている。多大な無益な努力が、理想的には可能な限り結晶化し、そして物理的および化学的に安定である改良された形態を塩形成によって見出すために行われてきた。本発明の塩、その溶媒和物およびその多形のみが所望の改善された特性を示す。
【0010】
所望の有利な特性を有するアリスキレンの塩の形成は困難であると証明されている。多くの場合、例えばほとんど安定でないアモルファス塩が得られる(例えば硬い泡、ワックスまたは油状物)。広範囲の調査によって、本発明のアリスキレンの塩がアリスキレンのヘミフマル酸塩と比較してとりわけ有利であることが示された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、式(I)
【化2】

の化合物と硝酸との塩、または各々、そのアモルファス形態、溶媒和物、とりわけ水和物、ならびに多形に関する。
【0012】
好ましい塩は例えば、
アモルファス形態のアリスキレンの硝酸塩;または
結晶形態もしくは一部結晶形態のアリスキレンの硝酸塩から選択される。
【0013】
本発明の塩は、好ましくは、単離された、本質的に純粋な形態、例えば>95%の純度、好ましくは>98%、主として>99%の純度で存在する。本発明の塩のエナンチオマー純度は、>98%、好ましくは>99%である。
【発明の効果】
【0014】
ヘミフマル酸塩と比較して、本発明の塩、またはそのアモルファス形態、溶媒和物、例えば塩水和物および対応する多形は、予期し得ない有利な特徴を有する。所与の条件下で、結晶塩および結晶塩水和物は、顕著な、吸熱融解エンタルピーとリンクした明確な融点を有する。本発明の結晶塩は安定であり、そして貯蔵および分配中、アリスキレンヘミフマル酸塩よりも性質がよい。
【0015】
さらに、本発明の結晶塩およびアモルファス塩はいずれも、吸湿性ではない。したがって、本発明の塩は、格別に物理的に安定であるとわかる。異なる相対湿度で、室温およびわずかに高温で、数時間、例えば4時間の間、本発明の塩は実質的に水を吸収しないか、または広い範囲の湿度で水を失う。例えばまた、本発明の塩の融点は、異なる相対湿度で貯蔵しても変化しない。
【0016】
特定の塩の改善された物理化学的特性は、それらを薬学的に活性な物質として製造するとき、およびガレヌス製剤を製造、貯蔵および使用するときの両方で、重要である。このようにして、物理的パラメーターの改善された不変性を初めとして、より高品質の製剤を保証することができる。当該塩の高い安定性はまた、後処理で行わなければならないプロセス工程をより単純化することによって、経済的な利益を達成することが可能である。好ましい塩の高結晶性は、分析法、とりわけ様々なX線方法の選択の使用を可能とし、その利用によって、それらの出荷に際しての明確かつ単純な分析が可能となる。この要素はまた、製造、貯蔵および患者への投与において活性物質およびそのガレヌス製剤の性質に極めて重要である。さらに、ガレヌス製剤において有効成分を安定化するための複雑な条件を回避することができる。
【0017】
したがって、一般的な知識と異なって、強酸、すなわち硝酸によってアリスキレンと安定な塩を形成し得ることが、予想に反して見出された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、したがって、アリスキレン塩の結晶形態、一分結晶形態およびアモルファス形態に関する。
【0019】
本発明はまた、本発明の塩の、水和物のような溶媒和物のみならず、多形にも関する。
【0020】
本発明の塩の溶媒和物および水和物は、例えば、ヘミ、モノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ溶媒和物または水和物として各々存在していてもよい。結晶化に使用する溶媒、例えばアルコール、とりわけメタノール、エタノール、アルデヒド、ケトン、とりわけアセトン、エステル、例えば酢酸エチル、またはアルカン、とりわけペンタン、ヘキサン、ヘプタンまたはシクロヘキサンを、結晶格子に埋め込むことができる。選択した溶媒または水が結晶化およびその後の工程段階において導入される、または遊離塩基に直接導入される程度は、一般的に予測不可能であり、工程の条件およびアリスキレンと選択した溶媒とりわけ水との様々な相互作用の組合せに基づく。得られた結晶形態またはアモルファス状固形塩形、溶媒和物および水和物、ならびに対応する塩溶媒和物または塩水和物の各々の安定性は、実験によって決定しなければならない。したがって、得られる固体中の分子の化学的組成および化学量論的モル比のみに狙いを絞ることは、これらの状況下では種々の結晶固体および種々のアモルファス形態物質の両方が形成されるため、不可能である。
【0021】
対応する水和物として、塩水和物は、結晶構造内の水分子が強い分子間力によって結合しており、そしてそれによって部分的に異常に安定であるこれらの結晶の構造形成の本質的な要素であるため、このましい。しかし水分子は、むしろ弱い分子間力によって結合している特定の結晶格子内にも存在している。かかる分子は多かれ少なかれ結晶構造形成に融合するが、エネルギー効果を低下させる。アモルファス固体中の水の量は、一般的に、結晶形態水和物と同様に明確に測定することができるが、乾燥および環境条件にひどく依存する。対照的に、安定な水和物の場合、医薬活性物質と水の明確な化学量論比が存在する。多くの場合、これらの比は化学量論値を完全には満たさず、通常は、結晶欠陥のために理論よりも低い値になる。有機分子の水分子に対する比は、より弱く結合している水のために、例えばジ、トリまたはテトラ水和物に及ぶかなりの程度、変化し得る。他方、アモルファス固体において、水の分子構造分類は化学量論ではない;しかし、分類はまた、偶然に化学量論であり得る。
【0022】
いくつかの場合において、埋め込まれた水分子が正確な形態で測定され得ないような層構造を形成するため、水分子の正確な化学量論を分類することが不可能である。
【0023】
同一の化学組成を有する結晶固体について、得られる結晶格子の違いは多形という用語によって要約される。
【0024】
本発明の塩についての本明細書中のあらゆる記載は、対応する溶媒和物、例えば水和物および多形修飾物、ならびにアモルファス形態についても、適当かつ便宜であるとき、言及しているものと理解される。
【0025】
硝酸塩の粉末のX線回折ダイアグラムは、多くの離散X線反射を有し、実質的には非結晶性またはアモルファス部分のサインを有さない。したがって、結晶化の程度が驚くほどに高い。同様に、比較的大きな結晶を育てることができ、結晶学的な意味において、これらは1個の結晶である。当該1個の結晶は、固体の構造を決定することができる。X線回折によって測定される反射強度のコンピューター支援評価によって行われる。
【0026】
この結晶構造決定法は、当該測定結晶の物理的、化学的およびエナンチオマー的純粋のような通常の条件下で、分子または原子レベルで行われる構造、すなわち元素セルの対称およびサイズ、原子位置および温度要素の明確な決定が可能であり、そして確認された元素体積から、X線写真密度が分子量に基づいて示される。同時に、X線写真構造決定は、その性質の詳細をもたらす。
【0027】
硝酸塩の顕著な特性は、多くの場合、アリスキレン分子あたり1個の硝酸分子を取り込むことによってこの塩を形成する結晶に基づく。したがって、実質的に完全な3次元結晶格子が形成される。この塩はヘミフマル酸塩よりもかなり高い、高融点および融解エンタルピーを有する。塩の通常ではない結晶格子は、その化学的および物理的安定性の主たる要因である。
【0028】
封をした試料容器内、加熱速度Tr=10 K・分 -1で、それは融点173 ± 0.2℃および融解エンタルピー105.8 J/gを有する。記載の融点は、封をした試料容器中でのみ測定することができる融点である。
【0029】
これら2個の熱力学的特徴は、ヘミフマル酸塩と比較して、2個の対応するデータ、すなわち開口るつぼ中の融点96.6℃(加熱速度10 K/分)および融解エンタルピー28.9 J・g-1の点で、有利な物理的特性を例示する。これらの熱力学的データは、X線でのデータと一体となって、アリスキレンの硝酸塩の特別な物理的および化学的抵抗性の基礎である。
【0030】
臭化カリウム粉末中でのアリスキレン硝酸塩の赤外線吸収スペクトル(DRIFT-IRスペクトル−拡散反射赤外線フーリエ変換−IR)の測定は、波数(cm-1)で表される下記顕著な吸収バンドを示す: 358cm-1 (O-HまたはN-H), 2960cm-1 (C-H), 1665cm-1 (アミド, C=O), 1516cm-1 (アミドまたは芳香族性C=C), 1388cm-1 (NO3-またはC-H) 1191cm-1 (C-O), 1136cm-1 (エーテルまたは3級アルコールC-O), 1028cm-1 (エーテルまたは3級アルコールC-O), 809cm-1 (芳香族性C-HまたはNO3-), 631cm-1 (アミド)。全ての吸収バンドのエラーマージンは± 2 cm-1である。
【0031】
本発明は、1個の結晶のX線分析およびX線粉末パターンから得られるデータならびにパラメーターによって明確に特徴付けられる結晶性硝酸塩、結晶固体に関する。1個の結晶X線回折法の理論、および評価した結晶データおよびパラメーターの定義の深い議論は、Stout & Jensen, X-Ray Structure Determination; A Practical Guide, Mac Millian Co., New York, N.Y. (1968)、第3章に見出すことができる。
【0032】
SPP100硝酸塩X線粉末パターンの測定を、Scintag XDS2000 粉末回折計で、反射は配列で、Cu-Ka放射(ラムダ=1.54056 A)Peltier冷却Silicon検出器で室温(25℃)で行った。スキャン範囲は2シータで1.5℃〜40℃、スキャン速度3℃/分であった。X線回折ダイアグラム中、最も強力な反射は下記交錯平面間隔を示す:
dは[Å]であり(±0.1 Å) : 17.0, 9.6, 8.3, 7.5, 6.2, 5.8, 5.5, 4.6, 4.5, 4.3, 4.2, 4.1, 4.0, 3.8, 3.7, 3.3, 3.1, 2.9, 2.1。
【0033】
アリスキレンの硝酸塩の1個の結晶X線構造決定のデータおよびパラメーターは、表1に含まれている。
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
使用したコンピュータープログラム
SHELXTL V6.10 ([Sheldrick GM (2000)] )
SCHAKAL 86 (Keller, Freiburg 1986 )
PLATON (Spek, Acta Cryst., 1990 )
【0037】
アリスキレン硝酸塩のこの形態は、それを60℃以上に加熱することで高温形に変形することができる。このアリスキレン硝酸塩の高温形に関する1個の結晶X線構造決定のデータおよびパラメーターは表1aに含まれている。
【表4】

【0038】
【表5】

【0039】
【表6】

【0040】
使用したコンピュータープログラム
SHELXTL V6.10 ([Sheldrick GM (2000)] )
SCHAKAL 86 ( Keller, Freiburg 1986 )
PLATON ( Spek, Acta Cryst., 1990 )
【0041】
したがって、本発明はまた、アリスキレン硝酸塩の異なる形態、とりわけ異なる多形に関する。
【0042】
物理的−化学的手法の両方、例えば乾燥、ふるい、粉砕および医薬賦形剤と共に行われる製剤プロセスのための、すなわち混合プロセス、造粒、スプレー乾燥、打錠における、純粋な活性物質の性質の本質的な特徴は、問題の環境の温度および相対湿度に依存する、この活性物質の水吸収または水喪失である。ある製剤において、自由水および結合水は疑いもなく賦形剤と共に導入され、および/または水をそれぞれの製剤プロセスに関連した理由のためにプロセスマスに加える。このようにして、医薬活性物質は、異なる活性の温度(部分蒸気圧)に依存して、むしろ長期間にわたって自由水にさらされる。
【0043】
この性質の明確な特徴は、予め決められた時間間隔で、動的蒸気吸収(Surface Measurement Systems LTD, Marlow, Buckinghamshire, UK社のDVS-1)を使用して予め決められた相対湿度での等温測定によって得られる。表2は質量変化、すなわち25℃でのアリスキレン硝酸塩サンプル39.4 mgの、各湿度レベルを均等にしてから2時間後の、相対湿度の関数としての水吸収または喪失を示す。吸収および脱離サイクルの質量変化を示す。
【表7】

【0044】
熱重量分析に基づくこの吸収法の測定誤差は、約0.1%である。したがって、使用した条件下(これは医薬−製剤の観点から現実的である)で、アリスキレン硝酸塩は、測定可能な水吸収または喪失を示さない。したがって、当該サンプルは95%RHで0.3%の湿気取り込みである非吸湿性である。これはヘミフマル酸塩の特性からすると、非常に驚くべきことである。この特性は化学的製造、および異なる投与形態の全ての製剤プロセス段階において実際に重要である。この例外的な安定性は、同様に、有効成分の一定した利用能によって患者に利益をもたらす。
【0045】
アリスキレン硝酸塩の水に対する例外的な安定性は、安定性試験においても示し得る。これらにおいて、アリスキレン硝酸塩の水の量は40℃、75%の相対湿度で4週間後、開口容器および密封アンプル中の両方で一定である。これは、表3に示すように、アリスキレンヘミフマル酸塩の相対的に低い安定性と対照的である:
【表8】

【0046】
硝酸塩の有利な結晶化度のため、この塩は対応する錠剤製剤を形成するために直接圧縮に適している。
【0047】
硝酸塩の良好な物理化学的特徴に加えて、また、薬剤全体の製造プロセスを改善および単純化するために、この塩を使用することが有利である。例えばEP 678503 Aに記載の方法を使用するとき、例えば、ヘミフマル酸塩をN−脱保護の後別の工程で形成しなければならない。しかし、硝酸塩を使用するとき、N−脱保護と塩形性は1つの工程で行うことができ、したがって製造プロセスをより効果的にすることができる。
【0048】
本発明のさらなる対象は、本発明の塩の製造である。
【0049】
本発明の塩、およびそのアモルファス形態または結晶形態を、下記のとおりに製造することができる:
塩を形成するため、当該方法を、2種の反応物、すなわち塩基性アリスキレンと各酸を十分に溶解する溶媒系中で行う。得られる塩がわずかにのみ溶解するかまたは全く溶解しない溶媒または溶媒混合物の使用が、結晶または沈殿を得るために適当である。本発明の塩のための1つの変形は、この塩を極めて溶解する溶媒を使用し、その後この溶液に、得られる塩がほとんど溶解しない貧溶媒(anti-solvent)を加えることである。塩結晶化のためのさらなる変形は、塩溶液を例えば、所望により減圧下で、加熱するかまたは、状倍を例えば室温でゆっくりと蒸発させるか、または種結晶を添加してシーディングするか、または水和物形成に必要な水活性を構成することからなる。
【0050】
使用することができる溶媒は、例えばC1−C5−アルカノール、好ましくはエタノールおよびイソプロパノール、ならびにC1−C5−ジアルキルケトン、好ましくはアセトンおよびその水との混合物である。
塩結晶化のための貧溶媒は、例えば、C3−C7−アルキルニトリル、とりわけアセトニトリル、エステル、とりわけC2−C7−アルカンカルボン酸−C1−C5−アルキルエステル、例えばエチルまたはイソプロピルアセテート、ジ−(C1−C5−アルキル)−エーテル、例えばtert.−ブチルメチルエーテル、さらに、テトラヒドロフラン、C5−C8−アルカン、とりわけペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンまたはヘプタンおよびトルエンである。
【0051】
水和物を製造するため、溶解および結晶化プロセスをとりわけ、または水平衡化結晶化プロセスを使用する。
【0052】
塩を形成するための方法は、下記工程によって特徴付けられる:
(i) アリスキレン遊離塩基を有機溶媒に溶解し、
(ii) 硝酸を有機溶媒と混合し、
(iii) 工程(i)および(ii)で得られた溶液を混合し、
(iv) 溶媒を、所望により減圧下で、加熱するかまたは、例えば室温で、沈殿が生じるまでゆっくりと蒸発させることによって濃縮し、
(v) 所望により、とりわけ濃厚スラリーが形成されたとき、蒸発残渣にさらに有機溶媒を加え、
(vi)スラリーをろ過し、乾燥して塩を得る。
【0053】
溶解プロセス(i)において、使用する有機溶媒は有利には、アルコール、例えばエタノールまたはイソプロパノール、またはアルキルニトリル、とりわけアセトニトリル、および水である。最も好ましくは、有機溶媒はアルコール、例えばイソプロパノールである。有機溶媒は任意の適当なグレードであってよく、高純度グレード、例えば>90%、より好ましくは>95%、例えばHPLCグレードが好ましい。所望により、当該溶媒を室温以上、例えば25〜60℃、より好ましくは30〜50℃に温めることができる。アリスキレン遊離塩基を、予め溶解した形(pre-dissolved form)で使用するまたは使用することができるように、溶解することができる。予め溶解したアリスキレン遊離塩基が好ましい。アリスキレン遊離塩基を予め溶解するための溶媒は、上記と同じ、好ましくはアルコール、例えばエタノールであり得る。
【0054】
プロセス工程(ii)において、使用する有機溶媒は有利には、アルコール、例えばエタノールまたはイソプロパノール、またはアルキルニトリル、とりわけアセトニトリル、および水である。最も好ましくは、当該有機溶媒はアルコール、例えばイソプロパノールである。有機溶媒は任意の適当なグレードであってよく、高純度グレード、例えば>90%、より好ましくは>95%、例えばHPLCグレードが好ましい。所望により、当該溶媒を室温以上、例えば25〜60℃、より好ましくは30〜50℃に温めることができる。硝酸は、好ましくは水溶液の形態で使用する。好ましくは、硝酸水溶液は0.5〜20N、より好ましくは1〜10N、例えば6Nである。
【0055】
プロセス工程(iv)において、混合した溶液を有利には、静置して溶媒をゆっくりと蒸発させる。これは好ましくは、室温、例えば20〜25℃で行う。混合溶液の濃縮はまた、室温以上、例えば>25〜100℃、より好ましくは30〜70℃に温めることによって行うことができる。あるいは当該溶液を室温以下、より好ましくは-10〜<20℃、さらに好ましくは-5〜10℃に冷却する。これは典型的には、沈殿するのに十分な時間、例えば1〜48時間、好ましくは17〜36時間、最も好ましくは20〜30時間、静置する。いくつかの場合において、とりわけ実験室サイズで行うとき、4〜8時間が十分であり得る。
【0056】
工程(v)は、好ましくは、サンプルの移動およびろ過を補助するために加え、そうしなければ、スラリーの形成において、残渣が極めて濃厚であり、そして容易に移動しない。
【0057】
プロセス工程(vi)において、乾燥は好ましくは高温、より好ましくは30〜150℃、さらに好ましくは40〜100℃、最も好ましくは45〜70℃で行われる。あるいは、または加えて、乾燥は減圧下で、好ましくは0.2〜0.02 bar、より好ましくは0.1〜0.05 barの真空下で行われ得る。乾燥は典型的には、不変の質量が得られるまで行われる。好ましくは、生成物を5〜36時間、好ましくは10〜24時間、最も好ましくは15〜20時間乾燥する。
【0058】
塩を形成するための方法も同様に本発明の対象である。
【0059】
好ましい変形において、少なくとも1個の種結晶を加えることによって、結晶化を最適化、例えば加速することができる。
【0060】
本発明の塩は、活性物質、例えば治療上有効量の活性物質を、所望により薬学的に許容される担体と共に、例えば経腸、例えば経口、または非経腸投与に適した無機または有機、固体または所望により液体の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の形成に使用することができる。
【0061】
とりわけ本発明は、とりわけ固体単位投与形、好ましくは経口投与における、所望により薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0062】
この種の医薬組成物は、例えばAT1レセプターをブロックすることによって阻害され得る疾患または状態、例えば下記群から選択される疾患または状態の予防および処置に使用することができる:
(a)高血圧、鬱血性心不全、腎不全、とりわけ慢性腎不全、経皮経管的血管形成後の再狭窄、および環状動脈バイパス手術後の再狭窄;
(b)アテローム性動脈硬化症、インシュリン抵抗性および症候群X、2型糖尿病、肥満、ネフロパシー、腎不全、例えば慢性腎不全、甲状腺機能低下症、心筋梗塞(MI)後生存、冠状動脈性心臓病、高齢による高血圧、家族性脂質異常性高血圧、コラーゲン形成の増加、線維症および高血圧後のリモデリング(組合せの抗増殖性効果)、高血圧が関与するまたは関与しない全てのこれらの疾患または状態;
(c)高血圧を伴う、または伴わない内皮機能不全、
(d)脂質異常症、高リポタンパク血症、アテローム性動脈硬化症および高コレステロール血症、および
(e)緑内障。
【0063】
一次的利用性は、高血圧および鬱血性心不全、ならびに心筋梗塞後の処置である。
【0064】
当業者は、本明細書に記載の治療適用および有利な効果を証明するための対応する標準的な動物試験モデルを選択することが十分に可能である。
【0065】
本発明の塩または本発明に使用される活性薬剤の組合せ剤の代表例の投与によってもたらされる医薬活性を、例えば当該技術分野において既知の対応する薬理学的モデルを使用することによって、示すことができる。当業者は本明細書に記載の治療適用および有利な効果を証明するための対応する動物試験モデルを選択することが十分に可能である。
【0066】
薬剤の効果を、通常塩食餌または塩負荷(ラット食餌中4〜8%塩または飲用水として1%NaCl)で維持するデオキシコルチコステロン酢酸塩ラット(DOCA-塩)および自然発生的高血圧ラット(SHR)を含む、様々な動物モデルにおいて評価する。
【0067】
DOCA-塩試験モデルは、急性または慢性試験プロトコルを使用する。急性試験法には、留置大腿動脈および静脈カテーテルを有するラットを用いて、6時間の実験期間にわたって様々な試験物質の効果を評価することを含む。急性試験法は、DOCA-塩高血圧の確立されたフェイズの間、試験物質の血圧を減少させる能力について評価する。対照的に、慢性試験法は、DOCA-塩高血圧の発生フェイズの間、血圧の上昇を防止または遅延する試験物質の能力を評価する。したがって、血圧を、無線送信機を用いた慢性試験法でモニターする。無線送信機は、ラットの腹大動脈に外科的に、DOCA-塩処置の開始前、したがって高血圧を示す前に埋め込む。血圧を6週間(およそ、DOCA-塩投与の前1週間と、その後5週間)まで経時的にモニターする。
【0068】
ラットを、酸素中2〜3%イソフルラン吸入、続いてアミタールナトリウム(アモバルビタール)100 mg/kg, ipで麻酔する。麻酔のレベルを規則的な呼吸パターンで評価する。
【0069】
急性試験法:
ラットに、DOCA注入時点で片側腎摘出を行う。毛を左横腹および首の後にクリップし、滅菌アルコール液およびポビドン/ヨウ素で磨く。手術の間、体温を37℃に維持するため、ラットを熱パッド上に置く。
【0070】
皮膚およびその下の筋肉に20 mmの切開を行い、左腎を露出させる。腎臓を周囲組織から自由にし、体外に出し、2本の結索糸(3-0シルク)を、大動脈との連結点の近くの腎動脈および静脈に硬く結ぶ。腎動脈および静脈を切断し、腎臓を除去する。筋肉および皮膚の創傷を4-0シルク縫合糸およびステンレス製創傷クリップでそれぞれ閉じる。同時に、首の後に15 mmの切開を行い、デオキシコルチコステロンアセテート(100 mg/kg)を含む3週間放出ペレット(Innovative Research of America, Sarasota, Florida)を皮下に埋め込む。創傷をステンレス製創傷クリップで閉じ、創傷をポビドン/ヨウ素で処置する;ラットにプロカインペニシリン G (100,000 U)およびブプレノルフィリン(0.05 - 0.1 mg/kg) s.cの術後筋肉内注射を行う。ラットに速やかに1% NaCl+0.2% KCl飲用水を与える;この処置を少なくとも3週間続け、その時点で動物は高血圧を有し、そして実験に利用可能となる。
【0071】
実験の48時間前、動物をイソフルランで麻酔し、血圧の測定、血液採取および試験化合物の投与のため、カテーテルを大腿動脈および静脈に埋め込む。ラットを実験チャンバーとしても使用するPlexiglas ホームケージ中で拘束して48時間回復させる。
【0072】
慢性試験法:
この方法は、片側腎摘出ならびにDOCAおよび塩の開始前7〜10日に、ラットに無線送信機を埋め込むこと以外は上記の通りである。さらに、ラットには大腿動脈および静脈カテーテルの設置のための手術を行わない。無線送信機を、M.K. Bazil, C. Krulan and R.L. Webb. のJ.Cardiovasc. Pharmacol. 22: 897-905, 1993に記載の通りに埋め込む。
【0073】
予め決定された時点での血圧、心拍数等の測定のため、プロトコルをコンピューターにセットアップする。ベースラインデータを様々な時点および様々な時間間隔で収集する。例えば、ベースラインまたは前投与量値は通常、薬剤投与の前の、3連続、24時間にわたるデータ収集および平均からなる。
【0074】
血圧、心拍数および活性を、薬剤投与の前、間および後の様々な予め選択された時点で測定する。全ての測定を、非拘束平静動物で行う。バッテリーの寿命によって決定される最大試験時間は、9ヶ月であり得る。この期間の試験のために、ラットに、経口的に(1〜3 ml/kg ビークル)、1日2回以下で投与するか、または薬剤を飲用水を介して、または食餌と混合して、投与する。短期、すなわち8週間以下の試験のために、薬剤を皮下に埋め込んだ浸透ミニポンプによって与える。浸透ミニポンプを薬剤送達速度および時間に基づいて選択する。アリスキレン投与量は、1〜10 mg/kg/日の範囲である。
【0075】
さらに、アリスキレンの効果を試験するためにSHRを使用する。SHRの高血圧バックグラウンドを、レニンアンギオテンシン系(RAS)を抑制するために行われる慢性塩負荷またはSHR中のRASを活性化するための慢性塩欠乏によって修飾する。様々な試験物質の効果をより広範に評価するために、これらの操作を行う。実験を、Taconic Farms, Germantown, New York (Tac:N(SHR)fBR)から得た自然発生的高血圧ラット(SHR)で行う。無線送信装置(Data Sciences International, Inc., St. Paul, Minnesota)を14〜16週齢の全ての試験動物の腹大動脈の下に埋め込む。全SHRを少なくとも2週間外科的埋め込み手法から回復させ、その後実験を開始する。心臓血管パラメーターを、無線送信機で継続的にモニターし、デジタルシグナルをコンピューター化データ収集システムを用いて回収し、貯蔵する受信機に移す。血圧(動脈の収縮および拡張期圧の平均)および心拍数を、ホームケージ中の覚醒、自由運動および平静SHRにおいてモニターする。動脈血圧および心拍数を、10分ごとに10秒間測定し、記録する。各ラットについて報告されたデータは、24時間にわたる平均値を表し、日毎にあつめた144〜10分サンプルを構成する。血圧および心拍数のベースライン値は、薬剤処置の開始前に得た3連続24時間の読取値の平均からなる。全ラットを温度および湿度制御部屋で、個体ごとに飼育し、12時間明暗サイクルで維持する。
【0076】
心臓血管パラメーターに加え、体重の週間測定も全てのラットについて記録する。処置を飲用水で、毎日の経口胃管法で、または上記の通り浸透ミニポンプで投与する。飲用水で与えるとき、水消費量を1週間に5回測定する。ラット毎の水消費量、飲用水中の薬剤物質の濃度および個体の体重に基づいて各ラットのアリスキレン投与量を計算する。飲用水中の全薬剤溶液を、3〜4日毎に新鮮にする。飲用水でのアリスキレンの典型的な投与量は、3〜30 mg/kg/日の範囲である。しかし、応答者率が組合せ処置で増加する場合、投与量はモノセラピーで使用するものと同じである。
【0077】
薬剤を経口胃管法で投与するとき、アリスキレン投与量は、1〜50 mg/kg/日の範囲である。
【0078】
慢性試験が完了すると、SHRまたはDOCA-塩ラットを麻酔し、心臓を速やかに除去する。動脈付属物の分離および除去後、左心室および左心室+右心室(合計)を秤量し、記録する。左心室および全心室重量を体重に対して正規化し、報告する。血圧および心臓重量について報告された全ての値を、グループ平均±semで表す。
【0079】
血管機能および構造を、組合せ剤の有利な効果を評価するために処置後に評価する。SHRをIntengan HD, Thibault G, Li JS, Schiffrin EL, Circulation 100 (22): 2267-2275, 1999に記載の方法で試験する。同様に、DOCA-塩ラットにおける血管機能の評価のための方法論はIntengan HD, Park JB, Schiffrin, EL, Hypertension 34 (4 Part 2): 907-913, 1999に記載されている。
【0080】
所望によりさらなる薬理学的に活性な物質を含んでいてもよい本発明の医薬組成物は、自体公知の方法で、例えば常套の混合、造粒、コーティング、溶解または凍結乾燥手段によって製造され、約0.1%〜100%、とりわけ約1%〜約50%の、活性物質の100%までの凍結乾燥物を含む。
【0081】
同様に、本発明は、本発明の塩を含む組成物に関する。
【0082】
同様に、本発明は好ましくは、とりわけレニン阻害によって調節され得る疾患または状態の予防および処置用医薬組成物の製造のための、本発明の塩の使用に関する。主たる用途は、高血圧、腎不全、左心室機能不全および心不全の処置である。
【0083】
同様に、本発明は、レニン阻害によって調節され得る疾患または状態の予防および処置のための使用であって、かかる処置を必要とするヒト患者を含む患者に、治療上有効量の本発明の塩を、所望により少なくとも1種の心臓血管および本明細書に記載の関連する状態および疾患の処置用組成物との組合せで、投与することを特徴とする使用に関する。
【0084】
同様に本発明は、本発明の塩またはそれぞれの場合にその薬学的に許容される塩を、少なくとも1種の心臓血管および本明細書に記載の関連する状態および疾患の処置用組成物またはそれぞれの場合にその薬学的に許容される塩との組合せで含む、組合せ剤、例えば医薬組合せ剤に関する。心臓血管疾患、ならびに本明細書に記載の関連する状態および疾患の処置用の他の組成物、またはそれぞれの場合にその薬学的に許容される塩との組合せ剤は、同様に、本発明の対象である。
【0085】
組合せ剤は、例えば、下記群から選択される組成物で製造され得る:
(i) HMG-Co-Aレダクターゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
(ii) アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
(iii) カルシウムチャネルブロッカーまたはその薬学的に許容される塩、
(iv) アルドステロンシンターゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
(v) アルドステロンアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩、
(vi) デュアルアンギオテンシン変換酵素/中性エンドペプチダーゼ(ACE/NEP)阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
(vii) エンドセリンアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩、
(viii)アンギオテンシンIIレセプターブロッカー(ARB)またはその薬学的に許容される塩、および
(ix) 利尿剤またはその薬学的に許容される塩。
【0086】
HMG-Co-Aレダクターゼ阻害剤(β-ヒドロキシ-β-メチルグルトアリール-コ-エンザイム-Aレダクターゼ阻害剤とも呼ばれる)は、血液中のコレステロールを含む脂質のレベルを低下するために使用することができる仮性薬剤と理解される。
【0087】
HMG-Co-Aレダクターゼ阻害剤のクラスには、異なる構造的特徴を有する化合物が含まれる。例えば、当該記載は、下記群から選択される化合物と理解され得る:アトルバスタチン、セリバスタチン、コンパクチン、ダルバスタチン、ジヒドロコンパクチン、フルインドスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、メバスタチン、プラバスタチン、リバスタチン、シンバスタチンおよびベロスタチンまたは各々の場合に、その薬学的に許容される塩。
【0088】
好ましいHMG-Co-Aレダクターゼ阻害剤は、市販されている薬剤のものであり、フルバスタチンおよびピタバスタチン、またはそれぞれの場合にその薬学的に許容される塩が最も好ましい。
【0089】
所謂ACE-阻害剤(アンギオテンシン変換酵素阻害剤とも呼ばれる)でのアンギオテンシンIのアンギオテンシンIIへの酵素的分解の遮断は、血圧の制御のための良好な変形であり、したがって鬱血性心不全の処置のための治療法を利用可能にもする。
【0090】
ACE阻害剤のクラスには、異なる構造的特徴を有する化合物が含まれる。例えば、当該記載は、下記群から選択される化合物と理解され得る:アラセプリル、ベナゼプリル、ベナゼプリラット、カプトプリル、セロナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナプリラット、フォシノプリル、イミダプリル、リシノプリル、モベルトプリル、ペリンドプリル、クイナプリル、ラミプリル、スピラプリル、テモカプリル、およびトランドラプリル、またはそれぞれの場合にその薬学的に許容される塩。
【0091】
好ましいACE阻害剤は、市販されている薬剤のものであり、ベナゼプリルおよびエナラプリルが最も好ましい。
【0092】
CCBのクラスには、本質的には、ジヒドロピリジン(DHP)ならびに非-DHP、例えばジルチアゼムタイプおよびベラパミルタイプのCCBが含まれる。
【0093】
上記組合せ剤において有用なCCBは、好ましくは下記群から選択されるDHP代表物:アムロジピン、フェロジピン、リオシジン、イスラジピン、ラシジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニグルジピン、ニルジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピンおよびニバルジピン;ならびに、好ましくは下記群から選択される非-DHP代表物である:フルナリジン、プレニルアミン、ジルジアゼム、フェンジリン、ガロパミル、ミベフラジル、アニパミル、チアパミルおよびベラパミル、およびそれぞれの場合にその薬学的に許容される塩。全てのこれらのCCBが治療上、例えば抗高血圧剤、抗狭心症剤または抗不整脈剤として使用される。
好ましいCCBには、アムロジピン、ジルチアゼム、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピンおよびベラパミル、または例えば特定のCCBに依存して、その薬学的に許容される塩が含まれる。アムロジピンまたはその薬学的に許容される塩、とりわけベシル酸塩がDHPとしてとりわけ好ましい。とりわけ好ましい非-DHPの代表例は、ベラパミルまたはその薬学的に許容される塩、とりわけ塩酸塩である。
【0094】
アルドステロンシンターゼ阻害剤は、コルチコステロンのヒドロキシル化によって18-OH-コルチコステロンを形成し、そして18-OH-コルチコステロンをアルドステロンに変換することによって、コルチコステロンをアルドステロンに変換する酵素である。アルドステロンシンターゼ阻害剤のクラスは高血圧および原発性アルドステロン症の処置に使用されることが知られており、ステロイドおよび非ステロイド性アルドステロンシンターゼ阻害剤が含まれ、後者が最も好ましい。
【0095】
商業的に入手可能なアルドステロンシンターゼ阻害剤または当局によって認可されているアルドステロンシンターゼ阻害剤が好ましい。
【0096】
アルドステロンシンターゼ阻害剤のクラスには、異なる構造的特徴を有する化合物が含まれる。例えば、当該記載は、下記群から選択される化合物であると理解され得る:非ステロイド性アロマターゼ阻害剤アナストロゾール、ファドロゾール(その(+)-エナンチオマーを含む)、ならびにステロイド性アロマターゼ阻害剤エキセメスタン、またはそれぞれの場合に、使用可能であれば、その薬学的に許容される塩。
【0097】
最も好ましい非ステロイド性アルドステロンシンターゼ阻害剤は、式
【化3】

のファドロゾール塩酸塩の(+)-エナンチオマー(US特許4617307および4889861)である。
【0098】
好ましいステロイド性アルドステロンアンタゴニストは、式
【化4】

のエプレレノンまたはスピロノラクトンである。
【0099】
好ましいデュアルアンギオテンシン変換酵素/中性エンドペプチダーゼ(ACE/NEP)阻害剤は、例えば、オマパトリレート(EP 629627参照)、ファシドトリルまたはファシドトリレート、または適用可能なとき、その薬学的に許容される塩である。
【0100】
好ましいエンドセリンアンタゴニストは例えば、ボセンタン(EP 526708 A参照)、さらには、テゾセンタン(WO 96/19459参照)、またはそれぞれの場合にその薬学的に許容される塩である。
【0101】
本発明の組合せ剤に使用することができる好適なアンギオテンシンIIレセプターブロッカーには、異なる構造的特徴を有するAT1-レセプターアンタゴニストが含まれ、非ペプチド構造を有するものが好ましい。例えば、当該記載は、下記群から選択される化合物であると理解され得る:バルサルタン(EP 443983)、ロサルタン(EP 253310)、カンデサルタン(EP 459136)、エプロサルタン(EP 403159)、イルベサルタン(EP 454511)、オルメサルタン(EP 503785)、タソサルタン(EP 539086)、テルミサルタン(EP 522314)、式
【化5】

の化合物番号E-4177の化合物、式
【化6】

の化合物番号SC-52458の化合物、および式
【化7】

の化合物番号ZD-8731の化合物、またはそれぞれの場合にその薬学的に許容される塩。
【0102】
好ましいAT1-レセプターアンタゴニストは、市販の薬剤であり、バルサルタンまたはその薬学的に許容される塩が最も好ましい。
【0103】
利尿剤は例えば、下記群から選択されるチアジド誘導体である:クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、メチルクロチアジドおよびクロロタリドン。ヒドロクロロチアジドが最も好ましい。
【0104】
好ましくは、共同的に治療上有効量の本発明の組合せ剤の活性薬剤を、同時に、または任意の順序で逐次的、個別に、または固定組合せ剤として投与することができる。
【0105】
一般名または商品名で同定されている活性薬剤の構造は、標準的な概説書「メルクインデックス」の現行版、またはデータベース、例えばPatents International(例えばIMS World Publications)から得ることができる。対応するその内容を参照により本明細書の一部とする。当業者は、これらの文献に基づいて、有効成分を同定し、同様に製造し、およびインビトロおよびインビボの両方の標準的な試験モデルにおいて、医薬適応および特性を試験することが十分にできる。
【0106】
対応する有効成分またはその薬学的に許容される塩はまた、水和物または結晶化に使用される他の溶媒を含む溶媒和物の形態で使用することができる。
【0107】
組み合わせる化合物は、薬学的に許容される塩として存在していてよい。これらの化合物が例えば、少なくとも1個の塩基性中心を有するとき、それらは酸付加塩を形成することができる。対応する酸付加塩はまた、所望によりさらなる塩基性中心を有していてもよい。酸性基(例えばCOOH)を有する化合物はまた、塩基との塩を形成することができる。
【0108】
その変形において、本発明の組み合わせられた組成物を独立して、または異なる量の異なる固定された組合せ剤の使用によって、すなわち同時にまたは異なる時点で投与することができるという意味における「パーツのキット」に関する。パーツのキットのパーツを、例えば同時にまたは時間を違えて、すなわち異なる時点で、そして等しいまたは異なる時間間隔で任意のパーツのキットのパーツを投与することができる。好ましくは、時間間隔は、パーツの組合せ使用において処置される疾患または状態に対する効果が、いずれか1個の成分のみの使用によって得られる効果よりも大きくなるように選択される。
【0109】
本発明はさらに、本発明の組合せ剤を、同時、個別または逐次使用のための指示書と共に含む商品パッケージに関する。
【0110】
投与量は様々な要因、例えば使用の形態、種、年齢および/または個体の状態に依存していてもよい。例えば体重約75 kgのヒトを含む温血動物に投与するとき、例えば血圧の低下における、レニン活性の阻害に有効な投与量は、とりわけ約3 mg〜約3 g、好ましくは約10 mg〜約1 g、例えば20〜200 mg/個体/日であり、好ましくは例えば同じサイズであり得る1〜4回の1投与量に分割し得る。通常、子供は大人の投与量の約半分を投与される。各個体に必要な投与量を、例えば有効成分の血清濃度を測定することによってモニターし、最適なレベルに調節することができる。1投与量には、例えば成人患者あたり、遊離塩基に基づいて75 mg、150 mgまたは300 mgが含まれる。
【0111】
本発明はとりわけ実施例によって説明され、そしてまた、実施例に記載の新規化合物およびその製造法に関する。
【0112】
下記実施例を、いかなる方法においても本発明を限定することなく、説明のために提供する。
【実施例】
【0113】
実施例1:
(2(S),4(S),5(S),7(S)-N-(3-アミノ-2,2-ジメチル-3-オキソプロピル)-2,7-ジ(1-メチルエチル)-4-ヒドロキシ-5-アミノ-8-[4-メトキシ-3-(3-メトキシ-プロポキシ)フェニル]-オクタンアミド硝酸塩の製造
エタノール溶液中 (2(S),4(S),5(S),7(S)-N-(3-アミノ-2,2-ジメチル-3-オキソプロピル)-2,7-ジ(1-メチルエチル)-4-ヒドロキシ-5-アミノ-8-[4-メトキシ-3-(3-メトキシ-プロポキシ)フェニル]-オクタンアミド遊離塩基3.21 g(43重量%)をイソプロピルアルコール(HPLCグレード)2 mlに溶解した。これとは別に、硝酸(6N)0.5 mlをイソプロピルアルコール(HPLCグレード)2 mlと混合した。上記2個のイソプロピルアルコール溶液を室温で混合したところ、沈殿は生じなかった。混合溶液中の溶媒を環境温度で、沈殿が生じるまで蒸発させた。スラリーは極めて濃厚になった。イソプロピルアルコール2 mlを当該濃厚スラリーに加えた。スラリーを環境温度で4時間以上攪拌した。スラリーをろ過し、固体を真空(house vacuum 0.05 bar)オーブン中で50℃で一晩乾燥した。乾燥した生成物は1.275 g(収率:82.9%)であった。生成物を真空オーブン中で65℃で6時間以上乾燥し、続いて特性を測定した。
【0114】
実施例1によって製造したアリスキレン硝酸塩の融点(加熱速度10 K・分-1および内部体積の小さい封をした試料容器中)は173℃と、そして融解エンタルピーは105.8J/gと測定される。
【0115】
実施例1によって製造した塩のエナンチオマー純度を、立体特異的HPLC法で測定する。立体特異的分離はキラルカラム(Chiral AGP)によって達成する。エナンチオマー純度はee = 100%と測定される。
【0116】
元素分析は、アリスキレン硝酸塩中に存在する元素の、下記測定値を与える。元素分析の知見は、誤差限界内で、アリスキレン硝酸塩の分子式に対応する。
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸と式I
【化1】

の化合物の塩。
【請求項2】
結晶形態、一部結晶形態またはアモルファス形態の請求項1の塩。
【請求項3】
波数(cm-1)で表される下記吸収バンドを有するDRIFT−IRスペクトル:358cm-1 (O-HまたはN-H), 2960cm-1 (C-H), 1665cm-1 (アミド, C=O), 1516cm-1 (アミドまたは芳香族性 C=C), 1388cm-1 (NO3-またはC-H) 1191cm-1 (C-O), 1136cm-1 (エーテルまたは3級アルコール C-O), 1028cm-1 (エーテルまたは3級アルコール C-O), 809cm-1 (芳香族性C-HまたはNO3-), 631cm-1 (アミド);あるいは
下記交錯平面間隔を含むScintag XDS2000 粉末回折計で得たX線粉末回折パターン:
dは[Å] (±0.1 Å) : 17.0, 9.6, 8.3, 7.5, 6.2, 5.8, 5.5, 4.6, 4.5, 4.3, 4.2, 4.1, 4.0, 3.8, 3.7, 3.3, 3.1, 2.9, 2.1
によって特徴付けられる請求項1の塩。
【請求項4】
溶媒和物形態の請求項1〜3のいずれかの塩。
【請求項5】
水和物形態の請求項1〜4のいずれかの塩。
【請求項6】
(i) 結晶形態;
(ii) 一部結晶形態;
(iii) アモルファス形態;および
(iv) 多形形態
からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれかの塩。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの化合物と、薬学的に許容される賦形剤または添加剤を含む医薬組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかの塩と、下記群から選択される少なくとも1種の組成物を組み合わせて含む、請求項7の医薬組成物:
(i) HMG−Co−Aレダクターゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
(ii) アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
(iii) カルシウムチャネルブロッカーまたはその薬学的に許容される塩、
(iv) アルドステロンシンターゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
(v) アルドステロンアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩、
(vi) デュアルアンギオテンシン変換酵素/中性エンドペプチダーゼ(ACE/NEP)阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
(vii) エンドセリンアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩、
(viii) アンギオテンシンIIレセプターブロッカー(ARB)またはその薬学的に許容される塩、および
(ix) 利尿剤またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
レニン阻害によって調節される疾患および状態の予防または処置用医薬の製造における、請求項1〜6のいずれかの化合物の使用。
【請求項10】
(i) アリスキレン遊離塩基を有機溶媒に溶解し、
(ii) 硝酸を有機溶媒に混合し、
(iii) 上記工程(i)および(ii)で得られた溶液を混合し、
(iv) 溶媒を、例えば所望により減圧下で、加熱によって、または例えば室温で、沈殿が生じるまでゆっくりと蒸発させ、
(v) 所望により、とりわけ濃厚スラリーが形成されたとき、蒸発残渣にさらに有機溶媒を加え、
(vi)スラリーをろ過し、乾燥して塩を得る
ことを特徴とする、請求項1の塩の製造法。

【公表番号】特表2009−531300(P2009−531300A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556557(P2008−556557)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/062666
【国際公開番号】WO2007/098503
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】