説明

アルキルフェノール−ノボラック樹脂と、その製造方法と、そのゴム用粘着付与および/または補強用樹脂としての使用

【課題】遊離アルキルフェノールのレベルが低いアルキルフェノール−ノボラック樹脂と、その製造方法と、そのゴム用粘着付与および/または補強用樹脂としての使用。タイヤ製造で好ましく使用される。
【解決手段】残留アルキルフェノールの比率が2重量%以下、好ましくは1.5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下で、且つ、環球軟化点温度が85〜105℃、好ましくは95〜105℃であるアルキルフェノール−ノボラック樹脂において、アルキルフェノールの量に対して飽和または不飽和の脂肪酸を少なくとも2〜20重量%、好ましくは5〜10重量%含むアルキルフェノール−ノボラック樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム用粘着付与樹脂として使用されるアルキルフェノール−ノボラック(resines alkylphenol-novolaques)樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルキルフェノール−ノボラック樹脂は、酸触媒の存在下でアルキルフェノール、例えばパラtert-ブチルフェノール(PTBP)やパラtert−オクチルフェノール(PTOP)とアルデヒド、特にホルムアルデヒドとの反応によって得られる。例としては下記文献が挙げられる:
【非特許文献1】"Chemistry and application of phnolic resins, Polymer/Properties and application"、A. Knop and W. Scheibe、Springer-Verlag Berlin Heidelberg New York, 1979, p10-27
【0003】
この文献にはアルキルフェノール−ノボラック型のフェノール樹脂を製造するために使用されるアルデヒドおよびアルキルフェノールの各種モノマーが記載されている。
【0004】
アルデヒド/アルキルフェノールのモル比(以下、RMという)を変えることによって種々の平均分子量を有する樹脂が製造できるということは公知である。しかし、その反応の化学的特性から反応終了時にホルムアルデヒドが消費された後にフェノールモノマの一部が常に残る。
【0005】
J. Borrajo, M. I. Aranguren およびR.J.J. Williamsは下記文献でホルムアルデヒド/フェノールの反応をランダム重縮合とみなすことによって遊離フェノール成分の推定量を計算している。
【非特許文献2】Polymer, 1982, Vol. 23, February, p263-266
【0006】
RMが0.7である反応ではStokcmayerの分配に従った場合、残留フェノールの比率は11.6%となり、RMが0.8では6.5%、RMが0.9では3%になる。二官能性のパラアルキルフェノールの場合にはRMが9,4で比率は1%になる。商業的なアルキルフェノール−ノボラック樹脂の工業的製造での典型的なモル比は0.7〜0.9である。
【0007】
一方、環境保護の観点から、上記残留フェノールモノマーの比率を減らし、樹脂の危険性を減らすことが求められている。すなわち、PTOPのようなアルキルフェノールは環境保護および毒性の点から検討(英語のリスク評価)されており、アルキルフェノール−ノボラック樹脂中のモノマー形残留物の比率を制限し、その使用を制限する傾向にある。遊離アルキルフェノールの比率を減すと工場内へのアルキルフェノールモノマー蒸気の放出量が減り、使用時、特にゴム用途での高温での加硫時の大気中への放出量が減り、樹脂の取扱いがより容易になる。
【0008】
アルキルフェノール−ノボラック樹脂の他の重要な特性はその環球軟化点温度(temperature Bille Anneau、軟化点温度)である。ゴム配合物で粘着付与樹脂として一般に使用されている商業的アルキルフェノール−ノボラック樹脂の環球温度は使用の容易さ等の理由で85〜105℃になっている。すなわち、この使用温度はゴムをベースにした配合物の複合成分によって決まり、系の反応性を変えずに簡単には変えることができないため、ゴム配合物の他の成分との混合段階および加硫段階での溶解、溶融および分散をさせるのに適したアルキルフェノール樹脂の上記環球軟化点温度範囲が使用されている。
【0009】
下記文献には約100℃の軟化温度を有するノボラック樹脂、特に、PTOPとホルムアルデヒドとの縮合で得られる上記用途で使用されている粘着付与剤とよばれる樹脂の残留アルキルフェノールの比率は約4.5重量%であることが記載されている。
【非特許文献3】F.F. WOLNY and J.J. LAMB, in Kautsuch、Gummi Kunstoffe (1984) 37/7, p.601-603
【0010】
この文献の著者は樹脂中の遊離アルキルフェノールの比率を減すことでゴム配合物の粘着特性が改善するということも示している。
【0011】
本出願人はPTOPをベースにしたアルキルフェノール−ノボラック樹脂の追試で上記著者の結論を確認した。すなわち、RMが約0.8〜0.9のアルキルフェノール−ノボラック樹脂の軟化点は85〜110℃であり、残留PTOPの比率は約6〜2重量%であり、残留PTOPモノマーの比率を1重量%以下にするにはRMを0.9以上にし且つ環球軟化点温度は約120℃である必要がある(RMが0.96のノボラックPTOP/ホルムアルデヒド樹脂は遊離PTOPの比率が1重量%以下で、環球軟化点温度が高い(約130-140℃)。樹脂の粘度が高いので高温(約180℃)になると合成が困難になる)。軟化点温度が高く(約120〜130℃)、RMが約0.8であるPTBPをベースにした樹脂の残留PTBPの比率は約2〜3重量%である。
【0012】
従って、残留アルキルフェノールモノマーの比率が2重量%以下、好ましくは1.5重量%以下で、軟化点温度が85〜105℃であるアルキルフェノール−ノボラック樹脂に対する需要がある。
【0013】
アルキルフェノールの比率を減少させるために使用される(または使用可能な)方法は、樹脂の合成終了後に残留モノマーを蒸留することである。しかし、この古典的方法にはいくつかの欠点がある:先ず第1に、この残留モノマーの蒸留では出発原料の無視できない量が失われ、蒸留で得たアルキルフェノールは再循環するか、処理する必要がある。第2に、PTOPのようなアルキルフェノールは沸点が非常に高い、遊離PTOPの比率を1重量%以下にするためには反応器内を極めて高減圧し、高温にする必要があり、その蒸留を工業的規模で実施するのは困難である。さらに、PTBPやPTOPのようなアルキルフェノールは固体物質であり、配管中で結晶化することが確認されているので、再加熱して配管の閉塞を防止する必要がある。
【0014】
フェノール/ホルムアルデヒド樹脂の場合は遊離フェノールを水蒸気に随伴させることができるが、PTOPのような重質のアルキルフェノールにはこの方法は適用できない。
【0015】
下記文献には有機リン酸触媒を使用することによって(アルキル)フェノール−ノボラック樹脂の遊離フェノールの比率を減らすことができるということが記載されている。
【特許文献1】米国特許第6,326,453号明細書
【特許文献2】欧州特許第EP 1,108,734号公報
【0016】
しかし、使用される触媒の量は極めて多量である。実施例によると、残留フェノールの比率を1%以下にするのに必要な有機リン酸触媒の使用量はフェノールに対して60%になり、残留フェノールの比率を約2%にするのに必要な触媒の量は10%である。また、フェノールに対する触媒の比率を0.1モル%以下にすると反応に対する効果が無くなることも示されている。
【0017】
下記文献には遊離フェノールの比率が1%であるフェノール-ホルムアルデヒド ノボラック樹脂をメタノール溶液中で15MPa/250℃の超臨界条件下で製造する方法が記載されている。
【特許文献3】日本特許第JP11-349655号公報
【0018】
この種の方法は高圧を必要とするために工業レベルで実施するのは困難である。運転は大気圧近辺で行なうのが好ましい。
下記文献では尿素の添加が推薦されている。
【非特許文献4】Li Ziqiang in Mining & Metallurgy, March 1996, Vol. 5, No. 1, p24-27; CAS 125:115938
【0019】
この著者によると遊離フェノールを18%(尿素なし)から5%へ減少させることができる。しかし、これでは不充分である。また、生成物に尿素を添加することはフェノール樹脂の安定性を悪化させる危険があり、この樹脂を加えたゴム配合物の最終特性に悪影響を与える可能性がある。
【0020】
下記文献には、フェノール、ホルムアルデヒド(RM 0.97)、ステアリン酸(フェノールに対して3.5重量%)に各種の添加剤または充填剤を加えた混合物の製造方法が記載されている。
【非特許文献5】CS 238.995(CAS 108:57118)
【0021】
この混合物の反応後に得られる樹脂の遊離フェノールの比率は5%でなり、高すぎる。
下記文献には脂肪酸によるノボラックホルムフェノール樹脂のエステル化で得られるグリース(従って、環球軟化点値は室温以下)の製造方法が記載されている。
【特許文献4】米国特許第2,506,903号明細書
【特許文献5】米国特許第2,506,904号明細書
【0022】
この文型に記載のホルムアルデヒド/アルキルフェノールのRM比率は1〜2である。この製造方法では先ず最初にアルキルフェノールを約100℃で脂肪酸でエステル化し、その反応生成物を250℃以下の温度でホルムアルデヒドと反応させて反応を完了させるか、100〜150℃の温度で最初にホルムアルデヒド/アルキルフェノール樹脂を作り、次に脂肪酸を加え、200℃の温度でエステル化反応を行う。グリースの形の生成物を得るのに必要な脂肪酸の比率は多量で、使用したアルキルフェノールの約100%である。
【0023】
下記文献には(塩基触媒を用いて製造した)レゾール型のホルムフェノール樹脂を200℃以上の温度、一般には200〜260℃の温度でコロファンまたはその誘導体の存在下で脂肪酸でエステル化して改質する方法が記載されている。
【特許文献6】日本特許第JP09-003384号公報(CA/126:187493)
【0024】
残留フェノールモノマの比率は1%以下である。この変性樹脂は印刷インキの製造で使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかし、ゴムをベースにした配合物の粘着付与用または補強用樹脂として簡単に使用可能な、環球軟化点温度を85〜105℃の間に維持したまま、アルキルフェノール−ノボラック樹脂の残留アルキルフェノールの比率を2%以下に減少させるという技術的課題を満足に解決できる方法は存在していない。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の対象は、残留アルキルフェノールの比率が2重量%以下、好ましくは1.5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下で、且つ、環球軟化点温度が85〜105℃、好ましくは95〜105℃であるアルキルフェノール−ノボラック樹脂にある。
【0027】
本発明のアルキルフェノール−ノボラック樹脂は、アルキル鎖がC6〜C10である1種または複数のアルキルフェノール(好ましくはアルキルフェノールモノマーの主要部がパラ-tert-オクチルフェノールである)のモノマーと、1種または複数のアルデヒド(好ましくはその1種はホルムアルデヒド)とから得られ、さらに、アルキルフェノールの量に対して少なくとも2〜20重量%、好ましくは5〜10重量%の飽和または不飽和脂肪酸を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明で使用されるアルキルフェノールは、フェノール官能基のパラ位が炭化水素化され且つ6〜10の炭素原子を有するアルキル基、特に好ましいC8のtert−オクチル基でアルキル化されたフェノールである。
【0029】
本発明のノボラック樹脂は上記のアルキルフェノールモノマーに加えて、その他のフェノールを含むことができ、このその他のフェノールの重量比率は本発明樹脂のフェノールの全重量の30重量%以下である。そうしたその他のフェノールの中ではフェノール、レソルシノール、カルダノール、ジアルキルフェノール、例えばジメチルフェノール(またはキシレノール)、さらには2,4−または2,6−ジtert−オクチルフェノールを挙げることができる。
【0030】
アルデヒドの全てがホルムアルデヒドであるのが便利であり、本発明では好ましい。
【0031】
脂肪酸は少なくとも8つの炭素原子を有する飽和モノカルボン酸またはモノオレフィン酸である。好ましい基は炭素原子数が8〜32の飽和脂肪酸である。飽和脂肪酸の例としてはカプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、ステアリン酸およびベヘン酸である。不飽和脂肪酸の例はオレイン酸またはウンデシル酸である。また、植物油または動物性脂肪の鹸化によって得られるこれらの脂肪酸の合成または天然の混合物を使用することもできる。
ステアリン酸は、特に出願人によって、むしろ好まれる。
【0032】
本発明の第2の対象は上記アルキルフェノール−ノボラック樹脂の製造方法にある。ホルムアルデヒドを含む本発明樹脂の場合には、ホルムアルデヒドは水溶液の形で反応媒体中に導入されるのが最も一般的であるが、パラホルムアルデヒドの形で導入することもできる。
【0033】
本発明のノボラック樹脂はノボラック型のホルムフェノール樹脂の合成で公知の従来法で製造することができる。すなわち、アルデヒド/樹脂アルキルフェノールのモル比を0.9以上にして環球軟化点温度が高い(すなわち110℃以上)の最初の樹脂を形成し、ノボラック樹脂が溶融状態にある間に、合成反応器中に脂肪酸を導入するか、均質な樹脂中に混合できるように攪拌しながら脂肪酸の存在下にノボラック樹脂を再溶融する工程から成る第2の操作で導入する。
【0034】
第2の手順(本発明ではこの方法が好ましい)は、アルデヒドとアルキルフェノールとの縮合を脂肪酸の存在下に200℃以下の温度、好ましくは180℃以下、さらに好ましくは160℃以下の温度で実行する。単一段階で樹脂を製造するこの方法は上記の方法(最初にアルキルフェノールとアルデヒドとを縮合させ、得られた樹脂にその後で脂肪酸を混合する方法)に比べていくつかの利点がある。または第1に、ノボラック樹脂の合成時に反応器中の高い粘度を有する反応媒体が生成するのを避けることができる。次に、環球軟化点温度が高いノボラックと脂肪酸とを効率的に混合するのに必要な高温の使用を避けることができる。
【0035】
上記の好ましい方法はバッチ方式か、アルキルフェノール、脂肪酸およびアルデヒドを反応器または一連の反応器中へ連続的に供給する連続方式で実施できる。連続法に関しては下記文献を参照されたい。
【非特許文献6】"Chemistry and application of phenolic resins," Polymer/properties and application, A. Knop and W. Scheib, editor Springer-Verlag Berlin Heidelberg New York 1979, p62-64
【0036】
一般にはアルキルフェノールと脂肪酸とを反応器へ導入し、次に酸触媒を入れ、得られた混合物を大気圧下に80〜100℃に加熱し、アルデヒドを15〜100分間かけて導入し、攪拌下に維持する。アルデヒドがホルムアルデヒドの場合にはホルムアルデヒドの水溶液を用い、ホルムアルデヒドの導入が終るまで媒体を還流するのが好ましい。
【0037】
アルデヒドの導入後、媒体の温度を120〜150℃に上げて反応水およびアルデヒドを水溶液で導入した場合にはそれと一緒に導入された水を蒸出する。その後、一般には約30〜400分間(使用する反応器および減圧用機器の寸法によって異なる)、反応器をわずかに減圧(0.2〜0.6バールの絶対圧)し、140〜160℃の温度に維持する。環球軟化点温度値に応じて上記時間内で樹脂の反応停止点を決定することができる。その後、炭酸ナトリウムまたはソーダのような塩基またはトリエタノールアミンのようなアミンを加えて触媒を中和することができる。この塩基の添加は必ずしも必要ではないが、そうすることによって反応器中での樹脂の反応の進行をより良く制御することができる。その後、反応器を排出して本発明樹脂を得る。
【0038】
使用する触媒はノボラック樹脂の合成で当業者に周知の無機または有機の酸触媒またはその混合物である。主に最も良く知られたものは純粋な硫酸か、それをアルコール溶媒に溶かした溶液、リン酸、蓚酸または蟻酸を挙げることができる。使用する触媒の量も当該技術で一般的な普通の数量で、アルキルフェノールの量の0.1%〜0.4%の触媒比率を使用する。
【0039】
本発明の第3の対象は、本発明化合物のゴム配合物での粘着付与樹脂としての使用にある。本発明のノボラック樹脂は、従来の粘着付与剤と違って、ゴム配合物の用途条件を変える必要がないという利点がある。すなわち、ゴム配合物に添加することで従来公知の樹脂と少なくとも等しい有効度が得られ、しかも、遊離アルキルフェノールモノマーを減らすことができ、従って、使用に有害なアルキルフェノール化合物の放出量を減すことができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0041】
遊離アルキルフェノールの比率の決定
残留PTOPの比率は注射器/デバイダ、CPVカラム、FID検出器および記録計/積分計を備えた気相クロマトグラフィ(Hewlett Packard 5890 Series IIクロマトグラフ装置を使用)で決定した。カラムはOHYO VALLEY 社のOV1701(登録商標)である(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)。測定は180℃の等温で行った。解析時間は25分、注射器温度は250℃、検出器:250℃。10 mlボトルに約0.03gの標準品BHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)を正確に入れた後、約1gの樹脂を正確に入れ、最後に約6gのアセトンRPを入れる。応答係数は同じ希釈条件でPTOP/BHT基準品を注射して決定した。
【0042】
環球軟化点温度の測定
この測定はE28−96規格に従ってNORMALAB社の装置であるNBA440(登録商標)またはNBA430を使用して行った。
【0043】
実施例1〜8(比較例)と実施例9〜11(本発明)の操作手順
機械的攪拌器と効率的な還流を可能にする冷却系とを備えた1リットルのガラス反応器中に、500gのパラ-tert-オクチルフェノールと、Xgのステアリン酸の(加えたステアリン酸の量は導入したPTOPの百分比で[表1]に示してある)と、2.1gの触媒(硫酸のイソプロピルアルコール25%溶液)とを導入し、攪拌下に媒体の温度を90℃に上げる。反応器の温度を100〜110℃に維持するようにホルムアルデヒドの流れを制御し、60℃に維持したホルムアルデヒドの50%水溶液を30〜45分間流す。ホルムアルデヒドの流入終了時に反応水を留出するために組立体を変え、反応媒体の温度([表1]のT1)を次第に130〜150℃に上げて媒体から水を蒸留する。この第1期は研究室で約1〜2時間続ける。媒体は濃厚になり発泡する。留出液が出なくなった時に媒体温度を次第に150℃へ上げ且つ0.4バールの絶対圧に減圧して([表1]のT2およびPの値)、媒体からの水の除去を終える。
【0044】
20分後に反応器に1.4gのトリエタノールアミン(1.4gの水に希釈)を導入し、サンプルを反応器から取り環球軟化点温度を測定する。この時点で樹脂の反応は実際的に終っており、数時間後でもその値は3〜4℃しか変わらない。所望の環球軟化点温度に達したときに加熱を止め、樹脂を反応器中に残して冷却し、分析する。
全ての結果は[表1]にまとめて示してある。
【0045】
【表1】

【0046】
*=残留PTOPの蒸留を実行する時に工業的観点からは過酷な極めて高い減圧と温度条件で運転する必要があるということが分る。
**=媒体の粘度が高くなり、減圧を行なうと樹脂が膨張して反応器中に充満する危険があるため実行できない。従って、大気圧でステップ1のみを運転し、樹脂を移した。
【0047】
実施例12、13、14([表2])
本出願人からR7578Pの名称で市販の軟化点(BA)値が120〜140℃の間にある遊離PTOP含有量が1%以下の樹脂(ホルムアルデヒドとPTOPの縮合によって得られるノボラック樹脂)と、[表2]に示す各種比率の脂肪酸との溶融混合物を作った。すなわち、120gの樹脂を140℃で溶融し、それに脂肪酸を加え、混合物を180℃にし、均一混合物が得られるまで1〜2時間攪拌する。
【0048】

【表2】

【0049】
実施例15(従来の市販樹脂と比較した実施例11の樹脂の粘着付与特性の評価)
1.混合物の調整
本発明の樹脂を下記組成を有するサイドウオール用混合物のポリブタジエン(BR)とポリイソプレン(IR)とをベースにしたエラストマに4パーセント(pce、parties pour cent d'elastomere)のレベルで添加した:
(1) 60pceの1.4シスBR(Bayer社からBuna CB10の名称で市販。非汚染性、100℃での粘度ML(1+4)が42〜53、1.4シスの量が96%)
(2) 40pceの1.4シスIR(Good Year社からNatsyn 2200の名称で市販。100℃での粘度ML(1+4)が70〜90)
(3) 60pceのカーボンブラック(Degussa社からCorax N550の名称で市販。平均径47nm、比表面積43m2/g)
(4) 5pceの芳香族油(BP社からEnerdex 65の名称で市販。20℃での濃度0.984、100℃での粘度25.5cSt(mm2/s))
(5) 5pceのステアリン酸(活性化剤)、
(6) 5pceの酸化亜鉛
(7) 2pceの耐オゾン/老化防止用保護試剤(N-イソプロピル-N'-フェニル-p-フェニレン−ジアミン(IPPDN))(Bayer社からVulkanox 4010NAの名称で市販)
(8) 2pceのVulkanox 4020LG(N-(13-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレン−ジアミン(6PPD))(Bayer社の耐オゾン/老化防止用保護試剤)
(9) 4pceの実施例11の粘着付与樹脂(またはCECA社からR 7521Pの名称で市販の102℃の環球軟化点温度を有する粘着付与用アルキルフェノール/ホルムアルデヒド樹脂)
(10) 1pceの不溶性硫黄(加硫剤)(Flexys社からCrystex OT20の名称で市販。全硫黄量が78%)
(11) 1.5pceのN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルホンアミド(CBS)。
【0050】
ベース混合物またはマスター混合物(未加硫混合物)は容量が390cm3のBanbury型インターナルミキサで調製する。その際に重要なことはロータ速度と出発温度を適当な時間(10分)内に混合物の落下温度(temperature de tombee)が少なくとも135℃に達するように決定することである。ゴムと鉱油およびカーボンブラックの半分とを第1段階に入れ、粉砕した樹脂を鉱油およびカーボンブラックの残りと一緒に第2段階で加える。
【0051】
混合物は冷却シリンダを有するミクサーで直ちに冷却する。24時間放置した後、ベース混合物をインターナルミキサで加硫(accelere)する。チャンバの初期温度は50℃、ロータ速度は50回転数/分である。混合サイクルは6分で、混合物が焦げ付くき危険を防ぐために落下(tombee)は100℃で行った。次にシリンダ上で70℃で成形した。最終混合物を冷却した際にサンプルを採り、管理された温度(23±2℃)と湿度(53±3%HR)の制御された環境下で遮光下に貯蔵した。貯蔵はペトリ箱で行う場合、サンプルはガラスに直ちに強力に付着するで、紙に載せる。
【0052】
2.粘着度の測定
この測定は以下で説明する制御ソフトウェアを備えたINSTRONダイナモメータ(モデル5565)で互いに接触させた2枚の生ゴム円板上でのトラクションを測定して行う。タック(粘着度)の測定装置(組立体)は[図1]に示してある。
円形のサンプル(直径18mm、厚さ2mm)を2枚の鋼の円板に接着し、2つの取付板にセットする。下側の取付板は固定し、上側の取付板を可動にし、制御ソフトウェアで移動を管理し、一定時間tcの間、一定の圧力Pcが加わるまで下げ、それから2つのサンプルを引き離すのに必要な力を測定する。
【0053】
上記の制御ソフトウェアが実行する測定プロフィルは下記の5つのランプ(傾き)から成る:
(1) 第1ランプ:Pcに達するまでフレームを移動(速度=5mm/分)
(2) 第2ランプ:時間tcの間、Pcを維持
(3) 第3ランプ:フレームを再びゆっくり持上げ、圧縮力をゼロに戻す。力の変化:Pc+2N(速度=0.1mm/分)
(4) 第4ランプ:フレームを300秒間維持し、ゴムをリラックスさせる。力はゼロに戻る。
(5) 第5ランプ):フレームを2mm/分の一定速度で上昇させる。
【0054】
全サイクル中、コンピュータを用いて移動量および時間の関数で力を記録した。[図2]は得られた粘着度(タック)の測定プロフィルである。トラククションを加える間に下記に示す有意な値が記録された:最大トラククション力および移動量の関数としての力の曲線の下側の面積を粘着エネルギーとよぶ。この操作で使用した条件はPc=20N、tc=20秒である。
[表3]に示す粘着度の測定値は加硫(加速)を一日行なった後の値である。
【0055】
【表3】

【0056】
この結果は、上記の本発明樹脂は、対応する環球軟化点温度を有する標準的な樹脂、例えばCECA社から市販の遊離PTOPを3%以上含む樹脂R 7521Pの性能に少なくとも匹敵する性能を有する、ということを示している。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】タック(粘着度)の測定装置(組立体)を示す図。
【図2】本発明で得られる粘着度(タック)の測定プロフィルの図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
残留アルキルフェノールの比率が2重量%以下、好ましくは1.5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下で、且つ、環球軟化点温度が85〜105℃、好ましくは95〜105℃であるアルキルフェノール−ノボラック樹脂において、
アルキルフェノールの量に対して飽和または不飽和の脂肪酸を少なくとも2〜20重量%、好ましくは5〜10重量%含むことを特徴とするアルキルフェノール−ノボラック樹脂。
【請求項2】
アルキルフェノールが、フェノール官能基のパラ位に6〜10の炭素原子を有する炭化水素、好ましくはC8のtert−オクチル基を有するアルキルでアルキル化されたフェノールであり、アルキルフェノール−ノボラック樹脂の全フェノール量の30重量%以下がフェノール、レソルシノール、カルダノール、ジアルキルフェノール、例えばキシレノールまたは2,4または2,6-ジtert−オクチルフェノールのような他のフェノールの中から選択されたフェノールであってもよい請求項1に記載のアルキルフェノール−ノボラック樹脂。
【請求項3】
アルデヒドの少なくとも一部または全部がホルムアルデヒドである請求項1に記載のアルキルフェノール−ノボラック樹脂。
【請求項4】
上記脂肪酸が、少なくとも8つの炭素原子を有する飽和モノカルボン酸またはモノオレフィン酸、好ましくは8〜32の炭素原子を有する飽和脂肪酸、植物油または動物性脂肪の鹸化で得られるこれらの脂肪酸の合成または天然の混合物の中から選択され、好ましくはステアリン酸である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルキルフェノール−ノボラック樹脂。
【請求項5】
アルデヒド/アルキルフェノールのモル比を0.9以上にしてアルキルフェノール-ノボラック樹脂と1種または複数の脂肪酸とを溶融状態で混合することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルキルフェノール−ノボラック樹脂の製造方法。
【請求項6】
脂肪酸の存在下でアルデヒドとアルキルフェノールとを200℃以下の温度、好ましくは180℃以下、さらに好ましくは160℃以下の温度で縮合することから成る請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルキルフェノール−ノボラック樹脂の製造方法。
【請求項7】
バッチまたは連続プロセスで行なう請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルキルフェノール−ノボラック樹脂のゴムをベースにした配合物での粘着付与樹脂としての使用。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルキルフェノール−ノボラック樹脂のゴムをベースにした配合物の補強樹脂としての使用。
【請求項10】
タイヤ製造における請求項8または9に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−510004(P2007−510004A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530414(P2006−530414)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002495
【国際公開番号】WO2005/033162
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(305025429)スケネクタディ インターナショナル インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Schenectady International, Inc.
【Fターム(参考)】