説明

アルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤を含む組成物および該組成部の用途

【課題】薄膜を形成した際に、柔軟性に優れる非タック性の薄膜が得られるアルケニル置換ナジイミドを含む組成物および該組成物の用途を提供すること。
【解決手段】本発明の組成物は、アルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤を含み、前記硬化剤がアゾビス系の化合物である組成物、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤を含む組成物または、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤を含み、前記硬化剤がアゾビス系の化合物である組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤を含む組成物および該組成部の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
イミド結合を有する化合物(イミド系化合物)の1種であるポリイミドは耐熱性、電気絶縁性に優れるため、電子通信分野で広く用いられている材料である(例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3参照)。
【0003】
アルケニル置換ナジイミドは溶媒への溶解性が高いこと、熱により硬化するなどの特徴を有している。またアルケニル置換ナジイミドを熱により硬化して得られる薄膜は高い絶縁性を有している。
【0004】
アルケニル置換ナジイミドはその構造により、液体から固体のものまで、合成することができる(例えば、特許文献4参照)。
常温で液体のアルケニル置換ナジイミドを塗布・乾燥して得られる薄膜は、常温の温度範囲では液状であり、タック性があり、ハンドリング性に問題があり、均一な厚みの薄膜は得られない。
【0005】
また、アルケニル置換ナジイミドを硬化する際に用いる硬化剤としては、過酸化物や金属触媒を使う例が報告されている(例えば、特許文献5参照)。
また、常温で固体のアルケニル置換ナジイミドを含む溶液から得られる薄膜は、タック性には問題がないものの、柔軟性に欠けていた。
【特許文献1】特開2000−039714号公報
【特許文献2】特開2003−238683号公報
【特許文献3】特開2004−094118号公報
【特許文献4】特開昭63−170358号公報
【特許文献5】特開平6−32835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来技術の有する課題を鑑みてされたものであり、薄膜を形成した際に、柔軟性に優れる非タック性の薄膜が得られるアルケニル置換ナジイミドを含む組成物および該組成物の用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決するために、鋭意検討した。その結果、アルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤を含む特定の組成物を用いることにより、前記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の第一の態様の組成物は、アルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤を含み、前記硬化剤がアゾビス系の化合物であることを特徴とする。
第一の態様においては、前記アルケニル置換ナジイミドが下記式(1)で示される化合物であることが好ましい。
【0009】
【化1】

【0010】
(式(1)中、R1は-Cp2p-(ただしpは2〜20の整数)で表されるアルキル、炭素数5〜8のシクロアルキル、-{(Cq2qO)t〔Cr2rO〕us2s}-で表される
ポリオキシアルキル(ただしq、r、sはそれぞれ独立に2〜6の整数、tは0または1、uは1〜30の整数)、炭素数6〜12の二価の芳香族基、−C64−T−C64−で表される基(ただしTは−(CH2)n−(ただしnは1〜10の整数)、−C(CH3)2
−、−C(CF32C−、−CO−、−O−、−OC64C(CH3)264O−、−OC64C(CF3)264O−、−S−、または−SO2―)または、これらの基の1〜3個
の水素を水酸基で置き換えた基である。)
【0011】
また、本発明の第二の態様の組成物は、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の組成物としては、前記第一および第二の組成物の特徴を併せ持つ、第三の態様の組成物、すなわち25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤を含み、前記硬化剤がアゾビス系の化合物であることを特徴とする組成物が好ましい。
【0013】
第二および三の態様においては、前記25℃において液体のアルケニル置換ナジイミドが、下記式(2)で示される化合物であることが好ましい。
【0014】
【化2】

【0015】
(式(2)中、R2は-Cp2p-(ただしpは2〜20の整数)で表されるアルキル、炭素数5〜8のシクロアルキル、-{(Cq2qO)t〔Cr2rO〕us2s}-で表される
ポリオキシアルキル(ただしq、r、sはそれぞれ独立に2〜6の整数、tは0または1、uは1〜30の整数)である。)
【0016】
第2および3の態様においては、前記25℃において固体のアルケニル置換ナジイミドが、下記式(3)で示される化合物であることが好ましい。
【0017】
【化3】

【0018】
(式(3)中、R3は炭素数6〜12の二価の芳香族基、−C64−T−C64−で表
される基(ただしTは−(CH2)n−(ただしnは1〜10の整数)、−C(CH3)2
、−C(CF32C−、−CO−、−O−、−OC64C(CH3)264O−、−OC6
4C(CF3)264O−、−S−、または−SO2―)または、これらの基の1〜3個の水素を水酸基で置き換えた基である。)
【0019】
本発明の組成物において、前記硬化剤が、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、および1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)からなる群から選ばれる少なくとも1種のアゾビス系の化合物であることが好ましい。
【0020】
本発明のインクジェット用インクは、上記組成物を含有することを特徴とする。
本発明の薄膜は、上記組成物、または上記インクジェット用インクを基板上に塗布し乾燥することにより得られる。
【0021】
本発明の薄膜は、パターン状薄膜であってもよい。
前記乾燥が温度60〜120℃で行われることが好ましい。
本発明のポリイミド膜は、上記薄膜を150〜350℃で焼成して得られることが好ましい。
【0022】
上記ポリイミド膜が、パターン状ポリイミド膜であることが好ましい。
本発明のフィルム基板は、基板上に前記ポリイミド膜を有することを特徴とする。
本発明の電子部品は、前記フィルム基板を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の組成物を用いて薄膜を形成した際に、柔軟性に優れる非タック性の薄膜が得られる。また、本発明の組成物は、保存性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に本発明について具体的に説明する。
本発明において、アゾビス系の化合物とは、分子内に、−N=N−で表わされる構造を有する化合物を意味する。また、本発明において、タック性とは、薄膜のべたつき易さを意味する。また、非タック性とは薄膜のべたつき難さを意味する。
【0025】
本発明の組成物は以下の三つの態様がある。
第一の態様の組成物は、アルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤を含み、前記硬化剤がアゾビス系の化合物であることを特徴とする。また、第二の態様の組成物は、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジ
イミド、溶媒および硬化剤を含むことを特徴とする。
【0026】
本発明の第三の態様の組成物は、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤を含み、前記硬化剤がアゾビス系の化合物であることを特徴とする。前記第三の態様の組成物は前記第一および第二の組成物の特徴を併せ持つ組成物である。
【0027】
なお、本発明において、25℃において液体とは、25℃、101325Paにおいて、液体であることを意味しており、25℃において固体とは、25℃、101325Paにおいて、固体であることを意味する。
【0028】
〔1.アルケニル置換ナジイミド〕
第一の態様の組成物で用いられるアルケニル置換ナジイミドとしては、通常下記式(1)で示される化合物が用いられる。
【0029】
【化4】

【0030】
式(1)中、R1は-Cp2p-(ただしpは2〜20の整数)で表されるアルキル、炭素数5〜8のシクロアルキル、-{(Cq2qO)t〔Cr2rO〕us2s}-で表されるポ
リオキシアルキル(ただしq、r、sはそれぞれ独立に2〜6の整数、tは0または1、uは1〜30の整数)、炭素数6〜12の二価の芳香族基、−C64−T−C64−で表される基(ただしTは−(CH2)n−(ただしnは1〜10の整数)、−C(CH3)2
、−C(CF32C−、−CO−、−O−、−OC64C(CH3)264O−、−OC6
4C(CF3)264O−、−S−、または−SO2―)または、これらの基の1〜3個の水素を水酸基で置き換えた基である。
【0031】
上記式(1)で示される化合物としては、N,N'−エチレンビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、ビス[2'−{3''−(アリ
ルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン2,3−ジカルボキシイミド)プロポキシ}エ
チル]エーテル、N,N'−ヘキサメチレンビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N'−ドデカメチレンビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N'−シクロへキシレンビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N'−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3
−ジカルボキシイミド)、ビス[4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−
2,3−ジカルボキシイミド)フェニル]メタン、N,N'−p−フェニレン−ビス(アリ
ルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N'−m
−フェニレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、2,2−ビス[4'−[4''−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン
−2,3−ジカルボキシイミド)フェノキシ]フェニル]プロパン、ビス[4−(アリルビ
シクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル]スルフォ
ン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
また、アルケニル置換ナジイミドとしては、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
第一の態様の組成物に含有されるアルケニル置換ナジイミドとして、上記式(1)で示される化合物を用いると、該化合物は嵩高い構造を有した低分子量のイミドモノマーであるため、ほとんどの有機溶媒に可溶であり、溶液状態の本発明の組成物を長期間保存しても結晶の析出やゲル化が起こらず安定して使用できる。また、上記式(1)で示される化合物を含む組成物から得られる薄膜は非タック性に優れ、該薄膜を加熱することで三次元架橋構造のポリイミドの膜(ポリイミド膜)が得られる。該ポリイミド膜は、良好な耐熱性、機械的特性、電気的特性、耐薬品性を示す。
【0033】
〔2.25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド〕
第二および第三の態様の組成物で用いられる25℃において液体のアルケニル置換ナジイミドとしては、通常下記式(2)で示される化合物が用いられる。
【0034】
【化5】

【0035】
式(2)中、R2は-Cp2p-(ただしpは2〜20の整数)で表されるアルキル、炭素数5〜8のシクロアルキル、-{(Cq2qO)t〔Cr2rO〕us2s}-で表されるポ
リオキシアルキル(ただしq、r、sはそれぞれ独立に2〜6の整数、tは0または1、uは1〜30の整数)である。
【0036】
本発明の組成物に含有される25℃において液体のアルケニル置換ナジイミドとして、上記式(2)で示される化合物を用いると、硬化した膜が柔軟性を有するため好ましい。
【0037】
上記式(2)で示される化合物としては、例えば下記式(2−1)〜(2−5)で表わされる化合物が挙げられる。
【0038】
【化6】

【0039】
25℃において液体のアルケニル置換ナジイミドとしては、硬化して得られる薄膜の柔軟性の観点から上記式(2−1)、(2−2)で表わされる化合物が好ましい。
また、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミドとしては、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0040】
上記式(2)で示される化合物と後述する式(3)で示される化合物とを併用して用いることが好ましい。前記液体と固体のアルケニル置換ナジイミドを含む組成物から得られる薄膜は非タック性に優れ、該薄膜を加熱することで三次元架橋構造のポリイミドの膜(ポリイミド膜)が得られる。該ポリイミド膜は、良好な耐熱性、機械的特性、電気的特性、耐薬品性を示す。なお、上記式(2)で示される化合物および後述する式(3)で示される化合物を併用することにより、前記ポリイミド膜は、柔軟性と強度とに優れる。
【0041】
〔3.25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド〕
第二および第三の態様の組成物で用いられる25℃において固体のアルケニル置換ナジイミドとしては、通常下記式(3)で示される化合物が用いられる。
【0042】
【化7】

【0043】
式(3)中、R3は炭素数6〜12の二価の芳香族基、−C64−T−C64−で表さ
れる基(ただしTは−(CH2)n−(ただしnは1〜10の整数)、−C(CH3)2−、
−C(CF32C−、−CO−、−O−、−OC64C(CH3)264O−、−OC64C(CF3)264O−、−S−、または−SO2―)または、これらの基の1〜3個の水
素を水酸基で置き換えた基である。
【0044】
第二および第三の態様の組成物に含有される25℃において固体のアルケニル置換ナジイミドとして、上記式(3)で示される化合物を用いると、乾燥時の膜のタック性の点で好ましい。
【0045】
上記式(3)で示される化合物としては、例えば下記式(3−1)〜(3−4)で表わされる化合物が挙げられる。
【0046】
【化8】

【0047】
また、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミドとしては、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0048】
〔4.溶媒〕
本発明の組成物は溶媒を含む。溶媒を含有することにより、組成物の粘度を基板に塗布するための好適な粘度に調整することができる。
【0049】
例えば、本発明の第一の態様の組成物は、前述のアルケニル置換ナジイミドおよび後述のアゾビス系の化合物である硬化剤を溶媒に溶解して得ることができ、第二の態様の組成物は、前述の25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、前述の25℃において固体のアルケニル置換ナジイミドおよび後述の硬化剤を溶媒に溶解して得ることができ、第三の態様の組成物は、前述の25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、前述の25℃において固体のアルケニル置換ナジイミドおよび後述のアゾビス系の化合物である硬化剤を溶媒に溶解して得ることができる。したがって、本発明の組成物に含まれる溶媒は、各態様に含まれる成分(アルケニル置換ナジイミド、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド、硬化剤、アゾビス系の化合物である硬化剤)を溶解可能な溶媒であれば特に制限されない。
【0050】
また、単独では各成分を溶解しない溶媒であっても、他の溶媒と混合することにより、各成分を溶解することができる溶媒、すなわち混合溶媒も溶媒として用いることが可能である。
【0051】
組成物に含まれる溶媒の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、3−メチル−3−メトキシブタノール、テトラリン、イソホロン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、マロン酸ジエチル、エタノール、2−プロパノール、ジオキサン、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。
【0052】
これらの中でも乳酸エチル、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、シクロヘキサノンおよびγ−ブチロラクトン等を好ましく挙げることができる。
溶媒は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
〔5.硬化剤〕
本発明の第一および第三の態様の組成物は、硬化剤としてアゾビス系の化合物を含有する。また、本発明の第二の態様の組成物が含有する硬化剤としては、例えば、アゾビス系の化合物、酸を発生する化合物が挙げられる。これらの硬化剤は、1種単独で用いても、
2種以上を用いてもよい。
【0054】
〔6.アゾビス系の化合物〕
第一および三の態様の組成物で用いられ、第二の態様の組成物で用いることが可能な
アゾビス系の化合物である硬化剤としては、特に限定はないが、例えば、2,2'−アゾ
ビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−
ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、α
、α'−アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられ、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチ
ルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、および1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)が好ましい。これらのアゾビス系の化合物である硬化剤は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
本発明の組成物にアゾビス系の化合物である硬化剤が含有されると、膜乾燥時のタック性がなくハンドリング性に優れるため好ましい。
【0055】
〔7、本発明の組成物に添加される添加剤〕
本発明の組成物は、第一の態様においては、アルケニル置換ナジイミド、溶媒およびアゾビス系の化合物である硬化剤、第二の態様においては、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤、第三の態様においては、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド、溶媒およびアゾビス系の化合物である硬化剤を混合して得られる。
【0056】
さらに、目的とする特性によっては、本発明の組成物は、上記成分以外のその他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、トリメリット酸等のエポキシ硬化剤、アミノシリコン化合物、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマー、顔料、染料等の添加剤が挙げられる。その他の成分は必要に応じて添加、混合し、それらを均一に溶解することにより添加剤を含有する組成物を得ることができる。
【0057】
〔7(1) エポキシ樹脂〕
本発明の組成物は、エポキシ樹脂をさらに含んでいてもよい。本発明の組成物に含まれるエポキシ樹脂は、オキシランやオキセタンを有すれば特に限定されないが、オキシランを2つ以上有する化合物が好ましい。
本発明において組成物中のエポキシ樹脂の濃度は特に限定されないが、組成物全体を100重量%として、0.1〜55重量%が好ましく、1〜40重量%がさらに好ましい。この濃度範囲であると、組成物から形成された塗膜の耐熱性、耐薬品性、平坦性が良好である。
【0058】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、オキシランを有するモノマーの重合体、および、オキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
オキシランを有するモノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびメチルグリシジル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
また、オキシランを有するモノマーと共重合を行う他のモノマーとの具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソ
プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミドおよびN−フェニルマレイミドを挙げることができる。
【0059】
オキシランを有するモノマーの重合体およびオキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体の好ましい具体例としては、ポリグリシジルメタクリレート、メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、ベンジルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、n−ブチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体およびスチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を挙げることができる。本発明の組成物がこれらのエポキシ樹脂を含有すると、組成物から形成された塗膜の耐熱性が良好となるため好ましい。
【0060】
本発明の組成物に含まれ得るエポキシ樹脂の具体例としては、商品名「jER807」、「jER815」、「jER825」、「jER827」、「jER828」、「jER190P」、「jER191P」、「jER1004」、「jER1256」(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、商品名「AER」(旭化成エポキシ(株)製)、商品名「セロキサイド2021P」、「セロキサイド3000」、「EHPE−3150」(ダイセル化学工業(株)製)、商品名「テクモアVG3101L」(三井化学(株)製)、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−
ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−4,4'−ジアミノジフェニルメタンを挙げることができる。
これらの中でも、商品名「AER」、商品名「セロキサイド2021P」、商品名「テクモアVG3101L」、商品名「jER828」は、得られるポリイミド膜の平坦性が特に良好であるため好ましい。
エポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
〔7(2) アクリル樹脂〕
本発明の組成物は、アクリル樹脂をさらに含んでもよい。組成物に含まれるアクリル樹脂は、アクリル基やメタクリル基を有すれば特に限定されない。
【0062】
組成物中のアクリル樹脂の濃度は特に限定されないが、組成物全体を100重量%とすると、0.1〜20重量%が好ましく、1〜10重量%がさらに好ましい。この濃度範囲であると、組成物から形成された塗膜の耐熱性、耐薬品性、平坦性が良好である。
【0063】
アクリル樹脂を構成するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシルを有する単官能重合性モノマー、ヒドロキシルを有しない単官能重合性モノマー、二官能(メタ)アクリレート、および、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0064】
ヒドロキシルを有する単官能重合性モノマーの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、または1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートを挙げることができる。中でも形成される膜が柔軟である点から、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートが特に好ましい。
【0065】
ヒドロキシルを有しない単官能重合性モノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、p−ビニルフェニル−3−エチルオキセタ−3−イルメチルエーテル、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、ビニルトルエン、(メタ)アクリルアミド、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニ
ルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、N−アクリロイルモルホリン、5−テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルペンチル(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル] 、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、またはシクロヘキセン−3,4−ジカルボン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]を挙げることができる。
【0066】
二官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ビスフェノールFエチレンオキシド変性ジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、またはジペンタエリスリトールジアクリレートを挙げることができる。
【0067】
三官能以上の多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレー
ト、またはウレタン(メタ)アクリレートを挙げることができる。
アクリル樹脂は、前記モノマーを少なくとも1種用いて重合することにより得られる。
これらのアクリル樹脂は1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。
【0068】
〔7(3) 界面活性剤〕
本発明の組成物には、組成物の下地となる基板に対する濡れ性、レベリング性、または塗布性を向上させるために界面活性剤が添加されていてもよい。本発明の組成物に添加される界面活性剤の具体例としては、商品名「Byk−300」、「Byk−306」、「Byk−335」、「Byk−310」、「Byk−341」、「Byk−344」、「Byk−370」(ビックケミージャパン(株)製)などのシリコン系界面活性剤;商品名「Byk−354」、「ByK−358」、「Byk−361」(ビックケミージャパン(株)製)などのアクリル系界面活性剤、商品名「DFX−18」、「フタージェント250」、「フタージェント251」((株)ネオス製)などのフッ素系界面活性剤を挙げることができる。
これらの界面活性剤は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。界面活性剤の量は、組成物全体を100重量%とすると、0.01〜1重量%含有されることが好ましい。
【0069】
〔7(4) 帯電防止剤〕
本発明の組成物には、組成物の帯電を防止するために、帯電防止剤が添加されていてもよい。本発明の組成物に添加される帯電防止剤は、特に限定されるものではなく、公知の帯電防止剤を用いることができる。具体的には、酸化錫、酸化錫・酸化アンチモン複合酸化物、酸化錫・酸化インジウム複合酸化物等の金属酸化物や四級アンモニウム塩等が挙げられる。
これらの帯電防止剤は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。帯電防止剤の量は、組成物全体を100重量%とすると、0.01〜1重量%含有されることが好ましい。
【0070】
〔7(5) カップリング剤〕
本発明の組成物には、カップリング剤を添加されていてもよい。本発明の組成物に添加されるカップリング剤は、特に限定されるものではなく、公知のカップリング剤を用いることができる。添加されるカップリング剤はシランカップリング剤が好ましく、具体的には、トリアルコキシシラン化合物またはジアルコキシシラン化合物等を挙げることができる。好ましくは、例えば、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノエチル−γ−イミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメト
キシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランが例示できる。これらの中でも、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
これらのカップリング剤は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。カップリング剤は、組成物全体を100重量%とすると、0.01〜3重量%含有されることが好ましい。
【0071】
〔7(6) エポキシ硬化剤〕
本発明の組成物にエポキシ樹脂が含有される場合には、さらにエポキシ硬化剤が含有されることが好ましい。エポキシ硬化剤としては特に限定されるものではなく、公知のエポキシ硬化剤を用いることができる。具体的には、有機酸ジヒドラジド化合物、イミダゾールおよびその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物等が挙げられる。さらに具体的には、ジシアンジアミド等のジシアンジアミド類、アジピン酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等の有機酸ジヒドラジド、2,4−ジアミノ−6−[2'−エチルイミダ
ゾリル−(1')]−エチルトリアジン、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4
−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、無水フタル酸、無水トリメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物等の酸無水物等が挙げられる。
【0072】
中でも透明性が良好なトリメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物が好ましい。これらのエポキシ硬化剤は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。
エポキシ硬化剤は、組成物全体を100重量%とすると、0.2〜5重量%含有されることが好ましい。
【0073】
〔7(7) アミノシリコン化合物〕
本発明の組成物にはアミノシリコン化合物が添加されていてもよい。アミノシリコン化合物としては、パラアミノフェニルトリメトキシシラン、パラアミノフェニルトリエトキシシラン、メタアミノフェニルトリメトキシシラン、メタアミノフェニルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらのアミノシリコン化合物は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。アミノシリコン化合物は、基板への密着性をよくするために使用するものであり、組成物全体を100重量%とすると、0.05〜2重量%含有されることが好ましい。
【0074】
〔8.第一の態様の組成物〕
本発明の第一の態様の組成物は、前述のようにアルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤を含み、前記硬化剤がアゾビス系の化合物であることを特徴とする。
【0075】
第一の態様の組成物において含有されるアルケニル置換ナジイミド、溶媒およびアゾビス系の化合物である硬化剤の量は特に限定されないが、アルケニル置換ナジイミドおよび溶媒の合計を100重量%とすると、アルケニル置換ナジイミドが通常は1〜99重量%であり、好ましくは10〜80重量%であり、溶媒が通常は1〜99重量%であり、好ましくは20〜90重量%である。また、アルケニル置換ナジイミドを100重量%とすると、アゾビス系の化合物である硬化剤は通常は1〜30重量%であり、好ましくは5〜2
0重量%である。
【0076】
また、組成物全体を100重量%とすると、アルケニル置換ナジイミドおよび溶媒の合計が通常は77〜99.7重量%であり、好ましくは87〜95重量%である。
前記範囲では、該組成物を基板上に塗布し、乾燥することにより得られる薄膜の厚さが最適となるため好ましい。また、該薄膜を150〜350℃で焼成してポリイミド膜を得る際に、硬化収縮および基材の反りが発生しがたいため好ましい。
【0077】
第一の態様の組成物はタック性の点でメリットがあり、30重量%以上の濃度でも粘度が20mPa・s以下とハンドリング性が優れている。
【0078】
〔9.第二の態様の組成物〕
本発明の第二の態様の組成物は、前述のように25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤を含むことを特徴とする。
【0079】
第二の態様の組成物において含有される25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤の量は特に限定されないが、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミドおよび溶媒の合計を100重量%とすると、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミドが通常は0.8〜80重量%であり、好ましくは20〜60重量%であり、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミドが通常は0.2〜50重量%であり、好ましくは5〜45重量%であり、溶媒が通常は1〜99重量%であり、好ましくは10〜75重量%である。また、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミドおよび25℃において固体のアルケニル置換ナジイミドの合計を100重量%とすると、硬化剤は通常は1〜30重量%であり、好ましくは5〜20重量%である。
【0080】
また、組成物全体を100重量%とすると、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミドおよび溶媒の合計が通常は87〜98重量%であり、好ましくは90〜95重量%である。前記範囲では、該組成物を基板上に塗布し、乾燥することにより得られる薄膜の厚さが最適となるため好ましい。また、該薄膜を150〜350℃で焼成してポリイミド膜を得る際に、硬化収縮および基材の反りが発生しがたいため好ましい。
【0081】
第二の態様の組成物では、そこから得られる薄膜には柔軟性が付与される。
【0082】
〔10.第三の態様の組成物〕
本発明の第三の態様の組成物は、前述のように25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤を含み、前記硬化剤がアゾビス系の化合物であることを特徴とする。
【0083】
第三の態様の組成物において含有される25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド、溶媒およびアゾビス系の化合物である硬化剤の量は特に限定されないが、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミドおよび溶媒の合計を100重量%とすると、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミドが通常は0.8〜80重量%であり、好ましくは20〜60重量%であり、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミドが通常は0.2〜50重量%であり、好ましくは5〜45重量%であり、溶媒が通常は1〜99重量%であり、好ましくは10〜75重量%である。また、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミドおよび25℃において固体のアルケニル置換ナジイミドの合
計を100重量%とすると、アゾビス系の化合物である硬化剤は通常は1〜30重量%であり、好ましくは5〜20重量%である。
また、組成物全体を100重量%とすると、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミドおよび溶媒の合計が通常は87〜98重量%であり、好ましくは90〜95重量%である。前記範囲では、該組成物を基板上に塗布し、乾燥することにより得られる薄膜の厚さが最適となるため好ましい。また、該薄膜を150〜350℃で焼成してポリイミド膜を得る際に、硬化収縮および基材の反りが発生しがたいため好ましい。
【0084】
第三の態様においては、その組成物から薄膜を作製する際の、乾燥が速やかに行われ、得られる薄膜の柔軟性も保持される。
【0085】
〔11.組成物の製造方法〕
本発明の組成物は前述のように、第一の態様においては、アルケニル置換ナジイミド、溶媒およびアゾビス系の化合物である硬化剤、第二の態様においては、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤、第三の態様においては、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド、溶媒およびアゾビス系の化合物である硬化剤を混合して得られる。
【0086】
混合する際の条件としては、特に限定はないが、溶媒中に各成分を加え、通常0〜100℃、好ましくは8〜70℃で、通常0.2〜20時間、好ましくは、2〜10時間攪拌し、組成物の粘度が均一になるまで混合することにより、本発明の組成物が得られる。
【0087】
〔12.組成物の粘度〕
本発明において組成物の粘度は、特に限定はなく、該組成物を塗布する際の塗布法に応じて適宜設定することができる。インクジェット法によって、組成物の塗布を常温で行う場合は、塗布の精度が向上する観点から、組成物の粘度は、好ましくは1〜50mPa・s(25℃)であり、さらに好ましくは5〜30mPa・s(25℃)、より好ましくは8〜20mPa・s(25℃)である。粘度が50mPa・s(25℃)以下であると、粘性が高くなりすぎず、ジェッティング精度に優れており、粘度が1mPa・s(25℃)以上の場合には、組成物の粘度が低くなりすぎず、塗布を行った基材上で濡れ広がることがなく実用的である。
【0088】
本発明において、粘度を1〜50mPa・s(25℃)に調整するためには、組成物におけるアルケニル置換ナジイミドと溶媒の量とを調整すればよい。
また、インクジェット法によって、組成物の塗布を加熱状態で行う場合には、通常インクヘッドを加熱してジェッティングを行うが、加熱温度(アルケニル置換ナジイミド化合物が硬化しない温度、好ましくは40〜120℃)において、組成物の粘度は、好ましくは1〜50mPa・s、より好ましくは5〜30mPa・s、さらに好ましくは8〜20mPa・sであればよい。
【0089】
〔13.インクジェット用インク〕
本発明のインクジェット用インクは、前述の組成物を含有することを特徴とする。
本発明のインクジェット用インクは、前述の組成物のみからなるインクでもよく、前述の組成物以外の他の成分を含んでいてもよい。また、本発明のインクジェット用インクは、無色であっても有色であってもよい。
【0090】
前記他の成分としては、特に限定はないが、インクジェットのヘッドの腐食をおこさないもの、例えばアクリル材料が挙げられる。
インクジェットインクの表面張力は20〜40mN/cm2が望ましい。
【0091】
〔14.薄膜〕
本発明の薄膜は、前述の組成物を基板上に塗布し、乾燥することにより得てもよく、前述のインクジェット用インクを、基板上にインクジェット法により塗布し、乾燥することにより得てもよい。
【0092】
本発明の薄膜は、前述の組成物またはインクジェット用インクを用いて形成されるため、非タック性に優れる。ここで、「非タック性」に優れるとは、薄膜の表面がべたつかずに滑らかであることを意味する。
【0093】
前述の組成物を基板上に塗布する方法としては特に限定はないが、インクジェット法、スピンコート法等が挙げられ、中でもインクジェット法が好ましい。インクジェット法で塗布することにより、液(組成物)のロスが少なくできるために好ましい。
【0094】
また本発明の薄膜は、その形状としては、パターン状、面状、ドット等の形状が挙げられる。なお、パターン状の薄膜をパターン状薄膜とも記す。このパターン状には、ライン状、格子状などさまざまな形状が含まれる。
【0095】
前記乾燥する際の条件としては、溶媒の乾燥温度は、好ましくは60〜120℃であり、より好ましくは80〜120℃であり、乾燥時間は、通常1分〜60分、より好ましくは5分〜30分である。
【0096】
本発明に用いられる前記基板としては、特に限定はなく、公知の基板が用いられる。具体的には、前記基板としては、例えば、FR−1、FR−3、FR−4、CEM−3、又はE668等の各種規格を有する、ガラスエポキシ基板、ガラスコンポジット基板、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、グリーンエポキシ基板、又はBTレジン基板等のプリント配線板が挙げられる。
【0097】
また、本発明に適用可能な他の基板としては、銅、黄銅、リン青銅、ベリリウム銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、スズ、クロム、又はステンレス等の金属からなる基板または基板上の金属部、(それらの金属の表面を有する基板であってもよい)や;酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、ジルコニウムのケイ酸塩(ジルコン)、酸化マグネシウム(マグネシア)、チタン酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛(PT)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、硫化カドニウム、硫化モリブデン、酸化ベリリウム(ベリリア)、酸化ケイ素(シリカ)、炭化ケイ素(シリコンカーバイト)、窒化ケイ素(シリコンナイトライド)、窒化ホウ素(ボロンナイトライド)、酸化亜鉛、ムライト、フェライト、ステアタイト、ホルステライト、スピネル、又はスポジュメン等のセラミックスからなる基板または基板上のセラミックス部、(それらのセラミックスの表面を有する基板であってもよい)や;PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PCT(ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、テフロン(登録商標)、熱可塑性エラストマー、又は液晶ポリマー等の樹脂からなる基板または基板上の樹脂部、(それらの樹脂の表面を有する基板であってもよい)や;シリコン、ゲルマニウム、又はガリウム砒素等の半導体基板や;ガラス基板や;あるいは基板上の酸化スズ、酸化亜鉛、ITO、又はATO等の電極材料が表面に形成された基板や;αGEL(
アルファゲル)、βGEL(ベータゲル)、θGEL(シータゲル)、γGEL(ガンマゲル)、ΣGEL(シグマゲル)、又はλGEL(ラムダゲル)、(以上、株式会社タイカの登録商標)等のゲルシートなど;各種基板、ウエハあるいはシートが挙げられる。
【0098】
〔15.ポリイミド膜〕
本発明のポリイミド膜は、前述の薄膜を、150〜350℃、好ましくは200〜300℃で焼成して得られる。本発明のポリイミド膜は、前述の薄膜を焼成することにより、前述の組成物に含まれるアルケニル置換ナジイミド(第一の態様の組成物)、25℃において液体のアルケニル置換ナジイミドおよび25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド(第二、第三の態様の組成物)の有する二重結合が重合することにより形成される。焼成時間としては、通常は20分〜5時間であり、好ましくは30分〜2時間である。なお、前述の薄膜が、パターン状薄膜の場合には、形状がパターン状であるパターン状ポリイミド膜が得られる。
【0099】
本発明のポリイミド膜は、耐熱性、電気絶縁性、低反り性に優れた絶縁膜である。また、前述の組成物として、エポキシ樹脂を含む場合には、強靭で耐薬品性、平坦性、密着性および耐スパッタ性に優れる絶縁膜となり好ましい。
【0100】
〔16.フィルム基板〕
本発明のフィルム基板は、前述のポリイミド膜を有するフィルム基板であれば、特に限定はない。フィルム基板としては、例えば、予め配線が形成されたポリイミドフィルム等の基板上に、本発明の組成物をインクジェット法により、全面または所定のパターン状に塗布し、その後、当該基板を乾燥し、さらに焼成することによって、一部または全面が絶縁性を有するポリイミド膜で被覆されたフレキシブルなフィルム基板を得ることができる。本発明のフィルム基板はフレキシブル配線基板等の電子部品に用いることができる。
【0101】
〔17.電子部品〕
本発明の電子部品は、前述のフィルム基板を有していればよい。前記フィルム基板を有する電子部品としては、フレキシブル配線基板等が挙げられる。
【実施例】
【0102】
実施例における各物性(タック性、粘度(保存性))は、次の測定法で測定を行った。・タック性は、指で薄膜の表面に触れて、べたつき感の有無を観察し、べたつき感があった場合には、「タック性」が「有」と判定し、べたつき感がなかった場合には、「タック性」が「無」と判定した。
・粘度はE型回転粘度計を用いて、組成物の25℃における粘度を測定した。
なお、一部の試験において、保存性を測定した。保存性についは、組成物の粘度(25℃)を測定した。一ヶ月後の粘度変化が少ない場合に、保存性が良好と判断した。
【0103】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0104】
〔合成例1〕
ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル(44g)を溶解したTH
F溶液にアリルナジック酸(丸善石油化学(株))(82g)を室温で添加した後に、室温で4時間攪拌してその液を濃縮した。濃縮して得られた残渣を180℃で30分間加熱して、25℃で粘調な液体のアルケニル置換ナジイミド(BANI−BAPEE)(下記式(4))118gを得た。イミド化物の同定はFT−IRを用いて赤外吸収スペクトル(イミド環カルボニル基の伸縮振動1692cm-1、1766cm-1)で確認した。
【0105】
【化9】

【0106】
〔BANI−M、BANI−X〕
以下の実施例、比較例で用いたBANI−Mは、25℃で固体の下記式(5)で表わされるアルケニル置換ナジイミド(丸善石油化学(株))であり、BANI−Xは、25℃で固体の下記式(6)で表わされるアルケニル置換ナジイミド(丸善石油化学(株))である。
【0107】
【化10】

【0108】
〔実施例1〕
BANI−BAPEE(0.4g)とBANI−M(丸善石油化学(株))(0.4g)をジエチレングリコールメチルエチルエーテル(EDM)(1.2g)に溶解した溶液に2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.04g、BANI−BAPEEおよびBANI−Mの合計100重量%に対して、5重量%)を加えて液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、120℃で5分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表1に示す。
【0109】
〔実施例2〕
BANI−BAPEE(0.4g)とBANI−M(0.4g)をEDM(1.2g)に溶解した溶液に、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.08g、BANI−BAPEEおよびBANI−Mの合計100重量%に対して、10重量%)を加えて液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、80℃で15分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表1に示す。
【0110】
〔実施例3〕
実施例2で作製した液体状の組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、100℃で10分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表1に示す。
【0111】
〔実施例4〕
実施例2で作製した液体状の組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、120℃で5分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表1に示す。
【0112】
〔実施例5〕
BANI−BAPEE(0.4g)とBANI−M(0.4g)をEDM(1.2g)に溶解した溶液に、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.16g、BANI−BAPEEおよびBANI−Mの合計100重量%に対して、20重量%)を加えて液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、80℃で10分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表1に示す。
【0113】
〔実施例6〕
実施例5で作製した液体状の組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、100℃で5分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表1に示す。
【0114】
〔実施例7〕
実施例5で作製した液体状の組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、120℃で5分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表1に示す。
【0115】
〔実施例8〕
BANI−BAPEE(0.4g)とBANI−M(0.4g)をEDM(1.2g)に溶解した溶液に2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.24g、BANI−BAPEEおよびBANI−Mの合計100重量%に対して、30重量%)を加えて、液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、80℃で10分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表1に示す。
【0116】
〔実施例9〕
実施例8で作製した液体状の組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、100℃で5分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表2に示す。
【0117】
〔実施例10〕
BANI−BAPEE(0.7g)とBANI−M(0.3g)をEDM(1.0g)に溶解した溶液に2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.05g、BANI−BAPEEおよびBANI−Mの合計100重量%に対して、5重量%)を加えて、液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、120℃で10分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表2に示す。
【0118】
〔実施例11〕
BANI−BAPEE(0.7g)とBANI−M(0.3g)をEDM(1.0g)に溶解した溶液に2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.1g、BANI−BAPEEおよびBANI−Mの合計100重量%に対して、10重量%)を加えて、液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、120℃で5分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表2に示す。
【0119】
〔実施例12〕
BANI−BAPEE(0.7g)とBANI−M(0.3g)をEDM(1.0g)に溶解した溶液に2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.2g、BANI−BAPEEおよびBANI−Mの合計100重量%に対して、20重量%)を加えて
、液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、100℃で10分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表2に示す。
【0120】
〔実施例13〕
BANI−BAPEE(0.7g)とBANI−M(0.3g)をEDM(1.0g)に溶解した溶液に2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.2g、BANI−BAPEEおよびBANI−Mの合計100重量%に対して、20重量%)を加えて、液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、120℃で5分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表2に示す。
【0121】
〔実施例14〕
BANI−BAPEE(0.7g)とBANI−M(0.3g)をEDM(1.0g)に溶解した溶液に2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.3g、BANI−BAPEEおよびBANI−Mの合計100重量%に対して、30重量%)を加えて、液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、100℃で10分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表2に示す。
【0122】
〔実施例15〕
BANI−BAPEE(0.7g)とBANI−M(0.3g)をEDM(1.0g)に溶解した溶液に2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.3g、BANI−BAPEEおよびBANI−Mの合計100重量%に対して、30重量%)を加えて、液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、120℃で5分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表2に示す。
【0123】
〔実施例16〕
BANI−BAPEE(0.7g)とBANI−M(0.3g)をEDM(1.0g)に溶解した溶液に1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル(0.1g、BANI−BAPEEおよびBANI−Mの合計100重量%に対して、10重量%)を加えて、液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、120℃で15分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表2に示す。
【0124】
〔実施例17〕
BANI−BAPEE(0.7g)とBANI−X(丸善石油化学(株))(0.3g)をEDM(1.0g)に溶解した溶液に2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.2g、BANI−BAPEEおよびBANI−Xの合計100重量%に対して、20重量%)を加えて、液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、120℃で10分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表2に示す。
【0125】
〔実施例18〕
BANI−BAPEE(0.8g)とBANI−X(0.2g)をEDM(1.0g)に溶解した溶液に2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.2g、BANI−BAPEEおよびBANI−Xの合計100重量%に対して、20重量%)を加えて、液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、120℃で20分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表3に示す。
【0126】
〔実施例19〕
BANI−BAPEE(0.8g)とBANI−X(0.2g)をEDM(1.0g)に溶解した溶液に2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(0.2g、BANI−
BAPEEおよびBANI−Xの合計100重量%に対して、20重量%)を加えて、液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、120℃で15分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表3に示す。
【0127】
〔比較例1〕
BANI−BAPEE(0.4g)とBANI−M(0.4g)をEDM(1.2g)に溶解して、液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、120℃で15分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表3に示す。
【0128】
〔比較例2〕
BANI−BAPEE(3.5g)とBANI−M(1.5g)をEDM(5g)に溶解して、液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、120℃で15分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表3に示す。
【0129】
〔比較例3〕
BANI−BAPEE(0.7g)とBANI−X(0.3g)をEDM(1.0g)に溶解して、液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、120℃で15分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表3に示す。
【0130】
〔比較例4〕
BANI−BAPEE(0.8g)とBANI−X(0.2g)をEDM(1.0g)に溶解して、液体状の組成物を作製した。この組成物をガラス基板上に塗布、製膜後、120℃で20分間乾燥させた際に得られる薄膜のタック性の有無を観察した。その結果を表3に示す。
【0131】
【表1】

【0132】
【表2】

【0133】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤を含み、前記硬化剤がアゾビス系の化合物であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤を含むことを特徴とする組成物。
【請求項3】
25℃において液体のアルケニル置換ナジイミド、25℃において固体のアルケニル置換ナジイミド、溶媒および硬化剤を含み、前記硬化剤がアゾビス系の化合物であることを特徴とする組成物。
【請求項4】
前記硬化剤が、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−ア
ゾビス(2-メチルブチロニトリル)、および1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−
カルボニトリル)からなる群から選ばれる少なくとも1種のアゾビス系の化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記アルケニル置換ナジイミドが下記式(1)で示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【化1】

(式(1)中、R1は-Cp2p-(ただしpは2〜20の整数)で表されるアルキル、炭素数5〜8のシクロアルキル、-{(Cq2qO)t〔Cr2rO〕us2s}-で表される
ポリオキシアルキル(ただしq、r、sはそれぞれ独立に2〜6の整数、tは0または1、uは1〜30の整数)、炭素数6〜12の二価の芳香族基、−C64−T−C64−で表される基(ただしTは−(CH2)n−(ただしnは1〜10の整数)、−C(CH3)2
−、−C(CF32C−、−CO−、−O−、−OC64C(CH3)264O−、−OC64C(CF3)264O−、−S−、または−SO2―)または、これらの基の1〜3個
の水素を水酸基で置き換えた基である。)
【請求項6】
前記25℃において液体のアルケニル置換ナジイミドが、下記式(2)で示される化合物であることを特徴とする請求項2または3に記載の組成物。
【化2】

(式(2)中、R2は-Cp2p-(ただしpは2〜20の整数)で表されるアルキル、炭素数5〜8のシクロアルキル、-{(Cq2qO)t〔Cr2rO〕us2s}-で表される
ポリオキシアルキル(ただしq、r、sはそれぞれ独立に2〜6の整数、tは0または1、uは1〜30の整数)である。)
【請求項7】
前記25℃において固体のアルケニル置換ナジイミドが、下記式(3)で示される化合物であることを特徴とする請求項2または3に記載の組成物。
【化3】

(式(3)中、R3は炭素数6〜12の二価の芳香族基、−C64−T−C64−で表
される基(ただしTは−(CH2)n−(ただしnは1〜10の整数)、−C(CH3)2
、−C(CF32C−、−CO−、−O−、−OC64C(CH3)264O−、−OC6
4C(CF3)264O−、−S−、または−SO2―)または、これらの基の1〜3個の水素を水酸基で置き換えた基である。)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とするインクジェット用インク。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の組成物を基板上に塗布し、乾燥することにより得られることを特徴とする薄膜。
【請求項10】
請求項8に記載のインクジェット用インクを、基板上にインクジェット法により塗布し、乾燥することにより得られる薄膜。
【請求項11】
前記薄膜が、パターン状薄膜であることを特徴とする請求項9または10に記載の薄膜。
【請求項12】
前記乾燥が温度60〜120℃で行われることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の薄膜。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれかに記載の薄膜を、150〜350℃で焼成して得られることを特徴とするポリイミド膜。
【請求項14】
前記ポリイミド膜が、パターン状ポリイミド膜であることを特徴とする請求項13に記載のポリイミド膜。
【請求項15】
基板上に、請求項13または14に記載のポリイミド膜を有することを特徴とするフィルム基板。
【請求項16】
請求項15に記載のフィルム基板を有することを特徴とする電子部品。

【公開番号】特開2010−106212(P2010−106212A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282160(P2008−282160)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】