説明

アルコール可溶性樹脂及びその調製方法

本発明は、アルコール可溶性樹脂及びその調製方法であって、樹脂性能が特定の使用上の要求を満たすように、ポリマー原料における酢酸ビニルモノマーの含有量を50〜90%にするとともに、アクリル酸エステル類モノマー及び他の反応性官能基を有する化合物を原料に加えたアルコール可溶性樹脂及びその調製方法を提供する。本発明は、当該樹脂によって調製されたアルコール可溶性インク、複合接着剤、印刷用つや出しオイル、木材製品つや出しラッカー、プラスチック表面塗装用塗料、金属表面保護用塗料及び毛髪着色剤並びにそれらの調製方法をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール可溶性共重合樹脂に関し、具体的には、アルコール可溶性インク、アルコール可溶性プラスチック複合接着剤等のアルコール可溶性化学精製品の調製において主原料となるアルコール可溶性樹脂及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂は、インク、接着剤、塗料等の化学精製品を生産する際の主原料であり、これら化学精製品の性能、コスト及び使用時にどのような溶媒で希釈するかということは樹脂によって決まる。現在、上記製品を生産するための樹脂のほとんどはベンゼン類やケトン類を溶媒として希釈されるが、これらの溶媒は環境を著しく汚染するだけでなく、石油精製品であるため、石油価格の上昇に伴ってコストも大幅に増加する。コスト面及び環境保全面での圧迫により、アルコール類を溶媒とする樹脂に対する市場のニーズは次第に高まっている。これまでに、上記化学精製品を生産できるような成熟したアルコール可溶性樹脂としては、アルコール可溶性ポリアミド樹脂、アルコール可溶性ポリウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂があるが、これらのタイプの樹脂は原材料コストや生産技術上の原因等により高価であり、上記製品の生産に用いるとコストが高くなるため、アルコール可溶性樹脂のコストを下げることが市場から強く求められている。
【0003】
酢酸ビニルは市場において最も安価且つ無毒のモノマー原料の一つであり、且つそのポリマーはアルコールに対して可溶であるため、これを主原料にしてアルコール可溶性樹脂を生産すればコストを大幅に下げることができる。しかしながら、酢酸ビニルホモポリマーのガラス転移温度は28℃であり、軟化点が低いため、加熱されるとすぐに軟化・変形してしまう上、吸湿しやすく、吸湿すれば樹脂の性能に大きな影響が出てしまう。よって、酢酸ビニルを主原料とした、上記製品上の要求を満たすアルコール可溶性樹脂の合成に関する発表は、現在のところ国内外共に見受けられない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、インク等の化学精製品製造に用いることのできるアルコール可溶性樹脂を調製することを目的とする。また、本発明は、当該樹脂の調製方法及び用途を提供することをもう一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が提供するアルコール可溶性樹脂は、50%〜90%w/wの酢酸ビニルを含む原料を、アゾジイソブチロニトリル及び/又は過酸化ベンゾイルを開始剤として重合させたものである。
【0006】
具体的には、下記の重量比を有する原料から調製される。
【0007】
酢酸ビニル 50〜90%
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル 4〜35%
反応性官能基を有する化合物 6〜15%
原料の総重量に対して0.1〜1.1%の開始剤を加え、エステル類及び/又はアルコール類の溶媒中で重合させることにより得られる。
【0008】
比較・選別した場合、より好ましい原材料配合比は以下の通りである。
【0009】
酢酸ビニル 80〜90%
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル 4〜10%
反応性官能基を有する化合物 6〜10%
調製の際、開始剤として上記原料の総重量に対して0.2〜0.9%のアゾジイソブチロニトリル及び/又は過酸化ベンゾイルを加える必要があり、エステル類及び/又はアルコール類の溶媒中で重合させて本発明のアルコール可溶性樹脂を得る。
【0010】
前記反応性官能基を有する化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、ブテン二酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、不飽和酸とジエポキシドとの反応物、アクリルアミド、メタクリルアミド及びヒドロキシメチルアクリルアミドのうちの一種又は数種である。
【0011】
本発明が提供するアルコール可溶性樹脂の調製方法は、以下の工程を含む。
a.下記の配合比に従って原料を量り取る。
成分(A) 酢酸ビニル 25〜45%
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル 1〜10%
上記酢酸ビニル並びにアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの総重量に対して10〜35%の量のアルコール類又はエステル類溶媒を加える。
成分(B) 酢酸ビニル 25〜45%
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル 3〜25%
反応性官能基を有する化合物 6〜15%
このほか、原料の総重量に対して0.1〜0.7%の開始剤を加える。
成分(C) 原料の総重量に対して0.1〜0.4%の開始剤をエステル類及びアルコール類溶媒に溶解させておく。
【0012】
上記開始剤の総量は原料の総重量の0.1〜1.1%である。
【0013】
b.成分(A)を反応釜に入れて撹拌し、還流温度まで加温する。
【0014】
c.1.5〜4時間かけて反応釜に成分(B)を滴下し、滴下完了後続けて1時間反応させる。
【0015】
d.工程(c)完了後、0.5時間かけて成分(C)を滴下し、材料温度を70〜85℃に制御して続けて2時間反応させる。
【0016】
e.製品の濃度上の必要によって、アルコール類及び/又はエステル類の溶媒を加えて希釈し、撹拌しながら温度を下げ、釜の中の材料温度が50℃以下に下がった時に材料を取り出すと、必要な濃度のアルコール可溶性樹脂が得られる。
【0017】
上記の工程(a)の原料配合比は、以下の通りになっているのが好ましい。
成分(A) 酢酸ビニル 40〜45%
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル 2〜4%
上記酢酸ビニル並びにアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの総重量に対して10〜35%のアルコール類又はエステル類溶媒を加える。
成分(B) 酢酸ビニル 40〜45%
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル 2〜6%
反応性官能基を有する化合物 6〜10%
このほか、原料の総重量に対して0.1〜0.7%の開始剤を加える。
成分(C) 原料の総重量に対して0.1〜0.4%の開始剤をエステル類及び/又はアルコール類溶媒に溶解させておく。
【0018】
本発明は、インク、プラスチック複合接着剤、木材製品つや出しラッカー、紙印刷用つや出しオイル、プラスチック表面塗装用塗料、金属表面保護用塗料、毛髪着色剤の調製におけるアルコール可溶性樹脂の用途をさらに提供する。
【0019】
本発明は、上記のアルコール可溶性樹脂によって調製されたインク、プラスチック複合接着剤をさらに提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、具体的な実施の形態によって本発明をさらに詳述するが、これを本発明の保護範囲に対する限定と解釈すべきではない。上記の技術構想に基づき、本分野の一般的な技術的知識及び慣用的手法によってなされる修正、差し替え、変更は全て本発明の範囲に属する。
【0021】
実施形態1 本発明のアルコール可溶性樹脂の調製
設備 本発明に必要な設備は、撹拌器、還流コンデンサ、ステンレス滴下ケース、及び加熱・温度制御器を備えた反応釜である。
【0022】
(1)酢酸ビニル40キログラム、アクリル酸エチル2キログラム、アクリル酸メチル1キログラム及びメタクリル酸メチル3キログラムを成分(A)とし、さらに希釈剤としてイソプロピルアルコール10キログラム及び酢酸エチル5キログラムの溶媒をともに反応釜に加え、加温・撹拌する。
【0023】
(2)酢酸ビニル40キログラム、アクリル酸エチル3キログラム、アクリル酸メチル1キログラム、メタクリル酸メチル3キログラム、アクリル酸4キログラム、アクリル酸ヒドロキシプロピル3キログラム及びアゾジイソブチロニトリル0.5キログラムを成分(B)とし、滴下ケースに入れる。釜の中の材料温度が還流温度まで上がってから、2時間かけて釜の中に滴下した後、1時間反応させる。
【0024】
(3)アゾジイソブチロニトリル0.2キログラムを、イソプロピルアルコール2.5キログラム及び酢酸エチル2.5キログラムに加えて溶解させた後、0.5時間かけて釜内に滴下する。
【0025】
(4)保温して2時間反応させた後、酢酸エチル20キログラム、工業用アルコール60キログラムを釜に加え、冷却して温度を下げてから取り出すと、固形分50%の樹脂200.7キログラムが得られる。
【0026】
実施形態1に記載の調合によって作られた樹脂は、グラビアプラスチック表面印刷用インクを生産するのに最適である。
【0027】
実施形態2 本発明のアルコール可溶性樹脂の調製
下記の配合比に従って原料を量り取る。
成分(A) 酢酸ビニル 40キログラム
アクリル酸メチル 1キログラム
メタクリル酸メチル 7キログラム
このほか、希釈剤としてイソプロピルアルコールを15キログラム加える。
成分(B) 酢酸ビニル 33キログラム
アクリル酸メチル 2キログラム
メタクリル酸メチル 8キログラム
メタクリル酸 3キログラム
アクリル酸ヒドロキシプロピル 3キログラム
アクリル酸グリシジル 3キログラム
過酸化ベンゾイル 0.5キログラム
成分(C) アゾジイソブチロニトリル0.2キログラムをイソプロピルアルコール及び酢酸エチル各2.5キログラムに溶解させる。
【0028】
このほか、希釈剤として酢酸エチル20キログラム、工業用アルコール60キログラムを準備し、実施形態1と同じ調製方法により、固形分50%の樹脂200.7キログラムを得る。
【0029】
実施形態2に記載の調合によって作られた樹脂は、耐熱・耐蒸気グラビアプラスチック複合インクを生産するのに最適である。
【0030】
実施形態3 本発明のアルコール可溶性樹脂の調製
下記の配合比に従って原料を量り取る。
成分(A) 酢酸ビニル 45キログラム
アクリル酸メチル 1キログラム
このほか、希釈剤として無水アルコールを15キログラム加える。
成分(B) 酢酸ビニル 45キログラム
アクリル酸メチル 3キログラム
メタクリル酸 6キログラム
アゾジイソブチロニトリル 0.5キログラム
成分(C) アゾジイソブチロニトリル0.2キログラムを酢酸エチル溶媒5キログラムに溶解させる。
【0031】
このほか、希釈剤として酢酸エチル20キログラム、工業用アルコール60キログラムを準備し、実施形態1と同じ調製方法により、固形分50%の樹脂200.7キログラムを得る。
【0032】
実施形態3に記載の調合によって作られた樹脂は、コンベンショナルグラビアプラスチック複合インクを生産するのに最適である。
【0033】
実施形態4 本発明のアルコール可溶性樹脂の調製
下記の配合比に従って原料を量り取る。
成分(A) 酢酸ビニル 25キログラム
アクリル酸ブチル 20キログラム
このほか、希釈剤としてイソプロピルアルコールを15キログラム加える。
成分(B) 酢酸ビニル 25キログラム
アクリル酸 5キログラム
アクリル酸ブチル 15キログラム
アクリル酸ヒドロキシプロピル 10キログラム
アゾジイソブチロニトリル 0.7キログラム
成分(C) アゾジイソブチロニトリル0.2キログラムをイソプロピルアルコール及び酢酸エチル各2.5キログラムに溶解させる。
【0034】
このほか、希釈剤として酢酸エチル40キログラム、工業用アルコール40キログラムを準備し、実施形態1と同じ調製方法により、固形分50%の樹脂200.9キログラムを得る。
【0035】
実施形態4に記載の調合によって作られた樹脂は、固形分50%のプラスチック複合接着剤となる。
【0036】
実施形態5 本発明のアルコール可溶性インクの調製
本発明の樹脂を用いてアルコール可溶性インクを生産する際の配合は以下の通りである(重量比)。
【0037】
実施形態1、2又は3において調製された樹脂溶液(固形分50%) 35キログラム
チタン白粉 35キログラム
テルペンフェノール樹脂 1キログラム
酢酸エチル 6〜9キログラム
工業用アルコール 21〜24キログラム
本発明の樹脂を用いてアルコール可溶性インクを生産するプロセスは以下の通りである。
【0038】
上記の原料を容器に入れ、高速で20分間撹拌して、均一に分散するよう十分に混ぜ合わせ、粉砕時の材料温度が40℃を超えないよう保ちながら、粉末度が15ミクロン以下になるまでサンドミルによって粉砕すれば出来上がる。
【0039】
実施形態6 本発明のアルコール可溶性樹脂の調製
下記の配合比に従って原料を量り取る。
成分(A) 酢酸ビニル 30キログラム
アクリル酸メチル 2キログラム
このほか、希釈剤としてイソプロピルアルコールを10キログラム加える。
成分(B) 酢酸ビニル 30キログラム
メタクリル酸メチル 25キログラム
メタクリル酸 3キログラム
アクリル酸メチル 5キログラム
メタクリル酸グリシジル 3キログラム
cis−ブテン二酸 2キログラム(エタノール5キログラムに溶解させる)
過酸化ベンゾイル 0.5キログラム
成分(C) 過酸化ベンゾイル0.3キログラムを酢酸エチル5キログラムに溶解させる。
【0040】
このほか、希釈剤として酢酸エチル20キログラム、工業用アルコール60キログラムを準備し、実施形態1と同じ調製方法により、固形分50%の樹脂200.8キログラムを得る。
【0041】
実施形態6に記載の調合によって作られた樹脂は、木材製品つや出しラッカー、紙印刷用つや出しオイル及びプラスチック表面塗装用塗料として好適に用いられる。
【0042】
実施形態7 本発明の木材製品つや出しラッカー生産のための調製
本発明の樹脂を用いて木材製品つや出しラッカーを生産する際の配合は以下の通りである(重量比)。
【0043】
実施形態6において調製された樹脂溶液(固形分50%) 45キログラム
ニトロセルロースアルコール溶液(70%) 20キログラム
ジブチルエステル 3キログラム
酢酸エチル 12キログラム
ブタノール 8キログラム
無水アルコール 12キログラム
本発明の木材製品つや出しラッカーを生産するためのプロセスは以下の通りである。
【0044】
上記の原料を容器に入れ、10分間撹拌して均一に分散するよう十分に混ぜ合わせ、ろ過すれば出来上がる。
【0045】
実施形態8 本発明の紙印刷用つや出しオイルの調製
本実施形態の紙印刷用つや出しオイルを生産する際の配合は以下の通りである(重量比)。
【0046】
実施形態6において調製された樹脂溶液(固形分50%) 40キログラム
アルコール可溶性ロジン液(固形分20%) 35キログラム
気相二酸化シリコン 3キログラム
酢酸エチル 7キログラム
ブタノール 2キログラム
無水アルコール 13キログラム
本実施形態のプロセスは以下の通りである。
【0047】
上記の原料を容器に入れ、高速で30分間撹拌して均一に分散するよう十分に混ぜ合わせ、ろ過すれば出来上がる。
【0048】
実施形態9 本発明のアルコール可溶性プラスチック表面塗装用塗料の調製
本発明の樹脂を用いてプラスチック表面塗装用塗料を生産する際の配合は以下の通りである(重量比)。
【0049】
実施形態6において調製された樹脂溶液(固形分50%) 45キログラム
顔料 20キログラム
レベリング剤 0.3キログラム
沈殿防止剤 1キログラム
酢酸エチル 10キログラム
ブタノール 2キログラム
無水アルコール 21キログラム
本発明の樹脂を用いてプラスチック表面塗装用塗料を生産する際のプロセスは以下の通りである。
【0050】
上記の原料を容器に入れ、高速で10分間撹拌して均一に分散するよう十分に混ぜ合わせ、粉末度が15ミクロン未満になるまでサンドミルによって粉砕すれば出来上がる。
【0051】
実施形態10 本発明のアルコール可溶性樹脂の調製
下記の配合比に従って原料を量り取る。
成分(A) 酢酸ビニル 30キログラム
アクリル酸メチル 4キログラム
このほか、イソプロピルアルコールを10キログラム加えて希釈する。
成分(B) 酢酸ビニル 30キログラム
メタクリル酸メチル 20キログラム
アクリル酸ヒドロキシプロピル 2キログラム
アクリル酸メチル 4キログラム
メタクリル酸 5キログラム
メタクリル酸グリシジル 5キログラム
アゾジイソブチロニトリル 0.6キログラム
成分(C) アゾジイソブチロニトリル0.2キログラムを酢酸エチル溶媒5キログラムに溶解させる。
【0052】
このほか、希釈剤として酢酸エチル20キログラム、工業用アルコール65キログラムを準備し、実施形態1と同じ調製方法により、固形分50%の樹脂200.8キログラムを得る。
【0053】
実施形態5に記載の調合によって作られた樹脂は、金属表面保護用塗料の生産に好適に用いられる。
【0054】
実施形態11 本発明のアルコール可溶性金属防腐用塗料の調製
本発明の樹脂を用いて金属防腐用塗料を生産する際の配合は以下の通りである(重量比)。
【0055】
実施形態10において調製された樹脂溶液(固形分50%) 50キログラム
チタン白又は他の原料 15キログラム
消泡剤 0.8キログラム
レベリング剤 0.2キログラム
沈殿防止剤 1キログラム
酢酸エチル 10キログラム
ブタノール 2キログラム
無水アルコール 21キログラム
本発明の樹脂を用いて金属防腐用塗料を生産する際のプロセスは以下の通りである。
【0056】
上記の原料を容器に入れ、高速で10分間撹拌して均一に分散するよう十分に混ぜ合わせ、粉末度が15ミクロン未満になるまでサンドミルによって粉砕すれば出来上がる。
【0057】
実施形態12 本発明のアルコール可溶性樹脂の調製
下記の配合比に従って原料を量り取る。
成分(A) 酢酸ビニル 40キログラム
アクリル酸メチル 4キログラム
このほか、イソプロピルアルコールを10キログラム加えて希釈する。
成分(B) 酢酸ビニル 40キログラム
アクリル酸ヒドロキシプロピル 2キログラム
アクリル酸メチル 4キログラム
メタクリル酸 5キログラム
メタクリル酸グリシジル 5キログラム
アゾジイソブチロニトリル 0.6キログラム
成分(C) アゾジイソブチロニトリル0.2キログラムを酢酸エチル溶媒5キログラムに溶解させる。
【0058】
このほか、希釈剤として酢酸エチル20キログラム、工業用アルコール65キログラムを準備し、実施形態1と同じ調製方法により、固形分50%の樹脂200.8キログラムを得る。
【0059】
実施形態13 本発明のアルコール可溶性毛髪着色剤の調製
本発明の樹脂を用いてアルコール可溶性毛髪着色剤を生産する際の配合は以下の通りである(重量比)。
【0060】
実施形態12において調製された樹脂溶液(固形分50%) 40キログラム
染料 10キログラム
蒸留水 15キログラム
無水アルコール 15キログラム
香料 0.05キログラム
本発明の樹脂を用いてアルコール可溶性毛髪着色剤を生産する際のプロセスは以下の通りである。
【0061】
上記の原料を容器に入れ、高速で10分間撹拌して均一に分散するよう十分に混ぜ合わせれば出来上がる。
【0062】
実施形態5において調製されたアルコール可溶性インクをQB/T2024−94のインク規格に基づいて検査したところ、表1のようになった。
【0063】
【表1】

【0064】
本発明が提供する樹脂によって調製して得られるインクは85%をはるかに上回る良好な付着強度を有し、且つ溶媒の残留量が低く、異臭を残さないことが表中の結果から見て取れる。 調製したインクを複数の印刷工場で試験的に使ってみたところ、本発明の樹脂によって生産されたインクでBOPP、PE、PA、PETフィルムに印刷すると、季節や温度・湿度、設備、被印刷フィルムが様々であっても印刷の効果が同じと印刷適応性に優れており、従来のポリアミド表面印刷用インク系、塩素化ポリプロピレン複合インク系及びポリウレタン蒸気インク系に対してすべて良好なオーバープリント適合性と付着力とを有していることが示された。
【0065】
つまり、本発明は主原料である酢酸ビニルを使用し、複数種類のモノマーとともに重合させて、高性能・低コストの樹脂にしている。しかも樹脂の溶媒使用の範囲は広く、アルコール類の溶媒を用いることができるだけでなく、必要な時にはベンゼン、エステル、ケトン類の溶媒を使うこともできる。本発明は、インク、接着剤、塗料等複数種類の化学精製品のために、優れた性能を有する新しいタイプの樹脂を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール可溶性樹脂であって、
50%〜90%w/wの酢酸ビニルを含む原料から調製されたことを特徴とするアルコール可溶性樹脂。
【請求項2】
下記の重量比の原料、即ち
酢酸ビニル 50〜90%
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル 4〜35%
反応性官能基を有する化合物 6〜15%
から調製されており、
原料の総重量に対して0.1%〜1.1%の開始剤を加え、エステル類及び/又はアルコール類の溶媒中で重合させることによって得たことを特徴とする、請求項1に記載のアルコール可溶性樹脂。
【請求項3】
下記の重量百分率の原料、即ち
酢酸ビニル 80〜90%
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル 4〜10%
反応性官能基を有する化合物 6〜10%
から調製されており、
上記原料の総重量に対して0.2%〜0.9%のアゾジイソブチロニトリル及び/又は過酸化ベンゾイルを開始剤とし、エステル類及び/又はアルコール類の溶媒中で重合させて本発明のアルコール可溶性樹脂を得たことを特徴とする、請求項2に記載のアルコール可溶性樹脂。
【請求項4】
上記反応性官能基を有する化合物はアクリル酸、メタクリル酸、ブテン二酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、不飽和酸とジエポキシドとの反応物、アクリルアミド、メタクリルアミド及びヒドロキシメチルアクリルアミドのうちの一種又は数種であり、上記開始剤はアゾジイソブチロニトリル及び/又は過酸化ベンゾイルであることを特徴とする、請求項2又は3に記載のアルコール可溶性樹脂。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれかに記載のアルコール可溶性樹脂の調整方法であって、
a.下記の配合比に従って原料を量り取る、つまり
成分A 酢酸ビニル 25〜45%
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル 1〜10%
上記酢酸ビニル並びにアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの総重量に対して10〜35%の量のアルコール類又はエステル類溶媒を加え、
成分B 酢酸ビニル 25〜45%
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル 3〜25%
反応性官能基を有する化合物 6〜15%
このほか、原料の総重量に対して0.1〜0.7%の開始剤を加え、
成分C 原料の総重量に対して0.1〜0.4%の開始剤をエステル類及び/又はアルコール類溶媒に溶解させておき、
上記開始剤の総量は原料の総重量の0.1%〜1.1%であり、
b.成分Aを反応釜に入れて撹拌し、還流温度まで加温し、
c.1.5〜4時間かけて反応釜に成分Bを滴下し、滴下完了後続けて1時間反応させ、
d.工程c完了後、0.5時間かけて成分Cを滴下し、材料温度を70〜85℃に制御して続けて2時間反応させ、
e.製品の濃度上の必要によって、アルコール類及び/又はエステル類の溶媒を加えて希釈し、撹拌しながら温度を下げ、釜の中の材料温度が50℃以下に下がった時に材料を取り出して、必要な濃度のアルコール可溶性インク樹脂を得ることを特徴とするアルコール可溶性樹脂の調製方法。
【請求項6】
工程aに記載の原料配合比が、
成分A 酢酸ビニル 40〜45%
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル 2〜4%
であり、上記酢酸ビニル並びにアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの総重量に対して10〜35%の量のアルコール類又はエステル類溶媒を加え、
成分B 酢酸ビニル 40〜45%
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル 2〜6%
反応性官能基を有する化合物 6〜10%
であり、このほか原料の総重量に対して0.1〜0.7%の開始剤を加え、
成分C 原料の総重量に対して0.1〜0.4%の開始剤をエステル類及び/又はアルコール類溶媒に溶解させておく
となっていることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
プラスチック複合接着剤、インク、紙印刷用つや出しオイル、木材製品つや出しラッカー、プラスチック表面塗装用塗料、金属表面保護用塗料、毛髪着色剤の調製における、請求項1〜4のうちのいずれかに記載のアルコール可溶性樹脂の用途。
【請求項8】
プラスチック複合接着剤であって、
請求項1〜4のうちのいずれかに記載のアルコール可溶性樹脂から調整されたことを特徴とするプラスチック複合接着剤。
【請求項9】
インクであって、
請求項1〜4のうちのいずれかに記載のアルコール可溶性樹脂に顔料、溶媒及び補助剤を加えて構成されていることを特徴とするインク。

【公表番号】特表2009−500502(P2009−500502A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520689(P2008−520689)
【出願日】平成18年1月9日(2006.1.9)
【国際出願番号】PCT/CN2006/000025
【国際公開番号】WO2007/009325
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(508015003)
【出願人】(508015014)
【Fターム(参考)】