説明

アルツハイマー病の診断方法及び遺伝子マーカー

治療効力がより高く副作用がより低いCNS薬剤で治療することができる(アルツハイマー病、挙動障害などを含む)CNS障害に罹患している個体を特定する方法、及びそのような治療に有用な化合物が開示される。CNS障害の治療のための薬剤候補の効力を予測する方法も開示される。本技術は、神経変性疾患の動物モデルで使用するための新薬発見にも適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、2006年9月19日に出願した米国特許仮出願第60/845,539号、2007年1月23日に出願した第60/881,800号及び2007年5月24日に出願した第60/931,854号の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、AD医薬品クルクミン及びクルクミン類似体並びに関連する免疫モジュレーターの臨床効力の著しい上昇と関連する遺伝子及びタンパク質からなる、臨床的に特徴づけられたアルツハイマー病(Alzheimer's Disease)(AD)を有する個体の単離DNA分子から特定された遺伝子マーカーに関する。N-アセチルグルコサミン転移酵素III(Mgat3)及びToll様受容体(Toll-like receptor)(TLR)の上方制御、並びにアミロイド-β(amyloid-β)(1-42)(Aβ)の食作用の増加が可能である化合物も提供される。生体試料中で下方制御されたMgat3若しくはTLR又はMgat3若しくはTLR多形変異体を検出し、ADの潜在性を定量化するための診断方法がさらに提供される。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
(自然免疫系の増強)
その発生病理が理解不足であり、進行初期に疾患を診断することができないために、アルツハイマー病の治療は、達成しがたい目標のままである。AD脳でのAβ(Aβ)の蓄積は、食細胞又は抗原提示細胞へのミクログリアの分化及び補体活性化の阻害に導く、Aβ反応性T細胞とミクログリアとの間の異常なクロストークに関係がある(例えば、Science 302 (2003) 834-838を参照)。中高年の正常な対象のマクロファージ及びミクログリアはAβ除去を行うことが示されたが、この機能はAD患者では欠陥がある(例えば、Journal of Alzheimer's Disease 7 (2005) 221-232を参照)ものの、AD患者の欠陥は細菌性食作用では検出されていない。
【0004】
クルクミノイドなどの化学物質及びホルモンインスリン様成長因子(insulin-like growth factor)(IGF-I)は、自然免疫系を強化することができ、したがって、ADで使用するために疫学上の及び加齢関係の理論的根拠を有する。ADマクロファージによるAβの取り込みは、対照のマクロファージに比較してかなり低く、表面結合を含むが細胞内食作用は含まない。クルクミノイドによるADマクロファージの処理後、AD患者のマクロファージによるAβの取り込みが増加し、食作用の誘導が起こる。したがって、自然免疫の増強は、AD療法に対して自然な無毒性の手法を提供することができる。
【0005】
活性ミクログリアは、様々な受容体を通して脳の炎症及びAβ食作用を担うと考えられる。AD脳の免疫組織化学的研究は、誘導可能な一酸化窒素合成酵素陽性及びシクロオキシゲナーゼ-2陽性の血液由来単球/マクロファージが脳微小血管全域に侵入して血管周囲及び実質の部位を浸潤するが、神経性プラークを部分的に除去するだけであることを示した。これは、ヒトのAD脳では、末梢の単球/マクロファージがAβ除去に関与する細胞であることを示す。末梢血マクロファージ及びT細胞が、老いたアミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein)トランスジェニック(APP23)マウスの脳に侵入して、Aβ沈着物を除去することができることも示された。
【0006】
現在、脳からAβ沈着物を除去するための、臨床的に成功した方策はない。ADの散発的な症例では、脳のアミロイド症は、Aβワクチンの開発に導いたAβの除去の欠陥に関係づけることができるが、臨床試験でのその使用は、有害な脳炎合併症のために中止された。
【0007】
現在のトランスジェニック動物は、医原性にではあるけれども脳アミロイド症をモデル化するが、それらはAD患者の免疫上の問題点を再現しない。したがって、AD患者及び対照対象の末梢血白血球を用いて、Aβに対する免疫応答を高めることの利益を研究することは、かなりの利点を有する。インビトロのAD患者の培養マクロファージでは、クルクミノイドは、研究対象患者の約75%のマクロファージAβ食作用の欠陥を改善する。クルクミノイドのこの作用機構は新規であり、クルクミノイドの抗炎症作用及びプロアポトーシス作用と一致しない。IGF-1は、AD患者のマクロファージでのAβ食作用を向上させることも示されている。
【0008】
免疫調節療法及び抗炎症療法の効果は、インビトロで評価すること、並びに各対象の自然免疫及び適応免疫の応答に従って個人に適合させることができた。これは、本明細書で記載される免疫応答の遺伝子マーカー及び生化学マーカーに関する情報を必要とする。下記のように、クルクミノイドはMgat3及びTLR遺伝子を上方制御し、このことは、ADでのクルクミノイドの神経保護機構の重要な部分であり得る。
【0009】
(神経変性におけるMgat 3及びTLR)
高等生物の血清及び細胞表面のほとんど全てのタンパク質は、グリコシル化される。哺乳動物の糖タンパク質のN-グリカンは、構造が大きく変動するが、重要な生物学的過程に寄与する。Mgat 3遺伝子の生成物であるN-アセチルグルコサミン転移酵素III(Mgat 3)は、二分性のGlcNAcを複合N-グリカンのコアマンノースへ転移させる。欠陥のあるMgat3は、細胞性免疫及び他のN-グリコシル化生体分子の機能を著しく変えることができた。欠陥のあるMgat3又は異常な量のMgat3を有する個体は、他の神経生物学問題を有し得る。不活性のMgat3につながるMgat3遺伝子の突然変異を有するヒトは、グリコシル化のある先天性の障害を有する患者で観察されるものに類似しているが、より軽度である神経学的又は挙動上の問題を有し得る。経時的なMgat3の消失又は発現の低下は、有害な結果をもたらすこともあり、Mgat3の消失は、ADで細胞保護作用を含む正常な細胞過程に障害を起こすことがある。
【0010】
Toll様受容体(Toll-like receptor)(TLR)は、自然免疫系のパターン認識受容体のファミリーである。TLRは、10個の遺伝子群及びそれらの遺伝子生成物(すなわち、TLR1〜10)を含む。TLRは、宿主応答に関与する細胞表面シグナル伝達受容体である。TLRアゴニストは、敗血症、自己免疫疾患、癌、アレルギー並びにウイルス及び細菌による感染症などの、不適当な適応免疫疾患に関係する疾患の治療のために開発されている(例えば、Nat Med. 13、552、2007を参照)。TLRアンタゴニストは、炎症及び自己免疫疾患と闘うために開発されている。この分野のほとんどの文献は、内因性又は外因性のミクログリアの活性化における炎症媒介物質の役割を調べている。例えば、TLRリガンドによるミクログリアの活性化は、インビトロでAβの摂取を著しく高める(例えば、Taharaらの文献(Brain 129、3006、2006)を参照)。TLR2の活性化は、ミクログリアによるマウスホルミルペプチド受容体様2(mouse formyl peptide receptor-like 2)(mFPR2)媒介性のAβの取り込みを著しく増加させる(例えば、Chenらの文献(J. Biol. Chem. 281、3651、2006)を参照)。他の研究は、TLR4 Asp299Gly変異体が、遅発性ADの発達に対して防御することができることを示唆している。
【0011】
クルクミノイドは、AD患者のマクロファージによるAβの取り込みを増加させる。正常な対象のマクロファージは、治療しなくとも十分に性能を発揮する。クルクミノイドによる治療は、取り込みの程度を増強するだけでなく、APPswトランスジェニックマウスモデルで、細胞内食作用を誘導し、酸化損傷、インターロイキン-1β反応性及び小神経膠細胞症を軽減する。クルクミノイドは、抗炎症特性並びに抗アポトーシス及びアポトーシス促進特性を有することも知られており、これらの特性は、マクロファージによる過剰な炎症性応答を調節することができる。Aβ凝集の阻害など、クルクミノイドの他の有益な特性も、AD患者に重要である。
【0012】
クルクミノイドによる自然免疫機能、食作用及びアポトーシス抵抗性の増強は、自然免疫系の免疫調節が、ワクチン接種の安全な代替形態である可能性があることを示唆する。したがって、ADマクロファージの生化学的及び機能的欠陥、並びに天然物質によるそれらの調節は、アルツハイマー病の発生病理に対して全く新しい方向性を提供し、ADにおける新しい診断機会及び治療機会を形成する。末梢の単球及びマクロファージによる本発明者らの結果は、AD患者の自然免疫の状態を検査することが、クルクミン又は関連作用物質による免疫調節療法に対して応答する患者の能力を評価するのに役に立つことを示唆する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ヒトMgat3及びToll様受容体(Toll-like receptor)(TLR)遺伝子は、CNS薬剤活性又はADの治療及び診断を含む神経変性疾患について、他の免疫モジュレーター又は他の薬剤候補を試験するのに有用となり得る。本発明は、未精製のクルクミノイド中の活性成分を特定し、生物学的により活性な誘導体を合成することにより、AD患者の自然免疫細胞、単球/マクロファージのアミロイド-β(amyloid-β)(1-42)(Aβ)の食作用の欠陥、及びAD患者によるAβプラークの除去の欠陥の問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
一態様では、インビトロ及び/又はインビボでの調節のための生物学的マーカー(及び/又は薬剤標的)として、いくつかの脳疾患のCNS傷害の指標として又は療法の指標としての、Mgat3及びTLR遺伝子、並びに対応するタンパク質、及び/又はこれらのタンパク質の変異体が提供される。Mgat3又はTLRの調節は、AD又は他の神経変性疾患に罹患している個体を保護するための、有望な手法となる。
【0015】
他の態様において、単離されたマクロファージでのMgat3及び/若しくはTLRの評価、又は、インビボ若しくは生体外でのMgat3若しくはTLRの調節は、臨床上重要な診断及び治療の道具を提供し、神経変性疾患の診断及び治療に対する直接的手法を提供する。
【0016】
さらに他の態様では、Aβプラークの分解及び除去を促進するMgat3及び/又はTLRを上方制御するために用いることができる治療剤(クルクミン及び/又はその類似体)が提供される。次式(I)
【化1】

を有する化合物であって、R1、R2、R3及びR4が下記の通りである化合物。
【0017】
他の態様では、そのような治療が必要な患者に式(I)のクルクミン又はクルクミン類似体を投与することによって、アルツハイマー病を治療する方法が提供される。
【0018】
他の態様では、Mgat3及び/又はTLRを生体外で刺激する方法であって、ヒト血液細胞を得る工程、治療剤でそれらを治療する工程、及び刺激した細胞を再導入してAβプラークの分解及び除去を刺激する工程を含む方法が提供される。
【0019】
他の態様では、誘導可能で、ヒトAβ除去を促進する化学物質又は薬剤の生物学的又は生理学的能力を誘導及び予測することができる、生理的、代謝的、遺伝的及び生化学的サインのプロファイルを評価する方法が、本明細書で提供される。本発明は、初期段階でAβ除去に及ぼす影響をインビトロで特定することによって、抗AD作用物質としての化学物質又は薬剤の能力を予測する問題を解決する。
【0020】
他の態様では、Aβ除去を増強することができる新規作用物質が、本明細書で提供される。
【0021】
さらに他の態様では、活性の変化を受ける生物学的パラメータを特定することによって、Aβ除去能力又は他の生物活性について化合物をインビトロでスクリーニングする方法が提供される。これらの方法は、化学物質を細胞とともにインキュベートすること;病理学的、形態学的及び生化学的変化を判定すること、並びに生じた細胞の変化の量及び種類の検出を含む。
【0022】
他の態様では、Aβ除去の潜在性、又はインビボ条件に関連する他の生物活性の促進について、化合物をインビトロでスクリーニングする方法が提供される。
【0023】
他の態様では、初期段階でAβ除去に及ぼす影響をインビトロで特定することによって、抗AD作用物質としての化学物質又は薬剤の潜在性を予測する方法が提供される。他の実施態様では、AD又は他の神経変性疾患を有する個体の予測で使用するバイオマーカーであるMgat3又はTLRの欠陥を有するか、又はそれらのレベルが低い個体を特定する方法が提供される。
【0024】
他の態様では、個体でのAD薬剤の効力を予測する方法であって、前記薬剤がMgat3又はTLRモジュレーターであり、前記個体が該薬剤による治療に応答するCNS障害に罹っているか又はそれを起こす危険があり、(1)生体試料を個体から単離する工程であって、該生体試料が(i)核酸及び(ii)Mgat3タンパク質(若しくは一般のN-グリコシル化タンパク質)又はTLRの少なくとも1つを含む工程と;(2)該生体試料を分析して該個体でのMgat3若しくはTLR対立遺伝子又はMgat若しくはTLR遺伝子の有無を判定する工程であって、Mgat3又はTLR遺伝子の相対量が、該薬剤による該障害の治療について陽性の臨床的結果を示す工程とを含む方法が提供される。ある実施態様では、CNS障害は神経変性障害(例えば、AD)である。本方法は、例えば、薬剤が抗AD作用物質に関係を有する場合(例えば、作用物質はクルクミノイド又は類似体である)での使用に特に適している。一実施態様では、生体試料は核酸を含む。他の実施態様では、分析工程は、生体試料由来の核酸を分析して、Mgat3又はTLR遺伝子のコード領域に存在するヌクレオチドを判定することを含む。さらに他の実施態様では、本方法は、Mgat3又はTLR遺伝子のコード領域、非コード領域又はプロモーター領域の他のヌクレオチド位置で、Mgat3又はTLRの遺伝子型を判定することをさらに含むことができる。他の実施態様では、分析工程は、前記核酸試料と、(a)配列番号1に示すヌクレオチド配列の少なくとも10〜100個の連続したヌクレオチドを含む核酸であって、鍵となるMgat3若しくはTLR対立遺伝子及び/又はそれに隣接した塩基で該ヌクレオチドを含む核酸;並びに、(b)(a)の核酸に完全に相補的である核酸からなる群から選択される核酸とのハイブリダイゼーションを含む。ある実施態様では、単離に便利なように、核酸は検出可能なマーカー又は作用物質に結合される。
【0025】
他の態様では、CNS障害の治療のための候補作用物質の効力を予測する方法であって、該候補作用物質が該障害の治療のための所定の治療剤の誘導体化又は修飾された形であり、(1)Mgat3又はTLRタンパク質の第一のAD試料を該候補作用物質と接触させる工程と;(2)Mgat3又はTLRタンパク質の第二の正常な試料を該所定の治療剤と接触させる工程であって;第一及び第二の試料のそれぞれを接触させることがMgat3酵素又はTLR活性をもたらすのに適する条件下で行われる工程と;(3)第一及び第二の試料のそれぞれについてMgat3酵素又はTLR活性のレベルを判定する工程と;(4)第一の試料中のMgat3酵素又はTLR活性のレベルを、第二の試料中のMgat3酵素又はTLR活性のレベルと比較する工程であって、第二の試料と比較した、第一の試料中のMgat3酵素又はTLR活性のより高いレベルが該候補作用物質の効力を示す工程とを含む方法が提供される。ある実施態様では、用いる対照は、Mgat3又はTLRのcDNA発現形態である。ある実施態様では、CNS障害は神経変性障害である。ある実施態様では、所定の治療剤は、クルクミノイド、又は誘導体、又は一部の他の免疫モジュレーターである。ある実施態様では、薬剤候補は、Mgat3基質部分(例えば、クルクミノイド様中心)を組み込むように誘導された作用物質である。
【0026】
一部の実施態様では、Mgat3酵素又はTLR活性のレベルを判定する方法は、試料中の細胞のN-グリコシル化代謝産物レベルを検出することを含む。
他の実施態様では、アルツハイマー病患者のための生体外免疫療法の方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】PBMCの細胞でのToll様受容体(Toll-like receptor)(TLR)のRNAの転写、及びビスデメトキシクルクミンによるTLRの上方制御を示す図である。4人のAD患者(A、B、C、D)のそれぞれの10,000,000個のPBMCを、無添加、Aβ(A、B、C、D;黒いバー)又はAβ及びビスデメトキシクルクミン(D、ストライプ入りのバー)で一晩処理した。対照対象(M、N、O)のPBMCは、無添加又はAβ(枠のみのバー)で処理した。実施例4及び9に記載されているように、RNAを抽出してqPCRによって試験し、TLR比を判定した。患者及び対照間の差の有意性(マン-ホイットニー検定法による)は、以下の通りである:TLR1 0.05;TLR2 0.05;TLR3 0.05;TLR4 0.08;TLR5 0.05;TLR6 0.077;TLR7 0.08;TLR8 0.05;TLR9 0.08;TLR10 0.05。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
(定義)
特に定義されていない場合は、本明細書で用いる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の技術者が通常理解するのと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験において、本明細書で記載されているものと類似する任意の方法及び材料を使用できるが、例示的な方法及び材料だけを記載する。
【0029】
本発明の目的のために、以下の用語が下で定義され、Rは、スキーム1又は2のRを指す。
【0030】
用語「a」、「an」及び「the」は、文脈上明らかに別の指示がない限り、複数体を含む。
【0031】
用語「ヒドリド」は、単一の水素を指す。
【0032】
用語「アルキル」は、直鎖、分枝鎖及び環状基を含む飽和脂肪族基を指し、その全ては任意選択で置換されてもよい。適するアルキル基には、メチル、エチルなどが含まれ、それらは任意選択で置換されてもよい。
【0033】
用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素間二重結合を含む不飽和基を指し、直鎖、分枝鎖及び環状基を含み、その全ては任意選択で置換されてもよい。
【0034】
用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素間三重結合を含む不飽和基を指し、直鎖、分枝鎖及び環状基を含み、その全ては任意選択で置換されてもよい。適するアルキニル基には、エチニル、プロピニル、ブチニルなどが含まれ、それらは任意選択で置換されてもよい。
【0035】
用語「アルコキシ」は、エーテル-ORを指し、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はアラルキルである。
【0036】
用語「アリールオキシ」は、エーテル-ORを指し、Rは、アリール又はヘテロアリールである。
【0037】
用語「アルケニルオキシ」は、エーテル-ORを指し、Rはアルケニルである。
【0038】
用語「アルキルチオ」は、-SRを指し、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルである。
【0039】
用語「アルキルチオアルキル」は、二価の硫黄原子を通して約1から20個の炭素原子のアルキル基に結合しているアルキルチオ基を指す。
【0040】
用語「アルキルスルフィニル」は、-S(O)Rを指し、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルである。
【0041】
用語「スルホニル」は、-SO2-R基を指し、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はアラルキルである。
【0042】
用語「アミノスルホニル」、「スルファミル」、「スルホンアミジル」は、-SO2NRR'を指し、R及びR'は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びアラルキルから独立して選択される。
【0043】
用語「ヒドロキシアルキル」は、その任意の1つはヒドロキシル基で置換されてもよい1から約20個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を指す。
【0044】
用語「シアノアルキル」は、その任意の1つは1つ以上のシアノ基で置換されてもよい1から約20個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を指す。
【0045】
用語「アルコキシアルキル」は、アルキル基に結合している1つ以上のアルコキシ基を有するアルキル基を指す。アルコキシ基は、1つ以上のハロ原子でさらに置換されてもよい。好ましいハロアルコキシ基は、1から20個の炭素を含むことができる。
【0046】
用語「オキシイミノアルコキシ」は、その任意の1つはオキシイミノ基で置換されてもよい1から約20個の炭素原子を有する、アルコキシ基を指す。
【0047】
用語「アリール」は、共役「π」電子系を有する少なくとも1つの環を有する芳香族の基を指し、炭素環式のアリール、ビアリールを含み、その両方は任意選択で置換されてもよい。
【0048】
用語「炭素環式アリール」は、芳香環上の環原子が炭素原子である基を指す。炭素環式の基にはフェニル及びナフチル基が含まれ、それらは、アルキル、アルコキシ、アミノ、アミド、シアノ、カルボン酸エステル、ヒドロキシル、ハロゲン、アシル、ニトロなどの1から5個の置換基で、任意選択で置換されてもよい。
【0049】
用語「アラルキル」は、アリール基で置換されているアルキル基を指す。適するアラルキル基にはベンジルなどが含まれ、任意選択で置換されてもよい。
【0050】
用語「アロイル」は-C(O)Rを指し、Rはアリール基である。
【0051】
用語「アルコキシカルボニル」は、-C(O)ORを指し、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はアラルキルである。
【0052】
用語「アシル」は、アルカノイル基-C(O)Rを指し、Rは、アルケニル、アルキニル、アリール又はアラルキルである。
【0053】
用語「アシルオキシ」は、アルカノイル基-OC(O)Rを指し、Rは、アルケニル、アルキニル、アリール又はアラルキルである。
【0054】
用語「アミノアルキル」は、アミノ基で置換されているアルキルを指す。
【0055】
用語「アリールアミノ」は、1つ以上のアリール基で置換されているアミノ基を指す。
【0056】
用語「アミノカルボニル」は-C(O)NRR1を指し、R及びR1は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びアラルキルから独立して選択される。
【0057】
アジドアルキルは、アジド-N3で置換されているアルキルRを指す。
【0058】
用語「アミノ」は-NRR1を指し、R及びR1は独立して水素、低級アルキルであるか、又は互いに結合すると、任意選択で置換される5員環又は6員環、例えばピロリジン又はピペリジン環となる。
【0059】
用語「アルキルアミノ」は、1つ以上のアルキル基で置換されているアミノ基を含む。
【0060】
用語「ジアルキルアミノ」は、-NRR1を指し、R及びR1は独立して低級アルキル基であるか、又は一緒にモルホリノなどの残りの環を形成する。適するジアルキルアミノ基には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ及びモルホリノが含まれる。
【0061】
用語「モルホリノアルキル」は、モルホリン基で置換されているアルキルRを指す。
【0062】
用語「イソシアノアルキル」は、イソシアノ基-NCOで置換されているアルキルRを指す。
【0063】
用語「イソチオシアノアルキル」は、イソチオシアノ基-NCSで置換されているアルキルRを指す。
【0064】
用語「イソシアノアルケニル」は、イソシアノ基-NCOで置換されているアルケニルRを指す。
【0065】
用語「イソチオシアノアルケニル」は、イソチオシアノ基-NCSで置換されているアルケニルRを指す。
【0066】
用語「イソシアノアルキニル」は、イソシアノ基-NCOで置換されているアルキニルRを指す。
【0067】
用語「イソチオシアノアルキニル」は、イソチオシアノ基-NCSで置換されているアルキニルRを指す。
【0068】
用語「アルカノイルアミノ」は-NRC(O)OR1を指し、R及びR1は、独立して、水素、低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はアラルキルである。
【0069】
用語「ホルミルアルキル」は、-CHOで置換されているアルキルRを指す。
【0070】
用語「任意選択で置換されている」又は「置換されている」は、低級アルキル(非環状若しくは環状)、アリール(カルボアリール若しくはヘテロアリール)アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル(トリフルオロメイル(trifluoromeyl)などのトリハロアルキルを含む)、アミノ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、ニトロ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアルカノイル、アルコキシカルボキシ、(-COOR、Rは低級アルキル)、アミノカルボニル(-CONRR1、R及びR1は独立して低級アルキル)、ホルミル、カルボキシル、ヒドロキシル、シアノ、アジド、ケト及びその環状ケタール、アルカノイルアミド、ヘテロアリールオキシ並びにヘテロカルボシクリコキシ(heterocarbocyclicoxy)から独立して選択される1つから5個の置換基によって置換される基を指す。
【0071】
定義する有機の基又は化合物に関連して本明細書で用語「低級」は、例えば1から10以下、好ましくは6以下、より好ましくは1から4個の炭素原子を指す。そのような基は、直鎖、分枝鎖又は環状であってよい。
【0072】
用語「複素環式」は、3、4、5、6若しくは7員環の環、及び1、2、3若しくは4個のO、N、P若しくはSヘテロ原子を有する炭素含有基、例えば、チアゾリジン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3,5-トリオキサン、ピロリジン、ピリジル、ピペリジン、キヌクリジン、ジチアン、テトラヒドロピラン及びモルホリン、又は、上記のいずれかを含む縮合類似体を指す。
【0073】
用語「ヘテロアリール」は、1、2、3若しくは4個のO、N、P若しくはS原子を含有し、1つ以上の環に非局在化された6、10若しくは14個のπ電子を有する、炭素含有5〜14員環の環状不飽和基、例えば、ピリジン、オキサゾール、インドール、プリン、ピリミジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、2H-1,2-4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール、2H-1,2,3,4-テトラゾール、1H-1,2,3,4-トリアゾールベンズトリアゾール、1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン、チアゾール、イソキサゾール、ピラゾール、キノリン、シトシン、チミン、ウラシル、アデニン、グアニン、ピラジン、ピコリン、ピコリン酸、フロ酸、フルフラール、フリルアルコール、カルバゾール、イソキノリン、ピロール、チオフェン、フラン、フェノキサジン、及びフェノチアジンを指し、それぞれは任意選択で置換されてもよい。
【0074】
用語「医薬として許容し得るエステル、アミド又は塩」は、本発明の化合物と有機又は無機の酸との組合せから誘導されるスキーム1の化合物のエステル、アミド又は塩を指す。
【0075】
本明細書でさらに記載されるように、用語「クルクミン関連作用物質」は、クルクミン関連化合物、クルクミン代謝産物、クルクミン類似体及びクルクミン誘導体を指す。
【0076】
用語「阻害する」は、かなりの量減少させること、又は完全に阻止することを意味する。
【0077】
疾患又は障害の「治療すること」、「治療」又は「療法」は、本明細書で記載の本発明の組成物及び方法を用いて疾患又は障害の進行を遅くすること、停止すること、又は回復させることを意味し、それらは、臨床上又は診断上の症状の軽減又は除去によって立証される。
【0078】
疾患又は障害の「阻止すること」、「予防」又は「阻止」は、疾患又は障害又はその症状の一部若しくは全部の発生又は開始の阻止を意味する。
【0079】
本明細書で用いる用語「対象」は、本発明の組成物を本明細書で記載の方法によって投与することができる、任意の哺乳動物の患者を意味する。本発明の方法を用いる治療又は予防が特に意図する対象には、ヒトが含まれる。
【0080】
用語「治療的に有効なレジメン」は、医薬組成物又はその組合せが、神経変性関連の障害の少なくとも1つの症状又は生化学的マーカーの発生を少なくとも検出可能に予防すること、遅らせること、阻害すること又は回復させることのために十分な量及び頻度で、並びに、適当な経路で投与されることを意味する。ある実施態様では、「治療的に有効なレジメン」は、対象が認知、記憶及びADの他の態様を改善しやすくする。
【0081】
用語「治療有効量」は、適当なレジメンで投与された場合に、所望の結果を達成するための、例えば、神経変性障害又はADの症状又は生化学的マーカーを予防するか、遅らせるか、阻害するか又は回復させるための、抗AD関連作用物質又は抗AD関連作用物質と他の作用物質との組合せの量を指す。
【0082】
薬剤による「治療に応答性である」とは、その障害が、その薬剤の投与によって治療することができる障害であると(例えば、臨床上の試験を通して、例えば薬剤の政府承認を得るために実施される臨床試験などによって)予測又は判定されることを意味する。
【0083】
用語「臨床上の陽性結果」は、公知の診断方法を用いて判定される、障害と関連する臨床症状の任意の改善、又は頻度の低下を指す。一般に、上記の方法を用いる臨床上の陽性結果が示されることは、Mgat3又はTLRが存在しない個体と比較して、個体における薬剤のより高い効力を示す。
【0084】
本明細書で用いるMgat3又はTLRの誘導因子又は上方制御部分は、その化学部分を有する作用物質とのMgat3又はTLRの相互作用の間の、Mgat3又はTLRタンパク質又は遺伝子との相互作用によって上方制御、調節又は誘導することが公知であるか又は予測される任意の化学部分を指す。
【0085】
(本発明の化合物)
一実施態様では、以下の式(I):
【化2】

を有する化合物が提供され、式中、R1、R2、R3及びR4は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルケニル、(C1〜C6)アルキニル、ヘテロアルキル、ハロ(例えば、フルオロ、クロル、ブロモ、ヨード)、(C1〜C6)アルコキシ、アミノ、(C1〜C6)アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、任意選択でアシル、ハロ、低級アシル、低級ハロアキル、オキソ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、アミノ、低級アルコキシ、アミノカルボニル、低級アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アリールアミノ、低級カルボキシアルキル、低級シアノアルキル、低級ヒドロキシアルキル、アルキルチオ、アルキルスルフィニル及びアリール、低級アラルキルチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、アミノスルホニル、低級N-アリールアミノスルホニル、低級アリールスルホニル、低級N-アルキル-N-アリールアミノスルホニルで置換されている5-若しくは6員環の任意選択で置換された不飽和、部分不飽和又は飽和のヘテロシクリル又はカルボシクリル;ハロ、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、シアノ、カルバモイル、低級アルキル、低級アルケニルオキシ、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、低級アルキルアミノ、低級ジアルキルアミノ、低級ハロアルキル、低級アルコキシカルボニル、低級N-アルキルカルバモイル、低級N,N-ジアルキルカルバモイル、低級アルカノイルアミノ、低級シアノアルコキシ、低級カルバモイルアルコキシ及び低級カルボニルアルコキシから選択される1つ、2つ又は3つの置換基で、任意選択で置換されているフェニル、ビフェニル、ナフチル及び5-及び6員環のヘテロアリールからなる群から選択されるアリール;からなる群から独立に選択され、さらに、アシル基はヒドリド、アルキル、ハロ及びアルコキシから選択される置換基で任意選択で置換される。
【0086】
ある実施態様では、R1、R2、R3及びR4は、独立して、Cl、Br、I、-OR4、-R5、-OC(O)R6、OC(O)NR7R8、-C(O)R9、-CN、-NR10R11、-SR12、-S(O)R11、-S(O)2R14、-C(O)OR15、-S(O)2NR16R17;-R18NR19R20から選択される置換基で置換されている1つ又は2つの環水素を有するアリールであり、上式で、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は同じであるか又は異なり、1から8個の炭素原子の分枝型若しくは非分枝型のアルキル基又は水素基である。
【0087】
他の実施態様では、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素である。
【0088】
さらなる他の実施態様では、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ5員の複素環式又は炭素環式の環である。ある実施態様では、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ、O、N及びSから選択される1つ又は2つのヘテロ原子を有する、任意選択で置換されている5員環である。具体的な実施態様では、ヘテロ原子はO又はSから選択される。
【0089】
さらなる実施態様では、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ6員の複素環式又は炭素環式の環である。ある実施態様では、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ、O、N及びSから選択される1つのヘテロ原子を有する、任意選択で置換されている6員環である。ある実施態様では、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ、O、N及びSから選択される2つのヘテロ原子を有する、任意選択で置換されている6員環である。
【0090】
他の実施態様では、化合物は実施例に示す化合物から選択される。
【0091】
(本発明の方法)
本明細書で記載の方法は、一部、ヒトMgat3及び/又はTLR遺伝子、並びに対応する遺伝子生成物酵素活性の存在は、CNS(例えば、抗AD)薬剤の効力を予測させるという出願人の発見に基づく。Mgat3又はTLR遺伝子での多型の検出は、例えば神経変性障害(例えばAD、挙動障害など)などのCNS疾患と関連する根底にある異常に適合する、予防及び/又は治療のレジメンの設計に有用である。これらの方法は、CNS障害の治療薬の前臨床開発のために、並びに、これらの疾患及び根底にある生物学的異常の治療薬の臨床試験の実施のためにも有用である。
【0092】
ADの重要な問題点は、特にマクロファージの機能不全にあると提案する。100名を超えるAD患者及び約40名の対照対象の本発明者らの研究は、AD単球/マクロファージの予想外の病態生理を明らかにしているが、それは血清因子によって説明されず、その理由はそれらがウシ胎児血清の存在下でも観察されるからである。インビトロでのマクロファージ分化における不均一な欠陥、異常なAβ取り込み及びリソソームへの輸送、並びにAβへの曝露後のアポトーシスが観察された。さらに、患者の単球はIL-12を過剰発現し、患者のCD4 T細胞は、TH1及びTH2セットに属するサイトカインであるIL-10及びインターフェロンγを過剰生産する。したがって、AD患者の適応免疫系及び自然免疫系の構成要素は、不調和及び機能不全の様々な段階にあるようである。対照的に、年齢を一致させた対照対象のマクロファージは、Aβを貪欲に摂取し、それを分解するようである。AD患者の全自然免疫系(マクロファージ及びミクログリアを含む)に欠陥があり得、その病理学的状態は、末梢血単球/マクロファージ、遺伝子マーカー及び酵素活性を研究することによって評価することができると考える。
【0093】
一実施態様では、アルツハイマー病を治療する方法であって、そのような治療が必要な対象に式(I)を有するクルクミン又はクルクミン類似体を投与することを含む方法が提供される。
【0094】
他の実施態様では、治療効力がより高く副作用がより低い免疫モジュレーター(又は他の抗AD薬剤)でより効果的に治療することができる、AD、挙動障害又は他のCNS疾患に罹患しやすい個体を特定する方法が提供される。本方法は、多くのCNS疾患に罹患している個体で、速やかに及び効率的に、そのような治療効力を判定するために、及び/又は毒性を低減するために特に有用である。
【0095】
Mgat3又はTLRのある変異体が、より有効なAD療法のマーカーである可能性がある。ヒトMgat3又はTLRの変異体をコードするAD、挙動障害又は他のCNS病状に罹患している個体集団で新薬を試験することは、治療効力及び新薬発見のかなりの改善をもたらすことができよう。組換え調製物中に存在するMgat3又はTLRも、新薬発見及びAD薬剤の開発に役立つ優れた薬理学的又は薬剤学的特性を有し、Mgat3又はTLRの上方制御因子である薬剤候補を特定するインビトロ方法において有用である。したがって、Mgat3又はTLRの誘導因子又はモジュレーターのスクリーニングは、より高い治療指数及び/又は低い毒性を有する薬剤を作製するために薬剤候補を修飾する方法に関して、重要な情報を提供する。また、ヒトのMgat3又はTLRの変異体は、より効果的な薬剤を特定する手段として、それ自体化学物質又は新薬発見剤として有用である。
【0096】
さらに、本発明は、優れた薬剤開発の可能性を有し、バイオテクノロジー又は医薬品産業での薬剤開発のための生物指標として有用であることができる、新しいヒトのMgat3又はTLRの上方制御因子を特定するためにヒトMgat3又はTLRのアミノ酸差を用いることに関する。
【0097】
一実施態様では、本発明は個体での薬剤の効力を予測する方法を提供し、前記薬剤はMgat3又はTLRの上方制御因子又はモジュレーターであり、前記個体は該薬剤による治療に応答するCNS障害に罹っているか又はそれを起こす危険がある。本方法は、一般に、(1)生体試料を個体から単離することであって、該生体試料は核酸及び/又は細胞タンパク質を含むことと、(2)該生体試料を分析して該個体でのMgat3又はTLRの遺伝子及び/又はタンパク質の有無を判定することとを含む。Mgat3又はTLRの遺伝子レベル又は酵素活性の存在の判定は、CNS障害を治療するための、該薬剤の投与による陽性の臨床的結果を示す。
【0098】
ある実施態様では、生体試料がMgat3又はTLR遺伝子を発現する組織由来の細胞タンパク質を含む場合、Mgat3又はTLR活性の存在について試料中のMgat3又はTLRタンパク質を分析する。例えば、試料中のMgat3又はTLRの存在の判定は、試料を、Mgat3又はTLRタンパク質と結合することができる抗体と接触させるイムノアッセイとして実施することができる。野生型のMgat3又はTLRと任意のMgat3又はTLR変異体とを特異的に識別する抗体(例えば、モノクローナル抗体)を、生成することができる。抗体を作製する方法は周知の技術である(例えば、Harlow及びLaneの文献「抗体:実験マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)」(Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York(ニューヨーク)州 1988)を参照)。
【0099】
ある実施態様では、生体試料は核酸を含み、Mgat3又はTLR遺伝子のコドンの位置(下に示す配列番号1〜8のヌクレオチド位置に対応する)に存在するヌクレオチドを判定するために試料を分析する。
【化3】



【化4】


【化5】



【化6】


【化7】



【化8】



【化9】


【化10】


【0100】
本方法は、他のMgat3又はTLR対立遺伝子に関して個体の遺伝子型を判定することをさらに含むことができる。MGAT3及びTLRの一塩基多型を、下の表1に示す。
【表1】

【0101】
一部の実施態様では、判定は周知の方法によってDNAを分析することによって実施され、それらには、例えば、野生型Mgat3又はTLR遺伝子の直接的DNAシークエンシング、野生型又は変異型のMgat3又はTLR配列の検出を可能にするポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)(PCR)を用いる対立遺伝子特異増幅、或いは、例えば、PCR-一本鎖高次構造多型(single stranded conformation plymorphism)(SSCP)法又は変性勾配ゲル電気泳動(denaturing gradient gel elctrophoresis)(DGGE)を含む様々な分子生物学的方法による野生型又は変異型のMgat3又はTLR遺伝子の間接的な検出が含まれる。野生型又は変異型のMgat3又はTLR遺伝子の判定は、制限断片長多型(restriction fragment length polymorphism)(RFLP)法を用いて実施することもでき、その方法は多数の試料の遺伝子タイピングに特に適する。本明細書で用いるように、「野生型のMgat3又はTLR遺伝子」は、(a)Mgat3又はTLRの正常な機能を発揮する遺伝子生成物をコードし、(b)Mgat3又はTLR突然変異を含まないMgat3又はTLR遺伝子の対立遺伝子を指す。
【0102】
判定は、様々な方法を用いて試料中で発現されるRNAを分析することによって、RNAレベルで実施することもできる。対立遺伝子特異プローブを、ハイブリダイゼーションのために設計することができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、ノーザンブロット、RNアーゼ保護アッセイ又はin situハイブリダイゼーション方法を用いて実施することができる。野生型又は変異型のMgat3又はTLR遺伝子のRNA誘導形は、組織RNAを先ずcDNAに変換し、その後対立遺伝子特異PCR法によってcDNAを増幅し、ゲノムDNAについての上の分析を実施することによって分析することもできる。
【0103】
核酸分析に特に適する方法には、核酸試料と、野生型又は変異型のMgat3又はTLR対立遺伝子に特異的なMgat3又はTLRの核酸プローブ又はプライマーとの間のハイブリダイゼーションが含まれる。したがって、本明細書で提供される方法に従って特に有用な核酸分子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で、任意のMgat3又はTLR突然変異と関連する部位を含むMgat3又はTLR遺伝子の相補的領域とハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドである。
【0104】
核酸はDNA又はRNAでよく、一本鎖又は二本鎖でよい。オリゴヌクレオチドは天然でも合成でもよいが、一般に合成手段によって調製される。本発明のオリゴヌクレオチドには、ヒトMgat3又はTLR遺伝子に対応し、変異型又は野生型の対立遺伝子の鍵となるコドンの位置(配列番号1〜8で示すヌクレオチド位置に対応する)のヌクレオチド及び/又はそれに隣接した塩基を含む、DNAの断片若しくはそれらの相補体が含まれる。断片は通常5から100個の連続した塩基であり、しばしば、5、10、12、15、20又は25個のヌクレオチドから10、15、30、25、20、50又は100個のヌクレオチドの範囲内である。5〜10、5〜20、10〜20、12〜30、15〜30、10〜50、20〜50又は20〜100個の塩基の核酸が一般的である。
【0105】
本発明のオリゴヌクレオチドは、RNA、DNA又はいずれかの誘導体であることができる。そのようなオリゴヌクレオチドの最小限のサイズは、ヒトMgat3又はTLR遺伝子に対応する核酸分子上で、オリゴヌクレオチドと相補的配列との間で安定したハイブリッドが形成されるために必要とされるサイズである。本発明は、例えば、核酸分子を生成するために核酸分子又はプライマーを特定するためのプローブとして用いることができるオリゴヌクレオチドを含む。DNAを増幅するためのプライマーとして用いることができるオリゴヌクレオチドも提供される。
【0106】
一部の実施態様では、オリゴヌクレオチドのプローブ又はプライマーは、Mgat3若しくはTLR多型の単一の塩基変化(鍵となるコドンの位置)、又は同じ位置の野生型ヌクレオチドを含む。単一の塩基変化又は対応する野生型ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの任意の位置にあってもよい。好ましくは、対象とするヌクレオチドは、プローブの中央位置を占める。ある実施態様では、対象とするヌクレオチドは、プライマーの3'位置を占める。
【0107】
多型は、分析個体由来の標的核酸で検出される。ゲノムDNAのアッセイのためには、実質的にあらゆる生体試料(純粋な赤血球以外)が適する。例えば、都合のよい組織試料には、全血、血液細胞、精液、唾液、涙、尿、糞便質、汗、口内上皮、皮膚及び毛髪が含まれる。cDNA又はmRNAのアッセイのためには、組織試料は、標的核酸が発現される臓器から得られなければならない。
【0108】
下に記載する方法は、標的試料由来のDNAの増幅を必要とする。これは、例えばPCRによって達成することができる。(一般には、例えば、「PCR技術:DNA増幅のための原理及び応用(PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification)」(H. A. Erlich編、Freeman Press, NY, NY(ニューヨーク)州, 1992);「PCRプロトコル:方法及び応用の指針(PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications)」(Innisら編、Academic Press, San Diego, CA(カリフォルニア)州, 1990);Mattilaらの文献(Nucleic Acids Res. 19,4967 (1991));Eckertらの文献(PCR Methods and Applications 1,17 (1991));PCR (McPhersonら編、IRL Press, Oxford);及び米国特許第4,683,202号を参照)。
【0109】
他の適する増幅方法には、リガーゼ連鎖反応(ligase chain reaction)(LCR)(例えば、Wu及びWallaceの文献(Genomics 4,560 (1989))、Landegrenらの文献(Science 241,1077 (1988))を参照)、転写増幅(例えば、Kwohらの文献(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86,1173 (1989))を参照)、自律的配列複製(例えば、Guatelliらの文献(Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 87,1874 (1990))を参照)及び核酸ベースの配列増幅(nucleic acid based sequence amplification)(NASBA)が含まれる。後者の2つの増幅方法は、等温転写に基づく等温反応を含み、それは、一本鎖RNA(single stranded RNA)(ssRNA)及び二本鎖DNA(double stranded DNA)(dsDNA)を、それぞれ約30又は100対1の比の増幅生成物として生成する。
【0110】
Mgat3又はTLR遺伝子の鍵となるコドンの多型部位(表1)を占める塩基の素性は、以下に記載のいくつかの方法によって個体で判定することができる。
【0111】
(一塩基伸長方法)
一塩基伸長方法が記載されている(例えば、米国特許第5,846,710号、米国特許第6,004,744号、米国特許第5,888,819号及び米国特許第5,856,092号を参照)。簡単には、本方法は、プライマーの3'末端が標的配列中の潜在的変異に直接隣接するがその部位を跨がないように、標的配列に相補的なプライマーをハイブリダイズすることによって作動する。すなわち、プライマーは、多型部位に直接隣接しその5'側である塩基で終止する、標的ポリヌクレオチドの相補体由来の部分配列を含む。用語プライマーは、適当な条件下(すなわち、4つの異なるヌクレオシド三リン酸、及びDNA若しくはRNAポリメラーゼ又は逆転写酵素などの重合剤の存在下)、適当な緩衝液中で、適温で鋳型指定DNA合成の開始点として作用することができる、一本鎖オリゴヌクレオチドを指す。プライマーの適当な長さはプライマーの意図する用途によって決まるが、一般的に、15から40個のヌクレオチドである。短いプライマー分子は、鋳型と十分に安定したハイブリッド複合体を形成するために、より低い温度を一般に必要とする。プライマーは鋳型の正確な配列を反映する必要はないが、鋳型とハイブリダイズするために十分に相補的でなければならない。用語プライマー部位は、プライマーがハイブリダイズする標的DNAの領域を指す。用語プライマー対は、増幅されるDNA配列の5'末端とハイブリダイズする5'上流プライマー、及び増幅される配列の3'末端の相補体とハイブリダイズする3'下流プライマーを含む、プライマーセットを意味する。
【0112】
ハイブリダイゼーションは、潜在的変異の部位を占めることができる塩基に相補的な1つ以上の標識ヌクレオチドの存在下で実施される。例えば、二対立遺伝子多型のためには、2つの差別的に標識されたヌクレオチドを用いることができる。四対立遺伝子多型のためには、4つの差別的に標識されたヌクレオチドを用いることができる。一部の方法、特に複数の差別的に標識されたヌクレオチドを使用する方法では、ヌクレオチドはジデオキシヌクレオチドである。標的配列の変異部位を占める塩基に相補的なヌクレオチドが存在する場合、ハイブリダイゼーションは、プライマー伸長を可能にする条件下で実施される。伸長は標識ヌクレオチドを組み込み、それによって、伸長された標識プライマーを生成する。複数の差別的に標識されたヌクレオチドを用い、標的がヘテロ接合性である場合、複数の差別的に標識された伸長されたプライマーを得ることができる。伸長されたプライマーが検出され、どの塩基が標的ポリヌクレオチド中の変異部位を占めるのかが示される。
【0113】
(対立遺伝子特異プローブ)
多型を分析するための対立遺伝子特異プローブの設計及び使用が記載されている(例えば、Saikiらの文献(Nature 324,163-166 (1986));Dattagupta、欧州特許第235,726号;Saiki、国際公開第89/11548号を参照)。2個体由来のそれぞれの断片に異なる多型形態が存在するために、1個体由来の標的DNA断片とハイブリダイズするが、他の個体由来の対応断片とハイブリダイズしない対立遺伝子特異プローブを設計することができる。対立遺伝子間でハイブリダイゼーション強度のかなりの差、好ましくは基本的に二元的応答が存在し、それによって、プローブが対立遺伝子の1つだけとハイブリダイズするように、ハイブリダイゼーション条件は十分にストリンジェントであるべきである。ハイブリダイゼーションは、通常、オリゴヌクレオチドと1多型部位を有するDNA標的との間で特異的結合を可能にするストリンジェント条件下で実施される。ストリンジェント条件は、オリゴヌクレオチドとMgat3又はTLRの野生型又は多型部位に跨る高相同性の配列との特異的ハイブリダイゼーションを可能にする任意の適する緩衝液の濃度及び温度、並びに、オリゴヌクレオチドの非特異的結合を除去する任意の洗浄条件と定義される。例えば、5×SSPE(750mMのNaCl、50mMのリン酸ナトリウム、5mMのEDTA、pH7.4)の条件及び23℃の温度が、対立遺伝子特異プローブのハイブリダイゼーションに適する。洗浄条件は、通常、室温から60℃の範囲内である。一部のプローブは、多型部位がプローブの中央位置(例えば、15量体では7の位置;16量体では8又は9の位置)に並ぶように、標的DNAの断片とハイブリダイズするように設計される。このプローブ設計は、異なる対立遺伝子形間のハイブリダイゼーションの優れた識別を達成する。
【0114】
対立遺伝子特異プローブはしばしば対で用いられ、対の1メンバーは標的配列の参照型に完全な一致を示し、他のメンバーは変異型に完全な一致を示す。次に、同じ標的配列中の複数の多型の一斉分析のために、いくつかのプローブ対を同一の支持体上に固定することができる。多型は核酸アレイとのハイブリダイゼーションによって特定することもでき、その一部の例が記載されている(例えば、国際公開第95/11995号を参照)。
【0115】
(対立遺伝子特異増幅方法)
対立遺伝子特異プライマーは、多型と重複する標的DNA上の部位とハイブリダイズし、プライマーが完全な相補性を示す対立遺伝子型の増幅を刺激するだけである。(例えば、Gibbsの文献(Nucleic Acid Res. 17,2427-2448(1989))を参照)。このプライマーは、遠位の部位でハイブリダイズする第二のプライマーと併用される。増幅は2つのプライマーから進行し、特定の対立遺伝子型が存在することを示す検出可能な生成物を生じる。対照は、通常第二のプライマー対で実施され、その1つは多型部位で一塩基ミスマッチを示し、他は遠位部位との完全な相補性を示す。一塩基ミスマッチは増幅を阻止し、検出可能な生成物は形成されない。一部の方法では、このミスマッチは多型と整列するオリゴヌクレオチドの最も3'側の位置に含まれるが、その理由は、この位置がプライマーからの伸長を最も不安定にするからである。(例えば、国際公開第93/22456号を参照)。他の方法では、第一のミスマッチは多型と整列するオリゴヌクレオチドの最も3'側の位置に含まれ、第二のミスマッチは直接隣接する塩基(最後から2番目の3'位置)に置かれる、二塩基ミスマッチが用いられる。この二重ミスマッチは、プライマーの3'位置と多型とが一致しない場合には、さらに増幅を阻止する。
【0116】
(直接配列決定)
本発明の多型配列の直接分析は、ジデオキシ鎖終結法又はマクサム-ギルバート法を用いて達成することができる(例えば、Sambrookらの文献「分子クローニング、実験マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)」(第2版、CSHP, New York(ニューヨーク)州 1989);Zyskindらの文献「組換えDNA実験マニュアル(Recombinant DNA Laboratory Manual)」(Acad. Press, 1988)を参照)。
【0117】
(変性勾配ゲル電気泳動)
ポリメラーゼ連鎖反応を用いて生成された増幅生成物は、変性勾配ゲル電気泳動を用いて分析することができる。異なる配列依存性融解特性及び溶液中のDNAの電気泳動的移動に基づいて、異なる対立遺伝子を特定することができる。(例えば、Erlich編「DNA増幅のためのPCR技術、原理及び応用(PCR Technology, Principles and Applications for DNA Amplification)」(W. H. Freeman and Co, New York(ニューヨーク)州, 1992)、第7章を参照)。
【0118】
(一本鎖高次構造多型分析)
標的配列の対立遺伝子は、一本鎖PCR生成物の電気泳動移動の変化によって塩基差を特定する、一本鎖高次構造多型分析を用いて区別することができることが記載されている(例えば、Oritaらの文献(Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86,2766-2770(1989))を参照)。増幅されたPCR生成物は、先に述べたように生成することができ、加熱さもなければ変性させて一本鎖増幅生成物を形成することができる。
【0119】
一本鎖核酸は、再び折りたたむか、又は、塩基配列に部分的に依存する二次構造を形成することができる。一本鎖増幅生成物の異なる電気泳動移動度は、標的配列の対立遺伝子間の塩基配列差に関係づけることができる。
【0120】
Mgat3又はTLRの野生型又は変異型の対立遺伝子の有無が個体について判定されると、この情報は異なる方法で用いることができる。例えば、前述のように、Mgat3又はTLRの遺伝子又は酵素が存在するとの判定は、疾患への感受性、又はCNS障害(例えば、AD又は他の神経変性疾患)の治療のための薬剤の効力を示す。したがって、この情報を使用して、その障害に罹患している個体のために、それぞれ適当な診断又は治療のレジメンの判断を助けることができる。
【0121】
Mgat3又はTLRの野生型又は変異型の対立遺伝子の有無の判定は、CNS障害のための薬剤候補の臨床試験の実施のためにも有用である。そのような試験は、既定の一群の多型部位において類似した又は同一の多型プロフィールを有する、治療集団又は対照集団で実施することができる。遺伝的に一致させた集団の使用は、遺伝的因子による治療結果の変動を除去又は低減し、可能性のある薬剤の効力のより正確な評価につながる。
【0122】
さらに、Mgat3又はTLRの遺伝子又は変異型対立遺伝子の有無の判定は、所与の治療に対する応答の差を解明するために、臨床試験の完了後に用いることができる。例えば、本情報は、登録患者を疾患サブタイプ又はクラスに層化するために用いることができる。さらに、治療に対して普通でない(高いか低い)応答を有するか又は全く応答しない(不応答者)、類似した多型プロフィールを有する患者のサブセットを特定するために、本明細書で記載される方法を用いることが可能である。このように、治療に対する応答に影響する、根底にある遺伝的要因に関する情報は、治療法の開発の多くの態様(これらは、新標的の特定から新試験の設計へ、さらに生成物標識化及び患者ターゲティングにわたる)で用いることができる。さらに、本方法は、治療に対する有害応答(有害事象)に関与する遺伝的要因を特定するために用いることができる。例えば、有害応答を示す患者は、一般集団で観察されるよりも高い頻度でMgat3又はTLR対立遺伝子の欠落が見られることがある。このことは、早期鑑定、及びそのような個体の治療からの除外を可能にする。それは、有害事象の生物学的原因を理解し、そのような結果を回避するために治療を修正するために用いることができる情報も提供する。
【0123】
他の態様において、本発明は、変異型及び/又は野生型のMgat3又はTLRタンパク質を用いてMgat3又はTLRの上方制御活性についてスクリーニングするための方法を提供する。これらの方法は、例えばADなどのCNS障害の治療のために、より有効で且つ/又はより安全な薬剤を作製するために薬剤候補を修飾する方法に関する情報を提供することができる。
【0124】
他の態様において、本発明は、AD患者から血液を取り出し、白血球又は他の血液細胞を単離してMgat3及び/又はTLR活性を増大させる作用物質で治療する方法も提供する。作用物質を除去した後、AD又は他のCNS疾患の治療のために、細胞をAD患者に戻す。
【0125】
ある実施態様では、CNS障害の治療のための所定の治療剤(例えば、クルクミン)は、1つ以上の類似候補作用物質を作製するために誘導体化される。その作用物質は、一般には、治療効力と関連する1つ以上の部分を保持しつつ、Mgat3又はTLRの潜在的誘導因子部分であるか、そうであることが公知であるか又は予測される1つ以上の部分を組み込む。Mgat3又はTLRの誘導因子部分は一般に知られていないが、例としては、例えばクルクミンに含まれるものに類似した化学中心などの化学中心を挙げることができる。
【0126】
本明細書で提供される方法による使用に適する化学修飾の方法は、一般に当技術分野で公知である。例えば、Mgat3又はTLR誘導因子部分(例えば、クルクミン基)は、所定の治療剤又は誘導因子自体に連結することができる。
【0127】
誘導体化された作用物質は、その作用物質がMgat3又はTLRタンパク質の誘導因子であるかどうかを判定するために試験される。未誘導体化の所定の治療剤と比較して、誘導体化された作用物質の存在下でのMgat3酵素又はTLR活性のより大きなレベルは、未誘導体化治療剤と比較して誘導体化された作用物質のより高い効力及び/又はより低い毒性を一般に示す。ある実施態様では、Mgat3又はTLRの誘導因子である1つ以上の候補作用物質を特定するために、誘導体化された作用物質のライブラリがスクリーニングされる。これらの方法による使用に適するMgat3又はTLRタンパク質には、例えば、野生型及び変異型のMgat3又はTLRが含まれる。
【0128】
一実施態様では、CNS障害の治療のための候補作用物質の効力を予測する方法が提供され、該方法は、(1)Mgat3又はTLRタンパク質の野生型の試料を該候補作用物質と接触させることと;(2)Mgat3又はTLRタンパク質の第二のAD試料を所定の治療剤と接触させることであって、第一及び第二の試料のそれぞれを接触させることがMgat3酵素又はTLR活性を維持するのに適する条件下で行われることと;(3)第一及び第二の試料のそれぞれについてMgat3酵素又はTLR活性のレベルを判定することと;(4)第一の試料中のMgat3酵素又はTLR活性のレベルを第二の試料中のMgat3酵素又はTLR活性のレベルと比較することとを含む。第一の試料と比較した、第二の試料中のMgat3酵素又はTLR活性のより高いレベルは、障害の治療のための候補作用物質の効力を示す。ある実施態様では、所定の治療剤は、例えば、クルクミン又は他の免疫モジュレーターなどの抗AD薬である。クルクミンの中心部に類似したクルクミン中心を有する候補作用物質が、特に適する。
【0129】
Mgat3又はTLRタンパク質試料としては、例えば、細胞又は無細胞調製物中のタンパク質組換体を含んでいる試料を挙げることができる。触媒活性のある、組換えヒトMgat3又はTLRタンパク質を生成する方法及び単離する方法は、当技術分野で公知である。(例えば、Bhattacharyyaらの文献(J. Biol. Chem. 277:26300-26309(2002))を参照)。
【0130】
本方法による使用に適するMgat3又はTLRタンパク質は、Mgat3又はTLRタンパク質を内因的に発現する組織又は細胞から得ることもできる。例えば、Mgat3又はTLRタンパク質を発現する組織又は細胞は、Mgat3又はTLRの酵素活性アッセイで用いるための酵素を調製するために用いることができる。腎臓又は脳は、Mgat3又はTLRタンパク質の特に適する供給源である。酵素の調製で使用するために適する腎臓又は脳の試料は、低温保存されたヒト又はマウスの組織のバンクから得ることができる。活性のあるMgat3又はTLRタンパク質を含むヒト又はマウスの腎臓又は脳の調製方法、並びに、Mgat3又はTLRの活性アッセイで酵素アッセイを用いる方法は公知である。(例えば、Bhattacharyyaらの文献(J. Biol. Chem. 277:26300-26309(2002))を参照)。ある実施態様では、Mgat3又はTLRタンパク質の調製に用いられる組織又は細胞は、変異型又は野生型のMgat3又はTLRについてホモ接合性である。他の実施態様では、変異型のMgat3又はTLRを含んでいるタンパク質試料は、変異型対立遺伝子についてヘテロ接合性である組織又は細胞に由来する。
【0131】
ある実施態様では、試料は、Mgat3又はTLRを発現する、インビトロで培養された細胞を含む。細胞は、組換え又は内因性のMgat3又はTLRタンパク質を発現することができる。Mgat3又はTLRの内因性発現に特に適する細胞には、ヒト腎臓細胞又はトランスフェクトされたCHO細胞が含まれる。内因性の変異型Mgat3又はTLR対立遺伝子を発現する細胞は、ホモ接合性又はヘテロ接合性でよい。組換え細胞に関して、Mgat3又はTLRタンパク質をコードする遺伝子のクローニング、組換え発現ベクターの生成、細胞のトランスフェクション及びその後のコードされたタンパク質の発現のための方法は、当技術分野で公知である。(一般には、例えば、Sambrook及びRussellの文献「分子クローニング、実験マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)」(第3版、2001);Ausubelら(編)の文献「分子生物学の現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」(1994);Sambrookらの文献「分子クローニング、実験マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)」(第2版1989)を参照)。培養細胞でMgat3(又はTLR)の活性を判定する方法も、一般に当技術分野で公知である。(例えば、Bhattacharyyaらの文献(J. Biol. Chem. 277:26300-26309(2002))を参照)。
【0132】
一般的に、Mgat3(又はTLR)の酵素活性レベルを判定するために適する方法には、例えば、Mgat3酵素活性又はTLRとの結合と関連するN-グリコシル化の検出が含まれる。Mgat3については、特に適するアッセイは、ペプチド又はタンパク質のN-グリコシル化の検出である(例えば、Bhaumikらの文献(Cancer Res. 58, 2881-2887)を参照)。例えば、この方法は、N-グリコシル化ペプチド又はタンパク質の検出を含むことができる。
【0133】
試料調製、及びN-グリコシル化生成物の同定を含む生成物同定の方法は周知技術であって、その例には、例えばHPLC法(例えば、逆相HPLC-タンデム質量分析(HPLC-tandem mass spectrometry)(HPLC-MS/MS)又はTLC法)の使用が含まれる。(例えば、Bhaumikらの文献(Cancer Res. 58, 2881-2887)を参照)。
【0134】
(アルツハイマー病の生体外療法)
他の実施態様では、アルツハイマー病患者のための生体外療法の方法が提供される。この方法は、AD患者から血液試料を得る工程と、血液試料を本発明の化合物と接触させる工程と、処置済血液試料をAD患者に注入により戻す工程とを含む。
【0135】
(本発明の医薬組成物)
本明細書で、有効成分として1つ以上の式Iの化合物、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくはプロドラッグを、医薬として許容し得る媒体、担体、希釈剤又は賦形剤、又はその混合物中に含む医薬組成物が提供される。
【0136】
本明細書で、1つ以上の式Iの化合物、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくはプロドラッグ、及び1つ以上の本明細書で記載の放出制御賦形剤を含む、修飾放出剤形の医薬組成物が提供される。適する修飾放出投薬媒体には、それらに限定されないが、親水性又は疎水性のマトリックス装置、水溶性分離層コーティング、腸溶コーティング、浸透圧装置、多粒子装置及びそれらの組合せが含まれる。医薬組成物は、非放出制御賦形剤を含むこともできる。
【0137】
本明細書で、1つ以上の式Iの化合物、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくはプロドラッグ、及び腸溶コーティング剤形用の1つ以上の放出制御賦形剤を含む、腸溶コーティング剤形の医薬組成物がさらに提供される。医薬組成物は、非放出制御賦形剤を含むこともできる。
【0138】
さらに、即時放出成分及び少なくとも1つの遅延放出成分を有し、0.1時間から最高24時間の間隔が置かれた少なくとも2つの継続したパルスの形で化合物の不連続な放出を与えることができる剤形の医薬組成物が提供される。
【0139】
一実施態様では、医薬組成物は、1つ以上の式Iの化合物、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくはプロドラッグ、並びに1つ以上の放出制御賦形剤及び非放出制御賦形剤、例えば崩壊性半透過膜及び膨張性物質として適する賦形剤を含む。
【0140】
本明細書で、1つ以上の式Iの化合物の約0.1から約100mg、約0.5から約75mg、約1.0から約50mg、約2.5から約25.0mg、約5.0から約15mg、約0.1mg、約0.5mg、約1mg、約5mg又は約10mgを、1日あたりの滅菌注射溶液として含む医薬組成物が提供される。本医薬組成物は、約0.1%から約2%の塩化ナトリウム、約0.1%から約2%の酢酸アンモニウム、約0.001%から約0.1%のエデト酸二ナトリウム、約0.1%から約2%のベンジルアルコールをさらに含み、pHは約6〜約8である。
【0141】
本明細書で提供される医薬組成物は、単位用量剤形又は多回用量剤形で提供することができる。当技術分野で周知のように、本明細書で用いる単位用量剤形とは、ヒト及び動物対象への投与に適し、個々に包装される物理的に別々の単位を指す。各単位用量は、必要な薬剤担体又は賦形剤と連携して所望の治療効果を生じるのに十分な、有効成分の所定量を含有する。単位用量剤形の例には、アンプル、注射器、並びに個別包装の錠剤及びカプセルが含まれる。単位用量剤形は、分割して、又はその複数個を投与することができる。多回用量剤形は、分離した単位用量剤形で投与されるべき、単一の容器に包装されている複数個の同一の単位用量剤形である。多回用量剤形の例には、バイアル、錠剤若しくはカプセルのビン、又は数パイント若しくは数ガロンのビンが含まれる。
【0142】
医薬組成物は、遅延型、徐放型、延長型、持続型、波動型、制御型、促進型及び速効型、標的型、プログラム型の放出、並びに胃残留剤形を含む修飾放出剤形として製剤化することもできる。これらの剤形は、当業者に公知である従来の方法及び技術によって調製することができる(例えば、上記の「レミントン:薬学の科学及び実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)」;「修飾放出薬剤送達技術(Modified-Release Drug Deliver Technology)」、Rathboneら編、「薬剤及び薬学(Drugs and the Pharmaceutical Science)」、(Marcel Dekker社:New York, NY(ニューヨーク)州, 2002;第126巻)を参照)。
【0143】
本明細書で提供される医薬組成物は、一度に、又は間隔を置いて複数回投与することができる。治療の正確な投薬量及び期間は、治療する患者の状態によって変更することができ、公知の試験プロトコルを用いて経験的に、又は、インビボ若しくはインビトロの試験又は診断データからの外挿によって判定することができるものと理解される。さらに、任意の特定の個体に関して、個々の必要及び製剤を投与する者又は投与を管理監督する者の専門的判断に従って、特別な投薬レジメンを経時的に調節すべきことが理解される。
【0144】
(投与経路)
治療する病状、障害又は疾患、及び対象の状態に従い、本明細書で提供される化合物は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、くも膜内注射若しくは注入、皮下注射又は移植)、吸入、経鼻、経膣、経直腸、又は舌下の投与経路によって投与することができ、それらは、単独で、又は、各投与経路に適当な医薬として許容し得る担体、アジュバント及び媒体と一緒に適する投薬単位で製剤化することができる。
【0145】
(非経口投与)
本明細書で提供される医薬組成物は、局所又は全身性の投与のために、注射、注入又は植込みによって非経口的に投与することができる。非経口投与には、本明細書で用いるように、静脈内、動脈内、腹腔内、鞘内、心室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑液嚢内及び皮下投与が含まれる。
【0146】
本明細書で提供される医薬組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、ミセル、リポソーム、マイクロスフェア、ナノシステム、及び注射前に液状の溶液又は懸濁液にするのに適する固体の形を含む、非経口投与に適する任意の剤形で製剤化することができる。そのような剤形は、薬学分野の技術者に公知である従来の方法によって調製することができる(例えば、上記の「レミントン:薬学の科学及び実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)」を参照)。
【0147】
非経口投与のための医薬組成物は、それらに限定されないが、水性媒体、水溶性媒体、非水性媒体、微生物の増殖に対する抗微生物剤若しくは防腐剤、安定剤、溶解性増強剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔薬、懸濁及び分散剤、湿潤若しくは乳化剤、錯化剤、隔離若しくはキレート剤、凍結保護剤、溶解保護剤、増粘剤、pH調節剤及び希ガスを含む、1つ以上の医薬として許容し得る担体及び賦形剤を挙げることができる。
【0148】
適する水性媒体には、水、食塩水、生理的食塩水若しくはリン酸緩衝食塩水(phosphate buffered saline)(PBS)、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張デキストロース注射液、滅菌注射水、デキストロース及び加乳リンゲル注射液が含まれるが、これらに限定されない。非水性媒体には、植物起源の不揮発性油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、落花生油、ハッカ油、サフラワー油、胡麻油、ダイズ油、水素化植物油、水素化ダイズ油、並びにヤシ油及びパーム核油の中等度鎖トリグリセリドが含まれるが、これらに限定されない。水溶性媒体には、エタノール、1,3-ブタンジオール、液体ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール300及びポリエチレングリコール400)、プロピレングリコール、グリセリン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド及びジメチルスルホキシドが含まれるが、これらに限定されない。
【0149】
適する抗微生物剤又は防腐剤には、フェノール、クレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチル及びプロピルp-ヒドロキシベンゾエート、チメロサール、塩化ベンザルコニウム(例えば、塩化ベンゼトニウム)、メチルパラベン及びプロピルパラベン、並びにソルビン酸が含まれるが、これらに限定されない。適する等張剤には、塩化ナトリウム、グリセリン及びデキストロースが含まれるが、これらに限定されない。適する緩衝剤には、リン酸及びクエン酸が含まれるが、これらに限定されない。適する抗酸化剤は本明細書に記載のものであり、重亜硫酸塩及びメタ重亜硫酸ナトリウムが含まれる。適する局所麻酔薬には、塩酸プロカインが含まれるが、それに限定されない。適する懸濁剤及び分散剤は本明細書に記載のものであり、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンが含まれる。適する乳化剤には本明細書で記載のものが含まれ、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート80及びトリエタノールアミンオレエートが含まれる。適する隔離又はキレート剤には、EDTAが含まれるが、これに限定されない。適するpH調節剤には、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸及び乳酸が含まれるが、これらに限定されない。適する錯化剤には、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン及びスルホブチルエーテル7-β-シクロデキストリン(CAPTISOL(登録商標)、CyDex、Lenexa、KS(カンザス)州)を含むシクロデキストリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0150】
本明細書で提供される医薬組成物は、単回又は多回投薬のために製剤化することができる。単一薬量製剤は、アンプル、バイアル又は注射器に詰め込まれる。多回投薬非経口製剤は、静菌濃度又は静真菌濃度の抗微生物剤を含まなければならない。当技術分野で周知で実践されているように、全ての非経口製剤は、無菌でなければならない。
【0151】
一実施態様では、医薬組成物は、直ちに使用可能な滅菌溶液として提供される。別の実施態様では、医薬組成物は、使用前に媒体で再構成される、凍結乾燥粉末及び皮下注射用錠剤を含む滅菌された乾燥溶解性の生産品として提供される。さらに別の実施態様では、医薬組成物は、直ちに使用可能な滅菌懸濁液として提供される。さらに別の実施態様では、医薬組成物は、使用前に媒体で再構成される、滅菌乾燥不溶性の生産品として提供される。さらに別の実施態様では、医薬組成物は、直ちに使用可能な滅菌乳剤として提供される。
【0152】
本明細書で提供される医薬組成物は、遅延型、持続型、波動型、制御型、標的型、プログラム型の放出形態を含む、即時型又は修飾された放出の剤形として製剤化することができる。
【0153】
移植されたデポとして投与するために、医薬組成物は、懸濁液、固体、半固体又は揺変性の液体として製剤化することができる。一実施態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、体液には不溶性であるが、医薬組成物中の有効成分の拡散を可能にする外側の重合体膜に囲まれている、固体の内部マトリックス中に分散される。
【0154】
適する内部マトリックスには、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、可塑化若しくは非可塑化のポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネート共重合体、親水性重合体、例えばアクリル及びメタクリル酸のエステルのヒドロゲル、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール並びに架橋部分加水分解ポリ酢酸ビニルが含まれる。
【0155】
適する外側の重合体膜には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、エチレン及びプロピレンとの塩化ビニル共重合体、イオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコール三元共重合体、並びにエチレン/ビニルオキシエタノール共重合体が含まれる。
【0156】
(制御放出剤形)
浸透圧制御放出剤形の医薬組成物は、製剤の能力の発揮又は処理を促進するために、本明細書で記載される追加の従来の賦形剤をさらに含むことができる。
【0157】
浸透圧制御放出剤形は、当業者に公知である従来の方法及び技術によって調製することができる(例えば、上記の「レミントン:薬学の科学及び実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)」;Santus及びBakerの文献(J. Controlled Release 1995, 35, 1-21);Vermaらの文献「薬剤開発及び産業薬剤学(Drug Development and Industrial Pharmacy)」(2000, 26, 695-708);Vermaらの文献(J. Controlled Release 2002, 79, 7-27)を参照)。
【0158】
ある実施態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、有効成分及び他の医薬として許容し得る賦形剤を含むコアをコーティングする非対称浸透圧膜を含んでいる、AMT制御放出剤形として製剤化される。(例えば、米国特許第5,612,059号、国際公開第2002/17918号を参照)。AMT制御放出剤形は、直接圧縮法、乾燥造粒法、湿式造粒法及び浸漬コーティング法を含む、当業者に公知である従来の方法及び技術によって調製することができる。
【0159】
ある実施態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、有効成分、ヒドロキシルエチルセルロース及び他の医薬として許容し得る賦形剤を含むコアをコーティングする浸透圧膜を含んでいる、ESC制御放出剤形として製剤化される。
【0160】
(投薬)
ある実施態様では、提供化合物は、非経口投与のために1日約0.1から約100mg/kgの量で、単一用量又は分割用量で1日1回投与され、kgは対象の体重を指す。
【0161】
ある実施態様では、提供化合物は、1日約0.5から約75mg/kgの量で、単一用量又は分割用量で1日1回投与される。
【0162】
ある実施態様では、提供化合物は、1日約1.0から約50mg/kgの量で、単一用量又は分割用量で1日1回投与される。
【0163】
ある実施態様では、提供化合物は、1日約2.5から約25.0mgの量で、単一用量又は分割用量で1日1回投与される。
【0164】
ある実施態様では、提供化合物は、1日約5.0から約15mgの量で、単一用量又は分割用量で1日1回投与される。
【0165】
ある実施態様では、提供化合物は、非経口投与のために、1つ以上の式Iの化合物の1日約0.1mg、約0.5mg、約1mg、約5mg又は約10mgの量で、単一用量又は分割用量で1日1回投与される。
【0166】
本発明を、以下の非限定的実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0167】
(実施例1)
ヒトMgat3又はTLRの分子クローニング。ヒトMgat3又はTLR遺伝子を、RT-PCR方法を用いてクローニングする。ゲノムDNAは、商業的供給源によって提供されたヒト腎臓又はヒト脳から調製する。全RNAは、標準のプロトコルによりTrizol試薬を用いて、ヒト組織の腎臓から調製する。オリゴdTプライマーを用いて全RNAから第一の鎖cDNAを合成するために、スーパースクリプト前増幅系を用いる。RT-PCRのためのプライマーは、野生型のヒトMgat3又はTLRの配列に基づいて設計した。ヒトMgat3又はTLRの遺伝子は、プラチナTaq DNAポリメラーゼハイフィデリティでcDNAから増幅される。該当する完全長の、ヒトMgat3又はTLRのPCR断片が得られる。ヒトMgat3又はTLRのDNAの、全てのエクソンに該当する断片が得られる。PCR生成物を双方向で完全に配列決定をし、ヒトMgat3又はTLRの完全なcDNA配列を判定する。
【0168】
発現ベクターへのMgat3又はTLRのサブクローニング。CHO又はLEC10細胞でのMgat3又はTLRのタンパク質の発現のために、完全長Mgat3又はTLRを発現ベクターにサブクローニングする。
【0169】
CHO細胞での組換えMgat3又はTLRの発現。Mgat3又はTLRタンパク質をコードするcDNAを、G418による選択の後CHO細胞で発現させる。タンパク質発現は、SDS-PAGE及びウェスタンブロット分析によって追跡した。
【0170】
(実施例2)
組換えMgat3又はTLRの発現。ヒトMgat3又はTLRのcDNAを、CHO細胞にクローニングして発現させる。ウェスタンブロット分析は、組換えMgat3又はTLRが発現され、抗ヒトMgat3又はTLRポリクローナル抗体によって認識されたことを示す。ラインウィーバーバーク研究をMgat3のプロトタイプのペプチド及びタンパク質基質で実施するか、又は、TLRで結合研究を実施する。Mgat3の触媒効率は、ペプチド又はタンパク質基質で確認する。TLRの活性は、結合研究又は機能活性の測定により測定する。
【0171】
Mgat3又はTLRのcDNA配列の分析。ヒト組織からMgat3又はTLRのcDNAをクローニングして、ヒトMgat3又はTLRのゲノムDNAを得るために、RT-PCRを用いる。Mgat3又はTLRの最も長いオープンリーディングフレームは、それぞれヒト野生型のMgat3(GenBankアクセッション番号NM 002409)又はTLR(GenBankアクセッション番号NM 003265(TLR3)、NM 138554(TLR4)、NM 003268(TLR5)、NM 016562(TLR7)、NM 138636(TLR8)、NM 017442(TLR9)、NM 030956(TLR10))と、全アミノ酸位置で配列同一性を有するポリペプチドをコードする。
【0172】
(実施例3)
末梢血単核細胞(Peripheral blood mononuclear cell)(PBMC)及びマクロファージ。UCLAで進行中のクルクミン複合体3の二重盲検試験への登録時に、AD患者を募集した。ADの診断基準は、可能性のあるアルツハイマー病のための国立神経及び言語障害並びにAD及び関連疾患協会(National Institute of Neurological and Communicative Disorders and the AD and Related Disorders Association)の基準を満たした。年齢を一致させた正常対照対象を募集し、Ficoll Hypaque勾配技術によってPBMCを静脈血から単離した。マクロファージスライド培養を調製するために、8チャンバポリスチレン容器ガラススライドの各ウェル内の10%の自己由来の血清を含むIscove培地中で、接着性マクロファージに分化するまで(7〜14日)、50,000個のPBMCを培養した。
【0173】
食作用アッセイ及び共焦点顕微鏡法。マクロファージを一晩FITC-アミロイド-β(1-42)(2μg/ml)に曝露させ、4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.1% Triton X-100で透過性化し、PBS中の1% BSAでブロックし、間接免疫蛍光法によってRab 5又はEEA1抗体で染色し;リソソームをLyso-Trackerプローブによって生体内で染色し;マクロファージを、抗CD68抗体を用いて染色し;ニューロンを、抗NeuN抗体を用いて染色した。調製物は、蛍光及び共焦点顕微鏡法を用いて検査した。
【0174】
脳切片中のAβの除去。AD患者の脳前頭葉冷凍組織からの6マイクロメートルの切片を、2日又は4日の間200,000個のPBMCと一緒に10% FBS含有DMEM中でインキュベートし、洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、抗CD68及びAβ(1-42)抗体及び適当な二次抗体を用いて間接免疫蛍光法によって染色した。
【0175】
(実施例4)
RNA及びマイクロアレイプローブの調製及びハイブリダイゼーション。AD患者及び対照の10,000,000個のPBMCを、Aβ(2μg/ml)の有る無しで、一晩培養した。RNAは、RNeasy Miniキット技術によって単離した。各試料及び参照(Universal Human Reference RNA)由来の全RNA(1μg)を、プローブ調製で用いた。ArrayScript(商標)を用いてT7プロモーターを有するオリゴ(dT)プライマーによって逆転写を誘起し、次に、第二鎖合成及び浄化を経て、T7 RNAポリメラーゼによるインビトロ転写のための鋳型になった。MEGAscript(登録商標)インビトロ転写を用いて、増幅されたRNA(amplified RNA)(aRNA)を生成した。次に、アンチセンスaRNAをCy3(参照)及びCy5(試料)で蛍光標識した。試料及び参照のaRNAをプールし、非特異結合を制限するために1×ハイブリダイゼーション緩衝液(50%ホルムアミド、5×SSC及び0.1% SDS)、COT-1 DNA及びポリ-dAと混合して、95℃に2分間加熱した。この混合物をマイクロアレイスライドの上に置き、42℃で一晩ハイブリダイズさせた。次に、アレイを、次第に、増大させたストリンジェンシーの下で洗浄し、マイクロアレイスキャナでスキャンした。ヒトオリゴヌクレオチドアレイをプリントし、それは24,650個の遺伝子を表していた。分析のために、2群のそれぞれ2反復を作成した。各データセットをセットの平均シグナル値に標準化し、ANOVAを実施した。P<0.05及び少なくとも3倍の倍率変化の遺伝子を、qPCRによるさらなる試験のために選択した。
【0176】
RNAの単離及びqPCR。RNAを、上記のように各対象のPBMC(10,000,000個)から単離し、それらを、Aβ(2μg/ml)の有る無しで一晩培養し;iSCRIPT cDNA Synthesis Kitを用いてcDNAを合成した。対象とする遺伝子の発現レベルを、以下のプライマーを用いてリアルタイムPCR検出器でqPCRによって試験し、ハウスキーピング遺伝子36B4のレベルに標準化した:
【化11】

【0177】
SYBR Green反応を、IQ SYBR Green混合物で実施した。反応を連続蛍光検出器の上で起こさせ、分析した。試料あたりの試験遺伝子の相対量を、前述の通りΔΔC(T)式を用いて36B4に対して計算した。結果は、各検体についてlog[MGAT(又はTLR)RNA(Aβを有する)/MGAT(又はTLR)RNA(Aβ無し)]で表す。クルクミン又はクルクミン類似体の評価のために、上記のアッセイを用いた。クルクミン(0.1μM)を、上記のように±Aβで一晩培養されたAD患者由来のPBMCに加えた。クルクミン又は類似体との2時間のインキュベーションの後、上記のようにRNAを単離し、cDNAを合成した。Mgat3又はTLR転写の発現レベルを定量し、ハウスキーピング遺伝子のレベルに標準化し、未処置細胞に対して、Aβの有る無しでクルクミン又は類似体で処置した細胞と比較した。試験剤の存在下での各細胞調製物について、Aβ及び試験剤によるMgat3(又はTLR)のRNAの量/AβだけによるMgat3(又はTLR)のRNAの量)]を判定した。この比を、試験剤の効力の判定に用いた。効力のある化合物は高い比(>1.5)を有し、各試験剤の相対活性をランク付けするために用いた(表2)。
【0178】
DNA試料。ゲノムDNAを、上記の対象の血液から得た。ゲノムDNAを標準の条件下で血液から抽出し、前述のように、特異的プライマーの存在下で個々のエクソン及び直接連なるイントロン領域をゲノムDNAから増幅した。
【0179】
配列決定。順方向及び逆方向の鎖について配列決定をし、信頼できる品質管理条件の下でヘテロ接合体を分解する手順によって、Sequencherソフトウェアで分析した。Mgat3及びTLRの完全長配列を、上の配列番号1〜8に示す。
【0180】
(実施例5)
健康対象及びAD対象のマクロファージによる食作用。42名の対照対象のマクロファージ(「対照マクロファージ」)での研究に基づき、約80%が24時間で溶解性FITC-Aβの優れた食作用を、又は稀に約10%が極めて効率的な食作用を示した。対照的に、73名のAD患者のマクロファージ(「ADマクロファージ」)は、FITC-Aβの最小限の表面取り込み(60%)を、細胞内取り込みは皆無であるが強い表面取り込み(25%)を、又は、極めて効率的な食作用(15%)を示した。存在する場合、Aβの細胞内輸送は対照マクロファージでは迅速であったが、AD患者からのマクロファージでは、輸送は徐々に進行するか又は全く進行しなかった。対照マクロファージの曝露から1時間及び2時間後、FITC-Aβは早期のエンドソームマーカーRab 5と共存していたが、Rab5の染色及び共存は、ADマクロファージでは最小限であった。トランスフェリン受容体EEA 1との共存は、対照マクロファージでは明らかであったが、ADマクロファージでは明らかでなかった。細胞表面からリソソームへのAβの進行は、ADマクロファージでは72時間観察されなかったが、対照マクロファージでは、FITC-Aβは曝露から1時間後内在化された。FITC-Aβは、曝露の1、48及び72時間後、リソソームマーカーLysotrackerと共存していた。対照的に、ADマクロファージでは、Aβは細胞表面に結合し、72時間リソソームへ進行せず、リソソームは十分に発現されなかった。対照及びAD個体からのマクロファージは、蛍光標識された大腸菌(E. coli)及び黄色ブドウ球菌(S. aureus)の効率的な食作用を示した。スクランブルされたAβ(42-1)は、対照又はADのマクロファージによって結合されず、内在化もされなかった。食作用の間のチロシンリン酸化は、対照で観察されたが、ADマクロファージでは観察されなかった。フコイダン治療は、Aβの取り込みをブロックしなかった。
【0181】
(実施例6)
脳のAβを除去する単球の能力。脳のAβを除去する単球の能力を試験するために、新たに単離した単球とAD前頭葉の切片との共培養を実施した。対照単球の3分の1は、2日でAβで飽和し、4日で100%が飽和した。同じ脳切片で、AD単球の4分の1未満が2日でAβで飽和し;4日で、これらの単球(内在化Aβの有る無しで)は、断片化、小疱形成及びAβ放出を示し、アポトーシスを示唆した。Aβで処置したマクロファージのアポトーシスは、SR-VAD-FMKポリカスパーゼアッセイで実行した。分化したマクロファージを培地中のクルクミノイド又は類似体で一晩処置し、次に、2.5μg/mlまでFITC-Aβ(1-42)に曝露させ、24時間又は48時間インキュベートし、蛍光又は共焦点顕微鏡法によって検査をした。マイクロアレイ試験は、AD患者(年齢を一致させた対照との比較で)のPBMCでMgat3の下方制御を示した。クルクミノイド又は類似体によるAD患者(年齢を一致させた対照との比較で)のPBMCの処置は、Mgat3及びTLR遺伝子を劇的に上方制御したか、又は食作用の程度を変えた(下記参照)。
【0182】
クルクミノイドは、個々のAD患者のマクロファージによる、アミロイドβの欠陥のある食作用を回復させる。食作用の欠陥を回復させるために、一晩のAβ食作用の間、マクロファージをクルクミノイドで処置した。クルクミノイド治療は、免疫蛍光顕微鏡検査が示すように、2名のAD患者のマクロファージで取り込みを増加させるのに有効であったが、ベースライン時すでに取り込みの高かった対照マクロファージによる取り込みには影響を及ぼさなかった。最も重要なことに、共焦点顕微鏡法が示すように、取り込みの増加は、細胞内食作用の誘導を通したものであった。マクロファージは、抗CD68又は蛍光ファロイジンを用いて、蛍光顕微鏡で可視化した。
【0183】
(実施例7)
Aβ食作用の間のAD単核細胞における転写変化。Aβ食作用の間、AD単核細胞での転写変化を判定するために、2名のAD患者及び2名の対照の単核細胞から単離されたmRNAのOperonプラットホーム上でのマイクロアレイ分析を実施した。Aβで処置した対照細胞と比較して、Aβで処置したAD細胞は、β-1,4-マンノシル-糖タンパク質4-β-N-アセチルグルコサミン転移酵素(β-1,4-mannosyl-glycoprotein 4-β-N-acetylglucosaminyltransferase)(Mgat3)(対照マクロファージで327倍(P<0.001)、フィブロネクチン(fibronectin)(FN1)(10.1倍)、ムスカリン様コリン受容体4(9.3倍)及び2'-5'-オリゴアデニレートシンセターゼ(oligoadenylate synthetase)3(OAS)(7.8倍)を含む33個の遺伝子の転写を上方制御(>3倍)し、8個の遺伝子の転写を下方制御(>3倍)した。このことは、14名の患者及び8名の対照の単核細胞でqPCR(Mgat3、OAS、FN1の転写変化、Mgat3の応答範囲を調査した)を用いて確認した。AD患者の大多数(71.5%)はAβ刺激の後Mgat3のRNAを下方制御した(比0.00001〜1.0)が、4名のAD患者はMgat3の発現を上方制御した。対照対象は、応答を下方制御した80歳を超える2名の対象を除いて、Aβ刺激の後Mgat3 RNAを上方制御した。さらなる研究は、対照マクロファージのMgat siRNAトランスフェクションが、Mgat3の上方制御(99%)及び単球あたりのFITC-Aβの取り込み(86%)を阻害したことを示した。食作用及びMgat3転写の両方を同時に試験した場合、AD患者は両方でより低いスコアを示した。Mgat3遺伝子の生成物はN-アセチルグルコサミン転移酵素III(N-acetylglucosaminyltransferase III)(GlcNAc-TIII)であり、それは、二分性のN-アセチルグルコサミンを複合N-グリカンのコアマンノースへ転移させる。GlcNAc-TIIIは、タンパク質のN-グリコシル化を調節して、細胞相互作用を調整する。トランケーションされたか不活性のGlcNAc-TIIIを有する動物は、神経性の機能不全を有する。したがって、異常なMgat3遺伝子は、個体を、ADを含む神経変性疾患及び挙動障害に罹りやすくする。食作用に及ぼすMgat3の下方的影響は、TLRに依存することができる。
【0184】
(実施例8)
AD患者におけるTLRの下方制御。本発明者らは18名のAD患者及び9名の対照対象においてqPCRによってTLR転写を試験し、60〜90歳の年齢集団のAD患者でTLRがかなり下方制御されることを見出した。サブグループ81〜90歳では、この関連性は存在しない。TLRの活性化は、アポトーシス、炎症性サイトカインの分泌及び直接抗微生物活性の増強を含む、多くの機能的結果をもたらす。AD患者由来のPBMCは一般に下方制御されたTLRを有するが、対照PBMCは上方制御されたTLRを有していた。Aβ刺激後のTLR1、TLR2、TLR3、TLR5、TLR8及びTLR10の転写は、対照の単核細胞と比較して、ADではかなり下方制御されている(図1)。TLR、TLR4、TLR5、TLR7、TLR8、TLR9及びTLR10は、AD患者と対照との間で最も大きな差を示した。対照対象のTLRの繰り返しアッセイは上方制御を示し、AD患者のそれらは下方制御を示した。ADマクロファージ上でのTLRのより低い発現レベルは、Aβ食作用を越えてより全体的な自然免疫の欠損を示し得る。
【0185】
(実施例9)
クルクミン。ビスデスメトキシクルクミノイドは、同定されている最も効力のある免疫増強クルクミノイド化合物の1つであり、それも、MGAT3及びTLRの転写を上方制御する。未精製の天然生成物由来の物質(すなわち、クルクミノイド)は、調べた症例の約50%で、AD患者由来のマクロファージによるAβの食作用を増強する。クルクミノイド由来の活性分画を同定するためにFITC-Aβ取り込み(IOD)によるバイオアッセイに誘導された反復過程によって、最も効力のある免疫賦活成分を単離した。物質をほぼ均質になるまで精製し、その分子イオン及び断片化パターンに基づいてビスデスメトキシクルクミンであるとLCMSによって同定した。この少量の構成成分の生物活性を検証するために、ビスデスメトキシクルクミンを化学的に合成して、上記の(実施例4を参照)食作用及び転写アッセイで試験した。クルクミンと比較して、クロマトグラフィーによって単離されたビスデスメトキシクルクミン物質及び化学合成されたビスデスメトキシクルクミン物質の両方は、0.1μMで食作用を最適に刺激した。機能的改善に生化学的変更が付随するかどうかを判定するために、Aβ単独と比較して、ビスデスメトキシクルクミン(0.1μM)とAβの存在下で、AD患者及び対照からのPBMCにおけるMGAT3及びTLRの転写の上方制御を試験した。ビスデメトキシクルクミンは、調べた4名の患者全てで上方制御された、MGAT3及びTLRの転写を向上させた。したがって、クルクミン(0.1μM)を、上記のようにAβと一晩培養されたAD患者由来のPBMCに加えた。2時間のインキュベーションの後、RNAを単離し、cDNAを合成した。Mgat3又はTLR転写の発現レベルを定量し、ハウスキーピング遺伝子のレベルに標準化し、Aβ無しでクルクミン又は類似体で処置した細胞と比較した。試験剤の存在下での各細胞調製物について、試験剤及びAβによるMgat3(又はTLR)のRNAの量/(Aβ単独による)Mgat3(又はTLR)のRNAの量]を判定した。この比を、試験剤の効力の判定に用いた。効力のある化合物は高い比(>1.5)を有し、相対活性をランク付けするために用いた(表2)。AD患者からのPBMCのビスデメトキシクルクミンによる処置は、全10個のTLRが上方制御されたことを示した。AD患者に由来する、ビスデメトキシクルクミンで処置したPBMCのフローサイトメトリーは、単球上でのTLR2、TLR3及びTLR4の発現増加を示した。
【0186】
クルクミンの精製。75mLのジクロロメタンに入れた1グラムのクルクミンをろ過し、母液を蒸発させ、抽出物の約50mgをシリカゲルPTLCプレートに置き、ジクロロメタンで溶出させ、4つの顕著なUV可視活性成分(それぞれRf値が0.27、0.14、0.08及び0.06)を得た。バイオアッセイで導かれた分画で最も活性の高い分画は、AD患者のマクロファージによるA□の食作用を増強した有効クルクミノイドとして、ビスデメトキシクルクミンの単離をもたらした。活性分画は、メタノール:ジクロロメタン(14:86、v:v)を用いてPTLCでさらに分離した。0.69、0.63及び0.49のRf値を有する3つの顕著な分画が可視化され、単離、抽出及び蒸発された。TLC分析に基づいて80%を超える純粋性であると判断されたので、3つの分画は、バイオアッセイ誘導分析に送られた。0.49のRf値を有する分画は最も高い活性を示し、それを、LCMSによってさらに調査した。活性分画の約4.5mgをRPLCMS上で分析し、アセトニトリル:水(5:95、v:v)からアセトニトリル:水(95:5、v:v)の勾配で、1.5ml/分の速度で5分間溶出させ、UV検出を220nmに設定した。顕著な物質が滞留時間2.17分で溶出し、約90%純粋であると判断され、m/zが308の顕著なイオンを示した。m/z 290(水損から生じる)のより大きなイオンも、観察された。以降のエレクトロスプレー質量分析実験も、[M+1]イオンの予想されたm/z 309及びm/z 291を示した。HPLC-質量分析実験に基づき、最も高い薬理活性を示す単離分画は、少ない方のクルクミンであるビスデメトキシクルクミンに対応した。質量分析に基づき、他のクルクミンの検出可能な量の存在は、この分画では観察されなかった。
【0187】
ビスデメトキシクルクミンの合成。バイオアッセイ誘導分画で最も活性の高い分画としてビスデメトキシクルクミン(5-ヒドロキシ-1,7-ビス-(4-ヒドロキシ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン)を同定した後、それを独立して合成し、試験した。それも、かなりの活性を示した。アセチルアセトン(2ml、19.5mmol)及び無水ホウ酸(1g、12.8mmol)を、アルゴン下室温で撹拌した。4-ヒドロキシベンズアルデヒド(9.52g、78.0mmol)(又は他のベンズアルデヒド)を乾燥酢酸エチル(150ml)に溶解し、ホウ酸トリブチル(21ml、78.0mmol)を加え、混合物を100℃に加熱し、1時間撹拌し、第一の反応からのホウ素複合体をこの混合物に加えた。反応混合液を100℃で1時間撹拌した。混合液を85℃に冷却させ、1.9mLのブチルアミン(合計7.7ml、78mmol)を5分ごとに加えた。混合液を100℃で30分間撹拌し、次に、50℃に冷却し、HCl(0.4N、60ml)を加え、混合液をさらに30分間撹拌した。2つの層を分離させ、有機抽出物を水及び塩水で連続して洗浄した。溶液をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮乾燥させた。未精製生成物をクロマトグラフ(2:1、ヘキサン/EtOAc)にかけ、0.98gを橙色粉末として得、所望生成物は16%の収率であった。Rf=0.15、mp=199.9℃、ESI-MS:m/z 309(MH)+、331(MNa)+、307(MH)-;1HNMR δ 7.50 (d, 2H, Ph-CH-), 7.29 (m, 4H, Ph), 6.62-6.78 (m, 4H, Ph), 6.37 (d, 2H, -CH-), 5.70 (s, 1H, -CO-CH-CO-).
【0188】
ビスデメトキシクルクミン類似体の合成。スキーム1で概略を示すように、クルクミン誘導体5a〜mを合成した(例えば、Bull. Korean. Chem. Soc. 2004, 25, 1769-1774;Eur J. Med Chem, 1997, 32, 321-328を参照)。簡潔には、アセチルアセトンを無水ホウ酸で処理してホウ素錯体1を得た。n-ブチルアミン存在下でのホウ素錯体1によるアルデヒド2a〜mの縮合、及び続く酸脱水は、先に述べたクルクミン誘導体5a〜mを得た。化合物は、スペクトルにより完全に特徴づけられた。
【化12】

i)無水ホウ酸;ii)ベンズアルデヒド2a〜m、ホウ酸トリブチル、EtOAc;100℃;
iii)n-BuNH2、85℃;iv)0.4N HCl、60℃。
【0189】
5-ヒドロキシ-1,7-ビス-(4-メトキシ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン、5bを、化合物5aについて記載した一般手順に従って調製し、橙色粉末を得た。Rf=0.18;ESI-MS m/z 335(MH-);1HNMR δ 7.62 (d, J=15.9 Hz, 2H, Ph-CH-), 7.53 (m, 4H, Ph), 6.93 (m, 4H, Ph), 6.51 (d, J=15.9 Hz, 2H, -CH-), 5.80 (s, 1H -CO-CH-CO-)
【0190】
酢酸4-[7-(4-アセトキシ-フェニル)-5-ヒドロキシ-3-オキソ-ヘプタ-1,4,6-トリエニル]-フェニルエステル、5c。ビスデメトキシクルクミン、5aを塩化アセチル/TEAで処理し、黄色粉末を得た。Rf=0.71;1HNMR δ 7.70 (d, J=18.0 Hz, 2H, Ph-CH-), 7.61 (m, 4H, Ph), 7.17 (m, 4H, Ph), 6.60 (d, J=18.0 Hz, 2H, -CH-CO-), 5.87 (s, 1H, -CH-), 2.35 (s, 6H, 2×CH3).
【0191】
2,2-ジメチル-プロピオン酸4-{7-[4-(2,2-ジメチル-プロピオニルオキシ)-フェニル]-3,5-ジオキソ-ヘプタ-1,6-ジエニル}-フェニルエステル、5d。ビスデメトキシクルクミン、5aを塩化ピバロイル/TEAで処理し、黄色粉末を得た。Rf=0.35;ESI-MS m/z 477(MH+)、475(MH-);1HNMR δ 7.70 (d, J=18.0 Hz, 2H, Ph-CH-), 7.6 (m, 4H, Ph), 7.17 (m, 4H, Ph), 6.60 (d, J=18.0 Hz, 2H, -CH-CO-), 5.87 (s, 1H, -CH-), 1.22 (s, 18H, 2×(CH3)3).
【0192】
5-ヒドロキシ-1,7-ビス-(3-ヒドロキシ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン、5eを、5aについて記載したように調製し、橙色粉末を得た。Rf=0.53;ESI-MS m/z 309(MH+)、331(MNa+)、307(MH-);1HNMR δ 7.50 (d, J=15.9 Hz, 2H, Ph-CH), 7.16 (m, 2H, Ph), 7.00-6.95 (m, 4H, Ph), 6.78 (m, 2H, Ph), 6.53 (d, J=15.9 Hz, 2H, -CH-CO-), 5.80 (s, 1H, -CH-).
【0193】
1,7-ビス-(4-ジメチルアミノ-フェニル)-5-ヒドロキシ-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン、5fを、5aについて記載したように調製し、深い橙色の粉末を得た。Rf=0.50;ESI-MSは、主要なピークとしてC11H12NO+ m/z 174を与えた。1HNMR δ 7.60 (d, J=15.6 Hz, 2H, Ph-CH-), 7.45 (m, 4H, Ph), 6.68 (m, 4H, Ph), 6.42 (d, J=15.6 Hz, 2H, -CH-CO-), 5.73 (s, 1H, -CH-), 3.03 (s, 12H, 4×CH3).
【0194】
5-ヒドロキシ-1,7-ビス-(3-ヒドロキシ-4-メトキシ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン、5gを、5aについて記載したように調製し、橙色粉末を得た。Rf=0.43;MP=182.8℃;ESI-MS m/z 369(MH+)、367(MH-);1HNMR δ 7.40 (d, J=17.1 Hz;2H, Ph-CH-), 6.99 (m, 2H, Ph), 6.91 (m, 2H, Ph), 6.73 (m, 2H, Ph), 6.34 (d, J=17.1 Hz, 2H, -CH-), 5.70 (s, 1H, -CO-CH-CO-), 3.78 (s, 6H, 2×CH3)
【0195】
5-ヒドロキシ-1,7-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン、5hを、5aについて記載したように調製し、橙色粉末を得た。Rf=0.35;ESI-MS m/z 369(MH+)、367(MH-);1HNMR δ 7.41 (d, J=15.6 Hz;2H, Ph-CH-), 6.92 (m, 4H, Ph), 6.72 (m, 2H, Ph), 6.34 (d, J=15.6 Hz, 2H, -CH-), 5.69 (s, 1H, -CO-CH-CO-), 3.77 (s, 6H, 2×CH3)
【0196】
5-ヒドロキシ-1,7-ビス-(4-ヒドロキシ-2-メトキシ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン、5iを、5aについて記載したように調製し、橙色粉末を得た。Rf=0.33;ESI-MS m/z 367(MH-);1HNMR δ 7.87 (d, J=16.2 Hz;2H, Ph-CH-), 7.40 (m, 2H, Ph), 6.77 (m, 2H, Ph), 6.63 (d, J=17.1 Hz, 2H, -CH-), 6.46 (m, 2H, Ph), 5.80 (s, 1H, -CO-CH-CO-), 3.85 (s, 6H, 2×CH3)
【0197】
5-ヒドロキシ-1,7-ビス-(2-ヒドロキシ-4-メトキシ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン、5jを、5aについて記載したように調製し、黄色粉末を得た、Rf=0.30;ESI-MS m/z 368(M+)。1HNMR δ 8.08 (s, 2H), 7.05 (m, 4H), 6.38-6.30 (m, 4H), 3.80 (s, 6H, 2×CH3).
【0198】
1,7-ビス-(3-クロロ-4-ヒドロキシ-フェニル)-5-ヒドロキシ-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン、5kを、5aについて記載したように調製し、黄色粉末を得た。Rf=0.14;ESI-MS m/z 376(100%)、378(66%)、377(21%)(M+)、375(100%)、377(66%)、376(21%)(MH-);1HNMR δ 7.54 (d, J=15.9 Hz;2H, Ph-CH-), 7.40-7.36 (m, 4H, Ph), 6.33 (s, 2H, Ph), 6.47 (d, J=15.9 Hz, 2H, -CH-), 5.77 (s, 1H, -CO-CH-CO-).
【0199】
5-ヒドロキシ-1,7-ビス-(2-メトキシ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン、5lを、5aについて記載したように調製し、黄色粉末を得た。Rf=0.38;ESI-MS m/z 337(MH+);1HNMR δ 8.05 (d, J=15.0 Hz, 2H, Ph-CH-), 7.85-7.60 (m, 4H, Ph), 7.11-6.70 (m, 4H, Ph), 6.66 (d, J=15.0 Hz, 2H, -CH-) 6.0 (s, 1H), 3.90 (s, 6H, 2×CH3).
【0200】
1,7-ビス-(5-フルオロ-2-メトキシ-フェニル)-5-ヒドロキシ-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン、5mを、5aについて記載したように調製し、黄色粉末を得た。Rf=0.26;ESI-MS m/z 371(MH-);1HNMR δ 7.93 (d, J=15.0 Hz;2H, Ph-CH-), 7.40 (m, 2H, Ph), 7.10-6.98 (m, 3H, Ph), 6.87-6.84 (m, 3H, Ph), 6.66 (d, J=15.0 Hz, 2H, -CH-), 5.87 (s, 1H, -CO-CH-CO-), 3.88 (s, 6H, 2×CH3).
【0201】
クルクミンの合成。
【化13】

【0202】
置換されたベンズアルデヒド(2mmol)及びホウ酸トリブチル(4mmol)を、1mLの乾燥EtOAcに溶解した。1ドラムバイアルに、45μLの乾燥EtOAcに溶解させた無水ホウ酸(0.7mmol)及びアセチルアセトン(1mmol)に加えた。それぞれ室温で1時間撹拌した後に、内容物を合わせた。合計0.2mmolのブチルアミンの4つの分量を、10分ごとに滴下して加えた。4時間後、撹拌を中止し、溶液を一晩静置させた。混合液を油浴(50〜60℃)中で加熱し、HCl(0.4Nの1.5mL)でクエンチした。溶液を、1時間撹拌した。有機層及び水層を分離し、水層をEtOAcで抽出し、有機層を合わせて濃縮し、MeOH(500μL)に溶解し、一晩冷却し(4℃)、ろ過し、冷たいMeOHで洗浄した。このように得られた固体は、高度に精製されたクルクミンであった。
【0203】
(1E,4Z,6E)-5-ヒドロキシ-1,7-ジフェニルヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン(6)。上の一般手順に従い、黄色固体を得た(1HNMR 300 MHz CDCl3) δ5.86s, 1H), δ6.64 (d, J=15.9, 2H), δ7.4 (m, 6H), δ7.57 (m, 4H), δ7.67 (d, J=15.9, 2H), C19H16O2[M-H]のMS (ESI)(陰イオン)計算値275.34、観察値275.27;TLC EtOAc/ヘキサン1:9 Rf=0.54
【0204】
1E,4Z,6E)-5-ヒドロキシ-1,7-ジp-トリルヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン(7)。上の一般手順に従い、黄色固体を得た(1HNMR 300 MHz CDCl3) δ 2.39s, 6H), δ5.83 (s, 1H), δ6.60 (d, J=16.4, 2H), δ7.21 (d, J=7.8, 4H), δ7.27 (s, 1H), δ4.65 (d, J=7.8 4H), δ7.64 (d, J=15.7, 2H), C21H20O2[M-H]のMS (ESI)(陰イオン)計算値303.39、観察値303.13、TLC EtOAc/ヘキサン1:9 Rf=0.64。
【0205】
1E,4Z,6E)-1,7-ビス(3-フルオロフェニル)-5-ヒドロキシヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン(8)。上の一般手順に従い、黄色固体を得た。
【0206】
1E,4Z,6E)-1,7-ビス(4-チオールメチルフェニル)-5-ヒドロキシヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン(9)。一般手順に従い、橙色固体を得た。(1HNMR 300 MHz CDCl3) δ 2.51s, 6H), δ6.14s, 1H), δ6.90 (d, J=15.9, 2H), δ7.30 (d, J=8.5, 4H), δ7.60 (d, J=15.9, 2H), δ7.67 (d, J=8.5, 4H). Rf=0.37(1:19のEOAc/ヘキサン)。
【0207】
(1E,4Z,6E)-1,7-ビス(4-tert-ブチルフェニル)-5-ヒドロキシヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン(10)。一般のクルクミン合成手順に従い、明黄色の固体を得た(1H 300 MHz CDCl3) δ1.34s, 18H), δ5.85 (s, 1H), δ6.60 (d, J=16.15, 2H), δ7.46 (q, J=17.6, 5.2 8H), δ7.65 (d, J=15.9, 2H)C27H32O2[M-H]のMS (ESI)(陰イオン)計算値387.55、観察値387.20;TLC EtOAc/ヘキサン1:9 Rf=0.51。
【0208】
(実施例10)
AD及び対照患者からの細胞におけるMgat3及びTLRの転写。AD患者由来の細胞でMgat3及び/又はTLRの転写をqPCRによって試験し、その結果を、年齢を一致させた対照から得られたものと比較した(表2)。上記のように、マクロファージのMgat3又はTLRの活性化又は上方制御は、アミロイド症の亢進及びAβの除去、アポトーシス、炎症性サイトカインの分泌及び他の抗AD抗微生物活性の増加を含む、多くの機能的結果をもたらす。AD患者由来のPBMCは一般に下方制御されたMgat3及びTLRを有するが、対照PBMCは上方制御されたMgat3及びTLRを有していた。したがって、対照のPBMCに対するADのPBMCのAβ刺激後のMgat3又はTLRの転写の比は、薬剤候補のインビトロ効力を試験するための指標及び感度の高い方法を提供する。Mgat3又はTLRの高い転写比を有する化合物は、抗AD(及び他の神経変性)疾患薬としての将来性を有することが予測される。ビスデメトキシクルクミンによる繰り返しアッセイは、3〜5倍の相対Mgat3比を示した。1.0〜2.0を超える比は、化合物がMgat3及びTLRを上方制御し、抗AD作用物質の薬剤開発での使用に将来性を有することを示唆する。5a〜m及び6〜10の相対生物活性は、上記の(実施例4と9を参照)インビトロAβアッセイで確認された。結果を、下の表2に示す。
【表2】

【0209】
本明細書で記載される実施例及び実施態様は例示の目的のものに過ぎず、それらに照らして様々な修正又は変更が当業者に明らかになり、本出願の精神及び範囲並びに添付の請求項の範囲に含まれることになるものと理解される。本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、全ての目的でその全体が引用により本明細書中に組み込まれる。
【図1A−F】

【図1G−J】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルツハイマー病を治療する方法であって、そのような治療が必要な対象に式(I)を有する化合物を投与することを含む、前記方法:
【化1】

[式中、
R1、R2、R3及びR4は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルケニル、(C1〜C6)アルキニル、ヘテロアルキル、ハロ(例えば、フルオロ、クロル、ブロモ、ヨード)、(C1〜C6)アルコキシ、アミノ、(C1〜C6)アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ;ヒドリド、アシル、ハロ、低級アシル、低級ハロアキル、オキソ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、アミノ、低級アルコキシ、アミノカルボニル、低級アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アリールアミノ、低級カルボキシアルキル、低級シアノアルキル、低級ヒドロキシアルキル、アルキルチオ、アルキルスルフィニル及びアリール、低級アラルキルチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、アミノスルホニル、低級N-アリールアミノスルホニル、低級アリールスルホニル、低級N-アルキル-N-アリールアミノスルホニルで置換されている5-又は6員環の不飽和、部分不飽和又は飽和のヘテロシクリル又はカルボシクリル;ハロ、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、シアノ、カルバモイル、低級アルキル、低級アルケニルオキシ、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、低級アルキルアミノ、低級ジアルキルアミノ、低級ハロアルキル、低級アルコキシカルボニル、低級N-アルキルカルバモイル、低級N,N-ジアルキルカルバモイル、低級アルカノイルアミノ、低級シアノアルコキシ、低級カルバモイルアルコキシ及び低級カルボニルアルコキシから選択される1つ、2つ又は3つの置換基で任意選択で置換されているフェニル、ビフェニル、ナフチル並びに5-及び6員のヘテロアリールからなる群から選択されるアリール;からなる群から独立に選択され、さらに、該アシル基はヒドリド、アルキル、ハロ及びアルコキシから選択される置換基で任意選択で置換される]。
【請求項2】
R1、R2、R3及びR4が、独立して、Cl、Br、I、-OR4、-R5、-OC(O)R6、OC(O)NR7R8、-C(O)R9、-CN、-NR10R11、-SR12、-S(O)R11、-S(O)2R14、-C(O)OR15、-S(O)2NR16R17;-R18NR19R20から選択される置換基で置換されている1つ又は2つの環水素を有するアリールであり、上式で、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は同じであるか又は異なり、1から8個の炭素原子の分枝型若しくは非分枝型のアルキル基又は水素基である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
R1、R2、R3及びR4がそれぞれ水素である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
R1、R2、R3及びR4がそれぞれ任意選択で置換された5員の炭素環である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
R1、R2、R3及びR4がそれぞれ、O、N又はSからなる群から選択される1つ又は2つのヘテロ原子を有する、任意選択で置換された5員の複素環である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
R1、R2、R3及びR4がそれぞれ任意選択で置換された6員の炭素環である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
R1、R2、R3及びR4がそれぞれ、O、N又はSからなる群から選択される1つ又は2つのヘテロ原子を有する、任意選択で置換された6員の複素環である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
2,2-ジメチル-プロピオン酸4-{7-[4-(2,2-ジメチル-プロピオニルオキシ)-フェニル]-3,5-ジオキソ-ヘプタ-1,6-ジエニル}-フェニルエステル;1,7-ビス-(3-クロロ-4-ヒドロキシ-フェニル)-5-ヒドロキシ-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン;1,7-ビス-(5-フルオロ-2-メトキシ-フェニル)-5-ヒドロキシ-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン;及び(1E,4Z,6E)-1,7-ビス(4-tert-ブチルフェニル)-5-ヒドロキシヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オンからなる群から選択される化合物であって、アルツハイマー病の治療に有用である、前記化合物。
【請求項9】
2,2-ジメチル-プロピオン酸4-{7-[4-(2,2-ジメチル-プロピオニルオキシ)-フェニル]-3,5-ジオキソ-ヘプタ-1,6-ジエニル}-フェニルエステルである、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
1,7-ビス-(3-クロロ-4-ヒドロキシ-フェニル)-5-ヒドロキシ-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オンである、請求項8記載の化合物。
【請求項11】
1,7-ビス-(5-フルオロ-2-メトキシ-フェニル)-5-ヒドロキシ-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オンである、請求項8記載の化合物。
【請求項12】
(1E,4Z,6E)-1,7-ビス(4-tert-ブチルフェニル)-5-ヒドロキシヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オンである、請求項8記載の化合物。
【請求項13】
アルツハイマー病に関する生物学的又は薬理学的活性について化合物をインビトロでスクリーニングする方法であって、
(a)細胞を該化合物とともにインキュベートする工程と;
(b)該化合物の生物学的又は薬理学的活性の指標として、取り込まれ、中和され、消費され又は貪食されたアミロイド-β(1-42)(Aβ)又は他のアミロイドの量を検出する工程と
を含む、前記方法。
【請求項14】
前記細胞が自然免疫細胞、単球又はマクロファージであり、該細胞がAβプラークのインビトロ除去に関与する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記化合物がクルクミノイドの未精製混合物である、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が高度に精製されたクルクミノイドである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記化合物がクルクミノイドの高度に精製された合成類似体である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
個体での薬剤の効力を予測する方法であって、前記薬剤がMgat3及び/又はTLRモジュレーター(誘導因子)であり、前記個体が該薬剤による治療に応答するアルツハイマー病に関連するCNS障害に罹っているか又はそれを起こす危険があり、
(a)生体試料を個体から単離することであって、該生体試料が、
(i)核酸;及び
(ii)Mgat3タンパク質又はTLRタンパク質
の少なくとも1つを含むことと;
(b)該生体試料を分析して該個体でのMgat3遺伝子のWT又は他の対立遺伝子の有無を判定することであって、WT Mgat3の存在が、該薬剤による該障害の治療について陽性の臨床的結果を示すことと
を含む、前記方法。
【請求項19】
前記薬剤がクルクミノイド様中心を有する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記薬剤がクルクミン又はクルクミン類似体である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記生体試料が核酸を含む、請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記分析工程が、前記生体試料由来の核酸を分析して、Mgat3及び/又はTLR遺伝子のコード領域に存在するヌクレオチドを判定することを含む、請求項18記載の方法。
【請求項23】
前記分析工程が、前記生体試料由来の核酸と、
(a)配列番号1に示すヌクレオチド配列の少なくとも10から100個の連続したヌクレオチドを含む核酸であって、少なくとも、
(i)鍵となる対立遺伝子位置のヌクレオチドの1つ;及び
(ii)それに隣接した塩基
を含む核酸;並びに、
(b)(a)の核酸に完全に相補的である核酸
からなる群から選択される核酸とのハイブリダイゼーションを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記核酸が検出可能なマーカーに結合している、請求項23記載の核酸。
【請求項25】
Mgat3及び/又はTLR遺伝子のコード領域の様々なヌクレオチド位置で、Mgat3及び/又はTLRの遺伝子型を判定することをさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項26】
アルツハイマー病関連のCNS障害の治療のための候補作用物質の効力を予測する方法であって、前記候補作用物質が該障害の治療のための所定の治療剤の誘導体であり、
(a)AD個体由来の前記Mgat3又はTLRタンパク質の試料を該候補作用物質と接触させることと;
(b)健康な個体由来の該Mgat3又はTLRタンパク質の試料を該所定の治療剤と接触させることであって;該接触が、Mgat3及び/又はTLR酵素の機能活性をもたらすのに適する条件下で起こることと;
(c)該試料のそれぞれについてMgat3及び/又はTLRの酵素活性のレベルを判定することと;
(d)該AD個体由来の試料中のMgat3及び/又はTLRの酵素活性のレベルを該健康な個体由来の試料中のMgat3及び/又はTLRの酵素活性のレベルと比較することと;
を含み、
該健康な個体由来の試料中のMgat3及び/又はTLRの酵素活性に対する、該AD個体由来の試料中のMgat3及び/又はTLRの酵素活性のより高いレベルが該候補作用物質の効力を示す、前記方法。
【請求項27】
前記Mgat3タンパク質がMgat3の変異体である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記TLRタンパク質がTLRの変異体である、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記所定の治療剤がクルクミン又は関連化合物である、請求項26記載の方法。
【請求項30】
前記候補作用物質がMgat3及び/又はTLR誘導因子部分を組み込むように修飾されている、請求項26記載の方法。
【請求項31】
前記Mgat3及び/又はTLR誘導因子部分がクルクミノイド様中心である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記Mgat3及び/又はTLRの酵素活性のレベルを判定することが、試料中の前記薬剤候補の関数としてN糖化ペプチド又はタンパク質のレベルを検出することを含む、請求項26記載の方法。
【請求項33】
アルツハイマー病の罹患患者の生体外治療の方法であって、
(a)該AD患者から血液試料を得る工程と;
(b)該血液試料を式(I)の化合物と接触させる工程と;
(c)該修飾血液試料を該患者に注入する工程と
を含む、前記方法。

【公表番号】特表2010−504332(P2010−504332A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529242(P2009−529242)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/020411
【国際公開番号】WO2008/048410
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(506392861)ヒューマン バイオモレキュラル リサーチ インスティテュート (5)
【Fターム(参考)】