説明

アルファー化米炊飯装置およびその使用方法

【課題】 アルファー化米、各種惣菜、炊飯用熱源、各種炊飯用具、喫食用具を備え、アルファー化米を、通常の炊飯方法により炊いたと同じ食感に炊くことができる自己完結型アルファー化米炊飯装置の提供。
【解決手段】 たとえば、JISZ1506に規定されている「複両面段ボール1種」の段ボールで製造した「複両面段ボール箱1種「CD−1」から成る自立性の外装容器に、透水性の袋に充填され、さらに非透湿性の袋に密封された発熱剤、非透湿性の袋に殺菌・包装されたアルファー化米、耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋、耐熱性、非透湿性のプラスチックス製炊飯用袋、及びアルファー化米と炊飯用水を入れたプラスチックス製炊飯用袋が、耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋を介して自立性の外装容器の底面と密着するのを防止するセパレータを、使用手引書及び開梱手引書と一緒に収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルファー化米炊飯装置およびその使用方法に関する。より詳細に述べれば、本発明は、炊飯するための湯の熱エネルギーを最大限に利用してアルファ−化米(以下、「α−化米」と略記することがある)を完全に糊化させ、美味しく炊くことができる炊飯装置及びその使用方法に関する。本発明の装置は、一人前から50人前程度まで、使用人数に応じて設計することができるので、釣り、ハイキング、登山等アウトドーアスポーツにおける個人携帯用はもとより、地震等大規模災害における炊き出し装置としても利用することができる。
【背景技術】
【0002】
災害対策基本法第5条5の2は、「市町村は、住民に直結した行政機関として防災の第一次的責任を果たすべく、他の地方公共団体等の協力を得て、地域防災計画を作成し、これらに基づいて防災に関する事務を実施し、住民の隣保共同の精神に基づく自主的防災組織を含む区域内の防災組織の整備充実、地方公共団体相互の協力に努めなければならない。」と規定している。これを受けて、市町村は、あらかじめ備蓄拠点を設け、非常用食料等の調達・確保および防災資機材等の整備に努めている。
【0003】
現在、備蓄されている非常用食料としては、保存期間が長く、かつ調理不要のものとして、乾パン、缶詰、粉ミルク、即席麺等があり、米はα−化米が主流である。
【0004】
α−化米は、米を蒸して、米の中の天然でんぷん(ベータでんぷん)をα−でんぷんに変換し、80〜100℃で熱風乾燥した保存食である。α−化米は、保存性がよく、害虫がつき難い、洗米の必要がない等の特徴を備えているので、震災等に備える備蓄用の米として非常に優れている。
【0005】
前述したように、α−化米は、保存性がよい、害虫がつき難い、洗米の必要がない等の有利な特性を備えているので、震災等に備えた非常食として、地方自治体等で大量に備蓄されている。震災等に備えた非常食としてα−化米を備蓄する場合、最悪の場合には、電気・ガス等の熱源が遮断されていること、炊事道具、食器等食事に必要な諸道具が無い劣悪な環境の避難所で使用することを考慮すると、次のような要件を備えていることが理想的である。(イ)α−化米だけを袋等に詰めた状態で備蓄するのではなく、α−化米、惣菜用食材、発熱剤、その他炊飯から盛り付け、喫食に必要な用具の全てを一組にして所定の容器に収納し、炊飯から喫食準備まで可能な自己完結型の炊飯装置として保管できること、(ロ)一回の炊飯で多人数、たとえば、20〜50人程度の量を、前述した浸漬・膨潤法ではなく、米から炊飯したと遜色のない食感に炊きあげることができるような装置にすること、(ハ)発熱剤が発生する熱を可能な限り最大限有効に利用することができるような構造にすること。
【0006】
本明細書で使用する用語「自己完結型炊飯装置」とは、主食としてのα化米、惣菜、炊飯用熱源、各種炊飯用具、及び各種喫食用具の全てが外装容器に収納されていて、それ以外の資材を調達せずに炊飯から喫食までを保証してくれる炊飯装置の意味である。
【0007】
従来、α−化米は、熱湯なら約30分、水で約70分間浸漬して、膨潤させて喫食に供されていた(以下、この方法を「浸漬・膨潤法」という)。浸漬・膨潤法は、米を夏場なら30分以上、冬場なら1時間以上水に漬けたあと、沸騰させ、蒸らすという、いわゆる「炊飯」とは異なり、糊化が十分行われず、芯があるか、逆に、軟らかすぎるという欠点があった。然しながら、α−化米が、電気、ガス等熱源がない劣悪な環境で使用しなければならない非常食であるという理由で、消費者は、我慢していたのが実状であった。
【0008】
これを改良する方法として、α−化米といえども、本格的な炊飯方法により、米から炊いたと同じ食感の御飯を炊く方法が提案されている。
【0009】
たとえば、特許文献1は、概略、所定の袋に入れた50食分(約5kg)のα−化米と、α−化米を調理する耐熱性のプラスチックス製炊飯用袋と、化学発熱剤と、化学発熱剤を水とを反応させるための耐熱性のプラスチックス製発熱反応用袋を一括して、耐熱性プラスチック製外袋に包装し、段ボール箱に梱包した非常用保存食炊き出しセットを開示している。
【0010】
この従来技術を使用する場合には、開梱して全ての資材を取り出し、先ず耐熱性プラスチック製外袋を段ボール箱の壁面及び底面に沿って段ボールに入れ、次いで耐熱性プラスチック製外袋の底に発熱剤を置き、次に耐熱性のプラスチックス製炊飯用袋をプラスチック製外袋の壁面及び底面に沿って、プラスチック製外袋に内挿し、次いでプラスチックス製炊飯用袋に約8000ccの炊飯用水を注入し、次いでα−化米を入れて上部を締結し、次いで、プラスチック製外袋とプラスチックス製炊飯用の間隙から所定量の水を注入して、発熱剤と反応させ、炊飯用水を沸騰させて、α−化米を炊飯するようになっている。
【0011】
この従来技術の最大の欠点は、以下の通りである。耐熱性のプラスチックス製炊飯用袋には、約8000ccの炊飯用水と約50食分(約5kg)のα−化米を入れるので、全質量が約12kgになり、その全質量が、化学発熱剤に負荷される。その結果、化学発熱剤は、炊飯用袋の底と段ボール箱の底との間の狭い空間に密着され、圧縮された状態になる。化学発熱剤は、ポリエステル製メッシュ等透水性の袋に充填されていて、メッシュから水が浸入し、発熱剤と反応し、発生した水蒸気がメッシュを通して上昇する仕組みになっている。従って、表面積が最も広い上下の両面面から上昇する水蒸気を、最大限有効に利用しなければならないところ、前述したように、発熱剤袋は、炊飯用袋の底と段ボールの底との間の狭い空間に密着され、圧縮された状態になっているため、発熱剤袋の側面からの水蒸気しか利用することができない。
【0012】
このため、従来技術では、化学発熱剤の発生熱量を十分有効に活用することができず、本来必要とする以上の量の発熱剤を使用したり、炊飯までに時間がかかるという欠点があった。
【0013】
この従来技術のように、化学発熱剤を充填した袋が、炊飯用袋の底と段ボールの底との間の狭い空間に密着され、圧縮された状態のために、化学発熱剤が発生する全熱量を有効に利用することができない理由を、熱力学あるいは反応速度論から、説明する。
【0014】
今、気体定数をR、絶対温度をTとすると、反応速度定数kは、
k=Aexp(−E/RT)で表される。定数E及びAは、それぞれ、見掛けの活性化エネルギー、及び頻度因子を表す。この式は、イオン反応などの一部の高速度反応を除き、均一気相及び液相反応、不均一接触反応、固相反応などの一般の化学反応はもちろん、拡散および粘性などの輸送現象にも成立する。
【0015】
頻度因子(A)は、温度の緩やかな関数で、二分子反応を反応の衝突理論から見たとき、単位時間当たりの反応分子間の衝突数に相当する。素反応についてのAの物理的内容は、活性錯合体理論によれば、反応A+B+C+−−−−−→Pに対して、近似的に、k(KT/h)(ΩA+ΩB+ΩC+−−−+Ωp)に等しい。ここに、ΩA、ΩB、ΩC、−−−Ωpは、分子がそれぞれ衝突したときに発生するエネルギーである。従って、全エネルギーは、それぞれのエネルギーの総和になる。
【0016】
2分子間の衝突頻度は、2分子の占める一定の空間容積(位相空間)において、自由度が大きければ、大きいほど、高くなる。2分子の衝突によって発生した気体(水蒸気)は1モルで、22.4リッターを占める。発熱剤を充填した袋の容積は60〜100ccである。従って、特許文献1に記載された従来技術のように、発生した気体(水蒸気)が、速やかに袋の外に排出されない場合、発熱剤を充填した袋の内部は、発熱剤の分子、水の分子、発生した気体分子で充填された状態になり、発熱剤の分子と水の分子との衝突頻度は極端に低下し、その結果、発熱剤の一部が未反応のまま残留することとなる。
【0017】
上述したように、特許文献1に記載されている従来技術は、震災等に備えた非常食としてのα−化米に必要な要件のうち、一回の炊飯で、多人数、たとえば、20〜50人程度の量を、前述した浸漬・膨潤法ではなく、米から炊飯したと遜色のない食感に炊きあげることができるような装置であること、及び発熱剤が発生する熱を可能な限り最大限有効に利用することができるような構造にすること、の2点において改良すべき課題を有している。
【特許文献1】特開2003−180270号公報
【特許文献2】特許第3467729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、発明が解決すべき課題は、α−化米を、浸漬・膨潤法とは異なり、本格的な炊飯方法により炊いた米飯と同じ食感が得られるように炊く方法を提供することである。
【0019】
発明が解決すべき別の課題は、α−化米を、浸漬・膨潤法とは異なり、本格的な炊飯方法により炊いた米飯と同じ食感が得られるように炊くことができる炊飯装置を提供することである。
【0020】
発明が解決すべき更に別の課題は、α−化米、惣菜用食材、発熱剤、その他炊飯から盛り付け、喫食に必要な全ての用具を一組にして所定の容器に収納し、浸漬・膨潤法とは異なり、本格的な炊飯方法により炊いた米飯と同じ食感が得られるように炊くことができる、炊飯から喫食準備まで可能な自己完結型であって、特に大規模災害用の備蓄用資材としての炊飯装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
課題を解決するための手段を策定する上で最も重要な要素は発熱剤である。水と反応して発熱する、いわゆる化学発熱剤には、酸化カルシムを主剤とするもの、マグネシウム(主として塩化マグネシム)を主剤とするもの、酸化カルシムとアルミニウムの混合物を主剤とするものなど、各種提案されている。本発明は、発熱剤に特段に制約を受けるものではないが、発熱剤としては、本件出願人の一人が保有する特許文献2に係る発熱剤が好ましい。
【0022】
特許文献2に記載されている発熱剤は、たとえば、アルミニウム粉体75gと生石灰粉体30gから成る発熱剤を1単位製品として、80ccの水と反応して約30秒後に約100℃の水蒸気を発生し、この温度を約30分間維持する能力を保有している。従って、特許文献2に係る発熱剤を、必要に応じて複数個使用することにより、20〜50人程度の量の米を炊飯することも可能である。
【0023】
特許文献2に係わる発熱剤は、発熱剤の質量当たり、100メッシュ(−150μm90%以上)〜200メッシュ(−75μm95%以上)の粉体生石灰が15〜30%、および−330メッシュ(−45μm)が40〜60%、+330メッシュ(+45μm)が15〜30%、+235メッシュ(+75μm)が10%>の粒度分布を有する粉体アルミニウム70〜85%から成る発熱剤を、透水性材料、たとえば、所定の目付量の不織布、和紙、合成紙等の袋に充填し、さらに流通、保管のためアルミ箔等非透湿性材料の外装袋に包装したものである。この発熱剤は、特許文献2に記載されているので、その詳細な説明は割愛する。
【0024】
本発明を実施する場合は、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋(外袋)を自立性外装容器の側壁及び底面に沿って内挿し、その底の上に所定量の発熱剤を置き、注水して反応させる。従って、外袋に要求される最も重要な物性は、発生した水蒸気を外袋の外部に漏出させずに、100%が内袋の炊飯用水を沸騰させるのに消費することである。外袋に要求される次ぎに重要な性質は、携帯食料或いは緊急災害時の備蓄用食料に使用するものとして、軽量で嵩張らないこと、柔軟性があって多様な形状に変化して保存する場所の形状に追随性があること、厳しい環境下でも使用に耐える強度、耐候性、耐薬品性等各種物性に優れていることである。このような点を総合的に勘案すると、プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)の材料は、以下に説明するプラスチックス製フィルムが適している。
【0025】
以下、外袋に適したプラスチックス製フィルムを、先ず水蒸気の透過度から検討する。今、厚さT、表面積Sのプラスチックス製フィルムの両側の水蒸気の分圧がそれぞれP1,P2とすると、定常状態で時間tに透過する水蒸気の量をQとすると、
Q={P・(P1−P2)・S・t}/T (1)
Q={P・ΔP・S・t}/T (2)
(2)式を変形して、
Q/{S・t}={P・ΔP}/T=q (3)
ある特定条件下におけるプラスチックス製フィルムの単位面積、単位時間における、この水蒸気の透過量qを水蒸気透過度(WVTR)といい、その単位は、(g・m-2・24hr/25μm、40℃、90%RH)である。即ち、40℃、90%相対湿度において、厚さ25μm、表面積1m2のプラスチックス製フィルムを24時間で透過する水蒸気の量をグラムで表したものである。
【0026】
本発明の外袋に適したプラスチックス製フィルムは、水蒸気透過度(WVTR)が、30以下のものである。水蒸気透過度(WVTR)が30以上になると、水酸基を含むものが多くなり、水に対する溶解度係数が大きくなったり、或いは自由体積分率が高くなり、拡散係数が大きくなり、さらに、強度も低下するので好ましくない。
【0027】
本発明の外袋に適したプラスチックス製フィルムを例示すると、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデンコートポリプロピレン、2軸延伸ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデンコート2軸延伸ナイロン、ポリ塩化ビニリデンコート2軸ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンコートセロファン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン(0.941〜0.965)、m−キシリレンアジアジパミド、無延伸ポリプロピレン、アルミ箔積層フィルム、セラミック蒸着積層フィルム、アルミ蒸着積層フィルム、等である。
【0028】
上述したフィルムは、厚さが25μmの場合である。前記式(3)より、水蒸気透過度とフィルムの厚さは反比例することが明らかである。また、他の条件が同じならば、フィルムの強度は、厚さにほぼ比例する。従って、所望によりフィルムの厚さを変えることにより、水蒸気透過度と強度を調整することができる。
【0029】
本発明を実施する場合の次の手順は、プラスチックス製炊飯用袋(内袋)に充填されたα−化米に炊飯に必要な量の水、即ち、炊飯用水を入れ、炊飯用水が沸騰した場合の水蒸気が漏出しないように上端部を所定の手段で封止する。
【0030】
プラスチックス製炊飯用袋(内袋)に関して説明する。プラスチックス製炊飯用袋(内袋)は、α−化米と、α−化米を炊飯するのに必要な量の水を入れて、外袋の中に収容されるものである。本発明の炊飯装置付き携帯食料を炊飯する方法は、外袋の中で発熱剤と水を反応させて約100℃の蒸気を発生させ、その蒸気でプラスチックス製炊飯用袋の中の水を沸騰させ、プラスチックス製炊飯用袋の中の水に浸漬させたα−化米を加熱・炊飯するものである。従って、プラスチックス製炊飯用袋は、100℃以上の耐熱性があり、かつ沸騰した水蒸気を外部に漏出させない非透湿性でなければならない。従って、プラスチックス製炊飯用袋の材料は、前述した外袋と同じ材料でよい。
【0031】
プラスチックス製炊飯用袋に充填されたα−化米の炊飯に必要な量の水に関して説明する。炊飯の場合、加水量は、通常、使用する米の質量の1.3〜2.0倍(平均は米量の1.5倍、加熱に伴う蒸発量10%を含む)とされている。従って、1食100gとして20食分2kgのα−化を炊飯する場合、炊飯用水は2.6〜4kgとなり、α−化米と炊飯用水を合わせた全質量は、4.6〜6kgとなる。従って、この質量のプラスチックス製炊飯用袋を、前記プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)の中に収納させると、プラスチックス製炊飯用袋、その外側のプラスチックス製発熱反応用袋(外袋)が自立性外装容器の底面と密着した状態になり、その結果、外袋とプラスチックス製炊飯用袋の間に置かれた発熱剤が、圧縮された状態になる。このような状態に置かれた発熱剤が、十分に発熱反応を起こすことができない理由、及び発生した水蒸気を十分に有効利用できないことは、前述のように化学反応速度論及び熱力学理論を以て理論的に説明した。
【0032】
そこで、本発明では、α−化米と炊飯用水を入れたプラスチックス製炊飯用袋を、前記プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)の側壁と底面に沿ってその中に内挿させるに先だって、プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)の底部にセパレータを置き、セパレータの上にα−化米と炊飯用水を入れたプラスチックス製炊飯用袋を置くこととする。
【0033】
従って、セパレータは、プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)と、α−化米と炊飯用水を入れたプラスチックス製炊飯用袋との間に、所定の間隙を形成するための、いわば「五徳」であり「隔て子」である。発熱剤と水との反応によって発生する水蒸気の温度は最高100℃であり、これを約30分間保持する環境で使用するものであるので、セパレータの材料としては、木、竹、金属、硬質プラスチックス等特段に限定されない。ただし、製造コスト、再利用の点を考慮すると、硬質プラスチックスを射出成形によって成形したものが好ましい。
【0034】
セパレータの形状は、発生した水蒸気が速やかに上昇するような形状なら特段に限定されない。たとえば、簀の子形、井桁形等任意に成形することができる。セパレータの高さは、発熱剤が水と反応した後では、発熱剤を入れた袋が最大厚さで約2倍に膨張することを考慮して、少なくとも30mmにすることが好ましい。セパレータの大きさは、プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)と、α−化米と炊飯用水を入れたプラスチックス製炊飯用袋との大きさによって決定されるが、当然プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)の底面に置ける大きさで、且つ、α−化米と炊飯用水を入れたプラスチックス製炊飯用袋の底部全体を支えることができる大きさでなければならない。ただし、セパレータの高さを高くして、セパレータの上に置いたα−化米と炊飯用水を入れたプラスチックス製炊飯用袋の4隅が下に垂れるようにすると、発熱剤の発生する蒸気により炊飯用水を沸騰させる場合の熱の対流効率がよくなるので好ましい。
【0035】
本発明は、前述したα−化米、発熱剤、プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)及びプラスチックス製炊飯用袋、セパレータ、さらに所望により惣菜用食材、盛り付け、喫食に必要な食事用具、さらに炊飯用水さえも入手し難い最悪の環境を想定して炊飯用水等を一組にして自立性外装容器に収納し、少なくとも3年間の貯蔵・保管するものである。
【0036】
従って、本発明の自立性外装容器は、その使用前にあっては、数段に積載して保管するに耐える強度を有する材料で、デッドスペースを作らない形状であることが好ましい。さらに使用する場合は、α−化米を炊飯する場合の最外装の支持容器、いわば「かまど」の役をするものである。即ち、たとえば、約50人食のα−化米(約5kg)を炊飯する場合、α−化と炊飯用水8kgを合わせて最低でも約13kgの重量を約30分間支持できる自立性と強度がなければならない。従って、そのような強度を有する材料であるならば、金属、プラスチックス、紙、木或いはこれらの複合材等特段に限定されない。ただし、製造コスト、軽量であること、使用後折り畳めること等を勘案すると段ボール箱が好ましい。段ボール箱の場合は、外装用段ボールの基本的物性としてはJISZ1516に規定されたもの、外装用段ボール箱の基本的品質としてはJISZ1506に規定されたもの、外装用段ボール箱の基本的形状に関してはJISZ1507に規定されたものを使用することが好ましい。
【0037】
ここで、本発明の炊飯装置を使用する環境温度を15℃とした場合の、α−化米の質量と、炊飯用水の質量と、粉体アルミニウムと粉体生石灰の質量比が2:1の発熱剤の質量の相関関係を説明する。
(1)1人食100gの場合:水は130〜200cc、発熱剤の質量は15g。
(2)10人食1000gの場合:水は1300〜2000cc、発熱剤の質量は50g〜75g。
(3)20人食2000gの場合:水は2600〜4000cc、発熱剤の質量は100g〜160g。
(4)30人食3000gの場合:水は3900〜6000cc、発熱剤の質量は160g〜236g。
(5)40人食4000gの場合:水は5200〜8000cc、発熱剤の質量は200g〜325g。
(6)50人食5000gの場合:水は6500〜10000cc、発熱剤の質量は230g〜354g。
【0038】
前述したように、本発明のα−化米炊飯装置は、(1)自立性の外装容器と、(2)それぞれ自立性の外装容器に収納されている、(イ)透水性の袋に充填され、さらに非透湿性の袋に密封された発熱剤、(ロ)非透湿性の袋に殺菌・包装されたアルファー化米、
(ハ)耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋、(ニ)耐熱性、非透湿性のプラスチックス製炊飯用袋、及び(ホ)アルファー化米と炊飯用水を入れたプラスチックス製炊飯用袋が、耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋を介して自立性の外装容器の底面と密着するのを防止するセパレータとを含む。
【0039】
前述したように、本発明のα−化米炊飯装置を使用するには、(1)自立性の外装容器を開封して、発熱剤、アルファー化米、耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋、耐熱性、非透湿性のプラスチックス製炊飯用袋、及びアルファー化米と炊飯用水を入れたプラスチックス製炊飯用袋が自立性の外装容器の底面と密着するのを防止するセパレータをそれぞれ取り出すこと、(2)プラスチックス製発熱反応用袋を外装容器の側壁及び底面に密着させ外装容器に内挿すること、(3)プラスチックス製発熱反応用袋の底面に発熱剤を置くこと、(4)発熱剤を跨ぐようにしてプラスチックス製発熱反応用袋の底面にセパレータを置くこと、(5)プラスチックス製炊飯用袋にアルファー化米と所定量の炊飯用水を入れ、上端部を密封・封止し、前記セパレータの上に置くこと、(6)プラスチックス製発熱反応用袋と炊飯用袋の間隙から反応水を注水し、プラスチックス製発熱反応用袋の上端部を密封・封止することを含む。
【0040】
本発明のα−化米炊飯装置を使用する場合は、α化米と炊飯用水を入れるプラスチックス製炊飯用袋が必要になるが、α化米を非透性で密封殺菌が可能な耐熱性のプラスチックス製に入れて保存する場合は、その袋を炊飯用袋に代用してもよい。
【0041】
本発明のα−化米炊飯装置には、以上に述べた資材の他に、所望により惣菜用食材を入れてもよい。この場合の惣菜用食材は、殺菌包装された缶詰、レトルトパウチ食品でなければならない。
【0042】
本発明のα−化米炊飯装置には、以上に述べた資材の他に、所望により各種炊飯用具、たとえば、しゃもじ、喫食に必要な容器、皿、スプーン、箸等用具を入れることが好ましい。
【0043】
本発明のα−化米炊飯装置を使用する場合には、炊飯用水が必要である。炊飯用水は、現場で調達してもよいが、アウトドーアでの使用、震災時の避難所等断水も想定される最悪の環境下での使用を考えた場合、予め外装容器に必要資材として収納しておくことが好ましい。この場合、炊飯用水には、食品添加剤として認められている殺菌剤・保存剤、たとえば、安息香酸、安息香酸ナトリウム等を添加することが好ましい。
【0044】
本発明におけるα−化米或いは惣菜等は、その種類、製造方法等は特段に限定されない。ただし、本発明の対象は、個人が自己の嗜好に合わせて料理して飲食に供する食品と異なり、予め工業的に生産される規格商品としての携帯食料、或いは緊急災害時に備えた備蓄用食料であるので、貯蔵性、便宜性、安全性、品質の安定性・均一性、価格の安定性、多様性、流通の合理性等諸条件を満足させるものでなければならない。
【0045】
貯蔵性に関しては、緊急災害時に備えた備蓄用食料の場合、3〜5年間の貯蔵性が要求される。便宜性に関しては、携帯食料又は緊急災害時に備えた備蓄用食料として、料理の下ごしらえが不要であり、極めて短い時間に外部加熱するだけで食べることができなければならない。安全性に関しては、衛生面でも、医療面でも不十分な環境下で使用する携帯食料又は緊急災害時に備えた備蓄用食料として、完全に安全でなければならない、できれば、保存のための合成保存料や殺菌剤などを添加してないものが好ましい。
【0046】
品質の安定性・均一性に関しては、3〜5年間貯蔵する必要があるので、その間に品質が低下してはならない。価格の安定性に関しては、特に経済的に不安定な状況になる大規模災害時に供給するには、価格が安定していることが重要である。
【0047】
流通の合理性に関しては、緊急災害時に供給するには、流通経路の短縮化や、流通の円滑化・迅速化等が要求されるので、品質規格や衛生基準を定めてそれに合致するように製造した規格製品でなければならない。
【0048】
本発明のα化米炊飯装置の炊飯能力は特段に限定されないが、通常、1人食から50人食程度に設計するのが好ましい。その理由は、1人食でα化米を約100g、炊飯用水役130cc必要とすると、50人食でα化米が約5kg、炊飯用水約8L(8kg)の計13kgとなり、その他にα化米に添加する各種惣菜類等、及び発熱剤を230g〜354g、発熱剤反応用水を1000cc(1kg)とすると、計約15kg弱の質量となる。約15kgの質量は、「かまど」の役目をする外装容器としてのJISZ1506に規定されている「複両面段ボール1種」の段ボールで製造した「複両面段ボール箱1種「CD−1」」が支持できる質量であり、且つ、通常の成人で移動可能な質量だからである。従って、50人食以上の炊飯装置を製造するよりは、最も能力が大きなものを50人食とし、10人食用炊飯装置、或いは20人食用炊飯装置を製造しておき、それらを適宜組み合わせて必要とする人数に対応させた方が、選択の多様性、使い勝手、熱効率等諸点から見ても好ましい。
【0049】
本発明のα−化米炊飯装置を組み立てる場合、(1)非透湿性の袋に殺菌・包装されたアルファー化米、(2)透水性の袋に充填され、さらに非透湿性の袋に密封された発熱剤、(3)耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋、(4)耐熱性、非透湿性のプラスチックス製炊飯用袋、(5)アルファー化米と炊飯用水を入れたプラスチックス製炊飯用袋、(6)耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋を介して自立性の外装容器の底面と密着するのを防止するセパレータ、(7)各種惣菜類、(8)皿、箸、スプーン等各種喫食用具等を自立性の外装容器に収納する順序、配列方法等は特段に限定されない。ただし、災害時の非常用食料として備蓄する場合は、数段に積層して保管するので、最も重たい非透湿性の袋に殺菌・包装されたアルファー化米を最下層に置き、順次質量順に収納すれば安定が保持される。さらに、耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋を折り畳んだ状態で収納するよりは、予め耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋を、外装容器の壁面、底面に沿って外装容器に内挿しておき、その中にその余の全資材を包装した状態で収納すると、防水、防塵対策にもなり、また炊飯時に、耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋を、外装容器の壁面、底面に沿って外装容器に内挿する手間が省けるので好ましい梱包方法である。
【0050】
従って、上記課題は、下記の手段により解決される。
(1)(1)自立性の外装容器と、(2)それぞれ自立性の外装容器に収納されている、 (イ)透水性の袋に充填され、さらに非透湿性の袋に密封された発熱剤、(ロ)非透湿性の袋に殺菌・包装されたアルファー化米、(ハ)耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋、(ニ)耐熱性、非透湿性のプラスチックス製炊飯用袋、及び(ホ)アルファー化米と炊飯用水を入れたプラスチックス製炊飯用袋が、耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋を介して自立性の外装容器の底面と密着するのを防止するセパレータとを含むアルファー化米の炊飯装置。
【0051】
(2)上記(1)において、惣菜用食材、盛り付けに必要なしゃもじ、喫食に必要な容器、皿、スプーン、箸等用具を追加すること。
【0052】
(3)上記(1)または(2)において、発熱反応用水と炊飯用水を収納すること。
【0053】
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1項において、プラスチックス製発熱反応用袋とプラスチックス製炊飯用袋の水蒸気透過度(WVTR)が30(g・m-2・24hr/25μm、40℃、90%RH)以下のプラスチックス製フィルムで製造すること。
【0054】
(5)上記(3)において、プラスチックス製フィルムを、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデンコートポリプロピレン、2軸延伸ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデンコート2軸延伸ナイロン、ポリ塩化ビニリデンコート2軸ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンコートセロファン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン(0.941〜0.965)、m−キシリレンアジアジパミド、無延伸ポリプロピレン、アルミ箔積層フィルム、セラミック蒸着積層フィルム、アルミ蒸着積層フィルムから成る群から選択すること。
【0055】
(6)アルファー化米の炊飯装置を使用する方法であって、(イ)自立性の外装容器を開封して、発熱剤、アルファー化米、耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋、耐熱性、非透湿性のプラスチックス製炊飯用袋、及びアルファー化米と炊飯用水を入れたプラスチックス製炊飯用袋が自立性の外装容器の底面と密着するのを防止するセパレータをそれぞれ取り出すこと、(ロ)プラスチックス製発熱反応用袋を外装容器の側壁及び底面に密着させ外装容器に内挿すること、(ハ)プラスチックス製発熱反応用袋の底面に発熱剤を置くこと、(ニ)発熱剤を跨ぐようにしてプラスチックス製発熱反応用袋の底面にセパレータを置くこと、(ホ)プラスチックス製炊飯用袋にアルファー化米と所定量の炊飯用水を入れ、上端部を密封・封止し、前記セパレータの上に置くこと、及び(ヘ)プラスチックス製発熱反応用袋と炊飯用袋の間隙から反応水を注水し、プラスチックス製発熱反応用袋の上端部を密封・封止することを含む、アルファー化米の炊飯装置を使用する方法。
【発明の効果】
【0056】
請求項1に記載した発明によると、α化米を浸漬・膨潤法ではなく通常の炊飯方法で調理するのに必要な炊飯用具、熱源、炊飯するための湯の熱エネルギーを最大限に利用することができるセパレータが、自立性外装容器に全て収納されているので、釣り、ハイキング、登山等アウトドーアスポーツにおける個人携帯用はもとより、地震等大規模災害に備えた炊き出し装置としても利用することができる。
【0057】
請求項2に記載した発明によると、透水性の袋に充填され、さらに非透湿性の袋に密封された発熱剤、非透湿性の袋に殺菌・包装されたアルファー化米、耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋、耐熱性、非透湿性のプラスチックス製炊飯用袋、アルファー化米と炊飯用水を入れたプラスチックス製炊飯用袋、及び耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋を介して自立性の外装容器の底面と密着するのを防止するセパレータの他に、惣菜用食材、盛り付けに必要なしゃもじ、喫食に必要な容器、皿、スプーン、箸等用具等主食、惣菜、熱源、炊飯用具、喫食用具等一式が準備されているので、アウトドーアスポーツにおける個人携帯用はもとより、地震等大規模災害に備えた自己完結型炊飯装置としてきわめて利用価値が高い。
【0058】
請求項3に記載した発明によると、予め発熱反応用水と炊飯用水を収納してあるので、水がないアウトドーアスポーツはもとより、断水するおそれがある地震等大規模災害に備えた自己完結型炊飯装置としてきわめて利用価値が高い。
【0059】
請求項4に記載した発明によると、ほぼ完全な非透湿性で耐熱性のプラスチックス製発熱反応用袋とプラスチックス製炊飯用袋が提供される。
【0060】
請求項5に記載した発明によると、本発明の炊飯装置に使用するに適した非透湿性で耐熱性のプラスチックス製発熱反応用袋とプラスチックス製炊飯用袋の材料が具体的に提供されているので、本発明の炊飯装置に簡単に適用できる。
【0061】
請求項6に記載した発明によると、本発明のアルファー化米の炊飯装置を簡単に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下、発明を実施するための最良の形態を実施例で説明する。
【0063】
[実施例1]
[50人食用炊飯装置の製造]
1.自立性外装容器の準備
1人食100gとして50人食5kgのα化米を、8L(8kg)の炊飯用水で炊飯するときの「かまど」兼用として機能させるために、少なくとも13kgの耐荷重強度を有する自立性外装容器として、JISZ1506に規定されている「複両面段ボール1種」の段ボールで製造した「複両面段ボール箱1種「CD−1」」〔(最大うちのり寸法(長さ、幅、深さのうちのり寸法の和)=140cm)〕を準備した。
【0064】
2.発熱剤パックの製造
50人食5000gの場合、環境温度15℃において、炊飯用水8Lを沸騰させるには、680Kcal以上必要とする。従って、発熱剤の質量当たり100メッシュ(−150μm90%以上)〜200メッシュ(−75μm95%以上)の粉体生石灰が17g、および−330メッシュ(−45μm)が40〜60%、+330メッシュ(+45μm)が15〜30%、+235メッシュ(+75μm)が10%>の粒度分布を有する粉体アルミニウム33gから成る発熱剤1パック(50g入り)を、目付量が60g/m2、厚さ0.14mm、通気量20cc/cm2/sec、ヒートシール強度6.0kgの不織布製の袋に充填し、さらに、アルミ箔積層袋に入れて、ヒートシールしたものを、6個準備した。
【0065】
3.プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)
厚さ80μmの高密度ポリエチレンフィルムで、自立性外装容器の側壁及び底面に沿って自立性外装容器に内挿できる形状、サイズのプラスチックス製発熱反応用袋(外袋)を製造した。
【0066】
4.プラスチックス製炊飯用袋(内袋)
JIS Z 1702−86の規格に準じた厚さ80μmの旭化成製高密度ポリエチレンで、プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)に内挿できる形状、サイズのプラスチックス製炊飯用袋(内袋)を製造した。
【0067】
5.α化米の調製
尾西食品(株)製のα化米5kgを使用した。これをガスバリヤー性、防湿性、突刺強度に優れたパウチに窒素ガスによるガス置換包装した。
【0068】
6.セパレータの製造
長さ26cm、幅26cmで高さ30mmの脚が6本ついた耐荷重強度が20kgの簀の子形のセパレータをポリプロピレンで射出成形により製造した。
【0069】
次いで、プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)を、自立性外装容器としての段ボール箱の側壁及び底面に沿って、段ボール箱に内挿し、その底にセパレータを置き、セパレータの上に、ガスバリヤー性、防湿性、突刺強度に優れたパウチに窒素ガスによるガス置換包装した尾西食品(株)製のα化米5kgを置き、その上に折り畳んだプラスチックス製炊飯用袋(内袋)、惣菜、喫食用具を収納し、プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)の上端部を密封し、その上に使用手順書及び開梱手引き書をおきて、段ボール箱のフラップを閉じて閉梱した。
【0070】
[使用例]
図1は、実施例で製造した炊飯装置を使用したときの状態例を示す断面図である。1は外装容器としての段ボール箱、1aは段ボール箱のフラップ、1bは同底、2はプラスチックス製発熱反応用袋(外袋)、3はセパレータ、4は発熱剤、5はプラスチックス製炊飯用袋(内袋)、6はα化米、7は発熱用水、8は炊飯用水、2aは外袋の密封手段、5aは内袋の密封手段である。
【0071】
先ず、外装容器としての段ボール箱1を開梱して、フラップ1bを、外側に折り曲げ、プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)2を開封して端部を、フラップ1bに沿って広げた。プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)2に収納していた発熱剤パック4、プラスチックス製炊飯用袋(内袋)5、α化米6、セパレータ3を、それぞれ取り出した。次いで、アルミ箔積層袋を破いて6個の発熱剤4を、プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)2の底面におき、発熱剤4を跨いでセパレータ3を、プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)2の底面においた。次いで、プラスチックス製炊飯用袋(内袋)5に、α化米6を5kgと、8Lの炊飯用水8を入れ、上端を密封手段5aで密封して、セパレータ3の上においた。次いで、プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)2と、プラスチックス製炊飯用袋(内袋)5の空隙から反応用水7を注水し、プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)2の上端を、密封手段2aで密封した。プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)2の上端を密封した直後、直ちに水蒸気が発生し、プラスチックス製炊飯用袋(内袋)5の炊飯用水8を沸騰させた。この沸騰状態を約30分間継続した。
【0072】
約30分間経過後、外袋2からプラスチックス製炊飯用袋5を取り出し、段ボール箱1の1bを閉め、その中で余熱を利用して約10分間蒸らした。この時点で、米の糊化が十分行われる。蒸らし終了後、食器に移し、天地返しをして混ぜ、内部の水蒸気を発散させ、蒸気の結露を防ぎ、飯に再び付着させないようにした。
【0073】
官能検査−日常検査
分析能力を有し、訓練された鋭敏なパネラー50人を用意し、それぞれ隔離した。検査30分前より、たばこ、ガム、口紅を禁止し、各検査室の照明、室温、換気を同じ条件にした。
【0074】
3点試験法
官能検査に使用する標準品として、米5kgを炊飯用水8Lで電気炊飯器で炊飯して、これを50人分用意した。一方、実施例を80回繰り返して、同じサンプルを80個用意した。標準品1個と、サンプル2個の計3個一組をパネラー50人に与え、3点試験法による官能検査を行った。この際、順序効果を考慮して、食べる順序をランダムにし、位置効果を考慮して、中央と両端を交換し、符号効果を考慮して、標準品とサンプルには2桁以上の数字を付けた。パネラー50人に、標準品を指摘させたところ、パネラー50人全員の正解率は1/9であった。
【0075】
官能検査−嗜好検査
日常検査を行ったと同じパネラー50人を用意した。標準品として、米5kgを炊飯用水8Lで電気炊飯器で炊飯して、これを50人分用意した。実施例を150回繰り返して、同じサンプルを150個用意した。標準品1個と、サンプル3個の計4個一組をパネラー50人に与えた。評点法でそれぞれ好ましさの程度を3,5,7、9段階に分け、その平均評点とばらつきを求め、統計学的処理を行った結果、パネラー50人の間で、1個の標準品と、3個のサンプの間で嗜好の優位差は見られなかった。
【0076】
[比較例]
セパレータ3を使用せずに、実施例と同じ手順を繰り返した。即ち、プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)2を、外装容器としての段ボール箱1の側壁及び底面に沿わして段ボール箱に内挿した。次いで、アルミ箔積層袋を破いて6個の発熱剤4をプラスチックス製発熱反応用袋(外袋)2の底面においた。次いで、プラスチックス製炊飯用袋(内袋)5に、α化米6を5kgと炊飯用水8を8L入れ、上端5aを密封して、プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)2の中に入れた。この際、6個の発熱剤4は、プラスチックス製炊飯用袋(内袋)5とプラスチックス製発熱反応用袋(外袋)2の間に密着・圧縮された状態になっていた。次いで、プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)2とプラスチックス製炊飯用袋(内袋)5の空隙から反応用水7を注水し、プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)2の上端2aを密封した。水蒸気の発生状態を観察したところ、水蒸気が発生するまでの時間が、実施例に比べて約5分間遅く、且つ発生量も実施例の約2/3程度であった。
【0077】
実施例より約20分遅く、炊飯が完了した。実施例と同じ方法で、官能検査(日常検査)、3点試験法、及び官能検査(嗜好検査)を行ったとろこ、いずれも実施例で炊飯したα化米に比べて劣悪であった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上詳述したように、本発明のα化米炊飯装置は、主食としてのα化米、惣菜、炊飯用熱源、各種炊飯用具、及び各種喫食用具の全てが外装容器に収納されていて、それ以外の資材を調達せずに炊飯から喫食までを保証することができる、いわゆる「自己完結型炊飯装置」として応用範囲が広く、しかも、熱源である化学発熱剤の熱エネルギーを最大限に利用してアルファ−化米を完全に糊化させ、美味しく炊くことができるので、釣り、ハイキング、登山等アウトドーアスポーツにおける1人食用はもとより、50人食程度まで能力拡大が可能であり、地震等大規模災害における炊き出し装置としても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の使用状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 外装容器(段ボール箱)
2 プラスチックス製発熱反応用袋(外袋)
3 セパレータ
4 発熱剤
5 プラスチックス製炊飯用袋(内袋)
6 α化米
7 発熱用水
8 炊飯用水
1a 外装容器(段ボール箱)のフラップ
1b 外装容器(段ボール箱)の底
2a 外袋の密封手段
5a 内袋の密封手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルファー化米の炊飯装置であって、
(1)自立性の外装容器と;
(2)それぞれ自立性の外装容器に収納されている;
(イ)透水性の袋に充填され、さらに非透湿性の袋に密封された発熱剤、
(ロ)非透湿性の袋に殺菌・包装されたアルファー化米、
(ハ)耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋、
(ニ)耐熱性、非透湿性のプラスチックス製炊飯用袋、及び
(ホ)アルファー化米と炊飯用水を入れたプラスチックス製炊飯用袋が、耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋を介して自立性の外装容器の底面と密着するのを防止するセパレータ、とを含むアルファー化米の炊飯装置。
【請求項2】
惣菜用食材と、盛り付けに必要なしゃもじ、喫食に必要な容器、皿、スプーン、箸等の用具を入れた請求項1に記載のアルファー化米の炊飯装置
【請求項3】
発熱反応用水と炊飯用水を収納した請求項1または2に記載のアルファー化米炊飯装置。
【請求項4】
プラスチックス製発熱反応用袋とプラスチックス製炊飯用袋が、水蒸気透過度(WVTR)が30(g・m-2・24hr/25μm、40℃、90%RH)以下のプラスチックス製フィルムで製造されたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルファー化米の炊飯装置。
【請求項5】
プラスチックス製フィルムが、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデンコートポリプロピレン、2軸延伸ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデンコート2軸延伸ナイロン、ポリ塩化ビニリデンコート2軸ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンコートセロファン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン(0.941〜0.965)、m−キシリレンアジアジパミド、無延伸ポリプロピレン、アルミ箔積層フィルム、セラミック蒸着積層フィルム、アルミ蒸着積層フィルムから成る群から選択されたものである請求項4に記載のアルファー化米の炊飯装置。
【請求項6】
アルファー化米の炊飯装置を使用する方法であって、
(1)自立性の外装容器を開封して、発熱剤、アルファー化米、耐熱性、非透湿性のプラスチックス製発熱反応用袋、耐熱性、非透湿性のプラスチックス製炊飯用袋、及びアルファー化米と炊飯用水を入れたプラスチックス製炊飯用袋が、自立性の外装容器の底面と密着するのを防止するセパレータをそれぞれ取り出すこと、
(2)プラスチックス製発熱反応用袋を外装容器の側壁及び底面に沿って外装容器に内挿すること、
(3)プラスチックス製発熱反応用袋の底面に発熱剤を置くこと、
(4)発熱剤を跨ぐようにして、プラスチックス製発熱反応用袋の底面にセパレータを置くこと、
(5)プラスチックス製炊飯用袋にアルファー化米と所定量の炊飯用水を入れ、上端部を密封し、前記セパレータの上に置くこと、
(6)プラスチックス製発熱反応用袋と炊飯用袋の間隙から反応水を注水し、プラスチックス製発熱反応用袋の上端部を密封することを含む、
アルファー化米の炊飯装置を使用する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−304661(P2006−304661A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130047(P2005−130047)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000201157)船山株式会社 (4)
【出願人】(500067606)株式会社協同 (12)
【Fターム(参考)】