説明

アルミニウム真空蒸着方法

【課題】細い管状体の管内壁面に適確容易かつ安価にて均等な膜厚にアルミニウムを真空蒸着させること。
【解決手段】管状体1の内壁面にアルミニウムを真空蒸着するアルミニウム真空蒸着方法において、前記管状体1の内部にアルミニウム蒸着源5を線状に配置する一方、前記管状体1の外周囲に巻回配置した誘導加熱コイル6に通電してアルミニウム蒸着源を加熱蒸発させて前記管状体の内壁面にアルミニウムを蒸着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状体の内壁面に対して好適なアルミニウム真空蒸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
管状体であるガラス管の内壁面に対するアルミニウムの真空蒸着においては、そのガラス管内にアルミニウム蒸着源が設置される(特許文献1参照)。しかしながら、従来のアルミニウム真空蒸着方法においては、内径が小さいガラス管内へのアルミニウム蒸着源の設置には困難を伴い、特に、内径が小さすぎるガラス管内へのアルミニウム蒸着源の設置は実質不可能となる場合がある。勿論、アルミニウム蒸着源の設置が不可能な場合は、アルミニウムの真空蒸着ができない。一方、内径が小さいガラス管内部へのアルミニウム蒸着源の設置ができたとしても、内径が小さい割に管長が長すぎるガラス管の場合では、アルミニウム蒸着源から蒸発したアルミニウムがガラス管の両端側の内壁面にまで均等には行き届きにくく、管内壁面へのアルミニウム蒸着膜の膜厚が管長方向に不均等となってしまうおそれがある。
【0003】
そして、本発明者が提供する蛍光管の中には、内径が極めて小さく管長が長いガラス管の内壁面に蛍光体を塗布し、その蛍光体表面にアルミニウムを蒸着して蛍光管を製作する必要があり、本発明者は、このような内径が小さくて管長が長いガラス管の内壁面に対して容易にかつ管長方向全体の内壁面に均等な膜厚でアルミニウムの蒸着ができる方法に関して鋭意研究を進めていた。
【特許文献1】特開2002−184305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記技術背景に鑑みて創案されたものであり、上記のごとき管径が小さい管状体であっても当該管状体の内壁面に適確に均等な膜厚で容易かつ安価に蒸着可能とするアルミニウム真空蒸着方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるアルミニウム真空蒸着方法は、管状体の内壁面にアルミニウムを真空蒸着するアルミニウム真空蒸着方法において、前記管状体の内部に、アルミニウム蒸着源を管長方向に線状として挿入配置する一方、前記管状体の外周囲に巻回配置した誘導加熱コイルに通電してアルミニウム蒸着源を加熱蒸発させて前記管状体の内壁面にアルミニウムを蒸着させることを特徴とするものである。
【0006】
上記「アルミニウム蒸着源の加熱蒸発」にはアルミニウム蒸着源の全体を一度に加熱蒸発させる場合や、または、アルミニウム蒸着源を一部ずつ順次に加熱蒸発させる場合を含む。
【0007】
また、上記「線状とされたアルミニウム蒸着源」はアルミニウム細線や、細径で線状のボートと、このボート上に載せたアルミニウム材とからなるアルミニウム蒸着源を含む。アルミニウム細線とは、絶縁体からなる細線の外周面にアルミニウムを被膜形成してなるアルミニウム細線、およびアルミニウムだけからなるアルミニウム細線を含む。上記「線状」には、断面において、円形、矩形、半円形、楕円形、多角形、波形、その他の形状を含む。
【0008】
また、「管状体の内壁面にアルミニウムを蒸着させる」とは、管状体の内壁面に直接、アルミニウムを蒸着させる場合に限定されるものではなく、蛍光体を介して、管状体の内壁面にアルミニウムを蒸着させる場合も含む。
【0009】
また、本発明における真空蒸着に言う「真空」は、完全な真空である必要はなく、当該管状体を用いて蛍光管等を製作する場合、蛍光管として必要な内部圧力や、あるいは真空蒸着する際にアルミニウムが酸化等されないようにするのに必要な真空ないしはほぼ真空の状態を含むものであり、特定の真空圧に限定されることは何等ない。
【0010】
本発明によると、アルミニウム蒸着源が線状に構成されているので、内径が小さい細い管状体であっても、アルミニウム蒸着源を簡単かつ容易に管状体内に設置することができ、従来のように、細い管状体に対するアルミニウム蒸着源の設置が困難であるとか、その設置が不可能となるようなことなく、アルミニウム真空蒸着が可能である。
【0011】
また、アルミニウム蒸着源が線状とされて管状体の内壁面に対して管長方向でその一端側から他端側にかけて対向しているから、管内壁面へのアルミニウム蒸着をその全体にかけて均等な膜厚で蒸着させることが可能となり、また、その蒸着に要するコストも安価に済む。
【0012】
本発明において、好ましくは、管状体の外周囲に誘導加熱コイルを配置し、この誘導加熱コイルを管状体の外周囲上を移動させつつアルミニウム蒸着源をその管長方向に一部ずつ順次に加熱蒸発する。
【0013】
さらに、好ましくは、前記管状体の外周囲に該アルミニウム蒸着源の管長方向長さよりも短いコイル幅を有する誘導加熱コイルを配置し、この誘導加熱コイルを通電して該管状体の長さ方向に移動させることにより、アルミニウム蒸着源を一部ずつ順次に加熱蒸発する。
【0014】
さらに、好ましくは、前記管状体の外周囲全体にわたって誘導加熱コイルを巻回配置して通電することにより、アルミニウム蒸着源全体を加熱蒸発する。
【0015】
さらに、好ましくは、アルミニウム蒸着源を管状体の内径未満の外径を有するアルミニウム細線により構成する。
【0016】
さらに、好ましくは、アルミニウム蒸着源をその配置方向に管状体の内径未満の外径を有しかつ線状とされたボートと、このボート上に載せたアルミニウム材とにより構成し、このアルミニウム蒸着源の挿通配置状態で管状体を自転させながら、該管状体の外周囲に配置した誘導加熱コイルに通電してアルミニウム蒸着源を加熱蒸発する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、細い管状体の管内壁面に適確容易かつ安価にて均等な膜厚にアルミニウムを真空蒸着させることができるアルミニウム真空蒸着方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係るアルミニウム真空蒸着方法を詳細に説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1のアルミニウム真空蒸着方法の実施に用いるアルミニウム真空蒸着装置を示している。図2はこの真空蒸着に用いるアルミニウム蒸着源としてのアルミニウム細線の断面図が示されている。図3は、同アルミニウム真空蒸着装置により真空蒸着される細い管状体として適用される電界電子放出型蛍光管の断面図である。まず、図3を参照して、電界電子放出型蛍光管について説明する。この電界電子放出型蛍光管は、本発明者が鋭意研究の末に開発したものである。1はガラス管、2は線状陰極部、3は蛍光体付き陽極部を示す。ガラス管1は、管状体の一例であり、その管内壁面に対するアルミニウムの蒸着膜厚は例えば100nmないし200nmであり、管径は例えば2mmないし25mm程度である。ガラス管の肉厚は、例えば1mmないし1.5mm程度である。ただし、本発明は、これに限定されるものではなく、アルミニウムの蒸着膜厚や、その他の条件により種々である。線状陰極部2は導電性ワイヤ2aと、この導電性ワイヤ2aの外周面に形成された多数の電界集中補助用凹凸部2bと、この電界集中補助用凹凸部2bの外周面に形成された多数の先鋭な微細部分からなるカーボン状膜例えばカーボンナノチューブやカーボンナノウォールからなる電界電子放出部2cとにより構成されている。蛍光体付き陽極部3は、ガラス管1の内壁面に形成された蛍光体3aと、この蛍光体3aの表面にアルミニウム蒸着された陽極3bとから構成されている。
【0020】
本実施の形態1のアルミニウム真空蒸着方法は、上記電界電子放出型蛍光管におけるガラス管1の内壁面に塗布等の適宜の方法により形成した蛍光体3aの表面に、陽極3bであるアルミニウムを真空蒸着する方法である。このガラス管1は内径が例えば2mmないし25mm程度の管状体である。特に、実施の形態1では、ガラス管1の内壁面に蛍光体3aを介してアルミニウムを真空蒸着するための方法である。もちろん、本発明は、このようなガラス管1の内壁面にアルミニウムを真空蒸着する方法に限定されるものではなく、説明の都合で一例として示すものである。
【0021】
以下、図1および図2を参照して、本実施の形態1のアルミニウム真空蒸着方法に用いるアルミニウム真空蒸着装置は、真空チャンバ4を備える。この実施の形態では管状体としてガラス管1が適用されている。ガラス管1の内壁面には蛍光体3aが塗布されている。ガラス管1は、真空チャンバ4の開口部に装着される。ガラス管1は、真空チャンバ4により内部が真空排気される。ガラス管1の内部には、その内壁面に沿って線状とされたアルミニウム蒸着源5が配置されている。実施の形態1のアルミニウム蒸着源5は、図2(a)で示すように、全部がアルミニウムからなるアルミニウム細線、図2(b)で示すように、ガラス等の絶縁性を有するガラス等からなる細線5aの外周面全体に所定の膜厚でアルミニウム5bが被膜形成されたアルミニウム細線、あるいは、により構成されている。図2(a)のアルミニウム細線5の線径は、細管の内壁面に対して形成すべきアルミニウムの膜厚により決定することができる。図2(b)のアルミニウム細線5では、そのアルミニウムの膜厚は、ガラス管の内壁面に対して蒸着すべきアルミニウムの膜厚により決定することができる。
【0022】
ガラス管1の外周囲には、誘導加熱コイル6がアルミニウム蒸着源の長さよりも短いコイル幅に適宜の巻回数で巻回されて配置されている。誘導加熱コイル6は、不図示の移動機構により、ガラス管1の外周囲を図で左右に移動可能に構成されている。誘導加熱コイル6に通電しつつ該誘導加熱コイル6を図で左右に移動することにより、ガラス管1内部のアルミニウム蒸着源5は一部ずつ順次に加熱蒸発させられてガラス管1の内壁面に蛍光体を介してアルミニウムを蒸着させることができる。
【0023】
以上説明した本実施の形態1のアルミニウム真空蒸着方法においては、アルミニウム蒸着源5が線状に構成されたアルミニウム細線により構成されているので、内径が小さいガラス管1であっても、アルミニウム蒸着源5を簡単かつ容易にガラス管1内に設置することができるので、従来のように、ガラス管1に対するアルミニウム蒸着源5の設置が困難であるとか、その設置が不可能となるようなことなく、アルミニウム真空蒸着が可能となる。また、アルミニウム蒸着源5が線状とされてガラス管1の内壁面に対してその一端側から他端側にかけて対向しているから、その管内壁面へのアルミニウム蒸着をその全体にかけて均等な膜厚で蒸着させることが可能となり、また、その蒸着に要するコストも安価に済む。
【0024】
(実施の形態2)
図4を参照して、本発明の実施の形態2に係るアルミニウム真空蒸着方法を説明する。図4は、実施の形態2のアルミニウム真空蒸着方法の実施に用いるアルミニウム真空蒸着装置を示す。このアルミニウム真空蒸着装置は、真空チャンバ4を備える。実施の形態2では、実施の形態1と同様の蛍光管が適用されている。内壁面に蛍光体が塗布されているガラス管1は、真空チャンバ4の開口部に装着されてその内部が真空排気されている。ガラス管1の内部には、その内壁面に沿ってアルミニウム蒸着源5が配置されている。このアルミニウム蒸着源5は、ガラス管1の内径より小さい外形の線状ボート51と、この線状ボート51上に一様な厚さで載せられたアルミニウム材52とにより構成されている。ガラス管1の外周囲の全体には誘導加熱コイル6が均等な巻回密度で巻回されている。ガラス管1は、不図示の回転機構により自転可能に構成されている。
【0025】
ガラス管1の内壁面にアルミニウム真空蒸着する際には、ガラス管1の内部にアルミニウム蒸着源5が挿通配置される。そして、回転機構によりガラス管1が自転させられる。一方、ガラス管1の外周囲に配置されている誘導加熱コイル6に通電され、これによって、アルミニウム蒸着源5全体が加熱蒸発され、ガラス管1の回転に伴い、ガラス管1の内壁面全体にアルミニウムが真空蒸着される。
【0026】
以上説明した実施の形態2のアルミニウム真空蒸着方法においては、アルミニウム蒸着源5が線状のボート51上にアルミニウム材52を載せて構成されているので、内径が小さいガラス管1であっても、アルミニウム蒸着源5を簡単かつ容易にガラス管1内に設置することができるので、従来のように、ガラス管に対するアルミニウム蒸着源の設置が困難であるとか、その設置が不可能となるようなことなく、アルミニウム真空蒸着が可能となる。また、アルミニウム蒸着源が線状とされてガラス管の内壁面に対してその一端側から他端側にかけて対向しているから、その管内壁面へのアルミニウム蒸着をその全体にかけて均等な膜厚で蒸着させることが可能となり、また、その蒸着に要するコストも安価に済む。
【0027】
(実施の形態3)
図5を参照して本発明の実施の形態3に係るアルミニウム真空蒸着方法を説明する。図5は、実施の形態3のアルミニウム真空蒸着方法の実施に用いるアルミニウム真空蒸着装置を示す。実施の形態3においては、電界電子放出型蛍光管を含め、一般に、内径が小さい管状体の内壁面にアルミニウムを真空蒸着する方法である。実施の形態1および実施の形態2においては、アルミニウム真空蒸着装置の原理的な構成が示されている。実施の形態3においては、アルミニウム真空蒸着装置のより具体的な構成が示されている。
【0028】
実施の形態3のアルミニウム真空蒸着装置は、真空チャンバ10を備える。真空チャンバ10には、不図示の真空排気ポンプが排気管11を介して接続されている。排気管11の途中には電磁弁12が配備されている。電磁弁12は制御部13により開閉を制御されるようになっている。真空計14は、配管15を介して真空チャンバ10に接続されて、該真空チャンバ10の真空圧を計測する。この真空計14は、指針の位置で真空圧を指し示す一方、その計測信号を制御部13に出力するようになっている。
【0029】
真空チャンバ10は底部中央に形成された凸部をアルミニウム細線固定部16としており、その底部中央に対向する天井中央に管状体固定用開口部17を設けられている。
【0030】
アルミニウム細線18は、アルミニウム蒸着源として、その一端側が、真空チャンバ10のアルミニウム細線固定部16に固定され、その他端側が、真空チャンバ10の開口部17を介して該開口部17外に突出されている。
【0031】
管状体19は、一端側が閉じられ他端側が開口しており、該他端側は真空チャンバ10の管状体固定用開口部17に固定されている。管状体19は、その他端側周囲を真空チャンバ10の開口部17周囲に設けた気密部20により覆われており、これにより、管状体19は、その内部を真空チャンバ10に連通する一方、外部から完全密封されている。
【0032】
アルミニウム細線18は、図2で示すものである。
【0033】
以上の構成により、管状体19は、内部が真空チャンバ10により真空排気可能な状態でかつ該真空チャンバ10上に垂直方向に立設された状態に固定されており、内部にアルミニウム蒸着源であるアルミニウム細線18が挿通された状態で、外周囲に、アルミニウム細線18を加熱蒸発させて管状体19内壁面にアルミニウムを真空蒸着させる誘導加熱コイル21が所要巻回数で巻回されている。
【0034】
誘導加熱コイル21の両端21aは、高周波電源22の一対の出力端子22aにそれぞれ接続されている。高周波電源22は、制御部13によりオン・オフを制御されており、数kHzないし数100kHzの高周波電流を両出力端子22aから誘導加熱コイル21に出力するようになっている。誘導加熱コイル21は、その供給された高周波電流により、アルミニウム細線18を電磁誘導加熱するようになっている。誘導加熱コイル21の両端21aと高周波電源22の両出力端子22aそれぞれの接続部23は、不図示の冷却水供給タンクから配管24を通じて冷却水を供給されて冷却されるようになっている。
【0035】
誘導加熱コイル21は、次に述べる昇降機構25により、管状体19の外周囲を上昇または下降するよう移動制御されるようになっている。
【0036】
昇降機構25を説明する。ガイド部材26は、支持台27上に立設されている。回転駆動軸28は、支持台27上にガイド部材26と平行に立設されている。回転駆動軸28はその外周面に螺子溝を形成されている。大径ギヤ29は、回転駆動軸28の支持台27側寄りとなる下端部に固定されている。小径ギヤ30は、昇降モータ31の回転軸に固定されている。大径ギヤ29と小径ギヤ30は昇降モータ31の回転を減速する減速機構を構成する。昇降モータ31は、制御部13によりその回転を制御される。昇降部材32は、誘導加熱コイル21の両端21a側が固定されている本体部32aと、この本体部32aからガイド部材26側に延びて該ガイド部材26に摺動可能に入り込むガイド孔を備えたガイドアーム部32bと、同じく上記本体部32aから回転駆動軸28側に延びて該回転駆動軸28が入り込む螺子孔を備えた昇降アーム部32cとを有している。また、ガイド部材26の上下端には昇降部材32の昇降位置を検出する位置センサ33,34が設けられている。
【0037】
以上の構成を備えた昇降機構25においては、昇降モータ31の回転は減速機構である小径ギヤ30と大径ギヤ29とにより減速されつつ、回転駆動軸28が回転させられる。昇降モータ31の回転方向に従い回転駆動軸28が一方向に回転すると、昇降部材32は、回転駆動軸28の外周面の螺子溝にその昇降アーム部32cの螺子孔との係合により、回転駆動軸28に沿って上昇させられる。回転駆動軸28が他方向に回転すると、昇降部材32は、回転駆動軸28の外周面の螺子溝にその昇降アーム部の32c螺子孔との係合により、回転駆動軸28に沿って下降させられる。昇降部材32は、そのガイドアーム部32bのガイド孔がガイド部材26に入り込んでいることにより、その上昇および下降をガイドされ、これによって誘導加熱コイル21は、昇降部材32の上昇および下降により、管状体19の外周囲を上昇および下降さられる。
【0038】
次に、このアルミニウム真空蒸着装置を構成する高周波電源22、昇降モータ31、電磁弁12、および真空排気ポンプ等の制御を操作員の手動操作により制御を行うことも可能であるが、制御部13により自動的に制御することができる。制御部13の構成は何でも良いが、例えば、マイクロコンピュータによりソフト的に制御する構成では、アルミニウム真空蒸着の精度の向上、等においてよい。例えば、マイクロコンピュータとして、CPUと、その制御動作に必要とするデータの格納に用いるデータメモリと、その制御動作の手順等のプログラムが格納されているプログラムメモリとを設け、CPUは、操作員のアルミニウム蒸着操作の指令入力および指令内容に応答して、ガイド部材26の上下端に設けた位置センサ33,34のセンサ信号に従い、適宜のインタフェースを介して、高周波電源22のオン・オフ、昇降モータ31の駆動制御、電磁弁12の開閉制御、真空排気ポンプの動作、等を制御することができる。
【0039】
本実施の形態3によるアルミニウム真空蒸着方法を説明する。この方法の実施には上記説明したアルミニウム真空蒸着装置を用いる。
【0040】
まず、真空チャンバ10のアルミニウム細線固定部16にアルミニウム細線18の一端側を固定し、アルミニウム細線18の他端側を真空チャンバ10の開口部17から外部に突出するように立設する。一方、真空チャンバ10の開口部17に管状体19の他端側開口部を固定し、気密部20で管状体19内部を真空チャンバ10に連通した状態で外部から完全に密封する。この状態で、アルミニウム細線18は、管状体19内に挿通され、該管状体19のほぼ両端間の内壁面に対してギャップをあけて対向配置させられている。また、真空チャンバ10へのアルミニウム細線18と管状体19との設置に伴い、誘導加熱コイル21を管状体19の外周囲に配置する。この誘導加熱コイル21の位置は、例えば、管状体19の上端側に位置させる。これには、制御部13からの制御指令により、昇降モータ31を駆動して、減速機構を介して、回転駆動軸28を回転駆動する。回転駆動軸28が回転すると、昇降部材32の昇降アーム部32cの螺子孔と回転駆動軸28の螺子溝との係合により、昇降部材32は、そのガイドアーム部32bがガイド部材26にガイドされつつ上昇させられる。こうして、昇降部材32により、誘導加熱コイル21が管状体19の上端側に位置付けられる。制御部13は、誘導加熱コイル21が管状体19の上端側に位置付けられたことを位置センサ33からの位置センサ信号により検出することができる。
【0041】
次に、制御部13は位置センサ33のセンサ信号から誘導加熱コイル21が管状体19の上端側に位置付けられたことを検出すると、制御部13は、電磁弁12を開くとともに、不図示の真空排気ポンプを作動させることにより真空チャンバ10を通じて管状体19内部を真空排気する。真空チャンバ10内の真空圧は例えば10−6Torr程度である。真空チャンバ10内の真空圧は真空計14により計測され、その計測値は制御部13に与えられる。
【0042】
真空チャンバ10内の真空圧が前記10−6Torr程度に達すると、制御部13は、高周波電源22を駆動すると同時に、昇降モータ31を制御して、減速機構を介して、回転駆動軸28を下降させる。高周波電源22の駆動により、誘導加熱コイル21に通電され、これによってアルミニウム細線18が誘導加熱され、アルミニウム細線18が蒸発させられる。蒸発したアルミニウムは、管状体19の内壁面に蒸着させられる。データメモリは、蒸着させるべきアルミニウムの膜厚データ、例えば、膜厚、誘導加熱コイルの21下降速度、誘導加熱コイル21への通電値(高周波電流値)等のデータを格納しており、制御部13は、データメモリに格納されているデータに従い、かつ、プログラムメモリで規定するプログラムに従う。これによって、高周波電源22、昇降モータ31が制御され、管状体19の内壁面には、上端側である一端側から下端側である他端側にかけてアルミニウムが所要の膜厚で蒸着される。
【0043】
こうして、制御部13に、管状体19の内壁面にアルミニウムが蒸着され、ガイド部材26の下端側に設置した位置センサ34から誘導加熱コイル21が所定の下降位置に到達したことを示すセンサ信号が与えられると、制御部13は、アルミニウム蒸着制御を終了するべく、高周波電源22をオフにし、昇降モータ31の駆動を停止する。こうして、管状体19の内壁面へのアルミニウムの真空蒸着が完了する。
【0044】
以上のように本実施の形態3においては、管状体の内壁面へのアルミニウム蒸着をその全体にかけて均等な膜厚で蒸着させることが可能となり、また、その蒸着に要するコストも安価に済む。
【0045】
なお、本実施の形態3においては、管状体を固定して、誘導加熱コイルを昇降させたが、誘導加熱コイルを固定し、真空チャンバやアルミニウム細線と共に管状体を昇降させることでも、管状体の内壁面にアルミニウム真空蒸着を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1に係るアルミニウム真空蒸着方法の実施に用いるアルミニウム真空蒸着装置の概略構成図
【図2】アルミニウム細線の部分拡大断面図
【図3】管状体の一例である電界電子放出型蛍光管の断面図
【図4】実施の形態2にアルミニウム真空蒸着方法の実施に用いるアルミニウム真空蒸着装置の概略構成図
【図5】実施の形態3にアルミニウム真空蒸着方法の実施に用いるアルミニウム真空蒸着装置の概略構成図
【符号の説明】
【0047】
1 管状体
4 真空チャンバ
5 アルミニウム蒸着源
6 誘導加熱コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状体の内壁面にアルミニウムを真空蒸着するアルミニウム真空蒸着方法において、前記管状体の内部に、アルミニウム蒸着源を管長方向に線状として挿入配置する一方、前記管状体の外周囲に巻回配置した誘導加熱コイルに通電してアルミニウム蒸着源を加熱蒸発させて前記管状体の内壁面にアルミニウムを蒸着させる、ことを特徴とするアルミニウム真空蒸着方法。
【請求項2】
前記管状体の外周囲に該アルミニウム蒸着源の配置方向の長さよりも短いコイル幅を有する誘導加熱コイルを配置し、この誘導加熱コイルを通電して該管状体の長さ方向に移動させることにより、アルミニウム蒸着源を一部ずつ順次に加熱蒸発させる、ことを特徴する請求項1に記載のアルミニウム真空蒸着方法。
【請求項3】
前記管状体の外周囲全体にわたって誘導加熱コイルを巻回配置して通電することにより、アルミニウム蒸着源全体を加熱蒸発させる、ことを特徴する請求項1に記載のアルミニウム真空蒸着方法。
【請求項4】
アルミニウム蒸着源を管状体の内径未満の外径を有するアルミニウム細線により構成した、ことを特徴する請求項1ないし3のいずれか1項に記載のアルミニウム真空蒸着方法。
【請求項5】
アルミニウム蒸着源を、管状体の内径未満の外径を有しかつ配置方向に線状とされたボートと、このボート上に載せられたアルミニウム材とにより構成し、このアルミニウム蒸着源を挿通配置した状態で前記管状体を自転させながら、該管状体の外周囲に配置した誘導加熱コイルに通電してアルミニウム蒸着源を加熱蒸発させる、ことを特徴する請求項1ないし3のいずれか1項に記載のアルミニウム真空蒸着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−63388(P2006−63388A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247207(P2004−247207)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(504224371)ダイヤライトジャパン株式会社 (105)
【Fターム(参考)】