説明

アルミニウム管抽伸潤滑油、及びそれを用いたアルミニウム管の抽伸方法

【課題】潤滑性に優れ、低コストで抽伸加工を行うことができるアルミニウム管抽伸潤滑油を提供すること。
【解決手段】鉱物油、未水素添加又は水素添加のポリイソブチレン、イソパラフィンから選ばれる1種以上よりなる基油と、添加剤と、油性剤、潤滑向上剤、芳香族炭化水素、及び極圧剤のうち1種以上とを含有する。添加剤はアミン誘導体、数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、そのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、炭素数2〜10の2価アルコール、及びアルキルスルホン酸塩のうち1種以上よりなり、その含有量は0.01〜2質量%。油性剤、潤滑向上剤、芳香族炭化水素、極圧剤の合計含有量は0.1〜50質量%。温度40℃における動粘度は5〜50000mm2/s。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金からなる管の製造に使用されるアルミニウム管抽伸潤滑油及び該潤滑油を用いたアルミニウム管の抽伸方法に関する。なお、ここでいう「アルミニウム」は、アルミニウム及びアルミニウム合金を含む。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムの抽伸加工は、アルミニウムをダイスに通して引っ張り、ダイス穴形状と同じ断面の管、棒、線材を製造する方法である。一般には、常温で加工するが、高温で加工することもできる。
アルミニウム管の抽伸加工においては、例えば、心金やプラグ等をアルミニウム管の内面に配置した状態で、上記のごとくアルミニウム管をダイスを通して引っ張ることにより、管の外形のみならず、内径あるいは肉厚をも所要の寸法に仕上げることができる。
【0003】
また、変形抵抗の大きなアルミニウム材からなるアルミニウム管を加工する場合や、変形量が大きな加工を行う場合には、ダイスとアルミニウム材との間、あるいは内面のプラグとアルミニウム管との間に、大きな摩擦力がはたらき、管方向に焼き付き傷が発生したり、場合によっては管切れが発生したりすることがある。
【0004】
このような不具合を防ぐために、抽伸加工においては、アルミニウム管、ダイス、プラグ等に、潤滑油を供給することが行われていた。
このような潤滑油としては、抽伸加工用に特化したものはほとんどなく、一般的には、アルミニウム加工用の潤滑油が広く用いられていた。例えば、軽加工あるいは軟質アルミニウム材からなるアルミニウム管の加工においては、例えば、高粘度の高分子合成炭化水素からなる基油に、脂肪酸エステルあるいはアルコール、ポリオールエステル等の油性剤が添加された潤滑油が用いられていた。また、変形抵抗の大きなアルミニウム材からなるアルミニウム管を加工する場合や加工が大きい場合には、潤滑油として、高粘度の潤滑油、吸着性の高い油性剤、あるいは極圧剤等が使用されていた。
【0005】
このような潤滑油の具体例としては、鉱油、合成油、及び油脂等の基油と、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤とを含有する潤滑油組成物がある(特許文献1)。また、特定組成のジチオリン酸亜鉛を含有する塑性加工用潤滑油組成物等がある(特許文献2、3)。
【0006】
しかしながら、抽伸加工に上述のような潤滑油を用いた場合でも限界があり、製造条件によっては上述のように摩擦力が発生し、焼きつき傷や管切れ等の不具合が発生する場合があった。また、従来の潤滑油は、比較的製造コストが高いという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開2004−358495号公報
【特許文献2】特開2001−348586号公報
【特許文献3】特開2001−348588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、潤滑性に優れ、低コストで抽伸加工を行うことができるアルミニウム管抽伸潤滑油及び、それを用いたアルミニウム管の抽伸方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、アルミニウム管の抽伸加工に用いられるアルミニウム管抽伸潤滑油であって、
該アルミニウム管抽伸潤滑油は、鉱物油、未水素添加又は水素添加のポリイソブチレン、及びイソパラフィンから選ばれる1種以上よりなる基油と、添加剤と、油性剤、潤滑向上剤、芳香族炭化水素、及び極圧剤のうち1種又は2種以上とを含有し、
上記添加剤は、アミン誘導体、数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、そのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、炭素数2〜10の2価アルコール、及びアルキルスルホン酸塩から選ばれる1種又は2種以上よりなり、
上記添加剤の含有量は0.01〜2.0%(質量%、以下同じ)であり、
上記油性剤、上記潤滑向上剤、上記芳香族炭化水素、及び上記極圧剤の合計含有量は、0.1〜50%であり、
上記アルミニウム管抽伸潤滑油の温度40℃における動粘度は5〜50000mm2/sであることを特徴とするアルミニウム管抽伸潤滑油にある(請求項1)。
【0010】
第1の発明のアルミニウム管抽伸潤滑油は、上記構成を有するため、上述した従来の問題を一気に解消することができる。
すなわち、上記アルミニウム管抽伸潤滑油は、いかなる材質のアルミニウム管に対しても、優れたアルミニウム粉分散性を発揮することができる。そのため、変形抵抗の大きなアルミニウム管を抽伸加工する場合、又は、変形量が大きな抽伸加工を行う場合においても、アルミニウム管と、例えばダイス又はプラグ等との間に発生するアルミニウム摩耗粉の凝着を十分に抑制することができる。それ故、アルミニウム管に焼き付き傷や管切れ等の不具合が発生することを防止できる。
【0011】
また、上記アルミニウム管抽伸潤滑油は、必須成分として、鉱物油、未水素添加又は水素添加のポリイソブチレン、及びイソパラフィンから選ばれる1種以上よりなる基油と、添加剤と、油性剤、潤滑向上剤、芳香族炭化水素、及び極圧剤のうち1種又は2種以上を含有する。これらの必須成分は全て比較的安価であり、低コストのアルミニウム管抽伸潤滑油を得ることができる。
【0012】
また、特定の添加剤を0.01〜2.0%含有し、上記油性剤、上記潤滑向上剤、上記芳香族炭化水素、及び上記極圧剤のうち1種又は2種以上を合計で0.1〜50%含有すると共に、アルミニウム管抽伸潤滑油全体の動粘度を温度40℃において5〜50000mm2/sとすることによって、優れた潤滑性を得ることができる。
【0013】
また、一般に、潤滑油は、抽伸加工後の工程に悪影響を及ぼすことを防止するために、洗浄等により抽伸加工後に除去される。従来の潤滑油は、洗浄により除去することが困難であったため、抽伸加工においてはアルミニウム材の表面に樹脂等の被膜を形成させて、該被膜の上に潤滑油を供給して抽伸加工を行う方法が用いられていた。かかる方法は、被膜を形成させる工程が増えるため、製造コストが高くなるという問題があった。
【0014】
本発明の上記アルミニウム管抽伸潤滑油は、抽伸加工後に、例えばパークレン(テトラクロロエチレン)、トリクレン(トリクロロエチレン)、塩化メチレン、及びトリクロロエタン等の塩素系溶剤やアセトン等の炭化水素系溶剤等の洗浄液で、簡単に除去することができる。そのため、上記アルミニウム管抽伸潤滑油が抽伸加工後の工程に悪影響を及ぼすことを簡単に防ぐことができる。さらに、被膜を形成する必要がなくなるため、低コストで抽伸加工を行うことができる。
以上のように、本発明によれば、潤滑性に優れ、低コストで抽伸加工を行うことができるアルミニウム管抽伸潤滑油を提供することができる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明に記載の上記アルミニウム管抽伸潤滑油を、アルミニウム管の内面加工及び/又は外面に供給し、アルミニウム管の抽伸加工を行うことを特徴とするアルミニウム管の抽伸方法にある(請求項7)。
【0016】
上記抽伸方法においては、上記第1の発明のアルミニウム管抽伸潤滑油をアルミニウム管の内面及び/又は外面に供給し、抽伸加工を行う。そのため、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の優れた特長を生かして、例えばダイス又はプラグ等との間の摩擦を抑制しつつ抽伸加工を行うことができる。それ故、アルミニウム管に焼き付き傷や管切れが発生することを防止し、表面品質の優れたアルミニウム管を作製することができる。
【0017】
また、上記アルミニウム管抽伸潤滑油は、上述のごとく洗浄等により容易に除去することができるため、抽伸加工の前に従来のように樹脂等の皮膜をアルミニウム管に形成する必要がなくなる。そのため、低コストでアルミニウム管の抽伸加工を行うことができる。
このように、本発明によれば、優れた潤滑性、かつ、低コストでアルミニウム管を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
第1の発明のアルミニウム管抽伸潤滑油は、上述したように、鉱物油、未水素添加又は水素添加のポリイソブチレン、及びイソパラフィンから選ばれる1種以上よりなる基油と、添加剤と、油性剤、潤滑向上剤、芳香族炭化水素、及び極圧剤のうち1種又は2種以上とを含有する。
【0019】
抽伸加工後に焼鈍を行う場合には、上記基油としてポリイソブチレン及び/又はイソパラフィンを用いることが好ましい。この場合には、オイルステインの発生を防止することができる。また、この場合には、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の臭いを抑えることができ、作業環境を向上させることができる。
【0020】
また、コストを重視する場合には、上記基油として、鉱物油を用いることが好ましい。鉱物油としては、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油及びアロマ鉱油を用いることができる。アロマ鉱油に比べて少し高価であるが、アロマ成分を含有しないノンアロマ系鉱油を用いることもできる。この場合には、ポリイソブチレンやイソパラフィンを基油とする場合に比べてコストを抑えることができると共に、臭いや肌あれ等を抑制し、作業環境を向上させることができる。
【0021】
また、上記アルミニウム管抽伸潤滑油における上記基油の含有量は、45%以上であることが好ましい。
上記基油の含有量が45%未満の場合には、抽伸加工後に、アルミニウム管抽伸潤滑油を洗浄により除去することが困難になるおそれや、コストが増大するおそれがある。
【0022】
また、上記添加剤は、アミン誘導体、数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、そのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、炭素数2〜10の2価アルコール、及びアルキルスルホン酸塩から選ばれる1種又は2種以上よりなる。
【0023】
上記アミン誘導体としては、数平均分子量200以上1000未満のものから選ばれる1種又は2種以上のものが好ましい。
特に、上記アミン誘導体は、脂肪族アミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環アミン、及びそれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる1種以上であることが好ましい(請求項2)。
また、上記アミン誘導体には、ヒドロキシル基、エーテル基が含まれていても良い。
【0024】
上記脂肪族アミンとしては、具体的には、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、カプリルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、牛脂アミンジメチルアミン、ジエチルアミン、ジオクチルアミン、ブチルオクチルアミン、ジステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、トリオクチルアミン等を用いることができる。
【0025】
上記アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N−エチルイソプロパノールアミン、N,N−ジエチルイソプロパノールアミン、N−イソプロピルイソプロパノールアミン、N,N−ジイソプロピルイソプロパノールアミン、モノn−プロパノールアミン、ジn−プロパノールアミン、トリn−プロパノールアミン、N−メチルn−プロパノールアミン、N,N−ジメチルn−プロパノールアミン、N−エチルn−プロパノールアミン、N,N−ジエチルn−プロパノールアミン、N−イソプロピルn−プロパノールアミン、N,N−ジイソプロピルn−プロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジブタノールアミン、トリブタノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N,N−ジメチルブタノールアミン、N−エチルブタノールアミン、N,N−ジエチルブタノールアミン、N−イソプロピルブタノールアミン、N,N−ジイソプロピルブタノールアミン等を用いることができる。
【0026】
上記脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ヘキサメチレンジアミン、硬化牛脂プロピレンジアミン等を用いることができる。
上記芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン等を用いることができる。
【0027】
上記脂環式アミンとしては、例えば、N−シクロヘキシルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチル−シクロヘキシルアミン、N,N−ジエチル−シクロヘキシルアミン、N,N−ジ(3−メチル−シクロヘキシル)アミン、N,N−ジ(2−メトキシ−シクロヘキシル)アミン、N,N−ジ(4−ブロモーシクロヘキシル)アミン等を用いることができる。
【0028】
上記複素環アミンとしては、例えば、ピロリジン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、ピペラジン、ホモピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N−プロピルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、N−アセチルピペラジン、N−アセチルホモピペラジン、1−(クロロフェニル)ピペラジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノエチルピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジン等を用いることができる。
【0029】
また、付加されるアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、α−オレフィンオキシド、スチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加重合することにより得ることができる。付加されるアルキレンオキシドの重合形態は特に限定されず、1種類のアルキレンオキシドの単独重合、2種類以上のアルキレンオキシドのランダム共重合、ブロック共重合又はランダム/ブロック共重合等であってよい。
【0030】
また、上記数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物を構成する数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールとしては、例えば、具体的には、グリセリン、ポリグリセリン(例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトラオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アニドール、アラビトール、キシリトールマンニトール、イジリトール、タリトール、ズルシトール、アリトール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース等が挙げられる。
【0031】
付加されるアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、1,2−エポキシ−1−メチルプロパン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシヘキサン等がある。
上記アルキレンオキシド等付加物は、例えば、1種類のアルキレンオキシド等の単独重合、2種類以上のアルキレンオキシド等のランダム共重合、ブロック共重合又は、ランダム/ブロック共重合等がある。
また、水酸基を3〜6個有する多価アルコールにアルキレンオキシドを付加させる際、付加される水酸基は、全ての水酸基であっても、一部の水酸基であってもよい。
【0032】
また、上記多価アルコールのアルキレンオキシド付加物を構成するアルキレンオキサイド付加物の末端水酸基の一部又は全てを、ハイドロカルビルエーテル化させたものを使用することもできる。
ハイドロカルビル基は、炭素数1〜24の炭化水素基である。
炭化水素基としては、たとえば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基等がある。
【0033】
炭素数1〜24のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖又は分枝のペンチル基、直鎖又は分枝のヘキシル基、直鎖又は分枝のヘプチル基、直鎖又は分枝のオクチル基、直鎖又は分枝のノニル基、直鎖又は分枝のデシル基、直鎖又は分枝のウンデシル基、直鎖又は分枝のドデシル基、直鎖又は分枝のトリデシル基、直鎖又は分枝のテトラデシル基、直鎖又は分枝のペンタデシル基、直鎖又は分枝のヘキサデシル基、直鎖又は分枝のヘプタデシル基、直鎖又は分枝のオクタデシル基、直鎖又は分枝のノナデシル基、直鎖又は分枝のイコシル基、直鎖又は分枝のヘンイコシル基、直鎖又は分枝のドコシル基、直鎖又は分枝のトリコシル基、及び直鎖又は分枝のテトライコシル基等がある。
【0034】
炭素数2〜24のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、直鎖又は分枝のプロペニル基、直鎖又は分枝のブテニル基、直鎖又は分枝のペンテニル基、直鎖又は分枝のヘキセニル基、直鎖又は分枝のヘプテニル基、直鎖又は分枝のオクテニル基、直鎖又は分枝のノネニル基、直鎖又は分枝のデセニル基、直鎖又は分枝のウンデセニル基、直鎖又は分枝のドデセニル基、直鎖又は分枝のトリデセニル基、直鎖又は分枝のテトラデセニル基、直鎖又は分枝のペンタデセニル基、直鎖又は分枝のヘキサデセニル基、直鎖又は分枝のヘプタデセニル基、直鎖又は分枝のオクタデセニル基、直鎖又は分枝のノナデセニル基、直鎖又は分枝のイコセニル基、直鎖又は分枝のヘンイコセイル基、直鎖又は分枝のドコセニル基、直鎖又は分枝のトリコセニル基、及び直鎖又は分枝のテトラコセニル基等がある。
【0035】
炭素数5〜7のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等がある。
【0036】
炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)、及びジエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)等がある。
【0037】
炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等がある。
【0038】
炭素数7〜18のアルキルアリール基としては、例えば、トリル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のプロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のペンチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のヘキシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のヘプチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のオクチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のノニルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のウンデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、及び直鎖又は分枝のドデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)等がある。
【0039】
炭素数7〜12のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基(プロピル基の異性体を含む)、フェニルブチル基(ブチル基の異性体も含む)、フェニルペンチル基(ペンチル基の異性体も含む)、及びフェニルヘキシル基(ヘキシル基の異性体も含む)等がある。
【0040】
また、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテルを構成するアルキレンオキシドは、炭素数2〜6が好ましい。
このようなアルキレンオキシドとしては、上述の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、そのハイドロカルビルエーテルを構成するアルキレンオキシドとして列挙したものと同様のもの等がある。
【0041】
また、上記ポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテルとしては、ポリアルキレングリコールの末端水酸基の一部又は全てをハイドロカルビルエーテル化させたものを用いることができる。
ハイドロカルビル基としては、例えば、上述の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそのハイドロカルビルエーテルを構成するハイドロカルビル基として列挙した各基等がある。
【0042】
また上記炭素数2〜10の2価アルコールは、分子中にエーテル結合を有しておらず、炭素数2〜10のものであり、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、及び1,10−デカンジオール等が挙げられる。
【0043】
また、上記アルキルスルホン酸塩としては、ジアルキルスルホ・こはく酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルファオレフィン・スルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼン・スルホン酸塩、分子鎖アルキルベンゼン・スルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレン・スルホン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリン等があり、塩を形成するカチオン性対イオンとしては、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム等)イオン、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウム等)イオン等の金属イオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。
【0044】
また、上記添加剤の含有量は0.01〜2.0%である。
上記添加剤の含有量が0.01%未満の場合には、抽伸加工中に発生するアルミニウム摩耗粉の分散が十分ではなく、焼き付き疵を発生させるという問題がある。一方、上記添加剤の含有量が2.0%を超える場合には、コストの上昇を招き工業的に成立しないという問題がある。
【0045】
また、上記油性剤を含有する場合には、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の潤滑性をより向上させることができる。一般に、アルミニウム管の抽伸加工において、潤滑油の潤滑性は、主として境界潤滑性によるところが大きい。上記アルミニウム管抽伸潤滑油においては、油性剤を添加することにより、境界潤滑性を向上することができるため、潤滑性をより向上することができる。
【0046】
そして、上記油性剤は、天然油脂、合成エステル、脂肪酸エステル、脂肪酸、アルコールから選ばれる1種以上であることが好ましい(請求項3)。
上記天然油脂としては、例えば、大豆油、なたね油、パーム油、やし油、豚脂、及び牛脂等がある。これらの中でも、操業性の観点から工業的には、パーム油、やし油が好ましい。
【0047】
次に、合成エステルとしては、例えば、ネオペンチルグリコールエステル、トリメチロールプロパンエステル、及びペンタエリスリトールエステル等がある。合成エステルを構成する脂肪酸は、飽和あるいは不飽和のもの、また直鎖あるいは分枝を有するものであってもよいが、上記基油との相溶性及びハンドリングの面から炭素数が12〜18のものがより好ましい。また、合成エステルとしては、フルエステル或いは部分エステルのどちらでも用いることができる。
また、上記合成エステルは、モノエステル、ジエステル、トリエステル、及びテトラエ
ステルから選ばれる1種又は2種以上からなることが好ましい。
この場合には、熱による酸化に対する安定性や、境界潤滑性をより向上させることができる。
【0048】
ネオペンチルグリコールエステルとしては、具体的には、例えば、ネオペンチルグリコールカプリン酸モノエステル、ネオペンチルグリコールカプリン酸ジエステル、ネオペンチルグリコールリノレン酸モノエステル、ネオペンチルグリコールリノレン酸ジエステル、ネオペンチルグリコールステアリン酸モノエステル、ネオペンチルグリコールステアリン酸ジエステル、ネオペンチルグリコールオレイン酸モノエステル、ネオペンチルグリコールオレイン酸ジエステル、ネオペンチルグリコールイソステアリン酸モノエステル、ネオペンチルグリコールイソステアリン酸ジエステル、ネオペンチルグリコールやし油脂肪酸モノエステル、ネオペンチルグリコールやし油脂肪酸ジエステル、ネオペンチルグリコール牛脂脂肪酸モノエステル、ネオペンチルグリコール牛脂脂肪酸ジエステル、ネオペンチルグリコールパーム油脂肪酸モノエステル、ネオペンチルグリコールパーム油脂肪酸ジエステル、ネオペンチルグリコール2モル・ダイマ酸1モル・オレイン酸2モルの複合エステル等がある。これらのうちで、特に好ましくは、オレイン酸、イソステアリン酸、やし油脂肪酸及び牛脂脂肪酸のエステルがよい。
【0049】
また、トリメチロールプロパンエステルとしては、例えば、トリメチロールプロパンカプリン酸モノエステル、トリメチロールプロパンカプリン酸ジエステル、トリメチロールプロパンカプリン酸トリエステル、トリメチロールプロパンリノレン酸モノエステル、トリメチロールプロパンリノレン酸ジエステル、トリメチロールプロパンリノレン酸トリエステル、トリメチロールプロパンステアリン酸モノエステル、トリメチロールプロパンステアリン酸ジエステル、トリメチロールプロパンステアリン酸トリエステル、トリメチロールプロパンオレイン酸モノエステル、トリメチロールプロパンオレイン酸ジエステル、トリメチロールプロパンオレイン酸トリエステル、トリメチロールプロパンイソステアリン酸モノエステル、トリメチロールプロパンイソステアリン酸ジエステル、トリメチロールプロパンイソステアリン酸トリエステル、トリメチロールプロパンやし油脂肪酸モノエステル、トリメチロールプロパンやし油脂肪酸ジエステル、トリメチロールプロパンやし油脂肪酸トリエステル、トリメチロールプロパン牛脂脂肪酸モノエステル、トリメチロールプロパン牛脂脂肪酸ジエステル、トリメチロールプロパン牛脂脂肪酸トリエステル、トリメチロールプロパンパーム油脂肪酸モノエステル、トリメチロールプロパンパーム油脂肪酸ジエステル、トリメチロールプロパンパーム油脂肪酸トリエステル、トリメチロールプロパン2モル・ダイマ酸1モル・オレイン酸4モルの複合エステル等がある。これらのうちで、特に好ましくは、オレイン酸、イソステアリン酸、やし油脂肪酸、及び牛脂脂肪酸のエステルがよい。
【0050】
また、ペンタエリスリトールとしては、例えば、ペンタエリスリトールカプリン酸モノエステル、ペンタエリスリトールカプリン酸ジエステル、ペンタエリスリトールカプリン酸トリエステル、ペンタエリスリトールカプリン酸テトラエステル、ペンタエリスリトールリノレン酸モノエステル、ペンタエリスリトールリノレン酸ジエステル、ペンタエリスリトールリノレン酸トリエステル、ペンタエリスリトールリノレン酸テトラエステル、ペンタエリスリトールステアリン酸モノエステル、ペンタエリスリトールステアリン酸ジエステル、ペンタエリスリトールステアリン酸トリエステル、ペンタエリスリトールステアリン酸テトラエステル、ペンタエリスリトールオレイン酸モノエステル、ペンタエリスリトールオレイン酸ジエステル、ペンタエリスリトールオレイン酸トリエステル、ペンタエリスリトールオレイン酸テトラエステル、ペンタエリスリトールイソステアリン酸モノエステル、ペンタエリスリトールイソステアリン酸ジエステル、ペンタエリスリトールイソステアリン酸トリエステル、ペンタエリスリトールイソステアリン酸テトラエステル、ペンタエリスリトールやし油脂肪酸モノエステル、ペンタエリスリトールやし油脂肪酸ジエステル、ペンタエリスリトールやし油脂肪酸トリエステル、ペンタエリスリトールやし油脂肪酸テトラエステル、ペンタエリスリトール牛脂脂肪酸モノエステル、ペンタエリスリトール牛脂脂肪酸ジエステル、ペンタエリスリトール牛脂脂肪酸トリエステル、ペンタエリスリトール牛脂脂肪酸テトラエステル、ペンタエリスリトールパーム油脂肪酸モノエステル、ペンタエリスリトールパーム油脂肪酸ジエステル、ペンタエリスリトールパーム油脂肪酸トリエステル、ペンタエリスリトールパーム油脂肪酸テトラエステル、ペンタエリスリトールプロパン2モル・ダイマー酸1モル・オレイン酸6モルの複合エステル等がある。これらのうちで、特に好ましくは、オレイン酸、イソステアリン酸、やし油脂肪酸、及び牛脂脂肪酸のエステルがよい。
【0051】
次に、上記油性剤として添加する上記脂肪酸エステルとしては、一般式(2)R4−COO−R5(ただし、R4は炭素数7〜17のアルキル基、R5は炭素数1〜4のアルキル基)で表される脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
上記一般式(2)において、上記アルキル基R4の炭素数が6以下の場合には、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の境界潤滑性が低下したり、アルミ粉が凝着し易くなり抽伸不良が起こるおそれがある。また、この場合には、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の臭気がきつくなり、作業環境を悪化させるおそれがある。一方、上記アルキル基R4の炭素数が18以上の場合、又は上記アルキル基R5の炭素数が5以上の場合には、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の融点が高くなり、常温で固化し易くなるおそれがある。そのため、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の使用時に、該潤滑油を加熱するための加熱設備等が必要となり、アルミニウム管抽伸潤滑油の取り扱いが困難になるおそれがある。
【0052】
上記脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、カプリル酸ブチル、ペラルゴン酸メチル、ペラルゴン酸エチル、ペラルゴン酸プロピル、ペラルゴン酸ブチル、カプリン酸メチル、カプリン酸エチル、カプリン酸プロピル、カプリン酸ブチル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸プロピル、ラウリン酸ブチル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸プロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸プロピル、パルミチン酸ブチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸ブチル等がある。
【0053】
次に、上記油性剤として添加する上記脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、デミスリチン酸、ペンタデカン酸、パルチミン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の直鎖飽和脂肪酸や、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸等がある。工業的により好ましい脂肪酸としては、潤滑性、作業性、長期安定性及びコストの面を考慮して、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸等がよい。
【0054】
次に、上記油性剤として添加するアルコールとしては、一般式(3)R6−OH(ただし、R6は炭素数8〜18のアルキル基)で表される高級アルコールが好ましい。
【0055】
また、上記アルキル基R6の炭素数が7以下の場合には、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の境界潤滑性が低下したり、アルミ粉が凝着し易くなり抽伸不良が起こるおそれがある。また、この場合には、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の臭気がきつくなり、作業環境を悪化させるおそれがある。一方、上記アルキル基R6の炭素数が19以上の場合には、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の融点が高くなり、常温で固化し易くなるおそれがある。そのため、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の使用時に、該潤滑油を加熱するための加熱設備等が必要となり、アルミニウム管抽伸潤滑油の取り扱いが困難になるおそれがある。より好ましくは、上記一般式(3)におけるアルキル基R6の炭素数は12〜15がよい。
【0056】
また、上記潤滑性向上剤を含有する場合には、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の潤滑性をより一層向上することができる。
また、上記潤滑性向上剤は、α−オレフィンであることが好ましい(請求項4)。
【0057】
α−オレフィンは、分子の末端に二重結合を有し、アルミニウム管の表面に化学吸着し易い性質を有しており、潤滑性向上剤として好適である。
一般に、アルミニウムの抽伸加工等の塑性加工時においては、アルミニウムの活発な新生面が現れる。α−オレフィンは、主にこの新生面に吸着して油性剤としての役割を果たし、上記アルミニウム抽伸潤滑油の潤滑性を向上することができる。なお、塑性加工前においては、アルミニウムの表面は、酸化皮膜によって覆われており、酸化皮膜によって覆われたアルミニウムに対しては、脂肪酸エステル、脂肪酸等が吸着しやすい。
【0058】
上記アルミニウム管抽伸潤滑油において、上記潤滑性向上剤として用いるα−オレフィンとしては、全炭素数が14〜18のものが好ましい。炭素数が13未満の場合には、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の境界潤滑性が低下するおそれがあり、一方、上記炭素数が19以上の場合には、温度0℃付近で上記アルミニウム管抽伸潤滑油が凝固し易くなるおそれがある。そのため、冬季や寒冷地などにおける使用が困難になるおそれがある。
【0059】
また、上記芳香族炭化水素を含有する場合には、基油と、添加剤と、金属石鹸との相溶性を向上させることができる。
また、上記アルミニウム管抽伸潤滑油が、上記油性剤、上記潤滑性向上剤、及び後述の極圧剤などを含有する場合には、上記芳香族炭化水素により、これらと上記基油との相溶性を向上させることができる。その結果、上記アルミニウム抽伸潤滑油の潤滑性をより向上することができる。
【0060】
また、上記芳香族炭化水素としては、一分子にベンゼン環が2個以下のものであることが好ましい。上記芳香族炭化水素に含まれるベンゼン環が3個以上の場合には、相溶性の向上効果が十分に発揮されないおそれがある。
【0061】
また、上記極圧剤を含有する場合には、上記アルミニウム管抽伸加工潤滑油の潤滑性をより向上させることができる。
また、上記極圧剤は、下記の一般式(1)で表されるアルキルフォスフォン酸エステル及び/又はリン酸トリトリルであることが好ましい(請求項6)。
【化2】

(但し、R1は炭素数12〜14のアルキル基あるいはアルケニル基、R2及びR3は炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0062】
上記R1の炭素数が11以下の場合には、極圧性及び極圧潤滑性が劣化し、焼き付きが発生するおそれがある。一方、上記R1の炭素数が15以上の場合には、抽伸後の洗浄により上記アルミニウム抽伸潤滑油を除去することが困難になるおそれがある。また、この場合には、上記アルミニウム抽伸潤滑油の調整時に粘度が高くなり、取り扱いが困難になるおそれがある。
【0063】
上記R2あるいはR3の炭素数が5以上の場合には、工業的な製造コストが増大し、コストに見合った潤滑性の向上効果が十分に得られないおそれがある。
【0064】
また、上記油性剤、上記潤滑向上剤、上記芳香族炭化水素、及び上記極圧剤の合計含有量は、0.1〜50%である。
上記合計含有量が0.1%未満の場合には、上記油性剤、上記潤滑性向上剤、上記芳香族炭化水素、及び上記極圧剤による上述の潤滑性の向上効果が十分に得られないおそれがあり、一方、上記合計含有量が50%を超える場合には、抽伸加工後に上記アルミニウム管抽伸潤滑油を除去することが困難になるおそれや、抽伸加工後の脱脂や、焼鈍などの工程における残油量が多くなり、アルミニウム管の表面品質に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0065】
また、上記アルミニウム管抽伸潤滑油は、上記基油、添加剤、油性剤、潤滑性向上剤、芳香族炭化水素、極圧剤の他に、後述の金属石鹸、カルナウバワックス等を含有することができる。
【0066】
また、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の温度40℃における動粘度は5〜50000mm2/sである。
上記動粘度は、JIS K 2283の「原油及び石油製品の動粘度試験方法」に準拠して40℃における動粘度を測定することができる。例えば、測定器具としてJIS K
2839の「石油類試験用ガラス器具」のキャノン−フェンスケ粘度計(毛管粘度計の一種)を用い、一定量の試験油が毛管を通過するのに要する時間から測定することができる。
【0067】
上記動粘度が、5mm2/s未満である場合には、摩擦面への導入油量が不足し、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の潤滑性が不十分になり、抽伸加工時に焼き付き等の不具合を発生するおそれがあり、一方、上記動粘度が50000mm2/sを超える場合には、抽伸加工後に、上記アルミニウム管抽伸潤滑油を洗浄等に除去することが困難になる可能性がある。より好ましくは、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の温度40℃における動粘度は3000〜20000mm2/sがよい。
【0068】
また、比較的柔らかい材料からなるアルミニウム管の抽伸加工に用いる場合には、できるだけ低粘度であることが好ましく、一方、比較的硬い材料からなるアルミニウム管の抽伸加工に用いる場合には、できるだけ高粘度であることが好ましい。
また、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の動粘度は、上記基油、添加剤、油性剤、潤滑性向上剤、芳香族炭化水素、極圧剤、後述する金属石鹸、カルナウバワックス等の種類及び配合量等を変えることによって調整することができる。
【0069】
好ましくは、上記アルミニウム管抽伸潤滑油は、さらに、金属石鹸及び/又はカルナウバワックスを含有することが好ましい(請求項6)。
上記金属石鹸は、金属と、有機酸とから構成される。そのため、上記金属石鹸を含有する場合には、上記アルミニウム管抽伸潤滑油においては、上記金属石鹸の官能基がアルミニウム管の表面と強固に吸着し、潤滑性を与えることができる。
上記カルナウバワックスを含有する場合には、カルナウバワックスの官能基がアルミニウム表面と強固に吸着し、境界潤滑性を与えることができる。
【0070】
上記金属石鹸に含まれる金属は、工業的に一般的に用いられるという理由により、Ca、Zn、Mg、Al、Pb、Co、Ni、Fe、Cu、Mn、Sn、Li、Cd、及びBaのいずれかを選択する。その中でも、工業的に大量に生産されており、より安価に利用可能であるという理由により、特に、Ca、Zn、Mg、Al、及びPbのいずれかを選択することが好ましい。
【0071】
また、上記金属石鹸は、金属の価数により、有機酸が1つ結合したモノソープ、2つ結合したジソープ、3つ結合したトリソープの存在が知られている。本発明においては、どの形態の金属石鹸を用いても、工業的に利用可能である。
【0072】
また、上記金属石鹸を構成する上記有機酸は、比較的炭素数の多い脂肪族、芳香族、脂環式の有機酸等が対象となる。有機酸の炭素数は10〜30である。このうち、工業的には、炭素数が10〜18までの脂肪酸が用いられる。炭素数が10以下である場合には、潤滑性が低下し、使用できないというおそれがあり、一方、上記炭素数が19以上である場合には、金属石鹸の価格が高価であり、コストの増大を招くおそれがある。
【0073】
上記ジソープ及びトリソープは、単一の有機酸により構成されたものであってもよいし、2種以上の有機酸により構成されたものであってもよい。
また、不純物として、未反応の金属あるいは、反応過程で生成した金属酸化物を含有する金属石鹸を用いることも可能である。
【0074】
また、上記金属石鹸の具体例としては、カプリル酸カルシウム、カプリル酸亜鉛、カプリル酸マグネシウム、カプリル酸アルミニウム、カプリル酸鉛、カプリル酸ニッケル、カプリル酸鉄、カプリル酸銅、カプリル酸マンガン、カプリル酸スズ、カプリル酸リチウム、カプリル酸カドミニウム、ペラルゴン酸カルシウム、ペラルゴン酸亜鉛、ペラルゴン酸マグネシウム、ペラルゴン酸アルミニウム、ペラルゴン酸鉛、ペラルゴン酸ニッケル、ペラルゴン酸鉄、ペラルゴン酸銅、ペラルゴン酸マンガン、ペラルゴン酸スズ、ペラルゴン酸リチウム、ペラルゴン酸カドミニウム、カプリン酸カルシウム、カプリン酸亜鉛、カプリン酸マグネシウム、カプリン酸アルミニウム、カプリン酸鉛、カプリン酸ニッケル、カプリン酸鉄、カプリン酸銅、カプリン酸マンガン、カプリン酸スズ、カプリン酸リチウム、カプリン酸カドミニウム、ウンデカン酸カルシウム、ウンデカン酸亜鉛、ウンデカン酸マグネシウム、ウンデカン酸アルミニウム、ウンデカン酸鉛、ウンデカン酸ニッケル、ウンデカン酸鉄、ウンデカン酸銅、ウンデカン酸マンガン、ウンデカン酸スズ、ウンデカン酸リチウム、ウンデカン酸カドミニウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸アルミニウム、ラウリン酸鉛、ラウリン酸ニッケル、ラウリン酸鉄、ラウリン酸銅、ラウリン酸マンガン、ラウリン酸スズ、ラウリン酸リチウム、ラウリン酸カドミニウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸アルミニウム、ミリスチン酸鉛、ミリスチン酸ニッケル、ミリスチン酸鉄、ミリスチン酸銅、ミリスチン酸マンガン、ミリスチン酸スズ、ミリスチン酸リチウム、ミリスチン酸カドミニウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸鉛、パルミチン酸ニッケル、パルミチン酸鉄、パルミチン酸銅、パルミチン酸マンガン、パルミチン酸スズ、パルミチン酸リチウム、パルミチン酸カドミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸鉄、ステアリン酸銅、ステアリン酸マンガン、ステアリン酸スズ、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カドミニウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸アルミニウム、オレイン酸鉛、オレイン酸ニッケル、オレイン酸鉄、オレイン酸銅、オレイン酸マンガン、オレイン酸スズ、オレイン酸リチウム、オレイン酸カドミニウム、リノール酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リノール酸マグネシウム、リノール酸アルミニウム、リノール酸鉛、リノール酸ニッケル、リノール酸鉄、リノール酸銅、リノール酸マンガン、リノール酸スズ、リノール酸リチウム、リノール酸カドミニウム、リノレン酸カルシウム、リノレン酸亜鉛、リノレン酸マグネシウム、リノレン酸アルミニウム、リノレン酸鉛、リノレン酸ニッケル、リノレン酸鉄、リノレン酸銅、リノレン酸マンガン、リノレン酸スズ、リノレン酸リチウム、リノレン酸カドミニウム等が挙げられる。
【0075】
また、上記金属石鹸及び/又はカルナウバワックスの合計含有量は、0.5〜5.0%であることが好ましい。
上記金属石鹸及び/又はカルナウバワックスの含有量が0.5%未満の場合には、上述の効果を十分に得られないおそれがある。一方、上記金属石鹸及び/又はカルナウバワックスの含有量が5.0%を超える場合には、上記アルミニウム管抽伸潤滑油が、少なくとも部分的に固形化し、アルミニウム管への供給が困難になるという問題がある。また、固形化した成分がアルミニウム管の表面に付着して、抽伸加工の際にアルミニウム管の表面品質を劣化させるおそれがある。
【0076】
第2の発明のアルミニウム管の抽伸方法は、上述したように、第1の発明のアルミニウム管抽伸潤滑油をアルミニウム管の内面及び/又は外面に供給し、アルミニウム管の抽伸加工を行う。
上記アルミニウム管の抽伸加工においては、一方からアルミニウム管を送り出し、他方からダイスを通してアルミニウム管を引き抜くことにより、抽伸を行い、ダイス穴形状と同じ断面のアルミニウム管を得ることができる。また、例えば心金やプラグ等をアルミニウム管の内面に配置した状態で、上記のごとくアルミニウム管をダイスを通して引き抜くことにより、管の外形のみならず、内径あるいは肉厚をも所望の寸法に仕上げることができる。
【0077】
上記アルミニウム管の抽伸方法においては、上記アルミニウム管抽伸潤滑油を上記アルミニウム管の内面及び/又は外面に供給して抽伸加工を行う。即ち、アルミニウム管の内面又は外面のいずれか一方、又は内面と外面の両方に上記アルミニウム管抽伸潤滑油を供給して抽伸加工を行うことができる。また、ダイス、心金、プラグ等に上記アルミニウム管抽伸潤滑油を供給することもできる。
【実施例】
【0078】
(実施例1)
本例は、本発明のアルミニウム管抽伸潤滑油にかかる実施例について具体的に説明する。
本例では、表1に示すごとく、本発明の実施例としての複数種類のアルミニウム管抽伸潤滑油(試料E1〜試料E22)と、表2に示すごとく、本発明の比較例としての複数種類のアルミニウム管抽伸潤滑油(試料C1〜試料C15)を作製し、各種性能の比較試験を行った。
【0079】
上記実施例及び比較例のアルミニウム管抽伸潤滑油(試料E1〜試料E22、及び試料C1〜試料C15)の、基油の種類と含有量、添加剤の種類と含有量、油性剤の種類と含有量、潤滑性向上剤の含有量、芳香族炭化水素の含有量、極圧剤の種類と含有量等については、表1及び表2に示す。
【0080】
基油としては、ポリイソブチレン(平均分子量980)、ポリイソブチレン(平均分子量3700)、イソパラフィン(温度40℃における動粘度1.3mm2/s)、鉱物油(温度40℃における動粘度300mm2/s)のいずれか1種以上よりなる基油を用いた。
表1及び表2において、ポリイソブチレン(平均分子量980)をa1、ポリイソブチレン(平均分子量3700)をa2、イソパラフィン(温度40℃における動粘度1.3mm2/s)をa3、鉱物油(温度40℃における動粘度300mm2/s)をa4と示した。
【0081】
添加剤としては、N,N−シクロヘキシルアミンエチレンオキシド2モル付加物、2ブチル−2エチル−1,3−β−ヒドロキシエトキシプロパン、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルエステルナトリウム塩を用いた。
表1及び表2において、N,N−シクロヘキシルアミンエチレンオキシド2モル付加物をb1、2ブチル−2エチル−1,3−β−ヒドロキシエトキシプロパンをb2、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルエステルナトリウム塩をb3と示した。
【0082】
油性剤としては、ラウリルアルコール、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールオレイン酸テトラエステル、パーム油を用いた。
表1及び表2において、ラウリルアルコールをc1、ステアリン酸ブチルをc2、オレイン酸をc3、トリメチロールプロパンをc4、ペンタエリスリトールオレイン酸テトラエステルをc5、パーム油をc6と示した。
【0083】
潤滑性向上剤としては、テトラデセン−1を用いた。
芳香族炭化水素としては、エチルベンゼン(温度40℃における動粘度3.8mm2/s)を用いた。
極圧剤としては、リン酸トリトリル、ドデシルフォスフォン酸ジメチルエステルを用いた。
表1及び表2において、リン酸トリトリルをd1、ドデシルフォスフォン酸ジメチルエステルをd2と示した。
金属石鹸としては、ステアリン酸亜鉛を用いた。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
表1より知られるごとく、本発明の実施例のアルミニウム管抽伸潤滑油(試料E1〜試料E22)は、いずれも、鉱物油、未水素添加又は水素添加のポリイソブチレン、及びイソパラフィンから選ばれる1種以上よりなる基油と、添加剤と、油性剤、潤滑向上剤、芳香族炭化水素、及び極圧剤のうち1種又は2種以上とを含有する。上記添加剤は、アミン誘導体、数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、そのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、炭素数2〜10の2価アルコール、及びアルキルスルホン酸塩から選ばれる1種又は2種以上よりなる。上記添加剤の含有量は0.01〜2.0%であり、上記油性剤、上記潤滑向上剤、上記芳香族炭化水素、及び上記極圧剤の合計含有量は、0.1〜50%である。また、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の温度40℃における動粘度は5〜50000mm2/sである。
【0087】
次に、本例では、上記試料E1〜試料E22、及び、上記試料C1〜試料C15について、相状態(固体、液体、気体)を視認により確認した。
上記相状態が液体の場合を合格、固体及び気体の場合を不合格とする。結果を表3、及び表4に示す。
【0088】
次に、相状態が液体であった試料について、温度40℃の動粘度を測定した。上記動粘度は、上述のキャノン・フェンスケ粘度測定方法によって測定した。
動粘度が5〜50000mm2/sの場合を合格、上記動粘度が5mm2/s未満、50000mm2/s超えの場合を不合格とする。その結果を表3、及び表4に示す。
【0089】
また、相状態が液体であった試料を用いて、アルミニウム管の抽伸加工を行い、潤滑性、アルミニウム粉分散性の評価を行った。結果を表3、及び表4に示す。
まず、熱間押し出しにより作製したアルミニウム合金管(材質A5052、外径53.0mm、内径35.0mm、長さ約4m)を準備した。次いで、各試料(試料E1〜試料E22及び試料C1〜試料C15)のうち相状態が液体であった試料をそれぞれ使用して、アルミニウム合金管を外径45.4mm、内径30.0mmの寸法にする抽伸加工を行った。この抽伸加工は、出側材料速度40m/分という条件で行った。
【0090】
<潤滑性>
試料の潤滑性が悪い場合には、抽伸加工後のアルミニウム合金管表面に潤滑不良にともなう焼き付きが発生する。この焼き付きの有無を目視にて評価した。潤滑性は、焼き付きが確認されない場合を合格(評価○)、焼き付きが確認された場合を不合格(評価×)とする。結果を表3、及び表4に示す。
【0091】
<アルミニウム粉分散性>
試料のアルミニウム粉分散性が悪い場合には、抽伸加工後の抽伸プラグにアルミニウム粉の凝着が発生する。アルミニウム粉分散性は、アルミニウム粉の凝着量が5mg/本未満の場合を合格(評価○)、アルミニウム粉の凝着量が5mg/本以上の場合を不合格(評価×)とした。
【0092】
また、各試料を工業的に用いた場合のコストを評価した。工業的に適用可能な場合は、評価を○として合格、高価格で工業生産に適用できない場合は、評価を×として不合格とする。結果を表3、及び表4に併せて示す。
【0093】
【表3】

【0094】
【表4】

【0095】
表3より知られるごとく、実施例としての試料E1〜試料E22は、相状態、動粘度、潤滑性、アルミニウム粉分散性、及びコストのいずれの項目においても良好な結果を示した。これにより、本発明のアルミニウム管抽伸潤滑油は、潤滑性に優れ、低コストで抽伸加工を行うことができる。
【0096】
また、表4より知られるごとく、比較例としての試料C1〜試料C9は、添加剤を含有していないため、プラグへのアルミニウム粉の凝着が発生し、アルミ粉凝着量が5mg/本以上になるという理由により、アルミニウム粉分散性が不合格であった。
【0097】
また、比較例としての試料C10は、添加剤の含有量が本発明の下限を下回るため、プラグへのアルミニウム粉の凝着が発生し、アルミ粉凝着量が5mg/本以上になるという理由により、アルミニウム粉分散性が不合格であった。
また、比較例としての試料C11は、添加剤の含有量が本発明の上限を上回るため、抽伸潤滑油価格が上昇し、コストが不合格であった。
【0098】
また、比較例としての試料C12は、添加剤と、油性剤、潤滑向上剤、芳香族炭化水素、及び極圧剤の合計含有量が本発明の下限を下回るため、潤滑性が不十分であり、不合格であった。
また、比較例としての試料C13は、添加剤と、油性剤、潤滑向上剤、芳香族炭化水素、及び極圧剤の合計含有量が、本発明の上限を上回るため、抽伸潤滑油価格が上昇し、コストが不合格であった。
また、比較例としての試料C14は、動粘度が本発明の下限を下回るため、上記アルミニウム管抽伸潤滑油の潤滑性が不十分になり、潤滑性が不合格であった。
また、比較例としての試料C15は、動粘度が本発明の上限を上回るため、相状態が半固体であり、不合格であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム管の抽伸加工に用いられるアルミニウム管抽伸潤滑油であって、
該アルミニウム管抽伸潤滑油は、鉱物油、未水素添加又は水素添加のポリイソブチレン、及びイソパラフィンから選ばれる1種以上よりなる基油と、添加剤と、油性剤、潤滑向上剤、芳香族炭化水素、及び極圧剤のうち1種又は2種以上とを含有し、
上記添加剤は、アミン誘導体、数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、そのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、炭素数2〜10の2価アルコール、及びアルキルスルホン酸塩から選ばれる1種又は2種以上よりなり、
上記添加剤の含有量は0.01〜2.0%(質量%、以下同じ)であり、
上記油性剤、上記潤滑向上剤、上記芳香族炭化水素、及び上記極圧剤の合計含有量は、0.1〜50%であり、
上記アルミニウム管抽伸潤滑油の温度40℃における動粘度は5〜50000mm2/sであることを特徴とするアルミニウム管抽伸潤滑油。
【請求項2】
請求項1において、上記アミン誘導体は、脂肪族アミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環アミン、及びそれらのアルキレンオキシド付加物であることを特徴とするアルミニウム管抽伸潤滑油。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、上記油性剤は、天然油脂、合成エステル、脂肪酸エステル、脂肪酸、アルコールから選ばれる1種以上であることを特徴とするアルミニウム管抽伸潤滑油。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、上記潤滑性向上剤は、α−オレフィンであることを特徴とするアルミニウム管抽伸潤滑油。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、上記極圧剤は、下記の一般式(1)で表されるアルキルフォスフォン酸エステル及び/又はリン酸トリトリルであることを特徴とするアルミニウム管抽伸潤滑油。
【化1】

(但し、R1は炭素数12〜14のアルキル基あるいはアルケニル基、R2及びR3は炭素数1〜4のアルキル基である。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、上記アルミニウム管抽伸潤滑油は、さらに、金属石鹸及び/又はカルナウバワックスを含有することを特徴とするアルミニウム管抽伸潤滑油。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミニウム管抽伸潤滑油をアルミニウム管の内面及び/又は外面に供給し、アルミニウム管の抽伸加工を行うことを特徴とするアルミニウム管の抽伸方法。

【公開番号】特開2009−29913(P2009−29913A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194667(P2007−194667)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)
【Fターム(参考)】