説明

アルミ箔ラミネート紙を原料とする樹脂化ペレット製造方法

【課題】 飲料用や食品用の容器として使用されている紙製基材とアルミニウムフィルム層とを有する紙含有積層材と、熱可塑性樹脂粒子と、を粉砕・混合して、紙−アルミ−樹脂混合物を得る際に、アルミニウムフィルム層部分の粉砕不良を有効に防止し、良好な粉砕物を得ることができる紙−アルミ−樹脂混合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】 紙製基材およびアルミニウムフィルム層を有する紙含有積層材と、熱可塑性樹脂粒子とを、互いに相対する固定刃14および回転刃16aを有する粉砕装置を用いて、粉砕・混合し、紙−アルミ−樹脂混合物を製造する方法において、粉砕前の前記熱可塑性樹脂粒子として、前記固定刃と回転刃との間の最小距離である切断クリアランス(t)に対して、各粒子の最大長さの平均値(r)が、1<r/t≦2.5の範囲にある熱可塑性樹脂粒子を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、飲料用、食品用の容器として使用されている紙製基材とアルミニウムフィルム層とを有する紙含有積層材を樹脂化し、再利用する際において、紙成分と樹脂成分との混合物である紙−アルミ−樹脂混合物を得る方法に係り、さらに詳しくは、紙含有積層材と、熱可塑性樹脂粒子と、を粉砕・混合して、紙−アルミ−樹脂混合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジュース、お茶、酒等の飲料やヨーグルト等の食品を包装する容器として、紙製基材(板紙)の内面に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂層を介して、アルミニウムフィルム層が形成された紙パック容器が使用されている。このような紙パック容器においては、紙以外に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂に加えて、さらに、アルミニウムフィルムが含有されている。そのため、使用後の空容器から、これらの構成材料(紙、熱可塑性樹脂、アルミニウムフィルム)を分離回収することは困難であり、大部分が埋め立て処分や焼却処分されている。
【0003】
しかし、昨今の資源の再利用が求められている実情から、たとえば、このようなアルミニウムフィルムを含有する飲料用容器や食品用容器において、紙製基材から熱可塑性樹脂およびアルミニウムフィルムを分離する方法が提案されている。具体的には、紙製基材から、熱可塑性樹脂およびアルミニウムフィルムを分離する方法として、これらを機械的に剥離する方法、これらの積層材に含有されている水溶性化合物層を、水に溶解させ分離する方法、などが提案されている。
【0004】
しかしながら、上記のように、紙製基材から、熱可塑性樹脂およびアルミニウムフィルムを分離する方法には、大量の水を使用する必要があり、しかも、処理時間が非常に長くなってしまうという問題や、さらに、一度これらを分離しても、分離した熱可塑性樹脂に紙成分が再付着してしまい、そのため、紙と熱可塑性樹脂を完全に分離することが困難であるという問題があった。
【0005】
一方で、紙製基材と樹脂とを積層してなる樹脂フィルムラミネート紙を粉砕し、さらに、これに熱可塑性樹脂を加えて、紙−樹脂混合物を得る方法が、開示されている(たとえば、特許文献1)。この特許文献1においては、樹脂フィルムラミネート紙と熱可塑性樹脂とを、粉砕・混合し、その後、成形することにより、紙−樹脂混合物からなる成形品(再利用品)を得ている。
【0006】
しかしながら、この文献では、アルミニウムフィルム層を有していない樹脂フィルムラミネート紙を対象としており、そのため、上記のような飲料用や食品用の容器として使用されているアルミニウムフィルム層を有する容器を粉砕しようとしても、次のような問題があった。すなわち、アルミニウムフィルム層部分が6〜8μm程度であるため、水平方向のクリアランスが数mmである粉砕刃に接触しても、粉砕刃の間をすり抜け、粉砕されずに排出されてしまい、結果として、粉砕を良好に行うことができないという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開2004−58254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、たとえば、飲料用や食品用の容器として使用されている紙製基材およびアルミニウムフィルム層を有する紙含有積層材と、熱可塑性樹脂粒子と、を粉砕・混合して、紙−アルミ−樹脂混合物を得る際に、アルミニウムフィルム層部分の粉砕不良を有効に防止し、良好な粉砕物を得ることができ、しかも、50%以上の石油資源を、紙とアルミニウムフィルムとの複合廃材に置き換えることで、環境負荷を低減する紙−アルミ−樹脂混合物の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、このような製造方法により得られた紙−アルミ−樹脂混合物をペレット化して得られ、成形性に優れ、しかも環境負荷の低い紙−アルミ−樹脂混合物ペレットを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、紙製基材およびアルミニウムフィルム層を有する紙含有積層材と、熱可塑性樹脂粒子とを、互いに相対する固定刃および回転刃を有する粉砕装置を用いて、粉砕・混合する際に、粉砕前の前記熱可塑性樹脂粒子として、各粒子の最大長さが所定範囲にある熱可塑性樹脂粒子を使用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の紙−アルミ−樹脂混合物の製造方法は、
少なくとも紙製基材およびアルミニウムフィルム層を有する紙含有積層材と、熱可塑性樹脂粒子とを、互いに相対する固定刃および回転刃を有する粉砕装置を用いて、粉砕・混合し、紙−アルミ−樹脂混合物を製造する方法であって、
粉砕前の前記熱可塑性樹脂粒子として、前記固定刃と回転刃との間の最小距離である切断クリアランス(t)に対して、各粒子の最大長さの平均値(r)が、1<r/t≦2.5の範囲にある熱可塑性樹脂粒子を使用することを特徴とする。
【0011】
本発明においては、前記熱可塑性樹脂粒子として、各粒子の最大長さの平均値(r)が、上記範囲にある粒子を使用するため、熱可塑性樹脂粒子(レジンペレット)の大きさを利用して、アルミニウムフィルム層を抱きこみながらクリアランスで圧縮後、粉砕される。樹脂の持つ圧縮反発弾性と金属箔(アルミニウムフィルム)の応力破断を用いて、均一な破砕が可能であった。そのため、飲料用や食品用の容器等として使用されているアルミニウムフィルム層を含有する紙積層材と、熱可塑性樹脂粒子と、を粉砕・混合して得られる紙−アルミ−樹脂混合物を、好ましくは30〜100μm程度と微細に粉砕することができ、しかも、紙成分、アルミ成分、および熱可塑性樹脂成分を、均一に混合することができる。
【0012】
なお、前記熱可塑性樹脂粒子の“最大長さ”とは、たとえば、熱可塑性樹脂粒子が、フレーク状(薄片状、断片状、層状)の場合には、その粒子の略中心を通る長さのうち、最大の長さを意味する。また、熱可塑性樹脂粒子が、略球形である場合には、その粒子の粒子径を意味する。
【0013】
また、上述の互いに相対する固定刃および回転刃を有する粉砕装置としては、複数の回転刃を有する回転円板が、高速回転することにより、互いに相対する前記固定刃と回転刃との間に存在する被粉砕物を、粉砕・混合可能な構造を有しているものであれば良い。
【0014】
本発明の紙−アルミ−樹脂混合物の製造方法において、前記紙−アルミ−樹脂混合物中における紙成分の含有比率が、前記紙−アルミ−樹脂混合物全体100重量%に対して、30〜70重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜70重量%の範囲、さらに好ましくは51〜56重量%の範囲である。
【0015】
紙−アルミ−樹脂混合物中における紙成分の含有比率を、上記範囲とし、紙成分の含有率を比較的に高くすることにより、得られる紙−アルミ−樹脂混合物ペレットや成形品を焼却する際における燃焼エネルギーを低減することができる。そのため、環境負荷を軽減することが可能となる。特に、紙−アルミ−樹脂混合物中における紙成分の含有比率を、51重量%以上とし、紙以外の成分、すなわちアルミニウム成分および熱可塑性樹脂成分等のその他の成分の含有比率を49重量%以下とすることにより、環境負荷の軽減効果に加えて、容器リサイクル法における紙に分類されることとなるため、紙として廃却が可能となるという利点を有する。一方で、紙−アルミ−樹脂混合物中における紙成分の含有比率が高すぎると、樹脂の流れ特性であるMFR(メルトフローレート)が低下し、成形性が悪化してしまう。そして、結果として、歩留まりが下がり、偏肉の無い良好な成形品が得られなくなる傾向にある。そのため、紙成分の含有量の上限は、上記範囲とすることが好ましい。
【0016】
本発明の紙−アルミ−樹脂混合物の製造方法において、前記熱可塑性樹脂粒子を構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、種々の熱可塑性樹脂を適宜選択して使用することができる。なかでも、本発明においては、焼却時におけるダイオキシンの発生を防ぐという観点より、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)を主成分とするものが好適に用いられる。
【0017】
本発明の紙−アルミ−樹脂混合物ペレットは、上記いずれかの方法により得られる紙−アルミ−樹脂混合物を、ペレット化することにより得ることができる。
【0018】
本発明の成形品は、上述の紙−アルミ−樹脂混合物ペレットを射出成形などの方法により、所望の形状に成形することにより得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法によると、熱可塑性樹脂粒子として、所定の大きさを有する熱可塑性樹脂粒子を使用するため、飲料用や食品用の容器等として使用されているアルミニウムフィルム層を含有する紙積層材を、微細に粉砕することができ、さらには、得られる粉砕物を均一に混合することができる。そのため、従来、再利用が困難であったアルミニウムフィルム層を含有する紙積層材から、良好に成形可能な紙−アルミ−樹脂混合物を得ることができる。
【0020】
しかも、本発明の製造方法により得られる紙−アルミ−樹脂混合物は、その後、ペレット化し、紙−アルミ−樹脂混合物ペレットとし、次いで、所望の形状に成形することにより、有効に再利用することができる。特に、本発明によると、従来において、再利用が困難であったアルミニウムフィルム層を含有する紙積層材を有効に再利用できるというメリットに加え、好ましくは、紙成分の含有量を51重量%以上とすることにより、焼却時における燃焼エネルギーを低減できるとともに、紙として廃却することができ、環境への負荷の軽減が可能となるというメリットも有する。なお、本発明においては、前記紙含有積層材は、少なくともアルミニウムフィルム層を含有していれば良く、その含有形式は特に限定されないが、たとえば、アルミニウムフィルム層が、紙製基材と積層されている形で含有されていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る粉砕装置の断面図、
図2(A)は図1のIIA−IIA線に沿う要部断面図、図2(B)は図2(A)のIIB部分の拡大断面図である。
【0022】
本実施形態においては、紙製基材と、アルミニウムフィルム層と、を含有する紙積層材の一例としての使用済みのアルミ含有飲料用紙パック及びアルミ含有食品用紙パック(以下、適宜、アルミ含有紙容器という)を樹脂化し、成形品とすることにより、使用済みの飲料用の容器を再利用する方法を説明する。もちろん原料としては、生産工程から排出される切り落とし抜きかす、端材であってもよい。
【0023】
本発明の一実施形態においては、使用済みのアルミ含有紙容器を再利用に際しては、次の工程を採用する。
すなわち、まず、使用済みの飲料用の容器を洗浄し、次いで、これを粗粉砕する。そして、粗粉砕物から余分な水分を除去する。その後、水分を除去した粗粉砕物を、熱可塑性樹脂粒子とともに、粉砕装置に投入し、粉砕・混合することにより紙−アルミ−樹脂混合物とする。
そして、このようにして得られた紙−アルミ−樹脂混合物を、ペレット化し、紙−アルミ−樹脂混合物ペレットとする。最後に、得られた紙−アルミ−樹脂混合物ペレットを、所望の形状に成形し、成形品(再利用品)とする。
以下、詳細に説明する。
【0024】
まず、原料となる使用済みのアルミ含有紙容器を準備する。このような使用済みのアルミ含有紙容器としては、飲料用や食品用に用いられるアルミ含有紙パックが挙げられ、具体的には、紙製基材(板紙)の内面に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂層を介して、アルミニウムフィルム層が形成された紙パック容器を原料として用いる。
【0025】
次に、上記にて準備した使用済みのアルミ含有紙容器について、水やオゾン発生器を組み合わせ、脱臭しながら、洗浄を行う。アルミ含有紙容器の洗浄は、主に、アルミ含有紙容器の内面に付着している飲料等を除去することを目的とし、通常、水を使用して行われる。
【0026】
次いで、上記にて洗浄したアルミ含有紙容器を、粗粉砕し、アルミ含有紙容器の粗粉砕物を得る。粗粉砕は、アルミ含有紙容器が、微粉砕に用いる粉砕装置に入るような適当な大きさとするために行われる。このような粗粉砕は、通常、プラスチック粉砕用の装置を使用して行われる。粗粉砕は、得られるアルミ含有紙容器の粗粉砕物は、一辺の大きさが、好ましくは5〜10mm、厚さが、好ましくは0.4〜0.8mmの四角形状とする。
【0027】
次いで、得られたアルミ含有紙容器の粗粉砕物から余分な水分を除去するために、乾燥を行う。粗粉砕物の乾燥は、タンブラーなどを使用して、養生撹拌することにより、粗粉砕されたアルミ含有紙容器に含まれている水分を空気中に蒸散させる方法により行う。本発明においては、粗粉砕後に、乾燥を行うことにより、余分な水分の除去を簡便かつ効率的に行うことができる。
【0028】
そして、得られたアルミ含有紙容器の粗粉砕物を、熱可塑性樹脂粒子とともに、図1に示す粉砕装置1に投入し、紙−アルミ−樹脂混合物とする。
本発明は、このような粉砕装置1に、アルミ含有紙容器の粗粉砕物と、熱可塑性樹脂粒子と、を投入し、粉砕・混合を行う際に、所定の大きさを有する熱可塑性樹脂粒子を使用する点に最大の特徴を有する。
以下、まず、粉砕・混合に使用する粉砕装置1について説明し、次いで、粉砕装置1を使用したアルミ含有紙容器の粗粉砕物と、熱可塑性樹脂粒子と、の粉砕・混合について説明する。
【0029】
本実施形態において、アルミ含有紙容器の粗粉砕物と、熱可塑性樹脂粒子と、の粉砕・混合に使用する粉砕装置1は、図1に示すように、ケーシング2の端部に設けられた一対の軸受け6,8により保持された回転軸4を有している。そして、この回転軸4は、ローター12を介し、回転刃14とともに、回転自在となっており、回転軸4および回転刃14は、プーリ10に掛けられたベルトを介してモーター(図示省略)により、高速回転するような構造となっている。
【0030】
そして、高速回転する回転刃14と、図2(A)に示すような複数の固定刃16aを有する外箱16との間で、アルミ含有紙容器の粗粉砕物および熱可塑性樹脂粒子を粉砕可能な構造となっている。なお、粉砕装置1においては、アルミ含有紙容器の粗粉砕物および熱可塑性樹脂粒子は、ともに投入口18から投入され、粉砕装置1内で粉砕・混合され、紙−アルミ−樹脂混合物として、取出口20から取り出されることとなる。
【0031】
本実施形態においては、図2(B)に示すように、粉砕装置1の回転刃14と、固定刃16aと、の間の最小距離である切断クリアランス(t)が、好ましくは2〜4mmの範囲、より好ましくは3〜4mmの範囲である。切断クリアランス(t)が小さすぎると、回転刃14と固定刃16aとが接触してしまい、摩耗による紙−アルミ−樹脂混合物への摩耗粉の混入が発生するおそれがある。一方、大きすぎると微粉砕が困難となる。
【0032】
回転刃14の長さは、特に限定されないが、通常50〜100mm程度である。同様に、固定刃16aの刃の長さは、通常2〜5mm程度である。また、粉砕・混合時の粉砕装置1の運転条件としては、特に限定されないが、回転数は、通常3,000〜10,000rpm、温度は、室温とする。
【0033】
そして、このような粉砕装置1を使用して、アルミ含有紙容器の粗粉砕物と、熱可塑性樹脂粒子と、を粉砕・混合し、紙−アルミ−樹脂混合物を得る。
【0034】
本発明においては、熱可塑性樹脂粒子として、各粒子の最大長さの平均値(r)が、上述の切断クリアランス(t)に対して、1<r/t≦2.5の範囲にある熱可塑性樹脂粒子を使用することを最大の特徴とする。最大長さの平均値(r)が、このような範囲にある熱可塑性樹脂粒子を使用することにより、アルミ含有紙容器の粗粉砕物に含有されているアルミニウムフィルム層を良好に粉砕することが可能となり、したがって、アルミ含有紙容器の微粉砕が可能となる。
【0035】
従来においては、アルミ含有紙容器のアルミニウムフィルム層を微粉砕することが困難であったため、飲料用の容器として好適に用いられているアルミ含有紙容器と、熱可塑性樹脂と、を均一かつ良好に分散させることができなかった。特に、このようなアルミ含有紙容器に含まれているアルミニウムフィルム層が6〜8μm厚と非常に薄いため、従来においては、切断クリアランス(t)を、1μmと非常に小さくすることにより、アルミニウムフィルム層の破砕を試みていた。しかしながら、このように切断クリアランス(t)を、1μmと小さくした場合においても、アルミニウムフィルム層を微粉砕することはできなかった。
これに対して、本発明においては、使用する熱可塑性樹脂粒子の最大長さの平均値(r)と、切断クリアランス(t)とを、上記所定範囲に設定することにより、アルミ含有紙容器のアルミニウムフィルム層の微粉砕を可能とした。なお、この理由としては、切断クリアランス(t)に、熱可塑性樹脂粒子とアルミニウムフィルムとが、一緒に狭着し、圧縮された熱可塑性樹脂粒子の反発弾性により、アルミニウムフィルムがせん断応力破壊することによると考えられる。
【0036】
熱可塑性樹脂粒子の各粒子の最大長さの平均値(r)と、上述の切断クリアランス(t)との比は、その上限は、r/t≦2.5であり、好ましくはr/t≦2、より好ましくはr/t≦1.7である。また、下限は、r/t>1であり、好ましくはr/t≧1.25、より好ましくはr/t≧1.3である。r/t≦1、すなわち、熱可塑性樹脂粒子の各粒子の最大長さの平均値(r)が、切断クリアランス(t)よりも小さいと、熱可塑性樹脂粒子が、上述のように回転刃14と固定刃16aとの間に、熱可塑性樹脂粒子が挟まれなくなってしまうため、本発明の効果を得ることができない。また、r/t>2.5、すなわち、熱可塑性樹脂粒子の各粒子の最大長さの平均値(r)が、切断クリアランス(t)に対して大きすぎると、アルミニウムフィルム層が、回転刃14と固定刃16aとの間にかみ合わなくなってしまい、アルミニウムフィルム片が微粉砕されずに、残存してしまう。
【0037】
また、熱可塑性樹脂粒子の各粒子の最大長さの平均値(r)としては、具体的には、好ましくは4〜5mm程度である。
【0038】
なお、本実施形態において、熱可塑性樹脂粒子の“最大長さ”とは、たとえば、熱可塑性樹脂粒子が、フレーク状(薄片状、断片状、層状)の場合には、その粒子の略中心を通る長さのうち、最大の長さを意味する。また、熱可塑性樹脂粒子が、略球形である場合には、その粒子の粒子径を意味する。
【0039】
このような熱可塑性樹脂粒子を構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、種々の熱可塑性樹脂を適宜選択して使用することができる。このような熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド類、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体等のポリスチレン類が使用可能である。本発明においては、焼却時におけるダイオキシンの発生を防ぐという観点より、ポリプロピレンまたはポリエチレンを主成分とするものが好適に用いられる。
【0040】
あるいは、熱可塑性樹脂として、上記にて例示した各樹脂の代わりに、各種生分解性樹脂を使用しても良い。このような生分解性樹脂を使用することにより、さらなる環境負荷の低減を図ることが可能となる。なお、生分解性樹脂としては、特に限定されないが、酢酸セルロース(CA)、カプロラクトン―ブチレンサクシレート(CL−BS)、ポリブチレンアジペート・テレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート変性(PBSA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネートカーボネート変性(PEC)、ポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリビニルアルコール(PVA)、でん粉系樹脂(Starch)などが挙げられる。
【0041】
また、本実施形態においては、粉砕・混合工程により得られる紙−アルミ−樹脂混合物における紙成分の含有比率を、前記紙−アルミ−樹脂混合物全体100重量%に対して、好ましくは、30〜70重量%の範囲、より好ましくは50〜70重量%の範囲、さらに好ましくは51〜56重量%の範囲となるように、アルミ含有紙容器の粗粉砕物および熱可塑性樹脂粒子を添加する。
【0042】
紙−アルミ−樹脂混合物中における紙成分の含有比率を、上記範囲とし、紙成分の含有率を比較的に高くすることにより、得られる紙−アルミ−樹脂混合物ペレットや成形品を焼却する際における燃焼エネルギーを低減することができ、結果として、環境負荷の軽減が可能となる。しかも、紙−アルミ−樹脂混合物中における紙成分の含有比率を、51重量%以上とすることにより、容器リサイクル法における紙に分類されることとなるため、紙として廃却が可能となる。
【0043】
また、上記粉砕・混合を行う際には、必要に応じて、各種射出樹脂用の相溶化剤を使用しても良い。このような相溶化剤 としては、たとえば、分子内の主鎖中または側鎖に極性基を導入した変性オレフィン系重合体とビニル系重合体のグラフト共重合体を挙げることができる。このような極性基としては、たとえば、酸ハイドライド、カルボキシル基、酸無水物、酸アミド、カルボン酸エステル、酸アジド、スルフォン基、ニトリル基、イソシアン酸エステル、アミノ基、イミド基、水酸基、エポキシ基、オキサゾリン基、チオール基などが挙げられる。
【0044】
また、粉砕・混合により得られる紙−アルミ−樹脂混合物としては、粒子径が、好ましくは30〜500μm程度、より好ましくは30〜100μm程度に微細に粉砕する。本発明においては、アルミ含有紙容器に含まれるアルミニウムフィルム層を良好に粉砕することができるため、紙−アルミ−樹脂混合物を上記のように微細化することができる。
【0045】
次いで、得られた紙−アルミ−樹脂混合物を、ペレット化し、紙−アルミ−樹脂混合物ペレットを得る。紙−アルミ−樹脂混合物ペレットを得る方法としては、特に限定されないが、たとえば、ペレタイザーを使用する方法などが挙げられる。本発明においては、紙−アルミ−樹脂混合物ペレットとしては、直径2〜3mm程度、高さ4〜6mm程度の円柱状とする。なお、本発明の紙−アルミ−樹脂混合物を、ペレット化する際には、100℃以上に加熱してもよい。
【0046】
次いで、紙−アルミ−樹脂混合物ペレットを使用して、たとえば、射出成形により、所望の形状に成形し、成形品(再利用品)を得る。成形品としては、特に限定されないが、たとえば、牛乳箱、コンテナ、鉢、パレット、ダストボックス、自動販売機の部品、文房具、団扇のグリップなどの様々な成形品を得ることができる。このような本発明の紙−アルミ−樹脂混合物ペレットを使用して得られる成形品は、比較的に多くの紙成分を含有しているため、焼却時の燃焼エネルギーを低減でき、環境への負荷の軽減が可能となる。特に、紙成分の含有量を、好ましくは51重量%以上とすることにより、紙として廃却することが可能となるというメリットも有する。
【0047】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、粉砕装置として、図1および図2に示す粉砕装置1を使用したが、固定刃と回転刃とを有し、しかも、所定の切断クリアランスを有するものであれば何でも良い。
また、上述した実施形態では、使用済みの飲料用の容器から、紙−アルミ−樹脂混合物および紙−アルミ−樹脂混合物ペレットを製造する方法について、説明したが、本発明の製造方法は、使用済みの食料用の容器にも適用することができるのは、もちろんである。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0049】
実施例1
まず、使用済みのアルミ含有飲料用紙パック及びアルミ含有食品用紙パック(アルミ含有紙容器)を、洗浄、粗粉砕、および養生撹拌による水分の除去を行うことにより、アルミ含有紙容器の粗粉砕物(フレコン)を得た。本実施例においては、アルミ含有紙容器の粗粉砕物中の紙成分の含有量は、51重量%である。
【0050】
そして、上記にて得られたアルミ含有紙容器の粗粉砕物と、ポリプロピレン粒子(熱可塑性樹脂粒子)とを、図1および図2に示す粉砕装置1を使用して、粉砕・混合し、平均粒子径が100μmである紙−アルミ−樹脂混合物を得た。本実施例においては、紙−アルミ−樹脂混合物中の紙成分の含有量が51重量%、合計の重量が150kgとなるように、所定量のアルミ含有紙容器の粗粉砕物と、所定量のポリプロピレン粒子(熱可塑性樹脂粒子)とを、それぞれ使用した。また、粉砕・混合時の粉砕装置1の回転数は、3,250rpmとし、粉砕装置1の回転刃14と、固定刃16aと、の間の最小距離である切断クリアランス(t)は、t=3mmとし、ポリプロピレン粒子としては、各粒子の最大長さの平均値(r)が、r=4mmの粒状のポリプロピレンレジンを使用した。すなわち、本実施例では、r/t=1.33とした。
【0051】
そして、得られた紙−アルミ−樹脂混合物を、顕微鏡を使用して確認したところ、アルミ含有紙容器に含まれていたアルミニウムフィルムが、微粉砕されており、射出に適した紙−アルミ−樹脂混合物となっていることが確認できた。
【0052】
次いで、上記にて得られた紙−アルミ−樹脂混合物をペレット化し、直径3mm、高さ5mmの紙−アルミ−樹脂混合物ペレットを得た。次いで、この紙−アルミ−樹脂混合物ペレットを使用し、射出成形により、板の形状の成形品を製造したところ、意匠性および成形性に優れた良好な成形品を得ることができた。
なお、実施例1では、熱可塑性樹脂粒子としてポリプロピレン粒子を使用した例を示したが、熱可塑性樹脂粒子としてポリエチレン粒子を使用した場合にも同様の結果を得ることができた。
【0053】
比較例1
粉砕装置1の切断クリアランス(t)を、1μmとした以外は、実施例1と同様にして、紙−アルミ−樹脂混合物、紙−アルミ−樹脂混合物ペレット、および成形品を製造した。すなわち、比較例1においては、r/t=4とした。
【0054】
その結果、比較例1においては、紙−アルミ−樹脂混合物中に、一辺の長さが、200〜500μm程度の大きさのアルミニウム片が散見された。すなわち、アルミ含有紙容器中のアルミニウムフィルム層の粉砕が不十分となり、射出に適した紙−アルミ−樹脂混合物を得ることができなかった。
【0055】
このように、比較例1のように、切断クリアランス(t)を、1μmと小さくし、ポリプロピレン粒子の最大長さの平均値(r)に対する、切断クリアランス(t)の大きさを小さくした場合においては、アルミニウムフィルム層の粉砕が不十分となった。一方で、本発明の実施例1においては、6μm〜8μm厚という非常に薄いアルミニウムフィルム層と、各粒子の最大長さの平均値(r)が4mmであるポリプロピレン樹脂とが、回転刃と固定刃との間に、良好にかみ合い、均一な微粉砕が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る粉砕装置の断面図である。
【図2】図2(A)は図1のIIA−IIA線に沿う要部断面図、図2(B)は図2(A)のIIB部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1… 粉砕装置
2… ケーシング
4… 回転軸
6,8… 軸受け
10… プーリ
12… ローター
14… 回転刃
16… 外箱
16a… 固定刃
18… 投入口
20… 取出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも紙製基材およびアルミニウムフィルム層を有する紙含有積層材と、熱可塑性樹脂粒子とを、互いに相対する固定刃および回転刃を有する粉砕装置を用いて、粉砕・混合し、紙−アルミ−樹脂混合物を製造する方法であって、
粉砕前の前記熱可塑性樹脂粒子として、前記固定刃と回転刃との間の最小距離である切断クリアランス(t)に対して、各粒子の最大長さの平均値(r)が、1<r/t≦2.5の範囲にある熱可塑性樹脂粒子を使用することを特徴とする紙−アルミ−樹脂混合物の製造方法。
【請求項2】
前記紙−アルミ−樹脂混合物中における紙成分の含有比率が、前記紙−アルミ−樹脂混合物全体100重量%に対して、30〜70重量%の範囲である請求項1に記載の紙−アルミ−樹脂混合物の製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂粒子が、ポリプロピレンまたはポリエチレンを主成分とする熱可塑性樹脂からなる請求項1または2に記載の紙−アルミ−樹脂混合物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法により得られる紙−アルミ−樹脂混合物を、ペレット化することにより得られる紙−アルミ−樹脂混合物ペレット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−347031(P2006−347031A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176832(P2005−176832)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(596174802)東亜化学工業株式会社 (2)
【出願人】(000006138)明治乳業株式会社 (265)
【出願人】(399104822)株式会社ジャパンビバレッジ (7)
【Fターム(参考)】