説明

アレルギー症状予防/治療用経口組成物

【課題】イソフラボンを単独で摂取するよりも効果の高いアレルギー症状予防/治療用経口組成物の提供。
【解決手段】大豆原料からの抽出物であり、精製によって該抽出物の乾燥重量あたりイソフラボンを2〜70重量%及び大豆サポニンを2〜80重量%含有するアレルギー症状予防/治療用経口組成物。
【効果】強いIgE産生抑制効果を有するため、花粉症や皮膚炎といったIgEが関与する種々のアレルギー性病態の治療・予防に効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー症状予防/治療用経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、花粉症をはじめとするアレルギー疾患の増加が社会的問題となっている。さらに喘息やアトピー性皮膚炎といったアレルギー疾患においてもロイコトリエンなどのケミカルメディエーターが反応に大きな役割を果たしていることが知られている。アレルギー反応は免疫グロブリン(IgE)抗体が肥満細胞の細胞膜表面上の高親和性IgEレセプターに結合することが原因となる。IgEが結合したマスト細胞はケミカルメディエーターを放出し様々なアレルギー疾患を発症させる。
【0003】
アレルギー疾患に関してはその予防や治療を目的として様々な植物由来成分の効果の研究が進んでいる。この中で、フラボノイドの一種であり、大豆やアカツメクサ等の豆科植物に含まれるダイゼインやゲニステインなどのイソフラボン類については、その摂取がアレルギー症状に及ぼす影響に関するいくつかの研究が報告されている(非特許文献1〜3、特許文献1〜4)。
【0004】
上記の文献はいずれもイソフラボン単一の成分がアレルギー症状を緩和しうる可能性を示したものであるが、イソフラボン単独での抗アレルギー効果は充分なものとは言えず、より強力に抗アレルギー効果を示すことが好ましい。
【0005】
(参考文献)
【非特許文献1】WONG W. S. Fred et al., "Effects of Tyrosine Kinase Inhibitors on Antigen Challenge of Guinea Pig Lung In Vitro", THE JOURNAL OF PHARMACOLOGY AND EXPERIMENTAL THERAPEUTICS, Vol.283, No.1, 131-137, 1997.
【非特許文献2】PARK Kwanha et al., "Anti-asthmatic compound with leukotriene D4 antagonism isolated from Pueraria radix", J. Korean Soc. Agric. Chem. Biotechnol., Vol.44, No.1, 38-39, 2001.
【非特許文献3】ATLURU Durgaprasadarao et al., "Genistein, a Selective Protein Tyrosine Kinase Inhibitor, Inhibits Interleukin-2 and Leukotriene B4 Production from Human Mononuclear Cells", Clinical Immunology and Immunopathology, Vol.59, No.3, 379-387, 1991.
【特許文献1】特表2002−530346号公報(国際公開WO00/30664号公報)
【特許文献2】特開2003−2811号公報
【特許文献3】国際公開WO03/097037号公報
【特許文献4】特開2004−26733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、イソフラボンを単独で摂取するよりも効果の高いアレルギー症状予防/治療用経口組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、イソフラボンと大豆サポニンを含む混合物をスギ花粉感作マウスに経口投与したところ、イソフラボン単独を投与した場合よりも血中IgE濃度を強く抑制することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、前記課題を解決する本発明は、
1.イソフラボン及び大豆サポニンが添加されてなることを特徴とするアレルギー症状予防/治療用経口組成物、
2.前記経口組成物中に添加されるイソフラボン及び大豆サポニンが、大豆原料からの抽出物として添加される前記1.記載のアレルギー症状の予防/治療用経口組成物、
3.前記経口組成物中に添加される抽出物が、精製によりイソフラボン又は大豆サポニンの含量が濃縮されたものである、前記2.記載のアレルギー症状の予防/治療用経口組成物、
4.前記経口組成物中に添加される抽出物が、乾燥重量あたり、イソフラボンを2〜70重量%、大豆サポニンを2〜80重量%含むものである、前記3.記載のアレルギー症状の予防/治療用経口組成物、
5.前記経口組成物中に添加される抽出物が、イソフラボンと大豆サポニンの総量に対して、マロニルイソフラボン配糖体が15〜95重量%、マロニルイソフラボン配糖体以外のイソフラボンが0〜50重量%、及び大豆サポニンが5〜60重量%含まれるものである、前記4.記載のアレルギー症状の予防/治療用経口組成物、
6.前記経口組成物中に添加される大豆サポニン中のグループAサポニンの比率が30%以上である前記1.記載のアレルギー症状の予防/治療用経口組成物、
7.経口組成物が食品、薬剤または飼料である前記1.記載のアレルギー症状の予防/治療用経口組成物、
8.アレルギー症状の予防/治療用経口組成物の製造のためのイソフラボン及び大豆サポニン含有抽出物の使用、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の提供する経口組成物は、強いIgE産生抑制効果を有するため、花粉症や皮膚炎といったIgEが関与する種々のアレルギー性病態の治療・予防に役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明が開示するアレルギー症状予防/治療用経口組成物は、イソフラボン及び大豆サポニンが添加されてなることを特徴とする。また、本発明は、アレルギー症状の予防/治療用経口組成物の製造のためのイソフラボン及び大豆サポニン含有抽出物の使用方法を開示するものである。以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明の経口組成物に添加されるイソフラボンは大豆や葛、アカツメクサ、クローバー等の豆類中に存在する3−フェニルクロモン骨格を有する化合物群をいい、具体的にはアグリコン体であるダイゼイン、ゲニステイン及びグリシテインを基本構造として、それらの遊離の配糖体であるダイジン、ゲニスチン及びグリシチン;それらのマロニル配糖体である6″-O-マロニルダイジン、6″-O-マロニルゲニスチン及び6″-O-マロニルグリシチン;それらのアセチルイソフラボン配糖体である6″-O-アセチルダイジン、6″-O-アセチルゲニスチン、及び6″-O-アセチルグリシチン、並びにそれらの代謝産物であるエクオールや、その他クローバー類などに含まれるビオカニンA、フォルモノネチン、クメストロール等が含まれる。
【0012】
本発明の経口組成物に添加される大豆サポニンは、大豆原料中に含まれるサポニン類の総称であり、例えば大豆胚軸中には2〜4重量%程度含有している。「ソヤサポゲノールA」をアグリコン骨格とし、アグリコンのC−3位とC−22位に糖鎖がエーテル結合したビスデスモシドサポニンであるグループAサポニン、「ソヤサポゲノールB」をアグリコン骨格とし、アグリコンのC−3位に糖鎖がエーテル結合したモノデスモシドサポニンであるグループBサポニンなどに分類されている。また、糖鎖の部分がアセチル化されたサポニンも報告されている。
【0013】
本発明の経口組成物に添加されるイソフラボン及び大豆サポニンは、大豆原料からの抽出物として添加されることが好ましい。大豆原料としては、例えば丸大豆、脱皮大豆、脱皮脱胚軸大豆、脱脂大豆、大豆胚軸、濃縮大豆たん白、オカラ等が挙げられる。大豆からの抽出物には分離大豆たん白の製造時に複製する大豆ホエー、濃縮大豆たん白の製造時に複製する酸洗浄液やアルコール洗浄液、豆腐や豆乳などの製造時に複製する大豆の水浸漬液なども含まれる。いずれの抽出物を選択するかについて特に限定されることはないが、イソフラボン含有率が高く、かつ大豆サポニン中のグループAサポニンの比率が高い大豆胚軸を使用することが好ましい。
【0014】
イソフラボン及び大豆サポニンの抽出に使用される溶媒は特に限定されず、公知の方法で抽出すれば良く、好ましくは水性溶媒、より好ましくは水又はメタノール、エタノールもしくはプロパノール等のアルコール類を単独又は混合して用いることができる。例えば、大豆胚軸を原料として、水性溶媒などで抽出することにより、イソフラボン及び大豆サポニンを共に含む抽出液を風味よく、安価に得ることが可能である。抽出液は食品に適した状態にして、そのまま、あるいは濃縮により濃縮液とし、あるいは噴霧乾燥により乾燥粉末として加工し、抽出物を得ることができる。
【0015】
前記のイソフラボン及び大豆サポニン含有抽出物は、さらに精製によりイソフラボン又は大豆サポニンの含量が濃縮されたものであっても良い。イソフラボンの純度は乾燥重量あたり、2〜70重量%であることができ、さらに4〜60重量%、さらに4〜55重量%であることができる。大豆サポニンの純度は乾燥重量あたり、2〜80重量%であることができ、さらに5〜70重量%であることができる。
【0016】
精製は、カラムクロマトグラフィー等の樹脂処理や有機溶媒等による液液分配法等により行うことができる。特に抽出物を合成吸着剤に吸着させ、適当な濃度の含水アルコールでイソフラボンと大豆サポニンを溶出させる方法は、簡易な方法でイソフラボンと大豆サポニンをより高純度に精製できる。
使用可能な合成吸着剤としては、例えばダイヤイオン(三菱化学製)やセパビーズ(三菱化学製)、アンバーライト(住友化学製)等のスチレンジビニルベンゼン系などの非極性合成吸着剤を用いることができる。これを製造用タンクに投入するか、又はカラムに充填して抽出液を接触させ、イソフラボン又は大豆サポニンを吸着させることができる。
非吸着成分を洗浄除去した後、吸着した画分を例えば20〜80容量%含水エタノールで溶出するなどして、高純度のイソフラボン及び大豆サポニン含有組成物を効率良く得ることができる。
【0017】
本発明の経口組成物を液状の形態で提供する場合、添加されるイソフラボン及び大豆サポニン含有抽出物は水可溶性の性質を有することが好ましい。この場合、該抽出物を水可溶性にするための公知の技術を用いることができる。例えばサイクロデキストリンや乳化剤などの添加剤による方法を用いることができるが、特に国際公開WO2004/57983号公報に記載の精製方法によって、イソフラボン及び大豆サポニン含有抽出物中のイソフラボンとサポニンを特定の組成にすることが好ましい。すなわち、イソフラボン類がマロニルイソフラボン配糖体を主成分とするものであることが好ましい。より詳細には、前記抽出物中におけるイソフラボンと大豆サポニンの総量に対して、マロニルイソフラボン配糖体が15〜95重量%、マロニルイソフラボン配糖体以外のイソフラボン(イソフラボンアグリコン、遊離のイソフラボン配糖体、及びアセチルイソフラボン配糖体の総量)が0〜50重量%、及び大豆サポニンが5〜60重量%含まれるようにするとよい。
このように、イソフラボンの主成分がマロニルイソフラボン配糖体である抽出物を得る方法としては、イソフラボン及び大豆サポニンを合成吸着剤から溶出させる際の含水アルコール濃度を比較的低濃度に設定して極性を上げた溶媒で溶出する方法が好ましい。すなわち、国際公開WO2004/57983号公報に記載の通り、アルコール濃度が約15〜40重量%の含水アルコールで溶出する方法が好ましい。
【0018】
以上のイソフラボン及び大豆サポニン含有抽出物は、含まれる大豆サポニンがグループAサポニンを主成分とするものであることが好ましい。すなわち、グループAサポニンの比率が30重量%以上であるのが好ましく、50重量%以上であるのがさらに好ましい。かかる組成の抽出物に調製するためには、抽出原料である大豆類として大豆胚軸を選択すればよい。
【0019】
本発明のイソフラボン及び大豆サポニンが添加されてなる経口組成物を摂取することにより、血液中のIgE濃度を高度に低下させることができ、しかもイソフラボンを単独で含有する経口組成物よりも高いIgE濃度の低下効果を示す。したがって予防治療が可能な疾患としては花粉症、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患、喘息、さらにはかゆみ、腫れといったアレルギー症状全般について高い改善効果が期待される。
【0020】
本発明の経口組成物中におけるイソフラボン及び大豆サポニンの含有量は、経口組成物の形態・量によっても異なり、適宜設定することができる。通常、イソフラボン及び大豆サポニンが1日あたりの有効量を摂取できるように、経口組成物中の含有量を当業者が設定することができる。例えば、1日あたりのイソフラボン又は大豆サポニンの摂取量を50mgと設定した場合、1日あたりの経口組成物の摂取量が10gである場合は、経口組成物中の含有量をそれぞれ0.5重量%とすれば良い。
【0021】
本発明の経口組成物は、例えば薬剤、食品、飼料などとして提供される。
本発明の経口組成物が薬剤として提供される場合は、種々の投与形態の製剤とすることができる。すなわち、経口的投与の場合に、錠剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、粒剤もしくは丸剤等の固形製剤や、溶液、エマルジョンもしくはサスペンジョンなどの液剤の形態等で投与することができる。また、非経口的投与の場合に、注射溶液や坐剤などの形態で投与されるが簡易性の点から経口投与が望ましい。これらの製剤の調製にあたっては製剤化のために許容される添加剤、例えば賦形剤、安定剤、防腐剤、潤滑剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料、着色料、香料、張度調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、pH調整剤等を併用して製剤化することが出来る。
【0022】
本発明の経口組成物が食品として提供される場合は、一般的な食品の形態であるクリーム、マーガリン、清涼飲料、乳製品、豆乳、発酵豆乳、大豆蛋白飲料、豆腐、納豆、油揚げ、厚揚げ、がんもどき、ハンバーグ、ミートボール、唐揚げ、ナゲット、各種総菜、焼き菓子、シリアル、飴、ガム等の菓子類、タブレット、パン類、米飯類など、様々な食品に配合することができる。さらに、食品中における有効成分であるイソフラボン及び大豆サポニンの含量は容易に測定できるため、これらを有効成分(関与する成分)として食品の包装や商用パンフレット等に本発明の効果を有する旨を記載した、健康用途の食品(特定保健用食品等)にすることができる。
【0023】
そして、本発明の経口組成物が飼料として提供されることも可能である。飼料の種類は特に限定されないが近年では犬、猫といったペットの花粉症も深刻化しており、ペットフードのような飼料に含有せしめることも可能である。飼料においてもIgE濃度を低下させることにより、予防治療可能な疾病に対して有効である。
【0024】
本発明の経口組成物にはアレルギー症状の緩和に有効であるとされているエピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキン等のポリフェノール類や、ケンフェロール、ケルセチン、ミリセチン、ルテオリン等のフラボノイド類などの公知の抗アレルギー成分を添加し、さらに強い相乗効果を得ることができる。
【0025】
得られたアレルギー症状予防/治療用経口組成物の有効摂取量は使用目的・使用対象・形態により異なるが、ヒトの場合、通常は1日あたりイソフラボン及び大豆サポニンがいずれも10〜100mg程度を摂取できるように1回あるいは数回に分けて調整すればよい。医薬品の多くが適正量以上の摂取は安全性に問題を生じる可能性があるのに対し、本発明の有効成分は天然の植物由来の含有物を使用できることから、安全性の観点からは摂取量の上限はほとんど問題にはされない。
【0026】
以下に実施例を示すが、本発明がこれらによってその技術的範囲が限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
(分析方法)
本発明に用いた主な分析方法は以下の通りである。
イソフラボンの分析: イソフラボンとして1〜10mgに対応する試料を正確に秤量し、これに70%(v/v)エタノールを25mL加えた。30分間室温で撹拌抽出した後、遠心分離して抽出液を得た。残渣は同様の抽出操作を更に2回行った。計3回分の抽出液を70%(v/v)エタノールで100mLに定容し、0.45μmPVDFフィルターにて濾過したものを試験溶液とした。イソフラボンの確認試験は標準品12種類、すなわちダイジン、ゲニスチン、グリシチン、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、マロニルダイジン、マロニルゲニスチン、マロニルグリシチン、アセチルダイジン、アセチルゲニスチン、アセチルグリシチン(和光純薬工業株式会社)を用い、ほぼ同じリテンションタイムのピークを確認した。定量試験はダイジン標準品を用いて12種類のイソフラボン濃度(ダイジン換算値)を定量し、下記の定量係数を乗じることにより真のイソフラボン濃度を算出した。イソフラボンの定量係数:ダイジン(1.000)、ゲニスチン(0.814)、グリシチン(1.090)、マロニルダイジン(1.444)、マロニルゲニスチン(1.095)、マロニルグリシチン(1.351)、アセチルダイジン(1.094)、アセチルゲニスチン(1.064)、アセチルグリシチン(1.197)、ダイゼイン(0.583)、ゲニステイン(0.528)、グリシテイン(0.740)そして各種イソフラボン濃度の総和からイソフラボン量を求めた。なお、試験溶液及び標準溶液のHPLC条件は表1のように行った。
【0028】
(表1) HPLC条件

【0029】
サポニンの定量法:大豆抽出物にメタノールを加え、還流抽出を行った。得られた抽出液を乾固し塩酸メタノールにて加水分解を行った。さらに酢酸エチルにて分配後、ビスとりメチルシリルトリフルオロアセドアミドにて誘導体化した。これをガスクロマトグラフィーに供し、内部標準(カプリン酸コレステロール)から定量を行った。定量はアグリコンであるソヤサポゲノールAおよびソヤサポゲノールBの検量線からグループAサポニン含量、グループBサポニン含量を測定し、合計したものを総サポニン含量とした。
【0030】
(製造例1) ―イソフラボン及び大豆サポニン抽出物の製造―
大豆生胚軸500gに75容量%の含水エタノール2.0Lを加え、攪拌抽出を行った。抽出液をろ過により分離した後、該抽出液を減圧下、50℃にて濃縮を行った。
このようにして得られた抽出物を水に溶解し、吸着樹脂ダイアイオンHP-20(三菱化学(株)製)を充填したカラム(100mL)にSV2にて負荷した。
次に、30容量%の含水エタノールで溶出させた。この画分を減圧下で濃縮し、乾燥粉末化してイソフラボン及び大豆サポニン含有抽出物を得た。得られた抽出物中の湿重量あたりのイソフラボン含量は50%、大豆サポニン含量は10%であった。そして、イソフラボンと大豆サポニンの総量に対して、マロニルイソフラボン配糖体が55重量%、マロニルイソフラボン配糖体以外のイソフラボン(イソフラボンアグリコン、遊離のイソフラボン配糖体、アセチルイソフラボン配糖体の総量)が29重量%、及び大豆サポニンが16重量%であった。大豆サポニン中のグループAサポニンの比率は70%であった。
【0031】
(実施例1)
モデル動物は4週齢の雌性BALB/Cマウスを18匹を使用した。1週間の予備飼育後、群間の平均体重がほぼ同等になるように対照群(6匹)と試験群(6匹)および比較群(6匹)に群分けを行った。10日間スギ花粉エキスを経鼻投与し、スギ花粉感作マウスを作製した。スギ花粉を投与する7日前から対照群は0.5%カルボキシメチルセルロース(以下CMC)、試験群は製造例1にて作製したイソフラボン及び大豆サポニン含有抽出物、比較群は市販の高純度イソフラボン含有抽出物をCMCに懸濁して用い、試験群および対照群はイソフラボン100mg/kg/体重となるように1ヶ月間連続経口投与を行った。
【0032】
(表2)投与サンプル

【0033】
投与終了後に眼窩静脈叢から全採血を行った。常法に従って血清を調製し血液中のIgE量をELISA法にて測定した結果を図1に示した。
図1の通り、従来の文献からの予想に反し、マロニルイソフラボン配糖体以外のイソフラボン配糖体しか含まれない比較群ではIgE量の低下が認められなかった。そして意外にも試験群のマロニルイソフラボン配糖体と大豆サポニンが多く含まれるイソフラボン及び大豆サポニン含有抽出物を添加した試験群では血中IgE量の低下が認められた。以上の結果より上記イソフラボン及び大豆サポニン含有抽出物が添加された経口組成物を摂取することにより、強いIgE産生抑制効果が得られることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】イソフラボン及び大豆サポニンが添加されてなる経口組成物が血中IgE濃度に及ぼす影響を比較したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソフラボン及び大豆サポニンが添加されてなることを特徴とするアレルギー症状予防/治療用経口組成物。
【請求項2】
前記経口組成物中に添加されるイソフラボン及び大豆サポニンが、大豆原料からの抽出物として添加される請求項1記載のアレルギー症状の予防/治療用経口組成物。
【請求項3】
前記経口組成物中に添加される抽出物が、精製によりイソフラボン又は大豆サポニンの含量が濃縮されたものである、請求項2記載のアレルギー症状の予防/治療用経口組成物。
【請求項4】
前記経口組成物中に添加される抽出物が、乾燥重量あたり、イソフラボンを2〜70重量%、大豆サポニンを2〜80重量%含むものである、請求項3記載のアレルギー症状の予防/治療用経口組成物。
【請求項5】
前記経口組成物中に添加される抽出物が、イソフラボンと大豆サポニンの総量に対して、マロニルイソフラボン配糖体が15〜95重量%、マロニルイソフラボン配糖体以外のイソフラボンが0〜50重量%、及び大豆サポニンが5〜60重量%含まれるものである、請求項4記載のアレルギー症状の予防/治療用経口組成物。
【請求項6】
前記経口組成物中に添加される大豆サポニン中のグループAサポニンの比率が30%以上である請求項1記載のアレルギー症状の予防/治療用経口組成物。
【請求項7】
経口組成物が食品、薬剤または飼料である請求項1記載のアレルギー症状の予防/治療用経口組成物。
【請求項8】
アレルギー症状の予防/治療用経口組成物の製造のためのイソフラボン及び大豆サポニン含有抽出物の使用。

【図1】
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【公開番号】特開2007−197398(P2007−197398A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20372(P2006−20372)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】