説明

アンテナ、物品管理システム

【課題】 アンテナから放射される電波が届かないエリアを小さくすることが求められている。
【解決手段】 実施形態のアンテナは、RFタグに問い合わせ用の電波を放射するとともに、前記RFタグから放射される応答用の電波を受信する。前記アンテナは、2つの放射素子と、給電部とを備える。前記2つの放射素子は、各々電波の放射面を有して前記放射面が同一平面上に位置する。前記給電部は、各放射素子から放射される電波の合成波が前記放射面と同一平面に対して垂直方向に延びるように前記2つの放射素子の各々へ給電する。前記放射面と同一平面に沿う前記2つの放射素子の各々の前記RFタグの最大読取距離をdとしたとき、前記2つの放射素子の中心間距離をD1とすると、D1≦(2×d)となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アンテナと、このアンテナを用いる物品管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品を管理するために、RFID(Radio Frequency Identification)システムが用いられている。この種のRFIDシステムは、物品に取り付けられるとともにアンテナを内部に備えるRFタグと、質問器と、質問器に接続される上位機器と、質問器に接続される複数のアンテナとを備えている。
【0003】
このRFIDシステムにおいて、質問器は、アンテナを切り替えるとともに、アンテナを介してRFタグ問合せ用の信号を電波として放射する。RFタグは、内蔵アンテナで質問器からの電波を受信すると、応答用の信号である物品の情報を電波として放射する。
【0004】
質問器は、応答用の信号がアンテナに受信されると、物品の情報に、この情報を受信したアンテナの識別情報を付加して、上位機器に送信する。
【0005】
このように質問器とRFタグとが互いにアンテナを介してデータの交信を行うことにより、物品が管理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−266118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種の物品管理システムでは、アンテナから放射される電波が物品管理エリアのみに万遍なく届くことと、アンテナの近傍において確実にRFタグを読み取ることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のアンテナは、RFタグに問い合わせ用の電波を放射するとともに、前記RFタグから放射される応答用の電波を受信する。前記アンテナは、2つの放射素子と、給電部とを備える。前記2つの放射素子は、各々電波の放射面を有して前記放射面が同一平面上に位置する。前記給電部は、各放射素子から放射される電波の合成波が前記放射面と同一平面に対して垂直方向に延びるように前記2つの放射素子の各々へ給電する。前記放射面と同一平面に沿う前記2つの放射素子の各々の前記RFタグの最大読取距離をdとしたとき、前記2つの放射素子の中心間距離をD1とすると、D1≦(2×d)となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る物品管理システムを示す模式図。
【図2】図1に示された保管用棚の一部を示す斜視図。
【図3】図1に示されたアンテナを示す斜視図。
【図4】図3に示されたアンテナの平面図。
【図5】図3に示す放射素子を1つ備えるアンテナを示す平面図。
【図6】図3に示すアンテナの正面方向に放射される電波の電力の分布を示す図。
【図7】第2の実施形態に係る物品管理システムの保管用棚の一部を示す斜視図。
【図8】図7に示されるアンテナの斜視図。
【図9】図8に示されるアンテナの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の実施形態に係る物品管理システムを、図1〜6を用いて説明する。図1は、物品管理システム10を示す模式図である。物品管理システム10は、物品5を管理するシステムであり、一例としてRFID(Radio Frequency Identification)システムが用いられている。
【0011】
図1に示すように、物品管理システム10は、管理装置20と、RFIDリーダライタ30と、管理対象となる物品5の各々に1つずつ設けられて当該物品5の情報を有する複数のRFタグ40と、物品5を保管する保管用棚50とを備えている。
【0012】
管理装置20は、パーソナルコンピュータなどの情報処理装置であり、例えばLANケーブル21でRFIDリーダライタ30に接続されている。管理装置20は、RFIDリーダライタ30が読み取った物品5の情報(RFタグ40の情報)が送信される。管理装置20は、RFIDリーダライタ30から送信される情報に基づいて、物品5の管理を行う。
【0013】
RFIDリーダライタ30は、物品5の情報を読み込み、読み込んだ情報を管理装置20に送信する。RFIDリーダライタ30は、RFIDリーダライタユニット60と、複数のアンテナ70を備えている。
【0014】
RFIDリーダライタユニット60は、各物品5の情報(RFタグ40が有する情報)を読むリーダライタ本体61(質問器)と、アンテナ切替部62とを備えている。アンテナ切替部62は、リーダライタ本体61に接続されるとともに、複数のアンテナ70の各々に例えば同軸ケーブル63で接続される。
【0015】
リーダライタ本体61は、管理装置20にLANケーブル21で接続されるとともに、アンテナ切替部62を介して各アンテナ70と接続されている。リーダライタ本体61は、RFタグ40への問い合わせ用の信号を作成し、後述される選択されたアンテナ70から当該信号を電波として発信する。また、リーダライタ本体61は、RFタグ40が発信してアンテナ70で受信される物品5の情報を、管理装置20に送信する。
【0016】
アンテナ切替部62は、リーダライタ本体61と各アンテナ70との接続を選択する。例えば、アンテナ切替部62は、一定時間ごとに、リーダライタ本体61とアンテナ70との接続を順次切り替える。このことによって、複数のアンテナ70のうち1つのアンテナ70とリーダライタ本体61との接続が選択されRFタグ40が読み取られるので、リーダライタ本体61は、1つのアンテナ70を特定できるとともに、当該アンテナ70が受信した物品5の位置情報を検出することができる。リーダライタ本体61は、このように、物品5の情報と、当該アンテナ70の情報とを組み付けて、管理装置20に送信する。
【0017】
各アンテナ70については、後で具体的に説明する。
【0018】
RFタグ40は、各物品5の1つずつに設けられており、当該RFタグ40が設けられる物品5の情報を有している。RFタグ40は、パッシブタグであり、アンテナ70から放射される電波を受信することによって起動して電波を放射する。
【0019】
図2は、保管用棚50の一部を示す斜視図である。図2に示すように、保管用棚50は、複数の段51を備えている。図2では、一部として、上下に並ぶ2段が図示されている。各段51の構造は、同じである。
【0020】
各段51は、物品5が載置される底壁部52(載置部)を有している。アンテナ70は、底壁部52の上面53に複数配置されている。なお、図2中では、アンテナ70の説明のために、物品5は省略されている。底壁部52の上面53は、奥行方向X(第1の方向)と、奥行方向Xと直交する幅方向Y(第2の方向)とに平行な平面である。底壁部52は、幅方向Yの長さが、奥行方向Xの長さよりも長い。
【0021】
底壁部52の上面53上に配置される物品5には各々にRFタグ40が設けられ、保管用棚50に収容される。本実施形態では、アンテナ70とRFタグ40との間の距離をaとする。距離aは、RFタグ40を読み取る距離である。
【0022】
上記のように構成される物品管理システム10では、アンテナ切替部62によって複数のアンテナ70が順次選択されることによって、当該選択されたアンテナ70を通して得られる物品5の情報を認識することができる。
【0023】
つぎに、アンテナ70について具体的に説明する。図1に示すように、1つのアンテナ70は、複数の物品5を管理する。なお、図1中では、1つのアンテナ70が複数の物品5を管理する一例として、1つのアンテナ70が2つの物品5を管理している状態を示している。しかしながら、これは、一例であって、1つのアンテナ70が2つの物品5のみを管理することに限定されない。1つのアンテナ70は、後述される読取可能範囲H2内にある複数の物品5を管理することができる。図3は、アンテナ70を示す斜視図である。図3に示すように、接地導体71と、誘電体基板72と、一対の放射素子73と、給電部74とを備えている。
【0024】
図4は、アンテナ70を上方から見た平面図である。図3,4に示すように、接地導体71は、厚みが一定であって平面形状が長方形である。誘電体基板72は、接地導体71に重ねられている。接地導体71において誘電体基板72が重ねられる面およびこの面の反対側の面は、互いに平行な平面である。誘電体基板72は、厚みが一定であって、平面形状が接地導体71と同じである。誘電体基板72の周縁は、接地導体71の周縁に重ねられている。誘電体基板72において接地導体71に重ねられる面およびこの面の反対側の面とは、互いに平行な平面である。
【0025】
各放射素子73は、互いに同じ形状である。放射素子73は、厚みが一定である平板であって、一例として平面形状が正方形である。各放射素子73は、誘電体基板72上に重ねられている。各放射素子73は、互いの中心Pが並ぶ方向が誘電体基板72の長手方向Aに平行になるように配置されている。さらに、各放射素子73の周縁を規定する4辺の各々は、誘電体基板72の4辺のうち対向する辺に平行になるように配置されている。本実施形態では、アンテナ70は、放射素子73が1行2列に配置される構造である。
【0026】
誘電体基板72の上面72aは、アンテナ70において放射素子73が設けられる面である。各放射素子73の上面73aは、電波を放射する放射面である。各放射素子73の上面73aは、同一仮想平面内に含まれており(同一平面上に位置しており)、互いに平行である。つまり、上面73aは、同一平面上に位置している。誘電体基板72の上面72aと、各放射素子73の上面73aとは、互いに平行である。
【0027】
誘電体基板72には、給電点75が設けられている。給電点75は、アンテナ切替部62と電気的に接続された同軸ケーブル63により給電される。給電部74は、給電点75と各放射素子73とを電気的に接続して、各放射素子73の上面73aから放射される電波の合成波が上面73aと同一平面に対して垂直に延びるように、各放射素子73に給電する。つまり、給電部74は、各放射素子73に等電力を供給するとともに、各放射素子73での電界の励振方向を同じにする機能を有する。本実施形態では、給電部74は、各放射素子73に、同相の等電力を、各放射素子73に、励振方向Eが同じになるように同一方向にそって給電している。
【0028】
給電部74は、一例として、給電線80と、給電点75に給電される電力を2分岐して下流に流す分配器81とを備えている。給電線80は、誘電体基板72の上面72aに設けられている。給電線80は、上流部82と、一対の下流部83とを備えている。
【0029】
上流部82は、給電点75と分配器81に電気的に接続されている。一方の下流部83は、分配器81と一方の放射素子73とに電気的に接続されている。他方の下流部83は、分配器81と他方の放射素子73とに電気的に接続されている。分配器81は、各下流部83に同相の等電力を供給する。分配器81は、一例として、ウィルキンソン分配器である。
【0030】
各下流部83は、各放射素子73に同じ方向から接続されるとともに、長さが等しい。このため、各放射素子73では、電界の励振方向Eが同じ方向となる。
【0031】
なお、上記では、各放射素子への給電方向を同じとしたが、これに限定されない。放射素子73への給電方向が互いに異なる場合は、各放射素子73の電界の励振方向Eを一致させるために、各放射素子73への給電の位相差が調整される。具体的には、給電線80の長さを調整するなどする。
【0032】
つぎに、各放射素子73の上面73aと同一平面上での中心P間の距離D1について説明する。
【0033】
まず、アンテナ70を構成する放射素子73と同じ放射素子73を1つ用いたアンテナ90の、放射素子73の上面73aと同一平面内でのRFタグ40の最大読取距離をdとする。アンテナ90は、放射素子73の数が異なるが、他の構造は、アンテナ70と同様である。
【0034】
図5は、アンテナ90を示す平面図である。図5中、最大読取距離dによって規定される、上面73a(放射面)と同一平面内でのアンテナ90の読取可能範囲H1にハッチングを付している。読取可能範囲H1は、放射素子73の中心Pを中心として、最大読取距離dを半径とする円になる。読取可能範囲H1は、RFタグ40が電波を受信可能であり、かつ、RFタグ40の起動電力が確保される距離である。つまり、読取可能範囲H1を超える位置では、RFタグ40を読み取ることはできない。なお、最大読取距離dは、アンテナ70の放射素子73の各々に給電される電力と同じ電力を給電した場合の、最大読み取り距離である。
【0035】
アンテナ70において、各放射素子73の中心P間の距離D1は、D1≦(2×d)とする。好ましくは、D1=dとする。このようにすることによって、各放射素子73が放射する電波が合成されたときに、各放射素子73間に読み取りできないエリアができることがない。図4には、アンテナ70の、上面73a(放射面)と同一平面内の読取可能範囲H2にハッチングが施されて示されている。読取可能範囲H2は、アンテナ70においてRFタグ40を読み取れる範囲である。
【0036】
図4に示すように、読取可能範囲H2は、各放射素子73が並ぶ方向に直交する方向に長い楕円形状となる。また、アンテナ70において、誘電体基板72や放射素子73の形状などを含む構造は、読取可能範囲H2が誘電体基板72から長手方向Aに出ずに縁の近傍まで形成されるように考慮されている。
【0037】
図6は、アンテナ70の正面方向(放射素子73の上面73aに垂直な方向)に放射される電波の電力の分布を示している。図6では、電力の強さが等しい範囲を実線で結んでおり、範囲A1〜A8を示している。電力は、A1〜A8に向かって次第に弱くなる。図6に示すように電力は、アンテナ70から遠ざかるにしたがい、弱くなっている。また、2つの放射素子73に並列給電されているため、アンテナ70の近傍において電力が強い範囲A1が広くなっている。このように、1つのアンテナ70の読取可能範囲H2を広くすることができる。
【0038】
なお、図6は、各放射素子73の上面73aから放射される電波の合成波が、上面73aと同一平面に対して垂直方向に延びていることを示している。
【0039】
つぎに、保管用棚50の底壁部52に対するアンテナ70の姿勢、および、底壁部52に対するアンテナ70の大きさ、読取可能範囲H2の大きさについて説明する。上記したように、底壁部52は、幅方向Yにそう長さが奥行方向Xにそう長さよりも大きい。アンテナ70は、長手方向Aが奥行方向Xに沿うように配置される。アンテナ70の誘電体基板72の長手方向Aに沿う長さは、アンテナ70が底壁部52上に配置されたときに、奥行方向Xから出ないように考慮されている。
【0040】
アンテナ70は、長手方向Aの長さが、底壁部52の奥行方向Xの長さと同じである。または、略同じである。そして、アンテナ70は、長手方向Aが奥行方向Xに平行になるように配置されている。アンテナ70は、上記の姿勢で幅方向Yに複数配置されている。
【0041】
アンテナ70の構造は、読取可能範囲H2が長手方向Aに誘電体基板72から出ないように縁の近傍まで形成されるように考慮されている。
【0042】
この結果、各アンテナ70の読取可能範囲H2は、底壁部52の幅方向Yに延び、読取可能範囲H2が底壁部52の上面53から出ることがない。
【0043】
このように構成されるアンテナ70では、2個の放射素子73を備えるとともに、放射素子73の上面73aと同一平面内での中心P間の距離D1を、1つの放射素子73の最大読取距離dに基づき、D1≦(2×d)とすることによって、各放射素子73間に読み取りできない範囲が形成されることを抑制することができる。
【0044】
また、アンテナ70の読取可能範囲H2が保管用棚50の底壁部52から出ないように考慮してアンテナ70を棚に設置することによって、電波の利用効率を向上することができる。
【0045】
また、アンテナ70が複数の放射素子73を備えることによって、アンテナ70の読取可能範囲H2を広げることができるので、1つのアンテナ70で管理できる物品5の数を増やすことができる。この結果、物品5を管理するアンテナ数を少なくすることができる。
【0046】
このように、本実施形態では、アンテナ70から放射される電波が物品管理エリアのみに万遍なく届く。また、アンテナ70の近傍においても確実にRFタグ40を読み取ることができる。
【0047】
つぎに、第2の実施形態に係る物品管理システムを、図7〜9を用いて説明する。第2の実施形態において第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態は、アンテナ70の構造が第1の実施形態と異なる。物品管理システム10においてアンテナ70以外の構造は、第1の実施形態と同様である。上記異なる点について、具体的に説明する。
【0048】
図7は、本実施形態のアンテナ70が保管用棚50の底壁部52の上面53に設けられた状態を示している。図8は、本実施形態のアンテナ70を示す斜視図である。図8に示すように、誘電体基板72と接地導体71とは、第1の実施形態と同様の構造である。
【0049】
アンテナ70は、4個の放射素子73を備えている。各放射素子73の形状は、第1の実施形態と同様であって、平面形状が正方形である。また、各放射素子73は、配置について以外誘電体基板72上に第1の実施形態で説明したように設けられている。
【0050】
各放射素子73は、2行2列に並んでおり、1行目201と、2行目202と、1列目203と、2列目204とを有している。行が並ぶ方向は直線方向であり、列が並ぶ方向は直線方向であり、互いに直交する。
【0051】
各行は、各行の放射素子73の中心Pを結ぶ線が誘電体基板72の長手方向Aに平行となるように形成される。各列は、各列の放射素子73の中心Pを結ぶ線が、誘電体基板72の上面72aにおいて長手方向Aに直交する方向Bに平行である。各放射素子73は、周縁を規定する4辺が、誘電体基板72の4辺に平行になるように配置されている。各放射素子73の上面73aは、同一平面に含まれており(同一平上に位置しており)、互いに平行である。誘電体基板72の上面72aと各放射素子73の上面73aとは、平行である。
【0052】
各行において、相対的に隣り合う列に配置される放射素子73の中心P間の距離は、全て同じであって、本実施形態では一例としてmdとなる。各列において、相対的に隣り合う行に配置される放射素子73の中心P間の距離は、全て同じであって、本実施形態では一例としてndとなる。
【0053】
本実施形態では、給電部74は、分配器を2段構成として給電点75に加わる電力を4分岐して(4等分して)、各放射素子73に等電力を励振方向Eが同じになるよう供給している。具体的には、給電部74は、第1の分配器101と、各行に設けられる第2の分配器102とを備えている。第1,2の分配器101,102は、同相の等電力を下流に分配する。第1,2の分配器101,102は、一例として、ウィルキンソン分配器である。
【0054】
第1の分配器101で2分岐して、各行に分配している。各行において、第2の分配器102で分岐して、各列203,204の放射素子73に等電力を給電している。第2の分配器102は、各行において1、2列目203,204間に配置されており、それゆえ、1列目203の放射素子73への給電方向と、2列面の放射素子73への給電方向は、180度異なる。
【0055】
各放射素子73の電界の励振方向Eを同じにするために、各行において、給電線80において第1,2の分配器101,102を接続する部分105の長さを同じにしている。各行において、第2の分配器102と1列目203の放射素子73とを接続する部分106の長さを、第2の分配器102と2列目204の放射素子73とを接続する部分109の長さに対して、λg/4短くする。λgは、本物品管理システムで使用される無線通信周波数における波長λが、誘電体基板72により波長短縮された値である。
【0056】
この結果、1列目203の各放射素子73への給電位相が、2列目204の各放射素子73への給電位相に対してλg/2遅くなる。上記したように、1列目203の各放射素子73への給電方向と、2列目204の各放射素子73への給電方向は、180度異なるので、各放射素子73の電界の励振方向Eが同じとなる。
【0057】
本実施形態のアンテナ70であっても、上記給電部74によって第1の実施形態の図6に示すと同様に、各放射素子73の上面73aから放射される電波の合成波が、上面73aと同一平面に対して垂直方向に延びる。
【0058】
つぎに、相対的に対角に配置される一対の放射素子73の中心間距離D2について説明する。相対的に対角に配置される関係の一対の放射素子73の中心間距離は、全て同じD2となる。
【0059】
距離D2は、第1の実施形態で図5を用いて説明したように、アンテナ70を構成する放射素子73と同じ放射素子73を1つ用いたアンテナ90の最大読取距離dに基づいて決定される。本実施形態では、最大読取距離dは、本実施形態のアンテナ70の各放射素子73に給電される電力と同じ電力をアンテナ90の放射素子73に給電した場合の、最大読取距離である。つまり、アンテナ70の各放射素子73が放射する電波の最大読取距離と同じとなる。
【0060】
互いに対角に配置される放射素子73の中心P間の距離D2は、D2≦(2×d)とする。好ましくは、D2=dとする。同じ行において相対的に隣り合う列の放射素子73の中心P間距離mdと、同じ列において相対的に隣り合う行の放射素子73の中心P間の距離ndとは、D2よりも小さくなる。このため、各放射素子73が放射する電波の読取可能範囲が合成されたときに、各放射素子73間に読み取りできないエリアができることがない。
【0061】
図9には、本実施形態のアンテナ70の読取可能範囲H2にハッチングが施されて示されている。ここで、距離md,ndについて説明する。なお、上記したように、互いに相対的に隣り合う列に配置される関係の一対の放射素子73の中心P間の距離は、全て同じであり、mdとなる。互いに相対的に隣り合う行に配置される関係の一対の放射素子73の中心P間の距離は、全て同じであり、ndでとなる。
【0062】
上記したように、底壁部52は、幅方向Yにそう長さが奥行方向Xにそう長さよりも大きい。アンテナ70は、長手方向Aが奥行方向Xにそうように配置されている。アンテナ70は、底壁部52上に配置されたときに、長手方向Aの端部が底壁部52から出ないように考慮されている。本実施形態では、アンテナ70の長手方向の長さは、底壁部52の奥行方向Xの長さと同じである。または、略同じである。アンテナ70は、上記の姿勢で幅方向Yに複数配置されている。
【0063】
読取可能範囲H2は、アンテナ70の近傍の電力を高めるとともに保管用棚50外への電波の漏えいを少なくするために、アンテナ70が底壁部52に設置されたときに奥行方向Xに底壁部52を出ないようにするとともに幅方向Yに延びるように形成されることが求められている。
【0064】
一般にアンテナでは、放射素子73の中心間距離が広いと読取可能範囲の指向性が狭くなり、放射素子73の中心間距離が狭いと読取可能範囲の指向性が広くなる。本実施形態では、読取可能範囲H2は、奥行方向Xの指向性を広くし、幅方向Yの指向性が狭くすることによって、底壁部52内に収まるように形成されている。
【0065】
このため、md>ndとして、読取可能範囲H2が底壁部52を奥行方向Xに出ないようにしている。本実施形態では、誘電体基板72の長手方向Aにそう長さが底壁部52の奥行方向Xにそう長さと同じ(または略同じ)であるので、距離md,ndは、読取可能範囲H2が長手方向Aに誘電体基板72を出ないよう縁の近傍まで形成されるように考慮されている。
【0066】
この結果、図9に示すように、アンテナ70の読取可能範囲H2は、各放射素子73の列が並ぶ方向を横切る方向に長い楕円形状となる。そして、読取可能範囲H2が底壁部52から出ない。
【0067】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
なお、第1,2の実施形態によれば、アンテナから放射される電波が物品管理エリアのみに万遍なく届く。また、アンテナ近傍においても、確実にRFタグを読み取ることができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
10…物品管理システム、40…RFタグ、52…底壁部(載置部)、70…アンテナ、73…放射素子、74…給電部、X…奥行方向(第1の方向)、Y…(第2の方向)、D1…距離、D2…距離、d…読取最大距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFタグに問い合わせ用の電波を放射するとともに、前記RFタグから放射される応答用の電波を受信するアンテナであって、
2つの放射素子であって、各々電波の放射面を有して前記放射面が同一平面上に位置する2つの放射素子と、
各放射素子から放射される電波の合成波が前記放射面と同一平面に対して垂直方向に延びるように前記2つの放射素子の各々へ給電する給電部と
を具備し、
前記放射面と同一平面に沿う前記2つの放射素子の各々の前記RFタグの最大読取距離をdとしたとき、前記2つの放射素子の中心間距離をD1とすると、D1≦(2×d)
となる
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
RFタグに問い合わせ用の電波を放射するとともに、前記RFタグから放射される応答用の電波を受信するアンテナであって、
mを2以上の自然数とし、nを2以上の自然数とするとしたとき、
m行n列に配置される複数の放射素子であって、各々電波の放射面を有して前記放射面が同一平面上に位置する複数の放射素子と、
各放射素子から放射される電波の合成波が前記放射面と同一平面に対して垂直方向に延びるように前記複数の放射素子の各々へ給電する給電部と
を具備し、
前記放射面と同一平面に沿う前記複数の放射素子の各々の前記RFタグの最大読取距離をdとしたとき、互いに相対的に対角に位置する一対の放射素子の中心間距離をD2とすると、D2≦(2×d)となり、
前記複数の放射素子のうち、同じ行において相対的に隣り合う列に配置される一対の放射素子の中心間距離をmdとし、同じ列において相対的に隣り合う行に配置される一対の放射素子の中心距離をndとし、md>ndとなる
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項3】
被管理物品に取り付けられるRFタグと、
前記被管理物品が載置されるとともに、第1の方向に対してこの第1の方向に直交する第2の方向が大きい載置面を有する載置部と、
前記載置部に配置されるアンテナと、
を具備し、
前記アンテナは、
2つの放射素子であって、各々電波の放射面を有して前記放射面が同一平面上に位置する2つの放射素子と、
各放射素子から放射される電波の合成波が前記放射面と同一平面に対して垂直方向に延びるように前記2つの放射素子の各々へ給電する給電部と
を具備し、
前記放射面と同一平面に沿う前記2つの放射素子の各々の前記RFタグの最大読取距離をdとしたとき、前記2つの放射素子の中心間距離をD1とすると、D1≦(2×d)となり、
前記アンテナの前記2つの放射素子の並ぶ方向は、前記第1の方向に沿う
ことを特徴とする物品管理システム。
【請求項4】
被管理物品に取り付けられるRFタグと、
前記被管理物品が載置されるとともに、第1の方向に対してこの第1の方向に直交する第2の方向が大きい載置面を有する載置部と、
前記載置部に配置されるアンテナと、
を具備し、
前記アンテナは、
mを2以上の自然数とし、nを2以上の自然数とするとしたとき、
m行n列に配置される複数の放射素子であって、各々電波の放射面を有して前記放射面が同一平面上に位置する複数の放射素子と、
各放射素子から放射される電波の合成波が前記放射面と同一平面に対して垂直方向に延びるように前記複数の放射素子の各々へ給電する給電部と
を具備し、
前記放射面と同一平面に沿う前記複数の放射素子の各々の前記RFタグの最大読取距離をdとしたとき、互いに相対的に対角に位置する一対の放射素子の中心間距離をD2とすると、D2≦(2×d)となり、
前記複数の放射素子のうち、同じ行において相対的に隣り合う列に配置される一対の放射素子の中心間距離をmdとし、同じ列において相対的に隣り合う行に配置される一対の放射素子の中心距離をndとし、md>ndとなり、
前記列が並ぶ方向が前記第1の方向に沿い、前記行が並ぶ方向が前記第2の方向に沿う
ことを特徴とする物品管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−60196(P2012−60196A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198154(P2010−198154)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】